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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045052
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】空力音生成システムを備えた道路車両
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20240326BHJP
   G10D 7/04 20200101ALN20240326BHJP
   G10D 9/053 20200101ALN20240326BHJP
   G10B 1/02 20060101ALN20240326BHJP
   G10B 3/08 20060101ALN20240326BHJP
【FI】
B62D25/20 Z
G10D7/04
G10D9/053
G10B1/02
G10B3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023150660
(22)【出願日】2023-09-19
(31)【優先権主張番号】102022000019332
(32)【優先日】2022-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】519463178
【氏名又は名称】フェラーリ エッセ.ピー.アー.
【氏名又は名称原語表記】FERRARI S.p.A.
【住所又は居所原語表記】Via Emilia Est, 1163, 41100 MODENA, Italy
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルフォンソ オリヴァ
(72)【発明者】
【氏名】ルカ ポッジョ
(72)【発明者】
【氏名】フェデリコ アクト
(72)【発明者】
【氏名】マッテオ デ ペトリス
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】運転中に、運転者及びありうる乗員の期待に応えられる音を発することができる、道路車両を提供する。
【解決手段】道路車両(1)であって、使用時に、路面に面する底壁、車室を境界付ける本体(3)、及び、道路車両(1)の前進によって発生する、道路車両(1)に対する空気の動きである向かい風を利用して、音を生成するように構成された、空力音生成システム(7)を備える、道路車両(1)。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路車両(1)であって、
使用時に、路面に面する底壁(6)と、
車室を境界付ける本体(3)と、
空力音生成システム(7)と、を備え、
前記空力音生成システム(7)が、向かい風、すなわち、前記道路車両(1)の前進によって生成される、前記道路車両(1)に対する空気の移動の作用のみを利用して、音を生成するように構成されており、
前記空力音生成システム(7)が、少なくとも1つの気鳴装置(8)と、前記向かい風の一部を前記気鳴装置(8)内に搬送するための供給装置とを備えることを特徴とする、
道路車両(1)。
【請求項2】
前記気鳴装置(8)において、空気が、それを振動させることによって音を生成する主たる手段であり、前記気鳴装置(8)が、前記振動する空気を収容するように意図された、キャビティを有する、請求項1に記載の道路車両(1)。
【請求項3】
前記空力音生成システム(7)の前記供給装置が、前記向かい風の一部を遮るように構成された吸気口(12)、並びに、前記吸気口(12)から出て前記気鳴装置(8)の入口開口部(10)に通じる供給ダクト(13)を備える、請求項1に記載の道路車両(1)。
【請求項4】
前記空力音生成システム(7)が、前記気鳴装置(8)の前記入口開口部(10)に結合され、前記気鳴装置(8)の前記入口開口部(10)を塞ぐように構成された、調整バルブ(19)を備える、請求項3に記載の道路車両(1)。
【請求項5】
前記空力音生成システム(7)が、前記供給ダクト(13)に結合され、前記供給ダクト(13)に沿った空気の通路を塞ぐように構成された、調整バルブ(19)を備える、請求項3に記載の道路車両(1)。
【請求項6】
前記調整バルブ(19)が、
軸方向に配置され、前記吸気口(12)に面する入口開口部(21)、並びに、径方向に配置された複数の出口開口部(22)を有するパイプ(20)と、
前記パイプ(20)内を移動するように取り付けられた、プランジャ(23)と、
弾性要素(24)であって、前記プランジャ(23)を前記入口開口部(10)に向かって、かつ、前記プランジャ(23)が前記入口開口部(10)と前記出口開口部(22)との間に配置される完全閉鎖位置に向かって押すように構成され、かつ、前記プランジャ(23)が前記入口開口部(10)と前記出口開口部(22)との間には配置されない完全開放位置に到達することができるように、前記空気によって前記プランジャ(23)に及ぼされる空気圧推力によって、圧縮されるように構成された、弾性要素(24)と、を備える、請求項5に記載の道路車両(1)。
【請求項7】
前記吸気口(12)が、前記本体(3)を通じて得られる、請求項3に記載の道路車両(1)。
【請求項8】
前記気鳴装置(8)が、フロントフード(4)の下に配置される、請求項7に記載の道路車両(1)。
【請求項9】
前記供給ダクト(13)が、前記本体(3)を通じて得られた前記吸気口(12)から、前記吸気口(12)の下流で前記本体(3)を通って得られた放出開口部(14)にかけて延在し、前記気鳴装置(8)の前記入口開口部(10)及び前記気鳴装置(8)の出口開口部(11)に接続される、請求項3に記載の道路車両(1)。
【請求項10】
前記気鳴装置(8)の上流又は下流で、前記供給ダクト(13)に沿って配置されたラジエータ(15)、すなわち気液熱交換器を備える、請求項9に記載の道路車両(1)。
【請求項11】
前記気鳴装置(8)に含まれるラジエータ(16)、すなわち気液熱交換器を備える、請求項9に記載の道路車両(1)。
【請求項12】
前記吸気口(12)が、前記底壁(6)を通じて得られる、請求項3に記載の道路車両(1)。
【請求項13】
前記気鳴装置(8)が、前記底壁(6)に固定される、請求項3に記載の道路車両(1)。
【請求項14】
前記底壁(6)の一部であり、前記気鳴装置(8)を支持する、蓄電システム(25)を備える、請求項12に記載の道路車両(1)。
【請求項15】
前記気鳴装置(8)が、前記気鳴装置(8)によって生成される音の周波数を変更するように、前記気鳴装置(8)内に可動自在に取り付けられた、調整本体(17)を備える、請求項1から14のいずれか一項に記載の道路車両(1)。
【請求項16】
前記気鳴装置(8)が、前記調整本体(17)を第1の位置に向かって押すように構成され、かつ、前記調整本体(17)が第2の位置に到達することができるように、前記空気によって前記調整本体(17)に及ぼされる前記空気圧推力によって、圧縮されるように構成された、弾性要素(18)を備える、請求項15に記載の道路車両(1)。
【請求項17】
前記調整本体(17)が、前記気鳴装置(8)の内部で軸方向に移動するプランジャである、請求項16に記載の道路車両(1)。
【請求項18】
前記気鳴装置(8)が、オルガンパイプのような形状である、請求項1から14のいずれか一項に記載の道路車両(1)。
【請求項19】
前記空力音生成システム(7)が、並んで配置され、異なる周波数の音を生成するように設計された、複数の気鳴装置(8)を備える、請求項1から14のいずれか一項に記載の道路車両(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本特許出願は、2022年9月21日に出願されたイタリア特許出願第102022000019332号の優先権を主張し、その全開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、道路車両に関する。
【0003】
本発明は、高性能スポーツカーに有利に適用することができるが、そのために一般性を失うことはない。
【背景技術】
【0004】
高性能スポーツカーでは、車室内で運転者が知覚する音が重要となる。実際に、高性能スポーツカーの評価における無視できない要素は、運転中の自動車によって発せられる音の「上質さ」である(音の強度の観点だけでなく、とりわけ、音の「心地よさ」の観点からも)。すなわち、高性能スポーツカーの使用における満足度も、運転中の自動車によって発せられ、車室内に位置する運転者によって知覚される、音の「上質さ」に大きく影響される。
【0005】
燃焼エンジンを備えた従来の自動車では、運転中の自動車によって発せられる音の大部分(特にそれほど高くない速度での音)は、燃焼エンジンによって、特に燃焼エンジンの排気によって生成される。電気的にのみ駆動される自動車では、電気モータ(複数可)によって発生する音はほとんど聞こえず、一般にほとんど認識されないため、運転中の自動車によって発せられる音は、基本的に空力学的な風切り音や、タイヤの回転によって発生する。
【0006】
国際特許出願第2009140289号には、電気モータによって作動される回転式エアムーバによって、電気自動車内の内燃機関の音をシミュレートするための装置が記載されている。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、運転中に、運転者及びありうる乗員の期待に応えられる音を発することができる、道路車両を提供することである。
【0008】
本発明によれば、添付の特許請求の範囲によって請求される、道路車両が提供される。
【0009】
特許請求の範囲には、本発明の好ましい実施形態が説明されており、これは本明細書の不可欠な部分を構成するものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
ここで、本発明のいくつかの非限定的な実施形態を示す、添付の図面を参照して、本発明の説明を行う。
図1】本発明に従って実現される、空力音生成システムを備えた、自動車の概略図である。
図2図1の自動車の正面図である。
図3図1の自動車の、空力音生成システムの、単一のパイプの概略図である。
図4図1の自動車の、空力音生成システムの概略図である。
図5図1の自動車の、空力音生成システムの変形例の概略図である。
図6】本発明に従って実現される、空力音生成システムを備えた自動車の、別の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1において、参照番号1は、全体として、2つの前輪2及び2つの後輪2を、(対応するサスペンションによって)支持するシャシーを備える、自動車(道路車両)を示す。
【0012】
好ましい実施形態によれば、後輪2及び/又は前輪2は、電動パワートレインシステム(正確には、少なくとも1つの電気モータのみを備えるもの)から駆動トルクを受け取る。あるいは、後輪2及び/又は前輪2は、ハイブリッドパワートレインシステム(正確には、少なくとも1つの電気モータ及び少なくとも1つの燃焼エンジンの両方を備えるもの)、又は、サーマルパワートレインシステム(正確には、燃焼エンジンのみを備えるもの)から駆動トルクを受け取る。
【0013】
図2に示すように、シャシーは本体3によって覆われており、本体3は、前輪2と後輪2との間に配置され、対応する乗員を収容するようにそれぞれ設計された(少なくとも)、2つのシートを備える車室を覆う。すなわち、車室には、運転者のための空間が常に存在し、(少なくとも)一人の乗員をそこに加えることができる(乗員の存在は、明らかに場合による)。本体3は、とりわけ、フロントバンパ、フロントフード4、及び、前方の車室を画定する、フロントガラス5を備える。横方向において、本体4は、それぞれのドアが設けられた2つの側面を有し、それぞれのドアには、それぞれの開閉可能な窓が装備されている。
【0014】
自動車1は、(図6に示す)底壁6を更に備え、底壁6は、使用時に路面に面し、本体3に接続される(すなわち、本体3は、底壁6から上方に延出する)。
【0015】
図1に示すように、自動車1は、向かい風、すなわち自動車1の前進運動によって生成される、自動車1に対する空気の運動のみを利用して、音を生成するように構成された、空力音生成システム7を備える(向かい風は、自動車1が静止しているときには0であり、自動車1の前進速度が大きくなるにつれ、より強くなる)。言い換えれば、空力音生成システム7は、音を生成することを意図した運動又は圧力を空気に伝達するために、(例えば、電気)モータによって作動される可動要素を有しておらず、したがって、音を生成するために、向かい風のみを使用する(すなわち、向かい風が有する運動及び圧力のみを使用する)。
【0016】
空力音生成システム7は、複数の気鳴装置8を備え、それらは、並んで配置され、その中に向かい風の一部が搬送される。すなわち、空力音生成システム7では、気鳴装置8を作動(励起)させるために向かい風が使用され、この向かい風が気鳴装置8に音を生成させる。好ましくは、気鳴装置8は、並んで配置され、空力音生成システム7によって生成される全体的な音が、様々な周波数の音の組み合わせとなるように、様々な周波数の音を生成するように設計される。
【0017】
気鳴装置8は、音を生成することができる装置であり、空気を主たる手段とし、それを振動させることにより音を生成するものである。具体的には、振動する空気が気鳴装置8のキャビティ内に収容されるため、気鳴装置8は、共振型(共振気鳴装置)である。添付の図面に示す実施形態では、気鳴装置8は、オルガンパイプのような形状であるが、図示されていない他の実施形態によれば、気鳴装置8は、異なる形状にすることができる。
【0018】
図4に示すように、各気鳴装置8(すなわち、各オルガンパイプ)は、円形断面の管状本体9を備え、管状本体9は、一端に入口開口部10を有し、他端で閉じられている(すなわち、他端は閉鎖壁を有することで塞がれている)。管状本体9は、横方向に(「マウス」とも呼ばれる)出口開口部11を有する。使用時には、空気は、入口開口部10を通って管状本体9に導入され、出口開口部11を通って管状本体9から出る。この通路では、管状本体9の特定の内部形状によって、管状本体9の内部の空気が振動され、それによって音が生成される。その音の強度は、管状本体9の直径(幅)及び管状本体9を通過する空気流量に依存し、その音の周波数は、管状本体9の長さに依存する。
【0019】
空力音生成システム7は、気鳴装置8、及び、向かい風の一部を各気鳴装置8に搬送するための、供給装置を備える。特に、各気鳴装置8において、空気は、それを振動させることによって音を生成する、主たる手段であり、各気鳴装置8は、振動する空気を収容するように意図された、キャビティを有する。
【0020】
図1に示すように、空力音生成システム7は、向かい風の一部を遮るように構成された、吸気口12、並びに、吸気口12から出て気鳴装置8の入口開口部10に通じる、供給ダクト13を備える。
【0021】
図1図2、及び図3に示す実施形態では、吸気口12は、本体3を通じて得られ、すなわち、基本的に本体3の「孔」である。この実施形態では、供給ダクト13は、気鳴装置8の出口開口部11から気鳴装置8の下流に続き、吸気口12を通って供給ダクト13に以前に入った空気が、供給ダクト13を出る、放出開口部14で終了する。放出開口部14もまた、本体3を貫通して得られ、すなわち、基本的に本体3の「孔」であり、吸気口12の(長手方向の)下流に配置される。
【0022】
言い換えれば、供給ダクト13は、本体3を通じて得られた吸気口12から、吸気口12の下流で本体3を通じて得られた放出開口部14まで延在し、気鳴装置8の入口開口部10、及び、気鳴装置8の出口開口部11に接続される。
【0023】
図1図2、及び図3に示す実施形態では、空力音生成システム7、及び特に空力音生成システム7の気鳴装置8は、フロントフード4の下に配置される。好ましくは(図2に最もよく示されるように)、吸気口12及び放出開口部14の両方が、フロントフード4を通じて得られる。
【0024】
図3に示す可能な実施形態によれば、ラジエータ15、すなわち気液熱交換器が設けられ、これは、供給ダクト13に沿って、気鳴装置8の上流又は下流に配置される。図3は、ラジエータ15の可能な配置の両方を示しているが、明らかに、供給ダクト13に沿って、単一のラジエータ15があってもよい。また、ラジエータ15を、複数の気鳴装置8の上流側に配置することで、音を生成する機能よりも冷却機能が優先され、一方、ラジエータ15を、複数の気鳴装置8の下流側に配置することで、冷却機能よりも音を生成する機能が優先される。図示されていない別の実施形態によれば、ラジエータ15は、供給ダクト13には収容されない。
【0025】
図3に示す可能な実施形態によれば、ラジエータ16、すなわち、気鳴装置8に含まれる気液熱交換器が設けられる。正確には、ラジエータ16は、各気鳴装置8の管状本体9の内部に挿入され、管状本体9を通過する空気流に当たるように、入口開口部10と出口開口部11との間に配置される。
【0026】
図3に示すように、各気鳴装置8は、気鳴装置8によって生成される音の周波数を変更するように、気鳴装置8内に可動自在に取り付けられた、調整本体17を備える。具体的には、調整本体17は、振動する空気の容積の長さを変化させ、したがって空気の振動によって生成される音の周波数を変化させるように、気鳴装置8の管状本体9の内部で軸方向に移動する、プランジャである(振動する空気の容積の長さが大きいほど、音の波長が大きくなり、したがって、空気の振動によって発生する音の周波数が低くなる)。好ましい実施形態によれば、各気鳴装置8は、弾性要素18を備える。この弾性要素18は、調整本体17を(出口開口部11に近い)前方位置に向かって押すように構成され、かつ、調整本体17が後方位置に到達できるように、空気によって調整本体17に及ぼされる空気圧推力によって、圧縮されるように構成される。したがって、各気鳴装置8の有効長は、気鳴装置8に入る空気の流量及び圧力が増加するにつれて増加し、その結果、各気鳴装置8によって発せられる音の周波数は、気鳴装置8に入る空気の流量及び圧力が増加するにつれて低くなる。
【0027】
図3及び図4に示す可能な実施形態によれば、各気鳴装置8の一部のみに調整本体17が設けられる(すなわち、可変の周波数で音を生成することができる)。また、各気鳴装置8の残りの部分には、調整本体17が設けられない(すなわち、常に一定の周波数の音を生成する)。一変形例によれば、調整本体17の移動は、空気によって及ぼされる空気圧推力を利用することによって、受動的に生じるのではなく、電子制御モータ付きアクチュエータによって、能動的に生じる。図示されていない別の実施形態によれば、すべての気鳴装置8に調整本体17がなく、したがって常に一定の周波数の音を生成する。
【0028】
図4に示すように、空力音生成システム7は、各気鳴装置8について、好ましくはアクティブ式かつ電動式の調整バルブ19を備える。調整バルブ19は、気鳴装置8の入口開口部10に結合され、気鳴装置8の入口開口部10を塞ぐように構成される。調整バルブ19の開度を変えることにより、対応する気鳴装置8に流入する空気流量を調整することができ、気鳴装置8が生成する音の強度を調整することができる。あるいは、一部の気鳴装置8にのみ調整バルブ19が設けられるか、又は、すべての気鳴装置8に調整バルブ19は設けられない。
【0029】
図4に示す実施形態では、専用の調整バルブ19が、各気鳴装置8に設けられる。図5に示す実施形態では、すべての気鳴装置8に共通の、単一の調整バルブ19が設けられる(これは、明らかにより大きく、吸気口12の近くに配置される)。
【0030】
図4に示す実施形態では、各調整バルブ19は、好ましくはアクティブ式かつ電動式である。図5に示す実施形態では、単一の共通調整バルブ19は、(図示しない変形例によれば)アクティブ式かつ電動式であっても、パッシブ式であってもよく、したがって(図5によれば)電動アクチュエータを有さない。
【0031】
図5に示すように、調整バルブ19は、軸方向に配置され、吸気口12に面する入口開口部21、並びに、径方向に配置された複数の出口開口部22を有する、パイプ20を備える。加えて、調整バルブ19は、プランジャ23を備える。プランジャ23は、入口開口部10と出口開口部22との間に配置される完全閉鎖位置と、入口開口部10とすべての出口開口部22との間に配置されない完全開放位置の間で、パイプ20の内部を移動(並進、摺動)するように取り付けられる。完全閉鎖位置では、その配置によって空気が出口開口部22を通過することが防止され、したがって、出口開口部は吸気口12から完全に遮断される。完全開放位置では、その配置によって空気がすべての出口開口部22を通過することが可能となり、したがって、すべての出口開口部は吸気口12に接続される。明らかに、プランジャ15は、完全閉鎖位置と完全開放位置との間に位置し、出口開口部22の一部のみの隔離を決定する、中間位置をとることができる。調整バルブ19は、最終的に、弾性要素18を備える。弾性要素18は、プランジャ23を入口開口部10及び完全閉鎖位置に向かって押すように構成され、かつ、プランジャ23が完全開放位置に達することができるように、空気によってプランジャ23に及ぼされる空気圧推力によって、圧縮されるように構成される。
【0032】
したがって、気鳴装置8の入口開口部10に到達する空気流量は、吸気口12から到達する空気流量及び圧力が増加するにつれて増加し、その結果、気鳴装置8によって発せられる音の強度は、吸気口12から到達する空気流量及び圧力が増加するにつれて増加する。
【0033】
図1図2、及び図3に示す実施形態では、吸気口12は本体3を通じて得られ、空力音生成システム7は、本体3の内部に配置される。一方、図6に示す実施形態では、空力音生成システム7は、自動車1の底壁6に固定され、底壁6から片持ち式に突出する。図示されていない更なる実施形態によれば、吸気口12は、自動車1の底壁6を通じて得られ、空力音生成システム7は、底壁6のすぐ後ろに配置され、すなわち、空力音生成システム7は、底壁6と自動車1の床部との間に配置される。この実施形態では、供給ダクト13は、一般に、気鳴装置8の入口開口部10で終了し、気鳴装置8の入口開口部11は、外部環境に直接通じる。
【0034】
可能な実施形態によれば、自動車1は、底壁6の一部であり、かつ、気鳴装置8を支持する(図1に概略的に示される)蓄電システム25を備える。この実施形態は、蓄電システム25を冷却するために、1つ又はそれ以上の気鳴装置8に含まれる、ラジエータ16の存在と組み合わせることができる。
【0035】
可能な実施形態によれば、空力音生成システム7はまた、(専用の電気モータによって作動される)圧縮機を備えることができる。この圧縮機は、自動車1が中速で前進するときに、吸気口12から入る空気流に加えて、更なる空気流を生成する。
【0036】
本明細書に記載された実施形態は、本発明の保護の範囲から逸脱することなく、互いに組み合わせることができる。
【0037】
空力音生成システム7を備えた上述の自動車1は、多くの利点を示す。
【0038】
まず、上述した自動車1は、運転時に「心地よさ」(すなわち、高性能スポーツカーの運転者の期待に応えるもの)が、完全に自然なもの(すなわち、完全に自動車の移動によって生じる物理現象から生じ、スピーカによって再生されるデジタル音声によるものではないもの)であり、自動車1の前進速度の変化に伴って、自律的に変化する音を生成することができる。特に、自動車1の前進速度が変化するにつれて、自動車1の移動によって生成される音は、強度及びピッチの両方において、変化し得る。音の強度は、自動車1の前進速度が増加するにつれて増加し、音の全体的なピッチは、一般に、減速時にはより高く、高速時にはより低い。
【0039】
更に、自動車1の前進速度が変化するときに、自動車1の移動によって生成される音の変化は、(弾性要素18及び24を使用する)パッシブアクチュエータのみで実現することができる。したがって、より軽量で、よりコンパクトであり、電源を必要とせず、誤動作が起こりにくい。
【0040】
最後に、上記にて説明した自動車1は、空力音生成システム7が大きすぎず、(高性能スポーツカーにおいて)通常は自由で未使用の空間に収容することができるため、実現することが簡単で、かつ安価である。また、空力音生成システム7は、基本的に(構造的機能を有さず、向かい風の推力に耐えるだけでよい)薄い壁部の金属パイプで構成されるため、全体として、簡単で、かつ安価に実現することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 自動車
2 車輪
3 本体
4 フロントフード
5 フロントガラス
6 底壁
7 空力音生成システム
8 気鳴装置
9 管状本体
10 入口開口部
11 出口開口部
12 吸気口
13 供給ダクト
14 放出開口部
15 ラジエータ
16 ラジエータ
17 調整本体
18 弾性要素
19 調整バルブ
20 パイプ
21 入口開口部
22 出口開口部
23 プランジャ
24 弾性要素
25 蓄電システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【外国語明細書】