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特開2024-45087移送損失を低減した液体ヘリウム移送装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045087
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】移送損失を低減した液体ヘリウム移送装置
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/00 20060101AFI20240326BHJP
   F17C 3/08 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
F17C13/00 302F
F17C3/08
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023156218
(22)【出願日】2023-09-21
(31)【優先権主張番号】10 2022 209 941.9
(32)【優先日】2022-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】591148048
【氏名又は名称】ブルーカー スウィッツァーランド アー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Bruker Switzerland AG
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ウィクス
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB15
3E172BA06
3E172BB03
3E172BB12
3E172BB17
3E172BD05
3E172DA04
3E172EA03
3E172EB03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】移送損失を簡単に低減することができる液体ヘリウムを移送するための装置を提供する。
【解決手段】液体ヘリウムを実用クライオスタットの実用ヘリウム容器へ移送するための装置であって、実用ヘリウム容器に充填するために利用可能な液体ヘリウムを貯留するための、真空断熱リザーバヘリウム容器を有するリザーバクライオスタットと、実用ヘリウム容器に接続するための、リザーバヘリウム容器から延びる液体ヘリウムの供給ラインと、を備える装置は、装置が実用ヘリウム容器に接続するための、リザーバヘリウム容器内に通じる気体ヘリウムの戻りラインと、液体ヘリウムをリザーバヘリウム容器から供給ラインを通して実用ヘリウム容器に、かつ気体ヘリウムを実用ヘリウム容器から戻りラインを通してリザーバヘリウム容器に搬送可能である搬送装置と、を更に備えることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体ヘリウム(6)を実用クライオスタット(2)の実用ヘリウム容器(3)へ移送するための装置(5)であって、
-前記実用ヘリウム容器(3)に充填するために利用可能な液体ヘリウム(6、6b)を貯留するための、真空断熱リザーバヘリウム容器(8)を有するリザーバクライオスタット(7)と、
-前記実用ヘリウム容器(3)に接続するための、前記リザーバヘリウム容器(8)から延びる液体ヘリウム(6、6c)の供給ライン(9)と、
を備える装置(5)において、
-前記実用ヘリウム容器(3)に接続するための、前記リザーバヘリウム容器(8)内に通じる気体ヘリウム(11、11c)の戻りライン(10)と、
-前記液体ヘリウム(6、6b)を前記リザーバヘリウム容器(8)から前記供給ライン(9)を通して前記実用ヘリウム容器(3)に、かつ気体ヘリウム(11、11a)を前記実用ヘリウム容器(3)から前記戻りライン(10)を通して前記リザーバヘリウム容器(8)に搬送可能である搬送装置(49)と、を更に備えることを特徴とする、装置(5)。
【請求項2】
前記供給ライン(9)と前記戻りライン(10)が真空断熱されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置(5)。
【請求項3】
前記供給ライン(9)と前記戻りライン(10)が少なくとも部分的に共通輸送ライン(28)に形成され、前記共通輸送ラインが共通の真空境界(27)内に、前記供給ライン(9)と前記戻りライン(10)の両方が延びる真空室を有することを特徴とする、請求項2に記載の装置(5)。
【請求項4】
前記供給ライン(9)と前記戻りライン(10)は前記共通の真空境界(27)内で同軸に延び、前記供給ライン(9)は、半径方向で前記戻りライン(10)の内側に位置することを特徴とする、請求項3に記載の装置(5)。
【請求項5】
前記供給ライン(9)と前記戻りライン(10)とが前記共通の真空境界(27)内で互いに平行に、かつ相並んで延びることを特徴とする、請求項3に記載の装置(5)。
【請求項6】
前記戻りライン(10)は、1つ又は複数の間隔保持器(29)を用いて前記共通の真空境界(27)に懸架されていることと、前記供給ライン(9)は、1つ又は複数の間隔保持器(30)を用いて前記戻りライン(10)に懸架されているが前記共通の真空境界(27)には懸架されていないことを特徴とする、請求項3~5のいずれか一項に記載の装置(5)。
【請求項7】
前記供給ライン(9)のライン断面QZと前記戻りライン(10)のライン断面QRとは
QR>QZ、
好ましくはQR≧3*QZ、
特に好ましくはQR≧5*QZ
であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置(5)。
【請求項8】
前記供給ライン(9)と前記戻りライン(10)は可撓性に形成されていることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の装置(5)。
【請求項9】
前記搬送装置(49)は、前記供給ライン(9)に液体ヘリウム(6;6c)のための循環ポンプ(12b)を含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置(5)。
【請求項10】
前記搬送装置(49)は、前記戻りライン(10)に気体ヘリウム(11、11c)のための循環ポンプ(12a;12c)を含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置(5)。
【請求項11】
前記戻りライン(10)は、入口領域(23a)と出口領域(23b)を含むラインループ(23)を備え、前記出口領域(23b)は、熱交換器(24)を介して前記入口領域(23a)に熱的に結合されていることと、
前記ラインループ(23)が前記循環ポンプ(12c)を含み、特に前記循環ポンプ(12c)が室温であることと、
を特徴とする、請求項10に記載の装置(5)。
【請求項12】
前記搬送装置(49)は、前記リザーバヘリウム容器(8)内にピストン(40)を含み、前記ピストン(40)は、前記リザーバヘリウム容器(8)内で移動可能であり、かつ気体ヘリウム(11、11b)のための前記リザーバヘリウム容器(8)の第1の部分(41)を前記液体ヘリウム(6、6b)のための前記リザーバヘリウム容器(8)の第2の部分(42)から分離することと、
前記供給ライン(9)は、前記第2の部分(42)に延び、前記戻りライン(10)は、前記第1の部分(41)に通じることと、
を特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の装置(5)。
【請求項13】
前記装置(5)は、前記装置(5)内及び/又は前記実用ヘリウム容器(3)内のヘリウム圧を制御するための制御装置(17)を更に備え、
特に前記制御装置(17)は、前記搬送装置(49)を制御するように形成されていることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の装置(5)。
【請求項14】
前記装置(5)は、
-特に前記リザーバヘリウム容器(8)内に配置された加熱装置(20)、及び/又は
-特に前記実用ヘリウム容器(3)に接続するための制御弁(22)を有するヘリウム圧縮ガス貯蔵器(21)と、を更に備え、特に前記制御装置(17)は、前記加熱装置(20)及び/又は前記制御弁(22)を制御するように形成されている、請求項13に記載の装置(5)。
【請求項15】
前記装置(5)は、ヘリウムのための実験室液化器(31)を備え、
前記実験室液化器(31)は、
-前記リザーバヘリウム容器(8)を有する前記リザーバクライオスタット(7)と、
-気体ヘリウム(11)を液化するためのクライオクーラ(32)と、を含むことを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の装置(5)。
【請求項16】
極低温容器アセンブリ(1)であって、
請求項1~15のいずれか一項に記載の装置(5)と、実用ヘリウム容器(3)を有する実用クライオスタット(2)と、を備え、
前記供給ライン(9)は前記実用ヘリウム容器(3)に接続され、かつ前記実用ヘリウム容器(3)内に通じ、
前記戻りライン(10)は、前記実用ヘリウム容器(3)に接続され、かつ前記実用ヘリウム容器(3)から延びる、極低温容器アセンブリ。
【請求項17】
前記極低温容器アセンブリ(1)は、前記実用ヘリウム容器(3)の領域に少なくとも1つの圧力センサ(19)を更に備え、
特に前記圧力センサ(19)は前記装置(5)の制御装置(17)に接続されていることを特徴とする、請求項16に記載の極低温容器アセンブリ(1)。
【請求項18】
液体ヘリウムをリザーバクライオスタット(7)のリザーバヘリウム容器(8)から実用クライオスタット(2)の実用ヘリウム容器(3)へ移送する方法であって、
前記リザーバヘリウム容器(8)から延び、かつ前記実用ヘリウム容器(3)に接続されている液体ヘリウム(6、6c)の供給ライン(9)を通して、前記リザーバヘリウム容器(8)に貯留された液体ヘリウム(6、6b)が前記リザーバヘリウム容器(8)から前記実用ヘリウム容器(3)に搬送される、方法において、
同時に、前記実用ヘリウム容器(3)に接続され、かつ前記リザーバヘリウム容器(8)内に通じる気体ヘリウム(11、11c)の戻りライン(10)を通して、気体ヘリウム(11、11a)が前記実用ヘリウム容器(3)から前記リザーバヘリウム容器(8)に戻されることを特徴とする、方法。
【請求項19】
前記供給ライン(9)を通る液体ヘリウム(6、6c)の体積流量と、前記戻りライン(10)を通る気体ヘリウム(11、11c)の体積流量がほぼ同じであることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記リザーバヘリウム容器(8)内の前記液体ヘリウム(6、6b)の温度TLHeは、少なくとも前記液体ヘリウム(6、6b)の移送の開始時に、
TLHe<4.2K、
好ましくはTLHe≦3.6K、
特に好ましくはTLHe≦3.0K
であり、
特に前記リザーバヘリウム容器(8)内の前記液体ヘリウム(6、6b)の前記温度TLHeは、前記液体ヘリウム(6、6b)の前記移送開始前に、前記リザーバヘリウム容器(8)を有する前記リザーバクライオスタット(7)が一体化された実験室液化器(31)のクライオクーラ(32)を用いて設定されたことを特徴とする、請求項18又は19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体ヘリウムを実用クライオスタット(Nutz-Kryostate)の実用ヘリウム容器(Nutz-Heliumbehaelter)へ移送するための装置であって、
-実用ヘリウム容器に充填するために利用可能な液体ヘリウムを貯留するための、真空断熱リザーバヘリウム容器を有するリザーバクライオスタットと、
-実用ヘリウム容器に接続するための、リザーバヘリウム容器から延びる液体ヘリウムの供給ラインと、
を備える装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような移送装置は、例えば、Bruker Biospin AG、Faellanden,スイス国,の2004年10月12日付け刊行物,“NMR Magnet System UltraShield Magnets(English version)User Manual Version 006”、特にその第12章(p.26~30)から知られるようになった。
【0003】
液体ヘリウムは、例えば、NMR分光計(NMR=nuclear magnetic resonance,核磁気共鳴)及びMRIシステム(MRI=magnetic resonance,磁気共鳴画像法)の超電導磁石の冷却など、様々な用途の冷却に必要とされる。その場合、実用クライオスタット内に真空断熱実用ヘリウム容器が形成され、その中に液体ヘリウムが貯蔵されている。液体ヘリウム中に配置された、例えば磁気コイルなどの対象物が液体ヘリウムによって冷却される。
【0004】
液体ヘリウムは用途の冷却時にゆっくりと消費されるため、典型的には2、3か月後に液体ヘリウムを実用クライオスタットに補充しなければならない。液体ヘリウムは希少で比較的高価な物質である。
【0005】
液体ヘリウムを補充する通常の手順は、大抵の場合、次のように行われる。上記のBruker Biospin AGの刊行物,“NMR Magnet System UltraShield Magnets...”を参照:
1)実用クライオスタットに補充するための液体ヘリウムが貯留された真空断熱リザーバヘリウム容器を備えたリザーバクライオスタット(輸送デュワーとも呼ばれる)が実用クライオスタットの近くに運ばれる。
2)室温の暖かさの(raumtemperaturwarm)供給ライン(移送ラインとも呼ばれる)が、供給ラインの一端が液体ヘリウム中に突き出るまでリザーバクライオスタットに挿入される。
3)それによって、リザーバクライオスタット内のヘリウムが多少温められ、リザーバクライオスタット内でヘリウムガス圧が上昇して液体ヘリウムを供給ラインに押し込み、液体ヘリウムは、最初は気体ヘリウムとして供給ラインの他端で周囲環境中に流出する。供給ラインが徐々に冷え、最終的に液体ヘリウムが供給ラインの他端から漏れ出る。
4)次に、供給ラインの他端が実用クライオスタットに挿入される。
5)次いで、液体ヘリウムが実用クライオスタットに流入し、それと同時に気体ヘリウムが、ほぼ大気圧に維持される実用クライオスタットから押し出される。押し出された気体ヘリウムは、大抵の場合、周囲環境中に漏れ出るか、又は実用クライオスタットは、気体ヘリウムを捕集する回収システムに接続されている。
6)液体ヘリウムを実用クライオスタットに搬送するのに十分な圧力をリザーバクライオスタット内に確保するため、リザーバクライオスタットはヘリウム圧縮ガスボンベ(Druckgasflache)に接続され、リザーバクライオスタット内の過剰圧力がヘリウム移送のために十分な約50~100mbarに設定される。
【0006】
このプロセスは、比較的簡単な装備で良好に実施できる。しかし、このプロセスでは、供給ラインが冷えるときと、実用クライオスタットに実際に液体ヘリウムを充填するときの両方で比較的多くのヘリウムが周囲環境中に失われる。それに加えて、リザーバクライオスタットから液体ヘリウムを送り出すために、室温の暖かさのヘリウムをヘリウム圧縮ガスボンベからリザーバクライオスタットに導入することはエネルギー的に不利である。
【0007】
液体ヘリウムを実用クライオスタットに充填するときに実用クライオスタットから出る気体ヘリウムを捕集することができる回収システムは、比較的複雑で高価である。移送中に実用クライオスタットから漏れ出る低温ヘリウムは、回収システムへの経路で室温に温まるため、10倍以上の著しい体積増加を示す。回収システムのコンポーネント(コンプレッサ、バルーン貯蔵器など)は、低温ガスで動作するように経済的に設計できないため、多くの場合、実用クライオスタットから漏れ出るヘリウムを能動的に加熱する必要さえある。
【0008】
回収システムは、典型的には、気体ヘリウムを省スペース的に保管するために液化又は圧縮する前に中間貯蔵するための大型の低圧蓄圧器(例えば比較的多くのスペースを必要とする大型のバルーン貯蔵器など)、又は実用クライオスタットへの液体ヘリウムの補充時に実用クライオスタットから押し出されるヘリウム流のために直接設計される必要のある非常に高性能で、したがって高価なコンプレッサが上流に接続される高圧蓄圧器のどちらかを備えている。理論的には、実用クライオスタットから漏れ出るヘリウムを液体状態で省スペース的に保管するために相応の大きさにした冷凍機によって直接冷却及び液化することもできるかもしれない。しかしその場合、回収システムの冷凍機は、実用クライオスタットに液体ヘリウムを補充するときに実用クライオスタットから押し出される非常に高流量のヘリウムガスのために直接設計されていなければならない。後者の場合、冷却機が非常に高価になり、用途の通常動作中に最大限に利用されることはほとんどない。
【0009】
米国特許第20110312502号公報は、コンテナから磁石への液体ヘリウムの移送をコンテナ内のガス圧を介して制御することを提案している。
【0010】
米国特許出願公開第2019/0211970号公報には、極低温ヘリウムを自動的に補充するシステムが記載される。このシステムは、液体ヘリウムを圧縮ガス源からLHeデュワーに導入することができる自動バルブ装置を備え、LHeデュワーは液体ヘリウムの移送ラインを介してLHeクライオスタットに接続されている。LHeデュワーとLHeクライオスタット内のLHeの液面レベルはセンサによって監視される。
【0011】
米国特許第3,399,691号公報は、低温ポンプを用いて液体ヘリウムを貯留場所から容器に圧送することを提案している。
【0012】
特開昭54-161109号公報では、液体ヘリウムの貯留コンテナとクライオスタットとの間の供給ラインに出口弁を設けること、及び液体ヘリウムの移送を準備するために、最初に供給ラインの前部を冷却することが提案され、気体ヘリウムは、出口弁によってバルーン貯蔵器に捕集される。
【0013】
仏国特許出願公開第2,752,037,A1号公報は、液体ヘリウムをクライオスタットに充填するときにクライオスタットから流出する気体ヘリウムが液体ヘリウムの供給ラインの傍らを通過することを企図する。流出するヘリウムを捕集し、特に圧縮することができる。
【0014】
J.G.Weisend II(ed.)、Cryostat Design,International Cryogenics Monograph Series,Springer International Publishing Switzerland 2016,9章から、特に真空断熱を備えた様々な種類の極低温移送ラインが知られるようになった。
【0015】
米国特許第6,442,948号公報には、液体ヘリウムの再凝縮装置が記載され、気体ヘリウムが液体ヘリウムのリザーバからラインを介して冷凍庫に導かれ、冷凍庫で液化され、再液化されたヘリウムが別のラインを介してリザーバに戻される。1つのラインともう1つのラインは共通の真空断熱体内に延びている。
【0016】
Bruker BioSpin社の03/2022の日付の企業刊行物“Heliosmart Recovery Technical Specifications”から、NMR磁石から蒸発するヘリウムを連続運転で捕集すること、及び圧縮ガスシリンダに貯蔵することが知られている。Bruker Heliosmart Recoveryは、内部バルーン貯蔵器と3段階の高圧コンプレッサを備えている。これは、液体ヘリウムを実用クライオスタットに補充するときに、この実用クライオスタットから押し出される高流量で生じるヘリウムを捕捉及び貯蔵するようには設計されていない。
【0017】
D.Kramer,“Helium is again short in supply”,Physics Today,4.April 2022,には、液体ヘリウムの供給が現在不足しており、これが過去2年間にヘリウムの価格を倍増させたということが記載される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の課題は、移送損失を簡単に低減することができる液体ヘリウム移送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題は、本発明によれば、
-実用ヘリウム容器に接続するための、リザーバヘリウム容器内に通じる気体ヘリウムの戻りラインと、
【0020】
-液体ヘリウムをリザーバヘリウム容器から供給ラインを通して実用ヘリウム容器に、かつ気体ヘリウムを実用ヘリウム容器から戻りラインを通してリザーバヘリウム容器に搬送可能である搬送装置と、を更に備えることを特徴とする冒頭で述べた種類の装置によって解決される。
【0021】
本発明の範囲内で、実用クライオスタット又はその実用ヘリウム容器をリザーバクライオスタット又はそのリザーバヘリウム容器からの液体ヘリウムで充填する場合に、供給ラインと戻りラインによって閉じた系を構成することができる。
【0022】
新しい液体ヘリウムを実用ヘリウム容器に充填するときに、この実用ヘリウム容器から押し出される気体ヘリウムは、中間貯蔵なしで、かつわずかな入熱で戻りラインを介してリザーバヘリウム容器に戻され、したがって失われることはない。本発明の範囲内で、気体ヘリウムが(例えば、バルーン貯蔵器において大気圧及び周囲温度で)圧縮又は液化される前の複雑な中間貯蔵は必要ではなく、企図もされていない。このようにしてリザーバヘリウム容器に導入された気体ヘリウムは、液体ヘリウムをリザーバヘリウム容器から供給ラインに送り出す、特に押し出すのに寄与することができる。
【0023】
顕著な入熱が行われない場合、実用ヘリウムタンクから押し出される気体ヘリウムの体積は、リザーバヘリウムタンクから送り出される液体ヘリウムの体積、及びリザーバヘリウム容器に戻される気体ヘリウムの体積に相当する。実際には、ある程度の加熱が避けられないため、リザーバヘリウム容器内の圧力上昇下で気体ヘリウムが少なくとも一時的に、リザーバヘリウム容器から送り出される液体ヘリウムより(体積に関して)少し多めにリザーバヘリウム容器に送り込まれる。これは、液体ヘリウムを供給ラインを通して送り出す場合に有用であるかもしれないが、(圧力上昇が大きくなりすぎない場合は)重要でない。リザーバヘリウム容器内の液体ヘリウムの温度が沸点(大気圧で4.2K)よりわずかに低い場合、リザーバヘリウム容器に送り込まれる気体ヘリウムは液体ヘリウムによって再び冷却され、特に4.2Kまで冷却され、それによってリザーバヘリウム容器内の圧力上昇は制限された状態である。例えば、(液体ヘリウム移送の開始時)リザーバヘリウム容器内の液体ヘリウムの温度は、3.6K以下又は3.0K以下であり得る。圧力が過度に上昇した場合、気体ヘリウムを例外的にシステム、例えばリザーバヘリウム容器から、特に安全弁(過圧弁)を介して周囲環境中に放出することができる。しかし、通常、これは必要でなく、移送するための装置及び接続された実用クライオスタットを備えるクライオスタットアセンブリが、液体ヘリウムを移送するときにヘリウムにとって閉じた状態に構成されていることが好ましい。
【0024】
搬送装置により、液体ヘリウムがリザーバヘリウム容器から実用ヘリウム容器に搬送され、気体ヘリウムが実用ヘリウム容器からリザーバヘリウム容器に搬送される。その場合、典型的には、一方の流れは直接搬送され(大抵の場合、気体ヘリウムの流れ)、もう一方のガス流は間接的に搬送される(大抵の場合、液体ヘリウムの流れ)。搬送装置は、典型的には搬送ポンプを含む。搬送装置を介して、リザーバヘリウム容器及び実用ヘリウム容器内の圧力(ガス圧)、特にリザーバヘリウム容器と実用ヘリウム容器との間の圧力差に影響を及ぼすことができる。通常、移送中にはリザーバヘリウム容器内の圧力が実用ヘリウム容器内の圧力より多少高くなる。典型的には、空気又は空気成分によるヘリウム回路の汚染を最小限に抑えるために、システム全体が周囲環境の大気圧よりわずかに過剰圧力で維持される。
【0025】
リザーバヘリウム容器及び実用ヘリウム容器は、典型的にはそれぞれ少なくとも50リットル、好ましくは少なくとも100リットルの貯蔵容量を有する。
【0026】
発明の好ましい実施形態
本発明による装置の好ましい一実施形態では、供給ラインと戻りラインが真空断熱されている。これによって、ヘリウム容器間の輸送時の液体ヘリウムと気体ヘリウムの加熱が最小限に抑えられる。
【0027】
供給ラインと戻りラインが少なくとも部分的に共通輸送ラインに形成され、共通輸送ラインが共通の真空境界(Vakuumbegrenzung)内に、供給ラインと戻りラインの両方が延びる真空室を有するというこの実施形態の一発展形態が好ましい。これは、省スペース的であるとともに材料節約的であり、かつ取り扱いを容易にし、エネルギー的にも有利である。特に、戻りラインにより、供給ラインを周囲環境から少なくとも部分的に熱的に切り離すこと、又は供給ラインと周囲環境との熱的結合を最小限に抑えることが可能である。供給ラインと戻りラインは、典型的には、共通輸送ラインとしての実用クライオスタットに近い区分に延び、かつ共通輸送ラインにより実用クライオスタットの共通ヘリウム塔を介して実用クライオスタットに接続され、好ましくは、特に実用クライオスタットにおける超電導磁石コイルのクエンチ発生時に、実用ヘリウム容器から気体ヘリウムを緊急放出するために少なくとも1つの別のヘリウム塔の全断面を利用することができる。磁石コイルのクエンチと呼ばれるのは超電導性の突然の消失であり、これにより貯蔵された電磁エネルギーが熱として突然放出され、それに伴い大量のヘリウムが突然蒸発する可能性がある。
【0028】
その場合、供給ラインと戻りラインが共通の真空境界内で同軸に延び、供給ラインが半径方向で戻りラインの内側に位置する発展形態が特に有利である。それによって、戻りラインが供給ラインを熱的に遮蔽し、つまり戻りラインは放射シールドとして機能する。
【0029】
供給ラインと戻りラインとが共通の真空境界内で互いに平行に、かつ相並んで延びる発展形態も好ましい。これは構造的に特に簡単で安価に構成することができる。
【0030】
別の発展形態では、戻りラインは、1つ又は複数の間隔保持器を用いて共通の真空境界に懸架されていることと、供給ラインは、1つ又は複数の間隔保持器を用いて戻りラインに懸架されているが共通の真空境界には懸架されていないことが企図されている。それによって、間隔保持器を介した熱伝導に関する限り、供給ラインが真空境界から切り離され、液体ヘリウムを導く供給ラインへの周囲環境からの入熱が特に少なくなる。
【0031】
供給ラインのライン断面QZと戻りラインのライン断面QRとが
QR>QZ、
好ましくはQR≧3*QZ、
特に好ましくはQR≧5*QZ
である実施形態が有利である。この場合、装置は気体ヘリウムの流れが多少暖まる場合でも非常に確実に動作することができ、戻りラインの圧力損失が最小限に抑えられる。
【0032】
更に、供給ラインと戻りラインが可撓性に形成されている実施形態が好ましい。これは、供給ラインと戻りラインの取り扱いと敷設を、とりわけ実用クライオスタットに液体ヘリウムを1回充填するために一時的に設置するだけの場合に容易にする。
【0033】
搬送装置が供給ラインに液体ヘリウムのための循環ポンプを含む実施形態が有利である。それによって、液体ヘリウムを非常に効率的に移送することができ、液体ヘリウムの搬送速度を直接コントロールすることができる。液体ヘリウムを送り出すのに(ガス)圧力が必要ないため、リザーバヘリウム容器内に比較的低い圧力を設定することができる。
【0034】
搬送装置が戻りラインに気体ヘリウムのための循環ポンプを含む実施形態が特に好ましい。これは構造上簡単に構成することができ、気体ヘリウムの循環ポンプを安価に入手でき、かつ簡単で安全に動作させることができる。供給ラインにおけるポンプについて注意しなければならない気泡の形成とキャビテーション効果はここでは重要でない。
【0035】
この実施形態の好ましい発展形態では、戻りラインは、入口領域と出口領域を含むラインループを備え、出口領域は、熱交換器を介して入口領域に熱的に結合されていることと、
ラインループが循環ポンプを含み、
特に循環ポンプが室温であることと
が企図されている。この形式では、循環ポンプが極低温動作のために構成されている必要がなく、これは構造上特に簡単であり、特にコスト効率的でもある。
【0036】
搬送装置は、リザーバヘリウム容器内にピストンを含み、ピストンは、リザーバヘリウム容器内で移動可能であり、かつ気体ヘリウムのためのリザーバヘリウム容器の第1の部分を液体ヘリウムのためのリザーバヘリウム容器の第2の部分から分離することと、
供給ラインは、第2の部分に延び、戻りラインは、第1の部分に通じることと、を企図する実施形態も有利である。ピストン(スライダとも呼ばれる)により、液体ヘリウムをリザーバから簡単に送り出すことができる。その場合、循環ポンプは必要でない。それに加えて、実用クライオスタットとリザーバクライオスタットとの間の供給ラインと戻りラインは、簡単に、完全に共通の輸送ラインとして延びることができる。
【0037】
更に、装置は、装置及び/又は実用ヘリウム容器内のヘリウム圧を制御するための制御装置を更に備え、
特に制御装置は、搬送装置を制御するように形成されている実施形態が好ましい。典型的には、空気の侵入を最小限に抑えるために、装置(特にリザーバヘリウム容器)及び実用ヘリウム容器内のどこでもヘリウム圧が大気圧より高くなるように調整される。制御装置を介して、リザーバヘリウム容器と実用ヘリウム容器との間の、特に液体ヘリウムを送り出すのに十分な圧力差を、特に搬送装置を制御して設定することができる。システム、例えば実用ヘリウム容器内に高圧が発生した場合でも、制御装置によって少なくとも1つの排出弁の開放を引き起こすことができる。代替的又は追加的に、制御装置から独立した1つ又は複数の(例えば受動的に、ばねのみで付勢される)過圧弁を設けることも可能である。制御装置は、典型的には、実用ヘリウム容器内のガス圧センサに接続されている。典型的には、制御装置は、リザーバヘリウム容器内のガス圧センサも含む。
【0038】
この実施形態の、装置が、
-特にリザーバヘリウム容器内に配置された加熱装置、及び/又は
-特に実用ヘリウム容器に接続するための制御弁を有するヘリウム圧縮ガス貯蔵器と、を更に備え、特に制御装置は、加熱装置及び/又は制御弁を制御するように形成されている発展形態が好ましい。特に周囲環境からの空気の侵入を最小限に抑えるわずかな過剰圧力をシステム内に確保するために、システム内のガス量、したがって圧力を高めることが加熱装置又はヘリウム圧縮ガス貯蔵器によって簡単に可能である。加熱装置は、例えば、リザーバヘリウム容器内の液体ヘリウムの中に突き出す供給ラインの下端に配置することができる。加熱装置は、典型的には電気式である。ヘリウム圧縮ガス貯蔵器(「圧縮ガスボンベ」)は、典型的には室温である。
【0039】
有利には、一実施形態において、装置が、ヘリウムのための実験室液化器を備え、実験室液化器は、
-リザーバヘリウム容器を有するリザーバクライオスタットと、
-気体ヘリウムを液化するためのクライオクーラと、を含むことが企図されている。実験室液化器は、リザーバクライオスタットを利用可能にする。実験室液化器の液化能力は比較的低く、典型的には40リットル/日以下、大抵の場合、25リットル/日以下、多くの場合、約20リットル/日である。実験室液化器は、通常動作中に、実用クライオスタット(例えばNMR機器)での用途の通常動作中に気体ヘリウムとして蒸発され、クライオクーラにより液化された液体ヘリウムを蓄積することができる。クライオクーラにより、特に蓄積された液体ヘリウムを、大気圧(約1bar)での液体ヘリウムの沸点、すなわち4.2Kで冷却することができ、それによって、実用クライオスタットに補充するときに液体ヘリウムを移送するための冷熱リザーブ(Kaeltereserve)をとっておくことができる。この冷熱リザーブ(「冷熱エネルギー」)は、液体ヘリウムの移送中にシステムへの入熱を補償し、それによってシステムにおける不都合に高い昇圧を低減又は回避することができる。クライオクーラは、長期間(数週間など)にわたって冷熱リザーブを蓄積でき、それによってクライオクーラを通常動作で必要とされるよりわずかに大きくしさえすればよい。
【0040】
本発明による極低温容器アセンブリ
本発明の範囲内には、極低温容器アセンブリであって、上記の本発明による装置と、実用ヘリウム容器を有する実用クライオスタットと、を備え、
供給ラインは、実用ヘリウム容器に接続され、かつ実用ヘリウム容器内に通じ、
戻りラインは、実用ヘリウム容器に接続され、かつ実用ヘリウム容器から延びる、極低温容器アセンブリも属する。装置から、実用ヘリウム容器に液体ヘリウムを充填することができ、ヘリウム、特に液体ヘリウムの移送損失を最小限に抑えることができる。液体ヘリウムを移送するための装置(「移送装置」)と、実用ヘリウム容器を有する実用クライオスタットとの間の接続は、典型的には解除可能に(又は可逆的に)形成され、それによって、通常動作中に移送装置を実用クライオスタットから取り外すことができ、場合によっては、実用クライオスタットが複数の場合でも交互に使用することができる。
【0041】
極低温容器アセンブリは、実用ヘリウム容器の領域に少なくとも1つの圧力センサを更に備え、特に圧力センサは装置の制御装置に接続されている、本発明による超低温容器アセンブリの実施形態が有利である。特にシステムへの空気の侵入を最小限に抑えるため、制御装置を用いてガス圧を周囲圧力(大気圧)より高く保つべく、圧力センサにより実用ヘリウム容器内のガス圧力を監視することができる。
【0042】
本発明による液体ヘリウムを移送する方法
本発明の範囲内には、液体ヘリウムをリザーバクライオスタットのリザーバヘリウム容器から実用クライオスタットの実用ヘリウム容器へ移送する方法であって、
リザーバヘリウム容器から延び、かつ実用ヘリウム容器に接続されている液体ヘリウムの供給ラインを通して、リザーバヘリウム容器に貯留された液体ヘリウムがリザーバヘリウム容器から実用ヘリウム容器に搬送される、方法において、
同時に、実用ヘリウム容器に接続され、かつリザーバヘリウム容器内に通じる気体ヘリウムの戻りラインを通して、気体ヘリウムが実用ヘリウム容器からリザーバヘリウム容器に戻されることを特徴とする方法が更に属する。この方法は、実用クライオスタットにリザーバクライオスタットからの液体ヘリウムを補充するときにヘリウム、特に液体ヘリウムの移送損失を最小限に抑える。戻りラインを介してリザーバヘリウム容器に戻されたヘリウムは失われることがなく、中間貯蔵される必要がなく、その際、液体ヘリウムをリザーバヘリウム容器から送り出すこと、特に押し出す手助けをすることができる。典型的には、液体ヘリウムを移送する場合、搬送能力は少なくとも8kg/h、大抵の場合、少なくとも12kg/hである。この方法の範囲内で、上記の本発明による装置、又は更に上記の本発明による極低温容器アセンブリも使用することができる。実用クライオスタットは、特に、NMR磁石のクライオスタットであり得る。
【0043】
供給ラインを通る液体ヘリウムの体積流量と、戻りラインを通る気体ヘリウムの体積流量がほぼ同じであることを企図する本発明による方法の一変形形態が好ましい。換言すれば、液体ヘリウムの移送は、リザーバヘリウム容器と実用ヘリウム容器との間の閉回路で行われる(周囲環境への出口、又はリザーバヘリウム容器及び実用ヘリウム容器の外側にヘリウムの追加的中間貯蔵部がない)。移送は非常に効率的であり、移送損失を最小限に抑える。典型的には、供給ラインを通る液体ヘリウムの体積流量と戻りラインを通る気体ヘリウムの体積流量とは、体積流量の小さい方に対して、10%以下、大抵の場合、5%以下、好ましくは1%以下の差がある(安定条件下でのヘリウム移送の場合)。
【0044】
リザーバヘリウム容器内の液体ヘリウムの温度TLHeは、少なくとも液体ヘリウムの移送の開始時に、
TLHe<4.2K、
好ましくはTLHe≦3.6K、
特に好ましくはTLHe≦3.0K
であり、
特にリザーバヘリウム容器内の液体ヘリウムの温度TLHeは、液体ヘリウムの移送開始前に、リザーバヘリウム容器を有するリザーバクライオスタットが一体化された実験室液化器のクライオクーラを用いて設定されたことを企図する変形形態も有利である。沸点(大気圧で4.2K)よりはるかに低い温度の液体ヘリウムによって、実用クライオスタットへの液体ヘリウムの移送中にシステムへの入熱を補償することができる冷熱供給(Kaeltevorrat)が設定され、それによりシステム内の昇圧を制限することができ、特に実用クライオスタットからリザーバクライオスタットに戻されたヘリウムガスを、冷熱供給によって再び冷却することができ、場合によっては再液化することもできる。リザーバヘリウム容器内の液体ヘリウムが超流動ヘリウムへの相転移の温度(大気圧で2.17K)未満に冷却されると、相転移の領域における高い比熱によって特に大きい冷熱供給が利用可能である。
【0045】
本発明の他の利点は、以下の説明及び図面から明らかになる。本発明により、上記及び下記の特徴をそれぞれ単独で、又はいくつかを任意に組み合わせて使用することもできる。図示及び説明される実施形態は、網羅的な列挙と解されるべきではなく、むしろ本発明を説明するための例示的な性格を有する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】戻りラインに低温循環ポンプを有する、液体ヘリウムを移送するための装置を備えた本発明による極低温容器アセンブリの第1の実施形態の模式図である。
図2】供給ラインに循環ポンプを有する、液体ヘリウムを移送するための装置を備えた本発明による極低温容器アセンブリの第2の実施形態の模式図である。
図3】戻りラインのラインループに室温の暖かさの循環ポンプを有する、液体ヘリウムを移送するための装置を備えた、本発明による極低温容器アセンブリの第3の実施形態の模式図である。
図4】共通の真空境界を有する共通輸送ラインを備えた、本発明による極低温容器アセンブリの第4の実施形態の模式的部分図である。
図5】同軸の供給ラインと戻りラインを備えた、本発明の共通輸送ラインの第1の形式の模式的断面図である。
図6】平行な供給ラインと戻りラインを備えた、本発明の共通輸送ラインの第2の形式の模式的断面図である。
図7】リザーバクライオスタットが実験室液化器に一体化された、液体ヘリウムを移送するための装置を備えた本発明による極低温容器アセンブリの第5の実施形態の模式図である。
図8】剛性壁を含むリザーバヘリウム容器内を垂直に移動可能なピストンを有する、液体ヘリウムを移送するための装置を備えた、本発明による極低温容器アセンブリの第6の実施形態の模式図である。
図9】部分的にベローズとして形成された壁を有するリザーバヘリウム容器内を垂直に移動可能なピストンを有する、液体ヘリウムを移送するための装置を備えた、本発明による極低温容器アセンブリの第7の実施形態の模式図である。
図10】ピストンがベローズと一緒にリザーバヘリウム容器内の部分空間を画定する、剛性壁を含むリザーバヘリウム容器内を水平方向に移動可能なピストンを有する、液体ヘリウムを移送するための装置を備えた、本発明による極低温容器アセンブリの第8の実施形態の模式的部分図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
発明の背景
本発明の範囲内で、液体ヘリウムは可能な限り持続可能に利用されるべきである。例えばNMR及びMRIなどの超電導磁石は、通常、液体ヘリウムで冷却される。ヘリウムは通常、天然ガス採収の副産物として得られるか、いわゆる「ヘリウム井」(ヘリウムの割合が格別に高いガス井)から採収される。ヘリウムは希少資源であり、世界市場で入手できる量は少なくなりつつある。この傾向は、将来更に強まるだろう。
【0048】
ヘリウム不足は価格を常に上昇させ、そのことがヘリウムを必要とする機器(例えば超電導磁石)の動作コストをますます高価にする。更に、液体ヘリウムが特定の時点にそもそも利用可能になるのかどうかということがかなり不確実な場合があり、それにより、液体ヘリウムを必要とする設備の運転を中止しなければならなくなる。
【0049】
液体ヘリウムは、いわゆる「輸送デュワー」(ここではリザーバクライオスタットとも呼ばれる)を用いて供給者から(例えば、NMR磁石を動作させる)消費者へ輸送される。これは真空断熱容器であり、典型的にはキャスタが装備されている。次に、真空断熱移送ラインを用いて、液体ヘリウムを輸送デュワーからNMR磁石又は別の実用クライオスタットに詰め替える必要がある。本明細書で説明される発明は、この転送をより効率的にする手助けをする。
【0050】
多くの消費者は、機器(例えばNMR磁石)から蒸発したヘリウムガス、又は移送時に機器から押し出されたヘリウムガスが捕捉され、次いで蓄圧器又はヘリウム液化器に供給されるヘリウム回収設備にも投資している。次いで、ヘリウム液化器によって再び液化されたヘリウムは、超電導コイルを冷却するためにNMR磁石に再び供給することができる。
【0051】
回収システムは、典型的には、気体ヘリウムを省スペース的に保管するために液化又は圧縮する前に中間貯蔵するための大型の低圧蓄圧器(例えば比較的多くのスペースを必要とする大型のバルーン貯蔵器など)、又は実用クライオスタットへの液体ヘリウムの補充時に実用クライオスタットから押し出されるヘリウム流のために直接設計される必要のある非常に高性能で、したがって高価なコンプレッサが上流に接続される高圧蓄圧器のどちらかを備えている。理論的には、実用クライオスタットから漏れ出るヘリウムを液体状態で省スペース的に保管するために相応の大きさにした冷凍機によって直接冷却及び液化することもできるかもしれない。その場合、回収システムの冷凍機は、実用クライオスタットに液体ヘリウムを補充するときに実用クライオスタットから押し出される非常に高流量のヘリウムガスのために直接設計されていなければならない。後者の場合、冷却機が非常に高価になり、用途の通常動作中に最大限に利用されることはほとんどない。本明細書で説明される発明は、大型のバルーン貯蔵器、特大のコンプレッサ、又は特大の冷凍機を省略することを可能にする。
【0052】
ヘリウム移送は、通常、次のように進行する(冒頭で述べたBruker Biospin AGの企業刊行物,“NMR Magnet System UltraShield Magnets(English version)User Manual Version 006”も参照)。
【0053】
・輸送デュワーがNMR磁石の近くに運ばれる(数メートルの距離)。
【0054】
・暖かい移送ラインが輸送デュワーに挿入され、それにより移送ラインの端が液面より下に位置するようになる。
【0055】
・暖かい移送ラインの入熱によって輸送デュワー内のヘリウムが蒸発し、それによって輸送デュワー内の圧力が上昇し、液体ヘリウムが移送ラインに押し込まれ、それによって移送ラインが冷却される。冷却過程中にラインの端から漏れ出るヘリウムは、通常、捕捉されず、大気中に失われる。長さ数メートルの典型的な移送ラインに対して、冷却のために数リットルの液体ヘリウムが必要とされる。
【0056】
・輸送デュワーとは反対側のラインの端から漏れ出るヘリウムが十分に冷える(すなわち移送ラインが十分に冷却される)と直ちに、移送ラインがNMR磁石に接続される(又は移送ラインの端がNMR磁石のクライオスタットに挿入される)。
【0057】
・移送ラインをNMR磁石に接続した後に、液体ヘリウムが輸送デュワーからNMR磁石に流れる。輸送デュワーとNMR磁石との間に存在する圧力差によって質量流量が動かされる。上述のように移送ラインを挿入することによって輸送デュワー内には過剰圧力が発生している。磁石の出口(NMR磁石からヘリウムが漏れ出る接続部)は、大気中に直接通じているか、又は出口に常にほぼ大気圧が存在する回収システムに接続されている。
【0058】
・通常、移送ラインの挿入時の入熱によって生じる輸送デュワー内の圧力上昇は所望量のヘリウムを移送するのに十分ではない。したがって、圧縮ボンベからのヘリウムガスにより輸送デュワーを圧力調節器を介して一定の高さに保つことによって輸送デュワー内の圧力が人為的に高く保たれる。典型的には、輸送デュワーに設定される過剰圧力は約50~100mbarである。
【0059】
ヘリウム移送が開始される前にNMR磁石のヘリウムタンクは空ではなく、タンクは大部分が約4.2Kの温度で気体ヘリウムで満たされている。移送が進行して液体ヘリウムがヘリウムタンクをゆっくりと満たすと、移送の開始前にヘリウムタンク内に入っていた低温気体ヘリウムがヘリウムタンクから徐々に押し出され、磁石の出口から漏れ出る。
【0060】
4.2K及び大気圧で気体ヘリウムは、密度が16.5g/lである。4.2K及び大気圧で液体ヘリウムは、密度が125g/lである。したがって、例えば100リットルの液体ヘリウム、すなわち12.5kgのヘリウムが移送される場合、100リットルの気体ヘリウム、すなわち1.65kgが磁石から押し出される。これは、13.2リットルの液体ヘリウム、又は移送量の13.2パーセントに相当する。
【0061】
最悪の場合、この量のヘリウムが磁石の出口を通って大気中に漏れ出る。これは持続可能でないため、多くの利用者は、ヘリウム移送時に生じるヘリウム(「移送損失」)を捕捉するため、かつ高圧蓄圧器及び/又は液化器に供給するために十分な大きさのガスバルーン貯蔵器を設置する決断をする。ガスバルーンに通じるラインシステム、又はバルーン自体において、気体ヘリウムが室温に暖まる。ガスバルーンは、通常、低温に対応していないため(例えば氷形成、凝縮水、又は材料脆化などによる)、ガスバルーンがガスバルーンの上流に接続された熱交換器で意図的に加熱されることもある。ヘリウムガスを加熱すると、ガスの体積が大幅に増加する。大気圧及び4.2Kで100リットルの気体ヘリウムは、大気圧及び室温で約10,000リットル(すなわち10m)に相当する。
【0062】
ヘリウムをNMR磁石に移送する場合、磁石の種類に応じて、典型的には100~400リットルの液体ヘリウムが移送される。移送には約1時間かかる。この間、室温で10~40立方メートルの気体ヘリウムが生じ、これをガスバルーンに貯蔵するか、又は回収システムで処理(例えば蓄圧器で圧縮)する必要がある。これらの移動損失は、13l/h~50l/hの液体ヘリウム(又は1時間当たり約1.6~6.6kgのヘリウム)に等しい。
【0063】
比較のために、通常動作時のいくつかの典型的なNMR磁石のヘリウム消費量を示す。
・400MHz:0.013l/h
・500MHz:0.013l/h
・600MHz:0.016l/h
・700MHz:0.026l/h
・800MHz:0.05l/h
・1.2GHz:0.25l/h
【0064】
液体ヘリウムの移送時に単位時間当たりの移送損失は通常動作時のヘリウムの消費量よりはるかに大きいこと、したがって、回収システム(これがヘリウム移送も処理できるようにする場合)を、比較的まれに(典型的には数か月の間隔で1~2時間の間だけ)しか生じない大きいピーク負荷のために設計する必要があることは明らかである。特に、数立方メートルの体積のガス貯蔵バルーンは、NMR実験室に収容することが難しく、建物内の貴重な容積を奪う。更に、ガスバルーンには他の欠点もある。バルーンの表面による拡散によって、例えばヘリウムが漏れ出る可能性があり、不純物(湿気、空気の成分)がヘリウム回路に侵入する可能性がある。
【0065】
最近、通常動作時の蒸発速度に合わせた大きさにした小型の回収システムが市場に投入された、冒頭で述べたBruker BioSpinの企業刊行物,“Heliosmart Recovery Technical Specifications”を参照。非常に安価でコンパクトであるため簡単に設置できるこのようなシステムでは、移送損失を捕捉できず、したがって失われることが甘んじて受け入れられている。
【0066】
更に、プロセスの開始時に室温の暖かさの気体ヘリウムをガスボンベから輸送デュワーに導入するか、又は液体ヘリウムを蒸発させる、したがって輸送デュワー内の圧力を上昇させる熱を輸送デュワー内で放散させる一般的なやり方ではエネルギー的に不利である。元来、多大なエネルギーを費やして液化された液体ヘリウムが無駄になる。
【0067】
例えば冒頭で述べた米国特許第6,442,948号公報に記載されているように、用途の通常運転時にヘリウムを閉回路で冷却するために循環させるための様々なコンセプトがある。このような循環の場合、短時間に大量の気体ヘリウムを処理する必要はない。ただし、相応の設備の調達と運用は、大抵の場合、高価で複雑であり、様々な動作障害が発生する可能性がある。それに加えて、これらの設備では、通常動作で動作しているクライオクーラを通じて実用クライオスタットに振動が導入され易く、所望の用途(例えばNMR測定)を害する可能性がある。閉回路での冷却に基づく解決策は、既存のシステムに簡単には追加装備することができず、したがって現在のすべての運用事業者にとって考慮の対象にならない。
【0068】
それに対して本発明は、大量の液体ヘリウムが短時間で時々移送され、その場合、クライオスタット(実用クライオスタット)において冷却のために長時間利用可能な設備に関するものである。このような「バッチ移送」の利点は、冷却のために継続的に循環するヘリウムに頼ることなく、クライオスタットを独立して動作させることができるということである。これは特に高い信頼性と振動の少なさにつながり、それは多くの用途にとって、例えばNMRにおいて重要である。しかしながら、そのようなバッチ移送の場合、上記のように大量の低温ヘリウムガスが押し出され、処理されなければならないが、本発明によればこれを成し遂げることができる。全世界の超電導磁石を備えたすべての既存のNMR分光計の大部分(推定>99%)がバッチ転送法で動作する。
【0069】
発明の概観
本発明の範囲内で、適切な装置を用いてヘリウム移送を、室温で大量のヘリウムガスが生じないように実行することができる。このことは、特に低温ヘリウムガスが断熱ラインを通した移送中にNMR磁石(又はより一般的には実用クライオスタット)から導出され、輸送デュワー(リザーバクライオスタットとも呼ばれる)の空いた容積に貯蔵され、そこで部分的に増圧のためにも使用されることによって達成される。循環に必要な圧力差は、特別に低温流体に適したポンプを用いて設定することができる。
【0070】
循環ポンプは、NMR磁石へ通じる液体ヘリウムのライン、又は磁石から延びる気体ヘリウムのラインのいずれかに配置することができる。沸騰する液体(4.2K及び大気圧でのヘリウム)の汲み出しの要求が回避されるため後者が有利である。沸騰する液体は、例えば気泡/キャビテーションが形成される危険性があるため、ポンプで扱うことが難しい。
【0071】
主に動作の安全性と信頼性の側面に関係する理由から、可能な限りヘリウム回路のどこにも、特にNMR磁石において、大気圧を下回る圧力が生じないように注意しなければならない。システムに漏れがあると、空気又は他の不純物がNMR磁石に吸い込まれて、そこで凍結することになり、かつそこで氷結及び詰まりにつながることになる。NMR磁石内の圧力は、圧力制御弁と、(圧力調節器を介した)ガス貯蔵器への接続とによって実現することができる。
【0072】
必要な場合に圧力上昇を引き起こすことができるようにするため、回路内のガス量を増加させることができる電気加熱器を設けることも有利である。この加熱装置は、輸送デュワー内で液体ヘリウム中に突き出る移送ラインの端に配置することができる。このことには、加熱器が移送装置の一部であり、NMR磁石又は輸送デュワーのいずれにも変更を加える必要がないという利点がある。
【0073】
ヘリウム移送に必要な輸送デュワー(又はリザーバクライオスタット)とNMR磁石(又は実用クライオスタット)との間の圧力差は、回転数が調節されるポンプを使用することによって達成することができ、ポンプのポンプ能力は、センサにより測定される圧力に依存して制御される。圧力センサも移送装置の一部とすることができる。ポンプを可変インターバルでオン及びオフに切り替える2点制御も可能である。
【0074】
低温流体に適したポンプに代えて、室温でのポンプを熱交換器と組み合わせて使用することもできる。これには、とりわけ、例えばチューブ・イン・チューブ式の向流型熱交換器が特に望ましい。
【0075】
好ましい実施形態の提示
本発明によるクライオスタットアセンブリ1の第1の好ましい実施形態が図1に示されている。
【0076】
クライオスタットアセンブリ1は、ここではNMR磁石に属し、液体ヘリウム6/6a用の真空断熱実用ヘリウム容器3を有する実用クライオスタット2と、液体ヘリウム6を移送するための装置5とを備える。この装置5は、液体ヘリウム6/6b用の真空断熱リザーバヘリウム容器8、液体ヘリウム6用の真空断熱供給ライン9、及び気体ヘリウム11用の真空断熱戻りライン10を有するリザーバクライオスタット7(輸送デュワーとも呼ばれる)を備える。戻りライン10には、搬送装置49として低温気体ヘリウムの循環ポンプ12aが配置されている。
【0077】
液体ヘリウム6/6bをリザーバヘリウム容器8から供給ライン9を通して実用ヘリウム容器3へ移送するために、低温気体ヘリウム11aが循環ポンプ12aによって実用ヘリウム容器3から吸い出され、リザーバヘリウム容器8に導入される(「直接流」)。それによって、リザーバヘリウム容器8内の気体ヘリウム11/11bのガス圧が上昇し、液体ヘリウム6/6bがリザーバヘリウム容器8から供給ライン9のリザーバクライオスタット側の端13で供給ライン9に押し込まれる、液体ヘリウム6/6cは、供給ライン9の実用クライオスタット側の端14から出て実用クライオスタット2に流れ込む(「間接流」)。
【0078】
循環ポンプ12aは電子制御装置17によって制御され、電子制御装置はリザーバヘリウム容器8内の圧力センサ18及び実用ヘリウム容器3内の圧力センサ19も監視する。更に、ここでは、供給ライン9の端13の領域に電気加熱装置20が取り付けられていて、電気加熱装置はリザーバヘリウム容器8の液体ヘリウム6/6b中に浸漬され、この加熱装置20も制御装置17によって制御される。加熱装置20を液相中に配置することは、圧力制御(又は圧力差制御)の特に迅速な応答挙動を保証する。或いは、加熱装置を気相中に配置することもでき、このことにはエネルギー的に有利であり得る(液体ヘリウム6の損失を少なくして一定の圧力上昇を達成できる)が、その場合、圧力制御の反応は遅くなる。制御装置17は、循環ポンプ12aを介して、リザーバヘリウム容器8内の圧力が実用ヘリウム容器3内の圧力よりわずかに高くなるようにすることができ、それにより液体ヘリウム6/6cが所望の流量で供給ライン9を通って実用ヘリウム容器3に流れる。これには50~100mbarの圧力差があれば、大抵の場合、十分である。システム全体の圧力が低くなりすぎると、特に実用ヘリウム容器3内又はリザーバヘリウム容器8内の圧力が周囲圧力(約1barの大気圧)を下回ると、緊急措置として、制御装置17が、加熱装置20によってリザーバヘリウム容器8内の少量のヘリウム6bを蒸発させることができる。ヘリウムガスを追加すると、システムのガス圧が上昇する。
【0079】
図示される実施形態では、供給ライン9と戻りライン10は別々に形成され、ライン9、10の各々は、実用クライオスタット2固有の磁石塔(ヘリウム塔)15、16に接続される。リザーバクライオクーラ7内のリザーバヘリウム容器8は、典型的には100~400リットルの貯蔵容量を有する。
【0080】
本発明によるクライオスタットアセンブリ1の第2の実施形態が図2に示され、この第2の実施形態は、図1の形式と大部分が類似しているため、ここでは重要な相違点のみを説明する。
【0081】
図示された実施形態では、搬送装置49は供給ライン9に配置され、液体ヘリウム6/6bをリザーバヘリウム容器8から供給ライン9を通して実用ヘリウム容器3へ圧送する(「直接流」)循環ポンプ12bとして形成されている。実用ヘリウム容器3に流入する液体ヘリウム6/6cは、相応の体積の気体ヘリウム11/11aを戻りライン10を通してリザーバヘリウム容器8に押し込む(「間接流」)。リザーバヘリウム容器8には、気体ヘリウム11/11bが液体ヘリウム6/6bの上に蓄積し、液体ヘリウム6/6bを供給ライン9に送り込む手助けをすることができる。
【0082】
図示された実施形態では、室温の暖かさのヘリウム圧縮ガス貯蔵器21が設けられ、これは制御弁22を介して実用ヘリウム容器3に接続されている。システム全体の圧力が低くなりすぎると、特に実用ヘリウム容器3内又はリザーバヘリウム容器8内の圧力が(ほぼ大気圧=1barである)周囲圧力を下回ると、制御装置17は、制御バルブ22によって少量のヘリウムガスを実用ヘリウム容器3に注入することができる。ヘリウムガスを追加すると、システム内のガス圧が上昇する。
【0083】
本発明によるクライオスタットアセンブリ1の第3の実施形態が図3に示され、この第3の実施形態は、図1の形式と大部分が類似しているため、ここでは重要な相違点のみを説明する。簡単にするために、図3の図示では制御装置及びそれに接続された構成要素が省略されている。
【0084】
この実施形態では、搬送装置49は、戻りライン10のラインループ23に循環ポンプ12cを備えて形成されている。ラインループ23に熱交換器24が設けられている。図示された形式では、ラインループ23の入口領域23aが外管を備えて形成され、ラインループ23の出口領域23bは、外管内を通る内管を備えて(「チューブ・イン・チューブ」)形成されている。実用ヘリウム容器3から流れ込む、最初は低温の気体ヘリウム11/11bは外管を通って流れ、次いで、室温の暖かさのループ部25に流入し、そこで暖まる。室温の暖かさのループ部25では、循環ポンプ12cが室温(約20℃)の気体ヘリウムを圧送する。次に、室温の暖かさの気体ヘリウムは、循環ポンプ12cから内管に流れ、そこで外管内で取り囲む低温気体ヘリウムによって冷却される。次いで、このようにして熱交換器24により再び冷却された気体ヘリウムは、リザーバヘリウム容器8に流入する。
【0085】
外管と内管を含めた熱交換器24は真空断熱されていることに留意されたい、真空境界26を参照。
【0086】
共通輸送ライン
NMR磁石には通常、ヘリウム容器に通じる2つ又は3つの塔がある。これまでに示した実施形態では、ヘリウムは1つの磁石塔で吸い出され、もう1つの磁石塔で供給されるが、これは、特にNMR磁石が、時々見られるように3つの塔を有する場合に、供給ライン及び戻りラインの敷設及び接続が特に簡単である。或いは、同じ塔でヘリウムの吸出しと供給が行われるように移送装置を形成することも可能及び有利である。このようにして、2塔システムでは、ヘリウム移送中にNMR磁石のクエンチが生じた場合でも、十分に大きな流出断面積が利用できるように、少なくとも1つの塔が自由に使える状態であることを確保することができる。2つのライン(ガス吸出し及び液体ヘリウムの供給)を同軸に、しかし少なくとも共通の真空室に配置することができる。
【0087】
図4は、実用クライオスタット2の領域における本発明による極低温容器アセンブリ1の第4の実施形態を模式的に示す。図1の形式との重要な相違点のみを説明する。
【0088】
示される実施形態では、供給ライン9と戻りライン10は共通の真空境界27内に延び、それによって共通輸送ライン28が形成される。共通輸送ライン28は、単一の磁石塔(ヘリウム塔)15を介して実用ヘリウム容器3に通じている。もう1つの磁石塔16はヘリウム移送には必要でなく、特にその全断面は、実用ヘリウム容器3内の液体ヘリウム6/6aで冷却される超電導磁石コイル(図示せず)のクエンチ発生時にヘリウムガスを放出するために利用可能である。このために、磁石塔16内に過圧弁又は破裂板を設けることができる(詳しく図示せず)。
【0089】
移送ライン(共通輸送ライン)は通常、その取り扱い(例えば輸送デュワー又はNMR磁石への挿入)を容易にするために剛性ではなく可撓性に形成される。したがって、剛性の管の代わりに好ましくは可撓性の金属ベローズが使用される。流体を導くラインには、断熱のために超絶縁フィルム(又はテープ)が巻付けられることが多い。流体を導くラインが暖かく、かつ真空断熱容積を密閉する境界ライン(真空境界とも呼ばれる)と直接接触して許容できない高さの入熱につながることを防ぐために、流体を導くラインが間隔保持器を用いて境界ラインから離間される。これらの間隔保持器(スペーサとも呼ばれる)は熱伝導率が低く、したがって断熱効果のある材料(例えばナイロン又はG10)から作製される。更に、スペーサは、熱が流れるブリッジが可能な限り長くなり、したがって断面が可能な限り小さくなるような幾何学的形状であることが好ましい。更に、2つのラインを同軸に形成することができ、すなわち、気体ヘリウムのライン(円形断面)が液体ヘリウムのラインを包囲し、これらのラインは真空によって互いに絶縁されている。
【0090】
移送ライン(共通輸送ライン)の製造コストを低く抑えるために、両方のラインを円形断面で形成することも可能である。ここで、暖かい真空境界と液体ヘリウムの低温ラインとが直接機械的に接触することを避けるために、液体ヘリウムのラインを、断熱構造を介して気体ヘリウムのラインに機械的に取り付けることが有利である。
【0091】
図5は、本発明の共通輸送ライン28の例示的な第1の形式を模式的断面図で示す。共通輸送ライン28は、ここでは断面が円形に形成されている。共通輸送ラインは、半径方向外側に真空境界27を有し、真空境界には半径方向内方に突出する複数の間隔保持器29が配置されている。間隔保持器の半径方向内側に、断面が円形の戻りライン10が取り付けられ、この戻りラインで気体ヘリウム11/11cが導かれる。戻りライン10が半径方向外側の外壁10aと半径方向内側の内壁10bを有し、これらは補助間隔保持器(詳しく図示せず)によって相互に支持されていることに留意されたい。戻りライン10には、半径方向内方に突出する、別の間隔保持器30が取り付けられている。この別の間隔保持器には、半径方向内側に、液体ヘリウム6/6cを導く円形の供給ライン9が取り付けられている。真空境界27と戻りラインの外壁10aとの間の空間に真空が存在し、戻りライン10の内壁10bと供給ライン9との間の空間に真空が存在する。戻りライン10のライン断面QRは、ここでは供給ライン9のライン断面QZの約12倍の大きさである。
【0092】
図6は、断面が同様に円形に形成された共通輸送ライン28の例示的な第2の形式が模式的断面図で示される。真空境界27には、この場合も内側に突出する間隔保持器29が配置されている。間隔保持器の内側の端には気体ヘリウム11/11cを導く円形の戻りライン10が取り付けられている。戻りライン10から突出する別の間隔保持器30が、戻りライン10の側方に取り付けられている。この間隔保持器の、戻りライン10とは反対の側に、液体ヘリウム6/6cを導く円形の供給ライン9が取り付けられている。供給ライン9と戻りライン10は真空境界27から離間させてある。真空境界27とライン9、10との間の空間には真空が存在する。戻りライン10のライン断面QRは、ここでは供給ライン9のライン断面QZの約6倍の大きさである。
【0093】
図5及び図6の両方の形式において、供給ライン9は戻りライン10を介してのみ真空境界27に機械的に接続されている。
【0094】
実験室液化器における計算例及び一体化
典型的な移送装置では、液体ヘリウムのラインの長さは数メートル、直径は約4mmである。流量が12.5kg/hの場合、このラインにおける流速は約2.2m/sであり、流れは乱流である(レイノズル数は約350,000)。ラインの表面を技術的に平滑と見なすことができる場合、圧力損失を計算することができ、ライン長さ1メートル当たり約10mbarである。このことは、長さが数メートルのラインの場合、液体ヘリウムを移送するために典型的には約50mbarの過剰圧力を加える必要があるという実際の考察とほぼ一致する。
【0095】
本明細書で説明される移送装置では、気体ヘリウムのライン(戻りライン)は、圧力損失が許容できないほど高くならないように形成されていなければならない。気体ヘリウムのライン(戻りライン)を通る質量流量は、液体ヘリウムのライン(供給ライン)を通る質量流量よりはるかに小さいことに留意されたい。具体的には、気体ヘリウムのラインを通る質量流量は、第1の近似では(つまり気体ヘリウムの温度が4.2Kであると仮定した場合)液体ヘリウムのラインを通る質量流量の13.2パーセントにすぎない。第1の近似では、2つのラインを通る体積流量は同じである。したがって、同じ断面では流速が同じであり、かつ気体ヘリウムの密度が液体ヘリウムの密度より小さいため、レイノルズ数も小さくなり(118000)、圧力損失も1メートル当たり1.7mbarのオーダーである(直径4mmの場合)。したがって、気体ヘリウムのラインにおける圧力損失は無視することができる。
【0096】
実際には、移送ラインの断熱の不完全性、ポンプ、摩擦、熱交換器の限られた効率などによってヘリウム回路に入熱され、これによって気体ヘリウムがNMR磁石から輸送デュワーへの経路でわずかに温まる。例示的計算は、この入熱が小さく抑えられることを示す。
【0097】
低温の気体ヘリウムは、1.6kg/hの流速でNMR磁石から輸送デュワーへ流れると想定される。この値は、典型的な範囲の下限であり、すなわち、これは比較的ゆっくりとしたヘリウム移送の場合の「ベスト・ケース」の計算であることに言及しておく。1.6kgの気体ヘリウムが磁石から輸送デュワーへの経路で4.2Kから10Kに温まると仮定した場合、ヘリウムガスを再び4.2Kに冷却するために(1barで4.2Kのときのヘリウムガスのエンタルピーは、20.6kj/kgであり、1barで10Kのときのヘリウムのエンタルピーは55.4kj/kgである)55.68kjの「冷熱エネルギー(Kaelteenergie)」又は(移送が継続する1時間の時間に対して)15Wの冷却能力が必要である。これは、例えば、典型的なクライオクーラがこの温度範囲で達成できるより約1オーダー大きい。
【0098】
NMR磁石から輸送デュワーに戻る低温の気体ヘリウムの温度が上昇すると、ガスの比体積、及びラインの圧力損失も増加する。1barで温度が10Kのヘリウムガスは、ラインの直径が4mmのときの圧力損失が、例えば6.6mbarであり、これは4.2Kのガス温度で計算した1.7mbarよりはるかに高い。したがって、ガス温度がより高い場合でも移送装置が確実に機能するようにするために、戻りガスのラインの断面をある程度の余裕を持って大きめに形成することが有利である。
【0099】
本明細書で説明されるヘリウムを移送するための装置は、「実験室規模の」ヘリウム液化器(ここでは実験室液化器とも呼ばれる)に一体化することもできる。このようなヘリウム液化器では、気体ヘリウムを、例えば20l/dの比較的低い速度で液化するために、大抵の場合、クライオクーラ-パルス管、又はギフォード・マクマホン冷凍機が用いられる。液化器は、通常、数百リットルの一体化された貯蔵容量(実験室液化器のクライオスタット内のヘリウム容器の容量)を有し、キャスタ付きである。ヘリウムがNMR磁石へ移送されるべき場合は直ちに、液化器全体が磁石の近くに移動され、磁石への移送が液化器に一体化された貯蔵容量から直接行われる。
【0100】
本明細書で説明される移送装置をそのような「実験室規模」の液化器又は「実験室液化器」と組み合わせる場合、液体ヘリウムを、一体化された貯蔵容量内で予め4.2K未満の温度に冷却するためにクライオクーラを使用することが考えられる。液体ヘリウムが、例えば2.8Kに冷却される場合、ヘリウム槽に4.63kj/kgの「冷熱エネルギー」が貯蔵される(1barで4.2Kのときの液体ヘリウムのエンタルピーは-0.12kj/kgであり、1barで2.8Kのときの液体ヘリウムのエンタルピーは-4.75kj/kgである)。すなわち、移送の開始時に液化器に100リットルの液体ヘリウム(すなわち12.5kg)の移送の準備が(2.8Kで)できている場合、57.8kjの冷熱エネルギーが利用可能である。これは、1.6kgのヘリウムガス(これは、100リットルの液体ヘリウムを移送する場合に生じるガスの量である)を上記で想定した10Kから再び4.2Kに冷却するために必要とされるより多い。貯蔵容積内のヘリウムの冷却は、計画されたヘリウム移送の数時間又は数日前に行うことができ、液化器に用いられるクライオクーラを、提案される方法のために過度に特大にする必要はない。
【0101】
本発明によるクライオスタットアセンブリ1の第5の実施形態が図7に示され、この第5の実施形態は、図1の形式と大部分が類似しているため、ここでは重要な相違点のみを説明する。簡単にするために、図7の図示では制御装置及びそれに接続された構成要素が省略されている。
【0102】
この実施形態では、実験室液化器31が、液体ヘリウム6を移送するための装置5に一体化されている。実験室液化器31は、液体ヘリウム6/6bを収容するリザーバヘリウム容器8を有するリザーバクライオスタット7とクライオクーラ32とを備える。気体ヘリウム11/11bをクライオクーラ32によって液化することができる。その場合、クライオクーラ32の最も低温の冷却段階は、4.2Kをはるかに下回る温度に達することができる。それによって、リザーバヘリウム容器8内の液体ヘリウム6/6bを4.2Kよりはるかに低い温度TLHe、例えばここでは約TLHe=2.8Kまで冷却することが可能である。リザーバクライオスタット7内のリザーバヘリウム容器8は、典型的には100~400リットルの貯蔵容量を有する。
【0103】
リザーバヘリウム容器8内の液体ヘリウム6/6bが超流動ヘリウムへの相転移温度(大気圧で2.17K)未満に冷却される場合、相転移の領域の高い比熱によって特に高い冷熱供給が利用可能である。
【0104】
摺動可能なピストンを用いる実施形態
図8図9、及び図10において、本発明によるクライオスタットアセンブリ1の別の実施形態が模式図で示され、ここでは搬送装置がリザーバクライオスタット7内に可動ピストンを備えて形成されている。これらの実施形態は、図1の実施形態にほぼ相当しているので、重要な相違のみを説明する。簡単にするために、図8図10の図示では制御装置及びそれに接続された構成要素が省略されている。
【0105】
図8の第6の実施形態では、剛性に形成された真空断熱リザーバヘリウム容器8に、搬送装置49の、ここでは水平方向に向いたピストン40が配置され、ピストンは、リザーバヘリウム容器8内で詳しく図示されないモータ駆動式の機構により、ここでは垂直方向に移動可能である。リザーバヘリウム容器8は、ピストン40によって、気体ヘリウム11/11bのための上の第1の部分41と、液体ヘリウム6/6bのための下の第2の部分42とに分かれる。リザーバヘリウム容器8の内壁に当接し、かつ内壁に沿って摺動することができるピストン40は、2つの部分41、42を気密かつ液密に互いに分離する。供給ライン9のリザーバクライオスタット側の端13は第2の部分42から延びている。戻りライン10は、第1の部分41に通じている。
【0106】
ピストン40を下方に移動させることによって、第2の部分42が縮小され、液体ヘリウム6/6bが供給ライン9内に押し込まれ、それによって液体ヘリウム6/6cが実用クライオスタット2内の実用ヘリウム容器3に送られる。同時に、第1の部分41が拡大され、ヘリウムガス11が戻りライン10からリザーバヘリウム容器8に引き込まれ、それによって実用ヘリウム容器3からリザーバヘリウム容器8に送られる。
【0107】
ピストン40は、好ましくは断熱性に形成され、特に真空断熱性に形成される。このために、ピストン40は、全体的又は部分的に、熱伝導率の低い材料、例えばプラスチック、好ましくは発泡プラスチックからなることができる。ピストン40は、互いに向かい合う2つのプレートを備えることもでき、それらの間に真空空間が形成される(詳しく図示せず)。
【0108】
第1の部分41にも多少の液体ヘリウムが存在する場合、及び/又は第2の部分にも多少の気体ヘリウムが存在する場合、搬送装置49又はピストン40の機能に害はないことに留意されたい(図8図9図10のすべての実施形態に当てはまる)。所望される場合、制御装置を介して切替可能な弁50をピストン40に配置することができ、この弁を用いてピストン40内の通路を一時的に開くことができる。(上述したように)液体ヘリウム6/6bを搬送するために、切替可能バルブ50が閉じられ、すなわちピストン40が「密閉」される。下の第2の部分42に妨げになる量の気体ヘリウムが形成され、上の第1の部分41に妨げになる量の液体ヘリウムが形成された場合(例えばピストン40の顕著な熱伝導による)、搬送を一時停止して切替可能な弁50を開くことができる。次いで、上の第1の部分41からの液体ヘリウムを下の第2の部分42に流出させることができ、ピストン40の降下によって、気体ヘリウムで満たされた下の第2の部分42の空間割合を最小化することができ、その後、切替可能な弁50が再び閉じられ、搬送動作が続行される。「上から」の充填を可能にするために、(例えば、ヘリウム搬送現場で)リザーバクライオスタット7への液体ヘリウム6/6bの最初の充填中に切替可能な弁50を開くこともできる。
【0109】
図8の実施形態にほぼ一致しているため、重要な相違点のみが説明される図9の第7の実施形態では、上の区分43と下の区分44の真空断熱リザーバヘリウム容器8の壁がそれぞれ可撓性ベローズ45、46によって形成されている。中央区分47と残りの部分では、リザーバヘリウム容器8の壁は剛性に形成されている。中央区分47に搬送装置49のピストン40が剛性で気密かつ液密に取り付けられている。それに加えて、ベローズ45、46は気密かつ液密である。これによって、リザーバヘリウム容器8は、気体ヘリウム11/11bのための上の第1の部分41と液体ヘリウム6/6bのための下の第2の部分42とに分かれる。ここでは水平に向いたピストン40は、リザーバヘリウム容器8内で、この場合も詳しく示されないモータ駆動式の機構により、ここでは垂直方向に移動可能であり、それによりピストン40の降下によって、液体ヘリウム6/6bがリザーバヘリウム容器8から供給ライン9に送り出され、気体ヘリウム11が戻りライン10からリザーバヘリウム容器8に吸い込まれ得る。
【0110】
簡単にするために、図10は、クライオスタットアセンブリ1のリザーバクライオスタット7の領域における第8の実施形態からの部分図のみを示す。外に向けて真空断熱されたリザーバヘリウム容器8は、この場合も剛性に形成されている。リザーバヘリウム容器8の内部空間では、ここでは垂直に向いたピストン40と、リザーバヘリウム容器8の垂直の側壁の内面に取り付けられた可撓性ベローズ48とによって、気体ヘリウム11/11bのための第1の部分41が気密及び液密に分離され、リザーバヘリウム容器8の残りの内部空間が液体ヘリウム6/6bのための第2の部分42を形成する。ピストン40は、詳しく示されないモータ駆動式機構を用いてここでは水平に移動することができる。図10においてピストン42が左に移動され、すなわち、第2の部分42が縮小され、第1の部分41が拡大されると、液体ヘリウム6/6bが第2の部分から供給ライン9に送り出され、気体ヘリウム11は、戻りライン10で第1の部分41に吸引される。
【0111】
第1の部分41と第2の部分42の間の断熱性を向上させるために、ベローズ48を、例えば二重壁とその間の真空空間とによって断熱するように形成することもできる(詳しく図示せず)。
【符号の説明】
【0112】
1 クライオスタットアセンブリ
2 実用クライオスタット
3 実用ヘリウム容器
5 液体ヘリウムを移送するための装置
6 液体ヘリウム(一般)
6a 液体ヘリウム(実用ヘリウム容器内)
6b 液体ヘリウム(リザーバヘリウム容器内)
6c 液体ヘリウム(供給ラインを通して搬送)
7 リザーバクライオスタット(輸送デュワー)
8 リザーバヘリウム容器
9 供給ライン
10 戻りライン
10a 戻りラインの外壁
10b 戻りラインの内壁
11 気体ヘリウム(一般)
11a 気体ヘリウム(実用ヘリウム容器内)
11b 気体ヘリウム(リザーバヘリウム容器内)
11c 気体ヘリウム(戻りラインによって搬送される)
12a 循環ポンプ(戻りライン、低温)
12b 循環ポンプ(供給ライン内)
12c 循環ポンプ(戻りライン、ラインループ)
13 供給ラインのリザーバクライオスタット側の端
14 供給ラインの実用クライオスタット側の端
15 ヘリウム塔(磁石塔)
16 ヘリウム塔(磁石塔)
17 制御装置
18 圧力センサ(リザーバヘリウム容器内)
19 圧力センサ(実用ヘリウム容器内)
20 加熱装置
21 ヘリウム圧縮ガス貯蔵器
22 制御弁
23 ラインループ
23a ラインループの入口領域
23b ラインループの出口領域
24 熱交換器
25 室温の暖かさのループ部
26 真空境界
27 真空境界(共通輸送ライン)
28 共通輸送ライン
29 間隔保持器(戻りラインへの真空境界)
30 間隔保持器(戻りラインと供給ライン)
31 実験室液化器
32 クライオクーラ
40 ピストン
41 第1の部分
42 第2の部分
43 上の区分
44 下の区分
45 上のベローズ
46 下のベローズ
47 中央区分
48 ベローズ
49 搬送装置
50 切替可能な弁(ピストン内)
QR 戻りラインのライン断面
QZ 供給ラインのライン断面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【外国語明細書】