(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045000
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】レーザ溶接機及び溶接ヘッドの高さ位置調整方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/02 20140101AFI20240326BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20240326BHJP
【FI】
B23K26/02 A
B23K26/21 A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106168
(22)【出願日】2023-06-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2022150106
(32)【優先日】2022-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022199639
(32)【優先日】2022-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和隆
(72)【発明者】
【氏名】林本 和也
(72)【発明者】
【氏名】岩野 剛
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168CA06
4E168CB03
4E168CB08
4E168CB15
4E168CB22
4E168CB23
4E168DA02
4E168DA28
(57)【要約】
【課題】オペレータによる溶接箇所を教示するティーチングの作業を簡略化することができるレーザ溶接機を提供する。
【解決手段】溶接ヘッド20は溶接対象の板金Wにレーザビームを照射する。位置調整機構(多関節ロボット10)は、溶接ヘッド20の板金Wに対する平面的な位置及び高さ方向の位置を調整する。カメラ21は溶接ヘッド20に取り付けられ、板金Wの溶接箇所を撮影する。計算機(コンピュータ機器50)は、カメラ21が溶接箇所を撮影した撮影画像のコントラストを評価した評価値に基づいて、カメラ21の焦点が板金Wの表面に位置する溶接ヘッド20の高さ方向の最適位置を求める。制御装置(NC装置40)は、溶接ヘッド20の高さ方向の位置が計算機によって求められた最適位置となるように位置調整機構を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接対象の板金にレーザビームを照射する溶接ヘッドと、
前記溶接ヘッドの前記板金に対する平面的な位置及び高さ方向の位置を調整する位置調整機構と、
前記溶接ヘッドに取り付けられ、前記板金の溶接箇所を撮影するカメラと、
前記カメラが前記溶接箇所を撮影した撮影画像のコントラストを評価した評価値に基づいて、前記カメラの焦点が前記板金の表面に位置する前記溶接ヘッドの高さ方向の最適位置を求める計算機と、
前記溶接ヘッドの高さ方向の位置が前記計算機によって求められた最適位置となるように前記位置調整機構を制御する制御装置と、
を備えるレーザ溶接機。
【請求項2】
前記計算機は、前記評価値が最大値となる前記溶接ヘッドの高さ方向の位置を前記最適位置と決定する請求項1に記載のレーザ溶接機。
【請求項3】
前記計算機は、
前記位置調整機構が前記溶接ヘッドを前記高さ方向に移動させている状態で、所定の時間ごとに前記評価値を求め、
時間の進行に伴って変化する前記評価値の回帰直線の傾きを求め、
前記回帰直線の傾きが0となる第1の時刻を求め、
前記第1の時刻から、前記第1の時刻から所定の時間だけ遡った第2の時刻までの、複数の前記評価値を含む時間の中央である第3の時刻を求め、
前記第3の時刻における前記溶接ヘッドの前記高さ方向の位置を前記最適位置と決定する
請求項1に記載のレーザ溶接機。
【請求項4】
前記溶接ヘッドは、
発散光のレーザビームをコリメート光に変換するコリメーションレンズと、
コリメート光に変換されたレーザビームを集束させて前記板金に照射する集束レンズと、
前記板金で反射する可視光を反射させて前記カメラに入射させる全反射ミラーと、
前記計算機が前記最適位置を求めるとき、前記全反射ミラーを前記板金で反射する可視光を反射させて前記カメラに入射させる第1の位置に位置させ、前記板金における前記溶接箇所を溶接するとき、前記全反射ミラーを前記板金に照射されるレーザビームの光路から退避する第2の位置に位置させるよう、前記全反射ミラーを駆動する駆動部と、
を備える請求項1~3のいずれか1項に記載のレーザ溶接機。
【請求項5】
前記溶接ヘッドは、
発散光のレーザビームをコリメート光に変換するコリメーションレンズと、
コリメート光に変換されたレーザビームを集束させて前記板金に照射する集束レンズと、
前記板金で反射する可視光を反射させて前記カメラに入射させ、前記板金に照射されるレーザビームを透過させるハーフミラーと、
を備える請求項1~3のいずれか1項に記載のレーザ溶接機。
【請求項6】
前記溶接ヘッドは、
発散光のレーザビームをコリメート光に変換するコリメーションレンズと、
コリメート光に変換されたレーザビームを反射させてレーザビームの進行方向を曲げる全反射ミラーと、
前記全反射ミラーで反射したレーザビームを集束させて前記板金に照射する集束レンズと、
前記板金における前記溶接箇所を溶接するとき、前記全反射ミラーを前記板金に照射されるレーザビームを反射させて前記集束レンズに入射させる第1の位置に位置させ、前記計算機が前記最適位置を求めるとき、前記全反射ミラーを前記板金で反射する可視光の光路から退避する第2の位置に位置させるよう、前記全反射ミラーを駆動する駆動部と、
を備える請求項1~3のいずれか1項に記載のレーザ溶接機。
【請求項7】
前記溶接ヘッドは、
発散光のレーザビームをコリメート光に変換するコリメーションレンズと、
コリメート光に変換されたレーザビームを反射させてレーザビームの進行方向を曲げ、前記板金で反射する可視光を透過させて前記カメラに入射させるハーフミラーと、
前記ハーフミラーで反射したレーザビームを集束させて前記板金に照射する集束レンズと、
を備える請求項1~3のいずれか1項に記載のレーザ溶接機。
【請求項8】
溶接ヘッドを板金の溶接箇所における平面的な位置に位置させた状態で、前記溶接ヘッドを高さ方向に移動させて、前記溶接ヘッドに取り付けられているカメラによって前記溶接箇所を撮影し、
前記溶接箇所の撮影画像のコントラストを評価した評価値を算出し、
前記評価値に基づいて、前記カメラの焦点が前記板金の表面に位置する前記溶接ヘッドの高さ方向の最適位置を求め、
前記溶接ヘッドより射出されるレーザビームによって前記溶接箇所を溶接するときに、前記溶接ヘッドの高さ方向の位置を前記最適位置に位置決めする
溶接ヘッドの高さ位置調整方法。
【請求項9】
前記溶接ヘッドを前記高さ方向の複数の位置における各位置に移動させて、前記カメラによって前記溶接箇所を撮影し、
前記各位置における前記溶接箇所の撮影画像のコントラストを評価した評価値を算出し、
前記各位置で算出した前記評価値に基づいて前記最適位置を求める
請求項8に記載の溶接ヘッドの高さ位置調整方法。
【請求項10】
前記評価値が最大値となる前記溶接ヘッドの高さ方向の位置を前記最適位置と決定する請求項9に記載の溶接ヘッドの高さ位置調整方法。
【請求項11】
前記溶接ヘッドを前記高さ方向に移動させている状態で、所定の時間ごとに、前記溶接箇所の撮影画像のコントラストを評価した評価値を算出し、
時間の進行に伴って変化する前記評価値の回帰直線の傾きを求め、
前記回帰直線の傾きが0となる第1の時刻を求め、
前記第1の時刻から、前記第1の時刻から所定の時間だけ前の第2の時刻までの、複数の前記評価値を含む時間の中央である第3の時刻を求め、
前記第3の時刻における前記溶接ヘッドの前記高さ方向の位置を前記最適位置と決定する
請求項8に記載の溶接ヘッドの高さ位置調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ溶接機及び溶接ヘッドの高さ位置調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ溶接機によって板金における第1の箇所から第2の箇所まで直線状の溶接箇所を溶接することがある。このような場合、レーザ溶接機のオペレータは、第1及び第2の箇所それぞれに対する溶接ヘッドの平面的な位置及び高さ方向の位置を教示するティーチングを行う必要がある。ティーチングでは、平面的な位置及び高さ方向の位置に加えて、溶接ヘッドの角度を教示することもある。板金における溶接箇所に対する溶接ヘッドの高さ方向の位置を調整するのは、溶接ヘッドから射出されるレーザビームの焦点を板金の表面に位置させる必要があるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のレーザ溶接機は、レーザビームの焦点が板金の表面に位置しているか否かを確認するための測定光を板金の表面に照射する測定光照射装置と、測定光が照射された板金の表面を撮影するカメラを備える(特許文献1参照)。板金の表面に照射された測定光は、レーザビームの焦点が板金の表面から上方に離れた位置にあるか、表面上にあるか、下方にあるかによってその位置がずれる。カメラが撮影している板金の表面に照射された測定光の画像をモニタに表示することにより、オペレータは、レーザビームの焦点が板金の表面に位置するように溶接ヘッドの高さ方向の位置を調整することができる。
【0005】
板金における複数の溶接箇所を溶接する場合には、オペレータは、それぞれの溶接箇所において、モニタに表示された測定光の位置を確認しながら、溶接ヘッドの平面的な位置及び高さ方向の位置を教示するティーチングを行う必要がある。このようなティーチングの作業は煩雑であり、オペレータにとって大きな負担となっている。そこで、ティーチングの作業を簡略化することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1またはそれ以上の実施形態の第1の態様は、溶接対象の板金にレーザビームを照射する溶接ヘッドと、前記溶接ヘッドの前記板金に対する平面的な位置及び高さ方向の位置を調整する位置調整機構と、前記溶接ヘッドに取り付けられ、前記板金の溶接箇所を撮影するカメラと、前記カメラが前記溶接箇所を撮影した撮影画像のコントラストを評価した評価値に基づいて、前記カメラの焦点が前記板金の表面に位置する前記溶接ヘッドの高さ方向の最適位置を求める計算機と、前記溶接ヘッドの高さ方向の位置が前記計算機によって求められた最適位置となるように前記位置調整機構を制御する制御装置とを備えるレーザ溶接機を提供する。
【0007】
1またはそれ以上の実施形態の第1の態様によれば、カメラが溶接箇所を撮影した撮影画像のコントラストを評価した評価値に基づいて、カメラの焦点が板金の表面に位置する溶接ヘッドの高さ方向の最適位置が求められる。従って、オペレータは、ティーチングによって溶接箇所に対する溶接ヘッドの高さ方向の位置を教示する必要はなく、ティーチングの作業が簡略化される。
【0008】
1またはそれ以上の実施形態の第2の態様は、溶接ヘッドを板金の溶接箇所における平面的な位置に位置させた状態で、前記溶接ヘッドを高さ方向に移動させて、前記溶接ヘッドに取り付けられているカメラによって前記溶接箇所を撮影し、前記溶接箇所の撮影画像のコントラストを評価した評価値を算出し、前記評価値に基づいて、前記カメラの焦点が前記板金の表面に位置する前記溶接ヘッドの高さ方向の最適位置を求め、前記溶接ヘッドより射出されるレーザビームによって前記溶接箇所を溶接するときに、前記溶接ヘッドの高さ方向の位置を前記最適位置に位置決めする溶接ヘッドの高さ位置調整方法を提供する。
【0009】
1またはそれ以上の実施形態の第2の態様によれば、カメラが溶接箇所を撮影した撮影画像のコントラストを評価した評価値に基づいて、カメラの焦点が板金の表面に位置する溶接ヘッドの高さ方向の最適位置が求められる。従って、オペレータは、ティーチングによって溶接箇所に対する溶接ヘッドの高さ方向の位置を教示する必要はなく、ティーチングの作業が簡略化される。
【発明の効果】
【0010】
1またはそれ以上の実施形態に係るレーザ溶接機及び溶接ヘッドの高さ位置調整方法によれば、オペレータによる溶接箇所を教示するティーチングの作業を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、1またはそれ以上の実施形態に係るレーザ溶接機を示す図である。
【
図2】
図2は、溶接ヘッドの第1の構成例を示す概念図である。
【
図3】
図3は、溶接ヘッドの第2の構成例を示す概念図である。
【
図4】
図4は、溶接ヘッドの第3の構成例を示す概念図である。
【
図5】
図5は、溶接ヘッドの第4の構成例を示す概念図である。
【
図6】
図6は、溶接ヘッドの第5の構成例を示す概念図である。
【
図7】
図7は、溶接ヘッドの第6の構成例を示す概念図である。
【
図8A】
図8Aは、
図2に示す第1の構成例の溶接ヘッドの具体的な構成を示し、全反射ミラーがレーザビームの光路に位置している状態を示す断面図である。
【
図8B】
図8Bは、
図2に示す第1の構成例の溶接ヘッドの具体的な構成を示し、全反射ミラーがレーザビームの光路から退避している状態を示す断面図である。
【
図9】
図9は、カメラが溶接箇所を撮影した撮影画像の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、溶接ヘッドの高さ方向の位置を変化させたときの撮影画像のコントラストに基づく評価値の変化の一例を示す特性図である。
【
図11A】
図11Aは、コンピュータ機器が実行する、コントラストに基づく評価値の最大値を探索する処理の第1の例を示す部分的なフローチャートである。
【
図11B】
図11Bは、
図11Aに続く、コンピュータ機器が実行する、コントラストに基づく評価値の最大値を探索する処理の第1の例を示す部分的なフローチャートである。
【
図13】
図13は、溶接ヘッドの高さ方向の位置を変化させたときの撮影画像のコントラストに基づく評価値の変化の他の例を示す特性図である。
【
図15】
図15は、コンピュータ機器が、コントラストに基づく評価値の最大値を探索する処理の第2の例を実行するときの、溶接ヘッドの移動、カメラの動作、及びコンピュータ機器の動作を示す図である。
【
図16】
図16は、コンピュータ機器が、コントラストに基づく評価値の最大値を探索する処理の第2の例を実行するときの、時間の進行に伴って変化する評価値及び評価値の回帰直線の傾きの一例を示す特性図である。
【
図17】
図17は、コンピュータ機器が実行する、コントラストに基づく評価値の最大値を探索する処理の第2の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1またはそれ以上の実施形態に係るレーザ溶接機は、溶接ヘッド、位置調整機構、カメラ、計算機、制御装置を備える。前記溶接ヘッドは、溶接対象の板金にレーザビームを照射する。前記位置調整機構は、前記溶接ヘッドの前記板金に対する平面的な位置及び高さ方向の位置を調整する。前記カメラは前記溶接ヘッドに取り付けられ、前記板金の溶接箇所を撮影する。前記計算機は、前記カメラが前記溶接箇所を撮影した撮影画像のコントラストを評価した評価値に基づいて、前記カメラの焦点が前記板金の表面に位置する前記溶接ヘッドの高さ方向の最適位置を求める。前記制御装置は、前記溶接ヘッドの前記高さ方向の位置が前記計算機によって求められた最適位置となるように前記位置調整機構を制御する。
【0013】
1またはそれ以上の実施形態に係る溶接ヘッドの高さ位置調整方法は、溶接ヘッドを板金の溶接箇所における平面的な位置に位置させた状態で、前記溶接ヘッドを高さ方向に移動させて、前記溶接ヘッドに取り付けられているカメラによって前記溶接箇所を撮影し、前記溶接箇所の撮影画像のコントラストを評価した評価値を算出し、前記評価値に基づいて、前記カメラの焦点が前記板金の表面に位置する前記溶接ヘッドの高さ方向の最適位置を求め、前記溶接ヘッドより射出されるレーザビームによって前記溶接箇所を溶接するときに、前記溶接ヘッドの高さ方向の位置を前記最適位置に位置決めする。
【0014】
以下、1またはそれ以上の実施形態に係るレーザ溶接機及び溶接ヘッドの高さ位置調整方法について、添付図面を参照して具体的に説明する。
【0015】
図1は、1またはそれ以上の実施形態に係るレーザ溶接機を示している。
図1において、ロボット型のレーザ溶接機100は、多関節ロボット10、溶接ヘッド20、レーザ発振器30、NC(Numerical Control)装置40、コンピュータ機器50、ティーチング操作部60を備える。溶接ヘッド20は、多関節ロボット10のアーム11の先端に取り付けられており、溶接対象の板金Wにレーザビームを照射する。溶接ヘッド20はカメラ21を有する。カメラ21は単焦点のモノクロカメラでよい。レーザ発振器30は、一例としてファイバレーザ発振器である。レーザ発振器30が発振して射出されるレーザビームは、光ファイバ31を介して溶接ヘッド20へと供給される。
【0016】
NC装置40は、レーザ発振器30及び多関節ロボット10を制御する。カメラ21が溶接対象の板金Wを撮影することによって生成した画像信号は、コンピュータ機器50に供給される。後述するように、コンピュータ機器50は、入力された画像信号に基づいて溶接ヘッド20の最適な高さ方向の位置を求めて、NC装置40に通知する。オペレータは、ティーチング操作部60を操作して板金Wにおける各溶接箇所に対する溶接ヘッド20の平面的な位置を教示する。オペレータは、溶接ヘッド20の平面的な位置に加えて、溶接ヘッド20の角度を教示することがある。
【0017】
オペレータは、各溶接箇所に対する溶接ヘッド20の高さ方向の位置を教示する必要はない。NC装置40は、溶接ヘッド20の高さ方向の位置が、コンピュータ機器50より通知された高さ方向の最適位置となるよう多関節ロボット10を制御する。即ち、NC装置40は、溶接ヘッド20がコンピュータ機器50より通知された高さ方向の位置となるように多関節ロボット10を制御して、板金Wの表面と溶接ヘッド20との間の距離を調整する。
【0018】
多関節ロボット10は、溶接ヘッド20の板金Wに対する平面的な位置及び高さ方向の位置を調整する位置調整機構として機能する。後述するように、コンピュータ機器50は、カメラ21が溶接箇所を撮影した撮影画像のコントラストを評価した評価値に基づいて、溶接ヘッド20の高さ方向の最適位置を求める計算機の一例である。カメラ21の焦点が板金Wの表面に位置するとき、溶接ヘッド20は高さ方向の最適位置となる。NC装置40は、溶接ヘッド20の高さ方向の位置がコンピュータ機器50によって求められた最適位置となるように多関節ロボット10を制御する制御装置の一例である。
【0019】
図2~
図7は、それぞれ、溶接ヘッド20の第1~第6の構成例を示す概念図である。
図2~
図7において、レーザビームを一点鎖線で示し、可視光を破線で示す。レーザビームの波長は例えば1060nm~1080nmであり、可視光の波長は例えば500~600nmである。
【0020】
図2に示す第1の構成例である溶接ヘッド20Aは、光ファイバ31の端部より射出される発散光のレーザビームをコリメート光に変換するコリメーションレンズ22と、コリメート光のレーザビームを集束させて、板金Wに照射する集束レンズ23とを備える。溶接ヘッド20Aは、集束レンズ23より板金W側の位置に全反射ミラー24を備える。
【0021】
駆動部25は、コンピュータ機器50が溶接ヘッド20Aの高さ方向の最適位置を求めるとき、NC装置40による制御に従って、全反射ミラー24を板金Wで反射する可視光を反射させてカメラ21に入射させる第1の位置に位置させるよう、全反射ミラー24を駆動する。これにより、板金Wで反射する可視光は側方に位置するカメラ21に入射して、カメラ21は溶接箇所を撮影することができる。このとき、全反射ミラー24はレーザビームの光路に位置する。
【0022】
駆動部25は、レーザビームを板金Wに照射して板金Wにおける溶接箇所を溶接するとき、NC装置40による制御に従って、全反射ミラー24を板金Wに照射されるレーザビームの光路から退避する第2の位置に位置させるよう、全反射ミラー24を駆動する。これにより、全反射ミラー24がレーザビームの進行の妨げとなることを回避することができる。
【0023】
例えば、全反射ミラー24を保持する保持機構はレール等に沿って紙面と直交する方向に移動自在に構成されている。駆動部25は例えばモータであって、全反射ミラー24を移動させる。
【0024】
第1の構成例である溶接ヘッド20Aを用いると、全反射ミラー24を移動させる構成が必要になるものの、全反射ミラー24の存在が板金Wにレーザビームを照射する板金Wの溶接に一切影響を与えることがない。
【0025】
図3に示す第2の構成例である溶接ヘッド20Bにおいて、溶接ヘッド20Aと同一部分には同一符号を付し、その説明を省略する。溶接ヘッド20Bにおいては、全反射ミラー24が、コリメーションレンズ22と集束レンズ23との間に配置されている。溶接ヘッド20Bによれば、溶接ヘッド20Aと同様に、全反射ミラー24を移動させる構成が必要になるものの、全反射ミラー24の存在が板金Wにレーザビームを照射する板金Wの溶接に一切影響を与えることがない。また、溶接ヘッド20Bによれば、カメラ21の位置は溶接ヘッド20Aにおけるカメラ21の位置よりも上方となるので、カメラ21が溶接ヘッド20Bの姿勢の制限となりにくい。
【0026】
図4に示す第3の構成例である溶接ヘッド20Cにおいて、溶接ヘッド20Aと同一部分には同一符号を付し、その説明を省略する。溶接ヘッド20Cは、溶接ヘッド20Aにおける全反射ミラー24の代わりに、レーザビームを透過させ、可視光を反射するハーフミラー26を備える。ハーフミラー26は、波長1060nm~1080nmの光を透過し、波長500~600nmの光の反射する2波長ガラスで構成される。溶接ヘッド20Cにおいてはハーフミラー26を移動させる必要はないため、駆動部25は省略されている。
【0027】
溶接ヘッド20Cによれば、ハーフミラー26を移動自在する構成及び駆動部25が必要なく、ハーフミラー26の位置を固定すればよいから、溶接ヘッド20Aと比較して構成が簡略化される。
【0028】
図5に示す第4の構成例である溶接ヘッド20Dにおいて、溶接ヘッド20Bまたは20Cと同一部分には同一符号を付し、その説明を省略する。溶接ヘッド20Dにおいては、溶接ヘッド20Bにおける全反射ミラー24の代わりに、ハーフミラー26を備える。溶接ヘッド20Cと同様に、溶接ヘッド20Dにおいてはハーフミラー26を移動させる必要はないため、駆動部25は省略されている。溶接ヘッド20Dによれば、カメラ21が溶接ヘッド20Dの姿勢の制限となりにくく、溶接ヘッド20Bと比較して構成が簡略化される。
【0029】
図6に示す第5の構成例である溶接ヘッド20Eにおいて、溶接ヘッド20Aと同一部分には同一符号を付し、その説明を省略する。溶接ヘッド20Eにおいては、コリメーションレンズ22は側方に配置した光ファイバ31の端部より射出されるレーザビームをコリメート光に変換する。全反射ミラー27は、コリメート光のレーザビームを集束レンズ23に入射させるよう反射させて、レーザビームの進行方向を曲げる。集束レンズ23は、全反射ミラー27で反射したレーザビームを集束させて板金Wに照射する。
【0030】
全反射ミラー27に対して集束レンズ23とは反対側の上方には、カメラ21が配置されている。駆動部25は、板金Wにおける溶接箇所を溶接するとき、NC装置40による制御に従って、全反射ミラー27を板金Wに照射されるレーザビームを反射させて集束レンズ23に入射させる第1の位置に位置させるよう、全反射ミラー27を駆動する。駆動部25は、コンピュータ機器50が最適位置を求めるとき、全反射ミラー27を板金Wで反射する可視光の光路から退避する第2の位置に位置させるよう、全反射ミラー27を駆動する。
【0031】
溶接ヘッド20Eによれば、レーザビームの進行方向を全反射ミラー27で90度曲げて板金Wに照射するように構成され、カメラ21によって溶接箇所を撮影することができる。
【0032】
図7に示す第6の構成例である溶接ヘッド20Fにおいて、溶接ヘッド20Eと同一部分には同一符号を付し、その説明を省略する。溶接ヘッド20Fにおいては、溶接ヘッド20Eにおける全反射ミラー27の代わりに、レーザビームを反射し、可視光を透過させるハーフミラー28を備える。ハーフミラー28は、波長1060nm~1080nmの光を反射し、波長500~600nmの光の透過する2波長ガラスで構成される。溶接ヘッド20Fにおいてはハーフミラー28を移動させる必要はないため、駆動部25は省略されている。
【0033】
溶接ヘッド20Fによれば、レーザビームの進行方向をハーフミラー28で90度曲げて板金Wに照射するように構成され、溶接ヘッド20Eよりも簡略な構成で、カメラ21によって溶接箇所を撮影することができる。
【0034】
このように、溶接ヘッド20は
図2~
図7に示す溶接ヘッド20A~20Fのいずれの構成でもよい。
図8A及び
図8Bは、
図2に示す第1の構成例の溶接ヘッド20Aの具体的な構成を示す断面図である。
図8A及び
図8Bにおいては、駆動部25は図示されていない。
図8Aは、板金Wで反射する可視光をカメラ21に入射させるよう、全反射ミラー24がレーザビームの光路上である第1の位置に位置している状態を示す。
図8Bは、板金Wを溶接するために全反射ミラー24をレーザビームの光路から退避させた第2の位置に位置している状態を示す。
【0035】
詳細には、
図8A及び
図8Bに示す構成は、全反射ミラー24で反射した可視光をさらに別の全反射ミラーで反射させてカメラ21に入射させる構成を示している。全反射ミラーの数は1つでも2つでもよく、または3つ以上でもよい。
【0036】
次に、コンピュータ機器50がカメラ21から供給される画像信号に基づいて溶接ヘッド20の高さ方向の最適位置をどのように求めるかを説明する。前提として、板金Wに照射されるレーザビームの焦点が板金Wの表面に位置している状態で、カメラ21は板金Wの表面で焦点が合った状態となるようにカメラ21の焦点距離が設定されている。カメラ21が撮影している画像が、焦点が合っている状態か焦点がずれている状態かは、画像のコントラストに基づいて判定することができる。
【0037】
そこで、コンピュータ機器50は、次のようにしてコントラストの評価値を求める。
図9は、カメラ21が溶接箇所を撮影した撮影画像21isの一例を示している。溶接ヘッド20の平面的な位置は事前のティーチングによって位置決めされている。撮影画像21isは、板金W1と板金W2とを半引き角継手で溶接する場合の板金W1及びW2を撮影した画像を示している。半引き角継手とは、一方の板金の面の端部を他方の板金の板厚の中央部に位置させた状態で溶接することである。
【0038】
コンピュータ機器50は、撮影画像21isにおける指定領域S内の次の式(1)で得られるコントラスト値Cをコントラストの評価値とする。式(1)で得られるコントラスト値Cは、指定領域S内の各画素における隣接画素との輝度値の差の総和である。式(1)において、Iは指定領域S内の任意の位置、i及びjは隣接画素を決めるための微小値、I(x,y)は位置Iにおける輝度値、I(x+i,y+j)は隣接画像の位置における輝度値である。
【0039】
【0040】
図10は、溶接ヘッド20の高さ方向の位置を変化させたときの撮影画像21isの評価値の変化の一例を示している。コンピュータ機器50が式(1)を用いてコントラスト値Cを評価値として求めると、
図10に示すように、評価値は焦点が合っている状態の距離0で最大値となる。溶接ヘッド20と板金W(W1及びW2)との距離が、距離0から正方向または負方向に大きくなると、評価値は小さくなる。溶接ヘッド20が板金Wから離れる方向の距離が正方向の距離であり、溶接ヘッド20が板金Wに近付く向の距離が負方向の距離である。コンピュータ機器50は、評価値の最大値を求めることにより、カメラ21は板金Wの表面で焦点が合っている状態であると判定する。
【0041】
図11A、
図11B、
図12に示すフローチャートを用いて、コンピュータ機器50が実行する、
図10に示すような特性を有する評価値の最大値を探索する処理の第1の例を説明する。
図11Aにおいて、コンピュータ機器50が処理を開始させると、コンピュータ機器50は、ステップS1にて、溶接ヘッド20の現在の高さである0mmと、板金Wから離れる方向の+2mm及び+4mmの3点で板金Wを撮影した撮影画像21isに基づき、評価値を算出する。上記のように、溶接ヘッド20の高さ方向の位置は、コンピュータ機器50からの通知を受けたNC装置40によって制御される。
【0042】
コンピュータ機器50は、ステップS2にて、算出された3点の評価値の傾きパターンを判定する。コンピュータ機器50は、評価値の傾きが大きいか小さいかを判定するための傾き閾値と、高さ0mmと高さ+2mmにおける評価値の傾き、及び高さ+2mmと高さ+4mmにおける評価値の傾きとを比較して傾きパターンを判定する。傾き閾値は、評価値の傾きが正であるときに用いる正の傾き閾値と、評価値の傾きが負であるときに用いる負の傾き閾値とを含む。
【0043】
図10に示す縦軸の評価値は各種の条件によって値が変化する。よって、傾き閾値は算出される評価値に応じた値とする必要があり、固定値ではない。後述するように、傾き閾値が算出された評価値に応じた値となっていないと判定されるときには、コンピュータ機器50は傾き閾値を変化させる。
【0044】
評価値の傾きが正で正の傾き閾値以上である状態を傾きが+大、評価値の傾きが負で負の傾き閾値以下である(評価値の負の傾きの絶対値が負の傾き閾値の絶対値以上である)状態を傾きが-大と称することとする。評価値の傾きの絶対値が正及び負の傾き閾値の絶対値より小さい状態を傾きが小と称することとする。高さ0mmと高さ+2mmにおける評価値の傾きと高さ+2mmと高さ+4mmにおける評価値の傾きとの傾きパターンが(+大、+大)または(小、+大)であれば、ステップS1にて算出された3点の評価値は、
図10における焦点からの距離が負側に位置すると想定される。
【0045】
そこで、ステップS2で判定された傾きパターンが(+大、+大)または(小、+大)であれば、コンピュータ機器50は、ステップS3にて、高さ+4mmの位置にある溶接ヘッド20を板金Wに近付く方向に1mm及び3mm移動させる。コンピュータ機器50は、高さ+3mm及び+1mmの2点で板金Wを撮影した撮影画像21isに基づき、評価値を算出する。これにより、ステップS1で撮影しなかった+3mm及び+1mmの2点での撮影が行われ、高さ0mm、+1mm、+2mm、+3mm、+4mmの4点での評価値が得られる。
【0046】
続けて、コンピュータ機器50は、ステップS4にて、高さ+4mmから+1mmずつ溶接ヘッド20を高さ方向に移動させた各点で撮影した撮影画像21isに基づき、評価値を算出する。コンピュータ機器50は、ステップS5にて、評価値の傾きが負となったか否かを判定し、負とならなければ(NO)、ステップS4及びS5の処理を繰り返す。
【0047】
即ち、コンピュータ機器50は、高さ+5mmの位置で高さ+4mmと高さ+5mmにおける評価値の傾きが負となったか否かを判定する。負とならなければ、コンピュータ機器50は、高さ+6mmの位置で高さ+5mmと高さ+6mmにおける評価値の傾きが負となったか否かを判定する。負とならなければ、コンピュータ機器50は、高さ+7mmの位置で高さ+6mmと高さ+7mmにおける評価値の傾きが負となったか否かを判定する。以降、コンピュータ機器50は、評価値の傾きが負となるまで、溶接ヘッド20の高さを正方向に移動させて、評価値の傾きの判定を繰り返す。
【0048】
ステップS5にて評価値の傾きが負となれば(YES)、コンピュータ機器50は、ステップS6にて、評価値の最大値を決定して、処理を終了させる。評価値の最大値が得られた溶接ヘッド20の高さ方向の位置において、カメラ21の焦点が板金Wの表面に合った状態となり、板金Wに照射されるレーザビームの焦点が板金Wの表面に位置する状態となる。
【0049】
高さ0mmと高さ+2mmにおける評価値の傾きと高さ+2mmと高さ+4mmにおける評価値の傾きとの傾きパターンが(+大、-大)、(小、-大)、または(+大、小)であれば、ステップS1にて算出された3点の評価値は、
図10における最大値の近傍に位置すると想定される。
【0050】
そこで、ステップS2で判定された傾きパターンが(+大、-大)、(小、-大)、または(+大、小)であれば、コンピュータ機器50は、ステップS3と同様に、ステップS7にて、高さ+3mm及び+1mmの2点で板金Wを撮影した撮影画像21isに基づき、評価値を算出する。続けて、コンピュータ機器50は、ステップS8にて、最大値の確認処理を実行して、処理を終了させる。ステップS8の詳細については後述する。
【0051】
高さ0mmと高さ+2mmにおける評価値の傾きと高さ+2mmと高さ+4mmにおける評価値の傾きとの傾きパターンが(-大、小)または(-大、-大)であれば、ステップS1にて算出された3点の評価値は、
図10における焦点からの距離が正側に位置すると想定される。
【0052】
そこで、ステップS2で判定された傾きパターンが(-大、小)または(-大、-大)であれば、コンピュータ機器50は、ステップS3と同様に、ステップS9にて、高さ+3mm及び+1mmの2点で板金Wを撮影した撮影画像21isに基づき、評価値を算出する。続けて、コンピュータ機器50は、ステップS10にて、高さ0mmから-1mmずつ溶接ヘッド20を高さ方向に移動させた各点で撮影した撮影画像21isに基づき、評価値を算出する。コンピュータ機器50は、ステップS11にて、評価値の傾きが正となったか否かを判定し、正とならなければ(NO)、ステップS10及びS11の処理を繰り返す。
【0053】
即ち、コンピュータ機器50は、高さ-1mmの位置で高さ0mmと高さ-1mmにおける評価値の傾きが正となったか否かを判定する。正とならなければ、コンピュータ機器50は、高さ-2mmの位置で高さ-1mmと高さ-2mmにおける評価値の傾きが正となったか否かを判定する。正とならなければ、コンピュータ機器50は、高さ-3mmの位置で高さ-2mmと高さ-3mmにおける評価値の傾きが正となったか否かを判定する。以降、コンピュータ機器50は、評価値の傾きが正となるまで、溶接ヘッド20の高さを負方向に移動させて、評価値の傾きの判定を繰り返す。
【0054】
ステップS11にて評価値の傾きが正となれば(YES)、コンピュータ機器50は、ステップS12にて、評価値の最大値を決定して、処理を終了させる。同様に、評価値の最大値が得られた溶接ヘッド20の高さ方向の位置において、カメラ21の焦点が板金Wの表面に合った状態となり、板金Wに照射されるレーザビームの焦点が板金Wの表面に位置する状態となる。
【0055】
高さ0mmと高さ+2mmにおける評価値の傾きと高さ+2mmと高さ+4mmにおける評価値の傾きとの傾きパターンが(小、小)であれば、コンピュータ機器50は、
図11BのステップS13にて、高さ0mmと高さ+4mmにおける評価値の傾きを取得する。続けて、コンピュータ機器50は、ステップS14にて、前回の探索時と比較して傾きの方向が反転したか否かを判定する。最初の探索時であれば、前回の探索時と比較して傾きの方向が反転するとは判定されず(NO)、コンピュータ機器50は、ステップS15にて、ステップS13で取得した評価値の傾きが正であるか否かを判定する。
【0056】
ステップS15にて評価値の傾きが正であれば(YES)、コンピュータ機器50は、ステップS16にて、溶接ヘッド20を現時点の+4mmから高さ方向に+5mm移動させて、処理を
図11AのステップS1に移行させる。ステップS16にて高さ+9mmの位置に移動された溶接ヘッド20は、ステップS1にて、その高さ+9mmの位置が新たに高さ0mmとされて、ステップS1以降の処理が繰り返される。
【0057】
ステップS15にて評価値の傾きが正でなければ(NO)、コンピュータ機器50は、ステップS17にて、溶接ヘッド20を現時点の+4mmから高さ方向に-9mm移動させて、処理を
図11AのステップS1に移行させる。ステップS17にて高さ-5mmの位置に移動された溶接ヘッド20は、ステップS1にて、その高さ-5mmの位置が新たに高さ0mmとされて、ステップS1以降の処理が繰り返される。
【0058】
ステップS14にて、前回の探索時と比較して傾きの方向が反転すれば(YES)、コンピュータ機器50は、ステップS18にて、正及び負の傾き閾値の絶対値を小さくして、処理を
図11AのステップS1に移行させる。コンピュータ機器50は、絶対値を小さくした正及び負の傾き閾値で、ステップS1以降の処理を繰り返す。ステップS18にて正及び負の傾き閾値の絶対値を小さくしたときには、コンピュータ機器50は、既に算出されているステップS1における高さ0mm、+2mm、+4mmの3点の評価値をそのまま用いて、ステップS2における傾きパターンを判定する。
【0059】
図12は、
図11AにおけるステップS8の具体的な処理を示している。
図12において、コンピュータ機器50は、ステップS81にて、溶接ヘッド20の高さ0mm~+4mmにおける1mmピッチで評価値の傾きを判定する。コンピュータ機器50は、ステップS82にて、高さ0mm~+4mmの途中で評価値の傾きが正から負に反転したか否かを判定する。正、負、負、負と、正、正、負、負と、正、正、正、負とのうちのいずれかが評価値の傾きが正から負に反転した状態である。評価値の傾きが正から負に反転すれば(YES)、コンピュータ機器50は、ステップS89にて、評価値の最大値を決定して、処理を終了させる。
【0060】
ステップS82にて評価値の傾きが正から負に反転しなければ(NO)、コンピュータ機器50は、ステップS83にて、溶接ヘッド20の高さ0mm~+4mmにおける2mmピッチで評価値の傾きを判定する。高さ0mmと高さ+2mmにおける評価値の傾きと高さ+2mmと高さ+4mmにおける評価値の傾きとの傾きパターンが(+大、-大)であることは通常なく、評価値の最大値を探索不能な異常な状態である。そこで、コンピュータ機器50は、ステップS83で傾きパターンが(+大、-大)であると判定すれば、ステップS84にて、アラームを発生させて、処理を終了させる。
【0061】
コンピュータ機器50は表示部を有する。コンピュータ機器50は表示部にアラームに相当する画像を表示してもよいし、アラームの音声を発生してもよい。
【0062】
ステップS83での傾きパターンが(小、-大)であるということは、溶接ヘッド20が、カメラ21の焦点が板金Wの表面で合っている状態よりも板金Wに近付いている状態にあるということである。そこで、ステップS83で傾きパターンが(小、-大)であると判定すれば、コンピュータ機器50は、ステップS85にて、溶接ヘッド20を高さ方向に+1mmずつ移動させた各点で板金Wを撮影した撮影画像21isに基づき、評価値を算出する。
【0063】
コンピュータ機器50は、ステップS86にて、評価値の傾きが負となったか否かを判定し、負とならなければ(NO)、ステップS85及びS86の処理を繰り返す。ステップS86にて評価値の傾きが負となれば(YES)、コンピュータ機器50は、ステップS89にて、評価値の最大値を決定して、処理を終了させる。
【0064】
ステップS83での傾きパターンが(+大、小)であるということは、溶接ヘッド20が、カメラ21の焦点が板金Wの表面で合っている状態よりも板金Wから離れている状態にあるということである。そこで、ステップS83で傾きパターンが(+大、小)であると判定すれば、コンピュータ機器50は、ステップS87にて、溶接ヘッド20を高さ方向に-1mmずつ移動させた各点で板金Wを撮影した撮影画像21isに基づき、評価値を算出する。
【0065】
コンピュータ機器50は、ステップS88にて、評価値の傾きが正となったか否かを判定し、正とならなければ(NO)、ステップS87及びS88の処理を繰り返す。ステップS88にて評価値の傾きが正となれば(YES)、コンピュータ機器50は、ステップS89にて、評価値の最大値を決定して、処理を終了させる。
【0066】
【0067】
図13は、溶接ヘッド20の高さ方向の位置を変化させたときの撮影画像21isのコントラストに基づく評価値の変化の他の例を示している。溶接ヘッド20の高さ方向の位置を変化させたときに、コンピュータ機器50が生成する評価値が
図13に示すように変化するとする。
図10と
図13とを比較すれば分かるように、評価値の最大値、及び評価値が変化するときの傾きは必ずしも同じとはならない。
【0068】
【0069】
図14Aに示すように、
図11AのステップS1における溶接ヘッド20の現在の高さ0mmが、焦点からの+2mmの位置であったとする。このとき、コンピュータ機器50は、焦点から+2mm、+4mm、+6mmの3点における評価値を算出することになる。焦点から+2mm、+4mm、+6mmの3点における評価値は、それぞれ、5029100、4694900、4534700である。
【0070】
図14Aにおいて、+2mmから+4mmまでの評価値の傾きは-167100、+4mmから+6mmまでの評価値の傾きは-80100、+2mmから+6mmまでの評価値の傾きは-123600である。正の傾き閾値を+3、負の傾き閾値を-3とすると、コンピュータ機器50は、ステップS2にて、傾きパターンが(小、小)であると判定する。よって、コンピュータ機器50は、
図11BのステップS17にて、溶接ヘッド20を高さ方向に-9mm移動させるよう制御するので、溶接ヘッド20は焦点から-3mmの位置に移動する。
【0071】
コンピュータ機器50は、再びステップS1の処理を実行させる。このときの高さ0mm、+2mm、+4mmは、焦点から-3mm、-1mm、+1mmの位置である。
図14Bに示すように、コンピュータ機器50は、ステップS1にて、焦点から-3mm、-1mm、+1mmの3点における評価値を算出する。焦点から-3mm、-1mm、+1mmの点における評価値は、それぞれ、4886700、5369300、5332500である。
【0072】
図14Bにおいて、-3mmから-1mmまでの評価値の傾きは241300、-1mmから+1mmまでの評価値の傾きは-18400、-3mmから+1mmまでの評価値の傾きは111450である。最初の探索時と同様に、コンピュータ機器50は、ステップS2にて、傾きパターンが(小、小)であると判定する。2回目の探索においては、コンピュータ機器50は、
図11BのステップS14にて、傾きの方向が反転したと判定するから、コンピュータ機器50は、ステップS18にて、例えば、正の傾き閾値を+150000、負の傾き閾値を-150000に変更して、傾き閾値の絶対値を小さくする。
【0073】
コンピュータ機器50は、正及び負の傾き閾値の絶対値を小さくしたので、
図11AのステップS2にて、最初の探索時の焦点から+2mm、+4mm、+6mmの3点における評価値の傾きパターンを改めて判定する。
図14Aにおいて、+2mmから+4mmまでの評価値の傾きは-167100、+4mmから+6mmまでの評価値の傾きは-80100であり、傾き閾値の絶対値が150000である。従って、コンピュータ機器50は、ステップS2にて、傾きパターンが(-大、小)であると判定する。
【0074】
すると、
図14Cに示すように、コンピュータ機器50は、ステップS9にて、+3mm及び+1mmの位置に相当する焦点から+5mm及び+3mmの位置における評価値を算出する。コンピュータ機器50は、ステップS10及びS11にて、傾きが正とならない限り、焦点から+2mmの位置から-1mmずつ溶接ヘッド20を移動させて評価値を算出する。
【0075】
図14Dに示すように、焦点から+2mm、+1mm、0mm、-1mmの位置における評価値は、それぞれ、5029100、5332500、5541600、5369300である。
図14Dにおいて、+2mmから+1mmまでの傾きが-303400、+1mmから0mmまでの傾きが-209100、0mmから-1mmの傾きが+172300であるから、コンピュータ機器50は、ステップS12にて、焦点から0mmの位置の評価値を最大値と決定する。
【0076】
このようにして、溶接ヘッド20を板金Wの溶接箇所における平面的な位置に位置させた状態で、コンピュータ機器50は、溶接ヘッド20を高さ方向の複数の位置に位置させてカメラ21によって溶接箇所を撮影する。コンピュータ機器50は、複数の位置の各位置における溶接箇所の撮影画像21isのコントラストを評価した評価値を算出する。コンピュータ機器50は、各位置で算出した評価値に基づいて、カメラ21の焦点が板金Wの表面に位置する溶接ヘッド20の高さ方向の最適位置を求める。
【0077】
コンピュータ機器50は、評価値が最大値となる溶接ヘッド20の高さ方向の位置を最適位置と決定すればよい。コンピュータ機器50は、溶接ヘッド20を高さ方向の複数の位置に位置させてカメラ21によって溶接箇所を撮影した撮影画像21isに基づいて、溶接ヘッド20の高さ方向の位置に応じて増減する評価値を得ることができる。コンピュータ機器50は、増減する評価値の最大値を求めることによって、溶接ヘッド20の高さ方向の最適位置を簡単に決定することができる。
【0078】
NC装置40は、溶接ヘッド20より射出されるレーザビームによって溶接箇所を溶接するとき、コンピュータ機器50による通知に従って、溶接ヘッド20の高さ方向の位置を最適位置に位置決めする。
【0079】
コンピュータ機器50が実行する、コントラストに基づく評価値の最大値を探索する処理は、
図11A及び
図11Bに示す第1の例に限定されず、
図15~
図17に示す第2の例を用いてもよい。
【0080】
図15は、コンピュータ機器50が、コントラストに基づく評価値の最大値を探索する処理の第2の例を実行するときの、溶接ヘッド20の高さ方向の移動、カメラ21の動作、及びコンピュータ機器50の動作を示している。
図16は、コンピュータ機器50が、コントラストに基づく評価値の最大値を探索する処理の第2の例を実行するときの、時間の進行に伴って変化する評価値及び評価値の回帰直線の傾きの一例を示している。
図17のフローチャートは、コンピュータ機器50が実行する、コントラストに基づく評価値の最大値を探索する処理の第2の例を示している。
【0081】
図15に示すように、NC装置40は、溶接ヘッド20を高さ方向に例えば6mm/sの速度で移動させる。カメラ21は、例えば30フレーム/sのフレームレートで溶接箇所を撮影する。このとき、時刻t1から時刻t2まで、時刻t2から時刻t3まで、時刻t3から時刻t4までの各フレームF1~F3は、約33.3msである。溶接ヘッド20は、各フレームF1~F3の期間で0.2mm移動する。
【0082】
カメラ21は、時刻t01から時刻t1まで露光してフレームF1の画像信号を生成し、時刻t11から時刻t2まで露光してフレームF2の画像信号を生成する。カメラ21は、時刻t21から時刻t3まで露光してフレームF3の画像信号を生成し、時刻t31から時刻t4まで露光してフレームF3の次のフレームの画像信号を生成する。
【0083】
カメラ21は、時刻t1~t4において、各フレームの画像信号のコンピュータ機器50への送信を開始し、コンピュータ機器50は各フレームの画像信号の受信を開始する。コンピュータ機器50は、時刻t1から時刻t12までの時間で評価値を算出し、時刻t2から時刻t22までの時間で評価値を算出する。コンピュータ機器50は、時刻t3から時刻t32までの時間で評価値を算出し、時刻t4から時刻t42までの時間で評価値を算出する。カメラ21及びコンピュータ機器50は、フレームF3の次のフレーム以降も同様に動作する。
【0084】
図16に示すように、多関節ロボット10が溶接ヘッド20を、1200ms以上の移動時間だけ高さ方向に移動させているとき、コンピュータ機器50は、所定の時間ごとに評価値を求める。これにより、時間の進行に伴って変化する図示のような特性の黒丸で示す評価値が得られる。コンピュータ機器50は、例えば、最新の評価値とその直前の連続する6点の評価値との合計7点の評価値の回帰直線の傾きを求める。溶接ヘッド20の移動に伴って、図示のような特性の黒三角で示す回帰直線の傾きが得られる。回帰直線の傾きを求める評価値は8点のような偶数であってもよい。
【0085】
図16において、回帰直線の傾きを示す点Siで回帰直線の傾きが正であり、回帰直線の傾きを示す点Sjで回帰直線の傾きが負になったとする。このとき、回帰直線の傾きは、点Siから点Sjへの途中で0になったということである。コンピュータ機器50は、回帰直線の傾きが0となる第1の時刻T1を求める。コンピュータ機器50は、点Siから点Sjまでの時間の例えば中央の時刻を第1の時刻T1とすればよい。回帰直線の傾きの各点は離散値であるため、回帰直線の傾きが0となる第1の時刻T1が直接的に得られないことがある。回帰直線の傾きが0となる第1の時刻T1を求める処理には、回帰直線の傾きが正から負、または負から正へと変化する時間の中間の時刻を第1の時刻T1とみなすことが含まれる。
【0086】
点Sjが得られた時刻に対応する時刻の評価値は点Ejである。コンピュータ機器50は、第1の時刻T1から所定の時間だけ遡った第2の時刻T2までの、複数の評価値を含む時間TM0の中央である第3の時刻T3を求める。複数の評価値とは、回帰直線の傾きを求める7点の評価値である。7点の評価値の最初の評価値を点E1、最後の評価値を点E7とする。コンピュータ機器50は、第3の時刻T3における溶接ヘッド20の高さ方向の位置を、評価値の最大値が得られる最適位置と決定する。回帰直線の傾きを求める評価値が7点のような奇数であるとき、第3の時刻T3は中央に位置する評価値の点E4が得られた時刻である。
【0087】
溶接ヘッド20の高さ方向の位置を変化させたときの撮影画像のコントラストに基づく評価値は、溶接ヘッド20が高さ方向の所定の位置に位置するときに、
図10または
図13に示すように最大値となる。評価値の最大値の近傍を拡大すれば、評価値がほとんど変化しない位置が評価値の最大値となる。そこで、評価値の回帰直線の傾きが0となる第1の時刻T1に基づいて第3の時刻T3を求めれば、評価値の最大値が得られる溶接ヘッド20の高さ方向の位置を求めることができる。
【0088】
図16に示す例では、実際には、時間TM0内の7点の評価値で、点E4ではなく点E3が評価値の最大値となっている。評価値は各種の条件で値が変化するので、突発的に最大値が発生した溶接ヘッド20の高さ方向の位置を最適位置とすることは好ましくない。コンピュータ機器50は、回帰直線の傾きが0となる第1の時刻T1に基づいて、第1の時刻T1の直前の複数の評価値を含む時間TM0の中央である第3の時刻T3を求める。コンピュータ機器50が、第3の時刻T3における溶接ヘッド20の高さ方向の位置を最適位置と決定することにより、各種の条件で評価値が変化しても、ほぼ評価値の最大値が得られる高さ方向の位置を最適位置とすることができる。
【0089】
NC装置40は、溶接ヘッド20の高さ方向の位置が、コンピュータ機器50より通知された最適位置となるよう多関節ロボット10を制御する。
【0090】
コンピュータ機器50は、次の式(2)に基づいて回帰直線の傾きSRLを求めることができる。式(2)において、xnは、
図16の横軸である、時間TM0内の各評価値が得られた時刻であり、xバーは、時間TM0内の各評価値が得られた時刻の平均値である。ynは、
図16の左縦軸である、時間TM0内の各評価値であり、yバーは時間TM0内の各評価値の平均値である。nが1であるときのx1は点E1の時刻であり、nがnmaxであるときのxnmaxは点E7の時刻である。nが1であるときのy1は点E1の評価値であり、nがnmaxであるときのynmaxは点E7の評価値である。
【0091】
【0092】
図16の横軸をフレーム数、または溶接ヘッド20の高さ方向の移動距離としても、回帰直線の傾きSRLを求めることが可能である。回帰直線の傾きSRLの求め方は、
図16の横軸を時間とした式(2)に限定されない。
【0093】
図17に示すフローチャートを用いて、第2の例をさらに説明する。
図17において、NC装置40は、コンピュータ機器50からの指示を受けて、ステップS21にて、溶接ヘッド20の正方向への移動を開始させる。コンピュータ機器50は、ステップS22にて、カメラ21による撮影画像を受信する。コンピュータ機器50、ステップS23にて、コントラストに基づく評価値を算出し、ステップS24にて、評価値の回帰直線の傾きを算出する。
【0094】
コンピュータ機器50は、ステップS25にて、溶接ヘッド20が正方向に移動中であるか否かを判定する。処理がステップS21から初めてステップS25へと到達したときには、溶接ヘッド20は必ず正方向に移動しているが、後述するように、溶接ヘッド20の移動方向を反転することがあるので、ステップS25の処理が設けられている。溶接ヘッド20が正方向に移動中でなければ(NO)、処理はステップS29に移行される。溶接ヘッド20が正方向に移動中であれば(YES)、コンピュータ機器50、ステップS26にて、評価値の減少を検出したか否かを判定する。
【0095】
ステップS26にて評価値の減少を検出しなければ(NO)、処理はステップS29に移行される。ステップS26にて評価値の減少を検出すれば(YES)、NC装置40は、コンピュータ機器50からの指示を受けて、ステップS27にて、多関節ロボット10に溶接ヘッド20の移動方向の反転を指令する。多関節ロボット10は、移動方向の反転の指令を受けて、ステップS28にて、溶接ヘッド20の負方向への移動を開始させて、処理はステップS22に戻されて、ステップS22以降の処理が繰り返される。
【0096】
コンピュータ機器50、ステップS29にて、回帰直線の傾きが0となった時刻(第1の時刻T1)を基準とした溶接ヘッド20の最適位置が得られたか否かを判定する。溶接ヘッド20の最適位置が得られれば(YES)、コンピュータ機器50、ステップS30にて、現在位置から最適位置までの溶接ヘッド20の移動量を算出する。コンピュータ機器50は、ステップS31にて、NC装置40に移動量を通知する。NC装置40は、ステップS32にて、溶接ヘッド20を通知された移動量だけ移動させるよう多関節ロボット10を制御して、処理を終了させる。
【0097】
ステップS29にて溶接ヘッド20の最適位置が得られなければ(NO)、コンピュータ機器50は、ステップS33にて、溶接ヘッド20が移動開始から負方向に5mmの位置に位置しているか否かを判定する。溶接ヘッド20が負方向に5mmの位置に位置していなければ(NO)、処理はステップS22に戻されて、ステップS22以降の処理が繰り返される。溶接ヘッド20が負方向に5mmの位置に位置していれば(YES)、NC装置40は、コンピュータ機器50からの指示を受けて、ステップS34にて、板金Wへの衝突を回避するため、溶接ヘッド20を開始位置に移動させて、処理を終了させる。
【0098】
図17に示す第2の例によれば、溶接ヘッド20を連続的に移動させながら、評価値の回帰直線の傾きが0となった時刻を基準として溶接ヘッド20の最適位置を求める構成である。従って、第2の例によれば、
図11A及び
図11Bに示す第1の例と比較して、溶接ヘッド20の最適位置が得られるまでの時間を短くすることができる。
【0099】
以上説明した1またはそれ以上の実施形態に係るレーザ溶接機100及び溶接ヘッド20の高さ位置調整方法によれば、オペレータは、ティーチング操作部60を操作して板金Wにおける各溶接箇所に対する溶接ヘッド20の平面的な位置(またはこれに加えて溶接ヘッド20の角度)を教示するのみでよい。オペレータは、各溶接箇所に対する溶接ヘッド20の高さ方向の位置を教示する必要はない。従って、1またはそれ以上の実施形態に係るレーザ溶接機100及び溶接ヘッド20の高さ位置調整方法によれば、オペレータによる溶接箇所を教示するティーチングの作業を簡略化することができる。
【0100】
本発明は以上説明した1またはそれ以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0101】
10 多関節ロボット(位置調整機構)
11 アーム
20,20A~20F 溶接ヘッド
21 カメラ
22 コリメーションレンズ
23 集束レンズ
24,27 全反射ミラー
25 駆動部
26,28 ハーフミラー
30 レーザ発振器
31 光ファイバ
40 NC装置(制御装置)
50 コンピュータ機器(計算機)
60 ティーチング操作部
100 レーザ溶接機
W,W1,W2 板金
【手続補正書】
【提出日】2023-09-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接対象の板金にレーザビームを照射する溶接ヘッドと、
前記溶接ヘッドの前記板金に対する平面的な位置及び高さ方向の位置を調整する位置調整機構と、
前記溶接ヘッドに取り付けられ、前記板金の溶接箇所を撮影するカメラと、
前記位置調整機構が前記溶接ヘッドを前記高さ方向に移動させている状態で、所定の時間ごとに、前記カメラが前記溶接箇所を撮影した撮影画像のコントラストを評価した、時間の進行に伴って変化する評価値を求め、前記評価値の回帰直線の傾きに基づいて、前記カメラの焦点が前記板金の表面に位置する前記溶接ヘッドの前記高さ方向の最適位置を求める計算機と、
前記溶接ヘッドの前記高さ方向の位置が前記計算機によって求められた最適位置となるように前記位置調整機構を制御する制御装置と、
を備えるレーザ溶接機。
【請求項2】
前記計算機は、
前記回帰直線の傾きが0となる第1の時刻を求め、
前記第1の時刻から、前記第1の時刻から所定の時間だけ遡った第2の時刻までの、複数の前記評価値を含む時間の中央である第3の時刻を求め、
前記第3の時刻における前記溶接ヘッドの前記高さ方向の位置を前記最適位置と決定する
請求項1に記載のレーザ溶接機。
【請求項3】
前記溶接ヘッドは、
発散光のレーザビームをコリメート光に変換するコリメーションレンズと、
コリメート光に変換されたレーザビームを集束させて前記板金に照射する集束レンズと、
前記板金で反射する可視光を反射させて前記カメラに入射させる全反射ミラーと、
前記計算機が前記最適位置を求めるとき、前記全反射ミラーを前記板金で反射する可視光を反射させて前記カメラに入射させる第1の位置に位置させ、前記板金における前記溶接箇所を溶接するとき、前記全反射ミラーを前記板金に照射されるレーザビームの光路から退避する第2の位置に位置させるよう、前記全反射ミラーを駆動する駆動部と、
を備える請求項1または2に記載のレーザ溶接機。
【請求項4】
前記溶接ヘッドは、
発散光のレーザビームをコリメート光に変換するコリメーションレンズと、
コリメート光に変換されたレーザビームを集束させて前記板金に照射する集束レンズと、
前記板金で反射する可視光を反射させて前記カメラに入射させ、前記板金に照射されるレーザビームを透過させるハーフミラーと、
を備える請求項1または2に記載のレーザ溶接機。
【請求項5】
前記溶接ヘッドは、
発散光のレーザビームをコリメート光に変換するコリメーションレンズと、
コリメート光に変換されたレーザビームを反射させてレーザビームの進行方向を曲げる全反射ミラーと、
前記全反射ミラーで反射したレーザビームを集束させて前記板金に照射する集束レンズと、
前記板金における前記溶接箇所を溶接するとき、前記全反射ミラーを前記板金に照射されるレーザビームを反射させて前記集束レンズに入射させる第1の位置に位置させ、前記計算機が前記最適位置を求めるとき、前記全反射ミラーを前記板金で反射する可視光の光路から退避する第2の位置に位置させるよう、前記全反射ミラーを駆動する駆動部と、
を備える請求項1または2に記載のレーザ溶接機。
【請求項6】
前記溶接ヘッドは、
発散光のレーザビームをコリメート光に変換するコリメーションレンズと、
コリメート光に変換されたレーザビームを反射させてレーザビームの進行方向を曲げ、前記板金で反射する可視光を透過させて前記カメラに入射させるハーフミラーと、
前記ハーフミラーで反射したレーザビームを集束させて前記板金に照射する集束レンズと、
を備える請求項1または2に記載のレーザ溶接機。
【請求項7】
溶接ヘッドを板金の溶接箇所における平面的な位置に位置させた状態で、前記溶接ヘッドを高さ方向に移動させ、
前記溶接ヘッドを前記高さ方向に移動させている状態で、前記溶接ヘッドに取り付けられているカメラによって前記溶接箇所を撮影し、
所定の時間ごとに、前記カメラが前記溶接箇所を撮影した撮影画像のコントラストを評価した、時間の進行に伴って変化する評価値を求め、
前記評価値の回帰直線の傾きに基づいて、前記カメラの焦点が前記板金の表面に位置する前記溶接ヘッドの前記高さ方向の最適位置を求め
前記溶接ヘッドより射出されるレーザビームによって前記溶接箇所を溶接するときに、前記溶接ヘッドの前記高さ方向の位置を前記最適位置に位置決めする
溶接ヘッドの高さ位置調整方法。
【請求項8】
前記回帰直線の傾きが0となる第1の時刻を求め、
前記第1の時刻から、前記第1の時刻から所定の時間だけ前の第2の時刻までの、複数の前記評価値を含む時間の中央である第3の時刻を求め、
前記第3の時刻における前記溶接ヘッドの前記高さ方向の位置を前記最適位置と決定する
請求項7に記載の溶接ヘッドの高さ位置調整方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
1またはそれ以上の実施形態の第1の態様は、溶接対象の板金にレーザビームを照射する溶接ヘッドと、前記溶接ヘッドの前記板金に対する平面的な位置及び高さ方向の位置を調整する位置調整機構と、前記溶接ヘッドに取り付けられ、前記板金の溶接箇所を撮影するカメラと、前記位置調整機構が前記溶接ヘッドを前記高さ方向に移動させている状態で、所定の時間ごとに、前記カメラが前記溶接箇所を撮影した撮影画像のコントラストを評価した、時間の進行に伴って変化する評価値を求め、前記評価値の回帰直線の傾きに基づいて、前記カメラの焦点が前記板金の表面に位置する前記溶接ヘッドの前記高さ方向の最適位置を求める計算機と、前記溶接ヘッドの前記高さ方向の位置が前記計算機によって求められた最適位置となるように前記位置調整機構を制御する制御装置とを備えるレーザ溶接機を提供する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
1またはそれ以上の実施形態の第1の態様によれば、カメラが溶接箇所を撮影した撮影画像のコントラストを評価した評価値の回帰直線の傾きに基づいて、カメラの焦点が板金の表面に位置する溶接ヘッドの高さ方向の最適位置が求められる。従って、オペレータは、ティーチングによって溶接箇所に対する溶接ヘッドの高さ方向の位置を教示する必要はなく、ティーチングの作業が簡略化される。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
1またはそれ以上の実施形態の第2の態様は、溶接ヘッドを板金の溶接箇所における平面的な位置に位置させた状態で、前記溶接ヘッドを高さ方向に移動させ、前記溶接ヘッドを前記高さ方向に移動させている状態で、前記溶接ヘッドに取り付けられているカメラによって前記溶接箇所を撮影し、所定の時間ごとに、前記カメラが前記溶接箇所を撮影した撮影画像のコントラストを評価した、時間の進行に伴って変化する評価値を求め、前記評価値の回帰直線の傾きに基づいて、前記カメラの焦点が前記板金の表面に位置する前記溶接ヘッドの前記高さ方向の最適位置を求め前記溶接ヘッドより射出されるレーザビームによって前記溶接箇所を溶接するときに、前記溶接ヘッドの前記高さ方向の位置を前記最適位置に位置決めする溶接ヘッドの高さ位置調整方法を提供する。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
1またはそれ以上の実施形態の第2の態様によれば、カメラが溶接箇所を撮影した撮影画像のコントラストを評価した評価値の回帰直線の傾きに基づいて、カメラの焦点が板金の表面に位置する溶接ヘッドの高さ方向の最適位置が求められる。従って、オペレータは、ティーチングによって溶接箇所に対する溶接ヘッドの高さ方向の位置を教示する必要はなく、ティーチングの作業が簡略化される。