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  • 特開-難分解性物質に対する原位置処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045044
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】難分解性物質に対する原位置処理方法
(51)【国際特許分類】
   B09C 1/08 20060101AFI20240326BHJP
   B09C 1/10 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B09C1/08 ZAB
B09C1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023150134
(22)【出願日】2023-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2022150368
(32)【優先日】2022-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】508120400
【氏名又は名称】有限会社エコルネサンス・エンテック
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104237
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】尾張 新吾
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 武
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雄大
(72)【発明者】
【氏名】倉部 美彩子
(72)【発明者】
【氏名】佐俣 莉子
(72)【発明者】
【氏名】隅倉 光博
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA41
4D004AB08
4D004AC07
4D004CA18
4D004CA34
4D004CA36
4D004CA37
4D004CC11
(57)【要約】
【課題】立体導電網と各種減成反応を組み合わせた従前の原位置浄化技術において、期せずして立体導電網内の活性炭に蓄積された難分解性化合物類に対する原位置減成方法や新興の難分解性汚染であるPFASに対する原位置処理方法の確立が必要であった。
【解決手段】立体導電網を構成する活性炭により濃縮された難分解性化合物類に対し、電解反応によって難分解性化合物類の低分子化を図り、更に立体導電網に生息する土着微生物の異化作用をもって一連の減成操作を完了する、費用対効果に優れた難分解性化合物類に対するハイブリッド減成工法を市場に提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に施用された活性炭粒子にて捕捉された、パーフルオロアルキル化合物、ポリフルオロアルキル化合物及び/又はこれらの塩類を包含する難分解性化合物類に対して減成を図る方法であって、
前記活性炭粒子の施用エリアに対し電解処理による前記難分解性化合物類の低分子化を図った後に、土着微生物の非共代謝系による異化代謝を図ることを特徴とする難分解性化合物類に対する原位置処理方法。
【請求項2】
前記電解処理における電解反応場に対し、ガススパージング、塩類溶液供給の少なくともいずれか一方を実施することを特徴とする請求項1に記載の難分解性化合物類に対する原位置処理方法。
【請求項3】
前記電解処理の前段として、活性炭粒子による難分解性化合物類の濃縮・分配状態を把握する分析工、該活性炭粒子の施用エリアに対し、おしなべて等しい隣接距離にて電極を設置し、更に電子を放出する陰極数と陽極数を不揃いに設定する該電解処理の準備工、該電解処理の工程において、該電極に対し通電区分を設けて集約し、各通電区分の極性を一定のシーケンスに従って順次転換させて該電圧印加を実施する作業を併せて実施する付帯工の、少なくともいずれか一つを実施することを特徴とする請求項1または2に記載の難分解性化合物類に対する原位置処理方法。
【請求項4】
前記電解処理の準備工において、正多角形を構成するごとくに、設定本数の少ない極性の電極を該正多角形の重心位置に、また設定本数の多い極性の電極を該正多角形の頂点に、設定することを特徴とする請求項3に記載の難分解性化合物類に対する原位置処理方法。
【請求項5】
前記シーケンスが、前記正多角形の各頂点と重心に該当する電極の配位毎に同一の通電区分を設定し、該正多角形の頂点と重心に該当する電極の極性配位を保ったままに、該通電区分毎に極性を順次転換させる電圧印加の制御により構成されることを特徴とする請求項3に記載の難分解性化合物類に対する原位置処理方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤に施用された活性炭粒子に集積した難分解性化合物類の減成方法、更には、この減成方法を応用した難分解性化合物類に対する原位置処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
活性炭を対策対象メディアに施用する従来の清澄化技術は、上水分野における造水技術や土壌地下水汚染分野における浄化技術として用いられ、専ら活性炭粒子による汚染物質の吸着と共に、必要に応じて活性炭に吸着された汚染物質に対し減成処理を講じる技術であった。
【0003】
一般に、環境中の汚染物質の多くは、基準濃度レベルの低濃度で存在する。この低濃度における減成反応の多くは、汚染が低濃度であれば減成速度も低速化する様な、濃度に依存する一次反応に支配され、極めて非効率な減成反応となっていた。
【0004】
ところが、環境中の汚染物質に対し活性炭粒子を施用すると、活性炭粒子表面とその周囲環境には極端な汚染物質の濃度バイアスが形成されて、一次反応的であった減成反応が著しく改善される。
即ち、活性炭周囲の環境濃度は施用直後から専ら基準値以下の極低濃度に規正される一方で、活性炭粒子表面では、高度な汚染濃縮化が図られ、濃度に依存しない高速で定常化した零次反応的な反応場が形成される。
この様に、活性炭と減成反応を組み合わせた清澄化技術は、極めて合目的で効率的な浄化を達成可能な技術であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6750865号公報
【特許文献2】特許第7005067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、活性炭粒子を利用した清澄化対象を、原位置における土壌地下水汚染に限定するならば、特許文献1にて示される様に、活性炭等の地盤への施用によって誘導・形成される立体導電網を用いて、周囲環境の汚染濃度を基準値以下に規正し、一方、活性炭等の表面では汚染濃縮による高濃度化を図り、特許文献1や特許文献2に示される様な、多様な減成方法による零次反応的な高速浄化処理が図られる。
【0007】
具体的には、活性炭等を汚染対象に施用し立体導電網を形成して汚染物質の減成を図る特許文献1の請求項1に記載される技術を基本として、以下の(A)~(D)に示すがごとく、微生物代謝や化学反応等を用いた多様な減成方法を、不均質である汚染土壌に適用し、一様・均質ではない複合的な浄化処理として展開する。
(A)立体導電網を活用して、鉄還元細菌の優占化を図り、(デハロコッコイデス科細菌等との共生環境の構築を推進して)還元的脱塩素代謝の促進を図る特許文献1の請求項6に記載の減成方法。
(B)鉄還元細菌によって連通が強化された立体導電網にて、活性炭と鉄粉を、少なくとも局所で会合させ、立体導電網を通じた電子移動による還元的脱塩素反応の促進を図る特許文献1の請求項6に記載の減成方法。
(C)立体導電網の細菌叢に対し、分子状酸素ガスを供給し好気性細菌の汚染代謝を促進する、或いは、化学的酸化反応による汚染物質の減成を図る特許文献1の請求項7に記載の減成方法。
(D)立体導電網を活用して、鉄還元細菌の優占化を図り、過酸化水素、二価鉄、有機酸の生成を、鉄還元細菌の好気/嫌気代謝サイクルを空気または酸素を含む気体の断続的通気設定により促して、微生物駆動型のフェントン反応の誘導を図る特許文献1の請求項8に記載の減成方法。
【0008】
或いは、特許文献2にて示される様に、pH3を超える弱酸性からアルカリ条件下にある汚染土壌に対し、活性炭と還元鉄が、同一粒子、或いは隣接状態にある粒状物を施用して、分子状酸素から活性酸素利用に至るバラエティに富んだ酸化に続く還元の一連の反応にて除染を図る特許文献2の請求項1に記載の減成方法が採られる。
【0009】
しかしながら、この様な従前技術による減成を免れ、期せずして立体導電網内の活性炭に蓄積される難分解性化合物類が少なからず存在することが、従前の立体導電網技術の実地展開における活性炭機能の経年劣化から予見されていた。この意図しない蓄積原因の多くは、敷地外からの地下水を介した難分解性化合物類の流入であった。
【0010】
係る難分解性化合物類が、土壌汚染対策法における規制物質である場合の敷地外からの流入は、単に同法法定調査での見落としに他ならない。基本的に対象事業所にて取り扱いが無かった規制物質に関しては、調査・浄化対象とならない場合も多く、この様に見落とされた規制物質が、別対象の減成を図る目的で施用された活性炭での減成を免れて吸着されてしまう場合があった。
【0011】
一方、未規制物質である難分解性化合物類の敷地外からの流入は、未規制であるが故、基本的に防ぎようがない。実際、新興の汚染物質として国内外にて注目されるパーフルオロアルキル化合物、ポリフルオロアルキル化合物及び/又はこれらの塩類(以下、PFASという。)に属する一部の化合物が、既設の立体導電網試料の分析によって検出されている。
【0012】
このように、期せずして立体導電網内の活性炭に蓄積された難分解性化合物類に対する原位置減成方法や新興の難分解性汚染であるPFAS等に対する原位置処理方法の確立の必要性に鑑み、係る開発に鋭意取り組んだ結果、PFASをはじめ難分解性化合物類の全般に対し、極めて強力な減成作用を発揮する本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述の課題を解決するための本発明の要旨とするところは、次の発明に存する。
地盤に施用された活性炭粒子にて捕捉された、パーフルオロアルキル化合物、ポリフルオロアルキル化合物及び/又はこれらの塩類を包含する難分解性化合物類に対して減成を図る方法であって、
前記活性炭粒子の施用エリアに対し電解処理による前記難分解性化合物類の低分子化を図った後に、土着微生物の非共代謝系による異化代謝を図ることを特徴とする難分解性化合物類に対する原位置処理方法。
【発明の効果】
【0014】
立体導電網と各種減成反応を組み合わせた従前の原位置浄化技術において、期せずして立体導電網内の活性炭に蓄積された難分解性化合物類に対する減成や新興の難分解性汚染物質であるPFAS等に対する原位置処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の代表的な実施形態である、地盤に施用された活性炭粒子に吸着された難分解性化合物類の原位置処理方法を説明する断面図である。
図2】本発明の代表的な実施形態である、原位置処理方法で用いる電極の配置方法の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を代表する実施の形態を、図と実施事例を踏まえて説明する。
【0017】
図1は、本発明の代表的な実施形態である飽和帯1に施用された活性炭粒子の存在部位2にて捕捉された難分解性化合物類の原位置処理方法を説明する断面図である。
【0018】
この実施形態では、飽和帯1に存在する、難分解性化合物類を捕捉した活性炭粒子の存在部位2(例えば、特許文献1の立体導電網が該当する。)に対し、複数の電極類3を、帯水層基底を構成する不透水層4の上部まで配置し、電圧印加を常時、又は、断続的に実施できる様に構成されている。電極類3は、図中にて3aから3eに示す様に、多様な設置方法が存在するので、用途や必要に応じて選択して設置する。
【0019】
ところで、本発明における活性炭粒子の存在部位2における電解に関しては、詳細な検討の結果、活性炭粒子の存在部位2たる立体導電網における陰極及び陽極の両電極によって生じた電界内において、陰極及び陽極の両電極、並びに、両極と繋がった立体導電網における活性炭粒子の表面にて酸化還元反応が誘導される他に、これらの表面とは直接繋がらない、独立した立体導電網における活性炭粒子の表面でも酸化還元反応が誘導されることが分かっている。
この現象は、ラボでの小規模検討では確認できなかったが、シス-1・2-ジクロロエチレンが単独で検出される汚染サイトにおける現地パイロット試験にて、電極を1m、或いは2mピッチで設置した、陽/陰極を固定した試験において、両電極の中点に設置したスマート井戸10(特許文献1の請求項10に記載の井戸様構造物:本件の仕様は電極を内蔵しない観測井戸タイプ)の観測ストレーナ部より、断続通電3日後に採取した地下水にて、シス-1・2-ジクロロエチレンの還元生成物であるモノクロロエチレンとエチレンが検出され、更に酸化生成物であるジクロロ酢酸が同時に検出されたことに起因する。結果、前記の独立した立体導電網の表面が、両極に分極して酸化と還元の両反応が誘導される様な、一般的な陽極や陰極を介した電解とは明らかに異なる電解反応場が形成されているとの結論に至った。
【0020】
このように、本発明における減成は、両電極とそれに連なる立体導電網の表面、或いはこれらから独立した立体導電網の表面と、様々な電解反応場における酸化還元反応を生じるが、いずれも対象である難分解性化合物類に対して低分子化を図るという点で一致する。
また、この低分子化過程において有機酸や脱ハロゲン化された難分解性化合物類は、活性炭からより遊離しやすくなり、続いて土着微生物の非共代謝系による異化代謝処理に供されるという共通機構により無機化に至るまで減成される。
【0021】
この土着微生物の非共代謝系による異化代謝に関し、前述の断続通電3日後の地下水試料を用いた評価を実施した。採取した地下水を2つに分けて、一方には無機培地(ダイゴIMK培地)を添加し、もう一方はフィルター滅菌(ポア径:0.2μm)を施した後に、各々100ml容滅菌バイアル瓶に50ml封入し、ヘッドスペースは空気として、密栓後、20℃、100rpmで振盪培養を実施し、シス-1・2-ジクロロエチレンの還元生成物(モノクロロエチレンとエチレン)と酸化生成物(ジクロロ酢酸)のC/Cたる残存度を観察した。
結果、無機培地添加系バイアルのヘッドスペースにて検出されていたモノクロロエチレンとエチレンは7日目には消失し、10日目には培養液中のジクロロ酢酸が消失した。一方、滅菌系バイアルのヘッドスペースにて検出されていたモノクロロエチレンとエチレンは、7日目には初期濃度の8割程度が残存し、また10日目の培養液中のジクロロ酢酸は9割程度の残存が確認され、滅菌系バイアルでは顕著な減成は観察されなかった。
総じて、難分解性化合物類に対する酸化還元反応により低分子化が図られた2次派生物類は、現地の土着微生物の好気的な異化代謝による減成が図られたと考察された。
【0022】
ところで、対象の難分解性化合物類に応じて、通電エリアの飽和帯における栄養塩濃度、電解質濃度、pH等の管理を行って、減成処理効率を高める操作を実施する場合には、スマート井戸10等のスパージング機能を用いて、ガススパージングと共に塩類溶液の供給を図る、或いは、通電エリア内の地下水流の上流部にあたる位置に注入井戸を、下流部にあたる位置に回収井戸を設置し、高回収率を有する地下水循環系を構築し、この循環系に塩類溶液を供給して、通電エリアの塩類濃度を減成に最適な条件に整える。
【0023】
なお、電圧印加の過程では、電極から酸素や水素等の電解ガスが発生する場合がある。これらのガスは支燃性や可燃性を有するので、燃焼や爆発が起きにくい地盤中での適切な処置が好ましい。また、活性炭から溶出した難分解性化合物類や派生の低分子化物質が、発生した電解ガス流に移相してくる場合もあるので、これらを必要に応じて適切に処置する。
【0024】
発生ガスへの対処の一例を挙げると、図1に示される電極設置エリアの地表面に、絶縁性ガス拡散防止シート6を設置し、不飽和帯7に作成された砕石帯9と井戸様ガス回収管8を通じて発生ガスの減圧回収と希釈を併せて実施する。
係る電解ガス等の希釈方法としては、砕石帯9を通じて井戸様ガス回収管8内に回収して希釈する方法や電解反応場に散気して希釈を行う方法が挙げられるが、両方法を同時に実施しても良い。
前者の方法は、例えば、電極類3を井戸内に設置する場合(3b~3e)は、少なくとも砕石帯9の一部の区間と電極による電解が実施されている区間をストレーナ管構造とし、主として電極部で発生したガスの減圧回収を砕石帯9と井戸様ガス回収管8を通じて実施する。なお、回収ガスの希釈は、井戸様ガス回収管8の両端の一方よりエゼクター等を用いた防爆式のガス吸引を実施し、別な一方より大気を井戸様ガス回収管8に引き込むことにより、回収と同時に希釈を実施する。
また、後者の方法は、例えば、図1の3dや3eのごとく、上部ストレーナ部に電極を収めたスマート井戸の帯水層基底と接する様に設置されたスパージング向ストレーナ部よりガススパージングを実施し、電解反応場たる、両電極とそれに連なる立体導電網の表面、或いはこれらから独立した立体導電網の表面に対し直接散気を行う方法である。
【0025】
ところで、この電解反応場に対し直接散気を行う方法は、散気ガスとして酸素を含むガスを用いると、電解ガスの希釈のみならず、電解反応場における還元反応部にて活性酸素種を生成する反応を助長する、電解処理を酸化反応側に偏向させる作用を生じる場合があることが、本発明に至る過程にて明らかとなっている。
前述のシス-1・2-ジクロロエチレンが単独で検出される汚染サイトを用いた現地パイロット試験における陽/陰極を固定した試験において、図1の3dタイプの電極を設置したスマート井戸の帯水層基底と接する様に設置されたストレーナ部より、圧縮空気を帯水層に散気した際、スマート井戸の陰極を収めたストレーナ部から採取された地下水中にて、散気前は観察されなかったシス-1・2-ジクロロエチレンの酸化生成物であるジクロロ酢酸が検出される現象が観察された。
この現象は、工業用酸素ガスの散気で助長され、窒素ガスの散気とマンニトールの存在下で阻害されたことから、散気中の酸素成分により陰極たる還元反応部にて酸化反応を助長する、少なくともヒドロキシラジカルを含む活性酸素種の生成反応が起こったことに起因すると結論づけられた。
係る活性酸素種の生成反応は、還元反応による減成が期待できない非有機ハロゲン化合物である、ベンゼン、1,4-ジオキサンや、還元反応終点で規制物質を生成してしまうクロロベンゼン類等に対する電解処理への適用が想定される。
【0026】
なお、前述の汚染サイトを用いた現地パイロット試験における陽/陰極を固定した試験と同様な設定にて、添加する電解質に関する検討を実施した際に、電解質液の溶質を硫酸塩にした場合、両電極の中点に設置したスマート井戸10(電極を内蔵しない観測井戸兼スパージング井戸)にて、酸化反応が進行する現象が観察された。
この現象は、添加する硫酸塩濃度に比例し、通気ガスを空気から窒素ガスとした場合、或いは無通気の場合に促進されたこと、また、別途のラボ試験にて、硫酸塩存在下にて、パーフルオロオクタン酸(PFOA)の顕著な分解が観察され、一方、パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)の酸化分解が僅かであったことから、硫酸ラジカルの生成が強く示唆された。
理論上では、硫酸イオンを初発物質として、まずは陽極での酸化によって過硫酸ラジカルを生成し、続いて過硫酸ラジカルの陰極での還元が速やかに進行することにより硫酸ラジカルが生成する可能性が示唆される。また、両電極から独立した活性炭粒子の表面が、両極に分極して酸化と還元の両反応が誘導される本発明における独特な電解場は、両極での酸化還元反応を必要とする硫酸ラジカルの生成にとって、極めて好条件であるとも言える。
これら一連の検討により、本発明によって、高価な過硫酸資材を用いずとも、安価な硫酸塩を材料に硫酸ラジカルを発生させることにより、難分解性化合物類の酸化分解を廉価に図れる可能性が示唆された。
【0027】
ところで、図1の電極類3は、導電体であれば良く、材質や形状は限定されない。例えば、グラファイトや棒状や管状の金属構造物などで形成されている電極が使用可能である。また不導電体の外側に導電体にて構成された電極体を用いても良い。
係る電極類3の設置数や配置密度/ピッチは、活性炭の施用濃度、地下水のイオン強度、鉄還元細菌等の導電微生物濃度等に支配される系の通電性に依存する。通電性が乏しい通常環境に近い状況では概ね1mピッチ程度を目安とし、より通電性の良い条件では、通電性に応じて適切にピッチを伸延して電極類3を対象エリアに設置する。
また、電極の設置は、図1の3aから3eに示す様に、電極を直接地盤に設置(3a)しても良いし、井戸を設置してその中に設置(3bから3e)しても良い。井戸を設置する場合、地盤に存在する立体導電網への電気的な導通を考慮(3cと3e)するのであれば、井戸、間詰材、井戸内充填物等は、必要に応じて導電性の高い資材を用いる。
加えて、陽極が消耗電極となる場合には、時間経過に伴って電極交換が必要となるので、係る交換が容易となるような設定とする。
【0028】
更に、多数の電極を対象エリアに設置する場合は、隣接する井戸間の距離が概ね均等となる様に、正多角形の頂点と重心に相当する電極の配位を1セット(例えば、図2に示すところでの、重心:ト、頂点:イ/ロ/ハ/ニ/ホ/へとする正六角形)として、このセット形状を密接する様に組み合わせて、対象エリアに電極をまんべんなく設置する。
【0029】
ここで、電子を放出する陰極数と陽極数を不揃いとし、正多角形を構成するごとくに、設定本数の少ない方の電極を重心に、設定本数の多い方の電極を頂点に設定しても良い。
【0030】
なお、これらの電極に加える直流電源の印加電圧は、地中の導電性に応じて数V~数百Vの範囲にて適宜設定する。
【0031】
また、正多角形の各頂点と重心に該当する電極の配位毎に同一の通電区分を設定し、正多角形の頂点と重心に該当する電極の極性配位を保ったままに、通電区分毎に極性を順次転換させる電圧印加の制御を実施して、難分解性化合物類に対し、対象の難分解性化合物の電解による低分子化を図るとともに、通電によって生じる電気浸透流による通電エリアに伏在する難分解性化合物類の抽出と立体導電網内の活性炭粒子への移相を併せて図っても良い。
【0032】
この操作を、現地パイロット試験で用いた井戸配置の実施例に基づいて作成した図2の電極配置図を用いて具体的に説明する。「ト」を重心とする正六角形(頂点:イ/ロ/ハ/ニ/ホ/へ)のセットを例に挙げて説明すると、周囲には、「ネ」、「ウ」、「ク」、「ケ」、「ヲ」、「タ」を正六角形の重心とする各セットが存在し、これらの重心の位置に据えられた電極を集約して同一の通電区分とする。
同様に、正六角形の重心たる「ト」から見て12時方向に存在する頂点:へと同様の配位を採る、他の正六角形の12時方向の頂点である「ロ」、「ニ」、「オ」、「マ」、「リ」、「ル」の位置に据えられた電極を集約して同一の通電区分とする。以下は同様に、正六角形の各頂点配位にて共通する電極を集約して同一の通電区分とする。
【0033】
ここで、重心を陽極とし、頂点を陰極とする電解処理の設定を例に挙げて説明すると、正六角形の頂点と重心に該当する電極の極性配位を保ったままに、重心に設定される陽極を、「トの通電区分」→「イの通電区分」→「ロの通電区分」→「ハの通電区分」→「ニの通電区分」→「ホの通電区分」→「への通電区分」とスライドし、再度、「トの通電区分」に戻る迄に、通電エリアに敷設した全ての電極が、この1タームにて6回の陰極と1回の陽極の極性に設定される。
このタームを繰り返す一連の電極への電圧印加を、シーケンス制御電源装置5を用いて実施して、対象の難分解性化合物の低分子化とともに、通電エリアに伏在する難分解性化合物類の抽出と立体導電網内の活性炭粒子への移相と電解を図る。
【0034】
なお、電圧印加による移相と低分子化を停止した後に、活性炭粒子の存在部位2を、低分子化が図られた難分解性化合物類の派生分子に対する土着微生物の非共代謝系による異化代謝に適した条件に移行・設定せしめる。
係る異化代謝に適した条件は、現地に存在する派生分子を資化可能な土着微生物が有する異化代謝系や呼吸系の特性に依存するので、現地調整の実践にて執り行う必要がある。
前述した電解による低分子化を図って生じた難分解性化合物類由来の派生分子に対し、現地の立体導電網に生息する土着微生物の非共代謝系による異化代謝を図ることで、これらの派生分子を無機化に至るまで減成し、一連の原位置処理を完了する。
【0035】
ところで、図1は、飽和帯1に施用した活性炭粒子の存在部位2における電解に特化した説明図となっているが、鋭意検討した結果、本発明の適用は飽和帯1に限定されず、不飽和帯7に施用した活性炭粒子に対しても適用可能であることが明らかとなった。
即ち、不飽和帯7に本発明を適用する場合は、不飽和帯7に活性炭粒子を施用した後に、土壌間隙が水分で飽和される様に、例えば、地上部にてギャラリー構造を有する砕石帯9に水を張って、地盤に対し水分を地上から垂直に浸透させて土壌間隙を水分で満たすことにより、飽和帯1と同様に電解処理が達成される。
また通電エリアを不飽和帯7とした場合に、栄養塩濃度管理、電解質濃度管理やpH管理等において塩類濃度を変化させて減成効率を高める操作を実施する場合には、通電エリアの直下の帯水層にて揚水を実施して、地上部にてギャラリー構造を有する砕石帯9に返送する地下水循環系を構築し、この循環系に対し塩類溶液の添加を実施する。
【0036】
また、本発明においては共代謝系を通じた微生物分解を実施しないこととする。共代謝処理は、対象とする難分解性化合物類や中間代謝化合物のアナログ物質等を改めて系に供給することが必須となり、この供給方法や作業の導入は、系の複雑化と煩雑化をもたらす懸念を有する。加えて、これらの供給が不確実になると浄化が不適切となることから、特殊な共代謝系に頼らない自然に普遍的な微生物代謝系をもって本発明であるところの原位置処理を完結する。
【0037】
なお、上記一連の実施を決定する前には、当該汚染サイトの地下水・土壌を用いたフィージビリティ試験やトリータビリティ試験を実施することは極めて重要である。
【0038】
前者のフィージビリティ試験では、例えば、現地の汚染試料(地下水、或いは、現地の汚染土壌と現地の地下水又は純水との懸濁水をチーズクロス濾過したもの)と粉末活性炭を100ml容ビーカー内でスターラ撹拌装置一式を用いて撹拌し、この撹拌状態を保ちながら1cmの間隔を有した平板電極対を活性炭混合地下水溶液に浸漬して電解を図り、対象汚染物質の減成を観察する。具体的には、実験系の固体形成物(粉末活性炭や汚染土壌粒子等)中の対象とする汚染物質濃度の初期濃度と処理後濃度を観察する。
また、フィージビリティ試験における電解条件は、種々を検討した結果、現状では、600mv/m(2時間)に固定している。これまでに、本フィージビリティ試験に供した種々の難分解性化合物類に対する電解による減成結果を、半減期に基づいて以下にまとめる。
【0039】
(実施結果1:半減期2時間未満の減成が観察された難分解性化合物類)
四塩化炭素、ジクロロメタン、1・2-ジクロロエタン、1・1-ジクロロエチレン、シス-1・2-ジクロロエチレン、1・1・1-トリクロロエタン、1・1・2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1・3-ジクロロプロペン、ベンゼン、クロロエチレン、DDT、2,4-D、1,4-ジオキサン、TNT、RDX(シクロトリメチレントリニトラミン)、PAH類(ベンゾ[a]ピレン、ベンゾ[a]アントラセン、ジベンゾ[a,h]アントラセン、アセナフテン、アセナフチレン、ナフタレン、フルオレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、ピレン、ベンゾ[b]フルオランテン、ベンゾ[k]フルオランテン、クリセン、インデノ(1,2,3-cd)ピレン、ベンゾ[g,h,I]ペリレン、ベンゾ[j]フルオランテン、ベンゾ[e]ピレン)、シアン化合物(シアン化塩、鉄シアノ錯体、銅シアノ錯体、ニッケルシアノ錯体)、ダイオキシン類(テトラクロロジベンゾ-p-ジオキシン、ペンタクロロジベンゾ-p-ジオキシン、ヘキサクロロジベンゾ-p-ジオキシン、ヘプタクロロジベンゾ-p-ジオキシン、オクタクロロジベンゾ-p-ジオキシン、テトラクロロジベンゾフラン、ペンタクロロジベンゾフラン、ヘキサクロロジベンゾフラン、ヘプタクロロジベンゾフラン、オクタクロロジベンゾフラン、テトラクロロビフェニル、ペンタクロロビフェニル、ヘキサクロロビフェニル、ヘプタクロロビフェニル)、モノクロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、MTBE(2-メトキシ-2-メチルプロパン)、四アルキル鉛等。
【0040】
(実施結果2:半減期2時間以上16時間未満の減成が観察された難分解性化合物類)
PFAS類(ペルフルオロブタン酸、ペルフルオロペンタン酸、パーフルオロヘキサン酸、ペルフルオロヘプタン酸、パーフルオロオクタン酸(PFOA)、ペルフルオロノナン酸、ペルフルオロデカン酸、ペルフルオロウンデカン酸、ペルフルオロドデカン酸、パーフルオロトリデカン酸、パーフルオロテトラデカン酸、パーフルオロブタンスルホン酸、パーフルオロヘキサンスルホン酸、パーフルオロヘプタンスルホン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)、ペフルオロデカンスルホン酸、6:2フルオロテロマースルホン酸)、油類(ガソリン、灯油、軽油、モーターオイル、A重油、C重油)、他COD(化学的酸素要求量)成分等。
【0041】
(実施結果3:半減期16時間以上の減成であった難分解性化合物類)
現時点で該当無し
【0042】
なお、上記の実施結果1~3は、各難分解性化合物類を含む汚染サイト由来の試料に基づく初期濃度が一様でない試験結果を含むものであり、加えて、試料由来の夾雑物の影響や電解ガス発生に伴う揮散等の影響を少なからず包含する、あくまでも定性的な減成の目安と理解されたい。
【0043】
また、後者のトリータビリティ試験では、実施工での最小ユニットと目される電極1対の設置に対する実施工設計に資する条件の取得を目的とする。
特に陽極と陰極の両電極間の間隔や電流密度についての評価や、補助的に用いる電解液の種類や濃度に関する感度解析的な試験を実施して最適条件を求め、続いて処理時間に関する評価を実施する。
係る一連の評価はラボにて現地の地下水や土壌を用いて実施することもできるが、できれば、実現場を用いた実規模のパイロット試験の実施が好ましい。
【0044】
ところで、本発明以前に、地盤に設置する活性炭粒子の施用方法、施工、目的等の一切に関しては、本発明において、特段の指定は無く、地盤に活性炭粒子が存在し、係る活性炭粒子に難分解性化合物類が吸着されている状況であれば、本発明による原位置浄化処理の対象となることは、いうまでもない。
【0045】
以上に説明した実施の形態および実施事例より、次の発明概念が導かれる。
(1)地盤に施用された活性炭粒子にて捕捉された、パーフルオロアルキル化合物、ポリフルオロアルキル化合物及び/又はこれらの塩類を包含する難分解性化合物類に対して減成を図る方法であって、
前記活性炭粒子の施用エリアに対し電解処理による前記難分解性化合物類の低分子化を図った後に、土着微生物の非共代謝系による異化代謝を図ることを特徴とする難分解性化合物類に対する原位置処理方法。
【0046】
(2)前記電解処理における電解反応場に対し、ガススパージング、塩類溶液供給の少なくともいずれか一方を実施することを特徴とする前記(1)に記載の難分解性化合物類に対する原位置処理方法。
【0047】
(3)前記電解処理の前段として、活性炭粒子による難分解性化合物類の濃縮・分配状態を把握する分析工、該活性炭粒子の施用エリアに対し、おしなべて等しい隣接距離にて電極を設置し、更に電子を放出する陰極数と陽極数を不揃いに設定する該電解処理の準備工、該電解処理の工程において、該電極に対し通電区分を設けて集約し、各通電区分の極性を一定のシーケンスに従って順次転換させて該電圧印加を実施する作業を併せて実施する付帯工の、少なくともいずれか一つを実施することを特徴とする前記(1)または(2)に記載の難分解性化合物類に対する原位置処理方法。
【0048】
(4)前記電解処理の準備工において、正多角形を構成するごとくに、設定本数の少ない極性の電極を該正多角形の重心位置に、また設定本数の多い極性の電極を該正多角形の頂点に、設定することを特徴とする前記(1)から(3)のいずれかに記載の難分解性化合物類に対する原位置処理方法。
【0049】
(5)前記シーケンスが、前記正多角形の各頂点と重心に該当する電極の配位毎に同一の通電区分を設定し、該正多角形の頂点と重心に該当する電極の極性配位を保ったままに、該通電区分毎に極性を順次転換させる電圧印加の制御により構成されることを特徴とする前記(3)に記載の難分解性化合物類に対する原位置処理方法。
【0050】
次に、前述した発明概念の作用効果について説明する。
本開示のうち(1)に係る難分解性化合物類に対する原位置処理方法によれば、活性炭の周囲では、基準値以下の極めて低濃度への規正が図られると共に、活性炭表面では、難分解性化合物類の濃縮が図られ、反応速度論的に大きく改善された原位置処理を図ることが出来る。即ち、活性炭を介して難分解性化合物類の濃縮を図った後に減成反応を仕掛けることにより、一般に極めて低濃度で環境中に存在しているPFASをはじめとする難分解性化合物類に対して、極めて効率的で高速な浄化処理を行うことができる。
【0051】
また、両電極及び電極と連通する活性炭粒子の表面、又はこれらの表面と接触の無い活性炭粒子の表面の、少なくともいずれか一方の表面にて電解が起こる作用により、単に電極周辺のみならず、電極から離れた位置においても酸化還元反応が進行し、結果、極めて効率の良い広範囲に亘る難分解性化合物類の低分子化を図ることができる。
【0052】
係る、電極と接触の無い活性炭粒子の表面にて酸化還元反応が同時に進行する現象は、硫酸イオンを初発物質として、まずは酸化によって過硫酸ラジカルを生成し、続いて過硫酸ラジカルの還元によって硫酸ラジカルが生成される系の構築にとっては好都合であり、高価な過硫酸資材を用いずとも、安価な硫酸塩を材料に、比較的低い酸化還元電位での硫酸ラジカル生成や難分解性化合物類の酸化分解を図ることができる。
【0053】
本開示のうち(2)に係る難分解性化合物類に対する原位置処理方法によれば、電解処理における電解反応場に対しガススパージングすることにより、電解により発生する支燃性/可燃性ガスが、爆発が起こらない地盤中にて効果的に希釈され、爆発リスクが十分に抑制された原位置処理を実施できる。
【0054】
なお、電解反応場に対し酸素を含むガスをスパージングすることにより、電解反応場の還元反応部にてヒドロキシラジカルを含む活性酸素種を生成する反応を助長して電解処理を酸化反応側に偏向させる作用を生じさせることができる場合があり、この場合、難分解性化合物類の内、還元反応による減成が期待できない非有機ハロゲン化合物等に対し、酸化反応による有効な原位置処理を実施できる。
【0055】
加えて、電解反応場に対し目的に応じた塩類溶液を供給することにより、難分解性化合物類の減成を一層効率よく図ることができる。
例えば、硫酸塩溶液を供給した場合は、電解反応場にて酸化力の強い硫酸ラジカルを生成する反応を助長することができ、また、電解溶液を供給し、電解反応場にて適切な濃度とすることにより、電解反応をより改善することができ、また更に、pH緩衝溶液を供給し、電解反応場のpHを減成反応の至適pHとすることにより、電解反応をより改善することができる。
【0056】
また、電解反応場に対するガススパージングと塩類溶液の注入を同時に実施し、ガススパージングの撹拌作用によって飽和帯等に形成された地下水循環流に塩類溶液を帯同させることにより、電解反応場に対し塩類溶液成分を効果的に拡散させることができる。
【0057】
本開示のうち(3)に係る難分解性化合物類に対する原位置処理方法によれば、電解処理の前段として、活性炭粒子による難分解性化合物類の濃縮・分配状態を把握する分析工程を配することにより、活性炭表面における難分解性化合物類濃度を、より高い濃度域迄に濃縮を図ることにより、以後の電解処理にて高効率な低分子化反応を仕掛けることができる。
【0058】
また、電解にてロスするエネルギー量は、係る汚染濃縮濃度にほぼ依存しないことから、より高い濃度に至る汚染濃縮を活性炭表面にて図る場合は通電を実施せずに、続いて濃縮された高濃度汚染に対する電解反応を速やかに完了することにより、時間あたりの難分解性化合物類の分解量が多い、極めて経済性に優れた難分解性化合物類の原位置処理を図ることができる。
【0059】
更に、電解処理の前段として、おしなべて等しい隣接距離にて電極を設置し、加えて、電子を放出する陰極数と陽極数を不揃いに設定する電解を実施することにより、電極の設置エリア全域に亘って、より偏りの少ない低分子化処理をまんべんなく実施できる。
【0060】
本開示のうち(4)に係る難分解性化合物類に対する原位置処理方法によれば、おしなべて等しい隣接距離にて電極を設置する方法が、正多角形を構成するごとくに、設定本数の少ない極性の電極を重心に、設定本数の多い極性の電極を頂点に設定することにより、電極の設置エリア全域に亘って、極めて偏りの少ない低分子化処理をまんべんなく実施できる。
【0061】
本開示のうち(5)に係る難分解性化合物類に対する原位置処理方法によれば、通電区分に対するシーケンスが、正多角形の各頂点と重心に該当する電極の配位毎に同一の通電区分を設定し、正多角形の頂点と重心に該当する電極の極性配位を保ったままに、通電区分毎に極性を順次転換させる電圧印加の制御を行なうことで、電極の設置エリア全域に亘って、より一層の均質性を有した原位置電解処理を実施できる。
【0062】
以上、本発明の実施の形態および実施例を説明してきたが、具体的な構成は前述した開示に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれることは、言うまでもない。
【0063】
最後に、本明細書にて用いた「減成」は、難分解性化合物類に対する、単に酸化分解を指すのみならず、厳密には分解ではない還元的脱ハロゲン化反応等を併せて包含するものとし、両者より発し、概して無機化迄に至る一連の低分子化に代表される難分解性化合物類濃度の減衰過程に対する表現と定義される用語であることを注記する。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明によるところの難分解性化合物類に対する原位置処理方法は、既存の活性炭粒子を汚染域に施用して実施する地下水土壌汚染浄化において、施用した活性炭粒子に吸着し吸着容量を劣化させる難分解性化合物類を原位置にて減成を図るとともに、既存の立体導電網技術に代表される地盤に対する活性炭粒子の施用と本発明であるところの減成方法を組み合わせることにより、未だ確立されていないPFASに代表される難分解性化合物類による地下水・土壌汚染に対する効果的な原位置浄化対策技術として、また、有機塩素化合物等のVOC汚染他に対する新たな原位置浄化対策技術として、本発明を利用できる。
【符号の説明】
【0065】
1…飽和帯
2…活性炭粒子の存在部位
3…電極類
3a…直に設置した電極
3b…井戸内に設置した電極
3c…井戸内に設置した電極(井戸内外:導電性資材充填)
3d…スマート井戸内に設置した電極
3e…スマート井戸内に設置した電極(井戸内外:導電性資材充填)
4…不透水層
5…シーケンス制御電源装置
6…絶縁性ガス拡散防止シート
7…不飽和帯
8…井戸様ガス回収管
9…砕石帯
10…スマート井戸(電極を内蔵しない観測井戸兼スパージング井戸)
図1
図2