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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045036
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】腐食損傷推定
(51)【国際特許分類】
   G06N 20/00 20190101AFI20240326BHJP
   G01N 33/2045 20190101ALI20240326BHJP
   G06F 18/27 20230101ALI20240326BHJP
【FI】
G06N20/00
G01N33/2045 100
G06F18/27
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023147299
(22)【出願日】2023-09-12
(31)【優先権主張番号】17/943,632
(32)【優先日】2022-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン, リチャード ジョエル
(72)【発明者】
【氏名】スミス, タイラー ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】グエン, ナム ホアン
(72)【発明者】
【氏名】ラスロップ, ジェーソン ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ, クリステン スミス
(72)【発明者】
【氏名】ホアン, シェン リン
(72)【発明者】
【氏名】バーウィック, ウィルバー ハリソン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】材料の腐食を推定する方法を提供する。
【解決手段】方法は、複数のデータポイントを含む腐食データを取得することと、データポイント及び遠隔ソースから取得された追加のデータに基づいて追加のデータポイントを生成することと、データポイント及び追加のデータポイントを訓練されたデータモデルへ統合することと、環境パラメータの入力を受信することと、環境パラメータに最も近い訓練されたデータモデルからのデータポイントのセットを決定することと、訓練されたデータモデルからのデータポイントのセットに基づいて材料の腐食推定を判断することと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料の腐食を推定する方法であって、
複数のデータポイントを含む腐食データを取得することと、
前記データポイント、及び1つ又は複数の遠隔ソース(52)から取得された追加のデータに基づいて、追加のデータポイントを生成することと、
前記データポイント及び前記追加のデータポイントを訓練されたデータモデル(35)へ統合することと、
1つ又は複数の環境パラメータの入力(40)を受信することと、
前記1つ又は複数の環境パラメータに最も近い前記訓練されたデータモデル(35)からの前記データポイントのセットを決定することと、
前記訓練されたデータモデル(35)からの前記データポイントのセットに基づいて、前記材料の腐食推定を判断することと
を含む方法。
【請求項2】
k近傍法(KNN)非線形回帰を適用することと、前記1つ又は複数の環境パラメータに最も近い前記訓練されたデータモデル(35)からの前記データポイントのセットを決定することとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記訓練されたデータモデルをフィルタリングすることと、前記KNN非線形回帰を適用する前に前記1つ又は複数の環境パラメータに関連しない前記データポイントを除去することとをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
フィルタリングされた前記データポイント間の距離を標準化することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
標準化された前記距離に基づいて、前記腐食推定の信頼レベルを判断することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
腐食質量損失率、腐食電流密度、及び腐食度合のうちの1つ又は複数を決定することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記追加のデータポイントを生成することが、
前記データポイントのうちの1つを選択することと、
前記データポイントが集められたときの日付、時間、及び地理的位置における1つ又は複数の環境条件を取得することと、
前記データポイント及び前記1つ又は複数の環境条件を補間し、前記追加のデータポイントを生成することと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記データポイントが、センサデータ及び観測データを含み、前記センサデータのみを使用して前記追加のデータポイントを生成することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
腐食データを取得することが、前記データポイントのパラメータを受信し、前記データポイントを前記材料及び腐食タイプによってフィルタリングすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記訓練されたデータモデルの分析に基づいて、追加の環境パラメータを決定することをさらに含み、前記追加の環境パラメータが、受信した前記環境パラメータとは異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
材料の腐食を推定する方法であって、
測定データ及び観測データを含むデータポイントを含む腐食データを受信することと、
前記腐食データ、及び前記腐食データが観測されたときの日付及び時間からの環境条件に基づいて、追加のデータポイントを決定することと、
前記腐食データ及び前記追加のデータを訓練されたデータモデルへ統合することと、
ユーザデバイスから1つ又は複数の環境パラメータを受信することと、
前記訓練されたデータモデルをフィルタリングして、前記1つ又は複数の環境パラメータに関連しない前記データポイントを除去することによって、残りのデータポイントを生成することと、
前記残りのデータポイントと前記1つ又は複数の環境パラメータとの間の距離を判断することと、
前記1つ又は複数の環境パラメータに最も近い前記残りのデータポイントの一群を選択することと、
前記残りのデータポイントの一群に基づいて、腐食推定を判断することと、
前記ユーザデバイスへ出力表示を送信することと
を含む方法。
【請求項12】
KNN非線形回帰を適用することと、前記残りのデータポイントと前記1つ又は複数の環境パラメータとの間の距離を判断することとをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記残りのデータポイント間の距離を標準化することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記標準化された距離に基づいて、前記腐食推定の信頼レベルを判断することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
腐食質量損失率を判断することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記追加のデータポイントを決定することが、
前記データポイントのうちの1つを選択することと、
前記腐食データが観測されたときの前記日付及び時間から前記環境条件を取得することと、
前記データポイント及び前記1つ又は複数の環境条件を補間し、前記追加のデータポイントを生成することと
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記データポイントが、センサデータ及び観測データを含み、前記センサデータのみを使用して前記追加のデータポイントを決定することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
命令が記憶された非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記命令は、コンピューティングデバイスの処理回路によって実行されると、前記コンピューティングデバイスに、
複数のデータポイントを含む腐食データを取得することと、
前記データポイント、及び1つ又は複数の遠隔ソース(52)から取得された追加のデータに基づいて、追加のデータポイントを生成することと、
前記データポイント及び前記追加のデータポイントを訓練されたデータモデル(35)へ統合することと、
1つ又は複数の環境パラメータの入力(40)を受信することと、
前記訓練されたデータモデルをフィルタリングし、前記1つ又は複数の環境パラメータに関連しない前記データポイントを除去することと、
KNN非線形回帰を適用して、前記1つ又は複数の環境パラメータに最も近いフィルタリングされた前記訓練されたデータモデル(35)からの前記データポイントのセットを決定することと、
前記訓練されたデータモデル(35)からの前記データポイントのセットに基づいて、前記材料の腐食推定を判断することと
を実行させるように構成されている、非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項19】
前記命令が前記コンピューティングデバイスの前記処理回路によって実行されると、前記コンピューティングデバイスが、前記1つ又は複数の環境パラメータに関連する前記データポイントを均等に重み付けするように、前記フィルタリングされたデータポイントを標準化するようにさらに構成されている、請求項18に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項20】
前記命令が前記コンピューティングデバイスの前記処理回路によって実行されると、前記コンピューティングデバイスが、前記標準化された距離に基づいて、前記腐食推定の信頼レベルを判断するようにさらに構成されている、請求項19に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、腐食推定の分野に関連し、より具体的には、腐食損傷を推定するための非線形回帰ツールに関連する。
【背景技術】
【0002】
腐食は、ビークルの全体的な寿命及びメンテナンススケジュールを判断する主要因である。腐食には数々の異なる種類があり、それには、ガルバニック腐食、すきま腐食、侵食腐食、及び糸状腐食が含まれるが、これらに限定されない。ガルバニック腐食は、2つの異なる材料が互いに接触するように置かれ、この2つの材料の間の差動電圧が小さな電流を駆動するときに生じる。すきま腐食は、淀んだ溶液が接触したままの金属表面に生じる。侵食は、砂やその他のデブリなどの外的力が金属表面に対して移動すると生じる。糸状腐食は、コーティングと母材(base metal)との間の相互作用である。点食は、材料に空洞ができたときに生じる。これらの各々の腐食の形態は、環状条件の影響を受ける場合がある。
【0003】
腐食の影響は、ビークルの初期設計の間に分析される。現在の分析は、設計者の専門性に大きく依存しており、ビークルの設計における過去の経験、主観的な意思決定、及び部族的知識(tribal knowledge)を利用する。残念なことに、多くの設計者が、広範囲な訓練や職業経験から得られる必要な専門性を備えていない。
【0004】
ある設計方法では、ビークルの設計が完了した後に、腐食の影響を分析する。設計が完了した後、試験を通して腐食損傷の比率や特徴が解明される。しかし、試験は費用がかかり、人手を要する。さらに、試験中に発見される問題により設計変更が必要となるが、ビークルの設計が完了した後の設計変更の実施は費用がかかる。
【0005】
試験の代わりに腐食損傷を予測するモデリングを検討する数々の努力がなされてきている。しかしながら、腐食挙動の複雑な物理特性や、測定及び比較の対象の腐食が発生するのに要する長い期間のゆえに、モデリングアプローチの能力がかなり限定されていることが多く、モデリングアプローチはあくまでも調査活動に留まっている。現在の幾つかのモデリングアプローチは、拡散プロセスに基づいており、コーティング中のベース合金及び化学物質の中の様々な成分との複雑な相互作用を捉えることはできない。他の既存のモデリングアプローチは、計算コストが非常に高い場合があり、単一の計算にかなりの資源を要する。計算モデルは、予測が困難であることで有名であり、データも不足することが多い。関連する複雑な物理的特性は、計算コストが高い第1原理モデリングを必要とし、第1原理モデリングは、たった一つの解決のために長い期間がかかる。これには大量のデータが必要となり得るが、新しいデザインの概念設計の初期段階では、かような大量のデータは利用可能ではない場合がある。経験的モデルも開発されてきたが、構築のために実質的かつ高価な試験が必要とされており、腐食損傷が生じる典型的な期間のゆえに、比較と検証にかなり長い期間がかかる場合がある。
【発明の概要】
【0006】
一態様は、材料の腐食を推定する方法を対象としている。当該方法は、複数のデータポイントを含む腐食データを取得することと、データポイント、及び1つ又は複数の遠隔ソースから取得された追加のデータに基づいて、追加のデータポイントを生成することと、データポイント及び追加のデータポイントを訓練されたデータモデルへ統合することと、1つ又は複数の環境パラメータの入力を受信することと、1つ又は複数の環境パラメータに最も近い訓練されたデータモデルからのデータポイントのセットを決定することと、訓練されたデータモデルからのデータポイントのセットに基づいて、材料の腐食推定を判断することとを含む。
【0007】
別の態様では、当該方法は、k近傍法(KNN:k-nearest neighbors)非線形回帰を適用することと、1つ又は複数の環境パラメータに最も近い訓練されたデータモデルからのデータポイントのセットを決定することとをさらに含む。
【0008】
別の態様では、訓練されたモデルをフィルタリングすることと、KNN非線形回帰を適用する前に1つ又は複数の環境パラメータに関連しないデータポイントを除去することとをさらに含む。
【0009】
別の態様では、当該方法は、フィルタリングされたデータポイント間の距離を標準化することをさらに含む。
【0010】
別の態様では、当該方法は、標準化された距離に基づいて、腐食推定の信頼レベルを判断することをさらに含む。
【0011】
別の態様では、当該方法は、腐食質量損失率、腐食電流密度、及び腐食度合のうちの1つ又は複数を決定することをさらに含む。
【0012】
別の態様では、追加のデータポイントを生成することが、データポイントのうちの1つを選択することと、データポイントが集められたときの日付、時間、及び地理的位置における1つ又は複数の環境条件を取得することと、データポイント及び1つ又は複数の環境条件を補間し、追加のデータポイントを生成することとを含む。
【0013】
別の態様では、データポイントが、センサデータ及び観測データを含み、センサデータのみを使用して追加のデータポイントを生成することを含む。
【0014】
別の態様では、腐食データを取得することが、データポイントのパラメータを受信し、データポイントを材料及び腐食タイプによってフィルタリングすることを含む。
【0015】
別の態様では、当該方法は、訓練されたデータモデルの分析に基づいて、追加の環境パラメータを決定することをさらに含み、追加の環境パラメータは、受信した環境パラメータとは異なる。
【0016】
一態様は、材料の腐食を推定する方法を対象としている。当該方法は、測定データ及び観測データを含むデータポイントを含む腐食データを受信することと、腐食データ、及び腐食データが観測されたときの日付及び時間からの環境条件に基づいて、追加のデータポイントを決定することと、腐食データ及び追加のデータを訓練されたデータモデルへ統合することと、ユーザデバイスから1つ又は複数の環境パラメータを受信することと、訓練されたデータモデルをフィルタリングして、1つ又は複数の環境パラメータに関連しないデータポイントを除去することによって、残りのデータポイントを生成することと、残りのデータポイントと1つ又は複数の環境パラメータとの間の距離を判断することと、1つ又は複数の環境パラメータに最も近い残りのデータポイントの一群を選択することと、残りのデータポイントの一群に基づいて、腐食推定を判断することと、ユーザデバイスへ出力表示を送信することとを含む。
【0017】
別の態様では、当該方法は、KNN非線形回帰を適用することと、残りのデータポイントと1つ又は複数の環境パラメータとの間の距離を判断することとをさらに含む。
【0018】
別の態様では、当該方法は、残りのデータポイント間の距離を標準化することをさらに含む。
【0019】
別の態様では、当該方法は、標準化された距離に基づいて、腐食推定の信頼レベルを判断することをさらに含む。
【0020】
別の態様では、当該方法は、腐食質量損失率を判断することをさらに含む。
【0021】
別の態様では、追加のデータポイントを決定することが、データポイントのうちの1つを選択することと、腐食データが観測されたときの日付及び時間から環境条件を取得することと、データポイント及び1つ又は複数の環境条件を補間し、追加のデータポイントを生成することとを含む。
【0022】
別の態様では、データポイントが、センサデータ及び観測データを含み、センサデータのみを使用して追加のデータポイントを決定することを含む。
【0023】
一態様は、命令が記憶された非一時的コンピュータ可読媒体を対象としており、前記命令は、コンピューティングデバイスの処理回路によって実行されると、コンピューティングデバイスに、複数のデータポイントを含む腐食データを取得することと、データポイント、及び1つ又は複数の遠隔ソースから取得された追加のデータに基づいて、追加のデータポイントを生成することと、データポイント及び追加のデータポイントを訓練されたデータモデルへ統合することと、1つ又は複数の環境パラメータの入力を受信することと、訓練されたデータモデルをフィルタリングし、1つ又は複数の環境パラメータに関連しないデータポイントを除去することと、KNN非線形回帰を適用して、1つ又は複数の環境パラメータに最も近いフィルタリングされた訓練されたデータモデルからのデータポイントのセットを決定することと、訓練されたデータモデルからのデータポイントのセットに基づいて、材料の腐食推定を判断することとを実行させるように構成されている、非一時的コンピュータ可読媒体。
【0024】
別の態様では、コンピューティングデバイスは、1つ又は複数の環境パラメータに関連するデータポイントを均等に重み付けするように、フィルタリングされたデータポイントを標準化するようにさらに構成されている。
【0025】
別の態様では、コンピューティングデバイスは、標準化された距離に基づいて、腐食推定の信頼レベルを判断するようにさらに構成されている。
【0026】
上述の特徴、機能、及び利点は、様々な態様において単独で実現することができ、又は、さらに別の態様において組み合わせることができるが、これらのさらなる詳細は、以下の説明及び添付図面を参照することによって確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】材料の腐食を推定する方法のフロー図である。
図2】データを取得する方法のフロー図である。
図3】種々のソースからデータを集めるパイプラインの概略図である。
図4】訓練されたデータモデルを生成する方法のフロー図である。
図5】腐食推定を判断する方法のフロー図である。
図6】ユーザが1つ又は複数のパラメータを入力するための入力ディスプレイのグラフィックユーザインターフェースである。
図7】ユーザへパラメータを表示するための出力ディスプレイのグラフィッカルユーザインターフェースである。
図8】コンピューティングデバイスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、腐食を推定する方法の概要を示す。当該方法は、腐食に関するデータを取得することを含む(ブロック100)。データは、様々なソースから取得される。様々なソースは、例えば、センサ及び観測データであるが、これらに限定されない。次いで、データが訓練され、より完全なデータセットが提供される(ブロック102)。次いで、訓練されたデータを使用して、所与の状況について予期される腐食量を推定する(ブロック104)。
【0029】
腐食推定は、材料上の1つ又は複数のパラメータの期待される効果に適用される。 一実施例では、材料は金属のみを含む。別の実施例では、材料は、母材及び仕上げ材を含む。別の実施例では、材料は、母材、仕上げ材、及びリベットなどの取り付けインターフェースを含む。
【0030】
図2は、データを取得するためのステップの一実施例を示す。データは、1つ又は複数のソースから受信したデータポイントを含む(ブロック110)。ソースは、センサデータ及び観測データを含むが、これらに限定されない。特定の実施例には、露出した腐食部位からのセンサ測定値、屋外露出やチャンバ試験からの測定値、及び/又は退役航空機や運航中航空機からの観測値、並びに利用可能となった様々な新しい他のデータソースが含まれる。データを供給可能なセンサの特定の実施例には、腐食率と周囲の環境パラメータを測定する、ルナ・イノベーションズL2SAセンサ及びルナ・イノベーションズAcuityセンサが含まれるが、これらに限定されない。
【0031】
集められたデータポイントはフィルタリングされて、損傷したデータが除去される(ブロック112)。フィルタリングは、データ品質、データに悪影響を及ぼし得る試験中の条件、並びにセンサ及び/又は観測機器に対する計算チェックを含むが、これらに限定されない様々な要因に基づき得る。フィルタリングは、損傷したデータを除去して、残りのデータの精度を確実なものとする。
【0032】
当該方法は、データを受け入れるか否かをさらに決定する(ブロック114)。この受け入れにより、データが既に訓練されたか、又は、腐食を推定する際に十分な程度の精度をもたらす、所与のパラメータのためのデータが既に十分にあるかについて、分析が行われる。データが受け入れられると、データが記憶され、腐食推定のために使用される(ブロック116)。受け入れられない場合、データが廃棄される(ブロック118)。
【0033】
図2は、種々のソースからのデータが単一のデータパイプラインに含まれ、単一のデータセットとして共に記憶されている方法を含む。他の方法は、ソースに基づいてデータを分離し得る。図3は、種々のソース(例えば、露出した腐食タイプ、チャンバ腐食タイプ、航空機上の腐食タイプ)からそれぞれデータを集める、種々のデータパイプライン20a、20b...20nを概略的に示す。様々なパイプライン20からのデータの他の例には、試験所で実施されたキャビネット試験からのデータ、屋外露出試験からのデータ、化学成分データ、データベース又はモデルソース内に記憶された物理的材料属性データが含まれる。各パイプラインは、図2に示すように分析され、腐食判断プロセスに使用されるデータセット25a、25b等として個々に記憶される。
【0034】
データは、様々なタイミング周波数として取得され得る。一実施例では、データが継続的に集められ、記憶される。次いで、記憶されたデータは、周期的に破棄され、分析のために使用される。別の実施例では、必要に応じてデータが取得される。
【0035】
データが取得され、次いで、1つ又は複数のデータセット25内に記憶された後、データが訓練される。図4には、訓練プロセスの一実施例が示される。訓練プロセスは、1つ又は複数のデータパイプライン20からの1つ又は複数のデータセット25を消費し、補間された形態のデータを、推定プロセスによって連続的に使用される単一の訓練されたデータモデル35へ集約する。図4に示された実施例では、訓練プロセスは、データセット25の分類的な性質に基づいて異なる。本実施例では、露出した部位からのセンサ測定値のデータセット25b、及びチャンバ/航空機に関するデータのデータセット25bを含む、2つの主要なソースからのデータセット25が使用される。
【0036】
センサデータセット25aについては、適切な日時範囲及び地理的位置が、データに関連付けられる(ブロック202)。一実施例では、追加のデータは、データが集められたときの時間及位置からの天気データである。追加のデータの他の実施例は、種々のデータベース又はモデルソースからの化学成分データ、種濃度データ、物理的材料属性データを含むが、これらに限定されない。追加のデータは、1つ又は複数のデータソース52から集められる(ブロック204)。遠隔ソース52は、ネットワーク(例えば、インターネット)、種々のデータベース、及び種々のモデルソースを通して利用可能なサイトを含む様々なデータソースを含み得るが、これらに限定されない。気象用の遠隔ソース52の例には、米国海洋大気庁(NOAA)、Integrated Surface Database(ISD)、Meteorological Assimilation Data Ingest System(MADIS)、PRISM、並びに同一の日付及び時間の関連気象データを検索するための数々の他の外部又は内部ソースを含むが、これらに限定されない。データソース52は、海域への近接度及び浸食暴露に基づいて、他の気象条件、汚染度、塩曝露などの追加の環境条件をさらに提供することができる。
【0037】
追加のデータを補間するために、補間ステップが実行される(ブロック206)。補間により、推定されたセットの追加のデータが生成される。気象ソースの使用例としては、これは、データポイントの測定と同一の日付/時間における推定を判断するように、同一の時間に近い時点で測定された気象測定から時間的に補間することを含む。追加的に又は代替的に、これには地理的補間が含まれる。
【0038】
一実施例では、補間ステップは、熱力学的又は物理的計算で補完される。一実施例は、 既知の表面接地温度に基づいて、航空機に関連する外部温度を決定することを含む。
【0039】
プロセスは、見つからない又は補完的なパラメータを生成する(ブロック208)。一実施例では、熱力学的、化学的、若しくは物理的計算、又は実験的テーブル若しくはデータは、対象の追加の環境パラメータを決定するために使用される。一実施例は、相対的な湿度、温度、及び圧力からの測定点における絶対湿度の計算を含む。別の実施例では、追加のパラメータは、物理的モデルを使用して決定される。
【0040】
観測データセット25bの訓練は、センサデータセット25aの訓練とは異なる。この種のデータの訓練が異なるのは、追加のデータに測定値を相関させるためのさらなる利用可能なソース52がもはや存在しないからである。データソース52を使用する代わりに、プロセスは、熱力学的又は物理的計算を介して補完的値を計算する(ブロック212)。
【0041】
種々のデータセット25a、25bについて追加のデータが決定された後、データは、訓練されたデータモデル35として共通ファイル又はデータベースに共に集約される(ブロック214)。訓練されたデータモデル35は、後続の処理を問い合わせることを可能にするフォーマットであり得る。
【0042】
図4は、種々の態様で訓練された種々のデータセット25を有する実施例を含む。別の実施例では、種々のデータセット25が同じように扱われる。これは、追加のパラメータを計算するための、追加のデータに基づいた補間、又は計算に基づいた追加のパラメータの計算を含み得る。別の実施例では、データセット25のうちの1つ又は複数に対して補間が行われない。
【0043】
別の実施例では、データの追加のソースが訓練のために含まれる。プロセスは、各ソースで似ており、新しいソースの受け入れ/拒否/フィルタリング/記憶を含むためにデータパイプラインが拡張され、訓練プロセスは、新しいソースを集約するために拡張され、場合によっては、補間値を追加し、かつ/又は追加の内部/外部ソースを問い合わせて、追加の補間されたデータを集約された形態に相関させる。追加の処理プロセスが、腐食損傷の写真観測のための画像分析などの訓練において必要とされ得る。
【0044】
いったん訓練プロセスが完了すると、訓練されたデータモデル35が、推定プロセスのためのデータソースを提供する。推定プロセスは、腐食に関する1つ又は複数のパラメータのユーザ入力40を含む。ユーザ入力40の例には、材料パラメータ(例えば、基板、仕上げ材)、環境パラメータ(例えば、温度、相対湿度)、腐食タイプ(例えば、ガルバニック腐食、点食、糸状腐食)、及び試験部位パラメータ(露出した部位、機内部位、チャンバ)が含まれるが、これらに限定されない。ユーザ入力40の数及び種類は変動し得る。図5は、3つの異なる種類のユーザ入力40、すなわち、材料パラメータ40a、環境パラメータ40b、及び腐食タイプ40cを有する実施例を含む。一実施例では、材料パラメータ40aは、母材、仕上げ材、及び取り付けインターフェイス(例えば、リベット)のうちの1つ又は複数を含む。
【0045】
ブロック104の推定プロセスは、数々の異なるアプローチのいずれかを用いて行われてもよい。数々の異なるアプローチには、k近傍法(KNN)などの学習方法、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)などのニューラルネットワークや特殊ニューラルネットワーク、若しくは統計的回帰モデル、ベイズ推定統計モデル、クリギングモデルを含む統計的アプローチ、又は他のアプローチが含まれるが、これらに限定されない。ブロック102の推定プロセスのかような実施の一事象が、図5に示されており、ここではk近傍法(KNN)アプローチが使用されている。
【0046】
図5に示すように、訓練されたデータモデル35からのデータポイントは、分析のために使用される(ブロック300)。データポイントがフィルタリングされて、ユーザ入力40におけるパラメータに適用可能ではないデータが除去される(ブロック302)。一実施例では、フィルタリングは、ユーザ入力40のうちの1つ又は複数に対して行われる。フィルタリングパラメータは、材料、表面処理、表面仕上げ、及び腐食タイプを含むが、これらに限定されない。一実施例では、フィルタリングは、材料パラメータ40a及び腐食タイプ40cに適用される。フィルタリングは、様々なユーザ入力に対して行われうることを理解されよう。
【0047】
フィルタリングの後、ユーザ入力40とデータポイントとの間の距離が測定され、標準化される(ブロック304)。距離を標準化することにより、ユーザ入力40のそれぞれに対して等しい重み付けがもたらされる(ブロック304)。一実施例では、特定の予測因子においてより高い信頼性が知られている場合、1つ又は複数の追加の重み付けスキームが適用される。距離を初期化することにより、距離のベースラインが設定される(ブロック306)。
【0048】
本実施例では、他のユーザ入力40a、40cのフィルタリングの後に、環境パラメータ 40bが分析される(ブロック310)。環境パラメータ40bについては、パラメータが個々に選択され(ブロック312)、ポイントについてポイント距離が計算され(ブロック314)、及びそれぞれの距離が分別される(ブロック316)。一旦パラメータが分析されると、最も近い点が決定され、かつ重み付けされる(ブロック320)。一実施例では、距離は、計算され、昇順で分別される。一実施例では、昇順の第1のk点が選択される。選択された距離に基づいて、1つ又は複数の統計値が計算される(ブロック322)。実施例は、例えば、平均値、中央値、逆線形重み付け平均値(inverse-linear weighted average)などの統計的値、又は所望の腐食率や対象の特徴を計算するために適用される他のアプローチを含む。腐食推定が出力される(ブロック324)。
【0049】
一実施例では、特徴は、画像を含む。プロセスは、所望の特徴を判断又は予測するための画像分析の追加ステップを含む。最終的な予測率又は特徴は、次いでユーザに発行される。一実施例では、対象の画像特徴は、予測された腐食領域、幾何学的特徴の周囲又は表面にわたる領域の形状、表面にわたる腐食の激しさ、裂け目及び/又は亀裂形成などの様々な特徴の存在/不在/量、並びに表面にわたる任意の損傷の幾何学的分配を含む。画像特徴は、リベット、ボルト、穴、型抜き部分、クーポン、シーム、溶接接合部、スプリット、接合部、又は結合部などの幾何学的部分又は構成要素を含む表面をさらに含み得る。
【0050】
図6は、ユーザ装置70のために構成された入力ディスプレイ75の実施例を示す。入力ディスプレイ75は、ユーザがユーザ入力40を入力することを可能にする。本実施例では、ユーザは、環境のタイプ及び任意の既知の環境パラメータを特定する。図6は、概して、「X」を入力としたユーザ入力を示す。一実施例では、1つ又は複数の材料パラメータ40がユーザによってさらに入力される。既知のパラメータは、ブランクのままにされる。推定プロセスは、次いで、結果的な腐食率を計算し、入力ディスプレイ75をユーザ装置70へ送信する。図7は、概して「Y」として示される計算値を有する実施例を示す。出力ディスプレイ76は、入力ディスプレイ75に対応し、生成された腐食推定77及び環境パラメータ78を含む。一実施例では、腐食推定は、腐食質量損失率及び腐食電流密度のうちの1つ又は複数である。一実施例では、出力は、腐食質量、腐食領域、及びピット深さのうちの1つ又は複数を含む腐食度を含む。出力ディスプレイ76は、見つけられた標準化距離の長さから計算された信頼値79をさらに含む。信頼値79は、腐食推定77の期待される精度の統計的判断であり、データモデル35からのデータポイントの数に基づくことができる。信頼値79は、より多くの数のデータポイントに基づくときにより高くなる。一実施例では、見つけられた最も近い点から離れた標準化された距離がより短い場合、信頼値79がより高くなる。現在の方法論は、最終的な腐食推定の信頼値を上げるように、より完成された訓練されたデータモデル35を提供するため、追加のパラメータを計算することを提供する。
【0051】
一実施例では、推定方法及びシステムは、特定の環境における特定の金属又はコーティングの腐食損傷又は予期される劣化特徴を推定する非線形回帰モデルを提供することにより、従来の方法の課題を軽減する。これにより、設計プロセスのより早い段階で腐食リスクを迅速に計算し、製造開始後に問題となる設計や費用のかかる設計変更を特定かつ回避することが可能となる。
【0052】
図8は、腐食推定を実行するように構成されたコンピューティングデバイス90を示す。コンピューティングデバイス90は、様々な異なる形態を含む場合があり、それには、サーバコンピュータ、ワークステーションコンピュータ、デスクトップコンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータ、及びラップトップコンピュータが含まれるが、これらに制限されない。コンピューティングデバイス90は、例えば、メモリ回路96(例えば、ストレージデバイス)に接続された処理回路95(例えば、プロセッサユニット)のような、数々の構成要素のそれぞれのうちの1つ又は複数を含み得る。
【0053】
処理回路95は、独立型の、又は、1つ又は複数のメモリと組み合わされた、1つ又は複数のプロセッサで構成され得る。処理回路95は、概して、例えば、データ、コンピュータプログラム、及び/又は他の適切な電子情報などの情報を処理することが可能な、コンピュータハードウェアである。処理回路95は、電子回路の集合体で構成され、かかる電子回路の一部は、1つの集積回路又は複数の相互接続集積回路としてパッケージ化され得る(集積回路は、より一般的には「チップ」と称されることがある)。処理回路95は、コンピュータプログラム97を実行するように構成され得る。コンピュータプログラム97は、処理回路95に搭載された状態で記憶されてもよく、さもなければ(同じ又は別の装置の)メモリ回路96に記憶されてもよい。
【0054】
処理回路95は、特定の実装形態に応じて、数々のプロセッサ、マルチコアプロセッサ、又は他の何らかの種類のプロセッサであってもよい。さらに、処理回路95は、数々のヘテロジニアスプロセッサシステム(メインプロセッサが、1つ又は複数の二次プロセッサと共に単一のチップ上に存在している)を使用して実装され得る。別の例示的な実施例としては、処理回路95は、同じの種類の複数のプロセッサを含む対称的なマルチプロセッサシステムであってもよい。さらに別の実施例では、処理回路95は、1つ又は複数のASIC、FPGA等として具現化されてもよく、又は、それ以外の場合は1つ又は複数のASIC、FPGA等を含んでもよい。ゆえに、処理回路95は、1つ又は複数の機能を実施するためのコンピュータプログラム97を実行することが可能であり得るが、様々な実施例の処理回路95は、コンピュータプログラム97の支援がなくとも、1つ又は複数の機能を実施することが可能であり得る。いずれの場合においても、処理回路95は、本開示の例示的な実装形態に係る機能又は動作を実施するように、適切にプログラム化され得る。
【0055】
メモリ回路96は、概して、一時的かつ/又は恒久的に、例えば、データ、コンピュータプログラム(例えば、コンピュータ可読プログラムコード97)、及び/又はその他の適切な情報などの情報を記憶することが可能なコンピュータハードウェアである。メモリ回路96は、揮発性及び/又は不揮発性のメモリを含んでよく、固定型又は取り外し可能であり得る。適切なメモリ回路96の例には、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取専用メモリ(ROM)、ハードドライブ、フラッシュメモリ、サムドライブ、取り外し可能なコンピュータディスケット、光ディスク、磁気テープ、又はこれらの何らかの組み合わせが含まれる。光ディスクは、読み出し専用コンパクトディスク(CD-ROM)、読み出し/書き込みコンパクトディスク(CD-R/W)、DVD等を含み得る。様々な場合において、メモリ回路96は、コンピュータ可読記憶媒体と称され得る。コンピュータ可読記憶媒体は、情報を記憶可能な非一時的デバイス(non-transitory device)であり、ある場所から別の場所へ情報を運ぶことが可能な電子的な一時的信号といった、コンピュータ可読伝送媒体と区別され得る。本明細書に記載のコンピュータ可読媒体は、概して、コンピュータ可読記憶媒体又はコンピュータ可読伝送媒体を表わし得る。
【0056】
処理回路95は、メモリ回路96の他に、情報を表示、送信、かつ/又は受信するための1つ又は複数のインターフェース(例えば、入力及び出力ディスプレイ75、76)にさらに接続されてもよい。インターフェースには、例えば、遠隔ソース52、ユーザデバイス70、他の1つ又は複数の装置やネットワーク等との間で情報を送信及び/又は受信するように構成された通信インターフェース回路92が含まれる。通信インターフェース回路92は、物理的な(有線の)及び/又は無線の通信リンクにより情報を送信及び/又は受信するように構成され得る。適切な通信インターフェースの例には、ネットワークインタフェースコントローラ(NIC:network interface controller)、無線NIC(WNIC)等が含まれる。通信インターフェース回路92は、1つ又は複数の送信機93を有し得る。通信インターフェース回路92は、1つ又は複数の受信機94を有し得る。
【0057】
上記で示したように、プログラムコード命令97は、本明細書に記載したシステム、サブシステム、ツール、及びこれらに対応する要素の機能を実装するために、メモリ回路96に記憶され、処理回路97(プログラムコード命令によりプログラムされている)によって実行され得る。
【0058】
理解されるとおり、プログラムコード命令が、コンピュータ可読記憶媒体からコンピューティングデバイス又は他のプログラム可能装置に読み込まれ、特定のマシンが生成され得る。その結果、この特定のマシンが本明細書で特定されている機能を実装する手段となる。これらのプログラムコード命令は、コンピュータ可読記憶媒体であって、コンピュータ、処理回路、又は他のプログラム可能装置に、特定のやり方で機能するよう命令し、これにより、特定のマシン又は特定の製品を創出することが可能なコンピュータ可読記憶媒体に記憶されてもよい。コンピュータ可読記憶媒体に記憶された命令は、製造品を生成することができ、この製造品は、本明細書に記載された機能を実装するための手段となる。プログラムコード命令は、コンピュータ可読記憶媒体から読み出され、コンピュータ、処理回路、又は他のプログラム可能装置に読み込まれ得る。これにより、コンピュータ、処理回路、又は他のプログラム可能装置は、当該コンピュータ、処理回路、又は他のプログラム可能装置で又はこれらによって実施される動作を実行するように設定される。
【0059】
プログラムコード命令の読み出し、読み込み、及び実行は、一度に1つの命令が読み出され、読み込まれ、かつ実行されるように、連続的に実施され得る。幾つかの例示的な実装形態では、複数の命令がまとめて読み出され、読み込まれ、かつ/又は実行されるように、並行して読み出し、読み込み、及び/又は実行が実施されることがある。コンピュータ、処理回路、又は他のプログラム可能装置によって実行される命令が、本明細書に記載の機能を実装するための動作を提供するように、プログラムコード命令を実行することで、コンピュータにより実装されるプロセスが生じ得る。
【0060】
処理回路による命令の実行、又は、コンピュータ可読記憶媒体における命令の記憶により、特定の機能を実施するための動作の組み合わせが補助される。このように、コンピューティングデバイス90は、処理回路95、及び処理回路95に連結されたメモリ回路96を含み得る。処理回路95は、メモリ回路96内に記憶されたコンピュータ可読プログラムコード97を実行するように構成される。1つ又は複数の機能及び機能の組み合わせが、特殊用途ハードウェアベースのコンピュータシステム、及び/又は、特定の機能を実行する処理回路、又は、特殊用途ハードウェアとプログラムコード命令との組み合わせによって実装され得ることも理解されよう。
【0061】
一実施例では、当該方法は、ビークル上の材料に対する腐食推定を判断するために使用される。ビークルは、有人航空機、無人航空機、有人宇宙船、無人宇宙船、有人回転翼航空機、無人回転翼航空機、衛星、ロケット、ミサイル、有人地上ビークル、無人地上ビークル、有人水上輸送ビークル、無人水上輸送ビークル、有人水面下輸送ビークル、無人水面下輸送ビークル、及びこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。腐食推定は、様々な他の物体の腐食を判断し、様々な他の状況及び環境において使用することも可能である。
【0062】
さらに、本開示は下記の条項による実施形態を含む。
【0063】
条項1
材料の腐食を推定する方法であって、
複数のデータポイントを含む腐食データを取得することと、
前記データポイント、及び1つ又は複数の遠隔ソース52から取得された追加のデータに基づいて、追加のデータポイントを生成することと、
前記データポイント及び前記追加のデータポイントを訓練されたデータモデル35へ統合することと、
1つ又は複数の環境パラメータの入力40を受信することと、
前記1つ又は複数の環境パラメータに最も近い前記訓練されたデータモデル35からの前記データポイントのセットを決定することと、
前記訓練されたデータモデル35からの前記データポイントのセットに基づいて、前記材料の腐食推定を判断することと
を含む方法。
【0064】
条項2
k近傍法(KNN)非線形回帰を適用することと、前記1つ又は複数の環境パラメータに最も近い前記訓練されたデータモデル35からの前記データポイントのセットを決定することとをさらに含む、条項1に記載の方法。
【0065】
条項3
前記訓練されたデータモデルをフィルタリングすることと、前記KNN非線形回帰を適用する前に前記1つ又は複数の環境パラメータに関連しない前記データポイントを除去することとをさらに含む、条項2に記載の方法。
【0066】
条項4
フィルタリングされた前記データポイント間の距離を標準化することをさらに含む、条項3に記載の方法。
【0067】
条項5
前記標準化された距離に基づいて、前記腐食推定の信頼レベルを判断することをさらに含む、条項4に記載の方法。
【0068】
条項6
腐食質量損失率、腐食電流密度、及び腐食度合のうちの1つ又は複数を決定することをさらに含む、条項4に記載の方法。
【0069】
条項7
前記追加のデータポイントを生成することが、
前記データポイントのうちの1つを選択することと、
前記データポイントが集められたときの日付、時間、及び地理的位置における1つ又は複数の環境条件を取得することと、
前記データポイント及び前記1つ又は複数の環境条件を補間し、前記追加のデータポイントを生成することと
を含む、条項1に記載の方法。
【0070】
条項8
前記データポイントが、センサデータ及び観測データを含み、前記センサデータのみを使用して前記追加のデータポイントを生成することを含む、条項7に記載の方法。
【0071】
条項9
腐食データを取得することが、前記データポイントのパラメータを受信し、前記データポイントを前記材料及び腐食タイプによってフィルタリングすることを含む、条項1に記載の方法。
【0072】
条項10
前記訓練されたデータモデルの分析に基づいて、追加の環境パラメータを決定することをさらに含み、前記追加の環境パラメータが、受信した前記環境パラメータとは異なる、条項1に記載の方法。
【0073】
条項11
材料の腐食を推定する方法であって、
測定データ及び観測データを含むデータポイントを含む腐食データを受信することと、
前記腐食データ、及び前記腐食データが観測されたときの日付及び時間からの環境条件に基づいて、追加のデータポイントを決定することと、
前記腐食データ及び前記追加のデータを訓練されたデータモデルへ統合することと、
ユーザデバイスから1つ又は複数の環境パラメータを受信することと、
前記訓練されたデータモデルをフィルタリングして、前記1つ又は複数の環境パラメータに関連しない前記データポイントを除去することによって、残りのデータポイントを生成することと、
前記残りのデータポイントと前記1つ又は複数の環境パラメータとの間の距離を判断することと、
前記1つ又は複数の環境パラメータに最も近い前記残りのデータポイントの一群を選択することと、
前記残りのデータポイントの一群に基づいて、腐食推定を判断することと、
前記ユーザデバイスへ出力表示を送信することと
を含む方法。
【0074】
条項12
KNN非線形回帰を適用することと、前記残りのデータポイントと前記1つ又は複数の環境パラメータとの間の距離を判断することとをさらに含む、条項11に記載の方法。
【0075】
条項13
前記残りのデータポイント間の距離を標準化することをさらに含む、条項11に記載の方法。
【0076】
条項14
前記標準化された距離に基づいて、前記腐食推定の信頼レベルを判断することをさらに含む、条項13に記載の方法。
【0077】
条項15
腐食質量損失率を判断することをさらに含む、条項14に記載の方法。
【0078】
条項16
前記追加のデータポイントを決定することが、
前記データポイントのうちの1つを選択することと、
前記腐食データが観測されたときの前記日付及び時間から前記環境条件を取得することと、
前記データポイント及び前記1つ又は複数の環境条件を補間し、前記追加のデータポイントを生成することと
を含む、条項11に記載の方法。
【0079】
条項17
前記データポイントが、センサデータ及び観測データを含み、前記センサデータのみを使用して前記追加のデータポイントを決定することを含む、条項11に記載の方法。
【0080】
条項18
命令が記憶された非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記命令は、コンピューティングデバイスの処理回路によって実行されると、前記コンピューティングデバイスに、
複数のデータポイントを含む腐食データを取得することと、
前記データポイント、及び1つ又は複数の遠隔ソース52から取得された追加のデータに基づいて、追加のデータポイントを生成することと、
前記データポイント及び前記追加のデータポイントを訓練されたデータモデル35へ統合することと、
1つ又は複数の環境パラメータの入力40を受信することと、
前記訓練されたデータモデルをフィルタリングし、前記1つ又は複数の環境パラメータに関連しない前記データポイントを除去することと、
KNN非線形回帰を適用して、前記1つ又は複数の環境パラメータに最も近いフィルタリングされた前記訓練されたデータモデル35からの前記データポイントのセットを決定することと
前記訓練されたデータモデル35からの前記データポイントのセットに基づいて、前記材料の腐食推定を判断することと
を実行させるように構成されている、非一時的コンピュータ可読媒体。
【0081】
条項19
前記命令が前記コンピューティングデバイスの前記処理回路によって実行されると、前記コンピューティングデバイスが、前記1つ又は複数の環境パラメータに関連する前記データポイントを均等に重み付けするように、前記フィルタリングされたデータポイントを標準化するようにさらに構成されている、条項18に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【0082】
条項20
前記命令が前記コンピューティングデバイスの前記処理回路によって実行されると、前記コンピューティングデバイスが、前記標準化された距離に基づいて、前記腐食推定の信頼レベルを判断するようにさらに構成されている、請求項19に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【0083】
本発明は、本発明の本質的な特性から逸脱することなく、本明細書で具体的に説明した方法以外の方法で実施されてもよい。本実施形態は、あらゆる点で例示的であり、限定的ではないとみなされるべきであり、添付の特許請求の範囲の意味及び均等性の範囲内にあるすべての変更は、そこに含まれることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【外国語明細書】