(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045076
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】膝関節インプラント補強材及び膝関節インプラント
(51)【国際特許分類】
A61F 2/38 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
A61F2/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023152384
(22)【出願日】2023-09-20
(31)【優先権主張番号】10 2022 124 193.9
(32)【優先日】2022-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
【住所又は居所原語表記】Am Aesculap-Platz, 78532 Tuttlingen Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ヒルト
(72)【発明者】
【氏名】アーサー ボリンガー
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA07
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC12
4C097SC08
4C097SC09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】脛骨への膝関節インプラントの最適な取り付けを可能にする膝関節インプラント補強材を提供する。
【解決手段】埋設された状態において、膝関節インプランと脛骨との間に配置されるように構成された膝関節インプラント補強材であって、膝関節インプラント上に少なくとも部分的に平坦に載置されるように構成された第1の接触面と、埋設された状態において、第1の接触面の反対側に位置しているとともに、脛骨上に少なくとも部分的に平坦に載置されるように構成された第2の接触面と、第1の接触面の縁を第2の接触面の縁に接続する側方面と、を備える。側方面は、側方面の部分が、膝関節インプラント補強材の埋設された状態において膝蓋骨位置に配置されるとともに、膝蓋骨方向において、第1の接触面から始まる、第1の接触面に垂直な軸に対して0°よりも大きい閉鎖角で角度を付けられるように、構成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋設された状態において、膝関節インプラント(1)と脛骨(2)との間に配置されるように構成された膝関節インプラント補強材(8)であって、
前記埋設された状態において、前記膝関節インプラント(1)上に少なくとも部分的に平坦に載置されるように構成された第1の接触面(14)と、
前記埋設された状態において、前記第1の接触面(14)の反対側に位置しているとともに、前記脛骨(2)上に少なくとも部分的に平坦に載置されるように構成された第2の接触面(16)と、
前記第1の接触面(14)の縁を前記第2の接触面(16)の縁に接続する側方面(18)と、を備え、
前記側方面(18)は、前記側方面(18)の部分(20)が、前記膝関節インプラント補強材(8)の前記埋設された状態において膝蓋骨位置に配置されるとともに、前記膝関節インプラント補強材(8)の前記埋設された状態において前記脛骨(2)の髄管の長手方向軸(12)に対して0°に等しくない閉鎖角(α)で角度を付けられるように、構成されていることを特徴とする、
膝関節インプラント補強材(8)。
【請求項2】
前記膝蓋骨側方面部分(20)は、前記第1の接触面(14)及び/又は前記第2の接触面(16)に垂直な軸(36)に対して0°に等しくない閉鎖角(α)で角度を付けられていることを特徴とする、請求項1に記載の膝関節インプラント補強材(8)。
【請求項3】
前記第1の接触面(14)は、前記膝関節インプラント補強材(8)の前記埋設された状態において、近位方向を指していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の膝関節インプラント補強材(8)。
【請求項4】
前記膝関節インプラント補強材(8)の前記埋設された状態において、前記第1の接触面(14)と前記膝蓋骨側方面部分(20)との間の角度が、90°よりも大きいことを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の膝関節インプラント補強材(8)。
【請求項5】
前記膝関節インプラント補強材(8)の前記埋設された状態において、前記第2の接触面(16)と前記膝蓋骨側方面部分(20)との間の角度が、90°未満であることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の膝関節インプラント補強材(8)。
【請求項6】
前記膝蓋骨側方面部分(20)が、前記膝関節インプラント補強材(8)の脚部(42)、好ましくは、前記膝関節インプラント補強材(8)の前記埋設された状態において、膝蓋骨位置にある脚部(42)に位置決めされていることを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の膝関節インプラント補強材(8)。
【請求項7】
前記膝関節インプラント補強材(8)における細長いノッチ(38)が、前記膝関節インプラント(1)の強化翼状部(28)を受け入れるように準備及び構成されており、前記膝蓋骨側方面部分(20)が、前記ノッチ(38)の長手方向範囲に対して実質的に平行に延在することを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の膝関節インプラント補強材(8)。
【請求項8】
膝関節インプラント(1)であって、
大腿骨要素(4)と、
ベースプレート(22)と、前記ベースプレートから延在するシャフト(26)と、好ましくは前記ベースプレート(22)及び前記シャフト(26)の間に延在する強化翼状部(28)と、を備える脛骨要素(6)と、
膝関節インプラント補強材(8)と、を備え、
前記膝関節インプラント補強材(8)が、
前記ベースプレート(22)に対して少なくとも部分的に平坦に載置される第1の接触面(14)と、
前記第1の接触面(14)の反対側に位置しているとともに、前記膝関節インプラント(1)の埋設された状態において、脛骨(2)上に少なくとも部分的に平坦に載置可能であるように構成された、第2の接触面(16)と、
前記第1の接触面(14)の縁を前記第2の接触面(16)の縁に接続する側方面(18)と、を有し、
前記側方面(18)は、前記側方面(18)の部分(20)が、前記膝関節インプラント(1)の前記埋設された状態において膝蓋骨位置に配置されるとともに、前記埋設された状態において前記シャフト(26)の長手方向軸(48)に対して0°に等しくない閉鎖角で角度を付けられるように、形成されていることを特徴とする、
膝関節インプラント(1)。
【請求項9】
前記第1の接触面(14)が、前記ベースプレート(22)の形状に少なくとも部分的に対応することを特徴とする、請求項8に記載の膝関節インプラント。
【請求項10】
前記第2の接触面(16)が、前記脛骨(2)の外方輪郭に少なくとも部分的に対応するように構成されている、請求項8に記載の膝関節インプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、膝関節インプラント用の膝関節インプラント補強材、及び、膝関節インプラント、に関する。
【背景技術】
【0002】
膝関節は、通常、膝関節症により損なわれるものであるが、この膝関節を置き換えるために、膝関節プロテーゼ又はインプラント、或いは、膝体内プロテーゼ、が使用される。膝関節は、膝関節プロテーゼ又はインプラントにより、部分的に又は完全に置き換えられる。
【0003】
公知の膝関節インプラントは、大腿骨要素、脛骨要素、及び、大腿骨要素と脛骨要素との間のインレイ、を有する。インレイは、大腿骨要素が脛骨要素上において摺動することの可能な摺動面である。大腿骨要素は、自身を大腿骨に堅固に接続するシャフトを有する。脛骨要素は、当該脛骨要素を脛骨に堅固に接続する脛骨シャフトを有する。脛骨の大部分が除去される場合、薄肉の脛骨要素は、失われた骨に置き換わることができない。したがって、いわゆる膝関節インプラント補強材又は膝インプラント補強材もまた、使用される。膝関節インプラント補強材は、本質的に、切断された脛骨と膝関節インプラントの脛骨要素との間のスペーサとして作用する(平坦な)プレートである。
【0004】
このような膝関節インプラント補強材は、例えば、US 11 266 509 B2から公知である。このケースにおいて、膝関節インプラント補強材は、切断された骨の形状に適合されるような様式で、解剖学的に構成されている。それにより、膝関節インプラント補強材の遠位面又は下側面は、切頭(truncated)脛骨の断面形状に実質的に適合されている。当該遠位面の面積は、膝関節インプラント補強材の近位面の面積よりも小さい。EP 1 360 950 B1もまた、このような膝関節インプラント補強材について開示している。
【0005】
公知の膝関節インプラント補強材のケースでは、脛骨上における、膝関節インプラント補強材を備えた脛骨要素の良好な支持を確保するために、取り付け中において、脛骨要素の全体を、膝に向かって前方向に又は前方へシフトさせなければならない。ここでは、脛骨は、前方向にふくらんでいる。
【0006】
しかしながら、前方方向へのこのシフトは、不利である。一方では、このシフトが、骨にわたる脛骨要素の望ましくない突出を結果的に生じる。他方では、インプラントの挿入中における再位置決めは、骨の髄管に対する参照を失うことを意味する。再置換(revision)手術では、シャフトが使用されることが多く、当該シャフトは、骨/脛骨の髄管を最適に辿るはずである。よって、髄管は、骨/脛骨の機能軸(mechanical axis)を形成している。脛骨要素、特に脛骨要素のシャフトは、前方へ移動させることにより、脛骨の髄管/機能軸に沿って、もはやアライメントされていない。再位置決めに起因する誤差は、調整可能なシャフトによってのみ補正することが可能である。しかしながら、ほとんどのシャフトは、内側(ないそく)-外側(がいそく)にのみ調整可能であり、前方-後方に調整可能ではない。したがって、脛骨の位置決め誤差が生じ得る。よって、公知の膝関節インプラントは、適切に使用されない場合がある。
【0007】
より具体的には、インプラントを位置付ける際に、相反する目的が生じ得る。脛骨シャフトが脛骨の髄管とアライメントされる場合には、インプラントと特に膝インプラント補強部との間の軸受面が、切頭脛骨に合致しない。しかしながら、当該補強部が切頭脛骨の形状とアライメントされる場合には、脛骨シャフトが、髄管の機能軸から逸脱し得る。このトレードオフは、調整可能なシャフトを備えたインプラントによって解消され得る。しかしながら、ほとんどのシャフトは、内側(ないそく)-外側(がいそく)にのみ調整可能である。さらに、手術中におけるシャフトの調整は、不利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
よって、本開示の目的は、先行技術の不利益を克服するか又は少なくとも低減すること、特に、脛骨への膝関節インプラントの最適な取り付けを可能にする膝関節インプラント補強材を提供することである。脛骨への最適な接続が可能である膝関節インプラントを提供することが、さらに意図されている。
【0009】
この目的は、請求項1に記載の膝関節インプラント補強材と、請求項8に記載の膝関節インプラントと、によって解決される。本開示の有利なさらなる展開は、後続の従属請求項の主題である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、膝関節インプラント用の膝関節インプラント補強材又はスペーサに関し、当該膝関節インプラント補強材又はスペーサは、埋設された状態において、膝関節インプラントと脛骨との間に配置されるように準備及び構成されている。当該膝関節インプラント補強材は、埋設された状態において、膝関節インプラント上に少なくとも部分的に平坦に載置されるように構成された第1の接触面と、埋設された状態において、第1の接触面の反対側に位置しているとともに、脛骨上に少なくとも部分的に平坦に載置可能であるように構成された第2の接触面と、第1の接触面の縁を第2の接触面の縁に接続する側方面又は周囲面と、を有する。側方面は、側方面の部分/側方面部分が、膝関節インプラント補強材の埋設された状態において膝蓋骨位置に配置されるとともに、膝関節インプラント補強材の埋設された状態において脛骨の髄管の長手方向軸に対して0°に等しくない閉鎖角(closed angle)で角度を付けられるように、構成されている。
【0011】
膝関節インプラントは、本来の膝関節に少なくとも部分的に置き換わり、よって、位置的に決定された態様で、身体内へ挿入又は操作される。膝関節インプラント補強材は、膝関節インプラント上において位置的に決定されており、よって、膝関節又は身体に対しても位置的に決定される。
【0012】
この文脈における、位置的に決定された、とは、膝関節インプラントに対する膝関節インプラント補強材の位置及び配向が、膝関節インプラント補強材上で又は膝関節インプラント上で適切な手段により、或いは、両方の部材上で相互作用する手段により、規定されていることを意味する。よって、特に、膝関節インプラントの全体が(意図されるように)挿入又は埋設されたときに、側方面の個々の部分がどの方向を指すのかが規定されている。
【0013】
この文脈において、膝蓋骨方向は、ヒトの前方へ、特に膝頭へ向かって指す方向として理解されるべきである。膝蓋骨アライメントは、身体の前方方向として理解されるべきである。
【0014】
この文脈における、第1の接触面又は近位面は、ヒトの上方を、即ち、上半身に向かって、又は、それぞれ膝から大腿部に向かって、指している膝関節インプラント補強材の側面である。第2の接触面或いは尾側又は遠位側面は、足又は下肢に対向する、膝関節インプラント補強材の側面である。したがって、組み付け中に、第1の接触面は膝関節インプラントと接触しており、第2の接触面は脛骨と接触している。
【0015】
脛骨は、その長手方向軸に沿って延在している。髄管は本質的に、脛骨の長手方向軸を辿っている。膝蓋骨側方面部分は、脛骨の長手方向軸に対して0°に等しくない閉鎖角で角度を付けられている。
【0016】
換言すると、膝関節インプラント補強材は、膝関節インプラント用の補強材又はスペーサであり、膝関節インプラント用の補強材は、好ましくは平坦な、ほぼU字形状又は馬蹄形状のベースプレートを有し、ベースプレートは、第1の(ベース)表面と、当該第1の(ベース)表面に対向する第2の(ベース)表面と、当該第1の(ベース)表面及び当該第2の(ベース)表面を接続するとともに境界付ける側方面又は周囲面と、を有する。側方面は、膝関節インプラント補強材が、膝関節インプラントに、より具体的には、膝関節インプラントの脛骨要素の遠位面に、当接するように位置的に決定されたときに、膝蓋骨方向又は前方向に向く部分を有する。
【0017】
よって、膝関節インプラント補強材は、膝蓋骨側方面部分において、突出した先端部を有しており、当該先端部は、好ましくは、側方面部分の遠位側において形成されている。全体的に、前方部分は、膝関節インプラント補強材の第2の接触面が(切頭)脛骨の形状に少なくとも部分的に対応するように、形成及び適合されている。
【0018】
第1の接触面に対して垂直な軸は、第2の接触面に対しても垂直にも配置されてよい。角度を付けられた膝蓋骨側方面部分は、第1の接触面のベースエリアを越えて延在する先端部を覆ってもよい。当該軸は、第1の接触面に対する法線ベクトルであってよい。第1の接触面及び第2の接触面は、好ましくは互いに平行であるが故に、当該軸は、第2の接触面に対する法線ベクトルでもあってよい。膝関節インプラント補強材の埋設された状態において、当該軸は、脛骨の髄管の長手方向軸に対して平行にアライメントされてもよく、又は、当該長手方向軸に対応してもよい。
【0019】
本開示による膝関節インプラント補強材を理由として、膝関節インプラントは、脛骨の形状に最適に適合される。結果として、膝関節インプラント補強材は、より良好に脛骨上に付着し、又は、膝関節インプラント補強材を備えた膝関節インプラントの脛骨要素の、脛骨上における支持の確保が改善される。特に、膝関節インプラント補強材は、切頭脛骨上において、大きな支持面を有する。よって、脛骨要素は、膝関節インプラント補強材と脛骨との間の支持面を増大させるために手術中に前方向/膝蓋骨方向に移動させる必要がなくなり、したがって、最適な位置に留まることができる。最適な位置において、脛骨要素のシャフトは、脛骨の髄管に対してアライメントされる。よって、脛骨要素をより良好に脛骨に固定することができ、脛骨の位置決め誤差を回避することができる。特に、脛骨要素は、脛骨の機能軸又は髄管に沿ってアライメントされる。
【0020】
さらに、本開示による膝関節インプラント補強材の製造は、単純且つ安価である。
【0021】
本開示の目的は、膝関節プロテーゼ/膝関節インプラントによってさらに解決される。膝関節インプラントは、大腿骨要素又は大腿骨インプラントと、脛骨要素又は脛骨インプラントと、を備えている。当該脛骨要素は、ベースプレートと、当該ベースプレートから遠位に延在するとともに脛骨内へ挿入されるように適合されたシャフトと、好ましくは、ベースプレート及びシャフトの間に延在する(強化)翼状部と、を備えている。さらに、膝関節インプラントは、好ましくは、大腿骨要素と脛骨要素との間に位置付けられているとともに、これら2つの要素が互いの上で摺動することを可能にする、インレイ/摺動面/インサートを備えてよい。膝関節インプラントはさらに、第1の接触面と、当該第1の接触面の反対側の第2の接触面と、当該第1の接触面の縁を当該第2の接触面の縁に接続する側方面と、を有する膝関節インプラント補強材を備えている。第1の接触面は、ベースプレート上に少なくとも部分的に平坦に載置される。第2の接触面は、骨上に少なくとも部分的に平坦に載置されるように構成されている。当該側方面の部分は、当該関節インプラントの当該埋設された状態において膝蓋骨位置に配置されるとともに、当該埋設された状態において当該シャフトの長手方向軸に対して0°に等しくない閉鎖角で角度を付けられるように、構成されている。
【0022】
膝関節インプラントの埋設された状態において、脛骨要素のシャフトは、ベースプレートから遠位に延在する。埋設された状態において、シャフトは、脛骨内へ埋め込まれる/挿入されるように構成されている。長手方向軸は、脛骨の髄管の長手方向軸に沿って延在してもよい。
【0023】
膝関節インプラントは、角度を付けられた膝蓋骨側方面部分により、骨に特に堅固に接続することが可能であって、挿入又は操作が容易であるが、その理由は、脛骨上における膝関節インプラントの支持面が、特に大きいためである。特に、膝関節インプラント、及び、特に脛骨要素は、挿入中に前へ移動させる必要がない。したがって、膝関節インプラントは、埋設中において、脛骨の長手方向軸及び髄管の長手方向軸とアライメントされる。
【0024】
関節インプラントの埋設された状態における、膝蓋骨側方面部分は、脛骨の髄管の長手方向軸に対しても、閉鎖角で角度を付けられてよい。
【0025】
膝関節インプラントは、好ましくは、大腿骨の遠位部分と脛骨の近位部分との間に位置決めされている。大腿骨要素は大腿骨に、脛骨要素は脛骨に、接続することができる。特に、これらの部分的インプラントは、それぞれのシャフトを介して、特に、対応する骨に接続することができる。
【0026】
本開示の随意の態様によると、膝蓋骨側方面部分は、第1の接触面及び/又は第2の接触面に対して垂直な軸に対して0°に等しくない閉鎖角で角度を付けられている。当該軸は、第1の接触面に対する法線ベクトルであってよい。第1の接触面及び第2の接触面が、好ましくは互いに平行であるため、当該軸は、第2の接触面に対する法線ベクトルでもあってよい。膝関節インプラント補強材の埋設された状態において、当該軸は、脛骨の髄管の長手方向軸に対して平行にアライメントされてもよく、又は、当該長手方向軸に対応してもよい。角度を付けられた膝蓋骨側方面部分は、第1の接触面のベースエリアを越えて延在する先端部を覆ってもよい。
【0027】
膝関節インプラント補強材は、ほぼ、(斜)円柱又は切頭円錐の形状を有してもよい。当該軸は、当該円柱の及び/又は当該切頭円錐の長手方向軸であってもよい。
【0028】
当該第1の接触面と当該膝蓋骨側方面部分との間の角度は、90°よりも大きくてもよく、それにより、角度を付けられた膝蓋骨側方面部分により覆われた先端部が、当該第1の接触面のベースエリアを越えて延在する。よって、膝蓋骨側方面部分の角度は、遠位方向に向かって開いている。よって、第2の接触面の面積は、第1の接触面の面積よりも大きくなることが可能である。よって、第2の接触面は、(切頭)脛骨の断面に少なくとも部分的に適合されている。
【0029】
したがって、第2の接触面と膝蓋骨側方面部分との間の角度もまた、90°に等しくなくてもよい。特に好ましくは、当該膝関節インプラント補強材の当該埋設された状態において、当該第2の接触面と当該膝蓋骨側方面部分との間の角度は、90°未満である。
【0030】
好ましくは、側方面のうちの少なくとも3つの側には、第1の接触面及び/又は第2の接触面に対して角度を付けられている。即ち、側方面のうちの少なくとも3つの側は、これらの接触面に対して垂直にアライメントされているのではなく、これらの接触面に対して90°に等しくない角度で角度を付けられている。
【0031】
本開示の別の随意の態様によると、膝蓋骨側方面部分と軸との間の閉鎖角は、尾側方向/遠位方向に開いている。つまり、第2の接触面の表面積を増大させることができる。これにより、(切頭)脛骨と膝関節インプラント補強材とができるだけ大きな面積で重なることを確保すること、及び、堅固な接続を確保することが可能である。
【0032】
好ましくは、膝関節インプラント補強材は、ほぼ、U字形状又は馬蹄形状である。当該膝蓋骨側方面部分は、馬蹄の脚部/腕部に位置決めされてよい。U字形状又は馬蹄形状の膝関節インプラント補強材は、中心部分から側方方向において実質的に平行に延在する2つの脚部/腕部を有してよい。膝蓋骨側方面部分は、これら2つの脚部のうちの一方に位置決めされてよい。膝蓋骨側方面部分は、「馬蹄」の外方表面を向くように位置決めされてよい。
【0033】
膝関節インプラント補強材の埋設された状態において、(「馬蹄」の)中心部分は、膝関節の外側(がいそく)方向を指してよい。2つの脚部は、側方方向に延在し得る。よって、埋設された状態において、脚部の一方は、膝蓋骨位置又は前方位置に位置決めされてよく、他方は、後方位置に位置決めされてよい。特に、膝蓋骨側方面部分は、馬蹄形状の膝関節インプラント補強材の膝蓋骨脚部において位置決めされてよい。よって、膝蓋骨側方面部分は、膝関節インプラント補強材と脛骨との間の膝蓋骨支持面を増大させることができ、膝関節インプラントが、脛骨の長手方向軸とアライメントされて装着されることを可能にすることができる。
【0034】
本開示の別の随意の態様によると、当該(U字形状又は馬蹄形状の)膝関節インプラント補強材における細長いノッチが、当該膝関節インプラントの(強化)翼状部を受け入れるように準備及び構成されており、当該膝蓋骨側方面部分は、当該ノッチの長手方向範囲に対して実質的に平行に延在する。(強化)翼状部は、U字形状又は馬蹄形状の膝関節インプラント補強材のノッチ内へ挿入されてよい。(強化)翼状部の配向とノッチとの組み合わせは、膝関節インプラント補強材を、埋設された状態における膝関節インプラントに、位置的に決定された態様で取り付けることを可能にする。よって、ノッチは、膝関節インプラント補強材の、膝関節インプラント上における位置及び配向を規定することができる。
【0035】
好ましくは、膝関節インプラント補強材は、側面図又は断面において、平行四辺形の形状を有する。膝蓋骨側方面部分及び後方側方面部分の両方は、角度を付けられていてもよい。特に、これら2つの側方面部分は、互いに平行に角度を付けられていてもよい。
【0036】
これら2つの側方面部分の各々は、軸に対して角度を付けられているものの、同じ角度で角度を付けられないことが可能である。
【0037】
好ましくは、膝関節インプラント補強材の第1のベース表面の少なくとも一部は、脛骨要素のベースプレートの形状に適合されている。即ち、脛骨要素のベースプレートに直接的に当接する膝関節インプラント補強材の表面は、ベース構造の形状を少なくとも部分的に有する。よって、これら2つの要素は、継ぎ目なく一体化する。
【0038】
本開示の別の随意の態様によると、膝関節インプラント補強材の第2のベース表面の一部分は、脛骨の外方輪郭に少なくとも対応するように形成及び適合されている。つまり、第2のベース表面は、実質的に脛骨の断面の形状になじみ得る。よって、切頭脛骨は、肩部なしに、膝関節インプラント補強材へと移行してもよい。つまり、切頭脛骨の断面は、第2のベース表面に、少なくとも部分的に対応してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】先行技術による膝関節インプラントを示している。
【
図2】脛骨上における、先行技術による膝関節インプラント補強材を備えた脛骨要素の斜視図を示している。
【
図3】先行技術による膝関節インプラント補強材の側面図を示している。
【
図4】本開示による膝関節インプラント補強材の側面図を示している。
【
図5】本開示による膝関節インプラント補強材の等角図を示している。
【
図6】本開示による膝関節インプラント補強材の底部側を示している。
【
図7】本開示による膝関節インプラント補強材を備えた脛骨要素の側面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1から
図3は、先行技術による膝関節インプラント又は膝プロテーゼ1を示している。膝関節インプラント1は、好ましくは、埋設された状態において、大腿骨(大腿部の骨)の遠位部分と脛骨(脛の骨)2の近位部分との間に位置決めされており、大腿骨要素又は大腿骨インプラント4と、(膝関節インプラント)補強材8を備えた脛骨要素又は脛骨インプラント6と、インレイ/摺動層10と、を有する。インレイ10は、大腿骨要素4と脛骨要素6との間に配置されており、大腿骨要素4が脛骨要素6に対して摺動することを可能にする。
【0041】
膝関節インプラント補強材8は、埋設された状態において、膝関節インプラント1と脛骨2との間に配置されるように構成されており、膝関節インプラント補強材8の埋設された状態において、膝関節インプラント1上に少なくとも部分的に平坦に載置されるように構成された近位の第1の接触面14と、埋設された状態において、脛骨2上に少なくとも部分的に平坦に載置されるように構成された遠位/尾側の第2の接触面16と、を有する。膝関節インプラント補強材8はさらに、第1の接触面14の縁を第2の接触面16の縁に接続する側方面18を備えている。側方面18は、膝関節インプラント補強材8の埋設された状態において、膝蓋骨位置に配置された側方面部分20を有する。
【0042】
第1の接触面14には、脛骨要素6の薄肉のベースプレート22が突き合わされている。ベースプレート22は、自身の近位側に、インレイ10用の受け入れ構造24を有する。ベースプレート22の尾側/遠位側には、脛骨シャフト26が遠位方向に延在する。脛骨シャフト26は、脛骨2内へ皿穴埋めを施されて(countersink)脛骨2と脛骨要素6との間に堅固な接続を確保するように、作成及び適合されている。シャフト26は、膝関節インプラント1の埋設された状態において、脛骨2の髄管(図示せず)の長手方向軸12に対応している。
【0043】
脛骨2の大部分が除去される場合、薄肉の脛骨要素6は、失われた骨に置き換わることができない。したがって、追加的に膝関節インプラント補強材8が使用される。膝関節インプラント補強材8の第1の接触面14は、ベースプレート22の遠位面に当接するように準備及び適合されている。
【0044】
大腿骨要素4は、インレイ10の、脛骨要素6とは反対側に配設されている。大腿骨要素4は、大腿骨要素4を大腿骨に接続する接続部分30と、インレイ10上において転がる転がり部分32と、を有する。インレイ10は、大腿骨要素4及び脛骨要素6が互いの上で摺動すること/互いの上で転がることを可能にし、或る意味で、これら2つの要素4と6との間で軸受として作用する。接続部分30は、本質的に、大腿骨に接続された細長いシャフトである。転がり部分32は、凹状半円湾曲を有し、接続部分30に取り付けられている。
【0045】
図4は、本開示による膝関節インプラント補強材8の側面図を示している。膝関節インプラント補強材8は、第1の接触面14と、第1の接触面14に対向する第2の接触面16と、第1の接触面14の縁を第2の接触面16の縁に接続する側方面18と、を有する。さらに、膝関節インプラント補強材8は、第1の接触面14及び/又は第2の接触面16に対して垂直な軸36を有する。側方面部分20が、膝関節インプラント補強材8の埋設された状態において、膝蓋骨位置に配置されており、側方面部分20は、脛骨2の髄管の長手方向軸12に対して0°に等しくない閉鎖角αで角度を付けられている。第1の接触面14と膝蓋骨側方面部分20との間の角度βは、90°よりも大きい。
【0046】
即ち、膝関節インプラント補強材8の軸36と膝蓋骨側方面部分20との間の角度は、好ましくは0°よりも大きい。軸36は、それぞれ、第1の接触面14及び第2の接触面16に対する法線ベクトルである。よって、膝蓋骨側方面部分20は、先行技術と比較して、脛骨2と第2の接触面16との間の支持面を増大させる。このことは、膝関節インプラント補強材8の、脛骨2とのより良好な接続を可能にする。側方面18の、角度付けられた膝蓋骨側方面部分20とは反対側の別の部分にも、角度が付いている。これら2つの角度を付けられた部分は、同じ閉鎖角を有してもよい。
【0047】
図5は、本開示による膝関節インプラント補強材8の等角図を示している。膝関節インプラント補強材8は、連続した円形又は楕円形の表面又はプレートを有しておらず、ほぼU字形状又は馬蹄形状である。膝関節インプラント補強材8は、脛骨シャフト26と、可能性として(強化)翼状部28(
図7に図示)と、を受け入れるように適合及び準備された細長いノッチ38を有する。膝関節インプラント補強材8は、中心部分40と、埋設された状態において当該中心部分からノッチ38に沿って側方に延在する2つの脚部42と、を有する。角度を付けられた膝蓋骨側方面部分20は、埋設された状態において膝蓋骨位置に配置された脚部42上に形成されている。
【0048】
側方面18は、少なくとも部分的に、2つの接触面14及び16に対して垂直に配向されていない。側方面18のこれらの部分は、U字形状の膝関節インプラント補強材8の中心部分40に、及び、前側の後方に、位置決めされており、当該これらの部分には、膝関節インプラント補強材8の埋設された状態において、長手方向軸36を基準として角度が付いている。それにより、第1の接触面14は、断面において第2の接触面16を越えて突出している。よって、膝関節インプラント補強材8の形状は、脛骨2の形状に実質的に適合されている。膝関節インプラント補強材8は、ベースプレート12を経由する2つの穴44も有し、この穴44を経由して、膝関節インプラント補強材8は、脛骨要素6にねじ留めされる。
【0049】
図6は、膝関節インプラント補強材8の下面を示している。穴44は、膝関節インプラント補強材8の厚さ全体を経由して連続しており、第2の接触面16へ開放している。膝関節インプラント補強材8の下面又は第2の接触面16は、或る数の窪み46を有する。窪み46は、膝関節インプラント補強材8を脛骨2に精密に嵌合させるように適合されている。底面図では、側方面18が第2の接触面16を越えて側方部分及び後方部分において突出していることが示されている。
【0050】
図7は、膝関節インプラント補強材8を備えた脛骨要素6の側面図を示している。膝関節インプラント補強材8の第1の接触面14は、脛骨要素6のベースプレート22上に平坦に載置されている。脛骨シャフト26は、第2の接触面16から突出している。(強化)翼状部28は、脛骨シャフト26をベースプレート22に接続しており、膝関節インプラント補強材8のノッチ38内に受け入れられている。膝蓋骨側方面部分20は、脛骨シャフト26の長手方向軸48を基準として0°に等しくない閉鎖角で角度を付けられている。
【符号の説明】
【0051】
1…膝関節インプラント、2…脛骨、4…大腿骨要素、6…脛骨要素、8…膝関節インプラント補強材、10…インレイ、12…髄管の長手方向軸、14…第1の接触面、16…第2の接触面、18…側方面、20…角度が付いた(膝蓋骨)側方面部分、22…ベースプレート、24…受容構造、26…脛骨シャフト、28…(強化)翼状部、30…接続部分、32…転がり部分、36…膝関節インプラント補強材の軸、38…ノッチ、40…中心部分、42…脚部、44…穴/内腔、46…窪み、48…脛骨シャフトの長手方向軸、α…閉鎖角、β…角度が付いた(膝蓋骨)側方面部分と第1の接触面との間の角度。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋設された状態において、膝関節インプラントと脛骨との間に配置されるように構成された膝関節インプラント補強材であって、
前記埋設された状態において、前記膝関節インプラント上に少なくとも部分的に平坦に載置されるように構成された第1の接触面と、
前記埋設された状態において、前記第1の接触面の反対側に位置しているとともに、前記脛骨上に少なくとも部分的に平坦に載置されるように構成された第2の接触面と、
前記第1の接触面の縁を前記第2の接触面の縁に接続する側方面と、を備え、
前記側方面は、前記側方面の部分が、前記膝関節インプラント補強材の前記埋設された状態において膝蓋骨位置に配置されるとともに、膝蓋骨方向において、前記第1の接触面から始まる、前記第1の接触面に垂直な軸に対して0°よりも大きい閉鎖角で角度を付けられるように、構成されていることを特徴とする、
膝関節インプラント補強材。
【請求項2】
前記膝蓋骨側方面部分は、前記膝関節インプラント補強材の前記埋設された状態において、前記脛骨の髄管の長手方向軸に対して0°よりも大きい閉鎖角で角度を付けられていることを特徴とする、請求項1に記載の膝関節インプラント補強材。
【請求項3】
前記第1の接触面は、前記膝関節インプラント補強材の前記埋設された状態において、近位方向を指していることを特徴とする、請求項1に記載の膝関節インプラント補強材。
【請求項4】
前記膝関節インプラント補強材の前記埋設された状態において、前記第1の接触面と前記膝蓋骨側方面部分との間の角度が、90°よりも大きく、それにより、前記膝蓋骨側方面部分により覆われた先端部が、前記第1の接触面の基底面を越えて延在することを特徴とする、請求項1に記載の膝関節インプラント補強材。
【請求項5】
前記膝関節インプラント補強材の前記埋設された状態において、前記第2の接触面と前記膝蓋骨側方面部分との間の角度が、90°未満であることを特徴とする、請求項1に記載の膝関節インプラント補強材。
【請求項6】
前記膝蓋骨側方面部分が、前記膝関節インプラント補強材の脚部に位置決めされていることを特徴とする、請求項1に記載の膝関節インプラント補強材。
【請求項7】
前記脚部は、前記膝関節インプラント補強材の前記埋設された状態において、膝蓋骨位置にあることを特徴とする、請求項1に記載の膝関節インプラント補強材。
【請求項8】
前記膝関節インプラント補強材における細長いノッチが、前記膝関節インプラントの強化翼状部を受け入れるように準備及び構成されており、前記膝蓋骨側方面部分が、前記ノッチの長手方向範囲に対して実質的に平行に延在することを特徴とする、請求項1に記載の膝関節インプラント補強材。
【請求項9】
膝関節インプラントであって、
大腿骨要素と、
ベースプレートと、前記ベースプレートから延在するシャフトと、を備える脛骨要素と、
膝関節インプラント補強材と、を備え、
前記膝関節インプラント補強材が、
前記ベースプレートに対して少なくとも部分的に平坦に載置される第1の接触面と、
前記第1の接触面の反対側に位置しているとともに、前記膝関節インプラントの埋設された状態において、脛骨上に少なくとも部分的に平坦に載置可能であるように構成された、第2の接触面と、
前記第1の接触面の縁を前記第2の接触面の縁に接続する側方面と、を有し、
前記側方面は、前記側方面の部分が、前記膝関節インプラントの前記埋設された状態において膝蓋骨位置に配置されるとともに、前記シャフトの長手方向軸に対して0°よりも大きい閉鎖角で角度を付けられるように、形成されていることを特徴とする、
膝関節インプラント。
【請求項10】
前記第2の接触面と前記側方面の前記部分との間の閉鎖角が、90°未満であることを特徴とする、請求項9に記載の膝関節インプラント。
【請求項11】
前記第1の接触面が、前記ベースプレートの形状に少なくとも部分的に対応することを特徴とする、請求項9に記載の膝関節インプラント。
【請求項12】
前記第2の接触面が、前記脛骨の外方輪郭に少なくとも部分的に対応するように構成されている、請求項9に記載の膝関節インプラント。
【請求項13】
前記第1の接触面と前記側方面の前記部分との間の閉鎖角が、90°よりも大きいことを特徴とする、請求項9に記載の膝関節インプラント。
【請求項14】
前記脛骨要素が、前記ベースプレートと前記シャフトとの間に延在する強化翼状部を備えていることを特徴とする、請求項9に記載の膝関節インプラント。
【外国語明細書】