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特開2024-45085接着性フィルム、及び、電子部品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045085
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】接着性フィルム、及び、電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/30 20180101AFI20240326BHJP
   C09J 179/04 20060101ALI20240326BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20240326BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20240326BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240326BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C09J7/30
C09J179/04
C09J11/08
C08G73/10
H01L21/304 622J
H01L21/68 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023156022
(22)【出願日】2023-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2022150428
(32)【優先日】2022-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】大同 和泉
(72)【発明者】
【氏名】高橋 駿夫
(72)【発明者】
【氏名】森(山澤) 千恵子
(72)【発明者】
【氏名】西海 由季
(72)【発明者】
【氏名】林 聡史
(72)【発明者】
【氏名】七里 徳重
(72)【発明者】
【氏名】岡山 久敏
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
4J043
5F057
5F131
【Fターム(参考)】
4J004AA11
4J004AB06
4J004DB02
4J004EA05
4J004FA08
4J040EH031
4J040EK032
4J040JA09
4J040JB08
4J040LA06
4J040LA08
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4J040MA10
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4J040MB09
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4J040PA20
4J040PA42
4J043PA02
4J043PA05
4J043PC015
4J043PC016
4J043PC145
4J043PC146
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4J043RA07
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5F131EC32
5F131EC42
5F131EC63
5F131EC64
5F131EC73
(57)【要約】
【課題】高温で長時間加熱する場合でも加熱中のボイドの発生を抑制することができる接着性フィルムを提供する。また、該接着性フィルムを用いた電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂組成物を含む接着性フィルムであって、前記接着性フィルムの100℃におけるシリコンウエハに対する粘着力をXN/inchとし、前記樹脂組成物の応力緩和率をY%とし、20cm角に切り出した前記接着性フィルムについて、中心から各辺に向かって2.5cm毎に厚みを測定した時の最大厚みと最小厚みとの差をZμmとした場合、4<3/Z+0.1Y+10Xとなる接着性フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物を含む接着性フィルムであって、
前記接着性フィルムの100℃におけるシリコンウエハに対する粘着力をXN/inchとし、
前記樹脂組成物の応力緩和率をY%とし、
20cm角に切り出した前記接着性フィルムについて、中心から各辺に向かって2.5cm毎に厚みを測定した時の最大厚みと最小厚みとの差をZμmとした場合、
4<3/Z+0.1Y+10Xとなる
ことを特徴とする接着性フィルム。
【請求項2】
前記接着性フィルムの5%重量減少温度が350℃以上である請求項1記載の接着性フィルム。
【請求項3】
前記Xが0.01以上1.0以下である請求項1又は2記載の接着性フィルム。
【請求項4】
前記Yが10以上90以下である請求項1又は2記載の接着性フィルム。
【請求項5】
前記Zが0.01以上10以下である請求項1又は2記載の接着性フィルム。
【請求項6】
7.5<3/Z+0.1Y+10Xとなる請求項1又は2記載の接着性フィルム。
【請求項7】
前記樹脂組成物は、反応性樹脂を含有し、
前記反応性樹脂は、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂を含む請求項1又は2記載の接着性フィルム。
【請求項8】
前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂は、下記式(1)で表される構成単位を有する請求項7記載の接着性フィルム。
【化1】
式(1)中、Pは、芳香族基を表し、Qは、置換又は非置換の直鎖状、分岐鎖状又は環状の脂肪族基を表す。
【請求項9】
前記反応性樹脂は、マレイミド基を有する化合物を含む請求項7記載の接着性フィルム。
【請求項10】
前記マレイミド基を有する化合物は、ビスマレイミド化合物、又は、マレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂である請求項9記載の接着性フィルム。
【請求項11】
前記樹脂組成物は、更に、シリコーン化合物又はフッ素化合物を含有する請求項7記載の接着性フィルム。
【請求項12】
前記接着性フィルムは、仮固定材として用いられる請求項1又は2記載の接着性フィルム。
【請求項13】
請求項1又は2記載の接着性フィルムを用いた電子部品の製造方法。
【請求項14】
前記接着性フィルムに電子部品を仮固定する仮固定工程と、前記接着性フィルムを硬化する硬化工程と、前記電子部品に熱処理を行う熱処理工程と、前記接着性フィルムから前記電子部品を剥離する剥離工程とを含む請求項13記載の電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着性フィルムに関する。また、本発明は、該接着性フィルムを用いた電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体等の電子部品の加工時においては、電子部品の取扱いを容易にし、破損したりしないようにするために、粘着剤組成物からなる仮固定材を介して電子部品を支持板に固定したり、粘着剤層を有する粘着テープを電子部品に貼付したりして保護することが行われている。例えば、高純度なシリコン単結晶等から切り出した厚膜ウエハを所定の厚さにまで研削して薄膜ウエハとする場合に、粘着剤組成物を介して厚膜ウエハを支持板に接着することが行われる。
【0003】
このように電子部品に用いる粘着剤組成物や粘着テープには、加工工程中に電子部品を強固に固定できるだけの高い接着性とともに、工程終了後には電子部品を損傷することなく剥離できることが求められる(以下、「高接着易剥離」ともいう。)。
高接着易剥離の実現手段として、例えば、特許文献1には、ポリマーの側鎖又は主鎖に放射線重合性官能基を有する多官能性モノマー又はオリゴマーが結合された粘着剤を用いた粘着シートが開示されている。放射線重合性官能基を有することで紫外線照射によりポリマーが硬化することを利用して、剥離時に紫外線を照射することにより粘着力が低下して、糊残りなく剥離することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-32946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子部品の高性能化に伴い、電子部品に種々の加工を施す工程が行われるようになってきた。例えば、電子部品の表面にスパッタリングにより金属薄膜を形成する工程では、高温に加熱して加工を行うことにより、より導電性に優れた金属薄膜を形成することができる。特に近年、加熱工程が高温かつ長時間化しており、従来の接着フィルム等の仮固定材を用いた場合、加熱工程中にボイドが発生し、仮固定材が剥離することがあった。
【0006】
本発明は、高温で長時間加熱する場合でも加熱中のボイドの発生を抑制することができる接着性フィルムを提供することを目的とする。また、本発明は、該接着性フィルムを用いた電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示1は、樹脂組成物を含む接着性フィルムであって、上記接着性フィルムの100℃におけるシリコンウエハに対する粘着力をXN/inchとし、上記樹脂組成物の応力緩和率をY%とし、20cm角に切り出した上記接着性フィルムについて、中心から各辺に向かって2.5cm毎に厚みを測定した時の最大厚みと最小厚みとの差をZμmとした場合、4<3/Z+0.1Y+10Xとなる接着性フィルムである。
本開示2は、上記接着性フィルムの5%重量減少温度が350℃以上である本開示1の接着性フィルムである。
本開示3は、上記Xが0.01以上1.0以下である本開示1又は2の接着性フィルムである。
本開示4は、上記Yが10以上90以下である本開示1、2又は3の接着性フィルムである。
本開示5は、上記Zが0.01以上10以下である本開示1、2、3又は4の接着性フィルムである。
本開示6は、7.5<3/Z+0.1Y+10Xとなる本開示1、2、3、4又は5の接着性フィルムである。
本開示7は、上記樹脂組成物は、反応性樹脂を含有し、上記反応性樹脂は、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂を含む本開示1、2、3、4、5又は6の接着性フィルムである。
本開示8は、上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂は、下記式(1)で表される構成単位を有する本開示7の接着性フィルムである。
本開示9は、上記反応性樹脂は、マレイミド基を有する化合物を含む本開示7又は8の接着性フィルムである。
本開示10は、上記マレイミド基を有する化合物は、ビスマレイミド化合物、又は、マレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂である本開示9の接着性フィルムである。
本開示11は、上記樹脂組成物は、更に、シリコーン化合物又はフッ素化合物を含有する本開示7、8、9又は10の接着性フィルムである。
本開示12は、上記接着性フィルムは、仮固定材として用いられる本開示1、2、3、4、5、6、7、8,9、10又は11の接着性フィルムである。
本開示13は、本開示1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12の接着性フィルムを用いた電子部品の製造方法である。
本開示14は、上記接着性フィルムに電子部品を仮固定する仮固定工程と、上記接着性フィルムを硬化する硬化工程と、上記電子部品に熱処理を行う熱処理工程と、上記接着性フィルムから上記電子部品を剥離する剥離工程とを含む本開示13の電子部品の製造方法である。
【0008】
【化1】
【0009】
式(1)中、Pは、芳香族基を表し、Qは、置換又は非置換の直鎖状、分岐鎖状又は環状の脂肪族基を表す。
以下に本発明を詳述する。
【0010】
本発明者らは、樹脂組成物を含む接着性フィルムについて、接着性フィルムの粘着力、樹脂組成物の応力緩和率、及び、接着性フィルムの平坦性が一定の関係を満たすように調整することを検討した。その結果、高温で長時間加熱する場合でも加熱中のボイドの発生を抑制することができる接着性フィルムを得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明の接着性フィルムは、樹脂組成物を含む。
また、本発明の接着性フィルムは、上記接着性フィルムの100℃におけるシリコンウエハに対する粘着力をXN/inchとし、上記樹脂組成物の応力緩和率をY%とし、20cm角に切り出した上記接着性フィルムについて、中心から各辺に向かって2.5cm毎に厚みを測定した時の最大厚みと最小厚みとの差をZμmとした場合、4<3/Z+0.1Y+10Xとなる。
上記X、上記Y、及び、上記Zが、4<3/Z+0.1Y+10Xを満たす関係にあることにより、本発明の接着性フィルムは、高温で長時間加熱する場合でも加熱中のボイドの発生を抑制することができるものとなる。上記X、上記Y、及び、上記Zは、7.5<3/Z+0.1Y+10Xを満たす関係にあることが好ましい。
なお、上記接着性フィルムが後述するような硬化性を有する場合、上記接着性フィルムの硬化物の100℃におけるシリコンウエハに対する粘着力、及び、上記樹脂組成物の硬化物の応力緩和率が上記式を満たすことが好ましい。
【0012】
上記接着性フィルムの100℃におけるシリコンウエハに対する粘着力は、以下の方法により測定される。
即ち、まず、100℃ラミネーターにて、上記接着性フィルムをシリコンウエハに加熱ラミネートする。上記シリコンウエハとしては、厚みが700μmのベアシリコンウエハを用いることができ、上記真空ラミネーターとしては、Leon13DX(ラミーコーポレーション社製、速度メモリ5)を用いることができる。次いで、上記接着性フィルムが硬化性を有する場合は、接着性フィルムを硬化させる。接着性フィルムが光硬化性を有する場合、波長365nm、照射強度70mW/cmの紫外線を300秒間照射し硬化させる。接着性フィルムが熱硬化性を有する場合、オーブン中にて150℃で10分間加熱することにより接着性フィルムを硬化させる。必要に応じて接着性フィルムを硬化させた後、得られた接着性フィルムとシリコンウエハとの積層体に対して、引張試験機を用いて、ステージ温度100℃、引張角度30°、引張速度300mm/分の条件にてピール試験を行うことにより、シリコンウエハに対する粘着力を測定することができる。上記引張試験機としては、角度自在タイプ粘着・皮膜剥離解析装置VPA-2S(協和界面科学社製)を用いることができる。
【0013】
上記Xの好ましい下限は0.01、好ましい上限は1.0である。上記Xがこの範囲であることにより、得られる接着性フィルムが、加熱中のボイドの発生を抑制する効果により優れ、かつ、加熱後により容易に剥離することができるものとなる。上記Xのより好ましい下限は0.05、より好ましい上限は0.7である。
なお、上記Xは、樹脂組成物に含有される、後述する表面改質剤の含有量や、反応性樹脂の配合比を調整すること等により調整することができる。
【0014】
上記樹脂組成物の応力緩和率は、以下の方法により測定される。
即ち、まず、上記樹脂組成物が硬化性を有する場合は、樹脂組成物を硬化させる。樹脂組成物が光硬化性を有する場合、波長365nm、照射強度70mW/cmの紫外線を300秒間照射し硬化させる。樹脂組成物が熱硬化性を有する場合、オーブン中にて150℃で10分間加熱することにより樹脂組成物を硬化させる。必要に応じて樹脂組成物を硬化させた後、得られた樹脂組成物のサンプルを幅4mm、長さ25mmに切り出す。切り出した樹脂組成物の硬化物について、熱機械分析装置を用い、窒素雰囲気下でサンプル温度を300℃とし、治具間距離(サンプル長さ)9mm、変位0μmで30分静置した後、変位速度2000μm/分にて変位1000μmの負荷を加え、その後60分静置する。負荷を加えた時の最大応力に対する60分静置したときの応力の割合をA%として、下記式により、応力緩和率を求めることができる。上記熱機械分析装置としては、TMA-SS7100(日立ハイテクサイエンス社製、石英プローブ)を用いることができる。
応力緩和率(%)=100-A
なお、本発明の接着性フィルムが基材を有する場合、接着性フィルムが有する樹脂組成物を含有する接着層の硬化を行った後、硬化した接着層を基材から分離することによりサンプルを作製する。
【0015】
上記Yの好ましい下限は10、好ましい上限は90である。上記Yがこの範囲であることにより、得られる接着性フィルムが、加熱中のボイドの発生を抑制する効果により優れ、かつ、加熱後により容易に剥離することができるものとなる。上記Yのより好ましい下限は20、より好ましい上限は80である。
なお、上記Yは、樹脂組成物に含有される、反応性樹脂に含まれる後述するマレイミド基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂の構造や含有割合を調整することや、反応性樹脂の架橋点間距離を調整すること等により調整することができる。
【0016】
上記接着性フィルムの最大厚み及び最小厚みは、以下の方法により測定される。
即ち、まず、両面を離型フィルムで保護した状態の接着性フィルムを20cm角に切り出す。次いで、切り出した離型フィルム付き接着性フィルムについて、中心から各辺に向かって2.5cm毎に厚みを測定する。また、別途離型フィルムの厚みを測定し、離型フィルム付き接着性フィルムについて測定された各厚みの値から離型フィルムの厚みを差し引いた値を接着性フィルムの厚みとする。得られた接着性フィルムの厚みのうち、最大値を接着性フィルムの最大厚みとし、最小値を接着性フィルムの最小厚みとする。上記厚みの測定には、デジマチックインジケータID-H(ミツトヨ社製)を用いることができる。
【0017】
上記Zの好ましい下限は0.01、好ましい上限は10である。上記Zがこの範囲であることにより、得られる接着性フィルムが、加熱中のボイドの発生を抑制する効果により優れ、かつ、加熱後により容易に剥離することができるものとなる。上記Zのより好ましい下限は0.1、より好ましい上限は7.5である。
なお、上記Zは、接着性フィルム作製時に用いる接着性フィルムが含む樹脂組成物溶液の濃度を調整すること、接着性フィルムを構成する樹脂組成物溶液を塗工する方法を調整することにより調整することができる。
【0018】
上記接着性フィルムは、5%重量減少温度の好ましい下限が350℃である。上記接着性フィルムの5%重量減少温度が350℃以上であることにより、得られる接着性フィルムが耐熱性により優れるものとなる。上記接着性フィルムの5%重量減少温度のより好ましい下限は380℃、更に好ましい下限は400℃である。
また、上記接着性フィルムの5%重量減少温度の好ましい上限は特にないが、実質的な上限は600℃程度である。
なお、上記接着性フィルムが後述するような硬化性を有する場合、上記接着性フィルムの硬化物の5%重量減少温度が上記範囲であることが好ましい。
上記5%重量減少温度は、示差熱熱重量同時測定装置により測定することができる。具体的には、以下の方法により測定することができる。
即ち、まず、接着性フィルムが硬化性を有する場合、接着性フィルムを硬化させる。接着性フィルムが光硬化性を有する場合、接着性フィルムに波長365nm、照射強度70mW/cmの紫外線を300秒間照射し、硬化させる。接着性フィルムが熱硬化性を有する場合、オーブン中にて150℃で10分間加熱することにより接着性フィルムを硬化させる。必要に応じて接着性フィルムを硬化させた後に、得られたサンプルをアルミパンに秤取する。次いで、該アルミパンを示差熱熱重量同時測定装置にセットし、窒素雰囲気下で30℃から500℃まで10℃/分の昇温速度で昇温した際に、昇温前と比較して接着性フィルムの重量が5%減少した時点の温度を5%重量減少温度として得ることができる。上記示差熱熱重量同時測定装置としては、STA7200RV(日立ハイテクサイエンス社製)を用いることができる。
【0019】
上記樹脂組成物は、反応性樹脂を含有することが好ましい。
上記反応性樹脂は、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂を含むことが好ましい。上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂は、イミド骨格を有することによって極めて耐熱性に優れ、300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても主鎖の分解が起こり難い。このため、上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂を含む反応性樹脂を含有することにより、得られる接着性フィルムは、高温加工処理中は支持体との間のボイド及び浮きの発生を抑えることができる。また、接着性フィルムを仮固定材として用いる場合、高温加工処理後に被着体に対して接着亢進を起こしたり、被着体との剥離時に糊残りが発生したりすることを防止することができる。
【0020】
上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂は、上記式(1)で表される構成単位を有することが好ましい。
【0021】
上記式(1)中、Pは、炭素数5以上50以下の芳香族基であることが好ましい。上記Pが炭素数5以上50以下の芳香族基であることにより、得られる接着性フィルムが耐熱性により優れるものとなる。即ち、高温加工処理中は支持体との間のボイド及び浮きの発生をより抑えることができ、また、接着性フィルムを仮固定材として用いる場合、高温加工処理後に被着体に対して接着亢進を起こしたり、被着体との剥離時に糊残りが発生したりすることをより防止することができる。
【0022】
上記式(1)中、Qは、置換又は非置換の直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数2以上100以下の脂肪族基であることが好ましい。上記Qが置換又は非置換の直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数2以上100以下の脂肪族基であることにより、得られる接着性フィルムが光透過性により優れるものとなる。また、得られる接着性フィルムが柔軟性により優れるものとなり、凹凸を有する被着体に対して高い追従性を発揮でき、また、接着性フィルムを仮固定材として用いる場合、剥離時により容易に剥離することができるものとなる。
また、上記Qは、ジアミン化合物に由来する脂肪族基であることが好ましい。なかでも、光透過性、柔軟性、及び、上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂の溶媒や他の成分との相溶性の観点から、上記Qは、ダイマージアミンに由来する脂肪族基であることが好ましい。
上記ダイマージアミンとは、不飽和脂肪酸の2量体として得られる環式及び非環式ダイマー酸を、還元しアミノ化して得られるジアミン化合物であり、例えば、直鎖型、単環型、多環型等のダイマージアミンが挙げられる。上記ダイマージアミンは、炭素-炭素二重結合を含んでいてもよいし、水素が付加した水素添加物であってもよい。
【0023】
上記ダイマージアミンに由来する脂肪族基としては、例えば、下記式(2-1)で表される基、下記式(2-2)で表される基、下記式(2-3)で表される基、及び、下記式(2-4)で表される基からなる群より選択される少なくとも1種の基が好ましい。なかでも、下記式(2-2)で表される基がより好ましい。
【0024】
【化2】
【0025】
式(2-1)~(2-4)中、R~R16は、それぞれ独立して、直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表し、*は結合手を表す。結合手*は、上記式(1)中のNと結合する。
【0026】
上記一般式(2-1)~(2-4)中、R~R16で表される炭化水素基は、飽和炭化水素基であってもよいし、不飽和炭化水素基であってもよい。なかでも、RとR、RとR、RとR、RとR、RとR10、R11とR12、R13とR14、及び、R15とR16の炭素数の合計が7以上50以下であることが好ましい。上記炭素数の合計が上記範囲内であることにより、得られる接着性フィルムが、光透過性及び柔軟性により優れるものとなり、かつ、上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂の溶媒や他の成分との相溶性にもより優れるものとなる。上記炭素数の合計は、より好ましくは9以上、更に好ましくは12以上、更により好ましくは14以上である。上記炭素数の合計は、より好ましくは35以下、更に好ましくは25以下、更により好ましくは18以下である。
【0027】
上記式(2-1)で表される基、上記式(2-2)で表される基、上記式(2-3)で表される基、及び、上記式(2-4)で表される基において光学異性は特に限定されず、いずれの光学異性も含む。
【0028】
上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂は、マレイミド基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂を含むことが好ましく、炭素―炭素二重結合を有する重合性官能基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂を含むことが更に好ましい。
【0029】
上記マレイミド基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂は、重量平均分子量が2万以上200万以下であることが好ましい。上記マレイミド基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂の重量平均分子量が2万以上であることにより、得られる接着性フィルムが耐熱性により優れるものとなる。即ち、高温加工処理中は支持体との間のボイド及び浮きの発生をより抑えることができ、また、接着性フィルムを仮固定材として用いる場合、高温加工処理後に被着体に対して接着亢進を起こしたり、被着体との剥離時に糊残りが発生したりすることをより防止することができる。上記マレイミド基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂の重量平均分子量が200万以下であることにより、上記マレイミド基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂が溶媒や他の成分との相溶性により優れるものとなる。上記マレイミド基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂の重量平均分子量のより好ましい下限は4万、より好ましい上限は60万、更に好ましい下限は5万、更に好ましい上限は30万である。
なお、本明細書において、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法によりポリスチレン換算分子量として測定される。具体的には例えば、APCシステム(ウォーターズ社製)を用いて、移動相THF、流量1.0mL/min、カラム温度40℃、サンプル濃度0.2質量%、RI・PDA検出器の条件で測定することができる。上記カラムとしては、HR-MB-M 6.0×150mm(ウォーターズ社製)等を用いることができる。
【0030】
上記マレイミド基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂としては、具体的には例えば、上記式(1)で表される構成単位を有し、両末端にマレイミド基を有さない官能基を有する樹脂等が挙げられる。
【0031】
上記式(1)で表される構成単位を有し、両末端にマレイミド基を有さない官能基を有する樹脂は、下記式(3)で表される構成単位を有していてもよい。
【0032】
【化3】
【0033】
式(3)中、Pは、芳香族基を表し、Qは、置換又は非置換の芳香族構造を有する基を表す。
【0034】
上記式(3)中、Pは、炭素数5以上50以下の芳香族基であることが好ましい。上記Pが炭素数5以上50以下の芳香族基であることにより、得られる接着性フィルムが耐熱性により優れるものとなる。即ち、高温加工処理中は支持体との間のボイド及び浮きの発生をより抑えることができ、また、接着性フィルムを仮固定材として用いる場合、高温加工処理後に被着体に対して接着亢進を起こしたり、被着体との剥離時に糊残りが発生したりすることをより防止することができる。
【0035】
上記式(3)中、Qは、置換又は非置換の炭素数5以上50以下の芳香族構造を有する基であることが好ましい。上記Qが置換又は非置換の炭素数5以上50以下の芳香族構造を有する基であることにより、得られる接着性フィルムが耐熱性により優れるものとなる。即ち、高温加工処理中は支持体との間のボイド及び浮きの発生をより抑えることができ、また、接着性フィルムを仮固定材として用いる場合、高温加工処理後に被着体に対して接着亢進を起こしたり、被着体との剥離時に糊残りが発生したりすることをより防止することができる。
【0036】
上記マレイミド基を有さない官能基としては、例えば、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、酸無水物基、アミノ基等が挙げられる。具体的には、上記マレイミド基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂の原料となる酸無水物やジアミン化合物の未反応の片末端構成基等が挙げられる。
上記式(1)で表される構成単位を有し、両末端にマレイミド基を有さない官能基を有する樹脂が、両末端に有するマレイミド基を有さない官能基は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0037】
上記式(1)で表される構成単位を有し、両末端にマレイミド基を有さない官能基を有する樹脂における上記式(1)で表される構成単位の含有割合は、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上であり、好ましくは90モル%以下、より好ましくは80モル%以下である。
上記式(1)で表される構成単位を有し、両末端にマレイミド基を有さない官能基を有する樹脂が上記式(3)で表される構成単位を有する場合、上記式(3)で表される構成単位の含有割合は、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上、更に好ましくは20モル%以上であり、好ましくは50モル%以下、より好ましくは30モル%以下である。
上記式(1)で表される構成単位及び上記式(3)で表される構成単位において、それぞれの構成単位の含有量が上記範囲内であることにより、得られる接着性フィルムが、高温加工処理中は支持体との間のボイド及び浮きの発生をより抑えることができ、また、被着体との剥離時により容易に剥離することができるものとなる。
なお、上記式(1)で表される構成単位及び上記式(3)で表される構成単位は、それぞれの構成単位が連続して配列したブロック成分からなるブロック構造を有していてもよいし、それぞれの構成単位がランダムに配列したランダム構造を有していてもよい。
【0038】
上記マレイミド基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂を製造する方法としては、例えば、ジアミン化合物と芳香族酸無水物とを反応させる方法等が挙げられる。
【0039】
上記ジアミン化合物としては、脂肪族ジアミン化合物又は芳香族ジアミン化合物のいずれも用いることができる。
上記ジアミン化合物として脂肪族ジアミン化合物を用いることにより、得られる接着性フィルムが光透過性により優れるものとなる。また、得られる接着性フィルムが柔軟性により優れるものとなり、凹凸を有する被着体に対して高い追従性を発揮でき、接着性フィルムを仮固定材として用いる場合、剥離時により容易に剥離することができるものとなる。
また、上記ジアミン化合物として芳香族ジアミン化合物を用いることにより、得られる接着性フィルムが耐熱性により優れるものとなる。
上記ジアミン化合物は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0040】
上記脂肪族ジアミン化合物としては、例えば、1,10-ジアミノデカン、1,12-ジアミノドデカン、ダイマージアミン、1,2-ジアミノ-2-メチルプロパン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノメンタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、3,3’-ジアミノ-N-メチルジプロピルアミン、ジアミノマレオニトリル、1,3-ジアミノペンタン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン、3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ(5.2.1.02,6)デカン等が挙げられる。
【0041】
上記脂肪族ジアミン化合物のなかでも、光透過性、柔軟性、及び、上記マレイミド基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂の溶媒や他の成分との相溶性の観点から、ダイマージアミンが好ましい。上記ダイマージアミンとしては、具体的には例えば、上述した式(2-1)で表される基、式(2-2)で表される基、式(2-3)で表される基、及び、式(2-4)で表される基からなる群より選択される少なくとも1種の基を構成することのできるダイマージアミン等が挙げられる。
【0042】
上記芳香族ジアミン化合物としては、例えば、9,10-ジアミノフェナントレン、4,4’-ジアミノオクタフルオロビフェニル、3,7-ジアミノ-2-メトキシフルオレン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,4-ジアミノベンゾフェノン、3,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノアントラキノン、2,6-ジアミノトルエン、2,3-ジアミノトルエン、1,8-ジアミノナフタレン、2,4-ジアミノトルエン、2,5-ジアミノトルエン、1,4-ジアミノアントラキノン、1,5-ジアミノアントラキノン、1,5-ジアミノナフタレン、1,2-ジアミノアントラキノン、2,4-クメンジアミン、1,3-ビスアミノメチルベンゼン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、2-クロロ-1,4-ジアミノベンゼン、1,4-ジアミノ-2,5-ジクロロベンゼン、1,4-ジアミノ-2,5-ジメチルベンゼン、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビストリフルオロメチルビフェニル、ビス(アミノ-3-クロロフェニ)エタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルフェニル)メタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジエチルフェニル)メタン、9,9’-ビス(4-アミノ-3-エチルフェニル)フルオレン、2,3-ジアミノナフタレン、2,3-ジアミノフェノール、ビス(4-アミノ-5-メチルフェニル)メタン、ビス(4-アミノ-3-メチルフェニル)メタン、ビス(4-アミノ-3-エチルフェニル)メタン、4,4’-ジアミノフェニルスルホン、3,3’-ジアミノフェニルスルホン、2,2-ビス(4-,(4アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、2,2-ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、4,4’-オキシジアニリン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-オキシジアニリン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメトキシビフェニル、Bisaniline M、Bisaniline P、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、o‐トリジンスルホン、メチレンビス(アントラニル酸)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)-2,2-ジメチルプロパン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)プロパン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ブタン、1,5-ビス(4-アミノフェノキシ)ブタン、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-フェニレンジアミン、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン、4,4’-ジアミノベンザニリド、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ポリオキシアルキレンジアミン類(例えば、HuntsmanのJeffamine D-230、D400、D-2000、D-4000等)、1,3-シクロヘキサンビス(メチルアミン)、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン等が挙げられる。
【0043】
上記芳香族酸無水物としては、例えば、ピロメリット酸、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,4,5-ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸、4,4’-スルホニルジフタル酸、1-トリフルオロメチル-2,3,5,6-ベンゼンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル、ベンゼン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、2,3,2’,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、フェナンスレン-1,8,9,10-テトラカルボン酸、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸、チオフエン-2,3,4,5-テトラカルボン酸、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)-ビス(フタル酸)等のカルボン酸の無水物が挙げられる。
【0044】
上記反応性樹脂100質量部中における上記マレイミド基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂の含有量の好ましい下限は10質量部、好ましい上限は90質量部である。上記マレイミド基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂の含有量がこの範囲内であることにより、得られる接着性フィルムを仮固定材として用いる場合、が、被着体からの剥離時により容易に剥離することができるものとなる。剥離性を更に高める観点から、上記マレイミド基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂の含有量のより好ましい下限は20質量部、より好ましい上限は80質量部である。
【0045】
上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂は、炭素-炭素二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂を含むことが好ましい。上記炭素-炭素二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂を含むことにより、得られる接着性フィルムが、光の照射等によりその全体が均一にかつ速やかに重合架橋し、弾性率が上昇することにより粘着力が大きく低下するものとなる。このため、接着亢進を起こしたり、剥離時に糊残りが発生したりすることをより防止することができる。
上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂が上記マレイミド基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂を含む場合は、上記マレイミド基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂に加えて、更に、上記炭素-炭素二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂を含むことが好ましい。
【0046】
上記炭素-炭素二重結合を有する官能基としては、例えば、置換されていてもよいマレイミド基、シトラコンイミド基、ビニルエーテル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。なかでも、より高い耐熱性が得られることから、置換されていてもよいマレイミド基が好ましい。なお、芳香環に含まれる炭素-炭素二重結合は、上記炭素-炭素二重結合を有する官能基の該炭素-炭素二重結合としては扱わない。
なお、本明細書において、上記(メタ)アクリロイルは、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。
【0047】
上記炭素-炭素二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂は、炭素-炭素二重結合を有する官能基の官能基当量(重量平均分子量/炭素-炭素二重結合を有する官能基の数)が4000以下であることが好ましい。上記炭素-炭素二重結合を有する官能基の官能基当量が4000以下であることにより、得られる接着性フィルムが耐熱性により優れるものとなる。これは、樹脂の分子中に一定以上の密度で炭素-炭素二重結合を有する官能基を有することにより、架橋間距離が短くなることによって、接着亢進がより抑えられるためと考えられる。上記炭素-炭素二重結合を有する官能基の官能基当量は、3000以下であることがより好ましく、2000以下であることが更に好ましい。
また、上記炭素-炭素二重結合を有する官能基の官能基当量の好ましい下限は特にないが、実質的な下限は600程度である。
【0048】
上記炭素-炭素二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂は、重量平均分子量が1000以上10万以下であることが好ましい。上記炭素-炭素二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂の重量平均分子量が1000以上であることにより、得られる接着性フィルムの成膜が容易となるとともに、得られる接着性フィルムがある程度の柔軟性を発揮することから、凹凸を有する被着体に対して高い追従性を発揮できるとともに、接着性フィルムを仮固定材として用いる場合は、剥離時により容易に剥離することができる。上記炭素-炭素二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂の重量平均分子量が10万以下であることにより、上記炭素-炭素二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂の溶媒への溶解度が低くなりすぎることを防ぐことができる。上記炭素-炭素二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂の重量平均分子量は1500以上5万以下であることがより好ましく、2000以上2万未満であることが更に好ましい。
【0049】
上記炭素-炭素二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂において、炭素-炭素二重結合を有する官能基は、側鎖又は末端のいずれにあってもよいが、両末端に存在することが好ましく、両末端に加えて更に側鎖にも存在することがより好ましい。
上記炭素-炭素二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂の両末端における炭素-炭素二重結合を有する官能基は反応性が高く、光の照射等により上記接着性フィルムをより充分に硬化させることができる。この結果、接着亢進を起こしたり、剥離時に糊残りが発生したりするのをより防止することができる。
更に、上記炭素-炭素二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂の側鎖に炭素-炭素二重結合を有する官能基が存在することにより、得られる接着性フィルムが耐熱性により優れるものとなる。これは、架橋間距離が短くなることによって、接着亢進がより抑えられるためと考えられる。また、上記炭素-炭素二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂の側鎖に炭素-炭素二重結合を有する官能基が存在することにより、上記重量平均分子量を1000以上としながら、上記官能基当量を4000以下に調整することが容易となる。これにより、上記接着性フィルムが充分な初期粘着力を有し、接着性フィルムを仮固定材として用いる場合には、更に、接着亢進を起こしたり、剥離時に糊残りが発生したりするのをより防止することができる。
【0050】
上述したように、上記炭素-炭素二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂において、炭素-炭素二重結合を有する官能基は側鎖又は末端のいずれにあってもよい。側鎖又は末端のいずれかが炭素-炭素二重結合を有する官能基以外の官能基(炭素-炭素二重結合を有さない官能基)である場合、該炭素-炭素二重結合を有さない官能基としては、例えば、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、酸無水物基、アミノ基等が挙げられる。具体的には、上記炭素-炭素二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂の原料となる酸無水物、ジアミン化合物の未反応の片末端構成基等が挙げられる。上記炭素-炭素二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂が、側鎖又は末端に上記炭素-炭素二重結合を有さない官能基を2以上有する場合、それぞれの炭素-炭素二重結合を有さない官能基は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0051】
上記炭素-炭素二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂としては、具体的には例えば、上記式(1)で表される構成単位を有し、末端及び側鎖の少なくともいずれかに炭素-炭素二重結合を有する官能基を有する樹脂等が挙げられる。
【0052】
上記式(1)で表される構成単位を有し、末端及び側鎖の少なくともいずれかに炭素-炭素二重結合を有する官能基を有する樹脂は、下記式(4-1)で表される構成単位及び下記式(4-2)で表される構成単位からなる群より選択される少なくとも1種の構成単位を有していてもよい。
【0053】
【化4】
【0054】
式(4-1)中、Pは、芳香族基を表し、Qは、置換又は非置換の芳香族構造を有する基を表し、式(4-2)中、Pは、芳香族基を表し、Rは、置換又は非置換の分岐鎖状の脂肪族基又は芳香族基を表し、Xは、炭素-炭素二重結合を有する官能基を表す。
【0055】
上記式(4-1)中のP及び上記式(4-2)中のPは、炭素数5~50の芳香族基であることが好ましい。上記P及びPが炭素数5~50の芳香族基であることにより、得られる接着性フィルムが耐熱性により優れるものとなる。即ち、高温加工処理中は支持体との間のボイド及び浮きの発生をより抑えることができ、また、接着性フィルムを仮固定材として用いる場合、高温加工処理後に被着体に対して接着亢進を起こしたり、被着体との剥離時に糊残りが発生したりすることをより防止することができる。
【0056】
上記式(4-1)中、Qは、置換又は非置換の炭素数5~50の芳香族構造を有する基であることが好ましい。上記Qが置換又は非置換の炭素数5~50の芳香族構造を有する基であることにより、得られる接着性フィルムが耐熱性により優れるものとなる。即ち、高温加工処理中は支持体との間のボイド及び浮きの発生をより抑えることができ、また、接着性フィルムを仮固定材として用いる場合、高温加工処理後に被着体に対して接着亢進を起こしたり、被着体との剥離時に糊残りが発生したりすることをより防止することができる。
【0057】
上記式(4-2)中、Rは、置換又は非置換の分岐鎖状の炭素数2~100の脂肪族基又は芳香族基であることが好ましい。上記Rが置換又は非置換の分岐鎖状の炭素数2~100の脂肪族基又は芳香族基であることにより、得られる接着性フィルムが柔軟性により優れるものとなり、凹凸を有する被着体に対して高い追従性を発揮できるとともに、接着性フィルムを仮固定材として用いる場合、剥離時により容易に剥離することができる。
【0058】
上記式(4-2)中、Rは、芳香族エステル基又は芳香族エーテル基を有する芳香族基であって、該Rにおける該芳香族エステル基又は該芳香族エーテル基は、Xと結合していることが好ましい。
ここで、「芳香族エステル基」とは、芳香族環にエステル基が直接結合した基を意味し、「芳香族エーテル基」とは、芳香族環にエーテル基が直接結合した基を意味する。このようにエステル基やエーテル基に結合する部分を芳香族基にすることにより、得られる接着性フィルムが耐熱性により優れるものとなる。即ち、高温加工処理中はボイド及び浮きの発生をより抑えることができ、また、接着性フィルムを仮固定材として用いる場合、高温加工処理後に被着体に対して接着亢進を起こしたり、被着体との剥離時に糊残りが発生したりすることをより防止することができる。一方、Xが芳香族エステル基又は芳香族エーテル基を介してRに結合することにより、X中の炭素-炭素二重結合がRと共役することがないことから、加熱又は光を照射したときの重合架橋を妨げることがない。
【0059】
上記式(1)で表される構成単位を有し、末端及び側鎖の少なくともいずれかに炭素-炭素二重結合を有する官能基を有する樹脂における上記式(1)で表される構成単位の含有割合は、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上であり、好ましくは90モル%以下、より好ましくは80モル%以下である。
上記式(1)で表される構成単位を有し、末端及び側鎖の少なくともいずれかに炭素-炭素二重結合を有する官能基を有する樹脂が上記式(4-1)で表される構成単位を有する場合、上記式(4-1)で表される構成単位の含有割合は、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上、更に好ましくは20モル%以上であり、好ましくは50モル%以下、より好ましくは30モル%以下である。
上記式(1)で表される構成単位を有し、末端及び側鎖の少なくともいずれかに炭素-炭素二重結合を有する官能基を有する樹脂が上記式(4-2)で表される構成単位を有する場合、上記式(4-2)で表される構成単位の含有割合は、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上であり、好ましくは50モル%以下、より好ましくは30モル%以下である。
上記式(1)で表される構成単位、上記式(4-1)で表される構成単位、及び、上記式(4-2)で表される構成単位において、それぞれの構成単位の含有量が上記範囲内であることにより、得られる接着性フィルムが、高温加工処理中は支持体との間のボイド及び浮きの発生をより抑えることができ、また、接着性フィルムを仮固定材として用いる場合、高温加工処理後に被着体との剥離時により容易に剥離することができるものとなる。
なお、上記式(1)で表される構成単位、上記式(4-1)で表される構成単位、及び、上記式(4-2)で表される構成単位は、それぞれの構成単位が連続して配列したブロック成分からなるブロック構造を有していてもよいし、それぞれの構成単位がランダムに配列したランダム構造を有していてもよい。
【0060】
上記炭素-炭素二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂を製造する方法としては、例えば、以下の方法等が挙げられる。
即ち、まず、ジアミン化合物と芳香族酸無水物とを反応させてイミド化合物を調製する。次いで、該イミド化合物の官能基に、該官能基と反応する官能基と炭素-炭素二重結合を有する官能基とを有する化合物(以下、「官能基含有不飽和化合物」ともいう)を反応させることにより、上記炭素-炭素二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂を得ることができる。
また、ジアミン化合物と芳香族酸無水物とを反応させてイミド化合物を調製し、更に、該イミド化合物の末端に、例えば、無水マレイン酸等を反応させることによっても、上記炭素-炭素二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂を得ることができる。
【0061】
上記炭素-炭素二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂を製造する方法に用いられるジアミン化合物及び芳香族酸無水物としては、上記マレイミド基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂を製造する方法に用いられるものと同様のものを用いることができる。
【0062】
上記官能基含有不飽和化合物としては、上記イミド化合物の末端又は側鎖の官能基に応じて選択して用いる。
例えば、上記イミド化合物の末端又は側鎖の官能基が水酸基である場合には、上記官能基含有不飽和化合物としては、カルボキシ基を有するマレイミド化合物、エーテル基を有するビニル化合物、グリシジル基を有するアリル化合物、グリシジル基を有するアリルエーテル化合物、グリシジル基を有するビニルエーテル化合物、イソシアネート基を有するアリル化合物、イソシアネート基を有する(メタ)アクリロイル化合物等が挙げられる。
また、例えば、上記イミド化合物の末端又は側鎖の官能基がカルボキシ基の場合には、上記官能基含有不飽和化合物としては、水酸基を有するアリル化合物、グリシジル基を有するアリル化合物、グリシジル基を有するアリルエーテル化合物、グリシジル基を有するビニルエーテル化合物等が挙げられる。
上記カルボキシ基を有するマレイミド化合物としては、例えば、酢酸マレイミド、マレイミドプロピオン酸、マレイミド酪酸、マレイミドヘキサン酸、trans-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸、19-マレイミド-17-オキソ-4,7,10,13-テトラオキサ-16-アザノナデカン酸等が挙げられる。
上記エーテル基を有するビニル化合物としては、例えば、ブチルビニルエーテル等が挙げられる。
上記グリシジル基を有するアリル化合物としては、例えば、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート等が挙げられる。
上記グリシジル基を有するアリルエーテル化合物としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、グリセリンジアリルモノグリシジルエーテル等が挙げられる。
上記グリシジル基を有するビニルエーテル化合物としては、例えば、グリシジルオキシエチルビニルエーテル、グリシジルオキシブチルビニルエーテル、グリシジルオキシヘキシルビニルエーテル、グリシジルジエチレングリコールビニルエーテル、グリシジルシクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル等が挙げられる。
上記イソシアネート基を有するアリル化合物としては、例えば、アリルイソシアネート等が挙げられる。
上記イソシアネート基を有する(メタ)アクリロイル化合物としては、例えば、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等が挙げられる。
上記水酸基を有するアリル化合物としては、例えば、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル等が挙げられる。
【0063】
上記反応性樹脂100質量部中における上記炭素-炭素二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂の含有量の好ましい下限は10質量部、好ましい上限は100質量部である。上記反応性樹脂100質量部中における上記炭素-炭素二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂の含有量がこの範囲内であることにより、上記接着性フィルムを仮固定材として用いる場合は、剥離時により容易に剥離することができる。剥離性を更に高める観点から、上記反応性樹脂100質量部中における上記炭素-炭素二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂の含有量のより好ましい下限は20質量部、更に好ましい下限は30質量部であり、より好ましい上限は90質量部、更に好ましい上限は80質量部、更により好ましい上限は70質量部である。
【0064】
上記反応性樹脂が上記マレイミド基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂を含む場合、上記反応性樹脂は、更に、分子内に炭素-炭素二重結合を有する官能基を2以上有し、分子量が5000以下である多官能モノマー又は多官能オリゴマー(以下、単に「多官能モノマー又は多官能オリゴマー」ともいう)を含むことが好ましい。
また、上記反応性樹脂が上記炭素-炭素二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂を含む場合も、上記反応性樹脂は、更に、上記多官能モノマー又は多官能オリゴマーを含んでいてもよい。
上記多官能モノマー又は多官能オリゴマーを含むことにより、上記接着性フィルムは、光の照射等による三次元網状化がより効率よくなされるようになり、接着亢進を起こしたり、剥離時に糊残りが発生したりするのをより防止することができる。
【0065】
なお、上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂自体に反応性がない場合、上記反応性樹脂は、反応性官能基を有する他の成分を更に含有することにより、上記反応性樹脂全体として反応性を有する必要がある。このような反応性官能基を有する他の成分として、上記多官能モノマー又は多官能オリゴマーを用いることが好ましい。上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂自体に反応性がない場合としては、例えば、上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂が、上記マレイミド基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂のみを含む場合等が挙げられる。
【0066】
上記多官能モノマー又は多官能オリゴマーにおける炭素-炭素二重結合を有する官能基としては、例えば、置換されていてもよいマレイミド基、シトラコンイミド基、ビニルエーテル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。なかでも、より高い耐熱性が得られることから、置換されていてもよいマレイミド基が好適である。特に、上記多官能モノマー又は多官能オリゴマーは、ビスマレイミド化合物であることが好ましい。
【0067】
上記多官能モノマー又は多官能オリゴマーは、ジアミン化合物に由来する基を有することが好ましい。上記ジアミン化合物としては、脂肪族ジアミン化合物又は芳香族ジアミン化合物のいずれも用いることができるが、脂肪族ジアミン化合物が好ましい。即ち、上記多官能モノマー又は多官能オリゴマーは、ジアミン化合物に由来する脂肪族基を有することがより好ましい。上記ジアミン化合物として脂肪族ジアミン化合物を用いることにより、得られる接着性フィルムが光透過性により優れるものとなる。また、得られる接着性フィルムが柔軟性により優れるものとなり、凹凸を有する被着体に対して高い追従性を発揮でき、また、接着性フィルムを仮固定材として用いる場合は、剥離時により容易に剥離することができるものとなる。
【0068】
上記脂肪族ジアミン化合物のなかでも、光透過性、柔軟性、及び、上記多官能モノマー又は多官能オリゴマーの溶媒や他の成分との相溶性の観点から、上述したようなダイマージアミンが好ましい。
【0069】
上記反応性樹脂100質量部中における上記多官能モノマー又は多官能オリゴマーの含有量の好ましい下限は5質量部、好ましい上限は90質量部である。上記多官能モノマー又は多官能オリゴマーの含有量がこの範囲内であることにより、上記接着性フィルムを仮固定材として用いる場合、剥離時により容易に剥離することができる。剥離性を更に高める観点から、上記多官能モノマー又は多官能オリゴマーの含有量のより好ましい下限は10質量部、より好ましい上限は50質量部である。
【0070】
上記反応性樹脂が上記炭素-炭素二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂と上記多官能モノマー又は多官能オリゴマーとを含む場合、上記反応性樹脂100質量部中における上記炭素-炭素二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂と上記多官能モノマー又は多官能オリゴマーとの合計の含有量の好ましい下限は20質量部、好ましい上限は80質量部である。上記炭素-炭素二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂と上記多官能モノマー又は多官能オリゴマーとの合計の含有量がこの範囲内であることにより、上記接着性フィルムを仮固定材として用いる場合、剥離時により容易に剥離することができる。剥離性を更に高める観点から、上記炭素-炭素二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂と上記多官能モノマー又は多官能オリゴマーとの合計の含有量のより好ましい下限は30質量部、更に好ましい下限は40質量部、更により好ましい下限は50質量部であり、より好ましい上限は70質量部である。
【0071】
上記反応性樹脂は、マレイミド基を有する化合物を含むことが好ましい。上記マレイミド基を有する化合物を含有することにより、得られる接着性フィルムが耐熱性により優れるものとなる。
上記マレイミド基を有する化合物は、ビスマレイミド化合物、又は、マレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂であることが好ましい。即ち、上記反応性樹脂は、上記多官能モノマー又は多官能オリゴマーとして上記ビスマレイミド化合物を含むか、又は、上記反応性樹脂が上記炭素-炭素二重結合を有する官能基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂の上記炭素-炭素二重結合を有する官能基としてマレイミド基を有する樹脂を含むことが好ましい。
【0072】
上記樹脂組成物は、更に、シリコーン化合物又はフッ素化合物を含有することが好ましい。上記シリコーン化合物又はフッ素化合物は、表面改質剤としての役割を有する。
上記シリコーン化合物及びフッ素化合物は、耐熱性に優れることから、300℃以上の高温加工処理を経ても接着性フィルムの焦げ付きを防止しやすくなる。また、剥離時には被着体界面にブリードアウトするため、接着性フィルムを仮固定材として用いる場合、剥離がより容易になる。
上記シリコーン化合物としては、例えば、シリコーンオイル、シリコーンジアクリレート、シリコーン系グラフト共重合体等が挙げられる。
上記フッ素化合物としては、例えば、フッ素原子を有する炭化水素化合物等が挙げられる。
【0073】
上記シリコーン化合物又はフッ素化合物は、上記反応性樹脂と架橋可能な官能基を有することが好ましい。
上記シリコーン化合物又はフッ素化合物が上記反応性樹脂と架橋可能な官能基を有することにより、光の照射や架橋剤等との反応により上記シリコーン化合物又はフッ素化合物が該反応性樹脂と化学反応して該反応性樹脂中に取り込まれる。このため、被着体に上記シリコーン化合物又はフッ素化合物が付着して汚染することを抑制することができる。上記反応性樹脂と架橋可能な官能基としては、例えば、カルボキシ基、ラジカル重合性の不飽和結合(例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、置換されていてもよいマレイミド基)、ヒドロキシ基、アミド基、イソシアネート基、エポキシ基等が挙げられる。
なかでも、環境にやさしく、廃棄が容易であるという観点から、上記反応性樹脂と架橋可能な官能基を有するシリコーン化合物が好ましい。
【0074】
上記反応性樹脂と架橋可能な官能基を有するシリコーン化合物としては、主鎖にシロキサン骨格を有し、側鎖又は末端に炭素-炭素二重結合を有する官能基を有するシリコーン化合物が好ましい。
上記主鎖にシロキサン骨格を有し、側鎖又は末端に炭素-炭素二重結合を有する官能基を有するシリコーン化合物としては、下記式(5-1)で表されるシリコーン化合物、下記式(5-2)で表されるシリコーン化合物、及び、下記式(5-3)で表されるシリコーン化合物からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。これらのシリコーン化合物は、耐熱性に特に優れ、極性が高いために上記接着性フィルムからのブリードアウトが容易である。
【0075】
【化5】
【0076】
上記式(5-1)~(5-3)中のX、及び、上記式(5-1)、(5-3)中のYは、それぞれ独立して、0以上1200以下の整数を表し、上記式(5-1)~(5-3)中、Rは、炭素-炭素二重結合を有する官能基を表す。
【0077】
上記式(5-1)~(5-3)中、Rで表される炭素-炭素二重結合を有する官能基としては、例えば、置換されていてもよいマレイミド基、シトラコンイミド基、ビニルエーテル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。なかでも、得られる接着性フィルムが耐熱性により優れるものとなることから、置換されていてもよいマレイミド基が好ましい。なお、上記式(5-1)~(5-3)中において、Rが複数存在する場合、それぞれのRは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0078】
上記式(5-1)~(5-3)で表されるシリコーン化合物のうち、市販されているものとしては、例えば、EBECRYL350、EBECRYL1360(いずれもダイセル・オルネクス社製)等が挙げられる。また、BYK-UV3500(ビックケミー社製)、TEGO RAD2250(エボニック社製)(いずれもRがアクリロイル基)等も挙げられる。
【0079】
上記反応性樹脂と架橋可能な官能基を有するフッ素化合物としては、例えば、メガファックRS-56、メガファックRS-75(DIC社製)等が挙げられる。
【0080】
上記シリコーン化合物又はフッ素化合物の含有量は、上記反応性樹脂100質量部に対して、好ましい下限が0.1質量部、好ましい上限が20質量部である。上記シリコーン化合物又はフッ素化合物の含有量がこの範囲内であることにより、得られる接着性フィルムが被着体を汚染することなく剥離性により優れるものとなる。汚染を抑制しつつも剥離性を更に高める観点から、上記シリコーン化合物又はフッ素化合物の含有量のより好ましい下限は0.3質量部、より好ましい上限は10質量部である。
なお、本発明の接着性フィルムは、耐熱性に優れることから、上記シリコーン化合物又はフッ素化合物の含有量を比較的少なくしても充分な効果を発揮することができる。そのため、上記シリコーン化合物又はフッ素化合物による汚染の可能性をより一層少なくすることができる。
【0081】
上記樹脂組成物は、更に、重合開始剤を含むことが好ましい。上記重合開始剤は、熱重合開始剤であってもよいし、光重合開始剤であってもよいが、光重合開始剤が好ましい。
【0082】
上記光重合開始剤としては、例えば、250~800nmの波長の光を照射することにより活性化されるものが挙げられる。なかでも、上記反応性樹脂の吸収波長と重なりにくく、接着性フィルムに光照射した際に充分に活性化されることから、上記光重合開始剤は、365nmにおけるモル吸光係数が1以上である化合物を含むことが好ましい。上記光重合開始剤は、365nmにおけるモル吸光係数が200以上である化合物を含むことがより好ましく、365nmにおけるモル吸光係数が350以上である化合物を含むことが更に好ましい。上記365nmにおけるモル吸光係数が1以上である化合物の365nmにおけるモル吸光係数の好ましい上限は特にないが、実質的な上限は2000である。
【0083】
上記光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン誘導体、ベンゾインエーテル系化合物、ケタール誘導体、フォスフィンオキシド誘導体等が挙げられる。
上記アセトフェノン誘導体としては、例えば、メトキシアセトフェノン等が挙げられる。
上記ベンゾインエーテル系化合物としては、例えば、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。
上記ケタール誘導体としては、例えば、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジエチルケタール等が挙げられる。
また、上記光重合開始剤としては、例えば、ビス(η5-シクロペンタジエニル)チタノセン誘導体化合物、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシメチルフェニルプロパン等も挙げられる。
これらの光重合開始剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0084】
上記重合開始剤の含有量は、上記反応性樹脂100質量部に対して、好ましい下限が0.1質量部、好ましい上限が10質量部である。上記重合開始剤の含有量がこの範囲内であることにより、光の照射等により上記接着性フィルムの全体が均一にかつ速やかに重合架橋し、弾性率が上昇することにより粘着力が大きく低下して、接着亢進を起こしたり、剥離時に糊残りが発生したりするのを防止することができる。上記重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.3質量部、より好ましい上限は3質量部である。
【0085】
上記接着性フィルムを仮固定材として用いる場合、上記樹脂組成物は、更に、気体発生剤を含んでもよい。上記気体発生剤を含有することにより、300℃以上の高温加工処理を経た後であっても、光を照射すること等により発生した気体が被着体との界面に放出されることから、より容易に、かつ、糊残りすることなく被着体を剥離することができる。また、300℃以上の高温加工処理を行った後、薄い被着体を剥離する場合であっても、被着体の破損を防止することができる。
【0086】
上記気体発生剤は、TG-DTA(熱重量-示差熱分析)測定にて窒素雰囲気下で30℃から300℃まで10℃/minの昇温速度で加熱したときの300℃における重量減少率が5%以下であることが好ましい。上記重量減少率が5%以下であれば、300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても上記気体発生剤の分解が起こりにくく、上記接着性フィルムが耐熱性により優れるものとなる。即ち、高温加工処理中は剥がれをより抑えることができ、また、接着亢進を起こしたり、剥離時に糊残りが発生したりすることをより防止することができる。
なお、上記TG-DTA(熱重量-示差熱分析)測定は、例えば、TG-DTA装置(日立ハイテクサイエンス社製、「STA7200RV」)等を用いて行うことができる。
【0087】
上記気体発生剤としては、例えば、加熱することにより気体を発生する気体発生剤、光を照射することにより気体を発生する気体発生剤等が挙げられる。これらの気体発生剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、光を照射することにより気体を発生する気体発生剤が好ましく、紫外線を照射することにより気体を発生する気体発生剤がより好ましい。
上記気体発生剤としては、例えば、テトラゾール化合物又はその塩、トリアゾール化合物又はその塩、アゾ化合物、アジド化合物、キサントン酢酸、炭酸塩等が挙げられる。これらの気体発生剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。なかでも、特に耐熱性に優れることから、テトラゾール化合物又はその塩が好ましい。
【0088】
上記気体発生剤の含有量は、上記反応性樹脂100質量部に対して、好ましい下限が5質量部、好ましい上限が50質量部である。上記気体発生剤の含有量がこの範囲内であることにより、得られる接着性フィルムが剥離性に特に優れるものとなる。上記気体発生剤の含有量のより好ましい下限は8質量部、より好ましい上限は30質量部である。
【0089】
上記樹脂組成物は、更に、無機充填剤を含有してもよい。
上記無機充填剤を含有することにより、得られる接着性フィルムが、高温における弾性率の低下を抑えることができ、300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても高温加工処理中の剥がれをより抑えることができるものとなる。
【0090】
上記無機充填剤としては、例えば、ケイ素、チタン、アルミニウム、カルシウム、ホウ素、マグネシウム及びジルコニアの酸化物、並びに、これらの複合物からなる群より選択される少なくとも1種からなる無機充填剤が挙げられる。なかでも、市販品で安価かつ入手が容易なことから、シリカやタルクが好ましい。
【0091】
上記無機充填剤は、表面修飾されていてもよい。上記無機充填剤を表面修飾する修飾官能基としては、例えば、アルキルシラン基、メタクリロイル基及びジメチルシロキサン基等が挙げられる。なかでも、適度な疎水性を有することから、ジメチルシロキサン基が好ましい。
【0092】
上記無機充填剤の平均粒子径の好ましい下限は5nm、好ましい上限は30μmである。上記無機充填剤の平均粒子径がこの範囲内であることにより、得られる接着性フィルムが高温加工処理中は剥がれをより抑えることができ、また、接着性フィルムを仮固定材として用いる場合、剥離時にピール処理により剥離することができるものとなる。上記無機充填剤の平均粒子径のより好ましい下限は10nm、より好ましい上限は20μmであり、更に好ましい下限は15nm、更に好ましい上限は15μmである。
なお、上記平均粒子径は、例えば、任意の無機充填剤50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、各無機充填剤の粒子径の平均値を算出することや、レーザー回折式粒度分布測定を行うことにより求められる。
【0093】
上記無機充填剤の含有量は、上記反応性樹脂100質量部に対して、好ましい下限が1質量部、好ましい上限が20質量部である。上記無機充填剤の含有量がこの範囲内であることにより、得られる接着性フィルムが高温加工処理中は剥がれをより抑えることができ、また、接着性フィルムを仮固定材として用いる場合は、剥離時にピール処理により剥離することができるものとなる。上記無機充填剤の含有量のより好ましい下限は3質量部、より好ましい上限は15質量部であり、更に好ましい下限は5質量部、更に好ましい上限は10質量部である。
【0094】
上記樹脂組成物は、例えば、光増感剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、可塑剤、樹脂、界面活性剤、ワックス等の公知の添加剤を含有してもよい。
【0095】
本発明の接着性フィルムは、基材を有し、基材の一方又は両方の面に上記樹脂組成物を含有する接着層を有するフィルムであってもよく、基材を有さないフィルムであってもよい。上記基材を有さない場合、光透過性と耐熱性とをともに有する基材を選定する必要がなく、本発明の接着性フィルムは、より安価かつ簡易な構成とすることができる。上記基材を有する場合、本発明の接着性フィルムの取り扱い性がより向上する。
上記基材を有する場合、該基材としては、例えば、アクリル、オレフィン、ポリカーボネート、塩化ビニル、ABS、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ナイロン、ウレタン、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド(PA)等の樹脂シートが挙げられ、光透過性の高い樹脂シートを好適に用いることができる。また、網目状の構造を有するシート、孔が開けられたシート、ガラス等も用いることができる。
光透過性を高める観点、及び、柔軟性を高める観点から、上記基材の厚みの好ましい下限は5μm、より好ましい下限は10μmであり、好ましい上限は150μm、より好ましい上限は100μmである。
【0096】
本発明の接着性フィルムを製造する方法としては、例えば、まず、上記反応性樹脂、及び、必要に応じて配合する添加剤を、ビーズミル、超音波分散、ホモジナイザー、高出力ディスパー、ロールミル等を用いて混合して樹脂組成物を調製する。次いで、得られた樹脂組成物を片面離型処理の施されたPETフィルムの離型処理面上にアプリケーター等で塗工して乾燥させた後、片面離型処理の施された別のPETフィルムを離型処理面が乾燥した樹脂組成物と対向するように重ねることにより、基材を有さない離型PETフィルム付き接着性フィルムを得る方法等が挙げられる。
また、得られた樹脂組成物を片面離型処理の施されたPETフィルムの離型処理面上にアプリケーター等で塗工して乾燥させた後、基材と乾燥した樹脂組成物とを対向するように重ねること等により、基材を有する離型PETフィルム付き接着性フィルムを得ることができる。
【0097】
本発明の接着性フィルムは、硬化後のゲル分率の好ましい下限が70質量%、好ましい上限が95質量%である。上記硬化後のゲル分率が上記範囲内であることで、上記接着性フィルムは、被着体との剥離時により容易に剥離することができるものとなる。上記接着性フィルムの硬化後のゲル分率のより好ましい下限は75質量%、より好ましい上限は90質量%である。
なお、上記硬化後のゲル分率は、光硬化型の接着性フィルムの場合は、該接着性フィルムに波長365nm、照射強度70mW/cmの紫外線を300秒間照射することにより硬化させた後、また、熱硬化型の接着性フィルムの場合は、150℃で10分間加熱することにより硬化させた後、以下の方法により測定される。
即ち、まず、接着性フィルムを50mm×100mmの平面長方形状に裁断して試験片を作製する。得られた試験片をトルエン中にて23℃で24時間浸漬した後、トルエンから取り出して、110℃の条件下で1時間乾燥させる。乾燥後の試験片の質量を測定し、下記式を用いてゲル分率を算出する。なお、試験片には、接着性フィルムの表面を保護するためのセパレータは積層されていないものとする。
ゲル分率(質量%)=100×(W-W)/(W-W
(W:基材の質量、W:浸漬前の試験片の質量、W:浸漬、乾燥後の試験片の質量)
【0098】
本発明の接着性フィルムの厚み(本発明の接着性フィルムが基材を有する場合、基材を含む接着性フィルム全体の厚み)の好ましい下限は5μm、好ましい上限は550μmである。上記接着性フィルムの厚みが5μm以上であることにより、上記接着性フィルムが初期に充分な感圧又は感熱粘着力を有することができる。上記接着性フィルムの厚みが550μm以下であることにより、上記接着性フィルムは、高い柔軟性を発揮することができ、凹凸を有する被着体に対して高い追従性を発揮できるとともに、接着性フィルムを仮固定材として用いる場合は、剥離時により容易に剥離することができるものとなる。上記接着性フィルムの厚みのより好ましい下限は10μm、更に好ましい下限は20μm、更により好ましい下限は30μmである。上記接着性フィルムの厚みのより好ましい上限は400μm、更に好ましい上限は300μm、更により好ましい上限は200μmである。
【0099】
本発明の接着性フィルムは、高温で長時間加熱する場合でも加熱中のボイドの発生を抑制することができる。また、高温加工処理後に被着体に対して接着亢進を起こしたり、剥離時に糊残りが発生したりすることを防止することができ、被着体との剥離時に容易に剥離することができる。このため、本発明の接着性フィルムは、300℃以上の高温加工処理を行う被着体、特に、ポリイミド樹脂からなる被着体の保護及び仮固定に好適に用いることができる。とりわけ、半導体等の電子部品の加工時において、電子部品の取扱いを容易にし、破損したりしないようにするために、上記接着性フィルムを介して電子部品を支持板に固定したり、上記接着性フィルムを電子部品に貼付したりして保護するのに好適に用いることができる。本発明の接着性フィルムは、仮固定材として用いることが好ましい。
【0100】
本発明の接着性フィルムを用いた電子部品の製造方法もまた、本発明の1つである。
本発明の電子部品の製造方法は、接着性フィルムに電子部品を仮固定する仮固定工程と、本発明の接着性フィルムを硬化する硬化工程と、上記電子部品に熱処理を行う熱処理工程と、本発明の接着性フィルムから上記電子部品を剥離する剥離工程とを含むことが好ましい。
本発明の接着性フィルムを硬化する硬化工程は、本発明の接着性フィルムから上記電子部品を剥離する剥離工程の直前に行ってもよいが、本発明の接着性フィルムに電子部品を仮固定する仮固定工程の後、上記電子部品に熱処理を行う熱処理工程の前に行うことが好ましい。上記電子部品に熱処理を行う熱処理工程の前に本発明の接着性フィルムを硬化する硬化工程を行うことにより、接着性フィルムがより優れた耐熱性を発揮することができる。
【発明の効果】
【0101】
本発明によれば、高温で長時間加熱する場合でも加熱中のボイドの発生を抑制することができる接着性フィルムを提供することができる。また、本発明によれば、該接着性フィルムを用いた電子部品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0102】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0103】
(合成例1)
テフロン(登録商標)スターラーを入れた500mL容の丸底フラスコに250mLのトルエンを投入した。ダイマージアミン(クローダ社製、「プリアミン1075」)31.9g(0.06モル)、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン5.5g(0.015モル)、及び、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物39g(0.0765モル)をこの順に加えた。ディーンスターク管とコンデンサーをフラスコに取り付け、得られた混合物を6時間還流し、室温に冷却した。褐色の、下記式(6-1)で表される構成単位及び下記式(6-2)で表される構成単位を有する、マレイミド基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(マレイミド基非含有PI(A))のトルエン溶液を得た。
得られたマレイミド基非含有PI(A)について、溶出液としてTHF、カラムとしてHR-MB-M 6.0×150mm(ウォーターズ社製)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC、装置名:Acquity APCシステム(ウォーターズ社製))により測定したところ、重量平均分子量は78000であった。
【0104】
【化6】
【0105】
(合成例2)
ダイマージアミンの添加量を39.9g(0.075モル)に変更し、更に、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパンを添加しなかったこと以外は、合成例1と同様にして、下記式(7)で表される構成単位を有する、マレイミド基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(マレイミド基非含有PI(B))のトルエン溶液を得た。
得られたマレイミド基非含有PI(B)について、溶出液としてTHF、カラムとしてHR-MB-M 6.0×150mm(ウォーターズ社製)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC、装置名:Acquity APCシステム(ウォーターズ社製))法により測定したところ、重量平均分子量は90000であった。
【0106】
【化7】
【0107】
(合成例3)
テフロン(登録商標)スターラーを入れた500mL容の丸底フラスコに250mLのトルエンを投入した。次いで、トリエチルアミン35g(0.35モル)と無水メタンスルホン酸35g(0.36モル)を加えて撹拌し、塩を形成した。10分間撹拌後、ダイマージアミン(クローダ社製、プリアミン1075)56g(0.1モル)と、無水ピロメリット酸19.1g(0.09モル)をこの順に加えた。ディーンスタークトラップとコンデンサーをフラスコに取り付け、混合物を2時間還流し、アミン末端のジイミドを形成した。反応物を室温以下に冷却後、無水マレイン酸12.8g(0.13モル)を加え、次いで、無水メタンスルホン酸5g(0.05モル)を加えた。得られた混合物を、更に12時間還流した後、室温に冷却し、トルエン300mLをフラスコに加え、静置により層分離させ、不純物である下層を除去した。得られた溶液を、シリカゲルを充填したガラスフリット漏斗を通してろ過した後、溶剤を真空除去し、琥珀色ワックス状の、下記式(8)で表される両末端にマレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(C=C官能基含有PI)を得た。
得られたC=C官能基含有PIについて、溶出液としてTHF、カラムとしてHR-MB-M 6.0×150mm(ウォーターズ社製)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC、装置名:Acquity APCシステム(ウォーターズ社製))法により測定したところ、重量平均分子量は5000であった。
【0108】
【化8】
【0109】
式(8)中、nは、繰り返し数である。
【0110】
(合成例4)
テフロン(登録商標)スターラーを入れた500mL容の丸底フラスコに250mLのトルエンを投入した。ダイマージアミン(クローダ社製、プリアミン1075)56g(0.1モル)と、無水マレイン酸19.6g(0.2モル)を加え、次いで、無水メタンスルホン酸5gを加えた。得られた溶液を12時間還流した後、室温に冷却し、トルエン300mLをフラスコに加え、静置により層分離させ、不純物である下層を除去した。得られた溶液を、シリカゲルを充填したガラスフリット漏斗を通してろ過した後、溶剤を真空除去し、茶色液状の、下記式(9)で表されるビスマレイミドモノマーを得た。
【0111】
【化9】
【0112】
(実施例1~21、比較例1~4)
トルエン150mLに、表1~3に記載した各材料を加えて混合し、樹脂組成物のトルエン溶液を調製した。
得られた樹脂組成物のトルエン溶液を、片面離型処理の施された厚さ50μmのPETフィルム(離型PETフィルム)の離型処理面上に乾燥皮膜の厚みが表1~3に記載したものとなるようにドクターナイフで塗工し、130℃、10分間加熱して塗工溶液を乾燥させた。次いで、別の離型PETフィルムの離型処理面を乾燥した樹脂組成物の面に貼り合わせ、両面離型PETフィルム付き接着性フィルムを得た。
なお、上記トルエン溶液の濃度を調整することにより、後述する「(接着性フィルムの最大厚みと最小厚みとの差(Zμm))」にて得られる値を調整した。
【0113】
(接着性フィルムの硬化後のゲル分率(質量%))
得られた両面離型PETフィルム付き接着性フィルムの両面の離型PETフィルムを剥離した後、波長365nm、照射強度70mW/cmの紫外線を300秒間照射することにより接着性フィルムを硬化させ、硬化後の接着性フィルムを50mm×100mmの平面長方形状に裁断して試験片を作製した。得られた試験片をトルエン中にて23℃で24時間浸漬した後、トルエンから取り出して、110℃の条件下で1時間乾燥させた。乾燥後の試験片の質量を測定し、下記式を用いてゲル分率を算出し、結果を表1~3に示した。
ゲル分率(質量%)=100×(W-W)/(W-W
(W:基材の質量、W:浸漬前の試験片の質量、W:浸漬、乾燥後の試験片の質量)
【0114】
(接着性フィルムの100℃におけるシリコンウエハに対する粘着力(XN/inch))
得られた両面離型PETフィルム付き接着性フィルムを幅1inchに切り出した。次いで、両面離型PETフィルム付き接着性フィルムから一方の離型PETフィルムを剥離し、100℃ラミネーターにて、シリコンウエハに加熱ラミネートした。上記シリコンウエハとしては、厚みが700μm、直径200mmのベアシリコンウエハを50mm幅に個片化したもの用い、上記100℃ラミネーターとしては、Leon13DX(ラミーコーポレーション社製、速度メモリ5、温度設定100℃)を用いた。次いで、接着性フィルム側から、超高圧水銀灯を用いて、波長365nm、照射強度70mW/cmの紫外線を300秒間照射することにより接着性フィルムを硬化させた。得られた接着性フィルムの硬化物に対して、もう一方の離型PETフィルムを剥離し、引張試験機を用いて、100℃、引張角度30°、引張速度300mm/分の条件にてピール試験を行い、シリコンウエハに対する粘着力(XN/inch)を測定した。上記引張試験機としては、角度自在タイプ粘着・皮膜剥離解析装置VPA-2S(協和界面科学社製)を用いた。結果を表1~3に示した。
【0115】
(樹脂組成物の応力緩和率(Y%))
得られた両面離型PETフィルム付き接着性フィルムから両方の離型PETフィルムを剥離し、露出した樹脂組成物に対して超高圧水銀灯を用いて、波長365nm、照射強度70mW/cmの紫外線を300秒間照射することにより樹脂組成物を硬化させた。得られた樹脂組成物の硬化物を幅4mm、長さ25mmに切り出した。切り出した樹脂組成物の硬化物について、熱機械分析装置を用い、窒素雰囲気下でサンプル温度を300℃とし、治具間距離(サンプル長さ)9mm、変位0μmで30分静置した後、変位速度2000μm/分にて変位1000μmの負荷を加え、その後60分静置した。負荷を加えた時の最大応力に対する60分静置したときの応力の割合をA%として、下記式により、応力緩和率(Y%)を求めた。上記熱機械分析装置としては、TMA-SS7100(日立ハイテクサイエンス社製、石英プローブ)を用いた。結果を表1~3に示した。
応力緩和率(%)=100-A
【0116】
(接着性フィルムの最大厚みと最小厚みとの差(Zμm))
得られた両面離型PETフィルム付き接着性フィルムを20cm角に切り出した。次いで、切り出した両面離型PETフィルム付き接着性フィルムについて、中心から各辺に向かって2.5cm毎に厚みを測定した。また、別途離型フィルムの厚みを測定し、離型フィルム付き接着性フィルムについて測定された各厚みの値から離型フィルムの厚みを差し引いた値を接着性フィルムの厚みとした。得られた接着性フィルムの厚みのうち、最大値を接着性フィルムの最大厚みとし、最小値を接着性フィルムの最小厚みとし、接着性フィルムの最大厚みと最小厚みとの差(Zμm)を求めた。上記厚みの測定には、デジマチックインジケータID-H(ミツトヨ社製)を用いた。結果を表1~3に示した。
【0117】
<評価>
実施例及び比較例で得られた離型PETフィルム付き接着性フィルムについて、以下の方法により評価を行った。結果を表1~3に示した。
【0118】
(耐熱性)
得られた両面離型PETフィルム付き接着性フィルムを直径200mmの円形に切り出した。次いで、切り出した両面離型PETフィルム付き接着性フィルムから一方の離型PETフィルムを剥離し、直径200mm、厚み700μmのシリコンウエハに真空、40℃の条件で貼り付けた。次いで、もう一方の離型PETフィルムを剥離し、シリコンウエハに貼り付けた面と反対の面に直径200mm、厚み600μmのガラス(schott社製、「Tempax」)を真空、90℃の条件で加圧貼合装置を用いて貼り付けて積層体を得た。得られた積層体のガラス側から、超高圧水銀灯を用いて、波長365nm、照射強度70mW/cmの紫外線を300秒間照射することにより接着性フィルムを硬化させ、積層体を得た。得られた積層体を300℃のホットプレート(ASONE社製、「ND-3HA」)を用いて加熱した。10分毎に積層体のガラス側から状態を確認し、3cm以上のボイドが生じるまでの時間を測定し、300℃耐熱時間とした。
300℃耐熱時間が90分以上であった場合を「◎」、45分以上90分未満であった場合を「○」、20分以上45分未満であった場合を「△」、20分未満であった場合を「×」として耐熱性を評価した。
【0119】
(加熱後の剥離容易性)
上記「(耐熱性)」と同様にして積層体を得た。得られた積層体のガラス側から、超高圧水銀灯を用いて、波長365nm、照射強度70mW/cmの紫外線を300秒間照射することにより接着性フィルムを硬化させ、積層体を得た。得られた積層体を300℃の加熱装置(ユニテンプ社製、「VPO-1000-300」)を用いて窒素雰囲気下で30分加熱した。加熱後の積層体について、UVレーザーシステム(クォークテクノロジー社製、「QLA-355」)を用いて、ガラス側からレーザー光(355nm、500mJ/cm)を照射しガラスを剥離した。シリコンウエハ上に残った接着性フィルムに対し1インチ間隔で切れ込みを入れ、引張試験機(島津製作所社製、「AG-IS」)を用いて、25℃、引張速度300mm/分の条件で1インチ幅の接着性フィルムに対し180°ピール試験を行った。
シリコンウエハ上の全領域において残渣なく剥離できた場合を「○」、剥離できたが残渣が生じる領域が存在した場合を「×」として加熱後の剥離容易性を評価した。
【0120】
【表1】
【0121】
【表2】
【0122】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明によれば、高温で長時間加熱する場合でも加熱中のボイドの発生を抑制することができる接着性フィルムを提供することができる。また、本発明によれば、該接着性フィルムを用いた電子部品の製造方法を提供することができる。