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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004500
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/14 20060101AFI20240110BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H05K1/14 F
H05K1/03 610Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020192546
(22)【出願日】2020-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(72)【発明者】
【氏名】岡村 隆徳
【テーマコード(参考)】
5E344
【Fターム(参考)】
5E344AA02
5E344AA12
5E344AA23
5E344AA26
5E344BB02
5E344BB06
5E344CC13
5E344CC23
5E344CD23
5E344DD02
5E344EE08
(57)【要約】
【課題】配線間の寄生容量を容易に低減可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】本開示の半導体装置は、第1基板と、前記第1基板上に設けられた下部配線と、前記下部配線上に絶縁膜を介して設けられた複数の上部配線と、前記上部配線上に複数の素子を介して設けられた第2基板とを備え、前記上部配線は、第1方向に互いに隣接する第1配線と第2配線とを含み、前記第1配線上の前記素子と、前記第2配線上の前記素子は、互いに直列に接続されており、第1開口部が、前記下部配線内に設けられているか、または前記第1方向と異なる第2方向に前記下部配線間に挟まれるように設けられている、または、第2開口部が、前記上部配線内に設けられているか、または前記第2方向に前記上部配線間に挟まれるように設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板上に設けられた下部配線と、
前記下部配線上に絶縁膜を介して設けられた複数の上部配線と、
前記上部配線上に複数の素子を介して設けられた第2基板とを備え、
前記上部配線は、第1方向に互いに隣接する第1および第2配線を含み、
前記第1配線上の前記素子と、前記第2配線上の前記素子は、互いに直列に接続されており、
第1開口部が、前記下部配線内に設けられているか、または前記第1方向と異なる第2方向に前記下部配線間に挟まれるように設けられている、または、第2開口部が、前記上部配線内に設けられているか、または前記第2方向に前記上部配線間に挟まれるように設けられている、半導体装置。
【請求項2】
前記第1配線上の前記素子同士は、互いに並列に接続されており、
前記第2配線上の前記素子同士は、互いに並列に接続されている、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記素子は、前記第2基板に設けられた発光素子である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記発光素子から出射された光は、前記第2基板の下面から上面へと前記第2基板内を透過して、前記第2基板から出射される、請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記下部配線は、前記第1方向に電流が流れるように使用され、
前記上部配線は、前記第1方向の逆方向に電流が流れるように使用される、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1または第2開口部として、前記第1方向に延びる開口部が設けられている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1または第2開口部として、前記第1方向に延び、前記第2方向に互いに隣接する複数の開口部が設けられている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記下部配線または前記上部配線は、前記第1方向に延びる複数の第1部分と、前記第2方向に延びる複数の第2部分とを含み、
前記複数の開口部の各々は、前記第2方向に互いに隣接する前記第1部分間に設けられている、請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記上部配線の前記第2方向の幅は、前記下部配線の前記第2方向の幅と同じである、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記上部配線の前記第2方向の幅は、前記下部配線の前記第2方向の幅より太い、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記上部配線の前記第2方向の幅は、前記下部配線の前記第2方向の幅の90%~110%である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第1開口部が、前記下部配線内に設けられているか、または前記第2方向に前記下部配線間に挟まれるように設けられており、かつ、前記第2開口部が、前記上部配線内に設けられているか、または前記第2方向に前記上部配線間に挟まれるように設けられている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第1開口部は、前記上部配線と上下方向に対向する位置に設けられており、
前記第2開口部は、前記下部配線と上下方向に対向する位置に設けられている、
請求項12に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記第1開口部として、前記第1方向に延びる複数の開口部が設けられており、
前記下部配線は、前記第1方向に延びる複数の第1部分と、前記第2方向に延びる複数の第2部分とを含み、
前記複数の開口部の各々は、前記第2方向に互いに隣接する前記第1部分間に設けられている、請求項12に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記第2開口部として、前記第1方向に延びる複数の開口部が設けられており、
前記複数の開口部の各々は、前記第2方向に互いに隣接する前記上部配線間に設けられている、請求項12に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記第1または第2開口部の前記第2方向の幅は、前記上部配線の前記第2方向の幅の10分の1以下である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記複数の第1部分は、前記第2方向の幅が互いに異なる第1部分を含む、請求項8に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記第1または第2開口部として、2次元アレイ状に配置された複数の開口部が設けられている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項19】
前記第1または第2開口部として、前記上部配線内または前記下部配線内に開口部が1つだけ設けられているか、または、前記第2方向に前記上部配線間または前記下部配線間に挟まれるように開口部が1つだけ設けられている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項20】
前記第1基板は、シリコン(Si)を含む半導体基板であり、
前記第2基板は、ガリウム(Ga)およびヒ素(As)を含む半導体基板である、
請求項1に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザーの一種として、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)等の面発光レーザーが知られている。一般に、面発光レーザーを利用した発光装置では、基板の表面または裏面に複数の発光素子が2次元アレイ状に設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2004-526194号公報
【特許文献2】特開2003-045989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発光装置等の半導体装置は、基板上に下部配線、絶縁膜、および上部配線を順に備える場合がある。例えば、ある基板上に複数の発光素子を形成し、別の基板上に下部配線、絶縁膜、および上部配線を順に形成し、前者の基板を後者の基板上に搭載することで、発光装置を製造する場合がある。
【0005】
このような半導体装置では、下部配線と上部配線との間の絶縁膜内に空洞を設けることで、下部配線と上部配線との間の寄生容量を低減することが可能である。しかしながら、絶縁膜内に空洞を設けることは難しい。よって、これらの配線間の寄生容量を容易に低減できれば望ましい。
【0006】
そこで、本開示は、配線間の寄生容量を容易に低減可能な半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の側面の半導体装置は、第1基板と、前記第1基板上に設けられた下部配線と、前記下部配線上に絶縁膜を介して設けられた複数の上部配線と、前記上部配線上に複数の素子を介して設けられた第2基板とを備え、前記上部配線は、第1方向に互いに隣接する第1および第2配線を含み、前記第1配線上の前記素子と、前記第2配線上の前記素子は、互いに直列に接続されており、第1開口部が、前記下部配線内に設けられているか、または前記第1方向と異なる第2方向に前記下部配線間に挟まれるように設けられている、または、第2開口部が、前記上部配線内に設けられているか、または前記第2方向に前記上部配線間に挟まれるように設けられている。これにより例えば、下部配線内または下部配線間に第1開口部を設けること、または、上部配線内または上部配線間に第2開口部を設けることで、配線間の寄生容量を容易に低減することが可能となる。
【0008】
また、この第1の側面において、前記第1配線上の前記素子同士は、互いに並列に接続されており、前記第2配線上の前記素子同士は、互いに並列に接続されていてもよい。これにより例えば、第1配線と第2配線との間では素子を直列に接続しつつ、第1配線上および第2配線上では素子を並列に接続することが可能となる。
【0009】
また、この第1の側面において、前記素子は、前記第2基板に設けられた発光素子でもよい。これにより例えば、発光装置における配線間の寄生容量を容易に低減することが可能となる。
【0010】
また、この第1の側面において、前記発光素子から出射された光は、前記第2基板の下面から上面へと前記第2基板内を透過して、前記第2基板から出射されてもよい。これにより例えば、裏面出射型の発光装置における配線間の寄生容量を容易に低減することが可能となる。
【0011】
また、この第1の側面において、前記下部配線は、前記第1方向に電流が流れるように使用され、前記上部配線は、前記第1方向の逆方向に電流が流れるように使用されてもよい。これにより例えば、上部配線の周りに生じる磁界と、下部配線の周りに生じる磁界とを、打ち消し合わせることが可能となる。
【0012】
また、この第1の側面において、前記第1または第2開口部として、前記第1方向に延びる開口部が設けられていてもよい。これにより例えば、第1開口部を設けても下部配線に第1方向に電流を流しやすい構造や、第2開口部を設けても上部配線に第1方向の逆方向に電流を流しやすい構造を実現することが可能となる。
【0013】
また、この第1の側面において、前記第1または第2開口部として、前記第1方向に延び、前記第2方向に互いに隣接する複数の開口部が設けられていてもよい。これにより例えば、第1開口部として複数の開口部を設けても下部配線に第1方向に電流を流しやすい構造や、第2開口部として複数の開口部を設けても上部配線に第1方向の逆方向に電流を流しやすい構造を実現することが可能となる。
【0014】
また、この第1の側面において、前記下部配線または前記上部配線は、前記第1方向に延びる複数の第1部分と、前記第2方向に延びる複数の第2部分とを含み、前記複数の開口部の各々は、前記第2方向に互いに隣接する前記第1部分間に設けられていてもよい。これにより例えば、1本の下部配線内に複数の開口部を設けても第1方向に電流を流しやすい構造や、1本の上部配線内に複数の開口部を設けても第1方向の逆方向に電流を流しやすい構造を実現することが可能となる。
【0015】
また、この第1の側面において、前記上部配線の前記第2方向の幅は、前記下部配線の前記第2方向の幅と同じでもよい。これにより例えば、上部配線の周りに生じる磁界と、下部配線の周りに生じる磁界とを、好適に打ち消し合わせることが可能となる。
【0016】
また、この第1の側面において、前記上部配線の前記第2方向の幅は、前記下部配線の前記第2方向の幅より太くてもよい。これにより例えば、上部配線の第2方向の幅が、下部配線の第2方向の幅より細い場合に比べて好適な構造を実現することが可能となる。
【0017】
また、この第1の側面において、前記上部配線の前記第2方向の幅は、前記下部配線の前記第2方向の幅の90%~110%でもよい。これにより例えば、これらの幅が同じ場合とほぼ同じ効果を得ることが可能となる。
【0018】
また、この第1の側面において、前記第1開口部が、前記下部配線内に設けられているか、または前記第2方向に前記下部配線間に挟まれるように設けられており、かつ、前記第2開口部が、前記上部配線内に設けられているか、または前記第2方向に前記上部配線間に挟まれるように設けられていてもよい。これにより例えば、第1開口部と第2開口部の一方だけを設ける場合に比べて、配線の設計の自由度を高めることが可能となる。
【0019】
また、この第1の側面において、前記第1開口部は、前記上部配線と上下方向に対向する位置に設けられており、前記第2開口部は、前記下部配線と上下方向に対向する位置に設けられていてもよい。これにより例えば、配線間の寄生容量をより低減することが可能となる。
【0020】
また、この第1の側面において、前記第1開口部として、前記第1方向に延びる複数の開口部が設けられており、前記下部配線は、前記第1方向に延びる複数の第1部分と、前記第2方向に延びる複数の第2部分とを含み、前記複数の開口部の各々は、前記第2方向に互いに隣接する前記第1部分間に設けられていてもよい。これにより例えば、第1開口部として複数の開口部を設けても下部配線に第1方向に電流を流しやすい構造を実現することが可能となる。
【0021】
また、この第1の側面において、前記第2開口部として、前記第1方向に延びる複数の開口部が設けられており、前記複数の開口部の各々は、前記第2方向に互いに隣接する前記上部配線間に設けられていてもよい。これにより例えば、第2開口部として複数の開口部を設けても上部配線に第1方向の逆方向に電流を流しやすい構造を実現することが可能となる。
【0022】
また、この第1の側面において、前記第1または第2開口部の前記第2方向の幅は、前記上部配線の前記第2方向の幅の10分の1以下でもよい。これにより例えば、配線間の寄生容量をより低減することが可能となる。
【0023】
また、この第1の側面において、前記複数の第1部分は、前記第2方向の幅が互いに異なる第1部分を含んでいてもよい。これにより例えば、すべての第1部分の第2方向の幅が同じ場合に比べて、配線の設計の自由度を高めることが可能となる。
【0024】
また、この第1の側面において、前記第1または第2開口部として、2次元アレイ状に配置された複数の開口部が設けられていてもよい。これにより例えば、配線間の寄生容量を多数の開口部により低減することが可能となる。
【0025】
また、この第1の側面において、前記第1または第2開口部として、前記上部配線内または前記下部配線内に開口部が1つだけ設けられているか、または、前記第2方向に前記上部配線間または前記下部配線間に挟まれるように開口部が1つだけ設けられていてもよい。これにより例えば、配線間の寄生容量を1つの開口部により低減することが可能となる。
【0026】
また、この第1の側面において、前記第1基板は、シリコン(Si)を含む半導体基板でもよく、前記第2基板は、ガリウム(Ga)およびヒ素(As)を含む半導体基板でもよい。これにより例えば、高性能なGaAs基板に素子を設けつつ、安価なSi基板に回路を設けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1実施形態の測距装置の構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態の発光装置1の構造の例を示す断面図である。
図3】第1実施形態の発光装置1の構造を示す断面図である。
図4】第1実施形態の発光装置1の構造を示す別の断面図である。
図5】第1比較例の発光装置1の構造を示す断面図である。
図6】第1実施形態と第1比較例との違いを説明するための回路図である。
図7】第1実施形態の回路基板46の構造を示す断面図および平面図である。
図8】第2比較例の回路基板46の構造を示す断面図および平面図である。
図9】第3比較例の回路基板46の構造を示す断面図および平面図である。
図10】第3比較例の問題を説明するための回路図である。
図11】第2実施形態の回路基板46の構造を示す断面図および平面図である。
図12】第2実施形態の変形例の信号配線63とGND配線64の構造を示す平面図である。
図13】第3実施形態の回路基板46の構造を示す断面図および平面図である。
図14】第4実施形態の回路基板46の構造を示す断面図および平面図である。
図15】第5実施形態の回路基板46の構造を示す断面図および平面図である。
図16】第6~第8実施形態のGND配線64の形状を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本開示の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0029】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の測距装置の構成を示すブロック図である。
【0030】
図1の測距装置は、発光装置1と、撮像装置2と、制御装置3とを備えている。図1の測距装置は、発光装置1から発光された光を被写体に照射する。撮像装置2は、被写体で反射した光を受光して被写体を撮像する。制御装置3は、撮像装置2から出力された画像信号を用いて被写体までの距離を測定(算出)する。発光装置1は、撮像装置2が被写体を撮像するための光源として機能する。
【0031】
発光装置1は、発光部11と、駆動回路12と、電源回路13と、発光側光学系14とを備えている。撮像装置2は、イメージセンサ21と、画像処理部22と、撮像側光学系23とを備えている。制御装置3は、測距部31を備えている。
【0032】
発光部11は、被写体に照射するためのレーザー光を発光する。本実施形態の発光部11は、後述するように、2次元アレイ状に配置された複数の発光素子を備え、各発光素子は、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)構造を有している。これらの発光素子から出射された光が、被写体に照射される。本実施形態の発光部11は、図1に示すように、LD(Laser Diode)チップ41と呼ばれるチップ内に設けられている。
【0033】
駆動回路12は、発光部11を駆動する電気回路である。電源回路13は、駆動回路12の電源電圧を生成する電気回路である。図1の測距装置では例えば、電源回路13が、測距装置内のバッテリから供給される入力電圧から電源電圧を生成し、駆動回路12が、この電源電圧を用いて発光部11を駆動する。本実施形態の駆動回路12は、図1に示すように、LDD(Laser Diode Driver)基板42と呼ばれる基板内に設けられている。
【0034】
発光側光学系14は、種々の光学素子を備えており、これらの光学素子を介して発光部11からの光を被写体に照射する。同様に、撮像側光学系23は、種々の光学素子を備えており、これらの光学素子を介して被写体からの光を受光する。
【0035】
イメージセンサ21は、被写体からの光を撮像側光学系23を介して受光し、この光を光電変換により電気信号に変換する。イメージセンサ21は例えば、CCD(Charge Coupled Device)センサまたはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサである。本実施形態のイメージセンサ21は、上記の電子信号をA/D(Analog to Digital)変換によりアナログ信号からデジタル信号に変換し、デジタル信号としての画像信号を画像処理部22に出力する。また、本実施形態のイメージセンサ21は、フレーム同期信号を駆動回路12に出力し、駆動回路12は、フレーム同期信号に基づいて、発光部11をイメージセンサ21におけるフレーム周期に応じたタイミングで発光させる。
【0036】
画像処理部22は、イメージセンサ21から出力された画像信号に対し種々の画像処理を施す。画像処理部22は例えば、DSP(Digital Signal Processor)などの画像処理プロセッサを備えている。
【0037】
制御装置3は、図1の測距装置の種々の動作を制御し、例えば、発光装置1の発光動作や、撮像装置2の撮像動作を制御する。制御装置3は例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備えている。
【0038】
測距部31は、イメージセンサ21から出力されて、画像処理部22により画像処理を施された画像信号に基づいて、被写体までの距離を測定する。測距部31は、測距方式として例えば、STL(Structured Light)方式またはToF(Time of Flight)方式を採用している。測距部31はさらに、上記の画像信号に基づいて、測距装置と被写体との距離を被写体の部分ごとに測定して、被写体の3次元形状を特定してもよい。
【0039】
図2は、第1実施形態の発光装置1の構造の例を示す断面図である。
【0040】
図2のAは、本実施形態の発光装置1の構造の第1の例を示している。この例の発光装置1は、上述のLDチップ41およびLDD基板42と、実装基板43と、配線44とを備えている。
【0041】
図2のAは、互いに垂直なX軸、Y軸、およびZ軸を示している。X方向とY方向は横方向(水平方向)に相当し、Z方向は縦方向(垂直方向)に相当する。また、+Z方向は上方向に相当し、-Z方向は下方向に相当する。-Z方向は、厳密に重力方向に一致していてもよいし、厳密には重力方向に一致していなくてもよい。X方向は本開示の第1方向の例であり、Y方向は本開示の第2方向の例である。
【0042】
図2のAでは、LDチップ41から+Z方向に光が出射されている。LDチップ41とLDD基板42は、共に実装基板43上に配置されている。実装基板43は、例えばプリント基板である。本実施形態の実装基板43には、図1のイメージセンサ21や画像処理部22も配置されている。
【0043】
配線44は、実装基板43の表面、裏面、内部などに設けられており、LDチップ41とLDD基板42とを電気的に接続している。配線44は例えば、実装基板43の表面や裏面に設けられたプリント配線や、実装基板43を貫通するビア配線である。
【0044】
図2のBは、本実施形態の発光装置1の構造の第2の例を示している。この例の発光装置1は、第1の例の発光装置1と同じ構成要素を備えているが、配線44の代わりにバンプ45を備えている。
【0045】
図2のBでは、実装基板43上にLDD基板42が配置されており、LDD基板42上にLDチップ41が配置されている。このようにLDチップ41をLDD基板42上に配置することにより、第1の例の場合に比べて、実装基板43のサイズを小型化することが可能となる。図2のBでは、LDチップ41が、LDD基板42上にバンプ45を介して配置されており、バンプ45によりLDD基板42と電気的に接続されている。バンプ45は、例えば金(Au)で形成されている。
【0046】
図2のCは、本実施形態の発光装置1の構造の第3の例を示している。この例の発光装置1は、第2の例の発光装置1と同じ構成要素に加えて、回路基板46と、絶縁基板47と、キャパシタ48、ボンディングワイヤ49とを備えている。
【0047】
図2のCでは、実装基板43上に回路基板46と絶縁基板47とが配置され、回路基板46上にLDチップ41が配置され、絶縁基板47上にLDD基板42とキャパシタ48とが配置されている。また、LDチップ41が、回路基板46上にバンプ45を介して配置されており、バンプ45により回路基板46内の配線(不図示)と電気的に接続されている。さらに、LDD基板42とキャパシタ48が、絶縁基板47内の配線(不図示)やボンディングワイヤ49を介して回路基板46内の配線と電気的に接続されている。回路基板46内の配線や絶縁基板47内の配線の詳細については、後述する。
【0048】
以下、本実施形態の発光装置1について、図2のCに示す第3の例の構造を有しているとして説明する。ただし、以下の説明は、第3の例に特有の構造についての説明を除き、第1または第2の例の構造を有する発光装置1にも適用可能である。
【0049】
図3は、第1実施形態の発光装置1の構造を示す断面図である。図3のAは、発光装置1のXZ断面を示しており、図3のBは、発光装置1のYZ断面を示している。図4は、第1実施形態の発光装置1の構造を示す別の断面図であり、具体的には、図3のAのXY断面を拡大して示している。発光装置1は、本開示の半導体装置の例である。
【0050】
以下、本実施形態の発光装置1の構造を、図3のAを参照して説明する。この説明の中で、図3のBおよび図4も適宜参照する。
【0051】
図3のAに示すように、LDチップ41は、基板51と、積層膜52と、複数の発光素子53と、複数のアノード電極54と、複数のカソード電極55とを備えている。回路基板46は、基板61と、複数の接続パッド62と、複数の信号配線63と、GND(グラウンド)配線64と、絶縁膜65とを備えている。絶縁基板47は、セラミック基板71と、配線72と、配線73と、配線74と、配線75とを備えている。基板61と基板51はそれぞれ、本開示の第1基板と第2基板の例である。GND配線64と信号配線63はそれぞれ、本開示の下部配線と上部配線の例である。発光素子53は、本開示の素子の例である。
【0052】
基板51は、例えばGaAs(ガリウムヒ素)基板などの半導体基板である。図3のAでは、基板51の表面が-Z方向を向いており、基板51の下面となっており、基板51の裏面が+Z方向を向いており、基板51の上面となっている。
【0053】
積層膜52は、基板51の表面(下面)に積層された複数の層を含んでいる。これらの層の例は、n型半導体層、活性層、p型半導体層、および光反射層や、光の射出窓が設けられた絶縁層などである。積層膜52は、-Z方向に突出した複数のメサ部Mを含んでいる。これらのメサ部Mの一部が、複数の発光素子53となっている。
【0054】
発光素子53は、積層膜52の一部として、基板52の表面に設けられている。本実施形態の発光素子53は、VCSEL構造を有しており、光を+Z方向に出射する。発光素子53から出射された光は、図4に示すように、基板51の表面から裏面(上面)へと基板51内を透過して、基板51から出射される。このように、本実施形態のLDチップ41は、裏面出射型のVCSELチップとなっている。図3のAは、発光素子群D1に含まれる複数の発光素子53と、発光素子群D2に含まれる複数の発光素子53と、発光素子群D3に含まれる複数の発光素子53とを示している。これらの発光素子群D1~D3の詳細については、後述する。
【0055】
アノード電極54は、発光素子53の下面に形成されている。カソード電極55は、発光素子53以外のメサ部Mの下面に形成されており、メサ部Mの下面から、メサ部M間にある積層膜52の下面まで延びている。各発光素子53は、対応するアノード電極54と対応するカソード電極55との間に電流が流れることで光を出射する。
【0056】
基板61は、例えばSi(シリコン)基板などの半導体基板である。図3のAでは、基板61の表面が+Z方向を向いており、基板51の上面となっており、基板61の裏面が-Z方向を向いており、基板51の下面となっている。本実施形態によれば、高性能なGaAs基板(基板51)に発光素子53を設けつつ、安価なSi基板(基板61)に回路を設けることが可能となる。
【0057】
GND配線64、絶縁膜65、信号配線63、および接続パッド62は、基板61上に順に形成されている。GND配線64は、基板61上に形成されており、GND電圧を供給するために使用される。信号配線63は、GND配線64上に絶縁膜65を介して形成されており、信号電圧を供給するために使用される。GND配線64と信号配線63は、絶縁膜65により互いに電気的に絶縁されている。GND配線64と信号配線63は、例えばAu(金)配線である。絶縁膜65は、例えば酸化シリコン膜である。接続パッド62は、信号配線63上に形成されており、信号配線63と電気的に接続されている。
【0058】
図3のAは、4本の信号配線63のXZ断面を示しており、図3のBは、これらの信号配線63のうちの1本の信号配線63のYZ断面を示している。図3のAに示すように、これらの信号配線63は、X方向に互いに隣接している。図3のAの信号配線63内の矢印や、図3のBの符号A1は、信号配線63内を流れる電流の向きを示している。本実施形態の信号配線63は、-X方向に電流が流れるように使用される。なお、信号配線63の形状の詳細については、後述する(図7のBを参照)。
【0059】
また、図3のAは、1本のGND配線64のXZ断面を示しており、図3のBは、この信号配線64の5つの部分のYZ断面を示している。図3のBに示すように、これらの部分は、Y方向に互いに隣接している。図3のAのGND配線64内の矢印や、図3のBの符号A2は、GND配線64内を流れる電流の向きを示している。本実施形態のGND配線64は、+X方向に電流が流れるように使用される。なお、GND配線64の形状の詳細については、後述する(図7のCを参照)。
【0060】
本実施形態では、信号配線63内を流れる電流の向きと、GND配線64内を流れる電流の向きが、逆向きとなっている。これにより、信号配線63の周りに生じる磁界と、GND配線64の周りに生じる磁界とを、打ち消し合わせることが可能となる。
【0061】
上述のように、本実施形態のLDチップ41は、回路基板46上にバンプ45を介して搭載されている。具体的には、基板61上に信号配線63が形成され、信号配線63上に接続パッド62が形成されており、さらに、接続パッド62上にバンプ45を介してメサ部Mが配置され、メサ部M上に基板51が配置されている。各メサ部Mは、アノード電極54またはカソード電極55を介してバンプ45上に配置されている。よって、発光素子53は、アノード電極54、バンプ45、および接続パッド62を介して信号配線63と電気的に接続されている(図4を参照)。
【0062】
一方、絶縁基板47は、セラミック基板71上に配線72~75を備えている。LDD基板42は、配線72、73上に配置されており、配線72とボンディングワイヤ49とを介して信号配線63と、配線73とボンディングワイヤ49とを介してGND配線64と電気的に接続されている。キャパシタ48は、配線74、75上に配置されており、配線74とボンディングワイヤ49とを介して信号配線63と、配線75とボンディングワイヤ49とを介してGND配線64と電気的に接続されている。
【0063】
上述のように、本実施形態のLDD基板42は、発光部11を駆動する駆動回路12を含んでいる。LDD基板42内の駆動回路12は、信号配線63などを介してLDチップ41内の発光素子53を駆動させることができる。
【0064】
次に、引き続き図3のAを参照して、発光素子53、信号配線63、およびGND配線64のさらなる詳細について説明する。この説明の中で、図3のBおよび図4も適宜参照する。
【0065】
図3のAは、発光素子群D1に含まれる複数の発光素子53と、発光素子群D2に含まれる複数の発光素子53と、発光素子群D3に含まれる複数の発光素子53とを示している。発光素子群D1~D3の各々では、図3のAおよびBから分かるように、これらの発光素子53が2次元アレイ状に配置されている。
【0066】
発光素子群D1の発光素子53同士は、1本の同じ信号配線63上に設けられており、この信号配線63とその左隣の信号配線63との間で互いに並列に接続されている。これらの信号配線63は、本開示の互いに隣接する第1および第2配線の例である。これは、発光素子群D2、D3についても同様である。発光素子群D2の発光素子53同士は、1本の同じ信号配線63上に設けられており、この信号配線63とその左隣の信号配線63との間で互いに並列に接続されている。発光素子群D3の発光素子53同士は、1本の同じ信号配線63上に設けられており、この信号配線63とその左隣の信号配線63との間で互いに並列に接続されている。
【0067】
一方、発光素子群D1の発光素子53と、発光素子群D2の発光素子53は、発光素子群D2の下の信号配線63により互いに直列に接続されている。同様に、発光素子群D2の発光素子53と、発光素子群D3の発光素子53は、発光素子群D3の下の信号配線63により互いに直列に接続されている。
【0068】
このように、本実施形態の発光装置1では、同じ発光素子群の発光素子53同士、すなわち、同じ信号配線63上の発光素子53同士は、互いに並列に接続されている。一方、異なる発光素子群の発光素子53同士、すなわち、異なる信号配線63上の発光素子53同士は、互いに直列に接続されている。
【0069】
図3のAは、発光素子群D1の下の信号配線63とGND配線64との間に生じる寄生容量C1と、発光素子群D2の下の信号配線63とGND配線64との間に生じる寄生容量C2と、発光素子群D3の下の信号配線63とGND配線64との間に生じる寄生容量C3とを示している。後述するように、本実施形態によれば、これらの信号配線63とGND配線64との間の寄生容量を容易に低減することが可能となる。寄生容量C1~C3の詳細については、後述する。
【0070】
図5は、第1比較例の発光装置1の構造を示す断面図である。図5のAは、発光装置1のXZ断面を示しており、図5のBは、発光装置1のYZ断面を示している。
【0071】
本比較例の発光装置1は、本実施形態の発光装置1と同じ構成要素を備えている。ただし、本比較例の回路基板46は、信号配線63を1本のみ備えており、本比較例のLDチップ41のすべてのメサ部Mが、この信号配線63上に配置されている。よって、本比較例の発光装置1では、LDチップ41のすべての発光素子53同士が、互いに並列に接続されている。例えば、発光素子群D1の発光素子53と、発光素子群D2の発光素子53と、発光素子群D3の発光素子53が、この信号配線63により互いに並列に接続されている。
【0072】
図6は、第1実施形態と第1比較例との違いを説明するための回路図である。
【0073】
図6のAは、第1比較例の発光装置1の回路構成を示している。本比較例では、LDチップ41の発光素子群(ダイオード)D1~D3が、LDD基板42とキャパシタ48との間で互いに並列に接続されている。
【0074】
図6のBは、第1実施形態の発光装置1の回路構成を示している。本実施形態では、LDチップ41の発光素子群D1~D3が、LDD基板42とキャパシタ48との間で互いに直列に接続されている。本実施形態によれば、発光素子群D1~D3を互いに直列に接続することで、発光素子群D1~D3を互いに並列に接続する場合に比べて、LDD基板42の消費電力を低減することが可能となる。
【0075】
図6のCも、第1実施形態の発光装置1の回路構成を示している。上述のように、本実施形態の発光装置1では、図6のCに示すような寄生容量C1~C3が生じる。これらの寄生容量C1~C3は、信号配線63により供給される信号電圧を遅延させる。これにより例えば、測距装置による測距の精度が低下するなどの問題が生じる可能性がある。そのため、寄生容量C1~C3は低減することが望ましい。
【0076】
図7は、第1実施形態の回路基板46の構造を示す断面図および平面図である。図7のAは、図3のBと同様に、回路基板46のYZ断面を示している。図7のBは、信号配線63の平面形状を示している。図7のCは、GND配線64の平面形状を示している。
【0077】
本実施形態の回路基板46は、図7のBに示すように、X方向に互いに隣接する複数の信号配線63を備えている。図7のBは、各信号配線63のY方向の幅W1と、X方向に信号配線63間に挟まれるように設けられた複数の開口部P’とを示している。これらの開口部P’は、Y方向に延びる線状の形状を有しており、X方向に互いに隣接しており、信号配線63間に挟まれた溝(スリット)となっている。
【0078】
本実施形態の回路基板46はさらに、図7のCに示すように、1本のGND配線64を備えている。図7のCは、GND配線64のY方向の幅W2と、GND配線64内に設けられた複数の開口部Pとを示している。これらの開口部Pは、X方向に延びる線状の形状を有しており、Y方向に互いに隣接しており、GND配線64内を貫通する穴(ホール)となっている。これらの開口部Pは、本開示の第1開口部の例である。
【0079】
本実施形態のGND配線64は、図7のCに示すように、X方向に延びる3本以上の第1部分64aと、Y方向に延びる2本の第2部分64bとを含んでいる。各開口部Pは、Y方向に互いに隣接する第1部分64a間に設けられている。また、一方の第2部分64bは、これらの第1部分64aの+X方向の端部に設けられ、他方の第2部分64bは、これらの第1部分64aの-X方向の端部に設けられている。
【0080】
本実施形態によれば、GND配線64内に開口部Pを形成することで、寄生容量C1~C3を容易に低減することが可能となる。寄生容量C1~C3は例えば、絶縁膜65内に空洞を形成することでも低減可能である。しかしながら、絶縁膜65内に空洞を形成する工程は、実施することが難しい。一方、GND配線64内に開口部Pを形成する工程は、例えば一般的なフォトリソグラフィおよびエッチングにより実施できるため、容易に形成することが可能である。よって、本実施形態によれば、GND配線64内に開口部Pを形成することで、寄生容量C1~C3を容易に低減することが可能となる。
【0081】
本実施形態の開口部Pは、X方向に延びるように形成されているため、本実施形態のGND配線64は、X方向に延びる第1部分64aを含んでいる。よって、本実施形態によれば、GND配線64内に開口部Pを形成しても、GND配線64内に電流を+X方向に流すことができる。このように、開口部Pは、X方向に延びる形状を有することが望ましいが、後述するようにX方向に延びる形状を有していなくてもよい。
【0082】
図7のAは、図7のBおよびCと同様に、各信号配線63のY方向の幅W1と、GND配線64のY方向の幅W2とを示している。図7のAはさらに、各第1部分64aのY方向の幅Waと、各開口部PのY方向の幅Wbとを示している。
【0083】
本実施形態では、各信号配線63の幅W1が、GND配線64の幅W2と同じになっている(W1=W2)。これにより、信号配線63の周りに生じる磁界と、GND配線64の周りに生じる磁界とを、好適に打ち消し合わせることが可能となる。例えば、これらの合成磁界がゼロに近くなるように、これらの磁界を打ち消し合わせることが可能となる。
【0084】
ただし、このような効果は、幅W1と幅W2との間に多少の差があっても、得ることが可能である。例えば、各信号配線の幅W1は、GND配線の幅W2の90%~110%とすることが望ましい(W2×0.9≦W1≦W2×1.1)。これにより、幅W1と幅W2が同じ場合とほぼ同じ効果を得ることが可能となる。なお、幅W1と幅W2が異なる場合には、幅W1を幅W2より細くするよりも(W1<W2)、幅W1を幅W2より太くする方が望ましい(W1>W2)。
【0085】
各第1部分64aの幅Waや、各開口部Pの幅Wbは、任意の値に設定してよい。本実施形態では、GND配線64のすべての第1部分64aの幅Waが、同じ値に設定されており、GND配線64内のすべての開口部Pの幅Wbが、同じ値に設定されている。
【0086】
次に、図8図10を参照して、第1実施形態と第2および第3比較例とを比較する。
【0087】
図8は、第2比較例の回路基板46の構造を示す断面図および平面図である。図8のA~Cはそれぞれ、図7のA~Cに対応している。
【0088】
本比較例の信号配線63は、第1実施形態の信号配線63と同じ形状を有している。一方、第1実施形態のGND配線64が開口部Pを有しているのに対し、本比較例のGND配線64は開口部Pを有していない。そのため、本比較例では、信号配線63とGND配線64との間に大きな寄生容量が生じてしまう。
【0089】
一般に、2枚の電極間の静電容量Cは、C=εS/dで与えられる。ここで、dは電極間の距離を表し、Sは各電極の面積を表し、εは電極間の材料の誘電率を表す。よって、信号配線63とGND配線64との間の寄生容量は、例えば信号配線63の面積またはGND配線64の面積を小さくすることで低減可能である。
【0090】
図9は、第3比較例の回路基板46の構造を示す断面図および平面図である。図9のA~Cはそれぞれ、図7のA~Cに対応している。
【0091】
本比較例の信号配線63およびGND配線64はそれぞれ、第2比較例の信号配線63およびGND配線64とおおむね同じ形状を有している。ただし、本比較例では、GND配線64の幅W2が、信号配線63の幅W1よりも細くなっている。これにより、本比較例の寄生容量は、第2比較例の寄生容量よりも小さくなっている。理由は、GND配線64の幅W2が細くなることで、GND配線64の面積が小さくなるからである。
【0092】
図10は、第3比較例の問題を説明するための回路図である。
図10は、図6のCと同様に、本比較例の発光装置1の回路構成を示している。本比較例では、LDチップ41の発光素子群D1~D3が、LDD基板42とキャパシタ48との間で互いに並列に接続されている。
【0093】
上述のように、本比較例によれば、寄生容量C1~C3を第2比較例の場合に比べて低減することができる。しかしながら、本比較例のようにGND配線64の幅W2を細くすると、LDD基板42と発光素子群D1~D3との間に大きな寄生インダクタンスLが生じてしまう。理由は、信号配線63の周りに生じる磁界と、GND配線64の周りに生じる磁界との打ち消し合いが、弱くなるからである。このような寄生インダクタンスLは、駆動回路12(図1)の動作の妨げとなるおそれがある。
【0094】
そこで、本実施形態では、GND配線64の幅W2を信号配線63の幅W1と同じに設定しつつ、GND配線64内に開口部Pを設けている。これにより、寄生インダクタンスLの増加を抑制しつつ、寄生容量C1~C3を低減することが可能となる。本実施形態の寄生容量C1~C3は、第2比較例の場合と同様に、GND配線64の面積が狭くなることで小さくなっている。一方、本実施形態の寄生インダクタンスLは、第1比較例と同様に、幅W2を幅W1と同じにすることで小さくなっている。これにより、寄生容量C1~C3の低減と寄生インダクタンスLの低減とを両立することが可能となる。
【0095】
以上のように、本実施形態の回路基板46は、GND配線64内に設けられた開口部Pを備えている。よって、本実施形態によれば、信号配線63とGND配線64との間の寄生容量C1~C3を容易に低減することが可能となる。
【0096】
以下、第2~第8実施形態の回路基板46やGND配線64について説明する。第2~第8実施形態は第1実施形態の変形例であり、第2~第8実施形態については、第1実施形態との相違点を中心に説明する。第2~第8実施形態の回路基板46やGND配線64は、第1実施形態の回路基板46やGND配線64と同様に、図3のA等に示す発光装置1内に設けられている。
【0097】
(第2実施形態)
図11は、第2実施形態の回路基板46の構造を示す断面図および平面図である。図11のA~Cはそれぞれ、図7のA~Cに対応している。
【0098】
本実施形態の回路基板46は、第1実施形態とは異なる形状の複数の信号配線63と、第1実施形態と同じ形状の1本のGND配線64とを備えている。これらの信号配線63は、図11のBに示すように、X方向およびY方向に互いに隣接している。本実施形態の回路基板46は、X方向に互いに隣接する信号配線63間に挟まれるように設けられた複数の開口部P’と、Y方向に互いに隣接する信号配線63間に挟まれるように設けられた複数の開口部Pとを備えている。信号配線63間の開口部P’が、Y方向に延びており、X方向に互いに隣接しているのに対し、信号配線63間の開口部Pは、X方向に延びており、Y方向に互いに隣接している。信号配線63間の開口部Pは、本開示の第2開口部の例である。
【0099】
本実施形態によれば、信号配線63間に開口部Pを形成することで、GND配線64内に開口部Pを形成する場合と同様に、寄生容量C1~C3を容易に低減することが可能となる。また、本実施形態によれば、開口部Pを信号配線63間にもGND配線64内にも形成することができるため、信号配線63やGND配線64の設計自由度を高めることが可能となる。
【0100】
本実施形態の開口部Pは、X方向に延びるように形成されているため、本実施形態の各信号配線63は、X方向に延びる形状を有しており、本実施形態のGND配線64は、X方向に延びる第1部分64aを含んでいる。よって、本実施形態によれば、信号配線63間に開口部Pを形成しても、信号配線63内に電流を-X方向に流すことができ、GND配線64内に開口部Pを形成しても、GND配線64内に電流を+X方向に流すことができる。このように、開口部Pは、X方向に延びる形状を有することが望ましいが、後述するようにX方向に延びる形状を有していなくてもよい。
【0101】
また、図11のAに示すように、本実施形態のGND配線64内の開口部Pは、信号配線63とZ方向に対向する位置に設けられており、本実施形態の信号配線63間の開口部Pは、GND配線64とZ方向に対向する位置に設けられている。別言すると、GND配線64内の開口部Pと、信号配線63間の開口部Pは、互い違いに配置されている。これにより、寄生容量C1~C3をさらに低減することが可能となる。
【0102】
図12は、第2実施形態の変形例の信号配線63とGND配線64の構造を示す平面図である。
【0103】
図12のAは、本実施形態の第1変形例の信号配線63を示している。本変形例の信号配線63では、開口部Pが、信号配線63内に設けられている。具体的には、本変形例の各信号配線63は、X方向に延びる3本以上の第1部分63aと、Y方向に延びる2本の第2部分63bとを含んでおり、各開口部Pは、Y方向に互いに隣接する第1部分63a間に設けられている。信号配線63内の開口部Pも、本開示の第2開口部の例である。本変形例の信号配線63は、図11のCに示すGND配線64と対向していてもよいし、後述する第2変形例のGND配線64と対向していてもよい。
【0104】
図12のBは、本実施形態の第2変形例のGND配線64を示している。本変形例のGND配線64では、開口部Pが、GND配線64内に設けられているか、または、Y方向にGND配線63間に挟まれるように設けられている。前者の各開口部Pは、2本の第1部分64aと2本の第2部分64bとにより囲まれており、後者の各開口部Pは、2本の第1部分64aと1本の第2部分64bとに隣接している。GND配線64間の開口部Pも、本開示の第1開口部の例である。本変形例のGND配線64は、図11のBに示す信号配線63と対向していてもよいし、前述の第1変形例の信号配線63と対向していてもよい。
【0105】
なお、図11のBに示す信号配線63間の各開口部Pは、2本の信号配線63間に挟まれており、図12のBに示すGND配線64間の各開口部Pは、1本のGND配線64の2つの部分(第1部分64a)間に挟まれている。ただし、前者の各開口部Pは、1本の信号配線63の2つの部分間に挟まれていてもよいし、後者の各開口部Pは、2本のGND配線64間に挟まれていてもよい。
【0106】
以上のように、本実施形態の回路基板46は、GND配線64内に設けられた開口部Pに加えて、信号配線63間に設けられた開口部Pを備えている。よって、本実施形態によれば、信号配線63とGND配線64との間の寄生容量C1~C3をさらに低減することや、信号配線63やGND配線64の設計自由度を高めることが可能となる。
【0107】
(第3実施形態)
図13は、第3実施形態の回路基板46の構造を示す断面図および平面図である。図13のA~Cはそれぞれ、図7のA~Cに対応している。
【0108】
本実施形態の回路基板46は、第1実施形態と同じ形状の複数の信号配線63と、第1実施形態とおおむね同じ形状の1本のGND配線64とを備えている。ただし、本実施形態では、GND配線64内の開口部Pの幅Wbが、信号配線63の幅W1の10分の1以下に設定されている(Wb≦W1/10)。
【0109】
シミュレーションの結果、幅Wbが幅W1の10分の1以下になるようにGND配線64内の開口部Pを形成することで、寄生容量C1~C3を効果的に低減できることが判明した。よって、本実施形態の幅Wbは、幅W1の10分の1以下に設定されている。この条件は、開口部PをGND配線64間、信号配線63内、または信号配線63間に形成する場合に適用してもよい。
【0110】
なお、信号配線63の幅W1は、本実施形態ではGND配線64の幅W2と同じになっているが、GND配線64の幅W2と異なっていてもよい。例えば、幅W1は、幅W2の90%~110%となっていてもよいし、幅W2より太くてもよい。
【0111】
(第4実施形態)
図14は、第4実施形態の回路基板46の構造を示す断面図および平面図である。図14のA~Cはそれぞれ、図7のA~Cに対応している。
【0112】
本実施形態の回路基板46は、第1実施形態と同じ形状の複数の信号配線63と、第1実施形態とおおむね同じ形状の1本のGND配線64とを備えている。ただし、本実施形態のGND配線64は、上述の第1部分64aとして、幅Waが互いに異なる第1部分64aを含んでいる。このように、本実施形態のGND配線64では、すべての第1部分64aの幅Waが同じ値になっていなくてもよい。これにより、すべての第1部分64aの幅Waが同じ場合に比べて、GND配線64の設計の自由度を高めることが可能となる。
【0113】
なお、第2実施形態の各信号配線63も、本実施形態のGND配線64と同様に、Y方向の幅が互いに異なる第1部分63aを含んでいてもよい。これにより、すべての第1部分63aの幅が同じ場合に比べて、各信号配線63の設計の自由度を高めることが可能となる。
【0114】
(第5実施形態)
図15は、第5実施形態の回路基板46の構造を示す断面図および平面図である。図15のA~Cはそれぞれ、図7のA~Cに対応している。
【0115】
本実施形態の回路基板46は、第1実施形態とは異なる形状の複数の信号配線63と、第1実施形態と同じ形状の1本のGND配線64とを備えている。具体的には、本実施形態のGND配線64は、図15のCに示すように、X方向に延びる3本以上の第1部分64aと、Y方向に延びる3本以上の第2部分64bとを含んでおり、2次元アレイ状に配置された複数の開口部Pを含んでいる。これらの開口部Pは、X方向に延びており、X方向およびY方向に互いに隣接している。本実施形態によれば、GND配線64内に多数の小さな開口部Pを設けることが可能となる。
【0116】
なお、第2実施形態の各信号配線63も、本実施形態のGND配線64と同様に、2次元アレイ状に配置された複数の開口部Pを含んでいてもよい。これにより、各信号配線63内に多数の小さな開口部Pを設けることが可能となる。
【0117】
(第6~第8実施形態)
図16は、第6~第8実施形態のGND配線64の形状を示す平面図である。第6~第8実施形態は、第5実施形態の変形例に相当する。
【0118】
図16のAは、第6実施形態のGND配線64の形状を示している。本実施形態のGND配線64は、第5実施形態のGND配線64と同様に、2次元アレイ状に配置された複数の開口部Pを含んでいる。ただし、本実施形態の各開口部Pは、円形の平面形状を有している。本実施形態によれば、GND配線64内に多数の小さな開口部Pを設けることが可能となる。
【0119】
図16のBは、第7実施形態のGND配線64の形状を示している。本実施形態のGND配線64は、開口部Pを1つだけ含んでいる。この開口部Pは、X方向に延びており、長方形の平面形状を有している。本実施形態によれば、GND配線64内に大きな単一の開口部Pを設けることが可能となる。
【0120】
図16のCは、第8実施形態のGND配線64の形状を示している。本実施形態のGND配線64も、開口部Pを1つだけ含んでいる。この開口部Pは、X方向に延びており、楕円形の平面形状を有している。本実施形態によれば、GND配線64内に大きな単一の開口部Pを設けることが可能となる。
【0121】
なお、第6~第8実施形態の開口部Pは、第2実施形態の各信号配線63に適用してもよい。これにより、各信号配線63内に多数の小さな開口部Pを設けることや、各信号配線63内に大きな単一の開口部Pを設けることが可能となる。
【0122】
なお、第1~第8実施形態の発光装置1は、測距装置の光源として使用されているが、その他の態様で使用されてもよい。例えば、これらの実施形態の発光装置1は、プリンタなどの光学機器の光源として使用されてもよいし、照明装置として使用されてもよい。
【0123】
以上、本開示の実施形態について説明したが、これらの実施形態は、本開示の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の変更を加えて実施してもよい。例えば、2つ以上の実施形態を組み合わせて実施してもよい。
【0124】
なお、本開示は、以下のような構成を取ることもできる。
【0125】
(1)
第1基板と、
前記第1基板上に設けられた下部配線と、
前記下部配線上に絶縁膜を介して設けられた複数の上部配線と、
前記上部配線上に複数の素子を介して設けられた第2基板とを備え、
前記上部配線は、第1方向に互いに隣接する第1および第2配線を含み、
前記第1配線上の前記素子と、前記第2配線上の前記素子は、互いに直列に接続されており、
第1開口部が、前記下部配線内に設けられているか、または前記第1方向と異なる第2方向に前記下部配線間に挟まれるように設けられている、または、第2開口部が、前記上部配線内に設けられているか、または前記第2方向に前記上部配線間に挟まれるように設けられている、半導体装置。
【0126】
(2)
前記第1配線上の前記素子同士は、互いに並列に接続されており、
前記第2配線上の前記素子同士は、互いに並列に接続されている、
(1)に記載の半導体装置。
【0127】
(3)
前記素子は、前記第2基板に設けられた発光素子である、(1)に記載の半導体装置。
【0128】
(4)
前記発光素子から出射された光は、前記第2基板の下面から上面へと前記第2基板内を透過して、前記第2基板から出射される、(3)に記載の発光装置。
【0129】
(5)
前記下部配線は、前記第1方向に電流が流れるように使用され、
前記上部配線は、前記第1方向の逆方向に電流が流れるように使用される、
(1)に記載の半導体装置。
【0130】
(6)
前記第1または第2開口部として、前記第1方向に延びる開口部が設けられている、(1)に記載の半導体装置。
【0131】
(7)
前記第1または第2開口部として、前記第1方向に延び、前記第2方向に互いに隣接する複数の開口部が設けられている、(1)に記載の半導体装置。
【0132】
(8)
前記下部配線または前記上部配線は、前記第1方向に延びる複数の第1部分と、前記第2方向に延びる複数の第2部分とを含み、
前記複数の開口部の各々は、前記第2方向に互いに隣接する前記第1部分間に設けられている、(7)に記載の半導体装置。
【0133】
(9)
前記上部配線の前記第2方向の幅は、前記下部配線の前記第2方向の幅と同じである、(1)に記載の半導体装置。
【0134】
(10)
前記上部配線の前記第2方向の幅は、前記下部配線の前記第2方向の幅より太い、(1)に記載の半導体装置。
【0135】
(11)
前記上部配線の前記第2方向の幅は、前記下部配線の前記第2方向の幅の90%~110%である、(1)に記載の半導体装置。
【0136】
(12)
前記第1開口部が、前記下部配線内に設けられているか、または前記第2方向に前記下部配線間に挟まれるように設けられており、かつ、前記第2開口部が、前記上部配線内に設けられているか、または前記第2方向に前記上部配線間に挟まれるように設けられている、(1)に記載の半導体装置。
【0137】
(13)
前記第1開口部は、前記上部配線と上下方向に対向する位置に設けられており、
前記第2開口部は、前記下部配線と上下方向に対向する位置に設けられている、
(12)に記載の半導体装置。
【0138】
(14)
前記第1開口部として、前記第1方向に延びる複数の開口部が設けられており、
前記下部配線は、前記第1方向に延びる複数の第1部分と、前記第2方向に延びる複数の第2部分とを含み、
前記複数の開口部の各々は、前記第2方向に互いに隣接する前記第1部分間に設けられている、(12)に記載の半導体装置。
【0139】
(15)
前記第2開口部として、前記第1方向に延びる複数の開口部が設けられており、
前記複数の開口部の各々は、前記第2方向に互いに隣接する前記上部配線間に設けられている、(12)に記載の半導体装置。
【0140】
(16)
前記第1または第2開口部の前記第2方向の幅は、前記上部配線の前記第2方向の幅の10分の1以下である、(1)に記載の半導体装置。
【0141】
(17)
前記複数の第1部分は、前記第2方向の幅が互いに異なる第1部分を含む、(8)に記載の半導体装置。
【0142】
(18)
前記第1または第2開口部として、2次元アレイ状に配置された複数の開口部が設けられている、(1)に記載の半導体装置。
【0143】
(19)
前記第1または第2開口部として、前記上部配線内または前記下部配線内に開口部が1つだけ設けられているか、または、前記第2方向に前記上部配線間または前記下部配線間に挟まれるように開口部が1つだけ設けられている、(1)に記載の半導体装置。
【0144】
(20)
前記第1基板は、シリコン(Si)を含む半導体基板であり、
前記第2基板は、ガリウム(Ga)およびヒ素(As)を含む半導体基板である、
(1)に記載の発光装置。
【符号の説明】
【0145】
1:発光装置、2:撮像装置、3:制御装置、
11:発光部、12:駆動回路、13:電源回路、14:発光側光学系、
21:イメージセンサ、22:画像処理部、23:撮像側光学系、31:測距部、
41:LDチップ、42:LDD基板、43:実装基板、
44:配線、45:バンプ、46:回路基板、
47:絶縁基板、48:キャパシタ、49:ボンディングワイヤ、
51:基板、52:積層膜、53:発光素子、
54:アノード電極、55:カソード電極、
61:基板、62:接続パッド、
63:信号配線、63a:第1部分、63b:第2部分、
64:GND配線、64a:第1部分、64b:第2部分、65:絶縁膜、
71:セラミック基板、72:配線、73:配線、74:配線、75:配線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16