(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045016
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】二酸化シリコンの厚層の堆積
(51)【国際特許分類】
H01L 21/316 20060101AFI20240326BHJP
H01L 21/318 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H01L21/316 X
H01L21/318 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】27
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023126816
(22)【出願日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】2213794.7
(32)【優先日】2022-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】512221197
【氏名又は名称】エスピーティーエス テクノロジーズ リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マット エドモンズ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ロイル
(72)【発明者】
【氏名】ケイトリン レーン ジョーンズ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ゴメス-サンチェス
(72)【発明者】
【氏名】キャスリン クルック
【テーマコード(参考)】
5F058
【Fターム(参考)】
5F058BA04
5F058BC02
5F058BD01
5F058BD04
5F058BD10
5F058BF07
5F058BF23
5F058BF25
5F058BF29
5F058BF30
5F058BF39
5F058BJ06
(57)【要約】
【課題】必要な熱予算の範囲内にウェハの反りが許容できる厚いSiO
2層を高い堆積速度で堆積させる。
【解決手段】基板をチャンバ内に配置するステップと、PECVDにより第1の堆積ステップを実行して、窒化シリコンを含む中間層を基板上に堆積させるステップと、PECVDにより第2の堆積ステップを実行して、少なくとも1個の二酸化シリコン層を中間層上に堆積させるステップを含む。第1の堆積ステップが、シラン、窒素ガス、及び水素ガス又はアンモニアガスを含む第1のガス混合物をチャンバ内に導入して、第1のガス混合物からのプラズマをチャンバ内で維持するステップを含み、第2の堆積ステップが、テトラエチルオルソシリケートを含む第2のガス混合物をチャンバ内に導入して、第2のガス混合物からのプラズマを前記チャンバ内で維持するステップを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ強化化学気相成長(PECVD)により二酸化シリコンを基板上に堆積させる方法であって、
前記基板をチャンバ内に配置するステップと、
PECVDにより第1の堆積ステップを実行して、窒化シリコンを含む中間層を前記基板上に堆積させるステップと、
PECVDにより第2の堆積ステップを実行して、少なくとも1個の二酸化シリコン層を前記中間層上に堆積させるステップを含み、
前記第1の堆積ステップが、シラン、窒素ガス、及び水素ガス又はアンモニアガスを含む第1のガス混合物を前記チャンバ内に導入して、前記中間層を前記基板上に堆積させるべく約220℃~約300℃の温度で前記第1のガス混合物からのプラズマを前記チャンバ内で維持するステップを含み、
前記第2の堆積ステップが、テトラエチルオルソシリケートを含む第2のガス混合物を前記チャンバ内に導入して、前記少なくとも1個の二酸化シリコン層を前記中間層上に堆積させるべく約220℃~約300℃の温度で前記第2のガス混合物からのプラズマを前記チャンバ内で維持するステップを含み、
前記中間層が-400MPa~-100MPaの全圧縮応力を有し、前記少なくとも1個の二酸化シリコン層の各々が-50MPa~+50MPaの全中立応力を有し、前記少なくとも1個の二酸化シリコン層の全厚が少なくとも10μmである方法。
【請求項2】
前記第2のガス混合物が更に酸素ガスを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2のガス混合物が更に水素ガスを含んでいる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2のガス混合物が更にヘリウムガスを含んでいる、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の堆積ステップの実行中に、前記ヘリウムガスが2個以上のガス導入口を通過して前記チャンバ内に導入される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の堆積ステップの実行中にシランが、約50sccm~約400sccm、任意選択的に約90sccm~約350sccm、任意選択的に約180~約330sccmの範囲の流量、又は任意選択的に約325sccmの流量で前記チャンバ内に導入される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の堆積ステップの実行中に窒素ガスが、約2000sccm~約8000sccm、任意選択的に約2500sccm~約7000sccm、任意選択的に約2600sccm~約6500sccmの範囲の流量、又は任意選択的に約6000sccmの流量で前記チャンバ内に導入される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の堆積ステップにおいて水素ガスが、約250~約750sccm、任意選択的に約400sccm~約600sccmの範囲の流量、又は任意選択的に約500sccmの流量で前記チャンバ内に導入される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の堆積ステップにおいてアンモニアガスが、約25sccm~約500sccm、任意選択的に約35sccm~約475sccmの範囲の流量、又は任意選択的に約450sccmの流量で前記チャンバ内に導入される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の堆積ステップの実行中にテトラエチルオルソシリケートが、約1sccm~約10sccm、任意選択的に約3sccm~約7sccmの範囲の流量、又は任意選択的に約5sccmの流量で前記チャンバ内に導入される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の堆積ステップの実行中に酸素ガスが、約1.0slpm~約10slpm、任意選択的に約4.0slpm~約8.0slpmの範囲の流量、又は任意選択的に約6.5slpmの流量で前記チャンバ内に導入される、請求項2及び請求項2に従属する場合は請求項3~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の堆積ステップの実行中に水素ガスが、約0.25slpm~約2.0slpm、任意選択的に約0.75slpm~約1.5slpmの範囲の流量、又は任意選択的に約1.0slpmの流量で前記チャンバ内に導入される、請求項3又は請求項3に従属する場合は請求項4~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の堆積ステップにおいて前記チャンバ内に導入されるヘリウムガスの全流量が、約1000sccm~約2000sccm、任意選択的に約1200sccm~約1650sccm、又は任意選択的に約1450sccmの範囲内にある、請求項4又は請求項4に従属する場合は請求項5~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の堆積ステップにおいて前記少なくとも2個のガス導入口のうち前記第1のガス導入口を通過して前記チャンバ内に導入されるヘリウムガスの流量が、約600sccm~約1900sccm、任意選択的に約800sccm~約1700sccm又は任意選択的に約1250sccmの範囲内にあり、及び/又は前記第2の堆積ステップにおいて前記少なくとも2個のガス導入口のうち前記第2のガス導入口を通過して前記チャンバ内に導入されるヘリウムガスの流量が、約50sccm~約500sccm、任意選択的に約100sccm~約300sccm、又は任意選択的に約200sccmの範囲内にある、請求項5に従属する場合は請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の堆積ステップ及び/又は前記第2の堆積ステップの実行中、前記処理温度が約280℃未満及び/又は前記処理温度が約225℃超である、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の堆積ステップにおけるプラズマが、10MHz~約15MHzの範囲の周波数、任意選択的に13.56MHzの周波数を有する高周波RF電力を用いて持続され、高周波RF電力が約500W~約1500W、任意選択的に約540W~約1320W、任意選択的に約700W~約1000Wの範囲の電力を有している、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の堆積ステップにおけるプラズマが、10MHz~約15MHzの範囲の周波数、任意選択的に13.56MHzの周波数を有する高周波RF電力、及び100kHz~約500kHz、任意選択的に約200kHz~約450kHz、任意選択的に約300kHz~約400kHzの範囲の周波数、又は任意選択的に約375kHzの周波数を有する低周波RF電力を用いて持続される、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の堆積ステップにおける前記高周波RF電力が約1500W~約3000W、任意選択的に約1750W~約2300Wの範囲の電力、又は任意選択的に約1950Wの電力を有している、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の堆積ステップにおける前記低周波RF電力が約200W~約600W、任意選択的に約300W~約550Wの範囲の電力、又は任意選択的に約350Wの電力を有している、請求項17又は請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記中間層の全圧縮応力が少なくとも-100MPa、任意選択的に少なくとも-200MPa、任意選択的に少なくとも-250MPa又は任意選択的に少なくとも-300MPaである、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記中間層の厚さが少なくとも0.05μm、任意選択的に少なくとも0.25μm、又は任意選択的に少なくとも0.5μmである、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1個の二酸化シリコン層の各々の全中立応力が-30MPa~+30MPaである、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記基板がシリコンである、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記基板が、前記第1の堆積ステップと前記第2の堆積ステップの間に前記チャンバから取り外される、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
請求項1~24のいずれか1項に記載の方法を用いて少なくとも1個の二酸化シリコン層が上に堆積された基板であって、前記少なくとも1個の二酸化シリコン層の各々が、-50MPaと+50MPaの範囲に全中立応力を有し、前記少なくとも1個の二酸化シリコン層の全厚が少なくとも10μmである基板。
【請求項26】
前記少なくとも1個の二酸化シリコン層の全厚が少なくとも20μm、任意選択的に少なくとも30μm、又は任意選択的に少なくとも40μmである、請求項25に記載の基板。
【請求項27】
請求項1~24のいずれか1項に記載の方法を用いてプラズマ強化化学気相成長により二酸化シリコンを基板上に堆積させるプラズマ強化化学気相成長装置であって、
チャンバと、
基板を支持すべく前記チャンバ内に配置された基板支持部と、
ある流量でガス又はガス混合物を前記チャンバ内に導入する少なくとも1個のガス導入口と、前記チャンバ内でプラズマを維持するプラズマ生成手段と、
前記少なくとも1個のガス導入口に高周波RF電力を供給すべく構成された高周波電力供給手段と、
前記基板支持部及び前記少なくとも1個のガス導入口の少なくとも一方に低周波RF電力を供給すべく構成された低周波電力供給手段と、
第1の処理条件の組と第2の処理条件の組とを切り替えるべく構成されたコントローラを含み、前記第1の処理条件の組が、前記基板上に中間層を堆積させる第1の堆積ステップを実行すべく構成され、中間層は窒化シリコンを含み、前記第2の処理条件の組が、中間層上に少なくとも1個の二酸化シリコン層を堆積させる第2の堆積ステップを実行すべく構成されていて、
前記第1の処理条件の組が、シラン、窒素ガス、及び水素ガス又はアンモニアガスのいずれかを含む第1のガス混合物を、前記少なくとも1個のガス導入口を通過して前記チャンバ内に導入し、前記プラズマ生成手段を用いて、前記中間層を前記基板上に堆積させるように約220℃~約300℃の温度で前記第1のガス混合物からのプラズマを前記チャンバ内で維持することにより前記第1の堆積ステップを実行すべく構成され、
前記第2の処理条件の組が、テトラエチルオルソシリケート、ヘリウムガス、水素ガス及び酸素ガスを含む第2のガス混合物を前記少なくとも1個のガス導入口を通過して前記チャンバ内に導入し、前記プラズマ生成手段を用いて、第2のガス混合物からのプラズマをチャンバ内で約220℃~約300℃の温度に維持することにより、前記中間層上に少なくとも1個の二酸化シリコン層を堆積させる第2の堆積ステップを実行すべく構成されている、プラズマ強化化学気相成長装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化シリコンの厚層の堆積に関する。
【背景技術】
【0002】
誘電体薄層は、半導体素子、MEMS素子、光学及び電気光学素子又は構造の加工に広く利用されている。CVD、PECVD、HDP-CVD、PEALD、ALDのいずれを用いるにせよ、堆積工程中は誘電体薄層内に応力が加わるであろう。この応力は、誘電体薄層の熱膨張係数と下地基板の差異等の外的要因、又は誘電体薄層の微細構造の欠陥等の内的要因に起因する場合がある。誘電体薄層に生じ得る圧縮応力又は引張応力は、不要なウェハの歪みをもたらし、その結果、後続の工程ステップで問題が生じるか又は亀裂又は層間剥離の形で誘電体薄層自体に不具合が生じる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第9472610号明細書
【特許文献2】米国特許第2012/015113号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コーティングが厚くなるほど応力の制御がより困難になる。厚さが10μmを超えるSiO2の厚層が必要な用途において、高い堆積速度での処理に従来のPECVD工程が好適な技術とされがちである。これら従来方式の処理ではウェハの歪みを最小限に抑えて亀裂が無い層を実現するために低い堆積速度又は複数の応力均衡層を必要とする場合が多い。その結果、堆積工程が複雑になって全堆積速度が低下する。例えば、米国特許第9472610号は、280℃以下の温度で厚さが20ミクロン以上の二酸化シリコン層を、層内の応力の蓄積に起因する亀裂無しに堆積させることは不可能であり、従って、引張応力が加えられた層と圧縮応力が加えられた層を交互に積層して二酸化シリコンを堆積させることを開示している。米国特許第2012/015113号は、全層厚が最大3.5ミクロンの熱SACVD及びPECVD SiO2の複数の層を形成することを開示している。堆積速度、層密度、及び応力は全て堆積温度に影響されるため、ウェハが許容できる熱予算は堆積工程を考慮する場合に別の制約となる。多くのMEMS及び3Dパッケージング用途において、素子の損傷又は反りを防ぐために、堆積温度を約300℃未満に制限する厳しい低温制約がある。
【0005】
従って、必要な熱予算の範囲内にウェハの反りが許容できる厚いSiO2層を高い堆積速度で堆積させる方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくともいくつかの実施形態において上述の課題及びニーズに対処する。
本発明の第1の態様によれば、プラズマ強化化学気相成長(PECVD)により二酸化シリコンを基板上に堆積させる方法を提供するものであり、本方法は、基板をチャンバ内に配置するステップと、PECVDにより第1の堆積ステップを実行して、窒化シリコンを含む中間層を基板上に堆積させるステップと、PECVDにより第2の堆積ステップを実行して、少なくとも1個の二酸化シリコン層を中間層上に堆積させるステップを含み、第1の堆積ステップは、シラン、窒素ガス、及び水素ガス又はアンモニアガスのいずれかを含む第1のガス混合物をチャンバ内に導入して、中間層を基板上に堆積させるべく約220℃~約300℃の温度で第1のガス混合物からのプラズマをチャンバ内で維持するステップを含み、第2の堆積ステップは、テトラエチルオルソシリケートを含む第2のガス混合物をチャンバ内に導入して、少なくとも1個の二酸化シリコン層を中間層上に堆積させるべく約220℃~約300℃の温度で第2のガス混合物からのプラズマをチャンバ内で維持するステップを含み、中間層は-400MPa~-100MPaの全圧縮応力を有し、少なくとも1個の二酸化シリコン層の各々が-50MPa~+50MPaの全中立応力を有し、少なくとも1個の二酸化シリコン層の全厚は少なくとも10μmである。
【0007】
本発明は、総厚が少なくとも10μmであるTEOS系二酸化シリコン層を最大1.5μm/分の高い堆積速度、且つ亀裂が生じることなく低い熱予算内の温度でシリコンウェハ上に堆積させることを可能にできる。理論又は推測に縛られるのは本意でないが、窒化シリコン(SiN)を含む中間層は、特に基板がシリコン(Si)を含むか、又はシリコン(Si)から形成されていればテトラエチルオルソシリケート(TEOS)系二酸化シリコン(SiO2)層の基板への接着を向上させ、中間層の圧縮応力は、中立応力SiO2層が中間層上に堆積される際の中間層/SiO2積層の正味応力を低減するものと思われる。正味圧縮応力は、TEOS系SiO2層の亀裂閾値を増加させる。注目すべきは、中間層を設けることでTEOS系SiO2層の密度が低下し、これによりSiO2の亀裂閾値に達する前により厚いSiO2層を堆積させることができる。この効果は、中間層が、アンモニアを含むガス混合物から形成されたプラズマから堆積されたか、又はアンモニアを含まないガス混合物から形成されたプラズマから堆積されたかの如何に依らず発現することも示されている。
【0008】
第1のガス混合物はアンモニアを実質的に含んでいなくてよい。第1のガス混合物は、シラン、窒素ガス及び水素ガスから成るか又はこれらから本質的に成ることができる。代替的に、第1のガス混合物は、シラン、窒素ガス及びアンモニアガスから成るか又はこれらから本質的に成ることができる。第2のガス混合物は更に酸素ガスを含んでいてよい。第2のガス混合物は更に水素ガスを含んでいてよい。第2のガス混合物は更にヘリウムガスを含んでいてよい。第2のガス混合物は、テトラエチルオルソシリケート、ヘリウムガス、水素ガス及び酸素ガスから成るか又はこれらから本質的に成ることができる。
【0009】
第1の堆積ステップの実行中、シラン、窒素ガス、水素ガス及びアンモニアは各々に関連付けられたsccm単位の流量でチャンバ内に導入することができる。第2の堆積ステップの実行中、テトラエチルオルソシリケート、ヘリウムガス、水素ガス及び酸素ガスは各々に関連付けられたsccm単位の流量でチャンバ内に導入することができる。第2の堆積ステップの実行中、ヘリウムガスは、2個以上のガス導入口を通過してチャンバ内に導入することができる。好適には、2個以上のガス導入口のうち第1のガス導入口からのヘリウムガス流量は、2個以上のガス導入口のうち第2のガス導入口からのヘリウムガス流量よりも高くすることができる。好適には、第1のガス導入口は、テトラエチルオルソシリケートをチャンバ内に導入するガス導入口としても機能する。チャンバ内へのヘリウムガスの少なくとも2個の別個の供給源を有することにより、第1のガス導入口からチャンバ内に導入されるヘリウムガスは、第1のガス導入口からチャンバ内に導入されるテトラエチルオルソシリケートのキャリアガスとして機能し、第2のガス導入口からチャンバ内に導入されるヘリウムガスは、プラズマを安定化させて再現性のある動作を維持すべく機能することができる。
【0010】
シランは第1の堆積ステップの実行中に、約50sccm~約400sccm、任意選択的に約90sccm~約350sccm、任意選択的に約180~約330sccmの範囲の流量、又は任意選択的に約325sccmの流量でチャンバ内に導入することができる。
【0011】
窒素ガスは、約2000sccm~約8000sccm、任意選択的に約2500sccm~約7000sccm、任意選択的に約2600sccm~約6500sccmの範囲の流量、又は任意選択的に約6000sccmの流量で第1の堆積ステップの実行中にチャンバ内に導入することができる。
【0012】
第1の堆積ステップに存在する場合、水素ガスを約250~約750sccm、任意選択的に約400sccm~約600sccmの範囲の流量、又は任意選択的に約500sccmの流量でチャンバ内に導入することができる。
【0013】
第1の堆積ステップに存在する場合、アンモニアガスを約25sccm~約500sccm、任意選択的に約35sccm~約475sccmの範囲の流量、又は任意選択的に約450sccmの流量でチャンバ内に導入することができる。
【0014】
テトラエチルオルソシリケートは第2の堆積ステップの実行中に、約1sccm~約10sccm、任意選択的に約3sccm~約7sccmの範囲の流量、又は任意選択的に約5sccmの流量でチャンバ内に導入することができる。
【0015】
第2の堆積ステップに存在する場合、第2の堆積ステップの実行中に酸素ガスを約1.0slpm~約10slpm、任意選択的に約4.0slpm~約8.0slpmの範囲の流量、又は任意選択的に約6.5slpmの流量でチャンバ内に導入することができる。
【0016】
第2の堆積ステップに存在する場合、第2の堆積ステップの実行中に水素ガスを約0.25~約2.0slpm、任意選択的に約0.75slpm~約1.5slpmの範囲の流量、又は任意選択的に約1.0slpmの流量でチャンバ内に導入することができる。
【0017】
第2の堆積ステップに存在する場合、ヘリウムガスの全流量を第2の堆積ステップで約1000sccm~約2000sccm、任意選択的に約1200sccm~約1650sccmの範囲の流量、又は任意選択的に約1450sccmの流量でチャンバ内に導入することができる。少なくとも2個のガス導入口のうち第1のガス導入口を介して第2の堆積ステップでチャンバ内に導入されるヘリウムガスの流量は、約600sccm~約1900sccm、任意選択的に約800sccm~約1650sccm、又は任意選択的に約1250sccmの範囲であってよい。少なくとも2個のガス導入口のうち第2のガス導入口を通過して第2の堆積ステップでチャンバ内に導入されるヘリウムガスの流量は、約50sccm~約500sccm、任意選択的に約100sccm~約300sccm、又は任意選択的に約200sccmの範囲であってよい。
【0018】
第1の堆積ステップの実行中、処理温度は約280℃未満であってよい。処理温度は約225℃よりも高くてよい。第1の堆積ステップの実行中、処理温度は約250℃であってよい。第2の堆積ステップの実行中、処理温度は約280℃未満であってよい。処理温度は約225℃よりも高くてよい。第2の堆積ステップの実行中、処理温度は約250℃であってよい。基板をこれらの温度に維持することにより、基板を低熱予算制約内に維持できるため、本方法は窒化シリコン層及び二酸化シリコン層を温度に敏感な基板上に堆積させるべく適合される。例えば、本方法を用いて、素子層及び/又は相互接続部を含む温度に敏感な基板上に窒化シリコン層及び二酸化シリコン層を堆積させることができ、これらの層は、誘電体に埋め込まれているか又は基板上にダイ付けされた銅層を含んでいてよい。
【0019】
第1の堆積ステップでプラズマがチャンバ内で維持されている間、チャンバは約1Torr~約3Torrの範囲の圧力、又は任意選択的に約2Torrの圧力を有していてよい。堆積ステップにおいてプラズマが第2のチャンバ内で維持されている間、チャンバは約3Torr~約5Torrの範囲の圧力、又は任意選択的に約4Torrの圧力を有していてよい。
【0020】
本発明の第1の態様のステップは容量結合PECVDリアクタで実行できる。
【0021】
第1の堆積ステップにおいてプラズマは約500W~約1500W、任意選択的に約540W~約1320W、又は任意選択的に約700W~約1000Wの範囲の高周波RF電力を用いて維持される。第1の堆積ステップにおける高周波RF電力は約10MHz~約15MHzの範囲の周波数、好適には13.56MHzの周波数を有していてよい。
【0022】
第2の堆積ステップにおけるプラズマは高周波RF電力を用いて維持することができる。好適には、プラズマは高周波RF電力と低周波RF電力を用いて維持することができる。
【0023】
第2の堆積ステップにおける高周波RF電力は約10MHz~約15MHzの範囲の周波数、好適には13.56MHz囲の周波数を有していてよい。第2の堆積ステップにおける高周波RF電力は約1500W~約3000W、任意選択的に約1750W~約2300Wの範囲の電力、又は任意選択的に約1950Wの電力を有していてよい。
【0024】
第2の堆積ステップにおける低周波RF電力は100kHz~約500kHz、任意選択的に約200kHz~約450kHz、任意選択的に約300kHz~約400kHzの範囲の周波数、又は任意選択的に約375kHzの周波数を有していてよい。低周波RF電力は第2の堆積ステップにおいて、約200W~約600W、任意選択的に約400W~約550Wの範囲の電力、又は任意選択的に約350Wの電力を有していてよい。
【0025】
中間層の全圧縮応力は少なくとも-100MPa、任意選択的に少なくとも-200MPa、任意選択的に少なくとも-250MPa、又は任意選択的に少なくとも-300MPaであってよい。中間層の厚さは少なくとも0.05μm、任意選択的に少なくとも0.25μm、又は任意選択的に少なくとも0.5μmであってよい。少なくとも1個の二酸化シリコン層の各々の全中立応力は-30MPa~+30MPaの間であってよい。少なくとも1個の二酸化シリコン層の全応力は-50MPa~+50MPa、任意選択的に-30MPa~+30MPaであってよい。二酸化シリコン層の全厚は少なくとも20μm、任意選択的に少なくとも30μm、又は任意選択的に少なくとも40μmであってよい。少なくとも1個の二酸化シリコン層の各々の厚さは少なくとも1μm、任意選択的に少なくとも2μm、又は任意選択的に少なくとも5μmであってよい。少なくとも1個の二酸化シリコン層は少なくとも1.0μm/分、任意選択的に少なくとも1.25μm/分、又は任意選択的に少なくとも1.5μm/分の堆積速度で中間層上に堆積させることができる。
【0026】
少なくとも1個の二酸化シリコン層は単一の二酸化シリコン層から成るか又は単一の二酸化シリコン層から本質的に成ることができる。代替的に、少なくとも1個の二酸化シリコン層は2個以上の二酸化シリコン層を含んでいてよい。2個以上の二酸化シリコン層は同一チャンバ内で堆積させることができる。第2の堆積ステップはチャンバ内の真空条件を中断することなく、第1の堆積ステップの後で直接実行することができる。代替的に、基板は第1の堆積ステップと第2の堆積ステップの間にチャンバから取り外すことができる。基板は第1の堆積ステップと第2の堆積ステップの間に別のチャンバに移すことができる。代替的に、第1の堆積ステップと第2の堆積ステップを同一チャンバ内で実行することもできる。本発明者らは、第1の堆積ステップの後で基板をチャンバから取り出すことにより、中間層と二酸化シリコンの積層の処理性能を顕著に変えることなく真空条件を中断し得ることを見出した。従って、基板を同一チャンバ内又は同一性能の異なるチャンバ内で処理できるため、処理効率及び処理の柔軟性を向上させることができる。
【0027】
基板は半導体基板であってよい。基板はシリコン含有基板であってよい。半導体基板はシリコンであってよい。
【0028】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様による方法を用いて少なくとも1個の二酸化シリコン層が上に堆積された基板が提供され、少なくとも1個の二酸化シリコン層の各々は-50MPa~+50MPaの全中立応力を有し、少なくとも1個の二酸化シリコン層の全厚は少なくとも10μmである。
【0029】
基板は半導体基板であってよい。基板はシリコン含有基板であってよい。基板はシリコンであってよい。基板は複数のダイを含んでいてよい。基板は、当該基板上に取り付けられた1個以上の素子層及び/又は相互接続或いはダイ等の特徴を含んでいてよい。特徴は温度に敏感であってよい。特徴は銅層、例えば誘電体材料に埋め込まれた銅層を含んでいてよい。少なくとも1個の二酸化シリコン層の各々の全中立応力は-30MPa~+30MPaの間であってよい。少なくとも1個の二酸化シリコン層の全応力は-50MPa~+50MPa、任意選択的に-30MPa~+30MPaの間であってよい。少なくとも1個の二酸化シリコン層の全厚は少なくとも20μm、任意選択的に少なくとも30μm、又は任意選択的に少なくとも40μmであってよい。少なくとも1個の二酸化シリコン層の各々の厚さは少なくとも1μm、任意選択的に少なくとも2μm、又は任意選択的に少なくとも5μmであってよい。
【0030】
本発明の第3の態様によれば、本発明の第1の態様による方法を用いてプラズマ強化化学気相成長により二酸化シリコンを基板上に堆積させるプラズマ強化化学気相成長装置が提供され、本装置は、チャンバと、当該チャンバ内に配置され、基板を支持する基板支持部と、ある流量でガス又はガス混合物を当該チャンバ内に導入する少なくとも1個のガス導入口と、当該チャンバ内でプラズマを維持するプラズマ生成手段と、当該少なくとも1個のガス導入口に高周波RF電力を供給すべく構成された高周波電力供給手段と、当該基板支持部及び当該少なくとも1個のガス導入口の少なくとも一方に低周波RF電力を供給すべく構成された低周波電力供給手段と、第1の処理条件の組と第2の処理条件の組とを切り替えるべく構成されたコントローラであって、第1の処理条件の組が、当該基板上に中間層を堆積させる第1の堆積ステップを実行すべく構成され、当該中間層が窒化シリコンを含み、第2の処理条件の組が、中間層上に少なくとも1個の二酸化シリコン層を堆積させる第2の堆積ステップを実行すべく構成されたコントローラを含み、第1の処理条件の組が、シラン、窒素ガス、及び水素ガス又はアンモニアガスを含む第1のガス混合物を、当該少なくとも1個のガス導入口を通過して当該チャンバ内に導入し、当該プラズマ生成手段を用いて、約220℃~約300℃の温度で当該第1のガス混合物からのプラズマを当該チャンバ内で維持して、当該中間層を当該基板上に堆積させることにより当該第1の堆積ステップを実行すべく構成されていて、当該第2の一連の処理条件が、当該少なくとも1個のガス導入口を通過して、テトラエチルオルソシリケートを含む第2のガス混合物を当該チャンバ内に導入し、当該プラズマ生成手段を用いて、約220℃~約300℃の温度で、当該第2のガス混合物からのプラズマを当該チャンバ内で維持して、少なくとも1個の二酸化シリコン層を中間層上に堆積させることにより当該第2の堆積ステップを実行すべく構成されている。
【0031】
第2のガス混合物は更に酸素ガスを含んでいてよい。第2のガス混合物は更に水素ガスを含んでいてよい。第2のガス混合物は更にヘリウムガスを含んでいてよい。少なくとも1個のガス導入口は2個以上のガス導入口を含んでいてよい。好適には、2個以上のガス導入口のうち第1のガス導入口はヘリウムガス及びテトラエチルオルソシリケートをチャンバ内に導入すべく構成され、2個以上のガス導入口のうち第2のガス導入口はヘリウムガスをチャンバ内に導入すべく構成されている。低周波電力供給手段は、少なくとも1個のガス導入口に低周波RF電力を供給すべく構成することができる。
【0032】
本発明について上で述べてきたが、本発明は、上で開示した、又は以下の記述、図面、又は請求項の特徴の任意の発明的組み合わせに拡張できる。例えば、本発明の一態様に関連して開示した特徴は、本発明の他の任意の態様に関して開示した特徴と組み合わせてもよい。
【0033】
誤解を避けるため、本明細書において「含んでいる」又は「包含している」及び同様の用語に言及する都度、本発明は「~から成る」及び「~から本質的に成る」等、より限定的な用語も含むものと理解されたい。
【0034】
誤解を避けるため、負値を有する応力の測定値は圧縮応力を示す一方、正値を有する応力の測定値は引張応力を示すものと理解されたい。
【0035】
誤解を避けるため、注目する温度範囲でPECVDにより堆積された窒化シリコン又はSiNは、シリコン、窒素及び水素を含む、又はこれらから成る非晶質膜であると理解され、いくつかの実施形態において、α-SiN:H又はα-Si1-xNx:Hyと表記される場合がある。Si、N、及びHの割合は堆積パラメータに応じて変化し得る。しかし、利便及び簡潔のため、これらの膜を本明細書では窒化シリコン又はSiNと表記する。これらの膜は優れた誘電特性を有している。TEOS前駆体から堆積されたPECVD二酸化シリコン又はSiO2膜もまた、水素原子及び潜在的に痕跡量の炭素を含む非晶質誘電体膜である。注目する温度範囲で堆積されたPECVD TEOS系酸化物は化学量論的SiO2ではなく、シリコン、酸素、及び水素を含む、又はこれらから成る非晶質膜であり、いくつかの実施形態において、α-SiO:H又はα-Si1-xOx:Hy膜と表記される場合がある。しかし、利便性及び簡潔さを考慮して、これらのPECVD TEOS系酸化物を本明細書では二酸化シリコン又はSiO2と表記する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
本発明の複数の実施形態について、添付図面を参照しながら専ら例示的に説明する。
【
図1】中立応力及び圧縮応力の両方を受けるN
2/H
2前駆体からのPECVD SiN層のFTIRスペクトルを示すグラフである。
【
図2】中立応力及び圧縮応力の両方を受けるNH
3前駆体からのPECVD SiN層のFTIRスペクトルを示すグラフである。
【
図3】中立応力NH
3前駆体からのSiN層、中立応力N
2/H
2前駆体からのSiN層、及びシリコン基板上に堆積されたTEOS前駆体からのPECVD SiO
2層のFTIRスペクトルを示すグラフである。
【
図4】二酸化シリコン層によりコーティングされたシリコン基板上に、A)本発明による中間層が無い、及びB)本発明による中間層が有る状態で形成された40μmのトレンチのSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の例示的な方法(及び比較例)による、中間層及び二酸化シリコン層の堆積に適した装置は、英国ウェールズ南部ニューポート市のSPTS Technologies Limitedから販売されているSPTS Delta(商標)fxPパラレルプレートPECVD装置が含まれる。以下に説明する全ての例示的な実施形態及び比較例はこの装置を用いて実施された。しかし、これらの結果は一般に容量結合型PECVD装置で得られるものと思われる。応力測定はTenor Flx(商標)3300-Rシステムで行われた。
【0038】
以下の例示的な方法において、中間層は窒化シリコン(SiN)で形成されている。しかし、SiNに加えて1個以上の他の成分を含む中間層も後述の利点を示すことが予想される。
【0039】
本発明のPECVD装置は、チャンバと、基板を支持すべく当該チャンバ内に配置された基板支持部と、ある流量でガス又はガス混合物を当該チャンバ内に導入する少なくとも1個のガス導入口と、当該チャンバ内でプラズマを維持するプラズマ生成手段と、当該少なくとも1個のガス導入口に高周波RF電力を供給すべく構成された高周波電力供給手段と、当該基板支持部及び当該少なくとも1個のガス導入口の少なくとも一方に低周波RF電力を供給すべく構成された低周波電力供給手段と、コントローラを含んでいる。コントローラは、第1の処理条件の組と第2の処理条件の組とを切り替えるべく構成され、第1の処理条件の組が、当該基板上に中間層を堆積させる第1の堆積ステップを実行すべく構成され、中間層は窒化シリコンを含み、第2の処理条件の組が、中間層上に少なくとも1個の二酸化シリコン層を堆積させる第2の堆積ステップを実行すべく構成されている。第1の処理条件の組は、シラン、窒素ガス、及び水素ガス又はアンモニアガスのいずれかを含む第1のガス混合物を、当該少なくとも1個のガス導入口を通過して当該チャンバ内に導入し、当該プラズマ生成手段を用いて、当該中間層を当該基板上に堆積させるように約220℃~約300℃の温度で当該第1のガス混合物からのプラズマを当該チャンバ内で維持することにより当該第1の堆積ステップを実行すべく構成されている。第2の処理条件の組は、テトラエチルオルソシリケート、ヘリウムガス、水素ガス及び酸素ガスを含む第2のガス混合物を当該少なくとも1個のガス導入口を通過して当該チャンバ内に導入し、当該プラズマ生成手段を用いて、第2のガス混合物からのプラズマをチャンバ内に約220℃~約300℃の温度で維持することにより、当該中間層上に少なくとも1個の二酸化シリコン層を堆積させる第2の堆積ステップを実行すべく構成されている。
【0040】
少なくとも1個のガス導入口は、2個以上のガス導入口を含んでいてよい。好適には、2個以上のガス導入口のうち第1のガス導入口はヘリウムガス及びテトラエチルオルソシリケートをチャンバ内に導入すべく構成され、2個以上のガス導入口のうち第2のガス導入口はヘリウムガスをチャンバ内に導入すべく構成されている。
【0041】
13.56MHz及び375kHzで動作する2個のRF電源が、チャンバ上部に向けて配置された「シャワーヘッド」としても知られるガス分配プレートに結合されている。基板は、ガス分配プレートの下の基板支持部に、当該基板支持部と同軸的に配置されている。基板支持部は抵抗加熱され、冷却機構により基板支持部を、次いで基板温度を制御することができる。適当なRF圧力及び処理ガス圧力に達したならばガス分配プレートと基板支持部/基板の間にプラズマが生じる。チャンバはポンプシステムにより排気されて、真空下で動作する搬送モジュールに取り付けられる。
【0042】
基板は好適には半導体基板であり、最も好適にはシリコンで形成されている。本明細書に述べる複数の実施形態において、基板は、直径が300mmで標準的な厚さが約775μmのシリコンウェハの形式である。しかし、本発明の方法及び装置では他の基板材料、基板形状、直径及び厚さを用いてもよい。ガス流量、チャンバ圧力及び基板及び/又はガス導入口が受ける電力を含む、本発明の実行に必要な堆積条件は、基板材料及び形状に応じて当技術分野で公知の仕方で変化し得ることが理解されるであろう。本明細書に述べる複数の実施形態において、シリコンウェハは、当該シリコンウェハの上面に形成されたトレンチを有し、トレンチの深さは約40μmであって、本発明の方法が、堆積された二酸化シリコン層でトレンチを充填すべく用いられた。しかし、二酸化シリコン層は、ビア、ベアシリコン表面又は基板表面に取り付けられたダイを含む、このような基板の他の特徴にも同様に堆積させることができる。
【0043】
本願発明者らは、基板、特にシリコンを含む、又はシリコンから成る基板を、SiNを含む中間層でコーティングすることにより、亀裂又は層間剥離が生じる前に堆積させることが可能な中立/低応力TEOS系SiO2層の厚さを実質的に増加させることが可能であることを発見した。SiNを含む中間層が存在しない場合、亀裂又は層間剥離を生じさせずに先に堆積可能なSiO2の最大厚さは20μmであり、引張応力と圧縮応力が交互に加えられた複数の層が積層されただけ、又は極めて低い堆積速度で堆積されている。しかし、PECVD法で堆積されたSiNを含む厚さ0.5μmの中間層を用いた場合、中立応力(+22MPa)の中間層で30μmを超えるSiO2層厚が得られ、圧縮応力(-200MPa)の中間層では最大1.5μm/分の堆積速度で40μmを超えるSiO2層厚が得られた。当該亀裂しきい値の厚さの増加は、厚さが0.05μm~0.5μmの中間層に見られたが、この効果はより厚い中間層にも及ぶことが期待される。
【0044】
従来の方法で処理した基板と、本発明の方法の一実施形態に従い処理した基板との比較を
図4に示す。
図4は、中立応力が約40μmのTEOS系SiO
2層のシリコン堆積における深さが40μmのトレンチの断面の2個のSEM画像を示している。「A」とラベル付けされた画像ではSiO
2層と基板の間に中間層が存在しないのに対し、「B」とラベル付けされた画像では約-200MPaの全応力N
2/H
2系圧縮SiN層が最初に堆積され、続いて単一の中立応力TEOS系SiO
2層が堆積された。画像Aにおいて深刻な亀裂が、例えばトレンチの右側壁の中央及びSiO
2層の上面付近の両方で観察される。対照的に、画像Bでは試料の準備段階での劈開損傷以外に亀裂の痕跡は見られない。
【実施例0045】
本発明の例示的な複数の実施形態は、第1の堆積ステップにおいてシラン(SiH4)、窒素ガス(N2)、及び水素ガス(H2)又はアンモニアガス(NH3)をPECVDチャンバ内に導入することを含んでいる。チャンバ内にプラズマが維持されることにより、PECVD処理が生起して、窒化シリコン(SiN)を含む中間層を基板上に堆積させる。好適には、中間層はSiNから成るか又はSiNから本質的に成る。
【0046】
第1の堆積ステップの後の第2の堆積ステップにおいて、テトラエチルオルソシリケート(TEOS)、酸素ガス(O2)、H2、及びヘリウムガス(He)を含むガス混合物を、基板を含むPECVDチャンバ導入し、当該チャンバは第1の堆積ステップで使用したチャンバと同一であっても異なっていてもよい。チャンバ内でプラズマが維持されることにより、PECVD処理が生起して少なくとも1個の二酸化シリコン(SiO2)層を中間層上に堆積させることができる。
【0047】
中間層を製造する第1の堆積ステップでアンモニアの使用を避けることが好適な場合がある。従って本願発明者らは、第1の堆積ステップでアンモニアを使用した場合と使用しなかった場合の中間層の特性を調べた。NH3を含まないSiN層、及びNH3系SiN層の各々の堆積に用いた処理条件を表1に示す。いずれの場合も堆積は250℃で実行された。
【0048】
【0049】
図1に、アンモニアを使用せずにガス混合物SiH
4/N
2/H
2で製造したSi基板上の2個のSiN層のFTIRスペクトルを示す。基板の寄与分が減じられている。スペクトルは、約3340cm
-1のN-H伸長、約2130cm
-1のSi-H伸長、約1170cm
-1のN-H屈曲、及び850cm
-1のSi-N伸長に関連する吸収ピークを示す。Si-Nピークでスペクトルを正規化することで、中立SiNと比較して、~2130cm
-1でSi-H伸長ピークの面積が僅かに減少し、波数が増加していること、及びSi-N伸長ピークが圧縮SiNのN-H屈曲モードに近づくにつれて波数が増える傾向を示すことが分かる。
【0050】
図2に、中立応力及び圧縮応力状態のNH
3系PECVD SiN層のFTIRスペクトルを示す。この場合、ガス混合物はSiH
4/NH
3/N
2である。スペクトルは
図1のものと同様であるが、NH
3系SiNでN-H屈曲ピークがより顕著である。
【0051】
図3に、TEOS系SiO
2をシリコン上に1μm、及びN
2/H
2系SiN層をシリコン基板上に(基板とSiNの寄与を減じた後で)堆積させた場合のFTIR吸光スペクトルを示す。FTIRスペクトルは、約1083cm
-1を中心としてSiOピークが徐々に広がる様子を示す。NH
3系SiN層でも同様の結果が観察される。SiOピークの幅の変化を以下の表2に、シリコン及び4個のSiN変種のSiOピークの半値全幅(FWHM)として示す。
【0052】
【0053】
表2から分かるように、ピークの幅は中立SiN層の導入に伴い増加し、層が圧縮された際に更に僅かに広がる。ピークの幅が広いほど層の密度が低いため、SiO2の亀裂が生じる前により厚層を堆積できることを示している。
【0054】
中間層の屈折率を調べて以下の表3に示す。N2/H2及びNH3系SiN堆積の両方において、SiO2層の屈折率はSiN層の圧縮応力が増加するにつれて減少し、N2/H2から形成されたSiN層の屈折率がより顕著に変化した。中間層の最上部におけるSiO2層の有無に依らず中間層の全応力も以下の表4に示す。中間層が存在しない中立応力SiO2層での全応力は-7MPaであった。
【0055】
【0056】
【0057】
N2/H2系層は、それらの対応するNH3系層と比較した場合にN2/H2層内のSi含有量がより高いことを示す高い屈折率を示す。SiN/SiO2積層の正味応力は、個々の層の応力値から予想されるよりも圧縮が小さく、これは中間層がSiO2層の特性を変更していることを示唆している。いずれの場合も、応力は処理条件の変更を介して調整可能である。
【0058】
中立応力SiO2層は、TEOS/O2/H2/He化学を用いて約250℃で堆積され、最大1.5μm/分の堆積速度に対応可能であった。処理の詳細は以下の表5に見られる。
【0059】
【0060】
1250sccmのHe流量はTEOSのキャリアガスとして機能する一方、200sccmはプラズマを安定させて再現性のある動作を維持すべく別のラインでガス分配プレートに直接供給される。高周波及び低周波電源の電力を調整することにより、SiO2層の全応力を効果的に制御することができる。例えば、2300Wの高周波電源及び550Wの低周波電源により層を圧縮状態にする一方、1500Wの高周波電源を用いて層を引張状態にすることができる。測定された層の応力値及び屈折率を以下の表6に示す。
【0061】
【0062】
理論又は推測に一切束縛されることなく、TEOS系SiO2層の密度低下を示す1183cm-1でのSi-O FTIRピークの広がりにより測定されるように、中間層内のSiNはSiO2の構造に顕著に影響を及ぼすように見える。TEOSの構造的変化は、SiO2層の屈折率及びFTIRスペクトルにより決定されるように、中間層内のSiNの電源からは相対的に独立しているように見える。理論又は推測に一切束縛されないことを前提に、中間層内のSiNの存在により、特に基板がSiで形成されているか又はSiを含む場合にTEOS系SiO2の基板上への接着性が向上するものと推測される。中間層の圧縮応力は、中立応力SiO2層が中間層上に堆積した場合に中間層/SiO2積層の正味応力を減少させるものと推測される。正味圧縮応力は、TEOS系SiO2層の亀裂閾値を増大させ、亀裂又は層間剥離が生じる前に堆積可能なSiO2層の厚さを増大させる。驚くべきことに、中間層内のSiNは、1183cm-1でのSi-O FTIRピークの広がりにより測定されるように、上方のSiO2層の構造に影響を及ぼす。このピークの広がりはTEOS系SiO2層の密度の低下を示す。TEOS系SiO2層の構造的変化は、屈折率及びFTIRにより決定される中間層内のSiN成分の電源から相対的に独立しているように見える。
【0063】
中立応力TEOS系SiO2は単一層として堆積させることも、又は亀裂性能が変化しないよう段階的に堆積して各層が中立応力を有する複数のSiO2層を形成することもできることに注意されたい。好適には、複数のSiO2層が存在する場合、SiO2堆積全体にわたる全応力が中立であることを保証すべく、少なくとも1個のSiO2層の全応力は-50MPa~+50MPa、任意選択的に-30MPa~+30MPaである。複数のSiO2層を設けることにより、SiO2層(群)の汚染を防ぐべく第2の堆積ステップの実行中にチャンバを定期的に洗浄することができる。複数のSiO2層は、単一ウェハチャンバ又はクラスターツール或いは必要ならばマルチステーションPECVDツールに堆積させることができる。中間層及びTEOS系SiO2は、同一チャンバ又は異なるチャンバで堆積してよく、いずれの場合も亀裂性能は変化しない。中間層の堆積に続いて、処理は真空下で続行されるか、又はTEOS系SiO2の堆積を開始する前に真空休止を実行することができる。チャンバ及び析出シーケンスの選択はツール構成に大きく依存する。