(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045109
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】織布およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
D03D 11/00 20060101AFI20240326BHJP
D03D 25/00 20060101ALI20240326BHJP
D03D 13/00 20060101ALI20240326BHJP
D03J 1/06 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
D03D11/00 Z
D03D25/00 101
D03D13/00
D03J1/06 Z
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023216171
(22)【出願日】2023-12-21
(62)【分割の表示】P 2022086396の分割
【原出願日】2017-04-10
(31)【優先権主張番号】16164695.5
(32)【優先日】2016-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】517296260
【氏名又は名称】ジャリク、デニム、テクスティル、サン.ベ、ティク.ア.セ.
【氏名又は名称原語表記】CALIK DENIM TEKSTIL SAN. VE TIC. A.S.
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100158964
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】ハミット、イェニジ
(72)【発明者】
【氏名】アフメット、セルハット、カラデュマン
(72)【発明者】
【氏名】フルシ、ブルス
(72)【発明者】
【氏名】ケマル、カヤ
(72)【発明者】
【氏名】ミュネベル、エルテク、アブジ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】特に編み地の可撓性およびドレープ性を有するデニム生地の可視特性を具現化し、好ましくは製造が安価でもある、編み地様の織布を提供する。
【解決手段】特にデニム生地などの経表布である織布であって、表面2および裏面と、緯糸方向に延びる複数のピック6と、複数の経糸4、5であって、経糸方向に延び、ピックをそれらの表側において迂回して上部分43、53を画定し、ピックをそれらの裏側において迂回して下部分41、51を画定する、複数の経糸とを備え、複数の経糸は、表側経糸4および裏側経糸5を含み、裏側経糸の下部分は、表側経糸の下部分より多くのピックを迂回する、織布。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にデニム生地などの経表布である織布であって、表面(2)および裏面(3)と、緯糸方向(H)に延びる複数のピック(6)と、複数の経糸(4、5)であって、経糸方向(V)に延び、ピック(6)をそれらの表側(62)において迂回して上部分(43、53)を画定し、ピック(6)をそれらの裏側(63)において迂回して下部分(41、51)を画定する、複数の経糸とを備え、前記複数の経糸(4、5)が、表側経糸(4)および裏側経糸(5)を含み、前記裏側経糸(5)の前記下部分が、前記表側経糸(4)の前記下部分(41)より多くのピック(6)を迂回する、織布。
【請求項2】
前記複数の裏側経糸(5)の前記下部分(51)が、3個以上のピック(6)および/または41個未満のピック(6)、好ましくは4から24個のピック(6)、より好ましくは9から16個のピック(6)、特にちょうど8個、11個、14個、または15個のピック(6)を迂回し、ならびに/または複数の裏側経糸(5)の前記下部分が、前記表側経糸(4)の前記下部分(41)より、少なくとも1個、2個、3個、または4個および/または最大40個多いピックを迂回し、好ましくは前記裏側経糸(5)の前記下部分が、前記表側経糸(4)の前記下部分(41)より3から23個、より好ましくは8個から15個多いピック(6)を迂回し、ならびに/または前記複数の裏側経糸(5)の1つの前記下部分(51)によって迂回されるピック(6)の数の、前記裏側経糸(5)の前記上部分(53)によって迂回されるピック(6)の数に対するループ比が、2:1を超え、および/または40:1未満であり、好ましくは4:1から24:1の間、より好ましくは9:1から16:1の間である、請求項1に記載の織布。
【請求項3】
前記上部分(43、53)および前記下部分(51、53)によって迂回されるすべてのピック(6)の合計に関連する1つの経糸(4、5)の前記上部分(43、43)および前記下部分(51、53)の合計が、前記糸の織り緊密性を規定し、前記布は、前記複数の表側糸(4)が、前記複数の裏側経糸(5)より大きい織り緊密性を有し、ならびに/または前記複数の表側経糸(4)が、前記複数の裏側経糸(5)と同じ収縮比、または前記複数の裏側経糸(5)より大きい収縮比を有し、特に前記複数の表側経糸(4)の前記収縮率が、前記複数の裏側経糸(5)の前記収縮率より少なくとも5%高く、好ましくは25%から40%高く、より好ましくは30%から35%高いように織られる、請求項1または2に記載の織布。
【請求項4】
前記複数の裏側糸(5)の前記上部分(53)が、前記複数の裏側経糸(5)の1つの前記下部分(51)よりも少ないピック(6)を迂回し、ならびに/または前記複数の裏側経糸(5)の1つの前記上部分(53)が、4個を超えないピック(6)、好ましくはちょうど1個のピック(6)を迂回し、ならびに/または前記複数の表側経糸(4)の前記上部分(43)が、1から5個のピック(6)、好ましくは2個から4個のピック、特にちょうど3個のピックを迂回する、請求項1から3のいずれか一項に記載の織布。
【請求項5】
裏側経糸(5)と少なくとも同じ数、好ましくは裏側経糸(5)のちょうど2倍または3倍の表側経糸(4)を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の織布。
【請求項6】
前記複数の裏側経糸(5)の1つが、少なくとも1つの表側経糸(4)、好ましくは2つの表側経糸(4)にすぐ隣接して緯糸方向(H)に配置され、特に前記表側経糸(4)が、前記隣接する裏側経糸(5)の表側に少なくとも部分的に配置される、請求項1から5のいずれか一項に記載の織布。
【請求項7】
前記複数の裏側経糸(5)の少なくとも1つが、前記複数の表側経糸(4)の少なくとも1つよりも細く、好ましくは、前記布が、少なくとも表側経糸(4)と同じ数の裏側経糸(5)を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の織布。
【請求項8】
前記複数の表側経糸(4)の1つの前記下側部分(41)が、前記表側経糸(4)の前記上部分(43)よりも少ないピック(6)を迂回し、ならびに/または前記複数の表側経糸(4)の1つの前記下部分(41)が、4個を超えないピック(6)、好ましくはちょうど1個のピック(6)を迂回し、ならびに/または前記複数の表側経糸(4)の1つの前記下部分(41)によって迂回されるピック(6)の、前記表側経糸(4)の前記上部分(41)によって迂回される前記ピック(6)に対する比が、1:1以下、好ましくは1:2、1:3または1:4である視認比を規定する、請求項1から7のいずれか一項に記載の織布。
【請求項9】
織布であって、
表面(2)および裏面(3)と、緯糸方向(H)に延びる複数のピック(6)と、複数の経糸(4、5)であって、経糸方向(V)に延び、ピック(6)をそれらの表側(62)において迂回して上部分(43、53)を画定し、ピック(6)をそれらの裏側(63)において迂回して下部分(41、51)を画定し、表側経糸(4)および裏側経糸(5)を含む、複数の経糸(4、5)と
を備え、
前記表側経糸(4)および前記裏側経糸(5)は、前記裏側経糸(5)の下部分(51)が前記表側経糸(4)の前記下部分(41)より緩く延びるように設計されおよび/または製織される、
特に請求項1から8のいずれか一項に記載の、特にデニム生地などの経表布である織布。
【請求項10】
織布であって、
表面(2)および裏面(3)と、緯糸方向(H)に延びる複数のピック(6)と、複数の経糸(4、5)であって、ピック(6)をそれらの表側(62)において迂回して上部分(43、53)を画定し、ピック(6)をそれらの裏側(63)において迂回して下部分(41、51)を画定し、表側経糸(4)および裏側経糸(5)を含む、複数の経糸(4、5)と
を備え、
前記表側経糸(4)および前記裏側経糸(5)は、前記表側経糸(4)が密接に製織された表側経糸配置を形成し、前記裏側経糸(5)を前記布の前記表面(2)から構造的に隔離するように設計されおよび/または製織される、
特に請求項1から9のいずれか一項に記載の、特にデニム生地などの経表布である織布。
【請求項11】
前記表側経糸(4)が、軸方向中心線(A)を有し、前記軸方向中心線(A)を通って前記表側経糸(4)の前記上部分(43)に沿って延びる中央経糸/緯糸面(C)を画定し、前記裏側経糸(5)が、軸方向中心線(B)を有し、前記裏側経糸(5)の、特に経糸方向の前記裏側経糸(5)の全体の延長に沿う軸方向中心線(B)の、ほとんどまたはすべてが、前記中央経糸/緯糸面(C)の裏側を延びる、請求項10に記載の織布。
【請求項12】
特に請求項1から11のいずれか一項に記載の、特にデニム生地などの経表布である織布を製造するための方法であって、
a.ピック(6)を製織するための1つまたは複数の緯糸および複数の経糸(4、5)を提供するステップと、
b.前記複数の経糸(4、5)が前記ピック(6)をそれらの表側において迂回して上部分(43、53)を形成し、ピック(6)をそれらの裏側において迂回して下部分(41、51)を形成するように前記布を製織するステップであって、複数の表側経糸(4)および複数の裏側経糸(5)が、前記複数の表側経糸(4)の前記下部分(41)が裏側経糸(5)の前記下部分(51)より少ないピック(6)を迂回するように、実現される、製織するステップと
を含む、織布を製造するための方法。
【請求項13】
前記織布を収縮させるステップをさらに含み、前記裏側経糸(5)の前記下部分(51)が、前記布の裏面(3)にループを形成し、ならびに/または前記布が、前記織布が織機から取り出された後、かつ好ましくは前記織布が洗浄されおよび/または仕上げられる前、前記織布が2緯糸/cmから60緯糸/cmの間の緯糸密度を有するように製織される、請求項12に記載の織布を製造するための方法。
【請求項14】
前記複数の経糸(4、5)を提供するステップが、特に前記複数の表側経糸(4)が、前記複数の裏側経糸(5)と少なくとも同じ収縮率、好ましくは前記複数の裏側経糸(5)より大きい収縮率を有するように、前記複数の表側経糸(4)について前記複数の裏側経糸(5)とは異なる材料を選択することを含む、請求項12または13に記載の織布を製造するための方法。
【請求項15】
前記複数の表側経糸(4)が、製織中および/または収縮中、前記複数の裏側経糸(5)の表側に少なくとも部分的に配置されるように前記布が製織される、請求項12から14のいずれか一項に記載の織布を製造するための方法。
【請求項16】
織布を製造するための方法であって、
a.ピック(6)を製織するための1つまたは複数の緯糸および複数の経糸(4、5)を提供するステップと、
b.前記複数の経糸(4、5)が前記ピック(6)をそれらの表側において迂回して上部分(43、53)を形成し、ピック(6)をそれらの裏側において迂回して下部分(41、51)を形成するように前記布を製織するステップであって、複数の表側経糸(4)および複数の裏側経糸(5)が実現される、製織するステップと
を含み、
前記表側経糸(4)が、前記裏側経糸(5)の前記下部分(51)が前記布の裏面(3)において延びるループであるように選択されおよび/または製織され、前記ループは、前記表側経糸(4)の前記下部分(41)より緩い、
特に請求項1から11のいずれか一項に記載の、好ましくはデニム生地などの経表布である織布を製造するための、特に請求項12から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
織布を製造するための方法であって、
a.ピック(6)を製織するための1つまたは複数の緯糸および複数の経糸(4、5)を提供するステップと、
b.前記複数の経糸(4、5)が前記ピック(6)をそれらの表側において迂回して上部分(43、53)を形成し、ピック(6)をそれらの裏側において迂回して下部分(41、51)を形成するように前記布を製織するステップであって、複数の表側経糸(4)および複数の裏側経糸(5)が実現される、製織するステップと
を含み、
経糸(4、5)が、前記表側経糸(4)が互いに横方向に接触し、密接に製織された表側経糸配置を形成し、それによって前記裏側経糸(5)を前記布の表面(2)から構造的に隔離するように選択されおよび/または製織される、
特に請求項1から11のいずれか一項に記載の、好ましくはデニム生地などの経表布である織布を製造するための、特に請求項12から16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は織布、好ましくは編み地のように感じるデニム生地などの経表布に関する。本発明はまた、そのような編み地様の織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
織布および編み地は、一般に、非常に異なる特性を有する。デニム、ガーバディン、ポプランまたはリネンなどの織布は、編み地よりも安定しているが、より剛性であり、それによってこれらはうまくドレープしない。デニムは、インディゴ染料が糸の表面で最も濃縮されているのに対して、糸のコアは未染色のままであり、非常に特徴的な着色オプションを可能にするという事実により、非常に人気のあるインディゴ染色された織布である。デニムにはさまざまな仕上げ技術を適用して着色特性を高めることができる。例えば、デニムは手で擦ったり、サンドブラストしたり、石で洗浄したり、またはインディゴ糸の未染色コアのさまざまな量を見えるようにすることを可能にする他の方法で処理することができる。デニムは非常に人気があるが、織物の性質上、着用者の身体の上にうまくドレープするよう期待される衣料品、特にシャツ、ブラウス、スエットシャツなどのトップスにはほとんど使用されていない。
【0003】
うまくドレープするよう期待される衣料品には、編み地が最も頻繁に使用されており、その理由は、編み地は一般的により柔軟であり、着用者の身体の上にうまくドレープするようにあらゆる方向に伸張できるためである。しかし、インディゴ色の編み地を作ることは非常に高価である。デニムを製織するために使用されるリング色の糸とは異なり、編み地を作り出すために使用される糸は、まず染色のためにボビンに結合されなければならないので、時間がかかり、したがって高価な追加の製造ステップが必要である。さらに、編み地を製造するとき、その両面は、着用者の肌と接触する布の裏側を含めて染色され、したがって汚れを残すことがある。
【0004】
製織によって容易に製造することができるが、編み地のように感じられる布を作成するために、欧州特許第2539493号明細書は、2種類の異なるタイプの緯糸、すなわちエラストマー緯糸および硬質緯糸で経糸を製織することを提案している。エラストマー糸の下部分は、例えば2本の経糸の下を通過するように配置され、一方、硬質緯糸の下部分ははるかに大きく、例えば11本の経糸の下を通過するので、比較的大きな緯糸ループが布の裏側に形成される。エラストマー緯糸および硬質緯糸の連結する上部分はいずれも、たった1つの経糸上を通過し、硬質緯糸が常に、同じ経糸上を通過するエラストマー緯糸に隣接するように配置される。欧州特許第2539493号明細書による布では、硬質緯糸によって形成されるループ部分は、布が着用者に編み地のように感じられることを可能にするが、典型的には30から90緯糸/cmの間の比較的高い緯糸密度を必要とする。この典型的な非常に高い緯糸密度は、多くの緯糸挿入を必要とし、したがって、製造プロセスを比較的高価にする。欧州特許第2539493号明細書による織布もまた、編み地と同様に見えるが、その理由は、布の表側の上部分が、デニムにとって典型的である1つの対角線パターンだけでなく、第1の対角線パターンに対してずらされた、硬質緯糸の上部分によって作り出された第2の対角性パターンも作り出すためである。しかし、典型的なデニムの外観を有しながらも、編み地の性能上の利点を提供する織布を有することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来技術の欠点を克服することであり、特に編み地の可撓性およびドレープ性を有するデニム生地の可視特性を具現化し、好ましくは製造が安価でもある、編み地様の織布を提供することである。本目的は、独立請求項の主題によって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様では、本発明は、表面および裏面を備える、好ましくはデニム生地などの経表布である織布に関する。布の表面は、技術面側(technical face side)と呼ぶことができ、これは、ツイル布などの典型的な経表布の場合、最も顕著なウェール(wale)を有する側である。表面は、本発明による織布から製造された製品の表面に見えるように提示される側である。セルビッジ(selvedge)は常に織布の経糸(長さ方向)方向に延びている。いわゆるリードライン(reed lines)を用いて織布内の経糸を識別することが可能である。特に緯糸方向に布をわずかに伸張させることによって、光が、経糸方向に延びるリードラインを通って裏面から表面まで布を通過することができる。リードラインは、製織プロセス中に必ず作り出されるが、これらは、経験の浅い観察者にとっては時には見づらいことがある。すべての経糸は、製織後に比較的密接に一緒になっているが、鋼リードデント(steel reed dents)の太さにより、すぐ隣の経糸との間に小さい空間を常に残しており、このデントは、製織中、織機のリードが緯糸の最新のピックを生み出された布に向かって押し出す、ビーティングと呼ばれ得るときに形成される。表側経糸は、通常、インディゴ染色された経糸であり、布の唯一のインディゴ染色され得る糸とすることができる。通常、表面はまた、製織中に見える側でもある。布の裏面は、技術的裏面(technical back)と呼ぶこともできる。布の裏面は、着用者の身体と接触することが意図された側である。デニム生地は、典型的な経表布であり、布の表面は、インディゴ染色された経糸によって見えるように支配され、一方で布の裏面は、通常、主に緯糸を示す。他の経表布は、ツイル、キャバルリーツィル、チノ、コンバート、デニム、ドリル、ファンシーツイル、ギャバジン、およびライニングツイルを含む。
【0008】
本発明の第1の態様による織布は、ピックおよび経糸を含み、好ましくはこれらからなる。経糸およびピックは、経糸が(垂直)経糸方向を規定し、ピックが好ましくは経糸方向に直交する(水平)緯糸方向を画定するように、互いに直角に織り交ぜることができる。ピックは緯糸方向に延びる。織布のピックは、1つまたは複数の緯糸によって形成され得る。ピックまたは緯糸ピックは、布の一方の水平端部から他方の水平端部(経糸方向に垂直)に延びる緯糸の一セクションとして説明することができる。
【0009】
経糸、好ましくはそのほとんどまたはすべての経糸は、経糸方向に延び、ピックをそれらの表側で迂回して上部分を画定し、ピックをそれらの裏側で迂回して下部分を画定する。経糸は、経糸端部と呼ぶこともできる。少なくとも洗浄前、経糸は、織機の張力のために布内でより真っ直ぐにかつより平行に位置することができる。ピックの表側は、前記ピックが布の表面を向く側である。1つまたは複数の経糸がピックの表側の前にあり、それにより、ピックの表側が、織布の表面を見る人に常に見えるとは限らないことは明らかである。同様に、ピックの裏側は、布の裏面を向くピックの側であり、1つまたは複数の経糸がピックの裏側の後にあることができる。しかし、ピックが布地の表側に見える場合、その見える部分は、そのピックの表側の一部となる。布の裏側に見えるピックの見える部分は、ピックの裏側の一部である。側面から(緯糸方向に)経糸を見ると、各経糸の下部分および上部分は、全体的に正弦波のパターンを形成する。経糸は、ピックに対して交互に配置された下部分および上部分を形成する。上部分は、経糸の2つの隣接する下部分の間を延びる。各下部分は、ピックの裏側で隣接する2つの上部分間を延びる。経糸の上部分は、通常、布の表面において見ることができ、したがって、布の表面の外観を支配する。経糸の下部分は、布の裏面において見ることができ、着用者の皮膚と接触する。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、経糸は、表側経糸および裏側経糸を備え、好ましくはこれらからなる。本発明の第1の態様によれば、特に、表側および裏側の経糸の少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはそのすべてに関して、裏側経糸の下部分、好ましくは裏側経糸の下部分のすべてまたはほとんどは、表側経糸の下部分、好ましくは表側経糸の下部分のすべてまたはほとんどより多くのピックを迂回する。好ましくは、表側経糸は、布の面に見えるように出現するように、換言すれば布の表面に現れるように設けられる。裏側経糸は、好ましくは、着用者の皮膚に接触するように、および/または布の裏面を覆うように設けられる。裏側経糸のループ部分または下部分によって迂回されるピックの数を、表側経糸の下側部分によって迂回されるピックの数よりも多くなるように選択することにより、裏側経糸のほとんどが布の裏面に向かって配置され、表側経糸が布の表面に向かって配置される織りパターンが、達成される。したがって、本発明による経表織布の見える印象は、裏側経糸をその後ろに隠す表側経糸の外観によって支配される。
【0011】
本発明の一般的な概念は、経糸の2つの識別可能なセットを有する、特に経表布である織布を提供することである。表側経糸と呼ばれる第1のセットの経糸は、通常、緯糸と共に製織されて典型的な設計の、好ましくはデニム様の外観を有する織布を作り出す。本明細書では裏側経糸と呼ばれる第2のセットの経糸は、第2のセットの経糸が主に布の裏面に配置されるように第1のセットの経糸および緯糸の織布と織り交わらせるものとして想像することができる。これは、例えば、比較的大きい下部分および場合によっては小さい上部分を有する第2のセットの経糸を製織することによって、および/または表側経糸の数に対してはるかに少なくてよい数の裏側経糸を使用することによって、および/または表側経糸より細い裏側を選択することによって、および/または選択された裏側経糸より大きい収縮率を有する表側経糸を選択することによって、および/または裏側経糸より大きい表側経糸のクリンピングを結果としてもたらす織りパターンを選択することによって、および/または製織中、表側経糸に裏側経糸より大きい引張張力をかけて、好ましくは5%から50%の間のドラフト比、より好ましくは10%から25%の間のドラフト比を有する織布を作り出すことによって実現することができる。代替的にまたは追加的に、表側経糸および裏側経糸は、上記で説明したような経表織布を得るために、熱処理、洗浄処理、溶剤処理などに対する挙動が異なり得る。そのような織布において、裏側経糸は、本発明による織布を含む衣料を着用している人の皮膚と主に接触する糸である。これらの裏側経糸は、編み地によって提供される感触に非常に類似した非常に柔らかい感触を提供する。同時に、布の表面は典型的な織布の外観とほぼ同じように見えるが、その理由は、表面がほとんど表側経糸およびピックを示すためである。本発明による織布は、サテン織りまたは平織りの外側外観を有する布に対しても実現することができる。表面の見える織りパターンは、異なる既知のパターンに非常に類似することができる。見えるパターンは、3/1織りなどの共通のデニム織りとして現れることが好ましい。他の織りも可能である。一般的な織りは、例えば、2/1、1/1、4/1、3/1のブロークンツイル、4/1サテンなどである。表面の見えるパターンは、本質的には、表側経糸およびピックのみを使用して実現される。布の裏面に配置された追加の裏側経糸は、編み地様の挙動を実現し、それにより、布の裏面は編み地のように見え、典型的な織布よりも柔らかく柔軟に感じる。また、緯糸方向にのみ伸張する典型的なデニム生地と比較して、本発明による布は、異なる表側経糸および裏側経糸を使用するため、いわゆる二重ストレッチ布として容易に生み出され得る。
【0012】
本発明の好ましい実施形態では、特に、裏側経糸の少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%またはすべてに関して、複数のループ経糸の前記下部分、特に複数のループ経糸の前記下部分のほとんどまたはすべては、3個以上のピックおよび/または41個未満のピック、好ましくは4から24個のピック、より好ましくは9個から6個のピック、特にちょうど8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個または16個のピックを迂回する。裏側経糸の下部分のほとんどまたはすべては、少なくとも4個、5個、6個、7個またはそれ以上のピックの裏側に沿って延びることができ、または迂回することができる。3/1からだ織り(body weave)デニム生地と非常によく似た織布の場合、ちょうど8個または11個または14個または15個のピック上を延びる下部分を有するループ糸は、通常のデニム生地とほとんど区別できないように見えることが示されている。裏側経糸の下部分によって迂回されるピックの数が多すぎると、織布は、望ましくないことには、製造中またはその布が着用されたときに容易に裂ける大きなループ部分を有することがある。
【0013】
本発明の好ましい実施形態では、特に、裏側経糸の少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはそのすべてに関して、裏側経糸の下部分、好ましくは裏側経糸の下部分のほとんどまたはすべては、表側経糸の下部分より、好ましくは裏側経糸の下側部分のほとんどまたはすべてよりも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個多いピックを迂回する。本発明の好ましい実施形態では、特に、裏側経糸の下側部分の各々は、特に表側経糸の下部分の各々より、多くとも40個、35個、30個または25個多いピックを迂回する。好ましくは、特に、裏側経糸の下部分の各々は、特に表側経糸の下部分の各々より3個から23個、より好ましくは8個から15個多いピックを迂回する。
【0014】
本発明の好ましい実施形態では、特に、裏側経糸の少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはそのすべてに関して、裏側経糸の下部分、好ましくは裏側経糸の下部分のほとんどまたはすべては、前記裏側経糸の上部分より、好ましくは前記裏側経糸の下側部分のほとんどまたはすべてよりも多いピックを迂回する。迂回されたピックの数、または換言すれば、裏側経糸の上部分の延長を、前記裏側経糸の下部分の延長よりも小さくなるように選択することにより、布の表面における裏側経糸の視覚的発生を最小限に抑えることができ、編み地様の感触を確立するための布の裏側への効果を最大にすることができる。好ましくは、経糸の上部分によって迂回されるピックの延長または数は、2つ以下、特にちょうど1つであることができる。好ましくは、各裏側経糸の下部分は、2つの隣接する上部分を有することができ、その少なくとも1つ、好ましくは両方が、下部分によって迂回されるピックの数よりも少ない数のピックを迂回する。例えば、好ましい実施形態では、裏側経糸は、すべてが1つだけまたは2つだけのピック上を延びる上部分と、ループ部分と呼ばれてよく、すべてが2つ以上のピックを迂回する下部分とを有することができる。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、特に裏側経糸の少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%またはすべてに関して、裏側経糸の1つ、好ましくは各々1つの下部分、好ましくはそのすべてによって迂回されるピックの数の、前記裏側経糸の上部分、好ましくはそのすべてによって迂回されるピックの数に対するループ比は、2:1、3:1、4:1、5:1を超え、かつ40:1未満、30:1未満、または24:1未満であり、好ましくはこのループ比は、4:1から24:1の間、より好ましくは9:1から16:1の間である。好ましくは、ループ比は、特に表側および裏側の経糸が異なる収縮率を有する実施形態の場合、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1または14:1であり、これは以下で説明する。好ましくは、ループ比は、特に表側および裏側の経糸が類似または同一の収縮率を有する実施形態の場合、11:1以上、例えば14:1または15:1などである。
【0016】
本発明の好ましい実施形態では、特に経糸の少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%または全部に関して、表側経糸および裏側経糸は、前記裏側経糸、好ましくは前記裏側経糸の少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%またはそのすべての前記下部分、好ましくはそのほとんどまたはすべてが、好ましくは異なる織り緊密性(weave tightness)、異なる収縮率を有することにより、および/またはドラフト比を有する布を実現するために異なる引張張力で製織されていることにより、布の裏面に緩いループを形成するように選択され、設計されおよび/または製織される。織布の裏側の緩いループは、好ましくは、表側経糸および裏側経糸の機械的特性により、および/または表側経糸および/または裏側経糸の熱特性によって形成され得る。経糸の機械的特性は、例えば、製織中のそれらのそれぞれの引張張力、それらのそれぞれの織り緊密性などに関連し得る。経糸の熱的特性は、例えば、洗浄によるそれらのそれぞれの収縮率に関連し得る。
【0017】
本発明の好ましい実施形態では、特に経糸の少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%またはすべてに関して、表側経糸、特に表側経糸のほとんどまたはすべては、第1の引張張力で製織され、裏側経糸、特に裏側経糸のほとんどまたはすべては、第1の引張張力よりも低い第2の引張張力で製織される。これにより、ドラフト比は、製織中の裏側経糸上の第2の張力に対する表側経糸上の第1の張力の差によって規定される。ドラフト比を伴って製織するための経糸は、太さを含めて同じ材料および/または構造からなることができる。本発明の好ましい実施形態による織布は、特に表側経糸のほとんどまたはすべてが第1の張力に従って予備伸張され、その間裏側経糸、好ましくは裏側経糸のほとんどまたはすべてが、伸張されないか、または表側経糸の(第1の)ものより低い第2の張力に従って予備伸張される状態で、製織され得る。好ましくは、ドラフト比は、表側経糸および裏側経糸の引張張力の差、好ましくは5%から50%の間、特に10%から25%の間に等しい。
【0018】
好ましくは、表側経糸、特に表側経糸のすべてまたはほとんどは、好ましくはエラスタンを含む弾性糸を含むか、またはこれからなる。好ましくは、裏側経糸は、非弾性糸とも呼ばれ得る剛性糸を含むか、またはこれからなる。非弾性糸は、永久変形なしに最大長さを超えて伸張することができないものとして説明することができ、前記最大長さは、元の長さの1.05倍未満であるか、好ましくは1.02倍未満であるか、または全く無い。非弾性またはフィラメントの典型的な材料は、天然繊維、例えば綿または羊毛、ポリエステル、ナイロンなどである。弾性糸は、例えば元の長さの約10%から約25%弾性的に伸長することができるものとして説明することができる。本質的に引張張力がかけられていない間に、糸の初期または元の長さを測定することができる。伸張糸と呼ばれ、緯糸ピック、表側経糸および/または裏側経糸に使用され得る弾性糸は、例えばInvista製のライクラ(Lycra)(登録商標)のようにT400、スパンデックスまたはエラスタンからなるか、またはそれらを含むことができる。好ましくは、弾性糸は、少なくとも1つの非弾性フィラメントと、例えばInvista製のLycra(登録商標)のようにT400、スパンデックスまたはエラスタンからなる少なくとも1つの弾性フィラメントとを含む複合糸である。
【0019】
本発明による布の好ましい実施形態では、表側経糸または裏側経糸とすることができる1つの経糸の上部分および下部分の、前記上部分および下部分によって迂回されるピックの数に関連する合計は、その糸の織り緊密性を規定する。布は、複数の表側経糸、好ましくは表側経糸のほとんどまたはすべてが、複数の裏側経糸、好ましくは裏側経糸のほとんどまたはすべてよりも大きい織り緊密性を有するように製織される。用語「より高い織り緊密性」は、経糸の1つのタイプ、好ましくは表側経糸が、ピック間に、他の(裏側の)経糸よりも多くの起伏を作ると理解されるものとする。起伏とは、経糸が布の表面まで上がり、(上部分を画定する)ピックを通過した後、布の裏面まで下がることを意味する(布の表面は、見える側であり、裏面は、その布から得られた、またはその布を含む製品または衣服のユーザを向く側である)。好ましくは、経糸方向の同じ単位長さの布の場合、表側経糸の起伏変化の数は、裏側経糸の起伏運動の数より多い。
【0020】
製織後、経糸およびピックはもはや真っ直ぐではなく、ひだが付けられる。この効果は、クリンピングと呼ぶことができ、これに関連する糸に応じて、経糸クリンプまたは緯糸クリンプを呼ぶことができる。例えば、100cmの真っ直ぐな経糸は、常に100cm未満、例えば98から89cmの布長さまで製織される。経糸の本来の長さに対する経糸方向の織布のより短い長さは、クリンプ率と呼ぶことができる。クリンプ率は、経糸およびピックの直径、経糸およびピックの密度、ならびに製織パターンに依存する。連続するピックごとに経糸が上下に変化する場合、1:1の織りパターンが実現され、その結果、最大のひだまたは最大の経糸クリンプが生じる。連続する各ピックに関して上下に移動するそのような経糸は、最大限の織り緊密性(この段落の以下でさらに詳細に説明する例に関して6/6織り緊密性)を実現する。本発明の布では、表側経糸は、そのような高い織り緊密性を有することができる。経糸ループ糸が、例えば、1つのピックを迂回する上部分および5つのピックを迂回する下部分を交互に有する(1/5織りパターンと呼ぶことができる)規則的なパターンを画定する場合、織り緊密性は、かなり低くなり、この例では2/6である。好ましくは、表側経糸および/または裏側経糸の材料は伸縮材料である。
【0021】
上記の例のように、織り緊密性が1である表側経糸、および織り緊密性が約0.3である裏側経糸の場合、織り緊密性の差異により、経糸は、約100cmの元の真っ直ぐな長さから、約90cmの織布の長さに至ることができる。より緊密な表側経糸は、約90cmにクリンプし、裏側経糸は約97cmにクリンプする。このため、裏側経糸は、この例では7cmの余剰のために、織布の裏側に緩く垂れ下がったループを形成する。通常、表側経糸および裏側経糸が、同じ材料または互いに非常に類似して挙動する材料からなる場合、緩いループが布の裏側に形成されて編み地様の感触を提供することができる。異なる素材を使用すると、編み地様の感触につながる効果を高めることができる。
【0022】
それ自体で、または前述の好ましい実施形態と組み合わせて適用され得る好ましい実施形態では、特に経糸の少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%またはすべてに関して、複数の表側経糸、好ましくは表側経糸のすべてまたはほとんどは、複数の裏側経糸、好ましくは裏側経糸のすべてまたはほとんどのものと少なくとも同じである収縮率を有する。好ましくは、表側経糸は、裏側経糸よりも大きな収縮率を有する。特に、表側経糸の収縮率は、裏側経糸の収縮率よりも少なくとも5%高く、好ましくは25から40%高く、より好ましくは30から35%高い。編み地様の感触を得るために、布の裏側に緩く垂れ下がったループの形成を強化するために、表側経糸について裏側経糸とは異なる材料を選択することができ、裏側経糸の収縮率は、好ましくは、表側経糸の収縮率よりも低くなるように選択される。織布を収縮させるとき、例えば、織布を織機から取り出すとき、および/または織布を最初の数回洗浄するとき、表側経糸は裏側経糸よりも収縮し、それにより、裏側経糸の下部分またはループ部分は、表側経糸の下部分より大きくなる。したがって、表側経糸およびループ経糸または裏側経糸のための適切な材料を選択することにより、布の裏側に緩く垂れ下がったループの形成を強化することができる。経糸に対する異なる織り緊密性を用いるループ形成効果と、異なる収縮率を有する材料および場合によっては他の手段を用いるループ形成効果とを組み合わせることが可能である。
【0023】
経糸の収縮率は、以下の方法により求めることができる。単一の糸、特に単一の弾性糸の収縮率は測定が非常に困難であるため、糸の収縮は、かせを用いて測定される。かせは、同じ糸の複数の個々の糸、例えば、1つのパッケージまたはロットから採取された糸を含む。例えば、ASTMD4849に記載されているようなかせは、公称60センチメートルの周長を有する電動リールを使用することによって得られる。160本の個々の糸(経糸)を含む80巻きのかせを、1cN/texまたは0.1gf/denを超えない均一な張力で巻き取る。糸を円滑にリールに巻き、かせの始まりと終わりは緩く縛る。試験のために準備されたかせを、少なくとも4時間20℃±2℃および65%相対湿度±2%で調節する。0.2cN/texまたは0.02gf/denに対応する張力を、式1または式2を用いて計算することができる。
張力、cN=0.2*N*T(式1)
張力、gf=0.02*N*D(式2)
式中:
N=個々の経糸の数;すなわち、かせ内の巻き数の2倍であり、T=番手、テックス、およびD=番手、デニールである。
【0024】
それぞれの調節されたかせの、かせループ長さが測定される。フックからの調節されたかせを、かせの上部の内側およびスケールのゼロインデックスで測定スケールの上部にかける。第2のフックを、かせの底部にかけ、十分な質量(フックの質量を含む)を加えて、式1または2で計算された力を生成する。30秒±3秒後、かせの内側の長さを最も近い1mmまで測定し、25cmの距離を測定し、永久的なペンでマークする。フックおよび重りの質量は、1000分の1単位で考えられるものとする。各かせのかせループ長さを記録する。各かせを形状「8」にねじり、個々の糸を一緒にして2コイルループを形成する。この手順は、4コイルループを形成するまで繰り返される。それぞれのかせをチーズクロスで注意深く包み、活発に沸騰する水中での糸の絡みを防ぐためにチーズクロスを固定する(縫い付け、縛る)。包まれたかせの質量の少なくとも40倍であり、重量で湿潤剤の0.05%±0.005%溶液を含有する蒸留または脱塩水浴(bath)を構成する。この浴を連続的に回転させて沸騰させ、かせを30分±2分間浸漬する。試料から溶液を注ぐ前に、浴を少なくとも50℃に冷却する。湿潤剤は最終的な長さ測定を行う際にストランドの潤滑剤として働くので、試料をあふれさせたりすすいだりして浴を冷却しない。遠心分離機またはロールリンガーを使用して、包まれたかせを生乾きにする。かせをチーズクロスから取り出し、室温でまたは65℃±3℃の乾燥オーブンで1時間±5分間完全に乾燥させる。それぞれの乾燥したかせを、繊維を試験するために標準雰囲気中で4時間再調整する。(式1または2によって算出された)前と同じ重りを使用することを含む、上記で説明したのと同じ手順を使用して、永久ペンマーキング(元の距離25cm)間の距離を最も近い1mmまで再測定する。測定値を最終的な長さとして記録する。各かせの収縮を、式3を使用してほぼ0.1%まで計算する。
収縮%=100(A-B)/A(式3)
式中:
A=25cm(または各かせの元のかせループの長さ)、および
B=再測定されたマーク距離(または各かせの最終的なかせループ長さ)。
【0025】
かせの伸長によりBがAより大きい場合、「負の」収縮が延長として報告される。
【0026】
かせの計算された収縮は、かせの個々の経糸の収縮率に等しいと仮定される。
【0027】
特に、異なる織り緊密性を有することによって達成される効果に加えて経糸の材料による収縮率を含む、織布の総収縮率は、好ましくは、元の経糸長さの40%に達する。織布の総収縮率は、洗浄前後のサンプル布に関する測定値の比較によって決定することができる。布を、最初、例えば、少なくとも16時間、20℃±2℃および65%相対湿度±2%などの、予め定められた温度および湿度で調節することができる。例えば60×60cmのサイズのサンプルを布から切断することができる。そのようなサンプルは、セルビッジから少なくとも15cm離して取らなければならない。次いで、40cm(L1)の4辺のボックス(box)を布サンプルにマーキングすることができる。ボックスの片側は経糸方向にほぼ平行に配置されなければならず、他の側は緯糸方向にほぼ平行である。サンプルは、その後、別の布と一緒に洗濯機で洗濯される。全洗濯機負荷は約2キログラムの空気乾燥材料とすることができ、その半分以下が試験サンプルからならなければならない。洗濯物を水温40℃で静かに洗う。水の硬度に応じて、1g/lから3g/lの洗剤量を使用することができる。その後、サンプルが乾燥するまで平坦な表面上に置き、次いで、20℃±2℃、および相対湿度65%±2%相対湿度で60時間再度調節する。次に、4辺の上述のボックスのサイズを再び測定することができる(L2)。次に、式4(式4)を用いて、洗濯後の収縮率を計算することができる。
C%=(L1-L2)/L1×100、(式4)
式中、L1は40cmのマーキング間の元の距離であり、L2は洗浄および乾燥後の距離である。結果は、複数のサンプルについて平均化され、緯糸方向および経糸方向の両方について報告される。1より大きい収縮数は、特定の糸の挙動によって例外的に発生し得る延長を反映する。
【0028】
本発明の好ましい実施形態によれば、特に表側経糸の少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%またはすべてに関して、複数の表側経糸の1つの前記上部分、特にそのほとんどまたはすべての上部分は、1個から5個のピック、好ましくは2個から4個のピックを迂回する。表側経糸の上部分は、典型的なデニム生地光学を実現するためにちょうど3つのピックを迂回することが最も好ましい。他の好ましい実施形態では、デニム生地様光学は、ちょうど2個またはちょうど4個のピックを通過する表側経糸の上部分によって達成することができる。
【0029】
本発明の好ましい実施形態は、少なくとも同じ数の表側経糸および裏側経糸を備える。好ましくは、表側経糸の数は、裏側経糸の数のちょうど2倍またはちょうど3倍である。裏側経糸の数より多い数の表側経糸を使用する場合、表側経糸が布の表面の視覚的外観を支配するように織布を容易に設計することができる。デニムのように見える織布の場合、4つの表側経糸および1つの裏側経糸の繰り返しパターンが選択されることが好ましくなり得る。本発明のさらなる発展形態では、裏側経糸は、特に、裏側経糸よりも多くの表側経糸を有する織布の場合、表側経糸よりも太いか、またはかさばり得る。この場合、少ない数の裏側経糸を使用するにもかかわらず、布の裏面の編み地様挙動を達成することができる。本発明の一実施形態によれば、特に少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはすべての裏側経糸に関して、前記上部分は、複数の裏側経糸のうちの1つ、好ましくはほとんど、またはそれぞれ1つの前記下部分より少ないピックを迂回する。特に、裏側経糸の糸の少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはすべてに関して、上部分の好ましくはほとんどまたはすべては、4つを超えないピック、好ましくはちょうど1つのピックを迂回する。
【0030】
本発明の好ましい実施形態では、特に、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%またはすべての経糸に関して、複数の裏側経糸の1つ、好ましくは複数の裏側経糸のそれぞれ1つまたはほとんどは、少なくとも1つの表側経糸、好ましくは2つの表側経糸にすぐ隣接して緯糸方向に配置される。換言すれば、この好ましい実施形態では、緯糸が表側経糸、次いで裏側経糸、次いで場合によっては別の裏側経糸を迂回する。表側経糸は、特に、隣接する裏側経糸の前に少なくとも部分的に配置される。各裏側経糸に少なくとも1つの表側経糸を緯糸方向にその隣に設けることによって、織布は、その表面に、主として表側経糸を示す構成で作り出され得る。各裏側経糸が2つのすぐ隣接する表側経糸を有する場合、緯糸方向において、裏側経糸の前後の経糸は常に表側経糸である。好ましくは、緯糸方向の裏側経糸の片面または両面の表側経糸の数は1より大きくなることができる。この好ましい実施形態による織布を緯糸方向に考えると、すべてのピックは、常に、少なくとも1つの表側経糸、場合によってはこれより多くを、2つの連続する裏側経糸間に通過させる。
【0031】
本発明によるさらなる展開では、裏側ループ糸の上部分、好ましくは裏側ループ糸の上部分のほとんどまたはすべて、特に裏側ループ糸の上部分の少なくとも1/2または1/3は、緯糸方向にすぐ隣接する表側経糸の少なくとも1つ、好ましくは2つの上部分の後ろに隠される。場合によっては裏側経糸より太い表側経糸を選択することと合わせて、裏側経糸の上部分が、緯糸方向に、隣接する表側経糸の下部分または2つの下部分にすぐ隣接して配置されることがほとんど無いまたは全く無いように織りパターンを選択することにより、本発明のこの好ましい実施形態による織布において、裏側経糸は、これらが上部分を有している場合でも表側経糸によって視界から隠される。そのような構成は、裏側経糸が、表側経糸および/またはピック(または緯糸)とは別の色である場合、例えば、これらが衣服の内側に特定の色を与えるように赤色または緑色になるように選択される場合、特に有利になり得る。そのような布に関して、裏側経糸の上部分のほとんどまたはすべてが、隣接する表糸の1つまたは2つのすぐ隣接する上部分を有するように配置される場合、有利である。
【0032】
表側経糸が、裏側経糸に規則的な、例えば8/1の織りパターンを使用して3/1パターンなどの規則的な織りで緯糸と製織される場合、いつかは、裏側経糸の上部分は、表側経糸の下部分の隣に配置される。これを回避する比較的容易な方法は、例えば、1/9織りを場合によっては1/7織りと合わせて使用することによって裏側経糸の織りパターンに局所的調整を行って、裏側経糸の上部分を、一定の1/8織りパターンが使用される場合に緯糸方向に裏側経糸の上部分にすぐ隣接して配置される表側経糸の下部分からずらすことである。
【0033】
本発明の好ましい実施形態では、特に、表側経糸の少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%またはすべてに関して、複数の表側経糸の1つ、特に複数の表側経糸のほとんどまたはそれぞれ1つの前記下部分、特にほとんどまたはすべての下部分は、特に前記表側経糸の前記上部分のほとんどまたはすべてより少ないピックを迂回する。追加的にまたは代替的に、複数の表側経糸の1つ、特に複数の表側経糸のほとんどまたはすべての前記下部分のすべてまたはほとんどは、4個を超えないピック、好ましくはちょうど1個のピックを迂回する。そのような織りパターンは、布のデニム様の外観を向上させ、表側経糸を、裏側経糸をほとんど知覚できないようにしながら、布の表面に最も顕著に見える経糸として確立する。本発明の好ましい実施形態では、複数の表側経糸の1つの前記下側部分によって迂回されるピックの、前記表側経糸の上部分によって迂回されるピックに対する比は、1:1以下、好ましくは1:2、1:3または1:4である視認比を規定し、この視認比は、表側経糸のそれぞれ1つのすべての下部分に適用される。
【0034】
本発明の上記で述べた第1の態様およびそのすべての実施形態と組み合わせることができる本発明の第2の態様は、織布、特にデニム生地などの経表布に関する。本発明の第2の態様によれば、織布は、表面および裏面と、緯糸方向に延びる複数のピックと、経糸方向に延びる表側経糸および裏側経糸を含むか、またはこれらからなる複数の経糸とを備える。複数の経糸は、経糸方向に延び、ピックをそれらの表側において迂回して上部分を画定し、ピックをそれらの裏側において迂回して下部分を画定し、前記複数の経糸は、表側経糸および裏側経糸を含む。連結点において、表側経糸は、1つまたは複数のピック、好ましくはちょうど1つのピックをその/それらの裏側において迂回する。裏側経糸は、連結点において1つまたは複数の、好ましくはちょうど1つのピックをその/それらの表側において迂回する。
【0035】
本発明の第2の態様によれば、前記表側経糸および前記裏側経糸は、裏側経糸の下部分またはループ部分が前記表側経糸の下部分より緩く延びるように設計されおよび/または製織され、好ましくは異なって設計されおよび/または異なって製織される。裏側経糸の下部分は、湾曲して延びることができ、特に表側経糸の下部分よりも湾曲して延びることができる。表側経糸の下部分は、真っ直ぐに延びることができ、特に裏側経糸の下部分よりも真っ直ぐに延びることができる。緩いループは、下部分またはループ部分を形成する裏側経糸の長さが、前記緩いループの下部分がその間を延びる連結点または上部分間の距離より大きいという点で、織布内で容易に識別される。緩いループに沿った裏側経糸の長さは、好ましくは、前記緩いループがその間を延びる連結点間の距離より少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%または少なくとも100%大きい。1つの緩いループを構成する連結点間の距離は、裏側経糸がその下部分(またはループ部分)から隣接する上部分へと通過するそれらの緯糸のそれぞれの接触面間の距離を測定することによって決定することができる。裏側経糸の緩いループは、織布が織機から取り出された後、または布の最初のまたは最初の数回の洗浄の後に形成され得る。緩いループでは、織機から取り出した後および/または洗浄後のそれぞれの経糸張力は、緩いループを含まない表側経糸よりもずっと小さくなることができる。好ましくは、本発明の第2の態様による織布の表側経糸および/または緯糸内の張力は、特に製織中、および/または布が織機から取り出される前および/または最初の洗浄前、裏側経糸内の張力と少なくとも同じぐらい高く、特に裏側経糸内の張力よりも高い。緩いループの形成は、例えば、表側経糸よりも低い収縮率を有する裏側経糸を選択することによって、および/または例えば裏側経糸よりも高い織り緊密性で表側経糸を製織することによって、達成または強化することができる。
【0036】
上記で説明したような本発明の第1および/または第2の態様と組み合わせることができる本発明の第3の態様は、織布、特にデニム生地などの経表布に関する。本発明の第3の態様による織布は、表面および裏面と、緯糸方向に延びる複数のピックと、経糸方向に延びる複数の経糸とを備える。複数の経糸は、経糸方向に延び、ピックをそれらの表側において迂回して上部分を画定し、ピックをそれらの裏側において迂回して下部分を画定し、前記複数の経糸は、表側経糸および裏側経糸を含む。
【0037】
本発明の第3の態様では、表側経糸および裏側経糸は、表側経糸、特に表側経糸の少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%またはすべてが、特に、それぞれの隣に隣接する表側経糸と横方向に接触し、密接に製織された表側経糸配置を形成するように異なって設計されおよび/または製織される。表側経糸の配置に関して横方向は、緯糸方向を指す。好ましくは、本発明の第3の態様による織布では、表側経糸は、経糸方向にそれらの長さの少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、または全長に沿って互いに一定におよび/または連続的に接触する。ほとんどの織りパターンで自然に発生する、ピックが布の裏面から布の表面まで、隣接する経糸間を進むときはいつでも、互いに横方向に接触している2つの隣接する経糸が、好ましくは規則的な間隔で、それらの接触側の間に緯糸のピックを通過させることが明らかである。緯糸方向の表側経糸の横方向両側(水平の右および水平の左)が緯糸方向にそれぞれのすぐに隣接する経糸と接しているとき、実現された表側経糸配置は、非常に密接に製織され、裏側経糸を布の表側から構造的に隔離しており、特に緯糸方向に互いに隣接する表側経糸は、横方向に互いに接触する。そのような密接に製織された表側経糸配置は、例えば裏側経糸よりも太い表側経糸を使用することにより、または表側経糸を第1の経糸平面内に配置し、裏側経糸を第2の経糸平面内に配置することにより、第1の経糸平面が第2の経糸平面から布の表面に向かってずらされるようにすることによって達成または強化することができる。緯糸方向に互いに隣接する表側経糸は、好ましくは、本発明の第3の態様による織布の最初のまたは最初の数回の洗浄後、互いに接触して横方向に配置される。
【0038】
本発明の第3の態様のさらなる発展形態では、表側経糸は軸方向中心線を有し、表側経糸の軸方向中心線を通って表側経糸の上部分に沿って延びる中央経糸/緯糸面を画定し、裏側経糸のすべては、軸方向中心線を有しており、裏側経糸のほとんどまたはすべては、特に経糸方向のそれらの全延長に沿って中央経糸/緯糸面の裏側を、好ましくは織布の裏側に向かって、経糸方向に垂直および緯糸方向に垂直な太さ方向に延びる軸方向中心線を有する。中央経糸/緯糸面は、経糸方向および緯糸方向に広がっている。特に、表側経糸の上部分によって画定される中央経糸/緯糸面は、本発明の第3の態様の織布が織機上にあるときおよび/または張力が経糸方向に織布に加えられたときに特に明確である。
【0039】
通常、本発明による織布用の経糸および緯糸を選択することから、多種多様な材料を選択することができる。
【0040】
織布の幅および/または弾性を変更するために、所定の収縮率および/または弾性のピック(緯糸)を選択することができる。これにより、製造者は、緯糸方向の弾性および布の幅を予め決定することができる。
【0041】
製織後であるが、洗浄する前に、本発明による布は、好ましい実施形態では、布が15から100経糸/cmの間の経糸密度を含むように製織され得る。製織後であるが、洗浄する前に、本発明による布は、1つの好ましい実施形態では、約2から60緯糸/cmの間の緯糸密度を含む布構造を有することができる。特に緩い織りの第1の好ましい範囲は、約2から20緯糸/cmの間の緯糸密度を有することができる。第2の好ましい布は、10から60緯糸/cmの緯糸密度を含むことができる。
【0042】
本発明の好ましい実施形態では、緯糸は、およそNe4からNe69の間(約55から1350デニール)の英国綿番手(English cotton number)を有する糸から選択することができる。本発明の好ましい実施形態では、表側経糸は、20±5または20±2、特にちょうど20の英国綿番手を有し、裏側経糸は、30±5または30±2、特にちょうど30の英国綿番手を有する。本発明の好ましい実施形態では、経糸は、およそNe6からNe60(約80から900デニール)の間の英国綿番手を有する糸から選択することができる。糸は、例えば、デニール(den)システムを使用するか、または英国綿番手(Ne)を使用して分類することができる。デニールナンバリングシステムは合成繊維に最も頻繁に使用されるが、英国綿番手は、通常、綿などに使用され、当業者は1つのナンバリングシステムを他のナンバリングシステムに変換する方法を知っているであろう。
【0043】
本発明による織布は、次の材料:綿、ポリエステル、ビスコース、アクリル、ウール、リネン、シルク、レーヨンおよびそれらの組合せから選択される経糸を有することができ、またナイロン、PBT、二成分、スパンデックス、T400などのエラストマーまたは非エラストマー基を含むこともできる。
【0044】
本発明の好ましい実施形態では、経糸は、未加工、硫黄、染色、反応染色、インディゴ(リング)染色、顔料染色、直接染色、インダスレン染色、酸染色、天然染色などの糸から選択することができる。好ましくは、裏側経糸材料は、着色されたまたは生の綿のライクラとすることができる。表側経糸の材料は、好ましくは、綿のライクラまたは綿のデュアルコア(より良い回復のための綿、ライクラおよびポリエステルの組合せ)である。表側経糸および/または裏側経糸のための好ましいエラスタン材料は、Invista社のLycra(登録商標)および/またはBayer AG社のDorlastan(登録商標)である。特に、表側経糸はインディゴ(リング)染色される。好ましくは、裏側経糸および/またはピック(緯糸)は、インディゴ染色されず、特に未染色である。
【0045】
織布は、好ましくは繊維品、好ましくは衣料品に含まれる本発明の第1、第2または第3の態様によるものである。本発明の好ましい実施形態は、本明細書に説明する経表織布の少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%または90%、好ましくはすべてを含むか、これらで構成する衣料と、ジッパー、ボタン、リベットなどの非繊維部材とを有する衣服または製品に関する。
【0046】
本発明はまた、織布、好ましくはデニム生地などの経表布を製造するための方法に関する。本方法は、好ましくは、上記で述べたような第1、第2および/または第3の態様またはその好ましい実施形態における本発明による織布を製造するために使用することができる。本発明による方法は、ピックを製織するための少なくとも1つの緯糸および経糸を提供するステップと、経糸がピックをそれらの表側において迂回して上部分を形成し、ピックをそれらの裏側において迂回して下部分を形成するように布を製織するステップであって、複数の表側経糸および裏側経糸は、表側経糸の下部分が裏側経糸の下部分より少ない数のピックを迂回するように実現される、製織するステップと、好ましくは織布を収縮させるステップであって、ループ糸の下部分は布の裏面にループを形成する、収縮させるステップとを含む。緯糸を提供するステップは、少なくとも1つの糸の緯糸の提供を含むものとするが、経糸を通って製織された2つ以上の糸の緯糸の提供を含むこともできることが明らかである。上記の説明はピックを迂回するものとして経糸を説明しているが、製織中、緯糸の個々のピックが織機に取り付けられた経糸を通って移動することが明らかである。したがって、「迂回する」という用語は、本明細書では、経糸および緯糸の互いに対する動きに関連するものではなく、生み出される織布の構造に関して使用されることが明らかである。
【0047】
本発明による方法の好ましい実施形態では、経糸を提供するステップは、特に、表側経糸が裏側経糸と少なくとも同じ収縮率、好ましくは裏側経糸より大きい収縮率を有するように、表側経糸の材料について裏側経糸とは異なって選択することを含む。収縮率の差は、特に上記で説明したように選択することができる。
【0048】
本発明による方法の好ましい実施形態では、布は、表側経糸が製織中および/または収縮中に、裏側経糸の表側に少なくとも部分的に配置されるように製織される。換言すれば、本発明による織布を製造するための方法は、裏側経糸が、それらが依然として織機上にある間、特に布の太さ方向に表側経糸の後ろに(または表側経糸に対して布の裏側に向かって)配置されるように実現され得る。裏側経糸および表側経糸は、それらが依然として織機上にある間、本質的に同じ平面内に配置されるが、織布が織機から取り出された後、好ましくは収縮中、表側経糸が裏側経糸の表側に少なくとも部分的にあるように配置されることも可能である。
【0049】
本発明による好ましい方法では、布は、織布が織機から取り出された後、好ましくは織布を洗浄および/または仕上げする前に、織布が2緯糸/cmから60緯糸/cmの間の緯糸密度を有するように製織される。特に緩い織布の場合、布は、2緯糸/cmから20緯糸/cmの間の緯糸密度を有するように製織され得る。比較的高密度の布は、10緯糸/cmから60緯糸/cmの間の緯糸密度を有するように製織され得る。
【0050】
上記で説明した方法と組み合わせることができる本発明による方法の別の態様では、織布、好ましくはデニム生地などの経表布、特に上記で説明したような布を生み出すために、次のステップ:ピックを製織するための少なくとも1つの緯糸および経糸を提供するステップと、経糸がピックをそれらの表側において迂回して上部分を形成し、ピックをそれらの裏側において迂回して下部分を形成するように布を製織するステップであって、複数の表側経糸および裏側経糸がその中で実現される、製織ステップとを使用する。本発明のこのさらなる態様による方法では、経糸は選択されおよび/または製織され、好ましくは表側経糸は、裏側経糸とは異なるように選択されおよび/または製織され、それにより、裏側経糸の前記下側部分は、特に最初のまたは最初の数回の洗浄後、表側経糸の下部分より緩くなり、好ましくは前記裏側経糸の連結点の間の裏面に延びるループを形成する。例えば、表側経糸および裏側経糸を異なる引張張力で製織することによってループを形成することができ、その結果、経糸方向にドラフト比を有する織布が得られる。製織中の経糸の引張張力は、例えば、1つまたは複数の経糸を引っ張るための、1つまたは複数の経糸がそれに沿って進む個々のローラを使用して設定され得る。製織中の経糸の引張張力は、代替的には、例えば、表側経糸を裏側経糸とは異なる(低い)速度で織機に提供することによって設定され得る。
【0051】
さらに別の態様では、本発明は、上述の方法のいずれか1つと組み合わせることができる、好ましくは特に上記で説明したようなデニム布などの経表布である織布を製造するための方法であって、:ピックを製織するための少なくとも1つの緯糸および経糸を提供するステップと、経糸がピックをそれらの表側において迂回して上部分を形成し、ピックをそれらの裏側において迂回して下部分を形成するように布を製織するステップであって、複数の表側経糸および裏側経糸が実現される、方法に関する。本発明のこの態様による方法では、経糸は選択されおよび/または製織され、好ましくは表側経糸は、裏側経糸とは異なるように選択されおよび/または製織され、それにより、表側経糸、好ましくは表側経糸の少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、またはすべては、密接に製織された表側経糸配置を形成し、裏側経糸を布の表面から構造的に隔離しており、特に緯糸方向に互いに隣接する表側経糸は、横方向に互いに接触する。
【0052】
本発明の上述の態様のすべてに関して、経糸に関する「設計」という用語は、英国綿番手、デニール数、太さ、重量、材料、材料組成、弾性、収縮率などのその材料特性に関連することができる。その設計に応じて、経糸を選択することができる。
【0053】
本発明による布では、布全体が、上記で説明したような表側経糸および裏側経糸のみからなる経糸を含む場合に、最も好ましい結果が達成されることが明らかである。しかし、本明細書に説明するような表側経糸および/または裏側経糸の数がより少ない織布は、限定された範囲であるものの、本発明によってもたらされる効果から利益を得ることができる。織布の経糸は、表側経糸および裏側経糸の少なくとも80%または少なくとも90%までを構成する。織布の経糸が、表側経糸および裏側経糸の少なくとも75%までしか構成しない場合は、好ましさは小さくなる。
【0054】
同様に、布が製織される場合、布は、表側経糸および裏側経糸の上部分および下部分が一定または少なくとも周期的に繰り返される織りパターンで配置される一定の織りパターンを有することが好ましい。したがって、織布は、主に、すなわち少なくとも50%まで本明細書に説明するように配置された下部分および上部分を有する経糸を含むことが好ましい。すなわち、裏側経糸の下部分および上部分の大部分は、本明細書に説明するようにピックに関して配置されるものとする。同様に、表側経糸の上部分および下部分のすべてではないにしてもそのほとんどが、ピックに関して本明細書で説明したように配置されることが好ましい。
【0055】
さらなる実施形態、特徴および技術的側面は、従属請求項に説明される。本発明の好ましい実施形態のさらなる詳細が、添付の図面に示される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図2a】
図1の織布の裏面上の異なる斜視図である。
【
図4a】収縮後の本発明による織布の一実施形態の表面への斜視図である。
【
図4b】
図4aによる織布の裏面上の斜視図である。
【
図5a】緯糸方向の
図1による織布の概略断面図である。
【
図5b】収縮後の
図6aに示す織布の緯糸方向の断面図である。
【
図6a】緯糸方向の本発明による織布の概略断面図である。
【
図6b】収縮後の
図6aに示す織布の緯糸方向の断面図である。
【
図7】
図1による経表織布の織りパターンを示す図である。
【
図8】本発明による経表織布の織りパターンの実施形態を示す図である。
【
図9】本発明による経表織布の織りパターンの実施形態を示す図である。
【
図10】本発明による織布の織りパターンの実施形態を示す図である。
【
図11】表側経糸が平織りの外観をもたらす、本発明による織布の織りパターンの実施形態を示す図である。
【
図12】本発明による織布の織りパターンの実施形態を示す図である。
【
図13】本発明による織布の織りパターンの実施形態を示す図である。
【
図14】本発明による織布の織りパターンの実施形態を示す図である。
【
図15】本発明による織布の織りパターンの実施形態を示す図である。
【
図16】本発明による織布の織りパターンの実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本発明の好ましい実施形態の以下の説明において、本発明による実施形態の同一または類似の要素を指すために、同じまたは類似の参照番号を指定することができる。
【0058】
図1から
図3、
図5a、
図5bおよび
図7は、本発明による経表織布1の同じ実施形態の種々の図を示す。
図1は、織布1の表面2上の図を示しているが、
図2は、織布1の裏面3を示している。
図2a、
図6aおよび
図6bでは、第1の可視ピック6*または6’’’は、本発明に関する説明を簡単にするために、説明目的のみで黒で示されている。ピック6*または6’’’の黒色の強調表示は、強調表示されたピックが、特にその色または6*もしくは6’’’に選択された材料ではない他のピック6と有意に異なることを特に示すものではない。
【0059】
図1から
図3に示す経表織布1は、ピック6と、表側経糸4と、ループ経糸と呼ぶこともできる裏側経糸5とからなる。織布1は非常に規則的な織りパターンを有しており、表側経糸4は、デニムに非常に一般的である3/1からだ織りが実現されるようにピック6と製織される。図示する布1では、
図2aに強調されているピック6*などのピック6に沿って進むと、3つの連続する表側経糸4がピック6*の表側62に配置され、4番目の連続する表側経糸は、ピック6*の裏側63に配置されている。このパターンはピック6*に沿って繰り返される。ピック6*も裏側経糸5の上に延びているが、9番目の各裏側経糸5のみが、ピック6*の表側62に配置されている。
【0060】
表側経糸4が1つまたは複数のピック6の表側を迂回するときはいつも、前記表側経糸4は、いわゆる上部分43を画定する。表側経糸4がピック6の裏側63を迂回するときはいつも、前記表側経糸4は、いわゆる下部分41を実現する。
【0061】
裏側経糸5が1つまたは複数のピックの表側62を迂回するときはいつも、前記裏側経糸5は、上部分53を画定する。裏側経糸5がピック6の裏側63を迂回するときはいつも、前記裏側経糸5は、下部分51またはループ部分を実現する。
【0062】
図1から
図3に示す織布1では、裏側経糸5はすべて、緯糸方向に、表側経糸4によって隣接されている。さらに、表側経糸4および裏側経糸5のパターンは規則的な2/1パターンであり、それにより、緯糸方向において、各ピック6は2つの連続する表側経糸4、次いで1つの裏側経糸5を迂回する。
図1を見ると、裏側経糸5が経表織布1内でほとんど見えないことが容易に認識される。その理由は、これらは、最大量において、表側経糸4およびピック6の後ろに隠されるからである。めったに発生しないループ-上部分53においてのみ、裏側経糸5は織布1の表面2に見える。
【0063】
他方で、織布1の裏面3は、ほとんどがループ経糸5を示し、その一方で表側経糸4は、ほとんど知覚されないままであり、表側経糸-下部分41のみにしか見ることはできない。しかし、布1の裏面3は、裏側経糸5の下部分51またはループ部分から最大限作製される。裏側経糸5の下部分51は、表側経糸4の下部分41よりもはるかに大きいことが注目される。裏側経糸5の下部分51はまた、裏側経糸5の上部分53よりもはるかに大きい。
図2、特に5*として示されている経糸(ただし他の点では他の裏側経糸5とは異ならない)を見ると、ループ部分51が8個のピック6をそれらの裏側63において迂回することが明らかになる。2つの隣接する裏側経糸の下部分51の間では、裏側経糸5(5*)は、その表側62において単一の緯糸6を迂回し、連結部分と呼ばれ得る上部分53を形成する。
【0064】
図2bおよび
図1、特に4’または4*として示されている表側経糸(ただし他の点では他の表側経糸4とは異ならない)を見ると、各表側経糸4がその表側62において3つの連続するピック6を迂回し、次いで、1つだけのピック6をその裏側63において迂回することを見ることができる。ピック6に対する表側経糸4のこの配置は、表側経糸4が、下部分41より大きい上部分43を有する織りパターンを作り出す。しかし、表側経糸4の上部分43は、裏側経糸5の下部分51よりも小さい。下部分または上部分のサイズに関する用語「より大きい」は、本明細書では、経糸4または5のそれぞれの下部分または上部分によって迂回されるピック6の数に関して使用される。
【0065】
図に示す経糸4、5のすべては完全に真っ直ぐに延びているが、これらは、織機にもはや取り付けられていない、または経糸方向に引張張力がかけられていない織布ではそのように延びないため、
図1から3は概略的であると理解されるものとすることが明らかである。織布が織機から取り外されるとすぐに、経糸は、ピックに対してほぼ正弦波の経路を画定し、それにより、実際の織布のピックおよび経糸の両方は、いくらかの正弦波経路を有する。
図1から3に示す真っ直ぐな経糸は、本発明のより良い理解のための概略的な単純化であると理解されるものとする。
【0066】
図3では、中央経糸/緯糸面Cが示されており、これは、表側経糸4の中心軸Aによって画定されている。表側経糸4は布の表面2に配置され、一方で裏側経糸5は、その軸Bを中央経糸/緯糸面の後ろにして裏面3に向けて配置される。人が布1の表面2に向かって見ると、ピック6および表側経糸4のみが知覚でき、一方で裏側経糸5は、表側経糸4およびピック6の後ろに隠されている。本発明による織布1において、
図1から
図3に示す実施形態によるループ経糸5は、裏側経糸5の上部分53よりもはるかに大きく、さらに表側経糸4の上部分43よりも大きい下部分51を有するという事実により、ピック6および表側経糸4は、裏側経糸5を布1の裏面3に向かって押し付ける。緯糸方向および経糸方向に延び、その太さ方向Tに関して織布1の中心に配置された中央面Cに関して、裏側経糸5は、布の裏面3に向かって、中央面Cの後ろに配置され、一方で表側経糸4は、布の表面2に向かって配置され、その上部分43内のそれらの軸方向軸Aの延長部を通る中央経糸/緯糸面Cを画定する。太さ方向または横断方向Tは、緯糸方向Hの水平に垂直に延び、垂直方向または経糸方向Vに垂直に延びる。
【0067】
経糸方向に織布1を見ると、所定の数のピック、例えば36個のピックに関して、表側経糸4の上部分43および下部分41の総数は、裏側経糸5の下部分51および上部分53よりも多い。これは、表側経糸4がループ経糸5の下部分51に対して相対的に短い上部分43を有する一方で、裏側経糸の上部分53のサイズおよび表側経糸の下部分41サイズが1に等しいという事実によるものである。したがって、36本の(経糸方向に単位長さを規定する)緯糸のサンプルについて、各ループ糸5は、4つの下部分51および4つの上部分53を有し、一方で各表側経糸4は9つの下部分41および9つの上部分43を有する。単一の経糸(4または5)の、その経糸(4または5)によって通過されるピック6に対する下部分および上部分の総数の関係を使用して、経糸の織り緊密性を決定することができる。
図1から3に示すような織布1の場合、表側経糸の織り緊密性は、1/2((9+9)/36)であり、一方で裏側経糸5の織り緊密性は約0.22((4+4)/36)である。織布が織機から取り出されたとき、織布は特定の収縮を受ける。その理由は、上記で説明したように、経糸は、そのほぼ完全に真っ直ぐな配向からほぼ正弦波の経路に変化するためである。この効果による収縮は、織り緊密性に依存して増加する。
【0068】
本発明の一実施形態による織布1では、表側経糸4は、好ましくは、これらが裏側経糸5よりも大きな織り緊密性を有するように製織され、それにより、織布が織機から取り出されたとき、裏側経糸5は、表側経糸に関して弛緩し、布の裏面3において下部分51とループを形成することができる。これらのループは、織布1の裏面3に編み地様の視覚的外観および感触を作り出す。
【0069】
図4aは表面の斜視図を示し、
図4bは、洗浄後の織布10の裏面3上の斜視図を示す。
図4aおよび
図4bの織布10と
図1から3の織布1との主な相違点は、裏側経糸5の太さが表側経糸4の太さよりも小さいことである。説明のためだけに、表側経糸4は黒色にされている。
【0070】
図4aおよび
図4bでは、織布10は洗浄されており、そのため、表側経糸4および裏側経糸5は、そのそれぞれの収縮率に従って収縮している。表側経糸4の収縮率は、裏側経糸5の収縮率と少なくとも同じ大きさであり、大きくなることもできる。表側経糸4の織り緊密性は、ループまたは裏側経糸5の織り緊密性よりも高く、表側経糸4の収縮率は裏側経糸5の収縮率よりも大きいため、布を洗浄することによる収縮プロセスの結果、裏側経糸は、それらの下部分51と共に布の裏面の裏側に緩いループを形成する。これらの緩いループは、経表織布10の着用者に柔らかい編み地様の感触を提供する。
【0071】
これは、
図4aおよび
図4bの概略図では直接明らかではないが、裏側経糸5がより太い表側経糸4より細いことにより、表側経糸4が裏側経糸5を、布10の表面2を見る人から隠す効果を強化し、それによって布10のデニム様外観を向上させる。布10の裏側経糸5は、緯糸6および表側経糸4を介して布の表面2から隔離されている。
【0072】
図5aおよび
図5bは、緯糸方向の経表織布1の断面図を示す。上記で説明したように、表側経糸4は、ピック6と製織されて3/1織りパターンを実現する。換言すれば、表側経糸4は、3つのピック6をそれらのそれぞれの表側62で迂回する上部分43を含む規則的なパターンで製織される。隣り合う2つの上部分43間では、表側経糸は、1つでピック6をその裏側63上で迂回して、下部分41または連結点を形成する。
【0073】
裏側またはループ経糸5は、1/8パターンで製織されており、それにより、裏側経糸5が1つのだけのピック6を迂回する2つの隣接する上部分53間では、裏側経糸5は、8つのピックをそれらの裏側63において迂回する。
【0074】
図1から
図3の場合と同様に、
図4aおよび
図4bの表側経糸4および裏側経糸5の両方は、常に規則的な織りパターンで配置される。表側経糸4に関して4つのピックごとおよび裏側経糸5に関して9つのピックごとを繰り返すこの非常に規則的なパターンにより、36番目のピックごとに、緯糸方向に表側経糸4の下部分41にすぐ隣接する裏側経糸の上部分53を有して、可視スポット71を形成する。そのような視認スポット71では、裏側経糸は、布1の表面2上で比較的見える。残りの裏側経糸の上部分53は、緯糸方向にすぐ隣接する表側経糸4が上部分43を形成するように配置され、それによって隠されたスポット73が形成される。そのような隠されたスポット73では、裏側経糸5がピック6の表側62を通過するが、緯糸方向にすぐに隣接する表側経糸4は、
図4aおよび4bの実施形態のように、特に裏側経糸5が表側経糸より細い場合、裏側経糸5を隠すことができる。
【0075】
図に示さない本発明の好ましい実施形態では、織布は、可視スポット71が形成されないように配置された表側経糸4および裏側経糸5を有する。これは、表側経糸4または好ましくは裏側経糸5の織りパターンが一定でないことを必要とする。
図5aおよび
図5bに示す実施形態では、例えば、可視スポット71は、例えば、裏側経糸5の織りパターンを、局所的に織りパターンが、一定の8/1ではなく、1つのすぐ隣接する9/1織りパターンを有する1つの7/1織りパターンであるように局所的に調整することによって回避され得る。共通倍数の発生を回避する他の変形も可能である。例えば、可視スポット71は、3つの連続する8/1織り、次いで1/9織りを含む規則的な織りパターンを有する裏側経糸5’を使用することによって回避することができる。
【0076】
図6aおよび
図6bは、織布1または10と同様に、表側経糸4、裏側経糸5およびピック6からなる、本発明の第2の実施形態による概略的な織布100を示す。
図5aは、収縮前の織布100を示し、
図5bは、収縮後、例えば織布100を最初にまたは最初の数回洗浄した後の同じ織布100を示す。
図6aおよび
図6bに示す織布100では、表側経糸4は、裏側経糸5よりもはるかに大きな織り緊密性を有する。表側経糸4の織り緊密性は1である。その理由は、表側経糸4の上部分43および下部分41はいずれも1のサイズであり、表側経糸4は、1つのピック6から次まで上下するためである。表側経糸4は、常に、1つのピック6の裏側63を通過し、次いで、次のピック6の表側62を通過する。
【0077】
他方で、織布100の裏側経糸5は、2つの隣接する上部分53間で9つの連続するピック6を迂回して下部分51を画定し、それにより、0.20の織り緊密性が達成される。表側経糸4および裏側経糸5のこれらの織り緊密性それ自体により、著しく異なる総収縮をすでにもたらし、したがって織布100の裏面3にループ51を形成する。
【0078】
さらに、織布100に関して、表側経糸4および裏側経糸5に異なる収縮率を有する異なる材料が使用される。経糸のこの収縮率は、本質的には、単一の経糸の長さの洗浄前に対する、洗浄後のその経糸の長さの率である。表側経糸4が裏側経糸5より大きい収縮率を有する場合、織布100を最初にまたは最初の数回洗浄したとき、表側経糸4は裏側経糸5よりも著しく収縮し、それによって織布100の裏面3における経糸ループの形成を促進する。
図1から
図3に関連して上記で説明した織布1もまた、表側経糸4およびループ経糸5について異なる収縮率を有する異なる材料を有することができることは明らかである。異なる織り緊密性だけですでに垂れ下がった経糸ループ51が形成されているので、表側経糸4およびループ経糸5がほぼ同じ収縮率を有することで通常は十分である。
【0079】
以下の表は、本発明による織布を実現するための表側経糸、裏側経糸および緯糸の好ましい組合せのリストを含む。言及された英国綿番手Neは、すべての等価の測定単位に関連して理解されるものとする。
【表1】
【表2】
【0080】
図7~
図16は、本発明による織布の異なる実施形態を参照した織り報告を示す。織り報告では、水平線は連続するピックを表し、垂直列は個々の経糸を表し、ここで「経糸1」は表側経糸を示し、「経糸2」は裏側経糸を示す。経糸の上部分は白く示され、下部分は陰影で示されている。個々のピックは、1つまたは複数の緯糸によって形成され得る。
【0081】
図7の織り報告は、
図1から
図3に関連して上記で示し説明した織布に関する。
図8の織り報告は、
図7に示すものと非常に類似した織り構造に関するものであり、その違いは、
図7と比較して、表側経糸(4)の下部分(41)が、斜めウェールが上向きではなく下向きに延びるように配置されていることである。
【0082】
図9は、
図8および
図9に示すものとは異なる織り報告を示しており、表側経糸(4)の上部分(43)は、2つのすぐ隣接する表側経糸(4)が、1つのピックによって経糸方向に互いから離された下部分(41)を有するように配置される。
【0083】
図10に示す織り報告は、
図7に示すようにピック(6)に対して製織された表側経糸(4)を有する。しかし、表側経糸(5)は、2つの隣接する上部分(53)間で11個のピック(6)をそれらの裏側において迂回するより大きい下部分を有する。
【0084】
図11は、平織りに非常に類似して見える表面を有する本発明の一実施形態による布に関する。表側経糸は1/1のパターンで製織され、裏側経糸は1/8のパターンで製織されて緩いループ部分を形成する。緯糸方向において、布は、1つの裏側経糸および2つの表側経糸からなる繰り返しパターンを有する。
【0085】
図12の織り報告は、表側経糸が2つの連続するピック上に広がる上部分と、1つのピックを迂回する下部分とを有し、裏側経糸が、8つの連続するピックをそれらの裏側において迂回するループ部分と、1つのピックを迂回する上部分(連結点)とを有する、織布に関する。
【0086】
図13は、裏側経糸が、7つのピックを迂回するループ部分と、1つのピックを迂回する上部分(連結点)とを有する織り報告を示す。
図13に示す織り報告は、表側経糸が2種類の表側経糸を含むという点で、他の織り報告とは異なる。第1のタイプの表側経糸(1A)は、4/1/2/1の織りパターンを有し、第1の大きな上部分は4つのピックを迂回し、第2の小さい上部分は2つのピックを迂回している。第1のタイプのピックの下部分は、単一のピックを迂回する。第2のタイプ(1B)の表側経糸もまた、1つのピックを迂回する下部分を有するが、1つのタイプだけの非常に大きい上部分が7つのピックを迂回している。
【0087】
図14は、
図12のものに類似する布の織り報告を示しており、表側経糸は2つのピックを迂回する上部分と、1つのピックを迂回する下部分とを有する。裏側経糸は、1つのピックを迂回する2つの上部分の間で11個のピックを迂回するループ部分を画定する。
図14に示す織り報告では、経糸方向に、2つの表側経糸に続いて1つの裏側経糸が存在する。
【0088】
図15では、織り報告は、2つの裏側経糸間に緯糸方向に3つの連続する表側経糸を有する布に関する。表側経糸の上部分は、3つのピックを迂回する。裏側経糸の下部分は、11個のピックを迂回する。
【0089】
図16では、1つだけの表側経糸が、2つの隣接する裏側経糸間にすぐ隣接して配置される。
図15と同様に、裏側経糸は、11個のピックを迂回する下部分を有し、表側経糸は、3つピックを迂回する上部分を有する。
【0090】
上記の説明、図および特許請求の範囲に開示する特徴は、その異なる実施形態を個々に、任意の組合せとして実現するために重要になり得る。
【符号の説明】
【0091】
1、10、100 織布
2 表面
3 裏面
4、4*、4’ 表側経糸
5、5*、 裏側経糸
6、6*、6’’’ ピック
41、51 下部分
43、53 上部分
62 表側
63 裏側
71 可視スポット
73 隠されたスポット
A 軸方向の表側経糸中心線
B 軸方向の裏側経糸中心線
C 中央面
H 緯糸方向
V 経糸方向
T 厚さ方向
【外国語明細書】