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特開2024-45074バイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シート、化粧シート、及び、化粧板
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  • 特開-バイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シート、化粧シート、及び、化粧板 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045074
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】バイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シート、化粧シート、及び、化粧板
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20240326BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240326BHJP
   E04F 13/07 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B27/00 E
E04F13/07 C
E04F13/07 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023152273
(22)【出願日】2023-09-20
(31)【優先権主張番号】P 2022150298
(32)【優先日】2022-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】大野 貴矢
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 健
(72)【発明者】
【氏名】木綿 一貴
(72)【発明者】
【氏名】小椋 好真
(72)【発明者】
【氏名】清水 洋平
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AB01E
4F100AD00E
4F100AE01E
4F100AE06E
4F100AK01E
4F100AK03E
4F100AK04A
4F100AK04B
4F100AK04C
4F100AK25D
4F100AK25E
4F100AK51D
4F100AK51E
4F100AP00E
4F100AT00A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA05
4F100BA07
4F100CA02D
4F100CA08A
4F100CA08B
4F100CA08C
4F100CA08E
4F100CA12E
4F100CA13D
4F100DD01E
4F100DD07E
4F100DH02E
4F100EC182
4F100EH20A
4F100EH20B
4F100EH46E
4F100EJ39E
4F100EJ40E
4F100GB07
4F100GB48
4F100GB81
4F100HB00D
4F100HB01D
4F100HB31D
4F100JB14E
4F100JC00A
4F100JC00B
4F100JC00C
4F100JK09E
4F100JN01E
(57)【要約】
【課題】変色を抑制しつつ、環境負荷を軽減し得るバイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シート等を提供する。
【解決手段】
第1の層と、第2の層とを少なくとも備え、上記第1の層は、バイオマス由来のポリエチレンを含み、上記第2の層は、上記第1の層よりもバイオマス度が低く、かつ、バイオマス度が40%未満であるバイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シート。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の層と、第2の層とを少なくとも備え、
前記第1の層は、バイオマス由来のポリエチレンを含み、
前記第2の層は、前記第1の層よりもバイオマス度が低く、かつ、バイオマス度が40%未満である
バイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シート。
【請求項2】
前記第2の層は、バイオマス度が20%未満である請求項1に記載のバイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シート。
【請求項3】
前記第2の層の厚みが、総厚の1/4以下である請求項1又は2に記載のバイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シート。
【請求項4】
前記第1の層の前記第2の層を備える側と反対側に第3の層を備え、
前記第3の層は、前記第1の層よりもバイオマス度が低い請求項1又は2に記載のバイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シート。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のバイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シートと、前記バイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シートの前記第2の層の側に備える絵柄模様層とを少なくとも有する化粧シート。
【請求項6】
前記絵柄模様層の前記バイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シートを備える側と反対側に透明性樹脂層を有する請求項5に記載の化粧シート。
【請求項7】
前記バイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シート、及び、前記透明性樹脂層からなる群から選択される少なくとも1層が、難燃剤を含む請求項6に記載の化粧シート。
【請求項8】
前記バイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シートを備える側と反対側の面に凹凸形状を有する請求項6に記載の化粧シート。
【請求項9】
前記凹凸形状の最大高さRzが、10μm以上60μm以下である請求項8に記載の化粧シート。
【請求項10】
前記透明性樹脂層の前記絵柄模様層を備える側と反対側に表面保護層を更に備える請求項6に記載の化粧シート。
【請求項11】
前記表面保護層は、抗菌剤、抗ウイルス剤、及び、抗アレルゲン剤からなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項10に記載の化粧シート。
【請求項12】
請求項5に記載の化粧シートの前記バイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シートの前記絵柄模様層を有する側と反対側に被着材が積層された化粧板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シート、化粧シート、及び、化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
建材、家具、家電製品等において、使用する部材を加飾したい場合には、意匠が施された化粧シートを貼着した化粧板が一般的に用いられている。
【0003】
近年、環境への関心が高まっており、環境への負荷が小さいバイオマス材料を使用したプラスチックの需要が大きくなってきている。化粧板の分野においても同様の傾向にある。
【0004】
例えば、特許文献1では、表面に絵柄層を印刷形成した着色熱可塑性樹脂層の前記絵柄層面に、透明な接着性樹脂層を介して表面に凹凸部が形成された透明熱可塑性樹脂層と表面保護層がこの順序に積層された化粧シートであって、前記透明熱可塑性樹脂層は20質量%以上60質量%以下のバイオマス低密度ポリエチレン樹脂と40質量%以上80質量%以下のバイオマス高密度ポリエチレン樹脂がブレンドされた樹脂組成物からなるものであることを特徴とする化粧シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-179553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、バイオマス由来のポリエチレンフィルムを建材用等の化粧シートに導入することに関して検討を重ねたところ、バイオマス由来のポリエチレンフィルムは、石油等の化石燃料由来の樹脂フィルムと比較してNOx存在下で変色(黄変)が起こりやすいことを見出した。
【0007】
化粧シートを構成するポリオレフィンフィルムに変色が発生すると、化粧シートの意匠性が低下する等の問題が生じる。
【0008】
特許文献1では、バイオマス由来のポリエチレンフィルムに変色が生じるといった課題については認識していない。また、バイオマス由来のポリエチレンフィルムを化粧シートにおける基材シートとして用いることについても言及されていない。
【0009】
そこで本開示は、上述した変色の課題を解消しつつ、バイオマス由来のポリエチレンフィルムを基材シートとして用いることにより環境負荷を低減し得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の層と、第2の層とを少なくとも備え、上記第1の層は、バイオマス由来のポリエチレンを含み、上記第2の層は、上記第1の層よりもバイオマス度が低く、かつ、バイオマス度が40%未満であるバイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シートを用いることにより、変色を抑制しつつ、環境負荷を軽減し得る。
【0011】
すなわち、本開示は、第1の層と、第2の層とを少なくとも備え、上記第1の層は、バイオマス由来のポリエチレンを含み、上記第2の層は、上記第1の層よりもバイオマス度が低く、かつ、バイオマス度が40%未満であるバイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シートである。
【0012】
本開示のバイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シートにおいて、上記第2の層は、バイオマス度が20%未満であることが好ましい。
上記第2の層の厚みが、総厚の1/4以下であることが好ましい。
また、上記第1の層の上記第2の層を備える側と反対側に第3の層を備え、上記第3の層は、上記第1の層よりもバイオマス度が低いことが好ましい。
また、本開示は、上記バイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シートと、上記バイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シートの上記第2の層の側に備える絵柄模様層とを少なくとも有する化粧シートでもある。
本開示の化粧シートにおいて、上記絵柄模様層の上記化粧シート用基材シートを備える側と反対側に透明性樹脂層を有することが好ましい。
また、上記バイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シート、及び、上記透明性樹脂層からなる群から選択される少なくとも1層が、難燃剤を含むことが好ましい。
また、上記バイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シートを備える側と反対側の面に凹凸形状を有することが好ましい。
また、上記凹凸形状の最大高さRzが、10μm以上60μm以下であることが好ましい。
また、上記透明性樹脂層の上記絵柄模様層を備える側と反対側に表面保護層を更に備えることが好ましい。
また、上記表面保護層は、抗菌剤、抗ウイルス剤、及び、抗アレルゲン剤からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
本開示は、上記化粧シートの上記バイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シートの上記絵柄模様層を有する側と反対側に被着材が積層された化粧板でもある。
【発明の効果】
【0013】
本開示のバイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シートは、変色を抑制しつつ、環境負荷を軽減し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本開示のバイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シートの一例を模式的に説明する断面図である。
図2図2は、本開示のバイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シートの好ましい一例を模式的に説明する断面図である。
図3図3は、本開示の化粧シートの好ましい一例を模式的に説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<バイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シート>
以下、本開示のバイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シート(本開示の基材シートともいう)について説明する。
【0016】
本開示の基材シートは、第1の層と、第2の層とを少なくとも備え、上記第1の層は、バイオマス由来のポリエチレンを含み、上記第2の層は、上記第1の層よりもバイオマス度が低く、かつ、バイオマス度が40%未満である。
【0017】
図1は、本開示の基材シートの一例を模式的に説明する断面図である。
図1に示すように、本開示の基材シート10は、第1の層1と、第2の層2とを少なくとも備える。
【0018】
図2は、本開示の基材シートの好ましい一例を模式的に説明する断面図である。
図2に示すように、本開示の基材シート10は、第1の層1の第2の層2を備える側と反対側に第3の層3を備えてもよい。
【0019】
本開示の基材シートの各層(後述する第1の層、第2の層、及び、第3の層)は、オレフィン樹脂やポリエステル系樹脂からなる層であることが好ましい。
以下、第1の層、第2の層、及び、第3の層に共通する記載は、「本開示の基材シートの各層」として記載する。
【0020】
本開示の基材シートの各層を形成するオレフィン樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂としては、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂を用いることができ、ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。これらの中でも、ポリプロピレンが好ましい。
【0021】
本開示の基材シートの各層を形成するポリエステル系樹脂としては、ポリエステル系熱可塑性樹脂を用いることができ、ポリエチレンテレフタレート、耐熱性の高いポリアルキレンテレフタレート〔例えば、エチレングリコールの一部を1,4-シクロヘキサンジメタノールやジエチレングリコール等で置換したポリエチレンテレフタレートである、いわゆる商品名PET-G(イーストマンケミカルカンパニー製)〕、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンナフタレート-イソフタレート共重合体等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性の高いポリアルキレンテレフタレートが好ましい。
【0022】
第1の層は、バイオマス由来のポリエチレンを含む。
「バイオマス由来のポリエチレン」とは、原料として少なくとも一部にバイオマス由来の原料を用いたものであって、原料の全てがバイオマス由来のものであることを意味するものではない。
【0023】
バイオマス由来のポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、または直鎖状低密度ポリエチレンからなる群より選択される少なくとも1種を用いることができる。また、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、又は、直鎖状低密度ポリエチレンからなる群より2種以上を選択して混合したものであってもよい。
【0024】
第1の層は、環境負荷を好適に軽減する観点から、バイオマス度が30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることが更に好ましい。
第1の層のバイオマス度の上限としては、例えば、70%である。
【0025】
本明細書において「バイオマス度」(本開示の基材シートの各層中のバイオマス由来の炭素濃度)は、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量を測定した値である。大気中の二酸化炭素には、C14が一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物、例えばトウモロコシ中のC14含有量も105.5pMC程度であることが知られている。一方、化石燃料中にはC14が殆ど含まれていないことも知られている。したがって、本開示の基材シートの各層中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。
すなわち、本開示の基材シートの各層中のC14の含有量をPC14とした場合の、バイオマス由来の炭素の含有量Pbioは、以下のようにして求めることができる。
bio(%)=(PC14/105.5)×100
【0026】
第1の層の厚みとしては、環境負荷を好適に軽減する観点から、本開示の基材シートの総厚に対して3/5以上であることが好ましく、3/4以上であることがより好ましい。
第1の層の厚みの上限としては、例えば、本開示の基材シートの総厚に対して9/10である。
【0027】
第2の層は、バイオマス由来のポリエチレンを含むことが好ましい。
第2の層は、NOxに起因する変色を抑制する観点から、第1の層よりもバイオマス度が低く、かつ、バイオマス度が40%未満である。
【0028】
第2の層のバイオマス度としては、NOxに起因する変色を好適に抑制する観点から、バイオマス度が35%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、25%以下であることが更に好ましく、20%以下であることが特に好ましい。
第2の層のバイオマス度の下限としては、0%であってもよい。
【0029】
第2の層の厚みとしては、バイオマス度が高い第1の層の厚みの比率を大きくして環境負荷を低減する観点から、本開示の基材シートの総厚に対して2/5以下であることが好ましく、1/4以下であることがより好ましい。
第2の層の厚みの下限としては、例えば、本開示の基材シートの総厚に対して1/10である。
【0030】
第3の層は、バイオマス由来のポリエチレンを含むことが好ましい。
第3の層は、NOxに起因する変色を好適に抑制する観点から、第1の層よりもバイオマス度が低いことが好ましい。
【0031】
第3の層のバイオマス度としては、NOxに起因する変色を好適に抑制する観点から、35%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、25%以下であることが更に好ましく、20%以下であることが特に好ましい。
第3の層のバイオマス度の下限としては、0%であってもよい。
【0032】
第3の層の厚みとしては、バイオマス度が高い第1の層の厚みの比率を大きくして環境負荷を低減する観点から、本開示の基材シートの総厚に対して、2/5以下であることが好ましく、1/4以下であることがより好ましい。
第3の層の厚みの下限としては、例えば、本開示の基材シートの総厚に対して1/10である。
【0033】
本開示の基材シートの各層は、必要に応じて、着色剤、充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等の各種の添加剤が含まれていてもよい。
なお、添加剤の含有量としては、本開示の基材シートの各層の質量を基準として、20質量%以上、40質量%以下であることが好ましい。
【0034】
バイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シートは、難燃性を付与する観点から、難燃剤を含むことが好ましい。
バイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シートが難燃剤を含む場合、難燃剤は、バイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シートを構成する何れかの層に含まれていてもよいし、全ての層に含まれていてもよい。
【0035】
難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、アルミニウム系難燃剤、アンチモン系難燃剤、マグネシウム系難燃剤、ホウ素系難燃剤、ジルコニウム系難燃剤等が挙げられる。環境の観点から、非ハロゲン系難燃剤がより好ましく用いられる。
上記難燃剤は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
本開示の基材シートの各層は、必要に応じて着色されていてもよい。また、表面にコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の表面処理が施されていてもよいし、隣接する層との密着性を高めるための下地塗料であるプライマーが塗布されていてもよい。
【0037】
本開示の基材シートの総厚としては、50μm以上100μm以下であることが好ましい。
基材シートの総厚が上記範囲であれば、上述した基材シートの各層を好適に形成することができる。
本開示の基材シートの総厚は、60μm以上80μm以下であることがより好ましい。
【0038】
本開示の基材シートの各層を成膜(シーティング)する具体的な方法としては特に限定されず、Tダイを用いて溶融した樹脂を押出してラミネートするTダイ法や円形ダイ法(インフレーション法、チューブラ法)、等が挙げられる。その中でも生産効率(生産速度)を向上させたり、シーティング時の内部応力を緩和させたりする場合はTダイ法が好ましい。
【0039】
<化粧シート>
本開示の化粧シートは、本開示の化粧シート用基材シートと、上記基材シートの第2の層の側に備える絵柄模様層とを少なくとも有する。
【0040】
図3は、本開示の化粧シートの好ましい一例を模式的に説明する断面図である。
図3に示すように、本開示の化粧シート20は、本開示の基材シート10の第2の層2側に絵柄模様層11を備える。
図3に示すように、本開示の化粧シート20は、絵柄模様層11上に、接着剤層12、透明性樹脂層13、接着補助層14、及び、表面保護層15をこの順に備えてもよい。
また、図3に示すように、本開示の化粧シート20は、本開示の基材シート10を備える側と反対側の面に凹凸形状を有してもよい。
以下、本開示の化粧シートを構成する各層について詳述する。
【0041】
(絵柄模様層)
本開示の化粧シートは、本開示の基材シートの第2の層の側に絵柄模様を構成する絵柄模様層を有する。
本開示の基材シートの第2の層の側に絵柄模様層を有することにより、NOxに起因する変色を抑制することができる。これは基材シートの第2の層の側に絵柄模様層を有することにより、基材シートを構成する樹脂成分のNOxに起因する劣化を防ぐことができるためであると考えられる。
【0042】
絵柄模様層は、所望の絵柄模様(意匠)を化粧シートに付与するものであり、絵柄模様の種類等は限定されない。例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。
【0043】
絵柄模様層の形成に用いるインキは、着色剤成分、樹脂成分及び液体成分を含んでいる。インキは、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等を適宜混合してもよい。
【0044】
着色剤成分としては、例えば、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片の金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片の真珠光沢(パール)顔料等を用いることができる。樹脂成分としては、特に制限はなく、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エステル系樹脂、アミド系樹脂、ブチラール系樹脂、スチレン系樹脂、ニトロセルロース(硝化綿)系樹脂、酢酸セルロース系樹脂、アクリル-ウレタン系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂等から選ばれる任意のものを、1種単独で又は2種以上混合して用いることができる。液体成分としては、例えば、メチルエチルケトン、トルエン、シクロヘキサノン、酢酸エチルアルコール、エタノール、メタノールなどの有機溶剤や水を用いることができる。
【0045】
絵柄模様を構成する絵柄模様層は、着色剤成分、樹脂成分及び液体成分を含むインキを凹版ロールを用いたグラビア印刷方式で絵柄補助層に部分印刷することによって形成することができる。同じまたは異なる組成のインキの部分印刷を異なる領域に分けてまたは/および同じ領域に重ねて複数回行うことにより、絵柄模様層を形成させてもよい。
【0046】
絵柄模様層の厚みとしては、例えば、0.1μm以上5μm以下とすることが好ましい。膜質や密着性を良好にすることができる。
絵柄模様層の厚みは、0.5μm以上3μm以下とすることがより好ましい。
【0047】
(透明性樹脂層)
本開示の化粧シートは、絵柄模様層の本開示の基材シートを備える側と反対側に透明性樹脂層を有することが好ましい。
なお、「透明性」とは、絵柄模様層が視認できる範囲であれば、半透明や着色されていてもよい。
【0048】
透明性樹脂層は、例えば、エステル系樹脂、オレフィン系樹脂の他、アクリル系樹脂、カーボネート系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂等を用いることができる。成型加工性の向上、耐傷性の向上の観点から、エステル樹脂、オレフィン樹脂が好ましく、ポリプロピレンやポリエステルなどのオレフィン樹脂がより好ましい。
【0049】
透明性樹脂層は、更に必要に応じて各種添加剤を含有しても良い。例えば、シリコーン樹脂、ワックス、フッ素樹脂等の滑剤や、染料、顔料等の着色剤等や、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤等である。
上記添加剤の含有量としては、透明性樹脂層の質量を基準として、例えば、0.1質量%以上10質量%以下である。
【0050】
透明性樹脂層は、耐候性を付与する観点から、紫外線吸収剤を含むことが好ましい。
【0051】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられ、トリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。
紫外線吸収剤は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0052】
トリアジン系紫外線吸収剤のなかでも、トリアジン環に、ヒドロキシフェニル基、アルコキシフェニル基及びこれらの基を含む有機基から選ばれる少なくとも一つの有機基が三つ連結したヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤がより好ましく、下記一般式(A)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が更に好ましい。ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤は、分岐構造を有するため、透明性樹脂層からブリードアウトしにくくなることが期待され、より長期的に優れた耐候性を得ることができる。
【0053】
【化1】
【0054】
上記一般式(A)中、R11は2価の有機基であり、R12は-C(=O)OR15で示されるエステル基であり、R13、R14及びR15は各々独立して1価の有機基であり、n11及びn12は各々独立して1~5の整数である。
【0055】
11の2価の有機基としては、アルキレン基、アルケニレン基等の脂肪族炭化水素基が挙げられ、耐候性の観点から、アルキレン基が好ましく、その炭素数は、1以上20以下が好ましく、1以上12以下がより好ましく、1以上8以下が更に好ましく、1以上4以下が特に好ましい。アルキレン基、アルケニレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよいが、直鎖状、分岐状が好ましい。
【0056】
炭素数1以上20以下のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、1,1-エチレン基、1,2-エチレン基、1,3-プロピレン、1,2-プロピレン、2,2-プロピレン等の各種プロピレン基(以下、「各種」は、直鎖状、分岐状、及びこれらの異性体のものを含むものを示す。)、各種ブチレン基、各種ペンチレン基、各種ヘキシレン基、各種へプチレン基、各種オクチレン基、各種ノニレン基、各種デシレン基、各種ウンデシレン基、各種ドデシレン基、各種トリデシレン基、各種テトラデシレン基、各種ペンタデシレン基、各種ヘキサデシレン基、各種ヘプタデシレン基、各種オクタデシレン基、各種ノナデシレン基、各種イコシレン基が挙げられる。
【0057】
13及びR14の1価の有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアリールアルキル基等が挙げられ、アリール基、アリールアルキル基等の芳香族炭化水素基が好ましく、アリール基が好ましい。
なかでも、R13及びR14の1価の有機基としては、フェニル基が好ましい。
【0058】
アリール基としては、好ましくは炭素数6以上20以下、より好ましくは炭素数6以上12以下、更に好ましくは炭素数6以上10以下のアリール基、例えば、フェニル基、各種メチルフェニル基、各種エチルフェニル基、各種ジメチルフェニル基、各種プロピルフェニル基、各種トリメチルフェニル基、各種ブチルフェニル基、各種ナフチル基等が挙げられる。アリールアルキル基としては、好ましくは炭素数7以上20以下、より好ましくは炭素数7以上12以下、更に好ましくは炭素数7以上10以下のアリールアルキル基、例えば、ベンジル基、フェネチル基、各種フェニルプロピル基、各種フェニルブチル基、各種メチルベンジル基、各種エチルベンジル基、各種プロピルベンジル基、各種ブチルベンジル基、各種ヘキシルベンジル基等が挙げられる。
【0059】
15の1価の有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアリールアルキル基等が挙げられ、アルキル基、アルケニル基等の脂肪族炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
すなわち、R12としては、アルキルエステル基、アルケニルエステル基が好ましく、アルキルエステル基がより好ましい。
【0060】
アルキル基としては、好ましくは炭素数1以上20以下、より好ましくは2以上16以下、更に好ましくは6以上12以下のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種ウンデシル基、各種ドデシル基、各種トリデシル基、各種テトラデシル基、各種ペンタデシル基、各種ヘキサデシル基、各種ヘプタデシル基、各種オクタデシル基、各種ノナデシル基、各種イコシル基が挙げられる。
【0061】
アルケニル基としては、好ましくは炭素数2以上20以下、より好ましくは3以上16以下、更に好ましくは6以上12以下のアルケニル基、例えば、ビニル基、各種プロペニル基、各種ブテニル基、各種ペンテニル基、各種ヘキセニル基、各種オクテニル基、各種ノネニル基、各種デセニル基、各種ウンデセニル基、各種ドデセニル基、各種トリデセニル基、各種テトラデセニル基、各種ペンタデセニル基、各種ヘキサデセニル基、各種ヘプタデセニル基、各種オクタデセニル基、各種ノナデセニル基、各種イコセニル基が挙げられる。
【0062】
一般式(A)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物としては、より具体的には、R11が炭素数1以上20以下のアルキレン基であり、R12及びR15が炭素数1以上20以下のアルキル基であるアルキルエステル基であり、R13及びR14が炭素数6以上20以下のアリール基であり、n11及びn12が1のヒドロキシフェニルトリアジン化合物が好ましく、R11が炭素数1以上12以下のアルキレン基であり、R12及びR15が炭素数2以上16以下のアルキル基であるアルキルエステル基であり、R13及びR14が炭素数6以上12以下のアリール基であり、n11及びn12が1のヒドロキシフェニルトリアジン化合物がより好ましく、R11が炭素数1以上8以下のアルキレン基であり、R12がR15及び炭素数6以上12以下のアルキル基であるアルキルエステル基であり、R13及びR14が炭素数6以上10以下のアリール基であり、n11及びn12が1のヒドロキシフェニルトリアジン化合物が更に好ましく、R11が炭素数1以上4以下のアルキレン基であり、R12及びR15が炭素数8のアルキル基であるエステル基であり、R13及びR14がフェニル基であり、n11及びn12が1のヒドロキシフェニルトリアジン化合物が特に好ましい。
【0063】
紫外線吸収剤の含有量は、透明性樹脂層を構成する樹脂成分100質量部に対して0.2~10.0質量部が好ましく、0.5~5.0質量部がより好ましく、1.0~4.0質量部が更に好ましい。
【0064】
透明性樹脂層は、耐候性を付与する観点から、光安定剤を含むことが好ましい。
【0065】
光安定剤としては、芳香族系化合物、アミン系化合物、有機酸系化合物、カテキン系化合物及びヒンダードアミン系化合物が挙げられ、なかでもヒンダードアミン系化合物が好ましい。ヒンダードアミン系化合物とは、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン骨格を分子内に含む構造を有するものである。
【0066】
光安定剤の含有量は、透明性樹脂層を構成する樹脂成分100質量部に対して0.1~10質量部であることが好ましく、0.3~8.0質量部であることがより好ましく、1.0~5.0質量部であることが更に好ましい。
なお、光安定剤として、ヒンダードアミン系化合物を上記範囲で含むことが好ましい。
【0067】
透明性樹脂層は、難燃性を付与する観点から、難燃剤を含むことが好ましい。
難燃剤としては、上述したバイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シートで記載したものを適宜選択して用いることができる。
【0068】
透明性樹脂層は、厚みが40μm以上100μm以下であることが好ましい。透明性樹脂層の厚みが40μm以上であることにより、化粧シートの耐傷性を好適に向上させて耐久性を付与することができる。透明性樹脂層の厚みが100μm以下であることにより、化粧シート全体として化石燃料由来の材料を好適に削減することができ、環境負荷を好適に低減することができる。
【0069】
透明性樹脂層を積層する方法としては、一般的な方法であれば限定されず、ドライラミネート法やTダイを用いて溶融した樹脂を押出してラミネートする押出しラミネート法等が挙げられる。
なお、溶融した樹脂を押出すことができるTダイ等は、上述した押出し機構として用いることができる。
【0070】
透明性樹脂層は、けん化処理、グロー放電処理、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、紫外線(UV)処理、及び火炎処理等の表面処理を行ってもよい。
【0071】
(表面保護層)
本開示の化粧シートは、透明性樹脂層の絵柄模様層を備える側と反対側に表面保護層を更に備えることが好ましい。
【0072】
表面保護層は、例えば、熱硬化性成分の硬化物や電離放射線硬化性成分の硬化物を主成分として含有してもよい。硬化物は、透明性であることが好ましい。表面保護層は、紫外線吸収剤及び光安定剤を含有することが好ましい。紫外線吸収剤や光安定剤は透明性樹脂層と同様のものを用いることができる。
【0073】
熱硬化性成分の硬化物としては、例えば、エステル系ウレタンやアクリル系ウレタンを挙げることができる。
【0074】
電離放射線硬化性成分の硬化物としては、例えば、分子中にラジカル重合性不飽和基又はカチオン重合性官能基を有するオリゴマー及び/又はモノマーの硬化物を挙げることができる。電離放射線とは、分子を重合或いは架橋させ得るエネルギーを有する電磁波又は荷電粒子を意味し、電子線(EB)又は紫外線(UV)が一般的である。表面保護層を形成する方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0075】
分子中にラジカル重合性不飽和基を有するオリゴマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート等のオリゴマーが好ましく使用でき、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが更に好ましい。分子量としては、通常250以上10万以下程度のものが用いられる。
【0076】
分子中にラジカル重合性不飽和基を有するモノマーとしては、例えば、多官能モノマーが好ましく、多官能(メタ)アクリレートがより好ましい。
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート{5官能(メタ)アクリレート}、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート{6官能(メタ)アクリレート}等が挙げられる。なお、単官能モノマーを適宜使用しても良い。
【0077】
電離放射線硬化性成分が、ウレタンアクリレートオリゴマー及び多官能モノマーを、ウレタンアクリレートオリゴマー/多官能モノマーの質量比6/4以上9/1以下の範囲で含むことが好ましい。
【0078】
電離放射線硬化性樹脂を紫外線にて架橋させる場合、光重合開始剤を用いることが好ましい。光重合開始剤の添加量は、例えば、電離放射線硬化性成分100質量部に対して0.1以上10以下質量部である。
【0079】
表面保護層は必要に応じて、添加剤を含有していてもよい。
添加剤としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー等の充填剤、水酸化マグネシウム等の難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消臭剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗アレルゲン剤、防カビ剤、等が挙げられる。
上記添加剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0080】
表面保護層は、抗菌剤、抗ウイルス剤、及び、抗アレルゲン剤からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0081】
抗菌剤としては、無機系抗菌剤、及び有機系抗菌剤がある。
特に無機系抗菌剤は有機系抗菌剤に比べ一般に安全性が高く、耐久性、及び耐熱性にも優れているため望ましい。無機系抗菌剤とは、銀をはじめとする銅、亜鉛等の抗菌性金属を各種の無機物担体に担持したものである。
【0082】
表面保護層が抗菌剤を含有する場合、熱硬化性成分又は電離放射線硬化性成分100質量部に対して0.1~10質量部が好ましいが、抗菌剤の種類に応じて適宜調整することができる。
【0083】
抗ウイルス剤としては一般的に有機系と無機系とに大別することができる。
有機系の抗ウイルス剤としては、第4級アンモニウム塩系、第4級ホスホニウム塩系、ピリジン系、ピリチオン系、ベンゾイミダゾール系、有機ヨード系、イソチアゾリン系、アニオン系等がある。
無機系の抗ウイルス剤としては、銀、銅、亜鉛等の金属イオンをゼオライト、アパタイト、ジルコニア、ガラス、酸化モリブデン等に担持させたものがある。
【0084】
表面保護層が抗ウイルス剤を含有する場合、熱硬化性成分又は電離放射線硬化性成分100質量部に対して0.1~10質量部が好ましいが、抗ウイルス剤の種類に応じて適宜調整することができる。
【0085】
有機系の抗ウイルス剤の内、特に粒子形状を保つベンゾイミダゾール系の抗ウイルス剤又はアニオン系の抗ウイルス剤が好適に用いられる。
粒子形状を保つとは、つまり表面保護層を構成する熱硬化性成分又は電離放射線硬化性成分内で溶解することなく、粒子の状態で存在する。
このため、表面保護層を形成する過程において、イミダゾール系化合物の粒子またはアニオン系化合物の粒子が浮かび上がりやすくなり、表面保護層の最表面側にイミダゾール系化合物の粒子またはアニオン系化合物の粒子を偏在させやすくすることができる。
そして、表面保護層の最表面側にイミダゾール系化合物の粒子をまたはアニオン系化合物の粒子を偏在させることにより、所定の抗ウイルス性を得るために必要な抗ウイルス剤の添加量を抑制することができるため、表面保護層の耐擦傷性の低下を抑制しやすくできる。
【0086】
アニオン系の抗ウイルス剤としては、例えばスチレンポリマー誘導体化合物及び不飽和カルボン酸誘導体化合物を含むものが好ましい。
また、上記スチレンポリマー誘導体化合物及び不飽和カルボン酸誘導体化合物はスチレン、スルホン酸Na、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸の構造の内少なくとも一種の構造を含むことが好ましく、全ての構造を含むことが更に好ましい。これは、ウイルスにはエンベロープ有無の2種類が存在し、それぞれに対し効果的に活性阻害しうる抗ウイルス剤の構造は異なると考えられるためである。
一般に、エンベロープウイルスはエンベロープ(脂質層)を破壊することにより比較的容易に不活性化できるため、エンベロープウイルスに対する効果のみを期待するのであれば、スチレンポリマー誘導体化合物のみ含まれれば良く、その中でもスチレン樹脂単体のみ含まれれば十分に効果が得られる場合もある。
【0087】
一方、活性阻害が困難なノンエンベロープウイルスに対してはスチレンポリマー誘導体化合物及び/又はスチレン樹脂の組合せでは添加量を増量する必要がある場合があり、それにより表面保護層が本来備えるべき表面性能を阻害する可能性もある。
そこで、ノンエンベロープウイルスに対し十分な活性阻害を得るためには、上記カルボン酸誘導体化合物を混合して用いることが好ましく、特に少量の添加量でも安定的な効果を得るためには上記カルボン酸誘導体化合物の構成成分としてトリエチルアミン、N,N-ジメチルアリルアミン、ジメチルピロール、テトラメチル-1、3-プロパンジアミン、N,N,2,2-テトラメチル-1,3プロパンジアミンを全て含む化合物を用いることが更に好ましい。
【0088】
アニオン系の抗ウイルス性粒子が抗ウイルス性を発揮する理由については、下記に推測されるメカニズムに拘束される訳ではないが、例えば、各種ウイルスは宿主細胞表面の糖鎖受容体(糖鎖末端はノイラミン酸)に結合して宿主細胞内に侵入するところ、上記抗ウイルス性粒子はノイラミン酸と類似したイオン基を有するため、宿主細胞の代わりにウイルスと結合してウイルスを捕捉することで、ウイルスが宿主細胞の受容体に結合するのを防止して抗ウイルス効果を発揮すると考えられる。
【0089】
具体的には、エンベロープウイルスのスパイクタンパク質及びノンエンベロープウイルスのカプシド(タンパク質の殻)に対して、カルボン酸誘導体の構成成分として前述した複数種のアミノ基等の共有電子対を有する官能基が結合(補捉)する。それと同時又は従属的にスチレンポリマー誘導体のスルホン酸基がエンベロープを破壊することでエンベロープウイルスは不活性化し、カルボン酸誘導体化合物のカルボキシ基がカプシドを酸化することでノンエンベロープウイルスを不活性化すると考えられる。また、スルホン酸基は上述の通り主にエンベロープの破壊に寄与していると考えられるが、酸化力を有しているためカルボキシ基同様にノンエンベロープウイルスのカプシドの酸化にも関係する。
そのためノンエンベロープウイルスを効率的に不活性化しつつ、更にエンベロープウイルスも不活性化するにはカルボン酸誘導体とスチレンポリマー誘導体を同時に用いることが有効となる。
【0090】
無機系の抗ウイルス剤としては、生体毒性が無く安全性に優れる観点から銀系の抗ウイルス剤が好ましく、なかでもリン酸系ガラス銀担持化合物または銀ゼオライト化合物、及び酸化モリブデン銀複塩化合物は少量でも抗ウイルス性能を発現することから添加量を抑制することができるため、更に好ましい。
【0091】
銀系の抗ウイルス剤を表面保護層に添加する場合、表面保護層によっては変色する(添加した塗料の状態で熱・光により変色する場合や、表面保護層形成後に熱・光により変色する場合がある)が、この場合は紫外線防止剤や光安定剤等を適時添加することにより改善することが可能である。
例えば、上記酸化モリブデン銀複塩化合物に対しては、ベンゾトリアゾール化合物を用いると変色改善効果が期待できる。
【0092】
抗アレルゲン剤は、無機化合物又は有機化合物のいずれか一方を含むものであり、各々単体で用いても良いし、異なる2種以上を混合させても良い。無機化合物としては金属を担持してなる材料であることが好ましい。
【0093】
抗アレルゲン剤の添加量は、熱硬化性成分又は電離放射線硬化性成分100質量部に対して1.0~40質量部が好ましく、1~10質量部が更に好ましいが、抗アレルゲン剤の種類に応じて適宜調整することができる。
【0094】
無機化合物の無機材料としては例えば、酸化チタン、リン酸カルシウム、珪酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、ゼオライト、シリカアルミナ、珪酸マグネシウム及びリン酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも一種が好ましく、この中でも酸化チタン、リン酸ジルコニウム等が好ましい。
【0095】
無機材料に担持される金属としては、例えば、銀以外の金、白金、亜鉛及び銅からなる群から選択される少なくとも一種が好ましく、この中でも亜鉛等が好ましい。
市販品として例えば、日揮触媒社製「アトミーボールTZ-R:酸化チタンに亜鉛担持」等を好適に用いることができ、これらの抗アレルゲン剤は、ダニや花粉などの種々のアレルゲンに対して有効に作用するものである。
【0096】
有機化合物としては、フェノール性水酸基を含有する非水溶性高分子又はポリフェノール化合物が無機固体酸に担持されたもの、スチレンスルホン酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種の単量体成分を含む重合体であることが好ましい。
【0097】
フェノール性水酸基を含有する非水溶性高分子としては、市販品として例えば積水化学工業社製「アレルバスター(商品名)」、丸善石油社製「マルカリンカーM(商品名)」等を使用することができる。
また、ポリフェノール化合物とジルコニウム化合物とを組み合わせたものとしては、東亜合成社製「アレリムーブ(商品名)」などが挙げられる。これらの抗アレルゲン剤は、ダニや花粉など種々のアレルゲンに対して有効に作用するものである。
【0098】
スチレンスルホン酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも一種の単量体成分としては、特許第6136433号に示されるような材料を用いることができる。
好適な例としては、スチレンスルホン酸塩の単独重合体、スチレンスルホン酸塩-スチレンスルホン酸共重合体、スチレンスルホン酸塩-スチレン共重合体、スチレンスルホン酸-スチレン共重合体、スチレンスルホン酸塩-スチレンスルホン酸-スチレン三元共重合体等が挙げられる。
【0099】
その他、有機化合物と無機化合物とを混合させる場合は、例えばアニオン性フェノール系と抗アレルゲン性を有する亜鉛系材料が挙げられる。
【0100】
アニオン性フェノール系材料としては、タンニン、タンニン酸・吐酒石、フェノールスルホン酸ホルムアルデヒド樹脂、ノボラツク型樹脂のスルホン化合物、ノボラツク型樹脂のメタンスルホン酸、レゾール型樹脂のメタンスルホン酸、ベンジル化フェノールスルホン酸、チオフェノール系化合物、ジ・ヒドロオキシ、ジ・フェニルスルホン系化合物、リガント化合物及びこれらの金属キレート化合物などから適宜選択して用いられる。
【0101】
亜鉛系材料としては、水溶性亜鉛化合物又は非水溶性亜鉛化合物、亜鉛/金属酸化物複合素材などから適宜選択され、非水溶性亜鉛化合物及び/又は非水溶性亜鉛・金属酸化物の複合粒子が水分散され、粒子径が50μm以下であり、前記金属酸化物がチタニア、シリカ、アルミナの何れかを少なくとも一種含むものであることが好ましい。
【0102】
表面保護層は、グロスマット効果を有してもよい。
グロスマット効果とは、艶のある部分を浮き出させ、艶のない部分を凹んで見えるようにする意匠効果を意味する。
グロスマット効果を付与する方法としては特に限定されず、艶調整剤を表面保護層に含有させてもよいし、後述する凹凸形状により実現してもよい。凹凸形状は、例えば、最大高さRzが10μm以上60μm以下とすることができる。表面保護層のグロスマット効果が構成する絵柄模様は、絵柄模様層が構成する絵柄模様の全部または一部と同調していても同調していなくてもよい。
【0103】
表面保護層の厚みは、特に限定されないが、例えば、1μm以上50μmである。表面保護層の厚みが1μm未満であると、十分に耐久性(耐傷性、耐汚染性、耐候性等)を付与することができないことがあり、50μmを超えると、透過率が低下し絵柄模様層の絵柄の視認性が低下してしまうことがある。
表面保護層の厚みは、3μm以上40μmであってもよく、5μm以上35μmであってもよい。
なお、本開示の化粧シートが凹凸形状を有する場合、表面保護層の厚みとは、凹凸形状を避けた平坦な部分における厚みを意味する。上述した透明性樹脂層や、後述する接着補助層の厚みについても、凹凸形状を避けた平坦部分の厚みを意味する。
【0104】
(凹凸形状)
本開示の化粧シートは、意匠性を好適に付与する観点から、本開示の基材シートを備える側と反対側の面に凹凸形状を有することが好ましい。
【0105】
凹凸形状の最大高さRzが、10μm以上60μm以下であることが好ましい。
上記凹凸形状を有することにより、視覚だけでなく触覚(手触り)的にも立体感を感じられるような優れた意匠性を好適に付与することができる。
なお、「最大高さRz」とは、JIS B 0601(2001)に規定される最大高さRzを意味する。
【0106】
凹凸形状を形成する方法としては特に限定されず、例えば、熱によるエンボス加工、賦形シートによって凹凸形状を転写させる方法等が挙げられる。
熱によるエンボス加工としては、例えば、周知の枚葉、又は、輪転式のエンボス機によるエンボス加工を施す方法が挙げられる。
また、エンボスの柄模様としては、例えば、砂目、ヘアライン、梨地、木目版導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチュア、万線条溝等が挙げられる。
【0107】
(接着補助層)
本開示の化粧シートは、各層の層間(基材シートと絵柄模様層との間、透明性樹脂層と表面保護層との間)に接着補助層を有していてもよく、基材シートの裏面(絵柄模様層を有する側と反対側)に接着補助層(裏面接着補助層)を有してもよい。
接着補助層は、プライマー層や易接着層として機能する。
【0108】
接着補助層は、例えば、エステル系ウレタンやアクリル系ウレタンなどのウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤を用いることができる。
【0109】
接着補助層は、紫外線吸収剤及び光安定剤を含有してもよい。紫外線吸収剤や光安定剤は透明性樹脂層で記載したものを適宜選択することができる。
【0110】
接着補助層は、層間の接着不良を好適に抑制する観点から、厚みが0.1μm以上30μm以下であることが好ましい。
なお、接着補助層の形成方法は特に限定されず、公知の方法を適宜選択すればよい。
【0111】
(接着剤層)
本開示の化粧シートは、絵柄模様層と透明性樹脂層との間に接着剤層を有してもよい。
接着剤層は、透明性であることが好ましい。
【0112】
接着剤層の接着剤として、例えば、エステル系ウレタンやアクリル系ウレタンなどのウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤を用いることができる。
【0113】
接着剤層の厚みは、例えば、0.1以上30μm以下である。
なお、接着剤層の形成方法は特に限定されず、公知の方法を適宜選択すればよい。
【0114】
(化粧シートの製造方法)
本開示の化粧シートの製造方法においては、上述した各層を形成する順番等は特に問わない。
例えば、本開示の基材シートの第2の層の側に接着補助層、絵柄模様層、接着剤層、透明性樹脂層、接着補助層、及び、表面保護層をこの順番で形成してもよい。
また、各層を形成する工程は連続して進行する必要はなく、これらの工程どうしの間に、他の工程や処理を行ってもよい。
【0115】
<化粧板>
本開示の化粧板は、本開示の化粧シートの基材シートの絵柄模様層を有する側と反対側に被着材が積層されている。
【0116】
被着材として、例えば、木質板、石膏系板、セメント板、セラミックス板、金属板、樹脂板、繊維強化プラスチック板が挙げられる。被着材の積層方法としては例えば、本開示の基材シートの絵柄模様層を有する側と反対側に、上述した接着剤層を形成する接着剤等を使用して被着材を積層すればよい。
【0117】
本明細書では、以下の事項が開示されている。
【0118】
本開示(1)は、第1の層と、第2の層とを少なくとも備え、上記第1の層は、バイオマス由来のポリエチレンを含み、上記第2の層は、上記第1の層よりもバイオマス度が低く、かつ、バイオマス度が40%未満であるバイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シートである。
本開示(2)は、上記第2の層が、バイオマス度が20%未満である本開示(1)に記載のバイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シートである。
本開示(3)は、上記第2の層の厚みが、総厚の1/4以下である本開示(1)又は(2)に記載のバイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シートである。
本開示(4)は、上記第1の層の上記第2の層を備える側と反対側に第3の層を備え、上記第3の層は、上記第1の層よりもバイオマス度が低い本開示(1)~(3)の何れかに記載のバイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シートである。
本開示(5)は、本開示(1)~(4)の何れかに記載のバイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シートと、上記バイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シートの上記第2の層の側に備える絵柄模様層とを少なくとも有する化粧シートである。
本開示(6)は、上記絵柄模様層の上記バイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シートを備える側と反対側に透明性樹脂層を有する本開示(5)に記載の化粧シートである。
本開示(7)は、上記バイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シート、及び、上記透明性樹脂層からなる群から選択される少なくとも1層が、難燃剤を含む本開示(6)に記載の化粧シートである。
本開示(8)は、上記バイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シートを備える側と反対側の面に凹凸形状を有する本開示(5)~(7)の何れかに記載の化粧シートである。
本開示(9)は、上記凹凸形状の最大高さRzが、10μm以上60μm以下である本開示(8)に記載の化粧シートである。
本開示(10)は、上記透明性樹脂層の上記絵柄模様層を備える側と反対側に表面保護層を更に備える本開示(6)~(9)の何れかに記載の化粧シートである。
本開示(11)は、上記表面保護層が、抗菌剤、抗ウイルス剤、及び、抗アレルゲン剤からなる群より選択される少なくとも1種を含む本開示(10)に記載の化粧シートである。
本開示(12)は、本開示(5)~(11)の何れかに記載の化粧シートの上記バイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シートの上記絵柄模様層を有する側と反対側に被着材が積層された化粧板である。
【実施例0119】
次に、本発明を実施例により、更に詳細に説明するが、本開示は、この例によって限定されるものではない。
【0120】
(実施例1)
Tダイ法により、厚み45μmの第1の層と、厚み15μmの第2の層とを備える総厚60μmのバイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シートを作製した。
なお、第1の層及び第2の層のバイオマス度は、本明細書に記載の方法により算出した。
【0121】
(実施例2~6、比較例1~2)
表1に記載のバイオマス度及び厚みを有する第1の層及び第2の層を備えること以外は、実施例1と同様の方法によりバイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シートを作製した。
【0122】
(実施例7)
Tダイ法により、厚み45μmの第1の層と、厚み15μmの第2の層と、第1の層の第2の層を有する側と反対側に厚み15μmの第3の層とを有する総厚75μmのバイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シートを作製した。
なお、第1の層、第2の層、及び、第3の層のバイオマス度は、本明細書に記載の方法により算出した。
【0123】
(実施例8)
実施例2と同様の方法によりバイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シートを作製した。
上記基材シートの第2の層が形成されている面側の全体を被覆するように、アクリル-ウレタン系樹脂を主成分とする厚さ2μmの接着補助層を、凹版ロールを用いたグラビア印刷方式で有機溶剤を含むインキをベタ印刷することによって形成した。
次いで上記接着補助層上に、アクリル-ウレタン系樹脂を主成分とする厚さ2μmの絵柄模様層(木目模様)を、凹版ロールを用いたグラビア印刷方式で着色剤及び有機溶剤を含むインキを部分印刷することによって形成した。
その後、絵柄模様層の接着補助層と反対の面側に、エステル系ポリウレタンを塗布して厚み10μmの接着剤層を形成し、上記接着剤層上に厚み60μmの透明性オレフィンシートをドライラミネートして透明性樹脂層を形成した。
更に、透明性樹脂層の接着剤層と反対の面側に、厚み2μmのアクリル-ウレタン共重合体樹脂からなる表面接着補助層を形成し、表面接着補助層上にグラビアコートにて、コート剤(ウレタンアクリレート系電離放射線硬化性樹脂組成物)を塗工した後、電離放射線を照射してコート剤を硬化して、厚み5μmの表面保護層を形成した。
最後に、表面保護層を有する面側から熱圧によるエンボス加工を施して凹凸形状を形成し、化粧シートを製造した。
【0124】
(実施例9)
表面保護層の形成に用いたコート剤(ウレタンアクリレート系電離放射線硬化性樹脂組成物)100質量部に対し、抗ウイルス剤としてリン酸系ガラス銀担持化合物(興亜硝子社製 PG-711)を3質量部添加した以外は、実施例8と同様にして化粧シートを製造した。
【0125】
(実施例10)
表面保護層の形成に用いたコート剤(ウレタンアクリレート系電離放射線硬化性樹脂組成物)100質量部に対し、アニオン性フェノール系材料(抗アレルゲン剤、DIC社製 EXP20530A)及び亜鉛系材料(抗アレルゲン剤、DIC社製 EXP20530B)をそれぞれ16質量部配合したこと以外は、実施例8と同様にして化粧シートを製造した。
【0126】
[変色評価]
<評価方法>
(実施例1~7、比較例1~2)
作製したバイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シートを密閉した容器に入れ二酸化窒素ガスを濃度500ppmになるよう供給して1週間保管した。
保管の前後において、バイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シートの表層の側(第2の層を備える側)から色差を測定し下記の基準で評価した。
なお、色差の測定器として、分光測色計CR-400(コニカミノルタジャパン株式会社製)を用いた。その結果を表1に示した。
【0127】
(実施例8)
作製した化粧シートを密閉した容器に入れ二酸化窒素ガスを濃度500ppmになるよう供給して1週間保管した。
保管の前後において、化粧シートの表面保護層を備える側から色差を測定し下記の基準で評価した。
なお、色差の測定器として、分光測色計CR-400(コニカミノルタジャパン株式会社製)を用いた。その結果を表1に示した。
【0128】
<評価基準>
++:保管の前後の色差Δaが、0.2未満であった。
+:保管の前後の色差Δaが、0.2以上0.4未満であった。
-:保管の前後の色差Δaが、0.4以上0.6未満であった。
--:保管の前後の色差Δaが、0.6以上であった。
なお、「++」「+」を合格、「-」「--」を不合格と判断した。
【0129】
[抗ウイルス性評価]
<評価方法>
(実施例8~9)
実施例8及び実施例9で作製した化粧シートについて、抗ウイルス試験方法(ISO21702)に準拠した方法で抗ウイルス性能試験を行い、インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス活性値を算出し、下記評価基準に基づいて評価した。その結果を表2に示した。
なお、表2中の抗ウイルス剤(質量部)とは、コート剤(ウレタンアクリレート系電離放射線硬化性樹脂組成物)100質量部に対する抗ウイルス剤の使用量(質量部)を意味する。
【0130】
<評価基準>
+:抗ウイルス活性値2.0以上であった
-:抗ウイルス活性値2.0未満であった
なお、「+」を合格、「-」を不合格と判断した。
【0131】
[抗アレルゲン性評価]
(実施例8及び10)
実施例8及び実施例10で作製した化粧シートについて、アレルゲン性能を評価した。
具体的には、実施例8及び実施例10で作製した化粧シート(10cm×10cm)を細かく切断し、20~30ng/mlのコナヒョウヒダニ由来アレルゲン水溶液60mL中に1日間浸した後のアレルゲン量を水平展開クロマト法(マイティチェッカー)で目視にて確認し、下記評価基準に従って評価した。その結果を表3に示した。
なお、表3中に記載のアニオン性フェノール系材料(質量部)及び亜鉛系材料(質量部)は、コート剤(ウレタンアクリレート系電離放射線硬化性樹脂組成物)100質量部に対するアニオン性フェノール系材料及び亜鉛系材料の使用量(質量部)を意味する。
【0132】
<評価基準>
+:アレルゲン量の減少が確認できた(ダニアレルゲンレベル判定が+判定以下(すなわち100匹程度/m以下)
-:アレルゲン量の減少が確認できなかった(ダニアレルゲンレベル判定が+判定超過)
なお、「+」を合格、「-」を不合格と判断した。
【0133】
【表1】
【0134】
【表2】
【0135】
【表3】
【0136】
表1に示すように、第1の層と、第2の層と備え、第2の層が第1の層よりもバイオマス度が低く、かつ、バイオマス度が40%未満であるバイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シートを用いることにより、NOxに起因する変色を抑制できることが確認された。
また、バイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シートを用いることにより、化石燃料由来の原料の使用量を削減できるので、環境負荷を低減し得る。
また、表2に示すように、表面保護層が抗ウイルス剤を含むことにより、化粧シートに抗ウイルス性を付与できることが確認された。また、表3に示すように、表面保護層が抗アレルゲン剤を含むことにより、化粧シートに抗アレルゲン性を付与できることが確認された。
【符号の説明】
【0137】
1 第1の層
2 第2の層
3 第3の層
10 バイオマス由来のポリエチレンが使用された化粧シート用基材シート
11 絵柄模様層
12 接着剤層
13 透明性樹脂層
14 接着補助層
15 表面保護層
20 化粧シート
図1
図2
図3