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特開2024-45136金属セラミック基板を製造する方法、はんだシステム、およびその方法で製造された金属セラミック基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045136
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】金属セラミック基板を製造する方法、はんだシステム、およびその方法で製造された金属セラミック基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/00 20060101AFI20240326BHJP
   B23K 35/14 20060101ALI20240326BHJP
   C04B 37/02 20060101ALI20240326BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240326BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H05K3/00 R
B23K35/14 A
C04B37/02 B
H05K1/03 610D
H01L23/12 D
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023221218
(22)【出願日】2023-12-27
(62)【分割の表示】P 2022521333の分割
【原出願日】2020-10-02
(31)【優先権主張番号】102019126954.7
(32)【優先日】2019-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】515063390
【氏名又は名称】ロジャーズ ジャーマニー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Rogers Germany GmbH
【住所又は居所原語表記】Am Stadtwald 2, D-92676 Eschenbach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100116322
【弁理士】
【氏名又は名称】桑垣 衛
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、カルステン
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ブリッティング、シュテファン
(57)【要約】
【課題】金属セラミック基板を製造する方法、はんだシステム、およびその方法で製造された金属セラミック基板を提供する。
【解決手段】金属セラミック基板1を製造する方法は、セラミック層10、金属層20、およびはんだ層30を供給する工程と、セラミック層10および/または金属層20および/またははんだ層30を活性金属層40でコーティングする工程と、セラミック層10と金属層20との間に、はんだ層30を積層方向Sに沿って配置することで、はんだシステム35を形成する工程と、はんだシステム35を介して金属層20をセラミック層10に接合する工程と、を備える。活性金属層40の第1の厚さD1は、150nmから750nmの間であり、はんだ層30の第2の厚さD2に対する活性金属層40の第1の厚さD1の割合は、0.003から0.5の間である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属セラミック基板(1)を製造する方法であって、
1つ以上のセラミック層(10)、1つ以上の金属層(20)、および特に1つ以上のはんだ箔の形状の1つ以上のはんだ層(30)を供給する工程と、
1つ以上の前記セラミック層(10)および/または1つ以上の前記金属層(20)および/または1つ以上の前記はんだ層(30)を1つ以上の活性金属層(40)でコーティングする工程と、
1つ以上の前記セラミック層(10)と1つ以上の前記金属層(20)との間に、1つ以上の前記はんだ層(30)を積層方向(S)に沿って配置することで、1つ以上の前記はんだ層および1つ以上の前記活性金属層(40)を備えるはんだシステム(35)を形成する工程と、
活性はんだ処理によって、前記はんだシステム(35)を介して1つ以上の前記金属層(20)を1つ以上の前記セラミック層(10)に接合する工程と、を備え、
製造された前記金属セラミック基板(1)における1つ以上の前記金属層(20)は、電気部品の導体トラックまたは接続領域を形成するよう構造化され、
前記はんだ層(30)のはんだ材料は、AgCuIn、AgCuGa、CuIn、CuGa、CuInSn、CuGaSn、CuNi、CuNiMn、又はNiCrMnであり、
1つ以上の前記活性金属層(40)の第1の厚さ(D1)は、150nmから750nmの間であり、
前記はんだ層(30)の第2の厚さ(D2)に対する前記活性金属層(40)の第1の厚さ(D1)の割合は、0.003から0.5の間である方法。
【請求項2】
前記はんだ層(30)のはんだ材料は、CuIn、CuGa、CuInSn、CuGaSn、CuNi、CuNiMn、又はNiCrMnである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1つ以上の前記活性金属層(40)の第1の厚さ(D1)は、200nmから500nmの間の値を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記活性はんだ処理は、10-2mbar(1Pa)未満、好ましくは10-3mbar(10-1Pa)未満、より好ましくは10-4mbar(10-2Pa)未満の圧力で、および/またはプロセスガスを使用して実行され、
および/または、1つ以上の前記活性金属層(40)は、蒸着処理によっておよび/またはガルバニ電流によって配置される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
金属セラミック基板(1)を製造する方法であって、
1つ以上のセラミック層(10)、1つ以上の金属層(20)、および特に1つ以上のはんだ箔の形状の1つ以上のはんだ層(30)を供給する工程と、
1つ以上の前記セラミック層(10)および/または1つ以上の前記金属層(20)および/または1つ以上の前記はんだ層(30)を1つ以上の活性金属層(40)でコーティングする工程であって、前記活性金属層が前記はんだ層と前記セラミック層との間に配置される工程と、
1つ以上の前記セラミック層(10)と1つ以上の前記金属層(20)との間に、1つ以上の前記はんだ層(30)を積層方向(S)に沿って配置することで、1つ以上の前記はんだ層および1つ以上の前記活性金属層(40)を備えるはんだシステム(35)を形成する工程と、
活性はんだ処理によって、前記はんだシステム(35)を介して1つ以上の前記金属層(20)を1つ以上の前記セラミック層(10)に接合する工程と、を備え、
前記はんだ層(30)のはんだ材料は、AgCuIn、AgCuGa、CuIn、CuGa、CuInSn、CuGaSn、CuNi、CuNiMn、又はNiCrMnであり、
1つ以上の前記活性金属層(40)の第1の厚さ(D1)は、150nmから750nmの間であり、
前記はんだ層(30)の第2の厚さ(D2)に対する前記活性金属層(40)の第1の厚さ(D1)の割合は、0.003から0.5の間である方法。
【請求項6】
前記はんだ層(30)の第2の厚さ(D2)に対する前記活性金属層(40)の第1の厚さ(D1)の割合は、0.015から0.2の間、より好ましくは0.03から0.14の間の値を有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
1つ以上の前記活性金属層(40)は前記積層方向(S)に沿ってその組成が変化している、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
1つ以上の前記はんだ層(30)および/または1つ以上の前記活性金属層(40)は、特にはんだシステム(35)として、好ましくは圧延後の前記活性金属層(40)の第1の厚さ(D1)が750nm未満、より好ましくは500nm未満の値を有するように圧延される、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
さらなる活性金属層が供給され、前記はんだ層(30)は、前記活性金属層(40)と前記さらなる活性金属層との間に配置される、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記セラミック層(10)は前記活性金属層(40)でコーティングされ、1つ以上の前記金属層(20)は前記はんだ層(30)でコーティングされる、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
1つ以上の前記金属層(20)は、1mmよりも大きい、好ましくは1.3mmよりも大きい、より好ましくは1.5mmよりも大きい層厚さを有する、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
1つ以上の前記活性金属層(40)は、1つ以上の保護層(41)により覆われており、
前記保護層(41)は、銅、ニッケル、インジウム、銀、クロム、または窒化チタンにより形成されている、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の方法のはんだシステム(35)であって、前記はんだシステム(35)は、特に1つ以上のはんだ箔の形状の1つ以上のはんだ層(30)と、1つ以上の活性金属層(40)とを備えるはんだシステム(35)。
【請求項14】
方法によって製造された金属セラミック基板(1)であって、
1つ以上のセラミック層(10)、1つ以上の金属層(20)、および特に1つ以上のはんだ箔の形状の1つ以上のはんだ層(30)を供給する工程と、
1つ以上の前記セラミック層(10)および/または1つ以上の前記金属層(20)および/または1つ以上の前記はんだ層(30)を1つ以上の活性金属層(40)でコーティングする工程と、
1つ以上の前記セラミック層(10)と1つ以上の前記金属層(20)との間に、1つ以上の前記はんだ層(30)を積層方向(S)に沿って配置することで、1つ以上の前記はんだ層および1つ以上の前記活性金属層(40)を備えるはんだシステム(35)を形成する工程と、
活性はんだ処理によって、前記はんだシステム(35)を介して1つ以上の前記金属層(20)を1つ以上の前記セラミック層(10)に接合する工程と、を備え、
前記はんだ層(30)のはんだ材料は、AgCuIn、AgCuGa、CuIn、CuGa、CuInSn、CuGaSn、CuNi、CuNiMn、又はNiCrMnであり、
1つ以上の前記活性金属層(40)の第1の厚さ(D1)は、150nmから750nmの間であり、
前記はんだ層(30)の第2の厚さ(D2)に対する前記活性金属層(40)の第1の厚さ(D1)の割合は、0.003から0.5の間である前記方法によって製造された金属セラミック基板(1)。
【請求項15】
1つ以上の前記活性金属層(40)は、1つ以上の保護層(41)により覆われており、
前記保護層(41)は、銅、ニッケル、インジウム、銀、クロム、または窒化チタンにより形成されている、請求項14に記載の金属セラミック基板(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属セラミック基板を製造する方法、その方法のはんだシステム、およびその方法で実現される金属セラミック基板に関する。
【背景技術】
【0002】
金属セラミック基板は、例えば、プリント回路基板または回路基板として、例えば、特許文献1、特許文献2および特許文献3により、従来技術から周知である。通常、電気部品と導体トラックとの接続領域は、金属セラミック基板の部品側に配置され、電気回路を形成するように電気部品と導体トラックを相互に接続することが可能である。金属セラミック基板の必須の構成要素は、好ましくはセラミック製の絶縁層、および該絶縁層に接合された1つ以上の金属層である。比較的高い絶縁強度により、セラミック製の絶縁層は、パワーエレクトロニクスにおいて特に効果的であることが実証されている。金属層を構造化することにより、電気部品用の導電性トラックおよび/または接続領域を実現することができる。
【0003】
そのような金属セラミック基板を供給するために、金属層とセラミック層との間の永久的な接合が必要である。いわゆる直接接合処理、すなわちDCBまたはDAB処理に加えて、はんだ材料により金属層をセラミック層に接合することが従来技術から周知である。
【0004】
例えば金属層または金属箔、特に銅層または銅箔をセラミック材料に接合する活性はんだ処理は、金属セラミック基板を製造するために特に使用される処理として理解される。この処理では、銅、銀、および/または金などの主成分に加えて活性金属も含むろう付け合金を使用して、銅箔等の金属箔と窒化アルミニウムセラミック等のセラミック基板との間の接合が、約650℃から1000℃の温度で行われる。例えばHf、Ti、Zr、Nb、Ceの中の1つ以上の元素であるこの活性金属は、化学反応によってろう付け合金とセラミックとの間の連結を確立する一方、ろう付け合金と金属との間の連結は金属ろうによる連結である。
【0005】
特許文献4および特許文献5は、例えば、活性はんだ材料を使用して電源モジュール基板を製造する方法を開示する。特に、銅箔のセラミック層への接合が、多層はんだシステムにより実施されることが開示されている。この多層システムは、チタン箔の層とリンを含むはんだフィラー材料の層で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第102013104739号明細書
【特許文献2】独国特許発明第19927046号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102009033029号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第3041042号明細書
【特許文献5】国際公開第2017/126653号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この従来技術に鑑み、本発明は、特にはんだ層、金属層とセラミック層との接合、および活性はんだ付け中の接合処理に関して、従来技術と比較して改善されたはんだシステムを使用することで、金属層のセラミック層への接合を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
課題は、請求項1及び請求項5に記載の金属セラミック基板を製造する方法、請求項13に記載のその方法のはんだシステム、および請求項14に記載のその方法で製造された金属セラミック基板によって達成される。本発明のさらなる効果および特性は、説明および添付の図と共に、従属請求項によりもたらされる。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、金属セラミック基板を製造する方法が提供され、方法は、
1つ以上のセラミック層、1つ以上の金属層、および特に1つ以上のはんだ箔の形状の1つ以上のはんだ層を供給する工程と、
1つ以上のセラミック層および/または1つ以上の金属層および/または1つ以上のはんだ層を1つ以上の活性金属層でコーティングする工程と、
1つ以上のセラミック層と1つ以上の金属層との間に、1つ以上のはんだ層を積層方向に沿って配置することで、1つ以上のはんだ層および1つ以上の活性金属層を備えるはんだシステムを形成する工程と、
活性はんだ処理によって、はんだシステムを介して1つ以上の金属層を1つ以上のセラミック層に接合する工程と、を備える。
【0010】
金属セラミック基板を製造するための従来技術により周知の処理と比較して、本発明によれば、好ましくは融点を低下させる元素を含まない1つ以上のはんだ層、および1つ以上の活性金属層を備える多層はんだシステムが提供される。1つ以上の活性金属層と1つ以上のはんだ層との分離は、特にはんだ層が箔である場合に比較的薄いはんだ層を実現できるので、特に有利であることが分かっている。そうでない場合は、はんだペーストつまりはんだ層の変態を妨げる脆弱な金属間相のため、活性金属を含むはんだ材料に関して比較的大きいはんだ層厚さを実現する必要があり、それにより最小の層厚さは、活性金属を含むはんだ材料の製造特性によって制限される。したがって、活性金属を含むはんだ層に関しては、はんだ層の最小のはんだ層厚さを決定するのは接合処理に必要な最小の厚さではなく、はんだ層の最小のはんだ層厚さを決定するのは技術的に実現可能なはんだ層の最小の層厚さである。その結果、活性金属を含む厚いはんだ層は、薄い層よりも高価である。
【0011】
活性金属を1つ以上のはんだ層から分離することにより、1つ以上のはんだ層のはんだ層厚さを有利に減少することができる。その結果、はんだシステムまたは1つ以上のはんだ層の材料を節約することが可能である。そのような活性金属を含まないはんだ層はまた、10μm未満、好ましくは7μm未満の厚さに圧延可能な点で特に有利である。さらなる利点は、特に、はんだシステムまたは1つ以上のはんだ層の第2の厚さが減少するために、製造された金属セラミック基板上のパターン形成のエッチングが単純化されることである。さらに、金属層のセラミック層への接合が、製造作業において促進され得る。
【0012】
特に、はんだ層が融点を低下させる元素を含まない、および/またはリンを含まない場合、別個の活性金属層の使用も可能である。これにより、各場合に使用される1つ以上のはんだ層の材料をより柔軟に選択でき、活性はんだ処理用に確立された処理パラメータの使用も可能である。さらに、1つ以上のはんだ層を形成する前に、対応する融点を低下させる元素の添加を回避することが有利に可能である。特に、当業者は、融点を低下させる元素を含まない1つ以上のはんだ層を、3重量%未満、好ましくは2重量%未満、より好ましくは1重量%未満のこれらの融点を低下させる元素を有する層であると理解できる。これらの融点を低下させる元素の例としては、リンおよび亜鉛が挙げられる。リンを含まないはんだ付け材料の使用は、例えば、リンを含まず、したがってはんだ層への一体化がリンについて周知である融点の大幅な低下にはつながらない融点を低下させる材料を含むはんだ層についても、活性金属層とはんだ層との分離を有利に可能にする。例えば、はんだ層の融点を100℃未満、好ましくは80℃未満、より好ましくは50℃未満低下させるのは、そのような融点を低下させる材料である。
【0013】
さらに、1つ以上のはんだ層は、活性金属を含まないことが好ましい。特に、当業者は、活性金属を含まないということは、はんだ層が5重量%未満、好ましくは3重量%未満、より好ましくは1.5重量%未満の活性金属を有することを意味すると理解できる。活性金属の例としては、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)、セリウム(Ce)、バナジウム(V)が挙げられる。1つ以上のはんだ層は箔として設けられることが特に好ましい。これにより、特に金属セラミック基板の連続生産において、1つ以上のセラミック層と1つ以上の金属層との間に箔を配置する際に、箔の可能な限り簡単な取り扱いが可能になる。
【0014】
例えば、1つ以上のはんだ層が、金属層または1つ以上の金属層と共に予め設けられることも考えられる。例えば、1つ以上のはんだ層は、金属セラミック基板を製造するために使用される1つ以上の金属層の片面に設けられる。この場合、1つ以上の金属層は、1つ以上のはんだ層の支持体として機能する。しかしながら、1つ以上のはんだ層が、フィルム、例えば、支持体を形成するプラスチックフィルムに設けられることも考えられる。さらに、1つ以上のはんだ層が1つ以上の金属層に設けられること、および、好ましくは異なる粒径分布または異なる平均粒径を有する1つ以上のさらなる金属層が、好ましくは1つ以上のはんだ層を担持する1つ以上の金属層において、はんだ層とは反対側の面に提供されることが考えられる。特に、1つ以上の金属層および1つ以上のさらなる金属層の粒径、特にそれらの平均粒径が互いに異なるので、接合処理中に2層の金属化層がセラミックの上側に形成される。小さい平均粒径の金属層は外側に位置し、大きい平均粒径の金属層ははんだシステムまたはセラミック層に面することが特に好ましい。
【0015】
特に、1つ以上の活性金属層を、1つ以上のセラミック層および/または1つ以上の金属層および/または1つ以上のはんだ層に選択的に配置可能な点で有利である。該層のうちの2つ以上の層に対して、1つ以上の活性金属層が配置されることが好ましい。好ましくは、1つ以上の活性金属層は、1つ以上のセラミック層、および/または1つ以上の金属層の、配置状態または金属セラミック基板において1つ以上のはんだに面する面に配置される。1つ以上の活性金属層が1つ以上のはんだ層に配置されることが特に好ましい。この場合、1つ以上の活性金属層を有する1つ以上のはんだ層を備えるはんだシステムを提供することが可能であり、該はんだシステムを、活性はんだ処理のために1つ以上のセラミック層と1つ以上の金属層との間に容易に配置することが可能である。この場合、接合処理は、600℃から1000℃の間、好ましくは700℃から950℃の間の処理温度で実行される活性はんだ処理である。
【0016】
好ましくは、1つ以上のはんだ層のはんだ材料は、銀ベースまたは銅ベースのはんだ材料である。銀ベースのはんだ材料では、銀が主成分、つまり重量パーセントで最も高い割合を占める成分であり、銅ベースのはんだ材料では、銅が主成分である。銀ベースのはんだ材料の例としては、AgCu、特にAgCu28、AgCuIn、AgCuSn、およびAgCuGaが挙げられる。銅ベースのはんだ材料の例としては、銅CuSn、CuIn、CuGa、CuInSn、CuInMn、およびCuGaSnが挙げられる。はんだ材料としてNiCrMnを使用することも考えられる。特に、はんだ層が銀を含まない場合は、すなわち、はんだ層が3重量%未満の銀、好ましくは2重量%未満の銀、より好ましくは1重量%未満の銀を含むことが好ましい。製造された金属セラミック基板の銀含有量は、はんだシステム内の銀イオンの移動につながりかねないので、このようにして銀を有利に節約することができる。
【0017】
好ましくは、はんだ層またははんだ層のはんだ材料は、複数の成分を含み、および/または銀を含まない。換言すると、はんだ材料は単一の化学元素で構成されない。特に、はんだ層は銀のみを含むわけではない。好ましくは、はんだ層は、2つ以上の異なる成分または要素を含む。これにより、例えば接着強度および耐熱衝撃性に関して、接合の挙動をさらに最適化することが有利に可能になる。例えば、その銀イオンの移動およびエッチング挙動により、製造された金属セラミック基板に有害な影響を与えるような純銀の層を使用する必要はない。ろう付け材料としてはんだ層を形成する材料の他の例としては、特に1050℃までのはんだの使用温度のCuNiおよびCuNiMnが挙げられる。さらに、純銀も考えられる。
【0018】
1つ以上の金属層について考えられる材料は、銅、アルミニウム、モリブデン、および/またはそれらの合金およびラミネート、ならびにCuW、CuMo、CuAl、AlCuおよび/またはCuCuなどの粉末冶金複合材料、特に第1の銅層および第2の銅層を有しかつ第1の銅層の粒径が第2の銅層とは異なる銅サンドイッチ構造である。さらに、1つ以上の金属層が表面改質されていることが好ましい。考えられる表面改質は、例えば、貴金属、特に銀および/もしくは金、もしくはENIG(「無電解ニッケル置換金メッキ」)によるシーリング、または亀裂の形成または膨張を抑制するための第1または第2の金属層のエッジカプセル化である。
【0019】
好ましくは、1つ以上のセラミック層は、Al、Si、AlN、HPSXセラミック(すなわち、ZrOのxパーセント部分を含むAl基質を有するセラミック、例えば、9%のZrO=HPS9を有するAlまたは25%のZrO=HPS25を有するAl)、SiC、BeO、MgO、高密度MgO(理論密度の90%を超える)、TSZ(正方安定化酸化ジルコニウム)、またはZTAをセラミックの材料として含む。ここでは、絶縁層が複合セラミックまたはハイブリッドセラミックとして設計され、さまざまな望ましい特性を組み合わせるために、材料組成がそれぞれ異なる複数のセラミック層が上下に配置されて接合されて、絶縁層を形成することも考えられる。可能な限り低い熱抵抗のために、高熱伝導性セラミックが使用されることが好ましい。
【0020】
好ましい実施形態によれば、1つ以上の活性金属層は、蒸着処理、特にPVD(物理蒸着処理)によって、またはCVD(化学蒸着)によって配置される。この製造作業によって、特に可能な限り均一に配置される比較的薄い活性金属層を提供することが可能である。特に、配置は可能な限り制御してよく、その結果、配置された1つ以上の活性金属層は、配置領域にわたって可能な限り一定の厚さを有する。例えば、蒸着処理に関して、熱蒸着、電子ビーム蒸着、レーザービーム蒸着、アーク蒸着または分子ビームエピタキシー、イオンビーム支援蒸着などのスパッタリング、イオンプレーティング、および/またはICB技術などを使用することができる。
【0021】
有利には、1つ以上の活性金属層の第1の厚さは、100nmから1000nmの間、好ましくは150nmから750nmの間、より好ましくは200nmから500nmの間の値を有する。そのような薄い活性金属層は、特に1つ以上のセラミック層と1つ以上の金属層との間の界面において、金属セラミック基板の熱伝導率の低下および機械的強度の低下を有利に防止する。層厚さが意図された保有時間と一致するとより好ましい。例えば、例えば10日を超える長い保有時間に対しては、特に活性金属層としてのチタンの場合、750から1000nmの間の層厚さを用いることが有利である。短い保有時間に対しては、150nmから350nmの第1の厚さを使用してもよい。
【0022】
活性はんだ処理は、10-2mbar(1Pa)未満、好ましくは10-3mbar(10-1Pa)未満、より好ましくは10-4mbar(10-2Pa)未満の圧力で、および/またはプロセスガスを使用して実行されることが好ましい。例えば、活性はんだ処理は、高真空または1mbar(100Pa)未満の非常に低い酸素分圧とアルゴン分圧を有する微小真空で実行される。あるいは、アルゴンまたは一般に希ガス下で大気圧で作業することも考えられる。ここでは有機バインダーを使用していないため、処理時間を半分まで短縮することが可能である。
【0023】
さらに、好ましくは、1つ以上のはんだ層の第2の厚さは、1μmから100μmの間、好ましくは1.5μmから50μmの間、より好ましくは2μmから20μmまたは10μm未満の間の値を有する。特に、これは接合処理、すなわち活性はんだ処理前の第2の厚さである。1つ以上のはんだ層は、10μm未満の厚さ、好ましくは7μm未満の厚さ、より好ましくは5μm未満の厚さまで例えば圧延されることによって、接合処理の前にさらに減少されることが特に好ましい。このようにして、はんだ材料または1つ以上のはんだ層の層厚さを、有利にさらに減少することができる。さらに、1つ以上のセラミック層と1つ以上の金属層との間に配置される前に、1つ以上のはんだ層が、圧延によってその層厚さに関して減少されることが好ましい。このようにして、さらなるはんだ層工程で例えば圧延によって接合処理のために意図された最終的な層厚さに減少する前に、より薄い1つ以上のはんだ層を実現することが可能である。
【0024】
はんだ層の第2の厚さに対する活性金属層の第1の厚さの割合は、0.003から0.5の間、好ましくは0.015から0.2の間、より好ましくは0.03から0.14の間の値を有する。換言すると、はんだ層の第2の厚さは、活性金属層の第1の厚さよりも著しく大きい。
【0025】
さらに、1つ以上の活性金属層は1つ以上の保護層により覆われていることが好ましい。この1つ以上の保護層によって、1つ以上の活性金属層の酸化を防ぐことが有利に可能である。例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、インジウム(In)、銀(Ag)、クロム(Cr)、または窒化チタン(TiN)を、1つ以上の活性金属層の保護層として使用できる。この場合、1つ以上の保護層の厚さは、少なくとも100nmの値を有する。1つ以上の保護層の厚さ、すなわち第3の厚さは、保有時間、すなわち、1つ以上の活性金属層の配置と活性はんだ処理における実際の接合処理との間で経過する時間に適合されることが特に好ましい。このようにして、1つ以上の活性金属層で覆われた構成要素(1つ以上の金属層および/または1つ以上の活性金属層および/または1つ以上のはんだ層)の恒久的な保有を、接合処理の前に1つ以上の活性金属層が酸化することなく、有利に確実にすることができる。例えば、1つ以上の保護層の層厚さ、すなわち第3の厚さは、100nmまたは50nmから1000nmの間、好ましくは150nmから750nmの間、より好ましくは250nmから500nmの間である。
【0026】
さらに、積層方向で測定した、1つ以上の活性金属層の第1の厚さに対する1つ以上の保護層の第3の厚さの割合は、0.5から1の間、好ましくは0.7から0.9の間、より好ましくは0.75から0.85の間の値を有することが好ましい。
【0027】
さらに、1つ以上の活性金属層は、積層方向に沿ってその組成が変化していることが好ましい。このようにして、活性金属層の適時でない酸化もまた、特に、活性金属が設置される表面(1つ以上の金属層、1つ以上のセラミック層、または1つ以上のはんだ層)からの距離が増加するにつれて、窒素、酸素または炭素などの介在元素の量を増加させることによって、有利に防止される。さらに、1つ以上の活性金属層を備えた構成要素、つまり1つ以上の金属層、1つ以上のセラミック層、および/または1つ以上のはんだ層の保有時間を延長するために、1つ以上の活性金属層は、1つ以上のさらなるはんだ層で覆われている。この場合、1つ以上のさらなるはんだ層の厚さは、1つ以上のはんだ層の第2の厚さよりも、少なくとも0.1倍、好ましくは0.05倍、より好ましくは0.01倍だけ薄い。有利には、はんだシステムは、1つ以上の活性金属層が1つ以上のはんだ層および1つ以上のさらなるはんだ層によって包まれているかまたは囲まれているサンドイッチ構造を形成する。
【0028】
1つ以上のはんだ層および/または1つ以上の活性金属層は、圧延および/またはプレス後の活性金属層の第1の厚さが1000nm未満、好ましくは750nm未満、より好ましくは500nm未満の値を有するように圧延されることが好ましい。このようにして、電気めっき処理または気相堆積処理による代わりの方法と比較して、はんだ層および活性金属層が共に圧延されるときに特に1000nm未満である活性金属層の第1の厚さを実現することが有利に可能である。この処理では、活性金属層とはんだ層の層厚さ、すなわち第1の厚さと第2の厚さは、共に圧延および/またはプレスされる。この目的のため、例えば厚いはんだ箔の形状のはんだ層および活性金属層は、例えば、層厚さを減少するための上流の圧延または初期の圧延により初めに接合される。ここでは、活性金属層の開始時の層厚さおよびはんだ箔の開始時の層厚さは、第1の厚さの活性金属層および第2の厚さのはんだ層を有する製造されたはんだシステムにおける第1の厚さおよび第2の厚さとして互いに同じ割合であることが好ましい。その後の圧延、特に複数回の圧延において、活性金属層およびはんだ層は各圧延によりそれぞれの厚さに圧延されて、比較的薄いはんだ層においてさらに薄い活性金属層が配置される。その後、このはんだシステムを使用して、活性はんだ処理で金属層をセラミック層に接着することができる。
【0029】
さらなる活性金属層が提供され、はんだ層は、活性金属層とさらなる活性金属層との間に配置されることが特に好ましい。結果として、はんだ層と1つ以上の金属層との間の界面もまた、活性金属層の活性金属によって影響を受け得る。
【0030】
さらに、セラミック層が活性金属層でコーティングされ、1つ以上の金属層ははんだ層でコーティングされることが好ましい。
1つ以上の金属層は、1mmよりも大きい、好ましくは1.3mmよりも大きい、特に好ましくは1.5mmよりも大きい層厚さを有する場合に特に好ましい。これにより、比較的厚い1つ以上の金属層が提供され、熱エネルギーの急速な放散を支持し、部品側の熱拡散を可能にする。
【0031】
本発明のさらなる態様は、本発明による方法のはんだシステムであり、はんだシステムは、特にはんだ箔の形状の1つ以上のはんだ層と、1つ以上の活性金属層とを備える。金属セラミック基板の製造方法について説明した全ての効果および仕様は、同様にはんだシステムに適用される。
【0032】
別の態様は、方法によって製造された金属セラミック基板であって、該方法は、
1つ以上のセラミック層、1つ以上の金属層、および特に1つ以上のはんだ箔の形状の1つ以上のはんだ層を供給する工程と、
1つ以上のセラミック層および/または1つ以上の金属層および/または1つ以上のはんだ層を1つ以上の活性金属層でコーティングする工程と、
1つ以上のセラミック層と1つ以上の金属層との間に、1つ以上のはんだ層を積層方向に沿って配置することで、1つ以上のはんだ層および1つ以上の活性金属層を備えるはんだシステムを形成する工程であって、1つ以上のはんだ層のはんだ材料は、好ましくは融点を低下させる材料を含まない工程と、
活性はんだ処理によって、はんだシステムを介して1つ以上の金属層を1つ以上のセラミック層に接合する工程と、を備える。金属セラミック基板の製造方法について説明した全ての効果および特徴は、同様に金属セラミック基板に適用される。
【0033】
さらなる効果および特徴は、添付の図面を参照に、本発明の主題の好ましい実施形態の以下の説明から明らかになる。各実施形態の各特徴は、したがって、本発明の範囲内で組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の第1の好ましい実施形態による金属セラミック基板を製造する方法の概略図。
図2】本発明の第2の好ましい実施形態による金属セラミック基板を製造する方法の概略図。
図3】本発明の第3の好ましい実施形態による金属セラミック基板を製造する方法の概略図。
図4】本発明の第4の好ましい実施形態による金属セラミック基板を製造する方法の概略図。
図5】本発明の第5の好ましい実施形態による金属セラミック基板を製造する方法の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、本発明の第1の好ましい実施形態による金属セラミック基板1を製造する方法の概略を示す。このような金属セラミック基板1は、金属セラミック基板1に接続可能な電子部品または電気部品の支持体として使用されることが好ましい。図1の左上に、製造された金属セラミック基板1の例を概略的に示す。このような金属セラミック基板1の必須の構成要素は、主延長面HSEに沿って延在する1つ以上のセラミック層10、および1つ以上の該セラミック層10に接合された1つ以上の金属層20を含む。1つ以上のセラミック層10は、セラミックを含む1つ以上の材料で形成されている。ここでは、1つ以上の金属層20および1つ以上のセラミック層10は、主延長面HSEに対し垂直に延びる積層方向Sに沿って上下に配置され、また、製造された状態では少なくとも所定の領域で、はんだシステム35により材料結合を通じて互いに接合される。製造された金属セラミック基板1における1つ以上の金属層20は、次に、電気部品の導体トラックまたは接続領域を形成するよう構造化されることが好ましい。例えば、このパターニングは1つ以上の金属層20にエッチングされる。しかしながら、永久的な結合、特に材料結合が、1つ以上の金属層20と1つ以上のセラミック層10との間に事前に確立されなければならない。
【0036】
図1の例示的な実施形態では、この永久的な、特に材料的に結合された接続は、活性はんだ処理によって実現される。この目的のため、はんだシステム35は、1つ以上のセラミック層10と1つ以上の金属層20との間に配置される。はんだシステム35により、セラミック層10と金属層20との間の材料結合が、完成された金属セラミック基板1において実現される。特に、はんだシステム35は複数層を有する。1つ以上のはんだ層30に加えて、はんだシステム35は、1つ以上の活性金属層40を含む。ここでは特に、1つ以上のはんだ層30は活性金属を含まない、つまり、活性金属を有さない。代わりに、活性金属は、はんだシステム35に活性金属層40として別個の層に配置される。活性金属を含まないはんだ付け材料が一方のはんだ層30に設けられ、また活性金属が包む活性金属層40が他方に設けられる、はんだシステム35におけるこの分離は、有利には、可能な限り薄いはんだ層30の実現を可能にする。そうでない場合は、接合処理に必要な最小の厚さによって制限されるのではなく、1つ以上のはんだ層30の製造作業によって制限される、特にはんだ箔の形状で、1つ以上のはんだ層30についてより大きな最小の層厚さを有する必要がある。
【0037】
1つ以上の活性金属層40と1つ以上のはんだ層30とを分離することにより、この場合は脆弱な金属間相が変態を妨げることがないので、対応するより薄いはんだ箔を製造することができる。特に、これにより、特にはんだ箔の形状で、1つ以上のはんだ層30の10μm未満、好ましくは8μm未満、より好ましくは6μm未満の厚さの圧延性を実現するはんだ層30を供給することが有利に可能である。図示の例示的な実施形態では、1つ以上の活性金属層40は、例えば、スパッタリングまたはCVDによって1つ以上のセラミック層10に配置され、100nmから1000nmの間、好ましくは150nmから750nmの間、より好ましくは200nmから500nmの間の値を有する第1の厚さD1を有する。
【0038】
この薄い活性金属層40は、そうでない場合により厚い活性金属層40を使用した際に予想される熱伝導率および機械的強度の低下を防止することが可能である。この特徴は、層厚さ、つまり200nmから500nmの間の第1の厚さD1で特に当てはまる。ここでは、活性はんだ処理が実行される前に、1つ以上のはんだ層30、特に1つ以上のはんだ箔が、1つ以上の活性金属層40と1つ以上の金属層20との間に別個の層として配置される。例えば、可能な限り薄い1つ以上のはんだ層30を実現するため、1つ以上のはんだ箔が1つ以上の活性金属層40に配置され、また圧延工程により10μm未満、好ましくは7μm未満の第2の厚さにめっきされることが考えられる。比較的薄い1つ以上のはんだ層30の使用は、一方では接合過程を加速し、他方では1つ以上のセラミック層10と1つ以上の金属層20との間の接合を実施する際の材料消費を有利に低減する。この場合、1つ以上のセラミック層10および1つ以上の金属層20は、積層方向Sに沿って上下に配置される。1つ以上のはんだ層30および1つ以上の活性金属層40を有するはんだシステム35は、積層方向Sに沿って1つ以上の金属層20と1つ以上のセラミック層10との間に配置される。特に、1つ以上のはんだ層30は、活性金属を含まないだけでなく、リンまたは亜鉛などの融点を低下させる元素も含まない。実質的に「低融点の元素を含まない」ということは、当業者には、特に、はんだ層中のそれらの元素量は3重量%未満、好ましくは2重量%未満、より好ましくは1重量%未満であることが理解される。例として、1つ以上のはんだ層30には、融解温度が低下するのを防ぐために、リンまたは亜鉛を含むはんだ材料を使用することが回避される。意外にも、融点を低下させる元素が併せて使用されていないそのようなはんだ材料については、別個の1つ以上の活性元素層40を介した接合も可能である。これにより、活性はんだ処理の通常の処理温度で使用されるそのようなはんだ材料に対して、比較的薄い1つ以上のはんだ層30の使用が可能になる。したがって、活性はんだ処理で一般的に使用される通常のプロセスパラメータを使用することができ、比較的薄い1つ以上のはんだ層30を実現することができる。
【0039】
図2は、本発明の第2の例示的な実施形態による金属セラミック基板1を製造する方法の概略を示す。特に、図2の例示的な実施形態は、1つ以上の活性金属層40に加えて、1つ以上の保護層41が配置されるという点でのみ、図1の例示的な実施形態とは実質的に異なる。具体的には、主延長面HSEに延びる1つ以上の保護層41は、活性金属層40を覆う。そのような1つ以上の保護層41を使用することにより、実際の接合処理、すなわち活性はんだ処理が行われる前に、1つ以上の活性金属層40上または1つ以上の活性金属層40の外側で起こる酸化を防ぐことが有利に可能である。好ましくは、そのような1つ以上の保護層41は、少なくとも100nmの最小の厚さを有する第3の厚さD3を有する。好ましくは、1つ以上の保護層の第3の厚さD3は、100nmから1000nm、好ましくは150nmから750nm、より好ましくは200nmから500nmの間である。さらには、1つ以上の保護層41は1つ以上の活性金属層40を部分的または好ましくは完全に覆い、積層方向Sから見た場合に、1つ以上の活性金属層40と1つ以上のはんだ層30との間に配置されることが好ましい。好ましくは、第3の厚さD3は、活性金属層(40)および保護層(41)の堆積に始まり、活性はんだ処理による接合が起こるまでの、予想される期間に適合される。このようにして、1つ以上の活性金属層40が接合前に酸化しないように、意図された保有時間を、特に保護層41の第3の厚さD3によって有利な方法で調整することができる。好ましくは、1つ以上の保護層41の第3の厚さD3は、活性金属層40の第1の厚さD1に略一致する。
【0040】
さらに、1つ以上のはんだ層30は、0.1から100μmの間、好ましくは0.5から50μmの間、より好ましくは0.2から20μmの間の値を有する第2の厚さD2を有する。特に、1つ以上のはんだ層30を適用する前、または1つ以上の金属層20もしくは1つ以上の活性金属層40に配置する前の第2の厚さD2がそうである。特に、1つ以上の金属層20の適用または配置後、1つ以上のはんだ層30の第2の厚さD2は、さらなる圧延によってさらに減少される。1つ以上の金属層20と、1つ以上のセラミック層10と、該1つ以上の金属層20および1つ以上のセラミック層10の間に配置されたはんだシステム35とを配置した後、700℃から900℃の間の温度で接合が行われる。はんだ付け処理は、10mbar(10Pa)未満の圧力で行われることが好ましい。接合処理、すなわち活性はんだ処理は、プロセスガスを使用して、または、例えば、アルゴンまたはより一般的には1つまたは複数の希ガスを含む作業雰囲気中で実施されることも考えられる。
【0041】
図3は、本発明の第3の例示的な実施形態による金属セラミック基板1を製造する方法の概略を示す。実質的には、本実施形態は、1つ以上の活性金属層40は、1つ以上の金属層20と1つ以上のセラミック層10との間に配置される前に、1つ以上のはんだ層30に取り付けられるという点で図2の実施形態とは異なる。換言すると、本明細書では、1つ以上の活性金属層40の1つ以上のはんだ層30への接合は、1つ以上のセラミック層10と1つ以上の金属層20との間の配置の時間的に前にスパッタリングによって行われる。特に、本明細書では、1つ以上の活性金属層40の初期酸化を防ぐために、1つ以上の保護層41が、1つ以上の活性金属層40を特に片側において部分的または好ましくは完全に覆う。
【0042】
図4は、本発明の第4の例示的な実施形態による金属セラミック基板1を製造する方法の概略を示す。図2および3の実施形態とは対照的に、図4の例示的な実施形態では、1つ以上の活性金属層40が、活性はんだ処理の前に1つ以上の金属層20に接合される。この場合、1つ以上の活性金属層40は、特に、接合処理においてはんだ層30に対向する1つ以上の金属層20の側に配置される。例えば、1つ以上の活性金属層40は、CVD処理またはスパッタリングによって、すなわち、一般に蒸着処理によって、1つ以上の金属層20に全領域にわたって配置されてよい。1つ以上の活性金属層40が付着する1つ以上の金属層20と、1つ以上のセラミック層10と、1つ以上のはんだ層30とを配置した後、接合処理は、活性はんだ処理によって実施される。
【0043】
図5は、本発明の第5の例示的な実施形態による金属セラミック基板1を製造する方法の概略を示す。本明細書では、図5の例示的な実施形態は、1つ以上のセラミック層10の表側および裏側の両方が、対応するはんだシステム35を介して1つ以上の金属層20にそれぞれ接合されるという点でのみ、図2の実施形態とは異なる。好ましくは、はんだシステム35は、1つ以上のはんだ層30と、1つ以上の活性金属層40と、1つ以上の保護層41とを含む。
【符号の説明】
【0044】
1 金属セラミック基板
10 セラミック層
20 金属層
30 はんだ層
35 はんだシステム
40 活性金属層
41 保護層
S 積層方向
HSE 主延長面
D1 第1の厚さ
D2 第2の厚さ
D3 第3の厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-02-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属セラミック基板(1)を製造する方法であって、
1つ以上のセラミック層(10)、1つ以上の金属層(20)、および特に1つ以上のはんだ箔の形状の1つ以上のはんだ層(30)を供給する工程と、
1つ以上の前記セラミック層(10)および/または1つ以上の前記金属層(20)および/または1つ以上の前記はんだ層(30)を1つ以上の活性金属層(40)でコーティングする工程と、
1つ以上の前記セラミック層(10)と1つ以上の前記金属層(20)との間に、1つ以上の前記はんだ層(30)を積層方向(S)に沿って配置することで、1つ以上の前記はんだ層および1つ以上の前記活性金属層(40)を備えるはんだシステム(35)を形成する工程と、
活性はんだ処理によって、前記はんだシステム(35)を介して1つ以上の前記金属層(20)を1つ以上の前記セラミック層(10)に接合する工程と、を備え、
製造された前記金属セラミック基板(1)における1つ以上の前記金属層(20)は、電気部品の導体トラックまたは接続領域を形成するよう構造化され、
前記はんだ層(30)のはんだ材料は、AgCuIn、AgCuGa、CuIn、CuGa、CuInSn、又はCuGaSnであり、
1つ以上の前記活性金属層(40)の第1の厚さ(D1)は、150nmから750nmの間であり、
前記はんだ層(30)の第2の厚さ(D2)に対する前記活性金属層(40)の前記第1の厚さ(D1)の割合は、0.003から0.5の間である方法。
【請求項2】
前記はんだ層(30)のはんだ材料は、CuIn、CuGa、CuInSn、又はCuGaSnである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1つ以上の前記活性金属層(40)の前記第1の厚さ(D1)は、200nmから500nmの間の値を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記活性はんだ処理は、10-2mbar(1Pa)未満、好ましくは10-3mbar(10-1Pa)未満、より好ましくは10-4mbar(10-2Pa)未満の圧力で、および/またはプロセスガスを使用して実行され、
および/または、1つ以上の前記活性金属層(40)は、蒸着処理によっておよび/またはガルバニ電流によって配置される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
金属セラミック基板(1)を製造する方法であって、
1つ以上のセラミック層(10)、1つ以上の金属層(20)、および特に1つ以上のはんだ箔の形状の1つ以上のはんだ層(30)を供給する工程と、
1つ以上の前記セラミック層(10)および/または1つ以上の前記金属層(20)および/または1つ以上の前記はんだ層(30)を1つ以上の活性金属層(40)でコーティングする工程であって、前記活性金属層が前記はんだ層と前記セラミック層との間に配置される工程と、
1つ以上の前記セラミック層(10)と1つ以上の前記金属層(20)との間に、1つ以上の前記はんだ層(30)を積層方向(S)に沿って配置することで、1つ以上の前記はんだ層および1つ以上の前記活性金属層(40)を備えるはんだシステム(35)を形成する工程と、
活性はんだ処理によって、前記はんだシステム(35)を介して1つ以上の前記金属層(20)を1つ以上の前記セラミック層(10)に接合する工程と、を備え、
前記はんだ層(30)のはんだ材料は、AgCuIn、AgCuGa、CuIn、CuGa、CuInSn、又はCuGaSnであり、
1つ以上の前記活性金属層(40)の第1の厚さ(D1)は、150nmから750nmの間であり、
前記はんだ層(30)の第2の厚さ(D2)に対する前記活性金属層(40)の前記第1の厚さ(D1)の割合は、0.003から0.5の間である方法。
【請求項6】
前記はんだ層(30)の前記第2の厚さ(D2)に対する前記活性金属層(40)の前記第1の厚さ(D1)の割合は、0.015から0.2の間、より好ましくは0.03から0.14の間の値を有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
1つ以上の前記活性金属層(40)は前記積層方向(S)に沿ってその組成が変化している、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
1つ以上の前記はんだ層(30)および/または1つ以上の前記活性金属層(40)は、特にはんだシステム(35)として、好ましくは圧延後の前記活性金属層(40)の前記第1の厚さ(D1)が750nm未満、より好ましくは500nm未満の値を有するように圧延される、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
さらなる活性金属層が供給され、前記はんだ層(30)は、前記活性金属層(40)と前記さらなる活性金属層との間に配置される、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記セラミック層(10)は前記活性金属層(40)でコーティングされ、1つ以上の前記金属層(20)は前記はんだ層(30)でコーティングされる、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
1つ以上の前記金属層(20)は、1mmよりも大きい、好ましくは1.3mmよりも大きい、より好ましくは1.5mmよりも大きい層厚さを有する、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
1つ以上の前記活性金属層(40)は、1つ以上の保護層(41)により覆われており、
前記保護層(41)は、銅、ニッケル、インジウム、銀、クロム、または窒化チタンにより形成されている、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の方法のはんだシステム(35)であって、前記はんだシステム(35)は、特に1つ以上のはんだ箔の形状の1つ以上のはんだ層(30)と、1つ以上の活性金属層(40)とを備えるはんだシステム(35)。
【請求項14】
方法によって製造された金属セラミック基板(1)であって、
1つ以上のセラミック層(10)、1つ以上の金属層(20)、および特に1つ以上のはんだ箔の形状の1つ以上のはんだ層(30)を供給する工程と、
1つ以上の前記セラミック層(10)および/または1つ以上の前記金属層(20)および/または1つ以上の前記はんだ層(30)を1つ以上の活性金属層(40)でコーティングする工程と、
1つ以上の前記セラミック層(10)と1つ以上の前記金属層(20)との間に、1つ以上の前記はんだ層(30)を積層方向(S)に沿って配置することで、1つ以上の前記はんだ層および1つ以上の前記活性金属層(40)を備えるはんだシステム(35)を形成する工程と、
活性はんだ処理によって、前記はんだシステム(35)を介して1つ以上の前記金属層(20)を1つ以上の前記セラミック層(10)に接合する工程と、を備え、
前記はんだ層(30)のはんだ材料は、AgCuIn、AgCuGa、CuIn、CuGa、CuInSn、又はCuGaSnであり、
1つ以上の前記活性金属層(40)の第1の厚さ(D1)は、150nmから750nmの間であり、
前記はんだ層(30)の第2の厚さ(D2)に対する前記活性金属層(40)の前記第1の厚さ(D1)の割合は、0.003から0.5の間である前記方法によって製造された金属セラミック基板(1)。
【請求項15】
1つ以上の前記活性金属層(40)は、1つ以上の保護層(41)により覆われており、
前記保護層(41)は、銅、ニッケル、インジウム、銀、クロム、または窒化チタンにより形成されている、請求項14に記載の金属セラミック基板(1)。