(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045072
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】2液混合形塗料組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 133/14 20060101AFI20240326BHJP
C09D 133/02 20060101ALI20240326BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20240326BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240326BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240326BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C09D133/14
C09D133/02
C09D7/20
C09D7/61
C09D7/63
B05D7/24 301U
B05D7/24 302P
B05D7/24 303A
B05D7/24 302T
B05D7/24 303B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023152243
(22)【出願日】2023-09-20
(31)【優先権主張番号】P 2022150479
(32)【優先日】2022-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】釼持 政明
(72)【発明者】
【氏名】橋本(松阪) 裕子
(72)【発明者】
【氏名】田口 鈴乃
(72)【発明者】
【氏名】沼澤 昭
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075AC57
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4J038CG031
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4J038MA14
4J038NA04
4J038NA25
4J038NA26
4J038PA07
(57)【要約】
【課題】十分な可使時間を有し、可使時間の中で仕上がり外観の変化が少なく、且つ耐水性も備えた2液混合形塗料組成物を提供すること。
【解決手段】塗装前に主剤と硬化剤とを混合する2液混合形の塗料組成物であって、水酸基含有アクリル樹脂(A)、顔料分(B)及びリン酸系エステル化合物(C)を含む前記主剤と、ポリイソシアネート化合物(D)を含む前記硬化剤とを含み、水酸基含有アクリル樹脂(A)がカルボキシル基を有し、リン酸系エステル化合物(C)の量が、主剤に含まれる樹脂成分不揮発分100質量部を基準として0.1~10質量部の範囲内である、2液混合形塗料組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装前に主剤と硬化剤とを混合する2液混合形の塗料組成物であって、
水酸基含有アクリル樹脂(A)、顔料分(B)及びリン酸系エステル化合物(C)を含む前記主剤と、ポリイソシアネート化合物(D)を含む前記硬化剤と、を含み、
前記水酸基含有アクリル樹脂(A)がカルボキシル基を有し、
前記リン酸系エステル化合物(C)の量が、前記主剤に含まれる樹脂成分不揮発分100質量部を基準として0.1~10質量部の範囲内である、2液混合形塗料組成物。
【請求項2】
前記水酸基含有アクリル樹脂(A)は、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含む重合性不飽和モノマー成分を共重合成分とする樹脂であり、
前記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーの量が、全重合性不飽和モノマー成分100質量部中の0.1~10質量部である請求項1に記載の2液混合形塗料組成物。
【請求項3】
前記顔料分(B)が、硫酸バリウム、炭酸カルシウム及びシリカから選ばれる少なくとも1種の無機粒子(b)を含む、請求項1に記載の2液混合形塗料組成物。
【請求項4】
前記無機粒子(b)の平均粒子径が0.1~10μmの範囲内である、請求項3に記載の2液混合形塗料組成物。
【請求項5】
アミノ基含有アクリル樹脂(E)をさらに含む、請求項1又は3に記載の2液混合形塗料組成物。
【請求項6】
硬化触媒(F)をさらに含む、請求項1又は3に記載の2液混合形塗料組成物。
【請求項7】
消泡剤(G)をさらに含む、請求項1又は3に記載の2液混合形塗料組成物。
【請求項8】
弱溶剤を含む有機溶剤(H)をさらに含む、請求項1又は3に記載の2液混合形塗料組成物。
【請求項9】
基材面に、請求項1又は3に記載の2液混合形塗料組成物を塗装する、塗膜形成方法。
【請求項10】
基材面に、下塗り塗料を塗装した後、請求項1又は3に記載の2液混合形塗料組成物を上塗り塗料として塗装する、塗膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2液混合形塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
水酸基含有樹脂とポリイソシアネート化合物を使用した2液混合形ウレタン樹脂塗料は、通常、塗料缶が2つに分かれている。一つは水酸基含有樹脂を含む主剤を収容した缶であり、もう一つはポリイソシアネート化合物を含む硬化剤を収容した缶である。そして塗装業者は主剤と硬化剤の缶の中から内容物を取り出して計量混合し、混ぜたものを塗料として使用する。このようにして調製された塗料から形成される塗膜は弾力性及び柔軟性に優れており、市場のニーズに見合っていることから、2液混合形ウレタン樹脂塗料は塗料分野において幅広く使用されている。
【0003】
しかしながら塗装業者が主剤と硬化剤を混合した時点から水酸基含有樹脂とポリイソシアネートの化学反応が進行するため、混合してから塗装するまでの時間が長いと混合液の粘度が大きく上昇する、あるいはゲル化が起きてしまい、塗膜の品質が低下する不具合が生じる。このような問題を防止するため、塗料製造業者は主剤と硬化剤を混合してから使用可能な時間を可使時間として設定し、塗装業者に使用時間の制限を課している。このため塗装業者は設定された可使時間内に塗装作業を終えなければならず、塗装現場において主剤及び硬化剤混合後の作業をできるだけはやく行うとともに使用する塗料の量を管理する手間が生じているのが現状である。
【0004】
これまで、2液混合形ウレタン樹脂塗料の可使時間を長くするための試みは数多く行われてきた。例えば特許文献1には、アクリルポリオールを含む主剤成分又はポリイソシアネート化合物を含む硬化剤成分のいずれか又は両方に硫黄含有有機錫触媒を含む多成分型有機溶剤系のウレタン硬化型被覆用樹脂組成物が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、基体樹脂として2級水酸基含有アクリル樹脂、架橋剤として、脂肪族ポリイソシアネート化合物及びアルキルエーテル化メラミン樹脂の併用物に、スルホン酸化合物及び/又はリン酸化合物を含有する高固形分塗料組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-152215号公報
【特許文献2】特開2017-165955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、2液混合形ウレタン塗料の可使時間を長くするためには特定の硬化触媒や反応性の穏やかな2級水酸基を含有する樹脂を使用する方法が採られてきた。しかしながら、これらの方法によって可使時間を長くすることができたとしても、建築物外壁など広範囲を塗装する場合では、2液混合直後に塗装した箇所と2液混合して時間が経過してから塗装した箇所との間で光沢に差が生じ、結果として外観不良になるという不具合がある。
【0008】
本発明は、十分な可使時間を有し、可使時間の中で仕上がり外観の変化が少なく、且つ耐水性も備えた2液混合形の塗料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記した課題について鋭意検討した。その結果、2液混合形塗料組成物において、主剤において特定の水酸基含有アクリル樹脂に対して特定量のリン酸化合物を含有させることで、該主剤とポリイソシアネート化合物を含む硬化剤との2液を混合後の粘度上昇速度を穏やかに調整できるだけでなく、2液混合後の時間が経過しても外観の変化が少ない塗膜が得られることを見出した。
【0010】
すなわち本発明は、以下の項1~10を特徴とする。
項1
塗装前に主剤と硬化剤とを混合する2液混合形の塗料組成物であって、
水酸基含有アクリル樹脂(A)、顔料分(B)及びリン酸系エステル化合物(C)を含む前記主剤と、ポリイソシアネート化合物(D)を含む前記硬化剤と、を含み、
前記水酸基含有アクリル樹脂(A)がカルボキシル基を有し、
前記リン酸系エステル化合物(C)の量が、前記主剤に含まれる樹脂成分不揮発分100質量部を基準として0.1~10質量部の範囲内である、2液混合形塗料組成物。
項2
前記水酸基含有アクリル樹脂(A)は、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含む重合性不飽和モノマー成分を共重合成分とする樹脂であり、
前記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーの量が、全重合性不飽和モノマー成分100質量部中の0.1~10質量部である、項1に記載の2液混合形塗料組成物。
項3
前記顔料分(B)が、硫酸バリウム、炭酸カルシウム及びシリカから選ばれる少なくとも1種の無機粒子(b)を含む、項1または2に記載の2液混合形塗料組成物。
項4
前記無機粒子(b)の平均粒子径が0.1~10μmの範囲内である、項3に記載の2液混合形塗料組成物。
項5
アミノ基含有アクリル樹脂(E)をさらに含む、項1~4のいずれか1項に記載の2液混合形塗料組成物。
項6
硬化触媒(F)をさらに含む、項1~5のいずれか1項に記載の2液混合形塗料組成物。
項7
消泡剤(G)をさらに含む、項1~6のいずれか1項に記載の2液混合形塗料組成物。
項8
弱溶剤を含む有機溶剤(H)をさらに含む、項1~7のいずれか1項に記載の2液混合形塗料組成物。
項9
基材面に、項1~8のいずれか1項に記載の2液混合形塗料組成物を塗装する、塗膜形成方法。
項10
基材面に、下塗り塗料を塗装した後、項1~8のいずれか1項に記載の2液混合形塗料組成物を上塗り塗料として塗装する、塗膜形成方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の2液混合形塗料組成物は、主剤と硬化剤との2液混合形であって、主剤において特定の水酸基含有アクリル樹脂に対し特定量のリン酸化合物を含む。これにより、2液混合後の粘度上昇が緩やかであり、且つ2液混合直後に塗装された箇所と、2液混合から時間が経過してから塗装された箇所との外観の差が目立たず、全体的にムラの少ない仕上がり外観の塗膜が安定して得られるとともに、得られる塗膜における耐水性等の塗膜物性を良好とし得る。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の2液混合形塗料組成物の実施の形態について、詳細に説明する。
【0013】
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル又はメタクリロイルを意味し、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0014】
本実施形態の2液混合形塗料組成物は、水酸基含有アクリル樹脂(A)、顔料分(B)及びリン酸系エステル化合物(C)を含む主剤と、ポリイソシアネート化合物(D)を含む硬化剤とを含み、水酸基含有アクリル樹脂(A)がカルボキシル基を有し、リン酸系エステル化合物(C)が、主剤に含まれる樹脂成分不揮発分100質量部を基準として0.1~10質量部の範囲内で含有されている。
【0015】
水酸基含有アクリル樹脂(A):
本実施形態において、水酸基含有アクリル樹脂(A)は、樹脂中に水酸基を有し、(メタ)アクリロイル基含有化合物を含む重合性不飽和モノマー成分を共重合成分とする樹脂を言う。ここで水酸基含有アクリル樹脂(A)には、アルキド樹脂などのアクリル樹脂以外の樹脂で変性された変性樹脂も包含される。また、水酸基含有アクリル樹脂(A)は1種の樹脂であってもよいし、複数の樹脂の混合物であってもよい。
【0016】
前記水酸基含有アクリル樹脂(A)は、水酸基価が10~150mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、より好ましくは30~100mgKOH/gの範囲内であり、より好ましくは35~85mgKOH/gの範囲内である。また、水酸基含有アクリル樹脂(A)の重量平均分子量が10000~80000の範囲内であることが好ましく、より好ましくは15000~60000、さらに好ましくは18000~55000の範囲内である。
【0017】
本明細書において水酸基価とは試料1g中の水酸基と当量の水酸化カリウムのmg数を意味する。また重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフで測定した重量平均分子量をポリスチレンの重量平均分子量を基準にして換算した値である。
【0018】
なお、ゲルパーミエーションクロマトグラフは、例えば「HLC8120GPC」(東ソー社製)を使用して測定する。カラムとしては、例えば「TSKgel G-4000HXL」、「TSKgel G-3000HXL」、「TSKgel G-2500HXL」、「TSKgel G-2000HXL」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1cc/分、検出器;RIの条件で行う。
【0019】
水酸基含有アクリル樹脂(A)の水酸基源となる水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物、該(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物のε-カプロラクトン変性体、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコ-ル、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0020】
前記水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合されるその他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、iso-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート(ラウリル(メタ)アクリレート)、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート等のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート;
ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香環含有重合性不飽和モノマー;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー;
乾性油脂肪酸及び/又は半乾性油脂肪酸とエポキシ基含有重合性不飽和モノマーとを付加反応させた脂肪酸変性重合性不飽和モノマー:
ポリシロキサン含有(メタ)アクリレート;
(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β-カルボキシエチルアクリレート、イタコン酸等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;
(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド等の含窒素重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;
N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメトキシ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノアルコキシ(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有重合性不飽和モノマー;
アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4~7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等のカルボニル基含有重合性不飽和モノマー等が挙げられる。
【0021】
これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0022】
前記その他の重合性不飽和モノマーは、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の直鎖状、分岐状又は環状アルキル基含有(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
【0023】
上記重合性不飽和モノマー成分の重合方法としては溶液重合が挙げられるが、得られる樹脂はランダム型であってもブロック型であってもよい。
【0024】
また、上記水酸基含有アクリル樹脂(A)は、主剤及び硬化剤混合後の経時での作業性、仕上がり外観の観点から、カルボキシル基を有する。具体的には前記その他の重合性不飽和モノマーがカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含むことが好ましい。すなわち、水酸基含有アクリル樹脂(A)は、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含む重合性不飽和モノマー成分を共重合成分とする樹脂であり、全重合性不飽和モノマー成分100質量部中のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーの量が0.1~10質量部の範囲内であることが好ましく、0.3~5質量部の範囲内がより好ましく、1.0~4.0質量部の範囲内がさらに好ましい。
【0025】
また、上記水酸基含有アクリル樹脂(A)が、水酸基含有アルキド変性アクリル樹脂である場合、水酸基含有アルキド変性アクリル樹脂としては、例えば、乾性油脂肪酸及び/又は半乾性油脂肪酸及び多価カルボン酸を含む酸成分、多価アルコール成分並びに(メタ)アクリロイル基含有化合物を含む重合性不飽和モノマー成分を共重合成分とする樹脂が挙げられる。
【0026】
以上に述べた水酸基含有アクリル樹脂(A)は主剤に含まれる樹脂成分不揮発分100質量部中に5~95質量部の範囲内で含まれることが好ましく、より好ましくは10~90質量部の範囲内であり、さらに好ましくは45~80質量部の範囲内である。
【0027】
本明細書において不揮発分とは、試料から、水、有機溶剤等の揮発する成分を除いた残渣を意味し、試料の質量に不揮発分濃度を乗じて算出できる。不揮発分濃度は、試料約3グラムを、105℃、3時間乾燥させた残渣の質量を、乾燥前の質量で除することにより求めることができる。
【0028】
顔料分(B):
本実施形態の塗料組成物に用いられる顔料分(B)としては、従来公知のものを制限なく使用でき、例えば、二酸化チタン、亜鉛華などの白色顔料;シアニンブルー、インダスレンブルーなどの青色顔料;シアニングリーン、緑青などの緑色顔料;アゾ系やキナクリドン系などの有機赤色顔料、ベンガラなどの赤色顔料;ベンツイミダゾロン系、イソインドリノン系、イソインドリン系及びキノフタロン系などの有機黄色顔料、チタンイエロー、黄鉛などの黄色顔料;カーボンブラック、黒鉛、松煙などの黒色顔料;アルミニウム粉、銅粉、ニッケル粉、酸化チタン被覆マイカ粉、酸化鉄被覆マイカ粉及び光輝性グラファイトなどの光輝性顔料;タルク、クレー、シリカ、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、アルミナホワイト等の体質顔料などが挙げられる。これらは目的の塗色に応じて適宜1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0029】
かかる顔料分(B)の使用量としては顔料の種類に応じて適宜調整できるが一般に、主剤に含まれる樹脂成分不揮発分質量100質量部を基準として、顔料分(B)の質量が30~200質量部の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは50~150質量部の範囲内であり、さらに好ましくは50~100質量部の範囲内である。
【0030】
また、顔料分(B)はその成分の一部として、硫酸バリウム、炭酸カルシウム及びシリカから選ばれる少なくとも1種の無機粒子(b)を含むことが好ましい。顔料分(B)が前記無機粒子(b)を含むことによって、落ち着いた外観の塗膜が得られる。また、無機粒子(b)の一成分としてシリカを使用することによって本発明塗料組成物を艶消しタイプにすることも可能である。
【0031】
本実施形態において前記無機粒子(b)は平均粒子径が0.1~10μmの範囲内にあることが好ましく、0.5~8.0μmの範囲内にあることがより好ましく、2.0~6.5μmの範囲内にあることがさらに好ましい。このような平均粒子径範囲の無機粒子を使用することによって、主剤及び硬化剤混合後の仕上がり外観の変化が少ない塗膜が得られる。
【0032】
本明細書において、無機粒子(b)の平均粒子径は、一次粒子の粒子径だけでなく、二次粒子(凝集体)の粒子径も含めた平均粒子径であり、体積基準の粒度分布のD50値である。D50値とは体積基準の粒度分布から、小粒径側からの積算粒径分布が50%となる粒径のことである。測定方法としてはレーザー回折散乱法を用いたJIS Z 8825:2022年に準じて行う方法が挙げられる。レーザー回折散乱法による測定装置としては、例えば日機装株式会社製のMicrotracMT3300EXIIが挙げられる。
【0033】
その際、前処理として試料をアセトン及びイソプロピルアルコールの混合溶剤に加えて1分間超音波をかけることによって分散し、試料濃度を装置に設定された所定の透過率範囲となる濃度(例えば0.800~0.930)に調整する。
【0034】
本発明塗料組成物が無機粒子(b)を含有する場合、その場合の含有量としては主剤に含まれる樹脂成分不揮発分100質量部を基準して無機粒子(b)の量が1~30質量部の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは5~20質量部の範囲内であり、さらに好ましくは5~15質量部の範囲内である。
【0035】
リン酸系エステル化合物(C):
本実施形態において前記主剤はリン酸系エステル化合物(C)を含む。理由は定かではないが主剤中にリン酸系エステル化合物(C)が特定量含まれることによって、ウレタン化反応の速度が緩やかになり、主剤及び硬化剤混合後の経時での仕上がり外観の変化を小さくする効果がある。
【0036】
本実施形態におけるリン酸系エステル化合物(C)は、リン酸(O=P(OH)3)または亜リン酸(O=PH(OH)2)が持つ水酸基の水素の全部または一部が有機基で置換された化合物である。具体的にはリン酸または亜リン酸のモノアルキルエステル化合物、ジアルキルエステル化合物、トリアルキルエステル化合物及びこれらの組み合わせが挙げられる。前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、iso-プロピル基、n‐ブチル基、2-エチルヘキシル基、ラウリル基等が挙げられる。本実施形態では、前記リン酸系エステル化合物(C)が、その成分の一部としてリン酸モノアルキルエステル、リン酸ジアルキルエステル、亜リン酸ジアルキルエステルから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0037】
前記リン酸モノアルキルエステルとしては、例えば、モノメチルアシッドホスフェイト、モノエチルアシッドホスフェイト、モノイソデシルアシッドホスフェイト、モノ2-エチルヘキシルアシッドホスフェイト、モノブチルアシッドホスフェイト、モノイソプロピルアシッドホスフェイト、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0038】
前記リン酸ジアルキルエステルとしては、例えば、ジメチルアシッドホスフェイト、ジエチルアシッドホスフェイト、ジイソデシルアシッドホスフェイト、ジ2-エチルヘキシルアシッドホスフェイト、ジブチルアシッドホスフェイト、ジイソプロピルアシッドホスフェイト及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0039】
前記亜リン酸ジアルキルエステルとしては、例えば、ジラウリルハイドロゼンホフファイト、ジ-2-エチルヘキシルハイドロゼンホフファイト、ジオレイルハイドロゼンホフファイト、及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0040】
前記リン酸系エステル化合物(C)の含有量としては、主剤に含まれる樹脂成分不揮発分100質量部を基準として0.1~10質量部の範囲内であり、好ましくは0.5~8.0質量部の範囲内であり、より好ましくは0.8~2.5質量部の範囲内である。リン酸系エステル化合物(C)の含有量が主剤に含まれる樹脂成分不揮発分100質量部を基準として0.1質量部以上であると、2液混合後の粘度上昇が緩やかであり、且つ2液混合直後に塗装された箇所と、2液混合から時間が経過してから塗装された箇所との外観の差が目立たず、全体的にムラの少ない仕上がり外観の塗膜が安定して得られる。リン酸系エステル化合物(C)の含有量が主剤に含まれる樹脂成分不揮発分100質量部を基準として10質量部以下であると、主剤と硬化剤を混合した後の粘度上昇を緩やかにして仕上がり外観の変化を抑制するとともに塗膜における耐水性も維持できる。
【0041】
ポリイソシアネート化合物(D):
本実施形態においてポリイソシアネート化合物(D)としては、1分子中に遊離のイソシアネート基を2個以上有する化合物であり、従来公知のものを制限なく使用できる。例えば、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環族ポリイソシアネート化合物、芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物及びこれらポリイソシアネート化合物の誘導体等を挙げることができる。ポリイソシアネート化合物の誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート化合物のダイマー、トリマー、ビュウレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)、クルードTDI等を挙げることができる。これらポリイソシアネート化合物及びその誘導体は単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせたものであってもよい。
【0042】
本実施形態においてポリイソシアネート化合物(D)の使用量は、通常、主剤に含まれる樹脂の水酸基1当量に対しポリイソシアネート化合物(D)に由来するNCO基の当量比(NCO/OH比)が0.5~2.0の範囲内となるような割合であることが好ましく、より好ましくは0.5~1.5の範囲内となるような割合であり、さらに好ましくは0.6~1.2の範囲内となるような割合である。
【0043】
アミノ基含有アクリル樹脂(E):
本実施形態において前記主剤は、アミノ基含有アクリル樹脂(E)を含むことが好ましい。主剤がアミノ基含有アクリル樹脂(E)を含むことによって、主剤及び硬化剤の混合後における経時での作業性が良好となり得る。前記アミノ基含有アクリル樹脂(E)としてはアミノ基含有重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーを共重合成分とする樹脂が挙げられる。尚、本明細書において、アミノ基及び水酸基を併有する樹脂はアミノ基含有アクリル樹脂(E)とするものとする。
【0044】
前記アミノ基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N-tert-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0045】
その他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、iso-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート(ラウリル(メタ)アクリレート)、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート等のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート;
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物、該(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物のε-カプロラクトン変性体、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコ-ル、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;
ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香環含有重合性不飽和モノマー;
(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド等の含窒素重合性不飽和モノマー;N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメトキシ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノアルコキシ(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有重合性不飽和モノマー;
アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4~7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等のカルボニル基含有重合性不飽和モノマー等が挙げられる。
【0046】
これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0047】
前記アミノ基含有アクリル樹脂(E)を製造するためのその他の重合性不飽和モノマー成分としては、例えば、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の直鎖状、分岐状又は環状アルキル基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0048】
前記アミノ基含有アクリル樹脂(E)は、アミノ基含有重合性不飽和モノマーを含む重合性不飽和モノマー成分を共重合成分とする樹脂であり、アミノ基含有重合性不飽和モノマーの量が全重合性不飽和モノマー100質量部中の1~30質量部の範囲内であることが好ましく、2~25質量部の範囲内がより好ましく、3~23質量部の範囲内がさらに好ましい。
【0049】
前記アミノ基含有アクリル樹脂(E)の製造にあたり上記重合性不飽和モノマー成分の重合方法としては溶液重合法が挙げられるが、得られる樹脂はランダム型であってもブロック型であってもよい。
【0050】
上記アミノ基含有アクリル樹脂(E)の含有量は、主剤に含まれる樹脂成分不揮発分100質量部中に5~50質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは10~40質量部の範囲内であり、さらに好ましくは25~40質量部の範囲内である。
【0051】
硬化触媒(F):
本実施形態の塗料組成物は、硬化触媒(F)を含むことが好ましい。塗膜形成時のウレタン化反応時に前記リン酸系エステル化合物(C)に加えて硬化触媒(F)が共存することで、硬化触媒(F)にリン酸系エステル化合物(C)が作用することで、塗膜の耐水性など物性を保ったまま主剤及び硬化剤混合後の経時での仕上がり外観の変化を小さくできると考えられる。
【0052】
本発明で好適な硬化触媒(F)としては、有機金属系化合物及びアミン化合物が挙げられる。
【0053】
有機金属化合物としては、例えば、ジアセチル錫ジアセテート、ジアセチル錫ジオクトエート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジ(2-エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジネオデカネート、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジ(2-エチルヘキサノエート)、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫サルファイド、ジブチル錫脂肪酸塩、オクチル酸錫、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、脂肪酸亜鉛類、オクタン酸ビスマス、2-エチルヘキサン酸ビスマス、オレイン酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、バーサチック酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス、ナフテン酸コバルト、オクチル酸カルシウム、ナフテン酸銅、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート等が挙げられる。
【0054】
アミン化合物としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン、1-メチルピペリジン、1-メチルピロリジン等の脂肪族アミン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、4-(1-ピペリジル)ピリジン、N-メチルイミダゾール、N,N-ジメチルアニリン等が挙げられる。
【0055】
硬化触媒(F)の含有量としては、主剤に含まれる樹脂成分100質量部に対して、0.005質量部~2質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.01質量部~1質量部の範囲内、さらに好ましくは0.02~0.50質量部の範囲内である。
【0056】
消泡剤(G):
本実施形態の塗料組成物は、消泡剤(G)を含むことが好ましい。消泡剤(G)としては、シリコン系消泡剤、非シリコン系消泡剤が挙げられる。シリコン系消泡剤は、界面活性を有するポリシロキサン又はその変性物を含む消泡剤であり、非シリコン系消泡剤は、ポリシロキサン又はその変性物を含まない消泡剤である。シリコン系消泡剤としては、例えば、ポリシロキサン、フッ素変性シロキサン、アミノ変性シロキサン、アルキル変性シロキサン、ポリエーテル変性シロキサン、高級脂肪酸変性シロキサン、カルボキシル変性シロキサン、アルコール変性シロキサンが挙げられる。非シリコン系消泡剤としては、例えば、高級アルコール系、高級アルコール誘導体系、脂肪酸系、脂肪酸誘導体系、パラフィン系、(メタ)アクリル重合体系、ミネラルオイル系等が挙げられる。特にローラーで塗装したときの仕上がり外観の点から、消泡剤(G)はフッ素変性シリコン系消泡剤であることが好ましい。
【0057】
前記消泡剤(G)の含有量は、主剤に含まれる樹脂成分100質量部に対して、0.05~5.0質量部の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは0.1~3.5質量部の範囲内であり、さらに好ましくは0.2~1.0質量部の範囲内である。
【0058】
有機溶剤(H):
本実施形態の2液混合形塗料組成物は有機溶剤(H)を含むことが好ましい。前記有機溶剤(H)としては弱溶剤が挙げられる。弱溶剤とは当該分野でよく用いられる用語であって、一般的には溶解力の弱い溶剤を意味するものであり厳密に定義されるものではないが、労働安全衛生法による有機溶剤の分類において、第3種有機溶剤とされているものが挙げられる。
【0059】
その具体例としては、例えば、ガソリン、灯油、コールタールナフサ(ソルベントナフサを含む)、石油エーテル、石油ナフサ、石油ベンジン、テレピン油、ミネラルスピリット(ミネラルシンナー、ペトロリウムスピリット、ホワイトスピリットおよびミネラルターペンを含む)を挙げることができ、これらは単独でまたは2種以上組み合わせたものであってもよい。
【0060】
また、有機溶剤(H)は弱溶剤以外の有機溶剤、例えば、n-ブタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロブタンなどの脂肪族系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;n-ブチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶剤等の有機溶剤を含んでいてもよい。
【0061】
2液混合形塗料組成物:
本実施形態の塗料組成物は、以上に述べた水酸基含有アクリル樹脂(A)、顔料分(B)、リン酸系エステル化合物(C)を主剤側に含み、ポリイソシアネート化合物(D)を硬化剤側に含む2液混合形塗料組成物である。前記主剤及び/又は硬化剤は必要に応じて前記アミノ基含有アクリル樹脂(E)、硬化触媒(F)、消泡剤(G)及び有機溶剤(H)を含むことができ、それ以外に、水酸基含有アクリル樹脂(A)及びアミノ基含有アクリル樹脂(E)以外のその他の樹脂、低汚染化剤、防カビ剤、沈降防止剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、塗面調整剤等の材料を任意に含むことができる。
【0062】
これらのうち前記その他の樹脂としては、例えば、水酸基含有アクリル樹脂(A)及びアミノ基含有樹脂(A)以外のアクリル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂;これら複数種の樹脂の組合せ及びこれら複数種の樹脂が複合してなる変性樹脂等が挙げられる。その他の樹脂を含む場合、その含有量としては主剤に含まれる樹脂成分不揮発分質量100質量部中にその他の樹脂が40質量部以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは30質量部以下の範囲内である。
【0063】
前記低汚染化剤としては、例えば、オルガノシリケート化合物が挙げられる。オルガノシリケート化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトラ-iso-プロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトラ-iso-ブトキシシラン、テトラ-tert-ブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン;モノメトキシトリエトキシシラン、モノメトキシトリプロポキシシラン、モノエトキシトリプロポキシシラン、モノメトキシトリブトキシシラン、モノエトキシトリブトキシシラン、及びモノプロポキシトリブトキシシラン;ジメトキシジエトキシシラン、ジメトキシジプロポキシシラン、ジエトキシジプロポキシシラン、ジメトキシジブトキシシラン、及びジエトキシジブトキシシラン等及びそれらの部分加水分解・縮合物が例示できる。
【0064】
低汚染化剤を使用する場合、その使用量としては、主剤に含まれる樹脂成分不揮発分質量100質量部を基準として、0.1~30質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは1.0~20質量部の範囲内である。
【0065】
塗料組成物の塗装(塗膜の形成方法):
本実施形態の2液混合形塗料組成物は、塗装前に塗装業者等の使用者によって主剤及び硬化剤が混合され、塗装に供される。塗装後は常温で硬化し得るが、強制乾燥や加熱硬化させてもよい。本明細書において常温とは塗装が行なわれる環境の大気温度により異なるが、強制的な加熱又は冷却などの温度操作を行なわない温度を指し、加熱乾燥とは乾燥炉などの機器を使用した強制的な加熱操作を行う温度を指す。
【0066】
本実施形態の塗料組成物が適用される基材としては、特に制限はないが、コンクリート、モルタル、スレート、スレート瓦、窯業系建材等の無機基材、プラスチックなどの樹脂基材;鉄、鋼板、亜鉛めっき、ステンレス、アルミニウム等の金属基材が挙げられ、これら基材は旧塗膜が設けられたものであってもよい。
【0067】
被塗物の具体例としては例えば、建築物、鋼構造物が挙げられる。
【0068】
本実施形態の2液混合形塗料組成物の塗装は、2液混合後の塗料をシンナー等で塗装に適した粘度に希釈した後、スプレー塗り、ローラー塗り、刷毛塗り、流し塗り等の公知の手段で行われる。塗布量は適宜調整できるが一般には30~400g/m2の範囲内であることが好ましく、より好ましくは50~250g/m2の範囲内である。
【0069】
また、本実施形態では基材面に、下塗り塗料を塗装した後、上記2液混合形塗料組成物を上塗り塗料として塗装してもよい。
【0070】
前記下塗り塗料としては、基材の種類に応じて、例えばシーラー、プライマー、下地調整材、防錆塗料等の公知の塗料が挙げられる。形成された下塗り塗膜の形状は平らな形状であっても凹凸形状であってもよい。
【実施例0071】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明をするが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。尚、下記例中の「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0072】
水酸基含有アクリル樹脂(A)の製造:
(製造例1)
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた製造フラスコに「スワゾール1500」(注1)30部を仕込み、115℃まで昇温し、窒素気流中で攪拌しながら下記組成のモノマー組成物及び触媒混合液を3時間かけて滴下し、混合した。
<モノマー組成物>
スチレン 30部
iso-ブチルメタクリレート 30部
アクリル酸2エチルヘキシル 28部
2-ヒドロキシエチルメタクリレート 10部
メタクリル酸 2部
<触媒混合液>
「スワゾール1500」(注1) 30部
2,2´-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル) 0.5部
次いでさらに、上記組成の触媒混合液30.5部を同温度で1時間かけて滴下し、115℃で1時間熟成した後、不揮発分が50%となるように「スワゾール1500」(注1)を添加して、水酸基含有アクリル樹脂(A-1)溶液を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂(A-1)溶液の不揮発分濃度(N.V.)は50質量%、水酸基価は40mgKOH/g、重量平均分子量は20,000であった。
(注1)「スワゾール1500」:商品名、丸善石油(株)社製、芳香族系混合溶剤、沸点183~208℃、第3種有機溶剤。
【0073】
(製造例2~6)
上記製造例1において、モノマー組成物の組成を下記表1に記載のとおりに変更した以外は上記製造例1と同様にして水酸基含有アクリル樹脂(A-2)~(A-6)溶液を得た。
【0074】
(製造例7~9)
アミノ基含有アクリル樹脂(E)の製造:
上記製造例1において、モノマー組成物の組成を下記表1に記載のとおりに変更した以外は上記製造例1と同様にしてアミノ基含有アクリル樹脂(E-1)~(E-3)溶液を得た。
【0075】
【0076】
表1中の略号等の説明は下記の通りである。
St:スチレン
iBMA:iso-ブチルメタクリレート
2EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
MAA:メタクリル酸
nBMA:n-ブチルメタクリレート
DMAEMA:N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート
DMAPMA:N,N-ジメチルアミノプロピルメタクリレート
脂肪酸変性モノマー:グリシジルメタクリレート5部に対してヤシ油脂肪酸を8部付加したモノマー
シリコンモノマー:3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン。
【0077】
2液混合形塗料組成物の製造:
(実施例1~27、比較例1~4)
下記表2~表5に記載のベース塗料(主剤)成分を混合して各ベース塗料を製造し、表2~表5に記載の硬化剤成分を混合して各硬化剤を製造し、両者を混合して2液混合形塗料組成物(X-1)~(X-31)を製造し、下記評価に供した。
【0078】
評価結果を表2~表5に合わせて記載する。尚、表中の数値は揮発成分も含んだ実際の質量である。
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
表2~表5中の(注1)~(注13)は以下の通りである。
(注1)リン酸系エステル化合物(C-1):モノ2-エチルヘキシルアシッドホスフェイト、ジ2-エチルヘキシルアシッドホスフェイト及びトリ2-エチルヘキシルアシッドホスフェイト混合物、主成分はモノ2-エチルヘキシルアシッドホスフェイト及びジ2-エチルヘキシルアシッドホスフェイト
(注2)リン酸系エステル化合物(C-2):モノブチルアシッドホスフェイト、ジブチルアシッドホスフェイト及びトリブチルアシッドホスフェイト混合物、主成分はモノブチルアシッドホスフェイト及びジブチルアシッドホスフェイト
(注3)リン酸系エステル化合物(C-3):モノイソプロピルアシッドホスフェイト、ジイソプロピルアシッドホスフェイト及びトリイソプロピルアシッドホスフェイト混合物、主成分はモノイソプロピルアシッドホスフェイト及びジイソプロピルアシッドホスフェイト
(注4)リン酸系エステル化合物(C-4):ジ-2-エチルヘキシルハイドロゼンホフファイト
(注5)シリカ(b1):平均粒子径4.0μm
(注6)シリカ(b2):平均粒子径6.0μm
(注7)シリカ(b3):平均粒子径9.5μm
(注8)硫酸バリウム:沈降性硫酸バリウム、平均粒子径0.7μm
(注9)炭酸カルシウム:平均粒子径4.5μm
(注10)有機金属化合物:商品名「ネオスタンU830」:日東化成社製、ジオクチル錫化合物
(注11)消泡剤:商品名「フローレン AO-82」:共栄社化学株式会社 ポリアルキルフルオロアルキルシロキサン系消泡剤
(注12)「デュラネートTSS100」:商品名、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート変性体、旭化成ケミカルズ株式会社製、NCO含量17.6%
(注13)「エチルシリケート48」:商品名、コルコート株式会社製、エチルシリケート誘導体、有効成分95%。
【0084】
試験塗板の作製:
ブリキ板(600×450×0.8mm)に、「ザウルスEXII」(商品名、関西ペイント社製、一液弱溶剤形エポキシさび止め塗料)をミネラルスピリットで15%希釈したものをウェット膜厚75μmになるようにスプレー塗装した。翌日、該塗面上に上塗り1回目塗装として、表2~表5に記載の各塗料組成物を表2~表5に記載のベース塗料/硬化剤比率で混合し、更に、ミネラルスピリットで5%希釈し、ローラー塗りで塗布量100g/m2となるように塗装した。
【0085】
上塗り塗料1回目塗装後、1日の塗装間隔(インターバル)を空けて、上塗り2回目塗装として1回目に用いた塗料と同じ塗料を同様に調製し、ローラー塗りで塗布量100g/m2となるように塗装した。
【0086】
上塗り塗料2回目塗装後、1日の塗装間隔(インターバル)を空けて補修塗り(タッチアップ)として一部分を刷毛塗りで塗装した。補修塗りに用いた塗料は、ベース塗料/硬化剤比率で混合後直ぐのものと、ベース塗料/硬化剤を混合した塗料を、40℃/湿度50%環境下で3時間放置した後の塗料の、2種類の塗料を使用した。
【0087】
評価試験:
(*1)仕上り性
上塗り塗料を2回塗装した後の塗装面の仕上り性を目視により評価した。なお、「○」と「△」が実用可能である。
○:艶ムラが無く良好
△:艶ムラがやや発生する
×:艶ムラが顕著に発生し、仕上り不良
【0088】
(*2)作業性
補修塗りに用いた塗料のうち、ベース塗料と硬化剤を混合後40℃/湿度50%環境下で3時間放置した後の塗料の方の作業性を評価した。なお、「◎」と「○」が実用可能である。
◎:作業性良好
〇:ベース塗料と硬化剤を混合直後の塗料に比べて塗料粘度がやや上昇するが、作業性に問題なし
△:ベース塗料と硬化剤を混合直後の塗料に比べて塗料粘度が上昇し、作業性がやや悪い×:ベース塗料と硬化剤を混合直後の塗料に比べて塗料粘度が大幅に上昇し、作業性が悪い
【0089】
(*3)硬化剤混合後経時での光沢変化
ベース塗料と硬化剤を混合後直ぐ塗装した補修部と、ベース塗料と硬化剤を混合後40℃/湿度50%環境下で3時間放置した後の塗料を用いて塗装した補修部の光沢差を目視により評価した。なお、「◎」と「○」が実用可能である。
◎:光沢差が無く問題ない
○:ベース塗料と硬化剤を混合直後に比べて混合後3時間放置は光沢がやや低下
△:ベース塗料と硬化剤を混合直後に比べて混合後3時間放置は光沢が低下
×:ベース塗料と硬化剤を混合直後に比べて混合後3時間放置は光沢が大幅に低下
【0090】
(*4)耐水性
上塗り塗料を2回塗装した後の塗板を上水に23℃で7日間浸漬した後、塗面状態を観察し、下記基準にて評価した。なお、「◎」と「○」が実用可能である。
◎:ブリスターが認められず、良好
〇:微小なブリスターがごくわずかに認められる
△:塗膜の一部にブリスターが認められる
×:塗膜の全面にブリスターが認められる
【0091】
表2~表5より、実施例1~27はいずれも主剤と硬化剤との2液混合後の粘度上昇が緩やかであることで作業性に優れ、また2液混合後の経時での光沢変化が小さかった。実施例2と比較例1より、水酸基含有アクリル樹脂(A)がカルボキシル基を含まない比較例1は、作業性及び耐水性も低下した。リン酸系エステル化合物(C)を含まない比較例2及び4は2液混合後に粘度が上昇し易く作業性が低下し、また経時的に光沢差が大きくなった。リン酸系エステル化合物(C)を15質量部、すなわち主剤に含まれる樹脂成分不揮発分100質量部に対してリン酸系エステル化合物(C)を11質量部含む比較例3は作業性には優れるものの、耐水性が低下した。