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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045047
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】肥満改善剤の有効性予測方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20240326BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20240326BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240326BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20240326BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20240326BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALN20240326BHJP
【FI】
C12N15/12
C07K14/47
G01N33/53 M
G01N33/50 Q
C12Q1/68
C12Q1/6869 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023150515
(22)【出願日】2023-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2022149573
(32)【優先日】2022-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳本 彩
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 慎一郎
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
2G045CB10
2G045DA14
2G045FB02
4B063QA01
4B063QA05
4B063QA13
4B063QQ02
4B063QQ53
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR43
4B063QR62
4B063QS10
4B063QS14
4B063QS24
4B063QS39
4H045AA10
4H045AA30
4H045CA40
4H045EA50
(57)【要約】
【課題】個々人に対するカテキン類含有肥満改善剤の有効性を予測する方法、及びそのためのマーカーを提供する。
【解決手段】男性被験者から採取された試料について、TRPS1、TMEM164、ATP6V1F、PPM1D及びRIN3の5種の遺伝子群より選択される少なくとも1つの遺伝子又はその発現産物の発現レベルを測定する工程を含む、当該被験者に対するカテキン類含有肥満改善剤の有効性の予測方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
男性被験者から採取された試料について、TRPS1、TMEM164、ATP6V1F、PPM1D及びRIN3の5種の遺伝子群より選択される少なくとも1つの遺伝子又はその発現産物の発現レベルを測定する工程を含む、当該被験者に対するカテキン類含有肥満改善剤の有効性の予測方法。
【請求項2】
前記発現レベルを測定する工程において、さらにCCZ1B、HOOK3、RAB33B、NLK、TESK2、TM9SF1、LST1、BAGE2、ABCF3、FBXL20、RYK、SLC25A44、NDUFAF6、TEN1、ALDH1A3、SMIM5、ALOX12、CNN3、ZBTB3、SLC6A14、YARS2、ZNF672、CAV2、BRD7及びSPAG7の25種の遺伝子群より選択される少なくとも1つの遺伝子又はその発現産物の発現レベルが測定される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
被験者に対するカテキン類含有肥満改善剤の有効性の予測が、被験者がカテキン類含有肥満改善剤を摂取した場合における内臓脂肪面積の変化量の予測である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記遺伝子又はその発現産物の発現レベルの測定値を教師サンプルとして、カテキン類含有肥満改善剤を服用した場合の内臓脂肪面積の変化量を予測する判別式を作成し、被験者から採取された試料から得られた同遺伝子又はその発現産物の発現レベルの測定値を当該判別式に代入し、得られた結果から当該被験者がカテキン類含有肥満改善剤を摂取した場合における内臓脂肪面積の変化量を算出する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
遺伝子又はその発現産物の発現レベルが皮膚表上脂質から採取されたmRNAの発現量の測定である、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記カテキン類含有肥満改善剤が緑茶ポリフェノールを含有する肥満改善剤である、請求項1~5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
試料の採取及び保存に必要な、用具及び試薬を含有する、請求項1~6のいずれか1項記載の方法に用いられるカテキン類含有肥満改善剤の有効性予測用キット。
【請求項8】
TRPS1、TMEM164、ATP6V1F、PPM1D、RIN3、CCZ1B、HOOK3、RAB33B、NLK、TESK2、TM9SF1、LST1、BAGE2、ABCF3、FBXL20、RYK、SLC25A44、NDUFAF6、TEN1、ALDH1A3、SMIM5、ALOX12、CNN3、ZBTB3、SLC6A14、YARS2、ZNF672、CAV2、BRD7及びSPAG7の30種の遺伝子群より選択される少なくとも1つの遺伝子又はその発現産物からなる、男性被験者に対するカテキン類含有肥満改善剤の有効性予測マーカー。
【請求項9】
男性被験者から採取された試料における、TRPS1、TMEM164、ATP6V1F、PPM1D及びRIN3の5種の遺伝子群より選択される少なくとも1つの遺伝子又はその発現産物の発現レベル、及び、TRPS1、TMEM164、ATP6V1F、PPM1D及びRIN3の5種の遺伝子群より選択される少なくとも1つの遺伝子又はその発現産物の発現レベルを変数として含む判別式、に基づいて算出された前記式の値に基づいて、当該被験者に対するカテキン類含有肥満改善剤の有効性を予測する指標となる値を取得する工程を含む、取得方法。
【請求項10】
前記判別式が、教師サンプル集団の各人から取得した1つ以上の前記遺伝子又はその発現産物の発現レベルを説明変数とし、該集団の各人がカテキン類含有肥満改善剤を服用した場合の内臓脂肪面積の変化量を目的変数とした機械学習により構築される、請求項9記載の取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個々人に対するカテキン類含有肥満改善剤の有効性を予測する方法、及びそのためのマーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの人々が肥満の問題を抱えている。日本においても食生活を取り巻く社会環境の変化、すなわち食生活の欧米化や運動不足から肥満の人が急激に増加している。一般的に、肥満とは正常な状態と比較して体重が多い状態、あるいは体脂肪が過剰に蓄積した状態を指す。肥満は糖尿病や脂質異常症・高血圧・心血管疾患などの生活習慣病をはじめとして数多くの疾患の原因となるため、健康づくりにおいて肥満の予防・対策は重要な意味を持つ。また、その治療費や健康対策費の増大など経済への影響も多大であることから、肥満を改善することは重要な課題となっている。
【0003】
肥満にはさまざまな生活環境が関与している。食習慣の変化や運動不足による身体活動量の低下などにより、摂取エネルギー量が消費エネルギー量を上回ることにより、過剰分が体脂肪として蓄積されることが肥満の原因である。したがって肥満の予防・治療には、摂取エネルギー量と消費エネルギー量のバランス改善、すなわち食事制限と運動が重要となる。これまで、肥満改善を目的とする肥満改善素材が多種開発されているが、それらの素材は、必ずしもすべての者において一様に、期待される最大限の効果を発揮するわけではない。肥満改善を求める個人は、多種多様な肥満改善素材を自ら試し、自身に適したものを見つけねばならない。さらに、それらの素材の多くは、効果を発揮するためには長期的に摂取されねばならない。そのため、個人が自身に適した肥満改善素材を見つけるためには、長い期間と、コスト、労力を要する。さらに、たとえ個人が自身に有効な肥満改善素材を見つけたとしても、それが数ある肥満改善素材の中で自身にとって最適なものであるか、又は該素材の最大限の効果が自身に対して発揮されているかを判別することは困難である。
【0004】
緑茶ポリフェノール又はその主要成分であるカテキン類は、肥満を改善する素材として報告されている。特許文献1及び2には、カテキン類の摂取は、肥満改善、例えば、内臓脂肪面積の低下、体重の低下、腹囲の低下、などをもたらすことが開示されている(非特許文献1、2、3)。しかしながら、カテキン類もまた、上述と同様に効果には個人差があり、必ずしも全ての使用者に対して十分な効果が発揮されるわけではなかった。
【0005】
一方、生体試料中のDNAやRNA等の核酸の解析によりヒトの生体内の現在、さらには将来の生理状態を調べる技術が開発されている。生体由来の核酸は、血液等の組織、退役、分泌物などから抽出することができ、特許文献1、2には、皮膚表上脂質(SSL)から被験者の皮膚細胞に由来するRNA等の核酸を分離し、生体の解析用の試料として用いることが記載されている。
【0006】
従来、肥満に関連するとされている遺伝子は多数報告されており、また、カテキン類を投与した場合にそれに応じて発現が変化する遺伝子についても報告がある。
しかしながら、前者の遺伝子と後者の遺伝子は共通しておらず、カテキン類の脂質改善効果に関与する遺伝子についてはなんら報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-199686号公報
【特許文献2】特開2018-100293号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J Oleo Sci 50(7), 599-605, 2001
【非特許文献2】J Oleo Sci 50(9), 717-728, 2001
【非特許文献3】Prog Med 22(9), 2189-2203, 2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、個々人に対するカテキン類含有肥満改善剤の有効性を予測する方法、及びそのためのマーカーを提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、男性被験者(単に、「被験者」とも称す)に対してカテキン類含有肥満改善剤を服用させてその内臓脂肪面積の変化量を調べると共に、被験者から検出された全てのSSL由来のRNAの発現量のデータを取得して相関検定を行ったところ、当該RNAの発現量が内臓脂肪面積の変化量と相関する遺伝子が見出され、これを指標として被験者におけるカテキン類含有肥満改善剤の有効性の程度を予測できることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の1)~4)に係るものである。
1)男性被験者から採取された試料について、TRPS1、TMEM164、ATP6V1F、PPM1D及びRIN3の5種の遺伝子群より選択される少なくとも1つの遺伝子又はその発現産物の発現レベルを測定する工程を含む、当該被験者に対するカテキン類含有肥満改善剤の有効性の予測方法。
2)試料の採取及び保存に必要な、用具及び試薬を含有する、1)の方法に用いられるカテキン類含有肥満改善剤の有効性予測用キット。
3)TRPS1、TMEM164、ATP6V1F、PPM1D、RIN3、CCZ1B、HOOK3、RAB33B、NLK、TESK2、TM9SF1、LST1、BAGE2、ABCF3、FBXL20、RYK、SLC25A44、NDUFAF6、TEN1、ALDH1A3、SMIM5、ALOX12、CNN3、ZBTB3、SLC6A14、YARS2、ZNF672、CAV2、BRD7及びSPAG7の30種の遺伝子群より選択される少なくとも1つの遺伝子又はその発現産物からなる、男性被験者に対するカテキン類含有肥満改善剤の有効性予測マーカー。
4)男性被験者から採取された試料における、TRPS1、TMEM164、ATP6V1F、PPM1D及びRIN3の5種の遺伝子群より選択される少なくとも1つの遺伝子又はその発現産物の発現レベル、及び、TRPS1、TMEM164、ATP6V1F、PPM1D及びRIN3の5種の遺伝子群より選択される少なくとも1つの遺伝子又はその発現産物の発現レベルを変数として含む判別式、に基づいて算出された前記式の値に基づいて、当該被験者に対するカテキン類含有肥満改善剤の有効性を予測する指標となる値を取得する工程を含む、取得方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、個々人に対するカテキン類含有脂質改善剤の有効性を、該肥満改善剤を実際に用いることなく予測することができる。本発明により、消費者は、カテキン類含肥満改善剤を実際に服用せずとも、それが自身にとって有効かどうかを予測することができる。すなわち、本発明によれば、個々人が肥満改善素材を選択するための指針が提供され、自身に適した適切な素材を選択するための時間、コスト、労力等の使用者の負担が低減されるだけでなく、使用者の不安による効果の低下を抑えることで、該素材の効果の向上に繋がり得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】30遺伝子の発現量データを変数に用いた予測モデルの精度。
図2】5遺伝子の発現量データを変数に用いた予測モデルの精度。
図3】5遺伝子の発現量データに加えて被験者の年齢及び内臓脂肪面積を変数に用いた予測モデルの精度。
図4】1遺伝子の発現量データを変数に用いた予測モデルの精度。
図5】1遺伝子の発現量データを変数に用いた予測モデルの精度。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書中で引用されたすべての特許文献、非特許文献、及びその他の刊行物は、その全体が本明細書中において参考として援用される。
【0015】
本発明において、「核酸」又は「ポリヌクレオチド」と云う用語は、DNA又はRNAを意味する。DNAには、cDNA、ゲノムDNA、及び合成DNAのいずれもが含まれ、「RNA」には、total RNA、mRNA、rRNA、tRNA、non-coding RNA及び合成のRNAのいずれもが含まれる。
【0016】
本発明において「遺伝子」とは、ヒトゲノムDNAを含む2本鎖DNAの他、cDNAを含む1本鎖DNA(正鎖)、当該正鎖と相補的な配列を有する1本鎖DNA(相補鎖)、及びこれらの断片を包含するものであって、DNAを構成する塩基の配列情報の中に、何らかの生物学的情報が含まれているものを意味する。
また、当該「遺伝子」は特定の塩基配列で表される「遺伝子」だけではなく、これらの同族体(すなわち、ホモログもしくはオーソログ)、遺伝子多型等の変異体、及び誘導体をコードする核酸が包含される。
【0017】
本発明において、遺伝子の名称は、NCBI([www.ncbi.nlm.nih.gov/])に記載のあ
るOfficial Symbolに従う。
【0018】
本発明において、遺伝子の「発現産物」とは、遺伝子の転写産物及び翻訳産物を包含する概念である。「転写産物」とは、遺伝子(DNA)から転写されて生じるRNAであり、「翻訳産物」とは、RNAに基づき翻訳合成される、遺伝子にコードされたタンパク質を意味する。
【0019】
本発明において、「肥満改善」とは、肥満度の改善のことをいう。「肥満度」は、例えば、内臓脂肪面積、内臓脂肪量、皮下脂肪面積、皮下脂肪量、体脂肪量、体脂肪率、ウエスト周囲長、腹囲、体重、Body Mass Index(BMI)、ローレル指数、カウプ指数等の体格指数、体格指数より算出される肥満度指数、上腕三頭筋部皮下脂肪厚、肩甲骨下部皮下脂肪厚、基礎代謝量等を指標として評価することができる。加えて、内臓脂肪と相関のある血中マーカー(アディポネクチンやレプチン等のサイトカイン類やTNFα、IL-6、CRP等の炎症マーカー、LDL-コレステロールや中性脂肪等の血中脂質、肝機能マーカー、血糖値など)でも代替可能である。したがって、「肥満改善剤」の効果指標としては上記評価指標のいずれか1つ以上を使用することができるが、肥満の中でも生活習慣病の発症に大きく影響するのは「内臓脂肪型肥満」であることが知られており、メタボリックシンドロームの診断基準において内臓脂肪蓄積が必須である(厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット)という点から、内臓脂肪面積を用いるのが好ましい。内臓脂肪面積とは、体の断面積に占める脂肪の面積を意味し、男女ともに100cm未満であれば正常、100cm以上であれば内臓脂肪が多い状態とされている。
【0020】
本発明において、「カテキン類含有肥満改善剤」とは、カテキン類を含有し、ヒトに投与又は摂取した場合に肥満改善効果、例えば、内臓脂肪面積の低下、体重の低下などをもたらす(非特許文献1、2、3)、医薬品、医薬部外品又は食品(機能性食品、病者用食品、特定保健用食品、サプリメント等を含む)となる製剤を指す。製剤形態は、固形、半固形又は液状のいずれでも良いが、好ましくは飲料である、
ここで、「カテキン類」としては、カテキン、カテキンガレート、ガロカテキン及びガロカテキンガレート等の非エピ体;エピカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキン及びエピガロカテキンガレート等のエピ体が挙げられる。ここで、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレートはガレート体、カテキン、ガロカテキン、エピカテキン及びエピガロカテキンは非ガレート体と称する。カテキン類は、上記に挙げた非重合体カテキン類のいずれか1種または2種以上の組み合わせであり得る。カテキン類は上記8種を含むのが好ましい。なお、本発明において、カテキン類の含有量は上記8種の合計量に基づいて定義される。
【0021】
本発明のカテキン類含有肥満改善剤において、肥満改善効果の点から、カテキン類は、カテキン類中のエピ体の割合が、好ましくは35~95質量%、より好ましくは45~92質量%、更に好ましくは50~90質量%である。また、カテキン類は、カテキン類中のガレート体の割合が、好ましくは5~95質量%、より好ましくは10~85質量%、更に好ましくは25~60質量%、更に好ましくは35~53質量%である。
カテキン類の分析は、通常知られている非重合体カテキン類の分析法のうち測定試料の状況に適した分析法により測定することができる。
カテキン類は、一般的には茶葉から抽出した茶抽出物、その濃縮物又はそれらの精製物(以下、これらを包括的に「茶抽出物等」とも称する)に含まれているため、これらから得られるものが好ましく使用される。
【0022】
食品におけるカテキン類の含有量は、その使用形態により異なるが、飲料の形態では、通常0.0001~10質量%であり、好ましくは0.0001~5質量%、より好ましくは0.001~1質量%である。
医薬又は医薬部外品におけるカテキン類の含有量は、一般的に、0.0001~20質量%であり、好ましくは0.001~10質量%、より好ましくは0.01~5質量%である。
錠剤や加工食品等の固形食品の形態では、カテキン類の含有量は、好ましくは5~15質量%であり、より好ましくは6~14.5質量%であり、より好ましくは7~14質量%であり、より好ましくは10.3~13.5質量%である。
【0023】
本発明において、被験者に対するカテキン類含有肥満改善剤の有効性の「予測」とは、被験者がカテキン類含有肥満改善剤が有効に作用する者か否かを明らかにする意味であり、検査、測定、判定又は評価支援などの用語で言い換えることもできる。本発明において、被験者に対するカテキン類含有肥満改善剤の有効性の「予測」、「検出」、「検査」、「測定」、「判定」又は「評価」という用語は、医師による診断を含むものではない。
【0024】
後述の実施例に示すとおり、男性被験者に対してカテキン類含有肥満改善剤を服用させ、その内臓脂肪面積の変化量を調べ、被験者から検出された全てのSSL由来のRNAの発現量のデータとの相関検定を行い、p<0.05かつ相関係数<0.4、またはp<0.05かつ相関係数>0.4となる遺伝子を抽出したところ、後記表1に示す30種の遺伝子が選択された。
ここで、内臓脂肪面積の変化量とは、カテキン類含有肥満改善剤の摂取開始当日と10週間摂取後の空腹時に測定された内臓脂肪面積の差(10週間摂取後の内臓脂肪面積-摂取開始当日の内臓脂肪面積)である。尚、内臓脂肪面積は、パナソニック社製の内臓脂肪計EW―FA90により測定された。
【0025】
したがって、斯かる30種の遺伝子群より選択される遺伝子又はその発現産物を測定することにより、カテキン類含有肥満改善剤を服用した被験者の内臓脂肪面積の変化量を算出することができる。
すなわち、当該30種の遺伝子は、被験者に対するカテキン類含有肥満改善剤の有効性を予測するためのバイオマーカーとなり得、該遺伝子又はその発現産物を指標に、カテキン類含有肥満改善剤を服用した被験者の内臓脂肪面積の変化量を予測すること、換言するとカテキン類含有肥満改善剤の個々の被験者に対する有効性の程度を予測することができ、カテキン類含有肥満改善剤の服用に適した被験者を選択することが可能になる。
【0026】
なお、上記のカテキン類含有肥満改善剤の被験者に対する有効性予測マーカーとなり得る遺伝子(以下、「標的遺伝子」とも称す)には、カテキン類含有肥満改善剤の被験者に対する有効性を予測するためのバイオマーカーとなり得る限り、当該遺伝子を構成するDNAの塩基配列と実質的に同一の塩基配列を有する遺伝子も包含される。ここで、実質的に同一の塩基配列とは、例えば、相同性計算アルゴリズムNCBI BLASTを用い、期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=-3の条件にて検索をした場合、当該遺伝子を構成するDNAの塩基配列と90%以上、好ましくは95%以上、さらにより好ましく98%以上の同一性があることを意味する。
【0027】
本発明のカテキン類含有肥満改善剤の被験者に対する有効性の予測方法は、男性被験者から採取された生体試料について、上記標的遺伝子から選択される少なくとも1つの遺伝子又はその発現産物の発現レベルを測定する工程を含む。
本発明における男性被験者の例としては、肥満状態である者、肥満の改善を所望する者、高脂血症の改善を所望する者、高血糖の改善を所望する者、高血圧の改善を所望する者、それらの予備軍に該当する者、肥満に関連する病態を呈する者、カテキン類含有肥満改善剤を使用しているか又は使用を希望する者、カテキン類含有肥満改善剤の自身に対する有効性を知りたい者、などが挙げられる。好ましくは、該男性被験者は、肥満の改善を所望する者であって、かつカテキン類含有肥満改善剤の自身に対する有効性を知りたい者である。
【0028】
生体試料は、例えば、細胞、体液(血液等)、尿、分泌物(唾液、SSL等)であり得るが、SSLを用いるのが好ましい。
ここで、「皮膚表上脂質(SSL)」とは、皮膚の表上に存在する脂溶性画分をいい、皮脂と呼ばれることもある。一般に、SSLは、皮膚にある皮脂腺等の外分泌腺から分泌された分泌物を主に含み、皮膚表面を覆う薄い層の形で皮膚表上に存在している。SSLは、皮膚細胞で発現したRNAを含む(前記特許文献1,2参照)。また、「皮膚」とは、特に限定しない限り、角層、表皮、真皮、毛包、ならびに汗腺、皮脂腺及びその他の腺等の組織を含む領域の総称である。SSLが採取される皮膚の部位としては、頭、顔、首、体幹、手足等の身体の任意の部位の皮膚が挙げられ、皮脂の分泌が多い部位、例えば顔の皮膚が好ましい。
【0029】
被験者の皮膚からのSSLの採取には、皮膚からのSSLの回収又は除去に用いられているあらゆる手段を採用することができる。好ましくは、後述するSSL吸収性素材、SSL接着性素材、又は皮膚からSSLをこすり落とす器具を使用することができる。SSL吸収性素材又はSSL接着性素材としては、SSLに親和性を有する素材であれば特に限定されず、例えばポリプロピレン、パルプ等が挙げられる。皮膚からのSSLの採取手順のより詳細な例としては、あぶら取り紙、あぶら取りフィルム等のシート状素材へSSLを吸収させる方法、ガラス板、テープ等へSSLを接着させる方法、スパーテル、スクレイパー等によりSSLをこすり落として回収する方法、などが挙げられる。SSLの吸着性を向上させるため、脂溶性の高い溶媒を予め含ませたSSL吸収性素材を用いてもよい。一方、SSL吸収性素材は、水溶性の高い溶媒や水分を含んでいるとSSLの吸着が阻害されるため、水溶性の高い溶媒や水分の含有量が少ないことが好ましい。SSL吸収性素材は、乾燥した状態で用いることが好ましい。
【0030】
採取されたSSLは、直ちに後述の核酸又はタンパク質の抽出工程に用いられてもよく、又は、該核酸又はタンパク質抽出工程に用いるまで保存されてもよい。保存する場合、SSLは、好ましくは低温条件で保存される。SSLの保存の温度条件は、0℃以下であればよく、好ましくは-20±20℃~-80±20℃、より好ましくは-20±10℃
~-80±10℃、さらに好ましくは-20±20℃~-40±20℃、さらに好ましく
は-20±10℃~-40±10℃、さらに好ましくは-20±10℃、さらに好ましく
は-20±5℃である。SSLの保存の期間は、特に限定されないが、好ましくは12ヶ
月以下、例えば6時間以上12ヶ月以下、より好ましくは6ヶ月以下、例えば1日間以上6ヶ月以下、さらに好ましくは3ヶ月以下、例えば3日間以上3ヶ月以下である。
【0031】
本発明において、標的遺伝子又はその発現産物の発現レベルの測定対象としては、RNA、そのRNAをエンコードするDNA、そのRNAにコードされるタンパク質、該タンパク質と相互作用をする分子、そのRNAと相互作用する分子、又はそのDNAと相互作用する分子等が挙げられ、RNAが好ましく、より好ましくはmRNAである。ここで、RNA、DNA又はタンパク質と相互作用する分子としては、DNA、RNA、タンパク質、多糖、オリゴ糖、単糖、脂質、脂肪酸、及びこれらのリン酸化物、アルキル化物、糖付加物等、及び上記いずれかの複合体が挙げられる。また、発現レベルとは、当該遺伝子又は発現産物の発現量や活性を包括的に意味する。
【0032】
本発明の方法においては、RNAを標的遺伝子又はその発現産物の発現レベルの測定対象とする場合、RNAの発現レベルが解析されてもよいが、好ましくはRNAを逆転写によりcDNAに変換した後、該cDNA又はその増幅産物が測定される。
SSLからのRNAの抽出には、生体試料からのRNAの抽出又は精製に通常使用される方法、例えば、フェノール/クロロホルム法、AGPC(acid guanidin
ium thiocyanate-phenol-chloroform extraction)法、又はTRIzol(登録商標)、RNeasy(登録商標)、QIAzol(登録商標)等のカラムを用いた方法、シリカをコーティングした特殊な磁性体粒子を用いる方法、Solid Phase Reversible Immobilization磁性体粒子を用いる方法、ISOGEN等の市販のRNA抽出試薬による抽出等を用いることができる。
【0033】
該逆転写には、解析したい特定のRNAを標的としたプライマーを用いてもよいが、より包括的な核酸の保存及び解析のためにはランダムプライマーを用いることが好ましい。該逆転写には、一般的な逆転写酵素又は逆転写試薬キットを使用することができる。好適には、正確性及び効率性の高い逆転写酵素又は逆転写試薬キットが用いられ、その例としては、M-MLV Reverse Transcriptase及びその改変体、あるいは市販の逆転写酵素又は逆転写試薬キット、例えばPrimeScript(登録商標)Reverse Transcriptaseシリーズ(タカラバイオ社)、SuperScript(登録商標)Reverse Transcriptaseシリーズ(Thermo Scientific社)等が挙げられる。SuperScript(登録商標)III Reverse Transcriptase、SuperScript(
登録商標)VILO cDNA Synthesis kit(いずれもThermo Scientific社)等が好ましく用いられる。
該逆転写における伸長反応は、温度を好ましくは42℃±1℃、より好ましくは42℃
±0.5℃、さらに好ましくは42℃±0.25℃に調整し、一方、反応時間を好ましく
は60分間以上、より好ましくは80~120分間に調整するのが好ましい。
【0034】
発現レベルを測定する方法は、RNA、cDNA又はDNAを対象とする場合、これらにハイブリダイズするDNAをプライマーとしたPCR法、リアルタイムRT-PCR法、マルチプレックスPCR、SmartAmp法、LAMP法等に代表される核酸増幅法、これらにハイブリダイズする核酸をプローブとして用いるハイブリダイゼーション法(DNAチップ、DNAマイクロアレイ、ドットブロットハイブリダイゼーション、スロットブロットハイブリダイゼーション、ノーザンブロットハイブリダイゼーション等)、塩基配列を決定する方法(シーケンシング)、又はこれらを組み合わせた方法から選ぶことができる。
【0035】
PCRでは、解析したい特定のDNAを標的としたプライマーペアを用いて該特定の1種のDNAのみを増幅してもよいが、複数のプライマーペアを用いて同時に複数の特定のDNAを増幅してもよい。好ましくは、該PCRはマルチプレックスPCRである。マルチプレックスPCRは、PCR反応系に複数のプライマー対を同時に使用することで、複数の遺伝子領域を同時に増幅する方法である。マルチプレックスPCRは、市販のキット(例えば、Ion AmpliSeqTranscriptome Human Gene Expression Kit;ライフテクノロジーズジャパン株式会社等)を用いて実施することができる。
該PCRにおけるアニーリング及び伸長反応の温度は、使用するプライマーに依存するため一概には言えないが、上記のマルチプレックスPCRキットは用いる場合、好ましくは62℃±1℃、より好ましくは62℃±0.5℃、さらに好ましくは62℃±0.25
℃である。したがって、該PCRでは、好ましくはアニーリング及び伸長反応が1ステップで行われる。該アニーリング及び伸長反応のステップの時間は、増幅すべきDNAのサイズ等に依存して調整され得るが、好ましくは14~18分間である。該PCRにおける変性反応の条件は、増幅すべきDNAに依存して調整され得るが、好ましくは95~99℃で10~60秒間である。上記のような温度及び時間での逆転写及びPCRは、一般的にPCRに使用されるサーマルサイクラーを用いて実行することができる。
【0036】
当該PCRで得られた反応産物の精製は、反応産物のサイズ分離によって行われることが好ましい。サイズ分離により、目的のPCR反応産物を、PCR反応液中に含まれるプライマーやその他の不純物から分離することができる。DNAのサイズ分離は、例えば、サイズ分離カラムや、サイズ分離チップ、サイズ分離に利用可能な磁気ビーズ等によって行うことができる。サイズ分離に利用可能な磁気ビーズの好ましい例としては、Ampure XP等のSolid Phase Reversible Immobilization(SPRI)磁性ビーズが挙げられる。
【0037】
精製したPCR反応産物に対して、その後の定量解析を行うために必要なさらなる処理を施してもよい。例えば、DNAのシーケンシングのために、精製したPCR反応産物を、適切なバッファー溶液へと調製したり、PCR増幅されたDNAに含まれるPCRプライマー領域を切断したり、増幅されたDNAにアダプター配列をさらに付加したりしてもよい。例えば、精製したPCR反応産物をバッファー溶液へと調製し、増幅DNAに対してPCRプライマー配列の除去及びアダプターライゲーションを行い、得られた反応産物を、必要に応じて増幅して、定量解析のためのライブラリーを調製することができる。これらの操作は、例えば、SuperScript(登録商標)VILO cDNA Synthesis kit(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)に付属している5×
VILO RT Reaction Mix、及びIon AmpliSeq Transcriptome Human Gene Expression Kit(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)に付属している5×Ion AmpliSeq HiF
i Mix、及びIon AmpliSeq Transcriptome Human Gene Expression Core Panelを用いて、各キット付属のプロトコルに従って行うことができる。
【0038】
ノーザンブロットハイブリダイゼーション法を利用して標的遺伝子又はそれに由来する核酸の発現量を測定する場合は、例えば、まずプローブDNAを放射性同位元素、蛍光物質等で標識し、次いで、得られた標識DNAを、常法に従ってナイロンメンブレン等にトランスファーした生体試料由来のRNAとハイブリダイズさせる。その後、形成された標識DNAとRNAとの二重鎖を、標識物に由来するシグナルを検出することにより測定する方法が挙げられる。
【0039】
RT-PCR法を用いて標的遺伝子又はそれに由来する核酸の発現量を測定する場合は、例えば、まず生体試料由来のRNAから常法に従ってcDNAを調製し、これを鋳型として本発明の標的遺伝子が増幅できるように調製した一対のプライマー(上記cDNA(-鎖)に結合する正鎖、+鎖に結合する逆鎖)をこれとハイブリダイズさせる。その後、常法に従ってPCR法を行い、得られた増幅二本鎖DNAを検出する。増幅された二本鎖DNAの検出には、予めRI、蛍光物質等で標識しておいたプライマーを用いて上記PCRを行うことによって産生される標識二本鎖DNAを検出する方法等を用いることができる。
【0040】
DNAマイクロアレイを用いて標的遺伝子又はそれに由来する核酸の発現量を測定する場合は、例えば、支持体に本発明の標的遺伝子由来の核酸(cDNA又はDNA)の少なくとも1種を固定化したアレイを用い、mRNAから調製した標識化cDNA又はcRNAをマイクロアレイ上に結合させ、マイクロアレイ上の標識を検出することによって、mRNAの発現量を測定することができる。
前記アレイに固定化される核酸としては、ストリンジェントな条件下に特異的(すなわち、実質的に目的の核酸のみに)にハイブリダイズする核酸であればよく、例えば、本発明の標的遺伝子の全配列を有する核酸であってもよく、部分配列からなる核酸であってもよい。ここで、「部分配列」とは、少なくとも15~25塩基からなる核酸が挙げられる。ここでストリンジェントな条件は、通常「1×SSC、0.1%SDS、37℃」程度
の洗浄条件を挙げることができ、より厳しいハイブリダイズ条件としては「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」程度、さらに厳しいハイブリダイズ条件としては「0.1×SSC、0.1%SDS、65℃」程度の条件を挙げることができる。ハイブリダイズ条件は、J. Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)等に記載されている。
【0041】
シーケンシングによって標的遺伝子又はそれに由来する核酸の発現量を測定する場合は、例えば、次世代シーケンサー(例えばIon S5/XLシステム、ライフテクノロジーズジャパン株式会社)が用いて解析することが挙げられる。シーケンシングで作成されたリードの数(リードカウント)に基づいて、RNA発現を定量することができる。
【0042】
上記の測定に用いられるプローブ又はプライマー、すなわち、本発明の標的遺伝子又はそれに由来する核酸を特異的に認識し増幅するためのプライマー、又は該RNA又はそれに由来する核酸を特異的に検出するためのプローブがこれに該当するが、これらは、当該標的遺伝子を構成する塩基配列に基づいて設計することができる。ここで「特異的に認識する」とは、例えばノーザンブロット法において、実質的に本発明の標的遺伝子又はそれに由来する核酸のみを検出できること、また例えばRT-PCR法において、実質的に当該核酸のみが増幅される如く、当該検出物又は生成物が当該遺伝子又はそれに由来する核酸であると判断できることを意味する。
具体的には、本発明の標的遺伝子を構成する塩基配列からなるDNA又はその相補鎖に相補的な一定数のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドを利用することができる。ここで「相補鎖」とは、A:T(RNAの場合はU)、G:Cの塩基対からなる2本鎖DNAの一方の鎖に対する他方の鎖を指す。また、「相補的」とは、当該一定数の連続したヌクレオチド領域で完全に相補配列である場合に限られず、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、よりさらに好ましくは99%以上の塩基配列上の同一性を有すればよい。塩基配列の同一性は、前記BLAST等のアルゴリズムにより決定することができる。
斯かるオリゴヌクレオチドは、プライマーとして用いる場合には、特異的なアニーリング及び鎖伸長ができればよく、通常、例えば10塩基以上、好ましくは15塩基以上、より好ましくは20塩基以上、かつ例えば100塩基以下、好ましくは50塩基以下、より好ましくは35塩基以下の鎖長を有するものが挙げられる。また、プローブとして用いる場合には、特異的なハイブリダイゼーションができればよく、本発明の標的遺伝子を構成する塩基配列からなるDNA(又はその相補鎖)の少なくとも一部若しくは全部の配列を有し、例えば10塩基以上、好ましくは15塩基以上、かつ例えば100塩基以下、好ましくは50塩基以下、より好ましくは25塩基以下の鎖長のものが用いられる。
なお、ここで、「オリゴヌクレオチド」は、DNAあるいはRNAであることができ、合成されたものでも天然のものでもよい。又はイブリダイゼーションに用いるプローブは、通常標識したものが用いられる。
【0043】
また、本発明の標的遺伝子の翻訳産物(タンパク質)、当該タンパク質と相互作用する分子、RNAと相互作用する分子、又はDNAと相互作用する分子を測定する場合は、プロテインチップ解析、免疫測定法(例えば、ELISA等)、質量分析(例えば、LC-MS/MS、MALDI-TOF/MS)、1-ハイブリッド法(PNAS 100, 12271-12276(2003))や2-ハイブリッド法(Biol. Reprod. 58, 302-311 (1998))のような方法を
用いることができ、対象に応じて適宜選択できる。
例えば、測定対象としてタンパク質が用いられる場合は、本発明の発現産物に対する抗体を生体試料と接触させ、当該抗体に結合した試料中のタンパク質を検出し、そのレベルを測定することによって実施される。例えば、ウェスタンブロット法によれば、一次抗体として上記の抗体を用いた後、二次抗体として放射性同位元素、蛍光物質又は酵素等で標識した一次抗体に結合する抗体を用いて、その一次抗体を標識し、これら標識物質由来のシグナルを放射線測定器、蛍光検出器等で測定することが行われる。
尚、上記翻訳産物に対する抗体は、ポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体であってもよい。これらの抗体は、公知の方法に従って製造することができる。具体的には、ポリクローナル抗体は、常法に従って大腸菌等で発現し精製したタンパク質を用いて、あるいは常法に従って当該タンパク質の部分ポリペプチドを合成して、家兎等の非ヒト動物に免疫し、該免疫動物の血清から常法に従って得ることが可能である。
一方、モノクローナル抗体は、常法に従って大腸菌等で発現し精製したタンパク質又は該タンパク質の部分ポリペプチドをマウス等の非ヒト動物に免疫し、得られた脾臓細胞と骨髄腫細胞とを細胞融合させて調製したハイブリドーマ細胞から得ることができる。また、モノクローナル抗体は、ファージディスプレイを用いて作製してもよい(Griffiths, A.D.; Duncan, A.R., Current Opinion in Biotechnology, Volume 9, Number 1, February 1998 , pp. 102-108(7))。
【0044】
斯くして、被験者から採取された生体試料中の標的遺伝子又はその発現産物の発現レベルが測定され、当該発現レベルに基づいて被験者に対するカテキン類含有肥満改善剤の有効性が予測される。
【0045】
シーケンシングにより複数の標的遺伝子の発現レベルの解析を行う場合は、発現量のデータであるリードカウント値、該リードカウント値をサンプル間の総リード数の違いを補正したRPM値、当該RPM値を底2の対数値に変換した値(LogRPM値)又は整
数1を加算した底2の対数値(Log(RPM+1)値)、あるいはDESeq2を用
いて補正されたカウント値(Normalized count値)又は整数1を加算した底2の対数値(Log(count+1)値)を指標として用いるのが好ましい。ま
た、RNA-seqの定量値として一般的な、fragments per kilobase of exon per million reads mapped(FPKM)、reads per kilobase of exon per million reads mapped(RPKM)、transcripts per million(TPM)などによって算出される値であってもよい。また、マイクロアレイ法によって得られるシグナル値、及びその補正値であってもよい。また、RT-PCRなどにより特定の標的遺伝子のみ発現レベルの解析を行う場合には、対象遺伝子の発現量をハウスキーピング遺伝子の発現量を基準とする相対的な発現量に変換(相対定量)して解析する方法、又は標的遺伝子の領域を含むプラスミドを用いて絶対的なコピー数を定量(絶対定量)して解析する方法が好ましい。デジタルPCR法によって得られるコピー数であってもよい。
【0046】
本発明の男性被験者に対するカテキン類含有肥満改善剤の有効性の予測は、被験者がカテキン類含有肥満改善剤を服用した場合の内臓脂肪面積の変化量を予測することにより行われる。
内臓脂肪面積の変化量の予測は、例えば、本発明の標的遺伝子又はその発現産物の発現レベルを、カテキン類含有肥満改善剤を服用した場合の内臓脂肪面積の変化量との検量線や予測モデルと照合することにより行われる。
【0047】
予測モデルは、被験者由来の標的遺伝子又はその発現産物の発現レベルの測定値(発現プロファイル)から、各人がカテキン類含有肥満改善剤を服用した場合の内臓脂肪面積の変化量を予測する判別式である。判別式は、教師サンプル集団の各人から取得した1つ以上の標的遺伝子又はその発現産物の発現レベル(特徴量)を説明変数とし、該集団の各人がカテキン類含有肥満改善剤を服用した場合の内臓脂肪面積の変化量を目的変数とした機械学習により構築できる。
被験者から採取された生体試料から標的遺伝子又はその発現産物の発現レベルを同様に測定し、得られた測定値を当該判別式に代入し、当該判別式に基づいて算出された値から、当該被検者がカテキン類含有肥満改善剤を服用した場合の内臓脂肪面積の変化量の予測値を取得することができる。
なお、判別式の作成においては、主成分分析(PCA)により次元圧縮を行ない、主要成分を説明変数とすることができる。また、特徴量には、標的遺伝子又はその発現産物の発現レベルに加えて、該被験者の生体情報、例えば、年齢、身長、体重、カテキン類含有肥満改善剤摂取前の内臓脂肪面積、体脂肪率、性別、血糖値や中性脂肪など空腹時の血液検査項目などを用いることができる。
【0048】
判別式の構築するための特徴量には、標的遺伝子又はその発現産物の発現レベルを用いることができる。また、機械学習に用いるアルゴリズムなどの公知のものを利用して特徴量となる標的遺伝子を適宜抽出し、その発現レベルを用いたりすることができる。例えば、下記に示すランダムフォレストにおける変数重要度の高い標的遺伝子またはその発現産物の発現レベルを用いたり、R言語の“Boruta”パッケージ、Python言語の
“Eli5”及び“SHAP”などを用いて標的遺伝子を抽出し、その発現レベルを用い
たりすることができる。
【0049】
判別式の構築におけるアルゴリズムは、機械学習に用いるアルゴリズムなどの公知のものを利用することができる。機械学習アルゴリズムとしては、特に限定されず、例えば、線形回帰モデル(Linear model)、ラッソ回帰(Lasso)、ランダムフォレスト(Random Forest)、ニューラルネットワーク(Neural net)、線形カーネルのサポートベクターマシン(SVM(linear))、rbfカーネルのサポートベクターマシン(SVM(rbf))などのアルゴリズムが挙げられ、このうちランダムフォレスト及び線形カーネルのサポートベクターマシンが好ましい。
構築した予測モデルに検証用のデータを入力して予測値を算出し、該予測値が実測値と最も適合するモデル、例えば正解率(Accuracy)が最も大きいモデル又は該予測値と実測値の差の二乗平均平方根誤差(RMSE)が最も小さいモデルを、最適な予測モデルとして選抜することができる。
【0050】
本発明の被験者に対するカテキン類含有肥満改善剤の有効性の予測モデルを構築するための特徴量として使用される標的遺伝子(特徴量遺伝子)は、前記表1に示す30種の遺伝子群より選択される少なくとも1種であればよいが、予測精度の点から、好ましくは、少なくとも、後記表2で示されるTRPS1、TMEM164、ATP6V1F、PPM1D及びRIN3の5種の遺伝子から選ばれる1種以上、より好ましくは2種以上、より好ましくは3種以上、より好ましくは4種以上、より好ましくは5種全ての使用である。 すなわち、男性被験者に対するカテキン類含有肥満改善剤の有効性の予測方法においては、TRPS1、TMEM164、ATP6V1F、PPM1D及びRIN3の5種の遺伝子群より選択される少なくとも1つの遺伝子、必要に応じて、CCZ1B、HOOK3、RAB33B、NLK、TESK2、TM9SF1、LST1、BAGE2、ABCF3、FBXL20、RYK、SLC25A44、NDUFAF6、TEN1、ALDH1A3、SMIM5、ALOX12、CNN3、ZBTB3、SLC6A14、YARS2、ZNF672、CAV2、BRD7及びSPAG7の25種の遺伝子群より選択される少なくとも1つの遺伝子又はその発現産物の発現レベルを測定することが好ましいと云える。
【0051】
斯くして、被験者がカテキン類含有肥満改善剤を服用した場合の内臓脂肪面積の変化量を予測することができ、これは、被験者においてカテキン類含有肥満改善剤がどの程度有効に作用するか否か(有効性の程度)の指標になると云える。
内臓脂肪面積の変化量は、カテキン類含有飲料摂取時の内臓脂肪面積への効果を調べた複数試験の結果を統合したメタアナリシス(Jpn Pharmacol Ther 46(6), 973-981, 2018
)において、カテキン類含有飲料摂取の継続摂取による内臓脂肪面積変化データを統合すると-8.83cmであったという結果より、例えばこの値をカットオフ値とすることができる。このカットオフ値を超える内臓脂肪面積低減効果の認められた者をカテキン類含有肥満改善剤が有効に作用する者と判定でき、カテキン類含有肥満改善剤の服用に適した被験者を選択することが可能になる。
【0052】
カテキン類含有肥満改善剤の有効性の予測キットは、本発明によるカテキン類含有肥満改善剤の有効性の予測方法に従って被験者に対するカテキン類含有肥満改善剤の有効性を予測するためのキットである。
本発明のキットは、SSL等の生体試料の採取及び保存に必要な、用具及び試薬、必要に応じて標的遺伝子又はその発現産物の発現レベルを測定するための試薬を含有する。
例えばSSLの採取及び保存に必要な用具及び試薬としては、例えば、SSLを採取するための脂取りフィルム、採取したSSLを保存するための試薬、保存用の容器等が挙げられる。
標的遺伝子又はその発現産物の発現レベルを測定するための試薬としては、例えば採取したSSLからRNAを抽出・精製するための試薬、標的遺伝子に由来する核酸と特異的に結合(ハイブリダイズ)するオリゴヌクレオチド(例えば、PCR用のプライマー、シーケンシング用アダプター配列等)を含む、核酸増幅又はハイブリダイゼーションのための試薬、遺伝子発現産物(タンパク質)を認識する抗体を含む免疫学的測定のための試薬の他、標識試薬、緩衝液、発色基質、二次抗体、ブロッキング剤、ポジティブコントロールやネガティブコントロールとして使用するコントロール試薬、試験に必要な器具の他、標的遺伝子又はその発現産物の発現レベルを検出するための指標又はガイダンス等が包含される。
【実施例0053】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1 発現変動遺伝子を用いたカテキン類含有肥満改善剤の有効性を予測する回帰モデルの構築
1)試験参加者
BMI22~32の20~50歳代の健常な男性60名を試験参加者に選抜した。
【0054】
2)皮脂の採取
肥満改善剤の摂取試験前に、試験参加者の全顔からあぶら取りフィルム(5cm×8cm、ポリプロピレン製、3M社)を用いてRNAを含む皮脂を採取した。該あぶら取りフィルムはガラスバイアルに移し、RNA抽出に使用するまで-80℃で保存した。
【0055】
3)肥満改善剤の摂取試験
カテキン類含有肥満改善剤としてカテキン類含有飲料(1日当たり飲料中に有効成分としてカテキン類を540mg含有)を用いた。試験参加者に、肥満改善剤1本を1日1回、10週間継続摂取させた。肥満改善剤の摂取時間は限定せず、摂取開始から30分以内で全量を摂取させた。試験参加者は、摂取開始当日と10週間摂取後の空腹時に、内臓脂肪面積の測定を実施した。内臓脂肪計は、パナソニック社製の内臓脂肪計EW―FA90(医療機器承認番号22500BZX00522000)を用いた。内臓脂肪面積の変化(10週間摂取後の内臓脂肪面積-摂取開始当日の内臓脂肪面積)を基にカテキン類含有肥満改善剤による試験参加者の肥満改善効果を評価した。その結果、10週間の肥満改善剤の摂取前後で、内臓脂肪面積の変化量に基づく肥満改善度合いが、試験参加者間で大きくばらつくことが確認された。
【0056】
4)被験者の選抜
試験参加者60名全ての試験参加者における、2)で回収した皮脂を含むあぶら取りフィルムを以下の解析に供した。
【0057】
5)RNA調製及びシーケンシング
あぶら取りフィルムを適当な大きさに切断し、QIAzol Lysis Reagent(Qiagen)を用いて、付属のプロトコルに準じてRNAを抽出した。抽出されたRNAを元に、SuperScript VILO cDNA Synthesis kit(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)を用いて42℃、90分間逆転写を行いcDNAの合成を行った。逆転写反応のプライマーには、キットに付属しているランダムプライマーを使用した。得られたcDNAから、マルチプレックスPCRにより20802遺伝子に由来するDNAを含むライブラリーを調製した。マルチプレックスPCRは、Ion AmpliSeqTranscriptome Human Gene Expression Kit(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)を用いて、[99℃、2分→(99℃、15秒→62℃、16分)×20サイクル→4℃、Hold]の条件で行った。得られたPCR産物は、Ampure XP(ベックマン・コールター株式会社)で精製した後に、バッファーの再構成、プライマー配列の消化、アダプターライゲーションと精製、及び増幅を行い、ライブラリーを調製した。調製したライブラリーをIon 540 Chipにローディングし、Ion S5/XLシステム(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)を用いてシーケンシングした。シーケンシングで得られた各リード配列をヒトゲノムのリファレンス配列であるhg19 AmpliSeq Transcriptome ERCC v1を用いて遺伝子マッピングすることで各リード配列の由来する遺伝子を決定した。
【0058】
6)データ解析及び特徴量遺伝子の選択
上記5)で取得した被験者のSSL由来RNAのシーケンシングで得られた各リードのリードカウントを、各RNAの発現量のデータとし、DESeq2を用いて補正されたカウント値(Normalized count値)を解析に使用した。但し、リードカウントが1未満のリードは欠損値として扱った。60名のサンプルを、機械学習において予測モデルを構築するための学習データと予測モデルの精度を確認するためのテストデータにそれぞれ8割(48名分)と2割(12名分)で分割した。学習データにおいて、90%以上の被験者で欠損値ではない発現量データが得られた8360種の遺伝子について、その発現情報に基づいて内臓脂肪面積の変化量(10週間摂取後の内臓脂肪面積-摂取開始当日の内臓脂肪面積)との相関をSpearmanの相関検定を行い、p<0.05かつ相関係数<0.4、またはp<0.05かつ相関係数>0.4となる遺伝子を抽出した。表1に示す、発現量が内臓脂肪面積の変化量と相関する30種の遺伝子が得られた。これらの遺伝子を以下の予測モデル構築に用いる特徴量遺伝子として選択した。
【0059】
【表1】
7)モデル構築
前記6)で選択した特徴量遺伝子の発現量データを、負の二項分布に従うRPM値から正規分布に近似するため、整数1を加算した底2の対数値(Log(RPM+1)値)に変換した。得られた30の特徴量遺伝子の発現量データのLog(RPM+1)値を説明変数とし、カテキン類含有肥満改善剤の有効性の程度(内臓脂肪面積の変化量)を目的変数として用いて、有効性の程度を予測する回帰モデルを構築した。Python言語において線形カーネルのサポートベクターマシンのアルゴリズムをメソッドとして指定し、ハイパーパラメータの最適値を10分割交叉検証によってチューニングした。チューニングによって決定したハイパーパラメータを用いて、線形カーネルのサポートベクターマシンのアルゴリズムを実行し、予測値と実測値の差の二乗平均平方根誤差(RMSE)を算出した。RMSEは小さい方が予測モデルの精度が高いことを示す。
その結果、30遺伝子の発現量データを変数に用いた場合のモデルではRMSEは0.911であり、表1に示す遺伝子を、個々人に対するカテキン類を含有する肥満改善剤の有効性を予測するためのマーカーとして使用できることが示された(図1)。
【0060】
実施例2 異なる分割パターンにおいて共通して相関する遺伝子を用いたカテキン類含有
肥満改善剤の有効性を予測する回帰モデルの構築
1)データ解析及び特徴量遺伝子の選択
実施例1の6)の学習データ(48名分)とテストデータ(12名分)の内訳を変更した5つの分割パターンを作成し、5つの各学習データ(48名分)について、6)と同様に8360種の遺伝子の発現情報に基づいて内臓脂肪面積の変化量との相関解析をSpearmanの相関検定を用いて行い、p<0.05かつ相関係数<0.4、またはp<0.05かつ相関係数>0.4となる遺伝子を抽出した。5つの学習データから抽出された遺伝子のうち、4つ又は5つで共通して抽出される遺伝子として、下記表2に示す5種の遺伝子が得れた。当該5種の遺伝子を以下の予測モデル構築に用いる特徴量遺伝子として選択した。
【0061】
【表2】
【0062】
2)モデル構築
1)で選択した特徴量遺伝子の発現量データを、負の二項分布に従うRPM値から正規分布に近似するため、整数1を加算した底2の対数値(Log(RPM+1)値)に変換した。得られた30の特徴量遺伝子の発現量データのLog(RPM+1)値を説明変数とし、カテキン類含有肥満改善剤の有効性の程度(内臓脂肪面積の変化量)を目的変数として用いて、有効性の程度を予測する回帰モデルを構築した。Python言語において線形カーネルのサポートベクターマシンのアルゴリズムをメソッドとして指定し、ハイパーパラメータの最適値を10分割交叉検証によってチューニングした。チューニングによって決定したハイパーパラメータを用いて、線形カーネルのサポートベクターマシンのアルゴリズムを実行し、予測値と実測値の差の二乗平均平方根誤差(RMSE)を算出した。RMSEは小さい方が予測モデルの精度が高いことを示す。
その結果、5遺伝子の発現量データを変数に用いた場合のモデルではRMSEは0.827であり、表2に示す遺伝子を、個々人に対するカテキン類を含有する肥満改善剤の有効性を予測するためのマーカーとして使用できることが示された。また実施例1で示した30遺伝子で構築した予測モデルと比較して精度が高いことが示された(図2)。
【0063】
また、表2に示す遺伝子に該被験者の年齢及びカテキン類含有肥満改善剤摂取前の内臓脂肪面積を特徴量として加え、同様の方法でカテキン類含有肥満改善剤の有効性の程度(内臓脂肪面積の変化量)を目的変数として用いて、有効性の程度を予測する回帰モデルを構築した。その結果、5遺伝子の発現量データに加えて該被験者の年齢及び内臓脂肪面積を変数に用いた場合のモデルではRMSEは0.798であり、5遺伝子のみで構築した予測モデルと比較してさらに精度が高いことが示された(図3)。
【0064】
実施例3 異なる分割パターンにおいて共通して相関する遺伝子中の1遺伝子を用いたカテキン含有肥満改善剤の有効性を予測する回帰モデル
i)データ解析及び特徴量遺伝子の選択
実施例2と同様の方法でサンプルのデータ分割、遺伝子の抽出を行い、表2の5遺伝子を得た。当該5遺伝子を以下の予測モデル構築における特徴量遺伝子としてそれぞれ選択した。
【0065】
ii)モデル構築
実施例2と同様の方法で、i)で選択した特徴量遺伝子の発現量データを用いて、カテキン類含有肥満改善剤の有効性の程度を予測する回帰モデルを構築した。
その結果、5遺伝子の発現量データをそれぞれ変数に用いた場合のモデルのRMSEは表3のとおりであり、何れも5遺伝子全てを用いて構築した予測モデルと同程度の精度で、カテキン類含有肥満改善剤の有効性の程度を予測できることが確認された(図4)。
【0066】
【表3】
【0067】
参考例
実施例1で抽出された30遺伝子のうち、ABCF3、ALDH1A3、TM9SF1の3遺伝子をそれぞれ特徴量遺伝子として選択し、その発現量データを用いて、実施例2と同様の方法で、カテキン類含有肥満改善剤の有効性の程度を予測する回帰モデルを構築した。
その結果、3遺伝子の発現量データをそれぞれ変数に用いた場合のモデルのRMSEは表4のとおりであり、何れも実施例3に示す5遺伝子を用いて構築した予測モデルと同程度の精度で、カテキン類含有肥満改善剤の有効性の程度を予測できることが確認された(図5)。
【0068】
【表4】
図1
図2
図3
図4
図5