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特開2024-44996高強度アルミニウム合金の汎用溶接ワイヤ及びその製造方法
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  • 特開-高強度アルミニウム合金の汎用溶接ワイヤ及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044996
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】高強度アルミニウム合金の汎用溶接ワイヤ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/40 20060101AFI20240326BHJP
   C22C 21/10 20060101ALI20240326BHJP
   C22F 1/053 20060101ALI20240326BHJP
   B23K 35/28 20060101ALI20240326BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20240326BHJP
【FI】
B23K35/40 330
C22C21/10
C22F1/053
B23K35/28
C22F1/00 624
C22F1/00 625
C22F1/00 630A
C22F1/00 630K
C22F1/00 630M
C22F1/00 682
C22F1/00 683
C22F1/00 685Z
C22F1/00 684B
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 694A
C22F1/00 694B
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099365
(22)【出願日】2023-06-16
(31)【優先権主張番号】202211144550.1
(32)【優先日】2022-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】523231277
【氏名又は名称】江蘇理工学院
【氏名又は名称原語表記】Jiangsu University of Technology
【住所又は居所原語表記】1801 Zhongwu Avenue, Changzhou City, Jiangsu Province, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】李 小平
(72)【発明者】
【氏名】劉 驍
(72)【発明者】
【氏名】李 潤洲
(72)【発明者】
【氏名】雷 衛寧
(72)【発明者】
【氏名】王 澤
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高強度アルミニウム合金の汎用溶接ワイヤの製造方法および溶接ワイヤを提供する。
【解決手段】Al-Zn-Mg-Cu系アルミニウム合金を溶融し、射出成形によって得たビレットを半固体状態で据え込み加工しインゴットを形成し、前記インゴットを熱間押出後コイル状にするステップ(1)と、コイル状の棒材を焼戻しし、必要な溶接ワイヤの直径まで連続して複数パスの圧延・伸線加工を行い、サイジング、丸め加工、艶出し等を行い、高強度アルミニウム合金の汎用溶接ワイヤを得るステップ(2)とを含む。本発明の溶接ワイヤは、Al-Zn-Mg-Cu系アルミニウム合金を母材として使用し、母材の重量の0.1~1%のB及び母材の重量の0.1~1%のZrを加えることによって製造され、様々なグレードの7XXXシリーズの高強度アルミニウム合金の溶接には、汎用性があり、溶接後の溶接継手は、機械的特性に優れ、高い強度及び塑性を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高強度アルミニウム合金の汎用溶接ワイヤの製造方法であって、
Al-Zn-Mg-Cu系アルミニウム合金とB及びZrを混合した後に合金を溶融し、次に、射出成形によってビレットを得て、前記ビレットを半固体状態で据え込み加工し、インゴットを形成し、前記インゴットを熱間押出して棒材を得てコイル状にするステップ(1)と、
コイル状の前記棒材を焼戻しし、次に、必要な溶接ワイヤの直径まで連続して複数パスの圧延・伸線加工を行い、サイジング、丸め加工、多結晶ダイによる艶出し、微細研磨、洗浄及び乾燥を順次行い、高強度アルミニウム合金の汎用溶接ワイヤを得るステップ(2)と
を含むことを特徴とする、高強度アルミニウム合金の汎用溶接ワイヤの製造方法。
【請求項2】
前記Al-Zn-Mg-Cu系アルミニウム合金の成分は、重量百分率で、5~8%のZn、1.5~5%のMg、及び1~3%のCuを含み、残部がAlであることを特徴とする、請求項1に記載の高強度アルミニウム合金の汎用溶接ワイヤの製造方法。
【請求項3】
前記Al-Zn-Mg-Cu系アルミニウム合金の成分は、重量百分率で、7~8%のZn、2~3%のMg、及び1.5~2.5%のCuを含み、残部がAlであることを特徴とする、請求項2に記載の高強度アルミニウム合金の汎用溶接ワイヤの製造方法。
【請求項4】
B及びZrの添加量はそれぞれ前記Al-Zn-Mg-Cu系アルミニウム合金の重量の0.1~1重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の高強度アルミニウム合金の汎用溶接ワイヤの製造方法。
【請求項5】
B及びZrの添加量はそれぞれ前記Al-Zn-Mg-Cu系アルミニウム合金の重量の0.1~0.5重量%であることを特徴とする、請求項4に記載の高強度アルミニウム合金の汎用溶接ワイヤの製造方法。
【請求項6】
ステップ(1)における前記半固体状態での据え込み加工は、460~575℃で前記ビレットを据え込み加工することであり、ステップ(2)における前記焼戻しは、200~300℃の温度で少なくとも10時間保温することであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の高強度アルミニウム合金の汎用溶接ワイヤの製造方法。
【請求項7】
ステップ(1)における前記熱間押出は、380~480℃の温度で、直径150~300mmの前記インゴットを直径5~10mmの棒材に熱間押出することであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の高強度アルミニウム合金の汎用溶接ワイヤの製造方法。
【請求項8】
ステップ(2)における前記圧延・伸線加工は、横型ローラーダイス伸線機で連続して少なくとも5パスの伸線を行うことであり、各パスの伸線面の圧縮率が6~8%であり、直径0.8~1.6mmまで伸線を行うことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の高強度アルミニウム合金の汎用溶接ワイヤの製造方法。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法によって得られた高強度アルミニウム合金の汎用溶接ワイヤであって、前記溶接ワイヤは、Al-Zn-Mg-Cu系アルミニウム合金を母材として使用し、前記母材の重量の0.1~1%のB及び前記母材の重量の0.1~1%のZrを加えることによって製造され、Al-Zn-Mg-Cu系アルミニウム合金の溶接には、汎用性があることを特徴とする、溶接ワイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高強度アルミニウム合金の溶接の技術分野に関し、具体的には、高強度アルミニウム合金の汎用溶接ワイヤ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
7050、7055、7075、7475及び7085などの7XXXシリーズのアルミニウム合金は、Al-Zn-Mg-Cu系超硬アルミニウム合金に属し、比強度が高く、航空宇宙、軌道交通などの分野で広く使用される。Al-Zn-Mg-Cu系アルミニウム合金は、強度が高いが塑性が低く、従来の伸線加工法によって溶接ワイヤの加工を順調に行うことができず、また、溶接時に溶接継手に熱割れや応力腐食割れが発生しやすいため、Al-Zn-Mg-Cuアルミニウム合金の溶接が困難で、溶接性が低くなるという問題をもたらす。現在、Al-Zn-Mg-Cu系高強度アルミニウム合金の溶接には、溶接性能に優れたバルクのワイヤの供給が不足しており、特にほとんどの高強度アルミニウム合金の溶接に適した汎用ワイヤが不足している。
【0003】
上記の技術的問題に対して、第CN112831735A号の中国特許出願は、高強度アルミニウム合金ワイヤ/ストリップの製造方法を開示し、それは、射出成形によってビレットを製造した後、半固体状態で押出し及び熱間押出し、様々な仕様のAl-Zn-Mg-Cu高強度アルミニウム合金ワイヤを得る。しかし、この方法で製造されたワイヤは、対応する特定のグレードのアルミニウム合金にしか溶接できず、ほとんどのアルミニウム合金、特に7XXXシリーズの高強度アルミニウム合金に対しては汎用性がなく、使用が不便であり、高強度アルミニウム合金、特に超高強度アルミニウム合金の応用を制限する。
【0004】
現在、中国の研究状況にもいくつかの進歩があり、Sc又はZr-ScがAl-Mg-Sc合金溶接継手の微細構造及び特性への影響を研究する人がおり、また、従来のER5356溶接ワイヤ及びSc、Zr、Erを加えたER5356溶接ワイヤを使用し、7A52アルミニウム合金に対してタングステン電極不活性ガスシールド溶接を行い、Sc、Zr、Erが溶接継手の機械的特性への影響を研究する人もいる。しかし、これらは溶接ワイヤ原料の大量生産の問題を解決しておらず、価格が高いため、Al-Zn-Mg-Cu高強度アルミニウム合金の構造部品の加工及び応用を大幅に制限する。
【発明の概要】
【0005】
従来の溶接ワイヤは、ほとんどのAl-Zn-Mg-Cu系高強度アルミニウム合金に対して汎用性がなく大量生産が困難であるという技術的問題を有する。本発明は、前記技術的問題を解決するために、高強度アルミニウム合金の汎用溶接ワイヤ及びその製造方法を提供する。本発明の方法によって得られた溶接ワイヤは、ほとんどのAl-Zn-Mg-Cu系高強度アルミニウム合金の構造部品に対して優れた溶接性能を有し、大量生産が容易である。
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、以下の技術的解決手段を用いる。
【0007】
高強度アルミニウム合金の汎用溶接ワイヤの製造方法は、
Al-Zn-Mg-Cu系アルミニウム合金とB及びZrを混合した後に合金を溶融し、次に、射出成形によってビレットを得て、前記ビレットを半固体状態で据え込み加工し、インゴットを形成し、前記インゴットを熱間押出して棒材を得てコイル状にするステップ(1)と、
コイル状の前記棒材を焼戻しし、次に、必要な溶接ワイヤの直径まで連続して複数パスの圧延・伸線加工を行い、サイジング、丸め加工、多結晶ダイによる艶出し、微細研磨、洗浄及び乾燥を順次行い、高強度アルミニウム合金の汎用溶接ワイヤを得るステップ(2)とを含む。焼戻しした後、必要な寸法まで連続して圧延すると、圧延工程における焼戻し工程を省くことができ、また、割れ目が少なくて破断しない。
【0008】
更に、前記Al-Zn-Mg-Cu系アルミニウム合金の成分は、重量百分率で、5~8%のZn、1.5~5%のMg、及び1~3%のCuを含み、残部がAlである。
【0009】
更に、前記Al-Zn-Mg-Cu系アルミニウム合金の成分は、重量百分率で、7~8%のZn、2~3%のMg、及び1.5~2.5%のCuを含み、残部がAlである。
【0010】
更に、B及びZrの添加量はそれぞれ前記Al-Zn-Mg-Cu系アルミニウム合金の重量の0.1~1重量%である。
【0011】
更に、B及びZrの添加量はそれぞれ前記Al-Zn-Mg-Cu系アルミニウム合金の重量の0.1~0.5重量%である。微量元素B及びZrの合計量が1重量%を超えると、材料はより脆くなる。
【0012】
更に、ステップ(1)における前記半固体状態での据え込み加工は、460~575℃で前記ビレットを据え込み加工することであり、ステップ(2)における前記焼戻しは、200~300℃の温度で少なくとも10時間保温することである。
【0013】
更に、ステップ(1)における前記熱間押出は、380~480℃の温度で、直径150~300mmの前記インゴットを直径5~10mmの棒材に熱間押出することである。
【0014】
更に、ステップ(2)における前記圧延・伸線加工は、横型ローラーダイス伸線機で連続して少なくとも5パスの伸線を行うことであり、各パスの伸線面の圧縮率が6~8%であり、直径0.8~1.6mmまで伸線を行う。
【0015】
本発明の別態様は、上記の製造方法によって得られた高強度アルミニウム合金の汎用溶接ワイヤを提供し、前記溶接ワイヤは、Al-Zn-Mg-Cu系アルミニウム合金を母材として使用し、前記母材の重量の0.1~1%のB及び母材の重量の0.1~1%のZrを加えることによって製造され、Al-Zn-Mg-Cu系アルミニウム合金の溶接には、汎用性があり、特に、7050、7055、7075、7475、7085などのAl-Zn-Mg-Cu超硬アルミニウム合金の溶接に適用する。
【0016】
有益な技術的効果は、以下のとおりである。本発明では、微量元素B及びZrをAl-Zn-Mg-Cu系アルミニウム合金に加え、溶融した後、射出成形により、微細な粒子と均一な成分のある母材を得て、Al-Zn-Mg-Cu高強度アルミニウム合金のビレットは、溶接及び凝固中に微細な結晶粒を保持できる微量元素B及びZrを含有し、半固体状態で据え込み加工することにより、射出成形で形成された層状微細構造を除去し、ビレットは緻密になり、熱間押出、伸線を行った後に得られたワイヤは、結晶粒が細かく緻密で、微細構造が均一で、結晶粒界が明瞭で析出物がなく、層状微細構造がなく、優れた機械的特性、構造的特性、溶接性能を有する。7XXXシリーズの高強度アルミニウム合金の溶接には、汎用性があり、7XXXシリーズの高強度アルミニウム合金溶接用の高品質の原料を提供でき、広い高強度アルミニウム合金の溶接のプロセスウィンドウを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例3の溶接ワイヤを使用して7075母材を溶接した後の溶接継手の外観図であり、図中の記号1~9は、異なる溶接プロセス条件における溶接継手の外観を示す。
【0018】
具体的なプロセスは、表1で示される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例及び図面を参照し、本発明の実施例における技術的解決手段を明確、完全に説明し、明らかに、説明された実施例は、本発明の全てではないが一部の実施例に過ぎない。少なくとも1つの例示的な実施例に関する以下の説明は、本質的に単に例示的なものであり、本発明及びその応用又は用途を限定するものとして解釈されることではない。本発明における実施例に基づき、創造的な作業なしに当業者によって得られる他の全ての実施例は、本発明の保護範囲に属する。
【0020】
特に明記されない限り、これらの実施例における数値は、本発明の範囲を限定するものではない。関連分野の当業者に知られている技術および方法については詳細に説明しない場合があるが、適切な状況下では、これらの技術及び方法は本明細書の一部とみなされるべきである。本明細書に示されて議論される全ての例において、特定の値は例示のみとして解釈されるべきであり、限定として解釈されるべきではない。従って、例示的な実施例の他の例は、異なる値を有してもよい。
【0021】
以下の実施例で特定の条件を示さない実験方法は、通常、国家基準に従って測定されるが、対応する国家基準がない場合、一般的な国際基準又は関連企業が提案した基準要件に従って実行される。特に明記されない限り、全ての部数は重量部であり、全ての百分率は重量百分率である。
【0022】
(実施例1)
高強度アルミニウム合金の汎用溶接ワイヤの製造方法は、
Al-Zn-Mg-Cuアルミニウム合金、B単体及びZr単体を準備し、均一に混合した後、合金を溶融し、次に、射出成形によって直径220mmのビレットを得るステップ(1)であって、
Al-Zn-Mg-Cuアルミニウム合金の成分は、重量百分率で、7.8%のZn、2.3%のMg、及び2%のCuを含み、残部がAlであり、Al-7.8Zn-2.3Mg-2Cuアルミニウム合金を記し、
B単体の添加量は、前記Al-7.8Zn-2.3Mg-2Cuアルミニウム合金の重量の0.1%であり、Zr単体の添加量は、前記Al-7.8Zn-2.3Mg-2Cuアルミニウム合金の重量の0.1%であり、
前記ビレットを460℃で半固体状態で据え込み加工し、直径178mmのインゴットを形成し、前記インゴットを380℃で熱間押出し、数本の直径5.8mmの棒材を得て、コイル状にするステップ(1)と、
コイル状の前記棒材を真空焼戻し炉に入れ、300℃で10時間焼戻しして保温し、炉で冷却した後、横型ローラーダイス伸線機に入れ、必要なワイヤ完成品の直径まで連続して複数パスの圧延・伸線加工を行うステップ(2)であって、各パスの伸線面の圧縮率が6~8%であり、得られた溶接ワイヤの直径が0.8~1.6mmであり、次に、順にサイジングダイでサイジングして丸め加工し、多結晶ダイで艶出しし、研磨ダイで微細研磨し、洗浄して乾燥した後、高強度アルミニウム合金の汎用溶接ワイヤを得るステップ(2)とを含む。
【0023】
(実施例2)
本実施例の高強度アルミニウム合金の汎用溶接ワイヤの製造プロセスは、実施例1と同じであるが、その違いは、B単体の添加量が前記Al-7.8Zn-2.3Mg-2Cuアルミニウム合金の重量の0.2%、Zr単体の添加量が前記Al-7.8Zn-2.3Mg-2Cuアルミニウム合金の重量の0.5%である。
【0024】
(実施例3)
本実施例の高強度アルミニウム合金の汎用溶接ワイヤの製造プロセスは、実施例1と同じであるが、その違いは、B単体の添加量が前記Al-7.8Zn-2.3Mg-2Cuアルミニウム合金の重量の0.2%、Zr単体の添加量が前記Al-7.8Zn-2.3Mg-2Cuアルミニウム合金の重量の0.3%である。本実施例の溶接ワイヤの仕様は、φ1.2mmである。
【0025】
(実施例4)
本実施例の高強度アルミニウム合金の汎用溶接ワイヤの製造プロセスは、実施例1と同じであるが、その違いは、B単体の添加量が前記Al-7.8Zn-2.3Mg-2Cuアルミニウム合金の重量の0.4%、Zr単体の添加量が前記Al-7.8Zn-2.3Mg-2Cuアルミニウム合金の重量の0.4%である。
【0026】
(比較例1)
本比較例の高強度アルミニウム合金の汎用溶接ワイヤの製造プロセスは、実施例3と同じであるが、その違いは、B及びZrを加えることである。
【0027】
上記の実施例及び比較例における溶接ワイヤの機械的特性は、表2で示される。
(備考:溶接ワイヤの仕様は直径1.2mmである)
【0028】
上記の各実施例及び比較例によって製造された溶接ワイヤを使用し、様々なグレードの7XXXシリーズのアルミニウム合金の溶接プロセスを試験する。ESAB社製のTIG 4300i AC/DCインバータAC/DCアルゴンアーク溶接機を選択し、ワイヤ送給機は、WF-007A多機能自動アルゴンアークワイヤ送給機、直径は1.2mm、電流は、変数パラメータであり、他のパラメータは、20Vの電圧、3.2mmのアーク長さ、30°のワイヤ送給角度、140cm/分間のワイヤ送給速度、3mm/秒間の溶接速度、10L/分間のアルゴン流の量である。各実施例及び比較例によって製造された溶接ワイヤを使用して7XXXシリーズの高強度アルミニウム合金の汎用溶接ワイヤ(7050、7055、7075)の母材を溶接し、次に、T6熱処理を行い、又は熱処理を行わず、試験サンプルを得て、GB/T228.1-2010 金属材料引張試験パート1の室温引張法に従って、機械的特性の試験を行い、溶接部分の室温引張機械的特性を試験し、熱処理サンプルの各グループについて、2つの同じサンプルを配置し、その平均値をとる。試験結果は表4で示される。
【0029】
実施例3の溶接ワイヤを使用して7075母材を溶接した後の溶接継手の外観は、図1で示され、その溶接プロセスと熱処理前後の性能結果は、表3で示される。
【0030】
表3及び図1から分かるように、160~165Aの電流で、実施例3の溶接ワイヤを使用して7075母材をアルゴンアーク溶接し、優れた溶接性能があり、T6熱処理前に、270MPa以上の引張強度、5.5%の伸び率があり、T6熱処理後に、500MPa以上の引張強度、13%の伸び率があり、実施例3の溶接ワイヤは、7075母材に対して優れた溶接性能を有することを示す。
【0031】
表4から分かるように、実施例1における溶接ワイヤ(Al-7.8Zn-2.3Mg-2Cuを母材として0.1%B+0.1%Zrを加える)はそれぞれ7050母材、7055母材、7075母材に対して優れた溶接性能を有し、熱処理前後に、7050母材を溶接した後の溶接継手の引張強度が85.7%増加し、伸び率が12.36%に増加し、7055母材を溶接した後の溶接継手の引張強度が96.2%増加し、伸び率が12.88%に増加し、7075母材を溶接した後の溶接継手の引張強度が92.7%増加し、伸び率が12.47%に増加する。
【0032】
実施例2における溶接ワイヤ(Al-7.8Zn-2.3Mg-2Cuを母材として0.2%B+0.5%Zrを加える)はそれぞれ7050母材、7055母材、7075母材に対して優れた溶接性能を有し、熱処理前後に、7050母材を溶接した後の溶接継手の引張強度が100%以上増加し、伸び率が11%に増加し、7055母材を溶接した後の溶接継手の引張強度が94.6%増加し、伸び率が12.42%に増加し、7075母材を溶接した後の溶接継手の引張強度が100%以上増加し、伸び率が12.38%に増加する。
【0033】
実施例3における溶接ワイヤ(Al-7.8Zn-2.3Mg-2Cuを母材として0.2%B+0.3%Zrを加える)はそれぞれ7050母材、7055母材、7075母材に対して優れた溶接性能を有し、熱処理前後に、7050母材を溶接した後の溶接継手の引張強度が92.4%増加し、伸び率が12.79%に増加し、7055母材を溶接した後の溶接継手の引張強度が100%以上増加し、伸び率が12.56%に増加し、7075母材を溶接した後の溶接継手の引張強度が88.3%増加し、伸び率が13.76%に増加する。
【0034】
実施例4における溶接ワイヤ(Al-7.8Zn-2.3Mg-2Cuを母材として0.4%B+0.4%Zrを加える)はそれぞれ7050母材、7055母材、7075母材に対して優れた溶接性能を有し、熱処理前後に、7050母材を溶接した後の溶接継手の引張強度が94.1%増加し、伸び率が13.24%に増加し、7055母材を溶接した後の溶接継手の引張強度が100%以上増加し、伸び率が12.84%に増加し、7075母材を溶接した後の溶接継手の引張強度が92.0%増加し、伸び率が13.24%に増加する。
【0035】
以上のデータから分かるように、本発明では、Al-7.8Zn-2.3Mg-2Cu系アルミニウム合金に、合計量が1%未満のB及びZrを加えることによって製造された溶接ワイヤは、7XXXシリーズの高強度アルミニウム合金に対して優れた溶接性能を有し、溶接後の溶接継手の引張強度及び伸び率はいずれも高くなり、7050、7055及び7075などの7XXXシリーズの高強度アルミニウム合金、特にAl-Zn-Mg-Cu系高硬度アルミニウム合金の溶接には、汎用性があり、それは、7XXXシリーズの高強度アルミニウム合金溶接用の高品質の原料を提供でき、広い高強度アルミニウム合金の溶接のプロセスウィンドウを得ることができる。
【0036】
以上の内容は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明の保護範囲は、それらに限定されるものではなく、本発明で開示された技術的範囲内で当業者が本発明の技術的解決手段及びその概念に従って行う置換又は変更は、本発明の保護範囲に含まれる。
図1