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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045152
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】電気部品及び電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240326BHJP
   H03H 7/09 20060101ALI20240326BHJP
   H01F 27/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H03H7/09 A
H01F27/00 S
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023222679
(22)【出願日】2023-12-28
(62)【分割の表示】P 2021576753の分割
【原出願日】2020-06-24
(31)【優先権主張番号】102019004401.0
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102019123197.3
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】300002160
【氏名又は名称】ティーディーケイ・エレクトロニクス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TDK ELECTRONICS AG
【住所又は居所原語表記】Rosenheimer Strasse 141e, 81671 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ベック, ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】ダイゼンホーファー, ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ランボー, ヴォルフガング
(57)【要約】      (修正有)
【課題】DCリンクコンデンサと、EMCフィルタと、を含む電気部品及び電子部品並びにその製造方法を製造する方法を提供する。
【解決手段】電気部品(2)は、入力ポート(2a)及び出力ポート(2b)と、第1のフィルタ段(6)及び第2のフィルタ段(7)を備えるEMCフィルタと、を備える。第1のフィルタ段(6)は、入力ポート(2a)とDCリンクコンデンサ(CDCL)との間に配置されており、第2のフィルタ段(7)は、出力ポート(2b)とDCリンクコンデンサ(CDCL)との間に配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DCリンクコンデンサ(CDCL)と、EMCフィルタと、を含む電気部品(2)であって、
前記電気部品(2)は、入力ポート(2a)及び出力ポート(2b)を備え、
前記EMCフィルタは、第1のフィルタ段(6)及び第2のフィルタ段(7)を備え、
前記第1のフィルタ段(6)は前記入力ポート(2a)と前記DCリンクコンデンサ(CDCL)との間に配置され、前記第2のフィルタ段(7)は前記出力ポート(2b)と前記DCリンクコンデンサ(CDCL)との間に配置されており、
前記DCリンクコンデンサの静電容量は少なくとも50μFであり、
前記EMCフィルタ及び前記DCリンクコンデンサは、前記入力ポートの入力端子と前記出力ポートの出力端子とともに、1つのシャーシを備えた単一の部品に集積され、前記電気部品は、前記電気部品を組み立てる際に閉じなければならない、前記DCリンクコンデンサと前記EMCフィルタとの間のインターフェースを含まない電気部品(2)。
【請求項2】
前記EMCフィルタは、さらなるフィルタ段を含む請求項1に記載の電気部品(2)。
【請求項3】
前記EMCフィルタ及び前記DCリンクコンデンサ(CDCL)は単一の回路に集積されている請求項1~2のいずれか1項に記載の電気部品(2)。
【請求項4】
前記入力ポート(2a)は、前記電気部品(2)をDC入力に接続するように構成され、
前記出力ポート(2b)は、前記電気部品(2)をインバータ用半導体ブリッジ(3)に接続するように構成されている請求項1~3のいずれか1項に記載の電気部品(2)。
【請求項5】
前記入力ポート(2a)で直流電流を受け、前記出力ポート(2b)で直流電流を提供するように構成されている請求項1~4のいずれか1項に記載の電気部品(2)。
【請求項6】
前記第2のフィルタ段(7)は、ノイズが前記DCリンクコンデンサ(CDCL)へ移行することを回避するように構成されている請求項1~5のいずれか1項に記載の電気部品(2)。
【請求項7】
前記第2のフィルタ段(7)は、スナバコンデンサ(CS)を含む請求項1~6のいずれか1項に記載の電気部品(2)。
【請求項8】
前記スナバコンデンサ(CS)は、プラスチックフィルムを含むフィルムコンデンサであり、又は
前記スナバコンデンサ(CS)は、セラミックコンデンサであり、又は
前記スナバコンデンサ(CS)は、アルミ電解コンデンサである請求項7に記載の電気部品(2)。
【請求項9】
前記第2のフィルタ段(7)は、信号線(8、9)と基準電位との間に接続された少なくとも1つのYコンデンサ(Cy21、Cy22)を含む請求項1~8のいずれか1項に記載の電気部品(2)。
【請求項10】
前記少なくとも1つのYコンデンサ(Cy21、Cy22)は、プラスチックフィルムを含むフィルムコンデンサであり、又は
前記少なくとも1つのYコンデンサ(Cy21、Cy22)は、セラミックコンデンサであり、又は
前記少なくとも1つのYコンデンサ(Cy21、Cy22)は、アルミ電解コンデンサである請求項9に記載の電気部品(2)。
【請求項11】
前記第2のフィルタ段(7)は、インダクタとして動作する磁気素子(La1、La2)を備える請求項1~10のいずれか1項に記載の電気部品(2)。
【請求項12】
前記磁気素子(La1、La2)は、マンガン-亜鉛系フェライトコア、ニッケル-亜鉛系フェライトコア、又はナノ結晶系テープ心線を含む請求項11に記載の電気部品(2)。
【請求項13】
前記第1のフィルタ段(6)は、2つの信号線(8、9)の間に接続されたxコンデンサ(Cx)を含む請求項1~12のいずれか1項に記載の電気部品(2)。
【請求項14】
前記xコンデンサ(Cx)は、プラスチックフィルムを含むフィルムコンデンサであり、又は
前記xコンデンサ(Cx)は、セラミックコンデンサであり、又は
前記xコンデンサ(Cx)は、アルミ電解コンデンサである請求項13に記載の電気部品(2)。
【請求項15】
前記第1のフィルタ段(6)は、信号線(8、9)と基準電位との間に接続された少なくとも1つのYコンデンサ(Cy11、Cy12)を含む請求項1~14のいずれか1項に記載の電気部品(2)。
【請求項16】
前記第1のフィルタ段(6)は、インダクタとして動作する磁気素子(Lb1、Lb2)を含む請求項1~15のいずれか1項に記載の電気部品(2)。
【請求項17】
前記第1のフィルタ段(6)の前記磁気素子(Lb1、Lb2)は、マンガン-亜鉛系フェライトコア又はナノ結晶系テープ心線を含む請求項16に記載の電気部品(2)。
【請求項18】
前記DCリンクコンデンサ(CDCL)は、容量性ノイズ抑制を行うように構成されている請求項1~17のいずれか1項に記載の電気部品(2)。
【請求項19】
センサ及び/又は機能部品をさらに含む請求項1~18のいずれか1項に記載の電気部品(2)。
【請求項20】
温度センサ、電流センサ、湿度センサ、圧力センサ、ガスセンサ、及びデータを転送するモジュールのうちの少なくとも1つをさらに含む請求項1~19のいずれか1項に記載の電気部品(2)。
【請求項21】
前記DCリンクコンデンサ(CDCL)は、プラスチックフィルムを含むフィルムコンデンサであり、又は
前記DCリンクコンデンサ(CDCL)は、セラミックコンデンサであり、又は
前記DCリンクコンデンサ(CDCL)は、アルミ電解コンデンサである請求項1~20のいずれか1項に記載の電気部品(2)。
【請求項22】
電気部品(2)及びインバータ用半導体ブリッジ(3)を備える電力変換回路であって、
前記電気部品(2)は、DCリンクコンデンサ(CDCL)と、EMCフィルタと、を含み、
前記電気部品(2)は、入力ポート(2a)及び出力ポート(2b)を備え、
前記EMCフィルタは、第1のフィルタ段(6)及び第2のフィルタ段(7)を備え、
前記第1のフィルタ段(6)は前記入力ポート(2a)と前記DCリンクコンデンサ(CDCL)との間に配置され、前記第2のフィルタ段(7)は前記出力ポート(2b)と前記DCリンクコンデンサ(CDCL)との間に配置されており、
前記電気部品(2)の前記出力ポート(2b)は、前記インバータ用半導体ブリッジ(3)に接続されており、
前記DCリンクコンデンサの静電容量は少なくとも50μFであり、
前記EMCフィルタ及び前記DCリンクコンデンサは、前記入力ポートの入力端子と前記出力ポートの出力端子とともに、1つのシャーシを備えた単一の部品に集積され、前記電気部品は、前記電気部品を組み立てる際に閉じなければならない、前記DCリンクコンデンサと前記EMCフィルタとの間のインターフェースを含まない電力変換回路。
【請求項23】
電気部品(2)を製造する方法であって、
前記電気部品(2)は、
DCリンクコンデンサ(CDCL)と、EMCフィルタと、を含み、
入力ポート(2a)及び出力ポート(2b)を備え、
前記EMCフィルタは、第1のフィルタ段(6)及び第2のフィルタ段(7)を備え、
前記第1のフィルタ段(6)は前記入力ポート(2a)と前記DCリンクコンデンサ(CDCL)との間に配置され、前記第2のフィルタ段(7)は前記出力ポート(2b)と前記DCリンクコンデンサ(CDCL)との間に配置されている、電気部品(2)であり、
機能的なDCリンクコンデンサユニット(CDCL)を製造するステップaと、
機能的なDCリンクコンデンサユニット(CDCL)をバスバーに接続するステップbと、
第1のフィルタ段(6)と第2のフィルタ段(7)とを含むEMCフィルタ又はフィルタサブユニットを製造するステップcと、
前記バスバーに接続された前記機能的なDCリンクコンデンサユニット(CDCL)と、前記EMCフィルタ又は前記フィルタサブユニットとをハウジング内に組み立てるステップdと、を備える方法において、
ステップcを、ステップaの前、ステップbの前、又はステップdの前に実行する電気部品(2)を製造する方法。
【請求項24】
ステップdにおいて、センサ及び/又は機能部品をハウジング内に組み立てる請求項23に記載の電気部品(2)を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換回路に使用可能な電気部品及び電子部品の製造方法に関する。電力変換回路は、直流電流(DC)を交流電流(AC)に変換する電子デバイス又は回路である。
【背景技術】
【0002】
電力変換回路は、電気自動車においてバッテリから供給される直流電流を、モータに必要な交流電流に変換するために用いられている。したがって、電力変換回路は、好ましくは300~800Vの範囲の電圧で直流電流を提供する電気自動車のバッテリパックに接続することができる。特に自動車に適用される場合、体積と重量の最適化が重要な要素である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、改良された電気部品及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、請求項1の主題及び2番目の独立請求項によって達成される。
【0005】
DCリンクコンデンサ及びEMCフィルタを含む電気部品を提供する。該電気部品は、入力ポート及び出力ポートを備える。EMCフィルタは、少なくとも第1のフィルタ段及び第2のフィルタ段を含む。第1のフィルタ段は入力ポートとDCリンクコンデンサとの間に配置され、第2のフィルタ段は出力ポートとDCリンクコンデンサとの間に配置される。
【0006】
DCリンクコンデンサは、エネルギーを貯蔵するように構成できる。特に、DCリンクコンデンサは一時蓄積コンデンサあってよい。DCリンクコンデンサは、負荷分散型のエネルギー貯蔵デバイスとして用いるように構成できる。DCリンクコンデンサは、瞬間的な電圧スパイク、サージ、及びEMIから電力変換回路を保護するように構成できる。DCリンクコンデンサの静電容量は、50から1000μFの範囲内、好ましくは100から300μFの範囲内であり得る。或いは、DCリンクコンデンサの静電容量は1000μFを超え得る。
【0007】
DCリンクコンデンサは、プラスチックフィルムを含むフィルムコンデンサ、セラミックコンデンサ、又はアルミ電解コンデンサのうちの1つであり得る。或いは、DCリンクコンデンサは、他の任意の誘電体材料を含み得る。
【0008】
EMCフィルタは、不要なエミッションを制限し、電力変換回路の耐性を高めるように構成できる。
【0009】
EMCフィルタの各フィルタ段は、フィルタリングを提供するように構成できる。各フィルタ段は、少なくとも1つのフィルタ素子を含み得る。特に、各フィルタ段は、スナバコンデンサ、yコンデンサ、xコンデンサ、及びインダクタとして動作する磁気素子から選択される少なくとも1つのフィルタ素子を含み得る。
【0010】
スナバコンデンサ、yコンデンサ、xコンデンサのそれぞれは、プラスチックフィルムを含むフィルムコンデンサ、セラミックコンデンサ、又はアルミ電解コンデンサのうちの1つであり得る。或いは、スナバコンデンサ、yコンデンサ、xコンデンサは、他の誘電体材料を含み得る。
【0011】
「電気部品」という用語は、当該部品の全ての素子が配置された単一のハウジング又はシャーシを含む部品を指す場合がある。電気部品は、特定の瞬間に出力ポートにおいてエネルギーを必要としない時、DCリンクコンデンサにエネルギーを一時的に蓄積するように構成できる。電気部品は、電気信号のノイズ又は他の外乱をフィルタリングするように構成できる。
【0012】
DCリンクコンデンサとEMCフィルタを単一の電気部品に組み合わせることにより、個別のEMCフィルタと組み合わせたDCリンクコンデンサと比較して、全体的な必要体積を減らすことができる。
【0013】
電気部品は、電気部品を組み立てる際に閉じなければならないDCリンクコンデンサとEMCフィルタの間のインターフェースを含まなくてもよい。したがって、DCリンクコンデンサとEMCフィルタとの間の個別のインターフェースを閉じる必要がないため、電力変換回路への部品の電気的接続の複雑さを低減することができる。これにより、製造時間又は組立時間を短縮することができ、誤組み立てのリスクも低減することができる。
【0014】
第1のフィルタ段及び第2のフィルタ段をDCリンクコンデンサの対向する側に配置することにより、入力ポート又は出力ポートからDCリンクコンデンサへのノイズの移行を低減又は回避することもできる。特に、出力ポートは、ノイズ源、寄生電流、又はその他の外乱の原因となる可能性のあるインバータ用半導体ブリッジに接続することができる。第2のフィルタ段が出力ポートとDCリンクコンデンサとの間に配置されることを保証することにより、DCリンクコンデンサは外乱から保護される。ノイズは、DCリンクコンデンサに影響を与える前に、第2のフィルタ段によってノイズ源の近くで減衰することができる。
【0015】
第1のフィルタ段及び第2のフィルタ段は、コンデンサの両側に配置することにより、DCリンクコンデンサの寄生インダクタンスに起因するリンギングを低減することができる。
【0016】
一実施形態では、EMCフィルタは、さらなるフィルタ段を含む。さらなるフィルタ段は、第3のフィルタ段であってもよい。EMCフィルタは、3つ以上のフィルタ段を含んでよい。
【0017】
EMCフィルタ及びDCリンクコンデンサは単一の回路に集積され得る。単一の回路は、電気部品の入力ポート及び出力ポートを備える。
【0018】
入力ポートは、電気部品をDC入力に接続するように構成されてもよく、出力ポートは、電気部品をインバータ用半導体ブリッジに接続するように構成されてもよい。電気部品は、入力ポートで直流電流を受け、出力ポートで直流電流を提供するように構成されてもよい。
【0019】
第2のフィルタ段は、DCリンクコンデンサへのノイズの移行を回避するように構成されてもよい。特に、例えばインバータ用半導体ブリッジによるノイズなどの、電気部品の出力ポートにおけるノイズであれば、DCリンクコンデンサに到達する前に、第2のフィルタ段によって直接的にフィルタリング及び減衰することが可能である。したがって、第2のフィルタ段は、初期のフィルタ段とみなすことができる。第2のフィルタ段は、ノイズ源に近いノイズが電力変換回路に拡散可能になる前にフィルタリングするように構成することができる。
【0020】
前記第2のフィルタ段は、スナバコンデンサを含んでよい。スナバコンデンサは、磁気素子と組み合わせてLCフィルタを形成し、磁気素子の漏れインダクタンスを補償するように構成することができる。スナバコンデンサは、スイッチ又はインバータ用半導体ブリッジが開く際の回路インダクタンスに起因する電圧スパイクを解消するエネルギー吸収回路であり得る。スナバコンデンサの目的は、スイッチが急激に開く際に生じる電圧過渡を解消したり、スイッチ接点のスパークを抑制したり、サイリスタ、GTOサイリスタ、IGBT、バイポーラトランジスタ等の半導体スイッチの電圧スルーレートを制限したりすることによって、電磁適合性を向上させることである。
【0021】
スナバコンデンサの静電容量は、0.1μF~10μFの範囲内であり得る。スナバコンデンサの静電容量は、DCリンクコンデンサの静電容量よりも大幅に小さくてもよい。例えば、スナバコンデンサの静電容量は、DCリンクコンデンサの静電容量の10分の1未満、好ましくはDCリンクコンデンサの静電容量の3パーセント未満であってもよい。
【0022】
第2のフィルタ段は、信号線と基準電位との間に接続された少なくとも1つのyコンデンサを含み得る。いくつかの実施形態では、yコンデンサは、yコンデンサと直列に接続され、抵抗減衰を提供する抵抗素子と組み合わされる。
【0023】
第2のフィルタ段は、インダクタとして動作する磁気素子を含み得る。磁気素子は信号線に配置され得る。信号線は、入力ポートの端子と出力ポートの端子を接続してもよい。第2のフィルタ段は、それぞれインダクタとして動作する2つの磁気素子を含み得る。
【0024】
磁気素子はそれぞれ、ニッケル-亜鉛又はマンガン-亜鉛系フェライトコア、又はナノ結晶系テープ心線を含んでよい。これらの材料は両方とも、105~108Hzの周波数で良好なフィルタリングを提供する。したがって、これらの磁気素子は、DCリンクコンデンサの寄生インダクタンスに起因するリンギングを減衰させるように構成される。
【0025】
第1のフィルタ段は、2つの信号線の間に接続されたxコンデンサを含み得る。xコンデンサの静電容量は、0.1μF~10μFの範囲内である。xコンデンサの静電容量は、DCリンクコンデンサの静電容量よりも大幅に小さい。例えば、xコンデンサの静電容量は、DCリンクコンデンサの静電容量の10分の1未満、好ましくはDCリンクコンデンサの静電容量の3パーセント未満である。
【0026】
第1のフィルタ段は、信号線と基準電位との間に接続された少なくとも1つのyコンデンサを含み得る。いくつかの実施形態では、yコンデンサは、yコンデンサと直列に接続され、抵抗減衰を提供する抵抗素子と組み合わされる。
【0027】
第1のフィルタ段は、インダクタとして動作する磁気素子を含み得る。第1のフィルタ段の磁気素子は、ニッケル-亜鉛又はマンガン-亜鉛系フェライトコア、又はナノ結晶系テープ心線を含んでよい。これらの材料は両方とも、105~108Hzの周波数で良好なフィルタリングを提供する。したがって、これらの磁気素子は、DCリンクコンデンサの寄生インダクタンスに起因するリンギングを減衰させるように構成される。
【0028】
DCリンクコンデンサは、容量性ノイズ抑制を提供するように構成できる。DCリンクコンデンサは、インダクタとして動作する磁気素子をそれぞれ含む2つのフィルタ段の間に配置されることにより、干渉抑制コンデンサとして用いることもできる。
【0029】
一実施形態によれば、電気部品は、少なくとも1つのセンサ及び/又は少なくとも1つの機能部品を含んでよい。センサは、温度センサ、電流センサ、湿度センサ、圧力センサ、又はガスセンサであってもよい。電気部品は、温度センサ、電流センサ、湿度センサ、圧力センサ、及びガスセンサから選択される複数のセンサを含んでもよい。機能部品は、データを転送するモジュールであってもよい。
【0030】
さらなる態様によれば、本発明は、上記の電気部品と、インバータ用半導体ブリッジとを備え、該電気部品の出力ポートは、該インバータ用半導体ブリッジに接続されている、電力変換回路に関する。
【0031】
別の態様は、電子部品を製造する方法に関する。好ましい方法は、
機能的なDCリンクコンデンサユニットを製造するステップaと、
機能的なDCリンクコンデンサユニットをバスバーに接続するステップbと、
第1のフィルタ段及び第2のフィルタ段を含むEMCフィルタ又はフィルタサブユニットを製造するステップcと、
バスバーに接続された機能的なDCリンクコンデンサユニット及びEMCフィルタ又はフィルタサブユニットをハウジング内に組み立てるステップdと、を備える。
【0032】
各ステップは、必ずしも上記順序で行われる必要はない。特に、ステップcは、ステップaの前、ステップbの前、又はステップdの前に実行してもよい。
【0033】
ステップdにおいて、センサ及び/又は機能部品をハウジング内に組み立てる。センサは、温度センサ、電流センサ、湿度センサ、圧力センサ、又はガスセンサであってもよい。電気部品は、温度センサ、電流センサ、湿度センサ、圧力センサ、及びガスセンサから選択される複数のセンサを含んでもよい。機能部品は、データを転送するモジュールであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
以下では、図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0035】
図1図1は、電力変換回路を示す図である。
図2図2は、、電力変換回路の電気部品の回路図を示す図である。
図3図3は、磁気素子として使用可能な2つのコアの透磁率を示す図である。
図4図4は、磁気素子として使用可能な2つのコアの透磁率を示す図である。
図5図5は、電気部品の斜視図である。
図6図6は、図1に示している電力変換回路のノイズレベルと比較用電力変換回路のノイズレベルを比較して示す図である。
図7図7は、比較用電力変換回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、電力変換回路1を示す。電力変換回路1は、電気部品2、インバータ用半導体ブリッジ3、及び磁気素子4を含む。電気部品2は、入力ポート2a及び出力ポート2bを備える。電気部品2の入力ポート2aは、電力変換回路1の入力ポートでもある。電気部品2の入力ポート2aは、DC入力、例えば、バッテリに接続されるように構成されている。
【0037】
インバータ用半導体ブリッジ3は、入力ポート3a及び出力ポート3bを備える。電気部品2の出力ポート2bは、インバータ用半導体ブリッジ3の入力ポート3aに接続されるように構成されている。インバータ用半導体ブリッジ3の出力ポート3bは、ケーブルに接続されるように構成され、インバータ用半導体ブリッジ3は、該ケーブルに交流電流を提供するように構成されている。該ケーブルはモータに接続されるように構成されている。磁気素子4は、インバータ用半導体ブリッジ3の出力ポート3bの周りに配置されている。磁気素子4は、インバータ用半導体ブリッジ3の出力ポート3bに設けられた交流電流のフィルタリングを提供するように構成されている。
【0038】
インバータ用半導体ブリッジ3は、電力変換回路1の入力ポートに提供される直流電流を、電力変換回路1の出力ポートに提供される交流電流に変換するように構成されている。インバータ用半導体ブリッジ3は、1つ以上のトランジスタを含む。
【0039】
電気部品は、DCリンクコンデンサCDCLとEMCフィルタ(EMC=電磁適合性)を含む。DCリンクコンデンサCDCLは、エネルギーを貯蔵するように構成されている。EMCフィルタは、不要なエミッションを制限し、インバータの耐性を高めるように構成されている。
【0040】
DCリンクコンデンサCDCL及び電気部品のEMCフィルタは、単一の回路に集積されている。したがって、DCリンクコンデンサCDCL及びEMCフィルタを電力変換回路1に接続するために、電気部品2とインバータ用半導体ブリッジ3との間の単一のインターフェース接続のみを閉じればよい。
【0041】
EMCフィルタは、図1に概略的に示している第1のフィルタ段6及び第2のフィルタ段7を含む。第1のフィルタ段6は、電気部品2の入力ポート2aとDCリンクコンデンサCDCLとの間に配置されている。第2のフィルタ段7は、電気部品2の出力ポート2bとDCリンクコンデンサCDCLとの間に配置されている。
【0042】
電力変換回路1の動作中、インバータ用半導体ブリッジ3に寄生電流及び外乱が発生する可能性がある。第2のフィルタ段7は、第2のフィルタ段7を電気部品2の出力ポート2bに配置されることにより、インバータ用半導体ブリッジ3の近くに配置されている。したがって、第2のフィルタ段7は、インバータ用半導体ブリッジ3において発生する寄生電流又は外乱を、DCリンクコンデンサCDCLに到達する前にフィルタリング及び低減することができる。したがって、第2のフィルタ段7は、インバータ用半導体ブリッジ3からDCリンクコンデンサCDCLへのノイズの移行を回避することができる。第2のフィルタ段7は、ノイズが電力変換回路内で無秩序に拡散する前に、ノイズ源においてノイズをフィルタリングするように構成される。したがって、第2のフィルタ段7は、初期のフィルタ段である。
【0043】
第1のフィルタ段6は、DCリンクコンデンサCDCLと入力ポート2aとの間に配置され、入力ポート2aに供給される任意のノイズ又は寄生電流を、そのノイズが緩和されてDCリンクコンデンサCDCLに入る前に、フィルタリング及び低減するように構成されている。
【0044】
電気部品2について、電気部品2の回路図を示す図2を参照して詳細に説明する。特に、図2は、第1のフィルタ段6及び第2のフィルタ段7をより詳細に示している。
【0045】
電気部品2の入力ポート2a及び出力ポート2bは、それぞれ2つの端子を含む。入力ポート2aの第1の端子は、第1の信号線8によって出力ポート2bの第1の端子に接続されている。入力ポート2aの第2の端子は、第2の信号線9によって出力ポート2bの第2の端子に接続されている。
【0046】
第1のフィルタ段6は、第1のyコンデンサCy11、第2のyコンデンサCy12、xコンデンサCx、第1の磁気素子Lb1、及び第2の磁気素子Lb2を含み、磁気素子Lb1、Lb2はそれぞれインダクタとして動作する。
【0047】
yコンデンサCy11、Cy12は、コモンモードノイズをフィルタリングによって除去するように設計されている。第1のフィルタ段6の第1のyコンデンサCy11は、第1の信号線8及び基準電位に接続されている。基準電位は、電気部品2のハウジング又はシャーシであり得る。第1のyコンデンサCy11は、第1の抵抗R1と直列に接続されている。特に、第1の信号線8は、第1の抵抗R1及び第1のフィルタ段6の第1のyコンデンサCy11を介して基準電位に接続されている。第1の抵抗R1は、抵抗減衰を提供する。
【0048】
第1のフィルタ段6の第2のyコンデンサCy12は、第2の信号線9及び基準電位に接続されている。特に、第2の信号線9は、第2の抵抗R2、第2のyコンデンサCy12を介して基準電位に接続されている。
【0049】
xコンデンサCxは、2つの信号線8、9の間に接続されている。xコンデンサCxは、電力変換回路1を差動モード干渉から保護するように構成されている。
【0050】
磁気素子Lb1、Lb2のそれぞれは、コアを含む。一実施形態によれば、コアは、マンガン-亜鉛系フェライトを含む。別の実施形態によれば、コアは、ナノ結晶系テープ心線を含む。
【0051】
第1の磁気素子Lb1は、第1の信号線8の周りに配置されている。第2の磁気素子Lb2は、第2の信号線9の周りに配置されている。
【0052】
さらに、第1のフィルタ段6は、2つの信号線8、9の間に接続された第3の抵抗R3を含む。第3の抵抗R3は、DCリンクコンデンサCDCLに並列に接続されている。
【0053】
第2のフィルタ段7は、第1のyコンデンサCy21、第2のyコンデンサCy22、スナバコンデンサCS、第1の磁気素子La1及び第2の磁気素子La2を含み、各磁気素子La1、La2はインダクタとして動作する。
【0054】
第2のフィルタ段7のyコンデンサCy21、Cy22は、コモンモードノイズをフィルタリングによって除去するように設計されている。第2のフィルタ段7の第1のyコンデンサCy21は、第1の信号線8及び基準電位に接続されている。基準電位は、電気部品2のハウジング又はシャーシであり得る。第1のyコンデンサCy21は、第4の抵抗R4と直列に接続されている。特に、第1の信号線8は、第4の抵抗R4及び第2のフィルタ段7の第1のyコンデンサCy21を介して基準電位に接続されている。第4の抵抗R4は、抵抗減衰を提供する。
【0055】
第2のフィルタ段7の第2のyコンデンサCy22は、第2の信号線9及び基準電位に接続されている。特に、第2の信号線9は、第5の抵抗R5及び第2のyコンデンサCy22を介して基準電位に接続されている。
【0056】
スナバコンデンサCSは2つの信号線8、9の間に接続されている。
【0057】
第2のフィルタ段7の磁気素子La1、La2はそれぞれ、コアを含む。一実施形態によれば、コアは、マンガン-亜鉛系フェライトを含む。別の実施形態によれば、コアは、ナノ結晶系テープ心線を含む。
【0058】
第1の磁気素子La1は、第1の信号線8の周りに配置されている。第2の磁気素子La2は、第2の信号線9の周りに配置されている。
【0059】
さらに、第2のフィルタ段7は、2つの信号線8、9の間に接続された第6の抵抗R6を含む。第6の抵抗R6は、DCリンクコンデンサCDCLに並列に接続されている。
【0060】
磁気素子La1、La2は、電気部品2の出力ポート2bに発生する寄生電流を分離するように構成されている。特に、寄生電流の電流ピークは、磁気素子La1、La2によって減衰することができる。同時に、インダクタとして動作する磁気素子La1、La2はスナバコンデンサCSによって補償される漏れインダクタンスを生成する。したがって、磁気素子La1、La2及びスナバコンデンサCSは、LCフィルタを提供する。
【0061】
第1のフィルタ段6及び第2のフィルタ段7はそれぞれ、さらにyコンデンサと組み合わされるLCフィルタを形成する。DCリンクコンデンサCDCLは、インダクタとして動作する磁気素子Lb1、Lb2、La1、La2をそれぞれ含む2つのフィルタ段6、7の間に配置されているので、容量性ノイズ抑制を実現するように構成及び配置されている。したがって、DCリンクコンデンサCDCLは、フィルタ回路にさらなる極を提供し、回路内のさらなる対称コンデンサの総量を低減するのに役立つ。
【0062】
DCリンクコンデンサCDCLの寄生インダクタンスにより、リンギングが発生する可能性がある。yコンデンサCy11、Cy12、Cy21、Cy22、スナバコンデンサCS、及びxコンデンサCxをそれぞれ含むEMCフィルタの2つのフィルタ段6、7は、不要なリンギングを低減することができる。
【0063】
図3及び図4は、異なる周波数の磁気素子Lb1、Lb2、La1、La2として使用可能な2つのコアの透磁率を示している。図3は2つのコアの複素透磁率の実数部を示し、図4は2つのコアの複素透磁率の虚数部を示す。第1の実施形態によれば、磁気素子Lb1、Lb2、La1、La2のコアは、MnZnコアである。第2の実施形態によれば、コアはナノ結晶系テープ心線である。曲線K1は、第1の実施形態のコアの透磁率の実数部及び虚数部を示し、曲線K2は、第2の実施形態のコアの透磁率の実数部及び虚数部を示す。
【0064】
両方のコアは一般的に、100KHz以上の損失を有しており、リンギングを減衰させるのに役立つ。図4に示す透磁率の虚数部は、損失を反映している。図4から分かるように、MnZnコアは損失が大きいため、約106Hzの周波数に対して良好なフィルタリングを提供している。さらに、ナノ結晶系テープ心線は、約100KHzの周波数に対して特に良好なフィルタリングを提供する。ナノ結晶系テープ心線は、キロヘルツからFM周波数範囲までの範囲内で良好な損失を提供することができる。
【0065】
図5は、電気部品2の斜視図である。DCリンクコンデンサCDCLは、電気部品2の体積の大部分を占める。第1のフィルタ段6は入力ポート2aとDCリンクコンデンサCDCLとの間に配置され、第2のフィルタ段7は出力ポート2bとDCリンクコンデンサCDCLとの間に配置されている。EMCフィルタ及びDCリンクコンデンサCDCLを、入力端子及び出力端子ととともに、1つのシャーシ10を含む単一の部品に組み合わせることにより、DCリンクコンデンサとEMCフィルタとが別部品であるデバイスに比べて、全体の必要体積が低減される。
【0066】
図6は、図1に示している電力変換回路1のノイズレベルNLnewと比較用電力変換回路のノイズレベルNLcompを比較して示し、EMCフィルタとDCリンクコンデンサは、図7に示すように、別々の素子として設けられている。本発明の電気部品2を含む電力変換回路1のノイズレベルNLnewは、比較用電力変換回路と比較して低減されることが示されている。したがって、電力変換回路1の性能が比較実施形態よりも向上する。特に、10MHzを超える周波数の場合、本発明の電力変換回路1のノイズは、比較実施形態と比較して低減される。
【符号の説明】
【0067】
1 電力変換回路
2 電気部品
2a、3a 入力ポート
2b、3b 出力ポート
3 インバータ用半導体ブリッジ
4 磁気素子
6 第1のフィルタ段
7 第2のフィルタ段
8 第1の信号線
9 第2の信号線
10 シャーシ
DCL DCリンクコンデンサ
y11 第1のフィルタ段の第1のyコンデンサ
y12 第1のフィルタ段の第2のyコンデンサ
x xコンデンサ
Lb1 第1のフィルタ段の第1の磁気素子
Lb2 第1のフィルタ段の第2の磁気素子
y21 第2のフィルタ段の第1のyコンデンサ
y22 第2のフィルタ段の第2のyコンデンサ
S スナバコンデンサ
La1 第2のフィルタ段の第1の磁気素子
La2 第2のフィルタ段の第2の磁気素子
R1 第1の抵抗
R2 第2の抵抗
R3 第3の抵抗
R4 第4の抵抗
R5 第5の抵抗
R6 第6の抵抗
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7