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特開2024-45228前庭異常を治療するシステム、デバイス及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045228
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】前庭異常を治療するシステム、デバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 11/00 20220101AFI20240326BHJP
【FI】
A61F11/00 350
【審査請求】有
【請求項の数】31
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024003870
(22)【出願日】2024-01-15
(62)【分割の表示】P 2020539096の分割
【原出願日】2019-02-11
(31)【優先権主張番号】62/629,197
(32)【優先日】2018-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/629,213
(32)【優先日】2018-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/982,867
(32)【優先日】2018-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
2.VELCRO
3.XBOX
(71)【出願人】
【識別番号】519167988
【氏名又は名称】オトリス サウンド,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】オーウェン,サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】トゥルー,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】エイカース,ジョナサン
(57)【要約】
【課題】本開示は、対象の前庭系に影響を与えることができる振動信号を発生させることができるデバイスに関する。
【解決手段】本明細書では、振動デバイスであって、使用者の頭部の一部に振動信号を印加することができ、それにより、振動信号は、骨を介して使用者の前庭系に伝導され、且つ使用者の乳様突起骨を覆う領域に印加される治療上有効な振動信号のものと均等な様式で前庭系の一部を動かし得る、振動デバイスを提供する装置及び方法が記載される。振動デバイスは、200Hz未満の周波数に関連付けられ得る。振動デバイスは、前庭系に関連する生理的異常を治療するのに有効であり得る。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動デバイスであって、使用者の頭部の一部に振動信号を印加するように構成され、それにより、前記振動信号は、骨を介して前記使用者の前庭系に伝導され、且つ前記使用者の乳様突起骨を覆う領域に印加される治療上有効な振動信号のものと均等な様式で前記前庭系の一部を動かすことができる、振動デバイス
を含む装置であって、
前記治療上有効な振動信号は、(1)200Hz未満の周波数と、87dB re 1ダインより大きく且つ100dB re 1ダイン以下である力レベルとを有し、及び(2)前記前庭系に関連する生理的異常を治療するために治療上有効である、装置。
【請求項2】
前記振動デバイスは、前記使用者の前記乳様突起骨を覆う前記領域、前記使用者の頭部の後方の領域又は前記使用者の前頭部の領域の少なくとも1つに係合可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記振動デバイスが、前記乳様突起骨を覆う前記領域以外の前記頭部の領域と係合されると、前記振動デバイスは、前記治療上有効な振動信号の力レベルより14dB以下大きい力レベルで前記振動信号を印加するように構成される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記生理的異常は、回転性めまい、非回転性めまい、乗り物酔い、仮想現実酔い、空間不一致、ソパイト症候群、悪心、頭痛、片頭痛又は耳鳴りの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記振動デバイスは、
チャンバを画定するハウジング、
前記チャンバ内に配置され、且つ前記振動信号を生成するために振動するように構成された磁石、
前記磁石が平衡位置を中心に振動することができるように、前記チャンバ内で前記磁石を懸架するように構成された少なくとも1つの懸架要素
を含む電気機械変換器である、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記振動デバイスは、共振周波数に関連付けられ、前記装置は、
前記振動デバイスを振動させるために前記振動デバイスに電気信号を供給するように構成された信号源と、
前記電気信号の電流、前記振動デバイスにわたる前記電気信号の電圧変化、前記振動デバイスの近くで発生される磁場及び前記振動デバイスの加速度の少なくとも1つを含む情報を測定するように構成されたセンサと
をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記電気信号が前記振動デバイスを前記共振周波数で振動させるように、前記情報に基づいて前記電気信号の周波数を調整するように構成されたプロセッサをさらに含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記治療上有効な振動信号の前記力レベルは、93~98dB re 1ダインである、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
振動デバイスであって、使用者の頭部の一部に振動信号の組を印加するように構成され、それにより、前記振動信号の組は、前記使用者の前庭系に関連する生理的異常を治療するために骨を介して前記前庭系に伝導され得る、振動デバイス
を含む装置であって、
前記振動デバイスは、200Hz未満である最低共振周波数を含む共振周波数の組に関連付けられ、
前記振動信号の組は、まとまって、前記共振周波数の組からの残りの共振周波数における電力の量より大きい、前記最低共振周波数における電力の量を有する、装置。
【請求項10】
電気信号を発生させるように構成された信号発生器と、
前記電気信号を増幅させて、増幅された電気信号を生成するように構成された増幅器と
をさらに含み、
前記振動デバイスは、前記増幅された電気信号を受信し、且つ前記増幅された電気信号を受信することに応じて前記振動信号の組を生成するように構成される、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記最低共振周波数は、50~70Hzである、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記生理的異常は、回転性めまい、非回転性めまい、乗り物酔い、仮想現実酔い、空間不一致、ソパイト症候群又は悪心の少なくとも1つを含む、請求項9に記載の装置。
【請求項13】
前記振動デバイスは、
長手方向軸を有する長尺部材と、
前記振動信号の組を生成するために前記長尺部材の前記長手方向軸に沿って振動するように構成された磁石と
を含む電気機械変換器であり、
前記長尺部材は、前記磁石の開口部を通して延在し、且つ前記長尺部材の前記長手方向軸以外の軸に沿った前記磁石の振動を低減させるように構成される、請求項9に記載の装置。
【請求項14】
前記振動デバイスは、
軸に沿って伸張及び収縮するように構成されたばねと、
前記ばねに取り付けられ、且つ前記振動信号の組を生成するために前記軸に沿って振動するように構成された磁石と
を含む電気機械変換器であり、
前記ばねは、前記ばねの前記軸以外の軸に沿った前記磁石の振動を低減させるように構成される、請求項9に記載の装置。
【請求項15】
前記振動デバイスは、
前記振動信号の組を生成するために軸に沿って振動するように構成された磁石、
前記磁石に取り付けられ、且つ前記磁石から半径方向に延在する少なくとも1つのばねであって、前記軸に対して角度をなす1つ又は複数の方向において復元力を提供するために伸張及び収縮するように構成され、それにより、前記ばねは、前記1つ又は複数の方向における前記磁石の振動を低減させる、少なくとも1つのばね
を含む電気機械変換器である、請求項9に記載の装置。
【請求項16】
振動デバイスであって、使用者の頭部の一部に振動信号を印加するように構成され、それにより、前記振動信号は、前記使用者の前庭系に関連する生理的異常を治療するために骨を介して前記前庭系に伝導され得る、振動デバイス
を含む装置であって、前記振動デバイスは、
チャンバを画定するハウジングと、
前記振動信号を生成するために前記チャンバ内で移動可能な磁石と、
前記チャンバ内のある位置で前記磁石を懸架するように構成された懸架要素と、
前記位置を中心に前記磁石を移動させるための磁場を発生させるように構成されたコイルと
を含む、装置。
【請求項17】
前記磁石は、第1磁石であり、及び前記懸架要素は、
第1方向において前記第1磁石に力を印加するように構成された第2磁石と、
前記第1方向とは反対の第2方向において前記第1磁石に力を印加するように構成された第3磁石と
を含み、
前記第1磁石は、前記第2磁石及び前記第3磁石がまとまって前記チャンバ内の前記位置で前記第1磁石を懸架するように、前記チャンバ内で前記第2磁石と前記第3磁石との間に配置される、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記懸架要素は、(i)前記ハウジングの一部に取り付けられた第1端部と、前記磁石に取り付けられた第2端部とを有し、且つ(ii)前記チャンバ内の前記位置で前記磁石を懸架するために前記磁石に力を印加するように構成されたばねを含む、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
取付プレートをさらに含み、
前記磁石は、前記磁石の第1端部から第2端部まで延在する開口部を画定し、前記磁石の前記第2端部は、前記取付プレートに取り付けられ、
前記懸架要素は、前記ハウジングの一部に取り付けられた第1端部と、前記磁石の前記開口部を通して延在し、且つ前記取付プレートの一部に取り付けられた第2端部とを有するばねを含む、請求項16に記載の装置。
【請求項20】
前記懸架要素は、前記磁石に結合され、且つ前記位置で前記磁石を懸架するために前記磁石に力を印加するように構成されたばねを含み、
前記ばねは、200Hz未満である前記磁石の固有周波数に関連付けられるばね定数を有する、請求項16に記載の装置。
【請求項21】
前記懸架要素は、前記磁石に結合され、且つ前記チャンバ内の前記位置で前記磁石を懸架するために前記磁石に力を印加するように構成される固体弾性材料を含む、請求項16に記載の装置。
【請求項22】
前記懸架要素は、前記チャンバの長手方向軸以外の軸に沿った前記磁石の移動を低減させるように構成される、請求項16に記載の装置。
【請求項23】
前記チャンバの長手方向軸に沿って延在する長尺部材をさらに含み、
前記長尺部材は、前記磁石の開口部を通して延在し、且つ前記チャンバの長手方向軸以外の軸に沿った前記磁石の移動を低減させるように構成される、請求項16に記載の装置。
【請求項24】
前記懸架要素は、前記磁石と前記ハウジングとの間の接触を低減させるために前記磁石を懸架するように構成される、請求項16に記載の装置。
【請求項25】
前記生理的異常は、回転性めまい、非回転性めまい、乗り物酔い、仮想現実酔い、空間不一致、ソパイト症候群、悪心、頭痛、片頭痛又は耳鳴りの少なくとも1つを含む、請求項16に記載の装置。
【請求項26】
使用者の頭部の領域の上に振動デバイスを位置決めすることと、
前記位置決め後、前記領域に振動信号を印加するために前記振動デバイスに通電することであって、それにより、前記振動信号は、骨を介して前記使用者の前庭系に伝導され得、前記振動信号は、(1)前記使用者の乳様突起骨を覆う領域に印加され、及び(2)200Hz未満の周波数と、87dB re 1ダインより大きく且つ100dB re 1ダイン以下である力レベルとを有する振動信号のものと均等な様式で前記前庭系の一部を動かすように構成される、通電することと、
前記振動デバイスに通電することに応じて、前記前庭系に関連する生理的異常を治療することと
を含む方法。
【請求項27】
前記生理的異常は、回転性めまい、非回転性めまい、乗り物酔い、仮想現実酔い、空間不一致、ソパイト症候群又は悪心の少なくとも1つを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
剛性又は弾性ヘッドバンドを使用して、前記頭部の前記領域の上に前記振動デバイスを固定することをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記振動デバイスは、磁石を含み、前記通電することは、前記振動信号を発生させるために前記磁石を振動させることを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記通電することは、
電気信号を発生させることと、
前記電気信号を増幅させて、増幅された電気信号を生成することと、
前記振動デバイスに前記振動信号を発生させるために前記振動デバイスに前記増幅された電気信号を供給することと
を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記通電することは、前記振動要素を振動させるために前記振動要素に電気信号を供給することを含み、前記方法は、
センサを使用して、前記電気信号の電流、前記振動デバイスにわたる前記電気信号の電圧変化、前記振動デバイスの近くで発生される磁場及び前記振動デバイスの加速度の少なくとも1つを含む情報を測定することと、
前記電気信号が、前記振動デバイスを、前記振動デバイスに関連付けられた共振周波数で振動させるように、前記情報に基づいて前記電気信号の周波数を調整することと
をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、「Devices and Methods for Treating Motion Sickness」という名称の2016年11月14日に出願された米国仮特許出願第62/421,708号に対する優先権及びその利益を主張する、「Devices and Methods for Reducing the Symptoms of Maladies of the Vestibular System」という名称の2017年4月7日に出願された米国特許出願公開第15/481,457号の一部継続出願である、「Systems, Devices, And Methods For Treating Vestibular Conditions」という名称の2018年5月17日に出願された米国特許出願公開第15/982,867号(「’867出願」)の一部継続出願である。’867出願は、「Methods and Devices for Treating the Proprioceptive Vestibular System」という名称の2018年2月12日に出願された米国仮特許出願第62/629,197号(「’197仮出願」)及び「Methods and Devices for Reducing Motion Sickness in Virtual Reality and Travel Applications」という名称の2018年2月12日に出願された米国仮特許出願第62/629,213号(「’213仮出願」)に対する優先権及びその利益も主張する。本出願は、’197仮出願及び’213仮出願に対する優先権及びその利益も主張する。上述した出願の各々の全開示は、その全体が参照により本明細書に援用される。
発明の分野
[0002] 開示する実施形態は、例えば、乗り物酔い、非回転性めまい、回転性めまい、片頭痛及び意識消失等、対象の前庭系に関連する異常を治療するシステム、デバイス及び方法に関する。より具体的には、本開示は、対象の前庭系に影響を与えることができる振動信号を発生させることができるデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
[0003] 身体の向き、平衡、位置及び動きは、脳により、眼、耳及び筋肉を含む解剖学的構造のさまざまな部分から受信される信号の組合せを通して確定することができる。例えば、前庭系は、大部分の哺乳動物において、主に平衡及び空間的向きに関連する感覚情報を提供する感覚系である。対象の前庭系は、図1Aに示すように、前庭迷路を形成する相互接続された区画の系において対象の内耳に見出される。
【0003】
[0004] 図1Aは、対象100の解剖学的構造の一部分を例示し、外耳110と、頭蓋114の部分と、耳116、外耳道111、鼓膜112及び中耳113の骨の骨性部分とに対する前庭系を示す。前庭系は、半規管122、124及び126と、内耳の骨迷路における前庭121内に収容された耳石器128及び130とを含み、蝸牛120と連続している。図1Bは、図1Aに示す前庭系のより詳細な例示を提供し、卵形嚢128及び球形嚢130を含む前庭121を示す。
【0004】
[0005] 三半規管122、124及び126は、頭部が回転するか又は動くことができる3つの方向の1つに沿った平面にそれぞれ向けられ、その方向における動きを検出し、それらの方向は、上下にうなずくこと、左右に振ること及び左右に傾けることである。内耳の前庭121内の耳石器は、前後方向における重力及び加速度を検出する。耳石器は、水平面における動きを検出する卵形嚢128と、垂直面における動きを検出する球形嚢130とを含む。半規管122、124及び126と耳石器128及び130とは、内リンパ液、すなわち頭部又は身体の動きによって移動する流体で充填されている。
【0005】
[0006] 毛束を有する神経細胞により、内耳の前庭系における内リンパ液の移動を検知して、頭部の動き及び向きを確定することができる。半規管における膨大部及び耳石器における平衡斑と称される部分は、有毛細胞を含み、有毛細胞は、前庭系の感覚受容器として機能し、内リンパ液の移動を検出して身体の動きの信号に変換し、その信号を脳に報告する、毛束又は不動毛を含む。耳石器は、聴砂又は耳石と称される炭酸カルシウムの結晶の層も含み、耳石は、加速度の変化(例えば、重力に対する動き又は向きの変化)に応じて移動し、それは、耳石の下方の層の動きと毛束の動きとにつながる。さらに、耳石は、重力の方向に沈み、有毛細胞の毛束を引っ張って、例えば上下の方向の識別に役立つ。
【0006】
[0007] 図2A及び図2Bは、それぞれ直立状態及び動きの状態にある、耳石器(例えば、図1Bに示す卵形嚢128及び球形嚢130)における平衡斑及び感覚受容器の解剖学的構造の詳細図を提供する。図2Aは、耳石膜132を含む平衡斑と、有毛細胞134及び支持細胞136を含む細胞層とを示す。有毛細胞134は、1つ又は複数のゼラチン状層内に延在する毛状突起又は不動毛132を含む。平衡斑の構造は、内リンパ液の移動及び/又は身体の加速度に応じて移動する耳石138の層も含む。図2Aは、直立形態にある有毛細胞134及び聴砂又は耳石138を示し、図2Bは、方向性のある力140(例えば、重力)が耳石138に作用する場合の変位した又は傾いた形態にある有毛細胞134及び耳石138を示す。同様に、半規管122、124及び126内の内リンパ液の移動により、半規管(図示せず)の膨大部内の有毛細胞の動きをもたらすことができ、身体及び/又は頭部の相対的な動き(例えば、頭部の角加速度)が知覚され、信号伝達される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[0008] 前庭系からの信号に加えて、眼によって受け取られる水平及び垂直視覚パターンは、向き、平衡及び位置の知覚に影響を与える可能性があり、両側の頸筋に対する緊張差は、頭部の位置及び向きの知覚に影響を与える可能性がある。これらの供給源からの信号が一致しない場合、人は、乗り物酔いを発症し、回転性めまい、非回転性めまい、前庭片頭痛、意識消失又は他の状態になる可能性がある。向き、平衡、位置及び動きの信号の不一致は、例えば、車、列車、飛行機及び他の様式の交通機関での移動中の極度の又は不慣れな動きの結果であり得る。信号の不一致は、例えば、3次元(3D)映画、3Dビデオゲーム及び仮想現実デバイス中のシミュレートされた知覚される動きからもたらされる場合もある。したがって、対象の前庭系、眼又は他の解剖学的構造から受け取られている一致しない信号からもたらされる可能性があるさまざまな前庭異常を治療するデバイスがあることが望ましい可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
概要
[0009] 本明細書に記載する装置及び方法は、振動デバイスであって、使用者の頭部の一部に振動信号を印加するように構成され、それにより、振動信号は、骨を介して使用者の前庭系に伝導され、且つ使用者の乳様突起骨を覆う領域に印加される治療上有効な振動信号のものと均等な様式で前庭系の一部を動かすことができる、振動デバイスを含むことができる。治療上有効な振動信号は、(1)200Hz未満の周波数と、87dB re 1ダインより大きく且つ100dB re 1ダイン以下である力レベルとを有し、及び(2)前庭系に関連する生理的異常を治療するために治療上有効であり得る。
【0009】
[0010] 装置及び方法が本明細書に記載され、いくつかの実施形態では、振動デバイスであって、使用者の頭部の一部に振動信号の組を印加するように構成され、それにより、振動信号の組は、使用者の前庭系に関連する生理的異常を治療するために骨を介して前庭系に伝導され得る、振動デバイスを含む。振動デバイスは、200Hz未満である最低共振周波数を含む共振周波数の組に関連付けられ得る。振動信号の組は、まとまって、共振周波数の組からの残りの共振周波数における電力の量より大きい、最低共振周波数における電力の量を有することができる。
【0010】
[0011] いくつかの実施形態では、本明細書に記載する装置は、振動要素であって、使用者の頭部の一部に振動信号を印加するように構成され、それにより、振動信号は、使用者の前庭系に関連する生理的異常を治療するために骨を介して前庭系に伝導され得る、振動要素を含むことができる。振動要素は、チャンバを画定するハウジングと、振動信号を生成するためにチャンバ内で移動可能な磁石と、チャンバ内のある位置で磁石を懸架するように構成された懸架要素と、その位置を中心に磁石を移動させるための磁場を発生させるように構成されたコイルとを含むように構成され得る。
【0011】
[0012] 本明細書に開示する方法は、使用者の頭部の領域の上に振動デバイスを位置決めすることと、位置決め後、その領域に振動信号を印加するために振動デバイスに通電することであって、それにより、振動信号は、骨を介して使用者の前庭系に伝導され得る、通電することとを含む。振動信号は、(1)使用者の乳様突起骨を覆う領域に印加され、及び(2)200Hz未満の周波数と、87dB re 1ダインより大きく且つ100dB re 1ダイン以下である力レベルとを有する振動信号のものと均等な様式で前庭系の一部を動かすように構成され得る。本方法は、振動デバイスに通電することに応じて、前庭系に関連する生理的異常を治療することをさらに含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図面の簡単な説明
図1A】[0013]前庭系を収容する内耳の骨迷路を含む、対象の解剖学的構造を例示する。
図1B】[0014]図1Aの骨迷路内の前庭系及び蝸牛の詳細な図を提供する。
図2A】[0015]直立状態にある、図1Bに示す耳石器の平衡斑の一部の図である。
図2B】[0015]方向性のある力を受けている状態にある、図1Bに示す耳石器の平衡斑の一部の図である。
図3】[0016]一実施形態による、前庭系に振動信号を印加する振動デバイスの配置の概略図である。
図4A】[0017]一実施形態による、前庭異常に関連する症状を治療するシステム例の概略図である。
図4B】[0018]別の実施形態による、前庭異常に関連する症状を治療するシステム例の概略図である。
図5】[0019]一実施形態による、前庭異常に関連する症状を治療するシステムの振動デバイス例の概略図である。
図6】[0020]別の実施形態による、前庭異常に関連する症状を治療するシステムの振動デバイス例の切取図の概略図である。
図7A】[0021]一実施形態による、前庭異常に関連する症状を治療するシステムの振動デバイスの断面図の概略図である。
図7B】[0022]一実施形態による、対象の上に配置するための物理的プラットフォーム内に組み込まれた、図7Aの振動デバイスの断面図の概略図である。
図8】[0023]別の実施形態による、前庭異常に関連する症状を治療するシステムにおける振動デバイスの断面図の概略図である。
図9A】[0024]一実施形態による、前庭異常に関連する症状を治療するシステムにおける振動デバイスの懸架要素としてのばねの斜視図である。
図9B】[0025]図9Aのばねの上面図の図である。
図9C】[0025]図9Aのばねの底面図の図である。
図10】[0026]さまざまな実施形態による、異なる支持要素を含み、及び/又は異なる支持要素に組み込まれた振動デバイス例の概略図である。
図11】[0026]さまざまな実施形態による、異なる支持要素を含み、及び/又は異なる支持要素に組み込まれた振動デバイス例の概略図である。
図12】[0026]さまざまな実施形態による、異なる支持要素を含み、及び/又は異なる支持要素に組み込まれた振動デバイス例の概略図である。
図13】[0026]さまざまな実施形態による、異なる支持要素を含み、及び/又は異なる支持要素に組み込まれた振動デバイス例の概略図である。
図14】[0026]さまざまな実施形態による、異なる支持要素を含み、及び/又は異なる支持要素に組み込まれた振動デバイス例の概略図である。
図15】[0026]さまざまな実施形態による、異なる支持要素を含み、及び/又は異なる支持要素に組み込まれた振動デバイス例の概略図である。
図16】[0027]さまざまな実施形態による、前庭異常に関連する症状を治療するシステムにおける振動デバイスの配置に対する場所例を示す、ヒトの頭蓋の概略図である。
図17A】[0028]さまざまな実施形態による、前庭異常に関連する症状を治療するシステムにおける振動デバイスに通電するために使用することができる波形例を示す。
図17B】[0028]さまざまな実施形態による、前庭異常に関連する症状を治療するシステムにおける振動デバイスに通電するために使用することができる波形例を示す。
図18】[0029]一実施形態による、前庭異常に関連する症状を治療するシステムにおける振動デバイスに通電するために使用することができる通電プロファイル例を示す。
図19】[0030]前庭異常に関連する症状を治療するために振動デバイスを使用する方法例のフローチャートである。
図20A】[0031]前庭異常に関連する症状を治療する振動デバイスを試験するために行った研究の手順のフローチャートである。
図20B】[0032]振動デバイスを試験するために、図20Aに示す手順で使用した視覚刺激例の静止図の概略図である。
図21A】[0033]異なる力レベルで振動デバイスを試験する、図20Aに示す研究手順からの結果を示す。
図21B】[0033]異なる力レベルで振動デバイスを試験する、図20Aに示す研究手順からの結果を示す。
図22A】[0034]異なる周波数で振動デバイスを試験する、図20Aに示す研究手順からの結果を示す。
図22B】[0034]異なる周波数で振動デバイスを試験する、図20Aに示す研究手順からの結果を示す。
図23A】[0035]さらに別の事例において、試験手順を使用して、前庭異常に関連する症状を治療する振動デバイスを試験するために行った研究の対象によって記入されたアンケートに関連するデータを示す。
図23B】[0035]さらに別の事例において、試験手順を使用して、前庭異常に関連する症状を治療する振動デバイスを試験するために行った研究の対象によって記入されたアンケートに関連するデータを示す。
図24】[0036]さらに別の事例において、試験手順を使用して、前庭異常に関連する症状を治療する振動デバイスを試験するために行った研究からの結果を示す。
図25A】[0037]一実施形態による、本明細書に記載するような振動デバイスの斜視図の概略図である。
図25B】[0037]一実施形態による、本明細書に記載するような振動デバイスの側面図の概略図である。
図25C】[0037]一実施形態による、本明細書に記載するような振動デバイスの組立分解図の概略図である。
図26】[0038]図25A図25Cに例示する振動デバイスのハウジングの断面図である。
図27A】[0039]一実施形態による振動デバイスの斜視図の概略図である。
図27B】[0039]一実施形態による振動デバイスの側面図の概略図である。
図27C】[0039]一実施形態による振動デバイスの組立分解図の概略図である。
図28A】[0040]図27A図27Cの振動デバイスの斜視図の概略図である。
図28B】[0040]図27A図27Cの振動デバイスの断面図の概略図である。
図29】[0041]図38の振動デバイス等の振動デバイスの磁石に関連する磁力線の図である。
図30】[0042]いくつかの実施形態による振動デバイスの磁石に関連する正規化された磁束密度のプロットである。
図31A】[0043]一実施形態による振動デバイスの斜視図の概略図である。
図31B】[0043]一実施形態による振動デバイスの側面図の概略図である。
図31C】[0043]一実施形態による振動デバイスの組立分解図の概略図である。
図32A】[0044]図31A図31Cの振動デバイスの2つの異なる断面図の一方の概略図である。
図32B】[0044]図31A図31Cの振動デバイスの2つの異なる断面図の一方の概略図である。
図33】[0045]図31A図31Cの振動デバイスにおける磁石、コイル及び金属プレートの概略図である。
図34】[0046]図31A図31Cの振動デバイスの磁石に関連する磁力線の図である。
図35】[0047]いくつかの実施形態による振動デバイスの磁石に関連する正規化された磁束密度のプロットである。
図36A】[0048]3つの異なる実施形態の1つによる振動デバイスの断面図の概略図である。
図36B】[0048]3つの異なる実施形態の1つによる振動デバイスの断面図の概略図である。
図36C】[0048]3つの異なる実施形態の1つによる振動デバイスの断面図の概略図である。
図37】[0049]一実施形態による振動デバイスの断面図の概略図である。
図38】[0050]一実施形態による振動デバイスの斜視図の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
[0051] 本明細書では、振動デバイスであって、振動信号を発生させ、且つ骨伝導を介してその振動信号を対象の前庭系に印加し、それにより、振動信号は、対象の前庭系の解剖学的構造を阻害することができる、振動デバイスを使用することにより、前庭異常を治療する装置及び方法について記載する。
【0014】
[0052] 上述したように、対象の前庭系からの感覚信号は、対象の身体の向き、平衡、位置及び動きの知覚に役立つ。前庭系からの信号に加えて、眼からの視覚信号等、他の感覚モダリティは、向き、平衡及び位置の知覚に影響を与える可能性があり、両側の頸筋における緊張差は、頭部の位置及び向きの知覚に影響を与える可能性がある。前庭系、視覚系及び自己受容系等のこれらのさまざまな感覚源からの信号が一致しないとき、人は、乗り物酔い、回転性めまい、非回転性めまい、前庭片頭痛、意識消失又は他の異常のような異常を発症する可能性がある。例えば、向き、平衡、位置及び動きの信号の不一致は、例えば、車、列車、飛行機及び他の様式の交通機関での移動中の極度の又は不慣れな動きからもたらされるか、又は3D映画、3Dビデオゲーム及び仮想現実デバイス等の仮想若しくは拡張3D環境の体験からもたらされる可能性がある。
【0015】
[0053] 自然な適応反応では、脳は、信号における無秩序な、反復性の若しくは新規ではないか又は理解できない感覚情報を無視する可能性がある。例えば、音からの振動は、内耳の前庭器官に影響を与え、小脳における反応(例えば、電気信号の振幅)を低減させる可能性があることが示されている。H. Sohmer et al.,“Effect of noise on the vestibular system - Vestibular evoked potential studies in rats,”2 Noise Health 41 (1999)を参照されたい。しかしながら、同じ研究は、音が前庭系に影響を与えるために、非常に高い強度が必要であることを示している。したがって、空気中において振動信号の発生から音を生成するために使用される従来のヘッドフォン、イヤフォン及びスピーカは、乗り物酔い反応、回転性めまい、前庭片頭痛及び他の生理的反応のような症状を治療する能力が限られている。これらの技術の多くは、高強度信号を送達するように設計されていない。さらに、こうした高強度信号は、人の聴覚を損なうか又は阻害する可能性がある。
【0016】
[0054] 音を使用する代わりとして、さまざまな異常を治療的に処置するために前庭系に影響を与えるように機械的振動を使用することができる。機械的振動を引き起こすために使用することができる1つの技術は、表面又は骨伝導振動子である。しかしながら、現在利用可能な骨伝導振動子には、前庭系の症状又は異常の治療に関連するいくつかの欠点がある。例えば、既存のデバイスには、多くの場合、著しい量の熱及び/又は可聴ノイズの生成等の著しい限界があり、これにより、人の皮膚に直接接触するか又は人の耳に近接するそれらの使用が妨げられる可能性がある。多くの既存のデバイスはまた、大型であり且つかさばり、それにより、例えば旅行中、読書する間、仮想現実デバイスを使用する間等、治療効果が必要とされる環境下での使用に対して実際的でなくなる。
【0017】
[0055] 表面又は骨伝導振動子等の既存のデバイスは、低周波振動を生成するには非効率である。多くは、可聴であり、したがって気を散らす高周波数で振動信号を生成する。したがって、こうしたデバイスが人の耳の近くで使用されると、それらが引き起こすノイズは、混乱させ且ついらいらさせる可能性がある。多くの既存のデバイスは、主に、こうした振動子により発生している振動信号の低い方の基本周波数の代わりに高い方の共振周波数に電力が向けられているため、高周波振動を生成する。低周波振動を生成するように設計されている場合でも、既存の骨伝導振動子は、低い方の周波数が必要とされる周波数である場合、広いスペクトルの周波数(例えば、多くの高調波での周波数)を生成するため、非効率であり得る。したがって、開示するシステム及び方法は、他の特徴もあるが、とりわけ高レベルの熱又は可聴ノイズを生成せず、より低い周波数の振動信号を送達するのに高い効率を有する、前庭系の異常に関連する症状の治療に関する。
【0018】
[0056] 図3は、対象の外耳110の近くの振動デバイス200の配置を概略的に例示する。振動デバイス300は、対象の前庭系に関連する1つ又は複数の症状又は異常を治療するために骨を介して伝導される振動信号202を印加するように構成することができる。骨116を介して、振動信号202の一部分204を内耳の骨迷路及び前庭系に伝導することができる。例えば、振動信号の部分204は、骨を通して、半規管122、124及び126と、耳石器、卵形嚢及び球形嚢を収容する前庭121とに伝わる。
【0019】
[0057] 前庭異常に関連する症状を低減させるか、緩和するか又は治療するために、前庭121に振動信号を印加して、前庭121内の耳石器並びに半規管122、124及び126の有毛細胞を、無秩序に又はノイズを発するように反復して動かすことができるように振動デバイス200を位置決めすることができる。いくつかの前庭異常例としては、さまざまなタイプの乗り物酔い(例えば、船酔い、空酔い、車及び列車酔い、仮想現実又はシミュレータに接することからの酔い、ジェットコースターに乗る等の体験からの酔い及びソパイト症候群の影響)、良性発作性頭位めまい症等の回転性めまい、種々の原因からの悪心(例えば、カロリック電気眼振記録(ENG)/ビデオ眼振記録(VNG)検査、ヘッドインパルス検査、頸部VEMP及び眼筋VEMP検査等の前庭誘発筋電位(VEMP)検査、機能的歩行評価等を含む前庭系検査又は化学療法、頭蓋の基部の放射線治療、妊娠に関連する悪心、アルコール又は毒物消費からの悪心等の状態から生じる)、感染、前庭神経炎、前庭神経鞘腫、メニエール病、片頭痛、下船病症候群、空間不一致、ソパイト症候群等を挙げることができる。
【0020】
[0058] 振動デバイス200は、本明細書に記載するように、例えば循環障害(例えば、起立性低血圧(血圧の低下)、心筋症、心臓発作、不整脈、一過性脳虚血発作からの血行不良)、神経疾患(例えば、パーキンソン病、多発性硬化症)、薬物(例えば、抗けいれん薬、抗うつ剤、鎮静剤、精神安定薬、降圧剤)、不安障害、鉄欠乏に起因する貧血症、低血糖症(血糖の低下)、熱中症、脱水症及び外傷性脳損傷によって引き起こされる、非回転性めまい、平衡感覚障害等を含む他の異常を治療するために骨を介して伝導される振動信号を提供するようにも位置決めすることができる。振動信号により、前庭系の一部は、上述した異常を治療するための治療上有効な振動信号のものと均等な様式で動くことができる。さらに、振動デバイス200を使用して、例えば操縦士を、所定の条件下で操縦士の前庭系を無視又は無効にするように訓練するため等、操縦士を支援することができる。振動デバイス200は、卒中診断としても使用することができる。
【0021】
[0059] 図4Aは、前庭異常を治療する例としてのシステム350を概略的に例示する。システム350は、振動デバイス300と、振動デバイス300の動作を起動及び/又は制御する、振動デバイス300に結合された制御ユニット360とを含む。振動デバイス300は、信号源からの適切な電気信号によって駆動及び通電されたときに振動信号を発生させるように構成された電気機械変換器であり得る。制御ユニット360は、メモリ362と、プロセッサ364と、システム350の他のコンポーネントから電気信号を受信し、及び/又は他のコンポーネントに電気信号を送信する入力/出力(I/O)デバイス366とを含むことができる。振動デバイス300は、制御ユニット360から電気信号を受信し、及び/又は制御ユニット360に電気信号を送信するように構成することができる。任意選択的に、システム350は、振動デバイス300に関連する電圧、電流、インピーダンス、動き、加速度又は他のデータを測定するセンサ390を含むことができる。センサ390は、対象の前庭系VSに関連する情報及び/又は他の身体測定基準(例えば、体温、皮膚導電率等)を測定するようにも構成することができる。センサ390は、制御ユニット360、振動デバイス300及び/又は前庭系VSとの間で信号を送受信することができる。システム350は、信号発生器370及び/又は増幅器380を含むことができる。信号発生器370は、振動信号を生成するために振動するように振動デバイス300を駆動する1つ又は複数の信号を発生させることができる。増幅器380を信号発生器370に作動的に結合することができ、増幅器380は、信号発生器370からの信号を、その信号が振動デバイス300を駆動するために使用される前に増幅することができる。制御ユニット360は、信号発生器370及び/又は増幅器380の動作を制御することができる。
【0022】
[0060] いくつかの実施形態では、信号発生器370、増幅器380及び/又はセンサ390は、制御ユニット360と一体化され、及び/又は制御ユニット360の一部を形成し得る。代わりに、他の実施形態では、信号発生器370、増幅器380及び/又はセンサ390は、制御ユニット360とは別個であるが、作動的に結合され得る。いくつかの実施形態では、振動デバイス300は、制御ユニット360、信号発生器370、増幅器380又はセンサ390の1つ又は複数を含むことができる。
【0023】
[0061] いくつかの実施形態では、制御ユニット360は、振動デバイス300を制御する専用の命令を格納するように動作可能である。こうした命令は、メモリ362又は別個のメモリに格納することができる。さらに、こうした命令は、本明細書に開示する前庭異常の治療に関連する所定の機能、方法及びプロセスを完了するために専用の機能及び特徴をコントローラに組み込むように設計することができる。いくつかの実施形態では、制御ユニット360は、ソフトウェア開発ユニットを使用して命令を用いてプログラムすることができる。
【0024】
[0062] 振動デバイス300を制御する電気信号は、格納された命令に基づいて制御ユニット360によって生成することができる。これらの電気信号は、制御ユニット360と振動デバイス300との間で有線又は無線(例えば、Bluetooth)方法により通信することができる。電気信号は、格納された動作のパターンを含むことができ、例えば、コントローラによってアクセスされる格納された命令は、コントローラが、振動デバイス300に、所定の使用者について収集、蓄積及び格納された使用データに基づいて、その対象に対して有利なパターンで「オン」又は「オフ」させるように、振動デバイス300に送信される一連の電気信号を生成するために使用することができる。1つのパターンは、生成され、且つ対象にある期間(例えば、1分間につき)印加される振動信号の数を変更することができる一連の振動信号を含むことができ、第2パターンは、複数の振動信号における力レベルを変更することができる一連の振動信号を含むことができる。振動デバイス300によって生成される振動信号の力レベル及び周波数を制御するために使用することができる制御信号等、他のタイプの制御信号を、センサ(例えば、センサ390又は他のセンサ)から受信されたデータに基づいて制御ユニット360から振動デバイス300に送信することができる。例えば、使用者の物理的加速度の変化を検知する加速度センサを携帯電子デバイス(例えば、携帯電話)に含めることができる。一実施形態では、制御ユニット360は、加速度センサから、乗り物酔いに至る可能性がある加速度のタイプを示すデータを受信するように動作可能であり得る。したがって、制御ユニット360は、こうしたデータを受信した後、関連する電気信号を生成し、こうした信号を振動デバイス300に送信するように動作可能であり得る。したがって、振動デバイス300は、こうした電気信号を受信し、例えば先制して乗り物酔いを考慮するために、骨を介して伝導して前庭系に印加することができる振動信号を発生させるように動作可能であり得る。振動信号により、前庭系の一部は、治療上有効な振動信号のものと均等な様式で動くことができる。例えば、振動信号により、前庭系の一部(例えば、半規管及び/又は耳石器における受容体を形成する毛束)は、ノイズを含む前庭信号又はノイズを含む前庭感覚をシミュレートしてランダムに動くことができる。場合により、こうしたノイズを含む前庭感覚により、他の前庭信号又は対象によって知覚される信号の不一致によって引き起こされる影響の低減を引き起こすことができる。代わりに、以前に使用者が乗り物酔いに起因して具合が悪くなった経路又はコースを表す格納された道路地図を制御ユニット360又は携帯デバイスに例えば全地球測位システム(GPS)、Galileo、GLONASS又はBeidou等の好適な測位システムとともに格納することができる。いくつかの実施形態では、測位システムが、使用者がその経路又はコースに沿って移動しており、乗り物酔いを引き起こす可能性がある場所に達することを示すと、制御ユニット360は、関連する電気信号を生成し、こうした信号を振動デバイス300に送信するように動作可能であり得る。したがって、振動デバイス300は、こうした電気信号を受信し、例えば、例えば使用者がその位置に到着する前に先制して乗り物酔いを考慮するために、骨を介して伝導して前庭系に印加することができる振動信号を発生させるように動作可能であり得る。
【0025】
[0063] 図4Bは、一実施形態による、前庭異常を治療する別の例としてのシステム350’を概略的に例示する。システム350’は、制御ユニット360と、制御ユニット360に結合され、且つ制御ユニット360によって通電及び/又は制御される振動デバイス300とを含むという点でシステム350と同様であり得る。さらに、システム350’は、第2振動デバイス300’を有することができ、第2振動デバイス300’も制御ユニット360に結合され、制御ユニット360によってその起動を制御することができる。制御ユニット360は、振動デバイス300及び300’が発生させる振動信号を同時に、交互に及び/又は独立して送達することができるように振動デバイス300及び300’を制御するように構成することができる。図4Bには示さないが、図4Aに示すシステム300と同様に、システム350’は、任意選択的に、制御ユニット360に結合された信号発生器(例えば、信号発生器370)、信号発生器に結合された増幅器(例えば、増幅器380)及び/又はセンサ(例えば、センサ390)を含むことができる。いくつかの実施形態では、2つの振動デバイス300及び300’を平衡器382に結合することができ、平衡器382は、信号発生器によって生成され、任意選択的に増幅器によって増幅された信号を振動デバイス300及び300’間で分散させるように構成される。いくつかの実施形態では、振動デバイス300及び300’は、互いに結合され、互いから信号を送信及び/又は受信するように構成され得る。図4Bには2つの振動デバイス300及び300’を示すが、当業者であれば、任意の数の振動デバイスを使用できることを理解するであろう。
【0026】
[0064] 図5は、一実施形態による、例としての振動デバイス400の概略図である。振動デバイス400は、1つ又は複数のチャンバを画定することができる本体(又はハウジング)410を含む。本体410は、振動要素423、懸架要素420、駆動回路440及び送達インタフェース430を収容する。振動要素423は、懸架要素420によって懸架され、駆動回路440により、振動信号を生成するために移動する(例えば、発振又は振動する)ように駆動されるように構成される。振動要素423は、平衡位置を中心に振動することができるように本体内(例えば、チャンバ内)に懸架することができる。振動要素423の移動は、振動デバイス400の懸架要素420及び/又は本体410に対するものであり、本明細書に開示するように1つ又は複数の前庭異常を治療するために送達インタフェース430を介して向けることができる振動信号を生成することができる。振動デバイス400及び/又は振動デバイス400の本体410は、対象の頭部に、送達インタフェース430が標的領域TAの上にあるか又は接した状態で位置決めすることができ、振動要素423の移動によって生成される振動信号を標的領域TAに印加することができ、その後、振動信号は、骨構造BSを介して対象の前庭系VSに伝導することができる。
【0027】
[0065] 任意選択的に、いくつかの実施形態では、振動デバイス400は、振動デバイス400の構成要素に電力を提供する内蔵電源414と、振動デバイス400の一部、前庭系VS又は身体の別の部分(例えば、例えば標的領域TA又は標的領域TAに隣接する及び/又は関連する皮膚等、生成された振動信号が印加される身体の部分)からの1つ又は複数の信号を検知するセンサ416とを含むことができる。いくつかの実施形態では、遠隔に位置する電源(例えば、制御ユニット360内に搭載されている電源)を使用して、振動デバイス400に電力を供給することができる。いくつかの実施形態では、リモートセンサ(例えば、センサ390)を使用して、振動デバイス400の一部、前庭系VS又は身体の別の部分(例えば、生成された振動信号が印加される身体の部分)からの信号を検知することができる。
【0028】
[0066] センサ416は、振動デバイス400及び/又は対象(例えば、前庭系VS、標的領域TA等)に関連する情報を測定及び/又は記録するように構成することができる。例えば、センサ416は、移動中の振動要素423の電流、電圧(例えば、振動要素423にわたる電気信号に関連する電圧変化)、磁場(例えば、電気信号によって発生され、且つ振動要素423の近くに印加される方向性のある地場)又は加速度等を含む、振動デバイス400からの情報を測定及び/又は記録する1つ又は複数の好適な変換器を含むことができる。
【0029】
[0067] いくつかの実施形態では、振動デバイス400の効率を向上させるためにセンサ416を使用することができる。例えば、センサ416は、振動要素423及び/又は振動デバイス400の別の部分から到来する電気信号の電流をモニタリングする電流計を含むことができる。振動デバイスの共振周波数では、(定電圧を想定して)振動デバイス400のインピーダンスは、他の周波数より高く、したがって、電流は、他の周波数より低いという理由のため、電流計によって低電流が測定されるまで、振動デバイス400に供給される電気信号の周波数を調整することができる。したがって、電流計を使用して、振動デバイス400が効率的に動作するように電気信号の周波数を共振周波数に同調させる(例えば、調整する)ことができる。すなわち、振動デバイス400は、いくつかの実施形態では、センサ416からの情報(例えば、電流計からの情報)を受信し、その情報に基づいて電気信号の周波数を調整するように構成されたプロセッサを含むことができる。例えば、プロセッサは、振動デバイスが、低減した電流及び最低共振周波数で動作し続けるように、経時的に電気信号の周波数を調整するように構成することができる。
【0030】
[0068] 別の例として、センサ416は、定電流増幅器を備えた電圧センサ又は電圧計を含むことができる。振動要素423を含む振動デバイス400の部分に供給される電気信号の電圧変化は、電圧計を用いて測定することができる。振動デバイスの共振周波数では、振動デバイス400のインピーダンスは、他の周波数より高く、したがって、電圧は、他の周波数より高いという理由のため、電圧計により高電圧が測定されるまで、(例えば、好適な信号源から)振動デバイス400に供給される電気信号の周波数を調整することができる。したがって、モニタリングされた電圧を使用して、高効率を達成するように高電圧が測定されるように電気信号の周波数を同調させる(例えば、調整する)ことができる。
【0031】
[0069] 別の例として、振動要素423が、変調された磁場によって駆動される場合、センサ416は、磁場変動をモニタリングするホール効果センサを含むことができる。磁場を発生させるために使用される電気信号の周波数が変更される間に磁場変動を測定して、電気信号の周波数を振動デバイス400の共振周波数であるように同調させることができる。別の例として、センサ416は、共振周波数が達成されるときを判断するために振動要素423の加速度及び/又は速度を測定することができる移動センサ(例えば、加速度計)を含むことができる。
【0032】
[0070] 対象の骨構造に伝達される振動信号に関連する動き、対象の体温、対象の向き又は体位等、対象から情報を受信及び/又は測定するセンサ416も備えることができる。
【0033】
[0071] 振動デバイス400は、本明細書に開示するように、振動信号を送達するように、対象の標的領域TAに又はそれに接して振動デバイス400を支持又は位置決めする支持要素418も含むことができる。支持要素418は、対象に対して振動デバイス400の接触及び位置決めを維持することができるデバイス又は締結機構であり得る。例えば、支持要素418は、後にさらに詳細に開示するように、ヘッドバンド、眼鏡又は枕等であり得る。いくつかの実施形態では、支持要素418は、例えば、振動デバイス400の接触及び位置決めを維持することができる粘着パッド、粘着性ポリマー等、粘着部品であり得る。
【0034】
[0072] 電源414、センサ416及び/又は支持要素418は、デバイス400の本体410内に収容し、及び/又は本体410に取り付けることができる。
【0035】
[0073] 振動信号が印加される対象の標的領域TAは、例えば、頭部の表面であり得る。任意選択的に、いくつかの実施形態では、対象の頭部内に振動デバイス423を埋め込むことができ、標的領域TAは、骨構造BSに近接し、及び/又は骨構造BSの一部である領域であり得る。振動デバイスは、治療振動信号を有効に送達するように標的領域TAと係合可能であるように構成することができる。1つの事例では、標的領域TAは、対象の頭蓋の乳様突起(又は側頭骨の乳様突起骨若しくは乳様突起)を覆う対象の外耳の後方の領域であり得る。こうした場合、乳様突起骨は、前庭系VSを収容する内耳の骨性構造を介して前庭系VSに振動信号を送達するために使用される骨構造BSの部分を形成することができる。場合により、頬骨又は側頭骨の頬骨突起は、前庭系VSに振動信号を送達するために使用される骨構造BSの部分であり得る。他の場合、標的領域TAは、後頭部又は前頭部の一部であり得、頭蓋の下にある領域は、振動デバイス400から受信される振動信号を伝導する骨構造BSとして作用する。選択される標的領域TAと、前庭系VSからのその距離とに基づき、振動デバイス400を動作させるために異なる力レベルを使用することができる。例えば、デバイスが、対象の前頭領域又は頭部の後方、すなわち乳様突起より前庭系VSから離れる領域等の標的領域TAに配置される場合、デバイスが対象の乳様突起を覆って配置される場合と比較して、より高い力レベルを使用することができる。一例として、対象の前頭部に配置されるか又は対象の頭部である場合、振動デバイス400は、他の場所(例えば、乳様突起を覆う領域)に送達される場合に治療上有効であり得る振動信号の力レベルより最大14dB高い力レベルで振動信号を印加するように構成することができる。標的領域TAが、乳様突起を覆う領域であり、振動デバイスがその領域を覆って配置される場合、前庭異常を治療するために、治療上有効な力レベルは、90~100dB re 1ダイン、望ましくは93~98dB re 1ダインであり得る。
【0036】
[0074] 振動デバイス400の本体410は、振動デバイス400のさまざまな構成要素を収容するように構成することができる。いくつかの実施形態では、本体410は、構成要素のいくつかを収容すると同時に、電源414、センサ416及び/又は支持要素418等、本体410内に収容されていない1つ又は複数の構成要素の結合のためのインタフェースを提供することができる。いくつかの実施形態では、振動デバイス400の本体410は、振動要素423、懸架要素420、駆動回路440及び/又は送達インタフェース430等、振動デバイスの1つ又は複数の構成要素を収容する1つ又は複数のチャンバ又はレセプタクルを画定することができる。本体410は、対象の身体の標的領域TAに接して送達インタフェース430の所望の位置決めを行うための形状及び/又は構成とすることも可能である(例えば、本体410は、湾曲面又は可鍛性若しくは可撓性である表面を有することができる)。いくつかの実施形態では、本体410及び/又はそのチャンバの1つ若しくは複数に対し、空気又は場合により振動信号の発生及び送達に役立つ潤滑剤等の液体を充填することができる。いくつかの実施形態では、本体410及び/又はそのチャンバの1つ若しくは複数は、例えば、スポンジ又は吸音材料等の可聴ノイズ減衰剤、放熱材料等の特性を有する材料も含むことができる。
【0037】
[0075] デバイス400の振動要素423は、振動信号を発生させるために振動するように構成することができる。いくつかの実施形態では、振動要素423は、本体410のチャンバ内に収容することができる。懸架要素420により振動要素423を平衡位置で懸架することができ、電気信号を使用して、振動要素423にその平衡位置を中心に振動させて振動信号を発生させることができる。材料、組成、構造等、振動要素423及び/又は懸架要素420の特性は、発生する振動信号の所定要件(例えば、低周波信号)を満たすように選択することができる。
【0038】
[0076] 例えば、振動要素423は、高効率で低周波数(例えば、200Hz未満の周波数)の振動信号の発生を可能にする剛性の基準(例えば、ばね定数)を有するばね又は弾性材料であり得る。一実施形態では、振動要素423は、ばねである懸架要素420によって懸架される質量であり得る。こうしたシステムの固有共振は、式
【0039】
【数1】
によって表されるように、フックの法則に基づいて求めることができ、式中、fは、共振周波数であり、kは、ばね定数であり、mは、質量である。質量の移動の振幅は、所与の出力に対して、共振周波数の方が他の周波数より大きくなり、それは、共振周波数での質量及びばねシステムがより純度の高い音(例えば、正弦波形)に関連することができるためである。したがって、振動デバイス400をその共振周波数で動作させることにより、より強力な振動信号が生成され、振動要素423及び/又は懸架要素420の特性は、特定の共振周波数を達成するように選択することができる。
【0040】
[0077] 発生する振動信号に影響を与え、及び/又は発生する振動信号を決定することができる他の要素は、例えば、駆動力(例えば、機械的、磁気的)の機構、振動要素の移動し易さ(例えば、移動にどの程度摩擦がないか)、標的領域TAの場所(例えば、乳様突起骨、頬骨、対象の前頭部の近くの頭蓋等)、エネルギー散逸(例えば、軸外移動、熱、摩擦等)の二次又は三次経路の低減、外力(例えば、使用中の圧力、重力等)に対する移動の方向、さまざまな条件下での対象による使い易さに対する要件(例えば、対象の可動性、不注意の程度に対する制限等)等であり得る。
【0041】
[0078] 振動要素423は、振動デバイス400の軸(例えば、本体410の長手方向軸)に沿った又はそうした軸を中心とする振動運動を発生させるために駆動することができるように構成することができ、そうした運動により、前庭異常を治療するために好適な特性(例えば、周波数、振幅、力レベル等)を有する振動信号が生成される。振動デバイス400は、いくつかの実施形態では、例えば磁場等の好適な駆動力を使用して軸を中心に移動するように駆動することができる磁石として実施される振動要素423を含む電気機械変換器であり得る。こうした実施形態に関するさらなる詳細については、図6図9Cを参照して後述する。
【0042】
[0079] 低周波振動信号を生成する別の方法は、超音波信号を変調することである。いくつかの実施形態では、振動デバイス400は、超音波周波数範囲で振動を発生させるように電気信号によって駆動される圧電変換器であり得る。このより高い周波数での圧電変換器の振動により、音響放射圧を生成することができる。駆動電気信号は、より低い周波数、すなわち200Hz未満(例えば、60Hz)のオン及びオフでクロック制御することができ、より低い周波数でのオン及びオフで印加される圧電変換器からの圧力により、より低い周波数で対応する振動信号が発生する。圧電変換器は、通常、他のタイプの電気機械変換器より小型且つ軽量であるため、圧電変換器の使用により、振動デバイス400のサイズ及び重量を低減させることができる。
【0043】
[0080] 振動デバイス400が配置される場所、振動デバイス400の寸法制約及び/又は振動デバイス400の構成若しくは形状に応じて、前庭異常を治療するために治療上有効なレベルの振動信号を提供するように、振動デバイス400の所定の構成要素を選択することができる。図5には1つの振動要素423を例示するが、当業者であれば、振動デバイス400が、前庭異常を治療する振動信号を発生させるように合わせて及び/又は独立して機能することができる1つ又は複数のさらなる振動要素を含み得ることを理解するであろう。
【0044】
[0081] 他の振動デバイス又はシステムと同様に、振動デバイス400を共振周波数の組に関連付けることができる。いくつかの実施形態では、振動デバイス400に関連する最低共振周波数での発生した振動信号の出力の量が、振動デバイス400に関連する残りの共振周波数(例えば、より高い共振周波数)における振動信号の出力の量より大きいように、駆動力に応じて移動するように振動要素423を構成することができる。例えば、振動デバイスは、50~70Hzの最低共振周波数を有するように構成することができ、この範囲の最低共振周波数で発生する振動信号は、他の共振周波数で発生する可能性がある振動信号より電力の量が大きいものであり得る。いくつかの実施形態では、振動デバイス400が200Hz未満の最低基本周波数で振動するように、振動要素423、懸架要素420及び/又は振動デバイス400の他の要素を選択することができる。
【0045】
[0082] いくつかの実施形態では、振動要素423は、第1軸(例えば、z方向における軸)に沿って第1共振周波数で振動するとともに、第2軸(例えば、x-y平面における軸)に沿って第2共振周波数で振動する可能性がある。第2軸に沿った振動を低減させるために、第1共振周波数が第2共振周波数の高調波ではなく、その逆でもない(例えば、第1共振周波数は、第2共振周波数及び/又は第2共振周波数の高調波から数ヘルツずれている)ように、振動要素423、懸架要素420及び/又は振動デバイス400の他の要素を選択することができ、振動デバイス400が第1共振周波数で活性化される場合、第2軸に沿った振動を低減させることができる。第2軸に沿った振動により、例えば振動デバイス400の構成要素間の内部衝突及び/又は可聴音がもたらされる可能性がある。
【0046】
[0083] 振動デバイス400は、対象の頭部の異なる領域に位置決めすることができる。図16は、ヒトの頭蓋を示し、本明細書に開示する前庭異常を治療するために治療振動信号を印加するために、振動デバイス400を位置決めすることができる頭蓋のいくつかの領域例を示す。例えば、図16に示すように、振動デバイス400は、場合により、対象の頭蓋の乳様突起骨1502の上に配置することができる。図16では左乳様突起骨1502が特定されるが、当業者であれば、振動デバイス400を対象の左又は右乳様突起骨の上に配置できることを理解するであろう。他の場合、本明細書に開示する前庭異常及び他の異常を治療するように振動信号を送達するために、振動デバイス400を後頭部の一部の上(例えば、後頭骨1501の左、右又は中心部分の上)又は前頭部の一部(例えば、前頭骨1504の左、右又は中心部分)の上に配置することができる。振動デバイス400が配置される領域(例えば、前庭系への近接性、デバイスからの振動が縫合線1503を横切る必要があるか否か)に応じて、異常を治療するために治療上有効なレベルの振動が前庭系に送達されるように振動信号の力レベルを調整することができる。
【0047】
[0084] 振動デバイス400が乳様突起骨(例えば、図16に示す乳様突起骨1502)を覆って位置決めされる場合、振動デバイス400は、200Hz未満の共振周波数と、90~100dB re 1ダインの力レベルとを有する、前庭系の異常の治療において治療上有効である振動信号(すなわち治療上有効な振動信号)を印加することができる。振動デバイス400が、乳様突起骨より対象の前庭系から離れる対象の頭部の異なる領域(例えば、図16に示す頬骨1505又は前頭骨1504若しくは後頭骨1501)を覆って位置決めされる場合、振動デバイス400は、乳様突起骨(例えば、図16に示す1502)を覆う領域に印加される治療上有効な振動信号のものと均等な様式で前庭系の一部に影響を与えることができるように、より大きい力レベルを有する振動信号を発生させることができる。例えば、振動デバイス400が対象の前頭骨(例えば、図16における前頭骨1504)の上に位置決めされる場合、振動デバイス400は、乳様突起骨を覆う領域に印加される治療上有効な振動信号の力レベルより大きい(例えば、最大14dB re 1ダイン大きい)力レベルを有する振動信号を発生させることができる。
【0048】
[0085] 振動デバイス400の懸架要素420は、本体410内に収容され、且つ振動要素423と相互作用する1つ又は複数の構成要素を含むことができる。いくつかの実施形態では、懸架要素420及び/又は振動要素423は、互いを受け入れる適合構造であるように構成することができる。例えば、懸架要素420は、振動要素423に画定された開口部を通して延在することができる構成要素を含むことができる。
【0049】
[0086] いくつかの実施形態では、懸架要素420は、本体410のチャンバ内に収容することができ、場合により潤滑剤等の流体内に配置することができる。懸架要素420は、振動要素423を、駆動振動の印加により移動するように駆動されるまで平衡の位置で懸架、保持又は支持するために振動要素423に力を印加するように構成することができる。例えば、懸架要素420は、振動要素423(例えば、磁石)に結合されたばねであり得る。代わりに又はさらに、懸架要素420は、磁石の対を含むことができ、磁石の対は、振動要素423に反対方向に力(例えば、反対の又は反発する磁力)を印加することにより、それらの間に作用する力(例えば、反対の又は反発する磁力)によりまとまって振動要素423を平衡位置で保持するように、振動要素423(例えば、別の磁石)とそれぞれ配置される。こうした実施形態では、駆動力(例えば、所定の大きさの且つ所定の方向に沿って作用する印加された磁場)は、振動要素423(例えば、平衡位置にある磁石)を磁石の対間で移動するように誘導することができる。他の実施形態では、懸架要素420は、弾性材料又は流体であり得る。図5には1つの懸架要素420を示すが、当業者であれば、振動要素423を支持及び/又は懸架するために複数の懸架要素420を使用できることを理解するであろう。複数の懸架要素420は、1つ又は複数の異なるタイプの懸架要素(例えば、磁石、ばね、弾性材料等)を含むことができる。
【0050】
[0087] 振動デバイス400の駆動回路440は、電気信号を発生させることができる1つ又は複数の好適なコンポーネントを含むことができる。電気信号により、治療振動信号を生成するように軸に沿った振動要素423の移動を引き起こす力を発生させることができる。駆動回路440は、いくつかの実施形態では、制御ユニット(図4A及び図4Bにおける制御ユニット360等)から電気信号を受信することができる。他のいくつかの実施形態では、駆動回路440自体が、電気信号を発生させることができる内蔵ユニットを含むことができる。
【0051】
[0088] 駆動回路440が発生させるか又は受信し、且つ振動要素423の移動を引き起こすために使用される電気信号は、所定の周波数及び力レベルを有する振動信号を生成するために好適な特性のものであり得る。例えば、振動要素423に、1つ又は複数の所定の前庭異常を治療するために特定の範囲の周波数(例えば、200Hz未満)を有する振動信号を生成させるように電気信号を選択することができる。いくつかの実施形態では、制御ユニット(例えば、制御ユニット360)は、センサ416を用いて、電気信号により振動デバイス400が上述したような共振周波数で振動するまで電気信号の周波数を変更することができる。
【0052】
[0089] いくつかの実施形態では、駆動回路440は、電気信号を発生させる内蔵信号発生器と、信号を増幅する増幅器と、電気信号を、振動要素423を移動させる適切なモダリティに変換する1つ又は複数の素子とを含むことができる。例えば、駆動回路440は、振動要素423を移動させる磁場を発生させることができる1つ又は複数のコイルを含むことができる。
【0053】
[0090] 振動デバイス400の送達インタフェース430は、振動要素423によって発生した振動信号を対象の標的領域TAに伝達して、真下の骨構造BSを介して前庭系VSに振動信号を伝導することができるように構成することができる。送達インタフェース430は、送達インタフェースが治療振動信号の伝達のために使用期間中に係合し、及び/又は接触を維持することができるように、使用者の標的領域TAの構造及び/又は形状に対して構成され、及び/又は適合可能であり得る。いくつかの実施形態では、送達インタフェース430は、前庭異常を緩和するために、例えば振動デバイス400の使用中、使用者に対する快適さ及び使い易さを考慮して構成することができる。送達インタフェース430は、熱の発生及び蓄積、可聴ノイズの発生、空気循環の不足、標的領域TAに対する圧力の印加等、望ましくない可能性がある二次的影響を低減させるようにさらに構成することができる。例えば、送達インタフェース430は、標的領域(例えば、乳様突起を覆う耳の後方の領域)の輪郭に適合するのに役立つことができるメモリフォーム材料の層を含むことができる。メモリフォーム材料は、放熱、可聴ノイズの減衰に役立ち、空気循環を促進し、ヘッドバンド等の支持要素によって加えられる圧力からの不快感を最小限にする等も可能である。
【0054】
[0091] 図6は、一実施形態による例としての振動デバイス500の図である。振動デバイス500は、管526及びエンドキャップ525a、525bを含む本体(又はハウジング)510を含む。いくつかの実施形態では、振動デバイス500の本体510は、チャンバを画定することができる。本体510は、磁石523として実施される振動要素と、磁石520a、520bとして実施される懸架要素とを収容している。図6の切取図に示すように、懸架要素は、磁石520a、520bを含み、振動要素523は、磁石523を含む。磁石520、520bは、図6に示すように、磁石523を平衡位置で懸架するように磁石523に対して反対の力をかけることにより、懸架要素として作用する。例えば、磁石520aは、第1方向において第1磁石523に力を印加するように構成することができ、磁石520bは、第2方向(例えば、第1方向から180°移動した第2方向)において第1磁石523に力(例えば、磁石523に対して第2磁石520aによってかけられる力と大きさが均等な力)を印加するように構成することができる。したがって、第1磁石523を本体510(例えば、チャンバ)内で第2磁石520aと第3磁石520bとの間に配置することができ、第2磁石520a及び第3磁石520bは、まとまって、本体510内で第1磁石523をある位置(例えば、平衡位置)で懸架する。
【0055】
[0092] 磁石523は、振動信号を生成するために移動する(例えば、振動する)ように構成された振動要素として作用する。振動要素523は、平衡位置を中心に振動することができるように、本体510内(例えば、チャンバ内)懸で懸架要素520a、520bによってまとまって懸架することができる。
【0056】
[0093] いくつかの実施形態では、振動デバイス500は、長手方向軸を有する長尺部材を含むことができる。振動要素523を長尺部材の長手方向軸に沿って振動するように構成することができるように、長尺部材は、振動要素523の開口部を通して延在するように構成することができる。長尺部材は、長手方向軸以外のいかなる軸に沿った振動要素523の振動も低減させるようにさらに構成することができる。図6に示すように、振動デバイス500は、エンドキャップ525a、525bに固定することができるピン521の形態の長尺部材をさらに含む。ピン512は、振動デバイス500のエンドキャップ525a、525bに画定された開口部522a、522bと、磁石520a、520bに画定された開口部と、磁石523に画定された開口部とを貫通する。ピン521は、(例えば、ピン521の長手方向軸に沿った)磁石523の移動のための軸を提供する。振動デバイス500は、電気信号を使用して振動デバイスを駆動することができる磁場を発生させるように構成されたコイル524を含む駆動回路をさらに含む。振動デバイス500は、磁石523に画定された開口部内に嵌まるように構成され、且つピン521の上の磁石523の平滑な移動を可能にしてピン521と磁石523との間のインタフェースとなるように構成されたブッシング522cを含む。
【0057】
[0094] 動作時、振動デバイス500は、低周波数(例えば、200Hz未満)で正弦波又は別のタイプの信号波形を含む電気信号を使用して駆動される。コイル524は、誘導された電気信号で磁場を発生させるように動作可能である。したがって、磁場は、磁石523に対して磁力を印加する。磁力は、磁石523に印加されると、磁石523は、図6において矢印「A」によって示す軸に沿って移動ようにする。磁石523は、磁場ベクトルの方向に応じて示された方向のいずれかに移動するように構成される。
【0058】
[0095] 懸架要素を形成する磁石520a及び520bは、それぞれ一定の磁場をもたらし、それらの各々が磁石523に印加される(すなわち、磁石520aのN極側は、磁石523のN極側に面し、磁石520bのS極側は、磁石523のS極側に面する)。したがって、磁石520a、520bは、磁石523に反対の力を印加する。磁石520a、520bによって引き起こされた反対の力は、磁石523が平衡位置を中心に振動し、1つ又は複数の振動信号信号を発生させるように平衡位置で磁石523を懸架するように動作可能である。電気信号により、磁石523は、ピン521の長手方向と同じであり得るか又は実質的に一致し得る軸Aに沿って振動又は移動する。
【0059】
[0096] いくつかの実施形態では、磁石520a、520b及び523は、軸A以外の方向に振動又は移動しないことを確実にするため(そうした振動及び移動は、システムの効率に影響を与え、二次振動信号(例えば、唸り音)を引き起こす望ましくない摩擦を増大させる可能性がある)、振動デバイス500は、磁石523の動きがピン521によって制限されるように構成することができる。いくつかの実施形態では、磁石520a、520bの各々は、振動デバイス500のエンドキャップ525a、525bに糊、エポキシ樹脂又は別の形態の接着剤によって固定することができる。磁石523は、軸Aに沿わないいかなる動きも制限しながら、磁石523がピン521の上を平滑に移動することを可能にするブッシング522cインタフェースにより、ピン526の周囲に取り付けることができる。糊、エポキシ樹脂又は他の任意の形態の接着剤は、開口部又は孔522a、522bを通してエンドキャップ525a、525bにピン521を固定するためにも使用することができる。
【0060】
[0097] いくつかの実施形態では、管526は、その内面に、磁石523と管526の内面との間のあり得る摩擦を低減させるように構成された潤滑剤(例えば、強磁性流体)又は低摩擦材料(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)を含有し、及び/又は含むことができる。摩擦の低減は、振動デバイス500のより静かな動作を確実にするように構成することができる(例えば、接触からのあり得る摩擦によって発生するノイズが低減する)。こうした潤滑剤は、ブッシング522cとピン521との間の摩擦を低減させるためにも使用することができる。
【0061】
[0098] いくつかの実施形態では、管526及び/又はエンドキャップ525a、525bの外面を吸音材料で覆うことができる。さらに、いくつかの実施形態では、エンドキャップ525a、525bの1つ又は複数を例えばコルク等の摩擦低減材料(例えば、平滑な材料)又は衝撃吸収若しくは詰め物材料で覆うことができ、それにより、エンドキャップが人の皮膚又は身体と接触したとき、エンドキャップ525a、525bがこうした材料によって覆われていない場合より、接触によってもたらされる摩擦が小さい。さらに、いくつかの実施形態では、エンドキャップの表面積を増大させる構造体にエンドキャップ525a、525bの1つ又は複数を取り付けることができ、それにより、エンドキャップが人の皮膚又は身体と接触したとき、接触はより広い面積にわたって広がり、そのエンドキャップにより皮膚又は身体に対してかけられる圧力が低減する。
【0062】
[0099] 磁石520a、520bは、振動デバイス500に懸架要素を形成するために使用することができる弾性物体の一例であることが理解されるべきである。他の実施形態では、磁石520a、520bを他の弾性物体(例えば、ばね、弾性ポリマー)に置き換えることができる。
【0063】
[0100] 図7Aは、懸架要素としてばねを含む振動デバイス600の一実施形態を例示する。振動デバイス600は、上述した図6に示す振動デバイス500と同様であり得る。例えば、振動デバイス600は、管626(例えば、ナイロン管)及びエンドキャップ625a、625bを含むハウジング610を含むことができる。振動デバイス600は、振動要素を形成する磁石623と、本明細書に開示する前庭異常を治療するために使用される振動信号を生成するために磁石623の移動を駆動するコイル624を含む駆動回路とをさらに含むことができる。
【0064】
[0101] 図7Aの断面概略図に示すように、振動デバイス600は、図6に示す振動デバイス500における磁石520a、520bの代わりに、ばね620a、620bとして実施される懸架要素を含むことができる。磁石623が、電気信号によって通電されると平衡位置を中心に振動することができるように、ハウジング610内(例えば、チャンバ内)でばね620a、620bによってまとめて磁石623を懸架することができる。
【0065】
[0102] 振動デバイス500に関して上述したように、いくつかの実施形態では、振動デバイス600は、長手方向軸を有する長尺部材を含むことができる。磁石623を長尺部材の長手方向軸に沿って振動するように構成することができるように、長尺部材は、振動要素磁石623の開口部を通して延在するように構成することができる。長尺部材は、長手方向軸以外の軸に沿った磁石623の振動を低減させるようにさらに構成することができる。
【0066】
[0103] ばね620a、620bは、長尺部材、エンドキャップ625a、625bの空洞、及び/又は例えば剛性及び/又は可撓性構造体(例えば、ピン、フォーム、ゴム又は別の任意の材料)等、エンドキャップから延在する他の任意の好適な構造体(図7Aには示さず)によって支持することができる。ばね620a、620bは、軸(例えば、長手方向軸)に沿って伸張及び収縮するように構成することができ、ばね620a、620bに取り付けられた磁石623は、治療振動信号を生成するように同じ軸に沿って振動するように構成することができる。懸架要素を形成する弾性物体として使用されるばねは、糊、エポキシ樹脂又は別の形態の接着剤を使用して、振動デバイス600の他の部品(例えば、磁石623、管626及び/又はエンドキャップ625a、625b)に固定することができる。ばね620a、620bは、ばねの軸(例えば、長手方向軸)以外のいかなる軸に沿った磁石の振動も低減させるように構成することができる。
【0067】
[0104] ばね620a、620bは、任意の好適な材料(例えば、ステンレス鋼)製とし、電気信号によって駆動されると、「B」と付された矢印によって示す軸に沿った磁石623の移動を可能にするように、ばね定数kに対して一定の剛性を有するように選択することができる。ばね620a、620bは、磁石623及びハウジング610の一部に取り付けられるように構成することができる。例えば、各ばね(620a及び620b)は、ハウジング610の一部に取り付けられ得る第1端部と、磁石623に取り付けられた第2端部とを有することができる。したがって、ばねは、磁石をチャンバ内のその位置で懸架するために磁石に力を印加するように構成することができる。例えば、ばね620a及び620bは、それぞれ反対方向に均等な力をかけることができ、磁石623の移動により、一方のばね(例えば、620a)が伸張すると他方のばね(例えば、620b)が収縮することができ、その逆も可能であり、磁石623は、軸(例えば、ばねの長手方向軸)に沿って振動することができ、磁石623の移動は、懸架の位置(例えば、平衡位置)を中心とするように構成され得る。振動デバイス600は、ばね620a、620bと磁石623それぞれとの間の結合点として1つ又は複数の糊ポケット632、634を含むことができる。
【0068】
[0105] いくつかの実施形態では、ばね620a、620bは、磁石623と管626の内面との接触を阻止するように動作可能である。振動デバイス500に関して上述したように、振動デバイス600の管626は、磁石623の移動中、磁石623と管626の内面との間のいかなる接触からのあり得る摩擦も低減させるように、内面に潤滑剤(例えば、強磁性流体)又は低摩擦材料(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)を含有し、及び/又は含むことができる。いくつかの実施形態では、軸Bに沿わない方向における磁石623の移動をさらに制限するために、ロッド又はピン(図7Aには示さず)及びブッシング(図7Aには示さず)を含めることができる。
【0069】
[0106] 図7Bは、治療振動信号を送達するために送達インタフェース630に取り付けられた、図7Aからの振動デバイス600の断面図を例示する。後述するように、磁石623は、ばね620a、620bによって懸架された振動要素として作用する。送達インタフェース630は、振動デバイス600から対象の身体まで振動信号を伝達するように構成されたメモリフォームパッドであり得る。懸架要素の例として磁石及びばねが提供されているが、当業者であれば、磁石及び/又はばねの代わりに及び/又はそれらに加えて、他のタイプの弾性物体を使用できることを理解するであろう。
【0070】
[0107] 本明細書に開示する振動デバイス(例えば、振動デバイス400、500、600、700)は、高いQ値を有することができる(例えば、狭い範囲の周波数でより高い振幅で振動することができる)。いくつかの実施形態では、振動デバイスは、50~70Hzの周波数等、最低の基本周波数で動作可能であり得、より高い且つより可聴の共振周波数には低い量の電力が向けられる。
【0071】
[0108] 図8は、一実施形態による振動デバイス700の断面図を例示する。振動デバイス700は、振動デバイス500、600と同様であり得る。例えば、振動デバイス700は、ハウジング710と、磁石723として実施された振動要素と、ばね720として実施された懸架要素と、本明細書に開示する前庭異常を治療するために使用される振動信号を生成するために磁石723の移動を駆動するコイル724を含む駆動回路とを含むことができる。磁石723が、駆動信号によって送達される電気信号によって通電されると、平衡位置を中心に振動することができるように、ハウジング710内(例えば、チャンバ内)でばね720によって磁石723を懸架することができる。
【0072】
[0109] いくつかの実施形態では、ばね720のばね定数を低減させ、それにより振動デバイス700の共振周波数に影響を与えるために、ばね720の長さを増大させることができ、それにより、より低い周波数の発生を可能にすることができる。振動デバイス700のサイズを変更することなくばねの長さを変更するために、ばね720は、磁石723によって画定された開口部723aを貫通するように構成することができる。図8に示すように、ばね720は、取付プレート728に取り付け、磁石723の近い方の側に取り付けるのではなく、磁石723の遠い方の側に付着させることができる。このように、振動デバイス700の長さは、同じままであり得る一方、ばね720の長さは、磁石723の厚さと等しいか又は実質的に等しい長さだけ増大することができる。いくつかの実施形態では、取付プレート728を有する代わりに、磁石723は、その長さの一部(例えば、その長さのおよそ95%)を通して延在する開口部を有することができ、ばね720は、開口部を通して延在し、ばね720が取付プレート728に取り付けられる方法と同様に磁石723の遠端部に取り付けられ得る。
【0073】
[0110] 図7Bに示すような振動デバイス600と同様に、図8に例示する振動デバイス700も、対象の前庭系に振動信号を送達するために送達インタフェース(例えば、送達インタフェース730)に取り付けることができる。送達インタフェース730は、振動信号を有効に送達するために、標的領域の表面に沿うようなメモリフォームパッド等の詰め物材料を含み、振動デバイス700と標的領域との間のインタフェースとして作用することができる。
【0074】
[0111] 図8に示すように、振動デバイスのいくつかの実施形態は、振動デバイス700を起動する信号を発生させる回路を含む集積回路706を含むことができる。集積回路706は、他のコンポーネント(例えば、マイクロコントローラ等の制御ユニット360)に接続するための1つ又は複数のリード又は接続点708(例えば、リード線)を含むことができる。集積回路706はまた、センサ790を含み、及び/又はセンサ790に結合され得る。
【0075】
[0112] 振動デバイス700は、高いQ値を有することができる。動作時、振動デバイス700が、所与の電力入力に対して振動の振幅を増大させるために共振周波数で動作するように、振動デバイス700を起動するために使用される信号の周波数を選択することができる。一実施形態では、センサ790は、磁場変動をモニタリングするように構成されたホール効果センサを含むことができる。力レベル及び/又は周波数を変更することができる信号源(例えば、信号発生器370及び/又は増幅器380)から振動デバイス700に供給される電気信号の周波数が振動デバイス700の共振周波数と一致すると、磁石723は、他の周波数におけるよりさらに大きく移動する(例えば、より大きい振幅で振動する)ことができる。したがって、磁石723の振動によって引き起こされる磁場変動は、電気信号の周波数が振動デバイス700の共振周波数と一致すると増大することができる。この相対的な変動は、ホール効果センサによってモニタリングすることができる。
【0076】
[0113] より詳細には、マイクロコントローラ又はマイクロプロセッサ(例えば、制御ユニット360)は、ホール効果センサから信号を受信し、センサ読取値に基づいて振動デバイス700に電力を供給するために使用される電気信号の周波数を調整するように動作可能であり得る。例えば、マイクロコントローラは、設定された周波数範囲(例えば、50~65Hz)を通してスキャンし、最高レベルの磁場変動を発生させる電気信号の周波数を選択するように動作可能であり得る。このプロセスは、「同調」と称することができる。その後、センサ790及びマイクロコントローラの組合せは、デバイスがオンにされるたびに、その効率を維持するように振動デバイス700に供給される電気信号の周波数を同調させ続けることができる。さらに、電気信号の周波数が選択された後、その周波数を、選択された周波数の周囲で変更して、ピーク効率に関連する電気信号の周波数が、振動デバイス700の構成要素(例えば、ばね720)の特性を時間が経つと変化させる可能性がある温度、摩滅又は他の変数に起因して経時的に変化するか否かを判断することができる。
【0077】
[0114] いくつかの実施形態では、センサ790は、最大効率を提供する共振周波数を選択することができる情報(例えば、電流、電圧、加速度等)を測定するために、電流計、電圧計、加速度計又はセンサ390と同様の他の何らかのタイプのセンサを含むことができる。
【0078】
[0115] 集積回路706は、エンドキャップとして機能することができ、それにより振動デバイス700のサイズがさらに縮小する。送達インタフェース730は、例えば、使用者の皮膚の表面に沿い、振動信号を、振動デバイス700から身体に骨を介して前庭系に伝導することができるように伝達することができる構造体として機能するように動作可能なフォームパットであり得る。送達インタフェース730は、良好な結合により頭部への振動信号の効率的な伝達が可能になるように構成することができる。
【0079】
[0116] いくつかの実施形態では、可聴音(すなわちノイズ、唸り)を回避するために、振動デバイス700は、内部構造体間の摩擦及び/又は接触を低減させるように構成することができる。例えば、磁石723、コイル724、ハウジング710等は、さまざまな構成要素間の接触を低減させながら、コンポーネントの固有の揺れ及び動揺を可能にするように互いの間に十分な公差があるように位置決めすることができる。
【0080】
[0117] 振動デバイス600の磁石623と同様に、磁石723も、軸Cに沿わない方向に揺動する可能性があり、それにより磁石723が振動デバイス700の内面に接触する可能性がある。この接触により、可聴音が発生し、及び/又は振動デバイス700の効率が低下する可能性がある。いくつかのこうした実施形態では、軸方向共振周波数を揺動共振周波数又はその高調波のいずれとも同じでないようにする特性を有するばね720及び磁石723を選択することにより、ノイズを最小化することができる。したがって、揺動共振周波数ではなく、軸方向共振周波数に対応する周波数で振動デバイス700を動作させることにより、揺動及び磁石723と振動デバイス700の他の構成要素との間の意図されない接触を低減させることができる。
【0081】
[0118] 振動デバイス700によって出力される機械的振動信号の出力力レベルを調整するために、振動デバイス700内に入力される電気信号の電圧を上昇させることができる。代わりに又はさらに、振動信号の出力力レベルを調整するために電気信号の周波数を共振周波数に調整することができる。
【0082】
[0119] 図9Aは、振動デバイスにおいて懸架要素として作用することができるばね820(例えば、上述したデバイス700におけるばね720)の斜視図を例示する。ばねの向きは、二次方向における磁石(例えば、磁石723)の揺動、揺れ又は望ましくない移動の量を低減させることができる。ばね820の2つの端部の図を提示する図9B及び図9Cに示すように、ばね820は、ばね820の第1端部820aが0°位置で開始し、ばね820の第2端部820bが180°位置で終端するように向けることができる。他の実施形態では、振動デバイスにおける重力の影響(例えば、重力の方向に対するばね820の向き)に応じて、ばね820は、他の角度間隔、例えば90°、270°等で開始及び終端することができる。いくつかの実施形態では、ばね820の向きは、例えば、加速度計又はホール効果センサ等、センサの配置に基づいて選択することができる。
【0083】
[0120] 図10図15は、さまざまな支持要素内に含めることができ、及び/又は組み込むことができる振動デバイスの異なる実施形態の図である。これらの図には1つ又は2つの振動デバイスが示されている場合があるが、当業者であれば、さまざまな実施形態において任意の数の振動デバイスを含め得ることを理解するはずである。複数の振動デバイスの場合、振動信号の結合された効果は、前庭異常を治療するための治療上有効なレベルであり得るため、各デバイスからの振動信号の力レベルを低減させることができる。
【0084】
[0121] 図10は、本体910が、対象の頭部HDに装着されたヘッドバンド918に組み込まれている振動デバイス900を例示する。振動デバイス900は、上述した制御ユニット360と同様の制御ユニット906を含む。ヘッドバンド918は、骨を介して前庭系に伝導することができる振動信号を有効に送達するように、ヘッドバンド918が対象の頭部HDの上に振動デバイス900を保持するのを可能にする弾性、Velcro、金属若しくはプラスチック又は別の材料から作製することができる。振動デバイス900は、制御ユニット906及び/又は振動デバイス900の他の構成要素に電力を供給する内蔵電源(例えば、バッテリ)を含むことができるか、又は電線を介して振動デバイス900をヘッドバンド918とは別個の電源(例えば、バッテリパック)に取り付けることができる。制御ユニット906は、本明細書に開示する前庭異常又は他の異常を治療する振動信号を発生させるために必要な電気駆動回路を含むことができる。代わりに、こうした回路及び電源を振動デバイス900に作動的に接続することができる。いくつかの実施形態では、ヘッドバンド918は、対象のさまざまな必要性に適応するようにヘッドランプ又は他の好適なヘッドギア等のさらなるデバイスを組み込むことができる。
【0085】
[0122] 図11は、一実施形態による、ヘッドフォン1002の形態で支持要素に組み込まれた振動デバイス1000a、1000bの使用を例示する。ヘッドフォン1002は、オーディオスピーカ1003a、1003bと、オーディオスピーカ1003a、1003bを接続する長尺部分1018(例えば、バンド)とを含むことができる。いくつかの実施形態では、ヘッドフォン1002は、オーディオスピーカのようなコンポーネントを含まず、耳当て等の受動ノイズ低減デバイスであり得る。振動デバイス1000a、1000bは、本明細書に記載する他の任意の振動デバイス(例えば、振動デバイス300、400、500、600、700、800)と同様であり得る。ヘッドフォン1002は、振動デバイス1000a、1000bによって生成される振動によって引き起こされる可聴音のレベルを低下させるが、(例えば、振動デバイス1000a、1000bによって生成される振動信号の結果として骨を介して)前庭系に伝導される他の振動をキャンセルしないように使用することができるノイズキャンセル回路を含むことができる。例えば、システム1002は、振動デバイス1000a、1000bによって生成される可聴信号と位相がずれている(例えば、180度位相差である)1つの信号(又は複数の信号)を発生させるノイズキャンセル回路を含むことができる。こうした位相がずれた信号は、対象に可聴音が聞こえない可能性があるように、対象の前庭系によって検出されるこうした可聴信号の信号レベルを低下させるように作用する。
【0086】
[0123] ヘッドフォン1002とともに使用される場合、振動デバイス1000a、1000bは、オーディオスピーカ1003a、1003bに隣接して配置することができ、それにより、オーディオスピーカ1003a、1003bが耳の上に位置決めされるとき、振動デバイス1000a、1000bは、乳様突起骨を覆う位置である。代わりに又はさらに、いくつかの実施形態では、ヘッドフォン1002の装飾的形状又は外形に影響を与えないように、スピーカ1003a、1003bと同一の場所に配置することができるヘッドフォン1002のイヤカップに振動デバイス1000a、1000bの1つ又は複数を組み込むことができる。
【0087】
[0124] 代わりに又はさらに、いくつかの実施形態では、振動デバイス1000a、1000b(又は図示しないさらなる振動デバイス)の1つ又は複数は、ヘッドバンド1018に沿って配置されるか、又はヘッドフォン1002の一部から延在し得る。代わりに又はさらに、他のいくつかの実施形態では、振動デバイス1000a、1000b(又は図示しないさらなる振動デバイス)の1つ又は複数を、ヘッドフォン1002に取り付けられ且つヘッドフォン1002から取り外される付属物に組み込むことができ、それにより、使用者は、振動デバイス1000a、1000bなしのヘッドフォンとするか、又は振動デバイス1000a、1000bを備えたヘッドフォンとするかを選択することができる。
【0088】
[0125] 図12は、枕1110(例えば、旅行用枕、クッション等)に組み込むか又は接続することができる振動デバイス1100a、1100bのさらに別の実施形態を例示する。枕1110における振動デバイス1100a、1100bの場所は、対象が自身の頭部を枕1110の上に載せると、振動デバイス1100a、1100bが例えば対象の乳様突起骨を覆うように構成することができる。他の実施形態では、振動デバイス1100a、1100bは、対象の頭部の他の領域の覆うように位置決めすることができる。
【0089】
[0126] 図13は、座席1210(例えば、車の座席、事務用椅子等)に組み込むか又は接続することができる振動デバイス1200のさらに別の実施形態を例示する。座席1210及び振動デバイス1200は、例えば、対象の頭部が座席ヘッドレスト1212に寄り掛かると、振動デバイス1200が対象の頭部の一部を覆い、頭部に振動信号を伝達することができるように構成することができる。いくつかの実施形態では、振動デバイスは、使用されないときに取り除くことができるように、支持要素1218を使用して座席1210に取外し可能に取り付けることができる。
【0090】
[0127] 図14は、眼鏡1310に組み込むか又は接続することができる振動デバイス1300a、1300bの別の実施形態を例示する。図14には眼鏡を示すが、当業者であれば、他のタイプのアイウエア(例えば、ゴーグル、サングラス、保護眼鏡)も1つ又は複数の振動デバイスを有するのに好適であり得ることを理解するであろう。振動デバイス1300a、1300bは、眼鏡1310の使用中、眼鏡1310の上の、対象の頭部に隣接して接触し得る耳部分1311a、1311bの上に位置決めすることができる。対象が眼鏡1310を装着しているとき、振動信号を頭部及び前庭系上に伝達することができるように振動デバイス1300a、1300bが頭部の一部を覆うように、振動デバイス1300a、1300bを位置決めすることができる。
【0091】
[0128] 図15は、仮想現実デバイス1410(例えば、仮想現実又は拡張現実環境を体験するために使用することができるデバイス)に搭載されるか又は組み込まれる振動デバイス1420の別の実施形態を例示する。振動デバイス1400は、仮想現実デバイス1410において、対象の頭部の上に仮想現実デバイス1410を締結又は支持するために使用することができる仮想現実デバイス1410のバンド1441の上の位置決めすることができ、仮想現実デバイス1410の使用中に頭部と隣接して接触することができる。仮想現実デバイス1410のバンド1441に沿った任意の位置に1つ又は複数の振動デバイスを搭載することができる。対象が仮想現実デバイス1410を装着すると、振動信号を頭部に且つ前庭系上に(例えば、送達インタフェースを介して)伝達することができるように振動デバイス1400が対象の頭部の一部を覆うように、仮想現実デバイス1410の上に振動デバイス1400を位置決めすることができる。
【0092】
[0129] 図17A及び図17Bは、振動デバイスに電力を供給する電気信号の波形例を例示する。図17Aは、振動デバイスの振動要素を移動させるように磁場ベクトルを変調するために使用することができる、波長1604及び振幅1602を有する正弦波形1600を示す。図17Bは、例えば、上述したように、振動信号を発生させるために振動デバイスにおける圧電振動要素を変調するために使用することができる矩形波形1610を例示する。圧電デバイスは、矩形波によって起動されると圧力を発生させるように高周波数で振動することができ、矩形波は、より低い周波数(例えば、200Hz未満)で循環することができ、それにより、圧力は、より低い変調周波数(例えば、60Hz)でオン及びオフを循環し、低周波振動信号と同様に機能する。
【0093】
[0130] 図18は、振動信号を発生させるために振動デバイスに電力を供給する電気信号の立上り及び立下りを示すグラフ1700である。グラフ1700は、電気信号の振幅が経時的にどのように変化するかを示す。図18に示すように、振幅は、オンセット段階1702中に増大することができ、そこで、振幅は、事前定義された率で増大する。事前定義されたレベルに達すると、振幅は、定常段階1706中に一定に維持され、その段階は、(破線によって表すように)前庭異常を治療するために任意の好適な時間にわたって続くことができる。したがって、信号がオフにされるまで、振幅を、事前定義された率で低減させることができる。波形のオンセット段階1702及びオフセット段階1704は、図18に示すように、異なる傾斜プロファイルを有することができる。例えば、オンセット段階1702における印加電圧振幅の増大は、単位時間当たり一定の率で振幅が増大する傾斜した増大であり得る。したがって、オフセット段階1704は、増大の率と異なる、単位時間当たりの一定の率で振幅が低減する振幅の下向きの傾斜又は傾斜した低減であり得る。いくつかの実施形態では、異なる勾配によって示すように、オンセット段階1702における振幅の増大の率は、オフセット段階1704における振幅の低減の率より高くすることができる。場合により、オンセット段階1702における傾斜した増大及び/又はオフセット段階1704における傾斜した低減は、変化する率(例えば、経時的に増大及び/又は低減する率)でも達成することができる。
【0094】
[0131] 場合により、増大の率及び/又は低減の率は、治療される前庭異常、対象の個人的選好、環境因子等に基づいて指定することができる。いくつかの実施形態では、振幅の増大の率及び/又は低減の率は、使用者が調整することができる。いくつかの実施形態では、振幅の率若しくは増大及び/又は低減の率は、センサ読取値に基づいて自動的に(例えば、制御ユニット360により)調整することができる。例えば、振動デバイスに組み込まれたセンサを、振動デバイスの電源がオンになっており、及び/又はオフになっている際に身体的又は生理的状態及び/又は反応(例えば、発汗、体温、心拍数等の変化)を測定するように構成することができる。身体的状態及び/又は反応をモニタリングすることにより、(例えば、デバイスのより日常的な使用者に対するより繊細な又は初めての使用者による)異なる反応に適応するように、立上り及び/又は立下りの率を調整することができる。さらに、慢性症状(例えば、回転性めまい)のある対象の場合、例えば前庭異常の急な戻り及び前庭異常に関連する症状のより際立った発症等、デバイスのオン及び/又はオフ間で遷移する神経に障る影響を低減させるように立上り及び/又は立下りを選択することができる。
【0095】
[0132] 図19は、本明細書に開示する前庭異常に関連する症状を治療するために振動デバイス(例えば、振動デバイス300、400、500、600、700)を使用する方法1800を例示する。1802において、振動デバイスは、対象又は使用者の頭部の上に位置決めされる。位置決めは、振動信号を対象の前庭系に有効に伝達することができるような好適な領域の上(例えば、好適な骨構造の上)である。
【0096】
[0133] 1804において、デバイスに通電し、振動デバイス内の振動要素の移動を引き起こすように振動デバイスに電気信号が供給される。1805において、前庭異常を治療するように対象の頭部に振動信号が印加される。1806において、例えば電流、電圧、磁場変動等を含む、通電された振動デバイスに関連する情報がモニタリングされる。1808において、対象の生理的状態及び/又は快適レベルがモニタリングされる。例えば、対象の心拍数、発汗、体温、呼吸、酸素飽和度等のような生理的兆候をモニタリングすることができる。場合により、振動デバイスと統合された適切なセンサ及びアクチュエータを使用して、使用者が知覚する快適さ又は不快感のレベルを報告するフィードバック等、対象からの任意のフィードバックをモニタリングすることができる。1806及び1808におけるこうしたモニタリングは、1つ又は複数のセンサ(例えば、センサ390、センサ416)及び/又は制御ユニット(例えば、制御ユニット360)を使用して達成することができる。
【0097】
[0134] 1810において、振動デバイス及び/又は振動デバイスに結合された制御ユニットは、電気信号を調整又は変更するべきであるか否かを判断する。電気信号を調整する必要がない場合(1810:NO)、上述したように、振動デバイスは、1805において前庭異常の治療を続けることができ、1806において振動デバイスに関連する情報のモニタリングを続け、1808において対象に関連する情報のモニタリングを続ける。
【0098】
[0135] 電気信号を調整する必要がある場合(1810:YES)、1812において、電気信号の周波数又は力レベルが変更され、1804において振動デバイスに新たな電気信号が印加され、上述したようにフローチャートを続ける。振動デバイスのモニタリング及び対象のモニタリングから収集された情報を使用して、力レベル及び/又は周波数を変更する必要があるか並びにどの程度及びいかなる形態で変更する必要があるかを判断することができる。例えば、測定された電圧、電流及び/又は磁場変動が、現周波数が共振周波数ではないことを示す場合、振動デバイスの効率を向上させるように周波数を調整することができる。別の例として、前庭異常が存在しなくなった(例えば、乗り物酔いがなくなった)ことを示す信号が使用者から受信された場合、振動デバイスは、(例えば、立下りを介して)デバイスをオフにするように周波数を調整することができる。別の例として、対象による不快感の指示に応じて力レベルを低減させることができる。
【0099】
[0136] 前庭異常に関連する症状を治療するため、本明細書に開示する振動デバイス例と同様の実験用振動デバイスを試験するために実験的研究を行った。実験用振動デバイスは、図6に示す振動デバイス500と同様に、2つの他の磁石間に懸架された磁石として実施された振動要素を含んでいた。振動デバイスは、マイクロコントローラ、カスタム設計されたArduino基板によって通電される、4オームのインピーダンスを有する外部コイルを含んでいた。マイクロコントローラは、懸架された磁石を振動させるために使用される磁場を発生させるように外部コイルに通電することができた。3磁石/ボイスコイルアセンブリを本体又はハウジング内部に配置し、充電式バッテリに接続し、それによって電力を供給した。振動デバイスは、ヒトの頭部に結合することができ、骨を介して前庭系に伝導することができる振動を発生させることができた。
【0100】
[0137] 研究において、対象は、乳様突起骨を覆う領域に接して耳の後方に配置された実験用振動デバイスを装着し、デバイスによって発生する振動信号を、骨を介して対象の前庭系に伝導することができるようにした。対象は、乗り物酔い、悪心及び/又は他の前庭異常を引き起こすさまざまな状態に曝され、対象が報告する情報に基づいて振動デバイスの効果を評価した。
【0101】
[0138] 実験のために、振動デバイスによって生成される振動の力レベルは、Bruel & Kjaer(B&K)騒音計(2234番)に結合された較正されたB&K人工乳様突起(4930番)を用いて測定した。骨伝導補聴器を保持するように設計されたB&K人工乳様突起内のホルダに振動デバイスを挿入した。B&K人工乳様突起に接して位置する振動デバイスの上に3.5~8ニュートンの力を印加した。骨伝導レベルを、B&K騒音計を用いて定量化し、dB re 1ダイン(すなわち力レベル)として表す。
【0102】
[0139] 研究の各々に関連するさらなる情報を以下に提供する。
【0103】
実験的研究I
[0140] 図20Aは、第1実験的研究の手順のフローチャート1900を示す。この第1実験的研究における研究参加者は、非回転性めまいを含む前庭疾患の病歴がなかった。研究の時間中、参加者を事務用椅子に着席させ、Oculus Rift DK2仮想現実システムと、上述した設計例による振動デバイスとを装着するように求めた。振動デバイスをヘッドストラップにより適所に保持した。
【0104】
[0141] 図20Aに概説する試験手順に従って研究を行った。各参加者は、試験手順を複数回、最初に振動デバイスをオフにして、次いで振動デバイスをオンにして行った。振動デバイスをオンにした状態での試験中、振動デバイスの周波数及び/又は力レベルを変更して、特定の周波数及び/又は力レベルが仮想現実デバイスの使用に関連する前庭異常を治療するのにより有効であるか否かを試験した。試験中、周波数及び/又は力レベルの順序は、参加者間でランダム化した。参加者には、仮想現実デバイスの使用から引き起こされる非回転性めまい又は他の前庭異常から回復するために常に研究を停止する機会も与えた。
【0105】
[0142] 1902において、参加者に対し、仮想現実デバイスのディスプレイを介して、図20Bに示す視覚刺激1950を与える。視覚刺激1950は、複数の球体1954を有する円盤状領域1956を含む。参加者に対し、円盤状領域1956内の球体1954の残りと異なる色相である中央の球体1952に注意を集中させるように指示した。円盤状領域1956は、Oculus Rift等の仮想現実デバイスを使用して見ることができる3次元空間を表すように設計されていた。
【0106】
[0143] 1904において、参加者は、キーボードのスペースバーを押下することにより、中心点(すなわち中心球体1952)の周囲のディスク状領域1956における球体1954の回転を開始する。スペースバーを押下すると、球体1954は、回転を開始し、1906において4度/秒/秒の速度で徐々に加速する。1908及び1909において、参加者に対し、不快感又は非回転性めまいを感じた場合にスペースバーを再度押下するように指示し、その時点において、回転する球体1954の角速度を記録し、その参加者に対する「最大角速度」として記憶した。特定の参加者が不快感又は非回転性めまいを示すためにスペースバーを押下しなかった場合、球体1954の角速度は、90度/秒という事前定義された角速度に達するまで上昇した。
【0107】
[0144] 1910において、画像の角速度を使用者の指示前に速度の90%まで低減させた(すなわち速度の90%を「最大角速度」として記録した)か、又は参加者がスペースバーを押下しなかった場合、90度/秒の90%(すなわち81度/秒)まで低減させた。1911において、参加者が不快感又は非回転性めまいの戻りを示すようにスペースバーを再度押下するまで又は1912において事前定義された時間(例えば、120秒間)が経過するまで、球体1954は、低下した速度で回転する。1911における参加者の指示があるか、又は1912において事前定義された時間が経過すると、参加者がその低減した速度で円盤状領域1956を見た時間を「表示時間の長さ」として記録する。
【0108】
[0145] 所与の参加者に対して、最初に振動デバイスがオフである状態で試験手順を実施するように求めた。参加者は、試験手順を2回、1回目には球体1954が右回り方向に回転している状態で、2回目には球体1954が左回り方向に回転している状態で受けた。次に、振動デバイスがオンである状態で同じことを繰り返した。研究参加者に対して、参加者の耳の後方に且つ乳様突起骨の平坦部分の上の外耳道と同じ高さで振動デバイスを装着するように求めた。参加者には、いかなる不快感又は非回転性めまいからも回復するように、必要に応じて右回り試験と左回り試験との間で休息する時間(例えば、10~60秒間)を与えた。
【0109】
[0146] 振動デバイスを使用している参加者に対して、異なる力レベルの組又は異なる周波数の組を試験するように求めた。異なる力レベルを試験する参加者に対して、振動信号の周波数は、一定のままにした(すなわち50Hz)一方、力レベルは、87、92、94、96、98、99、100及び101dB re 1ダインに設定した。異なる周波数を試験する参加者に対して、振動信号の出力レベルは、一定レベル(すなわち96.5dB re 1ダイン)に設定し、周波数は、30~75Hzで変更した。
【0110】
[0147] 研究には18人の参加者が参加した。研究に進んで参加したこれらの参加者のおよそ1/3が実験からいかなる乗り物酔いも体験しなかった。これらの参加者は、回転する球体1954が90度/秒に達するまで、提示された視覚刺激(図20B)を注視し、その後、低下した速度で120秒間、視覚刺激の注視を続けた。これらの乗り物酔いに強い参加者には、振動デバイスをオンにした状態で視覚刺激への接触を繰り返すように指示して、デバイスからの振動が乗り物酔いを引き起こすか否かを試験した。これらの参加者のいずれも、振動デバイスによって生成された振動が97dB re 1ダイン以下に設定されている状態で振動デバイスを使用する間及び使用した後に何らかのマイナスの副作用を体験したと報告しなかった。
【0111】
[0148] 残りの11人の参加者(すなわち実験的研究中のいずれかの時点で乗り物酔い又は非回転性めまいを体験したことを示した参加者)に対する実験データを図21A図21B図22A及び図22Bに示す。図21A図21B図22A及び図22Bに示すグラフにおけるデータ点に対して、各試験条件下で各参加者について右回り及び左回りの「最大角速度」及び「表示時間の長さ」を平均し、「振動デバイスなし」データに基づいて「振動デバイスあり」データを基準正規化した(すなわち特定の周波数及び/又は力レベルに設定された振動デバイスを使用している間に参加者について収集されたデータを、振動デバイスを使用していない間のその参加者のデータに基づいて正規化した)。各参加者に対するこれらの比を計算した後、図21A図21B図22A及び図22Bに示すグラフに示すデータ点に達するように11人の参加者の比を平均した。
【0112】
[0149] 図21Aは、ある範囲の異なる力レベルにわたる11人の参加者の平均「表示時間の長さ」比のグラフ2000を示す。1より大きい値は、振動デバイスを使用していない間に対する、振動デバイスを使用している間の不快感を体験する前の表示時間の増大を示す。図21Bは、ある範囲の異なる力レベルにわたる11人の参加者の平均「最大角速度」比のグラフ2002を示す。図21Bにおける1より大きい値は、振動デバイスを使用していない間に対する、振動デバイスを使用している間の不快感を引き起こさなかった角速度の増大を示す。実験データは、11人の参加者について、振動デバイスが、その振動の力レベルが96dB re 1ダインに設定された場合に最大の効果を有することを示した。データの補間された当てはめに基づき、「表示時間の長さ」及び「最大角速度」比は、96.5dB re 1ダインでピークに達した。93dB~98dBの範囲の力レベルでの「表示時間の長さ」及び「最大角速度」比は、統計的に1と有意差があり且つ1より大きく、これらの力レベルに設定された振動デバイスは、前庭異常を治療するのに有効であることを示す。
【0113】
[0150] 87dB re 1ダインでは、比は、統計的に1と差がなく、デバイスが前庭異常を治療するのに有効でないことを示す。約100dB re 1ダイン又はそれより高いレベルでは、多くの参加者が振動デバイスをオンにした状態で気分の悪化を報告した。これらのより高い力レベルでの不快感の閾値は、参加者によってわずかに異なり、何人かは、99dB程度に低いレベルで不快感を報告したが、特定の参加者について、その閾値に達すると、その参加者は、振動により略即座に不快を感じたと報告した。102dBで試験した参加者は、すべて振動デバイスからの振動のみでそれら参加者に不快感を引き起こしたため、仮想現実システムを使用していたか否かに関わらず不快感を報告した。
【0114】
[0151] 図22A及び図22Bは、ある範囲の周波数にわたる11人の参加者に対する正規化及び平均された「表示時間の長さ」及び「最大角速度」比を示す。図示するように、これらの結果は、仮想現実酔いを緩和するか又は遅らせることに対する実験用振動デバイスの有効性が振動信号の周波数によって決まるように見えないことを示した。しかしながら、グラフ2100及び2102は、45~65Hzの相対的に大きい比の値を示す。
【0115】
[0152] いくつかの要因がこの第1実験的研究の結果を制限した可能性がある。例えば、円盤状領域1956における球体1954の角速度は、視覚表示システムによって制限された。具体的には、Oculus DK2画面のリフレッシュレートは、90Hzである。デバイスのパネルは、2ミリ秒の残像を有する有機LED(OLED)である。これらの要因により、円盤状領域1956における球体1954の回転速度がおよそ90度/秒を超えて回転することが阻止された。回転速度が90度/秒を超えて上昇すると、仮想現実ディスプレイは、フリッカを開始した。多くの試験参加者は、振動デバイスを装着している間にこの上限に達し、これは、測定値に天井効果を引き起こした。
【0116】
[0153] 同様に、低下した速度で回転する球体1954を見ている間、何人かの対象は、眼の疲れを訴え、不快感又は悪心の訴えはなかった。したがって、参加者は、回転する円盤をどの程度の長さ見ることができるかにおいても制限され、これは、仮想現実酔いの発症を遅らせるという点での実験的振動の有効性の測定値に天井効果をもたらす別の要因であった。
【0117】
[0154] これらの要因を考慮すると、この第1実験的研究により、振動デバイスが統計的に有意なレベルで仮想現実酔いを治療するのに有効であることが示された。図20A及び図20Bのグラフに示すデータから、力レベルの変動は、振動デバイスの有効性に統計的に有意な効果を有することが示された。具体的には、93dB re 1ダイン未満の力レベルは、前庭異常を治療するのに有効でなく、100dBを上回る力レベルにより、前庭異常を悪化させる不快感及び非回転性めまいが引き起こされることが示され、したがって、データにより、93dB~98dB re 1ダインの力レベルが前庭異常を治療するのにより有効であることが示された。一方、図21A及び図21Bのグラフに示すデータにより、振動デバイスの有効性が45Hz~65Hzに明確な傾向又はピークを有していなかったため、振動周波数の変化は、前庭異常を治療することに対する振動デバイスの有効性に対してより小さい影響を有することが示された。
【0118】
実験的研究II
[0155] 第2実験的研究では、上に開示した第1実験的研究から得られた結果を使用して、仮想現実ゲーム「EVE:Valkyrie」のユーザが体験する乗り物酔いを緩和又は防止することに対する実験用振動デバイスの有効性を測定した。
【0119】
[0156] 「EVE:Valkyrie」は、プレイヤーがXbox 360ハンドヘルドコントローラを使用して宇宙船及び隕石のフィールドで移動するファーストパーソンの宇宙船シュータゲームである。このゲームは、多くのプレイヤーにおいて乗り物酔いを引き起こすことが知られている。このゲームは、小惑星及び宇宙船のフィールドに配置された「ゲート」を通して飛行することを含む。3つの空間次元における移動に加えて、大部分の「ゲート」は、プレイヤーに対して、3次元回転軸(例えば、「ロール」、「ピッチ」又は「ヨー」軸)を中心に回転するように要求する。
【0120】
[0157] この研究では、対象は、Oculus Rift CV1システムを使用して、最大15分間、仮想現実ゲーム「EVE:Valkyrie」をプレイした。研究のために、参加者に対し、上述した実験用振動デバイスの使用のあり及びなしで、連続した2日間、2回のセッションでゲームをプレイするように指示した。実験の1日目、参加者に対し、実験用振動デバイスなしで最大15分間、仮想現実ゲームのトレーニングミッション部分をプレイするよう求めた。参加者に対し、15分間の終了時点前に悪心を感じ始めた場合、停止するように指示した。経験のあるゲーマーは、ミッションに直接向かうように選択し、トレーニングミッションを飛ばして仮想現実空間飛行に直接取り掛かることができた。2日目、同じ実験手順を続けたが、参加者は、第1実験的研究の結果に従って有効であることが分かった60Hzの周波数及び96.5dBの力レベルに設定された実験用振動デバイスを装着して行った。デバイスは、頭蓋の右耳の後方に、外耳道と同じ高さで且つ乳様突起の平坦部分の上におよそ3.5~8ニュートンの力を印加して適用した。研究中、非回転性めまい又は不快を感じたいかなる参加者も、自身の選択する任意の時点で停止することができた。
【0121】
[0158] 参加者に対し、ゲームのプレイを停止したおよそ10分後、乗り物酔い評価アンケート(「MSAQ」)を記入するように求めた。MSAQは、乗り物酔いの独立した記述子を乗り物酔いの4つのカテゴリ、すなわち(1)胃腸系、(2)中枢神経系、(3)末梢神経系、及び(4)眠気関連にグループ化することにより、識別及び類別するのに役立つ16の表明又は発現を含む。MSAQスコアは、乗り物酔いの16のあり得る発現に対して1(まったくない)~9(重症)の範囲である。表1は、参加者が体験した乗り物酔いを評価するために使用されたMSAQの16の表明を示す。
【0122】
【表1】
【0123】
[0159] 参加者に対して、1日目に実験用振動デバイスを装着せずに15分間ゲームをするよう求めた場合、17人中11人の参加者が15分間全体にわたってプレイすることができた。残りの6人のプレイの持続時間は、4:05~14:50分間の範囲であった。平均プレイ時間は、13:25分間であった。対照的に、参加者がプレイ中に実験用振動デバイスを装着した場合、17人の参加者全員が15分の持続時間プレイすることができた。MSAQからのデータを収集し、表1に提示する。MSAQのスコアは、1(まったくない)~9(重症)の範囲である。
【0124】
[0160] 図23A及び図23BにMSAQの結果をグラフ形式で提示する。各グラフは、デバイスを装着している間に得られたMSAQスコアに対する、デバイスを装着していない間に得られたMSAQスコアの比を示す。図23Aは、乗り物酔いの4つのカテゴリすべてにわたるMSAQからの平均スコアを示すプロット2200を示し、図23Bは、MSAQによって定義された乗り物酔いの4つのカテゴリ、具体的には(1)胃腸系、(2)中枢神経系、(3)末梢神経系、及び(4)眠気関連のそれぞれに対するスコアを示す4つのサブプロット2202、2204、2206、2208を示す。各グラフを通る線2205は、振動デバイスを使用するMSAQスコアと使用しないMSAQスコアとが同じであるときを表し、したがって振動デバイスが乗り物酔いに影響を与えない場合を表す線である。
【0125】
[0161] 図23A及び図23Bに示すように、データ点のすべてが線2250より下に位置していたため、データは、振動デバイスが乗り物酔いを治療するのに有効であったことを示す。データ点は、9(重症)~1(まったくない)のMSAQスコアの有意な低減を示した。図23Bのプロット2202、2204、2206、2208に示すように、乗り物酔いの異なるカテゴリに分けた場合でも、振動デバイスは、各カテゴリにおいて乗り物酔いを治療するのに著しく有効であった。
【0126】
実験的研究III
[0162] 第3実験的研究では、参加者に対して4ドアセダンの後部座席の乗員となるように求め、固定の20分間道程に基づいてある区間の道路において車を走らせた。同じ日に、この設定されたルートで3回の道路試験を行った。各運転中、参加者に対し、自身のスマートフォン又は他の小型ハンドヘルドデバイスで記事を読むよう求めた。開始時間を記録し、各参加者は、乗り物酔いの最初の症状を最初に感じた時点を報告した。
【0127】
[0163] 各参加者について、参加者に、いかなるタイプの補助デバイスも装着せずにドライブを体験させ、自身のスマートフォンで記事を読ませることにより、乗り物酔いの基準測定値を確立した。最初の運転後、各参加者に対し、(1)参加者の右乳様突起骨を覆って配置された、本明細書に記載する実験用振動デバイス、又は(2)外向きに面しゴムパッドにより参加者の頭部から隔離され、且つ実験用振動デバイスと均等な可聴レベルを提供する低周波音を発する音声発生器を装着するよう求めた。各デバイスを装着する順序は、各参加者に対してランダム化した。
【0128】
[0164] 運転ルートは、途中の地点(すなわちおよそ10分の時点)において1つの一時停止の標識のみがあり、信号機がない固定迂回ルートであった。固定ルートは、およそ20分間かかり、運転間のばらつきは、10%未満であった。対象に対し、一時停止の標識まで乗車の最初の半分のみ試験した。対象に対してセッション中に休憩を与えた。
【0129】
[0165] 参加者からのフィードバックに基づき、この研究により、参加者は、連続的に乗り物酔いを催さなかったが、概して車両が加速、減速又はターンしたときに催したことが示された。参加者は、1回目のターンが軽い不快感を引き起こし、2回目のターンが1回目のターンの影響を大きくする等、閾値に達するまで、蓄積する影響として乗り物酔いを報告した。実験用振動デバイスを使用している間、参加者は、加速及びターン中に不快を感じたが、この不快感は、車が一定速度に戻ると迅速にゼロに戻り、車の加速度が連続的に変化する間に蓄積する悪心の影響がなかったことを報告した。
【0130】
[0166] 図24は、第3実験的研究中に参加者が催した乗り物酔いの最初の発症までの秒を示す。バー2302は、デバイスなしの乗り物酔いの最初の発症までの秒を表し、バー2304は、音声発生器ありの乗り物酔いの最初の発症までの秒を表し、バー2306は、実験用振動デバイスありの乗り物酔いの最初の発症までの秒を表す。図示するように、本明細書に記載する実験用振動デバイスの使用により、バー2306における乗り物酔いの発症までの秒の有意な増大に至った。具体的には、実験用振動デバイスは、デバイスの装着なし(バー2302)及び音声発生器の装着あり(バー2304)と比較して、乗り物酔いの発症までの時間が2倍を超えたため、有効であることが分かった。この研究のデータにより、乗員として車の後部座席に乗っている間、シミュレートされた現実の読書の状況における乗り物酔いを防止することに対する実験用振動デバイスの有効性が示される。実験用振動デバイスを使用した対象のいずれも、車から降りたときにいかなる不快感も報告しなかった。
【0131】
実験的研究の概要及び他の指摘
[0167] 上述した実験的研究からの結果により、本明細書に開示する振動デバイス例等の振動デバイスがさまざまな前庭異常の症状を治療するのに有効であり得ることが示される。こうしたデバイスは、小型の外形を有し、骨(例えば、頭蓋)を介して対象の前庭系に振動を伝導することができるように、対象の頭部の表面に結合することができる。3つの実験的研究で使用された実験用振動デバイスは、動き及び/又は仮想現実によって引き起こされる乗り物酔いを緩和し、低減させるのに有効であることが示された。記載した実験及び結果により、乗り物酔いを低減するという点での開示した振動デバイスの有効性は、明らかな有害な副作用なしに実質的に瞬時であることが論証される。
【0132】
[0168] 後の実験により、本明細書において有効であることが分かった力レベル及び周波数レベルは、医療施設で行われるカロリック検査でもたらされる回転性めまい及び悪心を低減させるのにも有効であることが示された。例えば、回転性めまいの場合、慢性の又は頻繁な回転性めまいの症状の発現がある人に対し、実験用振動デバイスを装着し、デバイスを装着する効果を報告するように求めた。概して、人は、デバイスを使用する場合、回転性めまいに関連する症状の低減を報告した。別の例では、カロリック検査に対して、耳鼻咽喉科(「ENT」)医師が実験用振動デバイスの装着あり及びなしで5人の対象に対してカロリック検査を行った。1日目にデバイスを装着しなかった場合、すべての対象が悪心を感じ、1人の対象は、重症な悪心のために検査を完了することができなかった。次の日にデバイスを装着した場合、5人に対象のすべては、悪心なしを含む著しい悪心の低減を報告し、1日目に検査を完了することができなかった対象は、2日目にはデバイスを装着して検査を完了することができた。両日における検査は、振動デバイスあり及びなしでの同じレベルの前庭機能を示した。
【0133】
[0169] 図25A図25Cは、振動デバイス2400のハウジング2410の概略図を示す。振動デバイス2400は、本明細書に記載する振動デバイスの任意のものと構造及び/又は機能が同様であり得る。例えば、振動デバイス2400は、上述した振動デバイス500、600及び/又は700と同様であり得る。図25A図25Cに示すように、振動デバイス2400は、送達インタフェース2430と、外側ハウジング2410内の内側ハウジング2426とを含むことができる。いくつかの実施形態では、図25Cの組立分解図に示すように、外側ハウジング2410は、2つの部分2410a及び2410bを結合することによって形成することができる。図26は、ハウジング2410の断面図を例示し、機械的取付具、接着剤等を介することができる2つの部分2410a及び2410bの結合を示す。内側ハウジング2426は、本明細書に記載する振動デバイスに関連する振動要素(例えば、磁石)、コイル及び/又は他の構造体を収容することができる。
【0134】
[0170] 図27A図27B及び図27Cは、一実施形態による振動デバイス2500のそれぞれ斜視図、側面図及び組立分解図を例示する。図28A及び図28Bは、それぞれ振動デバイス2500の斜視図及び側断面図を示す。振動デバイス2500は、本明細書に記載する他の振動デバイス(例えば、振動デバイス500、600及び700)と構造及び/又は機能が実質的に同様であり得る。例えば、振動デバイス2500は、ハウジング2510、送達インタフェース2530及びエンドキャップ2525を含むことができる。振動デバイス2500は、磁石2523を移動させる磁場を発生させるように構成される電磁コイル2524a及び2524bを含むことができる。いくつかの実施形態では、コイル2524a及び2524bは、例えば、反対の極性の磁場を発生させるように反対方向に巻回することができる。2つのコイル2524a及び2524bを有するように図示しているが、いくつかの実施形態では、振動デバイス2500は、磁石の移動を引き起こすように変化する極性の磁場を発生させるように構成された単一コイルを含むことができる。単一コイルは、例えば、異なる極性の駆動信号を発生させる2つの別個の駆動回路によって駆動することができる。いくつかの他の実施形態では、単一駆動回路を使用して、例えば位相切替回路を使用することにより、異なる極性の信号を発生させることができる。振動デバイス2500は、磁石2523に結合され、且つ懸架要素として作用するように構成されたばね2520を含むことができる。振動デバイス2500は、取付プレート2528a及び2528bを含むことができ、磁石2523は、その長さの一部を通して延在する開口部を有することができ、それにより、ばね2520は、その開口部を通して延在し、振動デバイス700においてばね720が取付プレート728に取り付けられるように記載した方法と同様に取付プレート2528bを介して磁石2523の遠端部に取り付けられ得る。
【0135】
[0171] 振動デバイス2500の磁石2523は、金属エンドプレート2529a及び2529bを含むことができる。一実施形態では、エンドプレート2529bは、ばね2520用の取付プレート2328bとして機能することができる。エンドプレートは、漂遊磁束を低減させるように構成することができる。例えば、振動要素として作用している磁石を備えた振動デバイスは、磁石から離れて漂遊し、振動デバイスが磁力により金属物体に引き付けられるようにする磁力線を有する可能性がある。この磁力により、望ましくない副作用がもたらされ、使用中に振動デバイスが扱いにくくなる可能性がある。エンドプレート2529a及び2529bは、こうした漂遊磁束を低減させることができ、それにより、振動デバイス2500は、他の金属物体の近くでそれらの物体にそれほど引き付けられることなく使用することができる。さらに、エンドプレート2529a及び2529bを使用して、コイル2524a及び2524bに対して垂直な(例えば、それらに向かう)方向において磁力線を磁石の端部から出るように向けて、コイルに対して平行な(例えば、コイルに向かわない)方向における磁力線の漂遊損失又は漏れを低減させながら、磁力線のより多くが振動デバイス2500に対する磁石の移動を可能にするために向けられるような磁場を発生させることができる。
【0136】
[0172] 図38は、別の実施形態による振動デバイス2600の一部の斜視図を例示する。振動デバイス2600は、本明細書に記載する他の振動デバイス(例えば、振動デバイス500、600、700及び2500)と構造及び/又は機能のいくつかの態様が実質的に同様であり得る。例えば、振動デバイス2600は、ハウジング及び送達インタフェース(図38には示さず)を含むことができる。振動デバイス2600は、磁石2623を移動させる磁場を発生させるように構成される電磁コイル2624a及び2624bに結合することができるエンドキャップ2625を含むことができる。いくつかの実施形態では、エンドキャップ2625は、電磁コイル2624a及び2624bに電気信号を送出するのに好適な電気インタフェース2627を含むことができる。いくつかの実施形態では、反対の極性の磁場を発生させるようにコイル2624a及び2624bを反対方向に巻回することができる。いくつかの実施形態では、コイル2624a及び2624bは、図38に示すように互いから好適な距離間隔を空けて配置することができる一方、(例えば、図28A及び図28Bに示すような)他の実施形態では、コイルは、空間的に互いにより近接して配置することができる。
【0137】
[0173] 振動デバイス2600は、磁石2623に結合され、且つ懸架要素として作用するように構成されたばね2620を含むことができる。振動デバイス2600は、取付プレート(図38には示さず)を含むことができ、磁石2623は、その長さを通して延在する開口部を有することができ、それにより、ばね2620は、その開口部を通して延在し、振動デバイス2500においてばね2520が取付プレート2528bに取り付けられるように記載した方法と同様に取付プレートを介して磁石2623の遠端部に取り付けられ得る。振動デバイス2600の磁石2623は、振動デバイス2500の金属エンドプレート2529a及び2529bと構造及び/又は機能が実質的に同様である金属エンドプレート2629a及び2629b(図29に示す)を含むことができる。エンドプレート2629a及び2629bは、振動デバイス2500に関して記載したように漂遊磁束を低減させるように構成することができる。例えば、エンドプレート2629a及び2629bは、いかなる漂遊磁束も制限することができ、それにより、振動デバイス2600は、他の金属物体に近接してそれらの物体に引き付けられることなく使用することができる。金属エンドプレート2629a及び2629bを使用して、コイル2624a及び2624bに対して垂直な(例えば、それらに向かう)方向において磁力線を磁石の端部から出るように向けて、コイルに対して平行な(例えば、コイルに向かわない)方向における磁力線の漂遊損失又は漏れを低減させながら、磁力線のより多くが振動デバイス2600に対する磁石の移動を可能にするために向けられるような磁場を発生させることができる。
【0138】
[0174] 図29に、金属エンドプレート2629a及び2629bが集中させる磁力線の例示2700aを示す。図30における弧長の分布にわたって測定された正規化された磁束密度のプロット2700bは、エンドプレート2629a及び2629bがある振動デバイス2600の低減した磁束漏れ(線2704)に対する、エンドプレートのない振動デバイスの相対的な磁束漏れ(線2702)を比較している。図示するように、金属エンドプレート(例えば、2629a及び2629b)の使用により、磁束漏れを低減させることができる。いくつかの実施形態では、エンドプレート2629a及び2629bは、コイル2624a及び2624bによって発生する磁場エネルギーのより効率的な使用を可能にすることができ、それにより、治療上有効な振動信号を発生させるように磁石2623の所望の移動を引き起こすためにより小さい駆動力を使用することができる。いくつかの実施形態では、金属エンドプレート2629a及び2629bを使用して、磁石の移動を駆動するために必要な電力がより小さいような方法で(例えば、コイルに向かうディレクトリで)磁石の磁力線を集中させることができる。こうした実施形態では、所与の強度の振動信号を発生させるためにより小さい磁石2623を使用することができ、それにより振動デバイス2600のサイズを縮小することができる。金属プレート269a及び2629bは、上述したように磁力線を集中させることができる任意の好適な材料製であり得る。一実施形態では、エンドプレート2529a及び2529b及び/又はエンドプレート2629a及び2629bは、低炭素鋼から作製することができる。
【0139】
[0175] 図31A図31B及び図31Cは、一実施形態による振動デバイス2800のそれぞれ斜視図、側面図及び組立分解図を例示する。図32A及び図32Bは、図31C図31Cの振動デバイス2800の2つの断面図を示す。振動デバイス2800は、本明細書に記載する他の振動デバイス(例えば、振動デバイス500、600、700、2500及び/又は2600)と構造及び/又は機能が実質的に同様であり得る。例えば、振動デバイス2800は、ハウジング2810、送達インタフェース2830並びにハウジング部分2825a及び2825bを含むことができる。振動デバイス2800は、図32Bに示す矢印Eの方向に沿って振動要素として作用する磁石2823を移動させる磁場を発生させるように構成された電磁コイル2824を含むことができる。
【0140】
[0176] 磁石2823は、金属エンドプレート2829a及び2829bを含むことができる。エンドプレート2829a及び2829bは、振動デバイス2500に関して記載したエンドプレート2529a及び2529bと実質的に同様であり得る。一実施形態では、金属エンドプレート2829a及び2829bは、低炭素鋼から作製することができる。金属エンドプレート2829a及び2829bは、平行な方向における磁場の漂遊損失又は漏れを低減させながら、コイル2824に対して垂直な方向において磁石2823の磁力線を集中させる(例えば、磁石2823の磁力線がコイル2824に対して垂直な方向において磁石の端部から出るようにする)ように構成することができる。図33は、金属エンドプレート2829a及び2829b並びにコイル2824に対する磁石2823の相対的な位置決めを例示する。図34は、図33に示すように、金属エンドプレート2829a及び2829bが集中させる磁力線の例示3000である。図35における弧長の分布にわたって測定された正規化された磁束密度のプロット3100は、異なる振動デバイスの相対的な磁束漏れを比較している。線2702は、エンドプレートのない振動デバイスの磁束密度であり、線2704は、図29及び図30に関して上述した、図38に示す構成のエンドプレートがある場合の磁束密度であり、線3102は、エンドプレート2829a及び2829bがある振動デバイス2800の磁束密度である。図示するように、金属エンドプレート2829a及び2829bの使用により、本明細書に記載する他の振動デバイス(例えば、振動デバイス2500又は2600)のものと比較して、振動デバイス2800の駆動回路によって引き起こされる磁束漏れを低減させることができる。
【0141】
[0177] 振動デバイス2800は、上述した振動デバイスのいくつかにおいて記載したようなばねの代わりに、磁石2823を懸架し且つその動作を支持するように構成された懸架要素2820a及び2820b(例えば、ばね)を含む。懸架要素2820a及び2820bは、例えば、布、スパイダスプリング又は可撓性膜等、弾性及び/又は変形可能材料の環状部片であり得る。環状部片は、磁石2823に結合され、コイル2824によって発生する磁場が矢印Eに示す方向において平衡点を中心に磁石を移動させることができるように、平衡点で磁石2823を懸架するように構成され得る。懸架要素2820a及び2820bを、磁石から長手方向に延在すること(例えば、振動デバイス2500のばね2520等)とは対照的に磁石から横方向に延在させることにより、懸架要素2820a及び2820bは、デバイス2800の全高の低減を可能にしながら、矢印Eによって画定された軸の外側での磁石2823の軸外移動又は揺動も低減させることができる。図36A図36B及び図36Cは、上述したような実施形態700、2500及び2800による振動デバイスの高さの比較を例示する。さらに、懸架要素2820a及び2820bは、磁石2823の移動の軸に対して角度をなす1つ又は複数の方向において復元力を提供するために伸張及び収縮するように構成され得、それにより、懸架要素2820a及び2820bは、その1つ又は複数の方向における磁石2823の振動を低減させる。
【0142】
[0178] 図37は、一実施形態による振動デバイス3200を例示する。振動デバイス3200は、本明細書に記載した他の振動デバイス(例えば、振動デバイス500、600、700、2500、2600及び/又は2800)と構造及び/又は機能が実質的に同様であり得る。例えば、振動デバイス3200は、ハウジング3210、送達インタフェース3230並びにハウジング部分3225a及び3225bを含むことができる。振動デバイス3200は、図37に示す矢印Fの方向に沿って振動要素として作用する磁石3223を移動させる磁場を発生させるように構成された電磁コイル3224を含むことができる。
【0143】
[0179] 磁石3223は、金属エンドプレート3229a及び3229bを含むことができる。エンドプレート3229a及び3229bは、振動デバイス2800に関して記載したエンドプレート2829a及び2829bと実質的に同様であり得る。一実施形態では、金属プレート3229a及び3229bは、低炭素鋼から作製することができる。金属エンドプレート3229a及び3229bは、コイル3224に対して垂直な方向に磁力線を集中させながら、水平な方向の磁場の漂遊損失又は漏れを低減させるように構成することができる。
【0144】
[0180] 振動デバイス3200は、磁石3223を懸架し且つその移動を支持するように構成された懸架要素3220(例えば、ばね)を含むことができる。懸架要素3220は、振動デバイス2800について上述した懸架要素2820a及び2820bと構造及び/又は機能が実質的に同様であり得る。例えば、懸架要素3220は、材料の1つ又は複数の環状部片であり得る。環状部片を、図37に示すように、金属エンドプレート3229bを介して磁石3223に結合することができる。懸架要素3220は、金属エンドプレート3229bに任意の好適な方法で結合され(例えば、接着剤で接着され)、コイル3224によって発生する磁場が矢印Fに示す方向において平衡点を中心に磁石を移動させることができるように平衡点で磁石3223を懸架するように構成され得る。振動デバイス2800と同様に、懸架要素3220は、デバイス3200の全高を低減させるとともに、矢印Fによって画定される軸の外側の磁石3223の軸外移動又は揺動も低減させるように構成することができる。さらに、懸架要素3220は、エンドプレート3229bとコイル3224との間に配置されるため、図32A及び図32Bに示す振動デバイス2800に対して振動デバイス3200の横方向寸法も低減させることができる。例えば、懸架要素3220は、磁石3223の移動の軸に対して角度をなす1つ又は複数の方向において復元力を提供するために伸張及び収縮するように構成され得、それにより、懸架要素3220は、その1つ又は複数の方向における磁石3223の振動を低減させる。
【0145】
[0181] いくつかの実施形態では、磁石3223の安定性を向上させるためにさらなる構成要素(例えば、ポスト又はピン521等のピン)を追加することができ、振動デバイス500の磁石523と同様に、磁石3223を通してその構成要素を受け入れる開口部があるように磁石3223を構成することができる。
【0146】
[0182] 骨伝導振動信号の印加を通して、前庭マスキングとしても知られる、疾患を引き起こす前庭系によって送信される信号をマスキングする振動信号の印加は、多くの前庭異常を緩和するのに有効であり得る。例えば、印加される骨伝導振動信号により、損傷した前庭系によって引き起こされる回転性めまいを治療することができる。しかしながら、ときに、印加される振動信号が急に取り除かれる場合(例えば、振動デバイスがオフにされる場合)、振動信号には有害反応がある場合がある。上に詳述したもの等、いくつかの実施形態では、これらの有害反応は、デバイスを急にオフにする代わりに、ある期間、印加される振動の出力を徐々に低減する(すなわち電力に立下りがある)ことにより最小限にすることができる。
【0147】
[0183] 別の例として、前庭マスキングは、本明細書に開示したもの等、人が仮想現実デバイスを使用する場合に発生する乗り物酔いを緩和するのに有効であり得る。仮想現実デバイスは、常に乗り物酔いをもたらすものではないため、一実施形態では、本明細書に開示したもの等の振動デバイスは、乗り物酔いを引き起こすことに関連するいくつかの状態及び/又は状況が仮想現実デバイスのユーザに表示及び/又は提示されたとき、前庭系をマスキングする振動を発生させるように動作可能であり得る。振動デバイスは、例えば、振動要素を制御する専用の命令を格納するように動作可能であるマイクロコントローラによって制御することができる。こうした命令は、内蔵メモリ又は別個のメモリに格納することができる。さらに、こうした命令は、前庭系の異常の治療に関連する何らかの機能、方法及びプロセスを実行するために専用の機能及び特徴をコントローラに組み込むように設計される。一実施形態では、マイクロコントローラは、ソフトウェア開発キット(「SDK」)を使用して命令を用いてプログラムすることができる。
【0148】
[0184] マイクロコントローラにより、格納された命令に基づいて、振動信号の発生を制御及び/又は駆動する電気信号を発生させ得ることが理解されるはずである。これらの電気信号は、マイクロコントローラと振動デバイスとの間で有線又は無線(例えば、Bluetooth)方法を介して通信することができる。さらに、電気信号は、格納された動作のパターンを含むことができる。例えば、マイクロコントローラによってアクセスされる格納された命令は、マイクロコントローラにより、一連の電気信号を発生させるために使用することができ、そうした一連の電気信号は、振動要素に送信され、マイクロコントローラ及び振動要素を含むデバイスに蓄積及び格納された使用データに基づいて、所定の使用者に有利であるパターンで振動要素が「オン」又は「オフ」になるようにする。1つのパターンは、ある期間にわたり(例えば、1分間につき)発生し且つ印加される振動の回数を変更することができる一連の振動を含むことができる一方、第2パターンは、複数の振動における力レベルを変更することができる一連の振動を含むことができる。センサから受信されたデータに基づき、振動要素によって発生する振動の力レベル及び周波数を制御するために使用することができるもの等、他のタイプの電気信号を振動デバイスからマイクロコントローラに送信することができる。例えば、使用者の物理的加速度の変化を検知するために携帯電子デバイス(例えば、携帯電話)に加速度センサを含めることができる。一実施形態では、マイクロコントローラは、乗り物酔いをもたらす可能性がある加速度のタイプを示すデータを加速度センサから受信するように動作可能であり得る。したがって、マイクロコントローラは、こうしたデータを受信した後、関連する制御信号を発生させ、こうした信号を振動要素に送信するように動作可能であり得る。したがって、振動要素は、こうした制御信号を受信し、例えば先制して乗り物酔いを最小限にするために固有受容前庭系にリアルタイムで印加することができる振動を発生させるように動作可能であり得る。代わりに、マイクロコントローラ又は携帯デバイスにGPS回路とともに、使用者が乗り物酔いに起因して具合が悪くなることになる可能性がある経路又はコースを表す格納された道路地図を格納することができる。一実施形態では、GPS回路が、使用者がその経路又はコースに沿って移動しており、乗り物酔いを引き起こす可能性がある場所に達することを示すと、マイクロコントローラは、関連する制御信号を発生させ、こうした信号を振動要素に送信するように動作可能であり得る。したがって、振動要素は、こうした制御信号を受信し、例えば、例えば使用者がその場所に到達する前に乗り物酔いの可能性を考慮するように、前庭系に印加することができる振動を発生させるように動作可能であり得る。
【0149】
[0185] 対象の前庭機能を検査するために、カロリック、VNG及びENG検査を含むいくつかの異なるタイプの医学的検査が聴覚訓練士及び耳鼻咽喉科医によって施されることが留意されるべきである。検査の一部として、悪心を引き起こすマイナスの副作用を有する可能性がある、ある形態の回転性めまいは、患者において引き起こされる可能性がある。前庭マスキングを使用して、これらの検査を受けている間にこうした患者が感じる悪心を低減させることができる。したがって、本明細書に記載したデバイスを、こうした医学的検査を完了するために使用される医学的検査システムに含めることができるか、又は代わりにこうしたマイナスの副作用を軽減させるか若しくは低減させるためにこうした医学的検査システムとともに使用する(例えば、装着する)ことができる。
【0150】
[0186] いくつかの実施形態では、記載した装置及び方法は、前庭異常の治療に関連しない用途に使用することができる。例えば、振動デバイスのいくつかの実施形態は、好適な通信チャネルを使用して触覚通信を実行するデバイスとして使用することができる。場合により、無言の且つ触覚に基づく通信方法は、軍又は監視状態等において有用であり得る。振動デバイスの一実施形態は、工作員等の対象間での触覚通信を可能にするように、不可視且つ不可聴使用状態等の検出能が低下した好適な適応構造とともに使用することができる。
【0151】
[0187] 本明細書では、さまざまな発明に関する実施形態について記載し、例示したが、当業者であれば、本明細書に記載した機能を実施し、及び/又は本明細書に記載した結果及び/又は利点の1つ若しくは複数を得る種々の他の手段及び/又は構造を容易に構想すると考えられ、こうした変形形態及び/又は変更形態の各々は、本明細書に記載した発明に関する実施形態の範囲内にあるとみなされる。より全体的には、当業者であれば、本明細書に記載したすべてのパラメータ、寸法、材料及び/又は構成が例示的であるように意図されていることと、実際のパラメータ、寸法、材料及び/又は構成が、発明に関する教示が使用される1つ又は複数の所定の用途によって決まることとを容易に理解するであろう。当業者であれば、慣例に過ぎない実験を使用して、本明細書に記載した所定の発明に関する実施形態に対する多くの均等物を認識するか又は確かめることができるであろう。したがって、上述した実施形態は、単に例として提示されていることと、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物の範囲内において、発明に関する実施形態は、具体的に記載し、請求項に記載したようなもの以外の方法で実施できることとが理解されるべきである。本発明の発明に関する実施形態は、本明細書に記載した各個々の特徴、システム、物品、材料、キット及び/又は方法に関する。さらに、2つ以上のこうした特徴、システム、物品、材料、キット及び/又は方法の任意の組合せは、こうした特徴、システム、物品、材料、キット及び/又は方法、相互に一致しないものでない場合、本開示の発明の範囲内に含まれる。
【0152】
[0188] また、さまざまな発明に関する概念を1つ又は複数の方法として具現化することができ、その一例を提供した。その方法の一部として実施される行為は、任意の好適な方法で順序付けることができる。したがって、例示的な実施形態では連続した行為として示されていても、いくつかの行為を同時に実施することを含むことができる、行為が例示したものと異なる順序で実施される実施形態を構成することができる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図18
図19
図20A
図20B
図21A
図21B
図22A
図22B
図23A
図23B
図24
図25A
図25B
図25C
図26
図27A
図27B
図27C
図28A
図28B
図29
図30
図31A
図31B
図31C
図32A
図32B
図33
図34
図35
図36A
図36B
図36C
図37
図38
【外国語明細書】