(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045214
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】樹脂組成物、樹脂シート、セキュリティカードおよび樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 69/00 20060101AFI20240326BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20240326BHJP
C08K 5/50 20060101ALI20240326BHJP
C08K 5/524 20060101ALI20240326BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20240326BHJP
B42D 25/00 20140101ALI20240326BHJP
【FI】
C08L69/00
C08L67/00
C08K5/50
C08K5/524
C08K3/22
B42D25/00
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024002592
(22)【出願日】2024-01-11
(62)【分割の表示】P 2020559245の分割
【原出願日】2019-12-10
(31)【優先権主張番号】P 2018234240
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】597003516
【氏名又は名称】MGCフィルシート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】武田 聖英
(72)【発明者】
【氏名】若山 彰太
(57)【要約】 (修正有)
【課題】帯電防止剤が熱可塑性樹脂中に十分に分散しており、かつ、表面抵抗率が低い樹脂組成物、ならびに、前記樹脂組成物から形成された樹脂シート、セキュリティカードおよび樹脂組成物の製造方法の提供。
【解決手段】熱可塑性樹脂(A)および帯電防止剤(B)を含み、前記熱可塑性樹脂(A)がポリカーボネート樹脂および非晶性ポリエステル樹脂の少なくとも1種を含み、前記帯電防止剤(B)が下記式(1)で表される化合物である、樹脂組成物;
[(R1)3R2P]+・(R3SO2)(R4SO2)N-(1)
式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素数5以上のアルキル基を表し、R3およびR4は、それぞれ独立に、炭素数1~4のパーフルオロアルキル基を表す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂(A)および帯電防止剤(B)を含み、
前記熱可塑性樹脂(A)がポリカーボネート樹脂および非晶性ポリエステル樹脂の少なくとも1種を含み、
前記帯電防止剤(B)が下記式(1)で表される化合物であり、
さらに、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、酸化チタン1~50質量部を含む、樹脂組成物;[(R1)3R2P]+・(R3SO2)(R4SO2)N- (1)
式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素数5以上のアルキル基を表し、R3およびR4は、それぞれ独立に、炭素数1~4のパーフルオロアルキル基を表す。
【請求項2】
前記式(1)において、R1の少なくとも1つとR2とが、炭素数が異なるアルキル基である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記式(1)において、R1が炭素数6~9のアルキル基であり、R2が炭素数10~16の直鎖状アルキル基である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記式(1)において、R3およびR4が、それぞれ独立に、炭素数1または2のパーフルオロアルキル基を表す、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記式(1)において、R1が炭素数6~9のアルキル基であり、R2が炭素数10~16の直鎖状アルキル基であり、R3およびR4が、それぞれ独立に、炭素数1または2のパーフルオロアルキル基を表す、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記帯電防止剤(B)の含有量が、樹脂組成物の0.1~1.0質量%である、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記帯電防止剤(B)の含有量が、樹脂組成物の0.3~0.8質量%である、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記帯電防止剤(B)の示差熱走査熱量分析に従って測定された融点が0℃以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記帯電防止剤(B)の5%質量減少温度が370℃以上である、請求項1~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
さらに、リン系酸化防止剤(C)を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記酸化チタンを、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、15.00~35質量部含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
セキュリティカード用である、請求項1~11のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成された樹脂シート。
【請求項14】
請求項13に記載の樹脂シートを含む、セキュリティカード。
【請求項15】
粉状の熱可塑性樹脂(A)に、前記帯電防止剤(B)を配合することを含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、樹脂シート、セキュリティカードおよび樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セキュリティカードや電子パスポートなどとして、樹脂シートが使用されている。
このような樹脂シートは、その製造段階および製造後の加工段階において、製造装置および加工装置の部材、例えば、金属、ゴム、樹脂といった材料からなる部材と必然的に接触することとなり、その際に部材間で摩擦を伴うことがある。そして、この摩擦を伴う接触(動的接触)により、樹脂シートは、帯電する。この帯電の度合いが大きいと、製造時および製造後の様々な工程において、樹脂シートの取扱いに不都合が生じることがある。具体的には、印刷を施す際のインクのはじき等の不具合の防止やフィルム取扱い時のスタック防止などがあげられる。
【0003】
このような帯電を防止するために、特許文献1には、熱可塑性樹脂と、下記一般式(1)で表されるホスホニウム塩化合物と、下記一般式(2)で表される高分子リン系化合物と、を含有するシート体を備え、厚みが20~500μmである帯電防止シートが開示されている。
[(R
1)
3R
2P]
+・(R
f
1SO
2)(R
f
2SO
2)N
- (1)
(但し、一般式(1)中、R
1は炭素数1~4のアルキル基を示し、R
2は炭素数8~20のアルキル基を示し、R
f
1およびR
f
2は同じであっても異なっていてもよく、炭素数1~4のパーフルオロアルキル基を示す。)
【化1】
(但し、一般式(2)中、XおよびYは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の炭素数6~20のアリール基を示す。)
【0004】
また、特許文献2および3にも、ポリカーボネート樹脂に、上記特許文献1に記載の帯電防止剤を配合することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-108424号公報
【特許文献2】特開2011-056678号公報
【特許文献3】特開2014-129488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の通り、ポリカーボネート樹脂に、上記特許文献1に記載の帯電防止剤を配合することによって、帯電を防止し、表面抵抗率を低下させることが知られている。しかしながら、本発明者が検討を行ったところ、上記特許文献1に記載の帯電防止剤は、分散性が不十分であることが分かった。分散性が低下すると、十分に低い表面抵抗率を達成するために、帯電防止剤の含有量が多くなってしまう。帯電防止剤の含有量が多いと、ポリカーボネート樹脂が本来的に有する物性に悪影響を与える場合もある。
本発明は、上記課題を解決することを目的とするものであって、帯電防止剤が熱可塑性樹脂中に十分に分散しており、かつ、表面抵抗率が低い樹脂組成物、ならびに、前記樹脂組成物から形成された樹脂シート、セキュリティカードおよび樹脂組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、帯電防止剤として、所定のイオン性化合物を用いることにより、上記課題を解決しうることを見出した。具体的には、下記手段<1>により、好ましくは<2>~<15>により、上記課題は解決された。
<1>熱可塑性樹脂(A)および帯電防止剤(B)を含み、前記熱可塑性樹脂(A)がポリカーボネート樹脂および非晶性ポリエステル樹脂の少なくとも1種を含み、前記帯電防止剤(B)が下記式(1)で表される化合物である、樹脂組成物;
[(R1)3R2P]+・(R3SO2)(R4SO2)N- (1)
式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素数5以上のアルキル基を表し、R3およびR4は、それぞれ独立に、炭素数1~4のパーフルオロアルキル基を表す。
<2>前記式(1)において、R1の少なくとも1つとR2とが、炭素数が異なるアルキル基である、<1>に記載の樹脂組成物。
<3>前記式(1)において、R1が炭素数6~9のアルキル基であり、R2が炭素数10~16の直鎖状アルキル基である、<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
<4>前記式(1)において、R3およびR4が、それぞれ独立に、炭素数1または2のパーフルオロアルキル基を表す、<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<5>前記式(1)において、R1が炭素数6~9のアルキル基であり、R2が炭素数10~16の直鎖状アルキル基であり、R3およびR4が、それぞれ独立に、炭素数1または2のパーフルオロアルキル基を表す、<1>に記載の樹脂組成物。
<6>前記帯電防止剤(B)の含有量が、樹脂組成物の0.1~1.0質量%である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7>前記帯電防止剤(B)の含有量が、樹脂組成物の0.3~0.8質量%である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<8>前記帯電防止剤(B)の示差熱走査熱量分析に従って測定された融点が0℃以下である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<9>前記帯電防止剤(B)の5%質量減少温度が370℃以上である、<1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<10>さらに、リン系酸化防止剤(C)を含む、<1>~<9>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<11>さらに、無機顔料を含有する、<1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<12>セキュリティカード用である、<1>~<11>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<13><1>~<12>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成された樹脂シート。
<14><13>に記載の樹脂シートを含む、セキュリティカード。
<15>粉状の熱可塑性樹脂(A)に、前記帯電防止剤(B)を配合することを含む、<1>~<12>のいずれか1つに記載の樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、帯電防止剤が熱可塑性樹脂中に十分に分散しており、かつ、表面抵抗率が低い樹脂組成物、ならびに、前記樹脂組成物から形成された樹脂シート、セキュリティカードおよび樹脂組成物の製造方法を提供可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0010】
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)および帯電防止剤(B)を含み、前記熱可塑性樹脂(A)がポリカーボネート樹脂および非晶性ポリエステル樹脂の少なくとも1種を含み、前記帯電防止剤(B)が下記式(1)で表される化合物であることを特徴とする。
[(R1)3R2P]+・(R3SO2)(R4SO2)N- (1)
式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素数5以上のアルキル基を表し、R3およびR4は、それぞれ独立に、炭素数1~4のパーフルオロアルキル基を表す。
上記構成とすることにより、帯電防止剤(B)が熱可塑性樹脂(A)中に十分に分散しており、かつ、表面抵抗率が低い樹脂組成物が得られる。
上述のとおり、樹脂組成物が帯電すると、樹脂組成物から形成される樹脂シートの取り扱いに不都合等が生じる。そのため、樹脂組成物に帯電防止剤(B)を配合することが考えられる。しかしながら、帯電防止剤(B)を配合する場合も、熱可塑性樹脂(A)が本来的に有する物性を極力損なわずに帯電防止機能を発揮させることが求められる。本発明では、帯電防止剤(B)として、熱可塑性樹脂(A)中での分散性の高い式(1)で表される化合物を用いることにより、この問題を解決している。すなわち、式(1)で表される化合物は、イオン性化合物であり、融点が低く、通常の使用下では、液体となる。そのため、熱可塑性樹脂(A)中での分散性に優れる。結果として、添加量を少なくしても、十分な帯電防止機能が期待でき、樹脂組成物が本来有している物性を極力損なわずに、帯電防止機能を付与できる。
【0011】
<熱可塑性樹脂(A)>
前記熱可塑性樹脂(A)がポリカーボネート樹脂および非晶性ポリエステル樹脂の少なくとも1種を含み、少なくともポリカーボネート樹脂を含むことが好ましい。
<<ポリカーボネート樹脂>>
ポリカーボネート樹脂は、分子主鎖中に炭酸エステル結合を含む-[O-R-OCO]-単位(Rが脂肪族基、芳香族基、または脂肪族基と芳香族基の双方を含むもの、さらに直鎖構造あるいは分岐構造を持つもの)を含むものであれば、特に限定されるものではない。ただし、芳香族ポリカーボネート樹脂を使用することが好ましい。
ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量としては、20,000~80,000が好ましく、30,000~70,000がより好ましく、さらに好ましくは40,000~60,000である。
また、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度としては、120~160℃が好ましく、130~155℃がより好ましい。ガラス転移温度は、後述する実施例の記載に従って測定される。
【0012】
<<非晶性ポリエステル樹脂>>
非晶性ポリエステル樹脂の種類について、特に限定されるものではないが、例えば、PETG樹脂およびPCTG樹脂が挙げられる。
PETG樹脂は、テレフタル酸単位を主とするジカルボン酸単位、エチレングリコール単位、および1,4-シクロヘキサンジメタノール単位を主とするグリコール単位からなるポリエステルコポリマーである。なおテレフタル酸単位は、例えば、モル基準で全てのジカルボン酸単位を占め、1,4-シクロヘキサンジメタノール単位は、例えば、モル基準で全てのグリコール単位の50%未満を占める。
また、PCTG樹脂は、テレフタル酸単位を主とするジカルボン酸単位、エチレングリコール単位、および1,4-シクロヘキサンジメタノール単位を主とするグリコール単位からなるポリエステルコポリマーである。なおテレフタル酸単位は、例えば、モル基準で全てのジカルボン酸単位を占め、1,4-シクロヘキサンジメタノール単位は、例えば、モル基準で全てのグリコール単位の50%以上を占める。
【0013】
<<その他の熱可塑性樹脂>>
熱可塑性樹脂(A)は、ポリカーボネート樹脂および非晶性ポリエステル樹脂の少なくとも1種を含むが、他の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。
他の熱可塑性樹脂としては、ポリエーテル樹脂およびアクリル系樹脂が例示され、具体的には、特開2014-129488号公報の段落0032および0033に記載のものを用いることができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
上記熱可塑性樹脂(A)は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上が、さらに好ましくは80質量%以上が、一層好ましくは90質量%が、より一層好ましくは95質量%以上が、さらに一層好ましくは100質量%が、ポリカーボネート樹脂および非晶性ポリエステル樹脂の少なくとも1種(好ましくはポリカーボネート樹脂)である。
【0014】
本発明の樹脂組成物における、熱可塑組成樹脂(A)の含有量は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、さらには、90質量%以上、95質量%以上であってもよい。熱可塑組成樹脂(A)の含有量の上限は、例えば、99.99質量%以下である。
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0015】
<帯電防止剤(B)>
本発明の樹脂組成物は、帯電防止剤(B)として、下記式(1)で表される化合物を含む。
[(R1)3R2P]+・(R3SO2)(R4SO2)N- (1)
式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素数5以上のアルキル基を表し、R3およびR4は、それぞれ独立に、炭素数1~4のパーフルオロアルキル基を表す。
式(1)で表される化合物は、通常の使用下(例えば、25℃)では、液体であるため、熱可塑性樹脂(A)中で良好に分散させることができる。
【0016】
式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素数5以上のアルキル基を表し、炭素数6以上のアルキル基であることが好ましい。アルキル基の炭素数の上限は特に定めるものではないが、例えば、20以下であり、16以下が好ましい。
R1およびR2は、また、R1の少なくとも1つとR2とが、炭素数が異なるアルキル基であることが好ましく、R1の少なくとも1つとR2とが、炭素数について3以上の差があることがより好ましく、R1の少なくとも1つとR2とが、炭素数について5以上の差があることがさらに好ましい。上記炭素数の差の上限は特に定めるものではないが、例えば、12以下の差があることがあげられる。このような構成とすることにより、式(1)で表される化合物がより結晶化しにくくなり、分散性がより向上する傾向にある。より具体的には、ダマと呼ばれる不均一部分(分散不良箇所)の発生を防ぐことができる。その結果として、樹脂組成物の帯電防止性能の標準偏差(バラツキ)を抑えることができる。
また、3つのR1は、同じ基であっても異なる基であってもよい。一実施形態は、3つのR1が同じ基である形態である。
さらに、本発明では、R1が炭素数6~9のアルキル基であり、R2が炭素数10~16の直鎖状アルキル基であることが好ましく、R1が炭素数6~8のアルキル基であり、R2が炭素数12~15の直鎖状アルキル基であることが好ましい。
R1としてのアルキル基は、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基が好ましい。R2としてのアルキル基は、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基が好ましい。ペンチル基は、n-ペンチル基、i-ペンチル基、sec-ペンチル基等が例示され、n-ペンチル基が好ましい。ヘキシル基等についても同様である。
【0017】
式(1)中、R3およびR4は、それぞれ独立に、炭素数1または2のパーフルオロアルキル基を表し、トリフルオロメチル基が好ましい。R3およびR4は、同じ基であっても異なる基であってもよい。一実施形態は、R3およびR4が同じ基である形態である。
【0018】
本発明では、特に、式(1)において、R1が炭素数6~9のアルキル基であり、R2が炭素数10~16の直鎖状アルキル基であり、R3およびR4が、それぞれ独立に、炭素数1または2のパーフルオロアルキル基を表すことが好ましい。
【0019】
式(1)で表される化合物は、融点が0℃以下であることが好ましく、-5℃以下であることがより好ましく、-10℃以下であることがさらに好ましい。このような化合物を用いることにより、帯電防止剤(B)を、熱可塑性樹脂(A)中でより容易に分散することが可能になる。結果として、樹脂組成物における、帯電防止剤(B)(式(1)で表される化合物)の含有量をより減らすことも可能になる。さらに、式(1)で表される化合物は、低温でも固化せず、液体とすることができため、寒冷地での使用にも適したものとすることができる。また、式(1)で表される化合物の融点の下限値は、特に定めるものではないが、例えば、-100℃以上であってもよい。ここでの融点は、示差熱走査熱量分析(DSC)に従って測定された値とする。
【0020】
式(1)で表される化合物は、5%質量減少温度が、370℃以上であることが好ましく、372℃以上であることがより好ましい。5%質量減少温度の上限は特に定めるものではないが、例えば、400℃以下であってもよい。
このように質量減少温度が高いことにより、より耐熱性に優れた樹脂組成物が得られる。質量減少温度は、後述する実施例に記載の方法で測定した値とする。
【0021】
式(1)で表される化合物の分子量は、下限値が660以上であることが好ましく、680以上であることがより好ましく、700以上であることがさらに好ましく、730以上であることが一層好ましく、750以上であることがより一層好ましい。式(1)で表される化合物の分子量の上限値は、例えば、1000以下であり、900以下、800以下であってもよい。
【0022】
本発明の樹脂組成物における、式(1)で表される化合物の含有量は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、さらには、0.5質量%以上、特には0.6質量%以上であってもよい。また、式(1)で表される化合物の含有量の上限は、例えば、3.0質量%以下である。しかしながら、式(1)で表される化合物は、分散性に優れているため、式(1)で表される化合物の含有量を1.0質量%以下、さらには0.9質量%以下、0.8質量%以下、0.7質量%以下としても優れた帯電防止効果を達成することができる。
本発明の樹脂組成物は、式(1)で表される化合物を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0023】
本発明の樹脂組成物は、また、式(1)で表される化合物以外の帯電防止剤を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
本発明の一実施形態として、式(1)で表される化合物以外の帯電防止剤を実質的に含まない構成が例示される。実質的に含まないとは、式(1)で表される化合物以外の帯電防止剤の含有量が、式(1)で表される化合物の含有量の5質量%以下であることをいい、3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であってもよい。
【0024】
<リン系酸化防止剤(C)>
本発明の樹脂組成物は、リン系酸化防止剤(C)を含んでいてもよい。リン系酸化防止剤を配合することにより、酸化防止剤が本来発揮する機能に加え、質量減少温度をより高くすることができる。
リン系酸化防止剤(C)は、リン原子を含む酸化防止剤である限り特に定めるものではない。
リン系酸化防止剤の具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第2B族金属のリン酸塩;ホスフェート化合物、ホスファイト化合物、ホスホナイト化合物などが挙げられるが、ホスファイト化合物が特に好ましい。ホスファイト化合物を選択することで、より高い耐変色性と連続生産性を有する樹脂シートが得られる。
リン系酸化防止剤は、特開2018-090677号公報の段落0058~0064の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0025】
本発明で用いるリン系酸化防止剤(C)の好ましい実施形態の一例は、ペンタエリスリトールジフォスファイト構造を有するリン系酸化防止剤である。
ペンタエリスリトールジフォスファイト構造を有するリン系酸化防止剤としては、WO2013/088796号公報に記載されている化合物や下記式(II)で表されるペンタエリスリトールジフォスファイト化合物が例示される。
【化2】
式(II)中、Y
1~Y
4は、それぞれ独立に、炭素数6以上の炭化水素基を表し、好ましくはそれぞれ独立に炭素数6~20の炭化水素基であり、より好ましくは置換または無置換のクミル基、フェニル基、ナフチル基またはビフェニル基である。
【0026】
上記式(II)で表されるペンタエリスリトールジフォスファイト化合物は、好ましくは下記式(II-1)で表されるペンタエリスリトールジフォスファイト化合物である。
【化3】
式中、R
B1~R
B8は、それぞれ独立にアルキル基(好ましくは炭素数1~4のアルキル基、より好ましくはメチル基またはエチル基、さらに好ましくはメチル基)またはアルケニル基(好ましくは炭素数2~4のアルキル基)を示し、それぞれ独立にアルキル基が好ましい。R
B1とR
B2、R
B3とR
B4、R
B5とR
B6、R
B7とR
B8は、互いに結合して環を形成してもよいが、環を形成していないほうが好ましい。R
B9~R
B12は、それぞれ独立にアルキル基を示す。m1~m4は、それぞれ独立に0~5の整数であり、0または1が好ましく、0がより好ましい。Z
1~Z
4は、それぞれ独立に単結合または炭素原子を示し、炭素原子が好ましい。Z
1~Z
4が単結合を示す場合、R
B1~R
B8は式(II-1)から除外される。
【0027】
上記式(II)または(II-1)で表されるペンタエリスリトールジフォスファイト化合物は、三塩化リンおよびペンタエリスリトールに塩素系溶剤を加えてペンタエリスリトールジクロロフォスファイトを得た後、芳香族系溶剤および有機窒素含有塩基化合物の存在下で加熱混合することで得ることができる(例えば、特開2004-018406号公報を参照)。
【0028】
上記式(II)または(II-1)で表されるペンタエリスリトールジフォスファイト化合物の中でも、樹脂組成物に対して耐熱性および耐加水分解性を良好に付与することができ、また入手容易であることから、下記式(II-2)で表されるビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイトが特に好適である。この化合物は市販品として入手可能であり、例えばDover Chemical社製の「Doverphos(登録商標) S9228PC」を使用することができる。
【0029】
【0030】
本発明の樹脂組成物におけるリン系酸化防止剤(C)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、下限値が、0.005質量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.01質量部以上、さらに好ましくは0.03質量部以上である。前記リン系酸化防止剤(C)の含有量の上限値は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、1質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.8質量部以下、さらに好ましくは0.5質量部以下であり、一層好ましくは、0.1質量部以下であり、0.07質量部以下であってもよい。
また、本発明の樹脂組成物において、リン系酸化防止剤(C)と帯電防止剤(B)の質量比率(帯電防止剤(B)/リン系酸化防止剤(C))が、3以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましい。上限値としては、22以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましい。このような比率とすることにより、耐熱性により優れる傾向にある。
本発明の樹脂組成物は、リン系酸化防止剤(C)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0031】
<着色剤>
本発明の樹脂組成物は、着色剤を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
着色剤としては、無機顔料、有機顔料、有機染料等が挙げられ、無機顔料が好ましい。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、カドミウムレッド、カドミウムイエロー等の硫化物系顔料;群青などの珪酸塩系顔料;酸化チタン、亜鉛華、弁柄、酸化クロム、鉄黒、チタンイエロー、亜鉛-鉄系ブラウン、チタンコバルト系グリーン、コバルトグリーン、コバルトブルー、銅-クロム系ブラック、銅-鉄系ブラック等の酸化物系顔料;黄鉛、モリブデートオレンジ等のクロム酸系顔料;紺青などのフェロシアン系顔料などが挙げられ、カーボンブラックおよび酸化チタンが好ましい。
【0032】
有機顔料および有機染料としては、例えば、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系染料または顔料;ニッケルアゾイエロー等のアゾ系染料または顔料;チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系などの縮合多環染料または顔料;アンスラキノン系、複素環系、メチル系の染料または顔料などが挙げられる。
【0033】
本発明の樹脂組成物における着色剤の含有量は、着色剤の種類等に応じて、適宜定めることができるが、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、例えば、0.0001質量部以上であり、また、例えば、50質量部以下である。
より具体的には、着色剤として、黒色着色剤(例えば、カーボンブラック)を用いる場合、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、0.0001~0.005質量部が好ましい。また、着色剤として、白色着色剤(例えば、酸化チタン)を用いる場合、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、1~50質量部が好ましく、5~35質量部がより好ましい。
本発明の樹脂組成物は、着色剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0034】
<その他の成分>
本発明の樹脂組成物は、上述の成分に加えて、以下の添加剤を含んでいても良い。すなわち、リン系以外の酸化防止剤、熱安定剤、難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、および、離型剤からなる群から選択された少なくとも1種の添加剤などである。また、所望の諸物性を著しく損なわない限り、蛍光増白剤、防曇剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤等を添加してもよい。
樹脂組成物における添加剤の含有量は、含有する場合、樹脂組成物の質量を基準として、例えば0.001質量%以上であり、また、例えば、5.0質量%以下であり、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下である。
【0035】
<樹脂組成物の物性>
本発明の樹脂組成物は、100μmの厚みの樹脂シートに成形したときの表面抵抗率が、1.0E+14Ω/sq.以下であることが好ましく、9.0E+13Ω/sq.以下であることがより好ましく、1.0E+13Ω/sq.以下であることがさらに好ましく、9.0E+12Ω/sq.以下であることが一層好ましい。前記表面抵抗率の下限値は特に定めるものではないが、1.0E+10Ω/sq.以上が実際的である。表面抵抗率の測定方法は、後述する実施例に記載の方法に従う。
本発明の樹脂組成物は、5%質量減少温度が、460℃以上であることが好ましく、465℃以上であることがより好ましく、470℃以上であることが一層好ましい。前記5%質量減少温度の下限値は特に定めるものではないが、例えば、500℃以下、さらには480℃以下が例示される。5%質量減少温度の測定方法は、後述する実施例に記載の方法に従う。
【0036】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物の製造方法は、制限はなく、公知の樹脂組成物の製造方法を広く採用することができる。
その具体例を挙げると、熱可塑性樹脂(A)と帯電防止剤(B)と必要に応じて配合されるその他の成分とを、例えばタンブラーやヘンシェルミキサー、スーパーミキサーなどの各種混合機を用いて予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。
本発明では特に、粉状の熱可塑性樹脂(A)に、帯電防止剤(B)を配合することを含む、樹脂組成物の製造方法であることが好ましい。本発明で用いる帯電防止剤(B)は、通常、常温で液体のため、粉状の樹脂に直接に添加しても、十分に分散させることができる。結果として、コンパウンドが容易になる。
【0037】
<樹脂シート>
本発明における樹脂シートは、表層の片面または両面に非強化の熱可塑性樹脂層を積層していてもよい。すなわち、本発明の一形態によれば、樹脂シートの少なくとも一面に熱可塑性樹脂層を有する積層シートが提供される。また、積層する熱可塑性樹脂は種々の添加剤を含有していても良い。このような添加剤としては、安定剤、酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤、染顔料、帯電防止剤、難燃剤、衝撃強度改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。これらの樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせおよび比率で含有されていてもよい。
【0038】
なお、「シート」とは、一般に、薄く、その厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいい、フィルムを含む趣旨である。
本発明の樹脂シートの厚みは、10~1000μmの範囲であることが好ましく、30~500μmの範囲がより好ましい。
【0039】
<用途>
本発明の樹脂組成物および樹脂シートは、セキュリティカードとして好ましく用いることができる。
本発明におけるセキュリティカードとは、身分証明カード(IDカード)、パスポート、運転免許証、バンクカード、クレジットカード、保険証、他の身分証明カードが例示される。
【0040】
また、本発明では、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、特開2016-108424号公報の段落0048~0059の記載、特開2015-168728号公報の段落0075~0088の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【実施例0041】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0042】
実施例1~8、比較例1~3
下記表1または表2に示す組成となるように、各成分をタンブラーにてブレンドした。このとき、粉状の熱可塑性樹脂(A)に対して、帯電防止剤(B)を配合した。帯電防止剤(B)として、液体(トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド)を用いた場合は、スポイトで滴下し、固体と液体の混ざっているもの(トリブチルドデシルホスホニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)を用いた場合は、スパチュラで掬い取り混合した。次に、Tダイ付二軸溶融押出機(東洋精機製作所社製「ラボプラストミル」)を用い、スクリュー回転数25rpmで幅50mm、厚み100μmの樹脂シートを成形した。シリンダー・ダイヘッド温度は、300℃の設定で行った。
熱可塑性樹脂(A)は、ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製「ユーピロン(登録商標)E-2000F」)を、リン系酸化防止剤(C)は、Dover Chemical社製「Doverphos S9228PC」を用いた。帯電防止剤(B)は、下記化合物(いずれも、富士フィルム和光純薬株式会社製)を用いた。カーボンブラックは、キャボットコーポレーション社製MONARCH(登録商標)800を、酸化チタンは、石原産業株式会社製PC-3を用いた。
【0043】
トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド
【化5】
トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドの融点は、-50℃未満であり、5%質量減少温度は375℃であり、分子量は764である。
Hexは、ヘキシル基を示す。
トリブチルドデシルホスホニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
【化6】
Buは、ブチル基を示す。
トリブチルドデシルホスホニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの融点は、17℃であり、5%質量減少温度は369℃であり、分子量は652である。
【0044】
<表面抵抗率>
各実施例および比較例の樹脂組成物の帯電防止性は、以下のように評価した。
測定対象の樹脂シートを、温度23℃相対湿度50%の条件下に24時間以上放置したのち、抵抗率計を用いて、直流電圧1000Vを60秒間印加して表面抵抗率(単位:Ω/sq.)を5か所測定し、その平均値を以下のように評価した。
抵抗率計は、ハイレスタUP(三菱ケミカルアナリテック社製)を用いた。
A:表面抵抗率1013Ω/sq.以下
B:表面抵抗率1013Ω/sq.超1014Ω/sq.以下
C:表面抵抗率1014Ω/sq.超
【0045】
<分散安定性>
帯電防止性能の安定性の指標として、表面抵抗率の標準偏差(バラツキ)を求めた。測定対象の樹脂シート(幅50mm、長さ1m)を10箇所に区分し、各区分の表面抵抗率を上記と同様に測定した。各区分の表面抵抗率の常用対数を計算し、それらの標準偏差を求め以下のように評価した。
A:標準偏差0.5未満
B:標準偏差0.5以上
【0046】
<分散性評価(目視)>
帯電防止剤(B)を粉状の熱可塑性樹脂(A)に添加した際に、ダマと呼ばれる不均一部分(分散不良箇所)が目視にて確認されたか否かで判断した。発明者らを含む5人が評価し、多かった方の評価を本評価とした。
A:ダマが殆ど確認されなかった
B:ダマが確認された(A以外)
【0047】
<質量減少温度>
得られた樹脂シートを、示差熱熱重量同時測定装置を用いて、空気下(流量200mL/分)にて、試料約10mgを室温から600℃まで10℃/分の速度で昇温させ、質量が1質量%、5質量%、10質量%減少するときの温度(単位:℃)を測定した。
示差熱熱重量同時測定装置は、日立ハイテクサイエンス社製のEXSTAR TGDTA 7220を用いた。
また、以下の基準に基づき総合評価した。
1質量%減少温度 :430℃以上
5質量%減少温度 :460℃以上
10質量%減少温度:475℃以上
A:上記基準を3つ満たす
B:上記基準を2つ満たす
C:上記基準を1つ満たす
D:上記基準を満たさない(実用レベル)
E:上記基準を満たさない(実用レベル外)
【0048】
【0049】
上記結果から明らかなとおり、本発明の樹脂組成物は、表面抵抗率が低く、帯電防止剤(B)の分散性に優れていた。さらに、質量減少温度が高かった。特に、リン系酸化防止剤を用いたとき、質量減少温度が顕著に高かった。