(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045098
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】抗体-薬物コンジュゲートの薬物部位を認識する蛋白質
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20240326BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240326BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20240326BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
G01N33/53 S
C07K16/28 ZNA
C07K16/18
C07K16/46
【審査請求】有
【請求項の数】33
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023212198
(22)【出願日】2023-12-15
(62)【分割の表示】P 2020532495の分割
【原出願日】2019-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2018140912
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】307010166
【氏名又は名称】第一三共株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】相馬 雅子
(72)【発明者】
【氏名】久我 洋
(72)【発明者】
【氏名】益田 剛
(72)【発明者】
【氏名】河村 淳子
(72)【発明者】
【氏名】石橋 裕美
(72)【発明者】
【氏名】安田 哲
(57)【要約】 (修正有)
【課題】エキサテカンの誘導体を構成要素とする抗体-薬物コンジュゲートの薬物部位を認識する蛋白質、及び該蛋白質を用いて、上記の抗体-薬物コンジュゲートを投与された哺乳動物における、該抗体-薬物コンジュゲートの血漿中濃度を定量する方法及び組織分布を確認する方法を提供する。
【解決手段】下式で示される薬物と、抗体とが、リンカーを介して結合した抗体-薬物コンジュゲートの、薬物部位を認識する蛋白質、及び該蛋白質を用いて、該抗体-薬物コンジュゲートの血漿中濃度を定量する方法及び組織分布を確認する方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体を用いて、抗体-薬物コンジュゲートを投与された哺乳動物における、該抗体-薬物コンジュゲートの血漿中濃度を定量する方法であって、
前記抗体が、
式
【化1】
で示される薬物と、抗体とが、リンカーを介して結合した抗体-薬物コンジュゲートの、薬物部位を認識する抗体であり、
a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖を含んでなる抗体、
b)配列番号7に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖を含んでなる抗体、
c)配列番号9に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号10に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖を含んでなる抗体、又は、
d)配列番号11に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号12に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号13に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号14に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1、WASで示されるトリペプチドからなるCDRL2、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖を含んでなる抗体であり、
前記抗体-薬物コンジュゲート中の抗体が、抗HER2抗体又は抗TROP2抗体である、
方法。
【請求項2】
抗体-薬物コンジュゲートにおける薬物リンカーが、
式
【化2】
(式中、Aは抗体との結合位置を示し、該薬物リンカーは抗体とチオエーテル結合によって結合している)
で示される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
抗体-薬物コンジュゲートにおける薬物リンカーが、
式
【化3】
(式中、Aは抗体との結合位置を示し、該薬物リンカーは抗体とチオエーテル結合によって結合している)
で示される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
抗体-薬物コンジュゲートにおける薬物リンカーが、
式
【化4】
(式中、Aは抗体との結合位置を示し、該薬物リンカーは抗体とチオエーテル結合によって結合している)
で示される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が2から8の範囲である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数の違いによって該抗体-薬物コンジュゲートに対する認識性が実質的に異ならない、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
抗体を用いて、抗体-薬物コンジュゲートを投与された哺乳動物における、該抗体-薬物コンジュゲートの血漿中濃度を定量する方法であって、
前記抗体が、
式
【化5】
で示される薬物を認識する抗体であり、
a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖を含んでなる抗体、
b)配列番号7に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖を含んでなる抗体、
c)配列番号9に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号10に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖を含んでなる抗体、又は、
d)配列番号11に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号12に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号13に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号14に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1、WASで示されるトリペプチドからなるCDRL2、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖を含んでなる抗体であり、
前記抗体-薬物コンジュゲート中の抗体が、抗HER2抗体又は抗TROP2抗体である、
方法。
【請求項8】
抗体を用いて、抗体-薬物コンジュゲートを投与された哺乳動物における、該抗体-薬物コンジュゲートの血漿中濃度を定量する方法であって、
前記抗体が、
式
【化6】
で示される薬物を認識する抗体であり、
a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖を含んでなる抗体、
b)配列番号7に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖を含んでなる抗体、
c)配列番号9に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号10に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖を含んでなる抗体、又は、
d)配列番号11に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号12に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号13に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号14に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1、WASで示されるトリペプチドからなるCDRL2、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖を含んでなる抗体であり、
前記抗体-薬物コンジュゲート中の抗体が、抗HER2抗体又は抗TROP2抗体である、
方法。
【請求項9】
抗体を用いて、抗体-薬物コンジュゲートを投与された哺乳動物における、該抗体-薬物コンジュゲートの血漿中濃度を定量する方法であって、
前記抗体が、
式
【化7】
で示される薬物を認識する抗体であり、
a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖を含んでなる抗体、
b)配列番号7に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖を含んでなる抗体、
c)配列番号9に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号10に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖を含んでなる抗体、又は、
d)配列番号11に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号12に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号13に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号14に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1、WASで示されるトリペプチドからなるCDRL2、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖を含んでなる抗体であり、
前記抗体-薬物コンジュゲート中の抗体が、抗HER2抗体又は抗TROP2抗体である、
方法。
【請求項10】
抗体を用いて、抗体-薬物コンジュゲートを投与された哺乳動物における、該抗体-薬物コンジュゲートの血漿中濃度を定量する方法であって、
前記抗体が、
式
【化8】
で示される薬物を認識する抗体であり、
a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖を含んでなる抗体、
b)配列番号7に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖を含んでなる抗体、
c)配列番号9に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号10に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖を含んでなる抗体、又は、
d)配列番号11に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号12に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号13に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号14に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1、WASで示されるトリペプチドからなるCDRL2、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖を含んでなる抗体であり、
前記抗体-薬物コンジュゲート中の抗体が、抗HER2抗体又は抗TROP2抗体である、
方法。
【請求項11】
前記抗体が、配列番号15においてアミノ酸番号20乃至141に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖、及び配列番号16においてアミノ酸番号21乃至127に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖を含んでなる抗体であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記抗体が、マウス抗体であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体が、配列番号15においてアミノ酸番号20乃至477に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号16においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記抗体が、キメラ抗体であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記抗体が、ウサギキメラ化抗体であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記抗体が、配列番号19においてアミノ酸番号20乃至464に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号20においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記抗体が、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体であり、
配列番号15においてアミノ酸番号20乃至477に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号16においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖、又は、
配列番号19においてアミノ酸番号20乃至464に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号20においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖
を含んでなることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記抗体が、配列番号15においてアミノ酸番号20乃至477に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号16においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖、又は、
配列番号19においてアミノ酸番号20乃至464に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号20においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖
を含んでなる抗体のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を持つアミノ酸配列からなる抗体であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記抗体が、配列番号15においてアミノ酸番号20乃至477に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号16においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖、又は、
配列番号19においてアミノ酸番号20乃至464に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号20においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖
を含んでなる抗体のアミノ酸配列と少なくとも99%の同一性を持つアミノ酸配列からなる抗体であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記抗体が、薬物への認識性について、
配列番号15においてアミノ酸番号20乃至477に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号16においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖、又は、
配列番号19においてアミノ酸番号20乃至464に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号20においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖
を含んでなる抗体と競合する抗体であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
抗体を用いて、抗体-薬物コンジュゲートを投与された哺乳動物における、該抗体-薬物コンジュゲートの血漿中濃度を定量する方法であって、
前記抗体が、
配列番号15においてアミノ酸番号20乃至141に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖、及び配列番号16においてアミノ酸番号21乃至127に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖を含んでなる抗体であり、
前記抗体-薬物コンジュゲート中の抗体が、抗HER2抗体又は抗TROP2抗体である、
方法。
【請求項22】
前記抗体が、配列番号15においてアミノ酸番号20乃至477に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号16においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記抗体が、配列番号19においてアミノ酸番号20乃至464に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号20においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
(1)抗体-薬物コンジュゲートの標的抗原が固相化されたプレートに血漿中の抗体-薬物コンジュゲートを接触させ複合体を形成させるステップ、(2)マーカーで標識化された、前記抗体を該複合体と接触させ、さらなる複合体を形成させるステップ、次いで(3)該マーカーを検出するステップ、を含むことを特徴とする、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
(1)前記抗体が固相化されたプレートに血漿中の抗体-薬物コンジュゲートを接触させ複合体を形成させるステップ、(2)該抗体-薬物コンジュゲートの抗体部位を認識することができ、マーカーで標識化された第二の蛋白質を該複合体と接触させ、さらなる複合体を形成させるステップ、次いで(3)該マーカーを検出するステップ、を含むことを特徴とする、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
抗体を用いて、抗体-薬物コンジュゲートを投与された哺乳動物における、該抗体-薬物コンジュゲートから遊離した薬物の血漿中濃度を定量する方法であって、
前記抗体が、
式
【化9】
で示される薬物と、抗体とが、リンカーを介して結合した抗体-薬物コンジュゲートの、薬物部位を認識する抗体であり、
a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖を含んでなる抗体、
b)配列番号7に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖を含んでなる抗体、
c)配列番号9に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号10に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖を含んでなる抗体、又は、
d)配列番号11に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号12に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号13に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号14に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1、WASで示されるトリペプチドからなるCDRL2、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖を含んでなる抗体であり、
前記抗体-薬物コンジュゲート中の抗体が、抗HER2抗体又は抗TROP2抗体である、
方法。
【請求項27】
(1)前記抗体が固相化されたプレートに、マーカーで標識化された競合薬物の存在下で、血漿中の抗体-薬物コンジュゲートから遊離した薬物を接触させ複合体を形成させるステップ、(2)該マーカーを検出するステップ、を含むことを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
抗体を用いて、抗体-薬物コンジュゲートを投与された哺乳動物における、該抗体-薬物コンジュゲート及び/又は該抗体-薬物コンジュゲートから遊離した薬物の組織分布を確認する方法であって、
前記抗体が、
式
【化10】
で示される薬物と、抗体とが、リンカーを介して結合した抗体-薬物コンジュゲートの、薬物部位を認識する抗体であり、
a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖を含んでなる抗体、
b)配列番号7に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖を含んでなる抗体、
c)配列番号9に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号10に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖を含んでなる抗体、又は、
d)配列番号11に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号12に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号13に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号14に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1、WASで示されるトリペプチドからなるCDRL2、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖を含んでなる抗体であり、
前記抗体-薬物コンジュゲート中の抗体が、抗HER2抗体又は抗TROP2抗体である、
方法。
【請求項29】
(1)組織中の抗体-薬物コンジュゲート及び/又は該抗体-薬物コンジュゲートから遊離した薬物を前記抗体と接触させ複合体を形成させるステップ、(2)前記を認識することができ、マーカーで標識化された第二の蛋白質を該複合体と接触させ、さらなる複合体を形成させるステップ、次いで(3)該マーカーを検出するステップ、を含むことを特徴とする、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
(1)組織中の抗体-薬物コンジュゲート及び/又は該抗体-薬物コンジュゲートから遊離した薬物を、マーカーで標識化された前記抗体と接触させ複合体を形成させるステップ、次いで(2)該マーカーを検出するステップ、を含むことを特徴とする、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記マーカーが蛍光物質であり、該マーカーの検出が該マーカーの発する蛍光を感知することにより行われる、請求項24、25、27、29又は30に記載の方法。
【請求項32】
前記マーカーが酵素であり、該マーカーの検出が該酵素と基質との反応により生じる発光又は発色を感知することにより行われる、請求項24、25、27、29又は30に記載の方法。
【請求項33】
前記マーカーが発光物質であり、該マーカーの検出が電気化学反応に基づく該マーカーの発光を感知することにより行われる、請求項24、25、27、29又は30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エキサテカンの誘導体を構成要素とする抗体-薬物コンジュゲートの薬物部位を認識する蛋白質、及び該蛋白質を用いて、上記の抗体-薬物コンジュゲートを投与された哺乳動物における、該抗体-薬物コンジュゲートの血漿中濃度を定量する方法及び組織分布を確認する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
がん細胞表面に発現する抗原に結合し、かつ細胞に内在化できる抗体に、細胞毒性を有する薬物を結合させた抗体-薬物コンジュゲート(Antibody-Drug Conjugate; ADC)は、がん細胞に選択的に薬物を送達できることによって、がん細胞内に薬物を蓄積させ、がん細胞を死滅させることが期待できる(非特許文献1~5)。
【0003】
低分子化合物や抗体と同様に、抗体-薬物コンジュゲートの医薬品開発においても薬物動態試験(PK試験)の実施は不可欠である。動物におけるPK試験結果と薬理試験結果及び安全性試験結果との相関関係を把握した上で、ヒトにおけるPK試験を行うことにより、臨床試験デザインの策定やヒトでの有効性及び安全性の考察に有用な情報を取得できるためである。
【0004】
抗体-薬物コンジュゲートのPK試験は、投薬後の抗体-薬物コンジュゲートの血漿中濃度を定量することを基本に行われる。抗体-薬物コンジュゲートの血漿中濃度を定量するための方法としてELISA法を挙げることができる。例えば、(1)抗原が固相化されたプレートに抗体-薬物コンジュゲートを接触させ複合体を形成させるステップ、(2)該抗体-薬物コンジュゲートを認識することができ、マーカーで標識化された蛋白質を該複合体と接触させ、さらなる複合体を形成させるステップ、次いで(3)酵素反応等による発色・発光等により該マーカーを検出するステップ、を経ることにより、抗体-薬物コンジュゲートの血漿中濃度を定量することができる。
【0005】
しかし、抗体-薬物コンジュゲートの抗体部位を認識する蛋白質を用いた場合、薬物を保持した状態の抗体-薬物コンジュゲートのみならず、薬物が遊離した状態の抗体-薬物コンジュゲート(すなわち、実質的に抗体部位のみとなったもの)も含めた血漿中濃度が算出され、正確な定量を行うことができない。
【0006】
抗体-薬物コンジュゲートの薬物部位を認識する蛋白質を用いたELISA法により、抗体-薬物コンジュゲートの血漿中濃度を定量する方法が知られている(非特許文献6~11)。
【0007】
抗体-薬物コンジュゲートの一つとして、抗体とトポイソメラーゼI阻害剤であるエキサテカンの誘導体を構成要素とする抗体-薬物コンジュゲートが知られている(特許文献1~7、非特許文献12~15)。これらの抗体-薬物コンジュゲートは、優れた抗腫瘍効果と安全性を有することから、現在、臨床試験が進行中である。
【0008】
上記のエキサテカンの誘導体を構成要素とする抗体-薬物コンジュゲートについて、薬物を保持した状態での血漿中濃度を定量する方法は知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2014/057687号
【特許文献2】国際公開第2014/061277号
【特許文献3】国際公開第2015/098099号
【特許文献4】国際公開第2015/115091号
【特許文献5】国際公開第2015/146132号
【特許文献6】国際公開第2015/155976号
【特許文献7】国際公開第2015/155998号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Ducry, L., et al., Bioconjugate Chem. (2010) 21, 5-13.
【非特許文献2】Alley, S. C., et al., Current Opinion in Chemical Biology (2010) 14, 529-537.
【非特許文献3】Damle N. K. Expert Opin. Biol. Ther. (2004) 4, 1445-1452.
【非特許文献4】Senter P. D., et al., Nature Biotechnology (2012) 30, 631-637.
【非特許文献5】Howard A. et al., J Clin Oncol 29: 398-405.
【非特許文献6】Xie H. et al., J Pharmacol Exp Ther. (2004) 308(3), 1073-1082.
【非特許文献7】Sanderson RJ. et al., Clinical Cancer Research (2005) Vol.11, 843-852.
【非特許文献8】Stephan JP. et al., Bioconjugate Chem. 2008, 19, 1673-1683.
【非特許文献9】Stephan JP. et al., Bioanalysis (2011) 3(6), 677-700.
【非特許文献10】Kaur S. et al., Bioanalysis (2013) 5(2), 201-226.
【非特許文献11】Dere R. et al., Bioanalysis (2013) 5(9), 1025-1040.
【非特許文献12】Ogitani Y. et al., Clinical Cancer Research (2016) 22(20), 5097-5108.
【非特許文献13】Ogitani Y. et al., Cancer Science (2016) 107, 1039-1046.
【非特許文献14】Doi T, et al., Lancet Oncol 2017; 18: 1512-22.
【非特許文献15】Takegawa N, et al., Int. J. Cancer: 141, 1682-1689 (2017).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、エキサテカンの誘導体を構成要素とする抗体-薬物コンジュゲートの薬物部位を認識する蛋白質、及び該蛋白質を用いて、上記の抗体-薬物コンジュゲートを投与された哺乳動物における、該抗体-薬物コンジュゲートの血漿中濃度を定量する方法及び組織分布を確認する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討したところ、特定の免疫スクリーニングにより取得された蛋白質が、エキサテカンの誘導体を構成要素とする抗体-薬物コンジュゲートの薬物部位を特異的に認識することを見出した。また、該蛋白質を用いた、上記の抗体-薬物コンジュゲートを投与された哺乳動物における、該抗体-薬物コンジュゲートの血漿中濃度を定量する方法及び組織分布を確認する方法を確立した。
【0013】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[51]を提供する。
[1]
式
【0014】
【0015】
で示される薬物と、抗体とが、リンカーを介して結合した抗体-薬物コンジュゲートの、薬物部位を認識する蛋白質。
[2]
抗体-薬物コンジュゲートにおける薬物リンカーが、
式
【0016】
【0017】
(式中、Aは抗体との結合位置を示し、該薬物リンカーは抗体とチオエーテル結合によって結合している)
で示される、[1]に記載の蛋白質。
[3]
抗体-薬物コンジュゲートにおける薬物リンカーが、
式
【0018】
【0019】
(式中、Aは抗体との結合位置を示し、該薬物リンカーは抗体とチオエーテル結合によって結合している)
で示される、[1]に記載の蛋白質。
[4]
抗体-薬物コンジュゲートにおける薬物リンカーが、
式
【0020】
【0021】
(式中、Aは抗体との結合位置を示し、該薬物リンカーは抗体とチオエーテル結合によって結合している)
で示される、[1]に記載の蛋白質。
[5]
抗体-薬物コンジュゲートが、式
【0022】
【0023】
(式中、薬物リンカーは抗体とチオエーテル結合によって結合しており、nは1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数を示す)
で示される、[1]に記載の蛋白質。
[6]
抗体-薬物コンジュゲートが、式
【0024】
【0025】
(式中、薬物リンカーは抗体とチオエーテル結合によって結合しており、nは1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数を示す)
で示される、[1]に記載の蛋白質。
[7]
抗体-薬物コンジュゲートが、式
【0026】
【0027】
(式中、薬物リンカーは抗体とチオエーテル結合によって結合しており、nは1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数を示す)
で示される、[1]に記載の蛋白質。
[8]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が2から8の範囲である、[1]~[7]のいずれか1項に記載の蛋白質。
[9]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗HER2抗体、抗HER3抗体、抗TROP2抗体、抗B7-H3抗体、抗GPR20抗体、又は抗CDH6抗体である、[1]~[8]のいずれか1項に記載の蛋白質。
[10]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数の違いによって該抗体-薬物コンジュゲートに対する認識性が実質的に異ならない、[1]~[9]のいずれか1項に記載の蛋白質。
[11]
式
【0028】
【0029】
で示される薬物を認識する蛋白質。
[12]
式
【0030】
【0031】
で示される薬物を認識する蛋白質。
[13]
式
【0032】
【0033】
で示される薬物を認識する蛋白質。
[14]
式
【0034】
【0035】
で示される薬物を認識する蛋白質。
[15]
抗体であることを特徴とする、[1]~[14]のいずれか1項に記載の蛋白質。
[16]
a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖からなる抗体、
b)配列番号7に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖からなる抗体、
c)配列番号9に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号10に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖からなる抗体、又は、
d)配列番号11に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号12に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号13に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号14に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1、WASで示されるトリペプチドからなるCDRL2、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖からなる抗体であることを特徴とする、[15]に記載の蛋白質。
[17]
配列番号15においてアミノ酸番号20乃至141に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖、及び配列番号16においてアミノ酸番号21乃至127に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖からなる抗体であることを特徴とする、[16]に記載の蛋白質。
[18]
マウス抗体であることを特徴とする、[17]に記載の蛋白質。
[19]
配列番号15においてアミノ酸番号20乃至477に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号16においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖からなる抗体であることを特徴とする、[17]に記載の蛋白質。
[20]
キメラ抗体であることを特徴とする、[17]に記載の蛋白質。
[21]
ウサギキメラ化抗体であることを特徴とする、[17]に記載の蛋白質。
【0036】
[22]
配列番号19においてアミノ酸番号20乃至464に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号20においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖からなる抗体であることを特徴とする、[17]に記載の蛋白質。
[23]
[19]又は[22]に記載の抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体であることを特徴とする、[15]に記載の蛋白質。
[24]
[19]又は[22]に記載の抗体のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を持つアミノ酸配列からなる抗体であることを特徴とする、[15]に記載の蛋白質。
[25]
[19]又は[22]に記載の抗体のアミノ酸配列と少なくとも99%の同一性を持つアミノ酸配列からなる抗体であることを特徴とする、[15]に記載の蛋白質。
[26]
薬物への認識性について、[19]又は[22]に記載の抗体と競合する抗体であることを特徴とする、[15]に記載の蛋白質。
[27]
[15]~[26]のいずれか1項に記載の抗体の抗原結合断片であることを特徴とする、[1]~[14]のいずれか1項に記載の蛋白質。
[28]
抗体の抗原結合断片が、Fab、F(ab’)2、Fab’又はFvである、[27]に記載の蛋白質。
[29]
[1]~[28]のいずれか1項に記載の蛋白質を用いて、抗体-薬物コンジュゲートを投与された哺乳動物における、該抗体-薬物コンジュゲートの血漿中濃度を定量する方法。
[30]
(1)抗体-薬物コンジュゲートの標的抗原が固相化されたプレートに血漿中の抗体-薬物コンジュゲートを接触させ複合体を形成させるステップ、(2)マーカーで標識化された、[1]~[28]のいずれか1項に記載の蛋白質を接触させ、さらなる複合体を形成させるステップ、次いで(3)該マーカーを検出するステップ、を含むことを特徴とする、[29]に記載の方法。
[31]
(1)[1]~[28]のいずれか1項に記載の蛋白質が固相化されたプレートに血漿中の抗体-薬物コンジュゲートを接触させ複合体を形成させるステップ、(2)該抗体-薬物コンジュゲートの抗体部位を認識することができ、マーカーで標識化された第二の蛋白質を接触させ、さらなる複合体を形成させるステップ、次いで(3)該マーカーを検出するステップ、を含むことを特徴とする、[29]に記載の方法。
[32]
[1]~[28]のいずれか1項に記載の蛋白質を用いて、抗体-薬物コンジュゲートを投与された哺乳動物における、該抗体-薬物コンジュゲートから遊離した薬物の血漿中濃度を定量する方法。
[33]
(1)[1]~[28]のいずれか1項に記載の蛋白質が固相化されたプレートに、マーカーで標識化された競合薬物の存在下で、血漿中の抗体-薬物コンジュゲートから遊離した薬物を接触させ複合体を形成させるステップ、(2)該マーカーを検出するステップ、を含むことを特徴とする、[32]に記載の方法。
[34]
[1]~[28]のいずれか1項に記載の蛋白質を用いて、抗体-薬物コンジュゲートを投与された哺乳動物における、該抗体-薬物コンジュゲート及び/又は該抗体-薬物コンジュゲートから遊離した薬物の組織分布を確認する方法。
[35]
(1)組織中の抗体-薬物コンジュゲート及び/又は該抗体-薬物コンジュゲートから遊離した薬物を[1]~[28]のいずれか1項に記載の蛋白質と接触させ複合体を形成させるステップ、(2)[1]~[28]のいずれか1項に記載の蛋白質を認識することができ、マーカーで標識化された第二の蛋白質を接触させ、さらなる複合体を形成させるステップ、次いで(3)該マーカーを検出するステップ、を含むことを特徴とする、[34]に記載の方法。
【0037】
[36]
(1)組織中の抗体-薬物コンジュゲート及び/又は該抗体-薬物コンジュゲートから遊離した薬物を、マーカーで標識化された[1]~[28]のいずれか1項に記載の蛋白質と接触させ複合体を形成させるステップ、次いで(2)該マーカーを検出するステップ、を含むことを特徴とする、[34]に記載の方法。
[37]
マーカーが発色試薬であり、該マーカーの検出が該マーカーの発色を感知することにより行われる、[30]、[31]、[33]、[35]又は[36]に記載の方法。
[38]
マーカーが酵素であり、該マーカーの検出が該酵素と基質との反応により生じた発光又は発色を感知することにより行われる、[30]、[31]、[33]、[35]又は[36]に記載の方法。
[39]
マーカーが発光物質であり、該マーカーの検出が電気化学反応に基づく該マーカーの発光を感知することにより行われる、[30]、[31]、[33]、[35]又は[36]に記載の方法。
[40]
[1]~[28]のいずれか1項に記載の蛋白質をコードするポリヌクレオチド。
[41]
[40]に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
[42]
[40]に記載のポリヌクレオチドを含む形質転換宿主細胞。
[43]
[41]に記載のベクターを含む形質転換宿主細胞。
[44]
[42]又は[43]に記載の宿主細胞を培養する工程、次いで、前記培養工程で得られた培養産物から蛋白質を精製する工程、を含む、[1]~[28]のいずれか1項に記載の蛋白質の製造方法。
[45]
[1]~[28]のいずれか1項に記載の蛋白質を含む組成物。
[46]
[1]~[28]のいずれか1項に記載の蛋白質、又は[45]に記載の組成物を含むキット。
[47]
抗体-薬物コンジュゲートを投与された哺乳動物における、抗体-薬物コンジュゲート及び/又は該抗体-薬物コンジュゲートから遊離した薬物の血漿中濃度を定量するための、[46]に記載のキット。
[48]
抗体-薬物コンジュゲートを投与された哺乳動物における、抗体-薬物コンジュゲート及び/又は該抗体-薬物コンジュゲートから遊離した薬物の組織分布を確認するための、[46]に記載のキット。
[49]
配列番号15においてアミノ酸番号20乃至141に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖、及び配列番号16においてアミノ酸番号21乃至127に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖を含んでなる抗体。
[50]
配列番号15においてアミノ酸番号20乃至477に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号16においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる、[49]に記載の抗体。
[51]
配列番号19においてアミノ酸番号20乃至464に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号20においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる、[49]に記載の抗体。
【発明の効果】
【0038】
本発明により、エキサテカンの誘導体を構成要素とする抗体-薬物コンジュゲートの薬物部位を認識する蛋白質、及び該蛋白質を用いた、上記の抗体-薬物コンジュゲートを投与された哺乳動物における、該抗体-薬物コンジュゲートの血漿中濃度を定量する方法及び組織分布を確認する方法が提供された。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】マウス抗体1A3重鎖のアミノ酸配列(配列番号15)を示す。
【
図2】マウス抗体1A3軽鎖のアミノ酸配列(配列番号16)を示す。
【
図3】マウス抗体1A3重鎖可変領域のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(配列番号17)を示す。
【
図4】マウス抗体1A3軽鎖可変領域のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(配列番号18)を示す。
【
図5】ウサギキメラ化抗体1A3重鎖のアミノ酸配列(配列番号19)を示す。
【
図6】ウサギキメラ化抗体1A3軽鎖のアミノ酸配列(配列番号20)を示す。
【
図7】抗HER2抗体重鎖のアミノ酸配列(配列番号21)を示す。
【
図8】抗HER2抗体軽鎖のアミノ酸配列(配列番号22)を示す。
【
図9】抗HER3抗体重鎖のアミノ酸配列(配列番号23)を示す。
【
図10】抗HER3抗体軽鎖のアミノ酸配列(配列番号24)を示す。
【
図11】抗TROP2抗体重鎖のアミノ酸配列(配列番号25)を示す。
【
図12】抗TROP2抗体軽鎖のアミノ酸配列(配列番号26)を示す。
【
図13】抗B7-H3抗体重鎖のアミノ酸配列(配列番号27)を示す。
【
図14】抗B7-H3抗体軽鎖のアミノ酸配列(配列番号28)を示す。
【
図15】マウス抗体1A3をキャプチャー試薬とした場合における、HER2-ADC(I)(DAR8)及びHER2-ADC(I)(DAR4)の検量線を示す。
【
図16】マウス抗体8B2をキャプチャー試薬とした場合における、HER2-ADC(I)(DAR8)及びHER2-ADC(I)(DAR4)の検量線を示す。
【
図17】マウス抗体11B1をキャプチャー試薬とした場合における、HER2-ADC(I)(DAR8)及びHER2-ADC(I)(DAR4)の検量線を示す。
【
図18】マウス抗体1A3を検出試薬とした場合における、HER2-ADC(I)(DAR8)及びHER2-ADC(I)(DAR4)の検量線を示す。
【
図19】マウス抗体8B2を検出試薬とした場合における、HER2-ADC(I)(DAR8)及びHER2-ADC(I)(DAR4)の検量線を示す。
【
図20】マウス抗体11B1を検出試薬とした場合における、HER2-ADC(I)(DAR8)及びHER2-ADC(I)(DAR4)の検量線を示す。
【
図21】マウス抗体1A3を検出試薬とした場合における、B7-H3-ADC(I)(DAR8)及びB7-H3-ADC(I)(DAR4)の検量線を示す。
【0040】
【
図22】マウス抗体8B2を検出試薬とした場合における、B7-H3-ADC(I)(DAR8)及びB7-H3-ADC(I)(DAR4)の検量線を示す。
【
図23】マウス抗体11B1を検出試薬とした場合における、B7-H3-ADC(I)(DAR8)及びB7-H3-ADC(I)(DAR4)の検量線を示す。
【
図24】HER2-ADC(I)のマウス血漿中濃度測定のための検量線を示す。
【
図25】HER3-ADC(I)のサル血漿中濃度測定のための検量線を示す。
【
図26】TROP2-ADC(I)のサル血漿中濃度測定のための検量線を示す。
【
図27】B7-H3-ADC(I)のサル血漿中濃度測定のための検量線を示す。
【
図28】ヒト軽鎖シグナル配列及びヒトκ鎖定常領域のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(配列番号29)を示す。
【
図29】ウサギキメラ化抗体1A3重鎖のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(配列番号30)を示す。
【
図30】ウサギキメラ化抗体1A3軽鎖のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(配列番号31)を示す。
【
図31】抗GPR20抗体重鎖のアミノ酸配列(配列番号32)を示す。
【
図32】抗GPR20抗体軽鎖のアミノ酸配列(配列番号33)を示す。
【
図33】抗CDH6抗体重鎖のアミノ酸配列(配列番号34)を示す。
【
図34】抗CDH6抗体軽鎖のアミノ酸配列(配列番号35)を示す。
【
図35】ウサギキメラ化抗体1A3を用いた免疫染色像を示す。ヒト頭頸部がん細胞株FaDuを皮下移植したヌードマウスにTROP2-ADC(I)又はAnti-TROP2 Abを投与した場合の染色像を比較している。
【
図36】ウサギキメラ化抗体1A3を用いた免疫染色像を示す。GPR20過剰発現ヒト消化管間質腫瘍細胞株GIST-T1/GPR20を皮下移植したヌードマウスにGPR20-ADC(I)を投与した場合、又は未投与の場合の染色像を比較している。
【
図37】マウス抗体1A3を用いた免疫染色像を示す。淡明細胞型腎細胞癌患者より採取された腫瘍組織を皮下移植したヌードマウスにCDH6-ADC(I)を投与した場合、又は未投与の場合の染色像を比較している。
【
図38】マウス抗体1A3を用いた免疫染色像を示す。淡明細胞型腎細胞癌患者より採取された腫瘍組織を皮下移植したヌードマウスにCDH6-ADC(I)を投与し、マウス抗体1A3を化合物(2)又はSN-38とあらかじめ混合した後、免疫染色に用いた場合、又は、そうでない場合の染色像を比較している。
【
図39】GPR20-ADC(I)のマウス血漿中濃度測定のための検量線を示す。
【
図40】HER2-ADC(I)のヒト血清中濃度測定のための検量線を示す。
【
図41】マウス抗体1A3のHER2-ADC(I)への認識に対する競合阻害用化合物の阻害率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これによって本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0042】
1.定義
本発明において、「蛋白質」とは、「ペプチド」又は「ポリペプチド」と同義である。
【0043】
本発明の蛋白質は、好適には、抗体又は抗体の抗原結合断片であるが、抗体と同様に抗原を認識する機能を有する蛋白質であれば、抗体及び抗体の抗原結合断片以外の蛋白質(抗体オルタナティブ)であっても良い。抗体オルタナティブとしては、例えば、Fibronectin、ProteinA、Lipocalin、TrxA、A-domain、Ankyrin repeat、APPI、Ras-binding AF-6等のスキャフォールド蛋白を挙げることができる(Kasper Binz H. et al., Current Opinion in Biotechnology 2005, 16:459-469、Kasper Binz H. et al., Nature Biotechnology 23(10) 2005, 1257-1268、Skerra A., Current Opinion in Biotechnology 2007, 18:295-304、Nygren P., FEBS Journal 275 (2008) 2668-2676、Gronwall C. et al., Journal of Biotechnology 140 (2009) 254-269)。
【0044】
本発明において、「抗体」とは、特定の抗原を認識する機能を有する糖蛋白質を示す。抗体の具体例としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ウサギ化抗体、ヒト化抗体、及びヒト抗体等を挙げることができる。
【0045】
本発明において、「抗原」を「免疫原」の意味に用いることがある。
【0046】
本発明において、「抗体の抗原結合断片」とは、抗原を認識する機能を保持した抗体の部分断片を意味し、「抗体の機能性断片」と同義である。抗体の抗原結合断片としては、例えば、Fab、F(ab’)2、scFv、Fab’、一本鎖免疫グロブリン等を挙げることができるが、それらに限定されるものではない。かかる抗体の機能性断片は、抗体の全長分子をパパイン、ペプシン等の酵素で処理することによって得られたものに加え、組換え遺伝子を用いて適当な宿主細胞において産生された組換え蛋白質であってもよい。
【0047】
本発明の蛋白質が抗原を「認識する」とは、本発明の蛋白質が分子間力(静電相互作用、ファンデルワールス力、水素結合等)により抗原と結合することを意味する。本発明の蛋白質が抗原を「認識する」ことは、例えば、種々の免疫化学的手法により生じるシグナルを検出することにより確認することができる。
【0048】
本発明の蛋白質の抗原に対する「認識性」が異なる、とは、本発明の蛋白質の抗原に対する結合の強さや性質が実質的に異なることを意味する。本発明の蛋白質の抗原に対する「認識性」が異なるか否かは、例えば、種々の免疫化学的手法により生じるシグナルの強さを比較することや、抗原の濃度とシグナルの強さの相関関係を表した検量線を比較することにより確認することがきできる。
【0049】
本発明の蛋白質が認識する「部位」とは、本発明の蛋白質が認識する対象の中の特定の部分構造を意味する。本発明の蛋白質が認識する対象を「抗原」と呼び、本発明の蛋白質が認識する特定の部位を「エピトープ」と呼ぶこともある。
【0050】
抗体の重鎖及び軽鎖にはそれぞれ3箇所の相補性決定領域(CDR:Complementarity determining region)があることが知られている。相補性決定領域は、超可変領域(hypervariable domain)とも呼ばれ、抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域内にあって、一次構造の変異性が特に高い部位であり、重鎖及び軽鎖のポリペプチド鎖の一次構造上において、通常、それぞれ3ヶ所に分離している。本発明においては、抗体の相補性決定領域について、重鎖の相補性決定領域を重鎖アミノ酸配列のアミノ末端側からCDRH1、CDRH2、CDRH3と表記し、軽鎖の相補性決定領域を軽鎖アミノ酸配列のアミノ末端側からCDRL1、CDRL2、CDRL3と表記する。これらの部位は立体構造の上で相互に近接し、抗原に対する特異性を決定している。
【0051】
本発明において、「遺伝子」とは、蛋白質のアミノ酸をコードするヌクレオチド配列が含まれるヌクレオチドまたはその相補鎖を意味し、例えば、蛋白質のアミノ酸をコードするヌクレオチド配列が含まれるヌクレオチドまたはその相補鎖であるポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、DNA、mRNA、cDNA、cRNA等は「遺伝子」の意味に含まれる。かかる遺伝子は一本鎖、二本鎖または三本鎖以上のヌクレオチドであり、DNA鎖とRNA鎖の会合体、一本のヌクレオチド鎖上にリボヌクレオチド(RNA)とデオキシリボヌクレオチド(DNA)が混在するもの及びそのようなヌクレオチド鎖を含む二本鎖または三本鎖以上のヌクレオチドも「遺伝子」の意味に含まれる。
【0052】
本発明において、「ヌクレオチド」と「核酸」は同義であり、例えば、DNA、RNA、プローブ、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、プライマー等も「ヌクレオチド」の意味に含まれる。かかるヌクレオチドは一本鎖、二本鎖または三本以上の鎖からなるヌクレオチドであり、DNA鎖とRNA鎖の会合体、一本のヌクレオチド鎖上にリボヌクレオチド(RNA)とデオキシリボヌクレオチド(DNA)が混在するもの及びそのようなヌクレオチド鎖を含む二本鎖または三本以上の鎖の会合体も「ヌクレオチド」の意味に含まれる。
【0053】
本発明において、「細胞」には、動物個体に由来する各種細胞、継代培養細胞、初代培養細胞、細胞株、組換え細胞及び微生物等も含まれる。
【0054】
2.抗体-薬物コンジュゲート
本発明において「抗体-薬物コンジュゲート」とは、抗体と薬物とが、リンカーを介して結合した結合体を意味する。
【0055】
本発明において「薬物リンカー」とは、抗体-薬物コンジュゲートのうち、リンカー及び薬物からなる部分構造を意味する。
【0056】
本発明の蛋白質は、式
【0057】
【0058】
で示される薬物(以下、「化合物(1)」と呼ぶ)と、抗体とが、リンカーを介して結合した抗体-薬物コンジュゲート(以下、「本発明に係る抗体-薬物コンジュゲート」と呼ぶ)の、薬物部位を認識することを特徴とする。
【0059】
化合物(1)は、エキサテカン(IUPAC名:(1S,9S)-1-アミノ-9-エチル-5-フルオロ-1,2,3,9,12,15-ヘキサヒドロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10H,13H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-10,13-ジオン、(化学名:(1S,9S)-1-アミノ-9-エチル-5-フルオロ-2,3-ジヒドロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-10,13(9H,15H)-ジオンとして表すこともできる))と呼ばれる抗腫瘍薬であり、トポイソメラーゼI阻害活性を有することが知られている。
【0060】
なお、本発明の蛋白質は、化合物(1)そのものを認識することもできる。
【0061】
本発明に係る抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体は、特に制限はないが、例えば、抗HER2抗体、抗HER3抗体、抗TROP2抗体、抗B7-H3抗体、抗CD3抗体、抗CD30抗体、抗CD33抗体、抗CD37抗体、抗CD56抗体、抗CD98抗体、抗DR5抗体、抗EGFR抗体、抗EPHA2抗体、抗FGFR2抗体、抗FGFR4抗体、抗FOLR1抗体、抗VEGF抗体、抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗CD70抗体、抗PSMA抗体、抗CEA抗体、抗Mesothelin抗体、抗A33抗体、抗CanAg抗体、抗Cripto抗体、抗G250抗体、抗MUC1抗体、抗GPNMB抗体、抗Integrin抗体、抗Tenascin-C抗体、抗SLC44A4抗体、抗GPR20抗体、及び抗CDH6抗体を挙げることができ、好適には、抗HER2抗体、抗HER3抗体、抗TROP2抗体、抗B7-H3抗体、抗GPR20抗体、及び抗CDH6抗体を挙げることができる。
【0062】
本発明において、「抗HER2抗体」とは、HER2(Human Epidermal Growth Factor Receptor Type 2; ErbB-2)に特異的に結合し、好ましくは、HER2と結合することによってHER2発現細胞に内在化する活性を有する抗体を示す。
【0063】
抗HER2抗体としては、例えば、トラスツズマブ(Trastuzumab)(米国特許第5821337号)、ペルツズマブ(Pertuzumab)(国際公開第01/00245号)を挙げることができ、好適にはトラスツズマブを挙げることができる。
【0064】
本発明において、「抗HER3抗体」とは、HER3(Human Epidermal Growth Factor Receptor Type 3; ErbB-3)に特異的に結合し、好ましくは、HER3と結合することによってHER3発現細胞に内在化する活性を有する抗体を示す。
【0065】
抗HER3抗体としては、例えば、パトリツマブ(Patritumab; U3-1287)、U1-59(国際公開第2007/077028号)、MM-121(Seribantumab)、国際公開2008/100624号記載の抗ERBB3抗体、RG-7116(Lumretuzumab)、及びLJM-716(Elgemtumab)を挙げることができ、好適には、パトリツマブ、及びU1-59を挙げることができる。
【0066】
本発明において、「抗TROP2抗体」とは、TROP2(TACSTD2:Tumor-associated calcium signal transducer 2; EGP-1)に特異的に結合し、好ましくは、TROP2と結合することによってTROP2発現細胞に内在化する活性を有する抗体を示す。
【0067】
抗TROP2抗体としては、例えば、hTINA1-H1L1(国際公開第2015/098099号)を挙げることができる。
【0068】
本発明において、「抗B7-H3抗体」とは、B7-H3(B cell antigen #7 homolog 3; PD-L3; CD276)に特異的に結合し、好ましくは、B7-H3と結合することによってB7-H3発現細胞に内在化する活性を有する抗体を示す。
【0069】
抗B7-H3抗体としては、例えば、M30-H1-L4(国際公開第2014/057687号)を挙げることができる。
【0070】
本発明において、「抗GPR20抗体」とは、GPR20(G Protein-coupled receptor 20)に特異的に結合し、好ましくは、GPR20と結合することによってGPR20発現細胞に内在化する活性を有する抗体を示す。
【0071】
抗GPR20抗体としては、例えば、h046-H4e/L7(国際公開第2018/135501号)を挙げることができる。
【0072】
本発明において、「抗CDH6抗体」とは、CDH6(Cadherin-6)に特異的に結合し、好ましくは、CDH6と結合することによってCDH6発現細胞に内在化する活性を有する抗体を示す。
【0073】
抗CDH6抗体としては、例えば、H01L02(国際公開第2018/212136号)を挙げることができる。
【0074】
本発明の蛋白質は、好適には、
式
【0075】
【0076】
(式中、Aは抗体との結合位置を示し、該薬物リンカーは抗体とチオエーテル結合によって結合している)
で示される薬物リンカーを有する抗体-薬物コンジュゲート(以下、「抗体-薬物コンジュゲート(I)」と呼ぶ)、
式
【0077】
【0078】
(式中、Aは抗体との結合位置を示し、該薬物リンカーは抗体とチオエーテル結合によって結合している)
で示される薬物リンカーを有する抗体-薬物コンジュゲート(以下、「抗体-薬物コンジュゲート(II)」と呼ぶ)、又は、
式
【0079】
【0080】
(式中、Aは抗体との結合位置を示し、該薬物リンカーは抗体とチオエーテル結合によって結合している)
で示される薬物リンカーを有する抗体-薬物コンジュゲート(以下、「抗体-薬物コンジュゲート(III)」と呼ぶ)の、薬物部位を特異的に認識することを特徴とする。
【0081】
抗体-薬物コンジュゲート(I)~(III)の薬物リンカーは、抗体の鎖間のジスルフィド結合部位(2箇所の重鎖-重鎖間、及び2箇所の重鎖-軽鎖間)において生じたチオール基(言い換えれば、システイン残基の硫黄原子)に結合している。
【0082】
本発明の蛋白質は、より好適には、抗体-薬物コンジュゲート(I)の薬物部位を特異的に認識することを特徴とする。
【0083】
抗体-薬物コンジュゲート(I)は、次式で示すこともできる。
【0084】
【0085】
ここで、薬物リンカーは抗体とチオエーテル結合によって結合している。また、nはいわゆる平均薬物結合数(DAR; Drug-to-Antibody Ratio)と同義であり、1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数を示す。
【0086】
なお、本発明に係る抗体-薬物コンジュゲートの抗体一分子あたりの平均薬物結合数の算出は、例えば、280nm及び370nmの二波長における抗体-薬物コンジュゲートとそのコンジュゲーション前駆体のUV吸光度を測定することにより算出する方法(UV法)や、抗体-薬物コンジュゲートを還元剤で処理し得られた各フラグメントをHPLC測定により定量し算出する方法(HPLC法)により行うことができる。
【0087】
抗体-薬物コンジュゲート(I)は、がん細胞内に移行した後にリンカー部分が切断され、
式
【0088】
【0089】
で表される化合物(以下、「化合物(2)」と呼ぶ)を遊離する。
【0090】
化合物(2)は、本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートのリンカー部分が切断されることにより生じると考えられる、
式
【0091】
【0092】
で表される化合物(以下、「化合物(3)」と呼ぶ)のアミナール構造が分解することにより生じると考えられる。
【0093】
化合物(2)は、抗体-薬物コンジュゲート(I)の抗腫瘍活性の本体であると考えられ、トポイソメラーゼI阻害作用を有することが確認されている(Ogitani Y. et al., Clinical Cancer Research, 2016, Oct 15;22(20):5097-5108, Epub 2016 Mar 29)。
【0094】
なお、本発明の蛋白質は、抗体-薬物コンジュゲート(I)から遊離した化合物(2)そのものを認識することもできる。
【0095】
抗体-薬物コンジュゲート(II)は、次式で示すこともできる。
【0096】
【0097】
ここで、薬物リンカーは抗体とチオエーテル結合によって結合している。また、nはDARと同義であり、1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数を示す。
【0098】
抗体-薬物コンジュゲート(II)は、がん細胞内に移行した後にリンカー部分が切断され、
式
【0099】
【0100】
で表される化合物(以下、「化合物(4)」と呼ぶ)を遊離する。
【0101】
なお、本発明の蛋白質は、抗体-薬物コンジュゲート(II)から遊離した化合物(4)そのものを認識することもできる。
【0102】
抗体-薬物コンジュゲート(III)は、次式で示すこともできる。
【0103】
【0104】
ここで、薬物リンカーは抗体とチオエーテル結合によって結合している。また、nはDARと同義であり、1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数を示す。
【0105】
抗体-薬物コンジュゲート(III)は、がん細胞内に移行した後にリンカー部分が切断され、
式
【0106】
【0107】
で表される化合物(以下、「化合物(5)」と呼ぶ)を遊離する。
【0108】
なお、本発明の蛋白質は、抗体-薬物コンジュゲート(III)から遊離した化合物(5)そのものを認識することもできる。
【0109】
本発明において、「抗HER2抗体-薬物コンジュゲート」とは、本発明に係る抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が抗HER2抗体である抗体-薬物コンジュゲートを示す。
【0110】
抗HER2抗体は、好適には、配列番号21においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号22においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、配列番号21に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号22に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である。
【0111】
抗HER2抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数は、好適には2から8であり、より好適には3から8であり、更により好適には7から8であり、更により好適には7.5から8であり、更により好適には約8である。
【0112】
抗HER2抗体-薬物コンジュゲートは、国際公開第2015/115091号等の記載を参考に製造することができる。
【0113】
本発明において、「抗HER3抗体-薬物コンジュゲート」とは、本発明に係る抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が抗HER3抗体である抗体-薬物コンジュゲートを示す。
【0114】
抗HER3抗体は、好適には、配列番号23においてアミノ酸番号26乃至35に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号23においてアミノ酸番号50乃至65に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号23においてアミノ酸番号98乃至106に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号24においてアミノ酸番号24乃至39に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号24においてアミノ酸番号56乃至62に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列番号24においてアミノ酸番号95乃至103に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖、を含む抗体であり、
より好適には、配列番号23においてアミノ酸番号1乃至117に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖、及び配列番号24においてアミノ酸番号1乃至113に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖、を含む抗体であり、
更により好適には、配列番号23に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号24に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体である。
【0115】
抗HER3抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数は、好適には2から8であり、より好適には3から8であり、更により好適には7から8であり、更により好適には7.5から8であり、更により好適には約8である。
【0116】
抗HER3抗体-薬物コンジュゲートは、国際公開第2015/155998号等の記載を参考に製造することができる。
【0117】
本発明において、「抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート」とは、本発明に係る抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が抗TROP2抗体である抗体-薬物コンジュゲートを示す。
【0118】
抗TROP2抗体は、好適には、配列番号25においてアミノ酸番号50乃至54に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号25においてアミノ酸番号69乃至85に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号25においてアミノ酸番号118乃至129に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号26においてアミノ酸番号44乃至54に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号26においてアミノ酸番号70乃至76に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列番号26においてアミノ酸番号109乃至117に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖、を含む抗体であり、
より好適には、配列番号25においてアミノ酸番号20乃至140に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖、及び配列番号26においてアミノ酸番号21乃至129に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖、を含む抗体であり、
更により好適には、配列番号25においてアミノ酸番号20乃至470に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号26においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体である。
【0119】
抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数は、好適には2から8であり、より好適には3から5であり、更により好適には3.5から4.5であり、更により好適には約4である。
【0120】
抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートは、国際公開第2015/098099号等の記載を参考に製造することができる。
【0121】
本発明において、「抗B7-H3抗体-薬物コンジュゲート」とは、本発明に係る抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が抗B7-H3抗体である抗体-薬物コンジュゲートを示す。
【0122】
抗B7-H3抗体は、好適には、配列番号27においてアミノ酸番号50乃至54に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号27においてアミノ酸番号69乃至85に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号27においてアミノ酸番号118乃至130に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号28においてアミノ酸番号44乃至53に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号28においてアミノ酸番号69乃至75に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列番号28においてアミノ酸番号108乃至116に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖、を含む抗体であり、
より好適には、配列番号27においてアミノ酸番号20乃至141に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖、及び配列番号28においてアミノ酸番号21乃至128に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖、を含む抗体であり、
更により好適には、配列番号27においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号28においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体である。
【0123】
抗B7-H3抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数は、好適には2から8であり、より好適には3から5であり、更により好適には3.5から4.5であり、更により好適には約4である。
【0124】
抗B7-H3抗体-薬物コンジュゲートは、国際公開第2014/057687号等の記載を参考に製造することができる。
【0125】
本発明において、「抗GPR20抗体-薬物コンジュゲート」とは、本発明に係る抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が抗GPR20抗体である抗体-薬物コンジュゲートを示す。
【0126】
抗GPR20抗体は、好適には、配列番号32においてアミノ酸番号45乃至54に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号32においてアミノ酸番号69乃至78に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号32においてアミノ酸番号118乃至131に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号33においてアミノ酸番号44乃至54に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号33においてアミノ酸番号70乃至76に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列番号33においてアミノ酸番号109乃至117に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖、を含む抗体であり、
より好適には、配列番号32においてアミノ酸番号20乃至142に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖、及び配列番号33においてアミノ酸番号21乃至129に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖、を含む抗体であり、
更により好適には、配列番号32においてアミノ酸番号20乃至472に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号33においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体である。
【0127】
抗GPR20抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数は、好適には2から8であり、より好適には3から8であり、更により好適には7から8であり、更により好適には7.5から8であり、更により好適には約8である。
【0128】
抗GPR20抗体-薬物コンジュゲートは、国際公開第2018/135501号等の記載を参考に製造することができる。
【0129】
本発明において、「抗CDH6抗体-薬物コンジュゲート」とは、本発明に係る抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が抗CDH6抗体である抗体-薬物コンジュゲートを示す。
【0130】
抗CDH6抗体は、好適には、配列番号34においてアミノ酸番号45乃至54に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号34においてアミノ酸番号69乃至78に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号34においてアミノ酸番号118乃至130に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号35においてアミノ酸番号44乃至54に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号35においてアミノ酸番号70乃至76に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列番号35においてアミノ酸番号109乃至116に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖、を含む抗体であり、
より好適には、配列番号34においてアミノ酸番号20乃至141に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖、及び配列番号35においてアミノ酸番号21乃至128に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖、を含む抗体であり、
更により好適には、配列番号34においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号35においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体である。
【0131】
抗CDH6抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数は、好適には2から8であり、より好適には3から8であり、更により好適には7から8であり、更により好適には7.5から8であり、更により好適には約8である。
【0132】
抗CDH6抗体-薬物コンジュゲートは、国際公開第2018/212136号等の記載を参考に製造することができる。
【0133】
3.本発明の蛋白質の製造
本発明の蛋白質は、好適には抗体(以下、「本発明の抗体」と呼ぶ)として取得することができる。本発明の抗体は、化合物(1)又はその誘導体とキャリア蛋白とがリンカーを介して結合した抗原蛋白質を動物に免疫し、生体内に産生される抗体を採取、精製することによって得ることができる。
【0134】
上記の抗原蛋白質は、例えば、
式
【0135】
【0136】
で表される化合物(以下、「化合物(6)と呼ぶ」)に、キャリア蛋白を付加したものを用いることができる。
【0137】
キャリア蛋白としては、低分子化合物やペプチドのような小さな抗原であっても免疫応答を誘発できるような蛋白質であれば特に限定はされないが、例えば、ウシサイログロブリン、及びウシ血清アルブミン(BSA)、及びKeyhole limpet hemocyanin(KLH)を用いることができる。
【0138】
得られた抗血清は、陽性対照及び陰性対照を用いたELISA法により、所望の性質を有するものを選別することができる。
【0139】
陽性対照としては、例えば、化合物(1)、化合物(2)、化合物(6)を挙げることができ、これらの陽性対照による高いinhibition効果が認められる抗血清を選別することができる。
【0140】
なお、化合物(1)が有するラクトン環は、酸性水性溶媒中(例えばpH3程度)では閉環体に平衡が偏り、塩基性水性溶媒中(例えばpH10程度)では開環体に平衡が偏ることが知られているが、ラクトン環の開閉に関係なく化合物(1)の基本骨格そのものを認識する抗体を選別する観点から、ラクトン環が還元された化合物、例えば、
式
【0141】
【0142】
で表される化合物(以下、「化合物(7)と呼ぶ」)も陽性対照として用いることができ、この陽性対照による高いinhibition効果が認められる抗血清を選別することができる。ただし、化合物(1)と化合物(7)を同程度に認識する抗体を選別する観点から、化合物(1)よりも化合物(7)への認識性が特に高い抗体は除外することが好ましい。
【0143】
さらに、本発明に係る抗体-薬物コンジュゲート(好適には、抗体-薬物コンジュゲート(I)、(II)、及び(III))も陽性対照として用いることができ、これらの陽性対照による高いinhibition効果が認められる抗血清を選別することができる。
【0144】
一方、化合物(1)の基本骨格から離れた部分を認識する抗体を除外する観点から、例えば、リンカー付近の部分構造である、シクロヘキサン環からなる化合物である、
式
【0145】
【0146】
で表される化合物(以下、「化合物(8)と呼ぶ」)を陰性対照として用いることができる。この陰性対照による高いinhibition効果が認められる抗血清を除外することができる。
【0147】
以上のようにして選別した抗血清をクローニングすることにより、本発明の抗体を産生する細胞を取得することができる。
【0148】
次に、公知の方法(例えば、Kohler and Milstein, Nature (1975)256,p.495-497、Kennet,R.ed., Monoclonal Antibodies, p.365-367, Plenum Press,N.Y.(1980))に従って、本発明の抗体を産生する細胞とミエローマ細胞とを融合させることによりハイブリドーマを樹立し、モノクローナル抗体を得ることができる。このような方法の具体的な例は、国際公開第WO09/48072号パンフレット(2009年4月16日公開)及び第WO10/117011号(2010年10月14日公開)パンフレットに記載されている。
【0149】
得られた抗体は、均一にまで精製することができる。抗体の分離、精製は通常の蛋白質で使用されている分離、精製方法を使用すればよい。例えばカラムクロマトグラフィー、フィルター濾過、限外濾過、塩析、透析、調製用ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動等を適宜選択、組み合わせれば、抗体を分離、精製することができる(Strategies for Protein Purification and Characterization:A Laboratory Course Manual, Daniel R. Marshak et al. eds., Cold Spring Harbor Laboratory Press(1996)、Antibodies: A Laboratory Manual. Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory(1988))が、これらに限定されるものではない。
【0150】
クロマトグラフィーとしては、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー等を挙げることができる。これらのクロマトグラフィーは、HPLCやFPLC等の液体クロマトグラフィーを用いて行うことができる。アフィニティークロマトグラフィーに用いるカラムとしては、プロテインAカラム、プロテインGカラムを挙げることができる。例えばプロテインAカラムとして、Hyper D,POROS,Sepharose F.F.(ファルマシア)等を挙げることができる。また、抗原を固定化した担体を用いて、抗原への結合性を利用して抗体を精製することも可能である。
【0151】
さらに、本発明の抗体は、好適には、本発明に係る抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数(DAR)の違いによって該抗体-薬物コンジュゲートに対する認識性が実質的に異ならないことを特徴とする。このような性質を有する抗体であることは、例えば、高DAR(DAR8)の抗体-薬物コンジュゲートに対する検量線と、低DAR(DAR4)の抗体-薬物コンジュゲートに対する検量線を比較し、実質的に差異がないことにより確認することができる。
【0152】
このようにして取得された本発明の抗体の実例としては、マウス抗体1A3を挙げることができる。マウス抗体1A3の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号15においてアミノ酸番号20乃至141に記載のアミノ酸配列で示され、これをコードするヌクレオチド配列は配列番号17においてヌクレオチド番号58乃至423に記載のヌクレオチド配列で示される。マウス抗体1A3の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号16においてアミノ酸番号21乃至127に記載のアミノ酸配列で示され、これをコードするヌクレオチド配列は配列番号18においてヌクレオチド番号61乃至381に記載のヌクレオチド配列で示される。
【0153】
本発明の抗体は、マウス抗体1A3に由来する6種全てのCDR配列を保持し、且つ、本発明に係る抗体-薬物コンジュゲートの薬物部位を特異的に認識する抗体であればよい。CDR配列の決定には、数種の方法が知られており、例えば、Abmの定義、Chothiaの定義、Kabatの定義、及びImgt(登録商標)(The international ImMunoGeneTics information system(登録商標))の定義を挙げることができる。本発明の抗体のCDR配列はいずれの方法によって定義されたものでもよい。
【0154】
Abmの定義によれば、本発明の抗体の重鎖可変領域は、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1(GFTFSDYGMV)、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2(YISSGSSAIY)、及び配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3(PPRYDVYSAWFAY)を保有しており、本発明の抗体の軽鎖可変領域は、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1(KASQDVGSAVV)、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2(WASTRHT)、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3(QQYSSYPVT)を保有している。
【0155】
Chothiaの定義によれば、本発明の抗体の重鎖可変領域は、配列番号7に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1(GFTFSDY)、配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2(SSGSSA)、及び配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3(PPRYDVYSAWFAY)を保有しており、本発明の抗体の軽鎖可変領域は、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1(KASQDVGSAVV)、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2(WASTRHT)、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3(QQYSSYPVT)を保有している。
【0156】
Kabatの定義によれば、本発明の抗体の重鎖可変領域は、配列番号9に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1(DYGMV)、配列番号10に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2(YISSGSSAIYYADTVKG)、及び配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3(PPRYDVYSAWFAY)を保有しており、本発明の抗体の軽鎖可変領域は、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1(KASQDVGSAVV)、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2(WASTRHT)、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3(QQYSSYPVT)を保有している。
【0157】
Imgt(登録商標)の定義によれば、本発明の抗体の重鎖可変領域は、配列番号11に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1(GFTFSDYG)、配列番号12に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2(ISSGSSAI)、及び配列番号13に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3(ARPPRYDVYSAWFAY)を保有しており、本発明の抗体の軽鎖可変領域は、配列番号14に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1(QDVGSA)、WAS(トリプトファン-アラニン-セリン)で示されるトリペプチドからなるCDRL2、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3(QQYSSYPVT)を保有している。
【0158】
本発明の抗体には、上記のモノクローナル抗体に加え、異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ(Chimeric)抗体、ヒト化(Humanized)抗体、又はウサギ化(Rabbit type)抗体、マウス化抗体等も含まれる。これらの抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。
【0159】
キメラ抗体としては、抗体の可変領域と定常領域が互いに異種である抗体、例えばマウス又はラット由来抗体の可変領域をヒト由来の定常領域に接合したキメラ抗体を挙げることができる(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,81,6851-6855,(1984)参照)。また、他の例としてはマウス又はラット由来の抗体の可変領域をウサギ由来の定常領域に接合したキメラ抗体(ウサギキメラ化抗体)を挙げることができる。
【0160】
ウサギキメラ化抗体の更に具体的な例としてはマウス抗体1A3由来の重鎖可変領域とウサギ抗体重鎖の定常領域を含むことからなる重鎖、並びに、マウス抗体1A3抗体由来の軽鎖可変領域とウサギ抗体軽鎖の定常領域を含むことからなる軽鎖を含むことからなる抗体(ウサギキメラ化抗体1A3)を挙げることができる。ウサギキメラ化抗体1A3の重鎖は配列番号19においてアミノ酸番号20乃至464に記載のアミノ酸配列からなり、ウサギキメラ化抗体1A3の軽鎖は配列番号20においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる。
【0161】
がん研究の非臨床動物モデルとしてマウスが使用されることが多いが、マウス抗体を用いた場合、内因性のマウスIgGとの競合を避けるために使用方法が限定的となってしまう。そこで、ウサギキメラ化抗体を用いることにより、マウス由来サンプル、ヒト由来サンプルの両者を同一プラットフォームで比較評価が可能となり、トランスレーショナル研究に有用となりえる。
【0162】
ヒト化抗体としては、相補性決定領域(CDR;complementarity determining region)のみをヒト由来の抗体に組み込んだ抗体(Nature(1986)321,p.522-525参照)、CDRの配列に加え一部のフレームワークのアミノ酸残基もヒト抗体に移植した抗体(国際公開第WO90/07861号パンフレット)を挙げることができる。ウサギ化抗体としては、相補性決定領域(CDR;complementarity determining region)のみをウサギ由来の抗体に組み込んだ抗体、CDRの配列に加え一部のフレームワークのアミノ酸残基もウサギ抗体に移植した抗体を挙げることができる。
【0163】
なお、哺乳類培養細胞で生産される抗体の重鎖のカルボキシル末端のリシン残基が欠失することが知られており(Journal of Chromatography A,705:129-134(1995))、また、同じく重鎖カルボキシル末端のグリシン、リシンの2アミノ酸残基が欠失し、新たにカルボキシル末端に位置するプロリン残基がアミド化されることが知られている(Analytical Biochemistry,360:75-83(2007))。しかし、これらの重鎖配列の欠失及び修飾は、抗体の抗原結合能及びエフェクター機能(補体の活性化や抗体依存性細胞傷害作用など)には影響を及ぼさない。従って、本発明には当該修飾を受けた抗体も含まれ、重鎖カルボキシル末端において1又は2つのアミノ酸が欠失した欠失体、及びアミド化された当該欠失体(例えば、カルボキシル末端部位のプロリン残基がアミド化された重鎖)等を挙げることができる。但し、抗原結合能及びエフェクター機能が保たれている限り、本発明に係る抗体の重鎖のカルボキシル末端の欠失体は上記の種類に限定されない。本発明に係る抗体を構成する2本の重鎖は、完全長及び上記の欠失体からなる群から選択される重鎖のいずれか一種であっても良いし、いずれか二種を組み合わせたものであっても良い。各欠失体の量比は本発明に係る抗体を産生する哺乳類培養細胞の種類及び培養条件に影響を受け得るが、本発明に係る抗体の主成分としては2本の重鎖の双方でカルボキシル末端の1つのアミノ酸残基が欠失している場合を挙げることができる。
【0164】
本発明の抗体は、本発明の抗体の性質が維持されていれば、マウス抗体1A3又はウサギキメラ化抗体1A3のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性(好適には、少なくとも99%の同一性)を持つアミノ酸配列からなる抗体であってもよい。
【0165】
二種類のアミノ酸配列間の同一性は、Blast(Nucl. Acids Res., 25, p.3389-3402(1997))のデフォルトパラメーターを使用することによって決定することができる。Blastは、インターネットでwww. ncbi. nlm. nih. gov/blastにアクセスすることによっても使用することができる。
【0166】
また、本発明の抗体は、本発明に係る抗体-薬物コンジュゲートにおける薬物部位への認識性について、マウス抗体1A3又はウサギキメラ化抗体1A3と競合する抗体であってもよい。
【0167】
以上の方法によって得られた抗体は、本発明に係る抗体-薬物コンジュゲートにおける薬物部位への認識性について評価し、好適な抗体を選抜することができる。抗体の性質を比較する際の別の指標の一例としては、抗体の安定性を挙げることができる。示差走査カロリメトリー(DSC)は、蛋白の相対的構造安定性の良い指標となる熱変性中点(Tm)を素早く、また正確に測定することができる方法である。DSCを用いてTm値を測定し、その値を比較することによって、熱安定性の違いを比較することができる。抗体の保存安定性は、抗体の熱安定性とある程度の相関を示すことが知られており(Lori Burton, et. al., Pharmaceutical Development and Technology (2007) 12, p.265-273)、熱安定性を指標に、好適な抗体を選抜することができる。抗体を選抜するための他の指標としては、適切な宿主細胞における収量が高いこと、及び水溶液中での凝集性が低いことを挙げることができる。例えば収量の最も高い抗体が最も高い熱安定性を示すとは限らないので、以上に述べた指標に基づいて総合的に判断して、最も適した抗体を選抜する必要がある。
【0168】
また、抗体の重鎖及び軽鎖の全長配列を適切なリンカーを用いて連結し、一本鎖イムノグロブリン(single chain immunoglobulin)を取得する方法も知られている(Lee, H-S, et al., Molecular Immunology (1999) 36, p.61-71、Shirrmann, T. et al., mAbs (2010), 2, (1) p.1-4)。このような一本鎖イムノグロブリンは二量体化することによって、本来は四量体である抗体と類似した構造と活性を保持することが可能である。また、本発明の抗体は、単一の重鎖可変領域を有し、軽鎖配列を有さない抗体であっても良い。このような抗体は、単一ドメイン抗体(single domain antibody:sdAb)又はナノボディ(nanobody)と呼ばれており、実際にラクダ又はラマで観察され、抗原結合能が保持されていることが報告されている(Muyldemans S. et al., Protein Eng. (1994) 7(9), 1129-35、Hamers-Casterman C. et al., Nature (1993) 363 (6428) 446-8)。上記の抗体は、本発明における抗体の抗原結合性断片の一種と解釈することも可能である。
【0169】
抗体遺伝子を一旦単離した後、適当な宿主に導入して抗体を作製する場合には、適当な宿主と発現ベクターの組み合わせを使用することができる。抗体遺伝子の具体例としては、本明細書に記載された抗体の重鎖配列をコードする遺伝子、及び軽鎖配列をコードする遺伝子を組み合わせたものを挙げることができる。宿主細胞を形質転換する際には、重鎖配列遺伝子と軽鎖配列遺伝子は、同一の発現ベクターに挿入されていることが可能であり、又別々の発現ベクターに挿入されていることも可能である。真核細胞を宿主として使用する場合、動物細胞、植物細胞、真核微生物を用いることができる。動物細胞としては、(1)哺乳類細胞、例えば、サルの細胞であるCOS細胞(Gluzman, Y. Cell (1981) 23, p.175-182、ATCC CRL-1650)、マウス線維芽細胞NIH3T3(ATCC No.CRL-1658)やチャイニーズ・ハムスター卵巣細胞(CHO細胞、ATCC CCL-61)のジヒドロ葉酸還元酵素欠損株(Urlaub, G. and Chasin, L. A. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1980) 77, p.4126-4220)を挙げることができる。また、原核細胞を使用する場合は、例えば、大腸菌、枯草菌を挙げることができる。これらの細胞に目的とする抗体遺伝子を形質転換により導入し、形質転換された細胞をin vitroで培養することにより抗体が得られる。以上の培養法においては抗体の配列によって収量が異なる場合があり、同等な結合活性を持つ抗体の中から収量を指標に医薬としての生産が容易なものを選別することが可能である。
【0170】
本発明の抗体のアイソタイプとしての制限はなく、例えばIgG(IgG1,IgG2,IgG3,IgG4)、IgM、IgA(IgA1,IgA2)、IgDあるいはIgE等を挙げることができるが、好ましくはIgG又はIgM、さらに好ましくはIgG1又はIgG2を挙げることができる。
【0171】
また本発明の抗体は、抗体の抗原結合部を有する抗体の抗原結合性断片又はその修飾物であってもよい。抗体をパパイン、ペプシン等の蛋白質分解酵素で処理するか、あるいは抗体遺伝子を遺伝子工学的手法によって改変し適当な培養細胞において発現させることによって、該抗体の断片を得ることができる。このような抗体断片のうちで、抗体全長分子の持つ機能の全て又は一部を保持している断片を抗体の抗原結合性断片と呼ぶことができる。
【0172】
例えば、抗体の断片としては、Fab、F(ab’)2、Fv、又は重鎖及び軽鎖のFvを適当なリンカーで連結させたシングルチェインFv(scFv)、diabody(diabodies)、線状抗体、及び抗体断片より形成された多特異性抗体などを挙げることができる。また、F(ab’)2を還元条件下で処理した抗体の可変領域の一価の断片であるFab’も抗体の断片に含まれる。
【0173】
さらに、本発明の抗体は少なくとも2種類の異なる抗原に対して特異性を有する多特異性抗体であってもよい。通常このような分子は2種類の抗原に結合するものであるが(即ち、二重特異性抗体(bispecific antibody))、本発明における「多特異性抗体」は、それ以上(例えば、3種類)の抗原に対して特異性を有する抗体を包含するものである。
【0174】
本発明の多特異性抗体は、全長からなる抗体、又はそのような抗体の断片(例えば、F(ab’)2二重特異性抗体)でもよい。二重特異性抗体は2種類の抗体の重鎖と軽鎖(HL対)を結合させて作製することもできるし、異なるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを融合させて、二重特異性抗体産生融合細胞を作製することによっても、作製することができる(Millstein et al., Nature (1983) 305, p.537-539)。
【0175】
本発明の抗体は一本鎖抗体(scFvとも記載する)でもよい。一本鎖抗体は、抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域とをポリペプチドのリンカーで連結することにより得られる(Pluckthun, The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, 113(Rosenberg及びMoore編、Springer Verlag, New York, p.269-315(1994)、Nature Biotechnology (2005), 23, p.1126-1136)。また、2つのscFvをポリペプチドリンカーで結合させて作製されるBiscFv断片を二重特異性抗体として使用することもできる。
【0176】
一本鎖抗体を作製する方法は当技術分野において周知である(例えば、米国特許第4,946,778号、米国特許第5,260,203号、米国特許第5,091,513号、米国特許第5,455,030号等を参照)。このscFvにおいて、重鎖可変領域と軽鎖可変領域は、コンジュゲートを作らないようなリンカー、好ましくはポリペプチドリンカーを介して連結される(Huston, J. S. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.(1988), 85, p.5879-5883)。scFvにおける重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、同一の抗体に由来してもよく、別々の抗体に由来してもよい。可変領域を連結するポリペプチドリンカーとしては、例えば12~19残基からなる任意の一本鎖ペプチドが用いられる。
【0177】
scFvをコードするDNAは、前記抗体の重鎖又は重鎖可変領域をコードするDNA、及び軽鎖又は軽鎖可変領域をコードするDNAのうち、それらの配列のうちの全部又は所望のアミノ酸配列をコードするDNA部分を鋳型とし、その両端を規定するプライマー対を用いてPCR法により増幅し、次いで、さらにポリペプチドリンカー部分をコードするDNA、及びその両端が各々重鎖、軽鎖と連結されるように規定するプライマー対を組み合わせて増幅することにより得られる。
【0178】
また、一旦scFvをコードするDNAが作製されると、それらを含有する発現ベクター、及び該発現ベクターにより形質転換された宿主を常法に従って得ることができ、また、その宿主を用いることにより、常法に従ってscFvを得ることができる。これらの抗体断片は、前記と同様にして遺伝子を取得し発現させ、宿主により産生させることができる。
【0179】
本発明の抗体は、多量化して抗原に対する親和性を高めたものであってもよい。多量化する抗体としては、1種類の抗体であっても、同一の抗原の複数のエピトープを認識する複数の抗体であってもよい。抗体を多量化する方法としては、IgG CH3ドメインと2つのscFvとの結合、ストレプトアビジンとの結合、へリックスーターン-へリックスモチーフの導入等を挙げることができる。
【0180】
本発明の抗体は、アミノ酸配列が異なる複数種類の抗体の混合物である、ポリクローナル抗体であってもよい。ポリクローナル抗体の一例としては、CDRが異なる複数種類の抗体の混合物を挙げることができる。そのようなポリクローナル抗体としては、異なる抗体を産生する細胞の混合物を培養し、該培養物から精製された抗体を用いることが出来る(WO2004/061104号参照)。
【0181】
抗体の修飾物として、ポリエチレングリコール(PEG)等の各種分子と結合した抗体を使用することもできる。
【0182】
本発明の抗体は、更にこれらの抗体と他の薬剤がコンジュゲートを形成しているもの(Immunoconjugate)でもよい。このような抗体の例としては、該抗体が放射性物質や薬理作用を有する化合物と結合している物を挙げることができる(Nature Biotechnology (2005) 23, p.1137-1146)。
【0183】
4.本発明の蛋白質の使用
本発明の蛋白質は、ELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)法、ECL(Electrochemiluminescence)法、RIA(Radio Immunoassay)法、ELISPOT(Enzyme-Linked ImmunoSpot)法、ドットブロット法、オクタロニー法、CIE(Counterimmunoelectrophoresis)法、CLIA(Chemiluminescent immuno assay)、及びFCM(Flow Cytometry)などの検出方法、並びに免疫組織化学(immunohistochemistry:IHC)法に利用することができ、好適には、ELISA法、ECL法、並びにIHC法に利用することができる。
【0184】
ELISA法及びECL法としては、例えば、本発明の抗体-薬物コンジュゲートを投与された哺乳動物(本発明における「哺乳動物」としては、例えば、ヒト、マウス、ラット、サル、ウサギ等を挙げることができるが、哺乳動物である限りこれらに限定されない)における、該抗体-薬物コンジュゲートの血漿中濃度を定量する方法に利用することができる。
【0185】
具体的には、(1)抗体-薬物コンジュゲートの標的抗原が固相化されたプレートに血漿中の抗体-薬物コンジュゲートを接触させ複合体を形成させるステップ、(2)マーカーで標識化された、本発明の蛋白質を接触させ、さらなる複合体を形成させるステップ、次いで(3)該マーカーを検出するステップ、を含む。
【0186】
また、(1)本発明の蛋白質が固相化されたプレートに血漿中の抗体-薬物コンジュゲートを接触させ複合体を形成させるステップ、(2)該抗体-薬物コンジュゲートの抗体部位を認識することができ、マーカーで標識化された第二の蛋白質を接触させ、さらなる複合体を形成させるステップ、次いで(3)該マーカーを検出するステップ、を含むこともできる。
【0187】
また、ELISA法及びECL法は、本発明の抗体-薬物コンジュゲートを投与された哺乳動物における、該抗体-薬物コンジュゲートから遊離した薬物(例えば、化合物(1)、化合物(2)、化合物(4)、及び化合物(5))の血漿中濃度を定量する方法に利用することもできる。
【0188】
具体的には、(1)本発明の蛋白質が固相化されたプレートに、マーカーで標識化された競合薬物の存在下で、血漿中の抗体-薬物コンジュゲートから遊離した薬物を接触させ複合体を形成させるステップ、(2)該マーカーを検出するステップ、を含む。
【0189】
IHC法としては、例えば、本発明の抗体-薬物コンジュゲートを投与された哺乳動物における、該抗体-薬物コンジュゲート及び/又は該抗体-薬物コンジュゲートから遊離した薬物の組織分布を定量する方法に利用することができる。
【0190】
具体的には、(1)組織中の抗体-薬物コンジュゲート及び/又は該抗体-薬物コンジュゲートから遊離した薬物を本発明の蛋白質と接触させ複合体を形成させるステップ、(2)本発明の蛋白質を認識することができ、マーカーで標識化された第二の蛋白質を接触させ、さらなる複合体を形成させるステップ、次いで(3)該マーカーを検出するステップ、を含む。
【0191】
また、(1)組織中の抗体-薬物コンジュゲート及び/又は該抗体-薬物コンジュゲートから遊離した薬物を、マーカーで標識化された本発明の蛋白質と接触させ複合体を形成させるステップ、次いで(2)該マーカーを検出するステップ、を含むこともできる。
【0192】
なお、本発明において「マーカー」とは、検出可能なシグナルを生成する、又は他の基質に対し検出可能な信号を生成するように誘導する、任意の物質を意味する。かかるマーカーとしては、例えば、蛍光物質、酵素、酵素断片、酵素基質、酵素阻害剤、補酵素、触媒、染料、発光物質、増感剤、及び放射性物質を挙げることができる。
【0193】
本発明において、「マーカーで標識化された」とは、マーカーが直接又は任意の部分構造(例えばリンカー)を介して結合していることを意味する。ビオチンとアビジン(又はストレプトアビジン)の相互作用による結合もこれに含まれる。
【0194】
本発明の蛋白質をマーカーで標識化するためには、例えば、マーカーを構成要素とする試薬(活性エステル基を有するもの)を、本発明の蛋白質のリシン残基と反応させアミド結合を形成させれば良いが、これに限定されない。
【0195】
マーカーが蛍光物質である場合は、該マーカーの検出は該マーカーの蛍光を感知することにより行われる。
【0196】
このような蛍光物質としては、例えば、DyLight(登録商標)350、DyLight(登録商標)405、DyLight(登録商標)488、DyLight(登録商標)550、DyLight(登録商標)594、DyLight(登録商標)633、DyLight(登録商標)650、DyLight(登録商標)680、DyLight(登録商標)747、DyLight(登録商標)755、DyLight(登録商標)800、Alexa Fluor(登録商標)350、Alexa Fluor(登録商標)405、Alexa Fluor(登録商標)488、Alexa Fluor(登録商標)532、Alexa Fluor(登録商標)546、Alexa Fluor(登録商標)555、Alexa Fluor(登録商標)568、Alexa Fluor(登録商標)594、Alexa Fluor(登録商標)647、Alexa Fluor(登録商標)680、Alexa Fluor(登録商標)750、BODIPY(登録商標)FL、Coumarin、Cy(登録商標)3、Cy(登録商標)5、Cy(登録商標)、Fluorescein(FITC)、Oregon Green(登録商標)、Pacific Blue、Pacific Green、Pacific Orange、Tetramethylrhodamine(TRITC)、Texas Red(登録商標)を挙げることができる。
【0197】
また、Qdot(登録商標)525、Qdot(登録商標)565、Qdot(登録商標)605、Qdot(登録商標)655、Qdot(登録商標)705、及びQdot(登録商標)800のようなナノクリスタルや、Allophycocyanin(APC)、R-Phycoerythrin(R-PE)、Cyan Fluorescent Protein(CFP)、Green Fluorescent Protein(GFP)、及びRed Fluorescent Protein(RFP)のような蛍光蛋白質も、蛍光物質として使用することができる。
【0198】
マーカーが酵素である場合は、該マーカーの検出が該酵素と基質との反応により生じた発光又は発色を感知することにより行われる。
【0199】
このような酵素としては、例えば、ペルオキシダーゼ(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ;HRP等)を挙げることができ、この場合、酵素の基質としては、例えば、TMB(3,3’,5,5’-tetramethylbenzidine)、DAB(3,3’-Diaminobenzidine tetrahydrochloride)、OPD(o-Phenylenediamine)、及びABTS(3-Ethylbenzothiazoline-6-sulfonic acid)を挙げることができる。
【0200】
また、他の酵素としては、アルカリフォスファターゼを挙げることができ、この場合、酵素の基質としては、例えば、BCIP(5-bromo-4-chloro-3-indolyl phosphate)、及びPNPP(ρ-nitrophenyl phosphate)を挙げることができる。
【0201】
また、他の酵素としては、ルシフェラーゼを挙げることができ、この場合、酵素の基質としては、例えば、Luciferin、及びCoelenterazine類を挙げることができる。
【0202】
さらに、その他の酵素としては、β-ガラクトシダーゼを挙げることができ、この場合、酵素の基質としては、例えば、o-nitrophenyl-β-D-galactopyranoside(ONPG)を挙げることができる。
【0203】
マーカーが発光物質である場合は、該マーカーの検出は電気化学反応に基づく該マーカーの発光を感知することにより行われる。
【0204】
このような発光物質としては、例えば、ルテニウム錯体を挙げることができ、好適には、ルテニウム-ピリジン錯体を挙げることができ、より好適には、ルテニウム(II)トリス(ビピリジル)錯体を挙げることができる。
【0205】
上記の電気化学反応は、例えば、トリプロピルアミン(TPA)の共存下で行うことができる。具体的には、電極反応によりTPAカチオンラジカルと3価のルテニウム錯体を生じさせた後、TPAカチオンラジカルは直ちに水素イオンを失い、強い還元作用を持つTPAラジカルとなり、これが3価のルテニウム錯体と反応することにより発光が生じる。
【0206】
マーカーが放射性物質である場合は、該マーカーの検出は、該マーカーが発する放射線を感知することにより行われる。
【0207】
このような放射性物質としては、例えば、トリチウム(3H)、炭素-14(14C)、窒素-15(15N)、硫黄-35(35S)、イットリウム-90(90Y)、テクネチウム-99(99Tc)、インジウム-111(111In)、ヨウ素-125(125I)、及びヨウ素-131(131I)等を挙げることができる。
【0208】
本発明の蛋白質は、pH緩衝剤、浸透圧調節剤、塩類、安定化剤、防腐剤、顕色剤、増感剤、凝集防止剤等を含有せしめることにより、組成物(以下、「本発明の組成物」という。)として使用することができる。
【0209】
本発明の蛋白質(又は本発明の組成物)は、アッセイを行うのに使用される材料及び試薬と組み合わせたキット(以下、「本発明のキット」という。)として使用することができる。試薬は、それらの安定性に応じて、同一又は別個の容器中に液体又は凍結乾燥された状態で提供され得る。本発明のキット中に提供される試薬の量及び割合は、特定の用途に最適な結果を提供するように選択され得る。本発明のキットには、本発明の蛋白質(又は本発明の組成物)以外に、例えば、マーカーで標識するための試薬、酵素の基質、ブロッキング試薬、ポリマー試薬、抗原賦活液、キャリブレーター、希釈用緩衝液、洗浄用緩衝液、固相化用緩衝液、固相化抗体、検出用抗体、及びマイクロタイターウェル等が含まれ得る。また、本発明のキットを使用するための指示書等が含まれていても良い。本キットを用いて、抗体-薬物コンジュゲート及び/又は該抗体-薬物コンジュゲートから遊離した薬物の組織分布の確認や、血漿中濃度の定量等が可能となる。
【実施例0210】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、これらはいかなる意味においても限定的に解釈されない。なお、下記実施例において遺伝子操作に関する各操作は特に明示がない限り、「モレキュラークローニング(Molecular Cloning)」(Sambrook,J.,Fritsch,E.F.及びManiatis,T.著,Cold Spring Harbor Laboratory Pressより1989年に発刊)に記載の方法により行うか、又は、市販の試薬やキットを用いる場合には市販品の指示書に従って使用した。また、本明細書において、特に記載のない試薬、溶媒及び出発材料は、市販の供給源から容易に入手可能である。
【0211】
[実施例1]化合物の合成
i) 8-[(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシ]-N-(4-{[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-4-オキソブチル)-8-オキソオクタンアミド(化合物(6))の合成
【0212】
【0213】
4-アミノ-N-[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]ブタンアミド(0.032g、0.050mmoL)(国際公開第2014/057687号に記載の実施例1工程2にて得られる化合物)のN,N-ジメチルホルムアミド(0.5mL)溶液に、トリエチルアミン(7μL,0.050mmoL)、スベリン酸ジ(N-スクシンイミジル)(20.4mg,0.055mmoL)を加え、室温で20分間撹拌した。溶媒を減圧留去し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム~クロロホルム:メタノール=9:1(v/v)]にて精製し、標記化合物(16.0mg,41%)を淡黄色固体として得た。
1H-NMR (400MHz,DMSO-d6) δ:0.87(3H,t,J=7.6Hz),1.18-1.37(4H,m),1.40-1.50(2H,m),1.54-1.64(2H,m),1.65-1.74(2H,m),1.78-1.93(2H,m),2.02(2H,t,J=7.6Hz),2.09-2.20(4H,m),2.40(3H,s),2.60-2.68(2H,m),2.80(4H,s),3.00-3.08(2H,m),3.13-3.21(2H,m),5.19(2H,dd,J =32.0,18.0Hz),5.37-5.47(2H,m),5.53-5.60(1H,m),6.52(1H,s),7.30(1H,s),7.74-7.82(2H,m),8.44(1H,d,J=8.5Hz).
MS(APCI)m/z:774(M+H)+
【0214】
ii) 4-アミノ-N-[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9,10-ジヒドロキシ-4-メチル-13-オキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]ブタンアミド トリフルオロ酢酸塩(化合物(7))の合成
【0215】
【0216】
工程1:
tert-ブチル(4-{[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-4-オキソブチル)カーバメート(0.092g、0.148mmoL)(国際公開第2014/057687号に記載の実施例1工程1にて得られる化合物)をメタノール(1.6mL)に溶解し、氷冷した。水素化ホウ素ナトリウム(0.028g、0.740mmoL)を加え氷冷下にて20分間攪拌した。メタノール(10mL)及びクロロホルム(50mL)で希釈し、10%クエン酸水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。得られた有機層を10%クエン酸水溶液、続いて飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。溶媒を減圧留去し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ-[クロロホルム:メタノール=100:0~95:5(v/v)]にて精製し、薄黄色固体のtert-ブチル(4-{[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-13-オキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-4-オキソブチル)カーバメート(0.078g、85%)を得た。
1H-NMR (400MHz,DMSO-d6) δ:0.89(3H,t,J=7.4Hz),1.31(9H,s),1.62-1.73(4H,m),2.08-2.18(4H,m), 2.39(3H,s),2.91(2H,q,J=6.5Hz),3.12-3.20(2H,m),4.49(1H,d,J=17.2Hz),4.61(1H,d,J=17.2Hz),4.97(1H,s),4.99(1H,d,J=4.7Hz),5.10(2H,d,J=18.8Hz),5.21(2H,d,J=18.8Hz),5.54-5.58(1H,m),6.74-6.82(2H,m),7.33(1H,s),7.78(1H,d,J=11.0Hz),8.40(1H,d,J=8.6Hz).
工程2:
上記工程1で得た化合物(0.078g、0.125mmoL)をジクロロメタン(2mL)を加え、氷冷し、トリフルオロ酢酸(2mL)を加え、40分間攪拌した。溶媒を減圧留去し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム~クロロホルム:メタノール:水=7:3:1(v/v/v)の分配有機層]にて精製した。得られた固体をメタノールに溶解し、エーテルを加えて生成した沈殿を濾取、真空乾燥し、黄色固体の標記化合物(0.045g、56%)を得た。
1H-NMR (400MHz,DMSO-d6) δ:0.89(3H,t,J=7.4Hz),1.71(2H,q,J=7.4Hz),1.80-1.88(2H,m),2.09-2.19(2H,m),2.27(2H,t,J=7.0Hz),2.40(3H,s),2.84(2H,t,J=7.6Hz),3.13-3.20(2H,m),4.50(1H,d,J=17.2Hz),4.62(1H,d,J=17.2Hz),4.97-5.02(2H,m),5.09(1H,d,J=18.8Hz),5.21(1H,d,J=18.8Hz),5.55-5.59(1H,m),6.79(1H,d,J=4.7Hz),7.34(1H,s),7.64-7.75(3H,m),7.79(1H,d,J=11.3Hz),8.53(1H,d,J=8.6Hz).
MS(APCI)m/z:523(M+H)+
【0217】
iii) 4-アミノ-N-シクロヘキシル-ブタンアミド塩酸塩(化合物(8))の合成
【0218】
【0219】
工程1:
4-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)ブタン酸(0.492g、2.42mmoL)をジクロロメタン(15mL)及びN, N-ジメチルホルムアミド(2mL)に溶解し、N-ヒドロキシスクシンイミド(0.279g、2.42mmoL)及び、EDCI(1-Ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide Hydrochloride)(0.464g、2.42mmoL)を加え室温にて30分間攪拌した。その反応溶液をシクロヘキシルアミン(0.200g、2.02mmoL)のジクロロメタン溶液(2mL)に滴下し、室温にて20分間攪拌した。反応液をジクロロメタンで希釈し、10%クエン酸水溶液を加え、ジクロロメタンで抽出した。得られた有機層を飽和重曹水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。溶媒を減圧留去し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ-[ヘキサン:酢酸エチル=50:50~25:75(v/v)]にて精製し、無色油状のtert-ブチル N-[4-(シクロヘキシルアミノ)-4-オキソ-ブチル]カーバメート(0.308g、54%)を得た。
1H-NMR (400MHz,CDCl3) δ:1.08-1.23(4H,m),1.29-1.42(2H,m),1.44(9H,s),1.66-1.75(2H,m),1.77-1.83(2H,m),1.86-1.95(2H,m),2.17(2H,t, J=7.0Hz),3.11-3.21(2H,m),3.69-3.82(1H,m),4.75(1H,brs),5.89(1H,brs).
工程2:
上記工程1で得た化合物(0.200g、0.703mmoL)を酢酸エチル(50mL)及びジオキサン(10mL)に溶解した。4N塩酸ジオキサン(10mL)を加え2時間攪拌した。生成した沈殿を濾取、真空乾燥し、無色固体の標記化合物(0.098g、63%)を得た。
1H-NMR (400MHz,DMSO-d6) δ:1.06-1.30(5H,m),1.50-1.58(1H,m),1.62-1.82(6H,m),2.16(2H,t,J= 7.2Hz),2.69-2.79(2H,m),3.45-3.58(1H,m),4.73(1H,brs),7.89(1H,d,J=7.8Hz),7.96-8.10(2H,m).
MS(APCI)m/z:185(M+H)+
【0220】
[実施例2]抗体-薬物コンジュゲートの製造
i) 抗B7-H3抗体-薬物コンジュゲートの製造(1)
国際公開第2014/057687号に記載の製造方法に従って、抗B7-H3抗体(配列番号27においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号28においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体)を用いて、式
【0221】
【0222】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗B7-H3抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗B7-H3抗体-薬物コンジュゲート(本発明において「B7-H3-ADC(I)」と称する)を製造した。
【0223】
ii) 抗B7-H3抗体-薬物コンジュゲートの製造(2)
国際公開第2014/057687号に記載の製造方法に従って、抗B7-H3抗体(配列番号27においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号28においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体)を用いて、式
【0224】
【0225】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗B7-H3抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗B7-H3抗体-薬物コンジュゲート(本発明において「B7-H3-ADC(II)」と称する)を製造した。
【0226】
iii) 抗B7-H3抗体-薬物コンジュゲートの製造(3)
国際公開第2014/057687号に記載の製造方法に従って、抗B7-H3抗体(配列番号27においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号28においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体)を用いて、式
【0227】
【0228】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗B7-H3抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗B7-H3抗体-薬物コンジュゲート(本発明において「B7-H3-ADC(III)」と称する)を製造した。
【0229】
iv) 抗HER2抗体-薬物コンジュゲートの製造(1)
国際公開第2015/115091号に記載の製造方法に従って、抗HER2抗体(配列番号21においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号22においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体)を用いて、式
【0230】
【0231】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗HER2抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗HER2抗体-薬物コンジュゲート(本発明において「HER2-ADC(I)」と称する)を製造した。
【0232】
v) 抗HER3抗体-薬物コンジュゲートの製造(1)
国際公開第2015/155998号に記載の製造方法に従って、抗HER3抗体(配列番号23に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号24に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体)を用いて、式
【0233】
【0234】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗HER3抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗HER3抗体-薬物コンジュゲート(本発明において「HER3-ADC(I)」と称する)を製造した。
【0235】
vi) 抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートの製造(1)
国際公開第2015/098099号に記載の製造方法に従って、抗TROP2抗体(配列番号25においてアミノ酸番号20乃至470に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号26においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体)を用いて、式
【0236】
【0237】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗TROP2抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート(本発明において「TROP2-ADC(I)」と称する)を製造した。
【0238】
[実施例3] モノクローナル抗体作製
i) 抗原蛋白質の調製
抗原蛋白質は化合物(6)にキャリア蛋白としてウシサイログロブリンを付加したもの(以下、「抗原蛋白質(1)」と呼ぶ)及びBSAを付加したもの(以下、「抗原蛋白質(2)」と呼ぶ)を使用した。
【0239】
ii) 免疫
免疫にはBALB/cAnNCrlCrlj(BALB/c)マウス(4個体)及びB6D2F1/Crlj(BDF1)マウス(4個体)の雌(日本チャールス・リバー株式会社)を使用した。初回は抗原蛋白質(1)とFreund’s Complete Adjuvant(和光純薬社製)を混合したものを、2回目以降は抗原蛋白質(1)とFreund’s Incomplete Adjuvant(和光純薬社製)を混合したものを皮下及び皮内に投与した。7日毎に合計4回投与した。
【0240】
iii) 抗血清の抗体価評価
免疫前及び4回投与後のBALB/cマウス(4個体)及びBDF1マウス(4個体)の血清をそれぞれ200倍から204800倍まで希釈して、陽性対照として抗原蛋白質(2)及びB7-H3-ADC(II)、陰性対照としてBSAに対する抗体価を確認した。抗原蛋白質(2)、B7-H3-ADC(II)、及びBSAをELISA用イムノプレートに固相化し、希釈した免疫前及び4回投与後のマウス血清を37℃で30分間反応させた。洗浄後、horseradish peroxidase-conjugated anti-mouse IgG(anti-mouse IgG-HRP)を37℃で30分間反させた。洗浄後、o-phenylenediamine dihydrochloride(OPD)溶液を添加し、発色停止後に490nmの吸光度を測定した。すべての個体において、陽性対照に対する抗体価が上昇していることを確認した。
【0241】
iv) Inhibition ELISA
4回投与後のBALB/cマウス(4個体)及びBDF1マウス(4個体)の血清に、陽性対照として化合物(6)、化合物(7)及び化合物(1)、陰性対象として化合物(8)を添加し、抗原蛋白質(2)に対する未吸収率を算出した。50000倍希釈したマウスの血清と12.5、25、50、100μg/mLに調製した化合物(6)、化合物(8)、化合物(7)及び化合物(1)を混合し、4℃で一晩反応させたのち、抗原蛋白質(2)を固相化したELISA用イムノプレートにし添加し、37℃で30分間反応させた。洗浄後、anti-mouse IgG-HRPを37℃で30分間反応させた。洗浄後、OPD溶液を添加し、発色停止後に490nmの吸光度を測定した。以下式により未吸収率を算出した。
未吸収率 (%) =(a/b)×100
a:陽性対照又は陰性対象の添加濃度12.5μg/mLの吸光度
b:陽性対照又は陰性対象無添加の吸光度
いずれのマウス血清も陽性対照の化合物(6)及び化合物(1)に、個体によっては化合物(7)に高いinhibition効果が認められた。また、陰性対象の化合物(8)にはいずれの血漿にも高いinhibition効果が認められなかった。その中でも化合物(7)に高いinhibition効果が認められ且つ化合物(8)に高いinhibition効果が認めらなかった血清を有するBALB/cマウス及びBDF1マウスからそれぞれ1個体を選択し、リンパ節及び脾臓を採取してハイブリドーマ作製に用いた。
【0242】
v) ハイブリドーマ作製
iv)で選択した個体のリンパ節細胞及び脾臓細胞とマウスミエローマをPEG法にて細胞融合した。出現したハイブリドーマの培養上清を用いて抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングを行った。
【0243】
vi) 抗原蛋白質(2)に対する特異的結合評価
抗原蛋白質(2)をELISA用イムノプレートに固相化し、2倍希釈した抗体産生ハイブリドーマ上清を37℃で120分反応させた。洗浄後、anti-mouse IgG-HRPを37℃で30分間反応させた。洗浄後、OPD溶液を添加し、発色停止後に490nmの吸光度を測定した。OD値が0.2以上の数値を示す培養上清を産生するハイブリドーマ11株を陽性として選択した。
【0244】
vii) クロスチェック
vi)で陽性として選択した11株について、陽性対照として化合物(6)、化合物(1)、B7-H3-ADC(II)、B7-H3-ADC(I)及びB7-H3-ADC(III)、並びに反応性確認用化合物として化合物(8)及び化合物(7)を用いて、inhibition ELISAを実施した。2倍希釈したvi)で陽性として選択した11株の培養上清に、陽性対照及び反応性確認用化合物を最終濃度が25μg/mLになるように添加した。4℃で一晩反応させた後、抗原蛋白質(2)を固相化したELISA用イムノプレートに添加し、37℃で30分間反応させた。洗浄後、anti-mouse IgG-HRPを37℃で30分間反応させた。洗浄後、OPD溶液を添加し、発色停止後に490nmの吸光度を測定した。抗原蛋白質(2)に対する反応性が高く、陽性対照によるinhibition効果が認められた8株を選択して一次クローニングに供した。
【0245】
viii) 一次クローニング、一次スクリーニング
vii)で選択した8株を限界希釈法でクローニングした。ハイブリドーマを60細胞/96穴プレートになるように播種し、マウス胸腺細胞を5×106細胞/穴ずつ添加し、10%FBS含有TIL(株式会社免疫生物研究所)を用いて培養した。vii)と同様なinhibition ELISAを行い、特異性が確認された8株x6サブクローンを選択した。
【0246】
ix) 一次クロスチェック
viii)で選択した8株x6サブクローンのB7-H3-ADC(II)及びB7-H3-ADC(I)に対する反応性を確認した。B7-H3 C1 domain LotB7_OmJ1をimmobilized bufferで1μg/mLに希釈し、Maxi-Sorpプレートに100μLずつ添加後、4℃で一晩固相化した。翌日、プレートの培地を除き、5%BSA含有PBSを180μLずつ添加し、室温で3時間静置した。0.05%Tween20含有PBSで2回洗浄後、0.1μg/mLに調製したB7-H3-ADC(II)、及びB7-H3-ADC(I)を100μLずつ添加後、室温でおよそ1時間静置した。0.05%Tween20含有PBSで2回洗浄後、900μg/mLから公比3で7段階に希釈したハイブリドーマ上清を50μLずつ添加後、室温で1時間静置した。0.05%Tween20含有PBSで2回洗浄後、5000倍希釈したPeroxidase AffiniPure Goat Anti-Mouse IgG, Fcγ Fragment Specific(Jackson Immuno Research LABORATORIES,INC.)を100μLずつ添加し、室温で1時間静置した。0.05%Tween20含有PBSで3回洗浄後、HRP基質(OPD tablet)を100μLずつ添加して発色反応を行い、1M HClを100μLずつ添加して発色反応を停止させた後、ARVO(PerkinElmer社)で450nmの吸光度を測定した。8株x6サブクローンの全てにおいてB7-H3-ADC(II)及びB7-H3-ADC(I)に対する反応性が確認された。その中でも反応性の高かった4株x6サブクローンを一次検量線確認へ供した。
【0247】
x) 一次検量線確認
ix)で選択した4株x6サブクローンのB7-H3-ADC(I)(DAR7)とB7-H3-ADC(I)(DAR5)への反応性をELISAで確認した。AffiniPure Goat Anti-Mouse IgG,Fcγ fragment specific(Jackson ImmunoResearch Inc.)をCoating Bufferで1μg/mLに希釈し、Maxi-Sorpプレートに100μLずつ添加後、4℃で一晩固相化した。翌日、プレートの培地を除き、PBSで洗浄後に10%BSA含有PBSを100μLずつ添加し、37℃で2.5時間静置した。プレートの培地を除き、ハイブリドーマ4株x6サブクローンを2%BSA、0.2%Polysorbate20(以下、「PS20」と呼ぶ)含有PBSで10、25及び100ng/mLに希釈し、プレートに100μLずつ添加し、37℃で1時間静置した。0.05%PS20含有PBSで4回洗浄後、2%BSA、0.2%Tween20含有PBSでB7-H3-ADC(I)(DAR7)及びB7-H3-ADC(I)(DAR5)を1、2.5、10、25、100、250ng/mLに希釈し、プレートに100μLずつ添加し、37℃で1時間静置した。0.05%PS20含有PBSで4回洗浄後、2%BSA、0.2%PS20含有PBSで7500倍希釈したGoat Anti-Human kappa-HRP(Southern Biotechnology Associates, Inc.)を100μLずつ添加し、室温で1時間静置した。0.05%PS20含有PBSで4回洗浄後、TMB soluble reagent(ScyTek Laboratories)を100μL/ウェルで添加して発色反応を行い、TMB stop buffer(ScyTek Laboratories)を100μL/ウェルを添加して発色反応を停止させた後、VersaMax(Molecular Devices社製)で450nmの吸光度(reference 650nm)を測定し、以下式により相対誤差を算出し、値の小さいクローンを選択した。
相対誤差(%) ={(DAR7の測定値)/(DAR5の測定値)-1}×100
その中から、4株x2サブクローンを二次クローニングへ供した。
【0248】
xi) 二次クローニング、スクリーニング
x)で選択した4株x2サブクローンの二次クローニングを行い、各クローンで陽性ウェルの中から3ウェルを選抜することにより合計24クローンを選択し、抗原蛋白質(2)に対する抗体価の確認をvi)と同様に実施した。さらに陽性対照として化合物(6)、化合物(1)、B7-H3-ADC(II)、B7-H3-ADC(I)及びB7-H3-ADC(III)、並びに反応性確認用化合物として化合物(8)及び化合物(7)を用いて、vii)と同様にinhibition ELISAを実施した。
【0249】
xii) 二次検量線確認
xi)で選択した24クローンのうち、化合物(1)に比較して化合物(7)への反応性が特に高い6クローンを除いた18クローンについて、HER2-ADC(I)(DAR8)、HER2-ADC(I)(DAR4)、及びHER2-ADC(I)(DAR2)に対する反応性及び検量線をGyrolab xP workstation(GYROS PROTEIN Technologies)で確認した。キャプチャー試薬はBiotin-SP-conjugated AffiniPure Goat Anti-Mouse IgG, Fcγ specific(Jackson Immuno Research LABORATORIES、INC.)を用い、0.01%PS20含有PBSで172.5nMに調製した。細胞培養上清はRexxip CCS(GYROS PROTEIN Technologies)で200ng/mLに調製した。HER2-ADC(I)(DAR8)、HER2-ADC(I)(DAR4)、及びHER2-ADC(I)(DAR2)は0.01%PS20含有PBSでいずれも1000ng/mLから4倍公比で6段階に希釈し調製した。検出試薬はGoat Anti Human kappa(Southern Biotechnology Associates,Inc.)をAlexa Fluor(登録商標)647ラベリングキット(Thermo Fisher Scientific Inc.)で標識したものを用い、Rexxip Fで10nMに調製した。上記に調製した試薬、細胞培養上清及び検量線試料を96ウェルPCRプレートに入れ、Gyrolab Bioaffy 200とともに Gyrolab xP workstationにセットして、4-Step(2xC)-A-D(wizard method)で測定した。検量線はGyrolab Evaluator Software を用いて4-パラメータロジスティックモデル(重み付け;Response)で回帰した。評価した18クローンはいずれもHER2-ADC(I)のDARに依存せず、また、株間の反応性の違いも認められなかったため、同一株でIgG濃度が高い3クローン(1A3、8B2、11B1)を選択して、少量生産を行った。
【0250】
xiii) ProteinA精製抗体の調製とクロスチェック
xii)で選択した3クローン(1A3、8B2、11B1)について、無血清培地(ASF104(N))でローラーボトル培養し、培養上清を回収後に0.45μmのフィルターでろ過してProteinAカラムで精製した。抗原蛋白質(2)を50ng/well/50μL添加して固相化したELISA用イムノプレートに、ProteinA精製した3クローンを5μg/mLから2倍公比で10段階希釈した溶液50μLを添加して37℃で30分間反応させた。洗浄後、anti-mouse IgG-HRPを37℃で30分間反応させた。洗浄後、OPD溶液を添加し、発色停止後に490nmの吸光度を測定した。いずれのProteinA精製抗体も抗原蛋白質(2)と良好な反応性を示した。
【0251】
xiv) ProteinA精製抗体の検量線確認
xiii)でProteinA精製した3クローン(1A3、8B2、11B1)について、HER2-ADC(I)(DAR8)、及びHER2-ADC(I)(DAR4)、並びに、B7-H3-ADC(I)(DAR8)、及びB7-H3-ADC(I)(DAR4)に対する反応性をGyrolab xP workstationを用いて確認した。
【0252】
キャプチャー試薬は、ProteinA精製後の3クローンをEZ-Link NHS-LC-Biotin(Thermo Fisher Scientific Inc.)でビオチン標識したものを用い、0.01%PS20含有PBSで700nMに調製した。HER2-ADC(I)(DAR8)とHER2-ADC(I)(DAR4)はRexxip HNで、いずれも1000ng/mLから4倍公比で6段階に希釈し調製した。検出試薬はGoat Anti Human kappa(Southern Biotechnology Associates、Inc.)をAlexa Fluor(登録商標)647ラベリングキットで標識したものを用い、Rexxip Fで10nMに調製した。調製した試薬及び抗体-薬物コンジュゲート(検量線試料)を96ウェルPCRプレートに入れ、Gyrolab Bioaffy 200とともに Gyrolab xP workstationにセットして、200-3W-001-A(wizard method)で測定した。検量線はGyrolab Evaluator Software を用いて4-パラメータロジスティックモデル(重み付け;Response)で回帰した。クローン1A3の検量線を
図15に、クローン8B2の検量線を
図16に、クローン11B1の検量線を
図17に示す。いずれのクローンについてもHER2-ADC(I)との間でDARに依存しない反応性を示した。
【0253】
さらにキャプチャー試薬として、EZ-Link NHS-LC-Biotinでビオチン標識したHuman Her2/ErbB2 Protein(ACROBiosystems)、及び同様にビオチン標識したB7-H3 C1 domainを用い、0.01%PS20含有PBSで700nMに調製した。HER2-ADC(I)(DAR8)及びHER2-ADC(I)(DAR4)、並びにB7-H3-ADC(I)(DAR8)及びB7-H3-ADC(I)(DAR4)についてはRexxip HNで、いずれも1000ng/mlから4倍公比で6段階に希釈し調製した。検出試薬はProteinA精製後の3クローン(1A3、8B2、11B1)をDyLight650(登録商標)ラベリングキット(Thermo Fisher Scientific Inc.)で標識したものを用い、Rexxip Fで10nMに調製した。調製した試薬及び抗体-薬物コンジュゲートの検量線試料を96ウェルPCRプレートに入れ、Gyrolab Bioaffy 200とともに Gyrolab xP workstationにセットして、200-3W-001-A(wizard method)で測定した。検量線はGyrolab Evaluator Software を用いて4-パラメータロジスティックモデル(重み付け;Response)で回帰した。HER2-ADC(I)との反応性について、クローン1A3の検量線を
図18に、クローン8B2の検量線を
図19に、クローン11B1の検量線を
図20に示す。また、B7-H3-ADC(I)との反応性について、クローン1A3の検量線を
図21に、クローン8B2の検量線を
図22に、クローン11B1の検量線を
図23に示す。いずれのクローンについてもHER2-ADC(I)及びB7-H3-ADC(I)との間でDARに依存しない反応性を示した。
【0254】
以上の結果から、いずれのクローンについてもDAR並びに抗体部分の違いに依存せずに抗体-薬物コンジュゲートに対する反応性を示し、かつキャプチャー試薬と検出試薬のどちらにも使用可能であることが確認された。この中から最もシグナル値の大きかったクローン1A3を選択し、本発明に係る抗体-薬物コンジュゲートの検出に使用することにした。
【0255】
xv) マウスモノクローナル抗体のアイソタイプ決定
xiv)で取得したクローン1A3に係るマウスモノクローナル抗体(以下、「マウス抗体1A3」と呼ぶ)のアイソタイプは、Mouse monoclonal isotyping test kit(AbD Serotec社製)により決定された。その結果、アイソタイプはIgG2b、κ鎖であることが確認された。
【0256】
xvi) モノクローナル抗体の遺伝子クローニング及びN末端アミノ酸配列解析
マウス抗体1A3産生ハイブリドーマより、TRIzol Reagent(LIFE TECHNOLOGIES)を用いてtotal RNAを調製した。精製したマウス抗体1A3のN末端アミノ酸配列解析(Edman分解法)を実施した。さらに抗体遺伝子クローニングにより、クローン1A3のヌクレオチド配列を解析した。抗体遺伝子クローニングの結果、重鎖可変領域・軽鎖可変領域ともにそれぞれ1種類の配列が得られ、精製したマウス抗体1A3のN末端アミノ酸配列解析の結果と抗体遺伝子クローニングにより得られたクローン1A3のヌクレオチド配列のN末端アミノ酸配列は一致することが確認された。
【0257】
マウス抗体1A3重鎖のアミノ酸配列を配列番号15に記した。配列番号15においてアミノ酸番号1乃至19に記載のアミノ酸配列はシグナル配列を示し、アミノ酸番号20乃至141に記載のアミノ酸配列は重鎖可変領域を示し、アミノ酸番号142乃至477に記載のアミノ酸配列は重鎖定常領域のアミノ酸配列を示す。
【0258】
マウス抗体1A3軽鎖のアミノ酸配列を配列番号16に記した。配列番号16においてアミノ酸番号1乃至20に記載のアミノ酸配列はシグナル配列を示し、アミノ酸番号21乃至127に記載のアミノ酸配列は軽鎖可変領域を示し、アミノ酸番号128乃至234に記載のアミノ酸配列は軽鎖定常領域のアミノ酸配列を示す。
【0259】
マウス抗体1A3重鎖のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を配列番号17に記した。配列番号17においてヌクレオチド番号1乃至57に記載のヌクレオチド配列はシグナル配列を示し、ヌクレオチド番号58乃至423に記載のヌクレオチド配列は重鎖可変領域のアミノ酸配列をコードする。
【0260】
マウス抗体1A3軽鎖のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を配列番号18に記した。配列番号18においてヌクレオチド番号1乃至60に記載のヌクレオチド配列はシグナル配列を示し、ヌクレオチド番号61乃至459に記載のヌクレオチド配列は重鎖可変領域のアミノ酸配列をコードする。
【0261】
また、CDRの解析を行った。
【0262】
Abmの定義によれば、マウス抗体1A3重鎖可変領域は、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1(GFTFSDYGMV)、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2(YISSGSSAIY)、及び配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3(PPRYDVYSAWFAY)を保有しており、マウス抗体1A3軽鎖可変領域は、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1(KASQDVGSAVV)、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2(WASTRHT)、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3(QQYSSYPVT)を保有していることが判明した。
【0263】
Chothiaの定義によれば、マウス抗体1A3重鎖可変領域は、配列番号7に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1(GFTFSDY)、配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2(SSGSSA)、及び配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3(PPRYDVYSAWFAY)を保有しており、マウス抗体1A3軽鎖可変領域は、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1(KASQDVGSAVV)、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2(WASTRHT)、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3(QQYSSYPVT)を保有していることが判明した。
【0264】
Kabatの定義によれば、マウス抗体1A3重鎖可変領域は、配列番号9に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1(DYGMV)、配列番号10に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2(YISSGSSAIYYADTVKG)、及び配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3(PPRYDVYSAWFAY)を保有しており、マウス抗体1A3軽鎖可変領域は、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1(KASQDVGSAVV)、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2(WASTRHT)、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3(QQYSSYPVT)を保有していることが判明した。
【0265】
Imgt(登録商標)の定義によれば、マウス抗体1A3重鎖可変領域は、配列番号11に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1(GFTFSDYG)、配列番号12に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2(ISSGSSAI)、及び配列番号13に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3(ARPPRYDVYSAWFAY)を保有しており、マウス抗体1A3軽鎖可変領域は、配列番号14に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1(QDVGSA)、WAS(トリプトファン-アラニン-セリン)で示されるトリペプチドからなるCDRL2、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3(QQYSSYPVT)を保有していることが判明した。
【0266】
[実施例4] 非臨床試験の血漿中濃度測定
実施例2で取得したマウス抗体1A3を使用して、HER2-ADC(I)のマウス血漿中濃度、並びにHER3-ADC(I)、TROP2-ADC(I)、及びB7-H3-ADC(I)のサル血漿中濃度測定法を構築した。マウス抗体1A3は検出試薬としてDyLight650(登録商標)又はAlexa Fluor(登録商標)647標識して使用することが可能で、どちらを使用しても本発明に係る抗体-薬物コンジュゲートの血漿中濃度を測定することができる。さらにDAR並びに抗体部分の違いに依存せず検量線が作成でき、本発明に係る抗体-薬物コンジュゲートの血漿中濃度測定に使用可能である。
【0267】
i) HER2-ADC(I)
HER2-ADC(I)のマウス血漿中濃度測定法をGyrolab xP workstationで構築した。キャプチャー試薬としてBiotinylated Mouse Anti-(Anti-HER2 Ab) idiotype Ab(ここで、「(Anti-HER2 Ab)」は、配列番号21においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号22においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体を示す)(13C1)(IBL) を用い、0.1%PS20含有PBSで350 nMに調製した。検量線試料はRexxip HNで100倍希釈したマウス血漿でHER2-ADC(I)の濃度が0、 0.150、0.200、0.600、1.60、4.00、16.0、40.0、100、140μg/mL になるように調製した。検出試薬はマウス抗体1A3をDyLight650(登録商標)ラベリングキットでラベル化したものを用い、Rexxip Fで10nM に調製した。これら調製した試薬及び検量線試料を96ウェルPCRプレートに入れ、Gyrolab Bioaffy 200とともに Gyrolab xP workstationにセットした。測定wizardは200-3W-002-A(PMT1)を使用した。回帰解析はGyrolab Evaluator 3.3.9.175を用いて5-パラメータロジスティックモデルで行った。検量線を
図24に示す。
【0268】
Total抗体(抗HER2抗体及びHER2-ADC(I))のマウス血漿中濃度測定法をGyrolab xP workstationで構築した。キャプチャー試薬としてBiotinylated Mouse Anti-(Anti-HER2 Ab) idiotype Ab (13C1) (IBL) を用い、0.1%PS20含有PBSで350 nMに調製した。検量線試料はRexxip HNで100倍希釈したマウス血漿でHER2-ADC(I)の濃度が0、 0.150、0.200、0.600、1.60、4.00、16.0、40.0、100、140μg/mL になるように調製した。検出試薬はAlexa Fluor(登録商標)647 anti-human IgG, Fcγ Antibody (Jakckson Immno Research Laboratories, Inc.)をRexxip Fで10nM に調製した。これら調製した試薬及び検量線試料を96ウェルPCRプレートに入れ、Gyrolab Bioaffy 200とともに Gyrolab xP workstationにセットした。測定wizardは200-3W-002-A(PMT1)を使用した。回帰解析はGyrolab Evaluator 3.3.9.175を用いて5-パラメータロジスティックモデルで行った。
【0269】
濃度測定結果を表1に示す。
【0270】
【0271】
ii) HER3-ADC(I)
HER3-ADC(I)のサル血漿中濃度測定法をGyrolab xP workstationで構築し、バリデーションを取得した。キャプチャー試薬としてEZ-Link Sulfo-NHS-LC-Biotin(Thermo Fisher Scientific Inc.)でビオチン標識したHER3(Recombinant Human ErbB-3/HER3 Protein、ACRObiosystems)を用い、0.1%PS20含有PBSで700 nMに調製した。検量線試料はサル血漿でHER3-ADC(I)の濃度が0、0.0750、0.l00、0.250、0.750、2.25、6.75、20.0、38.0、48.0μg/mLになるように調製したものを用い、さらにPolysorbate 20含有PBS及びRexxip AN(GYROS PROTEIN Technologies)で100倍希釈した。検出試薬はマウス抗体1A3をAlexa Fluor(登録商標)647ラベリングキットでラベル化したものを用い、Rexxip Fで10nM に調製した。これら調製した試薬及び検量線試料を96ウェルPCRプレートに入れ、Gyrolab xP workstationにセットした。測定wizardは200-3W-002-A(PMT5)を使用した。回帰解析はGyrolab Evaluator 3.3.7.171を用いて4-パラメータロジスティックモデル(重み:Response)で行った。検量線を
図25に示す。
【0272】
iii) TROP2-ADC(I)
TROP2-ADC(I)のサル血漿中濃度測定法をGyrolab xP workstationで構築し、バリデーションを取得した。キャプチャー試薬としてEZ-Link Sulfo-NHS-LC-Biotinでビオチン標識したnew hTrop2(Lot番号V35、第一三共(株))を用い、0.1%PS20含有PBSで350nMに調製した。検量線試料はサル血漿でTROP2-ADC(I)の濃度が0、0.00750、0.0100、0.0250、0.0750、0.250、0.750、2.50、7.50、10.0μg/mLになるように調製したものを用い、さらにRexxip HN(GYROS PROTEIN Technologies)で10倍希釈した。検出試薬はマウス抗体1A3をAlexa Fluor(登録商標)647ラベリングキットでラベル化したものを用い、Rexxip Fで10nM に調製した。これら調製した試薬及び検量線試料を96ウェルPCRプレートに入れ、Gyrolab xP workstationにセットした。測定wizardは200-3W-002-A(PMT1)を使用した。回帰解析はGyrolab Evaluator 3.3.7.171を用いて4-パラメータロジスティックモデル(重み:Response)で行った。検量線を
図26に示す。
【0273】
iv) B7-H3-ADC(I)
B7-H3-ADC(I)のサル血漿中濃度測定法をGyrolab xP workstationで構築し、バリデーションを取得した。キャプチャー試薬としてEZ-Link Sulfo-NHS-LC-Biotin(Thermo Fisher Scientific Inc.)でビオチン標識したB7-H3 C1 domain(Lot番号B7_OmJ1、第一三共(株))を用い、0.1%PS20含有PBSで700nMに調製した。検量線試料はサル血漿でB7-H3-ADC(I)の濃度が0、0.0750、0.l00、0.250、0.750、2.25、6.75、20.0、38.0、48.0μg/mLになるように調製したものを用い、さらにPolysorbate 20含有PBS及びRexxip HN(GYROS PROTEIN Technologies)で50倍希釈した。検出試薬はマウス抗体1A3をAlexa Fluor(登録商標)647ラベリングキットでラベル化したものを用い、Rexxip Fで10nM に調製した。これら調製した試薬及び検量線試料を96ウェルPCRプレートに入れ、Gyrolab xP workstationにセットした。測定wizardは200-3W-001-A(PMT5)を使用した。回帰解析はGyrolab Evaluator 3.3.7.171を用いて4-パラメータロジスティックモデル(重み:Response)で行った。検量線を
図27に示す。
【0274】
[実施例5] マウス抗体1A3を用いた免疫染色
i) ヒト由来皮下移植腫瘍を用いた染色性の確認
高度免疫不全マウス(NOGマウス)にヒト由来腫瘍を皮下移植する。本発明に係る抗体-薬物コンジュゲート投与後にその腫瘍組織を採取してパラフィン包埋標本を作製し、マウス抗体1A3の染色性を検討する。本発明に係る抗体-薬物コンジュゲート未投与のNOGマウスより採取した腫瘍組織を陰性対照とする。脱パラフィン及び抗原賦活はAutostainer Link用前処理システム(PT Link:DAKO社製)及び、抗原賦活液(Target Retrieval Solution Low pH:DAKO社製)を用いて実施する。その後の染色作業は自動染色装置(ダコ Autostainer Link48:DAKO社製)を用いて実施する。EnVision FLEX WASH BUFFER(DAKO社製)で洗浄した後、Peroxidase Block 3% H2O2(DAKO社製)を加えインキュベートし、EnVision FLEX WASH BUFFERで洗浄する。Protein Block serum free(DAKO社製)を加え、インキュベートし、Air blowで液を除去する。マウス抗体1A3をREAL Antibody Diluent(DAKO社製)で希釈し、反応させる。EnVision FLEX WASH BUFFERで洗浄後、EnVision+ System-HRP Labelled Polymer Anti-Mouse #K4000(DAKO社製)を加え、インキュベートした後、EnVision FLEX WASH BUFFERで洗浄する。
【0275】
DAKO Liquid DAB+Substrate Chromogen Systemを加えインキュベートした後、EnVision FLEX WASH BUFFERで洗浄する。EnVision FLEX Hematoxylinを加えインキュベートした後、EnVision FLEX WASH BUFFER及びイオン交換水で洗浄する。
【0276】
本発明に係る抗体-薬物コンジュゲートを投与されたNOGマウスに対してマウス抗体1A3は良好な染色性を示し、マウス抗体1A3の濃度の増加に伴って染色強度が増加することを確認する。また、本発明に係る抗体-薬物コンジュゲート未投与のNOGマウスに対してマウス抗体1A3は染色性を示さないことを確認する。なお、NOGマウスはB細胞を欠損しているため、マウス由来の内在性IgGによるバックグラウンド染色は認められないことが知られている(Ito M, et al. Blood 100(9):3175-3182, 2002)。
【0277】
ii) マウス抗体1A3の特異性確認
マウス抗体1A3を化合物(2)又はSN-38とあらかじめ混合した後、免疫染色に用いる。混合比は分子量に基づいて抗体1A3:化合物(2):SN-38=0.1:0.04:0.03とする。染色はi)と同様の方法で実施する。
【0278】
化合物(2)との混合によってマウス抗体1A3の染色性が消失することを確認する。また、SN-38との混合によってマウス抗体1A3の染色性は消失しないことを確認する。
【0279】
[実施例6]ウサギキメラ化抗体の作製
i) マウス抗体1A3のウサギキメラ化抗体のデザイン
マウス抗体1A3のウサギキメラ化抗体(以下、「ウサギキメラ化抗体1A3」と呼ぶ)を以下の通りデザインした。ウサギキメラ化抗体の配列は、ウサギの重鎖定常領域IGHG*02とウサギの軽鎖定常領域IGKC2*01をIMGT(登録商標)から参照して、クローン1A3のそれぞれの可変領域につなげることで設計した。
【0280】
ウサギキメラ化抗体1A3重鎖のアミノ酸配列を配列番号19に記した。配列番号19においてアミノ酸番号1乃至19に記載のアミノ酸配列はシグナル配列を示し、アミノ酸番号20乃至141に記載のアミノ酸配列は重鎖可変領域を示し、アミノ酸番号142乃至464に記載のアミノ酸配列は重鎖定常領域のアミノ酸配列を示す。
【0281】
ウサギキメラ化抗体1A3軽鎖のアミノ酸配列を配列番号20に記した。配列番号20においてアミノ酸番号1乃至20に記載のアミノ酸配列はシグナル配列を示し、アミノ酸番号21乃至127に記載のアミノ酸配列は軽鎖可変領域を示し、アミノ酸番号128乃至233に記載のアミノ酸配列は軽鎖定常領域のアミノ酸配列を示す。
【0282】
ii) 抗体発現ベクターpCMA-LKの構築
プラスミドpcDNA3.3-TOPO/LacZ(Invitrogen社)を制限酵素XbaI及びPmeIで消化して得られる約5.4kbのフラグメントと、ヒト軽鎖シグナル配列及びヒトκ鎖定常領域のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(配列番号29)を有するDNA断片をIn-Fusion Advantage PCRクローニングキット(CLONTECH社)を用いて結合して、pcDNA3.3/LKを作製した。
【0283】
pcDNA3.3/LKからネオマイシン発現ユニットを除去することによりpCMA-LKを構築した。
【0284】
iii) ウサギキメラ化抗体1A3重鎖発現ベクターの構築
ウサギキメラ化抗体1A3重鎖のアミノ酸配列(配列番号19)をコードするヌクレオチド配列(配列番号30)を有するDNA断片を合成した(GENEART社)。配列番号30においてヌクレオチド番号26乃至82に記載のヌクレオチド配列はシグナル配列を示し、ヌクレオチド番号83乃至448に記載のヌクレオチド配列は重鎖可変領域のアミノ酸配列をコードし、ヌクレオチド番号449乃至1417に記載のヌクレオチド配列は定常領域のアミノ酸配列をコードする。
【0285】
In-Fusion HD PCRクローニングキット(CLONTECH社)を用いて、合成したDNA断片とpCMA-LKをXbaI及びPmeIで消化して軽鎖シグナル配列及びヒトκ鎖定常領域のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(配列番号29)を取り除いたDNA断片を結合することにより、ウサギキメラ化抗体1A3重鎖発現ベクターを構築した。
【0286】
iv) ウサギキメラ化抗体1A3軽鎖発現ベクターの構築
ウサギキメラ化抗体1A3軽鎖のアミノ酸配列(配列番号20)をコードするヌクレオチド配列(配列番号31)を有するDNA断片を合成した(GENEART社)。配列番号31においてヌクレオチド番号26乃至85に記載のヌクレオチド配列はシグナル配列を示し、ヌクレオチド番号86乃至406に記載のヌクレオチド配列は軽鎖可変領域のアミノ酸配列をコードし、ヌクレオチド番号407乃至724に記載のヌクレオチド配列は定常領域のアミノ酸配列をコードする。iii)と同様の方法でウサギキメラ化抗体1A3軽鎖発現ベクターを構築した。
【0287】
v) ウサギキメラ化抗体1A3の生産
FreeStyle 293F細胞(Invitrogen社)はマニュアルに従い、継代、培養をおこなった。対数増殖期の2.4×109個のFreeStyle 293F細胞(Invitrogen社)をOptimum Growth 5L Flask(Thomson社)に播種し、FreeStyle293 expression medium (Invitrogen社)で希釈して1.88×106細胞/mLに調製した。40mLのOpti-Pro SFM培地(Invitrogen社)に0.48mgのウサギキメラ化抗体1A3重鎖発現ベクターと0.72mgのウサギキメラ化抗体1A3軽鎖発現ベクターと3.6mgのPolyethyleneimine(Polyscience #24765)を加えて穏やかに攪拌し、さらに5分間放置した後にFreeStyle 293F細胞に添加した。37℃、8%CO2インキュベーターで4時間、90rpmで振とう培養後に1200mLのEX-CELL VPRO培地(SAFC Biosciences社)、18mLのGlutaMAX I(GIBCO社)、及び60mLのYeastolate Ultrafiltrate(GIBCO社)を添加し、37℃、8%CO2インキュベーターで7日間、90rpmで振とう培養して得られた培養上清をDisposable Capsule Filter (Advantec #CCS-045-E1H)でろ過することにより、ウサギキメラ化抗体1A3を含む培養上清を得た。
【0288】
vi) ウサギキメラ化抗体1A3の精製
v)で得られた培養上清をrProtein Aアフィニティークロマトグラフィーの1段階工程で精製した。培養上清をPBSで平衡化したMabSelectSuReが充填されたカラム(GE Healthcare Bioscience社製)にアプライしたのちに、カラム容量の2倍以上のPBSでカラムを洗浄した。次に2Mアルギニン塩酸塩溶液(pH4.0)で溶出し、抗体の含まれる画分を集めた。その画分を透析(Thermo Scientific社、Slide-A-Lyzer Dialysis Cassette)によりPBSへのバッファー置換を行った。Centrifugal UF Filter Device VIVASPIN20(分画分子量UF10K,Sartorius社)で抗体を濃縮し、IgG濃度を2mg/mL以上に調製した。最後にMinisart-Plus filter(Sartorius社)でろ過し、ウサギキメラ化抗体1A3の精製サンプルを得た。
【0289】
[実施例7]抗体-薬物コンジュゲートの製造
i) 抗GPR20抗体-薬物コンジュゲートの製造(1)
国際公開第2018/135501号に記載の製造方法に従って、抗GPR20抗体(配列番号32においてアミノ酸番号20乃至472に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号33においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体)を用いて、式
【0290】
【0291】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗GPR20抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗GPR20抗体-薬物コンジュゲート(本発明において「GPR20-ADC(I)」と称する)を製造した。
【0292】
ii) 抗CDH6抗体-薬物コンジュゲートの製造(1)
国際公開第2018/212136号に記載の製造方法に従って、抗CDH6抗体(配列番号34においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号35においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体)を用いて、式
【0293】
【0294】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗CDH6抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗CDH6抗体-薬物コンジュゲート(本発明において「CDH6-ADC(I)」と称する)を製造した。
【0295】
[実施例8]ウサギキメラ化抗体1A3を用いた免疫染色
i) ヒト由来皮下移植腫瘍を用いたTROP2-ADC(I)投与後の染色性の確認
免疫不全マウス(ヌードマウス)にヒト頭頸部がん細胞株FaDuを皮下移植した。TROP2-ADC(I)投与後にその腫瘍組織を採取してパラフィン包埋標本を作製し、ウサギキメラ化抗体1A3の染色性を検討した。また、抗TROP2抗体(配列番号25においてアミノ酸番号20乃至470に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号26においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、以下、「Anti-TROP2 Ab」と称する。)を投与したヌードマウスより採取した腫瘍組織を陰性対照とした。脱パラフィンおよび抗原賦活はAutostainer Link用前処理システム(PT Link:DAKO社製)を用いて、抗原賦活液(Target Retrieval Solution Low pH:DAKO社製)を用いて、97℃で40分間実施した。その後の染色作業は自動染色装置(ダコ Autostainer Link48:DAKO社製)を用いて室温で実施した。EnVision FLEX WASH BUFFER(DAKO社製)で1回洗浄した後、REAL Peroxidase-Blocking Solution(DAKO社製)を加え5分間インキュベートし、EnVision FLEX WASH BUFFERで1回洗浄した。Protein Block serum free(DAKO社製)を加え、30分間インキュベートし、Air blowで液を除去した。ウサギキメラ化抗体1A3をREAL Antibody Diluent(DAKO社製)で0.1μg/mLに希釈し、30分間反応させた。EnVision FLEX WASH BUFFERで3回洗浄後、EnVision+ System-HRP Labelled Polymer Anti-Rabbit (DAKO社製)を加え、30分インキュベートした後、EnVision FLEX WASH BUFFERで2回洗浄した。
【0296】
DAKO Liquid DAB+Substrate Chromogen Systemを加え計10分インキュベートした後、EnVision FLEX WASH BUFFERで1回洗浄した。EnVision FLEX Hematoxylinを加え5分間インキュベートした後、EnVision FLEX WASH BUFFER及びイオン交換水で計3回洗浄した。
【0297】
図35に典型的な染色像を示す。TROP2-ADC(I)を投与された動物の皮下腫瘍組織に対してウサギキメラ化抗体1A3は良好な染色性を示す一方、Anti-TROP2 Abを投与された動物の皮下腫瘍組織に対してウサギキメラ化抗体1A3は染色性を示さなかった。
【0298】
ii) ヒト由来皮下移植腫瘍を用いたGPR20-ADC(I)投与後の染色性の確認
免疫不全マウス(ヌードマウス)にGPR20過剰発現ヒト消化管間質腫瘍細胞株GIST-T1/GPR20を皮下移植した。GPR20-ADC(I)投与後にその腫瘍組織を採取してパラフィン包埋標本を作製し、ウサギキメラ化抗体1A3の染色性を検討した。また、GPR20-ADC(I)非投与マウスより採取した腫瘍組織を陰性対照とした。i)と同様の方法で染色を行った。
【0299】
図36に典型的な染色像を示す。GPR20-ADC(I)投与動物の皮下腫瘍組織に対してウサギキメラ化抗体1A3は良好な染色性を示す一方、GPR20-ADC(I)非投与動物の皮下腫瘍組織に対してウサギキメラ化抗体1A3は染色性を示さなかった。
【0300】
[実施例9] マウス抗体1A3を用いた免疫染色
i) ヒト由来皮下移植腫瘍を用いたCDH6-ADC(I)投与後の染色性の確認
高度免疫不全マウス(NOGマウス)に淡明細胞型腎細胞癌患者より採取された腫瘍組織を皮下移植した。CDH6-ADC(I)投与後にその腫瘍組織を採取してパラフィン包埋標本を作製し、マウス抗体1A3の染色性を検討した。また、CDH6-ADC(I)未投与のNOGマウスより採取した腫瘍組織を陰性対照とした。脱パラフィンおよび抗原賦活はAutostainer Link用前処理システム(PT Link:DAKO社製)を用いて、抗原賦活液(Target Retrieval Solution Low pH:DAKO社製)、97℃で40分間実施した。その後の染色作業は自動染色装置(ダコ Autostainer Link48:DAKO社製)を用いて室温で実施した。EnVision FLEX WASH BUFFER(DAKO社製)で1回洗浄した後、Peroxidase Block 3% H2O2(DAKO社製)を加え5分間インキュベートし、EnVision FLEX WASH BUFFERで1回洗浄した。Protein Block serum free(DAKO社製)を加え、30分間インキュベートし、Air blowで液を除去した。マウス抗体1A3をREAL Antibody Diluent(DAKO社製)で0.03μg/mL~0.3μg/mLに希釈し、60分間反応させた。EnVision FLEX WASH BUFFERで3回洗浄後、EnVision+ System-HRP Labelled Polymer Anti-Mouse #K4000(DAKO社製)を加え、30分インキュベートした後、EnVision FLEX WASH BUFFERで2回洗浄した。
【0301】
DAKO Liquid DAB+Substrate Chromogen Systemを加え計10分インキュベートした後、EnVision FLEX WASH BUFFERで1回洗浄した。EnVision FLEX Hematoxylinを加え5分間インキュベートした後、EnVision FLEX WASH BUFFER及びイオン交換水で計3回洗浄した。
【0302】
図37に典型的な染色像を示す。CDH6-ADC(I)投与動物に対してマウス抗体1A3は良好な染色性を示し、マウス抗体1A3の濃度の増加に伴って染色強度が増加した。一方、CDH6-ADC(I)非投与動物に対してマウス抗体1A3は染色性を示さなかった。なお、NOGマウスはB細胞を欠損しているため、マウス由来の内在性IgGによるバックグラウンド染色は認められていない(Ito M, et al. Blood 100(9):3175-3182, 2002)。
【0303】
ii) マウス抗体1A3の特異性確認
マウス抗体1A3を化合物(2)又はSN-38とあらかじめ混合した後、免疫染色に用いた。
【0304】
なお、化合物(2)は、式
【0305】
【0306】
で表される化合物である。
SN-38は、式
【0307】
【0308】
で表される化合物である。
【0309】
混合比は分子量に基づいてマウス抗体1A3:化合物(2):SN-38=0.1:0.04:0.03とした。染色はi)と同様の方法で実施した。
【0310】
図38に典型的な染色像を示す。化合物(2)との混合によってマウス抗体1A3の染色性は消失したが、SN-38との混合ではマウス抗体1A3の染色性は消失しなかった。このことから、マウス抗体1A3が組織中の化合物(2)を特異的に認識していることが示された。
【0311】
[実施例10] 非臨床試験の血漿中濃度測定
GPR20-ADC(I)のマウス血漿中濃度測定法をGyrolab xP workstation(GYROS PROTEIN Technologies)で構築した。キャプチャー試薬としてマウス抗体1A3をラベリングキット(ChromaLink Biotin Protein Labeling Kit、Solulink)でビオチンラベル化したものを用い、0.1%PS20含有PBSで700nMに調製した。検量線試料はマウス血漿でGPR20-ADC(I)の濃度が、0、5、10、20、50、l00、200、500、1000、2000、5000、10000ng/mLになるように調製したものをRexxip AN(GYROS PROTEIN Technologies)で10倍希釈した。検出試薬はMouse Anti-(Anti-GPR20 Ab)(ここで、「(Anti-GPR20 Ab)」は、配列番号32においてアミノ酸番号20乃至472に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号33においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体を示す)idiotype Ab(71C1)(IBL)をDyLight650(登録商標)ラベリングキットでラベル化したものを用い、Rexxip F(GYROS PROTEIN Technologies)で10nM に調製した。これら調製した試薬及び検量線試料を96ウェルPCRプレートに入れ、Gyrolab xP workstationにセットした。Bioaffy200を使用し、wizardは200-3W-002-A(PMT1)で測定した。回帰解析はGyrolab Evaluator 3.3.9.175を用いて4-パラメータロジスティックモデル(重み:Response)で行った。検量線を
図39に示す。
【0312】
[実施例11] 臨床試験の血清中濃度測定
ECLを使用したHER2-ADC(I)のヒト血清中濃度測定法を構築した。マウス抗体1A3をHigh Bind plate(Meso Scale Diagnostics、LLC:MSD)にコーティング後にプレートを洗浄した。ブロッキング緩衝液(BSA入りのPS20含有PBS)でブロッキング後に0、200、400、800、1600、3200、6400、12800、20000および25600ng/mLに調製したHER2-ADC(I)をアッセイ希釈液で1000倍に希釈して検量線試料とした。さらに、EZ-Link Sulfo-NHS-LC-LC Biotin(Thermo Fisher Scientific Inc.)でビオチン標識したBiotinylated Mouse Anti-(Anti-HER2)idiotype Ab(13C1)(IBL)とスルホタグストレプトアビジン(MSD)をプレインキュベートして検出溶液を調製した。検量線試料添加後にインキュベートおよび洗浄したプレートに検出溶液を加え、複合体を形成させた。4×Read Buffer T(MSD)を精製水で2倍希釈し、洗浄後のプレートに添加してMSD SECTOR Imager 6000(コントロールソフト:MSD Discovery Workbench Version 3.0.18)で測定した。回帰解析は4-パラメータロジスティックモデル(重み:1/Response
2)で行った。検量線を
図40に示す。
【0313】
[実施例12] マウス抗体1A3が認識する化学構造の検証
マウス抗体1A3が認識する化学構造をGyrolab xP workstation(GYROS PROTEIN Technologies)を用いてHER2-ADC(I)の競合阻害により検証した。競合阻害用化合物としては、化合物(1)、化合物(2)、化合物(7)、化合物(8)、化合物(9)、化合物(10)、化合物(11)、Topotecan、及びRubitecanを選定した。
【0314】
なお、化合物(1)は、式
【0315】
【0316】
で表される化合物である。
化合物(2)は、式
【0317】
【0318】
で表される化合物である。
化合物(7)は、式
【0319】
【0320】
で表される化合物である。
化合物(8)は、式
【0321】
【0322】
で表される化合物である。
化合物(9)は、式
【0323】
【0324】
で表される化合物である(Sugimori M. et al., J Med. Chem. 1994, 3033-3039)。
化合物(10)は、式
【0325】
【0326】
で表される化合物である(米国特許第5834476号)。
化合物(11)は、式
【0327】
【0328】
で表される化合物である(Atsumi R. et al., Arzneimittel-Forschung 2001, 253-257)。
Topotecanは、式
【0329】
【0330】
で表される化合物である。
Rubitecanは、式
【0331】
【0332】
で表される化合物である。
【0333】
キャプチャー試薬としてマウス抗体1A3をラベリングキット(ChromaLink Biotin Protein LABELING Kit、Solulink)でビオチンラベル化したものを用い、0.1%PS20含有PBSで700nMに調製した。競合阻害用化合物である、化合物(1)、化合物(2)、化合物(7)、化合物(8)、化合物(9)、化合物(10)、化合物(11)、Topotecan、及びRubitecanをそれぞれDMSOに溶解後、10%または20%DMSO in Rexxip HN(GYROS PROTEIN Technologies)で希釈し、0、1および100 μg/mLに調製後に700 nMのマウス抗体1A3溶液を等量加えて混和し、室温・暗所で1時間以上反応させた。HER2-ADC(I)はRexxip HNで、0、0.244、0.977、3.91、15.6、62.5、250、1000ng/mLに調製した。検出試薬はMouse Anti-(Anti-HER2 Ab)idiotype Ab(13C1)(IBL)をDyLight650(登録商標)ラベリングキットでラベル化したものを用い、Rexxip F(GYROS PROTEIN Technologies)で10nM に調製した。上記の溶液をGyrolab xP workstationにセットし、Gyrolab Bioaffy 200を用いて200-3W-002-A(PMT5)で測定した。回帰解析はGyrolab Evaluator 3.4.0.24を用いて4-パラメータロジスティックモデル(重み:Response)で行った。競合阻害用化合物の濃度ごとにHER2-ADC(I)の検量線を作製し、HER2-ADC(I)濃度の250ng/mL時のResposeを化合物非添加(濃度0ng/mL)に比較した阻害率(%)を算出した。
【0334】
阻害率グラフを
図41に示す。化合物(1)、化合物(2)、化合物(7)、及び化合物(9)は強い競合阻害を示した。一方、化合物(8)、化合物(10)、化合物(11)、Topotecan、及びRubitecanは競合阻害を示さなかった。この結果から、マウス抗体1A3は、化合物(1)の基本骨格からなり4位のメチル基が保持された化学構造を特異的に認識することが示された。