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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004502
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】発光装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/026 20060101AFI20240110BHJP
   H01S 5/022 20210101ALI20240110BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H01S5/026 610
H01S5/022
G02B3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020193598
(22)【出願日】2020-11-20
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(72)【発明者】
【氏名】茂木 英昭
(72)【発明者】
【氏名】中村 仁
(72)【発明者】
【氏名】岩下 潤
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AC53
5F173AD02
5F173AD20
5F173AL10
5F173AP33
5F173AR93
5F173MA10
5F173MD44
5F173MD63
5F173MD65
5F173MF39
(57)【要約】
【課題】基板にレンズを好適な態様で設けることが可能な発光装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本開示の発光装置は、第1基板と、前記第1基板の下面に設けられた発光素子と、前記第1基板の上面に設けられたレンズと、前記第1基板の上面に設けられた凸部と、前記第1基板の上面に設けられた膜であって、前記レンズ上に配置されているかまたは前記レンズを形成している第1部分と、前記凸部上に配置されているかまたは前記凸部を形成している第2部分と、を含む膜とを備え、前記第1部分の最上部の高さは、前記第2部分の最上部の高さ以下である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板の下面に設けられた発光素子と、
前記第1基板の上面に設けられたレンズと、
前記第1基板の上面に設けられた凸部と、
前記第1基板の上面に設けられた膜であって、前記レンズ上に配置されているかまたは前記レンズを形成している第1部分と、前記凸部上に配置されているかまたは前記凸部を形成している第2部分と、を含む膜とを備え、
前記第1部分の最上部の高さは、前記第2部分の最上部の高さ以下である、
発光装置。
【請求項2】
前記レンズは、凸レンズ、凹レンズ、フレネルレンズ、バイナリレンズ、またはフラットレンズである、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第1基板の下面には、1つ以上の前記発光素子が設けられており、
前記第1基板の上面には、1つ以上の前記レンズが設けられており、
前記発光素子と前記レンズは、1:1で、N:1で、または1:Nで対応している(Nは2以上の整数)、請求項1に記載の発光装置。
【請求項4】
前記凸部は、前記レンズを環状に包囲する形状を有する、請求項1に記載の発光装置。
【請求項5】
前記凸部として、前記第1基板の上面の複数の角に設けられた複数の凸部を備える、請求項1に記載の発光装置。
【請求項6】
前記凸部は、前記第1基板の上面の1つの辺に沿って延びる線状の形状を有する、請求項1に記載の発光装置。
【請求項7】
前記凸部は、前記第1基板の上面の2つの辺の沿って延びるL字型の形状を有する、請求項1に記載の発光装置。
【請求項8】
前記膜は、前記レンズ上に設けられた反射防止膜である、請求項1に記載の発光装置。
【請求項9】
前記第1基板は、ガリウム(Ga)およびヒ素(As)を含む半導体基板である、請求項1に記載の発光装置。
【請求項10】
前記発光素子から出射された光は、前記第1基板の下面から上面へと前記第1基板内を透過し、前記レンズに入射する、請求項1に記載の発光装置。
【請求項11】
前記発光素子を介して前記第1基板が搭載された第2基板をさらに備える、請求項1に記載の発光装置。
【請求項12】
前記第2基板は、シリコン(Si)を含む半導体基板である、請求項11に記載の発光装置。
【請求項13】
第1基板と、
前記第1基板の下面に設けられた発光素子と、
前記第1基板の上面に設けられたレンズと、
前記第1基板の上面に設けられた凸部とを備え、
前記レンズの最上部の高さは、前記凸部の最上部の高さ以下である、
発光装置。
【請求項14】
第1基板の下面に発光素子を形成し、
前記第1基板の上面にレンズを形成し、
前記第1基板の上面に凸部を形成し、
前記第2基板の上面に、第1部分と第2部分とを含む膜を形成する、
ことを含み、
前記膜は、前記第1部分が前記レンズ上に配置されるかまたは前記レンズを形成し、前記第2部分が前記凸部上に配置されるかまたは前記凸部を形成するように形成され、
前記膜は、前記第1部分の最上部の高さが、前記第2部分の最上部の高さ以下となるように形成される、
発光装置の製造方法。
【請求項15】
前記レンズ、前記凸部、および前記膜の形成後に、前記第1基板を複数にチップにダイシングすることをさらに含む、請求項14に記載の発光装置の製造方法。
【請求項16】
前記凸部の一部は、前記第1基板のダイシング領域内に形成される、請求項15に記載の発光装置の製造方法。
【請求項17】
前記凸部の少なくとも一部は、前記第1基板のダイシング領域以外の領域内に形成される、請求項15に記載の発光装置の製造方法。
【請求項18】
前記第1基板のダイシング後に前記膜に基板保持装置を接触させて、前記第1基板を前記基板保持装置により保持し、
前記基板保持装置により保持されている前記第1基板を前記発光素子を介して第2基板上に搭載する、
ことをさらに含む、請求項15に記載の発光装置の製造方法。
【請求項19】
前記基板保持装置は、前記第2部分に接触し前記第1部分に接触しないように前記第1基板を保持する、請求項18に記載の発光装置の製造方法。
【請求項20】
第1基板の下面に発光素子を形成し、
前記第1基板の上面にレンズを形成し、
前記第1基板の上面に凸部を形成する、
ことを含み、
前記レンズおよび前記凸部は、前記レンズの最上部の高さが、前記凸部の最上部の高さ以下となるように形成される、
発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザーの一種として、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)等の面発光レーザーが知られている。一般に、面発光レーザーを利用した発光装置では、基板の表面または裏面に複数の発光素子が2次元アレイ状に設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2004-526194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の発光装置では例えば、基板の表面に複数の発光素子が設けられ、基板の裏面に複数のレンズが設けられる。この場合、これらのレンズに関する種々の問題が生じるおそれがある。例えば、上記の基板を吸着して別の基板上に搭載する際などに、レンズに圧力が加わってレンズが傷つくおそれや、上記の基板がレンズのせいで吸着しにくくなるおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は、基板にレンズを好適な態様で設けることが可能な発光装置およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の側面の発光装置は、第1基板と、前記第1基板の下面に設けられた発光素子と、前記第1基板の上面に設けられたレンズと、前記第1基板の上面に設けられた凸部と、前記第1基板の上面に設けられた膜であって、前記レンズ上に配置されているかまたは前記レンズを形成している第1部分と、前記凸部上に配置されているかまたは前記凸部を形成している第2部分と、を含む膜とを備え、前記第1部分の最上部の高さは、前記第2部分の最上部の高さ以下である。これにより、第1基板にレンズを好適な態様で設けることが可能となる。例えば、第1基板を吸着して第2基板上に搭載する際に、第1基板を第2部分での吸着により保持することで、レンズに圧力が加わってレンズが傷つくことや、第1基板がレンズのせいで吸着しにくくなることを抑制することが可能となる。
【0007】
また、この第1の側面において、前記レンズは、凸レンズ、凹レンズ、フレネルレンズ、バイナリレンズ、またはフラットレンズでもよい。これにより例えば、第1基板に種々の形状のレンズを好適な態様で形成することが可能となる。
【0008】
また、この第1の側面において、前記第1基板の下面には、1つ以上の前記発光素子が設けられており、前記第1基板の上面には、1つ以上の前記レンズが設けられており、前記発光素子と前記レンズは、1:1で、N:1で、または1:Nで対応していてもよい(Nは2以上の整数)。これにより例えば、第1基板に種々のサイズのレンズを好適な態様で形成することが可能となる。
【0009】
また、この第1の側面において、前記凸部は、前記レンズを環状に包囲する形状を有していてもよい。これにより例えば、凸部をレンズの周りの広い範囲に配置することが可能となる。
【0010】
また、この第1の側面の発光装置は、前記凸部として、前記第1基板の上面の複数の角に設けられた複数の凸部を備えていてもよい。これにより例えば、凸部を第1基板の上面の角付近に限定して配置することが可能となる。
【0011】
また、この第1の側面において、前記凸部は、前記第1基板の上面の1つの辺に沿って延びる線状の形状を有していてもよい。これにより例えば、凸部をレンズを第1基板の上面の1つの辺付近に限定して配置することが可能となる。
【0012】
また、この第1の側面において、前記凸部は、前記第1基板の上面の2つの辺の沿って延びるL字型の形状を有していてもよい。これにより例えば、凸部をレンズを第1基板の上面の2つの辺付近に限定して配置することが可能となる。
【0013】
また、この第1の側面において、前記膜は、前記レンズ上に設けられた反射防止膜でもよい。これにより例えば、第1基板を保持する基板保持装置に接触する部分を反射防止膜とすることが可能となる。
【0014】
また、この第1の側面において、前記第1基板は、ガリウム(Ga)およびヒ素(As)を含む半導体基板でもよい。これにより例えば、傷つきやすいGaAs基板にレンズを形成する場合でも、レンズが傷つくことを抑制することが可能となる。
【0015】
また、この第1の側面において、前記発光素子から出射された光は、前記第1基板の下面から上面へと前記第1基板内を透過し、前記レンズに入射してもよい。これにより例えば、裏面出射型の発光装置におけるレンズが傷つくことを抑制することが可能となる。
【0016】
また、この第1の側面の発光装置は、前記発光素子を介して前記第1基板が搭載された第2基板をさらに備えていてもよい。これにより例えば、第1基板をこの第2基板上に搭載する際に、レンズに圧力が加わってレンズが傷つくことや、第1基板がレンズのせいで吸着しにくくなることを抑制することが可能となる。
【0017】
また、この第1の側面において、前記第2基板は、シリコン(Si)を含む半導体基板でもよい。これにより例えば、発光素子やレンズを高特性なGaAs基板に形成しつつ、発光装置用の回路を安価なSi基板に形成することが可能となる。
【0018】
本開示の第2の側面の発光装置は、第1基板と、前記第1基板の下面に設けられた発光素子と、前記第1基板の上面に設けられたレンズと、前記第1基板の上面に設けられた凸部とを備え、前記レンズの最上部の高さは、前記凸部の最上部の高さ以下である。これにより、第1基板にレンズを好適な態様で設けることが可能となる。例えば、第1基板を吸着して第2基板上に搭載する際に、第1基板を凸部での吸着により保持することで、レンズに圧力が加わってレンズが傷つくことや、第1基板がレンズのせいで吸着しにくくなることを抑制することが可能となる。
【0019】
本開示の第3の側面の発光装置の製造方法は、第1基板の下面に発光素子を形成し、前記第1基板の上面にレンズを形成し、前記第1基板の上面に凸部を形成し、前記第2基板の上面に、第1部分と第2部分とを含む膜を形成することを含み、前記膜は、前記第1部分が前記レンズ上に配置されるかまたは前記レンズを形成し、前記第2部分が前記凸部上に配置されるかまたは前記凸部を形成するように形成され、前記膜は、前記第1部分の最上部の高さが、前記第2部分の最上部の高さ以下となるように形成される。これにより、第1基板にレンズを好適な態様で設けることが可能となる。例えば、第1基板を吸着して第2基板上に搭載する際に、第1基板を第2部分での吸着により保持することで、レンズに圧力が加わってレンズが傷つくことや、第1基板がレンズのせいで吸着しにくくなることを抑制することが可能となる。
【0020】
また、この第3の側面の発光装置の製造方法は、前記レンズ、前記凸部、および前記膜の形成後に、前記第1基板を複数にチップにダイシングすることをさらに含んでいてもよい。これにより例えば、第1基板の保持のための凸部や膜を、レンズと同様にダイシング前に形成することが可能となり、レンズを形成する工程と同様の工程で凸部や膜を簡単に形成することが可能となる。
【0021】
また、この第3の側面において、前記凸部の一部は、前記第1基板のダイシング領域内に形成されてもよい。これにより例えば、凸部の存在がレンズの配置の邪魔になることを抑制することが可能となる。
【0022】
また、この第3の側面において、前記凸部の少なくとも一部は、前記第1基板のダイシング領域以外の領域内に形成されてもよい。これにより例えば、凸部をダイシング後も残存させることが可能となり、凸部や第2部分をダイシング後の第1基板の保持に利用することが可能となる。
【0023】
また、この第3の側面の発光装置の製造方法は、前記第1基板のダイシング後に前記膜に基板保持装置を接触させて、前記第1基板を前記基板保持装置により保持し、前記基板保持装置により保持されている前記第1基板を前記発光素子を介して第2基板上に搭載することをさらに含んでいてもよい。これにより例えば、凸部や第2部分を第1基板の保持に利用することで、レンズが傷つくことや、第1基板がレンズのせいで吸着しにくくなることを抑制することが可能となる。
【0024】
また、この第3の側面において、前記基板保持装置は、前記第2部分に接触し前記第1部分に接触しないように前記第1基板を保持してもよい。これにより例えば、レンズや第1部分を第1基板の保持に利用しないことで、レンズが傷つくことや、第1基板がレンズのせいで吸着しにくくなることを抑制することが可能となる。
【0025】
本開示の第4の側面の発光装置の製造方法は、第1基板の下面に発光素子を形成し、前記第1基板の上面にレンズを形成し、前記第1基板の上面に凸部を形成することを含み、前記レンズおよび前記凸部は、前記レンズの最上部の高さが、前記凸部の最上部の高さ以下となるように形成される。これにより、第1基板にレンズを好適な態様で設けることが可能となる。例えば、第1基板を吸着して第2基板上に搭載する際に、第1基板を凸部での吸着により保持することで、レンズに圧力が加わってレンズが傷つくことや、第1基板がレンズのせいで吸着しにくくなることを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1実施形態の測距装置の構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態の発光装置の構造の例を示す断面図である。
図3図2のBに示す発光装置の構造を示す断面図である。
図4】第1実施形態の発光装置の構造を示す断面図および平面図である。
図5】比較例の発光装置の基板の構造を示す平面図および断面図である。
図6】第1実施形態の発光装置の基板の構造を示す平面図および断面図である。
図7】比較例の発光装置の製造方法を示す断面図である。
図8】第1実施形態の発光装置の製造方法を示す断面図である。
図9】第2実施形態の発光装置の基板の構造を示す平面図および断面図である。
図10】第3実施形態の発光装置の基板の構造を示す平面図および断面図である。
図11】第4実施形態の発光装置の基板の構造を示す平面図および断面図である。
図12】第5実施形態の発光装置の基板の構造を示す平面図および断面図である。
図13】第6実施形態の発光装置の基板の構造を示す平面図および断面図である。
図14】第7実施形態の発光装置の基板の構造を示す平面図および断面図である。
図15】第8実施形態の発光装置の基板の構造を示す平面図および断面図である。
図16】第9実施形態の発光装置の基板の構造を示す平面図および断面図である。
図17】第10実施形態の発光装置の基板の構造の例を示す断面図(1/2)である。
図18】第10実施形態の発光装置の基板の構造の例を示す断面図(2/2)である。
図19】第10実施形態の発光装置の構造の例を示す断面図(1/2)である。
図20】第10実施形態の発光装置の構造の例を示す断面図(2/2)である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本開示の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0028】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の測距装置の構成を示すブロック図である。
【0029】
図1の測距装置は、発光装置1と、撮像装置2と、制御装置3とを備えている。図1の測距装置は、発光装置1から発光された光を被写体に照射する。撮像装置2は、被写体で反射した光を受光して被写体を撮像する。制御装置3は、撮像装置2から出力された画像信号を用いて被写体までの距離を測定(算出)する。発光装置1は、撮像装置2が被写体を撮像するための光源として機能する。
【0030】
発光装置1は、発光部11と、駆動回路12と、電源回路13と、発光側光学系14とを備えている。撮像装置2は、イメージセンサ21と、画像処理部22と、撮像側光学系23とを備えている。制御装置3は、測距部31を備えている。
【0031】
発光部11は、被写体に照射するためのレーザー光を発光する。本実施形態の発光部11は、後述するように、2次元アレイ状に配置された複数の発光素子を備え、各発光素子は、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)構造を有している。これらの発光素子から出射された光が、被写体に照射される。本実施形態の発光部11は、図1に示すように、LD(Laser Diode)チップ41と呼ばれるチップ内に設けられている。
【0032】
駆動回路12は、発光部11を駆動する電気回路である。電源回路13は、駆動回路12の電源電圧を生成する電気回路である。図1の測距装置では例えば、電源回路13が、測距装置内のバッテリから供給される入力電圧から電源電圧を生成し、駆動回路12が、この電源電圧を用いて発光部11を駆動する。本実施形態の駆動回路12は、図1に示すように、LDD(Laser Diode Driver)基板42と呼ばれる基板内に設けられている。
【0033】
発光側光学系14は、種々の光学素子を備えており、これらの光学素子を介して発光部11からの光を被写体に照射する。同様に、撮像側光学系23は、種々の光学素子を備えており、これらの光学素子を介して被写体からの光を受光する。
【0034】
イメージセンサ21は、被写体からの光を撮像側光学系23を介して受光し、この光を光電変換により電気信号に変換する。イメージセンサ21は例えば、CCD(Charge Coupled Device)センサまたはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサである。本実施形態のイメージセンサ21は、上記の電子信号をA/D(Analog to Digital)変換によりアナログ信号からデジタル信号に変換し、デジタル信号としての画像信号を画像処理部22に出力する。また、本実施形態のイメージセンサ21は、フレーム同期信号を駆動回路12に出力し、駆動回路12は、フレーム同期信号に基づいて、発光部11をイメージセンサ21におけるフレーム周期に応じたタイミングで発光させる。
【0035】
画像処理部22は、イメージセンサ21から出力された画像信号に対し種々の画像処理を施す。画像処理部22は例えば、DSP(Digital Signal Processor)などの画像処理プロセッサを備えている。
【0036】
制御装置3は、図1の測距装置の種々の動作を制御し、例えば、発光装置1の発光動作や、撮像装置2の撮像動作を制御する。制御装置3は例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備えている。
【0037】
測距部31は、イメージセンサ21から出力されて、画像処理部22により画像処理を施された画像信号に基づいて、被写体までの距離を測定する。測距部31は、測距方式として例えば、STL(Structured Light)方式またはToF(Time of Flight)方式を採用している。測距部31はさらに、上記の画像信号に基づいて、測距装置と被写体との距離を被写体の部分ごとに測定して、被写体の3次元形状を特定してもよい。
【0038】
図2は、第1実施形態の発光装置1の構造の例を示す断面図である。
【0039】
図2のAは、本実施形態の発光装置1の構造の第1の例を示している。この例の発光装置1は、上述のLDチップ41およびLDD基板42と、実装基板43と、放熱基板44と、補正レンズ保持部45と、1つ以上の補正レンズ46と、配線47とを備えている。
【0040】
図2のAは、互いに垂直なX軸、Y軸、およびZ軸を示している。X方向とY方向は横方向(水平方向)に相当し、Z方向は縦方向(垂直方向)に相当する。また、+Z方向は上方向に相当し、-Z方向は下方向に相当する。-Z方向は、厳密に重力方向に一致していてもよいし、厳密には重力方向に一致していなくてもよい。
【0041】
LDチップ41は、放熱基板44を介して実装基板43上に配置され、LDD基板42も、実装基板43上に配置されている。実装基板43は、例えばプリント基板である。本実施形態の実装基板43には、図1のイメージセンサ21や画像処理部22も配置されている。放熱基板44は例えば、Al(酸化アルミニウム)基板やAlN(窒化アルミニウム)基板などのセラミック基板である。
【0042】
補正レンズ保持部45は、LDチップ41を囲むように放熱基板44上に配置されており、LDチップ41の上方に1つ以上の補正レンズ46を保持している。これらの補正レンズ46は、上述の発光側光学系14(図1)に含まれている。LDチップ41内の発光部11(図1)から発光された光は、これらの補正レンズ46により補正された後、被写体(図1)に照射される。図2のAは、一例として、補正レンズ保持部45に保持された2つの補正レンズ46を示している。
【0043】
配線47は、実装基板43の表面、裏面、内部などに設けられており、LDチップ41とLDD基板42とを電気的に接続している。配線47は例えば、実装基板43の表面や裏面に設けられたプリント配線や、実装基板43を貫通するビア配線である。本実施形態の配線47はさらに、放熱基板44の内部または付近を通過している。
【0044】
図2のBは、本実施形態の発光装置1の構造の第2の例を示している。この例の発光装置1は、第1の例の発光装置1と同じ構成要素を備えているが、配線47の代わりにバンプ48を備えている。
【0045】
図2のBでは、放熱基板44上にLDD基板42が配置されており、LDD基板42上にLDチップ41が配置されている。このようにLDチップ41をLDD基板42上に配置することにより、第1の例の場合に比べて、実装基板43のサイズを小型化することが可能となる。図2のBでは、LDチップ41が、LDD基板42上にバンプ48を介して配置されており、バンプ48によりLDD基板42と電気的に接続されている。バンプ48は、例えば金(Au)で形成されている。
【0046】
以下、本実施形態の発光装置1について、図2のBに示す第2の例の構造を有しているとして説明する。ただし、以下の説明は、第2の例に特有の構造についての説明を除き、第1の例の構造を有する発光装置1にも適用可能である。
【0047】
図3は、図2のBに示す発光装置1の構造を示す断面図である。
【0048】
図3は、発光装置1内のLDチップ41とLDD基板42の断面を示している。図3に示すように、LDチップ41は、基板51と、積層膜52と、複数の発光素子53と、複数のアノード電極54と、複数のカソード電極55とを備えている。また、LDD基板42は、基板61と、複数の接続パッド62とを備えている。基板51は、本開示の第1基板の例であり、基板61は、本開示の第2基板の例である。なお、図3では、後述するレンズ71、凸部72、および反射防止膜73の図示は省略されている(図4を参照)。
【0049】
基板51は、例えばGaAs(ガリウムヒ素)基板などの化合物半導体基板である。図3は、-Z方向を向いている基板51の表面S1と、+Z方向を向いている基板51の裏面S2とを示している。図3では、表面S1が基板51の下面となっており、裏面S2が基板51の上面となっている。
【0050】
積層膜52は、基板51の表面S1に積層された複数の層を含んでいる。これらの層の例は、n型半導体層、活性層、p型半導体層、および光反射層や、光の射出窓を有する絶縁層などである。積層膜52は、-Z方向に突出した複数のメサ部Mを含んでいる。これらのメサ部Mの一部が、複数の発光素子53となっている。
【0051】
発光素子53は、積層膜52の一部として、基板52の表面S1に設けられている。本実施形態の発光素子53は、VCSEL構造を有しており、光を+Z方向に出射する。発光素子53から出射された光は、図3に示すように、基板51の表面S1から裏面S2へと基板51内を透過し、基板51から上述の補正レンズ46(図2)に入射する。このように、本実施形態のLDチップ41は、裏面出射型のVCSELチップとなっている。
【0052】
アノード電極54は、発光素子53の下面に形成されている。カソード電極55は、発光素子53以外のメサ部Mの下面に形成されており、メサ部Mの下面から、メサ部M間にある積層膜52の下面まで延びている。各発光素子53は、対応するアノード電極54と対応するカソード電極55との間に電流が流れることで光を出射する。
【0053】
上述のように、LDチップ41は、LDD基板42上にバンプ48を介して搭載されており、バンプ48によりLDD基板42と電気的に接続されている。具体的には、LDD基板42に含まれる基板61上に接続パッド62が形成されており、接続パッド62上にバンプ48を介してメサ部Mが配置されている。各メサ部Mは、アノード電極54またはカソード電極55を介してバンプ48上に配置されている。基板61は、例えばSi(シリコン)基板などの半導体基板である。
【0054】
LDD基板42は、発光部11を駆動する駆動回路12を含んでいる(図1)。図3は、駆動回路12に含まれる複数のスイッチSWを模式的に示している。各スイッチSWは、バンプ48を介して、対応する発光素子53と電気的に接続されている。本実施形態の駆動回路12は、これらのスイッチSWを個々のスイッチSWごとに制御(オン・オフ)することができる。よって、駆動回路12は、複数の発光素子53を個々の発光素子53ごとに駆動させることができる。これにより、例えば測距に必要な発光素子53のみを発光させるなど、発光部11から出射される光を精密に制御することが可能となる。このような発光素子53の個別制御は、LDD基板42をLDチップ41の下方に配置することにより、各発光素子53を対応するスイッチSWと電気的に接続しやすくなったことで実現可能となっている。
【0055】
図4は、第1実施形態の発光装置1の構造を示す断面図および平面図である。
【0056】
図4のAは、発光装置1内のLDチップ41とLDD基板42の断面を示している。上述のように、LDチップ41は、基板51と、積層膜52と、複数の発光素子53と、複数のアノード電極54と、複数のカソード電極55とを備えており、LDD基板42は、基板61と、複数の接続パッド62とを備えている。ただし、図4のAでは、アノード電極54、カソード電極55、および接続パッド62の図示が省略されている。
【0057】
本実施形態のLDチップ41は、基板51の表面S1に複数の発光素子53を備えると共に、基板51の裏面S2に複数のレンズ71と、凸部72と、反射防止膜73とを備えている。反射防止膜73は、本開示の膜の例である。
【0058】
レンズ71は、発光素子53と同様に、2次元アレイ状に配置されている。本実施形態のレンズ71は、発光素子53と1対1で対応しており、レンズ71の各々が、1つの発光素子53の+Z方向に配置されている。また、本実施形態のレンズ71は、図4のAに示すように、基板51の裏面S2に基板51の一部として設けられている。具体的には、本実施形態のレンズ71は凸レンズであり、基板51の裏面S2を凸形状にエッチング加工することで、基板51の一部として形成されている。本実施形態によれば、基板51のエッチング加工によりレンズ71を形成することで、レンズ71を簡単に形成することができる。なお、凸レンズ以外のレンズ71の例や、基板51のエッチング加工の詳細については、後述する。
【0059】
凸部72は、基板51の裏面S2に設けられており、基板51から+Z方向に突出した凸型の形状を有している。よって、基板51の裏面S2には、凸部72に起因する段差が形成されている。凸部72は、凸レンズである本実施形態のレンズ71と同様に、凸型の形状を有しているが、レンズ71としては使用されない。本実施形態の凸部72は、後述するように、基板51上の全レンズ71を環状に包囲する形状を有している(図4のBを参照)。また、本実施形態の凸部72は、レンズ71と同様に、基板51の裏面S2に基板51の一部として設けられている。よって、本実施形態によれば、基板51のエッチング加工により凸部72を形成することで、凸部72を簡単に形成することができる。
【0060】
反射防止膜73は、レンズ71および凸部72を覆うように、基板51の裏面S2に設けられている。よって、反射防止膜73は、レンズ71上に配置された第1部分X1と、凸部72上に配置された第2部分X2とを含んでいる。反射防止膜73は、基板51の内部からレンズ71に入射した光が、基板51の内部へと反射されることを防止する機能を有している。反射防止膜73は、例えば酸化シリコン膜である。反射防止膜73は、本実施形態では均一な厚さを有しているが、不均一な厚さを有していてもよい。
【0061】
上記複数の発光素子53から出射された光は、基板51の表面S1から裏面S2へと基板51内を透過し、上記複数のレンズ71に入射する。本実施形態では、各発光素子53から出射された光が、対応する1つのレンズ71に入射する。これにより、上記複数の発光素子53から出射された光を、個々のレンズ71ごとに成形することが可能となる。上記複数のレンズ71を通過した光は、補正レンズ46(図2)を通過し、被写体(図1)に照射される。なお、発光素子53とレンズ71が1対1に対応しない場合の例については、後述する。
【0062】
ここで、図4のAに示す厚さA1、A2、B1、B2、C1、C2や幅D1、D2について説明する。
【0063】
本実施形態では、各レンズ71の最上部の高さが、凸部72の最上部の高さ以下となっている。別言すると、各レンズ71の最上部のZ座標が、凸部72の最上部のZ座標以下となっている。本実施形態の各レンズ71は凸レンズであるため、各レンズ71の最上部は、各レンズ71の頂部である。一方、本実施形態の凸部72は平坦な上面を有しているため、凸部72の最上部は、凸部72の上面である。よって、本実施形態では、各レンズ71の頂部の高さが、凸部72の上面の高さ以下となっている。
【0064】
その結果、各レンズ71上の反射防止膜73の第1部分X1の最上部の高さは、凸部72上の反射防止膜73の第2部分X2の最上部の高さ以下となっている。各レンズ71上の第1部分X1の最上部は、各レンズ71の頂部の上方に存在している。一方、凸部72上の第2部分X2の最上部は、凸部72の上面の上方に存在している。よって、各レンズ71の頂部の上方に存在する第1部分X1の最上部の高さは、凸部72の上面の上方に存在する第2部分X2の最上部の高さ以下となっている。
【0065】
厚さA1、B1、C1はそれぞれ、基板51、レンズ71、凸部72のZ方向の厚さを表している。幅D1は、図4のAにおける凸部72のX方向の幅を表している。基板51の厚さA1は、例えば100~600μmである。レンズ71の厚さB1は、例えば0.1~10μmである。凸部72の厚さC1は、例えば0.1~10μmである。凸部72の幅D1は、例えば10~100μmである。さらに、反射防止膜73の厚さは、例えば0.1~1μmである。
【0066】
各レンズ71の厚さB1は、基板51の裏面S2の平坦部に対する各レンズ71の最上部の高さに相当している。同様に、凸部72の厚さC1は、基板51の裏面S2の平坦部に対する凸部72の最上部の高さに相当している。よって、各レンズ71の最上部の高さが、凸部72の最上部の高さ以下であることは、各レンズ71の厚さB1が、凸部72の厚さC1以下であると言い換えることができる(B1≦C1)。
【0067】
さらに、厚さA2、B2、C2はそれぞれ、基板51と反射防止膜73の合計厚、レンズ71と反射防止膜73の合計厚、凸部72と反射防止膜73の合計厚を表している。幅D2は、図4のAにおける凸部72と反射防止膜74の合計幅を表している。各レンズ71上の第1部分X1の最上部の高さが、凸部72上の第2部分X2の最上部の高さ以下であることは、各レンズ71と反射防止膜73の合計厚B2が、凸部72と反射防止膜73の合計厚C2以下であると言い換えることができる(B2≦C2)。
【0068】
本実施形態の発光装置1を製造する際には、後述するように、基板51を吸着することで基板51を保持し、吸着により保持されている基板51を基板61上に搭載する。この際、レンズ71上の第1部分X1で基板51を吸着しようとすると、レンズ71に圧力が加わってレンズ71が傷つくおそれや、基板51がレンズ71のせいで吸着しにくくなるおそれがある。しかしながら、本実施形態の第1部分X1の最上部の高さは第2部分X2の最上部の高さ以下となっているので、凸部72上の第2部分X2で基板51を吸着することができる。これにより、レンズ71に圧力が加わってレンズ71が傷つくことや、基板51がレンズ71のせいで吸着しにくくなることを抑制することが可能となる。
【0069】
なお、上記複数のレンズ71は、本実施形態では同じ形状を有しているが、互いに異なる形状を有していてもよい。また、凸部72は、本実施形態では平坦な上面を有しているが、非平坦な上面を有していてもよい。これらの場合でも、各レンズ71上の第1部分X1の最上部の高さを、凸部72上の第2部分X2の最上部の高さ以下に設定することで、上記の効果を得ることができる。
【0070】
図4のBは、基板51の裏面S2に設けられたレンズ71や凸部72のレイアウトを示している。図4のBでは、レンズ71が、基板51の裏面S2に2次元アレイ状に配置されており、具体的には、正方格子状に配置されている。また、凸部72は、四角形の裏面S2の四辺に沿って延びる四角形の環状の形状を有しており、基板51上の全レンズ71を環状に包囲している。なお、図4のAは、図4のBに示すA-A’線に沿った断面を示している。
【0071】
次に、図5から図8を参照して、第1実施形態の発光装置1と比較例の発光装置1とを比較する。本比較例の発光装置1の説明では、本実施形態の発光装置1の説明で使用した符号と同じ符号を使用する。
【0072】
図5は、比較例の発光装置1の基板51の構造を示す平面図および断面図である。図5のAは、ダイシングされる前の基板51の構造を示す平面図であり、図5のBは、図5のAに示すA-A’線に沿った断面図である。
【0073】
本比較例の基板51は、図5のAおよびBに示すように、複数のチップ領域81と、スクライブ領域(ダイシング領域)82とを備えている。各チップ領域81は、基板51のダイシング後に1つのチップとなる領域である。スクライブ領域82は、基板51のダイシング時にカットされる領域である。本比較例の基板51は、スクライブ領域82においてカットされることで、複数のチップ領域81に分割(ダイシング)される。
【0074】
各チップ領域81は、長方形(または正方形)の平面形状を有しており、レンズ領域81aと、周辺領域81bとを含んでいる。レンズ領域81aは、2次元アレイ状に配置された複数のレンズ71を含んでいる(図5のB)。周辺領域81bは、レンズ領域81aを環状に包囲している。
【0075】
スクライブ領域82は、上記複数のチップ領域81を個々のチップ領域81ごとに環状に包囲する平面形状を有しており、X方向に延びる複数のスクライブライン(ダイシングライン)82aと、Y方向に延びる複数のスクライブライン82bとを含んでいる。本比較例の基板51は、これらのスクライブライン82a、82bにダイサーを当ててカットされることで、複数のチップ領域81に分割される。符号Lは、スクライブライン82bを通過する平面を示している。
【0076】
本比較例の基板51には、凸部72が設けられていないことに留意されたい。なお、反射防止膜73は、図5のAおよびBに示す基板51上に、後に形成される。すなわち、図5のAおよびBは、反射防止膜73が形成される前の基板51を示している。
【0077】
図6は、第1実施形態の発光装置1の基板51の構造を示す平面図および断面図である。図6のAは、ダイシングされる前の基板51の構造を示す平面図であり、図6のBは、図6のAに示すA-A’線に沿った断面図である。
【0078】
本実施形態の基板51は、図6のAおよびBに示すように、複数のチップ領域81と、スクライブ領域82とを備えている。本実施形態のチップ領域81およびスクライブ領域82の構造は、おおむね比較例のチップ領域81およびスクライブ領域82の構造と同じである。
【0079】
ただし、本実施形態の基板51には、複数の凸部72が設けられている。これらの凸部72は、基板51のチップ領域81内に設けられており、具体的には、1つのチップ領域81内に1つの凸部72が設けられている(図6のA)。各凸部72は、周辺領域81b内に設けられており、レンズ領域81aを環状に包囲する平面形状を有している。本実施形態の各凸部72は、図6のAおよびBに示すように、スクライブ領域82内には設けられていないことに留意されたい。
【0080】
図6のAにおいて、各チップ領域81の面積に占めるレンズ領域81aおよび周辺領域81bの面積の割合はそれぞれ、例えば約70%および約30%である。また、各チップ領域81の面積に占める凸部72の面積の割合は、例えば1.5~30%である。これは後述する第2~第10実施形態でも同様である。なお、これらの割合の値は、上記の値と異なる値に設定してもよい。
【0081】
図7は、比較例の発光装置1の製造方法を示す断面図である。
【0082】
まず、基板51の表面S1に積層膜52を形成し、積層膜52に、発光素子53を含むメサ部Mを形成する(図7のA)。具体的には、基板51の表面S1を上向きにした状態にて、基板51の上面(表面S1)に積層膜52やメサ部Mを形成し、その後に基板51の表面S1を下向きにする。このようにして、図7のAに示すように、基板51の下面(表面S1)に、積層膜52やメサ部Mが形成される。図7のAの工程ではさらに、基板51の表面S1にアノード電極54やカソード電極55が形成される。
【0083】
次に、リソグラフィおよびドライエッチングにより、基板51の裏面S2(上面)にレンズ71を形成する(図7のB)。本比較例のレンズ71は、基板51の裏面S2に、基板51の一部として形成される。次に、基板51の裏面S2に、レンズ71を覆うように反射防止膜73を形成する(図7のB)。
【0084】
次に、基板51を、上述のスクライブ領域82においてカットする(図7のC)。これにより、基板51が、図7のDに示すように、上述の複数のチップ領域81に分割される。
【0085】
次に、基板51(チップ)をコレット83により保持し、コレット83により保持されている基板51を基板61上に搭載する(図7のD)。具体的には、基板51に設けられたメサ部Mが、不図示のアノード電極54またはカソード電極55と、バンプ48と、不図示の接続パッド62とを介して、基板61上に配置される。これにより、基板51が基板61と電気的に接続される。このようにして、本比較例の発光装置1が製造される。
【0086】
コレット83は、基板51上の露出面に接触して基板51を吸着することで、基板51を保持することができる。本比較例の基板51上の露出面は、基板51上の反射防止膜73の上面であるため、コレット83は反射防止膜73の上面に接触している。コレット83は、本開示の基板保持装置の例である。
【0087】
本比較例では、基板51からレンズ71が+Z方向に突出しているため、レンズ71上の反射防止膜73が、反射防止膜73のその他の部分から+Z方向に突出している。そのため、コレット83は、レンズ71上の反射防止膜73に接触する。一般にコレット83は硬い材料で形成されており、コレット83がレンズ71上の反射防止膜73に接触しても、コレット83の形状は、レンズ71上の反射防止膜73の凹凸形状に追従しない。よって、コレット83がレンズ71上の反射防止膜73に接触すると、コレット83からレンズ71に圧力が加わってレンズ71が傷つくおそれや、基板51がレンズ71のせいでコレット83により吸着しにくくなるおそれがある。
【0088】
図8は、第1実施形態の発光装置1の製造方法を示す断面図である。
【0089】
まず、基板51の表面S1に積層膜52を形成し、積層膜52に、発光素子53を含むメサ部Mを形成する(図8のA)。具体的には、基板51の表面S1を上向きにした状態にて、基板51の上面(表面S1)に積層膜52やメサ部Mを形成し、その後に基板51の表面S1を下向きにする。このようにして、図8のAに示すように、基板51の下面(表面S1)に、積層膜52やメサ部Mが形成される。図8のAの工程ではさらに、基板51の表面S1にアノード電極54やカソード電極55が形成される。
【0090】
次に、リソグラフィおよびドライエッチングにより、基板51の裏面S2(上面)にレンズ71および凸部72を形成する(図8のB)。本実施形態のレンズ71および凸部72は、基板51の裏面S2に、基板51の一部として形成される。なお、レンズ71および凸部72は、本実施形態では同じエッチングにより同時に形成されるが、異なるエッチングにより順番に形成されてもよい。次に、基板51の裏面S2に、レンズ71および凸部72を覆うように反射防止膜73を形成する(図8のB)。
【0091】
本実施形態のレンズ71および凸部72は、上述のように、各レンズ71の最上部の高さが、凸部72の最上部の高さ以下となるように形成される(図4のA参照)。その結果、本実施形態の反射防止膜73は、上述のように、各レンズ71上の第1部分X1の最上部の高さが、凸部72上の第2部分X2の最上部の高さ以下となるように形成される(図4のA参照)。図8のBでは、各レンズ71の最上部の高さが、凸部72の最上部の高さよりも低くなっているため、各レンズ71上の第1部分X1の最上部の高さが、凸部72上の第2部分X2の最上部の高さよりも低くなっている。
【0092】
次に、基板51を、上述のスクライブ領域82においてカットする(図8のC)。これにより、基板51が、図8のDに示すように、上述の複数のチップ領域81に分割される。
【0093】
次に、基板51(チップ)をコレット83により保持し、コレット83により保持されている基板51を基板61上に搭載する(図8のD)。具体的には、基板51に設けられたメサ部Mが、不図示のアノード電極54またはカソード電極55と、バンプ48と、不図示の接続パッド62とを介して、基板61上に配置される。これにより、基板51が基板61と電気的に接続される。このようにして、本実施形態の発光装置1が製造される。
【0094】
本実施形態では、レンズ71上の反射防止膜73(第1部分X1)の最上部の高さが、凸部72上の反射防止膜73(第2部分X2)の最上部の高さよりも低くなっている。そのため、コレット83は、凸部72上の反射防止膜73に接触し、レンズ71上の反射防止膜73に接触しないように、基板51を吸着することができる。これにより、コレット83からレンズ71に圧力が加わってレンズ71が傷つくことや、基板51がレンズ71のせいでコレット83により吸着しにくくなることを抑制することが可能となる。
【0095】
本実施形態では、レンズ71上の反射防止膜73(第1部分X1)の最上部の高さが、凸部72上の反射防止膜73(第2部分X2)の最上部の高さと同じでもよい。この場合には、コレット83が、凸部72上の反射防止膜73だけでなく、レンズ71上の反射防止膜73にも接触する可能性がある。しかしながら、これらの最上部の高さが同じであれば、コレット83からレンズ71に大きな圧力が加わることは抑制できるし、基板51は凸部72の上方で好適に吸着できる。よって、レンズ71上の反射防止膜73の最上部の高さは、凸部72上の反射防止膜73の最上部の高さより低くてもよいし、凸部72上の反射防止膜73の最上部の高さと同じでもよい。
【0096】
また、本実施形態によれば、凸部72上に反射防止膜73を形成することで、反射防止膜73を基板51から剥がれにくくすることが可能となる。理由は、反射防止膜73が凸部72にひっかかることで、基板51の端面からの反射防止膜73の剥がれが生じにくくなるからである。反射防止膜73が剥がれにくくなる効果は、発光装置1の製造中にも製造後にも享受できる。
【0097】
本実施形態の基板51のダイシング後の面積は小さく、本実施形態の各レンズ71の面積も小さい。そのため、本実施形態のレンズ71は、コレット83からの圧力により傷つきやすい。さらに、本実施形態の基板51はGaAs基板であるため、このこともレンズ71が傷つきやすい原因となる。本実施形態によれば、傷つきやすい構造物であるレンズ71が傷つくことを抑制することが可能となる。
【0098】
本実施形態の基板51は、ダイシング後に基板61上に搭載される。この際、本実施形態によれば、コレット83からレンズ71に圧力が加わってレンズ71が傷つくことや、基板51がレンズ71のせいでコレット83により吸着しにくくなることを抑制することが可能となる。よって、本実施形態によれば、発光素子53やレンズ71を高性能なGaAs基板(基板51)に形成しつつ、発光装置1用の回路を安価なSi基板(基板61)に形成することが可能となる。
【0099】
以上のように、本実施形態の発光装置1では、各レンズ71上の反射防止膜73(第1部分X1)の最上部の高さが、凸部72上の反射防止膜73(第2部分X2)の最上部の高さ以下となっている。よって、本実施形態によれば、基板51にレンズ71を好適な態様で設けることが可能となる。例えば、基板51を吸着して基板61上に搭載する際に、基板51を第2部分X2での吸着により保持することで、レンズ71に圧力が加わってレンズ71が傷つくことを抑制することや、基板51がレンズ71のせいで吸着しにくくなることを抑制することが可能となる。
【0100】
なお、本実施形態のレンズ71や凸部72は、基板51上の膜により覆われており、具体的には、基板51上の反射防止膜73により覆われている。しかしながら、レンズ71や凸部72は、基板51上の膜により形成されていてもよい。この膜は、反射防止膜73でもよいし、反射防止膜73とは異なる膜でもよい。このような膜の詳細については、後述する。
【0101】
(第2~第9実施形態)
図9は、第2実施形態の発光装置1の基板51の構造を示す平面図および断面図である。図9のAおよびBの関係は、図6のAおよびBの関係と同様である。
【0102】
本実施形態の凸部72は、図9のAおよびBに示すように、基板51のチップ領域81およびスクライブ領域82内に連続して形成されている。具体的には、本実施形態の凸部72は、各周辺領域81b内に形成された部分と、スクライブライン82a、82b内に形成された部分とを含んでおり、各レンズ領域81aを環状に包囲している。本実施形態の基板51をダイシングすると、1つの凸部72が、個々のチップ領域81内の凸部72に分割される。本実施形態の凸部72の幅は、第1実施形態の凸部72の幅よりも広いことから、本実施形態の凸部72は一般に、第1実施形態の凸部72よりも容易に形成することが可能である。
【0103】
図10は、第3実施形態の発光装置1の基板51の構造を示す平面図および断面図である。図10のAおよびBの関係は、図6のAおよびBの関係と同様である。
【0104】
本実施形態の各凸部72は、スクライブライン82aとスクライブライン82bとの各交点やその付近に配置されている。具体的には、本実施形態の各凸部72は、互いに隣接する4つの周辺領域81b内に形成された部分と、スクライブ領域82内に形成された部分とを含んでおり、正方形(または長方形)の平面形状を有している。本実施形態の基板51をダイシングすると、各チップ領域81は、基板51の裏面S2の4つの角に設けられた4つの凸部72を含むこととなる。本実施形態のダイシング後の基板51は、4つの角に4つの凸部72を含んでいるため、コレット83が反射防止膜73の4箇所で接触することになり、コレット83により基板51を容易に吸着することができる。
【0105】
図11は、第4実施形態の発光装置1の基板51の構造を示す平面図および断面図である。図11のAおよびBの関係は、図6のAおよびBの関係と同様である。
【0106】
本実施形態の各凸部72は、1本のスクライブライン82b内やその付近に配置されている。具体的には、本実施形態の各凸部72は、周辺領域81b内に形成された部分と、スクライブ領域82内に形成された部分とを含んでおり、Y方向に延びる線状の平面形状を有している。本実施形態の基板51をダイシングすると、各チップ領域81は、基板51の裏面S2の1つの辺に沿って線状に延びる凸部72と、基板51の裏面S2の別の1つの辺に沿って線状に延びる凸部72とを含むことになる。本実施形態のダイシング後の基板51も、第3実施形態のダイシング後の基板51と同様に、コレット83により容易に吸着することができる。
【0107】
図12は、第5実施形態の発光装置1の基板51の構造を示す平面図および断面図である。図12のAおよびBの関係は、図6のAおよびBの関係と同様である。
【0108】
本実施形態の各凸部72は、1本のスクライブライン82bの+X方向または-X方向に配置されている。具体的には、本実施形態の各凸部72は、周辺領域81b内に形成された部分と、スクライブライン82a内に形成された部分とを含んでおり、Y方向に延びる線状の平面形状を有している。本実施形態の基板51をダイシングすると、各チップ領域81は、基板51の裏面S2の1つの辺に沿って線状に延びる凸部72と、基板51の裏面S2の別の1つの辺に沿って線状に延びる凸部72とを含むことになる。本実施形態のダイシング後の基板51も、第3および第4実施形態のダイシング後の基板51と同様に、コレット83により容易に吸着することができる。
【0109】
なお、第4および第5実施形態の各凸部72は、Y方向の代わりにX方向に線状に延びていてもよい。
【0110】
図13は、第6実施形態の発光装置1の基板51の構造を示す平面図および断面図である。図13のAおよびBの関係は、図6のAおよびBの関係と同様である。
【0111】
本実施形態の各凸部72は、1組のスクライブライン82a、82b内やその付近に配置されている。具体的には、本実施形態の各凸部72は、周辺領域81b内に形成された部分と、スクライブ領域82内に形成された部分とを含んでおり、X方向およびY方向に延びるL字型の平面形状を有している。本実施形態の基板51をダイシングすると、各チップ領域81は、基板51の裏面S2の2つの辺に沿ってL字型に延びる凸部72と、基板51の裏面S2の1つの角に設けられた凸部72とを含むことになる(チップ領域81によっては、1つの辺に沿って線状に延びる1つの凸部72と、2つの角に設けられた2つの凸部72とを含むこととなる)。本実施形態のダイシング後の基板51も、これらの2つの凸部72で吸着されるため、コレット83により容易に吸着することができる。
【0112】
図14は、第7実施形態の発光装置1の基板51の構造を示す平面図および断面図である。図14のAおよびBの関係は、図6のAおよびBの関係と同様である。
【0113】
本実施形態の各凸部72は、1組のスクライブライン82a、82bの+Xおよび+Y方向または-Xおよび-Y方向に配置されている。具体的には、本実施形態の各凸部72は、周辺領域81b内に形成された部分と、スクライブライン82a、82b内に形成された部分とを含んでおり、X方向およびY方向に延びるL字型の平面形状を有している。本実施形態の基板51をダイシングすると、各チップ領域81は、基板51の裏面S2の2つの辺に沿ってL字型に延びる凸部72と、基板51の裏面S2の1つの角付近に設けられた凸部72とを含むことになる(チップ領域81によっては、1つの辺に沿って線状に延びる1つの凸部72と、2つの角に設けられた2つの凸部72とを含むこととなる)。本実施形態のダイシング後の基板51も、これらの2つの凸部72で吸着されるため、コレット83により容易に吸着することができる。
【0114】
図15は、第8実施形態の発光装置1の基板51の構造を示す平面図および断面図である。図15のAおよびBの関係は、図6のAおよびBの関係と同様である。
【0115】
本実施形態の各凸部72は、1本のスクライブライン82aまたは82bの+Y方向、-Y方向、+X方向、または-X方向に配置されている。具体的には、本実施形態の各凸部72は、周辺領域81b内に形成されており、X方向またはY方向に延びる線状の平面形状を有している。本実施形態の基板51をダイシングすると、各チップ領域81は、基板51の裏面S2の4つの辺に沿って線状に延びる4つの凸部72を含むことになる。本実施形態のダイシング後の基板51は、これらの4つの凸部72で吸着されるため、コレット83により容易に吸着することができる。
【0116】
図16は、第9実施形態の発光装置1の基板51の構造を示す平面図および断面図である。図16のAおよびBの関係は、図6のAおよびBの関係と同様である。
【0117】
本実施形態の各凸部72は、1本のスクライブライン82aまたは82b内やその付近に配置されている。具体的には、本実施形態の各凸部72は、周辺領域81b内に形成された部分と、スクライブライン82aまたは82b内に形成された部分とを含んでおり、X方向またはY方向に延びる線状の平面形状を有している。本実施形態の基板51をダイシングすると、各チップ領域81は、基板51の裏面S2の4つの辺に沿って線状に延びる4つの凸部72を含むことになる。本実施形態のダイシング後の基板51は、これらの4つの凸部72で吸着されるため、コレット83により容易に吸着することができる。
【0118】
これらの実施形態では、第1実施形態と同様に、各レンズ71上の反射防止膜73(第1部分X1)の最上部の高さが、凸部72上の反射防止膜73(第2部分X2)の最上部の高さ以下に設定される。よって、これらの実施形態によれば、基板51にレンズ71を好適な態様で設けることが可能となる。
【0119】
これらの実施形態の発光装置1は、第1実施形態の発光装置1と同様に、図8に示す方法により製造可能である。ただし、図8のBに示す工程では、凸部72を、第2~第9実施形態の各々の凸部72の形状を有するように形成する。
【0120】
(第10実施形態)
第10実施形態の発光装置1は、第1~第9実施形態の変形例の発光装置1に相当している。以下、図17図20を参照して、第10実施形態の発光装置1の種々の例を説明する。
【0121】
図17および図18は、第10実施形態の発光装置1の基板51の構造の例を示す断面図である。図17のA~図18のDの各々は、図4のAと同様に発光装置1の基板51等の断面を示しているが、凸部72や反射防止膜73等の図示は省略されている。
【0122】
図17のAの基板51は、図4のAの基板51と同様に、発光素子53と1対1で対応する凸レンズである複数のレンズ71を備えている。同様に、図17のB、C、およびDの各々の基板51は、発光素子53と1対1で対応する複数のレンズ71を備えている。ただし、図17のBの基板51は、凹レンズを備えており、図17のCの基板51は、互いに形状(曲率)の異なる凸レンズを備えており、図17のDの基板51は、凸レンズと凹レンズの両方を備えている。このように、本実施形態の各レンズ71は、凸レンズでも凹レンズでもよい。
【0123】
図18のAの基板51では、発光素子53とレンズ71がN:1で対応している(Nは2以上の整数)。よって、図18のAでは、N個の発光素子53から出射された光が、1個のレンズ71に入射する。一方、図18のBの基板51では、発光素子53とレンズ71が1:Nで対応している。よって、図18のBでは、1個の発光素子53から出射された光が、N個のレンズ71に入射する。このように、本実施形態の各レンズ71は、発光素子53と1:1で対応していなくてもよい。
【0124】
図18のCの基板51では、発光素子53とレンズ71が1:1で対応している。ただし、図18のCの基板51は、フレネルレンズを備えている。同様に、図18のDの基板51では、発光素子53とレンズ71が1:1で対応している。ただし、図18のDの基板51は、バイナリレンズおよびフラットレンズを備えている。このように、本実施形態の各レンズ71は、凸レンズや凹レンズ以外のレンズでもよい。
【0125】
図19および図20は、第10実施形態の発光装置1の構造の例を示す断面図である。図19のA~図20のBの各々は、図4のAと同様に発光装置1の基板51等の断面を示している。
【0126】
図19のAの基板51では、図4のAの基板51と同様に、発光素子53とレンズ71が1:1で対応している。ただし、図19のAの基板51は、凸レンズではなく凹レンズを備えている。図19のAはさらに、基板51の裏面S2に設けられた凸部72と、基板51の裏面S2に、レンズ71および凸部72を覆うように形成された反射防止膜73とを示している。図19のAでは、図4のAと同様に、各レンズ71上の反射防止膜73(第1部分X1)の最上部の高さが、凸部72上の反射防止膜73(第2部分X2)の最上部の高さ以下となっている。なお、図19のAの各レンズ71の最上部は、レンズ71の縁の部分である。
【0127】
図19のAのレンズ71は、凹レンズである。この場合にも、レンズ71上の反射防止膜73の上面には、レンズ71に起因する凹凸が生じる。そのため、基板51をレンズ71上の反射防止膜73で吸着しようとすると、レンズ71に圧力が加わってレンズ71が傷つくおそれや、基板51がレンズ71のせいで吸着しにくくなるおそれがある。しかしながら、図19のAの基板51は凸部72上の反射防止膜73で吸着することができるため、これらの問題を抑制することが可能となる。
【0128】
図19のBの基板51は、図4のAの基板51と同様に、レンズ71として凸レンズを備えている。ただし、図19のBの基板51では、発光素子53とレンズ71がN:1で対応している。図19のAはさらに、基板51の裏面S2に設けられた凸部72と、基板51の裏面S2に、レンズ71および凸部72を覆うように形成された反射防止膜73とを示している。図19のBでは、図4のAと同様に、各レンズ71上の反射防止膜73(第1部分X1)の最上部の高さが、凸部72上の反射防止膜73(第2部分X2)の最上部の高さ以下となっている。図19のBの基板51も凸部72上の反射防止膜73で吸着することができるため、上記の問題を抑制することが可能となる。
【0129】
図20のAの発光装置1は、レンズ71、凸部72、反射防止膜73等に加えて、半導体膜74を備えている。図20のAでは、半導体膜74が、基板51の裏面S2に形成されている。さらには、レンズ71および凸部72が、半導体膜74の上面に、半導体膜74の一部として設けられている。さらには、反射防止膜73が、半導体膜74の上面に、レンズ71および凸部72を覆うように形成されている。図20のAの反射防止膜73および半導体膜74は、本開示の膜の例である。具体的には、反射防止膜73は、レンズ71および凸部72上に配置されている膜となっており、半導体膜74は、レンズ71および凸部72を形成している膜となっている。半導体膜74は、例えばSi(シリコン)膜である。
【0130】
図20のAの反射防止膜73および半導体膜74は、レンズ71上に配置されているかまたはレンズ71を形成している第1部分Y1と、凸部72上に配置されているかまたは凸部72を形成している第2部分Y2とを含んでいる。そして、各レンズ71の最上部の高さが、凸部72の最上部の高さ以下となっている。その結果、反射防止膜73および半導体膜74の第1部分Y1の最上部の高さが、反射防止膜73および半導体膜74の第2部分Y2の最上部の高さ以下となっている。これにより、基板51を吸着して基板61上に搭載する際に、レンズ71に圧力が加わってレンズ71が傷つくことや、基板51がレンズ71のせいで吸着しにくくなることを抑制することが可能となる。
【0131】
なお、図20のAに示す反射防止膜73は、凸部72上に配置されている膜と解する代わりに、凸部72を形成している膜と解してもよい。前者のように解する場合でも、後者のように解する場合でも、反射防止膜73および半導体膜74の第1部分Y1の最上部の高さは、反射防止膜73および半導体膜74の第2部分Y2の最上部の高さ以下に設定される。これは、第1~第9実施形態の反射防止膜73や、第10実施形態のその他の例の反射防止膜73についても同様である。
【0132】
図20のBの発光装置1は、図4のAの発光装置1と同様に、レンズ71や凸部72等を備えているが、反射防止膜73は備えていない。このように、本実施形態の発光装置1は、反射防止膜72を備えていなくてもよい。この場合、コレット83は、反射防止膜73の上面ではなく基板51の裏面S2に接触することになる。
【0133】
図20のBでは、各レンズ71の最上部の高さが、凸部72の最上部の高さ以下となっている。そのため、基板51を凸部72での吸着により保持することができる。これにより、基板51を吸着して基板61上に搭載する際に、レンズ71に圧力が加わってレンズ71が傷つくことや、基板51がレンズ71のせいで吸着しにくくなることを抑制することが可能となる。
【0134】
図17のA~図20のBの例の発光装置1は、第1実施形態の発光装置1と同様に、図8に示す方法により製造可能である。ただし、図8のBに示す工程では、レンズ71や凸部72を、各例のレンズ71や凸部72の形状を有するように形成する。また、図20のAの発光装置1を製造する際には、図8のBに示す工程を、基板51の裏面S2に半導体膜74を形成してから、基板51の代わりに半導体膜74に対して行う。また、図20のBの発光装置1を製造する際には、図8のBに示す工程で、反射防止膜73の形成を省略する。
【0135】
なお、第1~第10実施形態の発光装置1は、測距装置の光源として使用されているが、その他の態様で使用されてもよい。例えば、これらの実施形態の発光装置1は、プリンタなどの光学機器の光源として使用されてもよいし、照明装置として使用されてもよい。
【0136】
以上、本開示の実施形態について説明したが、これらの実施形態は、本開示の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の変更を加えて実施してもよい。例えば、2つ以上の実施形態を組み合わせて実施してもよい。
【0137】
なお、本開示は、以下のような構成を取ることもできる。
【0138】
(1)
第1基板と、
前記第1基板の下面に設けられた発光素子と、
前記第1基板の上面に設けられたレンズと、
前記第1基板の上面に設けられた凸部と、
前記第1基板の上面に設けられた膜であって、前記レンズ上に配置されているかまたは前記レンズを形成している第1部分と、前記凸部上に配置されているかまたは前記凸部を形成している第2部分と、を含む膜とを備え、
前記第1部分の最上部の高さは、前記第2部分の最上部の高さ以下である、
発光装置。
【0139】
(2)
前記レンズは、凸レンズ、凹レンズ、フレネルレンズ、バイナリレンズ、またはフラットレンズである、(1)に記載の発光装置。
【0140】
(3)
前記第1基板の下面には、1つ以上の前記発光素子が設けられており、
前記第1基板の上面には、1つ以上の前記レンズが設けられており、
前記発光素子と前記レンズは、1:1で、N:1で、または1:Nで対応している(Nは2以上の整数)、(1)に記載の発光装置。
【0141】
(4)
前記凸部は、前記レンズを環状に包囲する形状を有する、(1)に記載の発光装置。
【0142】
(5)
前記凸部として、前記第1基板の上面の複数の角に設けられた複数の凸部を備える、(1)に記載の発光装置。
【0143】
(6)
前記凸部は、前記第1基板の上面の1つの辺に沿って延びる線状の形状を有する、(1)に記載の発光装置。
【0144】
(7)
前記凸部は、前記第1基板の上面の2つの辺の沿って延びるL字型の形状を有する、(1)に記載の発光装置。
【0145】
(8)
前記膜は、前記レンズ上に設けられた反射防止膜である、(1)に記載の発光装置。
【0146】
(9)
前記第1基板は、ガリウム(Ga)およびヒ素(As)を含む半導体基板である、(1)に記載の発光装置。
【0147】
(10)
前記発光素子から出射された光は、前記第1基板の下面から上面へと前記第1基板内を透過し、前記レンズに入射する、(1)に記載の発光装置。
【0148】
(11)
前記発光素子を介して前記第1基板が搭載された第2基板をさらに備える、(1)に記載の発光装置。
【0149】
(12)
前記第2基板は、シリコン(Si)を含む半導体基板である、(11)に記載の発光装置。
【0150】
(13)
第1基板と、
前記第1基板の下面に設けられた発光素子と、
前記第1基板の上面に設けられたレンズと、
前記第1基板の上面に設けられた凸部とを備え、
前記レンズの最上部の高さは、前記凸部の最上部の高さ以下である、
発光装置。
【0151】
(14)
第1基板の下面に発光素子を形成し、
前記第1基板の上面にレンズを形成し、
前記第1基板の上面に凸部を形成し、
前記第2基板の上面に、第1部分と第2部分とを含む膜を形成する、
ことを含み、
前記膜は、前記第1部分が前記レンズ上に配置されるかまたは前記レンズを形成し、前記第2部分が前記凸部上に配置されるかまたは前記凸部を形成するように形成され、
前記膜は、前記第1部分の最上部の高さが、前記第2部分の最上部の高さ以下となるように形成される、
発光装置の製造方法。
【0152】
(15)
前記レンズ、前記凸部、および前記膜の形成後に、前記第1基板を複数にチップにダイシングすることをさらに含む、(14)に記載の発光装置の製造方法。
【0153】
(16)
前記凸部の一部は、前記第1基板のダイシング領域内に形成される、(15)に記載の発光装置の製造方法。
【0154】
(17)
前記凸部の少なくとも一部は、前記第1基板のダイシング領域以外の領域内に形成される、(15)に記載の発光装置の製造方法。
【0155】
(18)
前記第1基板のダイシング後に前記膜に基板保持装置を接触させて、前記第1基板を前記基板保持装置により保持し、
前記基板保持装置により保持されている前記第1基板を前記発光素子を介して第2基板上に搭載する、
ことをさらに含む、(15)に記載の発光装置の製造方法。
【0156】
(19)
前記基板保持装置は、前記第2部分に接触し前記第1部分に接触しないように前記第1基板を保持する、(18)に記載の発光装置の製造方法。
【0157】
(20)
第1基板の下面に発光素子を形成し、
前記第1基板の上面にレンズを形成し、
前記第1基板の上面に凸部を形成する、
ことを含み、
前記レンズおよび前記凸部は、前記レンズの最上部の高さが、前記凸部の最上部の高さ以下となるように形成される、
発光装置の製造方法。
【符号の説明】
【0158】
1:発光装置、2:撮像装置、3:制御装置、
11:発光部、12:駆動回路、13:電源回路、14:発光側光学系、
21:イメージセンサ、22:画像処理部、23:撮像側光学系、31:測距部、
41:LDチップ、42:LDD基板、43:実装基板、44:放熱基板、
45:補正レンズ保持部、46:補正レンズ、47:配線、48:バンプ、
51:基板、52:積層膜、53:発光素子、
54:アノード電極、55:カソード電極、61:基板、62:接続パッド、
71:レンズ、72:凸部、73:反射防止膜、74:半導体膜、
81:チップ領域、81a:レンズ領域、81b:周辺領域、
82:スクライブ領域、82a:スクライブライン、82b:スクライブライン、
83:コレット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20