(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045169
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】三次元体の積層造形用高強度アルミニウム合金
(51)【国際特許分類】
C22C 21/00 20060101AFI20240326BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240326BHJP
B22F 1/05 20220101ALI20240326BHJP
B22F 9/08 20060101ALI20240326BHJP
B22F 1/14 20220101ALI20240326BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20240326BHJP
B22F 12/41 20210101ALI20240326BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240326BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20240326BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20240326BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240326BHJP
【FI】
C22C21/00 M
B22F1/00 N
B22F1/05
B22F9/08 A
B22F1/14 400
B22F10/28
B22F12/41
B33Y10/00
B33Y70/00
B33Y80/00
B33Y30/00
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024000189
(22)【出願日】2024-01-04
(62)【分割の表示】P 2021523986の分割
【原出願日】2019-10-30
(31)【優先権主張番号】102018127401.7
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】521185066
【氏名又は名称】エーエム・メタルス・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘルテル、ミカエル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】可能な限り費用対効果が高く、熱的に安定であり、高強度の特性を有する粉末状アルミニウム合金、三次元体を製造する方法、粉末状アルミニウム合金を製造する方法、および三次元体を提供する。
【解決手段】本発明は、Cr,Fe,NiおよびCoを含む群のうちから少なくとも2つの元素M、およびTi、YおよびCeを含む群のうちから少なくとも1つの元素Nを含有する粉末状アルミニウム合金であって、前記アルミニウム合金は、1~16重量%範囲の元素Mの総量と、TiまたはCeを含む場合に0.5~5重量%範囲の前記元素Nの総量と、Yを含む場合に1~10重量%範囲の前記元素Nの総量と、を有する。このようなアルミニウム合金は、選択的レーザ溶融などの積層造形プロセスに使用でき、自動車のエンジンなどに使用できる高強度の三次元体を製造できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cr,Fe,NiおよびCoを含む群のうちから少なくとも2つの元素M、およびTi、YおよびCeを含む群のうちから少なくとも1つの元素Nを含有する粉末状アルミニウム合金であって、
前記アルミニウム合金は、1~16重量%範囲の元素Mの総量と、TiまたはCeを含む場合に0.5~5重量%範囲の前記元素Nの総量と、Yを含む場合に1~10重量%範囲の前記元素Nの総量と、を有することを特徴とする粉末状アルミニウム合金。
【請求項2】
少なくとも0.05重量%、好ましくは0.1~0.3重量%、さらに好ましくは0.15~0.25重量%の酸素を含む、請求項1に記載の粉末状アルミニウム合金。
【請求項3】
少なくとも0.5重量%および/または多くとも8重量%までのFe、少なくとも0.5重量%および/または多くとも4.0重量%までのCr、および少なくとも0.5%および/または多くとも4.0重量%までのTiを含有し、任意に最大3.0重量%のSiおよび/または1重量%以下のZrおよび/または1重量%以下のCeを含む、請求項1または2のいずれか一項に記載の粉末状アルミニウム合金。
【請求項4】
少なくとも3重量%および/または多くとも7重量%までのFe、好ましくは少なくとも4重量%および/または多くとも6重量%までのFe、少なくとも2重量%および/または多くとも4重量%までのCr、好ましくは少なくとも3重量%および/または多くとも3.8重量%までのCr、少なくとも1重量%および/または多くとも4重量%までのTi、好ましくは少なくとも1.5重量%および/または多くとも3.5重量%までのTi、および少なくとも80重量%および/または多くとも93重量%までのアルミニウム、好ましくは少なくとも85重量%および/または多くとも90.5重量%までのアルミニウムを含有する、請求項3に記載の粉末状アルミニウム合金。
【請求項5】
少なくとも1重量%および/または多くとも7.5重量%までのNi、少なくとも1重量%および/または多くとも5.5重量%までのCo、および少なくとも2重量%および/または多くとも10重量%までのYを含有し、任意に3.0重量%以下のMn、および/または1重量%以下のZrを含む、請求項1または2のいずれか一項に記載の粉末状アルミニウム合金。
【請求項6】
少なくとも2重量%および/または多くとも10重量%までのNi、少なくとも0.5重量%および/または多くとも6重量%までのFe、および少なくとも0.5重量%および/または多くとも5重量%までのCeを含有し、任意に1重量%以下のZr、および/またはGd、Nd、またはLaの各々について2.0重量%以下を含む、請求項1または2のいずれか一項に記載の粉末状アルミニウム合金。
【請求項7】
0.1~500μm、好ましくは少なくとも1μmおよび/または多くとも200μmまでの範囲、特に好ましくは少なくとも10μmおよび/または多くとも80μmまでの範囲の平均粒子サイズD50を有する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の粉末状アルミニウム合金。
【請求項8】
粉末のもとになる前記アルミニウム合金は、23℃で測定された300MPa超えの降伏強度としての測定強度、および/または250℃で測定された200MPa超えの高温降伏強度を有し、および/または、
260℃で6分間の保持時間で0.5%クリープ歪のときに応力として測定される、少なくとも200MPa、好ましくは少なくとも220MPa、さらにより好ましくは少なくとも240MPaの短時間クリープ強度を有する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の粉末状アルミニウム合金。
【請求項9】
850℃超え、好ましくは1050℃超えの温度で液体合金を噴霧することによって、またはメカニカルアロイングすることによって、および任意に後処理することによって得ることができる、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の粉末状アルミニウム合金。
【請求項10】
三次元体を製造する方法であって、
前記三次元体は、積層材料の層の上に層を加えて前記積層材料を選択的に固化させることによって、特にその層内の対象物の断面に対応する各層の位置に放射エネルギを供給することによって、少なくとも1つの露光領域に対応する位置を走査することによって、特にエネルギ放射ビームの放射露光領域に対応する位置を走査することによって形成され、
前記積層材料は、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の粉末状アルミニウム合金を含む、好ましくは請求項1乃至9のいずれか一項に記載の粉末状アルミニウム合金からなる、ことを特徴とする三次元体の製造方法。
【請求項11】
粉末状アルミニウム合金は、好ましくは少なくとも130℃に予熱され、より好ましくは最大で400℃の温度に予熱される、請求項10記載の三次元体の製造方法。
【請求項12】
粉末状アルミニウム合金、特に請求項10に記載の方法に使用するための粉末状アルミニウム合金を製造する方法であって、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の組成をもつ溶融アルミニウム合金を適当な装置内に噴霧するか、または前記組成をもつアルミニウム合金をメカニカルアロイングすること、および任意に後処理することによって製造する、ことを特徴とする粉末状アルミニウム合金の製造方法。
【請求項13】
特に請求項10の方法によって製造された粉末状アルミニウム合金を用いて製造される三次元体であって、
前記粉末状アルミニウム合金は、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のアルミニウム合金であり、
前記三次元体は、そのようなアルミニウム合金を含むか、またはそのようなアルミニウム合金そのものからなる、ことを特徴とする粉末状アルミニウム合金を用いて製造される三次元体。
【請求項14】
請求項10の方法を実施するための製造装置であって、
レーザ焼結またはレーザ溶融装置と、
容器壁を備える開放容器として形成された処理室と、
前記処理室内に配置されたキャリアと、を具備し、
前記処理室および前記キャリアは垂直方向に相対移動可能であり、貯蔵容器および塗布装置は水平方向に移動可能であり、前記貯蔵容器は、請求項1乃至9のいずれかに1項に記載の粉末状アルミニウム合金が少なくとも部分的に充填されている、ことを特徴とする製造装置。
【請求項15】
Fe2~8重量%、Cr0.5~4.0重量%、およびTi0.5~4.0重量%を含有し、任意に3.0重量%以下のSiおよび/または1重量%以下のZrおよび/または1重量%以下のCeを含むアルミニウム合金であって、前記アルミニウム合金中のFe、Cr、Tiの総量が少なくとも10重量%および/または多くとも16重量%、好ましくは少なくとも11重量%および/または多くとも13重量%であることを特徴とするアルミニウム合金。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Cr、Fe、Ni、およびCoを含む群のうちから2つの元素Mと、Ti、Y、およびCeを含む群のうちから少なくとも1つの元素Nとを含有する特定の粉末状アルミニウム合金であって、1~16重量%範囲の元素Mと、前記アルミニウム合金がTiまたはCeを含む場合に0.5~5重量%範囲の元素Nの総量、および前記アルミニウム合金がYを含む場合に1~10重量%範囲の元素Nの総量と、を有する特定の粉末状アルミニウム合金に関する。さらに本発明は、そのようなアルミニウム合金の製造プロセス、三次元体の積層造形のためのプロセスおよび装置、ならびにこれらのプロセスによって製造される三次元体および特定のアルミニウム合金に関する。
【背景技術】
【0002】
軽金属部品は、車両の性能と燃料効率を継続的に改善することを目的として、車両、特に自動車の製造において集中的な研究の対象となっている。今日の自動車用途向けの多くの軽金属部品は、アルミニウムおよび/またはマグネシウム合金でつくられている。このような軽金属は、強くて剛性があり、優れた強度と延性(伸びなど)を備えている必要がある耐荷重部品を形成することができる。高強度と延性は、自動車などのような車両の安全性要求と堅牢性のために特に重要である。従来の鋼およびチタン合金は高温耐性を提供するが、これらの合金はそれぞれ重いか、または比較的高価である。
【0003】
車両の構造部品を形成するための軽金属合金の費用対効果の高い代替品は、アルミニウムをベースとした合金である。これらの合金は、従来、押出成形、圧延、鍛造、スタンピングなどのバルク成形プロセス、またはダイカスト、砂型鋳造、インベストメント鋳造(精密鋳造)、チル鋳造などの鋳造技術によって所望の部品に加工することができる。
【0004】
構造部品に軽金属合金を使用することに加えて、エンジンコンパーメントの部品に軽金属合金を使用することも重要である。しかし、エンジンコンパーメント内は高温になりがちであることからここでは問題が発生するため、このエンジンコンパートメント領域用の部品は強度および耐熱性の点で高い要件を満たす必要がある。
【0005】
近年、金属加工において「ラピッドプロトタイピング」または「ラピッドツーリング」がまた重要性を増してきている。これらのプロセスは、選択的レーザ焼結、および選択的レーザ溶融としても知られている。このプロセスでは、粉末材料の薄い層が繰り返し加えられ、かつ、その材料をレーザビームに曝すことによって、最初に所定の位置でその材料を溶融させ、次いでそれを固化することによって、後続の製造物が位置する領域の各層内で選択的に固化される。このようにして、完全な三次元体を連続して積層することができる。
【0006】
選択的レーザ焼結または選択的レーザ溶融による三次元体の製造方法、ならびにこのプロセスを実行するための装置は、例えば欧州公開1 762 122号公報に開示されている。
【0007】
選択的レーザ溶融用の各種アルミニウム合金は、公知であり、市場において入手可能である。これらのエンジニアリング材料は、主にAlSi10Mg、AlSi12、AlSi9Cu3などのようなAlSi材料であるが、これらは中程度の強度と構造安定性を有するにすぎないものである。
【0008】
ドイツ公開10 2017 200 968号公報には、アルミニウム、鉄、シリコンを含む高耐熱性合金を形成するためのアルミニウム合金が記載されている。これらの高耐熱性合金は、選択的レーザ焼結または選択的レーザ溶融によって三次元体に加工することができる。ドイツ公開10 2017 200 968号公報の要点は、高耐熱性と強度を備える安定した三元立方相を有する固体合金部品となるように、溶融前駆体材料が1.0×105K/秒以上の速度で冷却される点にある。
【0009】
欧州公開3 181 711号公報には、AlMgScタイプの積層造形用の高張力合金が記載されている。これらの合金では、金属間化合物のAl-Sc相が強力な強度増加効果を持っているため、400MPaを超える降伏強度が達成されている。しかし、これらの合金に必要なScは、0.6~3重量%範囲の量で使用されるため、これらの合金は非常にコストがかかり、さらに、この材料は十分な量のスカンジウムの生産に大きく依存する。さらなる欠点は、欧州公開3 181 711号公報に記載されている合金では、AlMgマトリックスが軟化してクリープする傾向があるため、180℃を超える適用温度には適していないことにある。
【0010】
付加製造用合金の他のアプローチは、Al-MMC(MMCはマトリックス金属複合体)の概念であり、室温で欧州公開3181711号公報のAlMgSc合金と同様の機械的性質を備えている。しかしながら、これらの材料の問題点は、200℃を超える温度で強度が大幅に低下することにある。Al-MMCの概念のもう1つの問題点は、材料が3つの成分の粉末混合物で構成されていることから、物理的なプロセスによって混合比の変化を排除することができないため、輸送、保管、および再利用が困難になるという点である。もう1つの欠点は、MMC金属セラミック複合材料のネガティブなリサイクル挙動がある点、および、Al-MMCの機械的再加工がより困難であり、それに応じてコストが高くなるという事実がある点である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した先行技術に基づいて、可能な限り費用対効果が高く、熱的に安定であり、高強度の特性を有するアルミニウム合金が必要とされ、選択的レーザ焼結および選択的レーザ溶融などの積層造形技術によって、高強度および高剛性および良好な腐食特性を備えた三次元物体に加工することができる。高レベルの供給安全性を確保するために、スカンジウムなどの市場で希少な希土類金属は可能な限り避ける必要がある。さらに、これらのプロセスにより製造された三次元体および高強度三次元体を製造するための付加的な処理プロセスが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は、請求項1に示される粉末状アルミニウム合金によって、請求項10に記載の三次元体を製造するプロセスによって、請求項12に記載の粉末状アルミニウム合金を製造するプロセスによって、請求項13に記載の請求項1に示される粉末状アルミニウム合金を使用して製造された三次元体によって、請求項14に記載の三次元物体を製造するプロセスを実施するための装置によって、および請求項15に示されるアルミニウム合金によって、解決される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0013】
本発明の粉末状アルミニウム合金は、積層造形技術による三次元体の製造に使用するための粉末である。本発明の粉末状アルミニウム合金は、Cr、Fe、Ni、およびCoを含む群のうちからの少なくとも2つの元素Mと、Ti, YおよびCeを含む群のうちからの少なくとも一つの元素Nとを含有し、前記元素Mの総量が1~16重量%範囲にあり、前記アルミニウム合金にTiまたはCeが含まれている場合は前記元素Nの総量が0.5~5重量%範囲にあり、前記アルミニウム合金にYが含まれている場合は前記元素Nの総量が1~10重量%範囲にある。
【0014】
好ましい粉末状アルミニウム合金は、少なくとも0.5重量%および/または多くとも8重量%のFe、少なくとも0.5重量%および/または最大で4.0重量%のCr、および少なくとも0.5重量%および/または最大4.0重量%のTiを含有し、および任意に最大1.0重量%までのSi、および/または最大1重量%までのZr、および/または最大1重量%までのCeを含むことができる。さらに好ましくは、粉末状アルミニウム合金は、少なくとも0.5重量%および多くとも8.0重量%のFe、少なくとも0.5重量%および多くとも4.0重量%のCr、少なくとも0.5重量%および多くとも4.0重量%のTiを含有し、および任意に最大1.0重量%までのSi、最大1.0重量%までのZr、最大1.0重量%までのCeを含むものである。一実施形態では、アルミニウム合金は、少なくとも0.01重量%の量でSi、ZrおよびCeを含む。
【0015】
前述のように、粉末形態の特定のアルミニウム合金は、少なくとも0.5重量%の鉄、好ましくは少なくとも3重量%の鉄、さらに好ましくは少なくとも4重量%の鉄を好都合に含む。ここで「粉末形態の特定のアルミニウム合金」とは、本明細書および以下において一般的および好ましい実施形態による前述の粉末状アルミニウム合金を意味する。代替え的に、またはそれに加えて、特定の粉末状アルミニウム合金は、好ましくは多くとも8重量%までの鉄、さらに好ましくは多くとも7重量%までの鉄、さらに好ましくは多くとも6重量%までの鉄(または多くとも6原子%までの鉄)を含み、これらの特定された上限のいずれかを特定された下限のいずれかと組み合わせることができるか、または一方向に開いた範囲を規定することができる。特定の粉末状アルミニウム合金は、少なくとも0.5重量%のクロム、好ましくは少なくとも2重量%のクロム、さらに好ましくは少なくとも3重量%のクロムを適切に含む。代替え的に、またはそれに加えて、一般的かつ好ましい実施形態の特定の粉末状アルミニウム合金は、好ましくは多くとも4.5重量%までのクロム、さらに好ましくは多くとも3.8%重量%までのクロムを含み、これらの特定された上限のそれぞれは、特定された下限のそれぞれと組み合わせることができるか、または一方向に開いた範囲を規定することができる。
【0016】
粉末状アルミニウム合金に含まれる鉄、クロム、および/またはコバルトの総量に関して、1重量%以上の含有量が好ましいと考えられ、1.5重量%以上の含有量がより好ましいと考えられ、2重量%を超える含有量がさらに好ましいと考えられる。
【0017】
本発明の特に好ましい実施形態では、粉末状アルミニウム合金は、FeおよびCoの関連する量を同時に含まない、すなわち、これらFeおよびCoのうちの一方の元素が本発明のアルミニウム合金中に0.5重量%以上の割合で、特に1重量%以上の割合で含まれる場合には、アルミニウム合金中に多くとも0.1重量%以下の割合で、好ましくは0.05重量%以下の割合で他方の元素が含まれる。
【0018】
特定の粉末状アルミニウム合金は、少なくとも0.5重量%のTi、より好ましくは少なくとも1重量%のTi、より好ましくは少なくとも1.5重量%のTiをさらに適切に含む。代替え的に、またはそれに加えて、特定の粉末状アルミニウム合金は、好ましくは多くとも4.5重量%までのTi、より好ましくは多くとも3.5重量%までのTiを含み、これらの特定された上限のそれぞれを特定された下限のそれぞれと組み合わせることができるか、または一方向に開いた範囲を規定することができる。
【0019】
粉末状アルミニウム合金は、主成分としてアルミニウムを含み、これは好ましくはアルミニウム合金の100%に対して欠けている部分の少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも98%を構成する。さらに非アルミニウム成分は、例えば粉末粒子の表面上に酸化物比率として存在し得る酸素であり得る。粉末状アルミニウム合金に存在し得る他の元素は、例えば、マンガンまたはマグネシウムがある。
【0020】
トータル粉末状アルミニウム合金に関して、アルミニウムの比率は、好ましくは少なくとも80重量%、さらに好ましくは少なくとも85重量%である。代替え的に、またそれに加えて、特定の粉末状アルミニウム合金は、好ましくは多くとも93重量%までのアルミニウム、より好ましくは多くとも90.5重量%のアルミニウムを含み、ここで、特定の上限のいずれかを特定された下限のいずれかと組合せることができる。
【0021】
シリコンの場合、最大3重量%までの含有量が好ましいものとして示され、最大1.5重量%までの含有量がより好ましいものとして示され、最大0.5重量%までの含有量がさらに好ましいものとして示すことができる。ここで、「まで」の表記は、0重量%(またはそれぞれ0原子%)の含有量を含み得るかまたは除外し得る。ジルコニウムとセリウムの含有量の「多くとも1重量%まで」の表記にも同様のことが当てはまる。
【0022】
さらに好ましい粉末状アルミニウム合金は、少なくとも3重量%および/または多くとも7重量%までのFe、好ましくは少なくとも4重量%および/または多くとも6重量%までのFe、少なくとも2重量%および/または最大4重量%までのCr、好ましくは少なくとも3および/または多くとも3.8重量%までのCr(または、および/または3.8原子%までのCr)、少なくとも1重量%および/または多くとも4重量%までのTi、好ましくは少なくとも1.5重量%および/または多くとも3.5重量%までのTi(または、および/または3.5原子%までのTi)を含有し、および、少なくとも80重量%および/または多くとも93重量%までのアルミニウム、好ましくは少なくとも85重量%および/または多くとも90.5重量%までのアルミニウムを含む。さらに好ましい粉末状アルミニウム合金は、3~7重量%のFe、好ましくは4~6重量%のFe、2~4重量%のCr、好ましくは3~3.8重量%のCr(または3~3.8原子%のCr)、1~4重量%のTi、好ましくは1.5~3.5重量%のTi、および80~93重量%、好ましくは85~90.5重量%のアルミニウムを含有する。
【0023】
前述の元素のうち、Ni,Y,Co および希土類元素Ceは、アルミニウム合金のガラス形成剤として機能するため、合金内により大きなアモルファス領域が形成される。これにより、合金の腐食特性が向上する。
【0024】
さらに、Ce,およびZr、またはSiは、それぞれ合金の相形成に影響を及ぼす。他の好ましい実施形態では、本発明のアルミニウム合金は、実質的な量のCeを含まない、すなわち、1重量%未満のCe、好ましくは0.5重量%未満のCe、さらに好ましくは0.2重量%未満のCe、さらに好ましくは0.05重量%未満のCeである。
【0025】
Ti、FeおよびCrの元素は、Ni、YおよびCoよりもアルミニウム合金でのガラス形成ポテンシャルが大幅に低くなっている。しかし、可能な限り迅速に硬化するように適切なプロセス条件を通すことによって所望の特性を備えた準安定上部構造を生成することができる。
【0026】
代替えのさらに好ましい粉末状アルミニウム合金は、少なくとも1重量%および/または多くとも7.5重量%までのNi、少なくとも1重量%および/または多くとも5.5重量%までのCo、および少なくとも2重量%および/または多くとも10重量%までのY、ならびに任意に3.0重量%以下のMn、および/または1重量%以下のZrを含有する。これらのアルミニウム合金は、好ましくは、1~7.5重量%のNi、1~5.5重量%のCo、および2~10重量%のY、ならびに任意に3.0重量%以下のMn、および1重量%以下のZrを含有する。特に好ましくは、これらのアルミニウム合金は、0.01重量%のMnおよび/またはZrの最小比率を含む。
【0027】
さらなる代替えの粉末状アルミニウム合金は、少なくとも2重量%および/または多くとも10重量%までのNi、少なくとも0.5重量%および/または多くとも6重量%までのFe、および少なくとも0.5重量%および/または多くとも5重量%までのCe、ならびに任意に最大1.0重量%のZrおよび/またはGd,Nd,またはLaの各々について2.0重量%以下を含有する。これらのアルミニウム合金は、好ましくは2~10重量%のNi、0.5~6重量%のFe、および0.5~5重量%のCe、ならびに任意に1重量%以下のZr、および/またはGd,Nd,またはLaのそれぞれについて2重量%以下を含有する。特に好ましくは、これらのアルミニウム合金は、0.01重量%の最小比率のZrおよび/またはGdおよび/またはNdおよび/またはLaを含む。
【0028】
本発明の粉末状アルミニウム合金は、0.3重量%以下の酸素、好ましくは0.25重量%以下の酸素を含むことが好ましい。これらの範囲でより高い酸素含有量、例えば、少なくとも0.05重量%の酸素含有量、特に0.1~0.3重量%の酸素含有量、好ましくは0.15~0.25重量%の酸素含有量の場合は、粉末粒子に対して(ISO規格4490に準拠するホールフローテストによる測定で)より良い流動性が付与される。
【0029】
上記の合金は、二十面体相および/またはアモルファス成分によって強化された熱的に安定なナノ結晶構造を有することが見出された。従来、これらの合金は、鋳造、鍛造、(伝統的な)焼結または溶接ができないため、このような合金から複雑な部品を製造することはできなかった。このような背景にもかかわらず、驚くべきことに、本発明合金は、レーザ溶融プロセスによって複雑な形状の部品に加工することができるため、350℃までの温度で最高の強度、剛性、または耐クリープ性を備えた部品に利用しやすいということが判明した。さらに、この方法で製造された製品は、耐摩耗性および/または腐食特性を改善することができる。
【0030】
粒子サイズに関して、本発明の粉末状アルミニウム合金は、いかなる重大な制限も受けることなく、その粒径は、三次元体の製造のための付加的プロセスに適したサイズ範囲とするのがよい。適切な粒径は、0.1~500μm、好ましくは少なくとも1μmおよび/または多くとも200μm、特に好ましくは少なくとも10μmおよび/または多くとも80μm範囲の平均粒径D50とすることができる。特に好ましくは、10~80μm範囲の平均粒径D50である。
【0031】
さらに、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも98重量%の粒子が、10~80μmの範囲の粒径を有することが好ましい。
【0032】
本発明の状況下において、粒子サイズは特にレーザ回折プロセス(ISO規格13320に準拠して、シンパテック・ゲーエムベーハー社のヘロスデバイス(登録商標)を使用)の助けを借りて決定されるべきものであり、仕様D(数値)の平均粒径の場合、数値は特定の粒径以下(すなわち、D50が50μmの場合、粒子の50%が50μm以下の粒径を有する)の粒子の割合(パーセント)を示す。単一粒子の直径は、任意にそれぞれの最大直径(粒子の各2点間のすべての距離の上限と同等)、またはふるい直径または体積に関連する等価球直径としてもよい。
【0033】
本発明の粉末状アルミニウム合金では、粉末の基礎をなすアルミニウム合金が以下の特性のうちの1つまたは複数を有することがさらに好ましい。
【0034】
・23℃で測定され、300MPa超えの、好ましくは320MPa超えの降伏強度として測定された強度、
・250℃で測定され、200MPa超えの、好ましくは250MPa超えの高温(熱間)降伏強度として測定された強度、
・260℃での0.5クリープ歪みおよび6分間の保持時間での応力として測定され、少なくとも200MPaの、好ましくは少なくとも220MPaの、さらにより好ましくは少なくとも240MPaの短時間クリープ強度。
【0035】
「強度」は、故障が発生する前に機械的負荷に耐える能力を表わし、DIN規格EN
ISO6892-1:2017年版A224に準拠する引張試験に従い本発明の状況下で測定される。「降伏強度」は、一軸でモーメントのない引張荷重の下で、材料が永久的な塑性変形を示さなくなるまでの応力を表わす。
【0036】
高温降伏強度は、指定された温度での降伏強度を指し、DIN規格EN ISO 6892-2:2011年版A113に準拠する本発明の状況下で測定して決定される。
【0037】
短時間クリープ強度は、DIN規格 EN ISO 6892-2:2017年版 -05Aに準拠する本発明の状況下で測定して決定される。
【0038】
「クリープ」は、時間および温度に依存し、塑性および荷重による材料の変形を示す。クリープ歪みとは、材料がクリープするときに生じる塑性歪みを指す。
【0039】
本発明の粉末状アルミニウム合金は、粉末状合金の製造に用いられる周知のプロセスによって製造することができる。特に有用なプロセスは、液体アルミニウム合金を噴霧することを含み、それによってアルミニウム合金は適切な温度に加熱され、噴霧される。噴霧化のために、アルミニウム合金は、850℃超え、好ましくは950℃超え、さらに好ましくは1050℃超えの温度を有するのがよい。1200℃を超える温度は噴霧化に必要ではなく、より高いエネルギ要件のために実用的ではない。このため、噴霧に特に好ましい温度範囲として、850超え1200℃未満の範囲、好ましくは950超え1150℃未満の範囲を指定することができる。望ましくない一次析出を防ぐために、それぞれ、溶融物またはプロセス制御の十分な過熱によって、上述の温度がノズルにおいて常に優勢であることを保証する必要がある。
【0040】
上記の粉末状アルミニウム合金では、出発材料の組成により、20μmを超える金属間化合物相(Al-Ti化合物)の高融点粒子が生成される可能性があることが示された。このような高融点粒子は3次元体の積層造形の一部として、後続の処理中に周囲の材料と一緒に溶融および溶解することができない。さらに、不利なプロセス制御のために、合金化の過程で溶融中に粗い高融点金属間化合物相も生成される可能性がある。これは、光学顕微鏡の断面で粉末粒子と固結部分の両方で検出することができる。これらの粒子は、それらから生成される三次元物体の使用特性に悪影響を及ぼすおそれがあるため、粉末状のアルミニウム合金を適切な溶融条件下で溶融し、再び噴霧する後処理が適切である可能性がある。
【0041】
代替え的に、本発明の粉末状アルミニウム合金は、メカニカルアロイングによって製造することもできる。このプロセスでは、後続の合金(またはそのプレミックス)の個々の成分の金属粉末が集中的に機械的に処理され、原子レベルまで均質化される。粒子の変成(モディフィケーション)のために、例えば形態、粒径、または粒径分布を変更するために、または表面処理を行なうために、メカニカルアロイング後に得られた粒子を後処理することが可能である。後処理は、粒子および/または粒子表面の化学的変成、分級、粉砕、面取り、プラズマ球状化(すなわち、丸い粒子への処理)および添加のうちから選択される1つまたは複数のステップを含むことができる。特にメカニカルアロイングはプレートレットまたはフレークを通常もたらすため、粒子形態は粒子サイズ分布のそれぞれの変成(モディフィケーション)が適切である。この形態は、その後の添加剤処理プロセスで一般的に問題がある。
【0042】
このため、前述によれば、本発明は、粉末状アルミニウム合金、特に上記組成を有する溶融アルミニウム合金は、適切な装置で噴霧されるか、または前記組成を有する粉末状アルミニウム合金は、メカニカルアロイングおよび任意の後処理によって調製されるプロセスで使用するための粉末状アルミニウム合金の製造方法に関する。
【0043】
アトマイズ、メカニカルアロイング、および任意の後処理の好ましい実施形態については前述したものを参照すること。
【0044】
さらに、本発明は、好ましくは850℃超え、さらに好ましくは1050℃超えの温度で液体合金を噴霧することにより、または任意の後処理を伴うメカニカルアロイングすることにより、噴霧化、メカニカルアロイング、および任意の後処理の好ましい実施形態についての前述の説明も参照される記載されたプロセスに従って得られる粉末状アルミニウム合金に関する。
【0045】
本発明の他の態様では、三次元体は、積層材料層を層上に付加し、特に放射エネルギを供給することにより、その層内の三次元体の断面に対応する各層内の位置を少なくとも1つの作用領域、特にエネルギ放射ビームが作用する放射領域でスキャンすることにより、積層材料を選択的に固化することによって製造される三次元体を製造するプロセスに関する。本明細書に記載の本発明の状況下において、積層材料は前述のように粉末状アルミニウム合金を含む。好ましくは、積層材料は、この粉末状アルミニウム合金そのものからなる。
【0046】
三次元体は、1つの材料(すなわち、アルミニウム合金)で作られた物体であってもよいし、異なる材料で作られた物体であってもよい。三次元体が異なる材料で作られた物体である場合、この物体は、例えば本発明のアルミニウム合金を他の材料の基材に適用することによって製造することができる。本発明のアルミニウム合金と異なる材料は、例えばAlSi10Mgのようなアルミニウム合金も好都合である。
【0047】
このプロセスの関係では、粉末状アルミニウム合金を選択的凝固の前に予熱することが適切であり、少なくとも130℃の温度への予熱が好ましいと示され、少なくとも150℃の温度への予熱がさらに好ましいと示され、少なくとも190℃の温度への予熱がまたさらに好ましいと示されてもよい。一方、非常に高温に予熱する場合、すなわち予熱のための妥当な最高温度として最大で400℃の温度を示すことができるように少なくとも三次元体が形成される容器上で予熱すると、三次元体製造用装置にかなりの性能要求が課せられることになる。予熱の最高温度は、好ましくは最大で350℃であり、さらに好ましくは最大で300℃である。予熱の指定温度は、それぞれ、粉末状アルミニウム合金が適用される積層プラットフォーム、および粉末状アルミニウム合金によって形成されたパウダーベッドが加熱される温度を示す。
【0048】
本発明の他の態様は、上述したアルミニウム合金である粉末状アルミニウム合金を用いて製造された、特に上述した方法によって製造された、そのようなアルミニウム合金を含むか、またはそのようなアルミニウム合金からなる三次元体に関する。このような三次元体の製造に上述したアルミニウム合金を用いることにより、非常に良好な「積層したまま」の表面が得られ、それによりその後に引き続き行われる表面の後処理を最小限に抑えることができる。
【0049】
本発明の他の態様は、上記の三次元体の製造プロセスを実行するための製造装置に係り、前記製造装置は、レーザ焼結またはレーザ溶融装置と、容器壁を有する開放容器として構成されたプロセスチャンバと、プロセスチャンバ内に配置されたキャリアとを備えており、前記プロセスチャンバおよび前記キャリアは垂直方向に相互に移動可能であり、貯蔵容器および塗布装置は水平方向に移動可能であり、前記貯蔵容器内には上記の粉末状アルミニウム合金が少なくとも部分的に充填されている。
【0050】
三次元体製造用の積層造形装置および関連するプロセスは、一般に形状のない積層材料を層ごとに固化することによって、それらの中で三次元体が製造されることを特徴とする。例えば、積層材料に熱エネルギを供給することによって、例えばレーザ焼結(「SLS」または「DMLS」)またはレーザ溶融または電子ビーム溶融のために、電磁放射線または粒子放射線を積層材料に照射することによって固化をもたらすことができる。
【0051】
例えば、レーザ焼結またはレーザ溶融では、積層材料の層状のレーザビームの露光領域(「レーザスポット」)が、この層で生成される三次元体の横断面に対応する層のそれらの領域上を移動する。エネルギを加える代わりに、付加された積層材料の選択的な固化は、3D印刷によって、例えば接着剤または結合剤(バインダ)を加えることによっても実行することができる。一般に、本発明は積層材料が固化される方法に関係なく、層内に付加することおよび積層材料の選択的固化による三次元体の製造に関する。
【0052】
本発明書に記載された本発明の状況下において、積層材料の個々の粒子は接着剤または結合剤を用いることなく、放射エネルギの供給のみによって互いに結合されることが好ましい。この場合、アルミニウム合金の機械的性質は、適切なパラメータを選択することによって特定の限定的な範囲内で調整することができる。例えば、DIN規格 EN ISO
6506-1:2015年版に準拠して測定したアルミニウム合金の硬度がブリネル硬度で140~155HBW 2.5/62.5の範囲内になるように本発明のアルミニウム合金を製造するために、約310Wの出力でレーザを操作することが好ましい場合がある。代替え的に、特定の製造装置の状況下において、例えば、DIN規格 EN ISO 6506-1:2015年版に準拠して測定したアルミニウム合金の硬度がブリネル硬度で145~170HBW 2.5/62.5の範囲内になるように本発明のアルミニウム合金を製造するために、約220Wの出力でレーザを操作することが好ましい場合がある。
【0053】
様々なタイプの積層材料を使用することができる。特に、金属粉末、プラスチック粉末、セラミック粉末、砂、充填粉末または混合粉末などのパウダーを積層材料として使用することができる。本発明の状況下において、本発明の粉末状アルミニウム合金は積層材料として少なくとも比例的に使用される。
【0054】
本発明の他の特徴および実施形態は、添付図面の助けで模範的な実施形態の説明に参照することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る三次元体の層の上に層を積み重ねる積層構造のための装置の部分的に再現された概略断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の粉末状アルミニウム合金から選択的レーザ溶融によって製造されたインペラの表面比較を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の粉末状アルミニウム合金で作製された試験体の短時間クリープ強度の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1に示す装置は、既知のレーザ焼結装置またはレーザ溶融装置a1である。物体a2を構築するために、装置はチャンバ壁a4を有する処理室a3を備えている。処理室a3には、壁a6を有する上方開口構築容器a5が配置されている。作業面a7は、構造容器a5の上部開口部によって画定され、開口部内にある作業面a7の領域は、物体a2を構築するために使用することができ、構築サイトa8と呼ばれる。垂直方向Vに移動可能なキャリアa10は、底板a11が取り付けられた容器a5内に配置され、この底板は、構築容器a5を底部で終端させ、これにより構築容器の底部を形成する。
【0057】
底板a11は、キャリアa10と別体に形成され、キャリアa10に取り付けられたプレートであってもよいし、またはキャリアa10と一体に形成されてもよい。使用される粉末およびプロセスに応じて、底板a11は、物体a2が積層される積層プラットフォームa12を有することもできる。しかし、底板a11自体に物体a2を積層することもでき、底板a11は積層プラットフォームとして機能することもできる。
【0058】
図1では、積層プラットフォームa12上の構築容器a5内に形成される物体a2が、未固結のままの積層材料a13に囲まれたいくつかの固化層を有する中間状態の作業面a7の下方に示されている。レーザ焼結装置a1は、電磁放射によって固化することができる粉末状の積層材料a15のための貯蔵容器a14と、水平方向Hに移動可能であり、積層材料a15を構築サイトa8に塗布するための塗布装置a16とをさらに備える。
【0059】
レーザ焼結装置a1は、偏向装置a23を介して偏向され、処理室a2の壁a4内の上側に設けられた結合窓a25を介して集束装置a24によって作業面a7上に集束されるエネルギ放射ビームとしてレーザビームa22を生成するレーザ装置a2を有する露光装置a20をさらに備える。
【0060】
さらに、レーザ焼結装置a1は、積層プロセスを実行するために装置a1の個々構成要素を協調して制御する制御ユニットa29を備えている。制御ユニットa29は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)によって動作が制御されるCPUを含むことができる。そのコンピュータプログラムは、装置とは別に、デバイス内に、特に制御ユニット内に搭載可能な記憶媒体に保存されるようにしてもよい。
【0061】
操作において、粉末層を塗布するために、キャリアa10は、所望の層の厚さに対応する高さだけ最初に下降される。塗布装置a16を作業面a7上で移動させることによって、粉末状積層材料a15の層がその時に塗布される。安全のために、塗布装置a16は、層の積み重ねに必要な量よりもわずかに多い量の積層材料a15をその前に押し出す。塗布装置a16は、系統的に過剰な量の積層材料a15をオーバーフロー容器a18内に押し込む。オーバーフロー容器a18は、構築容器a5の両側に配置されている。
【0062】
粉末状の積層材料a15は、少なくとも製造されるべき物体a2の横断面全体に、好ましくは構築サイトa8の全体に、すなわちキャリアa10の垂直移動によって下降させることができる作業面a7の領域の全体にわたって塗布される。その後、製造されるべき物体a2の横断面は、エネルギ放射ビームと作業面a7との交差を概略的に示す放射露光領域(図示せず)を持つレーザビームa22によって走査される。その結果、粉末状の積層材料a15は、製造されるべき物体a2の横断面に対応する位置において固化する。これらの工程は、物体a2が完成し、物体a2を構築容器a5から取り出せるようになるまで繰り返される。
【0063】
処理室a3内に好ましくは層状のプロセスガス流a34を生成するために、レーザ焼結装置a1は、ガス供給流路a32、ガス入口ノズルa30、ガス出口開口部a31、およびガス排出流路a33をさらに備える。プロセスガス流a34は、構築サイトa8を横切って水平に流動する。ガスの供給および排出は、制御ユニットa29によって制御されるようにしてもよい(図示せず)。処理室a3から抽出されたガスをフィルタ装置(図示せず)に供給できるようにし、かつ、ろ過されたガスをガス供給ダクトa32を介して処理室a3にフィードバックできるようにし、これにより閉じたガスループを有する再循環システムを形成するようにしてもよい。1つのみのガス入口ノズルa30および1つのみのガス出口開口部a31の代わりに、それぞれの場合にいくつかのノズルまたは開口部を設けることができる。
【0064】
本発明の装置において、貯蔵容器a14は、上記のように粉末状アルミニウム合金a15で少なくとも部分的に満たされている。
【0065】
最後に、本発明の他の態様は、2~8重量%のFe、0.5~4.0重量%のCr、および0.5~4.0重量%のTi、および任意に3.0重量%以下のSiおよび/または1重量%以下のZrおよび/または1重量%以下のCeを含有し、合金中のFe,CrおよびTiの総量は少なくとも10重量%および/または多くとも16重量%、好ましくは少なくとも11重量%および/または多くとも13重量%であるアルミニウム合金に関する。特に好ましいアルミニウム合金は5.1±1重量%のFe、3.5±1重量%のCr、および2.5±1重量%のTiを含み、Si,Mg,およびOの総量が0.05~1重量%であり、特に0.1~6.6重量%であることがさらに好ましいということができる。
【0066】
本発明は多くの例によってさらに説明されるが、これらは本願の保護範囲を決定するものとして解釈されるべきではない。
【0067】
以下に説明する方法を用いて以下のアルミニウム合金および三次元体を特性評価した。
【0068】
平均粒径D50は、シンパテックス・ゲーエムベーハー社のヘロスデバイス(登録商標)を使用して、ISO規格13320に準拠して測定した。
【0069】
かさ密度は、ISO規格3923/1に準拠してホール流量計で測定した。
【0070】
流動性は、ISO規格4490に準拠してホール流量計で測定した。
【0071】
密度は、ISO規格3369:「不透過性の焼結金属材料と硬質金属-密度の測定」に準拠したアルキメデスの原理を使用して、選択的レーザ焼結または選択的レーザ溶融によって密度立方体として製造された三次元体に対して測定した。
【0072】
この密度測定法では、サンプルの質量が空気と水の両方で測定され、2つの測定の間で測定された質量差を使用して、既知の水の密度に基づいてサンプルの体積を推定する。次にサンプルの測定された重量と体積を用いて、その密度を計算することができる。
【0073】
試験では、密度立方体サンプルのすべての面を、表面粗さを低減するためにストルアス
ラボ-ポル-5 サンプル調整システムを使用して、ストルアス SIC #320
サンドペーパーを用いて手動で研磨した。サンプル表面に閉じ込められた気泡のために、テスト結果が変わる可能性があるからである。
【0074】
水中での計量はイオン交換水を使用し、表面張力を下げるために、少量の食器洗い液を水に加える。この手順は、組み込みの密度計算プログラムを使用して、実験室規模(ケルン PLT 650-3M)で実行される。自動計算のために試験前に水温を測定する。測定はサンプルごとに5回繰り返され、測定ごとにサンプルを切り替え、新しい測定の前にサンプルを完全に乾燥させる。以下の結果は、5回の繰り返しの平均値を示す。
【0075】
引張強さ、降伏強さ、破断点伸び、および弾性率の測定は、標準DIN規格 EN ISO 6892-1:2016年版「金属材料-引張試験-第1部:室温での試験方法」に準拠する引張試験に従ってそれぞれ実施した。引張試験には、選択的レーザ焼結または選択的レーザ溶融により作製された三次元体を引張試験片(試験片)として使用する。各試験片の断面直径は、試験片の中央で最小値である約5.0mmになるように旋盤で縮小される。この直径はマイクロメーターでチェックされる。試験片の端部には取り付け用のネジが切ってある。試験は、例えばユニバーサル試験機の検査テーブル50kn(ヘゲヴァルト&ペシュケ・メッス-ウント・プリュフテクニーク・ゲーエムベーハー社)を使用して実施される。引張力は材料挙動の弾性段階で10Mpa/秒に増加し、塑性変形段階の開始時に0.375MPa/秒に減少する。
【0076】
試験中において、最大荷重、降伏強度(Rp0.2限界)、引張強度、E係数および試験片の破断点伸びが記録され、その後、破断点での断面積の減少をキャリパーで測定する。
【0077】
高温引張強度、E係数、高温降伏強度、および250℃での破断点伸びの諸特性を、DIN規格 EN ISO 6892-2:2011年版A113に準拠して測定した。
【0078】
選択的レーザ焼結または選択的レーザ溶融によってサンプルとして製造された三次元体の硬度試験は、標準のDIN規格 EN ISO 6506-1:2015年版 「ブリネルによる金属材料硬度試験-第1部:試験方法」に準拠して、ブリネル法を使用して実行される。密度立方体サンプルが試験に使用される。試験はサンプルごとに3回実行され、測定値は1HBWの精度で与えられる。以下に示す数値データは、測定に使用されたテスト球の球の直径(例:2.5mm)とテスト荷重(例:63.5kp)を示す。
【0079】
熱伝導率は、測定された熱膨張atechnを考慮して、測定された熱拡散率aLFA(レーザフラッシュ法測定装置427ネッチ社、Ar雰囲気100ml/分、それぞれ2つの作製サンプル:直径12.6mm、厚さ3~3.5mm、平面平行面、温度範囲21~250℃のディスク)、比熱容量cp、および温度依存密度ρから式λ=a・cp・ρに従って決定した。レーザフラッシュ測定法は、熱拡散率を直接測定するための測定方法である。
【0080】
ここでは、サンプルがレーザによって短時間加熱される。測定を実行できるように、サンプルは最初にサンプルホルダに配置され、熱放射を吸収するグラファイト層で覆われる。次にサンプルホルダをサンプルと一緒にシステムに配置し、オーブンで目的の測定温度にする。温度に達すると規定された量の熱が励起パルスでサンプルに導入される。次に検出レーザを使用して、サンプルホルダの反対側でのサンプルの熱反射を測定する。これは通常、入熱後のサンプル温度の上昇とその後のゆっくりとした低下を示す。これはサンプルの熱拡散率に応じて急勾配または平坦になる可能性がある。このデータから熱伝導率は数学モデルを使用して直接計算される。
【0081】
比熱容量cpは、セタラム高温熱量計を使用して、80~250℃の測定間隔、5K/分の加熱速度、He雰囲気、連続比較法で、作製サンプルとして直径4.9mm、長さ16mmの円柱、平面平行面をもつ2つの作製サンプルでそれぞれ測定した。
【0082】
熱膨張atechnは、DIL402C膨張計を使用して測定し、測定範囲は20~250℃、5K/minの加熱速度、He雰囲気、作製試験片として直径4mm、長さ25mmの円柱、平面平行面をもつ2つの作製試験片でそれぞれ測定した。
【0083】
比熱容量と熱膨張の値は、測定されたサンプルの平均値である。
【実施例0084】
例1:
粉末状の各種アルミニウム合金を以下の表1に示す組成と特性で製造した。
【0085】
【0086】
アルミニウム合金2の粒度が小さいため、アルミニウム合金1と比較して、三次元体の製造における表面品質が向上し、亀裂感度が低下した。アルミニウム合金2は、かさ密度が高く、流動性も優れている。これは、おそらく酸素含有量が高いため、粒子間の力が減少するためである。合金3は合金1と合金2の有利な特性を兼ね備えている。
【0087】
粉末は粗く、主に球状の粒子で構成されていた。アルミニウム合金1は10μm未満の大きさの粒子をほとんど含んでいなかったが、アルミニウム合金2は粉末中にかなりの量の微粒子を含んでいた。粉末3は、粉末2と比較して微粉の量が少ないという特徴があった。これらの粉末を使用すると、20~60μmの層厚を確実に生成できた。
【0088】
例2:
三次元試験体は、アルミニウム合金を使用して、EOS M290(EOSプリント
バージョン2.X,レーザ出力270W,線速度850mm/秒,ハッチ距離0.1mm, 膜厚0.05mm)で作製した。この目的のために、195℃の予熱温度がサンプルチャンバ内に設定された。アルミニウム合金を使用すると、製造された物体の密度を99%以上にすることができる。アルミニウム合金1でつくられた物体は、脆い亀裂に対してわずかに高い感度を示した。
【0089】
複雑な試験用物体をアルミニウム合金で作製することができる。製造された寸法のインペラは、±0.15mmの仕様からの最大偏差を示した(
図2参照)。
【0090】
密度2.9g/cm3のアルミニウム合金3で作られたサンプルについて、以下の特性を測定した。
【0091】
【0092】
さらにガルバニック腐食の検討が行われ、アルミニウム合金1で作製されたサンプルをA199.5で作製された対応するサンプルと比較した。飽和カロメル電極を参照電極として使用した。測定は白金シートを対向電極として使用し、25℃、0.01MのNaCl溶液中で実施した。これはAl99.5で作製されたサンプルと比較して、本発明のアルミニウム合金の負電位が著しく低いことを示した。
【0093】
例3: アルミニウム合金1の短時間クリープ強度の測定
アルミニウム合金の1の短時間クリープ強度は、DIN規格 EN ISO 6892-2:2011年版 -05 Aに準拠して測定した。この目的のためにサンプルは260℃で種々異なる応力レベルにおかれ、その後一定の応力下に保たれた。6分後に生じる永久伸びが測定値として記録される。0.5%の伸びが得られる応力を比較の基準値として使用する。
【0094】
これらのテスト結果を
図3に示す。アルミニウム合金1の場合、260℃で0.5%のクリープひずみと6分の保持時間での応力といて決定される訳260MPaの短時間クリープ強度を決定できた。これは短時間クリープ強度よりも大幅に高い値である。他のアルミニウム合金(9乃至170MPaの範囲)について説明されている。付加的に製造されたAl-MMCの場合、170MPaの短時間クリープ強度が決定された(図示せず)。