(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045021
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】軸方向界磁モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/18 20060101AFI20240326BHJP
H02K 3/34 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H02K1/18 C
H02K3/34 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023133655
(22)【出願日】2023-08-18
(31)【優先権主張番号】202211148088.2
(32)【優先日】2022-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】▲ウー▼ 耿彰
(72)【発明者】
【氏名】顔 國智
(72)【発明者】
【氏名】林 秀瑛
(72)【発明者】
【氏名】王 國▲みん▼
【テーマコード(参考)】
5H601
5H604
【Fターム(参考)】
5H601AA03
5H601AA09
5H601CC01
5H601DD12
5H601GD08
5H601GD12
5H601JJ07
5H601JJ10
5H604AA08
5H604BB01
5H604CC01
5H604CC20
5H604PB03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】分割コアの軸方向寸法がコイルの軸方向寸法よりも小さくても、回路基板に対する分割コアの位置決めを容易に行うことができ、モータ性能やコギングトルクのばらつきを抑制する。
【解決手段】本発明に係る軸方向界磁モータは、マグネットを有するロータ組立体と、径方向に広がる回路基板と、軸方向にマグネットと対向するように回路基板に支持され、周方向に複数並んで配置された分割コアと、分割コアに嵌められたコイルとを有するステータ組立体とを備えた軸方向界磁モータであって、複数の分割コアのそれぞれに対応して、軸方向両側および周方向から分割コアに接触して覆われ、コイルが巻回される複数の絶縁材料製のホルダを有し、回路基板は、ホルダのコイルよりも軸方向一方側に突出した部分が嵌め込まれて位置決めされるスロット孔を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向界磁モータであって、
ロータ組立体及びステータ組立体を有し、
前記ロータ組立体は、マグネットを有し、
前記ステータ組立体は、回路基板、分割コア及びコイルを有し、
前記回路基板は、径方向に拡張され、
前記分割コアは、前記回路基板に支持されて軸方向に前記マグネットと対向し、且つ周方向に沿って複数並んで配置され、
前記コイルは、前記分割コアに嵌められ、
前記ステータ組立体は、前記複数の分割コアのそれぞれに対応する絶縁材料からなる複数のホルダを有し、
前記ホルダは、前記複数の分割コアに軸方向および周方向の両側から接触して覆うものであって、前記コイルが巻き回され、
前記回路基板は、前記ホルダの前記コイルよりも軸方向一方側に突出した部分が嵌め込まれて位置決めされるスロット孔を有する。
【請求項2】
請求項1に記載の軸方向界磁モータであって、
前記スロット孔の周縁は、前記ホルダに軸方向一方側から接触し、
前記スロット孔の内壁面は、前記ホルダに径方向及び周方向からそれぞれ接触する。
【請求項3】
請求項1に記載の軸方向界磁モータであって、
前記ホルダは、前記分割コアが径方向外側から径方向内側に向かって挿入される収容孔を有する。
【請求項4】
請求項3に記載の軸方向界磁モータであって、
前記ホルダは、前記分割コアに径方向内側から接触する接触部を有する。
【請求項5】
請求項4に記載の軸方向界磁モータであって、
前記ホルダは、前記分割コアに径方向外側から接触する弾性係止部を有する。
【請求項6】
請求項5に記載の軸方向界磁モータであって、
前記ホルダは、前記収容孔を囲む底板、天板及び側板を有し
前記底板は、軸方向一方側から前記分割コアに接触して前記分割コアを覆い、軸方向他方側から前記回路基板に接触し、
前記天板は、軸方向他方側から前記分割コアに接触して前記分割コアを覆い
前記側板は、前記天板と前記底板とを連結し、前記分割コアに周方向の両側から接触する。
【請求項7】
請求項6に記載の軸方向界磁モータであって、
前記天板および/または前記底板には、前記分割コアに径方向内側から接触する前記接触部が設けられている。
【請求項8】
請求項6に記載の軸方向界磁モータであって、
前記ホルダは、ボス部を有し、
該ボス部は前記底板から突出し、且つ前記スロット孔に嵌め込まれ
前記底板の前記ボス部に連なる部分は、軸方向の他方側から前記スロット孔の周縁に接触する。
【請求項9】
請求項1に記載の軸方向界磁モータであって、
前記スロット孔の内壁面に第1係合部及び第1方向において前記第1係合部と対向する第2係合部が設けられ
前記ホルダの前記スロット孔に嵌め込まれた部分は、前記第1係合部に係合する第1被係合部と、前記第2係合部に係合する第1被係合部とを有する。
【請求項10】
請求項9に記載の軸方向界磁モータであって、
前記第1方向と直交する第2方向において、前記ホルダの前記スロット孔に嵌め込まれた部分と前記スロット孔の内壁面との間には隙間が形成されている。
前記第1回路部は、低電圧電源であり、
前記第2回路部は、高電圧電源である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸方向界磁モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マグネットを有するロータ組立体と、径方向に広がる回路基板と、マグネットと軸方向に対向するように回路基板に支持され、周方向に複数並設された分割コアと、分割コアに嵌められたコイルとを有するステータ組立体とを備えたアキシャルフラックスモータがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開公報第2019/107074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の軸方向界磁モータでは、分割コアの軸方向一方側の端部が、コアに嵌められたコイルよりも軸方向一方側に突出しており、回路基板には、分割コアの軸方向一方側の端部に整合するスロット孔が設けられているので、分割コアの軸方向一方側の端部を回路基板のスロット孔に嵌め込むことにより、回路基板に対して分割コアを径方向および周方向に位置決めすることができ、量産されたモータの性能やコギングトルクのばらつきの抑制に寄与する。
【0005】
ところで、実際には、コアの軸方向寸法をコイルの軸方向寸法よりも小さく形成する必要がある場合があり、その場合には、モータ性能やコギングトルクのばらつきを抑制するために、回路基板に対する分割コアの位置決めを如何にして容易に行うかが問題となる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、分割コアの軸方向寸法がコイルの軸方向寸法よりも小さくても、回路基板に対する分割コアの位置決めを容易に行うことができ、モータ性能やコギングトルクのばらつきを抑制することができる軸方向界磁モータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、マグネットを有するロータ組立体と、径方向に広がる回路基板と、前記マグネットと軸方向に対向するように前記回路基板に支持され、周方向に複数並設された分割コアと、前記分割コアに嵌められたコイルとを有するステータ組立体とを備えた軸方向界磁モータにおいて、複数の前記分割コアのそれぞれに対応して、前記分割コアに軸方向両側および周方向から接触して被せられ、前記コイルが巻回される複数の絶縁材製のホルダを備え、前記回路基板は、前記ホルダの前記コイルよりも軸方向一方側に突出した部分が嵌め込まれて位置決めされるスロット孔を有することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る軸方向界磁モータによれば、複数の分割コアのそれぞれに対応し、軸方向両側および周方向から分割コアに接触して覆われ、コイルが巻回される複数のホルダを備え、回路基板は、ホルダのコイルよりも軸方向一方側に突出した部分が嵌め込まれて位置決めされるスロット孔を有するので、分割コアの軸方向寸法がコイルの軸方向寸法よりも小さくても、ホルダを介して回路基板に対する分割コアの位置決めを容易に行うことができ、モータ性能やコギングトルクのばらつきを抑制して生産性を向上させることができるとともに、ホルダが絶縁材料からなるので、分割コアとコイルとの間の絶縁も容易に確保することができる。
【0009】
また、本発明の軸方向界磁モータでは、前記スロット孔の周縁は、軸方向の一方側から前記ホルダに接触し、前記スロット孔の内壁面は、径方向および周方向のそれぞれにおいて前記ホルダに接触することが好ましい。
【0010】
本発明の軸方向界磁モータによれば、スロット孔の周縁がホルダに軸方向の一方側から接触し、スロット孔の内壁面がホルダに径方向および周方向にそれぞれ接触するので、ホルダを介した回路基板に対する分割コアの位置決め精度のさらなる向上に寄与し、モータ性能およびコギングトルクのばらつきのさらなる抑制に寄与する。
【0011】
また、本発明に係る軸方向界磁モータにおいて、前記ホルダは、前記分割コアが径方向外側から径方向内側に向かって挿入される収容孔を有することが好ましい。
【0012】
本発明に係る軸方向界磁モータによれば、ホルダは、分割コアが径方向外側から径方向内側に向かって挿入される収容孔を有するので、分割コアをホルダに容易に組み付けることができ、組み付け効率が向上し、組み付けコストが低減される。
【0013】
また、本発明の軸方向界磁モータでは、前記ホルダは、前記分割コアに径方向内側から接触する接触部を有することが好ましい。
【0014】
本発明に係る軸方向界磁モータによれば、ホルダは、分割コアに径方向内側から接触する接触部を有するので、分割コアをホルダに挿入する際に、ホルダに対する分割コアの径方向の位置決めを容易に行うことができる。
【0015】
また、本発明の軸方向界磁モータにおいて、前記ホルダは、前記分割コアに径方向外側から接触する弾性係止部を有することが好ましい。
【0016】
本発明の軸方向界磁モータによれば、ホルダは、分割コアに径方向外側から接触する弾性係止部を有するので、分割コアをホルダに挿入した後に、分割コアがホルダから脱落することを回避でき、組立効率が向上し、組立コストが低減する。
【0017】
また、本発明の軸方向界磁モータにおいて、前記ホルダは、前記収容孔を囲む底板と天板と側板とを有し、前記底板は、軸方向の一方側から前記分割コアに接触して覆うとともに、軸方向の他方側から前記回路基板に接触し、前記天板は、軸方向の他方側から前記分割コアに接触して覆うものであり、前記側板は、前記天板と前記底板とを連結するとともに、周方向の両側から前記分割コアに接触するものであることが好ましい。
【0018】
本発明に係る軸方向界磁モータによれば、ホルダは、収容孔を囲む底板と、天板と、側板とを有し、底板は、軸方向の一方側から分割コアに接触して覆うとともに、軸方向の他方側から回路基板に接触し、天板は、軸方向の他方側から分割コアに接触し、側板は、天板と底板とを連結するとともに、周方向の両側から分割コアに接触するので、ホルダを介した回路基板に対する分割コアの位置決め精度をより向上させて、モータ性能やコギングトルクのばらつきをより抑制することに寄与する。
【0019】
また、本発明の軸方向界磁モータでは、前記天板および/または前記底板には、前記分割コアに径方向内側から接触する接触部が設けられていることが好ましい。
【0020】
本発明の軸方向界磁モータによれば、天板および/または底板には、分割コアに径方向内側から接触する接触部が設けられているので、分割コアをホルダに挿入する際に、ホルダに対する分割コアの径方向の位置決めを容易に行うことができる。
【0021】
また、本発明の軸方向界磁モータでは、前記ホルダは、前記底板から突出し、前記スロットに嵌め込まれるボス部を有し、前記底板の前記ボス部に連なる部分は、軸方向の他方側から前記スロットの周縁に接触することが好ましい。
【0022】
また、本発明の軸方向界磁モータでは、前記スロットの内壁面には、第1の係合部と、前記第1の係合部と第1の方向で対向する第2の係合部とが設けられ、前記保持ベースの前記スロットに嵌め込まれる部分は、前記第1の係合部と係合する第1の被係合部と、前記第2の係合部と係合する第2の被係合部とを有することが好ましい。
【0023】
また、本発明の軸方向界磁モータでは、前記第1の方向と直交する第2の方向において、前記ホルダの前記スロットに嵌め込まれた部分と前記スロットの内壁面との間に隙間が形成されていることが好ましい。
【0024】
本発明の軸方向界磁モータによれば、スロットの内壁面には、第1係合部と、第1方向において第1係合部と対向する第2係合部とが設けられ、ホルダのスロットに嵌め込まれる部分は、第1係合部と係合する第1被係合部と、第2係合部と係合する第2被係合部とを有し、第1方向と直交する第2方向において、ホルダのスロットに嵌め込まれる部分とスロットの内壁面との間には隙間が形成されているので、係合部と被係合部とによって回路基板に対するホルダの位置決めがなされるとともに、ホルダのスロットに嵌め込まれる部分とスロットの内壁面との隙間を利用してホルダを回路基板に容易に嵌め込むことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、複数の分割コアのそれぞれに対応し、軸方向両側および周方向から分割コアに接触して被せられ、コイルが巻回される複数のホルダを備え、回路基板は、ホルダのコイルよりも軸方向一方側に突出した部分が嵌め込まれて位置決めされるスロット孔を有するので、分割コアの軸方向寸法がコイルの軸方向寸法よりも小さくても、ホルダを介して回路基板に対する分割コアの位置決めを容易に行うことができ、モータ性能やコギングトルクのばらつきを抑制して生産性を向上させることができるとともに、ホルダが絶縁材で形成されているので、分割コアとコイルとの間の絶縁も容易に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る軸方向界磁モータを模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る軸方向界磁モータを模式的に示す分解図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る軸方向界磁モータにおけるステータ組立体を模式的に示す斜視図であり、軸方向他方側から見た状態を示している。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る軸方向界磁モータにおけるステータ組立体を模式的に示す斜視図であり、軸方向一方側から見た状態を示している。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態に係る軸方向界磁モータにおけるステータ組立体を模式的に示す部分斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態に係る軸方向界磁モータにおけるステータ組立体を模式的に示す分解図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施の形態に係る軸方向界磁モータにおけるホルダおよび分割コアを模式的に示す斜視図であり、軸方向の他方側から見た状態を示している。
【
図8】
図8は、本発明の実施の形態に係る軸方向界磁モータにおけるホルダおよび分割コアを模式的に示す斜視図であり、軸方向一方側から見た状態を示す。
【
図9】
図9は、本発明の実施の形態に係る軸方向界磁モータにおけるホルダおよび分割コアを模式的に示す分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態に係る軸方向界磁モータについて、
図1から
図9を参照して説明する。
【0028】
なお、本明細書において、「軸方向」とは、ステータ組立体の回転軸線に対するロータ組立体の延在方向を意味し、「径方向」とは、ステータ組立体に対するロータ組立体の回転軸線を中心とする径方向を意味し、「周方向」とは、ステータ組立体に対するロータ組立体の回転軸線を中心とする周方向を意味する。
【0029】
なお、説明の便宜上、ステータ組立体に対するロータ組立体の回転軸線をLとし、軸方向における一方側をL1とし、軸方向における他方側をL2とする。
【0030】
(軸方向界磁モータの全体構成)
【0031】
図1乃至
図6に示すように、軸方向界磁モータ1は、マグネット112を有するロータ組立体10と、径方向に広がる回路基板21と、マグネット112と軸方向に対向するように回路基板21に支持され、周方向に複数並設された分割コア22と、分割コア22に嵌められたコイル23とを有するステータ組立体20とを備えている。
【0032】
ここで、
図1および
図2に示すように、軸方向界磁モータ1は、ステータ組立体20に対して軸方向両側から組み付けられてステータ組立体20とともにロータ組立体10の本体が収容される空間を囲むカバー90をさらに備え、ロータ組立体10は、軸受30を介してカバー90に回転可能に支持されている。
【0033】
(ロータ組立体の構造)
【0034】
図2に示すように、ロータ組立体10は、ロータ11とシャフト12とを含む。
【0035】
ここで、ロータ11は、
図2に示すように、第1ロータ11Aと第2ロータ11Bとからなり、シャフト12は、第1ロータ11A、ステータ組立体20および第2ロータ11Bを軸方向に順に貫通して第1ロータ11Aおよび第2ロータ11Bに固定されている。
【0036】
また、
図2に示すように、第1ロータ11Aは、ステータ組立体20の軸方向一方側L1に位置し、第1マグネットホルダ111Aと、マグネット112を構成する第1マグネット112Aとを有している。第1マグネット保持具111Aは、径方向に広がる板状(図示の例では回転軸線Lを中心とする円板状)をなし、例えば磁性体からなる。第1マグネット112Aは、第1マグネットホルダ111Aの軸方向他方側L2の面に、軸方向一方側L1においてステータ組立体20と間隔をあけて対向するように設けられ、周方向に並んで複数設けられている。
【0037】
また、
図2に示すように、第2ロータ11Bは、ステータ組立体20の軸方向他方側L2に位置し、第2マグネットホルダ111Bと、マグネット112を構成する第2マグネット112Bとを有している。第2マグネットホルダ111Bは、径方向に広がる板状(図示の例では回転軸線Lを中心とする円板状)をなしており、例えば磁性体からなる。第2マグネット112Bは、第2マグネットホルダ111Bの軸方向一方側L1の面に、軸方向他方側L2においてステータ組立体20と間隔をあけて対向するように設けられ、周方向に並んで複数設けられている。
【0038】
また、
図2に示すように、シャフト12は、第1マグネットホルダ111A、回路基板21および第2マグネットホルダ111Bを軸方向に順に貫通して第1マグネットホルダ111Aおよび第2マグネットホルダ111Bに固定されている。シャフト12の軸方向一方側L1の端部は、軸受30に含まれる第1軸受30A(例えば玉軸受からなる)を介してカバー90に回転可能に支持されており、シャフト12の軸方向他方側L2の端部は、軸受30に含まれる第2軸受30B(例えば玉軸受からなる)を介してカバー90に回転可能に支持されている。
【0039】
また、
図2に示すように、ロータ組立体10は、第1ロータ11Aの第1マグネットホルダ111Aの軸方向他方側L2の面に設けられ、周方向に並ぶ第1マグネット112Aに囲まれた環状(図示の例では回転軸線Lを中心とする円環状)のエンコーダディスク13をさらに備えている。
【0040】
(ステータ組立体の構造)
【0041】
ステータ組立体20は、上述したように、回路基板21と、分割コア22と、コイル23とを備えている。
【0042】
ここで、ステータ組立体20は、
図3ないし
図6に示すように、複数の分割コア22のそれぞれに対応して、分割コア22に軸方向両側および周方向から接触して被せられ、コイル23が巻回される複数の絶縁材料からなるホルダ24をさらに有し、回路基板21は、ホルダ24のコイル23よりも軸方向一方側L1に突出した部分が嵌め込まれて位置決めされるスロット孔211を有する。
【0043】
また、回路基板21は、
図4及び
図6に示すように、本体部21Aと突出部21Bとを有している。本体部21Aは、軸方向に貫通する貫通孔212を有する環状(図示の例では回転軸線Lを中心とする円環状)をなしており、スロット孔211は、本体部21Aに回転軸線Lを中心として周方向に並んで設けられており、突出部21Bは、本体部21Aの外周縁の周方向の一箇所から径方向外側に突出している。
【0044】
また、
図4に示すように、回路基板21には、第1の検出素子213と第2の検出素子214とが設けられている。具体的には、第1検出素子213は、回路基板21の軸方向一方側L1の面であって、コード板13と軸方向に対向するように貫通孔212の周縁に設けられている。第1検出素子213は、例えば感磁素子からなり、エンコーダディスク13と協働してロータ組立体10の回転角度を検出することができる。第2検出素子214は、回路基板21の軸方向一方側L1の面に設けられ、第1マグネット112Aと軸方向に対向するように回路基板21の外周縁に設けられている。第2検出素子214は、例えば感磁素子で構成され、第1マグネット112Aの位置を検出することができる。また、第1検出素子213および第2検出素子214は、1つ設けられていてもよいし、複数設けられていてもよい。
【0045】
また、
図4及び
図5に示すように、回路基板21には、第1コネクタ215及び第2コネクタ216が設けられている。具体的には、第1コネクタ215及び第2コネクタ216は、回路基板21の突出部21Bの軸方向一方側L1の面に設けられており、周方向に並んでいる。第1コネクタ215は、外部電源と接続するためのものであり、第2コネクタ216は、外部との通信(例えば、第1検出素子213及び第2検出素子214の検出結果を外部に送信する)のためのものである。
【0046】
また、
図6および
図9に示すように、軸方向視において、分割コア22は、径方向内側ほど周方向幅が小さくなる略台形状をなしている。分割コア22は、周方向に等間隔で並ぶように回路基板21に支持されている。
【0047】
コイル23は、回路基板21に電気的に接続されている。コイル23は、
図3および
図6に示すように、軸方向視において、分割コア22(具体的にはホルダ24)を取り囲む筒状をなしている。コイル23は、軸方向から見て、径方向内側ほど周方向の幅が小さくなる略台形状の外形を有している。
【0048】
また、ホルダ24は、例えば樹脂により一体に形成されている。
図6から
図9に示すように、ホルダ24は、分割コア22が径方向外側から径方向内側に向かって挿入される収容孔CBを有している。ホルダ24は、分割コア22に径方向内側から接触する接触部ABを有するとともに、分割コア22に径方向外側から接触する弾性係止部SFを有する。具体的には、ホルダ24は、収容孔CBを画成する底板241と天板242と側板243とを有し、底板241は、軸方向の一方L1から分割コア22に接触して覆うとともに、軸方向の他方L2から回路基板21に接触し、天板242は、軸方向の他方L2から分割コア22に接触して覆うものであり、側板243は、底板241と天板242とを連結し、周方向の両側から分割コア22に接触して、分割コア22の周方向両側の側面の一部を覆うものである。そして、底板241は、分割コア22に対して径方向内側から接触する接触部ABを構成する第1接触部AB1(図示の例では底板241の径方向内側の端部から軸方向の他方側L2に突出する突起部からなる)が設けられ、天板242は、分割コア22に対して径方向内側から接触する接触部ABを構成する第2接触部AB2(図示の例では天板242の径方向内側の端部から軸方向の一方側L1に突出する突起部からなる)が設けられるとともに、分割コア22に対して径方向外側から接触する弾性係止部SF(図示の例では天板242の径方向外側の端部から軸方向の一方側L1に突出する突起部からなる)が設けられ、側板243は、底板241の径方向における途中部分の周方向両側と天板242の径方向における途中部分の周方向両側とを連結している。また、ホルダ24はボス部244を有し、このボス部244は底板241から突出し、回路基板21のスロット孔211に嵌め込まれている。また、ホルダ24の収容孔CBも、軸方向視において、径方向内側ほど周方向幅が小さくなる略台形状をなしている。
【0049】
また、
図5および
図6から明らかなように、回路基板21のスロット孔211の周縁がホルダ24に対して軸方向の一方側L1から接触し、スロット孔211の内壁面がホルダ24に対して径方向および周方向にそれぞれ接触する。具体的には、
図5、
図6及び
図8に示すように、ホルダ24の底板241のボス部244に連なる部分が、軸方向の他方側L2から回路基板21のスロット211の周縁に接触する。また、回路基板21のスロット孔211の内壁面には、第1係合部EP1(図示の例ではスロット孔211の径方向外方の内壁面から径方向外方に凹んだ溝部からなる)と、第1係合部EP1と第1方向(図示の例では径方向に一致)で対向する第2係合部EP2(図示の例ではスロット孔211の径方向内方に位置し径方向に垂直な内壁面からなる)とが設けられており、ホルダ24のスロット孔211に嵌め込まれる部分(図示の例ではボス部244)は、第1係合部EP1と係合する第1被係合部EDP1(図示の例ではボス部244の径方向外方の端面から径方向外方に突出した突起からなる)と、第2係合部EP2と係合する第2被係合部EDP2(図示の例ではボス部244の径方向内方に位置し径方向に垂直な端面からなる)とを有している。第1の方向と直交する第2の方向(図示の例では周方向)において、ホルダ24のスロット孔211に嵌め込まれた部分(図示の例ではボス部244)と回路基板21のスロット孔211の内壁面との間には隙間が形成されている(図示の例では、軸方向に見て、スロット孔211は略矩形状をなし、ボス部244は径方向内側ほど周方向寸法が小さくなる台形状をなし、これにより、前記矩形の周方向両側の辺と前記台形の周方向両側の腰との間には径方向内側ほど周方向寸法が大きくなる隙間が形成されている)。
【0050】
また、ステータ組立体20は、
図2、
図3、
図4及び
図6に示すように、それぞれ回転軸線Lを中心とする円環状をなす外輪25と、外輪25の内径よりも小さい外径を有し、外輪25の径方向内側に設けられ、シャフト12が軸方向に貫通する内輪26とを備えている。回路基板21は、外輪25と内輪26との間に形成された筒状空間の軸方向一方側L1の開口を閉塞することにより、分割コア22、コイル23およびホルダ24が収容される収容溝を外輪25、内輪26および回路基板21で囲み、この収容溝内には、分割コア22、コイル23、ホルダ24、外輪25および内輪26を固着するポッティング材27(例えばエポキシ樹脂等)が充填されている。また、外輪25には、軸方向に貫通する貫通孔251が設けられており、この貫通孔251は、周方向に複数並設されている。そして、回路基板21の本体部21Aの外周面の大部分が外輪25の内周面に接触し、回路基板21の本体部21Aの貫通孔212の内周面が内輪26の外周面に接触し、回路基板21の突出部21Bが外輪25の軸方向における一方側L1に設けられた凹溝を介して外輪25から径方向外側に突出している。
【0051】
(カバーの構造)
【0052】
図1及び
図2に示すように、カバー90は、ステータ組立体20に対して軸方向一方側L1から接触して覆う第1カバー90Aと、ステータ組立体20に対して軸方向他方側L2から接触して覆う第2カバー90Bとを含む。
【0053】
ここで、第1のカバー90Aは、
図1及び
図2に示すように、径方向に広がり、第1の軸受30Aが挿入される孔部を有する板状部91Aと、板状部91Aの周縁から軸方向の他方側L2に延びてステータ組立体20の外輪25の軸方向の一方側L1の端面に接触する周壁部92Aとを有しており、これにより、第1のカバー90Aとステータ組立体20との間に第1ロータ11Aを収容する空間が形成されている。また、第2のカバー90Bは、径方向に広がり、第2の軸受30Bが挿入される孔部を有する板状部91Bと、板状部91Bの周縁から軸方向の一方L1に延びてステータ組立体20の外輪25の軸方向の他方L2の端面に接触する周壁部92Bとを有し、これにより、第2のカバー90Bとステータ組立体20との間に第2ロータ11Bを収容する空間が形成される。そして、第1カバー体90Aの周壁部92Aは、軸方向に貫通する貫通孔921Aを有し、この貫通孔921Aは、ステータ組立体20の外輪25の貫通孔251に対応するように周方向に複数並設されており、第2カバー体90Bの周壁部92Bは、軸方向に貫通する貫通孔921Bを有し、この貫通孔921Bは、ステータ組立体20の外輪25の貫通孔251に対応するように周方向に複数並設されている。
【0054】
また、
図2に示すように、第1カバー90Aとステータ組立体20と第2カバー90Bとは、ボルト80によって固定されている。具体的には、ボルト80は、周方向に複数並設されており、軸方向の一方側L1から第1カバー体90Aの周壁部92Aの貫通孔921Aと、ステータ組立体20の外輪25の貫通孔251と、第2カバー体90Bの周壁部92Bの貫通孔921Bとにそれぞれねじ込まれて第1カバー体90Aとステータ組立体20と第2カバー体90Bとを固定する。
【0055】
本実施形態の軸方向界磁モータ1によれば、複数の分割コア22のそれぞれに対応して、分割コア22に軸方向両側および周方向から接触して被せられ、コイル23が巻回される複数のホルダ24を備え、回路基板21は、ホルダ24のコイル23よりも軸方向一方側L1に突出した部分が嵌め込まれて位置決めされるスロット孔211を有しているので、分割コア22の軸方向寸法がコイル23の軸方向寸法よりも小さくても、ホルダ24を介して回路基板21に対する分割コア22の位置決めを容易に行うことができ、モータ性能やコギングトルクのばらつきを抑制することができるとともに、ホルダ24が絶縁材で形成されているので、分割コア22とコイル23との絶縁も容易に確保することができ、生産性が向上する。
【0056】
以上では図面を参照しながら本発明を例示的に説明し、明らかなように本発明の具体的な実現は上記実施形態に限定されるものではない。
【0057】
例えば、上記実施形態では、回路基板21のスロット孔211の周縁がホルダ24に軸方向の一方側L1から接触して回路基板21に対するホルダ24の軸方向の位置決めを行っているが、これに限らず、治具を用いて回路基板21とホルダ24とを軸方向に位置決めし、この状態で回路基板21とホルダ24とをポッティング材27を用いて固定してもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、分割コア22は、軸方向視で径方向内側ほど周方向の幅が小さくなる略台形状をなしているが、これに限らず、軸方向視で矩形等の他の形状に形成されていてもよく、その場合には、ホルダ24の収容孔CBを対応する形状に形成すればよい。
【0059】
また、上記実施形態では、ホルダ24は、分割コア22が径方向外側から径方向内側に向かって挿入される収容孔CBを有しているが、これに限らず、収容孔CBは、分割コア22が周方向に沿って挿入されるように形成されていてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、ホルダ24は、分割コア22に対して径方向内側から接触する接触部ABを有しているが、これに限らず、ホルダ24に対する分割コア22の径方向の位置決めを治具によって行ってもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、ホルダ24は、分割コア22に対して径方向外側から接触する弾性係止部SFを有しているが、これに限らず、弾性係止部SFを省略してもよい。
【0062】
また、上記実施の形態では、ホルダ24の底板241が軸方向の一方側L1から分割コア22のほぼ全体を覆い、ホルダ24の天板242が軸方向の他方側L2から分割コア22のほぼ全体を覆っているが、これに限らず、軸方向に見たときに、ホルダ24の底板241および天板242の寸法が分割コア22の寸法よりも小さくてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、ホルダ24は、底板241から突出して回路基板21のスロット211に嵌め込まれるボス部244を有しているが、これに限らず、ボス部244を省略して底板241をスロット211に嵌め込むように形成してもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、ホルダ24の側板243が分割コア22の周方向両側の側面の一部のみを覆っているが、これに限らず、ホルダ24の側板243を分割コア22の周方向両側の側面全体を覆うように形成してもよいし、ホルダ24の側板243を分割コア22の周方向一方側の側面の一部または全体を覆うように形成してもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、回路基板21のスロット孔211の内壁面に、径方向に対向する第1係合部EP1および第2係合部EP2を設けたが、これに限らず、第1係合部EP1および第2係合部EP2は、径方向以外の方向に対向するように形成されていてもよく、また、第1係合部EP1および第2係合部EP2も、図示の形状に限らず、必要に応じて適宜変更可能である。
【0066】
また、上記実施形態では、周方向において、ホルダ24のスロット孔211に嵌め込まれた部分と回路基板21のスロット孔211の内壁面との間に隙間が形成されているが、これに限らず、この隙間を省略してもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、ロータ11は、第1ロータ11Aと第2ロータ11Bとを備えているが、これに限らず、第1ロータ11Aと第2ロータ11Bとの一方を省略してもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、第1検出素子213は、感磁素子で構成されているが、これに限らず、光学素子や誘導素子で構成されていてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、回路基板21上に第1検出素子213および第2検出素子214をさらに設けたが、これに限らず、第1検出素子213および第2検出素子214を省略してもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、回路基板21に第1コネクタ215および第2コネクタ216をさらに設けたが、これに限らず、第1コネクタ215および第2コネクタ216を省略してもよい。
【0071】
本発明は、その範囲内において、実施形態の各部を自由に組み合わせたり、実施形態の各部を適宜変形したり、省略したりすることが可能である。