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<図1>
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045039
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】樹脂シート
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240326BHJP
   C08L 31/04 20060101ALI20240326BHJP
   C08K 3/38 20060101ALI20240326BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240326BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240326BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L31/04 S
C08K3/38
C08K3/22
C08K3/013
C08J5/18 CER
C08J5/18 CEZ
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023148498
(22)【出願日】2023-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2022149437
(32)【優先日】2022-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023098720
(32)【優先日】2023-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100194250
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 直志
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】竹内 健
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA15X
4F071AA28X
4F071AA82
4F071AA84
4F071AA88
4F071AB18
4F071AB27
4F071AD02
4F071AD05
4F071AD06
4F071AE22
4F071AF40Y
4F071AF44
4F071AH12
4F071BA01
4F071BB03
4F071BC01
4F071BC12
4J002BF031
4J002DE077
4J002DE146
4J002DK006
4J002FA016
4J002FD016
4J002FD017
4J002GF00
4J002GQ01
(57)【要約】
【課題】放熱効果が高い新たな放熱構造を構成することが可能な新規の樹脂シートの提供。
【解決手段】樹脂シートであって、前記樹脂シートは、熱可塑性樹脂と、板状フィラーと、連結フィラーと、を含み、前記連結フィラーの平均粒子径が2μm以下である。1枚の前記樹脂シート、又は2枚以上の前記樹脂シートの積層物であり、かつ厚さがTの試験片10を用い、試験片10に対して、100℃の環境下で10分間、試験片10の厚さ方向において12kPaの圧力を加えて、前記圧力を加えている部位での試験片10の厚さTを測定したとき、下記式:
R=(T-T)/T×100
で算出される埋め込み率Rが30%以上であってもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シートであって、
前記樹脂シートは、熱可塑性樹脂と、板状フィラーと、連結フィラーと、を含み、
前記連結フィラーの平均粒子径が2μm以下である、樹脂シート。
【請求項2】
樹脂シートであって、
前記樹脂シートは、熱可塑性樹脂と、板状フィラーと、連結フィラーと、を含み、
前記連結フィラーの平均粒子径が2μm以下であり、
1枚の前記樹脂シート、又は2枚以上の前記樹脂シートの積層物であり、かつ厚さがTの試験片を用い、前記試験片に対して、100℃の環境下で10分間、前記試験片の厚さ方向において12kPaの圧力を加えて、前記圧力を加えている部位での前記試験片の厚さTを測定したとき、下記式:
R=(T-T)/T×100
で算出される埋め込み率Rが30%以上である、樹脂シート。
【請求項3】
TM0m0モード空洞共振器摂動法に準拠して測定された、周波数10GHzでの前記樹脂シートの比誘電率が、4以下である、請求項1に記載の樹脂シート。
【請求項4】
TM0m0モード空洞共振器摂動法に準拠して測定された、周波数10GHzでの前記樹脂シートの誘電正接が、0.01以下である、請求項1又は3に記載の樹脂シート。
【請求項5】
前記板状フィラーが、窒化ホウ素又は酸化アルミニウムからなる、請求項1又は3に記載の樹脂シート。
【請求項6】
前記連結フィラーが水酸化マグネシウムからなる、請求項1又は3に記載の樹脂シート。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂がエチレン-酢酸ビニル共重合体である、請求項1又は3に記載の樹脂シート。
【請求項8】
前記樹脂シートにおいて、前記板状フィラーの含有量に対する、前記連結フィラーの含有量の割合が、60~140体積%である、請求項1又は3に記載の樹脂シート。
【請求項9】
前記板状フィラーの平均粒子径が5μm以上である、請求項1又は3に記載の樹脂シート。
【請求項10】
TM0m0モード空洞共振器摂動法に準拠して測定された、周波数10GHzでの前記樹脂シートの比誘電率が、4以下である、請求項2に記載の樹脂シート。
【請求項11】
TM0m0モード空洞共振器摂動法に準拠して測定された、周波数10GHzでの前記樹脂シートの誘電正接が、0.01以下である、請求項2又は10に記載の樹脂シート。
【請求項12】
前記板状フィラーが、窒化ホウ素又は酸化アルミニウムからなる、請求項2又は10に記載の樹脂シート。
【請求項13】
前記連結フィラーが水酸化マグネシウムからなる、請求項2又は10に記載の樹脂シート。
【請求項14】
前記熱可塑性樹脂がエチレン-酢酸ビニル共重合体である、請求項2又は10に記載の樹脂シート。
【請求項15】
前記樹脂シートにおいて、前記板状フィラーの含有量に対する、前記連結フィラーの含有量の割合が、60~140体積%である、請求項2又は10に記載の樹脂シート。
【請求項16】
前記板状フィラーの平均粒子径が5μm以上である、請求項2又は10に記載の樹脂シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂シートに関する。
【背景技術】
【0002】
中央処理装置(central processing unit、本明細書においては、「CPU」と略記する)は、コンピューターを構成する代表的なデバイスの1種である。CPUの発熱量は、コンピューターの動作時に飛躍的に多くなる。これに対して、近年は、電子機器の高性能化、小型化及び軽量化に伴って、半導体パッケージの高密度実装化、LSIの高集積化、及び処理の高速化が進み、電子機器において発生する熱への対策が、極めて重要になっている。
【0003】
通常の電子機器においては、回路基板上に配置されたCPUに対して、熱界面材料(Thermal Interface Material、本明細書においては、「TIM」と略記する)を介してヒートスプレッダーが装着され、このヒートスプレッダーがヒートシンクに接触して配置されている。これにより、電子機器においては、CPUで発生した熱が、TIMを介してヒートスプレッダーに伝導され、さらにプレート状のこのヒートスプレッダーによって、その面方向に熱が伝導され、ヒートシンクを介して電子機器の外部に熱が放散される(特許文献1参照)。
【0004】
従来、CPUに対してこのような放熱構造を採用する理由は、以下のとおりである。すなわち、ヒートスプレッダーは、金属又はグラファイト等で構成され、その面方向での熱伝導率が高く、放熱性が高い反面、冷却対象物(CPU)に対する追従性を有さず、冷却対象物(CPU)に対する密着性も不十分であり、さらに絶縁性を有していない。一方で、TIMは、冷却対象物(CPU)に対して、ある程度の追従性を有し、かつ良好な密着性を有し、さらに絶縁性を有している反面、熱伝導率が不十分である。そのため、これら(ヒートスプレッダー及びTIM)を組み合わせて用い、上述の放熱構造を採用することで、これらの欠点を補完している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2018/139364号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このような従来の電子機器では、TIMを必須の構成とする限り、放熱構造が限定されてしまい、電子機器の構成も限定されてしまう。そして、TIMに代わるものとしては、絶縁性や追従性が必要であることを考慮すると、樹脂シートを用いることが適切であるが、放熱効果が高い樹脂シートはこれまで知られていない。
なお、ここまでは、CPUを例に挙げて説明したが、CPUと同様の発熱体を備えた他の機器でも、同様の問題点が生じ得る。
【0007】
本発明は、放熱効果が高い新たな放熱構造を構成することが可能な新規の樹脂シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の構成を採用する。
[1] 樹脂シートであって、前記樹脂シートは、熱可塑性樹脂と、板状フィラーと、連結フィラーと、を含み、前記連結フィラーの平均粒子径が2μm以下である、樹脂シート。
[2] 樹脂シートであって、前記樹脂シートは、熱可塑性樹脂と、板状フィラーと、連結フィラーと、を含み、前記連結フィラーの平均粒子径が2μm以下であり、1枚の前記樹脂シート、又は2枚以上の前記樹脂シートの積層物であり、かつ厚さがTの試験片を用い、前記試験片に対して、100℃の環境下で10分間、前記試験片の厚さ方向において12kPaの圧力を加えて、前記圧力を加えている部位での前記試験片の厚さTを測定したとき、下記式:
R=(T-T)/T×100
で算出される埋め込み率Rが30%以上である、樹脂シート。
【0009】
[3] TM0m0モード空洞共振器摂動法に準拠して測定された、周波数10GHzでの前記樹脂シートの比誘電率が、4以下である、[1]に記載の樹脂シート。
[4] TM0m0モード空洞共振器摂動法に準拠して測定された、周波数10GHzでの前記樹脂シートの誘電正接が、0.01以下である、[1]又は[3]に記載の樹脂シート。
【0010】
[5] 前記板状フィラーが、窒化ホウ素又は酸化アルミニウムからなる、[1]、[3]又は[4]に記載の樹脂シート。
[6] 前記連結フィラーが水酸化マグネシウムからなる、[1]及び[3]~[5]のいずれか一項に記載の樹脂シート。
[7] 前記熱可塑性樹脂がエチレン-酢酸ビニル共重合体である、[1]及び[3]~[6]のいずれか一項に記載の樹脂シート。
[8] 前記樹脂シートにおいて、前記板状フィラーの含有量に対する、前記連結フィラーの含有量の割合が、60~140体積%である、[1]及び[3]~[7]のいずれか一項に記載の樹脂シート。
[9] 前記板状フィラーの平均粒子径が5μm以上である、[1]及び[3]~[8]のいずれか一項に記載の樹脂シート。
【0011】
[10] TM0m0モード空洞共振器摂動法に準拠して測定された、周波数10GHzでの前記樹脂シートの比誘電率が、4以下である、[2]に記載の樹脂シート。
[11] TM0m0モード空洞共振器摂動法に準拠して測定された、周波数10GHzでの前記樹脂シートの誘電正接が、0.01以下である、[2]又は[10]に記載の樹脂シート。
[12] 前記板状フィラーが、窒化ホウ素又は酸化アルミニウムからなる、[2]、[10]又は[11]に記載の樹脂シート。
[13] 前記連結フィラーが水酸化マグネシウムからなる、[2]及び[10]~[12]のいずれか一項に記載の樹脂シート。
[14] 前記熱可塑性樹脂がエチレン-酢酸ビニル共重合体である、[2]及び[10]~[13]のいずれか一項に記載の樹脂シート。
[15] 前記樹脂シートにおいて、前記板状フィラーの含有量に対する、前記連結フィラーの含有量の割合が、60~140体積%である、[2]及び[10]~[14]のいずれか一項に記載の樹脂シート。
[16] 前記板状フィラーの平均粒子径が5μm以上である、[2]及び[10]~[15]のいずれか一項に記載の樹脂シート。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、放熱効果が高い新たな放熱構造を構成することが可能な新規の樹脂シートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る樹脂シートを用いた試験片の埋め込み率Rの算出方法を模式的に説明するための断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る樹脂シートの使用方法の一例を模式的に示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る樹脂シートの使用方法の他の例を模式的に示す断面図である。
図4】実施例1、比較例1~2及び試験例1において、発熱体に対する樹脂シート又は試験用樹脂シートの放熱性を確認したときの、回路基板上での抵抗器と、熱電対と、の配置位置を模式的に示す平面図である。
図5】実施例1における、発熱体に対する樹脂シートの放熱性の確認結果を示す画像データである。
図6】比較例1における、発熱体に対する樹脂シートの放熱性の確認結果を示す画像データである。
図7】比較例2における、発熱体に対する樹脂シートの放熱性の確認結果を示す画像データである。
図8】試験例1における、発熱体に対する試験用樹脂シートの放熱性の確認結果を示す画像データである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<<樹脂シート(第1の態様)>>
本発明の一実施形態に係る第1の態様の樹脂シートは、熱可塑性樹脂と、板状フィラーと、連結フィラーと、を含み、前記連結フィラーの平均粒子径が2μm以下であり、1枚の前記樹脂シート、又は2枚以上の前記樹脂シートの積層物であり、かつ厚さがTの試験片を用い、前記試験片に対して、100℃の環境下で10分間、前記試験片の厚さ方向において12kPaの圧力を加えて、前記圧力を加えている部位での前記試験片の厚さTを測定したとき、下記式:
R=(T-T)/T×100
で算出される埋め込み率Rが30%以上である。
第1の態様の樹脂シートは、前記板状フィラー及び連結フィラーを含んでいるため、その表面に対して平行な方向と、その厚さ方向と、の両方において、熱伝導率が高く、放熱性が高い。さらに、第1の態様の樹脂シートは、熱可塑性樹脂を含み、その前記埋め込み率Rが30%以上であって、加熱時の柔軟性が高い。このような特性を有する第1の態様の樹脂シートによって、CPU(central processing unit、中央処理装置)等の発熱体を覆い、好ましくは埋め込むことで、各種電子機器において、新たな放熱構造を構成可能であり、各種電子機器で発熱を抑制する高い効果が得られる。また、CPUに限定されず、CPUと同様の発熱体を備えた他の機器でも、放熱構造を構成可能であり、発熱を抑制する高い効果が得られる。
なお、本明細書においては、樹脂シートの場合に限らず、「表面に対して平行な方向」のことを「面方向」と称することがある。
【0015】
第1の態様の樹脂シートは絶縁性を有する。
【0016】
<熱可塑性樹脂>
前記樹脂シートは、前記熱可塑性樹脂を含んでいることにより、シート状の形状を保持でき、また、その適用対象物に対する追従性及び密着性を有する。
【0017】
前記熱可塑性樹脂は、前記樹脂シートに加熱時の柔軟性を付与でき、前記埋め込み率Rを達成できるものであれば、特に限定されない。
【0018】
前記樹脂シートは、例えば、前記樹脂シートを製造するための、後述する樹脂組成物を、成形(加圧加熱成形)することにより、製造できる。この場合、前記熱可塑性樹脂は、前記樹脂組成物の成形時の加熱温度(成形温度)よりも低い融点を有することが好ましい。前記熱可塑性樹脂の融点よりも高い温度で、前記樹脂組成物を成形することにより、より均一性の高い樹脂シートが得られる。
【0019】
前記熱可塑性樹脂の融点は、90℃以下であることが好ましく、例えば、80℃以下、及び70℃以下のいずれかであってもよい。前記上限値以下の融点の熱可塑性樹脂を用いることにより、より均一性の高い樹脂シートが得られる。
前記熱可塑性樹脂の融点の下限値は、特に限定されない。例えば、融点が35℃以上の熱可塑性樹脂は、より容易に入手又は製造できる。
一実施形態において、前記熱可塑性樹脂の融点は、例えば、35~90℃、35~80℃、及び35~70℃のいずれかであってもよい。ただし、これらは、熱可塑性樹脂の融点の一例である。
【0020】
前記熱可塑性樹脂のメルトフローレート(本明細書においては、「MFR」と称することがある)は、1~40g/10minであることが好ましく、例えば、5~40g/10min、及び10~40g/10minのいずれかであってもよい。熱可塑性樹脂のMFRが前記下限値以上であることで、樹脂シートの、その適用対象物に対する追従性がより高くなり、例えば、前記樹脂シートで発熱体を覆うときには、樹脂シートで容易に発熱体を覆うことができる。熱可塑性樹脂のMFRが前記上限値以下であることで、前記樹脂シートの形状をより安定して保持できる。
本明細書においては、特に断りのない限り、MFRとは、JIS K 6922-1に準拠して測定した値を意味する。
【0021】
好ましい前記熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等が挙げられる。エチレン-酢酸ビニル共重合体は、他の樹脂よりも融点が低く、その加熱時に、融点又はその近傍の温度で吸熱作用を示すため、エチレン-酢酸ビニル共重合体を含む前記樹脂シートは、その蓄熱潜熱機能によって、より高い放熱性を有する。また、エチレン-酢酸ビニル共重合体は、柔軟性、耐衝撃性及び粘着性を有しており、エチレン-酢酸ビニル共重合体を含む前記樹脂シートで発熱体を覆うときに、樹脂シートが発熱体に容易に密着する。また、エチレン-酢酸ビニル共重合体は、極性を有するため、難燃剤(例えば、水酸化マグネシウム等)との複合化が可能であり、樹脂シートに容易に難燃性を付与できる。
【0022】
前記エチレン-酢酸ビニル共重合体において、構成単位の全量(質量部)に対する、酢酸ビニルから誘導された構成単位の量(質量部)の割合(本明細書においては、「酢酸ビニル含有量」と称することがある)は、10~40質量%であることが好ましく、例えば、20~40質量%、及び30~40質量%のいずれかであってもよい。前記割合(酢酸ビニル含有量)が前記下限値以上であることで、前記樹脂シートの、その適用対象物に対する追従性及び密着性が、より高くなる。例えば、前記樹脂シートで発熱体を覆うときには、樹脂シートで容易に発熱体を覆うことができ、かつ樹脂シートが発熱体に容易に密着する。前記割合が前記上限値以下であることで、前記樹脂シートの製造時の作業性がより高くなる。
【0023】
前記樹脂シートが含む前記熱可塑性樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0024】
前記樹脂シートが含む前記熱可塑性樹脂は、本発明の効果がより顕著に得られる点で、エチレン-酢酸ビニル共重合体であることが好ましい。
【0025】
前記樹脂シートにおいて、前記樹脂シートの総質量(質量部)に対する、前記熱可塑性樹脂の含有量(質量部)の割合([樹脂シートの熱可塑性樹脂の含有量(質量部)]/[樹脂シートの総質量(質量部)]×100)は、20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、樹脂シートが熱可塑性樹脂を含んでいることにより得られる効果が、より高くなる。
前記樹脂シートにおいて、前記樹脂シートの総質量(質量部)に対する、前記熱可塑性樹脂の含有量(質量部)の割合は、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。前記割合が前記上限値以下であることで、樹脂シートが、熱可塑性樹脂以外の成分を含んでいることにより得られる効果が、より高くなる。
一実施形態において、前記割合は、例えば、20~45質量%、25~45質量%、及び30~45質量%のいずれかであってもよいし、20~40質量%、25~40質量%、及び30~40質量%のいずれかであってもよい。ただし、これらは前記割合の一例である。
前記割合は、通常、後述する樹脂組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、前記熱可塑性樹脂の含有量(質量部)の割合([樹脂組成物の熱可塑性樹脂の含有量(質量部)]/[樹脂組成物の常温で気化しない成分の総含有量(質量部)]×100)と同じである。
【0026】
本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~25℃の温度等が挙げられる。
【0027】
<板状フィラー>
前記樹脂シートは、前記板状フィラーを含んでいることにより、その放熱性が高くなる。樹脂シート中で板状フィラーは、その面方向が、樹脂シートの面方向と同じ方向、又は樹脂シートの面方向に近い方向に配向し易く、そのため特に、樹脂シートの、その面方向における熱伝導率が高くなり、その面方向における放熱性が高くなる。
例えば、板状フィラーに代えて、多面体状フィラー、カードハウス状フィラー(板状フィラーが凝集して二次粒子を形成しているフィラー)等の、板状フィラー以外のフィラーを用いた場合には、樹脂シートの、その面方向における放熱性が低くなってしまう。さらに、カードハウス状フィラーは、樹脂シートの加熱時の柔軟性を大きく低下させてしまう。
【0028】
前記板状フィラーのアスペクト比([板状フィラーの粒子径]/[板状フィラーの厚さ])は、10~50であることが好ましく、例えば、10~30、及び30~50のいずれかであってもよい。板状フィラーのアスペクト比がこのような範囲であることで、樹脂シートが板状フィラーを含んでいることにより得られる効果が、より高くなる。
【0029】
前記板状フィラーの粒子径としては、例えば、板状フィラーの外周上の異なる二点を結ぶ線分の長さの最大値を採用できる。
前記板状フィラーの厚さとしては、例えば、板状フィラーの主面間の距離の最大値を採用できる。
前記板状フィラーのアスペクト比としては、例えば、無作為に選択した50個の板状フィラーのアスペクト比の平均値を採用できる。
【0030】
前記板状フィラーの平均粒子径は、5μm以上であることが好ましく、例えば、6.5μm以上、及び8μm以上のいずれかであってもよい。板状フィラーの平均粒子径が前記下限値以上であることで、板状フィラーを用いていることにより得られる効果が、より高くなる。
板状フィラーの平均粒子径の上限値は、特に限定されない。例えば、平均粒子径が15μm以下である板状フィラーは、より容易に入手できる。
一実施形態において、板状フィラーの平均粒子径は、例えば、5~15μm、6.5~15μm、及び8~15μmのいずれかであってもよい。ただし、これらは板状フィラーの平均粒子径の一例である。
【0031】
本明細書においては、板状フィラーの場合に限らず、「平均粒子径」とは、特に断りのない限り、レーザー回折式粒度分布測定法によって、粒子の粒度分布を体積基準で測定したときの、粒子の50%累積時の粒子径(D50)を意味する。
【0032】
板状フィラーの熱伝導率は、例えば、5W/m・K以上、10W/m・K以上、25W/m・K以上、及び40W/m・K以上のいずれかであってもよい。
板状フィラーの熱伝導率の上限値は、特に限定されない。例えば、熱伝導率が400W/m・K以下である板状フィラーは、より容易に入手できる。
一実施形態において、板状フィラーの熱伝導率は、例えば、5~400W/m・K、10~400W/m・K、25~400W/m・K、及び40~400W/m・Kのいずれかであってもよい。ただし、これらは、板状フィラーの熱伝導率の一例である。
【0033】
板状フィラーに限らず、フィラーの熱伝導率は、例えば、フィラーの焼結体を作製し、レーザーフラッシュ法若しくはホットディスク法等の、公知の熱伝導率測定装置を用いて測定する方法、又は熱物性顕微鏡等を用いて測定する方法により、測定できる。
【0034】
後述する前記樹脂シートの比誘電率をより容易に低くできる点で、板状フィラーの比誘電率は、5.5以下であることが好ましく、4.5以下であることがより好ましい。
一方、板状フィラーの比誘電率の下限値は、特に限定されない。例えば、比誘電率が3.5以上の板状フィラーは、より容易に調製又は入手できる。
【0035】
前記板状フィラーの材質としては、例えば、窒化ホウ素等の金属窒化物;酸化アルミニウム等の金属酸化物等が挙げられる。
【0036】
前記樹脂シートが含む板状フィラーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0037】
前記板状フィラーは、窒化ホウ素(BN)又は酸化アルミニウム(Al)からなる(すなわち、窒化ホウ素フィラーであるか又は酸化アルミニウムフィラーである)ことが好ましい。このような板状フィラーを含む樹脂シートは、放熱性が高いのに加え、加熱時の流動性がより良好で、樹脂シートの適用対象物に対する追従性がより高くなり、例えば、前記樹脂シートで発熱体を覆うときには、樹脂シートで容易に発熱体を覆うことができる。
【0038】
前記板状フィラーは、窒化ホウ素(BN)からなる(すなわち、窒化ホウ素フィラーである)ことがより好ましい。このような板状フィラーを含む樹脂シートは、上述の好ましい特性を有するのに加え、さらに、その比誘電率がより低くなるために、後述するようにさらに好ましい特性を有する。
【0039】
前記樹脂シートにおいて、樹脂シートの総体積(体積部)に対する、板状フィラーの含有量(体積部)の割合([樹脂シートの板状フィラーの含有量(体積部)]/[樹脂シートの総体積(体積部)]×100)は、10体積%以上であることが好ましく、例えば、15体積%以上、20体積%以上、及び25体積%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、板状フィラーを用いていることにより得られる効果が、より高くなる。
前記樹脂シートにおいて、樹脂シートの総体積(体積部)に対する、板状フィラーの含有量(体積部)の割合は、35体積%以下であることが好ましく、例えば、30体積%以下、25体積%以下、及び20体積%以下のいずれかであってもよい。前記割合が前記上限値以下であることで、前記連結フィラー等の、板状フィラー以外のフィラーを用いていることにより得られる効果が、より高くなる。
一実施形態において、前記割合は、例えば、10~35体積%、15~35体積%、20~35体積%、及び25~35体積%のいずれかであってもよいし、10~30体積%、15~30体積%、20~30体積%、及び25~30体積%のいずれかであってもよいし、10~25体積%、15~25体積%、及び20~25体積%のいずれかであってもよいし、10~20体積%であってもよい。ただし、これらは前記割合の一例である。
【0040】
<連結フィラー>
前記樹脂シートは、前記連結フィラーを含んでいることにより、その放熱性が高くなる。樹脂シート中で連結フィラーは、樹脂シートの面方向及び厚さ方向の両方において、幅広く分布しており、さらに後述のとおり、連結フィラーのサイズは小さい。そのため、連結フィラーは、樹脂シートの面方向及び厚さ方向のいずれにおいても、板状フィラーとの接触を維持することで、それ自体を介して板状フィラー同士を連結している。その結果、樹脂シートの面方向及び厚さ方向のいずれにおいても、熱伝導率が高くなり、放熱性が高くなる。特に、前記樹脂シートは、連結フィラーを含んでいることにより、その厚さ方向における熱伝導率が高くなり、放熱性が高くなる。樹脂シートが連結フィラーを含まない場合には、樹脂シートの厚さ方向における放熱性は、このように高くなることはない。
【0041】
前記連結フィラーの平均粒子径は、2μm以下である。これにより、板状フィラー同士が連結フィラーによって、十分に連結される。
この様な効果がより高くなる点では、連結フィラーの平均粒子径は、1.5μm以下であることが好ましく、例えば、1.2μm以下、及び0.9μm以下のいずれかであってもよい。
連結フィラーの平均粒子径の下限値は、特に限定されない。例えば、平均粒子径が0.5μm以上である連結フィラーは、より容易に入手でき、かつ、このような連結フィラーを用いることで、樹脂シートの放熱性をより容易に向上させることができる。
一実施形態において、連結フィラーの平均粒子径は、例えば、0.5~2μm、0.5~1.5μm、0.5~1.2μm、及び0.5~0.9μmのいずれかであってもよい。ただし、これらは連結フィラーの平均粒子径の一例である。
【0042】
連結フィラーの形状は、特に限定されないが、平面を有する形状であることが好ましく、板状であることがより好ましい。連結フィラーが平面を有すること、特に板状であることで、連結フィラーと板状フィラーとの接触面積がより大きくなる。上述のとおり、板状フィラーは、その面方向が、樹脂シートの面方向と同じ方向、又は樹脂シートの面方向に近い方向に配向し易いため、連結フィラーが平面を有していても、連結フィラーの全体の形状が板状から外れていくほど、連結フィラーと板状フィラーとの接触面積が小さくなる傾向にある。ただし、連結フィラーの平均粒子径が2μm以下であることで、連結フィラーと板状フィラーとの十分な接触は維持される。
【0043】
連結フィラーは、非凝集物である(凝集物ではない)ことが好ましい。樹脂シートの、凝集物である連結フィラーの含有量が少ないほど、樹脂シートの加熱時の流動性が向上し、樹脂シートの適用対象物に対する追従性が高くなり、例えば、前記樹脂シートで発熱体を覆うときには、樹脂シートで容易に発熱体を覆うことができる。
【0044】
連結フィラーの熱伝導率は、例えば、5W/m・K以上、10W/m・K以上、25W/m・K以上、及び40W/m・K以上のいずれかであってもよい。
連結フィラーの熱伝導率の上限値は、特に限定されない。例えば、熱伝導率が400W/m・K以下である連結フィラーは、より容易に入手できる。
一実施形態において、連結フィラーの熱伝導率は、例えば、5~400W/m・K、10~400W/m・K、25~400W/m・K、及び40~400W/m・Kのいずれかであってもよい。ただし、これらは、連結フィラーの熱伝導率の一例である。
【0045】
連結フィラーの材質としては、例えば、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物等が挙げられる。
【0046】
連結フィラーは、その表面が表面処理剤で処理されていてもよいし、処理されていなくてもよい。表面処理された連結フィラーを用いることで、例えば、連結フィラーと、熱可塑性樹脂等の樹脂と、の親和性が良好となり、前記樹脂シートの流動性が向上することで、前記樹脂シートの、その適用対象物に対する追従性及び密着性が、より高くなる。
連結フィラーにおける表面処理としては、例えば、脂肪酸又は有機ケイ素化合物(シランカップリング剤)による表面処理が挙げられる。
【0047】
前記樹脂シートが含む連結フィラーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0048】
前記連結フィラーは、水酸化マグネシウム(Mg(OH))からなる(すなわち、水酸化マグネシウムフィラーである)ことが好ましい。水酸化マグネシウムは難燃剤でもあるため、このような連結フィラーを含む樹脂シートは、放熱性が高いのに加え、難燃性も高くなる。
【0049】
水酸化マグネシウムフィラーを含む前記樹脂シート等の、難燃性を付与した前記樹脂シートは、例えば、UL94規格の等級V-0、V-1又はV-2を満たすことが可能である。
【0050】
前記樹脂シートにおいて、板状フィラーの含有量に対する、連結フィラーの含有量の割合([樹脂シートの連結フィラーの含有量(体積部)]/[樹脂シートの板状フィラーの含有量(体積部)]×100)は、60体積%以上であることが好ましく、例えば、65体積%以上、70体積%以上、90体積%以上、及び200体積%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、連結フィラーを用いていることにより得られる効果が、より高くなる。
前記樹脂シートにおいて、板状フィラーの含有量に対する、連結フィラーの含有量の割合は、300体積%以下であることが好ましく、例えば、250体積%以下、140体積%以下、110体積%以下、及び80体積%以下のいずれかであってもよい。前記割合が前記上限値以下であることで、前記板状フィラー等の、連結フィラー以外のフィラーを用いていることにより得られる効果が、より高くなる。
一実施形態において、前記割合は、60~300体積%であることが好ましく、例えば、65~300体積%、70~300体積%、90~300体積%、及び200~300体積%のいずれかであってもよいし、60~250体積%、65~250体積%、70~250体積%、及び90~250体積%のいずれかであってもよいし、60~140体積%、65~140体積%、70~140体積%、及び90~140体積%のいずれかであってもよいし、60~110体積%、65~110体積%、70~110体積%、及び90~110体積%のいずれかであってもよいし、60~80体積%、65~80体積%、及び70~80体積%のいずれかであってもよい。ただし、これらは前記割合の一例である。
【0051】
前記樹脂シートにおいて、樹脂シートの総体積(体積部)に対する、連結フィラーの含有量(体積部)の割合([樹脂シートの連結フィラーの含有量(体積部)]/[樹脂シートの総体積(体積部)]×100)は、上述の板状フィラーの含有量に対する、連結フィラーの含有量の割合、を満たす数値範囲であることが好ましく、例えば、6体積%以上であることが好ましく、例えば、9.8体積%以上、14体積%以上、20体積%以上、及び25体積%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、連結フィラーを用いていることにより得られる効果が、より高くなる。
前記樹脂シートにおいて、樹脂シートの総体積(体積部)に対する、連結フィラーの含有量(体積部)の割合は、49体積%以下であることが好ましく、例えば、33体積%以下、及び21体積%以下のいずれかであってもよい。前記割合が前記上限値以下であることで、前記板状フィラー等の、連結フィラー以外のフィラーを用いていることにより得られる効果が、より高くなる。
一実施形態において、前記割合は、例えば、6~49体積%、9.8~49体積%、14~49体積%、20~49体積%、及び25~49体積%のいずれかであってもよいし、6~33体積%、9.8~33体積%、14~33体積%、及び20~33体積%のいずれかであってもよいし、6~21体積%、9.8~21体積%、及び14~21体積%のいずれかであってもよい。ただし、これらは前記割合の一例である。
【0052】
<他の成分>
前記樹脂シートは、本発明の効果を損なわない範囲内において、前記熱可塑性樹脂と、前記板状フィラーと、前記連結フィラーと、のいずれにも該当しない、他の成分を含んでいてもよい。
前記他の成分は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
【0053】
前記樹脂シートが含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0054】
前記他の成分としては、例えば、当該分野で公知の添加剤が挙げられる。
前記添加剤としては、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、減粘剤、増粘剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、アンチブロッキング剤等が挙げられる。
【0055】
前記樹脂シートにおいて、前記樹脂シートの総質量(質量部)に対する、前記熱可塑性樹脂と、前記板状フィラーと、前記連結フィラーと、の合計含有量(質量部)の割合(([樹脂シートの熱可塑性樹脂の含有量(質量部)]+[樹脂シートの板状フィラーの含有量(質量部)]+[樹脂シートの連結フィラーの含有量(質量部)])/[樹脂シートの総質量(質量部)]×100)は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、例えば、95質量%以上、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、前記樹脂シートの放熱性と、加熱時の柔軟性とが、バランスよく、より高くなる。一方、前記割合は100質量%以下である。
前記割合は、通常、後述する樹脂組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、前記熱可塑性樹脂と、前記板状フィラーと、前記連結フィラーと、の合計含有量(質量部)の割合(([樹脂組成物の熱可塑性樹脂の含有量(質量部)]+[樹脂組成物の板状フィラーの含有量(質量部)]+[樹脂組成物の連結フィラーの含有量(質量部)])/[樹脂組成物の常温で気化しない成分の総含有量(質量部)]×100)、と同じである。
【0056】
前記樹脂シートの厚さは、100μm以上であることが好ましく、例えば、300μm以上、500μm以上、800μm以上、及び1100μm以上のいずれかであってもよい。樹脂シートの厚さが前記下限値以上であることで、樹脂シートの放熱性がより高くなる。
一方、前記樹脂シートの厚さは、2000μm以下であることが好ましく、例えば、1500μm以下、及び1000μm以下のいずれかであってもよい。樹脂シートの厚さが前記上限値以下であることで、樹脂シートの加熱時の柔軟性がより高くなる。
一実施形態において、前記樹脂シートの厚さは、例えば、100~2000μm、300~1500μm、500~1000μm、及び800~1500μmのいずれかであってもよい。ただし、これらは、樹脂シートの厚さの一例である。
樹脂シートの厚さは、後述するように、樹脂シートの適用対象物の厚さに応じて、調節することが好ましい。
【0057】
<樹脂シートの特性>
[埋め込み率R]
1枚の前記樹脂シートであり、かつその厚さがTの試験片、又は、2枚以上の前記樹脂シートの積層物であり、かつその厚さがTの試験片、を用い、前記試験片に対して、100℃の環境下で10分間、前記試験片の厚さ方向において12kPaの圧力を加えて、前記圧力を加えている部位での前記試験片の厚さTを測定したとき、下記式:
R=(T-T)/T×100
で算出される埋め込み率Rは、30%以上である。前記埋め込み率Rがこのような範囲である第1の態様の樹脂シートは、その加熱時の柔軟性が高い。したがって、樹脂シートによって、発熱体を良好に覆うことができる。
以下、図面を参照しながら、前記埋め込み率Rの算出方法について、より詳細に説明する。
【0058】
図1は、前記樹脂シートを用いた前記試験片の埋め込み率Rの算出方法を模式的に説明するための断面図である。
なお、以降の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0059】
例えば、T(加熱加圧後の加圧部位での試験片の厚さ)を測定するために、図1(a)に示すように、試験片10を平面上に置き、試験片10の上向きの露出面である、一方の面10aの中央部付近に、押し込み材9を載せる。押し込み材9は、試験片10に接触し、圧力を加えて、試験片10を押し込むための手段である。
試験片10は、1枚の前記樹脂シート自体であるか、又は2枚以上の前記樹脂シートの積層物である。試験片10がこれらのいずれであっても、試験片10の厚さ方向において、試験片10に圧力が加えられていない状態での、試験片10の厚さはTである。
は、特に限定されず、例えば、500μm以上、1000μm以上、及び1500μm以上のいずれであってもよく、3500μm以下、3000μm以下、及び2500μm以下のいずれかであってもよい。
【0060】
図1においては、試験片10(樹脂シート)の含有物の表示を省略している。図2以降の図においても、本実施形態の樹脂シートの断面図においては、樹脂シートの含有物の表示を省略している。
【0061】
押し込み材9の構成材料は、硬質なものであれば特に限定されず、例えば、各種セラミック等が挙げられる。
押し込み材9の形状は、その試験片10との接触部が平面であれば特に限定されず、例えば、角柱状、角錐台状、円柱状、円錐台状、楕円柱状、楕円推台状等のいずれであってもよい。
押し込み材9の試験片10との接触面(換言すると押し込み面)9bの面積は、試験片10の一方の面10aの面積よりも小さければよいが、試験片10の一方の面10aの面積に対して、0.05~0.30倍であることが好ましい。
【0062】
次いで、この状態の押し込み材9の他方の面(試験片10の一方の面10aに接触していない、上向きの露出面)9aに、錘8を載せる。
錘8は、押し込み材9の他方の面9aの一部の領域に載せてもよいし、全面に載せてもよい。
押し込み材9に載せる錘8は、1個であってもよいし、2個以上であってもよい。
このように、押し込み材9に錘8を載せて、試験片10、押し込み材9及び錘8をこの順に積層して積層物100とすることで、試験片10に対して、その厚さ方向において、押し込み材9及び錘8によって、12kPaの圧力を加える。
【0063】
次いで、この状態の積層物100を直ちに、100℃の環境下に置き、10分間静置する。
以上により、試験片10に対して、100℃の環境下で10分間、試験片10の厚さ方向において12kPaの圧力を加える。
積層物100を100℃の環境下に置くと、加熱された試験片10は軟化し、押し込み材9によって押し込まれ、試験片10の押し込み材9との接触部はへこむ。
次いで、10分間経過後、直ちに、この加熱加圧している状態の積層物100中の、圧力を加えている部位での試験片10の厚さTを測定する。
【0064】
以上により、T及びTを測定できるため、これら測定値を用いて、前記式により、試験片10の埋め込み率Rを算出する。
【0065】
樹脂シートによって、発熱体を容易に覆うことができる点では、埋め込み率Rは、35%以上であることが好ましく、例えば、40%以上、45%以上、及び50%以上のいずれかであってもよい。
一方、埋め込み率Rの上限値は、特に限定されない。例えば、埋め込み率Rが65%以下、及び60%以下のいずれかである樹脂シートは、より容易に製造できる。
一実施形態において、埋め込み率Rは、例えば、30~65%、35~65%、40~65%、45%~65%、及び50~65%のいずれかであってもよいし、30~60%、35~60%、40~60%、及び45~60%のいずれかであってもよい。ただし、これらは、埋め込み率Rの一例である。
【0066】
前記樹脂シートの埋め込み率Rは、例えば、樹脂シートの含有成分の種類と含有量、特に、熱可塑性樹脂の種類とその含有量、を調節することで、調節できる。
【0067】
[面方向における熱伝導率]
前記樹脂シートの面方向における熱伝導率は、2W/m・K以上であることが好ましく、3W/m・K以上であることがより好ましく、例えば、4W/m・K以上であってもよい。熱伝導率が前記下限値以上である前記樹脂シートは、その面方向における放熱性が高い。
前記樹脂シートの面方向における熱伝導率の上限値は、特に限定されない。例えば、前記熱伝導率が15W/m・K以下である樹脂シートは、より容易に製造できる。
一実施形態において、前記樹脂シートの面方向における熱伝導率は、例えば、2~15W/m・K、3~15W/m・K、及び4~15W/m・Kのいずれかであってもよい。
前記樹脂シートに限らず、樹脂シートの面方向における熱伝導率とは、より具体的には、樹脂シートの一方の面又は他方の面に対して平行な方向における、樹脂シートの熱伝導率である。
【0068】
樹脂シートの面方向における熱伝導率は、例えば、ISO 22007-2に準拠して、ホットディスク法により測定できる。例えば、京都電子工業社製のホットディスク法熱物性測定装置(例えば、「TPS 2500 S」、「TPS 500 S」等)を用いて、前記熱伝導率を測定できる。
【0069】
前記樹脂シートの面方向における熱伝導率は、例えば、前記熱可塑性樹脂の種類と、その樹脂シートでの含有量;前記板状フィラーの種類と、その樹脂シートでの含有量;前記連結フィラーの種類と、その樹脂シートでの含有量;前記樹脂シートの厚さ等を調節することにより、調節できる。
【0070】
[比誘電率]
TM0m0モード空洞共振器摂動法に準拠して測定された、周波数10GHzでの前記樹脂シートの比誘電率は、4以下であることが好ましく、例えば、3.75以下、3.65以下、及び3.55以下のいずれかであってもよい。周波数10GHzでの比誘電率が前記上限値以下である前記樹脂シートは、その絶縁性が高く、例えば、前記樹脂シートの装着対象物中の回路において、電気信号のノイズの発生を抑制する効果が高い点で、回路基板上の発熱体を被覆して装着するものとして、特に好適である。
周波数10GHzでの前記比誘電率の下限値は、特に限定されない。例えば、周波数10GHzでの前記比誘電率が1以上である前記樹脂シートは、より容易に製造できる。
一実施形態において、周波数10GHzでの前記比誘電率は、例えば、1~4、1~3.75、1~3.65、及び1~3.55のいずれかであってもよい。ただし、これらは、周波数10GHzでの前記比誘電率の一例である。
周波数10GHzでの前記比誘電率は、常温下(例えば、23℃の温度条件下)での測定値であることが好ましい。
【0071】
TM0m0モード空洞共振器摂動法に準拠して測定された、周波数1GHzでの前記樹脂シートの比誘電率は、4以下であることが好ましく、例えば、3.9以下、及び3.8以下のいずれかであってもよい。周波数1GHzでの比誘電率が前記上限値以下である前記樹脂シートは、その絶縁性が高く、例えば、前記樹脂シートの装着対象物中の回路において、電気信号のノイズの発生を抑制する効果が高い点で、回路基板上の発熱体を被覆して装着するものとして、特に好適である。
周波数1GHzでの前記比誘電率の下限値は、特に限定されない。例えば、周波数1GHzでの前記比誘電率が1以上である前記樹脂シートは、より容易に製造できる。
一実施形態において、周波数1GHzでの前記比誘電率は、例えば、1~4、1~3.9、及び1~3.8のいずれかであってもよい。ただし、これらは、周波数1GHzでの前記比誘電率の一例である。
周波数1GHzでの前記比誘電率は、常温下(例えば、23℃の温度条件下)での測定値であることが好ましい。
【0072】
前記樹脂シートの比誘電率は、周波数によらず、樹脂シートの含有成分の種類と含有量を調節することで、調節できる。
【0073】
[誘電正接]
TM0m0モード空洞共振器摂動法に準拠して測定された、周波数10GHzでの前記樹脂シートの誘電正接は、0.01以下であることが好ましく、例えば、0.0065以下、0.0055以下、及び0.0045以下のいずれかであってもよい。周波数10GHzでの誘電正接がこのような範囲である前記樹脂シートは、その電波透過性が高く、アンテナを備えた電子機器を構成するのに好適である。
周波数10GHzでの前記誘電正接の下限値は、特に限定されない。例えば、周波数10GHzでの前記誘電正接が0.001以上である前記樹脂シートは、より容易に製造できる。
一実施形態において、周波数10GHzでの前記誘電正接は、例えば、0.001~0.01、0.001~0.0065、0.001~0.0055、及び0.001~0.0045のいずれかであってもよい。ただし、これらは、周波数10GHzでの前記誘電正接の一例である。
周波数10GHzでの前記誘電正接は、常温下(例えば、23℃の温度条件下)での測定値であることが好ましい。
【0074】
TM0m0モード空洞共振器摂動法に準拠して測定された、周波数1GHzでの前記樹脂シートの誘電正接は、0.01以下であることが好ましく、例えば、0.009以下、及び0.008以下のいずれかであってもよい。周波数1GHzでの誘電正接がこのような範囲である前記樹脂シートは、その電波透過性が高く、アンテナを備えた電子機器を構成するのに好適である。
周波数1GHzでの前記誘電正接の下限値は、特に限定されない。例えば、周波数1GHzでの前記誘電正接が0.001以上である前記樹脂シートは、より容易に製造できる。
一実施形態において、周波数1GHzでの前記誘電正接は、例えば、0.001~0.01、0.001~0.009、及び0.001~0.008のいずれかであってもよい。ただし、これらは、周波数1GHzでの前記誘電正接の一例である。
周波数1GHzでの前記誘電正接は、常温下(例えば、23℃の温度条件下)での測定値であることが好ましい。
【0075】
前記樹脂シートの誘電正接は、周波数によらず、樹脂シートの含有成分の種類と含有量を調節することで、調節できる。
【0076】
前記樹脂シートにおいては、周波数10GHzでの比誘電率と、周波数1GHzでの比誘電率が、ともに上記の数値範囲内であることが好ましい。
前記樹脂シートにおいては、周波数10GHzでの誘電正接と、周波数1GHzでの誘電正接が、ともに上記の数値範囲内であることが好ましい。
前記樹脂シートにおいては、周波数10GHzでの比誘電率と、周波数1GHzでの比誘電率と、周波数10GHzでの誘電正接と、周波数1GHzでの誘電正接が、すべて上記の数値範囲内であることが、より好ましい。
【0077】
[密度]
前記樹脂シートの密度は、2g/cm以下であることが好ましく、例えば、1.7g/cm以下であってもよい。このような樹脂シートを装着して構成された各種電子機器は、発熱が抑制されるのに加え、軽量であるため、例えば、携帯型の電子機器を構成するために用いるのに好適である。
前記樹脂シートの密度の下限値は、特に限定されない。例えば、密度が1g/cm以上である前記樹脂シートは、より容易に実現できる。
一実施形態において、前記樹脂シートの密度は、例えば、1~2g/cm、及び1~1.7g/cmのいずれかであってもよい。ただし、これらは、前記樹脂シートの密度の一例である。
前記樹脂シートの密度は、例えば、樹脂シートの含有成分の種類と含有量を調節することで、調節できる。
【0078】
前記樹脂シートの密度は、公知の方法で測定でき、例えば、JIS K 7112:1999、又はJIS K 0061:2022(密度勾配管法)に準拠して測定できる。
【0079】
前記樹脂シートは、電子線照射されたものであってもよい。その場合、前記樹脂シートは、吸収線量20~300kGyの条件で電子線照射されたものであることが好ましい。電子線照射の加速電圧は、100~300kVであることが好ましい。
前記樹脂シートを電子線照射することにより、樹脂シートが一部架橋され、樹脂シートの耐熱性及びリペア性が向上する。
【0080】
<<樹脂組成物及びその製造方法>>
第1の態様の樹脂シートは、例えば、前記熱可塑性樹脂と、前記板状フィラーと、前記連結フィラーと、必要に応じて前記他の成分と、を含む樹脂組成物(本明細書においては、「第1の態様の樹脂組成物」と称することがある)を用いることで、製造できる。
【0081】
前記樹脂組成物は、上述の各成分以外に、溶媒を含有していてもよい。溶媒を含有する前記樹脂組成物は、その取り扱い性が向上することがある。
本明細書においては、特に断りのない限り、溶液中で溶質を溶解させることが可能な成分だけなく、分散液中で分散媒となる成分も、「溶媒」と称する。
【0082】
溶媒は、有機溶媒であることが好ましく、前記樹脂組成物の加熱時に気化によって除去可能な有機溶媒であることがより好ましい。
【0083】
前記樹脂組成物の溶媒の含有量は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
【0084】
前記樹脂組成物は、前記樹脂シートが目的とする成分(構成材料)を、目的とする含有量で含むように、含有成分の種類と含有量を調節して、製造すればよい。例えば、前記樹脂組成物中の、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、前記樹脂シート中の、前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
【0085】
前記樹脂組成物は、前記熱可塑性樹脂と、前記板状フィラーと、前記連結フィラーと、必要に応じて前記他の成分と、必要に応じて前記溶媒と、を配合することで製造できる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節できる。
【0086】
前記樹脂組成物は、例えば、前記熱可塑性樹脂と、前記板状フィラーと、前記連結フィラーと、必要に応じて前記他の成分と、を混練して得られた混練物であってもよい。
【0087】
<<樹脂シートの製造方法>>
前記樹脂シートは、例えば、前記樹脂組成物を成形することで、製造できる。
前記樹脂組成物は、公知の方法で成形できる。例えば、真空条件下で成形する場合には、真空加熱プレスによって樹脂組成物を成形できる。
【0088】
前記樹脂組成物の成形温度(加圧温度)は、前記熱可塑性樹脂の融点よりも高い温度であることが好ましく、例えば、前記熱可塑性樹脂の融点より15℃以上高い温度、前記熱可塑性樹脂の融点より35℃以上高い温度、及び、前記熱可塑性樹脂の融点より55℃以上高い温度のいずれかであってもよい。前記成形温度が前記下限値以上であることにより、より均一性の高い前記樹脂シートが得られる。
前記成形温度の上限値は、特に限定されない。例えば、前記成形温度が、前記熱可塑性樹脂の融点より75℃高い温度に対して同等以下であれば、過剰な加熱が避けられる。
【0089】
前記樹脂組成物の成形時の圧力は、加圧の効果が十分に得られる限り、特に限定されないが、3MPa以上であることが好ましく、例えば、8MPa以上、及び13MPa以上のいずれかであってもよい。前記圧力が前記下限値以上であることにより、より均一性の高い樹脂シートが得られる。
前記圧力の上限値は、特に限定されない。例えば、前記圧力が20MPa以下であれば、過剰な加圧が避けられる。
【0090】
前記樹脂組成物の成形時間(加圧時間)は、加圧の効果が十分に得られる限り、特に限定されず、例えば、上記の成形時の圧力に応じて任意に設定できるが、0.5分以上であることが好ましい。前記成形時間が前記下限値以上であることにより、より均一性の高い樹脂シートが得られる。
前記成形時間の上限値は、特に限定されない。例えば、成形時間が10分以下であれば、過剰な加圧が避けられる。
【0091】
前記樹脂組成物の成形は、減圧下で行うことが好ましく、例えば、圧力が0.05MPa以下等の真空条件下で行うことがより好ましい。このように減圧下で成形することにより、より均一性の高い前記樹脂シートが得られる。
【0092】
<<樹脂シート(第2の態様)>>
本発明の一実施形態に係る第2の態様の樹脂シートは、熱可塑性樹脂と、板状フィラーと、連結フィラーと、を含み、前記連結フィラーの平均粒子径が2μm以下である。
第2の態様の樹脂シートは、前記板状フィラー及び連結フィラーを含んでいるため、その表面に対して平行な方向と、その厚さ方向と、の両方において、熱伝導率が高く、放熱性が高い。さらに、第2の態様の樹脂シートは、熱可塑性樹脂を含んでいるため、その加熱時の柔軟性を有する。
第2の態様の樹脂シートは、上述の埋め込み率Rが30%以上に特定されていない点を除けば、第1の態様の樹脂シートと同じであってよい。
このような特性を有する第2の態様の樹脂シートによって、CPU等の発熱体を覆い、好ましくは埋め込むことで、各種電子機器において、新たな放熱構造を構成可能であり、各種電子機器で発熱を抑制する高い効果が得られる。また、CPUに限定されず、CPUと同様の発熱体を備えた他の機器でも、放熱構造を構成可能であり、発熱を抑制する高い効果が得られる。
【0093】
第2の態様の樹脂シートは絶縁性を有する。
【0094】
第2の態様の樹脂シートは、本発明の効果を損なわない範囲内において、前記熱可塑性樹脂と、前記板状フィラーと、前記連結フィラーと、のいずれにも該当しない、他の成分を含んでいてもよい。
【0095】
第2の態様の樹脂シートが含む熱可塑性樹脂と、板状フィラーと、連結フィラーと、前記他の成分としては、それぞれ、上述の第1の態様の樹脂シートが含む熱可塑性樹脂と、板状フィラーと、連結フィラーと、前記他の成分と同じものが挙げられる。
第2の態様の樹脂シートが含むこれらの成分は、第2の態様の樹脂シートにおいて、第1の態様の樹脂シートの場合と同様の効果を奏する。
【0096】
第2の態様の樹脂シートが熱可塑性樹脂と、板状フィラーと、連結フィラーと、前記他の成分と、を含む態様は、第1の態様の樹脂シートが熱可塑性樹脂と、板状フィラーと、連結フィラーと、前記他の成分と、を含む態様と同じであってよい。より具体的には、例えば、以下のとおりである。
【0097】
第2の態様の樹脂シートが含む熱可塑性樹脂と、板状フィラーと、連結フィラーと、前記他の成分は、それぞれ1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0098】
第2の態様の樹脂シートが含む前記熱可塑性樹脂は、第1の態様の樹脂シートの場合と同様の理由で、エチレン-酢酸ビニル共重合体であることが好ましい。
【0099】
第2の態様の樹脂シートにおいて、前記樹脂シートの総質量(質量部)に対する、前記熱可塑性樹脂の含有量(質量部)の割合([樹脂シートの熱可塑性樹脂の含有量(質量部)]/[樹脂シートの総質量(質量部)]×100)は、第1の態様の樹脂シートの場合と同様の理由で、20質量%以上であることが好ましく、45質量%以下であることが好ましく、例えば、20~45質量%であってもよく、第1の態様の樹脂シートの場合と同様の数値範囲であってよい。
【0100】
第2の態様の樹脂シートが含む前記板状フィラーは、第1の態様の樹脂シートの場合と同様の理由で、窒化ホウ素(BN)又は酸化アルミニウム(Al)からなる(すなわち、窒化ホウ素フィラーであるか又は酸化アルミニウムフィラーである)ことが好ましく、窒化ホウ素からなる(すなわち、窒化ホウ素フィラーである)ことがより好ましい。
【0101】
第2の態様の樹脂シートが含む前記板状フィラーの平均粒子径は、第1の態様の樹脂シートの場合と同様の理由で、5μm以上であることが好ましく、15μm以下であってもよく、例えば、5~15μmであってもよく、第1の態様の樹脂シートの場合と同様の数値範囲であってよい。
【0102】
第2の態様の樹脂シートにおいて、樹脂シートの総体積(体積部)に対する、板状フィラーの含有量(体積部)の割合([樹脂シートの板状フィラーの含有量(体積部)]/[樹脂シートの総体積(体積部)]×100)は、第1の態様の樹脂シートの場合と同様の理由で、10体積%以上であることが好ましく、35体積%以下であることが好ましく、例えば、10~35体積%であってもよく、第1の態様の樹脂シートの場合と同様の数値範囲であってよい。
【0103】
第2の態様の樹脂シートが含む前記連結フィラーは、第1の態様の樹脂シートの場合と同様の理由で、水酸化マグネシウム(Mg(OH))からなる(すなわち、水酸化マグネシウムフィラーである)ことが好ましい。
水酸化マグネシウムフィラーを含む前記樹脂シート等の、難燃性を付与した第2の態様の樹脂シートは、例えば、UL94規格の等級V-0、V-1又はV-2を満たすことが可能である。
【0104】
第2の態様の樹脂シートにおいて、板状フィラーの含有量に対する、連結フィラーの含有量の割合([樹脂シートの連結フィラーの含有量(体積部)]/[樹脂シートの板状フィラーの含有量(体積部)]×100)は、第1の態様の樹脂シートの場合と同様の理由で、60体積%以上であることが好ましく、300体積%以下であることが好ましく、140体積%以下であってもよく、例えば、60~300体積%、及び60~140体積%のいずれかであってもよく、第1の態様の樹脂シートの場合と同様の数値範囲であってよい。
【0105】
第2の態様の樹脂シートにおいて、樹脂シートの総体積(体積部)に対する、連結フィラーの含有量(体積部)の割合([樹脂シートの連結フィラーの含有量(体積部)]/[樹脂シートの総体積(体積部)]×100)は、上述の板状フィラーの含有量に対する、連結フィラーの含有量の割合、を満たす数値範囲であることが好ましく、第1の態様の樹脂シートの場合と同様の理由で、例えば、6体積%以上であることが好ましく、49体積%以下であることが好ましく、例えば、6~49体積%であってもよく、第1の態様の樹脂シートの場合と同様の数値範囲であってよい。
【0106】
第2の態様の樹脂シートにおいて、樹脂シートの総質量(質量部)に対する、熱可塑性樹脂と、板状フィラーと、連結フィラーと、の合計含有量(質量部)の割合(([樹脂シートの熱可塑性樹脂の含有量(質量部)]+[樹脂シートの板状フィラーの含有量(質量部)]+[樹脂シートの連結フィラーの含有量(質量部)])/[樹脂シートの総質量(質量部)]×100)は、第1の態様の樹脂シートの場合と同様の理由で、80質量%以上であることが好ましく、100質量%以下である。
【0107】
第2の態様の樹脂シートの厚さは、第1の態様の樹脂シートの場合と同様の理由で、100μm以上であることが好ましく、2000μm以下であることが好ましく、例えば、100~2000μmであってもよく、第1の態様の樹脂シートの場合と同様の数値範囲であってよい。
【0108】
第2の態様の樹脂シートの面方向における熱伝導率は、第1の態様の樹脂シートの場合と同様の理由で、2W/m・K以上であることが好ましく、15W/m・K以下であってもよく、例えば、2~15W/m・Kであってもよく、第1の態様の樹脂シートの場合と同様の数値範囲であってよい。
【0109】
TM0m0モード空洞共振器摂動法に準拠して測定された、周波数10GHzでの第2の態様の樹脂シートの比誘電率は、第1の態様の樹脂シートの場合と同様の理由で、4以下であることが好ましく、1以上であってもよく、例えば、1~4であってもよく、第1の態様の樹脂シートの場合と同様の数値範囲であってよい。
第2の態様における、周波数10GHzでの前記比誘電率は、常温下(例えば、23℃の温度条件下)での測定値であることが好ましい。
【0110】
TM0m0モード空洞共振器摂動法に準拠して測定された、周波数1GHzでの第2の態様の樹脂シートの比誘電率は、第1の態様の樹脂シートの場合と同様の理由で、4以下であることが好ましく、1以上であってもよく、例えば、1~4であってもよく、第1の態様の樹脂シートの場合と同様の数値範囲であってよい。
第2の態様における、周波数1GHzでの前記比誘電率は、常温下(例えば、23℃の温度条件下)での測定値であることが好ましい。
【0111】
TM0m0モード空洞共振器摂動法に準拠して測定された、周波数10GHzでの第2の態様の樹脂シートの誘電正接は、第1の態様の樹脂シートの場合と同様の理由で、0.01以下であることが好ましく、0.001以上であってもよく、例えば、0.001~0.01であってもよく、第1の態様の樹脂シートの場合と同様の数値範囲であってよい。
第2の態様における、周波数10GHzでの前記誘電正接は、常温下(例えば、23℃の温度条件下)での測定値であることが好ましい。
【0112】
TM0m0モード空洞共振器摂動法に準拠して測定された、周波数1GHzでの第2の態様の樹脂シートの誘電正接は、第1の態様の樹脂シートの場合と同様の理由で、0.01以下であることが好ましく、0.001以上であってもよく、例えば、0.001~0.01であってもよく、第1の態様の樹脂シートの場合と同様の数値範囲であってよい。
第2の態様における、周波数1GHzでの前記誘電正接は、常温下(例えば、23℃の温度条件下)での測定値であることが好ましい。
【0113】
第2の態様の樹脂シートにおいては、周波数10GHzでの比誘電率と、周波数1GHzでの比誘電率が、ともに上記の数値範囲内であることが好ましい。
第2の態様の樹脂シートにおいては、周波数10GHzでの誘電正接と、周波数1GHzでの誘電正接が、ともに上記の数値範囲内であることが好ましい。
第2の態様の樹脂シートにおいては、周波数10GHzでの比誘電率と、周波数1GHzでの比誘電率と、周波数10GHzでの誘電正接と、周波数1GHzでの誘電正接が、すべて上記の数値範囲内であることが、より好ましい。
【0114】
第2の態様の樹脂シートの密度は、第1の態様の樹脂シートの場合と同様の理由で、2g/cm以下であることが好ましく、1g/cm以上であってもよく、例えば、1~2g/cmであってもよく、第1の態様の樹脂シートの場合と同様の数値範囲であってよい。
【0115】
第2の態様の樹脂シートの比誘電率、誘電正接及び密度は、例えば、第1の態様の樹脂シートの場合と同じ方法で調節でき、第1の態様の樹脂シートの場合と同じ方法で測定できる。
【0116】
第2の態様の樹脂シートは、例えば、樹脂シートの含有成分の種類と含有量、特に、熱可塑性樹脂の種類とその含有量、を調節することで、その加熱時の柔軟性をより容易に調節できる。このように、第2の態様の樹脂シートの含有成分の種類と含有量を調節することで、上述の埋め込み率Rが30%以上に特定された第1の態様の樹脂シートの場合と同様の、加熱時の柔軟性を、第2の態様の樹脂シートに付与できる。
【0117】
第2の態様の樹脂シートは、第1の態様の樹脂シートの場合と同様の理由で、電子線照射されたものであってもよく、吸収線量20~300kGyの条件で電子線照射されたものであることが好ましく、電子線照射の加速電圧は、100~300kVであることが好ましい。
【0118】
第2の態様の樹脂シートは、例えば、前記熱可塑性樹脂と、前記板状フィラーと、前記連結フィラーと、必要に応じて前記他の成分と、を含む樹脂組成物(本明細書においては、「第2の態様の樹脂組成物」と称することがある)を用いることで、製造できる。
第2の態様の樹脂組成物は、配合成分の種類と配合量とのいずれか一方又は両方が異なりうる点を除けば、上述の第1の態様の樹脂シートを製造するための樹脂組成物(第1の態様の樹脂組成物)と同じである。
例えば、第2の態様の樹脂組成物は、溶媒を含有していてもよく、前記溶媒としては、第1の態様の樹脂組成物が含有していてもよい溶媒と、同じものが挙げられる。
【0119】
第2の態様の樹脂組成物は、配合成分の種類と配合量とのいずれか一方又は両方が異なりうる点を除けば、第1の態様の樹脂組成物の場合と同じ方法で製造できる。
【0120】
第2の態様の樹脂シートは、例えば、第1の態様の樹脂組成物に代えて第2の態様の樹脂組成物を用いる点を除けば、上述の第1の態様の樹脂シートの場合と同じ方法で製造できる。
例えば、第2の態様の樹脂組成物の成形温度(加圧温度)は、第1の態様の樹脂シートの場合と同様の理由で、前記熱可塑性樹脂の融点よりも高い温度であることが好ましく、前記熱可塑性樹脂の融点より15℃以上高い温度であってもよく、前記熱可塑性樹脂の融点より75℃高い温度に対して同等以下であってもよく、第1の態様の樹脂シートの場合と同様の数値範囲であってよい。
【0121】
<<第1の態様の樹脂シート及び第2の態様の樹脂シートの使用方法>>
前記樹脂シート(第1の態様の樹脂シート及び第2の態様の樹脂シート)を用いて、CPU等の発熱体の表面を覆うことで、各種電子機器において、新たな放熱構造を構成でき、各種電子機器での発熱を抑制できる。
【0122】
<使用方法1>
図2は、前記樹脂シートの使用方法(本明細書においては、「使用方法1」と称することがある)の一例を模式的に示す断面図である。ここでは、前記樹脂シートで発熱体の露出面の全域を覆う場合、すなわち、発熱体を埋め込む場合の一例を示している。
【0123】
なお、図2以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0124】
使用方法1では、まず、図2(a)に示すように、樹脂シート1と、ヒートスプレッダー4と、筐体3と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された積層構造体101を用意する。
樹脂シート1は、上述の本実施形態の樹脂シート(第1の態様の樹脂シート又は第2の態様の樹脂シート)である。
筐体3は、公知のものであり、目的に応じて任意に選択できる。筐体3の構成材料としては、例えば、樹脂、金属、炭素材料等が挙げられる。
ヒートスプレッダー4も公知のものであり、その構成材料としては、例えば、銅等の金属;グラファイト等の炭素材料等が挙げられる。
【0125】
回路基板7は、特に限定されず、公知のものであってもよい。回路基板7の一方の面7aには、接続部6を介して、CPU等の発熱体5が設けられている。
【0126】
樹脂シート1の厚さTは、先に説明した数値範囲であることが好ましい。
一方、樹脂シート1の厚さTは、その適用対象物の高さ(厚さ)に対して、0.5~1.5倍であることが好ましく、0.6~1.3倍であることがより好ましく、例えば、0.6~1倍であってもよい。Tが前記下限値以上であることで、樹脂シート1の適用対象物をより容易に覆うことができる。Tが前記上限値以下であることで、樹脂シート1の厚さが過剰となることが避けられる。樹脂シート1の加熱時の柔軟性が高いため、樹脂シート1を、その適用対象物に対して押し付けたときに、樹脂シート1には、適用対象物によって押しのけられた領域が生じ、この領域が樹脂シート1の厚さの維持に寄与できる。そのため、Tが、その適用対象物の高さ(厚さ)に対して1倍以下であっても、樹脂シート1で適用対象物を十分に埋め込むことができる。
樹脂シート1の厚さTは、先に説明した数値範囲を満たし、かつ、このような適用対象物の高さを基準とした数値範囲も満たすことが好ましい。
適用対象物の高さ(厚さ)が一定ではない場合には、最も高い部位での高さ(最も厚い部位での厚さ)を、適用対象物の高さ(厚さ)とする。
【0127】
ここで、樹脂シート1の適用対象物とは、例えば、樹脂シート1で発熱体5の露出面の全域を覆い、かつ接続部6の露出部位の全域を覆う場合には、発熱体5及び接続部6であり、その高さを、図2(a)では符号Tを付して示している。これに対して、例えば、樹脂シート1で発熱体5の露出面の全域を覆い、かつ接続部6を覆わない場合には、樹脂シート1の適用対象物とは、発熱体5の全領域である。例えば、樹脂シート1で発熱体5の露出面の一部のみを覆う場合には、樹脂シート1の適用対象物とは、発熱体5の、この露出面の一部に対応した領域である。
【0128】
積層構造体101は、その中の樹脂シート1を発熱体5側に向けて(換言すると、筐体3を発熱体5側とは反対側に向けて)、発熱体5の近傍に配置する。すなわち、樹脂シート1の一方の面1aと、発熱体5の露出面5aと、を対向させる。
【0129】
使用方法1では、次いで、積層構造体101を矢印Pの方向に動かして、樹脂シート1を発熱体5に対して押し込むか、回路基板7上の発熱体5を回路基板7とともに矢印Pの方向に動かして、発熱体5を樹脂シート1に対して押し込むか、又は、積層構造体101を矢印Pの方向に動かすとともに、回路基板7上の発熱体5を回路基板7とともに矢印Pの方向に動かして、樹脂シート1を発熱体5に対して押し込む。これにより、図2(b)に示すように、樹脂シート1で発熱体5を覆う。このとき、樹脂シート1の一方の面1aの一部の領域を、発熱体5の露出面5aのうち、樹脂シート1に対向する上面に接触させたうえで、さらに、樹脂シート1の一方の面1aの他の領域を、回路基板7の一方の面7aに接触させるか、又は回路基板7の一方の面7aの近傍にまで接近させる。これにより、樹脂シート1によって、発熱体5の露出面5aの全域(上面及び側面を含むすべての領域)を覆い、発熱体5を埋め込む。
【0130】
図2(b)では、回路基板7の一方の面7a上に、1個の発熱体5が設けられている状態を示しているが、回路基板7の一方の面7a上に設けられている発熱体は、1個のみであってもよいし、2個以上であってもよい。回路基板7の一方の面7a上に設けられている発熱体が2個以上である場合には、これら2個以上の発熱体は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。すなわち、2個以上の発熱体は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
【0131】
回路基板7の一方の面7a上に設けられている発熱体が2個以上であり、これら2個以上の発熱体を、1枚の樹脂シート1によって一体に覆う場合には、上記のように、樹脂シート1の一方の面1aの他の領域を、回路基板7の一方の面7aに接触させるか、又は回路基板7の一方の面7aの近傍にまで接近させることによって、すべての発熱体を容易かつ十分に、1枚の樹脂シート1で覆うことができる。
【0132】
回路基板7の一方の面7a上に設けられている発熱体が2個以上である場合には、そのうちの少なくとも一部の発熱体を、2枚以上の樹脂シート1によって、一体にではなく別々に覆ってもよい。
【0133】
樹脂シート1で発熱体5を覆う(図2では発熱体5を埋め込む)ときには、対象の発熱体5の温度を、例えば、先に説明した、前記樹脂組成物の成形温度(加圧温度)と同様の温度(前記熱可塑性樹脂の融点を基準とした温度)に調節することが好ましい。発熱体5の温度をこのように調節することで、樹脂シート1で発熱体5をより均一に覆うことができ、樹脂シート1の放熱性がより高くなり、発熱体5の放熱効率がより高くなる。発熱体5の温度は、例えば、オーブン等の公知の温度調節手段を用いて調節できる。
【0134】
発熱体5を樹脂シート1で覆う(図2では埋め込む)ときに、樹脂シート1を発熱体5に対して押し込む場合の樹脂シート1に加える圧力、及び、発熱体5を樹脂シート1に対して押し込む場合の発熱体5(より具体的には回路基板7)に加える圧力は、10~20kPaであることが好ましい。前記圧力が前記下限値以上であることで、樹脂シート1で発熱体5をより均一に覆うことができる。前記圧力が前記上限値以下であることで、過剰な加圧が避けられる。樹脂シート1は、加熱時の柔軟性が高いため、10~20kPa程度の低い圧力でも、十分に発熱体5を覆うことができる。
【0135】
このように樹脂シート1で発熱体5を覆った状態では、樹脂シート1の加熱時の柔軟性が高いため、樹脂シート1と発熱体5との密着度が高く、樹脂シート1と接続部6との密着度が高い。より具体的には、樹脂シート1の一方の面1aと、発熱体5の露出面5aと、の間、並びに、樹脂シート1の一方の面1aと、接続部6と、の間では、隙間の発生が抑制され、樹脂シート1で発熱体5を覆うときの条件を調節することによって、前記隙間を存在させない(前記隙間を完全に発生させない)ことも可能である。
【0136】
このように樹脂シート1で発熱体5を覆った状態では、発熱体5で生じた熱は、樹脂シート1中でその面方向Dに沿って伝導され、例えば、大気中に放熱される。
また、発熱体5で生じた熱は、樹脂シート1中でその厚さ方向Dに沿って伝導され、ヒートスプレッダー4を介して大気中に放熱される。このとき、発熱体5が樹脂シート1によって埋め込まれているため、埋め込まれていない場合よりも、発熱体5とヒートスプレッダー4との間の距離が近くなっており、厚さ方向Dにおける放熱性がより高くなっている。さらに、樹脂シート1の厚さ方向Dに沿って伝導された熱は、回路基板7を介して大気中に放熱されることもある。
筐体3が金属、炭素材料等の高熱伝導性の材料で構成されている場合には、樹脂シート1の厚さ方向Dに沿って伝導された熱は、ヒートスプレッダー4だけでなく筐体3も介して大気中に放熱される。
筐体3が金属、炭素材料等の高熱伝導性の材料で構成されている場合には、積層構造体101において、ヒートスプレッダー4が省略されることもある。
【0137】
上記のように、樹脂シート1は、その面方向及び厚さ方向の両方において、熱伝導率が高く、放熱性が高くなっており、さらに、加熱時の柔軟性が高い。使用方法1での、このような樹脂シート1を介した放熱構造は、従来の放熱構造では全く見られなかったものである。
【0138】
<使用方法2>
図3は、前記樹脂シート(第1の態様の樹脂シート及び第2の態様の樹脂シート)の使用方法(本明細書においては、「使用方法2」と称することがある)の他の例を模式的に示す断面図である。ここでは、前記樹脂シートで発熱体の露出面の一部のみを覆う場合、すなわち、発熱体を埋め込まない場合の一例を示している。
【0139】
使用方法2で用意する積層構造体101は、図3(a)に示すように、使用方法1で用意する積層構造体101と同じである。なお、使用方法2では、樹脂シート1の適用対象物は、発熱体5であり、より詳細には、発熱体5の、上記の露出面5aの一部に対応した領域であって、その高さTは、使用方法1の場合とは異なる。
【0140】
使用方法2では、次いで、使用方法1の場合と同じ方法で、図3(b)に示すように、樹脂シート1で発熱体5を覆う。ただし、このとき、樹脂シート1の一方の面1aのうち、発熱体5の露出面5aにおける前記上面に接触していない領域は、樹脂シート1の厚さ方向において、発熱体5と接続部6との接触部に一致する位置には到達させずに、発熱体5の露出面5aの下方(側面)の一部は、露出させたままとする。これにより、樹脂シート1で発熱体5を埋め込まない。
【0141】
このように樹脂シート1で発熱体5を覆った状態でも、樹脂シート1の加熱時の柔軟性が高いため、使用方法1の場合と同様に、樹脂シート1と発熱体5との密着度が高い。より具体的には、樹脂シート1の一方の面1aと、発熱体5の露出面5aのうち、樹脂シート1の厚さ方向において樹脂シート1が到達している領域と、の間では、隙間の発生が抑制され、樹脂シート1で発熱体5を覆うときの条件を調節することによって、前記隙間を存在させない(前記隙間を完全に発生させない)ことも可能である。
【0142】
上記のように、樹脂シート1の適用対象物が異なる(例えば、発熱体5の露出面5aの全領域ではなく一部の領域を樹脂シート1で覆う)点を除けば、使用方法2は使用方法1と同じであり、使用方法2が奏する効果は、使用方法1が奏する効果と同じである。
【0143】
<他の使用方法>
前記樹脂シート(第1の態様の樹脂シート及び第2の態様の樹脂シート)の使用方法は、使用方法1及び使用方法2に限定されず、例えば、使用方法1又は使用方法2において、一部の構成が変更、削除又は追加されたものであってもよい。
【0144】
例えば、樹脂シートで発熱体を覆うときに、樹脂シートの一方の面(回路基板側の面、例えば、図2図3における樹脂シート1の一方の面1a)のうち、最も回路基板側となる領域は、回路基板の一方の面(樹脂シート側の面、例えば、図2図3における回路基板7の一方の面7a)に接触させない場合には、樹脂シートの厚さ方向において、発熱体5と接続部6との接触部に一致する位置に配置してもよい。
【0145】
例えば、樹脂シートの一方の面(回路基板側の面、例えば、図2図3における樹脂シート1の一方の面1a)と、発熱体の露出面(例えば、図2図3における発熱体5の露出面5a)と、の間、並びに、樹脂シートの一方の面(回路基板側の面、例えば、図2図3における樹脂シート1の一方の面1a)と、接続部(例えば、図2図3における接続部6)と、の間には、一部隙間が存在していてもよい。
【0146】
これまでの説明のように、本実施形態の樹脂シートは、その加熱時の柔軟性が高いため、発熱体を覆い、好ましくは埋め込む特性に優れる。そのため、本実施形態の樹脂シートの放熱性は、極めて優れている。
これに対して、例えば、グラファイトシート等の従来の放熱性シートは、放熱性に優れるが、冷却対象物に対する追従性を有さず、冷却対象物に対する密着性も不十分であるため、単独で発熱体に設ける放熱構造としては、不適である。さらに、グラファイトシート等の放熱性シートは、導電性シートでもあり、その導電性のため(絶縁性を有していないため)、アンテナの近傍領域では使用できない。
例えば、熱界面材料(TIM)は、冷却対象物に対する密着性を有し、さらに絶縁性を有しているが、放熱性と、冷却対象物に対する追従性と、が不十分である。
例えば、常温下で液状の放熱材も知られているが、液状の放熱材は、その使用が、密閉された空間内に限定され、しかも、その充填作業が煩雑であり、そのリペア性も劣っている。
本実施形態の樹脂シートは、このような従来の問題点をすべて解決できる。
【実施例0147】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
実施例及び比較例で用いた原料及び材料を以下に示す。
【0148】
[熱可塑性樹脂]
熱可塑性樹脂(a1):エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)(三井・ダウ ポリケミカル社製「エバフレックス(登録商標)EV150」、融点約60℃、MFR30g/10min、密度0.96g/cm、酢酸ビニル含有量33質量%)
前記EVAのMFRは、JIS K7210:1999に準拠して、190℃の温度条件下で、2.16kgの荷重をかけたときの測定値である。
【0149】
[板状フィラー]
板状フィラー(b1):板状窒化ホウ素フィラー(トクヤマ社製「K03」、平均粒子径9μm、密度2.3g/cm、熱伝導率60W/m・K、アスペクト比30、比誘電率4)
[連結フィラー]
連結フィラー(c1):高級脂肪酸で表面処理された、水酸化マグネシウムフィラー(協和化学工業社製「KISUMA(登録商標)5B」、水酸化マグネシウムの含有量95質量%以上、高級脂肪酸の含有量5質量%以下、平均粒子径0.83μm、熱伝導率8W/m・K)
連結フィラー(c2):有機ケイ素化合物(シランカップリング剤)で表面処理された、水酸化マグネシウムフィラー(協和化学工業社製「KISUMA(登録商標)5P」、水酸化マグネシウムの含有量95質量%以上、有機ケイ素化合物の含有量5質量%以下、平均粒子径0.72μm、熱伝導率8W/m・K)
連結フィラー(c3):有機ケイ素化合物(シランカップリング剤)で表面処理された、水酸化マグネシウムフィラー(協和化学工業社製「KISUMA(登録商標)5L」、水酸化マグネシウムの含有量95質量%以上、有機ケイ素化合物の含有量5質量%以下、平均粒子径0.72μm、熱伝導率8W/m・K)
連結フィラー(c4):水酸化マグネシウムフィラー(協和化学工業社製「KISUMA(登録商標)5」、平均粒子径0.83μm、熱伝導率8W/m・K)
連結フィラー(c5):水酸化マグネシウムフィラー(協和化学工業社製「KISUMA(登録商標)8」、平均粒子径1.38μm、熱伝導率8W/m・K)
[他のフィラー]
他のフィラー(d1):カードハウス状酸化アルミニウムフィラー(DIC社製「AC75」、平均粒子径70μm、密度3.97g/cm、熱伝導率20W/m・K)
他のフィラー(d2):多面体状酸化アルミニウムフィラー(DIC社製「AH40-S」、平均粒子径32μm、密度3.97g/cm、熱伝導率20W/m・K)
【0150】
[実施例1]
<<樹脂シートの製造>>
熱可塑性樹脂(a1)(500g)と、板状フィラー(b1)(600g)と、連結フィラー(c1)(250g)と、連結フィラー(c2)(100g)と、連結フィラー(c3)(100g)とを、2軸押出機を用いて溶融混練することにより、ペレット状の樹脂組成物を調製した。
さらに、得られた前記樹脂組成物を、一対の熱板で挟み込み、圧力0.02MPa以下の真空条件下で、120℃で加熱しながら、15MPaの圧力で1分間、真空加熱プレスすることにより成形し、単層構造の樹脂シート(厚さ700μm)を得た。
【0151】
<<樹脂シートの評価>>
<埋め込み率Rの算出>
上記の方法で得られた3枚の樹脂シート(厚さ700μm)を、これらの厚さ方向において積層し、3.5cm×3.5cmの大きさに裁断することで、厚さTが2100μmで、平面形状が四角形状の試験片を作製した。
次いで、得られた試験片を平面上に置き、試験片の上向きの露出面の中央部付近に、セラミック製で直径16mm、高さ14mmの円柱状の押し込み材を載せた。このとき、押し込み材の曲面ではなく、一方の平面を試験片の前記露出面に接触させた。さらに、この状態の押し込み材の他方の平面(試験片の前記露出面に接触していない、上向きの露出面)の全面に、1個の錘を載せた。このように、試験片、押し込み材及び錘をこの順に積層することで、試験片に対して、その厚さ方向において12kPaの圧力が加わるようにした。そして、この積層物を直ちに、100℃の環境下に移し、10分間静置した。これにより、試験片に対して、100℃の環境下で10分間、試験片の厚さ方向において12kPaの圧力を加えた。
次いで、10分間経過後、直ちに、この状態の積層物中の、圧力を加えている部位での試験片の厚さTを測定した。そして、前記式により、試験片(樹脂シート)の埋め込み率Rを算出した。結果を表1に示す。
【0152】
<樹脂シートの放熱性の確認(1)>
上記で得られた樹脂シート(厚さ700μm)を、10cm×10cmの大きさに裁断した。
【0153】
回路基板の回路面上に、4個の抵抗器をほぼ等間隔で1列に配置した。これら4個の抵抗器に対して、列の一端から他端に向けて、符号(1-1)~(1-4)を付与した。さらに、この列の方向に対して直交する方向において、これら4個の抵抗器(すなわち、抵抗器(1-1)、抵抗器(1-2)、抵抗器(1-3)及び抵抗器(1-4))に対して同じ側に、これら4個のそれぞれの抵抗器に対して、ほぼ等距離に1個ずつ抵抗器を別途配置した。これら別途配置した4個の抵抗器に対して、列の一端から他端に向けて、符号(2-1)~(2-4)を付与した。抵抗器(2-1)は、抵抗器(1-4)ではなく抵抗器(1-1)に隣接し、抵抗器(2-2)は、抵抗器(1-3)ではなく抵抗器(1-2)に隣接し、抵抗器(2-3)は、抵抗器(1-2)ではなく抵抗器(1-3)に隣接し、抵抗器(2-4)は、抵抗器(1-1)ではなく抵抗器(1-4)に隣接する。以上により、回路基板の回路面上に、1列あたり4個の抵抗器を2列分、合計で8個配置し、直交する2方向において、互いに隣り合う抵抗器同士の間隔をほぼ等間隔とした。これら8個の抵抗器の高さ(すなわち、抵抗器の上面(回路基板側とは反対側の面)と、回路基板の回路面と、の間の距離)は、約4mmであった。このときの回路基板上での抵抗器の配置位置を模式的に示す平面図を図4に示す。
【0154】
次いで、一方の列の中の4個の抵抗器のうち、両端の2個の抵抗器(抵抗器(1-1)及び抵抗器(1-4))に対して、細線型の熱電対を1個ずつ配置した。さらに、他方の列の中の4個の抵抗器のうち、一端から2番目の1個の抵抗器(抵抗器(2-2))に対して、細線型の熱電対を1個配置した。そして、回路基板の回路面における、これら2列の中間となり、かつこれら2列の列方向におけるほぼ中央部ともなる部位(回路基板の回路面におけるほぼ中央部)で、抵抗器が配置されていない部位に、細線型の熱電対を1個配置した。すなわち、回路面上の8個の抵抗器のうち3個に、熱電対を1個ずつ配置し、抵抗器ではなく回路面に熱電対を1個配置した。このときの熱電対の配置位置を図4にあわせて示す。
【0155】
次いで、回路面上のこれら8個の抵抗器のすべてにおいて、その回路基板側とは反対側の面の全面に、抵抗器ごとに、1枚の熱界面材料(TIM、ワイドワーク社製「Thermo-TranzH2)」、厚さ500μm)のシートを積層した。これは、8個の抵抗器の高さは、厳密にはすべて同じとなっている訳ではないので、これらの高さの誤差が、評価結果へ影響を及ぼさないようにするためである、これにより、抵抗器上の熱電対は、抵抗器と熱界面材料(TIM)シートとの間に配置された。さらに、これら熱界面材料シートの抵抗器側とは反対側の面の全面を、上記で得られた1枚の樹脂シート(厚さ700μm)で一括被覆した。さらに、この被覆後の樹脂シートの熱界面材料シート側とは反対側の面の全面に、1枚のポリカーボネート製基板(厚さ2000μm)を載せた。以上により、樹脂シートの放熱性を評価するための試験用回路基板を作製した。
【0156】
上記で得られた試験用回路基板中のポリカーボネート製基板側の上部に、サーモグラフを設置した。
次いで、試験用回路基板中の8個の抵抗器全体で、消費電力が10Wとなるように電圧を調整し、試験用回路基板に電圧を印加した。この条件下で、サーモグラフにより、ポリカーボネート製基板の表面の温度を測定した。このとき取得した画像データを図5に示す。さらに、抵抗器(1-1)、抵抗器(1-4)、抵抗器(2-2)、及び回路面における、熱電対による検出温度を表1に示す。
【0157】
<樹脂シートの面方向における熱伝導率の測定>
上記で得られた樹脂シートについて、ホットディスク法熱物性測定装置(京都電子工業社製「TPS 500 S」)を用いて、その面方向における熱伝導率を測定した。このとき、断熱材の間に2枚の樹脂シートを挟み、さらにこれら樹脂シートの間に、直径7mmのセンサを挿入して、樹脂シートの熱伝導率を測定した。結果を表1に示す。
【0158】
<樹脂シートの比誘電率及び誘電正接の測定>
常温下で、上記で得られた樹脂シートから、所定の大きさの試験片を切り出し、この試験片について、TM0m0モード空洞共振器摂動法に準拠して、周波数1GHz及び10GHzでの比誘電率、並びに、周波数1GHz及び10GHzでの誘電正接を測定した。結果を表1に示す。
【0159】
<樹脂シートの密度の測定>
JIS K 7112:1999に準拠して、上記で得られた樹脂シートの密度を測定した。結果を表1に示す。
【0160】
<<樹脂シートの製造及び評価>>
[比較例1]
熱可塑性樹脂(a1)(500g)と、他のフィラー(d1)(1000g)と、連結フィラー(c4)(300g)と、連結フィラー(c5)(300g)とを、2軸押出機を用いて溶融混練することにより、ペレット状の樹脂組成物を作製した。
そして、このペレット状の樹脂組成物を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、樹脂シート(厚さ700μm)を製造し、評価した。結果を表1と図6に示す。図6は、本比較例において、樹脂シートの放熱性の確認時に取得した、画像データである。
【0161】
[比較例2]
熱可塑性樹脂(a1)(500g)と、他のフィラー(d2)(1000g)と、連結フィラー(c4)(300g)と、連結フィラー(c5)(300g)とを、2軸押出機を用いて溶融混練することにより、ペレット状の樹脂組成物を作製した。
そして、このペレット状の樹脂組成物を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、樹脂シート(厚さ700μm)を製造し、評価した。結果を表1と図7に示す。図7は、本比較例において、樹脂シートの放熱性の確認時に取得した、画像データである。
【0162】
<<試験用樹脂シートの評価>>
<試験用樹脂シートの放熱性の確認>
[試験例1]
試験用樹脂シートとして、主成分がゴムであり、その面方向における熱伝導率が3W/m・Kである市販品の熱伝導性シート(厚さ500μm)を用意した。
実施例1における「樹脂シートの放熱性の確認」の場合と同じ方法で、回路基板の回路面上に、8個の抵抗器を配置し、4個の熱電対を配置した。
次いで、回路面上のこれら8個の抵抗器のすべてにおいて、その回路基板側とは反対側の面の全面に、熱電対を配置した場合には熱電対を介して、抵抗器ごとに、1枚の熱界面材料(TIM、ワイドワーク社製「Thermo-TranzH2)」、厚さ500μm)のシートを積層した。これにより、抵抗器上の熱電対は、抵抗器と熱界面材料(TIM)シートとの間に配置された。さらに、これら熱界面材料シートの抵抗器側とは反対側の面の全面を、上記の1枚の試験用樹脂シート(厚さ500μm)で一括被覆した。さらに、この被覆後の試験用樹脂シートの熱界面材料シート側とは反対側の面の全面に、1枚のポリカーボネート製基板(厚さ2000μm)を載せた。以上により、試験用樹脂シートの放熱性を評価するための試験用回路基板を作製した。
以下、実施例1の場合と同じ方法で、試験用回路基板に電圧を印加し、サーモグラフにより、ポリカーボネート製基板の表面の温度を測定した。このとき取得した画像データを図8に示す。さらに、抵抗器及び回路面における、熱電対による検出温度を表1に示す。
【0163】
表1中、「板状フィラーの含有量(体積%)」とは、樹脂シートにおける、樹脂シートの総体積(体積部)に対する、板状フィラーの含有量(体積部)の割合を意味する。
同様に、「連結フィラーの含有量(体積%)」とは、樹脂シートにおける、樹脂シートの総体積(体積部)に対する、連結フィラーの含有量(体積部)の割合を意味する。
「板状フィラーの含有量に対する連結フィラーの含有量の割合(体積%)」とは、樹脂シートにおける、板状フィラーの含有量(体積部)に対する、連結フィラーの含有量(体積部)の割合を意味する。
これらは、表1以降の表においても同様である。
【0164】
【表1】
【0165】
上記結果から明らかなように、実施例1においては、埋め込み率Rが43.8%と高く、樹脂シートの加熱時の柔軟性が高かった。
そして、図5に示すように、ポリカーボネート製基板の表面は、同一列中の4個の抵抗器が存在する領域で、これら抵抗器に跨る形で、65~85℃程度の熱を帯びており、これは2つの列が存在する領域で同様であった。さらに、それだけでなく、これら2つの列の間の領域も、60~65℃程度の熱を帯びていた。これは、樹脂シートによって、同一列中の4個の抵抗器から発生した熱が、列の長さ方向に放熱されただけでなく、列の幅方向にも放熱されたことを示しており、樹脂シートがその面方向において高い放熱性有することを示していた。一方、表1に示すように、実施例1と試験例1とで、同一の抵抗器同士及び回路基板の回路面同士で、熱電対による検出温度を比較したとき、実施例1では試験例1よりも検出温度が低くなっていた。これは、実施例1の樹脂シートが、試験例1の試験用樹脂シート(市販品の熱伝導性シート)よりも、その面方向だけでなく厚さ方向においても、高い放熱性有することを示していた。上記の評価では、発熱体(抵抗器)に対する樹脂シートの放熱性を、発熱体を樹脂シートで埋め込むことなく、簡易的に確認しているが、実施例1の樹脂シートは、発熱体をより広範囲で覆い、好ましくは埋め込むことによっても、高い放熱性を示すと推測された。このように、実施例1の樹脂シートは、加熱時の柔軟性が高く、その面方向と厚さ方向の両方において放熱性が高く、新たな放熱構造を構成可能であることを確認できた。
実施例1の樹脂シートは、熱可塑性樹脂と、板状フィラーと、連結フィラーと、を含んでいた。また、実施例1のシートにおいて、板状フィラーの含有量に対する、連結フィラーの含有量の割合は、72.0体積%であった。
【0166】
実施例1の樹脂シートの比誘電率は、周波数1GHz及び10GHzのいずれの場合も、4未満の条件を満たしていた。
実施例1の樹脂シートの誘電正接は、1GHz及び10GHzのいずれの場合も、0.01以下の条件を満たしていた。
実施例1の樹脂シートの密度は、2g/cm未満の条件を満たしていた。
【0167】
これに対して、比較例1においては、埋め込み率Rが11.0%と低く、樹脂シートの加熱時の柔軟性が低く、樹脂シートは発熱体をより広範囲で覆うこと、好ましくは埋め込むことができないものであった。
さらに、図6に示すように、ポリカーボネート製基板の表面は、同一列中の4個の抵抗器が存在する領域で、これら抵抗器に跨る形で、65~85℃程度の熱を帯びており、これは2つの列が存在する領域で同様であったが、このような熱を帯びている領域が、実施例1の場合よりも狭かった。そして、これら2つの列の間の領域は、高い熱を帯びていなかった。これは、樹脂シートによって、同一列中の4個の抵抗器から発生した熱が、列の長さ方向には放熱されたものの、その放熱性が実施例1の場合よりも低く、さらに、列の幅方向における放熱性も、実施例1の場合よりも低いことを示しており、比較例1の樹脂シートの、その面方向における放熱性が、実施例1の樹脂シートの場合よりも低いことを示していた。一方、表1に示すように、比較例1と試験例1とで、同一の抵抗器同士で、熱電対による検出温度を比較したとき、比較例1では試験例1よりも検出温度がいずれも高くなっており、比較例1の樹脂シートは、試験例1の試験用樹脂シート(市販品の熱伝導性シート)よりも放熱性が低かった。このように、比較例1の樹脂シートは、加熱時の柔軟性が低く、その面方向と厚さ方向の両方において放熱性が低かった。
比較例1の樹脂シートは、連結フィラーを含んでいたが、板状フィラーを含んでおらず、その代わりに、他のフィラー(d1)を含んでいた。他のフィラー(d1)は、カードハウス状であって、板状の酸化アルミニウムが球状に凝集した凝集体であった。
【0168】
比較例2においては、埋め込み率Rが49.5%と高く、樹脂シートの加熱時の柔軟性が高かった。
図7に示すように、ポリカーボネート製基板の表面は、同一列中の4個の抵抗器が存在する領域で、これら抵抗器に跨る形で、65~85℃程度の熱を帯びており、これは2つの列が存在する領域で同様であった。しかし、比較例2においては、このような熱を帯びている領域が、実施例1の場合よりも狭かった。そして、比較例1の場合と同様に、これら2つの列の間の領域は、高い熱を帯びていなかった。これらの結果は、比較例2の樹脂シートは、比較例1の樹脂シートと同様に、その面方向における放熱性が、実施例1の樹脂シートの場合よりも低いことを示していた。一方、表1に示すように、比較例2と試験例1とで、同一の抵抗器同士で、熱電対による検出温度を比較したとき、比較例2では、比較例1の場合と同様に、試験例1よりも検出温度がいずれも高くなっており、比較例2の樹脂シートは、試験例1の試験用樹脂シート(市販品の熱伝導性シート)よりも放熱性が低かった。そして、比較例2では、比較例1よりも前記検出温度がいずれも高くなっており、比較例2の樹脂シートは、比較例1の樹脂シートよりも放熱性が低かった。このように、比較例2の樹脂シートは、その面方向と厚さ方向の両方において放熱性が低かった。
比較例2の樹脂シートは、連結フィラーを含んでいたが、板状フィラーを含んでおらず、その代わりに、他のフィラー(d2)を含んでいた。他のフィラー(d2)は、多面体状の酸化アルミニウムフィラーであった。
【0169】
比較例1~2の樹脂シートの比誘電率は、周波数1GHz及び10GHzのいずれの場合も、4以下の条件を満たしていなかった。
比較例1~2の樹脂シートの密度は、2g/cm以下の条件を満たしていなかった。
【0170】
試験例1の試験用樹脂シート(市販品の熱伝導性シート)は、加熱時の柔軟性を有しておらず、発熱体をより広範囲で覆うこと、埋め込むことができないものであった。
試験例1においては、図8に示すように、ポリカーボネート製基板の表面は、同一列中の4個の抵抗器が存在する領域で、これら抵抗器に跨る形で、60~80℃程度の熱を帯びており、これは2つの列が存在する領域で同様であった。しかし、試験例1においては、このような熱を帯びている領域が、実施例1の場合よりも狭かった。そして、これら2つの列の間の領域は、高い熱を帯びていなかった。これらの結果は、試験例1の樹脂シートは、その面方向における放熱性が、実施例1の樹脂シートの場合よりも低いことを示していた。上記のとおり、試験例1と実施例1とで、同一の抵抗器同士及び回路基板の回路面同士で、熱電対による検出温度を比較したとき、試験例1では実施例1よりも検出温度がいずれも高くなっており、試験例1の試験用樹脂シートは、実施例1の樹脂シートよりも放熱性が低かった。
【0171】
[実施例2]
<<樹脂シートの製造>>
ペレット状の樹脂組成物の使用量を変更した点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、単層構造の樹脂シート(厚さ1500μm)を製造した。すなわち、本実施例の樹脂シートは、実施例1の樹脂シートとは、その厚さのみが異なっていた。
【0172】
<<樹脂シートの評価>>
<樹脂シートの放熱性の確認(2)>
上記で得られた樹脂シート(厚さ1500μm)を、10cm×10cmの大きさに裁断した。
【0173】
抵抗器及び熱電対を備えた回路基板として、実施例1の場合と同じもの(図4に示すもの)を用意した。
次いで、回路面上の8個の抵抗器のすべてについて、その回路基板側とは反対側の面の全面を、熱電対を配置した場合には熱電対を介して、一括して、上記で得られた1枚の樹脂シート(厚さ1500μm)で被覆し、押圧した。これにより、抵抗器上の熱電対は、抵抗器と樹脂シートとの間に配置された。さらに、この被覆後の樹脂シートの抵抗器側とは反対側の面の全面に、1枚のポリカーボネート製基板(厚さ2000μm)を載せた。以上により、樹脂シートの放熱性を評価するための試験用回路基板を作製した。
【0174】
この試験用回路基板において、ポリカーボネート製基板の抵抗器側の面と、抵抗器のポリカーボネート製基板側の面と、の間の距離を、8個の抵抗器ごとに確認したところ、約400μmであった。したがって、樹脂シートの抵抗器を被覆している領域での、樹脂シートの埋め込み距離は、約1100μm(=1500μm-400μm)であった。
【0175】
上記で得られた試験用回路基板中のポリカーボネート製基板側の上部に、サーモグラフを設置した。
次いで、試験用回路基板中の8個の抵抗器全体で、消費電力が10Wとなるように電圧を調整し、試験用回路基板に電圧を印加した。この条件下で、サーモグラフにより、ポリカーボネート製基板の表面の温度を測定した。このときの抵抗器(1-1)、抵抗器(1-4)、抵抗器(2-2)、及び回路面における、熱電対による検出温度を表2に示す。
【0176】
<<樹脂シートの評価>>
<樹脂シートの放熱性の確認(2)>
[実施例1]
実施例1の樹脂シート(厚さ700μm)について、実施例2の場合と同じ方法で、樹脂シートの放熱性を確認した。このときの熱電対による検出温度を表2に示す。
【0177】
本実施例で用いた試験用回路基板において、ポリカーボネート製基板の抵抗器側の面と、抵抗器のポリカーボネート製基板側の面と、の間の距離を、8個の抵抗器ごとに確認したところ、約400μmであった。したがって、樹脂シートの抵抗器を被覆している領域での、樹脂シートの埋め込み距離は、約300μm(=700μm-400μm)であった。
本実施例では、試験用回路基板の回路面と、ポリカーボネート製基板の抵抗器側(回路面側)の面と、の間の距離を、実施例2の場合と同じとした。
【0178】
<<樹脂シートなしの場合の抵抗器の温度の確認>>
[試験例2]
樹脂シートを用いなかった点以外は、実施例2の場合と同じ方法で、試験を行い、熱電対による検出温度を確認した。結果を表2に示す。
【0179】
<<熱界面材料シートの放熱性の確認>>
[試験例3]
樹脂シート(厚さ1500μm)に代えて、試験例1で用いたものと同じ熱界面材料(TIM)シートを用いた点以外は、実施例2の場合と同じ方法で、熱界面材料シートの放熱性を確認した。本試験例では、回路面上の8個の抵抗器のすべてについて、その回路基板側とは反対側の面の全面を、熱電対を配置した場合には熱電対を介して、一括して、1枚の熱界面材料シートで被覆した。本試験例では、試験用回路基板の回路面と、ポリカーボネート製基板の抵抗器側(回路面側)の面と、の間の距離を、実施例2の場合と同じとした。このときの熱電対による検出温度を表2に示す。本試験例では、抵抗器上の熱電対は、抵抗器と熱界面材料との間に配置された。結果を表2に示す。
【0180】
【表2】
【0181】
上記結果から明らかなように、実施例1~2と試験例2とで、同一の抵抗器同士及び回路基板の回路面同士で、熱電対による検出温度を比較したとき、実施例1~2では試験例2よりも検出温度が顕著に低くなっていた。これは、試験例2では放熱構造を設けていないためであった。
さらに、実施例1~2と試験例3とで、同一の抵抗器同士及び回路基板の回路面同士で、熱電対による検出温度を比較したとき、実施例1~2では試験例3よりも検出温度が低くなっていた。これは、実施例1~2の樹脂シートが、試験例3の熱界面材料シートよりも、その面方向だけでなく厚さ方向においても、高い放熱性有することを示していた。試験例3の熱界面材料シートは、実施例1~2の樹脂シートよりも、埋め込み性が劣っていた。
上記の評価でも、発熱体(抵抗器)に対する樹脂シートの放熱性を、発熱体を樹脂シートで埋め込むことなく、簡易的に確認しているが、実施例2の樹脂シートは、実施例1の樹脂シートと同様に、発熱体をより広範囲で覆い、好ましくは埋め込むことによっても、高い放熱性を示すと推測された。このように、実施例2の樹脂シートは、加熱時の柔軟性が高く、その面方向と厚さ方向の両方において放熱性が高く、新たな放熱構造を構成可能であることを確認できた。
【0182】
さらに、実施例1と実施例2とで、同一の抵抗器同士及び回路基板の回路面同士で、熱電対による検出温度を比較したとき、実施例2では実施例1よりも検出温度が低くなっていた。これは、実施例2では、実施例1の場合よりも、樹脂シートの埋め込み距離が長く、そのため、樹脂シートによる放熱効果が高いためであった。
【0183】
[実施例3]
<<樹脂シートの製造>>
樹脂シートの含有成分の含有量を、表3に示すように変更した点と、ペレット状の樹脂組成物の使用量を変更した点、以外は、実施例1の場合と同じ方法で、単層構造の樹脂シート(厚さ1500μm)を製造した。
【0184】
<<樹脂シートの評価>>
<埋め込み率Rの算出>
上記で得られた樹脂シートについて、実施例1の場合と同じ方法で、埋め込み率Rを算出した。結果を表3に示す。
【0185】
<樹脂シートの放熱性の確認(3)>
上記で得られた樹脂シート(厚さ1500μm)を、5cm×5cmの大きさに裁断した。
【0186】
回路基板の回路面上に、1個の抵抗器を配置した。この抵抗器の高さ(すなわち、抵抗器の上面(回路基板側とは反対側の面)と、回路基板の回路面と、の間の距離)は、1.2mmであった。
次いで、この抵抗器に対して、細線型の熱電対を配置した。さらに、回路基板の回路面とは反対側の面(裏面)のうち、抵抗器の真下に相当する部位に、細線型の熱電対を1個配置した。
【0187】
次いで、回路面上の抵抗器について、その回路基板側とは反対側の面の全面を、熱電対を介して、上記で得られた1枚の樹脂シート(厚さ1500μm)で被覆し、押圧した。これにより、抵抗器上の熱電対は、抵抗器と樹脂シートとの間に配置された。さらに、この被覆後の樹脂シートの抵抗器側とは反対側の面の全面に、1枚のポリカーボネート製基板(厚さ2000μm)を載せた。以上により、樹脂シートの放熱性を評価するための試験用回路基板を作製した。
【0188】
この試験用回路基板において、ポリカーボネート製基板の抵抗器側の面と、抵抗器のポリカーボネート製基板側の面と、の間の距離を確認したところ、約400μmであった。この試験用回路基板においては、樹脂シートの回路基板側の面のうち、抵抗器と接触していない領域は、回路基板(より具体的には回路面)に接触しており、抵抗器は樹脂シートによって完全に埋め込まれていた。
【0189】
上記で得られた試験用回路基板中のポリカーボネート製基板側の上部に、サーモグラフを設置した。
次いで、試験用回路基板中の抵抗器で消費電力が2.5Wとなるように電圧を調整し、試験用回路基板に電圧を印加した。この条件下で、サーモグラフにより、ポリカーボネート製基板の表面の温度を測定した。このときの熱電対による検出温度を表3に示す。
【0190】
<樹脂シートの面方向における熱伝導率、比誘電率、誘電正接及び密度の測定>
上記で得られた樹脂シートについて、実施例1の場合と同じ方法で、熱伝導率、比誘電率、誘電正接及び密度を測定した。結果を表3に示す。
【0191】
[実施例4]
<<樹脂シートの製造>>
樹脂シートの含有成分の含有量を、表3に示すように変更した点と、ペレット状の樹脂組成物の使用量を変更した点、以外は、実施例1の場合と同じ方法で、単層構造の樹脂シート(厚さ1500μm)を製造した。
【0192】
<<樹脂シートの評価>>
<埋め込み率Rの算出>
上記で得られた樹脂シートについて、実施例1の場合と同じ方法で、埋め込み率Rを算出した。結果を表3に示す。
【0193】
<樹脂シートの放熱性の確認(3)>
実施例3の場合と同じ方法で、上記で得られた樹脂シートの放熱性を確認した。このときの熱電対による検出温度を表3に示す。
【0194】
本実施例で用いた試験用回路基板において、ポリカーボネート製基板の抵抗器側の面と、抵抗器のポリカーボネート製基板側の面と、の間の距離を確認したところ、約400μmであった。この試験用回路基板においても、実施例3の場合と同様に、樹脂シートの回路基板側の面のうち、抵抗器と接触していない領域は、回路基板(より具体的には回路面)に接触しており、抵抗器は樹脂シートによって完全に埋め込まれていた。
【0195】
<樹脂シートの面方向における熱伝導率、比誘電率、誘電正接及び密度の測定>
上記で得られた樹脂シートについて、実施例1の場合と同じ方法で、熱伝導率、比誘電率、誘電正接及び密度を測定した。結果を表3に示す。
【0196】
<<樹脂シートなしの場合の抵抗器の温度の確認>>
[試験例4]
樹脂シートを用いなかった点以外は、実施例3の場合と同じ方法で、試験を行い、熱電対による検出温度を確認した。結果を表3に示す。
【0197】
<<熱界面材料シートの放熱性の確認>>
[試験例5]
抵抗器及び熱電対を備えた回路基板として、実施例3の場合と同じものを用意した。
次いで、回路面上の抵抗器について、その回路基板側とは反対側の面の全面を、熱電対を介して、試験例1で用いたものと同じ1枚の熱界面材料(TIM)シートで被覆し、押圧した。すなわち、本試験例においては、実施例3~4の場合とは異なり、樹脂シート(厚さ1500μm)に代えて熱界面材料シートを用いた。これにより、抵抗器上の熱電対は、抵抗器と熱界面材料シートとの間に配置された。さらに、この被覆後の熱界面材料シートの抵抗器側とは反対側の面の全面に、1枚のポリカーボネート製基板(厚さ2000μm)を載せた。以上により、熱界面材料シートの放熱性を評価するための試験用回路基板を作製した。
本試験例では、試験用回路基板の回路面と、ポリカーボネート製基板の抵抗器側(回路面側)の面と、の間の距離を、実施例3の場合と同じとした。
【0198】
上記で得られた試験用回路基板中のポリカーボネート製基板側の上部に、サーモグラフを設置した。
次いで、試験用回路基板中の抵抗器で消費電力が2.5Wとなるように電圧を調整し、試験用回路基板に電圧を印加した。この条件下で、サーモグラフにより、ポリカーボネート製基板の表面の温度を測定した。このときの熱電対による検出温度を表3に示す。
【0199】
【表3】
【0200】
上記結果から明らかなように、実施例3~4と試験例4とで、抵抗器同士及び回路基板の裏面同士で、熱電対による検出温度を比較したとき、実施例3~4では試験例4よりも検出温度が顕著に低くなっていた。これは、試験例4では放熱構造を設けていないためであった。
さらに、実施例3~4と試験例5とで、抵抗器同士及び回路基板の裏面同士で、熱電対による検出温度を比較したとき、実施例3~4では試験例5よりも検出温度が低くなっていた。これは、実施例3~4の樹脂シートが、試験例5の熱界面材料シートよりも、その面方向だけでなく厚さ方向においても、高い放熱性有することを示していた。試験例5の熱界面材料シートは、実施例3~4の樹脂シートよりも、埋め込み性が劣っていた。
このように、実施例3~4の樹脂シートは、加熱時の柔軟性が高く、その面方向と厚さ方向の両方において放熱性が高く、新たな放熱構造を構成可能であることを確認できた。
【0201】
さらに、実施例3と実施例4とで、抵抗器同士及び回路基板の裏面同士で、熱電対による検出温度を比較したとき、実施例4では実施例3よりも検出温度が低くなっていた。これは、樹脂シートの組成の相違に基づいており、実施例4の方が実施例3の場合よりも、樹脂シートによる放熱効果が高いためであり、これら樹脂シートの面方向における熱伝導率の結果と整合していた。
【0202】
実施例3~4の樹脂シートは、熱可塑性樹脂と、板状フィラーと、連結フィラーと、を含んでいた。また、実施例3~4のシートにおいて、板状フィラーの含有量に対する、連結フィラーの含有量の割合は、99.1~296.6体積%であった。
【0203】
実施例3の樹脂シートは、UL94規格の等級V-2(1.5mmt)を満たし、実施例4の樹脂シートは、UL94規格の等級V-0(1.5mmt)を満たしていた。
【0204】
実施例3~4の樹脂シートの比誘電率は、周波数1GHz及び10GHzのいずれの場合も、4以下の条件を満たしていた。
実施例3~4の樹脂シートの誘電正接は、1GHz及び10GHzのいずれの場合も、0.01未満の条件を満たしていた。
実施例3~4の樹脂シートの密度は、2g/cm未満の条件を満たしていた。
【産業上の利用可能性】
【0205】
本発明は、CPUを備えた電子機器において、新たな放熱構造を構成するのに利用可能であり、CPUに限定されず、CPUと同様の発熱体を備えた他の機器でも、放熱構造を構成するのに利用可能である。
【符号の説明】
【0206】
1・・・樹脂シート
3・・・筐体
4・・・ヒートスプレッダー
5・・・発熱体
6・・・接続部
7・・・回路基板
8・・・錘
9・・・押し込み材
10・・・試験片
・・・樹脂シートの面方向
・・・樹脂シートの厚さ方向
・・・試験片の厚さ
・・・加熱加圧後の加圧部位での試験片の厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8