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  • 特開-棒状化粧料繰出容器 図1
  • 特開-棒状化粧料繰出容器 図2
  • 特開-棒状化粧料繰出容器 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004519
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】棒状化粧料繰出容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 40/12 20060101AFI20240110BHJP
   A45D 40/20 20060101ALI20240110BHJP
   F16H 25/20 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A45D40/12
A45D40/20 G
A45D40/20 Z
F16H25/20 H
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104106
(22)【出願日】2022-06-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000223986
【氏名又は名称】フィグラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141210
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100100767
【弁理士】
【氏名又は名称】湯浅 正彦
(72)【発明者】
【氏名】三國 諒
【テーマコード(参考)】
3J062
【Fターム(参考)】
3J062AA60
3J062AB21
3J062AC07
3J062BA21
3J062CD02
3J062CD23
3J062CD35
3J062CD54
3J062CD79
(57)【要約】
【課題】棒状化粧料繰出容器を落下させても、落下時の衝撃又は振動による棒状化粧料への脱落、折損及び変形等のダメージを防止する。
【解決手段】棒状化粧料繰出容器本体3内でスライド自在となる棒状化粧料繰出機構7において、芯筒5、嵌合筒6の内周面及びネジ駒10の外周面の鍔部10cとで形成される空間内で、ネジ駒10の外周面に嵌合筒6の内周面に密着するOリング11を固持した上、該ネジ駒10の外周面において、Oリング11の前方でフランジ部10dを介して圧縮スプリング12を該ネジ駒10と連動するよう一体に保持しているので、棒状化粧料繰出容器の落下時における衝撃又は振動及び圧縮された圧縮スプリングの伸張時における衝撃又は振動は、Oリングと嵌合筒の内周面との摩擦力に抗しつつ、圧縮スプリングを圧縮又は伸張することによって減衰されて、棒状化粧料に対する脱落、折損及び変形等のダメージを防止できる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャップと、該キャップを着脱自在とする棒状化粧料繰出容器本体とから構成され、
該棒状化粧料繰出容器本体は、外筒と、該外筒と一体に回転する後記嵌合筒に対して相対的に回転し、先端に開口部を有する芯筒と、該外筒と一体に回転し、芯筒に対して相対的に回転する嵌合筒と、及び該嵌合筒の内部に具えられ、後記棒状化粧料を芯筒の先端に有する開口部より出没自在とする棒状化粧料繰出機構とからなり、
該棒状化粧料繰出機構は、前方(以下、棒状化粧料繰出容器本体において「棒状化粧料の突出方向」を指す。)に棒状化粧料を保持するとともに、後方(以下、棒状化粧料繰出容器本体において「棒状化粧料の没入方向」を指す。)の外周面に雄ネジ部を形成する押棒と、該嵌合筒と一体に回転し、押棒の雄ネジ部に螺合する雌ネジ部を内周面に形成して押棒を進退自在とするネジ駒とからなるものであって、
該棒状化粧料繰出機構は、嵌合筒内を軸線前後方向にスライド可能とするとともに、芯筒、嵌合筒の内周面及びネジ駒外周面とで形成される空間内で、該嵌合筒の内周面又はネジ駒の外周面のうちのどちらか一方において、その他方に対して密着する単数又は複数の弾性摩擦材を固持した上、該ネジ駒の外周面において、嵌合筒の内周面とネジ駒の外周面との間で密着する弾性摩擦材の前方又は後方のいずれか一方で弾性反発材を該ネジ駒と連動するよう一体に保持してなる
ことを特徴とする棒状化粧料繰出容器。
【請求項2】
上記嵌合筒の内周面又はネジ駒の外周面のうちのどちらか一方において、その他方に対して密着するように固持される単数又は複数の弾性摩擦材をOリングとしてなる
ことを特徴とする請求項1に記載される棒状化粧料繰出容器。
【請求項3】
上記芯筒、嵌合筒の内周面及びネジ駒外周面とで形成される空間内において、該ネジ駒の外周面に、嵌合筒の内周面とネジ駒の外周面との間で密着する弾性摩擦材の前方又は後方のいずれか一方で保持される弾性反発材を圧縮スプリングとしてなる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載される棒状化粧料繰出容器。
【請求項4】
上記棒状化粧料繰出機構をなすネジ駒の外周面又は嵌合筒の内周面のいずれか一方において、その他方に対して弾性を以て密着することになる単数又は複数の弾性摩擦突起を一体に形成してなる
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれかに記載される棒状化粧料繰出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、例えばアイブロー、アイライナー、リップライナー又は口紅等の棒状化粧料(以下、「棒状化粧料」という。)を、その内部に具える棒状化粧料繰出機構により出没自在とする棒状化粧料繰出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、棒状化粧料を出没自在とする棒状化粧料繰出容器において、例えば不注意による棒状化粧料繰出容器の落下時には、その衝撃又は振動によって棒状化粧料に対して脱落、折損及び変形等のダメージを与えるおそれがある。
【0003】
そこで、落下時の衝撃又は振動による上記棒状化粧料に対する脱落、折損及び変形等のダメージを防止するために、例えば前後クラッチ付繰出容器において、先端に固形化粧料を具える進退軸に螺合するラセン筒の先端面と先筒後端面との間に環状パッキンとともに圧縮バネを保持させてなるものが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
従って、上記前後クラッチ付繰出容器を不注意によって落下させても、先端に固形化粧料を具える進退軸、該進退軸に螺合し、回転することで進退軸を前進又は後退させるラセン筒は、環状パッキングと一体となって圧縮バネを圧縮しつつ前進するものである。
その結果、該ラセン筒の前進及び圧縮バネの圧縮作用によって、該前後クラッチ付繰出容器に与えられた落下時の衝撃又は振動を吸収するので、固形化粧料の進退軸からの脱落、折損及び変形等のダメージを防止することができる。
【0005】
しかしながら、上記前後クラッチ付繰出容器の落下時における衝撃又は振動が非常に大きくなると、圧縮バネの圧縮だけでは衝撃又は振動を十分に吸収することができなくなり、固形化粧料の進退軸からの脱落、折損及び変形等のダメージを与える恐れがある。
【0006】
ところで、上記前後クラッチ付繰出容器において、ラセン筒の前進による圧縮バネの圧縮が限界に達した後は、逆に圧縮された圧縮バネが環状パッキングとともに伸長して、環状パッキングとともにラセン筒は元の位置に復帰するものである。
ここで、環状パッキングは、圧縮バネの圧縮又は伸長に際して、該圧縮バネがラセン筒内に挿入されたり、又は突起が圧縮バネの中に挿入してしまうことを防いで、圧縮バネによるラセン筒又は突起に対する擦傷を防止するものである。
さらに、圧縮バネの圧縮時には落下時の衝撃又は振動を効率よく吸収でき、また圧縮バネの伸張時には迅速に元の長さに復帰するように、環状パッキングは圧縮バネの圧縮又は伸長に際して抵抗とならないように、円滑に前進又は後退することが必要になる。
そのため、落下時の衝撃又は振動が非常に大きく、圧縮バネの圧縮量が非常に大きくなると、大きく圧縮された圧縮バネの伸長は大きく、しかも急激となるので、固形化粧料に対して圧縮バネの反発力による大きな衝撃又は振動が発生して、脱落、折損及び変形等のダメージを与えるおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公平2-33703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、その内部に具える棒状化粧料繰出機構により棒状化粧料を出没自在とする棒状化粧料繰出容器において、棒状化粧料を落下させた時の衝撃又は振動による圧縮スプリングの圧縮又は該圧縮された圧縮スプリングの伸張時における反発力による棒状化粧料に対する脱落、折損及び変形等のダメージを防止するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の特徴として、
キャップと、該キャップを着脱自在とする棒状化粧料繰出容器本体とから構成され、
該棒状化粧料繰出容器本体は、外筒と、該外筒と一体に回転する後記嵌合筒に対して相対的に回転し、先端に開口部を有する芯筒と、該外筒と一体に回転し、芯筒に対して相対的に回転する嵌合筒と、及び該嵌合筒の内部に具えられ、後記棒状化粧料を芯筒の先端に有する開口部より出没自在とする棒状化粧料繰出機構とからなり、
該棒状化粧料繰出機構は、前方(以下、棒状化粧料繰出容器本体において「棒状化粧料の突出方向」を指す。)に棒状化粧料を保持するとともに、後方(以下、棒状化粧料繰出容器本体において「棒状化粧料の没入方向」を指す。)の外周面に雄ネジ部を形成する押棒と、該嵌合筒と一体に回転し、押棒の雄ネジ部に螺合する雌ネジ部を内周面に形成して押棒を進退自在とするネジ駒とからなるものであって、
該棒状化粧料繰出機構は、嵌合筒内を軸線前後方向にスライド可能とするとともに、芯筒、嵌合筒の内周面及びネジ駒外周面とで形成される空間内で、該嵌合筒の内周面又はネジ駒の外周面のうちのどちらか一方において、その他方に対して密着する単数又は複数の弾性摩擦材を固持した上、該ネジ駒の外周面において、嵌合筒の内周面とネジ駒の外周面との間で密着する弾性摩擦材の前方又は後方のいずれか一方で弾性反発材を該ネジ駒と連動するよう一体に保持してなるものである。
そして、上記第1の特徴を踏まえて、第2の特徴として、
上記嵌合筒の内周面又はネジ駒の外周面のうちのどちらか一方において、その他方に対して密着するように固持される単数又は複数の弾性摩擦材をOリングとしてなるものであり、
さらに、上記第1の特徴又は第2の特徴を踏まえて、第3の特徴として、
上記芯筒、嵌合筒の内周面及びネジ駒外周面とで形成される空間内において、該ネジ駒の外周面に、嵌合筒の内周面とネジ駒の外周面との間で密着する弾性摩擦材の前方又は後方のいずれか一方で保持される弾性反発材を圧縮スプリングとしてなるものである。
【0010】
そのため、不注意によって棒状化粧料繰出容器を棒状化粧料を下に向けて落下させても、落下時の衝撃又は振動によって、棒状化粧料繰出機構のネジ駒は、弾性摩擦材としての例えばOリング及び弾性反発材としての例えば圧縮スプリングを圧縮するように前進するものである。
ところが、該弾性摩擦材としてのOリングは嵌合筒の内周面又はネジ駒の外周面のうちいずれか一方において固持されるとともに、その他方に対して常時密着して摩擦力を生じているので、該ネジ駒は該摩擦力に抗しつつ、前進するものとなる。
その結果、棒状化粧料繰出機構のネジ駒は、徐々に前進して、該弾性反発材としての圧縮スプリングの圧縮とともに、落下時の衝撃又は振動を確実に減衰するので、棒状化粧料に対する脱落、折損及び変形等のダメージを確実に防止できるものである。
【0011】
そして、棒状化粧料繰出機構におけるネジ駒の前進が限界を迎えた後は、圧縮された弾性反発材としての圧縮スプリングは、嵌合筒内で元の長さに戻るように伸長しようとするものである。
ところが、弾性摩擦材としてのOリングは嵌合筒の内周面又はネジ駒の外周面のうちいずれか一方において、他方に対して密着して摩擦力を生じているので、該圧縮スプリングは該Oリングの発生する摩擦力に抗しつつ、伸長することになる。
その結果、圧縮されていた圧縮スプリングは、ネジ駒とともに元の位置へと徐々に伸張して、該圧縮スプリングの反発力による衝撃又は振動を確実に減衰するので、棒状化粧料に対する脱落、折損及び変形等のダメージをも確実に防止できるものである。
【0012】
なお、上記不注意による棒状化粧料繰出容器の落下は棒状化粧料を下に向けて落下した場合であるが、逆に棒状化粧料を上に向けて落下した場合には、最初にネジ駒の後退に合わせて弾性摩擦材としてのOリングとともに弾性反発材としての圧縮スプリングは伸張するものであり、その後は上述の場合とは反対に動作することによって、棒状化粧料に対する脱落、折損及び変形等のダメージをも確実に防止できるものである。
【0013】
ここで、棒状化粧料繰出機構をなす嵌合筒の内周面又はネジ駒の外周面のうちいずれか一方において固持される弾性摩擦材には、耐摩擦性に優れることが要求されるので、材質としてはNBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)等であって、その形状として例えば上記Oリングの他に円筒等が考えられる。
【0014】
また、弾性反発材の一例として、落下時の衝撃や振動の入力により圧縮又は伸張可能となることから圧縮スプリングを挙げているが、それ自身が圧縮及び伸張が可能となる他の緩衝部品であってもよいものである。
【0015】
その上で、第1の特徴乃至第3の特徴を踏まえて、第4の特徴として、
上記棒状化粧料繰出機構をなすネジ駒の外周面又は嵌合筒の内周面のいずれか一方において、その他方に対して弾性を以て密着することになる単数又は複数の弾性摩擦突起を一体に形成してなるものである。
【0016】
そのため、上記第1の特徴乃至第3の特徴による技術的な作用、効果を含めた上で、嵌合筒の内周面又はネジ駒の外周面のいずれか一方において、その他方に対して弾性を以て密着する弾性摩擦突起は、該嵌合筒の内周面又はネジ駒の外周面において一体に形成するものであるので、棒状化粧料繰出機構をなす部品構造の簡略化、部品点数の削減を図ることで、製造作業の効率を向上させるとともに、製造コストの削減を図ることができるものである。
【発明の効果】
【0017】
本願発明は、棒状化粧料繰出機構を嵌合筒内でスライド自在とするとともに、該嵌合筒の内周面又はネジ駒の外周面にのうちいずれか一方において、その他方に弾性摩擦材又は弾性摩擦突起を密着させるとともに、芯筒、嵌合筒の内周面及びネジ駒外周面とで形成される空間内で、該ネジ駒の外周面において、嵌合筒の内周面とネジ駒の外周面との間で密着する弾性摩擦材の前方又は後方のいずれか一方で弾性反発材を該ネジ駒と連動するよう一体に保持しているので、棒状化粧料を落下させても、棒状化粧料繰出機構は嵌合筒内を、弾性摩擦材又は弾性摩擦突起の発生する摩擦力に抗しつつ、該圧縮スプリングを圧縮又は伸張して落下時の衝撃又は振動、又は圧縮又は伸張した該圧縮スプリングの伸長時の反発力又は収縮時の収縮力による衝撃又は振動を確実に減衰するので、棒状化粧料に対する脱落、折損及び変形等のダメージを確実に防止し、さらに別体の弾性摩擦材に代えて嵌合筒又はネジ駒に弾性摩擦突起を一体に形成して部品構造の簡略化、部品点数の削減を図るので、製造作業の効率を向上させるとともに、製造コストの削減をも図ることができる優れた効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本願発明の実施例である棒状化粧料繰出容器の全体縦断面図である。
図2図2(イ)~(ハ)は、本願発明の実施例である棒状化粧料繰出容器を落下時の棒状化粧料繰出機構のスライド状態を模式的に示す断面図である。
図3図3は、本願発明の実施例である棒状化粧料繰出容器における棒状化粧料繰出機構のネジ駒の変形例における(イ)正面図及びそのA-A断面図、(ロ)上面図、(ハ)上面図における左側面図と右側面図、及び(ニ)上面図におけるB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
棒状化粧料繰出機構を嵌合筒内でスライド自在とするとともに、嵌合筒の内周面又はネジ駒の外周面のうちいずれか一方と密着する弾性摩擦材としてのOリング又は弾性摩擦突起、及び芯筒、嵌合筒の内周面とネジ駒外周面とで形成される空間内で、該ネジ駒の外周面において、嵌合筒の内周面とネジ駒の外周面との間で密着する弾性摩擦材の前方又は後方のいずれか一方で、弾性反発材としての例えば圧縮スプリングを一体に保持しているので、棒状化粧料を落下させても、該Oリング又は弾性摩擦突起の発生する摩擦力に抗しつつ、該圧縮スプリングは圧縮又は伸長するので、棒状化粧料が落下時の衝撃又は振動、及び弾性反発材としての例えば圧縮スプリングの伸長時又は収縮時における反発力又は収縮力による衝撃又は振動を減衰するものである。
【実施例0020】
図1及び図2において示すのは、本願発明の実施例1である棒状化粧料繰出容器1であり、該棒状化粧料繰出容器1は、キャップ2と、該キャップ2が着脱自在となる棒状化粧料繰出容器本体3とから構成されるものである。
【0021】
そして、該棒状化粧料繰出容器本体3は、外筒4と、該外筒4と一体に回転する後記嵌合筒6に対して相対的に回転し、先端に開口部5aを有する芯筒5と、該外筒4と一体に回転し、芯筒5に対して相対的に回転する嵌合筒6と、及び該嵌合筒6の内部に具えられ、後記棒状化粧料8を芯筒5の先端に有する開口部5aより出没自在としてなる棒状化粧料繰出機構7とからなるものである。
【0022】
さらに、該棒状化粧料繰出機構7は、前方(以下、棒状化粧料繰出容器本体3において「棒状化粧料8の突出方向」を指す。)に棒状化粧料8を保持するとともに、後方(以下、棒状化粧料繰出容器本体3において「棒状化粧料8の没入方向」を指す。)の外周面に雄ネジ部9aを形成する押棒9と、該嵌合筒6と一体に回転し、押棒9の雄ネジ部9aに螺合する雌ネジ部10aを内周面に形成して押棒9を進退自在とするネジ駒10とからなるものである。
【0023】
ここで、上記棒状化粧料繰出機構7において、嵌合筒6とネジ駒10とは、回転を伝達するために、その後方において互いの表面において軸線前方から後方方向に沿って刻設された係合溝6a、10bが噛合しており、しかもネジ駒10は嵌合筒6に対して前方又は後方ヘ向けてスライドしつつ前進又は後退するものである。
その結果、棒状化粧料繰出容器1が落下時に衝撃又は振動を受けた際には、両者の係合溝6a、10b同士の噛合が外れることなく、該棒状化粧料繰出機構7は嵌合筒6内で軸線方向に沿って前進又は後退することができるものとなる。
【0024】
なお、本実施例1においては、嵌合筒6の内周面において後方に向けての棒状化粧料繰出機構7のネジ駒10のスライドを抑制する係止段部6bが形成されている。
【0025】
その上で、芯筒5、嵌合筒6の内周面とネジ駒10の外周面、特に該ネジ駒10の外周面に周設される鍔部10cとで形成される空間内で、該ネジ駒10の外周面において、嵌合筒6の内周面に対して密着する弾性摩擦材のOリング11を固持した上、該ネジ駒10の外周面に対して、嵌合筒6の内周面とネジ駒10の外周面との間で密着する弾性摩擦材としてのOリング11の前方で、該ネジ駒10のフランジ部10dを介して弾性反発材としての圧縮スプリング12を該ネジ駒10と連動するよう一体に保持するものである。
【0026】
なお、上記ネジ駒10の外周面に固持される弾性摩擦材であるOリング11は、嵌合筒6の内周面に対して密着して摩擦力を発生しているので、嵌合筒6の内周面に固持するものであっても良く、またその形状も例えば円筒状とするものであっても良いものである。
【0027】
上記棒状化粧料繰出容器1は以上の構成を具えるので、該棒状化粧料繰出容器1を使用にあたっては次のようにするものである。
すなわち、棒状化粧料8を塗布するにあたっては、棒状化粧料繰出容器1において棒状化粧料繰出容器本体3からキャップ2を取り外した後、芯筒5を把持しながら棒状化粧料繰出容器1を構成する外筒4を回転させることによって、該外筒4と一体に回転する嵌合筒6を介して同方向へネジ駒10は回転するものとなる。
その結果、回転するネジ駒10の雌ネジ部10aに螺合する雄ネジ部9aを形成する押棒9は前方に向かって前進するので、該押棒9の前方に保持される棒状化粧料8は芯筒5先端の開口部5aから突出することになる。
【0028】
また、棒状化粧料8を塗布し終わった後は、芯筒5を把持しながら棒状化粧料繰出容器本体3を構成する外筒4を先程とは反対方向へ回転させることによって、外筒4と一体に回転する嵌合筒6を介して同方向へネジ駒10は逆回転するものとなる。
その結果、該回転するネジ駒10の雌ネジ部10aに螺合する雄ネジ部9aを形成する押棒9は後方に向かって後退するので、該押棒9の前方に保持する棒状化粧料8は芯筒5先端の開口部5aから内部に没入することになる。
【0029】
そして、上記棒状化粧料繰出容器1を不注意によって棒状化粧料8を下に向けて落下させると、次のようになるものである。
すなわち、不注意で上記棒状化粧料繰出容器1の棒状化粧料8を落下させると、この落下時の衝撃又は振動によって、押棒9とともに、棒状化粧料繰出機構7のネジ駒10は、ネジ駒10の外周面に固持される弾性摩擦材であるOリング11とともに、圧縮スプリング12を圧縮するように前方へスライドしつつ前進するものである。
【0030】
ここで、上記Oリング11は嵌合筒6の内周面に密着することで摩擦力を発生しており、しかもネジ駒10の外周面に固持されるOリング11の前方で、該ネジ駒10と連動するようフランジ部10dを介して一体に保持される圧縮スプリング12を圧縮するので、落下時の衝撃又は振動によってネジ駒10は徐々に前進して落下時の衝撃又は振動を確実に減衰させて、棒状化粧料8に対しての脱落、折損及び変形等のダメージを確実に防止できるものである。
【0031】
また、該ネジ駒10の前進が限界を迎えた後は、圧縮した圧縮スプリング12は嵌合筒6の係止段部6bに至るまで元の長さに伸長しようとするが、Oリング11は嵌合筒6の内周面と常時密着して摩擦力を発生しているので、フランジ部10dを介して該Oリング11とともに一体に保持される圧縮された圧縮スプリング12は徐々に伸長するものとなる。
その結果、圧縮されていた圧縮スプリング12は、ネジ駒10とともに元の位置へ徐々に伸張して圧縮スプリング12の反発力による衝撃又は振動を確実に減衰するので、棒状化粧料8に対する脱落、折損及び変形等のダメージをも確実に防止できるものである。
【0032】
なお、上記不注意による棒状化粧料繰出容器1の落下は棒状化粧料8を下に向けて落下させる場合であるが、逆に棒状化粧料8を上に向けて落下させる場合には、最初にネジ駒4の後退に合わせて弾性摩擦材としてのOリング11とともに、弾性反発材としての圧縮スプリング12は伸張するものであって、その後は上述の場合とは反対に棒状化粧料繰出機構7で動作することで、棒状化粧料8に対する脱落、折損及び変形等のダメージをも確実に防止できるものである。
【0033】
さらに、上記実施例1の棒状化粧料繰出容器1内に具えられる棒状化粧料繰出機構7のネジ駒10は、該弾性摩擦材であるOリング11をネジ駒10の外周面で固持するとともに、その他方では嵌合筒6の内周面と密着することで摩擦力を生じるものであるので、ネジ駒10’の外周面において、その他方の嵌合筒6の内周面に密着する弾性摩擦突起11’を一体に形成しても良いものである。
【0034】
すなわち、図3(イ)~(ニ)に示すように、上記実施例1のネジ駒10の変形例10’は、全体として略円筒形状であって、その前方内周面には押棒9の外周面の雄ネジ部9aに螺合する雌ネジ部10a’を形成し、その後方外周面には嵌合筒6の内周面に密着して一体に回転するように密着する径方向に突出する4本のリブ13が、互いに直交する位置において軸線方向に沿って形成するものであって、その略中央部ではフランジ部10d’とともに互いに対向位置において軸線方向に並設される2本のスリット14、14に挟まれることで弾性を以て嵌合筒6の内周面に密着することになる複数の弾性摩擦突起11’、11’が形成されているものである。
【0035】
ここで、上記ネジ駒10’は、4本のリブ13及び互いに並設するスリット14、14により弾性を有する2つの弾性摩擦突起11’、11’が嵌合筒6の内周面に対する密着して摩擦力を発生することで、上記棒状化粧料繰出容器本体3をなす嵌合筒6内において固定されるものとなる。
従って、嵌合筒6を回転させると、ネジ駒10’は嵌合筒6の内周面との間で発生している摩擦力により一体に回転し、該ネジ駒10’の雌ネジ部10a’に螺合する雄ネジ部9aを有する押棒9は前進又は後退して、棒状化粧料8は芯筒5先端の開口部5aより出没自在するものである。
【0036】
そして、上記実施例1の棒状化粧料繰出容器1と同様に、不注意によって棒状化粧料8を下に向けて落下させた場合には、次のようになるものである。
すなわち、不注意で上記棒状化粧料繰出容器1を落下させると、上記棒状化粧料繰出容器1内の棒状化粧料8を下に向けて落下させても、落下時の衝撃又は振動によってリブ13の摩擦力が失われると同時に、上記棒状化粧料繰出機構7のネジ駒10’は押棒9とともに、ネジ駒10’の外周面に一体に形成される弾性摩擦突起11’と嵌合筒6の内周面との密着による摩擦力に抗して、圧縮スプリング12を圧縮するようにスライドしつつ前進するものである。
【0037】
ここで、上記弾性摩擦突起11’は嵌合筒6の内周面に密着して摩擦力を発生しており、しかも該弾性摩擦突起11’と芯筒5後方の端面との間で保持される圧縮スプリング12を圧縮するので、落下時の衝撃又は振動によってネジ駒10は徐々に前進することで、落下時の衝撃又は振動を確実に減衰させるので、棒状化粧料8に対しての脱落、折損及び変形等のダメージを確実に防止できるものである。
【0038】
また、該ネジ駒10’の前進が限界を迎えた後は、圧縮した圧縮スプリング12は嵌合筒6の係止段部6bに至るまで元の長さに伸長しようとするが、弾性摩擦突起11’と嵌合筒6の内周面と常時密着して摩擦力を発生しているので、圧縮された圧縮スプリング12は徐々に伸長するものとなる。
その結果、圧縮されていた圧縮スプリング12は、ネジ駒10’とともに元の位置へ徐々に伸張して圧縮スプリング12の反発力による衝撃又は振動を確実に減衰するので、棒状化粧料8に対する脱落、折損及び変形等のダメージをも確実に防止できるものである。
【符号の説明】
【0039】
1 棒状化粧料繰出容器
2 キャップ
3 棒状化粧料繰出容器本体
4 外筒
5 芯筒
5a 開口部
6 嵌合筒
6a 係合溝
6b 係止段部
7 棒状化粧料繰出機構
8 棒状化粧料
9 押棒
9a 雄ネジ部
10、10’ ネジ駒
10a、10a’ 雌ネジ部
10b 係合溝
10c 鍔部
10d、10d’ フランジ部
11 Oリング
11’ 弾性摩擦突起
12 圧縮スプリング
13 リブ
14 スリット
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2022-09-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャップと、該キャップを着脱自在とする棒状化粧料繰出容器本体とから構成され、
該棒状化粧料繰出容器本体は、外筒と、該外筒と一体に回転する後記嵌合筒に対して相対的に回転し、先端に開口部を有する芯筒と、該外筒と一体に回転し、芯筒に対して相対的に回転する嵌合筒と、及び該嵌合筒の内部に具えられ、後記棒状化粧料を芯筒の先端に有する開口部より出没自在とする棒状化粧料繰出機構とからなり、
該棒状化粧料繰出機構は、前方(以下、棒状化粧料繰出容器本体において「棒状化粧料の突出方向」を指す。)に棒状化粧料を保持するとともに、後方(以下、棒状化粧料繰出容器本体において「棒状化粧料の没入方向」を指す。)の外周面に雄ネジ部を形成する押棒と、該嵌合筒と一体に回転し、押棒の雄ネジ部に螺合する雌ネジ部を内周面に形成して押棒を進退自在とするネジ駒とからなるものであって、
該棒状化粧料繰出機構は、嵌合筒内を軸線前後方向にスライド可能とするとともに、芯筒、嵌合筒の内周面及びネジ駒外周面とで形成される空間内で、該嵌合筒の内周面又はネジ駒の外周面のうちのどちらか一方において、その他方に対して密着する単数又は複数の弾性摩擦材を固持した上、該ネジ駒の外周面において、嵌合筒の内周面とネジ駒の外周面との間で密着する弾性摩擦材の前方又は後方のいずれか一方で弾性反発材を該ネジ駒と連動するよう一体に保持してなる
ことを特徴とする棒状化粧料繰出容器。
【請求項2】
上記嵌合筒の内周面又はネジ駒の外周面のうちのどちらか一方において、その他方に対して密着するように固持される単数又は複数の弾性摩擦材をOリングとしてなる
ことを特徴とする請求項1に記載される棒状化粧料繰出容器。
【請求項3】
上記芯筒、嵌合筒の内周面及びネジ駒外周面とで形成される空間内において、該ネジ駒の外周面に、嵌合筒の内周面とネジ駒の外周面との間で密着する弾性摩擦材の前方又は後方のいずれか一方で保持される弾性反発材を圧縮スプリングとしてなる
ことを特徴とする請求項1に記載される棒状化粧料繰出容器。
【請求項4】
上記芯筒、嵌合筒の内周面及びネジ駒外周面とで形成される空間内において、該ネジ駒の外周面に、嵌合筒の内周面とネジ駒の外周面との間で密着する弾性摩擦材の前方又は後方のいずれか一方で保持される弾性反発材を圧縮スプリングとしてなる
ことを特徴とする請求項2に記載される棒状化粧料繰出容器。
【請求項5】
上記棒状化粧料繰出機構をなすネジ駒の外周面又は嵌合筒の内周面のいずれか一方において、その他方に対して弾性を以て密着することになる単数又は複数の弾性摩擦突起を一体に形成してなる
ことを特徴とする請求項1又は請求項3のうちいずれか1つに記載される棒状化粧料繰出容器。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、例えばアイブロー、アイライナー、リップライナー又は口紅等の棒状化粧料(以下、「棒状化粧料」という。)を、その内部に具える棒状化粧料繰出機構により出没自在とする棒状化粧料繰出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、棒状化粧料を出没自在とする棒状化粧料繰出容器において、例えば不注意による棒状化粧料繰出容器の落下時には、その衝撃又は振動によって棒状化粧料に対して脱落、折損及び変形等のダメージを与えるおそれがある。
【0003】
そこで、落下時の衝撃又は振動による上記棒状化粧料に対する脱落、折損及び変形等のダメージを防止するために、例えば前後クラッチ付繰出容器において、先端に固形化粧料を具える進退軸に螺合するラセン筒の先端面と先筒後端面との間に環状パッキンとともに圧縮バネを保持させてなるものが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
従って、上記前後クラッチ付繰出容器を不注意によって落下させても、先端に固形化粧料を具える進退軸、該進退軸に螺合し、回転することで進退軸を前進又は後退させるラセン筒は、環状パッキングと一体となって圧縮バネを圧縮しつつ前進するものである。
その結果、該ラセン筒の前進及び圧縮バネの圧縮作用によって、該前後クラッチ付繰出容器に与えられた落下時の衝撃又は振動を吸収するので、固形化粧料の進退軸からの脱落
、折損及び変形等のダメージを防止することができる。
【0005】
しかしながら、上記前後クラッチ付繰出容器の落下時における衝撃又は振動が非常に大きくなると、圧縮バネの圧縮だけでは衝撃又は振動を十分に吸収することができなくなり
、固形化粧料の進退軸からの脱落、折損及び変形等のダメージを与える恐れがある。
【0006】
ところで、上記前後クラッチ付繰出容器において、ラセン筒の前進による圧縮バネの圧縮が限界に達した後は、逆に圧縮された圧縮バネが環状パッキングとともに伸長して、環状パッキングとともにラセン筒は元の位置に復帰するものである。
ここで、環状パッキングは、圧縮バネの圧縮又は伸長に際して、該圧縮バネがラセン筒内に挿入されたり、又は突起が圧縮バネの中に挿入してしまうことを防いで、圧縮バネによるラセン筒又は突起に対する擦傷を防止するものである。
さらに、圧縮バネの圧縮時には落下時の衝撃又は振動を効率よく吸収でき、また圧縮バネの伸張時には迅速に元の長さに復帰するように、環状パッキングは圧縮バネの圧縮又は伸長に際して抵抗とならないように、円滑に前進又は後退することが必要になる。
そのため、落下時の衝撃又は振動が非常に大きく、圧縮バネの圧縮量が非常に大きくなると、大きく圧縮された圧縮バネの伸長は大きく、しかも急激となるので、固形化粧料に対して圧縮バネの反発力による大きな衝撃又は振動が発生して、脱落、折損及び変形等のダメージを与えるおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公平2-33703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、その内部に具える棒状化粧料繰出機構により棒状化粧料を出没自在とする棒状化粧料繰出容器において、棒状化粧料を落下させた時の衝撃又は振動による圧縮スプリングの圧縮又は該圧縮された圧縮スプリングの伸張時における反発力による棒状化粧料に対する脱落、折損及び変形等のダメージを防止するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の特徴として、
キャップと、該キャップを着脱自在とする棒状化粧料繰出容器本体とから構成され、
該棒状化粧料繰出容器本体は、外筒と、該外筒と一体に回転する後記嵌合筒に対して相対的に回転し、先端に開口部を有する芯筒と、該外筒と一体に回転し、芯筒に対して相対的に回転する嵌合筒と、及び該嵌合筒の内部に具えられ、後記棒状化粧料を芯筒の先端に有する開口部より出没自在とする棒状化粧料繰出機構とからなり、
該棒状化粧料繰出機構は、前方(以下、棒状化粧料繰出容器本体において「棒状化粧料の突出方向」を指す。)に棒状化粧料を保持するとともに、後方(以下、棒状化粧料繰出容器本体において「棒状化粧料の没入方向」を指す。)の外周面に雄ネジ部を形成する押棒と、該嵌合筒と一体に回転し、押棒の雄ネジ部に螺合する雌ネジ部を内周面に形成して押棒を進退自在とするネジ駒とからなるものであって、
該棒状化粧料繰出機構は、嵌合筒内を軸線前後方向にスライド可能とするとともに、芯筒、嵌合筒の内周面及びネジ駒外周面とで形成される空間内で、該嵌合筒の内周面又はネジ駒の外周面のうちのどちらか一方において、その他方に対して密着する単数又は複数の弾性摩擦材を固持した上、該ネジ駒の外周面において、嵌合筒の内周面とネジ駒の外周面との間で密着する弾性摩擦材の前方又は後方のいずれか一方で弾性反発材を該ネジ駒と連動するよう一体に保持してなるものである。
そして、上記第1の特徴を踏まえて、第2の特徴として、
上記嵌合筒の内周面又はネジ駒の外周面のうちのどちらか一方において、その他方に対して密着するように固持される単数又は複数の弾性摩擦材をOリングとしてなるものであり、
さらに、上記第1の特徴を踏まえて第3の特徴として、又は第2の特徴を踏まえて、第の特徴として、
上記芯筒、嵌合筒の内周面及びネジ駒外周面とで形成される空間内において、該ネジ駒の外周面に、嵌合筒の内周面とネジ駒の外周面との間で密着する弾性摩擦材の前方又は後方のいずれか一方で保持される弾性反発材を圧縮スプリングとしてなるものである。
【0010】
そのため、不注意によって棒状化粧料繰出容器を棒状化粧料を下に向けて落下させても
、落下時の衝撃又は振動によって、棒状化粧料繰出機構のネジ駒は、弾性摩擦材としての例えばOリング及び弾性反発材としての例えば圧縮スプリングを圧縮するように前進するものである。
ところが、該弾性摩擦材としてのOリングは嵌合筒の内周面又はネジ駒の外周面のうちいずれか一方において固持されるとともに、その他方に対して常時密着して摩擦力を生じているので、該ネジ駒は該摩擦力に抗しつつ、前進するものとなる。
その結果、棒状化粧料繰出機構のネジ駒は、徐々に前進して、該弾性反発材としての圧縮スプリングの圧縮とともに、落下時の衝撃又は振動を確実に減衰するので、棒状化粧料に対する脱落、折損及び変形等のダメージを確実に防止できるものである。
【0011】
そして、棒状化粧料繰出機構におけるネジ駒の前進が限界を迎えた後は、圧縮された弾性反発材としての圧縮スプリングは、嵌合筒内で元の長さに戻るように伸長しようとするものである。
ところが、弾性摩擦材としてのOリングは嵌合筒の内周面又はネジ駒の外周面のうちいずれか一方において、他方に対して密着して摩擦力を生じているので、該圧縮スプリングは該Oリングの発生する摩擦力に抗しつつ、伸長することになる。
その結果、圧縮されていた圧縮スプリングは、ネジ駒とともに元の位置へと徐々に伸張して、該圧縮スプリングの反発力による衝撃又は振動を確実に減衰するので、棒状化粧料に対する脱落、折損及び変形等のダメージをも確実に防止できるものである。
【0012】
なお、上記不注意による棒状化粧料繰出容器の落下は棒状化粧料を下に向けて落下した場合であるが、逆に棒状化粧料を上に向けて落下した場合には、最初にネジ駒の後退に合わせて弾性摩擦材としてのOリングとともに弾性反発材としての圧縮スプリングは伸張するものであり、その後は上述の場合とは反対に動作することによって、棒状化粧料に対する脱落、折損及び変形等のダメージをも確実に防止できるものである。
【0013】
ここで、棒状化粧料繰出機構をなす嵌合筒の内周面又はネジ駒の外周面のうちいずれか一方において固持される弾性摩擦材には、耐摩擦性に優れることが要求されるので、材質としてはNBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)等であって、その形状として例えば上記Oリングの他に円筒等が考えられる。
【0014】
また、弾性反発材の一例として、落下時の衝撃や振動の入力により圧縮又は伸張可能となることから圧縮スプリングを挙げているが、それ自身が圧縮及び伸張が可能となる他の緩衝部品であってもよいものである。
【0015】
その上で、第1の特徴又は第3の特徴のうちいずれか一つを踏まえて、第の特徴として、
上記棒状化粧料繰出機構をなすネジ駒の外周面又は嵌合筒の内周面のいずれか一方において、その他方に対して弾性を以て密着することになる単数又は複数の弾性摩擦突起を一体に形成してなるものである。
【0016】
そのため、上記第1の特徴又は第3の特徴による技術的な作用、効果を含めた上で、嵌合筒の内周面又はネジ駒の外周面のいずれか一方において、その他方に対して弾性を以て密着する弾性摩擦突起は、該嵌合筒の内周面又はネジ駒の外周面において一体に形成するものであるので、棒状化粧料繰出機構をなす部品構造の簡略化、部品点数の削減を図ることで、製造作業の効率を向上させるとともに、製造コストの削減を図ることができるものである。
【発明の効果】
【0017】
本願発明は、棒状化粧料繰出機構を嵌合筒内でスライド自在とするとともに、該嵌合筒の内周面又はネジ駒の外周面にのうちいずれか一方において、その他方に弾性摩擦材又は弾性摩擦突起を密着させるとともに、芯筒、嵌合筒の内周面及びネジ駒外周面とで形成される空間内で、該ネジ駒の外周面において、嵌合筒の内周面とネジ駒の外周面との間で密着する弾性摩擦材の前方又は後方のいずれか一方で弾性反発材を該ネジ駒と連動するよう一体に保持しているので、棒状化粧料を落下させても、棒状化粧料繰出機構は嵌合筒内を
、弾性摩擦材又は弾性摩擦突起の発生する摩擦力に抗しつつ、該圧縮スプリングを圧縮又は伸張して落下時の衝撃又は振動、又は圧縮又は伸張した該圧縮スプリングの伸長時の反発力又は収縮時の収縮力による衝撃又は振動を確実に減衰するので、棒状化粧料に対する脱落、折損及び変形等のダメージを確実に防止し、さらに別体の弾性摩擦材に代えて嵌合筒又はネジ駒に弾性摩擦突起を一体に形成して部品構造の簡略化、部品点数の削減を図るので、製造作業の効率を向上させるとともに、製造コストの削減をも図ることができる優れた効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本願発明の実施例である棒状化粧料繰出容器の全体縦断面図である。
図2図2(イ)~(ハ)は、本願発明の実施例である棒状化粧料繰出容器を落下時の棒状化粧料繰出機構のスライド状態を模式的に示す断面図である。
図3図3は、本願発明の実施例である棒状化粧料繰出容器における棒状化粧料繰出機構のネジ駒の変形例における(イ)正面図及びそのA-A断面図、(ロ)上面図、(ハ)上面図における左側面図と右側面図、及び(ニ)上面図におけるB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
棒状化粧料繰出機構を嵌合筒内でスライド自在とするとともに、嵌合筒の内周面又はネジ駒の外周面のうちいずれか一方と密着する弾性摩擦材としてのOリング又は弾性摩擦突起、及び芯筒、嵌合筒の内周面とネジ駒外周面とで形成される空間内で、該ネジ駒の外周面において、嵌合筒の内周面とネジ駒の外周面との間で密着する弾性摩擦材の前方又は後方のいずれか一方で、弾性反発材としての例えば圧縮スプリングを一体に保持しているので、棒状化粧料を落下させても、該Oリング又は弾性摩擦突起の発生する摩擦力に抗しつつ、該圧縮スプリングは圧縮又は伸長するので、棒状化粧料が落下時の衝撃又は振動、及び弾性反発材としての例えば圧縮スプリングの伸長時又は収縮時における反発力又は収縮力による衝撃又は振動を減衰するものである。
【実施例0020】
図1及び図2において示すのは、本願発明の実施例1である棒状化粧料繰出容器1であり、該棒状化粧料繰出容器1は、キャップ2と、該キャップ2が着脱自在となる棒状化粧料繰出容器本体3とから構成されるものである。
【0021】
そして、該棒状化粧料繰出容器本体3は、外筒4と、該外筒4と一体に回転する後記嵌合筒6に対して相対的に回転し、先端に開口部5aを有する芯筒5と、該外筒4と一体に回転し、芯筒5に対して相対的に回転する嵌合筒6と、及び該嵌合筒6の内部に具えられ
、後記棒状化粧料8を芯筒5の先端に有する開口部5aより出没自在としてなる棒状化粧料繰出機構7とからなるものである。
【0022】
さらに、該棒状化粧料繰出機構7は、前方(以下、棒状化粧料繰出容器本体3において「棒状化粧料8の突出方向」を指す。)に棒状化粧料8を保持するとともに、後方(以下、棒状化粧料繰出容器本体3において「棒状化粧料8の没入方向」を指す。)の外周面に雄ネジ部9aを形成する押棒9と、該嵌合筒6と一体に回転し、押棒9の雄ネジ部9aに螺合する雌ネジ部10aを内周面に形成して押棒9を進退自在とするネジ駒10とからなるものである。
【0023】
ここで、上記棒状化粧料繰出機構7において、嵌合筒6とネジ駒10とは、回転を伝達するために、その後方において互いの表面において軸線前方から後方方向に沿って刻設された係合溝6a、10bが噛合しており、しかもネジ駒10は嵌合筒6に対して前方又は後方ヘ向けてスライドしつつ前進又は後退するものである。
その結果、棒状化粧料繰出容器1が落下時に衝撃又は振動を受けた際には、両者の係合溝6a、10b同士の噛合が外れることなく、該棒状化粧料繰出機構7は嵌合筒6内で軸線方向に沿って前進又は後退することができるものとなる。
【0024】
なお、本実施例1においては、嵌合筒6の内周面において後方に向けての棒状化粧料繰出機構7のネジ駒10のスライドを抑制する係止段部6bが形成されている。
【0025】
その上で、芯筒5、嵌合筒6の内周面とネジ駒10の外周面、特に該ネジ駒10の外周面に周設される鍔部10cとで形成される空間内で、該ネジ駒10の外周面において、嵌合筒6の内周面に対して密着する弾性摩擦材のOリング11を固持した上、該ネジ駒10の外周面に対して、嵌合筒6の内周面とネジ駒10の外周面との間で密着する弾性摩擦材としてのOリング11の前方で、該ネジ駒10のフランジ部10dを介して弾性反発材としての圧縮スプリング12を該ネジ駒10と連動するよう一体に保持するものである。
【0026】
なお、上記ネジ駒10の外周面に固持される弾性摩擦材であるOリング11は、嵌合筒6の内周面に対して密着して摩擦力を発生しているので、嵌合筒6の内周面に固持するものであっても良く、またその形状も例えば円筒状とするものであっても良いものである。
【0027】
上記棒状化粧料繰出容器1は以上の構成を具えるので、該棒状化粧料繰出容器1を使用にあたっては次のようにするものである。
すなわち、棒状化粧料8を塗布するにあたっては、棒状化粧料繰出容器1において棒状化粧料繰出容器本体3からキャップ2を取り外した後、芯筒5を把持しながら棒状化粧料繰出容器1を構成する外筒4を回転させることによって、該外筒4と一体に回転する嵌合筒6を介して同方向へネジ駒10は回転するものとなる。
その結果、回転するネジ駒10の雌ネジ部10aに螺合する雄ネジ部9aを形成する押棒9は前方に向かって前進するので、該押棒9の前方に保持される棒状化粧料8は芯筒5先端の開口部5aから突出することになる。
【0028】
また、棒状化粧料8を塗布し終わった後は、芯筒5を把持しながら棒状化粧料繰出容器本体3を構成する外筒4を先程とは反対方向へ回転させることによって、外筒4と一体に回転する嵌合筒6を介して同方向へネジ駒10は逆回転するものとなる。
その結果、該回転するネジ駒10の雌ネジ部10aに螺合する雄ネジ部9aを形成する押棒9は後方に向かって後退するので、該押棒9の前方に保持する棒状化粧料8は芯筒5先端の開口部5aから内部に没入することになる。
【0029】
そして、上記棒状化粧料繰出容器1を不注意によって棒状化粧料8を下に向けて落下させると、次のようになるものである。
すなわち、不注意で上記棒状化粧料繰出容器1の棒状化粧料8を落下させると、この落下時の衝撃又は振動によって、押棒9とともに、棒状化粧料繰出機構7のネジ駒10は、ネジ駒10の外周面に固持される弾性摩擦材であるOリング11とともに、圧縮スプリング12を圧縮するように前方へスライドしつつ前進するものである。
【0030】
ここで、上記Oリング11は嵌合筒6の内周面に密着することで摩擦力を発生しており
、しかもネジ駒10の外周面に固持されるOリング11の前方で、該ネジ駒10と連動するようフランジ部10dを介して一体に保持される圧縮スプリング12を圧縮するので、落下時の衝撃又は振動によってネジ駒10は徐々に前進して落下時の衝撃又は振動を確実に減衰させて、棒状化粧料8に対しての脱落、折損及び変形等のダメージを確実に防止できるものである。
【0031】
また、該ネジ駒10の前進が限界を迎えた後は、圧縮した圧縮スプリング12は嵌合筒6の係止段部6bに至るまで元の長さに伸長しようとするが、Oリング11は嵌合筒6の内周面と常時密着して摩擦力を発生しているので、フランジ部10dを介して該Oリング11とともに一体に保持される圧縮された圧縮スプリング12は徐々に伸長するものとなる。
その結果、圧縮されていた圧縮スプリング12は、ネジ駒10とともに元の位置へ徐々に伸張して圧縮スプリング12の反発力による衝撃又は振動を確実に減衰するので、棒状化粧料8に対する脱落、折損及び変形等のダメージをも確実に防止できるものである。
【0032】
なお、上記不注意による棒状化粧料繰出容器1の落下は棒状化粧料8を下に向けて落下させる場合であるが、逆に棒状化粧料8を上に向けて落下させる場合には、最初にネジ駒4の後退に合わせて弾性摩擦材としてのOリング11とともに、弾性反発材としての圧縮スプリング12は伸張するものであって、その後は上述の場合とは反対に棒状化粧料繰出機構7で動作することで、棒状化粧料8に対する脱落、折損及び変形等のダメージをも確実に防止できるものである。
【0033】
さらに、上記実施例1の棒状化粧料繰出容器1内に具えられる棒状化粧料繰出機構7のネジ駒10は、該弾性摩擦材であるOリング11をネジ駒10の外周面で固持するとともに、その他方では嵌合筒6の内周面と密着することで摩擦力を生じるものであるので、ネジ駒10’の外周面において、その他方の嵌合筒6の内周面に密着する弾性摩擦突起11’を一体に形成しても良いものである。
【0034】
すなわち、図3(イ)~(ニ)に示すように、上記実施例1のネジ駒10の変形例10’は、全体として略円筒形状であって、その前方内周面には押棒9の外周面の雄ネジ部9aに螺合する雌ネジ部10a’を形成し、その後方外周面には嵌合筒6の内周面に密着して一体に回転するように密着する径方向に突出する4本のリブ13が、互いに直交する位置において軸線方向に沿って形成するものであって、その略中央部ではフランジ部10d’とともに互いに対向位置において軸線方向に並設される2本のスリット14、14に挟まれることで弾性を以て嵌合筒6の内周面に密着することになる複数の弾性摩擦突起11’、11’が形成されているものである。
【0035】
ここで、上記ネジ駒10’は、4本のリブ13及び互いに並設するスリット14、14により弾性を有する2つの弾性摩擦突起11’、11’が嵌合筒6の内周面に対する密着して摩擦力を発生することで、上記棒状化粧料繰出容器本体3をなす嵌合筒6内において固定されるものとなる。
従って、嵌合筒6を回転させると、ネジ駒10’は嵌合筒6の内周面との間で発生している摩擦力により一体に回転し、該ネジ駒10’の雌ネジ部10a’に螺合する雄ネジ部9aを有する押棒9は前進又は後退して、棒状化粧料8は芯筒5先端の開口部5aより出没自在するものである。
【0036】
そして、上記実施例1の棒状化粧料繰出容器1と同様に、不注意によって棒状化粧料8を下に向けて落下させた場合には、次のようになるものである。
すなわち、不注意で上記棒状化粧料繰出容器1を落下させると、上記棒状化粧料繰出容器1内の棒状化粧料8を下に向けて落下させても、落下時の衝撃又は振動によってリブ13の摩擦力が失われると同時に、上記棒状化粧料繰出機構7のネジ駒10’は押棒9とともに、ネジ駒10’の外周面に一体に形成される弾性摩擦突起11’と嵌合筒6の内周面との密着による摩擦力に抗して、圧縮スプリング12を圧縮するようにスライドしつつ前進するものである。
【0037】
ここで、上記弾性摩擦突起11’は嵌合筒6の内周面に密着して摩擦力を発生しており
、しかも該弾性摩擦突起11’と芯筒5後方の端面との間で保持される圧縮スプリング12を圧縮するので、落下時の衝撃又は振動によってネジ駒10は徐々に前進することで、落下時の衝撃又は振動を確実に減衰させるので、棒状化粧料8に対しての脱落、折損及び変形等のダメージを確実に防止できるものである。
【0038】
また、該ネジ駒10’の前進が限界を迎えた後は、圧縮した圧縮スプリング12は嵌合筒6の係止段部6bに至るまで元の長さに伸長しようとするが、弾性摩擦突起11’と嵌合筒6の内周面と常時密着して摩擦力を発生しているので、圧縮された圧縮スプリング12は徐々に伸長するものとなる。
その結果、圧縮されていた圧縮スプリング12は、ネジ駒10’とともに元の位置へ徐々に伸張して圧縮スプリング12の反発力による衝撃又は振動を確実に減衰するので、棒状化粧料8に対する脱落、折損及び変形等のダメージをも確実に防止できるものである。
【符号の説明】
【0039】
1 棒状化粧料繰出容器
2 キャップ
3 棒状化粧料繰出容器本体
4 外筒
5 芯筒
5a 開口部
6 嵌合筒
6a 係合溝
6b 係止段部
7 棒状化粧料繰出機構
8 棒状化粧料
9 押棒
9a 雄ネジ部
10、10’ ネジ駒
10a、10a’ 雌ネジ部
10b 係合溝
10c 鍔部
10d、10d’ フランジ部
11 Oリング
11’ 弾性摩擦突起
12 圧縮スプリング
13 リブ
14 スリット