IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アップル インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特開-湾曲表面のためのコーティング 図1
  • 特開-湾曲表面のためのコーティング 図2
  • 特開-湾曲表面のためのコーティング 図3
  • 特開-湾曲表面のためのコーティング 図4
  • 特開-湾曲表面のためのコーティング 図5
  • 特開-湾曲表面のためのコーティング 図6
  • 特開-湾曲表面のためのコーティング 図7
  • 特開-湾曲表面のためのコーティング 図8
  • 特開-湾曲表面のためのコーティング 図9
  • 特開-湾曲表面のためのコーティング 図10
  • 特開-湾曲表面のためのコーティング 図11
  • 特開-湾曲表面のためのコーティング 図12
  • 特開-湾曲表面のためのコーティング 図13
  • 特開-湾曲表面のためのコーティング 図14
  • 特開-湾曲表面のためのコーティング 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045057
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】湾曲表面のためのコーティング
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20240326BHJP
   C03C 17/36 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C23C14/34 U
C03C17/36
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023150881
(22)【出願日】2023-09-19
(31)【優先権主張番号】63/408,404
(32)【優先日】2022-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/447,918
(32)【優先日】2023-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503260918
【氏名又は名称】アップル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Apple Inc.
【住所又は居所原語表記】One Apple Park Way,Cupertino, California 95014, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100210239
【弁理士】
【氏名又は名称】富永 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】ヴィジャイェン エス ヴェーラサミー
【テーマコード(参考)】
4G059
4K029
【Fターム(参考)】
4G059AA01
4G059AC06
4G059DA01
4G059DB02
4G059GA01
4G059GA02
4G059GA04
4G059GA14
4K029AA04
4K029AA07
4K029AA09
4K029AA24
4K029BA43
4K029BA48
4K029BA50
4K029BC07
4K029BD06
4K029BD07
4K029BD09
4K029CA05
4K029DC12
4K029DC39
4K029DC44
4K029EA01
4K029EA03
4K029EA09
4K029JA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】湾曲表面のための物理蒸着コーティング及び窓層を提供する。
【解決手段】透明構造体は、ガラスから形成することができる内層及び外層などの複数の層を有することができる。透明構造体は、複合曲率及び高い幾何学的歪みを有する大きく湾曲した表面を有してもよく、1つ以上の層を含んでもよい。湾曲した表面上に均一な厚さを有する物理蒸着コーティングを施すには、蒸着中にカソード電力を調整してもよく、湾曲した表面に一致する曲率を有する開口部を有するマスクを使用してもよく、カソード形状を変化させてもよく、カソードがコーティングを湾曲した表面に向かって外向きにスパッタリングしてもよく、磁場がカソードによって生成される磁束を調節してもよく、並びに/又はガスの圧力及び/若しくは流量を調整してもよい。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を含む窓層であって、少なくとも0.8%の幾何学的歪みを有する、窓層と、
前記窓層の前記表面上の物理蒸着コーティングであって、前記物理蒸着コーティングが赤外線反射コーティングであり、前記物理蒸着コーティングが前記表面にわたって3%未満変動する厚さを有する、物理蒸着コーティングと、
を備える窓。
【請求項2】
前記窓層が、少なくとも1m2の面積を有し、前記物理蒸着コーティングの前記厚さが、前記窓層の前記表面にわたって2.5%以下で変動し、前記物理蒸着コーティングが、前記窓層の前記表面にわたって1未満のΔEを有する、請求項1に記載の窓。
【請求項3】
前記物理蒸着コーティングの前記厚さが、前記窓層の前記表面にわたって1.5%未満変動する、請求項1に記載の窓。
【請求項4】
前記物理蒸着コーティングが、前記窓層の前記表面にわたって1未満のΔEを有する、請求項1に記載の窓。
【請求項5】
前記窓層が、複合曲率を有する部分を有し、前記物理蒸着コーティングが、前記窓層の前記部分に塗布される、請求項1に記載の窓。
【請求項6】
前記窓層が少なくとも1m2の面積を有し、前記物理蒸着コーティングが、前記窓層の前記表面の全体にわたってLAB色空間において1未満のΔEを有する、請求項1に記載の窓。
【請求項7】
前記物理蒸着コーティングの前記厚さが、前記窓層の前記表面にわたって2.5%以下で変動する、請求項6に記載の窓。
【請求項8】
前記物理蒸着コーティングが、前記赤外線反射コーティングを形成する複数の薄膜コーティング層を含み、前記複数の薄膜コーティング層が、少なくとも1つの銀層を含む、請求項1に記載の窓。
【請求項9】
湾曲窓層に物理蒸着コーティングを施す方法であって、
カソードを使用し、前記湾曲窓の曲率に一致する開口部を有するマスクを介して、前記湾曲窓層上に物理蒸着コーティング層をスパッタリングするステップと、
前記物理蒸着コーティング層をスパッタリングしている間に、前記湾曲窓層の前記曲率に基づいて前記カソードに印加される電力を調節するステップと、
を含む、湾曲窓層に物理蒸着コーティングを施す方法。
【請求項10】
前記物理蒸着コーティング層をスパッタリングしている間に、前記窓層を回転させるステップを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記物理蒸着コーティング層を前記湾曲窓層上にスパッタリングすることが、前記物理蒸着コーティング層を内側カソードから前記湾曲窓層に向かって外向きにスパッタリングすることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記物理蒸着コーティング層をスパッタリングしている間に、電磁石を調整して、前記カソードと前記湾曲窓との間の磁場を変化させるステップを更に含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記物理蒸着コーティング層をスパッタリングすることが、前記湾曲窓層の湾曲面にわたって2.5%以下の変動のある厚さで前記湾曲窓層上に前記物理蒸着コーティング層を蒸着させることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記物理蒸着コーティング層をスパッタリングすることが、フレーム形状のカソードを用いて、前記湾曲窓層上に垂直方向に前記物理蒸着コーティング層をスパッタリングすることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記物理蒸着コーティング層をスパッタリングしている間に、前記カソードに関連付けられた磁石を調整することによって前記スパッタリングの方向を連続的に変化させるステップを更に含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記物理蒸着コーティング層をスパッタリングしている間に、前記物理蒸着コーティング層のスパッタリングに使用されるガスの圧力を調整するステップを更に含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記物理蒸着コーティング層をスパッタリングしている間に、前記物理蒸着コーティング層のスパッタリングに使用される前記ガスの流量を調整するステップを更に含み、ガスの前記圧力及び前記流量を調整することが、酸素ガスの前記圧力及び前記流量を調整することを含む、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
窓であって、
複合曲率を有するガラス層と、
前記ガラス層の前記複合曲率上の物理蒸着コーティングと、を含み、
前記物理蒸着コーティングが赤外線反射コーティングであり、前記物理蒸着コーティングが前記ガラス層にわたって2.5%以下で変動する厚さを有する、
窓。
【請求項19】
前記ガラス層が、少なくとも0.8%の幾何学的歪みを有する、請求項18に記載の窓。
【請求項20】
前記物理蒸着コーティングが、前記ガラス層の全体にわたって1.4未満のLAB色空間におけるΔEを有する、請求項19に記載の窓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2023年8月10日に出願された米国特許出願第18/447,918号、及び2022年9月20日に出願された米国仮特許出願第63/408,404号に対する優先権を主張するものであり、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
これは、概して、光を通過させる構造体に関し、より具体的には、窓に関する。
【背景技術】
【0003】
窓は、概して、ガラス層などの透明層を含む。コーティングは透明層に施すことができる。
【発明の概要】
【0004】
ビークル、建物、又は電子デバイスなどのシステムは、窓を有することができる。窓は、ビークルの内部領域及び外部領域など、内部領域を外部領域から分離することができる。窓は、内層及び外層などの構造的窓層を有してもよい。内層及び外層は、空隙によって分離されていてもよい。
【0005】
窓は、複合曲率及び高い幾何学的歪みを有する大きな湾曲窓であってもよい。1つ以上の物理蒸着コーティングを、内層及び/又は外層に施すことができる。窓層上に均一な厚さで物理蒸着コーティングを施すために、蒸着中にカソード電力を調整してもよく、窓曲率に基づく曲率を有する開口部を有するマスクを使用してもよく、カソード形状を変化させてもよく、カソードがコーティングを窓に向かって外向きにスパッタリングしてもよく、磁場がカソードによって生成される磁束を調整してもよく、及び/又はガス圧力並びに/若しくはガス流量を調整してもよい。
【0006】
物理蒸着コータをこれらの方法のうちの1つ以上で変更することによって、コーティングは、窓層の表面全体に均一な厚さ、したがって均一な色を有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】いくつかの実施形態による、例示的な装置の概略図である。
図2】いくつかの実施形態による、コーティングを有する例示的な窓の側断面図である。
図3】いくつかの実施形態による、窓層上の例示的なコーティングの側断面図である。
図4】いくつかの実施形態による、例示的な湾曲窓層の斜視図である。
図5】いくつかの実施形態による、図4の例示的な湾曲窓層の側断面図である。
図6】いくつかの実施形態による、図4の例示的な湾曲窓層の側断面図である。
図7】いくつかの実施形態による、例示的な物理蒸着コータの上面図である。
図8】いくつかの実施形態による、物理蒸着コータにおけるカソードの例示的な電力変調のグラフである。
図9】いくつかの実施形態による、コーティングを基板に塗布することができる例示的なマスクの側面図である。
図10】いくつかの実施形態による、例示的な円筒形カソードの側面図である。
図11】いくつかの実施形態による、基板上にコーティングをスパッタリングする例示的なフレーム形状カソードの側面図である。
図12】いくつかの実施形態による、外向きにスパッタリングすることによって基板をコーティングする内部カソードを有する例示的な物理蒸着コータの上面図である。
図13】いくつかの実施形態による、塗布される物理蒸着コーティングの厚さを変化させるための電磁気を有する例示的な物理蒸着コータの上面図である。
図14】いくつかの実施形態による、例示的な中空タイル状マグネトロンの側面図である。
図15】いくつかの実施形態による、基板にわたる物理蒸着コーティングの例示的な均一性のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
システムは、窓を有することができる。窓は、赤外光を遮断するためのコーティングなどの光学コーティングを含むことができる。任意選択的に、反射防止層などの追加のコーティング、又は電気光学的に調整可能な構成要素を窓に組み込むこともできる。システムは、電子デバイス、建物、ビークル、又は他の好適なシステムであってもよい。窓を有するシステムがビークルである例示的な構成は、本明細書において一実施例として説明される場合がある。これは、単に例示に過ぎない。窓構造体は、任意の好適なシステムに形成することができる。
【0009】
窓の電気的に調整可能な構成要素を使用して、窓の光学特性を調整することができる。例えば、電気的に調整可能な窓を調整して、光の吸収、したがって窓の光透過率を変化させることができる。調整可能な光変調器層は、例えば、ルーフトップウィンドウ用の電気的に調整可能なサンルーフとして機能してもよく、又はサイドウィンドウ、フロントウィンドウ、若しくはリアウィンドウ用の電気的に調整可能なシェードを実装するために使用されてもよい。例示的な構成では、窓の透明度は、ゲストホスト液晶光変調器などの液晶光変調器を使用して変調することができる。調整可能な光学構成要素層はまた、画像を表示するため、照明を提供するため、並びに/又は別の方法で窓の外観及び挙動を調整するために使用されてもよい。
【0010】
システムの窓は、複数のガラス層を含んでもよい。例えば、窓は、内側透明構造層(内側ガラス層と呼ばれることもある)及び外側透明構造層(外側ガラス層と呼ばれることもある)を含むことができる。窓の内層及び外層は、間隙によって分離されていてもよい。間隙は、空気で充填されてもよく、又はポリマー、液体、若しくは他の機能性誘電体で充填されてもよい。内側及び外側ガラス層が空気によって分離されている例示的な構成は、本明細書において一実施例として説明されることがある。
【0011】
窓のガラス層は、単層ガラス層(例えば、熱強化又は強化ガラスの単層)であってもよく、又はいくつかの構成では、例えば、互いに積層された第1及び第2のガラス層から形成された多層構造体であってもよい。積層ガラス層は、第1及び第2のガラス層を接合して積層ガラスのシートを形成するポリビニルブチラール(PVB)などのポリマーを有してもよい。多層ガラス構造体(介在するPVBを有する2つ以上の積層ガラス層から形成された積層ガラス層)及び単層ガラス層は、任意選択の着色剤(例えば、染料、顔料など)を含んでもよい。積層ガラス層中のポリマー層(例えば、PVB層)はまた、任意選択的に受動的に着色されていてもよい。
【0012】
ガラスの代替として、ポリマー層が、窓を形成する際に使用されてもよい。例えば、窓は、ポリカーボネート又はアクリル層などの1つ以上のポリマー層を含むことができる。積層窓構造体は、熱可塑性ウレタン(TPU)中間層などの中間層を有する複数のポリマー層から形成することができる。概して、任意の所望の中間層を使用することができる。
【0013】
窓構造体を形成する際に用いられる材料にかかわらず、構造体は湾曲していてもよい。例えば、窓層は、複合曲率及び少なくとも0.1%少なくとも0.5%、少なくとも0.8%、少なくとも5%、又は他の所望の値の幾何学的歪みを有してもよい。窓層に1つ以上のコーティングを施すことが望ましい場合がある。いくつかの実施形態では、物理蒸着コーティングを層に施すことができる。物理蒸着コーティングは、1つ以上のカソードを有する物理蒸着コータを用いて層上にスパッタリングされ得る。
【0014】
窓層上の物理蒸着コーティングの均一性を確実にするために、窓層の曲率が変化するにつれて、1つ以上のカソードに供給される電力を変化させてもよく、曲率に基づく開口部を有するマスクをカソードと窓層との間に用いてもよく、ねじれた磁石を有する円筒形状のカソード又はフレーム形状のカソードを用いてもよく、物理蒸着コータは、窓層に向かって外向きにスパッタリングする内部カソードを有してもよく、電磁石を用いて、コータから放出される磁束を変更、したがってコーティングの厚さを変更してもよく、コータは、窓層の曲率に適合するマグネトロンを含んでもよく、並びに/又はガス圧力及び/若しくはガス流量(例えば、物理蒸着に使用されているガスの)を調整してもよい。
【0015】
1つ以上の物理蒸着コーティングを有する窓を含み得るタイプの例示的なシステムを図1に示す。システム10は、電子デバイス、ビークル、建物、又は任意の他の所望のシステムであってもよい。例えば、システム10は、携帯電話、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、テレビ、又は任意の他の所望の電子デバイスなどの電子デバイスであってもよい。電子デバイスは、デバイス筐体と、デバイス筐体の前面上のディスプレイと、デバイス筐体内の電子構成要素とを含むことができる。他の実施例では、システム10は、車輪が取り付けられたシャーシを有する本体と、推進及びステアリングシステムと、他のビークルシステムとを有するビークルであってもよい。ビークル本体は、ドア、トランク構造体、フード、サイドボディパネル、ルーフ、及び/又は他の本体構造体を含んでもよい。シートが、本体の内部に形成されていてもよい。しかしながら、これらの実施例は単なる例示に過ぎない。概して、システム10は、任意の所望のシステムであってよい。
【0016】
特定のシステムに関係なく、システム10は、窓(単数又は複数)16などの1つ以上の窓を含むことができる。窓16は、システム10を取り囲む外部環境からシステム10の内部を分離することができる。例えば、窓16は、例として、電子デバイスの前面及び/又は背面上、ビークルの前面、背面、上面及び/又は側面上、又は建物の側面上の窓を含んでもよい。
【0017】
入出力デバイス21は、センサ、オーディオ構成要素、ディスプレイ、及び他の構成要素を含むことができる。例えば、入出力デバイス21は、ビークルの乗員に出力を提供してもよく、ビークルを取り囲む環境の測定を行ってもよく、ビークルの乗員からの入力を収集してもよい。必要に応じて、入出力デバイスのいくつかは、窓(単数又は複数)16を通して動作してもよい。いくつかの実施例では、入出力デバイス21は、窓(単数又は複数)16を通して電波を受信及び/又は送信する無線機などの通信デバイスを含むことができる。
【0018】
制御回路23は、揮発性及び不揮発性メモリ、マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路、デジタル信号プロセッサ、マイクロコントローラ、及びビークルなどのシステムの動作を制御するための他の回路などの記憶及び処理回路を含むことができる。動作中、制御回路23は、入出力デバイス21からの入力に基づいて、ビークルの構成要素を制御することができる。
【0019】
図1の窓16のうちの1つなどの窓の例示的な構成を図2に示す。図2に示すように、窓16は、外部領域18(例えば、ビークルの外側の領域などのシステム10の外側の領域)から内部領域14(例えば、ビークルの内側の領域などのシステム10の内側の領域)を分離することができる。窓16は、内層20及び外層22を含むことができる。層20及び22は、ガラス層、セラミック層、サファイア層、ポリマー層(ポリカーボネート層又はアクリル層など)、又は任意の他の所望の層であってもよく、透明又は部分的に透明であってもよい(例えば、一部の可視光の透過を低減するために着色されていてもよい)。層20及び22は、本明細書では(例えば、コーティングが層に施されている場合)基板とも呼ばれることがある。
【0020】
層20及び22は、単層ガラス構造体及び/又は多層ガラス構造体から形成されていてもよい。これらの単層ガラス構造体は、(例えば、アニーリング、熱強化、焼き戻し、及び/又は化学強化によって)強化されてもよい。概して、内層20は、単層ガラス構造体(例えば、強化ガラスの単層)又は積層ガラス層であってもよく、外層22は、単層ガラス構造体(例えば、強化ガラスの単層)又は積層ガラス層であってもよい。層20及び/又は層22が積層ガラス層である実施形態では、それらは、1つ以上のポリマー層を使用して一緒に積層された複数のガラス層を含んでもよい。層20及び/又は層22が積層ポリマー層である実施形態では、それらは、1つ以上の追加のポリマー層を使用して一緒に積層された複数のポリマー層を含んでもよい。ポリマー層は、ポリビニルブチラール、熱可塑性ポリウレタン、又はガラス層を取り付けるための他の好適なポリマーの層であってもよい。
【0021】
層20及び22は、間隙25によって分離することができる。間隙25は、空隙、真空であってもよく、又は間隙25は、任意の所望の物質で充填されてもよい。例えば、間隙25は、ポリマー、ガス、液体、又は他の誘電体で充填されてもよい。場合によっては、必要に応じて、間隙25を省略してもよい。
【0022】
光は、窓16に入射することができる。例えば、光は外部領域18から窓16に入射することができ、及び/又は光は内部領域14から窓16に入射することができる。光は、可視光、赤外線、紫外線、及び他の波長を含むことができる。窓16を通る光の望ましくない波長(赤外線波長など)の透過を低減するために、内層20を物理蒸着コーティング24でコーティングしてもよい。例えば、物理蒸着コーティング24は、赤外光が内部領域14に到達するのを防ぐ(例えば、窓を通る赤外光の透過率を少なくとも70%、少なくとも50%、少なくとも40%、又は他の値だけ低減する)複数の薄膜層(少なくとも1つの銀層など)を含む赤外反射コーティングであってもよい。しかしながら、一般に、物理蒸着コーティング24は、1つ以上の所望の波長の光(例えば、紫外光)を遮断するコーティング、交互の屈折率を有する誘電体層のスタックを有する薄膜干渉フィルタから形成される反射防止コーティング、及び/又は任意の他の所望の物理蒸着コーティングなどの任意の所望の物理蒸着コーティングであってもよい。
【0023】
物理蒸着コーティング24は、内層20の外面上にあるものとして図2に示されているが、これは単なる例示に過ぎない。図2に示すように、物理蒸着コーティング24は、内層20上にある代わりに、又はそれに加えて、外層22の内面上の位置24’にあってもよい。代替的に又は追加的に、物理蒸着コーティング24は、窓16の外側(例えば、外層22の外面上又は内層20の内面上)に形成されていてもよく、又は内層20と外層22との間に形成されている追加の層上に形成されてもよい。一般に、物理蒸着コーティング24は、窓16内のどこにでも形成することができる。
【0024】
物理蒸着コーティング24などの1つ以上の物理蒸着コーティングがどこに形成されるかにかかわらず、物理蒸着コーティングは複数の層を含むことができる。例えば、物理蒸着コーティングは、赤外線反射コーティング、薄膜干渉フィルタ、又は他の所望のコーティングを形成するための複数の層を含むことができる。物理蒸着コーティングの例示的な積層体を図3に示す。
【0025】
図3に示すように、物理蒸着コーティング24を基板30に塗布することができる。基板30は、例えば、図2の窓層20又は22などの窓層であってもよい。物理蒸着コーティング24は、1つ以上の物理蒸着コーティング層34を含むことができる。層34の各々は、異なる材料を含んでもよく、又は層34は、交互の材料を含んでもよい。いくつかの実施形態では、物理蒸着コーティング24は、薄膜干渉フィルタを形成するために交互の屈折率を有する複数の薄膜層を含むことができる。
【0026】
物理蒸着コーティング24は、基板30上に直接存在するように示されているが、これは単なる例示に過ぎない。所望であれば、物理蒸着コーティング24と基板30との間に1つ以上の層を組み込んでもよい。いくつかの実施形態では、ポリマー層などの緩衝層を基板30と物理蒸着コーティング24との間に組み込んで、物理蒸着プロセス中に基板30に加えられる応力を低減することができる。
【0027】
システム10内の窓(例えば、窓16)は、完全に平面であってもよく(例えば、窓の内面及び外面が平坦であってもよい)、及び/又はシステム10内の窓の一部又は全部が表面曲率を有してもよい。各窓の内面及び外面は、例として、複合曲率(例えば、X及びY方向に沿って取られた湾曲した断面プロファイルによって特徴付けられる非可展面)を有してもよく、及び/又は可展面(歪みなく平坦化することができるゼロガウス曲率を有する表面)を有してもよい。湾曲した窓形状は、ガラスが成形するのに十分に柔らかくなるまでガラスを加熱することによって形成され得る(例えば、型を用いて、重力を用いて、ガラススランピング技術を用いて、及び/又は他のガラス成形方法を用いて)。
【0028】
図4は、例示的な湾曲した窓層の斜視図である。図4の例では、窓層(図4の層30などの透明層によって形成される)の表面は、複合曲率を有する。特に、層30は、図3のX及びY方向に沿って取られた湾曲した断面プロファイルによって特徴付けられる非可展面を有する。図5は、+X方向に見た、線48に沿って取られた図4の層30の側断面図である。図5に示すように、+X方向に見た層30の断面プロファイルは湾曲している。図6は、図4の線50に沿って取り、+Y方向に見た図4の層30の側断面である。図5に示すように、+Y方向に見た層30の断面プロファイルは湾曲している。複合曲率を有する層30は、必要に応じて、平面(湾曲していない)である1つ以上の領域及び/又は可展面(複合曲率を有しない湾曲面領域)を有する1つ以上の領域を有してもよい。いくつかの構成において、層30などの湾曲した層は、可展面のみを有し、複合曲率を有さなくてもよい(及び任意選択で平面部分を有してもよい)。層30のような窓14のための湾曲した層が複合曲率のみを有する構成、又は複合湾曲の1つ以上の領域と1つ以上の平坦領域との組み合わせを有する構成も使用され得る。湾曲した断面プロファイルを有する形状に層30を形成するプロセスは、曲げ又は成形と呼ばれることがある。1つ以上の層30が、窓16を形成する際に使用されてもよく、各層30(及び窓16)は、任意の好適な外形(長方形、三角形、円形、湾曲縁部及び/又は直線縁部を伴う形状など)を有してもよい。
【0029】
システム10内の窓16などの窓の湾曲量は、窓16が、少なくとも0.1%、少なくとも0.8%、少なくとも1%、少なくとも3%、少なくとも3.5%、少なくとも4%、少なくとも5%、3%~7.5%、3.5%~7%、4%~6.5%、4.5%~6%、7%未満、6.5%%未満の幾何学的歪み値、又は他の適切な幾何学的歪み量を示すようなものであってもよい。代替的に又は追加的に、窓16は大きくてもよい(例えば、図4のX及びY方向に大きな表面積を有してもよい)。例えば、窓16は、少なくとも1m2、少なくとも1.5m2、少なくとも0.75m2であってもよく、又は別の所望の表面積を有してもよい。
【0030】
窓16の幾何学的歪み及びサイズに起因して、窓16の表面にコーティングを施すことが困難な場合がある。特に、従来のプロセスは、そのような大きな窓を取り扱うのに不適切である場合があり(例えば、プロセスは、窓を破壊する場合があり、又は窓に過剰な応力をかける場合がある)、又は複雑な湾曲を有する窓を均一にコーティングすることができない場合がある。窓16上に物理蒸着コーティングを蒸着させる際に用いることができる例示的な物理蒸着コータを図7に示す。
【0031】
図7に示すように、物理蒸着コータ31は、カソード32A、32B、32C、及び32Dを含むことができる。カソード32は、例えば、ターゲット材料に向かってプラズマを放電することができ(例えば、ターゲット材料に衝撃を与えることができ)、ターゲット材料の一部は、基板34上に堆積し得る蒸気としてスパッタリングすることができる。このようにして、カソード32を用いて基板30上に物理蒸着コーティングをスパッタリングすることができる。しかしながら、この物理蒸着プロセスは単なる例示に過ぎない。一般に、カソード32は、基板30上に物理蒸着コーティングを堆積させるための任意の所望の物理蒸着プロセスで使用され得る。
【0032】
マスク34は、カソード32(及びターゲット材料)と基板30との間に挿入されてもよい。例えば、マスク34は、基板30の曲率に一致するようにパターン化された1つ以上の開口部を有するフィンガーマスクであってもよい。スパッタリングされた(又は他の方法で放出された)材料は、基板30上に堆積される前にマスク34を通過することができる。マスク34は基板の曲率に基づいて開口部を有するので、スパッタリングされた材料は基板30の表面にわたって均一に堆積され得る。例えば、物理蒸着コーティングは、表面の曲率が不均一であっても、表面にわたって均一な厚さを有することができる。しかしながら、基板30の曲率に応じて、必要に応じてマスク34を省略してもよい。
【0033】
物理蒸着コーティングが、カソード32を使用して基板30上に塗布されている間、所望であれば、基板30をカソード32に対して回転させてもよい(例えば、基板が全てのカソードからの蒸着に曝されるように、物理蒸着コータの中点を中心に回転させる)。代替的に又は付加的に、カソード32を、蒸着プロセス中に基板30に対して回転させてもよい。基板30及び/又はカソード32を回転させることによって、基板30上に形成される物理蒸着コーティングは、基板30及びカソード32が静止している場合よりも均一になり得る。所望であれば、カソード32(及びマスク34)に対する基板30の回転速度を調整することができる。基板30の曲率に基づいて速度を調整することにより、より均一なコーティングを達成することができる。
【0034】
基板30の曲率を考慮して、他の条件を変更することもできる。例えば、システムの圧力は、基板の異なる湾曲領域を考慮して、必要に応じて増加又は減少され得る。代替的に又は追加的に、物理蒸着に使用されるガスの圧力は、基板の曲率に基づいて増加又は減少されてもよい。1つの例示的な例では、システムの動作圧力及び/又はガスの圧力は、1mTorr程度であってもよい。しかしながら、圧力は、均一性を高めるために、約4mTorr又は5mTorrなどに上げてもよい。これらの例は、使用できる圧力の単なる例示に過ぎず、限定するものではない。任意の好適な圧力を用いることができる。
【0035】
一般に、ガス圧力を調整することにより、コーティングの均一性を高めることができる。しかしながら、銀層が(例えば、赤外線反射コーティングの一部として)堆積されている実施形態では、より高い圧力は、銀の品質を低下させる可能性がある。したがって、ガス圧力は、基板の曲率(例えば、より高い曲率を有する基板にはより高いガス圧力を使用することができる)と必要な銀の品質(例えば、所与の赤外線反射コーティングに対してより高い銀の品質が必要な場合、より低いガス圧力を使用することができる)に基づいて、トレードオフとして選択してもよい。
【0036】
ガス圧力を変化させることに加えて、又はその代わりに、ガス流量を変化させてもよい。特に、ガス流量は、特に誘電体層(薄膜干渉層など)が蒸着されている場合に、蒸着層の化学量論を変えるように修正されてもよい。例示的な例として、酸素ガスの流量は、基板の形状及び所望のコーティング材料に基づいて調整され、正しい化学量論的に所定の層を形成することができる(例えば、TiO2、TiZnOなどの酸素を含有する誘電体層、又は他の誘電体層が蒸着されている場合)。いくつかの実施形態では、酸素又は他のガスの流量を基板にわたって変化させて、基板の表面にわたって堆積されるコーティングを修正することができる。このようにして、所望のコーティングを湾曲した基板上に蒸着させることができる。
【0037】
基板30は、少なくとも0.1%、少なくとも0.8%、少なくとも1%、少なくとも5%(又は他の所望の歪み)の幾何学的歪みを有する複合曲率を有する表面などの曲面を有し得るので、蒸着プロセス中にカソード32を調節して、基板30上に均一な厚さのコーティングを提供することができる。物理蒸着コータ31内のカソードの電力を調整する例示的な例を図8に示す。
【0038】
図8に示すように、均一なコーティングを施すために、図7のカソード32などのカソードに必要な電力は、基板がカソードに対して移動するにつれて、時間とともに変化し得る。特に、曲線36及び38は、基板の異なる部分にわたる基板の曲率の差に基づいて決定することができる。例えば、曲線36は、基板の第1の部分を均一にコーティングするのに必要な電力量を反映することができ、曲線38は、基板の第2の部分を均一にコーティングするのに必要な電力量を反映することができる。曲線36及び38の極大値は、基板がカソード及びターゲットからより遠くにあるときに生じ得る(例えば、基板がより遠くにあるとき、均一な厚さのコーティングを塗布するためにより多くの電力が必要とされる)一方で、曲線36及び38の極小値は、基板がカソード及びターゲットにより近いときに生じ得る(例えば、基板がより近くにあるとき、均一な厚さのコーティングを塗布するのに必要な電力が少なくなる)。換言すれば、スパッタリングの電力(例えば、電圧)を変化させることによって、動的な蒸着速度を使用することができる。高電圧は、高エネルギーを有する高磁束を生成し、基板がカソード及びターゲットからより遠いときに使用されてもよく、一方、低電圧は、低エネルギーを有する低磁束を生成し、基板がカソード及びターゲットにより近いときに使用されてもよい。
【0039】
曲線40は、曲線36及び38の回帰曲線であってもよい。カソード32などのカソードに印加される電力を曲線40に従って調整することによって、物理蒸着コーティングは、蒸着プロセス中に電力が一定であった場合よりも均一に塗布され得る。換言すれば、蒸着プロセス中にカソードに印加される電力を調整することは、湾曲した基板の表面全体にわたってより均一なコーティングをもたらすことができる。
【0040】
曲線36、38及び40は、電力変調曲線の単なる例示的な例に過ぎない。一般に、任意の所望の数の個々の電力変調曲線を任意の所望の数の基板部分に対して決定することができ、回帰電力変調曲線を個々の電力変調曲線から決定することができる。次いで、回帰電力変調曲線を使用して、蒸着中にカソードに印加される電力を変調することができ、その結果、基板全体にわたってより均一なコーティングが得られる。
【0041】
蒸着プロセス中にカソードの電力を調整することに加えて、又はその代わりに、カソード/ターゲットと基板との間にマスクを使用することができる。図7に関連して説明したように、マスク34は、基板の曲率に基づく/対応する開口部を有することができる。このような開口部を有するマスクの一例を図9に示す。
【0042】
図9に示すように、マスク34などのマスクは、部分42と、部分42の間の開口部44とを含むことができる。部分42は、金属、ポリマー、又は他の所望の材料などの任意の所望の材料から形成されてもよい。開口部44は、物理蒸着コーティングが施される基板(図7の基板30など)の曲率に対応するか、又はそれに基づく湾曲部46を有し得る。蒸着プロセス中に基板を回転させることができるので(図7の基板30に関して説明したように)、開口部44は、所与の点における基板の曲率にかかわらず、均一なコーティングが基板に塗布されることを保証することができる。
【0043】
マスク34(例えば、開口部44)の形状、図8の電力変調、及び/又は基板の移動などの蒸着プロセスの他の条件を決定するために、反復プロセスを使用することができる。例えば、コータ(例えば、コータ31)の既知の特性をプラズマ及び輸送シミュレーションと組み合わせて使用して、所与の曲率の基板上の予想されるコーティング堆積を決定することができる。マスク34の形状、電力変調、回転速度、圧力などの異なる特性を反復的に修正して、コーティングが湾曲した基板上で均一になる条件の最適な組み合わせを決定することができる。所望であれば、このようなプロセスは、コーティングされる各基板(例えば、各曲率)に対して完了することができる。しかしながら、この反復プロセスは単なる例示に過ぎない。一般に、コーティングパラメータは、任意の所望の方法で選択及び/又は計算することができる。
【0044】
開口部44は単なる例示に過ぎない。一般に、開口部44は、基板の曲率に対応する任意の所望の形状を有することができる(例えば、蒸着プロセス中に基板がカソードに対して回転されるときに、湾曲した基板にわたって均一な蒸着を容易にする形状を有する開口部)。
【0045】
マスク34を使用する代わりに又はそれに加えて、物理蒸着コータ内のカソードは、湾曲した基板にわたって均一なコーティングを提供するように設計されてもよい。例えば、カソードは、カソードによって生成される磁束の(したがって蒸着方向の)連続的な方向変化を可能にするねじれた磁石と関連付けられてもよく、及び/又はフレーム形状のカソードであってもよい。連続的な方向変化を可能にするカソードの例示的な例を図10に示す。
【0046】
図10に示すように、カソード32などのカソードは、対称軸54を有する円筒形本体52を有することができる。矢印56によって示されるように、カソード32によって生成される磁束の方向は、軸54の周りの任意の所望の方向に連続的に変化させることができる。例えば、カソード32によって生成される磁束は、物理蒸着コーティングが塗布されている基板の曲率に基づいて、物理蒸着プロセス中に変化させることができる。基板がカソード32に対して回転すると、カソード32に対する曲率が変化し、磁束の方向、したがってスパッタリングの方向が変化し得る。
【0047】
磁束方向56の変化を提供するために、カソード32に関連するねじれた磁石が使用されてもよい。具体的には、磁石をカソード32の周りに螺旋状に巻き付けてもよいし、磁石がカソード32を部分的に包囲してもよい。磁石の位置に関係なく、磁石によって生成される磁場を変化させて(例えば、電磁石に印加される電圧を変化させて)、カソード32によって生成される磁束の方向を変化させることができる。このようにして、スパッタリングの方向は、基板の曲率に基づいて蒸着プロセス中に変更することができ、より均一な物理蒸着コーティングが可能となる。
【0048】
湾曲した基板上に物理蒸着コーティングをスパッタリングする際に用いることができるフレーム形状のカソードの例示的な例を図11に示す。図11に示すように、カソード32などのカソードは、フレーム形状の本体57を有することができる。フレーム形状の本体57は、イオンが垂直軸に沿って基板30に向かって放出され得る中央部分を取り囲むことができる(介在するターゲットは図11に示されていない)。フレーム形状のカソードを使用することは、基板30上にスパッタリングされたコーティングの均一性を改善することができ、図7の物理蒸着コータ31などの物理蒸着コータの外部に、より多くの空間を提供することができる。このようにして、均一な物理蒸着コーティングをスパッタリングするコータの能力を向上させながら、物理蒸着コータのサイズ要件を低減することができる。
【0049】
なお、図11では、カソード32を正方形のフレーム形状のカソードとして示しているが、これは単なる例示に過ぎない。一般に、カソード32は、リング形状のカソードなど、任意の所望の形状を有することができる。
【0050】
カソードを修正する代わりに、又はそれに加えて、物理蒸着コータ自体を修正して、湾曲した基板上への均一な蒸着を可能にすることができる。特に、図7はコーティングを基板上に内向きにスパッタリングするカソードを示しているが、物理蒸着コータは、コーティングを基板上に外向きにスパッタリングするカソードを有するように修正されてもよい。コーティングを外向きにスパッタリングする例示的な物理蒸着コータを図12に示す。
【0051】
図12に示すように、カソード32は、中央構造体58の周りに配置されてもよく、基板30に向かって外向きに物理蒸着コーティングをスパッタリングしてもよい。蒸着中、基板30は、カソード32及び中央構造体58の周りを回転してもよい。外向きスパッタリングの使用により、基板30上のコーティングの均一性を少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも10%、約20%、少なくとも15%、又は他の値だけ改善することができる。例えば、外向きスパッタリングを使用して蒸着された基板30上のコーティングは、基板の表面全体にわたって、少なくとも±3%、少なくとも±2%、少なくとも±1.5%の均一性、又は他の適切な均一性を有することができる。さらに、図12の外向きスパッタリングは、必要に応じて、図8の電力変調、図9のマスク設計、及び/又は図10及び図11のカソードと組み合わせて使用して、より均一なコーティングを湾曲した基板上に提供することができる。
【0052】
図12は、4つの基板をバッチコーティングする4つのカソードを示しているが、これは単なる例示に過ぎない。一般に、物理蒸着コータは、例として、5つのカソード、6つのカソード、5つ未満のカソード、又は3つのカソードなど、任意の所望の数のカソードを含むことができる。カソードの数に基づいて、対応する数の基板をバッチコーティングすることができる。しかしながら、所望であれば、カソードの数とは異なる数の基板(例えば、カソードの数よりも多い又は少ない基板)をバッチコーティングしてもよい。
【0053】
また、物理蒸着コーティングが施されている基板の曲率に基づいてスパッタリングの方向を変えるために、ターゲットの近くで磁石を使用することが望ましい場合もある。このように磁石を使用する例示的な例を図13に示す。
【0054】
図13に示すように、カソード32は、イオンをターゲット62に向けて放射することによって、磁束64及び66を生成することができる。基板30の曲率の差を考慮して、電磁石60をターゲット62の両側に配置することができる。図示のように、カソード32に関連する電磁石60は、磁束の方向に影響を与える磁場を有することができる。基板30の一方の側が他方の側よりもターゲット62に近い場合、磁束が基板30のさらに離れた部分に向かって大きくなるように、不均衡な磁束を有することが望ましい場合がある。例えば、基板30が図13の左側のカソード32及びターゲット62からさらに離れている場合、左側の電磁石60は、右側の電磁石60よりも大きい磁場を有するように調整され得る(例えば、左側の電磁石60に印加される電圧が増加され得る)。このようにして、磁束64は、基板30の右部分に向かう磁束66よりも基板30の左部分に向かう方が多くなり、それによって基板30を均一にコーティングすることができる。
【0055】
2つのカソード32及び2組の電磁石60が単一の基板をコーティングするのに使用される図13の例は、単なる例示に過ぎない。一般に、任意の所望の数のカソード及び任意の数の電磁石を物理蒸着コータ内で使用して、それぞれ、所望の数の磁束を形成し、それらの磁束を調整することができる。1つの例示的な例では、カソード32の各々は、マグネトロン33に最も近い端部から基板30に最も近い端部まで延びる複数の電磁石60を含むことができる。例えば、各カソード32は、少なくとも3つ、少なくとも5つ、又は任意の他の所望の数の電磁石を含むことができる。これらの複数の磁石のうちのどれを単一のカソード内で作動させるか(例えば、オンにするか)を変更することによって、磁場の長さ、したがって、関連する磁束の長さを増加することができる。
【0056】
基板曲率に基づいて変化する1つ以上の磁束を有することに加えて、又はその代わりに、1つ以上の磁束を時間によって変化させることもできる。特に、磁場は、基板の一部分がカソードからより遠い第1の時間に増加され得、基板の異なる部分がカソードにより近い第2の時間に減少され得る。磁場、したがって磁束を経時的に修正することによって、コーティングを、より均一に塗布することができる(例えば、コーティングを、基板の曲率に一致させることができる)。追加的に又は代替的に、磁石60は、磁束の角度を調整し、基板30全体にコーティングを均一に分布させるように操作されてもよい。
【0057】
マグネトロン33も物理蒸着コータに含まれてもよい。マグネトロン33は、基板30の形状に一致し、磁束(例えば、磁束64及び66)を基板30に向けて誘導する磁場を生成することができる。いくつかの実施形態では、マグネトロン33は、基板30の形状に一致する形状を有することができる。マグネトロンの例示的な例を図14に示す。
【0058】
図14に示すように、マグネトロン33などのマグネトロンは、外側本体部分67と中空内側部分69とを有することができる。中空内側部分69は、必要に応じてタイル65でタイル張りされてもよい。外側本体部分67及び内側部分69は、基板30の曲率に一致する形状を有してもよい。このようにして、マグネトロン33によって生成される磁場(例えば、マグネトロン33に印加される電圧に応答して生成される磁場)も、基板30の曲率に一致する形状を有することができる。生成された磁場がイオン磁束を基板30に向かって移動させるので、結果として得られるコーティングは、したがって、基板30に均一に塗布され得る。
【0059】
複合曲率及び大きな幾何学的歪みを有する基板などの湾曲基板上の均一性を改善する複数の方法が記載されている。特に、図8の電力変調、図9のマスク設計、図10及び図11のカソード設計、図12の外向きスパッタリング、図13の不均衡磁場、及び図14のマグネトロン設計は全て、コーティングの均一性を改善することができる。これらの方法のうちの1つ以上を使用する均一性の改善を示している例示的なグラフを、図15に示す。
【0060】
図15に示すように、曲線68は、図7図14の方法のうちの1つ以上を使用して塗布されたときの基板上のコーティングの均一性に対応し得、曲線70は、これらの方法のいずれも使用せずに塗布されたときの基板上のコーティングの均一性に対応し得る。曲線70は、このようなコーティングは、特に基板の縁部において不均一であることを示している。対照的に、図7図14の均一性の改善のうちの1つ以上を使用して形成されたコーティングは、基板全体(例えば、基板の表面全体)にわたって、5%未満、4%未満、2%未満、3%未満、約2.5%、2.5%以下、1.5%未満、0.5%未満、又は他の所望の量で変動する厚さを有し得る。
【0061】
コーティングの厚さが均一であるため、コーティングはまた、基板の表面全体にわたって均一な色を有することができる。特に、コーティングは、(コーティングされていない窓と比較して)表面全体にわたって1.4未満、1.0未満、又は他の所望の値である、LAB色空間における色差ΔE(ΔE94又はΔE2000など)を有し得る。ΔEは、LAB色空間における全色差を指す。例示的なΔEの式は、式1によって与えられる。
【数1】
ここで、L(L*とも呼ばれる)は窓を通過する光の輝度であり、a(a*とも呼ばれる)及びb(b*とも呼ばれる)は窓を通過する光の色座標である。a及びbの色座標は、それぞれ赤色/灰色及び青色/黄色の差を指す。L、a、及びbの差は、物理蒸着コーティングを有する窓を通る光のL、a、及びbの値と、コーティングされていない窓を通る光のL、a、及びbの値とを比較している。したがって、物理蒸着コーティングは、窓を通る光の色(ΔE)を、例として1.0、又は1.4だけ変化させることができる。このようにして、物理蒸着層は、窓の色の変化を少なくすることができる。
【0062】
さらに、必要に応じて、(例えば、カソード及びマスクに対する基板の回転速度を調整することによって、及び/又はシステムの圧力を調整することによって)基板の中央よりも基板の縁部に向かって厚くなるコーティングを施すことができる。例えば、凸レンズ上に塗布される光学フィルタコーティングは、レンズの中央よりもレンズの縁部の方が厚く塗布されることができる。特に、光学フィルタは、フィルタを通過する光の入射角に基づいて変化するフィルタ特性を有することができる。これらの高角度におけるコーティングのスペクトル曲線のシフトを防止することが望ましい場合がある。コーティングをレンズの縁部でより厚くすることによって、スペクトル曲線はシフトしなくなり得(又はシフトが少なくなり得)、スペクトルシフトは高角度で軽減され得る。基板の縁部におけるより厚い堆積は、凸レンズに関して説明されているが、これは単なる例示に過ぎない。一般に、コーティングは、任意の所望の基板上の縁部において厚さを増して塗布され得る。
【0063】
図7図14の方法のうちの1つ以上を使用することによって、複合曲率(及び大きな幾何学的歪み)を有する大きな基板上に、均一な厚さのコーティング、したがって色変化の少ないコーティングを形成することができる。
【0064】
一実施形態によれば、表面を含む窓層を有する窓が提供され、窓層は少なくとも0.8%の幾何学的歪みと、窓層の表面上の物理蒸着コーティングとを有し、物理蒸着コーティングは赤外線反射コーティングであり、物理蒸着コーティングは、表面にわたって3%未満変動する厚さを有する。
【0065】
別の実施形態によれば、窓層は、少なくとも1m2の面積を有し、物理蒸着コーティングの厚さは、窓層の表面にわたって2.5%以下で変動し、物理蒸着コーティングは、窓層の表面にわたって1未満のΔEを有する。
【0066】
別の実施形態によれば、物理蒸着コーティングの厚さは、窓層の表面にわたって1.5%未満変動する。
【0067】
別の実施形態によれば、物理蒸着コーティングは、窓層の表面にわたって1.4未満のΔEを有する。
【0068】
別の実施形態によれば、物理蒸着コーティングのΔEは、窓層の表面にわたって1未満である。
【0069】
別の実施形態によれば、窓層は、複合曲率を有する部分を有し、物理蒸着コーティングは、窓層のその部分に塗布される。
【0070】
別の実施形態によれば、窓層は、少なくとも1m2の面積を有する。
【0071】
別の実施形態によれば、物理蒸着コーティングは、窓層の表面の全体にわたってLAB色空間において1未満のΔEを有する。
【0072】
別の実施形態によれば、物理蒸着コーティングの厚さは、窓層の表面にわたって2.5%以下で変動する。
【0073】
別の実施形態によれば、物理蒸着コーティングは、赤外線反射コーティングを形成する複数の薄膜コーティング層を含み、複数の薄膜コーティング層は、少なくとも1つの銀層を含む。
【0074】
一実施形態によれば、カソードを使用し、湾曲窓の曲率に一致する開口部を有するマスクを介して湾曲窓層上に物理蒸着コーティング層をスパッタリングするステップと、物理蒸着コーティング層をスパッタリングしている間に、湾曲窓層の曲率に基づいてカソードに印加される電力を調節するステップと、を含む、湾曲窓層に物理蒸着コーティングを施す方法が提供される。
【0075】
別の実施形態によれば、方法は、物理蒸着コーティング層をスパッタリングしている間に、窓層を回転させるステップを含む。
【0076】
別の実施形態によれば、物理蒸着コーティング層を湾曲窓層上にスパッタリングすることは、物理蒸着コーティング層を内側カソードから湾曲窓層に向かって外向きにスパッタリングすることを含む。
【0077】
別の実施形態によれば、本方法は、物理蒸着コーティング層をスパッタリングしている間に、電磁石を調整してカソードと湾曲窓との間の磁場を変化させるステップを含む。
【0078】
別の実施形態によれば、物理蒸着コーティング層をスパッタリングすることは、湾曲窓層の湾曲面にわたって2.5%以下の変動のある厚さで湾曲窓層上に物理蒸着コーティング層を蒸着させることを含む。
【0079】
別の実施形態によれば、物理蒸着コーティング層をスパッタリングすることは、フレーム形状のカソードを用いて、湾曲窓層上に垂直方向に物理蒸着コーティング層をスパッタリングすることを含む。
【0080】
別の実施形態によれば、本方法は、物理蒸着コーティング層をスパッタリングしている間に、カソードに関連付けられた磁石を調整することによってスパッタリングの方向を連続的に変化させるステップを含む。
【0081】
別の実施形態によれば、本方法は、物理蒸着コーティング層をスパッタリングしている間に、物理蒸着コーティング層のスパッタリングに使用されるガスの圧力を調整するステップを含む。
【0082】
別の実施形態によれば、本方法は、物理蒸着コーティング層をスパッタリングしている間に、物理蒸着コーティング層のスパッタリングに使用されるガスの流量を調整するステップを含む。
【0083】
別の実施形態によれば、ガスの圧力及び流量を調整することは、酸素ガスの圧力及び流量を調整することを含む。
【0084】
一実施形態によれば、複合曲率を有するガラス層と、ガラス層の複合曲率上の物理蒸着コーティングとを含む窓が提供され、物理蒸着コーティングは、赤外線反射コーティングであり、物理蒸着コーティングは、ガラス層にわたって2.5%以下で変動する厚さを有する。
【0085】
別の実施形態によれば、ガラス層は、少なくとも0.8%の幾何学的歪みを有する。
【0086】
別の実施形態によれば、物理蒸着コーティングは、ガラス層の全体にわたって1.4未満のLAB色空間におけるΔEを有する。
【0087】
上記は、単に例示に過ぎず、様々な修正を記載の実施形態に行ってもよい。上記の実施形態は、個々に又は任意の組み合わせで実装されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【外国語明細書】