(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045160
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】衣装を着用するロボット
(51)【国際特許分類】
A63H 11/00 20060101AFI20240326BHJP
B25J 5/00 20060101ALI20240326BHJP
B25J 13/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
A63H11/00 Z
B25J5/00 A
B25J13/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023223653
(22)【出願日】2023-12-28
(62)【分割の表示】P 2020559342の分割
【原出願日】2019-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2018234175
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】515337268
【氏名又は名称】GROOVE X株式会社
(72)【発明者】
【氏名】林 要
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ロボットに衣装を着せやすくする。
【解決手段】ロボットは、モーションを選択する動作制御部と、選択されたモーションを実行する駆動機構と、ロボットのモードを設定するモード設定部と、電源制御部と、を備える。動作制御部は、着替えモードに設定されたとき、駆動機構に含まれるアクチュエータのトルクを抑制し、電源制御部は、着替えモード中においても、動作制御部の機能を実現する電子回路への通電を維持する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットのモーションを選択する動作制御部と、
前記動作制御部により選択されたモーションを実行する駆動機構と、
前記ロボットのモードを設定するモード設定部と、
電源制御部と、を備え、
前記動作制御部は、着替えモードに設定されたとき、前記駆動機構に含まれるアクチュエータのトルクを抑制し、
前記電源制御部は、着替えモード中においても、前記動作制御部の機能を実現する電子回路への通電を維持することを特徴とするロボット。
【請求項2】
前記動作制御部は、衣装の着用が完了したことを契機として、特定のモーションを実行対象として選択することを特徴とする請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
前記特定のモーションは、別のロボットに向けたモーションであることを特徴とする請求項2に記載のロボット。
【請求項4】
前記モード設定部は、衣装の着用が完了するまで、前記ロボットのモードを着替えモードに維持することを特徴とする請求項1~3のうちいずれか1項に記載のロボット。
【請求項5】
前記動作制御部は、使用回数が比較的多い衣装を着用する場合におけるモーションと、使用回数が比較的少ない衣装を着用する場合におけるモーションとを異ならせる請求項1~4のうちいずれか1項に記載のロボット。
【請求項6】
前記モード設定部は、ロボットに設けられたモードスイッチの入力に応じて前記モードを設定し、
前記モード設定部は、前記衣装の着用の完了が検出されるという条件と、前記モードスイッチが設けられた部位からユーザが手を離したという条件との両方を充足するまで、着替えモードを維持する請求項1~5のうちいずれか1項に記載のロボット。
【請求項7】
前記モード設定部は、脱衣を検出した場合に、着替えモードに設定する請求項1~6のうちいずれか1項に記載のロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣装を着用するロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
人間は、癒やしを求めてペットを飼う。その一方、ペットの世話をする時間を十分に確保できない、ペットを飼える住環境にない、アレルギーがある、死別がつらい、といったさまざまな理由により、ペットをあきらめている人は多い。もし、ペットの役割が務まるロボットがあれば、ペットを飼えない人にもペットが与えてくれるような癒やしを与えられるかもしれない(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-323219号公報
【特許文献2】国際公開第2017/169826号
【特許文献3】特開2001-191275号公報
【特許文献4】特開2005-13391号公報
【特許文献5】特願2018-14365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
人間は、愛情を注ぐ対象に衣装を着せようとする傾向がある。たとえば、人間は、ぬいぐるみのような無生物にもさまざまな衣装を着せることで愛情を表現しようとする。小型犬に人気があるのは、かわいい服を着せたいという人間の欲求に応えてくれることも理由の一つである。したがって、服を着せたくなるようなロボットであれば、ロボットへの共感を大きく高めることができると考えられる。
【0005】
本発明は上記着想に基づいて完成された発明であり、その主たる目的は、ロボットに衣装を着せやすくするための技術、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様における自律行動型ロボットは、ロボットのモーションを選択する動作制御部と、動作制御部により選択されたモーションを実行する駆動機構と、ロボットのモードを設定するモード設定部と、電源制御部と、を備える。
動作制御部は、着替えモードに設定されたとき、駆動機構に含まれるアクチュエータのトルクを抑制する。電源制御部は、着替えモード中においても、動作制御部の機能を実現する電子回路への通電を維持する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ロボットを着せ替えさせやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0009】
【
図2】ロボットの構造を概略的に表す断面図である。
【
図3】基本構成におけるロボットのハードウェア構成図である。
【
図4】基本構成におけるロボットシステムの機能ブロック図である。
【
図5A】通常モード(撮影可能、移動可能)に対応して目に表示されるアイコンを示す。
【
図5B】第1モード(撮影禁止、移動可能)に対応して目に表示されるアイコンを示す。
【
図5C】第2モード(撮影禁止、移動禁止)に対応して目に表示されるアイコンを示す。
【
図5D】着替えモードに対応して目に表示されるアイコンを示す。
【
図6A】正しく衣装を着用できたとき、目に表示されるアイコンを示す。
【
図6B】正しく衣装を着用できていないとき、目に表示されるアイコンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態におけるロボット100には、さまざまな衣装を着せることができる。自律行動型のロボット100の場合、ロボット100が自由に動くと衣装を着せづらい。ロボット100の電源をオフにしてから衣装を着せるというやり方も考えられる。しかし、生き物のような存在感をロボット100に発揮させることを目的とする以上、衣装を着せるためにロボット100の電源をオフしてしまうことはロボット100の「非生物性」をユーザに意識させてしまうため好ましいことではない。本実施形態におけるロボット100
は、電源をオフにしなくても衣装を着せ替えやすくなるように動作制御を行う。
以下、ロボット100の基本構成について
図1から
図4に関連して説明したあと、ロボット100のさまざまな行動シーンについて説明する。
【0011】
[基本構成]
図1は、ロボット100の外観を表す図である。
図1Aは正面図であり、
図1Bは側面図である。
ロボット100は、外部環境および内部状態に基づいて行動を決定する自律行動型のロボットである。外部環境は、カメラやサーモセンサ115など各種のセンサにより認識される。内部状態はロボット100の感情を表現する様々なパラメータとして定量化される。ロボット100は、オーナー家庭の家屋内を行動範囲とする。以下、ロボット100に関わる人間を「ユーザ」とよぶ。ユーザのうち、ロボット100の所有者または管理者を「オーナー」とよぶ。
【0012】
ロボット100のボディ104は、全体的に丸みを帯びた形状を有し、ウレタンやゴム、樹脂、繊維などやわらかく弾力性のある素材により形成された外皮314を含む。ロボット100に服を着せてもよい。ロボット100の総重量は5~15キログラム程度、身長は0.5~1.2メートル程度である。適度な重さと丸み、柔らかさ、手触りのよさ、といった諸属性により、ユーザがロボット100を抱きかかえやすく、かつ、抱きかかえたくなるという効果が実現される。
【0013】
ロボット100は、一対の前輪102(左輪102a,右輪102b)と、一つの後輪103を含む。前輪102が駆動輪であり、後輪103が従動輪である。前輪102は、操舵機構を有しないが、左右輪の回転速度や回転方向を個別に制御可能とされている。後輪103は、キャスターであり、ロボット100を前後左右へ移動させるために回転自在となっている。後輪103はオムニホイールであってもよい。左輪102aよりも右輪102bの回転数を大きくすることで、ロボット100が左折したり、左回りに回転できる。右輪102bよりも左輪102aの回転数を大きくすることで、ロボット100が右折したり、右回りに回転できる。
【0014】
前輪102および後輪103は、駆動機構(回動機構、リンク機構)によりボディ104に完全収納できる。ボディ104の下半部には左右一対のカバー312が設けられている。カバー312は、可撓性および弾性を有する樹脂材(ラバー、シリコーンゴム等)からなり、柔らかい胴体を構成するとともに前輪102を収納できる。カバー312には側面から前面にかけて開口するスリット313(開口部)が形成され、そのスリット313を介して前輪102を進出させ、外部に露出させることができる。
【0015】
走行時においても各車輪の大半はボディ104に隠れているが、各車輪がボディ104に完全収納されるとロボット100は移動不可能な状態となる。すなわち、車輪の収納動作にともなってボディ104が降下し、床面Fに着座する。この着座状態においては、ボディ104の底部に形成された平坦状の着座面108(接地底面)が床面Fに当接する。
【0016】
ロボット100は、2つの腕106を有する。腕106の先端に手があるが、モノを把持する機能はない。腕106は、後述するアクチュエータの駆動により、上げる、曲げる、手を振る、振動するなど簡単な動作が可能である。2つの腕106は、それぞれ個別に制御可能である。
【0017】
ロボット100の頭部正面には顔領域116が露出している。顔領域116には、2つの目110が設けられている。目110は、液晶素子または有機EL素子による画像表示が可能であり、画像として表示された瞳や瞼を動かすことで視線や表情を表現するための
デバイスである。顔領域116の中央には、鼻109が設けられている。鼻109には、アナログスティックが設けられており、上下左右の全方向に加えて、押し込み方向も検出できる。また、ロボット100には複数のタッチセンサが設けられており、頭部、胴部、臀部、腕など、ロボット100のほぼ全域についてユーザのタッチを検出できる。ロボット100は、音源方向を特定可能なマイクロフォンアレイや超音波センサなど様々なセンサを搭載する。また、スピーカーを内蔵し、簡単な音声を発することもできる。
【0018】
ロボット100の頭部にはツノ112が取り付けられる。ツノ112には全天周カメラ113が取り付けられ、ロボット100の上部全域を一度に撮像可能である。ツノ112にはまた、サーモセンサ115(サーモカメラ)が内蔵されている。また、ツノ112には赤外線を利用した通信をするためのモジュール(図示せず)が複数設けられており、それらのモジュールが周囲に向けて環状に設置されている。このため、ロボット100は方向を認識しながら赤外線通信ができる。更に、ツノ112には、緊急停止用のスイッチが設けられており、ユーザはツノ112を引き抜くことでロボット100を緊急停止できる。
【0019】
図2は、ロボット100の構造を概略的に表す断面図である。
ボディ104は、本体フレーム310、一対の腕106、一対のカバー312および外皮314を含む。本体フレーム310は、頭部フレーム316および胴部フレーム318を含む。頭部フレーム316は、中空半球状をなし、ロボット100の頭部骨格を形成する。胴部フレーム318は、角筒形状をなし、ロボット100の胴部骨格を形成する。胴部フレーム318の下端部が、ロアプレート334に固定されている。頭部フレーム316は、接続機構330を介して胴部フレーム318に接続されている。
【0020】
胴部フレーム318は、ボディ104の軸芯を構成する。胴部フレーム318は、ロアプレート334に左右一対のサイドプレート336を固定して構成され、一対の腕106および内部機構を支持する。胴部フレーム318の内方には、バッテリー118、制御回路342および各種アクチュエータ等が収容されている。ロアプレート334の底面が着座面108を形成する。
【0021】
胴部フレーム318は、その上部にアッパープレート332を有する。アッパープレート332には、有底円筒状の支持部319が固定されている。アッパープレート332、ロアプレート334、一対のサイドプレート336および支持部319が、胴部フレーム318を構成している。支持部319の外径は、左右のサイドプレート336の間隔よりも小さい。一対の腕106は、環状部材340と一体に組み付けられることでアームユニット350を構成している。環状部材340は円環状をなし、その中心線上を径方向に離隔するように一対の腕106が取り付けられている。環状部材340は、支持部319に同軸状に挿通され、一対のサイドプレート336の上端面に載置されている。アームユニット350は、胴部フレーム318により下方から支持されている。
【0022】
頭部フレーム316は、ヨー軸321、ピッチ軸322およびロール軸323を有する。頭部フレーム316のヨー軸321周りの回動(ヨーイング)により首振り動作が実現され、ピッチ軸322周りの回動(ピッチング)により頷き動作,見上げ動作および見下ろし動作が実現され、ロール軸323周りの回動(ローリング)により首を左右に傾げる動作が実現される。各軸は、接続機構330の駆動態様に応じて三次元空間における位置や角度が変化し得る。接続機構330は、リンク機構からなり、胴部フレーム318に設置された複数のモータにより駆動される。
【0023】
胴部フレーム318は、車輪駆動機構370を収容している。車輪駆動機構370は、前輪102および後輪103をそれぞれボディ104から出し入れする前輪駆動機構およ
び後輪駆動機構を含む。前輪102および後輪103は、ロボット100を移動させる「移動機構」として機能する。前輪102は、その中心部にダイレクトドライブモータを有する。このため、左輪102aと右輪102bを個別に駆動できる。前輪102はホイールカバー105に回転可能に支持され、そのホイールカバー105が胴部フレーム318に回動可能に支持されている。
【0024】
一対のカバー312は、胴部フレーム318を左右から覆うように設けられ、ボディ104のアウトラインに丸みをもたせるよう、滑らかな曲面形状とされている。胴部フレーム318とカバー312との間に閉空間が形成され、その閉空間が前輪102の収容空間Sとなっている。後輪103は、胴部フレーム318の下部後方に設けられた収容空間に収容される。
【0025】
外皮314は、本体フレーム310および一対の腕106を外側から覆う。外皮314は、人が弾力を感じる程度の厚みを有し、ウレタンスポンジなどの伸縮性を有する素材で形成される。これにより、ユーザがロボット100を抱きしめると、適度な柔らかさを感じ、人がペットにするように自然なスキンシップをとることができる。外皮314は、カバー312を露出させる態様で本体フレーム310に装着されている。外皮314の上端部には、開口部390が設けられる。この開口部390がツノ112を挿通する。
【0026】
本体フレーム310と外皮314との間にはタッチセンサが配設される。カバー312にはタッチセンサが埋設されている。これらのタッチセンサは、いずれも静電容量センサであり、ロボット100のほぼ全域におけるタッチを検出する。なお、タッチセンサを外皮314に埋設してもよいし、本体フレーム310の内側に配設してもよい。
【0027】
腕106は、第1関節352および第2関節354を有し、両関節の間に腕356、第2関節354の先に手358を有する。第1関節352は肩関節に対応し、第2関節354は手首関節に対応する。各関節にはモータが設けられ、腕356および手358をそれぞれ駆動する。腕106を駆動するための駆動機構は、これらのモータおよびその駆動回路344を含む。
【0028】
図3は、ロボット100のハードウェア構成図である。
ロボット100は、内部センサ128、通信機126、記憶装置124、プロセッサ122、駆動機構120およびバッテリー118を含む。駆動機構120は、上述した接続機構330および車輪駆動機構370を含む。プロセッサ122と記憶装置124は、制御回路342に含まれる。各ユニットは電源線130および信号線132により互いに接続される。バッテリー118は、電源線130を介して各ユニットに電力を供給する。各ユニットは信号線132により制御信号を送受する。バッテリー118は、リチウムイオン二次電池であり、ロボット100の動力源である。
【0029】
内部センサ128は、ロボット100が内蔵する各種センサの集合体である。具体的には、カメラ、マイクロフォンアレイ、測距センサ(赤外線センサ)、サーモセンサ115、タッチセンサ、加速度センサ、気圧センサ、ニオイセンサなどである。タッチセンサは、ボディ104の大部分の領域に対応し、静電容量の変化に基づいてユーザのタッチを検出する。ニオイセンサは、匂いの元となる分子の吸着によって電気抵抗が変化する原理を応用した既知のセンサである。
【0030】
通信機126は、各種の外部機器を対象として無線通信を行う通信モジュールである。記憶装置124は、不揮発性メモリおよび揮発性メモリにより構成され、コンピュータプログラムや各種設定情報を記憶する。プロセッサ122は、コンピュータプログラムの実行手段である。駆動機構120は、複数のアクチュエータを含む。このほか、表示器やス
ピーカーなども搭載される。
【0031】
駆動機構120は、主として、車輪と頭部を制御する。駆動機構120は、ロボット100の移動方向や移動速度を変化させるほか、車輪を昇降させることもできる。車輪が上昇すると、車輪はボディ104に完全に収納され、ロボット100は着座面108にて床面Fに当接し、着座状態となる。また、駆動機構120は、腕106を制御する。
【0032】
図4は、ロボットシステム300の機能ブロック図である。
ロボットシステム300は、ロボット100、サーバ200および複数の外部センサ114を含む。ロボット100およびサーバ200の各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)および各種コプロセッサなどの演算器、メモリやストレージといった記憶装置、それらを連結する有線または無線の通信線を含むハードウェアと、記憶装置に格納され、演算器に処理命令を供給するソフトウェアによって実現される。コンピュータプログラムは、デバイスドライバ、オペレーティングシステム、それらの上位層に位置する各種アプリケーションプログラム、また、これらのプログラムに共通機能を提供するライブラリによって構成されてもよい。以下に説明する各ブロックは、ハードウェア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。
ロボット100の機能の一部はサーバ200により実現されてもよいし、サーバ200の機能の一部または全部はロボット100により実現されてもよい。
【0033】
家屋内にはあらかじめ複数の外部センサ114が設置される。サーバ200は、外部センサ114を管理し、必要に応じてロボット100に外部センサ114により取得された検出値を提供する。ロボット100は、内部センサ128および複数の外部センサ114から得られる情報に基づいて、基本行動を決定する。外部センサ114はロボット100の感覚器を補強するためのものであり、サーバ200はロボット100の処理能力を補強するためのものである。ロボット100の通信機126がサーバ200と定期的に通信し、サーバ200が外部センサ114によりロボット100の位置を特定する処理を担ってもよい(特許文献2も参照)。
【0034】
(サーバ200)
サーバ200は、通信部204、データ処理部202およびデータ格納部206を含む。
通信部204は、外部センサ114およびロボット100との通信処理を担当する。データ格納部206は各種データを格納する。データ処理部202は、通信部204により取得されたデータおよびデータ格納部206に格納されるデータに基づいて各種処理を実行する。データ処理部202は、通信部204およびデータ格納部206のインタフェースとしても機能する。
【0035】
データ格納部206は、モーション格納部232と個人データ格納部218を含む。
ロボット100は、複数の動作パターン(モーション)を有する。腕106を震わせる、蛇行しながらオーナーに近づく、首をかしげたままオーナーを見つめる、などさまざまなモーションが定義される。
【0036】
モーション格納部232は、モーションの制御内容を定義する「モーションファイル」を格納する。各モーションは、モーションIDにより識別される。モーションファイルは、ロボット100のモーション格納部160にもダウンロードされる。どのモーションを実行するかは、サーバ200で決定されることもあるし、ロボット100で決定されることもある。
【0037】
ロボット100のモーションの多くは、複数の単位モーションを含む複合モーションと
して構成される。たとえば、ロボット100がオーナーに近づくとき、オーナーの方に向き直る単位モーション、手を上げながら近づく単位モーション、体を揺すりながら近づく単位モーション、両手を上げながら着座する単位モーションの組み合わせとして表現されてもよい。このような4つのモーションの組み合わせにより、「オーナーに近づいて、途中で手を上げて、最後は体をゆすった上で着座する」というモーションが実現される。モーションファイルには、ロボット100に設けられたアクチュエータの回転角度や角速度などが時間軸に関連づけて定義される。モーションファイル(アクチュエータ制御情報)にしたがって、時間経過とともに各アクチュエータを制御することで様々なモーションが表現される。
【0038】
先の単位モーションから次の単位モーションに変化するときの移行時間を「インターバル」とよぶ。インターバルは、単位モーション変更に要する時間やモーションの内容に応じて定義されればよい。インターバルの長さは調整可能である。
以下、いつ、どのモーションを選ぶか、モーションを実現する上での各アクチュエータの出力調整など、ロボット100の行動制御に関わる設定のことを「行動特性」と総称する。ロボット100の行動特性は、モーション選択アルゴリズム、モーションの選択確率、モーションファイル等により定義される。
【0039】
モーション格納部232は、モーションファイルのほか、各種のイベントが発生したときに実行すべきモーションを定義するモーション選択テーブルを格納する。モーション選択テーブルにおいては、イベントに対して1以上のモーションとその選択確率が対応づけられる。
【0040】
個人データ格納部218は、ユーザの情報を格納する。具体的には、ユーザに対する親密度とユーザの身体的特徴・行動的特徴を示すマスタ情報を格納する。年齢や性別などの他の属性情報を格納してもよい。
【0041】
ロボット100は、ユーザごとに親密度という内部パラメータを有する。ロボット100が、自分を抱き上げる、声をかけてくれるなど、自分に対して好意を示す行動を認識したとき、そのユーザに対する親密度が高くなる。ロボット100に関わらないユーザや、乱暴を働くユーザ、出会う頻度が低いユーザに対する親密度は低くなる。
【0042】
データ処理部202は、位置管理部208、認識部212、動作制御部222、親密度管理部220および状態管理部244を含む。
位置管理部208は、ロボット100の位置座標を特定する。状態管理部244は、充電率や内部温度、プロセッサ122の処理負荷などの各種物理状態など各種内部パラメータを管理する。また、状態管理部244は、ロボット100の感情(寂しさ、好奇心、承認欲求など)を示すさまざまな感情パラメータを管理する。これらの感情パラメータは常に揺らいでいる。感情パラメータに応じてロボット100の移動目標地点が変化する。たとえば、寂しさが高まっているときには、ロボット100はユーザのいるところを移動目標地点として設定する。
【0043】
時間経過によって感情パラメータが変化する。また、後述の応対行為によっても各種感情パラメータは変化する。たとえば、オーナーから「抱っこ」をされると寂しさを示す感情パラメータは低下し、長時間にわたってオーナーを視認しないときには寂しさを示す感情パラメータは少しずつ増加する。
【0044】
認識部212は、外部環境を認識する。外部環境の認識には、温度や湿度に基づく天候や季節の認識、光量や温度に基づく物陰(安全地帯)の認識など多様な認識が含まれる。ロボット100の認識部156は、内部センサ128により各種の環境情報を取得し、こ
れを一次処理した上でサーバ200の認識部212に転送する。
【0045】
具体的には、ロボット100の認識部156は、画像から移動物体、特に、人物や動物に対応する画像領域を抽出し、抽出した画像領域から移動物体の身体的特徴や行動的特徴を示す特徴量の集合として「特徴ベクトル」を抽出する。特徴ベクトル成分(特徴量)は、各種身体的・行動的特徴を定量化した数値である。たとえば、人間の目の横幅は0~1の範囲で数値化され、1つの特徴ベクトル成分を形成する。人物の撮像画像から特徴ベクトルを抽出する手法については、既知の顔認識技術の応用である。ロボット100は、特徴ベクトルをサーバ200に送信する。
【0046】
サーバ200の認識部212は、ロボット100の内蔵カメラによる撮像画像から抽出された特徴ベクトルと、個人データ格納部218にあらかじめ登録されているユーザ(クラスタ)の特徴ベクトルと比較することにより、撮像されたユーザがどの人物に該当するかを判定する(ユーザ識別処理)。また、認識部212は、ユーザの表情を画像認識することにより、ユーザの感情を推定する。認識部212は、人物以外の移動物体、たとえば、ペットである猫や犬についてもユーザ識別処理を行う。
【0047】
認識部212は、ロボット100になされたさまざまな応対行為を認識し、快・不快行為に分類する。認識部212は、また、ロボット100の行動に対するオーナーの応対行為を認識することにより、肯定・否定反応に分類する。
快・不快行為は、ユーザの応対行為が、生物として心地よいものであるか不快なものであるかにより判別される。たとえば、抱っこされることはロボット100にとって快行為であり、蹴られることはロボット100にとって不快行為である。肯定・否定反応は、ユーザの応対行為が、ユーザの快感情を示すものか不快感情を示すものであるかにより判別される。抱っこされることはユーザの快感情を示す肯定反応であり、蹴られることはユーザの不快感情を示す否定反応である。
【0048】
サーバ200の動作制御部222は、ロボット100の動作制御部150と協働して、ロボット100のモーションを決定する。サーバ200の動作制御部222は、ロボット100の移動目標地点とそのための移動ルートを作成する。動作制御部222は、複数の移動ルートを作成し、その上で、いずれかの移動ルートを選択してもよい。
【0049】
動作制御部222は、モーション格納部232の複数のモーションからロボット100のモーションを選択する。各モーションには状況ごとに選択確率が対応づけられている。たとえば、オーナーから快行為がなされたときには、モーションAを20%の確率で実行する、気温が30度以上となったとき、モーションBを5%の確率で実行する、といった選択方法が定義される。
【0050】
親密度管理部220は、ユーザごとの親密度を管理する。上述したように、親密度は個人データ格納部218において個人データの一部として登録される。快行為を検出したとき、親密度管理部220はそのオーナーに対する親密度をアップさせる。不快行為を検出したときには親密度はダウンする。また、長期間視認していないオーナーの親密度は徐々に低下する。
【0051】
(ロボット100)
ロボット100は、通信部142、データ処理部136、データ格納部148、内部センサ128および駆動機構120を含む。
通信部142は、通信機126(
図3参照)に該当し、外部センサ114、サーバ200および他のロボット100との通信処理を担当する。データ格納部148は各種データを格納する。データ格納部148は、記憶装置124(
図3参照)に該当する。データ処
理部136は、通信部142により取得されたデータおよびデータ格納部148に格納されているデータに基づいて各種処理を実行する。データ処理部136は、プロセッサ122およびプロセッサ122により実行されるコンピュータプログラムに該当する。データ処理部136は、通信部142、内部センサ128、駆動機構120およびデータ格納部148のインタフェースとしても機能する。
【0052】
データ格納部148は、ロボット100の各種モーションを定義するモーション格納部160を含む。
ロボット100のモーション格納部160には、サーバ200のモーション格納部232から各種モーションファイルがダウンロードされる。モーションは、モーションIDによって識別される。前輪102を収容して着座する、腕106を持ち上げる、2つの前輪102を逆回転させることで、あるいは、片方の前輪102だけを回転させることでロボット100を回転行動させる、前輪102を収納した状態で前輪102を回転させることで震える、ユーザから離れるときにいったん停止して振り返る、などのさまざまなモーションを表現するために、各種アクチュエータ(駆動機構120)の動作タイミング、動作時間、動作方向などがモーションファイルにおいて時系列定義される。
データ格納部148には、個人データ格納部218からも各種データがダウンロードされてもよい。
【0053】
データ処理部136は、認識部156および動作制御部150を含む。
ロボット100の動作制御部150は、サーバ200の動作制御部222と協働してロボット100のモーションを決める。一部のモーションについてはサーバ200で決定し、他のモーションについてはロボット100で決定してもよい。また、ロボット100がモーションを決定するが、ロボット100の処理負荷が高いときにはサーバ200がモーションを決定するとしてもよい。サーバ200においてベースとなるモーションを決定し、ロボット100において追加のモーションを決定してもよい。モーションの決定処理をサーバ200およびロボット100においてどのように分担するかはロボットシステム300の仕様に応じて設計すればよい。
【0054】
ロボット100の動作制御部150は選択したモーションを駆動機構120に実行指示する。駆動機構120は、モーションファイルにしたがって、各アクチュエータを制御する。
【0055】
動作制御部150は、親密度の高いユーザが近くにいるときには「抱っこ」をせがむ仕草として両方の腕106をもちあげるモーションを実行することもできるし、「抱っこ」に飽きたときには左右の前輪102を収容したまま逆回転と停止を交互に繰り返すことで抱っこをいやがるモーションを表現することもできる。駆動機構120は、動作制御部150の指示にしたがって前輪102や腕106、首(頭部フレーム316)を駆動することで、ロボット100にさまざまなモーションを表現させる。
【0056】
ロボット100の認識部156は、内部センサ128から得られた外部情報を解釈する。認識部156は、視覚的な認識(視覚部)、匂いの認識(嗅覚部)、音の認識(聴覚部)、触覚的な認識(触覚部)が可能である。
【0057】
認識部156は、移動物体の撮像画像から特徴ベクトルを抽出する。上述したように、特徴ベクトルは、移動物体の身体的特徴と行動的特徴を示すパラメータ(特徴量)の集合である。移動物体を検出したときには、ニオイセンサや内蔵の集音マイク、温度センサ等からも身体的特徴や行動的特徴が抽出される。これらの特徴も定量化され、特徴ベクトル成分となる。認識部156は、特許文献2等に記載の既知の技術に基づいて、特徴ベクトルからユーザを特定する。
【0058】
検出・分析・判定を含む一連の認識処理のうち、ロボット100の認識部156は認識に必要な情報の取捨選択や抽出を行い、判定等の解釈処理はサーバ200の認識部212により実行される。認識処理は、サーバ200の認識部212だけで行ってもよいし、ロボット100の認識部156だけで行ってもよいし、上述のように双方が役割分担をしながら上記認識処理を実行してもよい。
【0059】
ロボット100に対する強い衝撃が与えられたとき、認識部156はタッチセンサおよび加速度センサによりこれを認識し、サーバ200の認識部212は、近隣にいるユーザによって「乱暴行為」が働かれたと認識する。ユーザがツノ112を掴んでロボット100を持ち上げるときにも、乱暴行為と認識してもよい。ロボット100に正対した状態にあるユーザが特定音量領域および特定周波数帯域にて発声したとき、サーバ200の認識部212は、自らに対する「声掛け行為」がなされたと認識してもよい。また、体温程度の温度を検知したときにはユーザによる「接触行為」がなされたと認識し、接触認識した状態で上方への加速度を検知したときには「抱っこ」がなされたと認識する。ユーザがボディ104を持ち上げるときの物理的接触をセンシングしてもよいし、前輪102にかかる荷重が低下することにより抱っこを認識してもよい。
まとめると、ロボット100は内部センサ128によりユーザの行為を物理的情報として取得し、サーバ200の認識部212は快・不快を判定する。また、サーバ200の認識部212は特徴ベクトルに基づくユーザ識別処理を実行する。
【0060】
サーバ200の認識部212は、ロボット100に対するユーザの各種応対を認識する。各種応対行為のうち一部の典型的な応対行為には、快または不快、肯定または否定が対応づけられる。一般的には快行為となる応対行為のほとんどは肯定反応であり、不快行為となる応対行為のほとんどは否定反応となる。快・不快行為は親密度に関連し、肯定・否定反応はロボット100の行動選択に影響する。
【0061】
認識部156により認識された応対行為に応じて、サーバ200の親密度管理部220はユーザに対する親密度を変化させる。原則的には、快行為を行ったユーザに対する親密度は高まり、不快行為を行ったユーザに対する親密度は低下する。
【0062】
サーバ200の各機能は、その機能を実現するためのプログラムがメモリにロードされ実体化(インスタンス化)することで実現される。サーバ200の処理能力により、ロボット100による各種処理を補う。サーバ200は、ロボット100のリソースとして利用できる。サーバ200のリソースをどのように利用するかはロボット100からのリクエストに応じて動的に決められる。たとえば、ロボット100において、多数のタッチセンサからの検出値に応じて複雑なモーションを連続的に生成する必要がある場合、ロボット100におけるプロセッサ122の処理をモーションの選択・生成に優先的に割り当て、周囲の状況を画像認識するための処理はサーバ200の認識部212でおこなうとしてもよい。このように、ロボット100とサーバ200の間でロボットシステム300の各種処理を分散化できる。
【0063】
単一のサーバ200にて複数のロボット100を制御することもできる。この場合、サーバ200の各機能は、ロボット100ごとに独立して実体化される。たとえば、サーバ200はロボット100Aのための認識部212(インスタンス・オブジェクト)とは別にロボット100Bのための認識部212を用意してもよい。
【0064】
以上の基本構成を前提として、次に、本実施形態におけるロボット100の実装について、特に、本実装の特徴と目的および基本構成との相違点を中心として説明する。
【0065】
[SLAM]
本実施形態のロボット100は全天周カメラ113によって定期的に周辺を撮像することにより多数の撮像画像(静止画像)を取得する。ロボット100は、撮像画像に基づく記憶(以下、「画像記憶」とよぶ)を形成する。
【0066】
画像記憶は、複数のキーフレームの集合体である。キーフレームは、撮像画像における特徴点(特徴量)の分布情報である。本実施形態のロボット100は、画像特徴量を用いたグラフベースのSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術、より具体的には、ORB(Oriented FAST and Rotated BRIEF)特徴量に基づくSLAM技術によりキーフレームを形成する(特許文献5参照)。
【0067】
ロボット100は、移動しながらキーフレームを定期的に形成することにより、キーフレームの集合体、いいかえれば、画像特徴分布として画像記憶を形成する。ロボット100は、現在地点において取得したキーフレームと、既に保有している多数のキーフレームを比較することにより、現在地点を推定する。すなわち、ロボット100は、実際に視認している撮像画像とかつて視認した撮像画像(記憶)を比較し、自らの現在の状況と過去の記憶を整合させることで「空間認識」を行う。特徴点の集合体として形成される画像記憶は、いわゆるマップ(地図)となる。ロボット100は、現在地点を推定ながら移動しつつ、マップを更新する。
【0068】
基本構成のロボット100は、キーフレームではなく外部センサ114により位置を認識することが前提となっている。本実施形態のロボット100は、キーフレームのみに基づいて場所を認識するものとして説明する。
【0069】
本実施形態におけるロボット100は、各種モードを設定するための「モード設定部」を備える。ロボット100は、眼画像を生成する「眼生成部」、眼画像を目110に表示させる「眼表示部」、ロボット100の脱衣および着衣を検出する「衣装検出部」を備える。また、ロボット100は、複数の電源線130の導通を制御する「電源制御回路」を備える。
【0070】
[衣装の着せ替え]
図5Aから
図5Dは、モードに対応して目110に表示されるアイコンを示す。
ロボット100は、複数のモードを備える。本実施形態におけるロボット100は「通常モード(撮影可能、移動可能)」「第1モード(撮影禁止、移動可能)」「第2モード(撮影禁止、移動禁止)」「着替えモード」の4種類であるとして説明する。ユーザは、ツノ112に設置されるモードスイッチ(環状スイッチ:図示せず)により、ロボット100のモードを手動で設定できる。モード設定部は、モードスイッチの入力結果に応じて、ロボット100のモードを設定する。
【0071】
眼表示部は、目110にモードを示すアイコン(以下、「モードアイコン」とよぶ)を表示させる。ユーザは、モードを変更したとき、ロボット100の目110を確認することで現在のモードを確認できる。ツノ112にはタッチセンサが含まれる。ユーザがツノ112にタッチすると、ロボット100は一時的に静止する。ユーザはツノ112に触れることさえできればロボット100を一時的に静止させることができるため、モードスイッチなどツノ112に設置される各種入力デバイスを落ち着いて操作できる。
【0072】
眼表示部は、ツノ112にタッチされているときにモードアイコンを目110に表示させるとしてもよい。ツノ112から手を離すと眼表示部はモードアイコンを消して、通常の瞳画像を表示させる。ユーザは、ツノ112をタッチすることでロボット100の現在
のモードを確認できる。ツノ112など目110以外の部材にモニタを設置し、これらのモニタにモードアイコンを表示させてもよい。
【0073】
通常モード(撮影可能、移動可能)のとき、眼表示部は
図5Aに示すアイコンを目110に表示させる。第1モード(撮影禁止、移動可能)のとき、眼表示部は
図5Bに示すアイコンを目110に表示させる。第2モード(撮影禁止、移動禁止)のとき、眼表示部は
図5Cに示すアイコンを目110に表示させる。着替えモードのとき、眼表示部は
図5Dに示すアイコンを目110に表示させる。
【0074】
着替えモードにおいては、動作制御部150は、前輪102をカバー312の内側に収納させる。すなわち、着替えモードではロボット100は移動禁止となる。また、動作制御部150は腕と首のアクチュエータのトルクを低下させる。着替えモード中においては、全体的にロボット100の体から力が抜けた状態となる。この結果、ユーザはロボット100の腕や首を動かしやすくなり、衣装をロボット100から脱がせたり、着せたりしやすくなる。腕のアクチュエータへの電力供給をオフすることで腕を完全に脱力させてもよい。具体的にはモード設定部は、着替えモードに設定されたとき、腕のアクチュエータと電源線130の接続断を電源制御回路に指示すればよい。首のアクチュエータへの電力供給をオフしてもよいが、着替えモードにおいてもさまざまなモーションを実行させるため、首のアクチュエータに対する電力供給は維持してもよい。
【0075】
着替えモードにおいても、駆動機構120に含まれる少なくとも一部のアクチュエータとプロセッサ122への通電は維持される。動作制御部150の機能が維持されるため、着替え中であってもロボット100は眼画像の変化や音声の出力なども含めてさまざまなモーションを実行できる。また、着替えが完了した直後にもモーションを実行できる。
【0076】
ユーザは、着替えモードに設定したあと、ロボット100の衣装を脱がせる。そのあと、ユーザは、新しい衣装をロボット100に着せて、着替えモードから通常モードなどの別のモードに変更する。
【0077】
図6Aおよび
図6Bは、衣装の着用後に目110に表示されるアイコンを示す。
正しく衣装を着用できたとき、眼生成部は
図6Aに示すアイコンを表示させる。一方、衣装を正しく着用できていないときには、眼表示部は
図6Bに示すアイコンを表示させる。衣装にはICタグがあらかじめ縫い込まれている。また、ロボット100のボディにはICタグと通信するためのICタグリーダが含まれる。ICタグとICタグリーダはあらかじめ正常に衣装を着用したときに向かい合うように位置合わせされている。ICタグとICタグリーダは、RFID(Radio Frequency Identifier)技術に基づき、数cmから数m程度の近距離にて無線通信により情報を送受する。本実施形態におけるロボット100のICタグリーダは、数cm程度の近距離無線通信を対象として設定される。衣装の所定箇所に取り付けられたICタグと、ロボットの所定箇所に設けられたICタグリーダとが重ならなければ、ICタグリーダはICタグの内容を読み取れない。ICタグリーダは、ICタグと向い合わせになったとき、ICタグから衣装を識別する「衣装ID」を受信する。ICタグリーダが衣装IDを読み取れなかったとき、100は衣装を着用していないか、少なくとも正しく着用できていないと判断できる。
【0078】
衣装検出部は、ICタグリーダが衣装のICタグの信号を正しく読み取れたか否かにより正しく衣装を着用できているか否かを判断する。ICタグおよびICタグリーダは複数個所に設けられてもよい。
【0079】
着替えに際し、いったんロボット100から衣装を脱がせたとき、動作制御部150は脱衣モーションを実行する。脱衣モーションとしては、たとえば、ロボット100に身震
いをさせる、手をばたばたさせるなど、寒さや当惑、驚きを示すモーションとして定義されればよい。着替えモードにおいても電源がオフされないため、ロボット100は脱衣モーションを実行できる。たとえば、所定条件が満たされる場合に、脱衣モーションとして寒がる仕草を実行してもよい。所定条件は、温度センサから検出された温度が所定以下であるという条件であってもよい。また、所定条件は、不図示の時計機能から示される日時が所定の時期(例えば冬)であるという条件であってもよい。このように、気温や季節、時間帯に応じて動作制御部150は適切な脱衣モーションを選択してもよい。脱衣モーションは、恥ずかしがる仕草であってもよいし、早く衣装を着せてもらいたいとせがむような仕草であってもよい。いずれにしても、ユーザによる着せ替え作業を妨げないように、移動をともなわない脱衣モーションが実行されればよい。ユーザがロボット100から衣装C1を脱がせてから、新たに着せる衣装C2を手に取り、衣装C2をロボット100に着せようとするまでの間に脱衣モーションが実行される。
【0080】
新たに衣装を着せる最中においては、動作制御部150はさまざまな中間モーションを実行させる。たとえば、ロボット100が頭をユーザの方向に向ける、眼画像を変化させて視線をユーザの方向に向けるなどの制御により、着替えに対する期待感や、着替え中のアイコンタクトなどの表現が可能である。また、腕のタッチセンサが接触を検出したときには手を袖に通していると判断し、腕のトルクをゆるめる、あるいは、腕をゆらすことで袖を通しやすくするように制御してもよい。また、着せ替え中に、ユーザがロボット100を手に取ってその姿勢を変える必要がある。ロボット100は、そのときの姿勢に応じて音声を出力してもよい。たとえば、ロボット100は、加速度センサまたは全天周カメラ113の撮像画像により姿勢変化を測定し、姿勢の変化に連動するように音声を出力してもよい。このように、着替え中においても、ロボット100が主体的に動作することで、意思を有するかのような生物らしさを表現できる。また、好きな衣装に着替えるときはユーザに協力的な中間モーションを実行し、あまり好きでは無い衣装に着替えるときはユーザに協力的ではない中間モーションを実行してもよい。着替えという行為を通して、ユーザがロボット100に直接触れあうことで、ユーザのロボット100に対する愛着が生まれやすくなる。
【0081】
着替えが完了したとき、動作制御部150は着衣モーションを実行する。着衣モーションは、たとえば、ロボット100が頭をユーザの方に向ける、手をばたばたさせる、目を回す、など任意のモーションであればよい。ユーザは、着衣モーションにより、ロボット100が衣装を着替えさえてくれたことを喜んでいると感じることができる。また、新しい衣装を気に入っているかのように認識できる。着替えモードの終了後には、各アクチュエータのトルクが戻るため、力強いモーションを実行可能となる。
【0082】
着衣モーションは、衣装を着用した直後にのみ実行される特別なモーションであってよい。こうした特別なモーションを用意することにより、着衣モーションを見たいがゆえに、ユーザが着替えの頻度を高めることが期待できる。着替えの回数が増えることにより、ユーザがロボット100と触れあう時間が長くなる。着衣モーションは、着替え直後だけに実行されるモーションであり、衣装ごとに用意されてもよいし、季節や世の中の流行などに応じて用意されてもよい。たとえば、外部サーバ(図示せず)から、適宜、モーションファイルをサーバ200にダウンロードすることで、ロボット100の着衣モーションのレパートリーを更新してもよい。衣装IDと着衣モーションを対応づけて管理してもよい。
【0083】
ユーザがロボット100を着替えさせたあと、着替えモードから他のモードに設定変更したとき、モード設定部はユーザがツノ112から手を離したことを検出したことを条件として、他のモードに設定変更する。手を離すことの検出は、カメラによる撮像画像に基づいて実行されてもよいし、ツノ112に設けられたタッチセンサの出力値に基づいて実
行されてもよい。このような制御方法によれば、ユーザがツノ112のモードスイッチを制御している最中にいきなりロボット100が動き出すことがないため安全性が高まる。着替えモードに限らず、モード制御部は、ツノ112からのタッチが検出されていないときに、実際にモードを変更する。
【0084】
着替えモード中においては、駆動機構120への通電を完全にオフしてもよい。この場合にも、プロセッサ122と目110への通電が維持されていれば、眼表示部は眼画像を着替え中であっても変化させることができる。いいかえれば、アクチュエータの駆動をともなわなくとも眼画像によってさまざまな感情表現が可能となる。
【0085】
ロボット100のアクチュエータにロック機能を設けてもよい。着替えモード中は、モード設定部は全部または一部のアクチュエータにロックをかけて、全体的または部分的にロボット100を硬直させてもよい。あるいは、着替えモード中においてはアクチュエータのロックをオフすることで、ロボット100の各部を動かしやすくなるように制御してもよい。
【0086】
ユーザは、音声により着替えモードを設定してもよい。たとえば、ユーザが「お着替えをしようね」という音声を発したとき、ロボット100のマイクなどを介して収集した音声が所定条件を満たすことを要件として、モード設定部は自動的に着替えモードに設定してもよい。また、ユーザはロボット100に衣装を見せたとき、ロボット100のカメラなどを介して衣装を検出することを要件として、モード設定部は自動的に着替えモードに設定してもよい。この場合には、ロボット100が衣装を見ることでお着替えを期待するかのような行動態様を実現できる。ユーザは、スマートフォンなどの携帯端末から、着替えモードへの移行を示すコマンドを送信してもよい。
【0087】
ユーザがロボット100から衣装を脱がせたとき、モード設定部はお着替えモードに設定してもよい。ロボット100のICタグリーダが衣装のICタグを読み取れなくなったとき、衣装検出部は脱衣を検出するとしてもよい。この検出を契機としてモード設定部は着替えモードを設定してもよい。また、いったん衣装を脱がされたロボット100が、再び着衣を検出したときには、モード設定部は着替えモードから通常モード(他のモード)に設定変更してもよい。
【0088】
衣装を脱がされている状態で、ユーザが手動でモードスイッチを操作し、着替えモードを終了させようとしても、モード設定部は着替えモードを維持するとしてもよい。
【0089】
動作制御部150は、新たに着用させる衣装に基づいて、中間モーションあるいは着衣モーションを選択してもよい。ロボット100は、衣装の着用履歴を記憶してもよい。着用履歴は、いつ、誰が、どの衣装を着せたか、を時系列に記録したものである。動作制御部150は、単位期間あたりの着用回数に基づいて、複数種類の中間モーションの選択確率を設定変更してもよい。このような制御方法によれば、どのような衣装を来てきたかという「記憶」に基づいて中間モーションを変化させることができる。着衣モーションについても同様である。たとえば、同じ衣装ばかり着せているときには、ロボット100は、動きが鈍くなる、眼をあわせない、あるいは、手をバタバタさせるといった中間モーションにより衣装の着用しづらくしてもよい。このような制御方法により、ロボット100の衣装に対する好みやこだわりを行動表現してもよい。また、新しい衣装や好みの衣装(たとえば、赤い衣装)を着用するときには、喜びや期待を表す中間モーション、着衣モーションあるいは脱衣モーションを実行してもよい。
【0090】
衣装Aを脱がせたあと、再び、同じ衣装Aをロボット100に着せたとき、動作制御部150は他の衣装Bを着せたときとは異なる中間モーションや着衣モーションを実行して
もよい。
【0091】
動作制御部150は、着衣をさせるユーザに対する親密度に基づいて、中間モーションあるいは着衣モーションを選択してもよい。動作制御部150は、ユーザに対する親密度に基づいて、複数種類の中間モーションの選択確率を設定変更してもよい。このような制御方法によれば、誰にお着替えをさせてもらうかによって中間モーションを変化せることができる。着衣モーションについても同様である。
【0092】
親密度管理部220は、着替えをさせてくれたユーザに対する親密度を上昇させてもよい。着替えをさせるということはユーザがロボット100を気にかけている証拠であるため、ロボット100がそのようなユーザに好感を抱く(親密度を高める)ことは合理的と考えられる。
【0093】
動作制御部150は、ロボット100が衣装を着用していないときにはロボット100の動作を抑制するとしてもよい。たとえば、ロボット100の行動可能範囲を小さくしてもよいし、ロボット100の移動速度を低下させてもよい。あるいは、動作制御部150は、ロボット100が衣装を着用していないときにはロボット100を移動させないとしてもよい。このような制御方法によれば、衣装を着用していない状態でロボット100が動き回ることでロボット100が汚れるのを防ぎやすくなる。また、衣装はロボット100の本体を衝撃から保護するため、衣装を着用していないときにロボット100をおとなしくさせるおとで、無防備なロボット100が外部物体から衝撃を受ける機会を減らしてもよい。
【0094】
逆に、衣装着用時においてロボット100の動作を抑制するとしてもよい。この場合には、衣装を着用しているときにはロボット100がおとなしくなるのでロボット100が汚れるのを防ぎやすくなる。
【0095】
着替えの完了後、動作制御部150は着替えさせてくれたユーザから一定期間離れないようにロボット100を行動させてもよい。具体的には、ユーザを中心とした所定範囲内、あるいは、ユーザの正面方向の所定範囲(ユーザから視認可能な範囲)にロボット100の行動範囲を一時的に制限してもよい。このような制御方法によれば、着替えたあとの姿をユーザに見てもらいたい、あるいは、新しい衣装を着ることが嬉しい、という心理をロボット100がいだいているかのようにユーザに感じさせることができる。ユーザは、このような行動表現からロボット100の心理を推測し、新しい衣装をロボット100に着させてあげたいという意欲を喚起される。
【0096】
ロボット100は、「発声制御部」を備えてもよい。発声制御部は、ロボット100が新たな衣装を頭部から被せられたとき、あるいは、ロボット100が衣装を脱がされるときに所定の音声(鳴き声)を発声させてもよい。
【0097】
状態管理部244は、一定期間、ロボット100が同じ衣装を継続して着用しているときには、ロボット100の感情パラメータを変化させてもよい。たとえば、承認欲求パラメータを上昇させてもよいし、機嫌を表す感情パラメータを悪化させてもよい。ロボット100の動作制御部150は、ロボット100の機嫌が悪くなるほど、ユーザに近づかなくなるように制御してもよいし、ユーザに近づいて積極的に着替えを要求させてもよい。また、着衣履歴に基づいて、比較的着替えをさせてくれるユーザを選んで着替えの必要性をアピールしてもよい。
【0098】
ロボット100は、着替えの完了後に、別のロボット100に向けたモーションを実行してもよい。例えば、ロボット100は、別のロボット100に近づいてもよい。また、
例えば、ロボット100は、別のロボット100が存在する方向を向いて、手を挙げるなどのモーションを実行してもよい。このような制御方法によれば、新しい衣装をロボット100Aが別のロボット100Bに自慢しているかの様子を行動表現できる。
【0099】
着替えにともなって、ロボット100の行動特性を変化させることにより、ユーザはロボット100を積極的に着替えさせたくなると考えられる。また、「着替え」というユーザとロボット100が関わる機会を積極的に作り出すことにより、ユーザのロボット100に対する愛着をいっそう深めることができる。
【0100】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【0101】
1以上のロボット100と1つのサーバ200によりロボットシステム300が構成されるとして説明したが、ロボット100の機能の一部はサーバ200により実現されてもよいし、サーバ200の機能の一部または全部がロボット100に割り当てられてもよい。1つのサーバ200が複数のロボット100をコントロールしてもよいし、複数のサーバ200が協働して1以上のロボット100をコントロールしてもよい。
【0102】
ロボット100やサーバ200以外の第3の装置が、機能の一部を担ってもよい。
図4において説明したロボット100の各機能とサーバ200の各機能の集合体は大局的には1つの「ロボット」として把握することも可能である。1つまたは複数のハードウェアに対して、本発明を実現するために必要な複数の機能をどのように配分するかは、各ハードウェアの処理能力やロボットシステム300に求められる仕様等に鑑みて決定されればよい。
【0103】
上述したように、「狭義におけるロボット」とはサーバ200を含まないロボット100のことであるが、「広義におけるロボット」はロボットシステム300のことである。サーバ200の機能の多くは、将来的にはロボット100に統合されていく可能性も考えられる。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットのモーションを選択する動作制御部と、
前記動作制御部により選択されたモーションを実行する駆動機構とを備え、
使用回数が比較的多い衣装を着用する場合におけるモーションと、使用回数が比較的少ない衣装を着用する場合におけるモーションとを異ならせることを特徴とするロボット。
【請求項2】
ロボットのモーションを選択する動作制御部と、
前記動作制御部により選択されたモーションを実行する駆動機構とを備え、
前記動作制御部は、衣装の着用が完了したことを契機として、特定のモーションを実行対象として選択し、
前記特定のモーションは、別のロボットに向けたモーションであることを特徴とするロボット。
【請求項3】
前記動作制御部は、衣装の着用が完了したことを契機として、特定のモーションを実行
対象として選択することを特徴とする請求項1又は2に記載のロボット。
【請求項4】
前記ロボットのモードを設定するモード設定部を備え、
前記モード設定部は、衣装の着用が完了するまで、前記ロボットのモードを着替えモー
ドに維持することを特徴とする請求項1又は2に記載のロボット。
【請求項5】
前記ロボットのモードを設定するモード設定部を備え、
前記モード設定部は、ロボットに設けられたモードスイッチの入力に応じて前記モード
を設定し、
前記モード設定部は、前記衣装の着用の完了が検出されるという条件と、前記モードス
イッチが設けられた部位からユーザが手を離したという条件との両方を充足するまで、着
替えモードを維持する請求項1又は2に記載のロボット。
【請求項6】
前記ロボットのモードを設定するモード設定部を備え、
前記モード設定部は、脱衣を検出した場合に、着替えモードに設定する請求項1又は2に記載のロボット。