(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044987
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ガラスクロス及びガラスクロスの製造方法
(51)【国際特許分類】
D03D 15/267 20210101AFI20240326BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20240326BHJP
D06M 13/513 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
D03D15/267
D03D1/00 A
D06M13/513
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068177
(22)【出願日】2023-04-19
(62)【分割の表示】P 2022150737の分割
【原出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】305040569
【氏名又は名称】ユニチカグラスファイバー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】澤井 陸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大智
(72)【発明者】
【氏名】西中 大介
【テーマコード(参考)】
4L033
4L048
【Fターム(参考)】
4L033AA09
4L033AB05
4L033AC15
4L033BA96
4L048AA03
4L048AA34
4L048AB07
4L048AB11
4L048AB12
4L048BA01
4L048CA00
4L048CA15
4L048DA43
4L048EB00
(57)【要約】
【課題】 スジ状欠点の発生を抑制する、ガラスクロスの提供を主な課題とする。
【解決手段】 シランカップリング剤で表面処理されたガラスクロスであって、前記ガラスクロスの質量が6.0~13.0g/m
2であり、前記ガラスクロスの経糸及び緯糸の織密度が90~120本/25mmであり、前記ガラスクロスの緯糸の糸幅平均値が120~220μmであり、前記ガラスクロスの隣接する緯糸間の隙間の平均値と標準偏差から求まる緯糸隙間変動係数(標準偏差/平均値×100%)が15~35%である、ガラスクロス。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シランカップリング剤で表面処理されたガラスクロスであって、
前記ガラスクロスの質量が6.0~13.0g/m2であり、
前記ガラスクロスの経糸及び緯糸の織密度が90~120本/25mmであり、
前記ガラスクロスの緯糸の糸幅平均値が120~220μmであり、
前記ガラスクロスの隣接する緯糸間の隙間の平均値と標準偏差から求まる緯糸隙間変動係数(標準偏差/平均値×100%)が15~35%である、ガラスクロス。
【請求項2】
前記隣接する緯糸間の隙間の平均が60~120μmである請求項1記載のガラスクロス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスクロス及びガラスクロスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント配線板は、電子機器の小型化に伴い、軽量化が求められており、使用される材料も低質量であることが求められている。プリント配線板を製造するには、ガラスクロスに樹脂が含浸されたプリプレグが用いられるが、ガラスクロスも同様に低質量であることが求められる。
【0003】
そして、上記低質量であるガラスクロスを構成するガラス糸についても、低番手化や低誘電特性が求められており、ガラス糸の品質がガラスクロスの性能に対して大きな影響を与える。
【0004】
低質量であるガラスクロスとして、例えば、3.0~4.2μmの範囲の直径を備えるガラスフィラメントが14~55本の範囲で集束されてなる経糸及び緯糸から構成され、該経糸及び緯糸の織密度が86~140本/25mmの範囲にあり、7.5~12.0μmの範囲の厚さと、1m2当たり6.0~10.0gの範囲の質量とを備え、ガラスクロスの厚さを経糸のガラスフィラメントの直径と緯糸のガラスフィラメントの直径との平均値で除した値(ガラスクロスの厚さ/{(経糸のガラスフィラメントの直径+緯糸のガラスフィラメントの直径)/2})として示される平均段数が2.00以上3.00未満の範囲にあるガラスクロスであって、前記経糸の開繊度(経糸の糸幅/(経糸を構成するガラスフィラメントの直径×経糸を構成するガラスフィラメントの本数))と前記緯糸の開繊度(緯糸の糸幅/(緯糸を構成するガラスフィラメントの直径×緯糸を構成するガラスフィラメントの本数))との相乗平均((経糸の開繊度×緯糸の開繊度)1/2)で示される平均開繊度が1.000~1.300の範囲にあり、前記緯糸の糸幅に対する前記経糸の糸幅の比(経糸の糸幅/緯糸の糸幅)で示される糸幅比が0.720~0.960の範囲にあるガラスクロスが知られている(特許文献1参照)。該文献によれば、平均段数を3.00未満としても、該ガラスクロスを用いたプリプレグにおいてピンホールの発生を抑制することができるとともに、該ガラスクロスの毛羽立ちが少ないことで該プリプレグの優れた外観品質を維持できるガラスクロスを提供するとされている。
【0005】
また、低質量であるガラスクロスとして、例えば、質量が10g/m2以下のガラスクロスであって、前記ガラスクロスの、隣接する経糸間の隙間設計値Iwdが95μm以下、及び隣接する緯糸間の隙間設計値Ifdが95μm以下であり、前記ガラスクロスの、隣接する経糸間の隙間実測値(Iw)と隣接する緯糸間の隙間実測値(If)との比(Iw/If)が1.10以上1.60以下であり、前記ガラスクロスの、バスケットホール面積割合が12%以上20%以下である、ガラスクロスが知られている(特許文献2参照。)該文献によれば、低質量のガラスクロスを該ガラスクロスの質量割合が低いものとなるように樹脂溶液を含浸させてプリプレグとする際にも、ピンホール発生の抑制と、上記タテシワ発生の抑制との両立を図ることができるガラスクロスを提供するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-21274号公報
【特許文献2】特開2021-75805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
シランカップリング剤で表面処理されたガラスクロスは、プリント配線基板の材料であるプリプレグへと加工される場合が多い。また、プリプレグは任意の樹脂をガラスクロスに塗布することにより製造される。そして、ガラスクロスには、樹脂のガラスクロスへの含浸性を高めるため開繊処理が施される。開繊処理の具体的な手法としては、水流の圧力による開繊処理、水(例えば脱気水、イオン交換水、脱イオン水、電解陽イオン水又は電解陰イオン水等)等を媒体とした高周波振動による開繊処理、ロールによる加圧での加工処理等が挙げられるが、いずれの場合もガラスクロスに対して物理的な衝撃を付与することで経糸及び緯糸を開繊することができる。
【0008】
本発明者が検討したところ、ガラスクロス、とりわけ低質量であるガラスクロスにおいて、ガラスクロスの経糸方向に沿ったシワが、ガラスクロス緯糸方向に対してランダムな位置に複数個発生する欠点(以下、スジ状欠点という。)が発生する場合があることを知得した。以下スジ状欠点について説明する。
【0009】
<スジ状欠点の説明>
図1~3はスジ状欠点の一例について説明する模式図である。スジ状欠点は、ガラスクロス1の経糸方向に沿った複数のシワ2が、ガラスクロス1の経糸方向の位置において他のシワと重複する部分と当該重複する部分を有するシワ部分とが連続するようにガラスクロス1緯糸方向に発生することを特徴とする(
図1~3参照。)。例えば
図1において、ガラスクロス1の経糸方向に沿った3個のシワ2a、2b及び2cが、ガラスクロス1の経糸方向の位置において他のシワと重複する部分と当該重複する部分を有するシワ部分とが連続するようにガラスクロス1緯糸方向に発生しており、1個のスジ状欠点を構成している。また、
図1において、当該スジ状欠点の長さ3Lは、ガラスクロス1の経糸方向の位置において他のシワと重複する部分と当該重複する部分を有するシワ部分とが連続して存在する部分のガラスクロス経糸方向長さであり、具体的には、スジ状欠点を構成するシワ2の始点(
図1ではシワ2cの始点A)からガラスクロス経糸方向と垂直な直線を引き、スジ状欠点を構成するシワの終点(
図1ではシワ2cの始点Aの他方側の終点B)からガラスクロス経糸方向と垂直な直線を引いたときの、当該直線同士の距離とする。
【0010】
また、例えば
図2において、ガラスクロス1の経糸方向に沿った6個のシワ2a、2b、2c、2d、2e及び2fが、ガラスクロス1の経糸方向の位置において他のシワと重複する部分と当該重複する部分を有するシワ部分とが連続するようにガラスクロス1緯糸方向に発生しており、1個のスジ状欠点を構成している。また、
図2において、当該スジ状欠点の長さ3Lは、ガラスクロス1の経糸方向の位置において他のシワと重複する部分と当該重複する部分を有するシワ部分とが連続して存在する部分のガラスクロス経糸方向長さであり、具体的には、スジ状欠点を構成するシワ2の始点(
図2ではシワ2bの始点A)からガラスクロス経糸方向と垂直な直線を引き、スジ状欠点を構成するシワの終点(
図2ではシワ2aの終点B)からガラスクロス経糸方向と垂直な直線を引いたときの、当該直線同士の距離とする。
【0011】
また、例えば
図3において、ガラスクロス1の経糸方向に沿った5個のシワ21a、21b、21c、21d及び21eが、ガラスクロス1の経糸方向の位置において他のシワと重複する部分と当該重複する部分を有するシワ部分とが連続するようにガラスクロス1緯糸方向に発生しており、1個のスジ状欠点31を構成している。また、
図3において、ガラスクロス1の経糸方向に沿った2個のシワ22a及び22bが、ガラスクロス1の経糸方向の位置において他のシワと重複する部分と当該重複する部分を有するシワ部分とが連続するようにガラスクロス1緯糸方向に発生しており、1個のスジ状欠点32を構成している。また、
図3においては、ガラスクロス1は、ガラスクロス経糸方向の位置においてスジ状欠点を含まない部分4(経糸方向の位置において他のシワと重複するシワが存在しない部分)を有しており、スジ状欠点31とスジ状欠点32とは、当該部分4によって分離され、それぞれ独立して存在している。また、
図3において、当該スジ状欠点31の長さ31Lは、ガラスクロス1の経糸方向の位置において他のシワと重複する部分と当該重複する部分を有するシワ部分とが連続して存在する部分のガラスクロス経糸方向長さであり、具体的には、スジ状欠点を構成するシワ21の始点(
図3ではシワ21aの始点A1)からガラスクロス経糸方向と垂直な直線を引き、スジ状欠点を構成するシワ21の終点(
図3ではシワ2eの終点B1)からガラスクロス経糸方向と垂直な直線を引いたときの、当該直線同士の距離とする。また、
図3において、当該スジ状欠点32の長さ32Lは、ガラスクロス1の経糸方向の位置において他のシワと重複する部分と当該重複する部分を有するシワ部分とが連続して存在する部分のガラスクロス経糸方向長さであり、具体的には、スジ状欠点を構成するシワ22の始点(
図3ではシワ22aの始点A2)からガラスクロス経糸方向と垂直な直線を引き、スジ状欠点を構成するシワ22の終点(
図3ではシワ22bの終点B2)からガラスクロス経糸方向と垂直な直線を引いたときの、当該直線同士の距離とする。そして、
図3のガラスクロスのスジ状欠点の長さ3Lは、31Lと32Lの和とする。なお、
図3において、シワ23は、シワ22bとの経糸方向の位置との関係で見たとき、重複する部分を有さず、ガラスクロス経糸方向の位置において他のシワと重複する部分を有さないことから、スジ状欠点とは無関係のシワであり、スジ状欠点を構成しない。なお、スジ状欠点を構成するシワの1個の長さとしては、例えば、100mm以上が挙げられる。また、スジ状欠点を構成するシワの1個の角度としては、経糸方向と平行な線に対して0°(すなわち、経糸方向と平行)が挙げられる。なお、上記シワの1個の長さは、シワの始点と終点とを直線で結んだときの当該直線の長さとする。また、上記シワの1個の角度は、シワの始点と終点を直線で結んだときの当該直線と経糸方向と平行な直線とがなす角(両方の直線が交点を有するように引いたときの直線同士がなす角)の小さい方とする。
【0012】
そして、スジ状欠点は、厚い汎用的なガラスクロスであれば、プリプレグに加工する際に樹脂を塗布してもプリプレグに欠点を生じさせない。しかし、低質量であるガラスクロスでは、樹脂を塗布してプリプレグとする場合の樹脂量が少ないことも起因して、スジ状欠点部分が突起となり得られるプリプレグは絶縁不良や外観不良といった問題を誘発しやすくなることを知得した。
【0013】
そこで、本発明は、上記問題を解決し、スジ状欠点の発生を抑制する、ガラスクロスの提供を主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者が上記課題を解決すべく検討したところ、開繊処理をおこなったときにスジ状欠点が発生することを突きとめた。具体的には、製織したガラスクロスを開繊処理するとき、経糸の開繊が不十分な部分が局所的に発生し、当該部分は緯糸のうねりが大きくなる。そして、ガラスクロスを開繊処理後ロールに通す際に幅入れが生じてしまうが当該部分に対して緯糸方向にかかる応力が集中し、スジ状欠点が生じることを知得した。この点、特許文献2に記載されているタテシワはプリプレグ製造時にガラスクロスに樹脂を含侵した際に発生するのに対し、本願のスジ状欠点はガラスクロス製造時に発生する点で、少なくとも異なる。また、ガラスクロスの製織においては、緯糸として数万~数十万mの長さを有するガラス糸巻き糸体であるパーンを準備し、緯糸をパーンから繰り出してエアージェット織機で打ち込み、緯糸を使い切れば順次パーンを交換して製織していく。ここで、本発明者は、上記スジ状欠点は、ガラスクロス経糸方向の位置的に緯糸とするパーンの交換周期毎に発生したり発生しなかったりする傾向があることも知得した。
【0015】
ここで、従来技術では、ガラスクロスを構成するガラス糸の糸幅を経糸と緯糸とで均一にするため、経糸を効率的に開繊することに着目されていた。すなわち、ガラスクロスの開繊処理においては、経糸は進行方向に対して張力が付与されており緯糸に対して広がりにくいことから、糸幅が経糸と緯糸とで不均一になりやすく、経糸を効率的に開繊することに着目されてきたのである。
【0016】
しかし、本発明者がスジ状欠点が生じたガラスクロスを観察したところ、スジ状欠点が生じた部分は、ガラスクロスを構成する緯糸が必要以上に開繊処理されており、ガラスクロス全体として隣接する緯糸間の隙間が不均一となることを突き止めた。
【0017】
そして、本発明者はさらに検討を重ね、開繊処理前のガラスクロスに緯糸が広がり過ぎた部分が部分的に存在すると、開繊処理時に加える物理的な衝撃において、経糸を開繊するために必要な衝撃が当該緯糸が広がり過ぎた部分へ分散してしまい、当該緯糸が広がり過ぎた部分にさらに必要以上に衝撃が付与されてしまい、隣接する緯糸間の隙間が不均一になること、また、これにより経糸の開繊が不十分な部分が発生することを突きとめた。
【0018】
そこで、本発明者等は、隣接する緯糸間の隙間を、従来達成できなかった均一性を有するものとすることにより、経糸の開繊が不十分な部分が発生することを低減させ、スジ状欠点の発生を抑制することができるのではないかと考えた。
【0019】
そして、本発明者は、ガラスクロス製織に用いる緯糸を集束性に優れたものとすることにより、開繊処理前のガラスクロスに緯糸が広がり過ぎた部分が部分的に存在することを低減させ、ガラスクロスを構成する隣接する緯糸間の隙間を均一にしたガラスクロスを製造できることを知得し、結果として開繊工程を経た軽量化された又は低誘電特性を備えるガラスクロスに発現するスジ状欠点が低減できることを突き止めた。
【0020】
そして、本発明者は、上記集束性に優れた緯糸は、ガラス繊維紡糸工程において、特定の幅を有するスリット構造の集束部材を用いて集束することにより初めて得られることを知得した。以下、具体的に説明する。
【0021】
図4は、従来の紡糸工程集束部材の模式図であり、
図4(A)は正面、背面、平面及び底面から見た図であり、
図4(B)は右側面及び左側面から見た図である。また、
図5は、ガラス糸とするガラスストランド(ガラスフィラメント束)を紡糸工程において製造するガラスフィラメント束製造装置の一例を示す模式的正面図である。
図4において、従来の集束部材5は、円柱状部5aと、円柱状部5aから紙面左右方向(側面方向に向かって)その外径が円柱状部外径から漸増するように延在する2つの円錐台状部5bから構成される。なお、円柱状部5aは長さ5Lを有する。
【0022】
図5において、紡糸装置200は、ノズル40から吐出したガラスフィラメントに集束剤を塗布する集束剤トレイ201と、ガラスフィラメントを所定数のガラスフィラメント束に束ねる集束機構202と、ガラスフィラメント束を綾振りする綾振り機構206と、ガラスフィラメント束を巻き取る巻取りローラ211とを備えている。集束剤トレイ201には、集束剤トレイ201に供給される集束剤と、該集束剤をピックアップし、該ピックアップされた集束剤にガラスフィラメントが接触することでガラスフィラメントに集束剤を付与するアプリケーター(図示しない。)が備えられる。なお、集束トレイ201等に代えて、スプレー噴射等により、ガラスフィラメントに集束剤を付与することもできる。集束機構202は、モータ等によって回転駆動される水平な集束軸203と、集束軸203に固定された複数の集束部材205とを有する。よって、ノズル40の貫通孔41から吐出された複数のガラスフィラメントは、集束軸203の回転とともに、2つの集束部材205それぞれによって2つの繊維束に分けられる。なお、集束部材205で2つの繊維束となる前に、各ガラスフィラメントは、集束剤が入った集束剤トレイ201に導入され、集束剤が塗布される。綾振り機構206は、モータ等によって回転駆動される水平な綾振り軸207と、3つの集束ローラ205それぞれに対応した綾振り部材209とを有する。3つの集束ローラ205で集束された各繊維束は、綾振り軸207の回転駆動により綾振り部材209により綾振りされ、巻取りローラ211に均等に巻き取られる。巻取りローラ211は、所定の回転軸を中心として回転しており、回転速さ及び回転駆動力等が調整される。これにより、ノズル40から吐出する溶融ガラスの紡糸張力(引張張力)及び紡糸速度が調整されて繊維束が巻き取られる。そして、得られたガラスフィラメント束を用いて、リング撚糸機等により撚糸し、ガラス糸とする(当該ガラス糸をボビンに巻き付けパーンとする。)。
【0023】
ここで、本発明者は、
図4に示す従来の集束部材を用いてガラスフィラメント束を製造した場合、当該ガラスフィラメント束の幅が比較的大きいものとなり、また、綾振りされることによりガラスフィラメント束にかかる張力が変動し、ガラスフィラメント束の幅が不均一になりやすくなることを知得した。そして本発明者はガラスフィラメント束の幅の均一性に改善の余地があることを突きとめた。
【0024】
そこで、本発明者が鋭意検討し、集束性に優れた緯糸は、
図6に例示する、特定の幅を有するスリット構造の集束部材を用いて集束することにより初めて得られ、これを緯糸として用いて製織することで、ガラスクロスを構成する隣接する緯糸間の隙間を均一にしたガラスクロスを製造できることを知得し、開繊工程を経た低質量であるガラスクロスに発現するスジ状欠点が低減できることを突き止めた。
【0025】
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1.シランカップリング剤で表面処理されたガラスクロスであって、前記ガラスクロスの質量が6.0~13.0g/m2であり、前記ガラスクロスの経糸及び緯糸の織密度が90~120本/25mmであり、前記ガラスクロスの緯糸の糸幅平均値が120~220μmであり、前記ガラスクロスの隣接する緯糸間の隙間の平均値と標準偏差から求まる緯糸隙間変動係数(標準偏差/平均値×100%)が15~35%である、ガラスクロス。
項2.前記隣接する緯糸間の隙間の平均が60~120μmである請求項1記載のガラスクロス。
【発明の効果】
【0026】
本発明のガラスクロスによれば、シランカップリング剤で表面処理されたガラスクロスであって、前記ガラスクロスの質量が6.0~13.0g/m2であり、前記ガラスクロスの経糸及び緯糸の織密度が90~120本/25mmであり、前記ガラスクロスの緯糸の糸幅平均値が120~220μmであり、前記ガラスクロスの隣接する緯糸間の隙間の平均値と標準偏差から求まる緯糸隙間変動係数(標準偏差/平均×100%)が15~35%であるであることから、スジ状欠点の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】スジ状欠点の一例について説明する模式図である。
【
図2】スジ状欠点の一例について説明する模式図である。
【
図3】スジ状欠点の一例について説明する模式図である。
【
図4】従来の紡糸工程集束部材の模式図であり、
図4(A)は正面、背面、平面及び底面から見た図であり、
図4(B)は右側面及び左側面から見た図である。
【
図5】ガラス糸とするガラスストランド(ガラスフィラメント束)を紡糸工程において製造するガラスフィラメント束製造装置の一例を示す模式的側面図である。
【
図6】特定の幅を有するスリット構造の集束部材の一例を示す模式図であり、
図6(A)は模式的平面図、
図6(B)は模式的底面図、
図6(C)は模式的正面図(すなわち、
図6(A)においては紙面上側が正面側であり、紙面下側が背面側である。)、
図6(D)は模式的背面図、
図6(E)は模式的右側面図、
図6(F)は模式的左側面図である。
【
図7】
図6(A)の部分拡大図であり、スリット構造の集束部材によってガラスフィラメントが集束される様子を説明する図である。
【
図8】ガラス糸とするガラスストランド(ガラスフィラメントの束)を紡糸工程において製造するガラスフィラメント束製造装置の一例を示す模式的正面図である。
【
図9】ガラス糸とするガラスストランド(ガラスフィラメントの束)を紡糸工程において製造するガラスフィラメント束製造装置の一例を示す模式的正面図である。
【
図10】経糸及び緯糸の開繊度について説明する模式図であり、
図10(a)は、経糸中において、仮想的にフィラメントが幅方向に隙間なく一列に配置された態様を例示する横断面模式図であり、
図10(b)は実際の隣接する経糸の一態様を例示する横断面模式図であり、
図10(c)は、緯糸中において、仮想的にフィラメントが幅方向に隙間なく一列に配置された態様を例示する横断面模式図であり、
図10(d)は、実際の隣接する緯糸の一態様を例示する横断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明のガラスクロスは、シランカップリング剤で表面処理されたガラスクロスであって、前記ガラスクロスの質量が6.0~13.0g/m2であり、前記ガラスクロスの経糸及び緯糸の織密度が90~120本/25mmであり、前記ガラスクロスの緯糸の糸幅平均値が120~220μmであり、前記ガラスクロスの隣接する緯糸間の隙間の平均値と標準偏差から求まる緯糸隙間変動係数(標準偏差/平均×100%)が15~35%である。以下、本発明のガラスクロスについて詳述する。
【0029】
[ガラス材料]
本発明のガラスクロスにおいて、ガラスフィラメント及びガラス糸を構成するガラス材料としては、特に制限されない。例えば、Eガラス、Tガラス、Sガラス、UTガラス、Dガラス、NEガラス、Lガラス、ユニチカ株式会社製商品名LUガラス、Cガラス、または、ARガラス等が挙げられる。
【0030】
汎用性の観点からは、Eガラス組成を備えるガラスフィラメントを用いることが好ましい。前記Eガラス組成は、ガラスフィラメントの全量に対し、52~56質量%の範囲のSiO2と、5~10質量%の範囲のB2O3と、12~16質量%の範囲のAl2O3と、合計で20~25質量%の範囲のCaO及びMgOと、合計で0~1質量%の範囲のLi2O、K2O及びNa2Oとを含む組成である。
【0031】
また、プリプレグ及びプリント配線板の強度をより高めるという観点からは、前記ガラスフィラメントとしては、ガラスフィラメントの全量に対し60~66質量%の範囲のSiO2と、20~26質量%の範囲のAl2O3と、10~15質量%の範囲のMgOとを含む、ガラス材料からなることが好ましい。
【0032】
また、プリプレグ及びプリント配線板の誘電率及び誘電正接を低減するという観点からは、前記ガラスフィラメントとしては、ガラスフィラメントの全量に対し45~60質量%の範囲のSiO2と、15~35質量%の範囲のB2O3と、10~20質量%の範囲のAl2O3とを含む、ガラス材料からなることが好ましく、ガラスフィラメントの全量に対し45~55質量%の範囲のSiO2と、20~35質量%の範囲のB2O3と、10~20質量%の範囲のAl2O3とを含む、ガラス材料からなることがより好ましい。
【0033】
なお、本発明においてガラス組成は、ICP発光分光分析法により測定する。具体的には、Si含量及びB含量は、秤取したガラスクロスサンプルを炭酸ナトリウムで融解したのち、希硝酸で溶解して定容し、得られたサンプルをICP発光分光分析法により測定して得る。また、Fe含量は、秤取したガラスクロスサンプルをアルカリ溶解法により溶解して定容し、得られたサンプルをICP発光分光分析法により測定して得る。さらに、Al含量、Ca含量、及びMg含量は、秤取したガラスクロスサンプルを硫酸、硝酸及びフッ化水素により加熱分解した後、希硝酸で溶解して定容し、得られたサンプルをICP発光分光分析法により測定して得る。なお、ICP発光分光分析装置としては、サーモフィッシャー社製iCAP6300Duoを用いることができる。
【0034】
[ガラスクロス]
本発明のガラスクロスは、質量が6.0~13.0g/m2であり、6.5~12.7g/m2が好ましく、6.9~12.6g/m2がより好ましく、6.9~12.5g/m2がさらに好ましい。ここで、上記ガラスクロスの質量は、日本工業規格JIS R 3420:2013(ガラス繊維一般試験方法)の「7.2 クロス及びマットの質量(質量)」に規定されている方法に準じて測定する。
【0035】
本発明のガラスクロスは、経糸及び緯糸の織密度が90~120本/25mmであり、92~117本/25mmが好ましく、94~116本/25mmがより好ましい。なお、ガラスクロスにおける経糸の織密度は、緯糸の織密度と同じであってもよく、異なっていてもよい。ここで、本発明において、経糸及び緯糸の織密度は、日本工業規格JIS R 3420:2013(ガラス繊維一般試験方法)の「7.9 密度(織り密度)」に規定されている方法に従い、測定、算出される値である。
【0036】
本発明のガラスクロスは、緯糸の糸幅平均値が120~220μmであり、125~200μmが好ましく、130~190μmがより好ましい。本発明において、緯糸の糸幅平均値は次のような方法で求められる。すなわち、ガラスクロスを20cm×20cmにカットし、光学顕微鏡等で平面方向から観察し、緯糸を25本任意に選択する。選択した緯糸25本それぞれについて、緯糸の端から長さ方向に1cmの箇所の糸幅を測定し、その地点から緯糸の長さ方向に1cm毎に測定を残り18回繰り返し、合計19か所の糸幅を測定する。次いで、当該19か所の糸幅の値の相加平均値を求める。これを選択した緯糸25本についておこない、緯糸25本それぞれで求められる糸幅の値の相加平均値をさらに相加平均して得られる値を緯糸の糸幅平均値とする。前記緯糸の糸幅平均値は、後述する製造方法により得られるガラス糸を緯糸として用いて、使用するガラス糸の番手やフィラメント本数を調整したり、開繊工程において糸幅を調整したりすることにより前記数値範囲に調整することができる。
【0037】
本発明のガラスクロスは、ガラスクロスの隣接する緯糸間の隙間の平均値と標準偏差から求まる緯糸隙間変動係数(標準偏差/平均値×100%)が15~35%であり、18%~33%がより好ましく、19%~32%がさらに好ましい。本発明において、ガラスクロスの隣接する緯糸間の隙間の平均値及び標準偏差は次のように測定する。すなわち、ガラスクロスにおいて、任意に選ばれた3箇所から、緯糸が隙間が連続して100箇所ずつ観察できる大きさにカットし、サンプルとする。次いで、該サンプルについて、マイクロスコープを用い、倍率150倍で隙間間隔の観察、測定をおこなう。具体的に、ガラスクロス平面の法線方向から、クロス経方向が同一直線上に連続する隙間間隔100箇所ずつについて観察する。それを上記任意に選ばれた3箇所についておこない、合計300箇所測定し、当該300箇所の平均値を上記平均値とする。また、標準偏差は、測定した上記300箇所それぞれの値から、Microsoft ExcelのSTDEV.S関数を用いて算出する。
【0038】
また、本発明のガラスクロスにおいて、前述したガラスクロスの隣接する緯糸間の隙間の平均値としては、50~150μmが挙げられ、50~120μmが好ましく、60~110μmがより好ましい。また、ガラスクロスの隣接する緯糸間の隙間の標準偏差としては、10~30μmが挙げられ、10~25μmが好ましい。
【0039】
本発明のガラスクロスは、緯糸の開繊度が80~120%であることが挙げられ、85~115%であることが好ましく、95~115%がより好ましい。なお、本発明において、開繊度は下記式(1)により算出する。
開繊度(%)={(25×1000)/WD-I}/(D×N)×100 (1)
WD:経糸または緯糸の織密度(本/25mm)
I:隣接する経糸間または緯糸間の隙間の平均値(μm)
D:経糸または緯糸の平均フィラメント直径(μm)
N:経糸または緯糸の平均フィラメント本数(本)
【0040】
本発明において、上記開繊度は、仮想的にガラス糸中においてフィラメントが幅方向に隙間なく一列に配置されたガラス糸幅に対する、隣接するガラス糸間の隙間の平均値及び該ガラス糸の織密度から計算される実際のガラス糸幅の比率によって評価する。具体的に、
図10を用いて説明する。
【0041】
図10(a)は、経糸中において、仮想的にフィラメントが幅方向に隙間なく一列に配置された態様を例示する横断面模式図であり、
図10(b)は実際の隣接する経糸の一態様を例示する横断面模式図であり、
図10(c)は、緯糸中において、仮想的にフィラメントが幅方向に隙間なく一列に配置された態様を例示する横断面模式図であり、
図10(d)は、実際の隣接する緯糸の一態様を例示する横断面模式図である。なお、
図10においては、説明のため、仮に、経糸のフィラメント本数を8本、緯糸のフィラメント本数を10本としている。
【0042】
図10(a)及び(c)において、ガラス糸1は、仮想的にフィラメント6が幅方向に隙間なく一列に配置されている。そして、
図10(a)及び(c)中、LVA及びLVBは、「仮想的にフィラメントが幅方向に隙間なく一列に配置されたガラス糸幅」を示し、平均フィラメント径×フィラメント本数(D×N)により計算される。
【0043】
図10(b)及び(d)中、LA及びLBは、経糸及び緯糸の実際の糸幅を示し、以下のように計算される。すなわち、LAは、経糸の織密度(WDA(本/25mm))と隣接する経糸間の隙間の平均値IAを測定し、該織密度から、経糸の糸幅と隣接する経糸間の隙間の平均値との合計(LA+IA)を算出(LA+IA=(25×1000)/WDA)し、該経糸の糸幅と隣接する経糸間の隙間の平均値との合計から、隣接する経糸間の隙間の平均値IAを減じる((LA+IA)-IA)ことにより、計算される。また、LBは、緯糸の織密度(WDB(本/25mm))と隣接する緯糸間の隙間の平均値IBを測定し、該織密度から、緯糸の糸幅と隣接する緯糸間の隙間の平均値との合計(LB+IB)を算出(LB+IB=(25×1000)/WDB)し、該緯糸の幅と隣接する緯糸間の隙間の平均値との合計から、隣接する緯糸間の隙間の平均値IBを減じる((LB+IB)-IB)ことにより、計算される。
【0044】
そして、開繊度は、仮想的にフィラメントが幅方向に隙間なく一列に配置されたガラス糸幅に対する、隣接するガラス糸間の隙間間隔及び該ガラス糸の織密度から計算される実際のガラス糸幅の比率であり、例えば、
図10中、経糸の開繊度(%)は、LA/LVA×100によって計算され、緯糸の開繊度(%)は、LB/LVB×100によって計算される。すなわち、例えば、開繊度が100%を超えるものであれば、仮想的にガラス糸中においてフィラメントが幅方向に隙間なく一列に配置されたガラス糸よりも、実際のガラス糸の方が開繊していることを示し(例えば、
図10(d)参照。)、開繊度が100%未満のものであれば、仮想的にガラス糸中においてフィラメントが幅方向に隙間なく一列に配置されたガラス糸よりも、実際のガラス糸が開繊していない(集束する方向、例えば
図10(b)参照。)ことを示す。
【0045】
本発明のガラスクロスは、経糸の糸幅平均値が100~200μmが好ましく、100~150μmがより好ましく、110~140μmがさらに好ましい。本発明において、経糸の糸幅平均値は次のような方法で求められる。すなわち、ガラスクロスを20cm×20cmにカットし、光学顕微鏡等で平面方向から観察し、経糸を25本任意に選択する。選択した経糸25本それぞれについて、経糸の端から長さ方向に1cmの箇所の糸幅を測定し、その地点から経糸の長さ方向に1cm毎に測定を残り18回繰り返し、合計19か所の糸幅を測定する。次いで、当該19か所の糸幅の値の相加平均値を求める。これを選択した緯糸25本についておこない、経糸25本それぞれで求められる糸幅の値の相加平均値をさらに相加平均して得られる値を経糸の糸幅平均値とする。前記経糸の糸幅平均値は、使用するガラス糸の番手やフィラメント本数を調整したり、製織工程において前記経糸の張力を特定範囲に調整して製織したりすることにより前記数値範囲に調整することができる。
【0046】
本発明のガラスクロスは、ガラスクロスの隣接する経糸間の隙間の平均値としては、60~150μmが挙げられ、90~140μmが好ましく、100~135μmがより好ましい。本発明において、ガラスクロスの隣接する経糸間の隙間の平均値は次のように測定する。すなわち、ガラスクロスにおいて、任意に選ばれた3箇所から、経糸が隙間が連続して100箇所ずつ観察できる大きさにカットし、サンプルとする。次いで、該サンプルについて、マイクロスコープを用い、倍率150倍で隙間間隔の観察、測定をおこなう。具体的に、ガラスクロス平面の法線方向から、クロス緯方向それぞれ同一直線上に連続する隙間間隔100箇所ずつについて観察する。それを上記任意に選ばれた3箇所についておこない、合計300箇所測定し、当該300箇所の平均値を上記平均値とする。
【0047】
本発明のガラスクロスは、経糸の開繊度が60~120%であることが挙げられ、70~120%が好ましく、70~115%であることがより好ましく、70~100%がさらに好ましい。経糸の開繊度は前述した方法にて測定できる。
【0048】
本発明のガラスクロスを構成する経糸及び緯糸における、ガラスフィラメントの平均直径としては特に制限されないが、ガラスクロスの厚さをより薄くするという観点から、例えば、2~7μmが挙げられ、2.5~5.5μmが好ましく挙げられ、2.8~5μmがより好ましく挙げられ、3.0~4.5μmがさらに好ましく挙げられ、3.1~4.2μmが特に好ましく挙げられ、3.2~4.1μmが一層好ましく挙げられる。また、本発明のガラスクロスにおいて、経糸及び緯糸を構成するガラスフィラメントの本数としては特に制限されないが、ガラスクロスの厚さをより薄くするという観点から、例えば、20~200本が挙げられ、20~100本が好ましく挙げられ、20~55本がより好ましく挙げられ、30~55本がより好ましく挙げられる。ここで、ガラスフィラメントの平均直径及び本数は、次のように測定、算出されるものである。すなわち、測定対象となるガラスクロスを30cm角にカットしたものを2枚用意し、一方を経糸観察用、他方を緯糸観察用として、それぞれをエポキシ系冷間埋設樹脂に包埋して硬化さる。次いで、エポキシ系冷間埋設樹脂に包埋させたガラスクロスを、経糸又は緯糸が観察可能な程度に研磨し、SEMを用い、平均直径は倍率2000倍で、本数は倍率500倍で観察、測定をおこなう。
(1)ガラスフィラメントの平均直径(μm)
経糸及び緯糸それぞれについて無作為に30本ずつ選び、該30本の経糸及び緯糸中の全ガラスフィラメントの断面における直径(最も大きい部分)を測定して相加平均値を算出し、経糸及び緯糸におけるガラスフィラメントの平均直径とする。
(2)本数(本)
経糸及び緯糸それぞれについて無作為に30本ずつ選び、該30本の経糸及び緯糸中の全フィラメント数を測定して相加平均値を算出し、経糸及び緯糸におけるガラスフィラメントの本数とする。
【0049】
また、本発明のガラスクロスにおいて、経糸及び緯糸の番手は特に制限されないが、ガラスクロスの厚さをより薄くするという観点から、例えば、0.5~12texが好ましく挙げられ、0.5~5texが好ましく挙げられ、0.5~3texがより好ましく挙げられ、0.5~2texがさらに好ましく挙げられ、0.5~1.8texが特に好ましく挙げられ、0.7~1.5texが一層好ましく挙げられる。なお、ガラスクロスにおける経糸の番手は、緯糸の番手と同じであってもよく、異なっていてもよい。また、本発明において、ガラスクロスにおける経糸及び緯糸の番手は、日本工業規格JIS R 3420:2013(ガラス繊維一般試験方法)の「7.1 番手」に規定されている方法に従い、測定、算出される値である。
【0050】
また、本発明のガラスクロスの織組織としては、特に制限されないが、例えば、平織、朱子織、綾織、斜子織、畦織などが挙げられる。中でも、平織が好ましい。
【0051】
本発明のガラスクロスの厚さは特に制限されないが、例えば、20μm以下が挙げられ、16μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましい。下限値としては、例えば、5μm以上が挙げられ、6μm以上が好ましく、7μm以上がより好ましく、8μm以上がさらに好ましく、9μm以上が特に好ましい。本発明のガラスクロスの厚さとして、具体的には、5μm以上20μm以下、好ましくは5μm以上16μm以
下、より好ましくは6μm以上15μm以下、さらに好ましくは7μm以上15μm以下、さらに好ましくは8μm以上15μm以下、特に好ましくは9μm以上15μm以下が挙げられる。ここで、上記ガラスクロスの厚さは、日本工業規格JIS R3420:2013(ガラス繊維一般試験方法)の「7.10.1 クロスの厚さ」に規定されているB法に準じ、最小表示値が0.001mmである電子式マイクロメータを用いて測定する。
【0052】
本発明のガラスクロスは、シランカップリング剤で表面処理されてなる。シランカップリング剤としては、不飽和二重結合を有するシランカップリング剤が好ましく、下記の一般式(1)で示されるシランカップリング剤が好ましい。
【0053】
【化1】
式(1)中、Xは、マトリックス樹脂との接着が強くなる観点から、少なくとも一つの不飽和二重結合基を有する有機官能基が含まれる。不飽和二重結合基としては、ビニル基、アリル基が好適に挙げられる。は、各々独立して、アルコキシ基であり、nは1以上3以下の整数であり、Rは、各々独立して、メチル基、エチル基、及びフェニル基からなる群より選ばれる基である。Xの有機官能基には、アミノ基が含まれていてもよい。アミノ基としては、第一級アミンの基(-NH
2)、第二級アミンの基(-NH-)、第三級アミンの基(-N<)であってもよく、これら第一級~第三級のアミンの基のいずれも包含する。上記のアルコキシ基Yとしては、何れの形態も使用できるが、ガラスクロスへの安定処理化のためには、炭素数5以下のアルコキシ基が好ましい。
【0054】
シランカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン及びその塩酸塩、N-β-(N-ジ(ビニルベンジル)アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩、N-β-(N-ジ(ビニルベンジル)アミノエチル)-N-γ-(N-ビニルベンジル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
とりわけ、本発明のガラスクロスは、アクリル基又はメタクリル基を有するシランカップリング剤を含むことが好ましい。アクリル基又はメタクリル基を有するシランカップリング剤としては、下記一般式(2)で示される化合物が挙げられる。
【0056】
【化2】
一般式(2)中、R
3は水素原子又はメチル基を示す。一般式(2)中、R
4は、炭素数1~6のアルキレン基である。R
4として、好ましくは炭素数1~4のアルキレン基、より好ましくは炭素数2~4のアルキレン基、更に好ましくは炭素数3のアルキレン基が挙げられる。R
4のアルキレン基は直鎖状又は分岐状のいずれであってもよいが、好ましくは分岐状である。一般式(2)中、R
5及びR
6は、それぞれ独立に炭素数1~5のアルキル基を示す。R
5及びR
6として、好ましくは炭素数1~3のアルキル基、より好ましくは炭素数1又は2のアルキル基、更に好ましくはメチル基が挙げられる。一般式(2)中、mは、0以上2以下の整数を示す。mとして、好ましくは0又は1、より好ましくは0が挙げられる。
【0057】
アクリル基又はメタクリル基を有するシランカップリング剤として、具体的には、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(一般式(2)において、R3がH、R4が-C3H6-、mが0、R6が-CH3である化合物)、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(一般式(2)において、R3が-CH3、R4が-C3H6-、mが0、R6が-CH3である化合物)、3-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(一般式(2)において、R3がH、R4が-C3H6-、mが1、R5及びR6が-CH3である化合物)、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(一般式(2)において、R3が-CH3、R4が-C3H6-、mが1、R5及びR6が-CH3である化合物)、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン(一般式(2)において、R3がH、R4が-C3H6-、mが0、R6が-C2H5である化合物)、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(一般式(2)において、R3が-CH3、R4が-C3H6-、mが0、R6が-C2H5である化合物)等が例示される。これらの中でも、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、及び3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0058】
(B)アクリル基又はメタクリル基を有するシランカップリング剤と、アミノ基又はビニル基を有するシランカップリング剤との併用は、プリプレグとする際のマトリックス樹脂との密着性がより向上しやすくなる点で好ましい。
【0059】
アミノ基を含む有機官能基を有するシランカップリング剤としては、下記一般式(3)で示される化合物及びその塩が挙げられる。
【0060】
【0061】
一般式(3)中、Xは、1つ以上のアミノ基を有する有機官能基を示す。一般式(3)中、pは0以上2以下の整数を示す。pとして、好ましくは0又は1、より好ましくは0が挙げられる。一般式(3)中、R7及びR8は、それぞれ独立に炭素数1~5のアルキル基を示す。R7及びR8として、好ましくは炭素数1~3のアルキル基、より好ましくは炭素数1又は2のアルキル基が挙げられる。
【0062】
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、具体的には、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン及びその塩酸塩、N-β-(N-ベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩、N-β-(N-ベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン及びその塩酸塩、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン等の単体化合物、又はこれらの混合物が挙げられる。これらの内、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン及びその塩酸塩、N-β-(N-ベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩、N-β-(N-ベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン及びその塩酸塩がより好ましい。
【0063】
ビニル基又はスチリル基を有するシランカップリング剤としては、下記一般式(4)で示される化合物が挙げられる。
【0064】
【0065】
一般式(4)中、Yは、ビニル基又はスチリル基を1つ以上含む有機官能基を示す。一般式(4)中、R9は炭素数1~8のアルキル基であり、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、またはt-ブチル基であることが好ましい。また、一般式(4)中、OR10は置換基を有していてもよい炭素数1~8のアルコキシ基であり、メトキシ基、エトキシ基、またはメトキシエトキシ基であることが好ましい。一般式(4)中、nは0~2の整数であり、0であることが好ましい。
【0066】
ビニル基又はスチリル基を有するシランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、スチリルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0067】
本発明のガラスクロスは、後述する原料ガラス糸を緯糸として用いて製織する工程を含む製造方法により得ることができる。
【0068】
本発明のガラスクロスの製造方法において、ガラスクロスの製織方法としては、従来公知の任意の方法を採用すればよく、例えば、経糸を整経工程及び糊付工程を施した後、ジェット織機(例えば、エアージェット織機、ウォータージェット織機等)、スルザー織機、レピヤー織機等を用いて後述する原料ガラス糸を緯糸として打ち込むことが挙げられる。
【0069】
ガラスクロスの厚さをより薄くしながら、隣接する経糸間及び緯糸間の隙間間隔をより効率的に小さくするという観点から、開繊処理を施すのが好ましい。開繊処理する方法としては、例えば、得られたガラスクロスに水流の圧力による開繊処理、水(例えば脱気水、イオン交換水、脱イオン水、電解陽イオン水又は電解陰イオン水等)等を媒体とした高周波振動による開繊処理、ロールによる加圧での加工処理等が挙げられる。かかる開繊処理は織成と同時に行ってもよいし、織成後に行ってもよい。後述するヒートクリーニング前或いは後若しくはヒートクリーニングと同時に行ってもよいし、後述する表面処理と同時に若しくは後に行ってもよい。
【0070】
経糸及び緯糸の開繊度を前述した範囲とするには、開繊処理として、ガラスクロスの張力を経方向が10~60N/mとしながら水流加工による開繊処理をおこなうことが好ましく挙げられる。開繊処理時にガラスクロスにかかる張力の測定は、フィルム分野で一般的に使用される張力検出器を用いた張力検出方法によることが好ましい。該張力検出方法においては、ガイドロール2つ(以下、ガイドロールX、ガイドロールYという。)と張力検出用ロール1つを左右対称になるように二等辺三角形の頂点に配置し、ガラスクロスがガイドロールX、張力検出用ロール、ガイドロールYの順に通るようにセットする。張力検出用ロールにおいては、ガイドロールX側に働く張力、ガイドロールY側に働く張力、及び該張力検出用ロールに働く重力の合力が荷重として該張力検出用ロールに作用するので、該張力検出用ロールにセットした荷重センサーの測定値から計算によってガラスクロスにかかる張力を求めることができる。
【0071】
織成したガラスクロスに、集束剤等、基板とする際のマトリックス樹脂の密着性、含浸性を阻害する物質が付着している場合は、例えば、ヒートクリーニング処理等により該物質を除去するのが好ましい。そして、ヒートクリーニング処理したガラスクロスに前述したシランカップリング剤で表面処理を施す。かかる表面処理手段は、従来公知の手段でよく、例えば、シランカップリング剤をガラスクロスに含浸する方法、塗布する方法、スプレーする方法等が挙げられる。
【0072】
<本発明のガラスクロスを製織する際に緯糸として用いる原料ガラス糸の製造方法>
図4は、従来の紡糸工程における集束部材の模式図であり、
図6は、本発明のガラスクロスを製織する際に緯糸として用いる原料ガラス糸を製造する際に用いる、スリット構造の集束部材の一例について説明する模式図であり、
図6(A)は模式的平面図、
図6(B)は模式的底面図、
図6(C)は模式的正面図(すなわち、
図6(A)においては紙面上側が正面側であり、紙面下側が背面側である。)、
図6(D)は模式的背面図、
図6(E)は模式的右側面図、
図6(F)は模式的左側面図である。また、
図7は、
図6(A)の部分拡大図であり、スリット構造の集束部材8によってガラスフィラメント6が集束される様子を説明する図である。また、
図8は、ガラス糸とするガラスストランド7(ガラスフィラメント6の束)を紡糸工程において製造するガラスフィラメント束製造装置の一例を示す模式的正面図である。
図8においては、前述した
図5の集束部材5が
図6及び
図7に示す集束部材8に置き換えられており、
図8における集束部材8は
図6(C)に示す正面方向と一致した方向として備えられている。
【0073】
前述のように、本発明者は、
図4に示す従来の集束部材を用いてガラスフィラメント束を製造した場合、当該ガラスフィラメント束の幅が比較的大きいものとなり、また、綾振りされることによりガラスフィラメント束にかかる張力が変動し、ガラスフィラメント束の幅が不均一になりやすくなることを知得した。
【0074】
そこで、本発明者は鋭意検討し、
図6及び
図7に示す、スリット構造の集束部材8を用いてガラスフィラメント束を紡糸することにより、前述した本発明のガラスクロスを製織する際に緯糸として用いる原料ガラス糸を製造することができることを見出した。
【0075】
図6及び
図7を参照して、本発明のガラスクロスを製織する際に緯糸として用いる原料ガラス糸を製造可能とするスリット構造の集束部材の一実施態様について説明する。
【0076】
図6及び
図7のスリット構造の集束部材8は、スリットを備えている。
図6及び
図7に示す態様では、スリットは平面方向から見てU字状に設けられており、上面(
図6Aに示す面)から下面(
図6(F)に示す面)に向かって連通している。
図6(A)、(D)及び
図7に示す態様では、スリットの先端は平面方向から見て円形に面取りされている。平面方向から見たスリットの幅(
図6Aにおけるスリットの横方向長さ)としては、下記式(3)を満足するようにすることが好ましい。
(D×N)×0.5≦スリットの幅(μm)≦(D×N)×1.5 ・・・(3)
D:経糸または緯糸の平均フィラメント直径(μm)
N:経糸または緯糸の平均フィラメント本数(本)
【0077】
以上のように、集束部材をスリット構造を有するものとし、当該スリットの幅が上記式(3)を満足するような小さいものとすることにより、前述した本発明のガラスクロスを製織する際に緯糸として用いる原料ガラス糸を製造することができる。
【0078】
図8を参照してより詳細に説明すると、紡糸装置200は、ノズル40から吐出したガラスフィラメントに集束剤を塗布する集束剤トレイ201と、ガラスフィラメントを所定数のガラスフィラメント束に束ねる集束部材8と、ガラスフィラメント束を綾振りする綾振り機構206と、ガラスフィラメント束を巻き取る巻取りローラ211とを備えている。集束剤トレイ201には、集束剤トレイ201に供給される集束剤と、該集束剤をピックアップし、該ピックアップされた集束剤にガラスフィラメントが接触することでガラスフィラメントに集束剤を付与するアプリケーター(図示しない。)が備えられる。なお、集束トレイ201等に代えて、スプレー噴射等により、ガラスフィラメントに集束剤を付与することもできる。集束部材8は前述したとおりである。集束部材8で集束されたフィラメント6の束7は、綾振り軸207の回転駆動により綾振り部材209により綾振りされ、巻取りローラ211に均等に巻き取られる。巻取りローラ211は、所定の回転軸を中心として回転しており、回転速さ及び回転駆動力等が調整される。これにより、ノズル40から吐出する溶融ガラスの紡糸張力(引張張力)及び紡糸速度が調整されて繊維束が巻き取られる。そして、得られたガラスフィラメント束を用いて、リング撚糸機等により撚糸し、原料ガラス糸とする。
【0079】
スリット構造の集束部材8は、
図9に例示するように、ガラスフィラメントを一旦従来の集束部材5で集束させた後に当該集束させたガラスフィラメント束7が当該集束部材8を通過するように配置することもできる。
【0080】
<本発明のガラスクロスの用途>
本発明のガラスクロスは、プリント配線板用プリプレグ及びプリント配線板に用いることができる。すなわち、本発明のガラスクロスを含むプリント配線板用プリプレグ、又は本発明のガラスクロスを含むプリント配線板を提供することができる。
【実施例0081】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
【0082】
<測定方法等>
1.原料ガラス糸におけるガラスフィラメントの平均直径(μm)及び本数(本)
製造例で準備した原料ガラス糸を用い、ガラスフィラメントの平均直径は、日本工業規格JIS R 3420 :2013の「ガラス繊維一般試験方法」の「7.6 単繊維直径」のB法(横断面法)に規定されている方法に従って、測定、算出した。具体的には、製造した原料ガラス糸をエポキシ系冷間埋設樹脂(ストルアス株式会社製商品名エポキシ樹脂スペシフィックス-40)に包埋して硬化させて硬化物を得た。次いで、エポキシ系冷間埋設樹脂に包埋した原料ガラス糸が観察可能な程度に硬化物を研磨し、走査電子顕微鏡(SEM)(日本電子株式会社製商品名JSM-6390A)を用い、平均直径は倍率2000倍で、本数は倍率500倍で観察、測定をおこなった。無作為に原料ガラス糸を30本選び、該原料ガラス糸30本中の全ガラスフィラメントの断面における直径(最も大きい部分)を測定して相加平均値を算出し、原料ガラス糸におけるガラスフィラメントの平均直径とした。また、原料ガラス糸のガラスフィラメント本数(相加平均値)は、当該ガラスフィラメントの平均直径の測定において測定した。
【0083】
2.原料ガラス糸の番手(tex)
製造例で準備した原料ガラス糸を用い、日本工業規格JIS R 3420 :2013(ガラス繊維一般試験方法)の「7.1 番手」に規定されている方法に従い、測定、算出した。具体的には、先ず、原料ガラス糸が捲きつけられたボビンから500mの原料ガラス糸を採取し、これを試験片とした。試験片を平らに置いてオーブンに入れて、105℃で60分間乾燥した後に、デシケーター中で放冷して、試験片の質量を測定した。以下の式に従って番手を算出した。
t=(m/500)×1000
t:番手
m:試験片の質量(g)
【0084】
3.ガラスクロスを構成する経糸及び緯糸の、ガラスフィラメントの平均直径(μm)及び本数(本)
実施例、比較例で得られたガラスクロスについて、30cm角にカットしたものを2枚用意し、一方を経糸観察用、他方を緯糸観察用として、それぞれをエポキシ系冷間埋設樹脂(ストルアス株式会社製商品名エポキシ樹脂スペシフィックス-40)に包埋して硬化させ、経糸、緯糸が観察可能な程度に研磨し、走査電子顕微鏡(SEM)(日本電子株式会社製商品名JSM-6390A)を用い、平均直径は倍率2000倍で、本数は倍率500倍で観察、測定をおこなった。
(i)ガラスフィラメントの平均直径(μm)
経糸、緯糸それぞれについて無作為に30本ずつ選び、該30本の経糸及び緯糸中の全ガラスフィラメントの断面における直径(最も大きい部分)を測定して相加平均値を算出し、経糸及び緯糸におけるガラスフィラメントの平均直径とした。
(ii)本数(本)
経糸、緯糸それぞれについて無作為に30本ずつ選び、30本の経糸及び緯糸中の全フィラメント数を測定して相加平均値を算出し、経糸及び緯糸におけるガラスフィラメントの本数とした。
【0085】
4.ガラスクロスにおける経糸及び緯糸の番手(tex)
実施例、比較例で得られたガラスクロスを用い、日本工業規格JIS R 3420:2013(ガラス繊維一般試験方法)の「7.1 番手」に規定されている方法に従い、測定、算出した。具体的には、先ず、ガラスクロスから500m分の経糸及び緯糸をそれぞれ採取し、これらを試験片とした。試験片を平らに置いてオーブンに入れて、105℃で60分間乾燥した後に、デシケーター中で放冷して、試験片の質量を測定した。以下の式に従って番手を算出した。
t=(m/500)×1000
t:番手
m:試験片の質量(g)
【0086】
5.経糸及び緯糸の糸幅平均値(μm)
ガラスクロスを20cm×20cmにカットし、光学顕微鏡等で平面方向から観察し、経糸及び緯糸を25本任意に選択した。選択した経糸25本及び緯糸25本それぞれについて、経糸及び緯糸の端から長さ方向に1cmの箇所の糸幅を測定し、その地点から経糸及び緯糸の長さ方向に1cm毎に測定を残り18回繰り返し、合計19か所の糸幅を測定した。次いで、当該19か所の糸幅の値の相加平均値を求めた。これを選択した経糸25本及び緯糸25本についておこない、経糸25本及び緯糸25本それぞれで求められる糸幅の値の相加平均値をさらに相加平均して得られる値を経糸及び緯糸の糸幅平均値とした。
【0087】
6.隣接する経糸間の隙間の平均値及び隣接する緯糸間の隙間の平均値(μm)
ガラスクロスにおいて、任意に選ばれた3箇所から、経糸及び緯糸が隙間が連続して100箇所ずつ観察できる大きさにカットし、サンプルとした。次いで、該サンプルについて、マイクロスコープを用い、倍率150倍で隙間間隔の観察、測定をおこなう。具体的に、ガラスクロス平面の法線方向から、クロス経方向及び緯方向が同一直線上に連続する隙間間隔100箇所ずつについて観察した。それを上記任意に選ばれた3箇所についておこない、経糸間の隙間を合計300箇所、緯糸間の隙間を合計300箇所測定し、当該300箇所の平均値を隣接する経糸間の隙間の平均値及び隣接する緯糸間の隙間の平均値とした。
【0088】
7.隣接する緯糸間の隙間の平均値と標準偏差から求まる緯糸隙間変動係数
隣接する緯糸間の隙間の標準偏差は、上記隣接する緯糸間の隙間の平均値を求める際に測定した上記300箇所それぞれの隙間の値から、Microsoft ExcelのSTDEV.S関数を用いて算出した。そして、隣接する緯糸間の隙間の平均値と標準偏差から求まる緯糸隙間変動係数は、上記求めた隣接する緯糸間の隙間の平均値及び隣接する緯糸間の隙間の標準偏差から、下記式により求めた。
緯糸隙間変動係数=隣接する緯糸間の隙間の標準偏差/隣接する緯糸間の隙間の平均値×100(%)
【0089】
8.経糸及び緯糸の開繊度(%)
ガラスクロスを構成する経糸及び緯糸の、ガラスフィラメントの平均直径(μm)及び本数(本)、後述する織密度(本/25mm)、並びに経糸及び緯糸の糸幅平均値(μm)から、下記式により算出した。
開繊度(%)={(25×1000)/WD-I}/(D×N)×100
WD:経糸または緯糸の織密度(本/25mm)
I:隣接する経糸間または緯糸間の隙間の平均値(μm)
D:経糸または緯糸の平均フィラメント直径(μm)
N:経糸または緯糸のフィラメント本数(本)
【0090】
9.ガラスクロスの経糸及び緯糸の織密度(本/25mm)
実施例、比較例で得られたガラスクロスの経糸及び緯糸の織密度は、日本工業規格JIS R 3420:2013(ガラス繊維一般試験方法)の「7.9 密度(織り密度)」に規定されている方法に従い、測定、算出した。具体的には、ガラスクロスの端及び耳から50mm以上離れた位置を測定対象とし、測定間隔を10mm以上200mm以下に設定し、設定した測定間隔内にある全部の経糸及び緯糸の糸本数を測定した。これを1回の測定とし、前に測定した経糸及び緯糸が含まれない他の位置に移して、同様の方法で測定間隔内にある全部の経糸及び緯糸の糸本数を更に2回測定した。3回の測定毎に、以下の式に従って25mm当たりの経糸及び緯糸の糸本数をそれぞれ求め、3回の測定値の平均値をそれぞれ算出した。
Mi=(ni/ai)×25
Mi:25mm当たりの糸本数
ni:測定した糸本数
ai:測定が行われた正確な距離(mm)
【0091】
10.ガラスクロスの質量(g/m2)
実施例、比較例で得られたガラスクロスについて、日本工業規格JIS R 3420:2013の「ガラス繊維一般試験方法」の 「7.2 クロス及びマットの質量(質量)」に規定されている方法に準じて測定した。具体的には、ガラスクロスの耳端から50mm以上離れたところから、面積100cm2の正方形の試験片を採取し、試験片を105℃で1時間乾燥させた後に、試験片の質量を測定し、以下の式に従って1m2当たりの質量を算出した。
ρA=(ms/100)×104
ρA:1m2当たりの質量(g/m2)
ms:試験片の質量(g)
【0092】
11.ガラスクロスの厚さ(μm)
実施例、比較例で得られたガラスクロスについて、日本工業規格JIS R3420:2013の「ガラス繊維一般試験方法」の「7.10.1 クロスの厚さ」に規定されているB法に準じ、両端及び耳端から50mm以上内側の場所の厚さを、最小表示値が0.001mmである電子式マイクロメータを用いて測定した。
【0093】
12.スジ状欠点の長さ(m)
得られたガラスクロスについて、検反機を用いて長さ1000m分巻き返しをし、前述した、<スジ状欠点の説明>で説明したように、スジ状欠点の長さ3Lを測定した。測定はガラスクロスの外観評価の専門家により目視によりおこない、JIS1級鋼製巻尺を用いて長さ3Lを1mm単位で測定した。スジ状欠点が複数個ある場合は、
図3を用いて説明したようにそれぞれのスジ状欠点の長さの総和をスジ状欠点の長さ3Lとした。スジ状欠点の長さ3Lが1.0m以下のものを合格とした。なお、スジ状欠点を構成するシワとしては、1個の長さが100mm以上、角度が経糸方向と平行な線に対して0°(すなわち、経糸方向と平行)のものをカウントした。
【0094】
<原料ガラス糸の製造>
[製造例1]
図8に例示するガラスフィラメント束製造装置を用いて原料ガラス糸を製造した。具体的に、集束剤を、紡糸炉から紡出させた複数のガラスフィラメントにアプリケーターを用いて塗布し、
図6及び
図7に例示するスリット構造の集束部材のスリットを通過させて当該ガラスフィラメントを1本の束(ストランド)に集束させた。次いで、このストランドを、撚りをかけずにチューブに巻き取り、ケーキを得た。次いで、得られたケーキを乾燥した。乾燥後のケーキをリング撚糸機にセットし、ストランドを解舒しつつ、撚りをかけながら、ボビンに巻き付け、原料ガラス糸(ガラスヤーン)を得た。なお、スリット構造の集束部材のスリット幅としては、100μmとした。得られた原料ガラス糸において、ガラスフィラメントの平均直径は3.3μm、フィラメント本数は40本、原料ガラス糸の番手は0.8tex、撚り数は0.5Zであった。
【0095】
[製造例2]
図8に例示するガラスフィラメント束製造装置を用いて原料ガラス糸を製造した。具体的に、集束剤を、紡糸炉から紡出させた複数のガラスフィラメントにアプリケーターを用いて塗布し、
図6及び
図7に例示するスリット構造の集束部材のスリットを通過させて当該ガラスフィラメントを1本の束(ストランド)に集束させた。次いで、このストランドを、撚りをかけずにチューブに巻き取り、ケーキを得た。次いで、得られたケーキを乾燥した。乾燥後のケーキをリング撚糸機にセットし、ストランドを解舒しつつ、撚りをかけながら、ボビンに巻き付け、原料ガラス糸(ガラスヤーン)を得た。なお、スリット構造の集束部材のスリット幅としては、200μmとした。得られた原料ガラス糸において、ガラスフィラメントの平均直径は4.0μm、フィラメント本数は40本、原料ガラス糸の番手は1.3tex、撚り数は0.5Zであった。
【0096】
[製造例3]
図9に例示するガラスフィラメント束製造装置を用いて原料ガラス糸を製造した。具体的に、集束剤を、紡糸炉から紡出させた複数のガラスフィラメントにアプリケーターを用いて塗布し、
図4に示す従来の集束部材(円柱状部5aの長さ5Lが500μm)でいったん集束させた後、
図6及び
図7に例示するスリット構造の集束部材のスリットを通過させて当該ガラスフィラメントを1本の束(ストランド)に集束させた。次いで、このストランドを、撚りをかけずにチューブに巻き取り、ケーキを得た。次いで、得られたケーキを乾燥した。乾燥後のケーキをリング撚糸機にセットし、ストランドを解舒しつつ、撚りをかけながら、ボビンに巻き付け、原料ガラス糸(ガラスヤーン)を得た。なお、スリット構造の集束部材のスリット幅としては、100μmとした。得られた原料ガラス糸において、ガラスフィラメントの平均直径は3.6μm、フィラメント本数は40本、原料ガラス糸の番手は1.1tex、撚り数は0.5Zであった。
【0097】
[製造例4]
図9に例示するガラスフィラメント束製造装置を用いて原料ガラス糸を製造した。具体的に、集束剤を、紡糸炉から紡出させた複数のガラスフィラメントにアプリケーターを用いて塗布し、
図4に示す従来の集束部材(円柱状部5aの長さ5Lが500μm)でいったん集束させた後、
図6及び
図7に例示するスリット構造の集束部材のスリットを通過させて当該ガラスフィラメントを1本の束(ストランド)に集束させた。次いで、このストランドを、撚りをかけずにチューブに巻き取り、ケーキを得た。次いで、得られたケーキを乾燥した。乾燥後のケーキをリング撚糸機にセットし、ストランドを解舒しつつ、撚りをかけながら、ボビンに巻き付け、原料ガラス糸(ガラスヤーン)を得た。なお、スリット構造の集束部材のスリット幅としては、100μmとした。得られた原料ガラス糸において、ガラスフィラメントの平均直径は3.6μm、フィラメント本数は40本、原料ガラス糸の番手は0.9tex、撚り数は0.7Zであった。
【0098】
[製造例5]
図9に例示するガラスフィラメント束製造装置を用いて原料ガラス糸を製造した。具体的に、集束剤を、紡糸炉から紡出させた複数のガラスフィラメントにアプリケーターを用いて塗布し、
図4に示す従来の集束部材(円柱状部5aの長さ5Lが500μm)でいったん集束させた後、
図6及び
図7に例示するスリット構造の集束部材のスリットを通過させて当該ガラスフィラメントを1本の束(ストランド)に集束させた。次いで、このストランドを、撚りをかけずにチューブに巻き取り、ケーキを得た。次いで、得られたケーキを乾燥した。乾燥後のケーキをリング撚糸機にセットし、ストランドを解舒しつつ、撚りをかけながら、ボビンに巻き付け、原料ガラス糸(ガラスヤーン)を得た。なお、スリット構造の集束部材のスリット幅としては、300μmとした。得られた原料ガラス糸において、ガラスフィラメントの平均直径は4.0μm、フィラメント本数は50本、原料ガラス糸の番手は1.7tex、撚り数は0.5Zであった。
【0099】
[比較製造例1]
図5に例示するガラスフィラメント束製造装置を用いて原料ガラス糸を製造した。具体的に、集束剤を、紡糸炉から紡出させた複数のガラスフィラメントにアプリケーターを用いて塗布し、
図4に示す従来の集束部材(円柱状部5aの長さ5Lが500μm)を通過させて当該ガラスフィラメントを1本の束(ストランド)に集束させた。次いで、このストランドを、撚りをかけずにチューブに巻き取り、ケーキを得た。次いで、得られたケーキを乾燥した。乾燥後のケーキをリング撚糸機にセットし、ストランドを解舒しつつ、撚りをかけながら、ボビンに巻き付け、原料ガラス糸(ガラスヤーン)を得た。得られた原料ガラス糸において、ガラスフィラメントの平均直径は3.3μm、フィラメント本数は40本、原料ガラス糸の番手は0.8tex、撚り数は0.5Zであった。
【0100】
[比較製造例2]
図5に例示するガラスフィラメント束製造装置を用いて原料ガラス糸を製造した。具体的に、集束剤を、紡糸炉から紡出させた複数のガラスフィラメントにアプリケーターを用いて塗布し、
図4に示す従来の集束部材(円柱状部5aの長さ5Lが500μm)を通過させて当該ガラスフィラメントを1本の束(ストランド)に集束させた。次いで、このストランドを、撚りをかけずにチューブに巻き取り、ケーキを得た。次いで、得られたケーキを乾燥した。乾燥後のケーキをリング撚糸機にセットし、ストランドを解舒しつつ、撚りをかけながら、ボビンに巻き付け、原料ガラス糸(ガラスヤーン)を得た。得られた原料ガラス糸において、ガラスフィラメントの平均直径は4.0μm、フィラメント本数は40本、原料ガラス糸の番手は1.3tex、撚り数は0.5Zであった。
【0101】
[比較製造例3]
図5に例示するガラスフィラメント束製造装置を用いて原料ガラス糸を製造した。具体的に、集束剤を、紡糸炉から紡出させた複数のガラスフィラメントにアプリケーターを用いて塗布し、
図4に示す従来の集束部材(円柱状部5aの長さ5Lが500μm)を通過させて当該ガラスフィラメントを1本の束(ストランド)に集束させた。次いで、このストランドを、撚りをかけずにチューブに巻き取り、ケーキを得た。次いで、得られたケーキを乾燥した。乾燥後のケーキをリング撚糸機にセットし、ストランドを解舒しつつ、撚りをかけながら、ボビンに巻き付け、原料ガラス糸(ガラスヤーン)を得た。得られた原料ガラス糸において、ガラスフィラメントの平均直径は3.6μm、フィラメント本数は40本、原料ガラス糸の番手は1.1tex、撚り数は0.5Zであった。
【0102】
[比較製造例4]
図5に例示するガラスフィラメント束製造装置を用いて原料ガラス糸を製造した。具体的に、集束剤を、紡糸炉から紡出させた複数のガラスフィラメントにアプリケーターを用いて塗布し、
図4に示す従来の集束部材(円柱状部5aの長さ5Lが500μm)を通過させて当該ガラスフィラメントを1本の束(ストランド)に集束させた。次いで、このストランドを、撚りをかけずにチューブに巻き取り、ケーキを得た。次いで、得られたケーキを乾燥した。乾燥後のケーキをリング撚糸機にセットし、ストランドを解舒しつつ、撚りをかけながら、ボビンに巻き付け、原料ガラス糸(ガラスヤーン)を得た。得られた原料ガラス糸において、ガラスフィラメントの平均直径は3.6μm、フィラメント本数は40本、原料ガラス糸の番手は0.9tex、撚り数は0.7Zであった。
【0103】
[比較製造例5]
図5に例示するガラスフィラメント束製造装置を用いて原料ガラス糸を製造した。具体的に、集束剤を、紡糸炉から紡出させた複数のガラスフィラメントにアプリケーターを用いて塗布し、
図4に示す従来の集束部材(円柱状部5aの長さ5Lが500μm)を通過させて当該ガラスフィラメントを1本の束(ストランド)に集束させた。次いで、このストランドを、撚りをかけずにチューブに巻き取り、ケーキを得た。次いで、得られたケーキを乾燥した。乾燥後のケーキをリング撚糸機にセットし、ストランドを解舒しつつ、撚りをかけながら、ボビンに巻き付け、原料ガラス糸(ガラスヤーン)を得た。得られた原料ガラス糸において、ガラスフィラメントの平均直径は4.0μm、フィラメント本数は50本、原料ガラス糸の番手は1.7tex、撚り数は0.5Zであった。
【0104】
[比較製造例6]
図8に例示するガラスフィラメント束製造装置を用いて原料ガラス糸を製造した。具体的に、集束剤を、紡糸炉から紡出させた複数のガラスフィラメントにアプリケーターを用いて塗布し、集束させた後、
図6及び
図7に例示するスリット構造の集束部材のスリットを通過させて当該ガラスフィラメントを1本の束(ストランド)に集束させたが、糸切れが多発し所定の長さのケーキ及び原料ガラス糸の採取に至らなかった。なお、スリット構造の集束部材のスリット幅としては、40μmとした。
【0105】
製造例1~5の条件等を表1に、比較製造例1~6の条件等を表2に示す。
【0106】
【0107】
【0108】
<実施例1>
経糸として、製造例1の
原料ガラス糸を用い、整経、糊付け、ビーミングをおこない、整経ビームを得た。
【0109】
上記整経ビームをエアージェット織機にセットし、緯糸として製造例1で得た原料ガラス糸を用い、製織をおこない、生機ロールを得た。ついで、得られたガラスクロスに付着している紡糸集束剤と製織集束剤を400℃で30時間加熱して除去した。その後、表面処理剤のシランカップリング剤(S-350:N-ビニルベンジル-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(塩酸塩)チッソ株式会社)を15g/Lの濃度に調整しパダーロールで絞った後、120℃で1分乾燥・キュアリングした。そして、圧力1.0MPaの水流加工でガラスクロスの張力を経方向が20N/mとしながら開繊処理を施し、実施例1のガラスクロスを得た。
【0110】
<実施例2>
経糸として、比較製造例2の原料ガラス糸を用い、整経、糊付け、ビーミングをおこない、整経ビームを得た。
【0111】
上記整経ビームをエアージェット織機にセットし、緯糸として製造例2で得た原料ガラス糸を用い、製織をおこない、生機ロールを得た。ついで、得られたガラスクロスに付着している紡糸集束剤と製織集束剤を400℃で30時間加熱して除去した。その後、表面処理剤のシランカップリング剤(S-350:N-ビニルベンジル-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(塩酸塩)チッソ株式会社)を15g/Lの濃度に調整しパダーロールで絞った後、120℃で1分乾燥・キュアリングした。そして、圧力1.0MPaの水流加工でガラスクロスの張力を経方向が50N/mとしながら開繊処理を施し、実施例2のガラスクロスを得た。
【0112】
<実施例3>
経糸として、製造例3の原料ガラス糸を用い、整経、糊付け、ビーミングをおこない、整経ビームを得た。
【0113】
上記整経ビームをエアージェット織機にセットし、緯糸として製造例3で得た原料ガラス糸を用い、製織をおこない、生機ロールを得た。ついで、得られたガラスクロスに付着している紡糸集束剤と製織集束剤を400℃で30時間加熱して除去した。その後、表面処理剤のシランカップリング剤(S-350:N-ビニルベンジル-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(塩酸塩)チッソ株式会社)を15g/Lの濃度に調整しパダーロールで絞った後、120℃で1分乾燥・キュアリングした。そして、圧力1.0MPaの水流加工でガラスクロスの張力を経方向が20N/mとしながら開繊処理を施し、実施例3のガラスクロスを得た。
【0114】
<実施例4>
経糸として、製造例4の原料ガラス糸を用い、整経、糊付け、ビーミングをおこない、整経ビームを得た。
【0115】
上記整経ビームをエアージェット織機にセットし、緯糸として製造例4で得た原料ガラス糸を用い、製織をおこない、生機ロールを得た。ついで、得られたガラスクロスに付着している紡糸集束剤と製織集束剤を400℃で30時間加熱して除去した。その後、表面処理剤のシランカップリング剤(S-350:N-ビニルベンジル-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(塩酸塩)チッソ株式会社)を15g/Lの濃度に調整しパダーロールで絞った後、120℃で1分乾燥・キュアリングした。そして、圧力1.0MPaの水流加工でガラスクロスの張力を経方向が20N/mとしながら開繊処理を施し、実施例4のガラスクロスを得た。
【0116】
<実施例5>
経糸として、比較製造例5の原料ガラス糸を用い、整経、糊付け、ビーミングをおこない、整経ビームを得た。
【0117】
上記整経ビームをエアージェット織機にセットし、緯糸として製造例5で得た原料ガラス糸を用い、製織をおこない、生機ロールを得た。ついで、得られたガラスクロスに付着している紡糸集束剤と製織集束剤を400℃で30時間加熱して除去した。その後、表面処理剤のシランカップリング剤(S-350:N-ビニルベンジル-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(塩酸塩)チッソ株式会社)を15g/Lの濃度に調整しパダーロールで絞った後、120℃で1分乾燥・キュアリングした。そして、圧力1.0MPaの水流加工でガラスクロスの張力を経方向が50N/mとしながら開繊処理を施し、実施例5のガラスクロスを得た。
【0118】
<実施例6>
経糸として、比較製造例1の原料ガラス糸を用い、整経、糊付け、ビーミングをおこない、整経ビームを得た。
【0119】
上記整経ビームをエアージェット織機にセットし、緯糸として製造例1で得た原料ガラス糸を用い、製織をおこない、生機ロールを得た。ついで、得られたガラスクロスに付着している紡糸集束剤と製織集束剤を400℃で30時間加熱して除去した。その後、表面処理剤のシランカップリング剤(S-350:N-ビニルベンジル-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(塩酸塩)チッソ株式会社)を15g/Lの濃度に調整しパダーロールで絞った後、120℃で1分乾燥・キュアリングした。そして、圧力1.0MPaの水流加工でガラスクロスの張力を経方向が20N/mとしながら開繊処理を施し、実施例6のガラスクロスを得た。
【0120】
<比較例1>
経糸として、製造例1の原料ガラス糸を用い、整経、糊付け、ビーミングをおこない、整経ビームを得た。
【0121】
上記整経ビームをエアージェット織機にセットし、緯糸として比較製造例1で得た原料ガラス糸を用い、製織をおこない、生機ロールを得た。ついで、得られたガラスクロスに付着している紡糸集束剤と製織集束剤を400℃で30時間加熱して除去した。その後、表面処理剤のシランカップリング剤(S-350:N-ビニルベンジル-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(塩酸塩)チッソ株式会社)を15g/Lの濃度に調整しパダーロールで絞った後、120℃で1分乾燥・キュアリングした。そして、圧力1.0MPaの水流加工でガラスクロスの張力を経方向が20N/mとしながら開繊処理を施し、比較例1のガラスクロスを得た。
【0122】
<比較例2>
経糸として、比較製造例2の原料ガラス糸を用い、整経、糊付け、ビーミングをおこない、整経ビームを得た。
【0123】
上記整経ビームをエアージェット織機にセットし、緯糸として比較製造例2で得た原料ガラス糸を用い、製織をおこない、生機ロールを得た。ついで、得られたガラスクロスに付着している紡糸集束剤と製織集束剤を400℃で30時間加熱して除去した。その後、表面処理剤のシランカップリング剤(S-350:N-ビニルベンジル-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(塩酸塩)チッソ株式会社)を15g/Lの濃度に調整しパダーロールで絞った後、120℃で1分乾燥・キュアリングした。そして、圧力1.0MPaの水流加工でガラスクロスの張力を経方向が50N/mとしながら開繊処理を施し、比較例2のガラスクロスを得た。
【0124】
<比較例3>
経糸として、製造例3の原料ガラス糸を用い、整経、糊付け、ビーミングをおこない、整経ビームを得た。
【0125】
上記整経ビームをエアージェット織機にセットし、緯糸として比較製造例3で得た原料ガラス糸を用い、製織をおこない、生機ロールを得た。ついで、得られたガラスクロスに付着している紡糸集束剤と製織集束剤を400℃で30時間加熱して除去した。その後、表面処理剤のシランカップリング剤(S-350:N-ビニルベンジル-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(塩酸塩)チッソ株式会社)を15g/Lの濃度に調整しパダーロールで絞った後、120℃で1分乾燥・キュアリングした。そして、圧力1.0MPaの水流加工でガラスクロスの張力を経方向が20N/mとしながら開繊処理を施し、比較例3のガラスクロスを得た。
【0126】
<比較例4>
経糸として、製造例4の原料ガラス糸を用い、整経、糊付け、ビーミングをおこない、整経ビームを得た。
【0127】
上記整経ビームをエアージェット織機にセットし、緯糸として比較製造例4で得た原料ガラス糸を用い、製織をおこない、生機ロールを得た。ついで、得られたガラスクロスに付着している紡糸集束剤と製織集束剤を400℃で30時間加熱して除去した。その後、表面処理剤のシランカップリング剤(S-350:N-ビニルベンジル-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(塩酸塩)チッソ株式会社)を15g/Lの濃度に調整しパダーロールで絞った後、120℃で1分乾燥・キュアリングした。そして、圧力1.0MPaの水流加工でガラスクロスの張力を経方向が20N/mとしながら開繊処理を施し、比較例4のガラスクロスを得た。
【0128】
<比較例5>
経糸として、比較製造例5の原料ガラス糸を用い、整経、糊付け、ビーミングをおこない、整経ビームを得た。
【0129】
上記整経ビームをエアージェット織機にセットし、緯糸として比較製造例5で得た原料ガラス糸を用い、製織をおこない、生機ロールを得た。ついで、得られたガラスクロスに付着している紡糸集束剤と製織集束剤を400℃で30時間加熱して除去した。その後、表面処理剤のシランカップリング剤(S-350:N-ビニルベンジル-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(塩酸塩)チッソ株式会社)を15g/Lの濃度に調整しパダーロールで絞った後、120℃で1分乾燥・キュアリングした。そして、圧力1.0MPaの水流加工でガラスクロスの張力を経方向が50N/mとしながら開繊処理を施し、比較例5のガラスクロスを得た。
【0130】
実施例1~6のガラスクロスの物性等について表3に、比較例1~5のガラスクロスの物性等について表4に示す。
【0131】
【0132】
【0133】
実施例1~6のガラスクロスは、シランカップリング剤で表面処理されたガラスクロスであって、前記ガラスクロスの質量が6.0~13.0g/m2であり、前記ガラスクロスの経糸及び緯糸の織密度が90~120本/25mmであり、前記ガラスクロスの緯糸の糸幅平均値が120~220μmであり、前記ガラスクロスの隣接する緯糸間の隙間の平均値と標準偏差から求まる緯糸隙間変動係数(標準偏差/平均値×100%)が15~35%であることから、スジ状欠点の発生を抑制することができるものであった。
【0134】
一方、比較例1~5のガラスクロスは、シランカップリング剤で表面処理されたガラスクロスであって、前記ガラスクロスの質量が6.0~13.0g/m2であり、前記ガラスクロスの経糸及び緯糸の織密度が90~120本/25mmであり、前記ガラスクロスの緯糸の糸幅平均値が120~220μmであったが、前記ガラスクロスの隣接する緯糸間の隙間の平均値と標準偏差から求まる緯糸隙間変動係数(標準偏差/平均値×100%)が35%を超えるものであることから、スジ状欠点の発生を抑制することができなかった。