(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045029
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】2-シアノアクリレート系接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 4/04 20060101AFI20240326BHJP
C09J 4/00 20060101ALI20240326BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C09J4/04
C09J4/00
C09J11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023141897
(22)【出願日】2023-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2022148705
(32)【優先日】2022-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000216243
【氏名又は名称】田岡化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 文哉
(72)【発明者】
【氏名】石黒 美幸
(72)【発明者】
【氏名】宮下 稜平
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040DF032
4J040FA012
4J040FA121
4J040FA192
4J040JA01
4J040JA12
4J040KA17
4J040KA23
4J040KA28
4J040KA31
4J040KA35
(57)【要約】
【課題】
耐湿熱性が改善された、アルコキシアルキル2-シアノアクリレートを主成分として含む2-シアノアクリレート系接着剤組成物の提供。
【解決手段】
アルコキシアルキル2-シアノアクリレートに対し、複数の特定の酸無水物基を有する化合物を、特定の割合で含む接着剤組成物とすることにより、耐湿熱性が改善されたアルコキシアルキル2-シアノアクリレートを主成分として含む接着剤組成物が提供でき、前記課題が解決可能となる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)、(B)及び(C)を含有し、(B)の含有量が(A)100重量部に対し0.05~5重量部であり、(C)の含有量が(A)100重量部に対し0.05~5重量部である接着剤組成物。
(A)アルコキシアルキル2-シアノアクリレート。
(B)下記一般式(1):
【化1】
(式中、R
1は分岐を有してもよい炭素数4~20のアルキル基、又は分岐を有してもよい炭素数4~20のアルケニル基を示す。)
で表される化合物。
(C)下記一般式(2):
【化2】
(式中、R
2は水素原子、分岐を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~9のシクロアルキル基、分岐を有してもよい炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~14のアリール基又は炭素数7~18のアラルキル基を示す。)
で表される化合物、下記一般式(3):
【化3】
(式中、R
3は水素原子、分岐を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~9のシクロアルキル基、分岐を有してもよい炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~14のアリール基又は炭素数7~18のアラルキル基を示す。)
で表される化合物、下記一般式(4):
【化4】
(式中、X
1は単結合、分岐を有してもよい炭素数1~6のアルキリデン基、分岐を有してもよい炭素数5~14のシクロアルキリデン基、分岐を有してもよい炭素数5~14のオキソシクロアルキレン基、フェニレン基、1-フェニルエタン-1,1-ジイル基、1,1-ジフェニルメタン-1,1-ジイル基またはフルオレニリデン基を示す。R
4a及びR
4bはそれぞれ独立して、水素原子、分岐を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~9のシクロアルキル基、分岐を有してもよい炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~14のアリール基又は炭素数7~18のアラルキル基を示す。)
で表される化合物、下記一般式(5):
【化5】
(式中、R
5a及びR
5bはそれぞれ独立して、水素原子、分岐を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~9のシクロアルキル基、分岐を有してもよい炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~14のアリール基又は炭素数7~18のアラルキル基を示す。n
1は0~9の整数を示す。)
で表される化合物、下記一般式(6):
【化6】
(式中、X
2は分岐を有してもよい炭素数1~6のアルキリデン基、分岐を有してもよい炭素数5~14のシクロアルキリデン基、1-フェニルエタン-1,1-ジイル基、1,1-ジフェニルメタン-1,1-ジイル基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基またはフルオレニリデン基を示す。)
で表される化合物、及び下記一般式(7):
【化7】
(式中、X
3は分岐を有してもよい炭素数1~6のアルキリデン基、分岐を有してもよい炭素数5~14のシクロアルキリデン基、1-フェニルエタン-1,1-ジイル基、1,1-ジフェニルメタン-1,1-ジイル基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基またはフルオレニリデン基を示す。R
6a及びR
6bはそれぞれ独立して分岐を有してもよい炭素数1~6のアルキル基、フェニル基またはベンジル基を示す。n
2a及びn
2bはそれぞれ独立して0~4の整数を示す。)
で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸無水物基を有する化合物。
【請求項2】
(B)が(2-ブテン-1-イル)コハク酸無水物、2-オクテニルコハク酸無水物、ノネニルコハク酸無水物、テトラプロペニルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物及びイソオクタデセニルコハク酸無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
(C)が5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、5-ノルボルナン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチル-5-ノルボルナン-2,3-ジカルボン酸無水物、5,5’-(1,4-フェニレン)ビス(ヘキサヒドロ-4,7-メタノイソベンゾフラン-1,3-ジオン)、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、及び9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸無水物基を有する化合物である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
(B)が(2-ブテン-1-イル)コハク酸無水物、2-オクテニルコハク酸無水物、ノネニルコハク酸無水物、テトラプロペニルコハク酸無水物及びドデセニルコハク酸無水物、イソオクタデセニルコハク酸無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であり、且つ(C)が5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、5-ノルボルナン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチル-5-ノルボルナン-2,3-ジカルボン酸無水物、5,5’-(1,4-フェニレン)ビス(ヘキサヒドロ-4,7-メタノイソベンゾフラン-1,3-ジオン)、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、及び9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸無水物基を有する化合物である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
更に増粘剤を(A)100重量部に対し0.5~25重量部含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は瞬間接着剤として知られている2-シアノアクリレート系接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
2-シアノアクリレート系接着剤組成物は、主成分である2-シアノアクリレートのもつ特異なアニオン重合性により、被着材料表面に付着するわずかな水分等によって重合を開始し、硬化することで各種材料を短時間で強固に接着することができるものである。そのため、いわゆる瞬間接着剤として工業用、医療用、家庭用等の分野において広く用いられている。
【0003】
しかしながら、一般的な2-シアノアクリレート系接着剤組成物は優れた接着速度(硬化速度)を有する反面、特有の臭気や刺激性を示す場合や、被着体周辺への汚染が生じる(白化現象)場合があり、これらの改善が求められている。前記した課題(臭気、刺激性及び白化現象)は、2-シアノアクリレート系接着剤組成物で通常使用されるエチル2-シアノアクリレートが有する高い反応性と高い蒸気圧が一因とされ、該課題を解決し得る方法の一つとして、アルコキシアルキル2-シアノアクリレート等の分子量が大きく、蒸気圧の低い2-シアノアクリレートモノマーを2-シアノアクリレート系接着剤組成物の主成分として用いる方法が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、2-シアノアクリレート系接着剤組成物使用時の臭気や刺激性、白化現象の改善を目的としてアルコキシアルキル2-シアノアクリレートを主成分として含む接着剤組成物に着眼すると共に、該接着剤組成物の耐湿熱性を評価すべく、該接着剤組成物を用いて接着した被着体を高温高湿条件下に暴露したところ、2-シアノアクリレート系接着剤組成物として汎用されているエチル2-シアノアクリレートを主成分として含む接着剤組成物を使用したものに比べて接着強度が著しく低下し、場合によっては完全に剥離してしまうことが判明した。
【0006】
本発明は、耐湿熱性が改善された、アルコキシアルキル2-シアノアクリレートを主成分として含む接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、アルコキシアルキル2-シアノアクリレートに対し、複数の特定の酸無水物基を有する化合物を、特定の割合で含む接着剤組成物とすることにより、上記課題が解決可能であることを見出した。具体的には、本発明は以下の発明を含む。
【0008】
〔1〕
下記(A)、(B)及び(C)を含有し、(B)の含有量が(A)100重量部に対し0.05~5重量部であり、(C)の含有量が(A)100重量部に対し0.05~5重量部である接着剤組成物。
(A)アルコキシアルキル2-シアノアクリレート。
(B)下記一般式(1):
【0009】
【化1】
(式中、R
1は分岐を有してもよい炭素数4~20のアルキル基、又は分岐を有してもよい炭素数4~20のアルケニル基を示す。)
で表される化合物。
(C)下記一般式(2):
【0010】
【化2】
(式中、R
2は水素原子、分岐を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~9のシクロアルキル基、分岐を有してもよい炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~14のアリール基又は炭素数7~18のアラルキル基を示す。)
で表される化合物、下記一般式(3):
【0011】
【化3】
(式中、R
3は水素原子、分岐を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~9のシクロアルキル基、分岐を有してもよい炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~14のアリール基又は炭素数7~18のアラルキル基を示す。)
で表される化合物、下記一般式(4):
【0012】
【化4】
(式中、X
1は単結合、分岐を有してもよい炭素数1~6のアルキリデン基、分岐を有してもよい炭素数5~14のシクロアルキリデン基、分岐を有してもよい炭素数5~14のオキソシクロアルキレン基、フェニレン基、1-フェニルエタン-1,1-ジイル基、1,1-ジフェニルメタン-1,1-ジイル基またはフルオレニリデン基を示す。R
4a及びR
4bはそれぞれ独立して、水素原子、分岐を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~9のシクロアルキル基、分岐を有してもよい炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~14のアリール基又は炭素数7~18のアラルキル基を示す。)
で表される化合物、下記一般式(5):
【0013】
【化5】
(式中、R
5a及びR
5bはそれぞれ独立して、水素原子、分岐を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~9のシクロアルキル基、分岐を有してもよい炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~14のアリール基又は炭素数7~18のアラルキル基を示す。n
1は0~9の整数を示す。)
で表される化合物、下記一般式(6):
【0014】
【化6】
(式中、X
2は分岐を有してもよい炭素数1~6のアルキリデン基、分岐を有してもよい炭素数5~14のシクロアルキリデン基、1-フェニルエタン-1,1-ジイル基、1,1-ジフェニルメタン-1,1-ジイル基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基またはフルオレニリデン基を示す。)
で表される化合物、及び下記一般式(7):
【0015】
【化7】
(式中、X
3は分岐を有してもよい炭素数1~6のアルキリデン基、分岐を有してもよい炭素数5~14のシクロアルキリデン基、1-フェニルエタン-1,1-ジイル基、1,1-ジフェニルメタン-1,1-ジイル基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基またはフルオレニリデン基を示す。R
6a及びR
6bはそれぞれ独立して分岐を有してもよい炭素数1~6のアルキル基、フェニル基またはベンジル基を示す。n
2a及びn
2bはそれぞれ独立して0~4の整数を示す。)
で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸無水物基を有する化合物。
【0016】
〔2〕
(B)が(2-ブテン-1-イル)コハク酸無水物、2-オクテニルコハク酸無水物、ノネニルコハク酸無水物、テトラプロペニルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物及びイソオクタデセニルコハク酸無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、〔1〕に記載の接着剤組成物。
【0017】
〔3〕
(C)が5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、5-ノルボルナン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチル-5-ノルボルナン-2,3-ジカルボン酸無水物、5,5’-(1,4-フェニレン)ビス(ヘキサヒドロ-4,7-メタノイソベンゾフラン-1,3-ジオン)、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、及び9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸無水物基を有する化合物である、〔1〕に記載の接着剤組成物。
【0018】
〔4〕
(B)が(2-ブテン-1-イル)コハク酸無水物、2-オクテニルコハク酸無水物、ノネニルコハク酸無水物、テトラプロペニルコハク酸無水物、及びドデセニルコハク酸無水物、イソオクタデセニルコハク酸無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であり、且つ(C)が5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、5-ノルボルナン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチル-5-ノルボルナン-2,3-ジカルボン酸無水物、5,5’-(1,4-フェニレン)ビス(ヘキサヒドロ-4,7-メタノイソベンゾフラン-1,3-ジオン)、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、及び9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸無水物基を有する化合物である、〔1〕に記載の接着剤組成物。
【0019】
〔5〕
更に増粘剤を(A)100重量部に対し0.5~25重量部含む、〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、耐湿熱性が改善されたアルコキシアルキル2-シアノアクリレートを主成分として含む接着剤組成物が提供可能となる。本発明の接着剤組成物は、特に接着強度の低下を起こしやすい鋼板を含む被着体の接着時の耐湿熱性に優れ、また、2-シアノアクリレート系接着剤組成物として汎用されているエチル2-シアノアクリレートを主成分として含む接着剤組成物に比べて低白化性にも優れることから、家電や自動車向け電材部品の接着、及び意匠性の高い製品に好適に用いることができる。また、本発明の接着剤組成物は、白濁がなく透明性に優れた硬化物を与えることから、特に透明性が求められる分野においても好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<成分(A)>
成分(A)は、アルコキシアルキル2-シアノアクリレートである。本発明におけるアルコキシアルキル2-シアノアクリレートとしては、例えば、2-シアノアクリル酸のメトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシイソプロピル、メトキシブチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、エトキシイソブチル、プロポキシメチル、プロポキシエチル、プロポキシプロピル、ブトキシメチル、ブトキシエチル、ブトキシプロピル、ブトキシイソプロピル、ブトキシブチル等のエステル類が挙げられる。これらアルコキシアルキル2-シアノアクリレートの中でも、接着剤組成物の臭気や刺激性の低減効果が大きく、接着特性を向上させやすいことからエトキシエチル2-シアノアクリレート及びメトキシエチル2-シアノアクリレートが好ましい。これらアルコキシアルキル2-シアノアクリレートは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
これらアルコキシアルキル2-シアノアクリレートは、常法(例えば、アルコキシアルキル2-シアノアセテートとホルムアルデヒドのクネーフェナーゲル縮合と、続く熱解重合により製造する方法)によって製造される他、市販品も入手可能である。
【0023】
本発明の接着剤組成物全量に占めるアルコキシアルキル2-シアノアクリレートの重量割合は、例えば、50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80%以上である。
【0024】
<成分(B)>
成分(B)は、上記一般式(1)で表される酸無水物基を有する化合物である。
【0025】
上記一般式(1)において、R1は分岐を有してもよい炭素数4~20のアルキル基または分岐を有してもよい炭素数4~20のアルケニル基を示し、好ましくは炭素数6~18のアルケニル基、より好ましくは炭素数8~15のアルケニル基である。分岐を有してもよい炭素数4~20のアルキル基として具体的には、例えば、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられる。分岐を有してもよい炭素数4~20のアルケニル基として具体的には、例えば、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基等が挙げられる。
【0026】
上記一般式(1)で表される化合物として具体的には、例えば、2-メチルプロピルコハク酸無水物、(2-メチルプロペン-2-イル)コハク酸無水物、ブチルコハク酸無水物、(2-ブテン-1-イル)コハク酸無水物、ヘキシルコハク酸無水物、(2-ヘキセン-1-イル)コハク酸無水物、オクチルコハク酸無水物、2-オクテニルコハク酸無水物、ノニルコハク酸無水物、ノネニルコハク酸無水物、イソノニルコハク酸無水物、イソノネニルコハク酸無水物、テトラプロペニルコハク酸無水物、デシルコハク酸無水物、デセニルコハク酸無水物、ドデシルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、イソドデセニルコハク酸無水物、(2-ドデセン-1-イル)コハク酸無水物、テトラドデシルコハク酸無水物、テトラデセニルコハク酸無水物、ヘキサデシルコハク酸無水物、ヘキサデセニルコハク酸無水物、オクタデシルコハク酸無水物、オクタデセニルコハク酸無水物、イソオクタデシルコハク酸無水物、イソオクタデセニルコハク酸無水物等が挙げられる。
【0027】
これら上記一般式(1)で表される化合物の中でも、ブチルコハク酸無水物、(2-ブテン-1-イル)コハク酸無水物、2-オクテニルコハク酸無水物、ノネニルコハク酸無水物、テトラプロペニルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、(2-ドデセン-1-イル)コハク酸無水物及びイソオクタデセニルコハク酸無水物が好ましい。また、本発明において成分(B)は25℃で液体であることが好ましく、前記した具体的化合物の中でも、(2-ブテン-1-イル)コハク酸無水物、2-オクテニルコハク酸無水物、ノネニルコハク酸無水物、テトラプロペニルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物及びイソオクタデセニルコハク酸無水物がより好ましく、ノネニルコハク酸無水物、テトラプロペニルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物及びイソオクタデセニルコハク酸無水物が特に好ましい。これら上記一般式(1)で表される化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
本発明の接着剤組成物において、成分(B)の含有量は、成分(A)アルコキシアルキル2-シアノアクリレート100重量部に対し、通常0.05~5重量部、好ましくは0.08~4重量部である。含有量を0.05~5重量部の範囲とすることにより、接着層への湿気の侵入が抑えられ、耐湿熱性を向上させることができ、また、保存安定性に優れる接着剤組成物とすることができる。
【0029】
<成分(C)>
成分(C)は、上記一般式(2)~(7)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸無水物基を有する化合物である。
【0030】
上記一般式(2)のR2において、分岐を有してもよい炭素数1~20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、2,-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、ネオヘキシル基、2,-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、ネオヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、2,2-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、1-エチル-1-メチルブチル基、1,2,3-トリメチルブチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、ネオオクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、sec-ノニル基、tert-ノニル基、ネオノニル基等が挙げられる。これら分岐を有してもよい炭素数1~20のアルキル基の中でも、炭素数1~9アルキル基が好ましい。
【0031】
上記一般式(2)のR2において、炭素数3~9のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基等が挙げられる。
【0032】
上記一般式(2)のR2において、分岐を有してもよい炭素数2~20のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、1,2-ジメチル-2-プロペニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、2-メチル-2-ペンテニル基、1-ヘプテニル基、2-ヘプテニル基、3-ヘプテニル基、4-ヘプテニル基、5-ヘプテニル基、6-ヘプテニル基、1-オクテニル基、2-オクテニル基、1-ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基等が挙げられる。これら分岐を有してもよい炭素数2~20のアルケニル基の中でも、炭素数2~12のアルケニル基が好ましい。
【0033】
上記一般式(2)のR2において、炭素数6~14のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、t-ブチルフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。
【0034】
上記一般式(2)のR2において、炭素数7~18のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、クミル基、ヒドロシンナミル基、ベンスヒドリル基、メチルベンジル基、t-ブチルベンジル基等が挙げられる。
【0035】
上記一般式(2)で表される化合物の中でも、R2が水素原子、または炭素数1~9のアルキル基である上記一般式(2)で表される化合物が好ましく、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物及びメチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物がより好ましく、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物が更に好ましい。
【0036】
上記一般式(3)のR3において、分岐を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~9のシクロアルキル基、分岐を有してもよい炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~14のアリール基及び炭素数7~18のアラルキル基としては、例えば、上述した上記一般式(2)の置換基R2と同じものが挙げられ、好ましい態様についても同じである。
【0037】
上記一般式(3)で表される化合物の中でも、R3が水素原子、または炭素数1~9のアルキル基である上記一般式(3)で表される化合物が好ましく、5-ノルボルナン-2,3-ジカルボン酸無水物及びメチル-5-ノルボルナン-2,3-ジカルボン酸無水物がより好ましい。
【0038】
上記一般式(2)で表される化合物および上記一般式(3)で表される化合物の市販品としては、例えば、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(東京化成工業社製)、カヤハードCD、カヤハードMCD(日本化薬社製)、MHAC-P(昭和電工マテリアルズ社製)、無水ハイミック酸/無水ナジック酸(Puyang Huigheng Electronic Material Co.,Ltd.製)、ヘキサヒドロ-4,7-メタノイソベンゾフラン-1,3-ジオン(5-ノルボルナン-2,3-ジカルボン酸無水物/富士フイルム和光純薬(株))等が挙げられる。
【0039】
上記一般式(4)のX1において、分岐を有してもよい炭素数1~6のアルキリデン基としては、例えば、イソプロピリデン基、メチレン基、エチリデン基、ブタン-2,2-ジイル基等が挙げられる。分岐を有してもよい炭素数5~14のシクロアルキリデン基としては、例えば、シクロヘキシリデン基、3,5,5-トリメチルシクロヘキシリデン基、シクロドデシリデン基等が挙げられる。分岐を有してもよい炭素数5~14のオキソシクロアルキレン基としては、例えば、オキソシクロペンチレン基、オキソシクロヘキシレン基、オキソシクロドデシレン基等が挙げられる。
【0040】
上記一般式(4)のR4a及びR4bにおいて、分岐を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~9のシクロアルキル基、分岐を有してもよい炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~14のアリール基及び炭素数7~18のアラルキル基としては、例えば、上述した上記一般式(2)のR2と同じものが挙げられ、好ましい態様についても同じである。
【0041】
上記一般式(4)で表される化合物の中でも、立体異性体を含めて、5,5’-(1,4-フェニレン)ビス(ヘキサヒドロ-4,7-メタノイソベンゾフラン-1,3-ジオン)及びドデカヒドロ(5,5’-ビ-4,7-メタノイソベンゾフラン)-1,1’,3,3’-テトラオンが好ましく、5,5’-(1,4-フェニレン)ビス(ヘキサヒドロ-4,7-メタノイソベンゾフラン-1,3-ジオン)がより好ましい。
【0042】
上記一般式(5)のR5a及びR5bにおいて、分岐を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~9のシクロアルキル基、分岐を有してもよい炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~14のアリール基及び炭素数7~18のアラルキル基としては、例えば、上述した上記一般式(2)のR2と同じものが挙げられ、好ましい態様についても同じである。また、n1は0~9の整数を示し、好ましくは0~1である。
【0043】
上記一般式(5)で表される化合物の中でも、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物が好ましい。
【0044】
上記一般式(4)で表される化合物および上記一般式(5)で表される化合物の市販品としては、例えば、ENEHYDE BzDA(ENEOS社製)、ENEHYDE BzDAxx(ENEOS社製)、ENEHYDE CpODA(ENEOS社製)等が挙げられる。
【0045】
上記一般式(6)のX2において、分岐を有してもよい炭素数1~6のアルキリデン基および分岐を有してもよい炭素数5~14のシクロアルキリデン基としては、例えば、上述した上記一般式(4)のX1と同じものが挙げられる。
【0046】
上記一般式(6)で表される化合物としては、例えば、4,4’-(イソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’-(メチレン)ジフタル酸無水物、4,4’-(エチリデン)ジフタル酸無水物、4,4’-(ブタン-2,2-ジイル)ジフタル酸無水物、4,4’-(シクロヘキシリデン)ジフタル酸無水物、4,4’-(3,5,5-トリメチルシクロヘキシリデン)ジフタル酸無水物、4,4’-(シクロドデシリデン)ジフタル酸無水物、4,4’-(1-フェニルエタン-1,1-ジイル)ジフタル酸無水物、4,4’-(1,1-ジフェニルメタン-1,1-ジイル)ジフタル酸無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物等が挙げられる。これら上記一般式(1)で表される化合物の中でも、4,4’-(イソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’-(シクロドデシリデン)ジフタル酸無水物及び9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物が好ましく、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物及び9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物がより好ましく、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物が更に好ましい。
【0047】
上記一般式(7)のX3において、分岐を有してもよい炭素数1~6のアルキリデン基および分岐を有してもよい炭素数5~14のシクロアルキリデン基としては、例えば、上述した上記一般式(4)のX1と同じものが挙げられる。
【0048】
上記一般式(7)のR6a及びR6bにおいて、分岐を有してもよい炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
【0049】
上記一般式(7)においてn2a及びn2bはそれぞれ独立して0~4の整数を示し、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0である。なお、n2aが2以上である場合、複数あるR6aは互いに同一であっても異なってもよく、n2bが2以上である場合、複数あるR6bは互いに同一であっても異なってもよい。
【0050】
上記一般式(7)で表される化合物として具体的には、例えば、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、4,4’-(4,4’-メチレンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、4,4’-(4,4’-メチレンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、4,4’-(4,4’-エチリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、4,4’-[4,4’-(ブタン-2,2-ジイル)ジフェノキシ]ジフタル酸無水物、4,4’-(4,4’-シクロヘキシリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、4,4’-[4,4’-(3,5,5-トリメチルシクロヘキシリデン)ジフェノキシ]ジフタル酸無水物、4,4’-(4,4’-シクロドデシリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、4,4’-[4,4’-(1-フェニルエタン-1,1-ジイル)ジフェノキシ]ジフタル酸無水物、4,4’-[4,4’-(1,1-ジフェニルメタン-1,1-ジイル)ジフェノキシ]ジフタル酸無水物、4,4’-(4,4’-フルオレニリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物等が挙げられる。これら上記一般式(7)で表される化合物の中でも、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、4,4’-(4,4’-メチレンジフェノキシ)ジフタル酸無水物及び4,4’-(4,4’-フルオレニリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物が好ましく、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物がより好ましい。
【0051】
また、これら成分(C)の中でも、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、5-ノルボルナン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチル-5-ノルボルナン-2,3-ジカルボン酸無水物、5,5’-(1,4-フェニレン)ビス(ヘキサヒドロ-4,7-メタノイソベンゾフラン-1,3-ジオン)、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物および上記一般式(3)で表される化合物が好ましく、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、5,5’-(1,4-フェニレン)ビス(ヘキサヒドロ-4,7-メタノイソベンゾフラン-1,3-ジオン)、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、及び4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸二無水物がより好ましい。また、成分(C)として挙げたこれらの化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
本発明の接着剤組成物において、成分(C)の含有量は、成分(A)アルコキシアルキル2-シアノアクリレート100重量部に対し、通常0.05~5重量部、好ましくは0.08~4重量部である。含有量を0.05~5重量部の範囲とすることにより、接着層への湿気の侵入が抑えられ、耐湿熱性を向上させることができ、また、保存安定性に優れる接着剤組成物とすることができる。
【0053】
本発明の接着剤組成物には、上記成分(A)、(B)及び(C)の他、必要に応じ、2-シアノアクリレート系接着剤組成物において一般的に用いられる各種添加剤等が含まれていてもよい。以下、含まれていてもよい添加剤について例示する。
【0054】
<増粘剤>
増粘剤としては、アルコキシアルキル2-シアノアクリレートに溶解し、増粘効果を発現するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、メタクリル酸エステルおよび/またはアクリル酸エステルの重合体であるアクリル樹脂、アクリルゴム、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、セルロースエステル、ポリアルキル-2-シアノアクリレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。前記メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸メトキシプロピル、メタクリル酸エトキシエチル、メタクリル酸エトキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸テトラヒドロフリフリル等が挙げられる。前記アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸メトキシプロピル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸エトキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチルアクリル酸アリル、アクリル酸テトラヒドロフリフリル等が挙げられる。アクリル樹脂の具体例としては、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸ブチル等の前記モノマーの単独重合体や、2種以上からなるコポリマー、ターポリマー、テトラマー等の共重合体が挙げられる。これら増粘剤の中でも、アクリル樹脂が好ましく、メタクリル酸エステルの重合体がより好ましく、メタクリル酸メチルの重合体がさらに好ましい。これら増粘剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
増粘剤を含む場合、その含有量は、例えば、アルコキシアルキル2-シアノアクリレート100重量部に対し0.5~25重量部、好ましくは1.0~15重量部である。0.5~25重量部の範囲であれば、充分な増粘効果により、塗布時のハンドリング性の向上や、貯蔵安定性の悪化の抑制が可能となる。
【0056】
<その他の添加剤>
本発明の接着剤組成物には、上述した増粘剤の他、安定剤(例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t-ブチルカテコール、カテコール、ピロガロール等のラジカル重合禁止剤、二酸化硫黄、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のアルキルスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸、三弗化ホウ素ジエチルエーテル錯体等の三弗化ホウ素錯体、ホウ弗化水素酸、トリアルキルボレート等のアニオン重合禁止剤)、密着性向上剤(例えば、芳香族カルボン酸およびそのエステル、芳香族多価ヒドロキシ化合物等)、硬化促進剤(例えば、ポリアルキレンオキサイド誘導体、カリックスアレン化合物等)、可塑剤(例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソデシル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル等)、着色剤(染料、顔料、蛍光剤)、香料、溶剤、等の2-シアノアクリレート系接着剤組成物にて一般的に用いられる各種添加剤が含まれていてもよい。上記した添加剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【実施例0057】
以下、実施例等を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0058】
<試験方法>
(1)均一性
JIS K6861-4に準拠した方法によりサンプルを調製し、目視により硬化前の接着剤組成物中の各種添加剤の溶け残りによる濁りを確認した。
A:溶け残りなし、透明。
B:溶け残りあり、不透明、固体分散。
【0059】
(2)硬化物の透明性
接着剤組成物を60℃95%RHの温湿度に制御されたオーブン内に1日静置して硬化させ、厚み約7mmの硬化物を作製した。作製した硬化物を通して紙面に印刷した文字を視認することで、硬化物の透明性を目視により評価した。
A:硬化物が透明であり、紙面に印刷した文字が視認できる。
B:硬化物が白濁、濁りがあり、紙面に印刷した文字が視認できない、あるいは困難である。
【0060】
(3)低汚染性
接着剤組成物1滴を黒色EPDM試験片上に載せ、40℃80%RHの温湿度に制御されたオーブン内に1時間静置して硬化させた後、硬化物周辺の黒色EPDM試験片の白化具合を目視により評価した。
A:白化なし。
B:白化あり。
【0061】
(4)耐湿熱性
表面を研磨した軟鋼板(JISG3141 SPCC-SB:1.6×25×100mm)を、接着剤組成物を用いて22℃、60%RH環境下で貼り合わせ、圧着したまま22℃、60%RH環境下で24時間静置して養生することで試験片を作製した。
作製した試験片に対し、70℃95%RHで168時間湿熱促進試験を行った後、試験片を室温に戻し、25℃にてJIS K6861-6に準じて鋼-鋼引張せん断接着強さ(N/mm2)を測定した。得られた鋼-鋼引張せん断接着強さの測定結果から、以下の評価基準に従って耐湿熱性を評価した。
A:湿熱促進後の接着強度が5.0N/mm2以上。
B:湿熱促進後に接着剥離、または接着強度が5.0N/mm2未満。
【0062】
(実施例1)
エトキシエチル2-シアノアクリレート100重量部に対し、テトラプロペニルコハク酸無水物(新日本理化製リカシッドDDSA)2.0重量部、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物2.0重量部、硬化促進剤としてメトキシポリエチレングリコールメタクリレート0.4重量部、増粘剤としてPMMA(ポリメタクリル酸メチル、分子量45万g/mol)4.5重量部、密着性向上剤としてガーリック酸一水和物0.01重量部、アニオン重合禁止剤としてHBF410ppm、ラジカル重合禁止剤としてハイドロキノン1000ppmを添加し、窒素雰囲気下40~60℃の温度で24時間撹拌して接着剤組成物を調製した。調製後、得られた2-シアノアクリレート系接着剤組成物について、上述した各試験を実施した。結果を表1に示す。
【0063】
(実施例2~8、比較例1~9)
実施例1において、テトラプロペニルコハク酸無水物、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物及びこれらの添加量、並びに増粘剤(PMMA)の添加量を表1及び表2に示す通り変更した以外は実施例1と同様にして接着剤組成物を調製し、上述した各試験を実施した。結果を表1及び表2に示す。
【0064】
(参考例1)
実施例1において、エトキシエチル2-シアノアクリレートの代わりにエチル2-シアノアクリレートを使用し、テトラプロペニルコハク酸無水物、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物及びこれらの添加量、並びに増粘剤(PMMA)の添加量を表2に示す通り変更した以外は実施例1と同様にして接着剤組成物を調製し、上述した各試験を実施した。結果を表2に示す。
【0065】
なお、表1及び表2における各略号は、下記の化合物を意味する。
【0066】
<酸無水物(1)>
B-1:テトラプロペニルコハク酸無水物(新日本理化製リカシッドDDSA)
B-2:ドデセニルコハク酸無水物(三洋化成工業製DSA)
B-3:ノネニルコハク酸無水物
B-4:イソオクタデセニルコハク酸無水物
<酸無水物(2)>
C-1:5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物
C-2:4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物
C-3:5,5’-(1,4-フェニレン)ビス(ヘキサヒドロ-4,7-メタノイソベンゾフラン-1,3-ジオン)
C-4:9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物
【0067】
【0068】