(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045034
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】高炉の炉頂排出ガス処理方法及び高炉付帯設備
(51)【国際特許分類】
C21B 7/22 20060101AFI20240326BHJP
C21B 7/00 20060101ALI20240326BHJP
F27D 17/00 20060101ALI20240326BHJP
B01D 47/00 20060101ALI20240326BHJP
B01D 50/00 20220101ALI20240326BHJP
B01D 51/02 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C21B7/22
C21B7/00 312
F27D17/00 105A
B01D47/00 A
B01D50/00 501K
B01D50/00 502B
B01D51/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023145858
(22)【出願日】2023-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2022148800
(32)【優先日】2022-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 悠揮
(72)【発明者】
【氏名】北村 洋平
(72)【発明者】
【氏名】早坂 祥和
(72)【発明者】
【氏名】木宮 宏治
(72)【発明者】
【氏名】中道 悟
【テーマコード(参考)】
4D032
4K015
4K056
【Fターム(参考)】
4D032AD10
4D032BA05
4D032CA01
4D032CA10
4K015AE05
4K015HA06
4K056AA01
4K056CA02
4K056DB14
(57)【要約】
【課題】高炉の減尺操業時においてシアンを含む高炉の炉頂排出ガスを処理する際でも、高炉の炉頂排出ガスの処理を行うことができ、高炉の減尺操業を適正に行うことができる、高炉の炉頂排出ガス処理方法及び高炉付帯設備を提案する。
【解決手段】高炉の原料充填層表面の高さを朝顔部上端の高さよりも減じる高炉の減尺操業時における高炉の炉頂排出ガス処理方法であって、高炉の炉頂排出ガスを、湿式集塵機で冷却および集塵し、前記湿式集塵機の集塵水を、凝集沈殿処理に付してダスト成分を除去するとともに冷却した後に、再度前記湿式集塵機に供給して循環させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉の原料充填層表面の高さを朝顔部上端の高さよりも減じる減尺操業時における高炉の炉頂排出ガス処理方法であって、高炉の炉頂排出ガスを、湿式集塵機で冷却および集塵し、前記湿式集塵機の集塵水を、凝集沈殿処理に付してダスト成分を除去するとともに冷却した後に、再度、前記湿式集塵機に供給して循環させることを特徴とする、高炉の炉頂排出ガス処理方法。
【請求項2】
前記湿式集塵機の集塵水を、所定の温度以下まで冷却後に凝集沈殿処理に付し、凝集沈殿処理後の処理水を、所定の温度以下まで冷却後に、再度、前記湿式集塵機に供給して循環させることを特徴とする、請求項1に記載の高炉の炉頂排出ガス処理方法。
【請求項3】
前記湿式集塵機の集塵水を、熱交換器を用いて所定の温度以下まで冷却し、前記凝集沈殿処理後の処理水を、冷却塔を用いて所定の温度以下まで冷却することを特徴とする、請求項2に記載の高炉の炉頂排出ガス処理方法。
【請求項4】
前記熱交換器を有する冷却配管が、予備の熱交換器を有する冷却配管に切り替え可能であり、かつ、前記熱交換器を有する冷却配管において、熱交換器の出側から入側へと洗浄水を流して洗浄可能であることを特徴とする、請求項3に記載の高炉の炉頂排出ガス処理方法。
【請求項5】
前記冷却後の集塵水を凝集沈殿処理に付する際、シアン処理のための薬剤を投与することを特徴とする、請求項2に記載の高炉の炉頂排出ガス処理方法。
【請求項6】
高炉の原料充填層表面の高さを朝顔部上端の高さよりも減じる減尺操業時に用いる高炉付帯設備であって、高炉の炉頂排出ガスを冷却して集塵水とする湿式集塵機と、前記湿式集塵機の集塵水を、所定の温度以下まで冷却する設備と、前記集塵水を凝集沈殿処理に付してダスト成分を除去した後に、前記処理水を所定の温度以下まで冷却する設備とを有し、前記湿式集塵機の集塵水を再度前記湿式集塵機に供給して循環させることを特徴とする、高炉付帯設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉の原料充填層表面の高さを朝顔部上端の高さよりも減じる高炉の減尺操業時における高炉の炉頂排出ガス処理方法及び高炉付帯設備に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高炉の寿命は設備技術や操業技術の進歩により大幅に延びており、10年以上稼動している大型高炉も多い。稼動年数の経過と共に、シャフト下部や朝顔部のライニング厚さが減少する。そこで、シャフト部や朝顔部の内面を補修する必要がある。その場合、この部分に原料があると補修できないので、高炉内の原料装入レベルを所定の高さまで下げ、次いで休風する。炉内の補修終了後、高炉を立ち上げるときには、再度原料を充填して立ち上げる。また、高炉の吹き卸しをし、解体修理をしようとする場合には、一つの方法として炉内容物をすべて取り出してしまう。この場合にも、高炉内の原料装入レベルを下げていく操業を行う。
【0003】
このように、炉体の中間補修を行なうとき、あるいは高炉の解体修理に入るときに、高炉内の原料装入レベルを下げていく操業形態を高炉の減尺操業という。減尺操業の基本的方法は、炉頂からの原料装入を停止し、これをコークスに置換して、羽口から供給する高温送風によりコークスを燃焼させつつ、原料の装入レベルを下げ、通常、羽口レベルまでこれを下げることにある。
【0004】
減尺の進行に伴い装入原料による炉内ガスの冷却ができなくなるために、羽口から吹込む熱風の冷却が進まず、高炉の炉頂排出ガスの温度が上昇する。高炉の炉頂排出ガスの温度が高温であると、炉頂設備の破損や、炉頂設備と高炉の炉頂排出ガスを貯蔵するガスホルダーとを連結する配管のエキスパンションの伸縮限界を超える。そのため、高炉の炉頂排出ガスの漏風事故を招く懸念がある。高炉の炉頂設備の破損や配管のエキスパンションからの漏風が確認されると、設備を補修するために、計画外の休風を余儀なくされる。また、設備の補修に時間を要し、休風時間が長時間となった場合は、高炉の立ち上げ時に炉内の溶銑の温度が低下して取り出せなくなる炉冷トラブルを引き起こす可能性がある。
【0005】
これに対し、高炉の炉頂排出ガスの温度上昇を抑えるために、炉頂に設けた散水管から散水を出してガスを冷却する方法が用いられてきた。例えば、特許文献1においては、炉頂に設けた散水管から散水し、炉頂排出ガス温度の上限を350℃として減尺操業をすることが開示されている。また、特許文献2では、送風量を減らす一方で富化酸素量を増加させることで、炉内へ吹込む熱風量を減らし、炉頂排出ガス温度を低位に保つ方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-73014号公報
【特許文献2】特開平2-282408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、高炉の減尺操業時において、高炉炉下部では有害なシアン化合物が生成している。すなわち、通常は装入原料と熱交換される過程で分解されるが、減尺操業では炉内ガスが十分に冷却されずに炉上部まで上昇するため、高炉の炉頂排出ガス中にシアンが含まれる。高炉の炉頂排出ガス中にシアンが含まれると、湿式集塵の集塵水中にシアンが吸収され、集塵水を系外へ放流する際には、シアン濃度の上限値を定める水質汚濁防止法に抵触する恐れがある。そのため、特許文献1および特許文献2に記載されている炉頂排出ガスの冷却のみでは、高炉の炉頂排出ガス中のシアンに起因する、シアンを含む湿式集塵の集塵水の処理を十分に行うことができなかった。
【0008】
本発明の目的は、上記の問題点を解決し、高炉の減尺操業時においてシアンを含む高炉の炉頂排出ガスを処理する際でも、高炉の炉頂排出ガスの処理を行うことができ、高炉の減尺操業を適正に行うことができる、高炉の炉頂排出ガス処理方法及び高炉付帯設備を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の高炉の炉頂排出ガス処理方法は、前述の課題を解決すべく開発されたものであり、高炉の原料充填層表面の高さを朝顔部上端の高さよりも減じる減尺操業時における高炉の炉頂排出ガス処理方法であって、高炉の炉頂排出ガスを、湿式集塵機で冷却および集塵し、前記湿式集塵機の集塵水を、凝集沈殿処理に付してダスト成分を除去するとともに冷却した後に、再度、前記湿式集塵機に供給して循環させることを特徴とする、高炉の炉頂排出ガス処理方法である。
【0010】
なお、前記のように構成される本発明に係る高炉の炉頂排出ガス処理方法においては、
(1)前記湿式集塵機の集塵水を、所定の温度以下まで冷却後に凝集沈殿処理に付し、凝集沈殿処理後の処理水を、所定の温度以下まで冷却後に、再度、前記湿式集塵機に供給して循環させること、
(2)前記湿式集塵機の集塵水を、熱交換器を用いて所定の温度以下まで冷却し、前記凝集沈殿処理後の処理水を、冷却塔を用いて所定の温度以下まで冷却すること、
(3)前記熱交換器を有する冷却配管が、予備の熱交換器を有する冷却配管に切り替え可能であり、かつ、前記熱交換器を有する冷却配管において、熱交換器の出側から入側へと洗浄水を流して洗浄可能であること、
(4)前記冷却後の集塵水を凝集沈殿処理に付する際、シアン処理のための薬剤を投与すること、
がより好ましい解決手段となるものと考えられる。
【0011】
また、本発明の高炉付帯設備は、高炉の原料充填層表面の高さを朝顔部上端の高さよりも減じる減尺操業時に用いる高炉付帯設備であって、高炉の炉頂排出ガスを冷却して集塵水とする湿式集塵機と、前記湿式集塵機の集塵水を、所定の温度以下まで冷却する設備と、前記集塵水を凝集沈殿処理に付してダスト成分を除去した後に、前記処理水を所定の温度以下まで冷却する設備とを有し、前記湿式集塵機の集塵水を再度前記湿式集塵機に供給して循環させることを特徴とする、高炉付帯設備である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の高炉の炉頂排出ガス処理方法及び高炉付帯設備によれば、高炉の減尺操業において、高炉の炉頂排出ガスの処理が適正に行われるため、設備トラブルを防止し、かつ環境トラブルを発生させずに、高炉原料レベルを目的レベルまで下げることができる。
【0013】
また、好適例として、熱交換器を有する冷却配管が、予備の熱交換器を有する冷却配管に切り替え可能であり、かつ、熱交換器を有する冷却配管において、熱交換器の出側から入側へと洗浄水を流して洗浄可能とする逆洗機構を設けることができる。高炉集塵水は10g/L程度のダストを含んでおり熱交換器の閉塞を引き起こすが、本逆洗機構により減尺期間中に熱交換器が使用不能となる事を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の高炉の炉頂排出ガス処理方法を実施する高炉付帯設備の一実施形態を説明するための模式図である。
【
図2】本発明の高炉付帯設備において、通常の熱交換器を使用する場合の通水経路を示す図である。
【
図3】本発明の高炉付帯設備において、予備の熱交換器を使用する場合の通水経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0016】
<本発明の高炉の炉頂排出ガス処理方法を実施する高炉付帯設備の一実施形態について>
図1は、本発明の高炉の炉頂排出ガス処理方法を実施する高炉付帯設備の一実施形態を説明するための模式図である。
図1に示す実施形態において、高炉1の炉頂排出ガス(Bガス)は、ダストキャッチャー2(DC)により集塵された後、ベンチュリースクラッバー(VS)などの湿式集塵機3で冷却及び集塵される。湿式集塵機3で冷却及び集塵された炉頂排出ガスは、セプタム弁4(SV)および高圧用電気集塵機(EP)などの乾式集塵装置5を経由して、図示しないガスホルダーに貯蔵される。また、炉頂圧タービン6(TRT)に湿式集塵機3で冷却及び集塵された炉頂排出ガスを供給することで、エネルギー回収効率の向上を図っている。上述した構成は、従来から高炉炉頂ガスエネルギー回収方法として知られている構成と同じである。
【0017】
高炉の減尺操業時における高炉の炉頂排出ガス処理方法及び高炉付帯設備に関する本発明の特徴は、高炉1の炉頂排出ガス(Bガス)を、湿式集塵機3で冷却および集塵し、湿式集塵機3の集塵水W1を、凝集沈殿処理設備11による凝集沈殿処理に付してダスト成分を除去するとともに冷却した後に、再度湿式集塵機3に冷却水CWとして供給して循環させる点にある。
【0018】
本発明の高炉の炉頂排出ガス処理方法及び高炉付帯設備においては、シアンを含む集塵水W1を凝集沈殿処理してダスト成分を除去するとともに冷却して冷却水CWとすることができれば、凝集沈殿処理設備11の構成はどのような構成でもよい。このように構成した本発明によれば、高炉の減尺操業時において、シアンを含む高炉の炉頂排出ガスに起因するシアンを含む湿式集塵の集塵水を処理する際でも、シアンを含む湿式集塵の集塵水の処理を行うことができ、高炉の減尺操業を適正に行うことができる。
【0019】
ここでは、そのための構成として、
図1の実施形態に示すように、凝集沈殿処理設備11では、湿式集塵機3の集塵水W1を、熱交換器12で所定の温度以下まで冷却し、所定の温度以下まで冷却された集塵水W2を汚水ピット13に貯留する。次に、汚水ピット13に貯留された集塵水W2を汚水ポンプ14でトラフ15に供給するとともに、CN処理設備17からシアン処理のための薬液をトラフ15に供給する。次に、トラフ15を介して供給されたシアン処理した集塵水W3を、シックナー等のダストをスラリー状に沈殿させて分離する凝集沈殿設備16に供給して、沈殿分離する。次に、沈殿分離設備16によりダストを除去した集塵水W4を冷却塔18により冷却して、冷却した集塵水W5を処水池19に貯留する。次に、処水池19に貯留した集塵水W5を、処理水ポンプ20により冷却水CWとして湿式集塵機3に供給して循環させている。冷却した集塵水W5を処水池19に円滑に貯留するため、冷却塔18の近くに冷水池(図示せず)を設置し、冷水池を経由してから集塵水W5を処水池19に貯留させてもよい。
【0020】
<本発明の炉頂排出ガス処理方法の好適な操業条件について>
ガスホルダーに高炉炉頂ガスを貯蔵する場合は、配管保護の観点から、EP5の出側の温度が60℃を超過しないことが望ましい。この点、高炉の原料充填層表面の高さを朝顔部上端の高さよりも減じる減尺操業においては、炉内ガスが装入原料により十分に冷却されず、高炉炉頂ガス温度が高温となるため、高炉炉頂ガスの冷却が必要となる。高炉炉頂ガスの冷却には、高炉炉頂からの散水を実施して、高炉炉頂ガス温度を350℃(望ましくは330℃)以下に低下させるのが望ましい。
【0021】
VSなどの湿式集塵機3により発生する集塵水W1については、シックナー等のダストをスラリー状に凝縮沈殿させる凝集沈殿設備16を経由して、冷却水CWとして再度湿式集塵機3に供給される。集塵水W1を湿式集塵機3へ循環利用する場合の集塵水W1の一時的な貯蔵設備として、上述のシックナー等の凝集沈殿設備16の上流と下流に、汚水ピット13と処水池19をそれぞれ設けることが望ましい。
【0022】
減尺操業において、湿式集塵機3に循環供給する冷却水CWの水温は、40℃(望ましくは30℃)以下であることが望ましい。循環供給する冷却水CWの水温が40℃を超過すると、EP5の出側の温度が60℃を超過し、EP5と高炉1の炉頂排出ガスを貯蔵するガスホルダーとを連結する配管のエキスパンションが破損する恐れがある。また、湿式集塵機3への冷却水CWの循環供給水量が高い方が高炉1の炉頂排出ガスの冷却効果は高まるが、湿式集塵機3からの集塵水W1の排出速度によって律速される。湿式集塵機3への冷却水CWの循環供給水量は700t/hr以上であることが望ましい。
【0023】
湿式集塵機3に循環供給する冷却水CWの水温を40℃以下とするには、例えば、シックナー等の凝縮沈殿設備16の下流に設けられた処水池19の水温を40℃以下とする必要がある。処水池19の水温を低下させるために、シックナー等の凝縮沈殿設備16と処水池19の中間に、冷却塔18を設置することが望ましい。冷却塔18の代わりに熱交換器を設置して、処水池19の水温を低下させてもよい。処水池19に新たに冷却水を供給して水温を下げようとすると、循環水量が増えるため、汚水ピット13、処水池19またはシックナー等の凝縮沈殿設備16から処理水が溢れ出してしまう。
【0024】
シックナー等の凝集沈殿設備16の上流に設けられた汚水ピット13の集塵水W2の水温は、65℃(望ましくは60℃)以下であることが望ましい。汚水ピット13の集塵水W2の水温が65℃を超過すると、シックナー等の凝縮沈殿設備16と処水池19との中間に冷却塔18を設置したとしても、処水池19の集塵水W5の水温が40℃を超過してしまう。このため、湿式集塵機3に供給する冷却水CWの水温が40℃を超過し、EP5の出側の温度が65℃を超過するので、EP5と高炉1の炉頂排出ガスを貯蔵するガスホルダーとを連結する配管のエキスパンションが破損する恐れがある。
【0025】
シックナー等の凝集沈殿設備16の上流に設けられた汚水ピット13の水温を、65℃以下とするには、VSなどの湿式集塵機3の集塵水W1を、例えばプレート式の熱交換器12により冷却する。湿式集塵機3の集塵水W1を含む配管と、例えば、高炉1の羽口やステーブ、炉底を冷却する冷却水(間接水)を含む配管とを、熱交換器12を介して接触させることで、湿式集塵機3の集塵水W1の温度を65℃以下に低減させる。
【0026】
湿式集塵機3の集塵水W1はダストを含んでいるために、熱交換器12により冷却しようとすると、配管の詰まりが頻発する。高炉集塵水中のダスト濃度は6~10g/L程度の範囲である。そこで、
図2に示すように、熱交換器12を第1の熱交換器12-1と第2の熱交換器12-2とから構成し、第1の熱交換器12-1を有する配管は、予備の第2の熱交換器12-2を有する配管と切り替え可能な構造となっていることが望ましい。第1の熱交換器12-1の前後の差圧を測定し、差圧が基準値以上となった場合に、第1の熱交換器12-1を有する配管から、予備の第2の熱交換器12-2を有する配管へと切り替えを行う。第1の熱交換器12-1の使用期間に上限を設けて、第1の熱交換器12-1を有する配管から、予備の第2の熱交換器12-2を有する配管へと切り替えを行ってもよい。
【0027】
さらに、
図3に示すように、通常使用する第1の熱交換器12-1を有する配管から、予備の第2の熱交換器12-2を有する配管に切り替えた場合は、第1の熱交換器12-1の逆洗を行うことが好ましい。具体的には、通常使用する第1の熱交換器12-1の下流側から上流側へと洗浄水を導入し、熱交換器部分の配管の詰まりを解消できるような構造を有していることが望ましい。
【0028】
汚水ピット13からシックナー等の凝縮沈殿設備16へは、汚水ポンプ14を用いてトラフ15を介して集塵水W2が供給される。上述のトラフ15に、シアンを処理する薬剤をCN処理設備17から投入してもよい。薬剤によるシアン処理の方法については、例えば特開2013-56328号公報に開示されているシアン含有水の処理方法を用いることができる。なお、本発明において薬剤によるシアン処理は、必須の構成ではなく好ましい実施形態である。本発明におけるシアン処理は、湿式集塵機3の集塵水W1を、冷却およびダスト処理したのち、冷却水CWとして再度湿式集塵機3に循環させることで系外に出さないことにより達成している。
【実施例0029】
内容積5000m3の高炉において、長期間の休風準備のために、原料装入レベルを通常より低下させる減尺操業を行った。減尺操業中は、高炉の炉頂排出ガスをVS(湿式集塵機)により冷却及び集塵し、VSの集塵水を、熱交換器を用いて55℃まで冷却した後に汚水ピットに貯蔵した。VSの冷却水量は800t/hrとした。汚水ピットから集塵水をポンプによりくみ上げ、トラフを経由してシックナーに導入し、ダストをスラリー状にして除去した。沈殿凝集後のシックナーの上澄み液をポンプによりくみ上げ、冷却塔を用いて冷却した後、冷水池を経由させた後に処水池に貯留した。処水池の水温は30℃であった。処水池から液体をポンプで吸い上げ、VSの冷却水として使用した。集塵後の汚水シアン濃度は、シアン化合物の水質汚濁防止法規制値1ppm、協定規制値0.3ppmに対し、400ppmまで上昇した。上述の結果、羽口直上の炉内の原料充填層の上面高さを高炉朝顔部上端より1m下まで減尺して休風を行うことができた。