(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045088
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】制御システム、電力供給システム、制御方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20240101AFI20240326BHJP
【FI】
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023156431
(22)【出願日】2023-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2022150407
(32)【優先日】2022-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】515320123
【氏名又は名称】コスモ石油マーケティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼原 龍夫
(72)【発明者】
【氏名】榎島 英樹
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】ユーザの充電のし忘れを防ぎ、かつ、電力供給事業者の設備投資も抑えることを目的とする。
【解決手段】本開示の制御システムは、電力により移動可能な電動移動体に対して電力を供給する分配器を制御する制御システムであって、時間帯に応じた電力料金が定められた料金スケジュールにおいて電力料金が閾値よりも低い時間である低価格時間に、前記分配器に前記電動移動体へ電力を供給させる制御を行なう。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力により移動可能な電動移動体に対して電力を供給する分配器を制御する制御システムであって、
時間帯に応じた電力料金が定められた料金スケジュールにおいて電力料金が閾値よりも低い時間である低価格時間に、前記分配器に前記電動移動体へ電力を供給させる制御を行なう、制御システム。
【請求項2】
前記制御システムは、サーバと、当該サーバと通信可能な通信機とを有し、
前記サーバは、前記料金スケジュールに応じて前記分配器から前記電動移動体への電力の供給が可能である旨を示す供給可能信号を前記通信機に送信し、
前記通信機は、前記サーバからの前記供給可能信号に基づいて、前記分配器に前記電動移動体への電力の供給を制御する、
請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記制御システムは、サーバと、当該サーバと通信可能な通信機とを有し、
前記サーバは、前記料金スケジュールのデータを前記通信機に送信し、
前記通信機は、前記料金スケジュールに応じて前記分配器に、前記分配器から前記電動移動体への電力の供給が可能である旨を示す供給可能信号を送信する
請求項1に記載の制御システム。
【請求項4】
前記制御システムは、サーバと、当該サーバと通信可能な通信機とを有し、
前記分配器に信号を入力する入力装置から前記分配器に対して、当該分配器から前記電動移動体への電力の供給を禁止させるための指示を示す供給禁止指示信号が入力されている場合には、前記通信機が前記分配器に前記電動移動体への電力の供給を許可していても、前記分配器は前記電動移動体に対して電力の供給を行わない、
請求項1に記載の制御システム。
【請求項5】
前記分配器に信号を入力する入力装置から前記分配器に対して、当該分配器から前記電動移動体への電力の供給を行わせるための指示を示す供給指示信号が入力されている場合には、前記通信機が前記分配器に前記電動移動体への電力の供給を許可していなくても、前記分配器は前記電動移動体に対して電力の供給を行う、
請求項3に記載の制御システム。
【請求項6】
前記分配器は、前記電動移動体に蓄電された電力を、住宅における電力を使用する設備に供給可能であって、
前記サーバは、時間帯ごとに各前記住宅において消費されると予測された電力量である消費電力予測量を取得し、総消費電力予測量が閾値を超えると判断すると、前記通信機12に対して、前記電動移動体に蓄積されている電力を放電させるための放電信号を送信し、
前記通信機は、前記分配器に対して、前記電動移動体から前記設備へ電力を供給させるように制御する、請求項2又は3に記載の制御システム。
【請求項7】
前記分配器は、前記電動移動体に蓄電された電力を、住宅における電力を使用する設備に供給可能であって、
前記サーバは、前記料金スケジュールにおいて電力料金が予め定められた値より高い時間である高価格時間において、前記通信機に対して、前記電動移動体に蓄積されている電力を放電させるための放電信号を送信し、
前記通信機は、前記分配器に対して、前記電動移動体から前記設備へ電力を供給させるように制御する、請求項2又は3に記載の制御システム。
【請求項8】
前記制御システムは、サーバと、当該サーバと通信可能な通信機とを有し、
前記サーバは、前記低価格時間よりも前に、ユーザの通信端末に、前記低価格時間中に前記電動移動体を充電可能な状態にすることを推奨する通知を行う、
請求項1に記載の制御システム。
【請求項9】
前記通信機は、前記低価格時間において、前記電動移動体が充電可能な状態であったと判断すると、前記分配器に対して前記電動移動体が充電可能に接続されている旨を示す接続情報を前記サーバに送信する、
請求項8に記載の制御システム。
【請求項10】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の制御システムと、
前記分配器と、
を有する電力供給システム。
【請求項11】
電力により移動可能な電動移動体に対して電力を供給する分配器を制御する制御システムが実行する制御方法であって、
前記制御システムは、
時間帯に応じた電力料金が定められた料金スケジュールにおいて電力料金が閾値よりも低い時間である低価格時間に、前記分配器に前記電動移動体へ電力を供給させる制御を行なう、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御システム、電力供給システム、制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電力を電気自動車(以下、EVともいう)に供給する給電管理システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
EVのバッテリーは、一般に各住宅の電源に電気的に接続されること等により充電される。一方、EVに充電された電力は、EV自身の走行のために消費されるだけでなく、住宅に電力を供給できる蓄電池としての活用も期待されている。
【0005】
ところで、EVのユーザは、充電のし忘れ等を防ぐために、ユーザが勤務先から自宅に帰宅したタイミングでEVへの充電が行われることが多い。しかしながら、帰宅した直後は、夕食や風呂など住宅内で電力消費が多いタイミングである。このため、電力を供給する事業者は、この帰宅した直後の大きな電力消費量に応じて、発電設備の規模を大きく確保しておく必要がある。また卸電力市場においても同時間帯に電力の価格が高騰する為、電力調達における価格リスクが発生する。
【0006】
このように、電力消費が大きいタイミングでEVへの充電も行おうとすると、さらに消費電力が大きくなり、ユーザの電気料金の負担が大きくなり、電力を供給する事業者も発電設備の投資に費用がかさむ。
【0007】
そこで本開示は、ユーザの充電のし忘れを防ぎ、かつ、電力を供給する事業者の設備投資も抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
電力により移動可能な電動移動体に対して電力を供給する分配器を制御する制御システムであって、時間帯に応じた電力料金が定められた料金スケジュールにおいて電力料金が閾値よりも低い時間である低価格時間に、前記分配器に前記電動移動体へ電力を供給させる制御を行なう、制御システムである。
【0009】
本開示によれば、ユーザの充電のし忘れを防ぎ、かつ、電力を供給する事業者の設備投資も抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る電力供給システムの概略図である。
【
図2】
図2は、本実施形態におけるサーバ及び各ベータベースを示す図である。
【
図3】
図3は、料金スケジュールの一例を示した図である。
【
図4】
図4は、入力装置を備える場合の電力供給の是非を判断するフローチャートである。
【
図5】
図5は、時間帯ごとの総消費電力予測量の一例を示した図である。
【
図6】
図6は、制御システム(サーバ)によるユーザ向けの通知を行うフローチャートである。
【
図7】
図7は、高価格時間と低価格時間における総消費電力量の推移を示した図である。
【
図8】
図8は、接続情報データベースの一例を示した図である。
【
図9】
図9は、サーバのハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0012】
図1は、本実施形態に係る電力供給システム1の概略図である。
図1に示すように、本事業を行う事業者が運営する電力網(電力系統)2には、発電設備3と、電力の供給を受ける一つ以上の住宅4と、が接続されている。このほかに、電力が不足している場合又は電力が過剰にある場合に、他社の電力網2と電力を売買できるように接続されていてもよい。
【0013】
電力供給システム1は、バッテリーが設けられた電気自動車(以下、EV)5を有する。EV5は、例えば住宅4に住むユーザ等が移動する際に使用される。EV5への充電は、例えば住宅4における電力供給ポート等に接続することによって行われる。
【0014】
電力供給システム1において、住宅4には、住宅4内における電力を消費して動作する設備4bと、EV5と、への電力を分配して供給する分配器4aが設けられている。分配器4aには、設備4bとEV5への電力を分電する分電盤と、この分電盤を制御して電力を分配する制御装置が設けられている。分配器4aは、分配器4aにEV5が充電可能に接続されている場合、EV5に電力供給の開始と停止を切り替え可能である。
【0015】
電力供給システム1は制御システム10を備える。制御システム10は、分配器4aに対して供給可能信号を発することができる。この供給可能信号は、分配器4aからEV5に電力供給が可能である旨を示す信号である。
【0016】
本実施形態において、制御システム10は、サーバ11と、通信機12と、を備える。上述の事業者は、サーバ11及び通信機12のうち、少なくともサーバ11を管理及び運営している。
【0017】
本実施形態においてサーバ11は、EV5に電力供給しても良いと判断すると、通信機12に供給可能信号を送信する。通信機12は、分配器4aに供給可能信号(この供給可能信号と同等内容である信号を含む)を送信することで分配器4aを制御して、分配器4aにEV5に対する電力の供給と供給停止を切り替えさせる。これにより、分配器4aは、EV5に対する電力の供給と供給停止の切り替えを制御する。
【0018】
図2は、本実施形態におけるサーバ及び各データベースを示す図である。
図2に示すように、サーバ11は料金スケジュールデータベース11aと接続されている。これにより、サーバ11は、料金スケジュールデータベース11aから、将来の時間帯に応じて卸電力市場における電力料金が定められた料金スケジュールのデータを受信(取得)できる。
【0019】
図3は、料金スケジュールの一例を示した図である。なお、
図3における破線は、後述する低価格時間を決定するための閾値を示している。
【0020】
卸電力市場における電力料金は、常に一定ではなく時間帯により変動している。特にユーザが在宅で、住宅4内での活動を多く行う時間帯、例えば、ユーザが出かける前の朝やユーザの帰宅後の夕方等の時間帯は、電気を消費する需要が高まる時間帯でもあるので、電力料金は高くなる傾向がある。逆に、日中のユーザが出かけている時間帯や深夜のユーザが就寝している時間帯は、電力の需要が低いので電力料金は低くなる傾向がある。
【0021】
サーバ11は、料金スケジュールデータベース11aから料金スケジュールのデータを受信すると、予め決められた閾値よりも電力料金が安い時間帯を低価格時間と判断する。低価格時間の時間帯となると、サーバ11は供給可能信号を通信機12に送信する。通信機12は、供給可能信号を受信すると、分配器4aに対してEV5への電力供給を開始させる。
【0022】
逆に、低価格時間でない時間帯(高価格時間)では、サーバ11は通信機12を介して分配器4aに供給許可信号を送信しない。
【0023】
ユーザは、EV5への充電忘れがないように、帰宅後すぐにEV5を電力ポートに接続しようとすることがある。この場合、帰宅後すぐにEV5への充電を開始すると、単価当たりの電力料金が高い時間帯に電力供給を受けることになるので、電力料金が高くなりやすい。一方で、電力料金を気にしてEV5を電力ポートに接続することを後回しにすると、ユーザはEV5を電力ポートに接続することを忘れて、EV5への充電を忘れることがある。
【0024】
事業者にとっても、電力消費の需要が高い時間帯にEV5への充電用の電力まで供給してしまうと、更なる需要に応えるために、新たな発電設備3への投資や他の電力供給事業者からの追加の電力の購入を行う必要があり、事業を行う上で経済的に負担となることがある。
【0025】
本実施形態の電力供給システム1は、低価格時間において、EV5への電力供給を行う。したがって、EV5に供給する電気料金を抑えることができる。EV5のユーザは、低価格時間においてEV5に供給するか否かを判断する必要がないので、電気料金のことを考えてEV5を管理する手間を低減できる。これにより、EV5のユーザの負担を軽減することができる。
【0026】
また、電力料金が高い時間帯は電力需要が高まっている時間帯である。上記構成の電力供給システム1により、需要が少ない時間にEV5の充電をさせることができるので、電力を供給する事業者は、電力需要が高まっている時間帯に供給する電力量を低減させて、電力供給源への設備投資等を抑えることができる。
【0027】
本実施形態の電力供給システム1は、さらに入力装置20を備えている。入力装置20は、ユーザによってEV5への充電の要否を分配器4aに入力できる装置である。ユーザの操作によって、入力装置20は分配器4aに、電力供給を行う供給指示と、電力供給を行わない供給禁止指示を送信できる。本実施形態においては、入力装置20は、住宅4内に設けられているが、これに限らず、EV5内に設けてもよいし、ユーザが持ち歩く場合の通信機12等から入力できたりするように構成されてもよい。
【0028】
図4は、入力装置20を備える場合の電力供給の是非を判断するフローチャートである。まず分配器4aは、EV5が分配器4aに対して充電可能に接続されたことを確認する(ステップS1)。次に、通信機12は、サーバ11から供給可能信号を受信したかを判断する(ステップS2)。これにより、通信機12は、分配器4aに供給可能信号(この供給可能信号と同等内容である信号を含む)を送信することで、分配器4aを制御することができる。通信機12がサーバ11から供給可能信号を受信していた場合(ステップS2においてYes)、即ち、分配器4aが通信機12から供給可能信号を受信していた場合、分配器4aは、入力装置20から供給禁止指示を受信したかどうかを判断する(ステップS3)。分配器4aが入力装置20から供給禁止指示を受信していた場合(ステップS3においてYes)には、たとえ分配器4aが通信機12から供給可能信号を受信していても、分配器4aはEV5への電力供給を行わない(ステップS5)。分配器4aが入力装置20から供給禁止指示を受信していなかった場合(ステップS3においてNo)、分配器4aはEV5への電力供給を行う(ステップS6)。
【0029】
通信機12がサーバ11から供給可能信号を受信していなかった場合(ステップS2においてNo)、即ち、分配器4aが通信機12から供給可能信号を受信していなかった場合、分配器4aは、入力装置20から供給指示信号を受信したかどうかを判断する(ステップS4)。
【0030】
分配器4aが入力装置20から供給指示信号を受信していた場合(ステップS4においてYes)には、たとえ分配器4aが通信機12から供給可能信号を受信していなくても、分配器4aはEV5への電力供給を行う(ステップS7)。分配器4aが入力装置20から供給指示信号を受信していなかった場合(ステップS4においてNo)、分配器4aはEV5への電力供給を行わない(ステップS8)。
【0031】
このように本実施形態の電力供給システム1は、分配器4aに対してユーザから供給指示信号と供給禁止指示信号とを送信できる入力装置20を備えている。
【0032】
これにより、何らかの都合でユーザがEV5への電力供給を行いたい場合には、入力装置20によってEV5への電力供給を行うことができる。
【0033】
また、何らかの都合でユーザがEV5への電力供給を行いたくない場合には、入力装置20によってEV5への電力供給を禁止することができる。
【0034】
本実施形態の分配器4aは、EV5に蓄電された電力を住宅4内の設備4bに供給できるように構成されてもよい。
【0035】
EV5から住宅4内の設備4bに電力を供給する一例について説明する。
図2に示すように、本実施形態のサーバ11は、住宅消費電力量予測データベース11bと接続されている。これにより、各住宅4において消費される時間帯ごとの消費電力予測量のデータを取得できる。サーバ11は、各住宅4における消費電力予測量から電力供給システム1全体における時間帯ごとの総消費電力予測量を算出してもよい。
【0036】
図5は、時間帯ごとの総消費電力予測量の一例を示した図である。また、総消費電力予測量における閾値を破線で示している。
図5に示すように、総消費電力予測量は時間帯ごとに変化する。特にユーザが在宅で、住宅4内での活動を多く行う時間帯、例えば、ユーザが出かける前の朝、又はユーザの帰宅後の夕方等の時間帯において、総消費電力予測量は高くなりやすい。逆に、日中のユーザが出かけている時間帯又は深夜のユーザが就寝している時間帯において、総消費電力予測量は低くなりやすい。
【0037】
サーバ11は、住宅消費電力量予測データベース11bから、総消費電力予測量のデータを取得すると、予め決められた閾値よりも総消費電力予測量が高い時間帯を高消費時間と判断する。高消費時間になると、サーバ11は通信機12に対して、EV5に蓄積されている電力を放電させるための放電信号を送信する。通信機12は、放電信号を受信すると、分配器4aに対して、放電信号(この放電信号と同等内容である信号を含む)を送信することで分配器4aを制御して、分配器4aに対して、EV5に蓄電された電力を住宅4の設備4bに供給させる。これにより、分配器4aはEV5に充電された電力を設備4bに供給するように制御する。
【0038】
このように、本実施形態の電力供給システム1は、高消費時間において、EV5から住宅4内の設備4bに電力を供給できる。これにより、住宅4において電力消費量が増大する時間においても、発電あるいは買電しなければいけない電力量の増大を抑制できる。
【0039】
なお、総消費電力量における閾値は、サーバ11が受信する発電設備3の発電電力量予測のデータに応じて、適宜変更されてもよい。発電電力量予測のデータは、サーバ11によって、サーバ11と接続されている発電量予測データベース11cから受信される。これにより、電力供給量に対して電力需要が増大する時間帯を予測しやすくなる。
【0040】
(EV5から住宅4内の設備4bに電力を供給する変形例)
上記の例と異なり、料金スケジュールに基づいて、EV5から住宅4内の設備4bに電力が供給されるように構成されてもよい。
【0041】
例えば、
図3における予め決められた閾値よりも電力料金が高い時間帯(高価格時間)になると、サーバ11は通信機12に対して放電信号を送信してもよい。このとき、通信機12は、放電信号を受信すると、分配器4aに対して、放電信号を送信することで分配器4aを制御して、分配器4aに対して、EV5に蓄電された電力を住宅4の設備4bに供給させる。これにより、分配器4aはEV5に充電された電力を設備4bに供給するように制御する。
【0042】
このように、高価格時間において、EV5から住宅4内の設備4bに電力を供給する場合、電気料金が高い時間に電力網2を介して住宅4に供給される電力量を低減できる。これにより、EV5のユーザが負担する電気料金の増大を抑制できる。
【0043】
なお、料金スケジュール(
図3参照)と総消費電力予測量(
図5参照)は必ずしも連動しているとは限らない。例えば、料金スケジュールにおいて電力料金が閾値を超えていたとしても、総消費電力予測量において閾値を超えていなくてもよい。
【0044】
本実施形態の電力供給システム1において、サーバ11は、EV5のユーザ向けに通知を行ってもよい。
図6は、制御システム10(サーバ11)によるユーザ向けの通知を行うフローチャートである。
【0045】
図6に示すように、サーバ11は、料金スケジュールデータベース11aから料金スケジュールのデータを取得すると(ステップS11)、サーバ11は、予め決められた閾値を下回る時間帯である低価格時間(
図3参照)を特定する(ステップS12)。
【0046】
次にサーバ11は、現在時刻が低価格時間まで所定時間となったか否かを判断する。本実施形態では所定時間が3時間の場合において説明する。つまり本実施形態では、サーバ11は低価格時間まで3時間を切ったか否かを判断する(ステップS13)。
【0047】
サーバ11が低価格時間の開始時刻になるまで3時間以上であると判断した場合(ステップS13においてNo)、低価格時間の開始時刻になるまで3時間となるまでステップS13を繰り返す。
【0048】
サーバ11が低価格時間になるまで3時間未満(又は以下)になったと判断した場合(ステップS13においてYes)、サーバ11はユーザの通信端末に対して低価格時間に関する通知を行う(ステップS14)。通知の内容は、例えば低価格時間が開始される時間などである。通信端末は、スマートフォン、スマートウオッチ、携帯電話等である。
【0049】
サーバ11が低価格時間よりも前に、ユーザの通信端末に、低価格時間中にEV5を充電可能な状態にすることを推奨する通知を行うことで、ユーザが低価格時間においてEV5を充電可能に接続し忘れることを抑制できる。
【0050】
続いて、サーバ11は、ステップS14において通知を行った後に通信機12に通信完了信号を送信し、通信機12は分配器4aに通信完了信号(この通信完了信号と同等内容である信号を含む)を送信することで分配器4aを制御して、分配器4aに対して、実際に低価格時間の開始時刻において、分配器4aに対して、EV5が分配器4aに充電可能に接続されているかを判断させる(ステップS15)。これにより、分配器4aは、EV5が分配器4aに充電可能に接続されているかを判断する。通信機12は分配器4aにEV5が接続されていると判断すると(ステップS15においてYes)、通信機12はサーバ11に、分配器4aに対してEV5が充電可能に接続されている旨を示す接続情報を送信する(ステップS16)。一方、通信機12は分配器4aにEV5が接続されていないと判断すると(ステップS15においてNo)、通信機12はサーバ11に非接続情報を送信する(ステップS17)。接続情報および非接続情報は、サーバ11によって、サーバ11と接続されている接続情報データベース11dに随時記録される(
図2参照)。なお、通信機12が接続情報あるいは非接続情報をサーバ11に送信した後は、適宜、ステップS11から処理が繰り返えされる。
【0051】
また、サーバ11は、通信機12から接続情報を受信する際に、接続情報と共にユーザの顧客番号を受信することも可能である。この顧客番号(顧客識別情報の一例)は各通信機12又は各分配器4aに記憶されており、サーバ11は送信元の通信機12のユーザを特定することができる。なお、分配器4aに顧客番号が記憶されている場合、通信機12が分配器4aから顧客番号を取得して、サーバ11に送信する。このように、電力供給システム1では、低価格時間においてEV5が分配器4aに充電可能に接続されていた場合に、通信機12はサーバ11に接続情報を出力することができる。更に、サーバ11は、低価格時間において充電可能にEV5を接続してくれたユーザを特定できる。
【0052】
また、事業者は、接続情報が多く送信されたユーザに対して、商品又はサービスの提供を受けるためのポイント等の報酬を付与してもよい。事業者が報酬を付与した場合、ユーザには低価格時間においてEV5を充電可能に接続する動機があるので、ユーザは低価格時間においてEV5を分配器4aと接続する頻度が高くなり、事業者は電力需要が低い時間帯にも多くの電力を供給することが期待できる。
【0053】
低価格時間になったとしても、すべてのEV5に対して一斉に充電する必要はない。
図7を用いて、EV5への充電を分散させる理由について説明する。
【0054】
図7は、高価格時間と低価格時間における総消費電力量の推移を示した図である。時刻t以前は高価格時間であり、時刻t以降は低価格時間である。また、破線のグラフは、低価格時間になるとすぐに、すべてのEV5に対して一斉に充電をした場合の総消費電力量を示している。
【0055】
図7に示すように、高価格時間において総消費電力量を抑制したとしても、低価格時間になってすぐに、すべてのEV5に対して一斉に充電を行うと、低価格時間において総消費電力量が急激に増大する。このとき、電力の需要が高い高価格時間において消費電力量を低減したとしても、EV5への一斉充電によって、電力の買電を行う手間が発生する虞がある。
【0056】
したがって、低価格時間になったとしても、急激に消費電力量が増大しないように、EV5への充電を分散させることが好ましい。
【0057】
EV5への充電の分散は、接続情報データベース11dの記録を用いてもよい。
図8は、接続情報データベース11dの一例を示す。
図8に示すように、接続情報データベース11dには、ユーザを特定する顧客番号、各EV5において充電に必要な電力量を示した必要電力量、接続情報をサーバ11が受信した時刻である接続情報受信時刻、月間で何回接続情報を受信したかを示す月内接続情報受信回数、および、以上の情報から設定されたEV5への充電を開始する時刻を示した充電開始時刻が記録されている。
【0058】
図8の例では、低価格時間の開始時刻を19:00としており、EV5への充電開始時刻は、低価格時間の開始時刻から10分刻みでずれている。また、
図8の例では、各充電開始時刻において必要電力量の総計が150を超えないように構成されている。充電開始時刻が何分刻みでずれるか、および、必要電力量の上限は本例示に限られない。
【0059】
図8に示した例示において、EV5の必要電力量が同じであっても、充電開始時刻は異なっている場合がある。
【0060】
この場合、接続情報受信時刻がより早いユーザのEV5において、充電開始時刻がより早くなるように構成されてもよい。例えば、顧客番号220513のEV5と顧客番号322253のEV5とにおいて必要電力量は同じ50であるが、それぞれの充電開始時刻は19:00と19:20となっている。これは、接続情報受信時刻が、顧客番号220513の方が早かったためである。
【0061】
または、月内接続情報受信回数がより多いユーザのEV5において、充電開始時刻がより早くなるように構成されてもよい。例えば、顧客番号605644のEV5と顧客番号322253のEV5とにおいて必要電力量は同じ50であるが、それぞれの充電開始時刻は19:10と19:20となっている。これは、月内接続情報受信回数が、顧客番号605644の方が多いためである。
【0062】
上記の例、接続情報および接続情報に関連する情報から、充電開始時刻を分散させることができる。事業者にとっては、低価格時間の開始後に総消費電力量が急激に増大することを抑制できる。ユーザにとっては、低価格時間よりも早めにEV5を分配器4aに接続することで、充電開始時刻が早くなるので、EV5が充電を必要としている時間を短くすることができる。
【0063】
(ハードウェア構成例)
サーバ11は、コンピュータに内蔵されるCPUやメモリ等のハードウェア資源を用いて、サーバ11で実施される処理に対応するプログラムを実行することによって実現することが可能である。上記プログラムは、コンピュータが読み取り可能な(非一時的な)記録媒体に記録して、保存したり、配布したりすることが可能である。また、上記プログラムをインターネットや電子メール等、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0064】
図9は、サーバのハードウェア構成例を示す図である。
図9のサーバとしてのコンピュータは、それぞれバスBSで相互に接続されているドライブ装置1000、補助記憶装置1002、メモリ装置1003、CPU1004、インタフェース装置1005、表示装置1006、入力装置1007、出力装置1008等を有する。
【0065】
当該コンピュータでの処理を実現するプログラムは、例えば、CD-ROM又はメモリカード等の記録媒体1001によって提供される。プログラムを記憶した記録媒体1001がドライブ装置1000にセットされると、プログラムが記録媒体1001からドライブ装置1000を介して補助記憶装置1002にインストールされる。但し、プログラムのインストールは必ずしも記録媒体1001より行う必要はなく、ネットワークを介して他のコンピュータよりダウンロードするようにしてもよい。補助記憶装置1002は、インストールされたプログラムを格納すると共に、必要なファイルやデータ等を格納する。
【0066】
メモリ装置1003は、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置1002からプログラムを読み出して格納する。CPU1004は、メモリ装置1003に格納されたプログラムに従って、当該装置に係る機能を実現する。インタフェース装置1005は、ネットワーク等に接続するためのインタフェースとして用いられる。表示装置1006はプログラムによるGUI(Graphical User Interface)等を表示する。入力装置1007はキーボード及びマウス、ボタン、又はタッチパネル等で構成され、様々な操作指示を入力させるために用いられる。出力装置1008は演算結果を出力する。
【0067】
なお、分配器4a、通信機12、入力装置20は、サーバ11と同様のハードウェア構成を有しているため、説明を省略する。
【0068】
以上、本実施形態は一例であって、上述した実施形態に限定されず、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所等は、本発明を開示できるものであれば任意であり、限定されない。
【0069】
例えば、本実施形態では、料金スケジュールのデータを取得したサーバ11が通信機12に供給可能信号を送り、通信機12は供給可能信号に基づき分配器4aを制御する場合について説明した。これに限らず、サーバ11は通信機12に料金スケジュールのデータを送信し、通信機12が分配器4aに供給可能信号を送信してもよい。これにより、分配器4aは供給可能信号の受信に基づいて、EV5への電力の供給を行なうように制御する。この場合であっても、本実施形態と同様の効果が得られる。
【0070】
また、
図2に示す4つのデータベース(11a~11d)は、サーバ11内に構築されてもよいし、サーバ11の外部の他のサーバ内に構築されてもよい。また、4つのデータベース(11a~11d)のそれぞれが、サーバ11の外部の異なる他のそれぞれのサーバ内に構築されてもよい。更に、4つのデータベース(11a~11d)の少なくとも2つが、サーバ11の外部の他の共通のサーバに構築されていてもよい。
【0071】
また、EV5は、バッテリーを搭載し、電力により走行可能な電動車両の一例である。この電動車両には、ハイブリットカー、電動バイク、電動キックボード等も含まれる。また、電動車両は、バッテリーを搭載し、電力により移動可能な電動移動体の一例である。この電動移動体には、ドローン等の電動飛行体も含まれる。
【符号の説明】
【0072】
1 電力供給システム
2 電力網
3 発電設備
4 住宅
4a 分配器
4b 設備
5 EV
10 制御システム
11 サーバ
11a 料金スケジュールデータベース
11b 住宅消費電力量予測データベース
11c 発電量予測データベース
11d 接続情報データベース
12 通信機
20 入力装置