(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044981
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】スライドレール装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/18 20060101AFI20240326BHJP
B60N 2/075 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B60N2/18
B60N2/075
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052402
(22)【出願日】2023-03-28
(31)【優先権主張番号】63/376,492
(32)【優先日】2022-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三好 晃
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087AA02
3B087BA02
3B087BB07
(57)【要約】
【課題】 スライドレール装置において、第1のスライダ及び第2のスライダがラップ部を滑らかにスライド移動できるようにする。
【解決手段】 スライドレール装置10であって、レール11と、レールに対してスライド可能に設けられ、かつ第1のシート2を支持する第1のスライダ12と、レールに対してスライド可能に設けられ、かつ第2のシート2を支持する第2のスライダ12とを有し、レールは、第1のスライダの移動可能範囲R1と第2のスライダの移動可能範囲R2とが重なるラップ領域LRに対応したラップ部11Bを有し、ラップ部は、レールの長手方向における両端部よりも高い剛性を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライドレール装置であって、
レールと、
前記レールに対してスライド可能に設けられ、かつ第1のシートを支持する第1のスライダと、
前記レールに対してスライド可能に設けられ、かつ第2のシートを支持する第2のスライダとを有し、
前記レールは、前記第1のスライダの移動可能範囲と前記第2のスライダの移動可能範囲とが重なるラップ領域に対応したラップ部を有し、
前記ラップ部は、前記レールの長手方向における両端部よりも高い剛性を有するスライドレール装置。
【請求項2】
前記第1のスライダ及び前記第2のスライダの少なくとも一方は電動モータによって駆動される請求項1に記載のスライドレール装置。
【請求項3】
前記ラップ部には、前記ラップ部の剛性を高める補強構造が設けられる請求項1又は請求項2に記載のスライドレール装置。
【請求項4】
前記ラップ部は、熱処理がなされた鋼板によって形成されている請求項1に記載のスライドレール装置。
【請求項5】
前記ラップ部は、前記レールの前記長手方向における中央部に設けられている請求項1に記載のスライドレール装置。
【請求項6】
前記レールは、前記長手方向と直交する方向に延びるレール底壁と、前記レール底壁の両端部から上方に延びる一対のレール外側壁と、前記一対のレール外側壁の上端からそれぞれ互いに近づく方向に延びる一対のレール上壁と、前記一対のレール上壁の内端からそれぞれ下方に延びるレール内側壁とを有し、
前記補強構造は、前記一対のレール上壁の上面と、前記一対のレール外側壁の外側面及び前記レール内側壁の内面の少なくとも一方とに沿って設けられる請求項3に記載のスライドレール装置。
【請求項7】
前記レールには、前記レール内側壁から互いに近づく方向に突出する突部が設けられ、前記補強構造は、前記突部の互いに対向する面に設けられる請求項6に記載のスライドレール装置。
【請求項8】
スライドレール装置であって、
レールと、
前記レールに対してスライド可能に設けられ、かつ第1のシートを支持する第1のスライダと、
前記レールに対してスライド可能に設けられ、かつ第2のシートを支持する第2のスライダとを有し、
前記レールは、前記第1のスライダの移動可能範囲と前記第2のスライダの移動可能範囲とが重なるラップ領域に対応したラップ部を有し、
前記レールには長手方向に係合孔が設けられ、
前記第1のスライダ及び前記第2のスライダの少なくとも一方には、前記長手方向に延び、かつ前記係合孔に係合するねじ部材が回転可能に設けられ、
前記ねじ部材が電動モータによって回転されることにより、前記第1のスライダ及び前記第2のスライダの少なくとも一方が前記レールに対してスライド移動し、
前記ラップ部における前記係合孔は、前記レールの前記長手方向における両端部における前記係合孔よりも、前記ねじ部材と前記係合孔との噛合部分における隙間が大きくなるように形成されているスライドレール装置。
【請求項9】
前記ラップ部に設けられた前記係合孔の前記長手方向又は上下方向における長さは、前記両端部に設けられた前記係合孔の前記長手方向又は上下方向における長さよりも長い請求項8に記載のスライドレール装置。
【請求項10】
前記ラップ部に設けられた前記係合孔の上下方向における長さは、前記ラップ部の幅方向外側から内側にかけて長くなっている請求項8に記載のスライドレール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライドレール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車両に設けられた2つのシートを前後にスライド移動させるスライドレール装置を開示している。スライドレール装置は、車両のフロアを前後に延びたレールと、レールに対してスライド可能に設けられた第1のスライダ及び第2のスライダとを有する。第1のスライダはレールの前端部から中央部を移動可能であり、第2のスライダはレールの後端部から中央部を移動可能である。第1のスライダ及び第2のスライダには、それぞれシートが支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のスライドレール装置のレールは、2つのシートをフロアに支持させるために車両の前後にわたって長く延びている。このため、レールは、第1のスライダ移動可能範囲と第2のスライダの移動可能範囲とが重なる領域に対応するラップ部において、その両端部と比較して撓み易い。よって、第1のスライダ及び第2のスライダがラップ部を滑らかにスライド移動できないという問題がある。
【0005】
本発明は、以上の背景を鑑み、スライドレール装置において、第1のスライダ及び第2のスライダがラップ部を滑らかにスライド移動できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、スライドレール装置(10)であって、レール(11)と、前記レールに対してスライド可能に設けられ、かつ第1のシート(2)を支持する第1のスライダ(12)と、前記レールに対してスライド可能に設けられ、かつ第2のシート(2)を支持する第2のスライダ(12)とを有し、前記レールは、前記第1のスライダの移動可能範囲(R1)と前記第2のスライダの移動可能範囲(R2)とが重なるラップ領域(LR)に対応したラップ部(11B)を有し、前記ラップ部は、前記レールの長手方向における両端部よりも高い剛性を有する。
【0007】
この態様によれば、ラップ部が撓み難くなる。よって、スライドレール装置において、第1のスライダ及び第2のスライダがラップ部を滑らかにスライド移動できる。
【0008】
上記の態様において、前記第1のスライダ及び前記第2のスライダの少なくとも一方は電動モータ(36)によって駆動されるとよい。
【0009】
この態様によれば、電動モータによって駆動されるシートをレールに対してスライド可能に設けることができる。
【0010】
上記の態様において、前記ラップ部には、前記ラップ部の剛性を高める補強構造(23)が設けられるとよい。
【0011】
この態様によれば、補強構造を設けることによってラップ部を撓み難くすることができる。
【0012】
上記の態様において、前記ラップ部は、熱処理がなされた鋼板によって形成されているとよい。
【0013】
この態様によれば、熱処理によってラップ部の硬度及び靭性を高めることができる。
【0014】
上記の態様において、前記ラップ部は、前記レールの前記長手方向における中央部に設けられているとよい。
【0015】
この態様によれば、レールの長手方向における中央部の剛性を高めることができる。
【0016】
上記の態様において、前記レールは、前記長手方向と直交する方向に延びるレール底壁(14)と、前記レール底壁の両端部から上方に延びる一対のレール外側壁(15)と、前記一対のレール外側壁の上端からそれぞれ互いに近づく方向に延びる一対のレール上壁(16)と、前記一対のレール上壁の内端からそれぞれ下方に延びるレール内側壁(17)とを有し、前記補強構造は、前記一対のレール上壁の上面と、前記一対のレール外側壁の外側面及び前記レール内側壁の内面の少なくとも一方とに沿って設けられるとよい。
【0017】
この態様によれば、レールを2方向から補強することができる。よって、ラップ部の剛性を確実に高めることができる。
【0018】
上記の態様において、前記レールには、前記レール内側壁から互いに近づく方向に突出する突部(22)が設けられ、前記補強構造は、前記突部の互いに対向する面に設けられるとよい。
【0019】
この態様によれば、ラップ部の剛性を一層高めることができる。
【0020】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様は、スライドレール装置(10)であって、レール(11)と、前記レールに対してスライド可能に設けられ、かつ第1のシート(2)を支持する第1のスライダ(12)と、前記レールに対してスライド可能に設けられ、かつ第2のシート(2)を支持する第2のスライダ(12)とを有し、前記レールは、前記第1のスライダの移動可能範囲と前記第2のスライダの移動可能範囲とが重なるラップ領域(LR)に対応したラップ部(11B)を有し、前記レールには長手方向に係合孔(59)が設けられ、前記第1のスライダ及び前記第2のスライダの少なくとも一方には、前記長手方向に延び、かつ前記係合孔に係合するねじ部材(38、39)が回転可能に設けられ、前記ねじ部材が電動モータ(36)によって回転されることにより、前記第1のスライダ及び前記第2のスライダの少なくとも一方が前記レールに対してスライド移動し、前記ラップ部における前記係合孔は、前記レールの前記長手方向における両端部における前記係合孔よりも、前記ねじ部材と前記係合孔との噛合部分における隙間が大きくなるように形成されている。
【0021】
この態様によれば、ラップ部において、第1のスライダ及び第2のスライダと係合孔との係合度合いを緩くすることができる。よって、第1のスライダ及び第2のスライダがラップ部を滑らかにスライド移動できる。
【0022】
上記の態様において、前記ラップ部に設けられた前記係合孔の前記長手方向又は上下方向における長さは、前記両端部に設けられた前記係合孔の前記長手方向又は上下方向における長さよりも長いとよい。
【0023】
この態様によれば、係合孔の大きさを変更することによって、第1のスライダ及び第2のスライダがラップ部を滑らかにスライド移動できる。
【0024】
上記の態様において前記ラップ部に設けられた前記係合孔の上下方向における長さは、前記ラップ部の幅方向外側から内側にかけて長くなっているとよい。
【0025】
この態様によれば、係合孔の形状を変更することによって、第1のスライダ及び第2のスライダがラップ部を滑らかにスライド移動できる。
【発明の効果】
【0026】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、スライドレール装置(10)であって、レール(11)と、前記レールに対してスライド可能に設けられ、かつ第1のシート(2)を支持する第1のスライダ(12)と、前記レールに対してスライド可能に設けられ、かつ第2のシート(2)を支持する第2のスライダ(12)とを有し、前記レールは、前記第1のスライダの移動可能範囲(R1)と前記第2のスライダの移動可能範囲(R2)とが重なるラップ領域(LR)に対応したラップ部(11B)を有し、前記ラップ部は、前記レールの長手方向における両端部よりも高い剛性を有する。
【0027】
この態様によれば、ラップ部が撓み難くなる。よって、スライドレール装置において、第1のスライダ及び第2のスライダがラップ部を滑らかにスライド移動できる。
【0028】
上記の態様において、前記第1のスライダ及び前記第2のスライダの少なくとも一方は電動モータ(36)によって駆動されるとよい。
【0029】
この態様によれば、電動モータによって駆動されるシートをレールに対してスライド可能に設けることができる。
【0030】
上記の態様において、前記ラップ部には、前記ラップ部の剛性を高める補強構造(23)が設けられるとよい。
【0031】
この態様によれば、補強構造を設けることによってラップ部を撓み難くすることができる。
【0032】
上記の態様において、前記ラップ部は、熱処理がなされた鋼板によって形成されているとよい。
【0033】
この態様によれば、熱処理によってラップ部の硬度及び靭性を高めることができる。
【0034】
上記の態様において、前記ラップ部は、前記レールの前記長手方向における中央部に設けられているとよい。
【0035】
この態様によれば、レールの長手方向における中央部の剛性を高めることができる。
【0036】
上記の態様において、前記レールは、前記長手方向と直交する方向に延びるレール底壁(14)と、前記レール底壁の両端部から上方に延びる一対のレール外側壁(15)と、前記一対のレール外側壁の上端からそれぞれ互いに近づく方向に延びる一対のレール上壁(16)と、前記一対のレール上壁の内端からそれぞれ下方に延びるレール内側壁(17)とを有し、前記補強構造は、前記一対のレール上壁の上面と、前記一対のレール外側壁の外側面及び前記レール内側壁の内面の少なくとも一方とに沿って設けられるとよい。
【0037】
この態様によれば、レールを2方向から補強することができる。よって、ラップ部の剛性を確実に高めることができる。
【0038】
上記の態様において、前記レールには、前記レール内側壁から互いに近づく方向に突出する突部(22)が設けられ、前記補強構造は、前記突部の互いに対向する面に設けられるとよい。
【0039】
この態様によれば、ラップ部の剛性を一層高めることができる。
【0040】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様は、スライドレール装置(10)であって、レール(11)と、前記レールに対してスライド可能に設けられ、かつ第1のシート(2)を支持する第1のスライダ(12)と、前記レールに対してスライド可能に設けられ、かつ第2のシート(2)を支持する第2のスライダ(12)とを有し、前記レールは、前記第1のスライダの移動可能範囲と前記第2のスライダの移動可能範囲とが重なるラップ領域(LR)に対応したラップ部(11B)を有し、前記レールには長手方向に係合孔(59)が設けられ、前記第1のスライダ及び前記第2のスライダの少なくとも一方には、前記長手方向に延び、かつ前記係合孔に係合するねじ部材(38、39)が回転可能に設けられ、前記ねじ部材が電動モータ(36)によって回転されることにより、前記第1のスライダ及び前記第2のスライダの少なくとも一方が前記レールに対してスライド移動し、前記ラップ部における前記係合孔は、前記レールの前記長手方向における両端部における前記係合孔よりも、前記ねじ部材と前記係合孔との噛合部分における隙間が大きくなるように形成されている。
【0041】
この態様によれば、ラップ部において、第1のスライダ及び第2のスライダと係合孔との係合度合いを緩くすることができる。よって、第1のスライダ及び第2のスライダがラップ部を滑らかにスライド移動できる。
【0042】
上記の態様において、前記ラップ部に設けられた前記係合孔の前記長手方向又は上下方向における長さは、前記両端部に設けられた前記係合孔の前記長手方向又は上下方向における長さよりも長いとよい。
【0043】
この態様によれば、係合孔の大きさを変更することによって、第1のスライダ及び第2のスライダがラップ部を滑らかにスライド移動できる。
【0044】
上記の態様において前記ラップ部に設けられた前記係合孔の上下方向における長さは、前記ラップ部の幅方向外側から内側にかけて長くなっているとよい。
【0045】
この態様によれば、係合孔の形状を変更することによって、第1のスライダ及び第2のスライダがラップ部を滑らかにスライド移動できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】第1実施形態に係るスライドレール装置が適用された車両の上面図
【
図2】第1実施形態に係るスライドレール装置の側面図
【
図8】第1ブラケットを省略して示すねじアセンブリの斜視図
【
図9】第1及び第2ねじ部材と第1及び第2ねじ係合部との噛み合いを示す斜視図
【
図10】第2実施形態に係るスライドレール装置における、第1及び第2ねじ部材と第1及び第2ねじ係合部との噛み合いを示す斜視図
【
図11】第3実施形態に係るスライドレール装置が適用された車両の上面図
【
図12】第3実施形態に係るスライドレール装置の側面図
【発明を実施するための形態】
【0047】
<第1実施形態>
以下、図面を参照して、本発明に係るスライドレール装置を車両に適用した実施形態について説明する。本明細書においては、前後方向、左右方向、及び、上下方向を、車両の進行方向を基準として定める。
【0048】
図1及び
図2に示すように、車両は、車室の下部を画定するフロア3を有する。フロア3には、複数の乗物用シート2が設けられている。複数の乗物用シート2は、運転席シート及び助手席シートとしての1列目シート、1列目シートの後方に設けられた2列目シート、及びセンターシートを含む。それぞれのシート2は同一の構成を有するため、以下では同一の符号を付して説明する。
【0049】
シート2は、乗員の臀部を支持するシートクッション4と、シートクッション4の後部から上方に延び、乗員の背部を支持するシートバック5とを有する。
【0050】
本実施形態では、1列目シートのシートクッション4の後端には、測距センサ6が設けられている。測距センサ6は、光源と検出器とを含み、光源から発せられた光が検出器に到達するまでの時間を取得することにより測距を行うToF(Time of Flight)センサモジュールによって構成されているとよい。測距センサ6は、制御装置66に接続されている。
【0051】
シートクッション4には更に、シート2をフロア3に対して回転させる回転装置7が設けられている。回転装置7は、フロア3に対して鉛直方向に延びる鉛直軸を中心としてシート2を回転させる。
【0052】
シートクッション4とフロア3との間には、スライドレール装置10が設けられている。
【0053】
スライドレール装置10は、フロア3に結合され、前後方向に延びている。本実施形態では、3つのスライドレール装置10が左右に間隔をおいて設けられている。車両の右側部分に設けられたスライドレール装置10は、運転席シートの後方において延び、2列目シートを支持する。車両の左側部分に設けられたスライドレール装置10は、フロア3の前部から後部にかけて延び、助手席シートとしての第1のシート(シート2)と、助手席シートの後方に設けられた2列目シートとしての第2のシート(シート2)とを支持する。車両の中央部分に設けられたスライドレール装置10は、フロア3の前部から後部にかけて延び、センターシートを支持する。以下では、車両の左側部分に設けられたスライドレール装置10について説明を行う。
【0054】
スライドレール装置10は、電動スライドレール1を有する。電動スライドレール1は、前後方向に延在するレール11と、レール11に対してスライド可能に係合し、かつシート2を支持するスライダ12とを有する。スライダ12がレール11に対して移動することによって、シート2はフロア3に対して移動する。本実施形態では、レール11の延在方向は車両の前後方向と一致するが、レール11の延在方向は車両の前後方向と一致しなくてもよい。すなわち、レール11の延在方向は、車両への搭載方向を限定するものではない。また本実施形態では、電動スライドレール1は左右に間隔をおいて一対設けられている。左右の電動スライドレール1はそれぞれ同一の構成を有するため、以下では一方の電動スライドレール1について説明を行う。
【0055】
レール11は、フロア3に結合されている。レール11は、前端部11Aから後端部11Cにかけて前後に延びている。本実施形態では、レール11には2つのスライダ12が前後に設けられている。以下では、前方に設けられたスライダ12を第1のスライダと定義し、後方に設けられたスライダ12を第2のスライダと定義する。第1のスライダは、レール11の前端部11Aから前後方向における中央部を移動可能に構成されている。第2のスライダは、レール11の後端部11Cから前後方向における中央部を移動可能に構成されている。
【0056】
以下では、第1のスライダの移動可能範囲R1と第2のスライダの移動可能範囲R2とが重なる領域をラップ領域LRと定義し、ラップ領域LRに対応したレール11の部分をラップ部11Bと定義する。すなわち、レール11は、第1のスライダが移動可能な前端部11Aと、第2のスライダが移動可能な後端部11Cと、前端部11Aと後端部11Cとの間に設けられ、かつ第1のスライダ及び第2のスライダが移動可能なラップ部11Bとを有する。本実施形態では、ラップ部11Bはレール11における中央部と一致する。レール11の前端部11Aと後端部11Cとは同一の構成を有するため、以下ではレール11の前端部11A及びラップ部11Bについて説明し、後端部11Cの説明は省略する。
【0057】
<前端部>
【0058】
図3に示すように、レール11は、溝形の断面を有する。詳細には、レール11は、面が上下を向くレール底壁14と、レール底壁14の左右の縁部から上方に延びて面が左右を向く左右のレール外側壁15と、左右のレール外側壁15の上端からそれぞれ互いに近づく方向に延び、面が上下を向く左右のレール上壁16と、左右のレール上壁16の内端からそれぞれ下方に延び、面が左右を向く左右のレール内側壁17とを有する。左右のレール内側壁17は、請求項の第1側壁及び第2側壁に対応する。
【0059】
レール底壁14、左右のレール外側壁15、左右のレール上壁16、及び左右のレール内側壁17は、それぞれ前後に延在している。左右のレール外側壁15及び左右のレール内側壁17は、互いに平行に、かつレール底壁14に対して垂直に延在している。左右のレール内側壁17の下端は、レール底壁14に対して間隔をおいて配置されている。レール11は、その上部に前後に延びるレール開口19を有する。レール開口19は、左右のレール内側壁17によって画定されている。レール11は、金属板をプレス成形することによって形成されているとよい。レール底壁14の左右の縁側部は、上方に隆起した段部21を有してもよい。左右の段部21は、前後に延在し、その上面が平坦に形成されている。
【0060】
左右のレール内側壁17のそれぞれには、互いに近づく方向に突出すると共に、前後方向に延びた突部22が形成されている。左右の突部22の断面は、円弧状又は台形状に形成されているとよい。各突部22は、対応するレール内側壁17において、上下方向における中間部に配置されているとよい。左右のレール内側壁17の上端部及び下端部は、突部22よりも左右外方に配置されている。
【0061】
<ラップ部>
【0062】
図4は、ラップ部11Bにおけるレール11の断面図である。本実施形態では、ラップ部11Bの形状は、前端部11Aに対して、補強構造23が設けられている点において異なる。他の形状は前端部11Aと同一であるため、同一の符号を付し説明を省略する。
【0063】
補強構造23は、板状に形成された金属部材である。補強構造23は、例えばレール11に溶接されることによって設けられているとよい。補強構造23は平板状に形成され、左右の突部22に設けられていてもよい。補強構造23は、左右の突部22の内側面であって、互いに対向する面に沿って設けられているとよい。また、補強構造23はL字状の断面を有し、左右のレール内側壁17に設けられていてもよい。補強構造23は、左右のレール内側壁17の下部及び内側面に沿って設けられているとよい。また、補強構造23はL字状の断面を有し、左右のレール上壁16に設けられていてもよい。補強構造23は、左右のレール上壁16の上面及び左右のレール内側壁17の内側面に沿って設けられているとよい。補強構造23は、左右のレール上壁16の上面及び左右のレール外側壁15の外側面に沿って設けられているとよい。また、補強構造23はU字状の断面を有し、左右のレール上壁16の内側面、左右のレール上壁16の上面及び左右のレール外側壁15の外側面に沿って設けられているとよい。
【0064】
補強構造23は、レール11に対して左右方向において対称の位置に設けられているとよい。レール11には、左右対称の位置に一対の補強構造23が設けられていてもよく、複数の組の補強構造23が設けられていてもよい。補強構造23が設けられることにより、ラップ部11Bの剛性が向上する。よって、ラップ領域LRにおいてレール11を撓み難くすることができる。
【0065】
別の実施形態では、ラップ部11Bは、補強構造23が設けられていることに代えて、熱処理がなされた鋼板によって形成されているとよい。例えば、ラップ部11Bは、焼戻しがなされることにより硬度及び靭性が高められた鋼板によって形成されているとよい。
【0066】
また、
図5に示すように、左右の電動スライドレール1のラップ部11Bどうしは、連結部材24によって左右に接続されてもよい。連結部材24は、金属製の部材によって形成されているとよい。連結部材24により、スライドレール装置10の剛性を高めることができる。
【0067】
図3及び
図4に示すように、スライダ12は、レール開口19の開口端に配置され、面が上下を向く板状のベース部25と、ベース部25の左右の側縁からレール底壁14側、すなわち下方に延びる左右のスライダ内側壁26と、左右のスライダ内側壁26の下端からそれぞれ左右外方に延びる左右のスライダ下壁27と、左右のスライダ下壁27の左右外端から上方に延びる左右のスライダ外側壁28とを有する。左右のスライダ内側壁26は、請求項の第3側壁及び第4側壁に対応する。ベース部25、左右のスライダ内側壁26、左右のスライダ下壁27、及び左右のスライダ外側壁28は、前後に延在している。
【0068】
スライダ12は、ベース部25と、左右のスライダ内側壁26とによって、レール底壁14側、すなわち下方に向けて開口する溝形に形成されている。
図6及び
図7に示すように、ベース部25の下面には、ねじアセンブリ35及び電動モータ36が支持されている。ねじアセンブリ35は、前後方向周りに回転可能にスライダ12に支持されたねじ部材38、39を含む。電動モータ36は、スライダ12に支持され、ねじ部材38、39を回転させる。
【0069】
図6及び
図8に示すように、本実施形態では、ねじ部材38、39は、第1ねじ部材38と第2ねじ部材39とを含む。他の実施形態では、ねじアセンブリ35は、単一のねじ部材を有してもよい。第1ねじ部材38及び第2ねじ部材39は、長手方向における中間部の外周面にねじ山38A、39Aを有する。ねじ山38A、39Aの数は、電動スライドレール1の大きさや、電動スライドレール1の長手方向における要求強度によって決定されるとよい。例えば、要求強度を増加させたい場合には、ねじ山38A、39Aの数を増加させるとよい。ねじアセンブリ35は、第1ねじ部材38及び第2ねじ部材39を回転可能に支持するギヤケース41と、ギヤケース41をスライダ12に支持するための第1ブラケット42とを有する。
【0070】
図6~
図8に示すように、ギヤケース41は、前後に長い直方体の箱形に形成されている。ギヤケース41は、第1ねじ部材38と、第2ねじ部材39と、電動モータ36の回転軸36Aに連結する駆動軸43とを回転可能に支持している。第1ねじ部材38、第2ねじ部材39、及び駆動軸43は、それぞれ前後に延び、互いに並列にギヤケース41に配置されている。ギヤケース41は、外殻をなす箱形のアウタケース41Aと、アウタケース41Aの前端及び後端に支持された前支持部材41B及び後支持部材41Cとを有する。前支持部材41B及び後支持部材41Cには、第1ねじ部材38の前端及び後端を回転可能に支持する前後一対の第1軸受部45と、第2ねじ部材39の前端及び後端を回転可能に支持する前後一対の第2軸受部46と、駆動軸43を回転可能に支持する前後一対の第3軸受部47とが設けられている。
【0071】
第1ねじ部材38はギヤケース41の左側部に沿って配置され、第2ねじ部材39はギヤケース41の右側部に沿って配置されている。駆動軸43は、第1ねじ部材38と第2ねじ部材39との中間部の下方に配置されている。駆動軸43は、ギヤケース41内において駆動ギヤ43Aを有する。第1ねじ部材38は、駆動ギヤ43Aに噛み合う第1ギヤ38Bを有する。第2ねじ部材39は、駆動ギヤ43Aに噛み合う第2ギヤ39Bを有する。駆動ギヤ43A、第1ギヤ38B、及び第2ギヤ39Bのそれぞれは、平歯車であってよい。駆動軸43が回転すると、第1ねじ部材38及び第2ねじ部材39は互いに同一方向に回転する。第1ギヤ38Bと第2ギヤ39Bとは、対称形であってよい。
【0072】
ギヤケース41は、第1ねじ部材38及び第2ねじ部材39を側方に露出させるための開口であるケース開口48を有する。第1ねじ部材38のねじ山38Aは、ギヤケース41の左側部に形成されたケース開口48を通過して左方に突出している。同様に、第2ねじ部材39のねじ山39Aは、ギヤケース41の右側部に形成されたケース開口48を通過して右方に突出している。ケース開口48はアウタケース41Aに形成されている。
【0073】
第1ブラケット42は、前後に延在し、前端に設けられた第1結合部42Aと、後端に設けられた第2結合部42Bとを有する。第1ブラケット42は、第1結合部42A及び第2結合部42Bにおいてスライダ12のベース部25の下面に結合されている。第1ブラケット42は、第1結合部42Aから第2結合部42Bに延びる支持部42Cを有する。第1ブラケット42は、第1結合部42A、第2結合部42B、支持部42Cを含む一体的な金属製の部材であるとよい。
【0074】
支持部42Cは、第1結合部42A及び第2結合部42Bに対して下方に位置する部分を有する。支持部42Cによって第1ブラケット42はベース部25と協働して閉構造を形成する。ギヤケース41はスライダ12のベース部25と支持部42Cとの間に配置されている。第1ブラケット42は、金属板を折曲成形することに形成されている。第1結合部42Aはギヤケース41の前部から前方に延出し、第2結合部42Bはギヤケース41の後部から後方に延出している。第1結合部42A及び第2結合部42Bは、ねじやリベット等の締結部材によってベース部25に締結されているとよい。第1結合部42A及び第2結合部42Bの締結点間の距離は、ギヤケース41の前後長よりも長く設定されている。
【0075】
第1ブラケット42の後方には、電動モータ36をスライダ12のベース部25に支持するための第2ブラケット51が設けられている。第2ブラケット51は、ベース部25に結合される結合部51Aと、結合部51Aからベース部25と相反する側、すなわち下方に延びる支持部51Bとを有する。支持部51Bは結合部51Aに対して直交し、第2ブラケット51はL字形に形成されている。電動モータ36は、その一側の端部において支持部51Bに結合されている。本実施形態では、電動モータ36は結合部51Aの下方に配置され、第2ブラケット51は電動モータ36のねじ部材38、39側の端部を片持ち支持する。
【0076】
駆動軸43の後端は、ギヤケース41の後支持部材41Cから後方に突出し、第1ブラケット42に形成された貫通孔を通過して後方に延びている。電動モータ36の回転軸36Aは、駆動軸43の後端部に接続されている。回転軸36Aと駆動軸43とはカップリングによって結合されているとよい。また、回転軸36Aと駆動軸43とは、互いに噛み合う嵌合部を有してもよい。電動モータ36の回転軸36Aと駆動軸43とは、同一直線上に配置されている。電動モータ36は、円筒形に形成され、前後に延びている。
【0077】
ねじアセンブリ35、電動モータ36、第1ブラケット42、及び第2ブラケット51は、ベース部25の下方、かつ左右のスライダ内側壁26の間に配置されている。左右のスライダ内側壁26は、ねじアセンブリ35と対応する位置に開口であるスライダ開口55を有する。スライダ開口55は、スライダ内側壁26の凹部33に形成されている。第1ねじ部材38のねじ山38Aの左部は、ギヤケース41の左側のケース開口48及び左側のスライダ内側壁26のスライダ開口55を通過して左側のスライダ内側壁26の左方に突出している。同様に、第2ねじ部材39のねじ山39Aの右部は、ギヤケース41の右側のケース開口48及び右側のスライダ内側壁26のスライダ開口55を通過して右側のスライダ内側壁26の右方に突出している。
【0078】
図9に示すように、レール11には、前後方向に延在し、ねじ部材38、39と係合するねじ係合部57、58が形成されている。
図9は、レール11の内で、レール内側壁17のみを示している。ねじ係合部57、58は、左側のレール内側壁17に形成され、第1ねじ部材38のねじ山38Aに噛み合う第1ねじ係合部57と、右側のレール内側壁17に形成され、第2ねじ部材39のねじ山39Aに噛み合う第2ねじ係合部58とを有する。第1ねじ係合部57及び第2ねじ係合部58は、対応するレール内側壁17の突部22に形成されている。第1ねじ係合部57及び第2ねじ係合部58は、突部22に前後方向に並んで形成された複数の係合孔59を含む。第1ねじ部材38は、第1ねじ部材38のねじ山38Aの左部において第1ねじ係合部57の複数の係合孔59と噛み合い、前後方向周りに回転することによって第1ねじ係合部57に対して前後に移動する。同様に、第2ねじ部材39は、第2ねじ部材39のねじ山39Aの右部において第2ねじ係合部58の複数の係合孔59と噛み合い、前後方向周りに回転することによって第2ねじ係合部58に対して前後に移動する。
【0079】
電動モータ36の回転は、回転軸36A、駆動軸43、駆動ギヤ43A、第1ギヤ38B又は第2ギヤ39Bを介して第1ねじ部材38及び第2ねじ部材39に伝達される。その結果、第1ねじ部材38及び第2ねじ部材39が同一方向に回転する。第1ねじ部材38及び第2ねじ部材39が回転すると、第1ねじ部材38及び第2ねじ部材39が第1ねじ係合部57及び第2ねじ係合部58に対して前後に移動し、レール11に対してスライダ12が前後に移動する。
【0080】
図2~
図4に示すように、電動スライドレール1は、電動モータ36に電力を供給するための給電装置を有する。給電装置は、レール11の内部を前後に延び、電源68に接続される導電性ストリップ62と、レール11と導電性ストリップ62との間に設けられた電気絶縁板63と、電動モータ36に設けられ、導電性ストリップ62に摺接する導電性の接触端子とを有する。本実施形態では、レール底壁14の上面に電気絶縁板63が設けられ、電気絶縁板63の上面に導電性ストリップ62が設けられている。導電性ストリップ62は、帯状の金属板であり、左右一対設けられ、それぞれ前後に延びている。左右の導電性ストリップ62は、前後に延びる電気絶縁板63の左右の側縁に沿って配置されている。
【0081】
給電装置は、制御装置66を介して電源68に接続されている。制御装置66は、例えばフロア3に設けられる。制御装置66は、電子制御装置であり、電源68と、各電動スライドレール1の左右の導電性ストリップ62と、操作スイッチ67とに接続されている。操作スイッチ67は、前進に対応したボタンと、後退に対応したボタンとを有する。制御装置66は、操作スイッチ67からの信号に基づいて、各導電性ストリップ62に供給する電力を調整し、電動モータ36の回転方向及び回転量を制御する。これにより、操作者は操作スイッチ67を操作することによって電動スライドレール1を作動させ、フロア3に対して乗物用シート2を前後に移動させることができる。他の実施形態では、電動モータ36は、導電性ストリップ62によって供給される電力とは独立して、無線装置による無線信号によって制御されてもよい。
【0082】
次に、制御装置66によるスライドレール装置10の制御について説明する。本実施形態では、制御装置66は、第1のシートに対応する電動モータ36が回転を開始し、第1のスライダが移動を開始すると、以下のシート制御処理を実行する。
【0083】
シート制御処理のS1において、制御装置66は、測距センサ6の検出結果に基づいて、第1のシートのシートバック5の後端と第2のシートのシートクッション4の前端との間の距離dを取得する。距離dの取得が終了すると、制御装置66は、S2を実行する。
【0084】
S2において、制御装置66は、S1において取得した距離dが所定の閾値α以上であるか否かを判定する。制御装置66は、距離dが所定の閾値α以上である場合には、S1を再度実行する。制御装置66は、距離dが所定の閾値α以上でない場合には、S3を実行する。
【0085】
S3において、制御装置66は、第1のスライダの移動を停止させる。すなわち、制御装置66は、給電装置に対する電力の供給を停止することによって電動モータ36の回転を停止させ、第1のスライダの移動を停止させる。これにより、第1のシートの移動が停止する。S3が終了すると、制御装置66は、シート制御処理を終了する。
【0086】
このようにシート制御処理を実行することにより、制御装置66は、第1のシートと第2のシートとの間の距離dを所定の閾値α以上に維持することができる。よって、第1のシートと第2のシートとの干渉を防止することができる。
【0087】
次に、本実施形態に係るスライドレール装置10の効果を説明する。レール11のラップ部11Bにおける剛性がレール11の両端部(すなわち、前端部11A及び後端部11C)における剛性と比較して高いため、ラップ部11Bが撓み難くなる。よって、スライドレール装置10において、第1のスライダ及び第2のスライダがラップ部11Bを滑らかにスライド移動することができる。また、第1のスライダ及び第2のスライダがラップ部11Bをスライド移動するときの異音の発生を抑制することができる。
【0088】
また、補強構造23は左右のレール上壁16の上面と、レール外側壁15の外側面及びレール内側壁17の内側面の少なくとも一方とに沿って設けられている。この構成によれば、レール11を少なくとも2方向から補強することができるため、レール11の剛性を確実に高めることができる。
【0089】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係るスライドレール装置10について説明する。第2実施形態に係るスライドレール装置10は、第1実施形態に係るスライドレール装置10に対して、ラップ部11Bに補強構造23が設けられていない点と、ラップ部11Bにおける係合孔59の形状において異なる。以下では、係合孔59の形状について説明し、第1実施形態に係るスライドレール装置10と同様の構成については同一の符号を付し説明を省略する。また、第2実施形態に係るラップ部11Bの構造についても第1実施形態に係る前端部11Aの構造であるため説明を省略する。
【0090】
図10は、レール11の前端部11A及びラップ部11Bにおけるレール内側壁17を示している。第1ねじ係合部57及び第2ねじ係合部58は、突部22に前後方向に並んで形成された複数の係合孔59を含む。ラップ部11Bに設けられた複数の係合孔59はそれぞれ、前端部11Aに設けられた複数の係合孔59に対して、前後方向及び上下方向における長さが長く形成されている。これにより、ラップ部11Bにおける係合孔59は、前端部11Aにおける係合孔59よりも、第1ねじ係合部57及び第2ねじ係合部58と係合孔59との噛合部分における隙間が大きくなっている。なお、別の実施形態では、ラップ部11Bにおける係合孔59は、前端部11Aに設けられた係合孔59に対して、前後方向及び上下方向における長さのうち一方が長く形成されていてもよい。
【0091】
この構成によれば、係合孔59の大きさを変更することにより、ラップ部11Bにおいて、第1のスライダ及び第2のスライダと係合孔59との係合度合いを緩くすることができる。よって、第1のスライダ及び第2のスライダがラップ部11Bを滑らかにスライド移動することができる。また、公差内のスライダ12の寸法のばらつきにも対応することができる。
【0092】
別の実施形態では、ラップ部11Bにおける係合孔59は、係合孔59が開口する角度を変更することによって、第1のスライダ及び第2のスライダとの係合度合いが緩くなるように構成されていてもよい。例えば、ラップ部11Bにおける係合孔59の上下方向における長さは、ラップ部11Bの幅方向外側から内側にかけて長くなっているとよい。これにより、ラップ部11Bの剛性の低下を抑制しつつ、第1のスライダ及び第2のスライダと係合孔59との係合度合いを緩くすることができる。
【0093】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態に係るスライドレール装置10について説明する。第3実施形態に係るスライドレール装置10は、第1実施形態に係るスライドレール装置10に対して、スライドレール装置10が3列シートの車両に適用されている点において異なる。以下では、第1実施形態に係るスライドレール装置10と同様の構成については同一の符号を付し説明を省略する。
【0094】
図11及び
図12に示すように、フロア3には、2つのスライドレール装置10が設けられている。2つのスライドレール装置10は左右に間隔をおいて配置されている。車両の右側部分に設けられたスライドレール装置10は、運転席シートとしての1列目シート(第1のシート)、2列目シート(第2のシート)、及び3列目シート(第3のシート)を支持する。車両の左側部分に設けられたスライドレール装置10は、助手席シートとしての1列目シート(第1のシート)、2列目シート(第2のシート)及び3列目シート(第3のシート)を支持する。
【0095】
レール11にはそれぞれ3つのスライダ12が前後に設けられている。以下では、第1のシートに対応するスライダ12を第1のスライダとして、第2のシートに対応するスライダ12を第2のスライダとして、第3のシートに対応するスライダ12を第3のスライダとして、それぞれ定義する。
【0096】
レール11は、第1のスライダが移動可能な前端部11A(第1レール部)と、第1のスライダの移動可能範囲R1と第2のスライダの移動可能範囲R2とが重なる第1のラップ領域LR1に対応したラップ部11B(以下、第1のラップ部という)と、第2のスライダのみが移動可能な部分(第2レール部)と、第2のスライダの移動可能範囲R2と第3のスライダの移動可能範囲R3とが重なる第2のラップ領域LR2に対応したラップ部11B(以下、第2のラップ部という)と、第3のスライダが移動可能な後端部11C(第3レール部)とを有する。第1のラップ部及び第2のラップ部は同一の形状を有していてもよい。第1のラップ部及び第2のラップ部は、前後方向における長さが異なっていてもよい。例えば、第1のラップ部の前後方向における長さより、第2のラップ部の前後方向における長さが長くてもよい。
【0097】
本実施形態では、フロア3は、スライドレール装置10が結合された上側フロアパネル3Aと、上側フロアパネル3Aの下方において前後左右に延在する下側フロアパネル3Bとを有している。上側フロアパネル3Aと下側フロアパネル3Bとの間には、左右に延びる複数のビーム80が設けられている。
【0098】
ビーム80は、上側フロアパネル3Aと下側フロアパネル3Bとに結合されている。ビーム80は前後に複数設けられ、それぞれが略三角形状の断面を有しているとよい。ビーム80は、中実な金属ブロックによって構成されていてもよく、金属板を接合することによって構成されていてもよい。複数のビーム80が、前後に隣接して配置されることによりトラス状の断面を構成していてもよい。
【0099】
本実施形態では、ビーム80は、前後に間隔をおいて配置されている。ビーム80は、第1レール部と第1のラップ部との境界、第1のラップ部と第2レール部との境界、第2レール部と第2のラップ部との境界、及び第2のラップ部と第3レール部の境界に対応する位置に設けられている。前後に隣り合う2つのビーム80の間には、フロア補強部材81が設けられている。
【0100】
フロア補強部材81は、金属材料によって形成され、前後かつ左右に延在している。フロア補強部材81は、左右方向において1対のレール11の間に対応する部分に設けられているとよい。フロア補強部材81は、前後方向において第1レール部、第1のラップ部、第2レール部、第2のラップ部及び第3レール部に対応する部分を有しているとよい。
【0101】
前後方向において第1のラップ部又は第2のラップ部と対応するフロア補強部材81の部分は、第1レール部、第2レール部又は第3レールと対応するフロア補強部材81の部分と比較して、上下方向における厚みが厚くなっている。第1のラップ部又は第2のラップ部と対応するフロア補強部材81の部分は、上側フロアパネル3Aの下面と下側フロアパネル3Bの上面とを接続しているとよい。
【0102】
このような構成により、ラップ領域LR1、LR2に対応するフロア3の剛性を高めることができる。よって、ラップ部11Bを撓み難くすることができる。
【0103】
また、下側フロアパネル3Bの下方には車両に給電するための複数のバッテリ90が設けられていてもよい。バッテリ90は、前後方向において第1レール部、第2レール部及び第3レール部に対応して配置されていてもよい。バッテリ90は、前後方向において第1のラップ部及び第2のラップ部に対応する領域にそれぞれ配置されていてもよい。
【0104】
また、それぞれのシート2はそれぞれ、左右に延びる横レール91によって左右方向にもスライド移動可能に設けられていてもよい。
【0105】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。
【0106】
第1のスライダ及び第2のスライダは電動モータ36によって駆動されていたが、第1のスライダ及び第2のスライダのうち一方が電動モータ36によって駆動され、第1のスライダ及び第2のスライダのうち他方が手動でスライド操作されてもよい。
【0107】
シート2には、シート2の回転角を検出する回転角センサが設けられていてもよい。制御装置66は、回転角センサの検出結果に基づいてシート制御処理における電動モータ36の回転方向を決定してもよい。例えば、制御装置66は、シート2の回転角が180°であるときには、電動モータ36の回転方向を反転させるとよい。また、制御装置66は、回転角センサの検出結果に基づいてシート制御処理における閾値αを変更してもよい。例えば、制御装置66は、シート2の回転角が180°であるときには、閾値αを0に設定してもよい。これにより、前後に並ぶ2つのシート2のシートクッション4を接続させるシートアレンジを実現させてもよい。この場合、測距センサ6は、シートクッション4の後端に加えて、シート2のシートクッション4の前端や、ヘッドレストに設けられているとよい。
【0108】
シート2にはシートバック5をシートクッション4に対して回動させるリクライニング装置と、シートバック5のリクライニング角を検出するリクライニング角センサとが設けられていてもよい。制御装置66は、リクライニング角センサの検出結果に基づいてシート制御処理を行ってもよい。
【0109】
シート2には、シートクッション4の前端に対して回動可能に接続されたオットマンと、オットマンの回転角を検出する回転角センサとが設けられていてもよい。制御装置66は、回転角センサによって検出されたオットマンの回転角に基づいてシート制御処理を行ってもよい。
【0110】
レール11を製造する場合には、前端部11A、後端部11C及びラップ部11Bを別々に製造したあと、それぞれを組み立ててもよい。あるいは、1つのレール11を用意したあと、ラップ領域LRに対応する部分に補強構造23を設けることにより、レール11が前端部11A、後端部11C及びラップ部11Bを有するように構成してもよい。1つのレール11を用意したあと、ラップ領域LRに対応する部分の係合孔59の大きさを変更することにより、レール11が前端部11A、後端部11C及びラップ部11Bを有するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0111】
2 :シート
10 :スライドレール装置
11 :レール
11B :ラップ部
12 :スライダ
14 :レール底壁
15 :レール外側壁
16 :レール上壁
17 :レール内側壁
22 :突部
23 :補強構造
36 :電動モータ
38 :第1ねじ部材(ねじ部材)
39 :第2ねじ部材(ねじ部材)
59 :係合孔
R1 :第1のスライダの移動可能範囲
R2 :第2のスライダの移動可能範囲
LR :ラップ領域