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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004525
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】電気自動車
(51)【国際特許分類】
   B60L 58/26 20190101AFI20240110BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20240110BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20240110BHJP
   B60G 17/015 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B60L58/26
B60L1/00 L
B60K1/04 Z
B60G17/015 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104115
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱田 和
(72)【発明者】
【氏名】田中 寿
【テーマコード(参考)】
3D235
3D301
5H125
【Fターム(参考)】
3D235AA01
3D235BB30
3D235BB36
3D235BB43
3D235BB45
3D235CC14
3D235DD35
3D235FF12
3D235GB22
3D301DA14
3D301EA69
5H125AA01
5H125AB01
5H125AC12
5H125AC23
5H125BC19
5H125BC25
5H125CA00
5H125CD07
5H125DD01
5H125DD02
5H125EE25
5H125EE64
5H125FF04
(57)【要約】
【課題】低温環境下に電気自動車が置かれる場合における高電圧バッテリの温度低下を抑制可能な電気自動車を提供する。
【解決手段】フロアパネルの下部にバッテリユニットを搭載した電気自動車は、電気自動車の車体の高さを可変とする車高調節装置と、車高調節装置を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、電気自動車の停止時に車高を下げてバッテリユニットと路面との間への通風を抑制する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアパネルの下部にバッテリユニットを搭載した電気自動車であって、
前記電気自動車の車体の高さを可変とする車高調節装置と、
前記車高調節装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記電気自動車の停止時に前記車高を下げて前記バッテリユニットと路面との間への通風を抑制する、電気自動車。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記電気自動車の停止時に前記バッテリユニットを構成するバッテリの温度が所定の温度閾値以下になるか否かを判定し、前記バッテリの温度が前記所定の温度閾値以下になると判定された場合に前記車高を下げる処理を実行する、請求項1に記載の電気自動車。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記電気自動車の停止時に、前記バッテリの温度、及び、将来の外気温の情報を取得し、取得した前記バッテリの温度、及び、前記将来の外気温の情報に基づいて前記バッテリの温度が所定の温度閾値以下になるか否かを判定する、請求項2に記載の電気自動車。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記電気自動車の周囲環境を検出する周囲環境センサにより検出された周囲環境情報に基づいて、前記車高を下げた場合に前記バッテリユニットが損傷を受けるか否かを判定し、前記バッテリユニットが損傷を受けないと判定されたときに前記車高を下げる処理を実行する、請求項1に記載の電気自動車。
【請求項5】
前記路面に対向する前記バッテリユニットの下面の外周部に、前記車高を下げたときに前記路面に接地するシール部材を備える、請求項1に記載の電気自動車。
【請求項6】
前記電気自動車は、前記路面に散布液を散布する液体散布装置を備え、
前記制御装置は、前記電気自動車の停止時に前記バッテリユニットが位置する範囲の前記路面に対して前記散布液を散布して前記路面の温度を上昇させた後に前記車高を下げる処理を実行する、請求項1に記載の電気自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フロアパネルの下部にバッテリユニットを搭載した電気自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動力源として駆動用モータを備えた電気自動車では、駆動用モータの電力源である高電圧バッテリがフロアパネルの下部に搭載される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-146852号公報
【特許文献2】特開2019-167061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、電気自動車では、高電圧バッテリの入出力性能が車両の走行性能に影響を与えることが知られている。例えば高電圧バッテリは、低温になると入出力性能が低下し、駆動用モータから出力される駆動トルクや駆動用モータの回生による制動力が制限される場合がある。したがって、極低温環境下に電気自動車が放置されると、高電圧バッテリが低温になり、電気自動車の使用時に走行性能が低下するおそれがある。
【0005】
本開示は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本開示の目的とするところは、低温環境下に電気自動車が置かれる場合における高電圧バッテリの温度低下を抑制可能な電気自動車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある観点によれば、
フロアパネルの下部にバッテリユニットを搭載した電気自動車であって、
前記電気自動車の車体の高さを可変とする車高調節装置と、
前記車高調節装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記電気自動車の停止時に前記車高を下げて前記バッテリユニットと路面との間への通風を抑制する、電気自動車が提供される。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように本開示によれば、低温環境下に電気自動車が置かれる場合における高電圧バッテリの温度低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の第1の実施の形態に係る電気自動車の構成例を示す模式図である。
図2】同実施形態に係る電気自動車におけるバッテリの配置位置を示す説明図である。
図3】同実施形態に係る電気自動車の制御装置の構成例を示すブロック図である。
図4】同実施形態に係る電気自動車の制御装置による駐車時の処理を示すフローチャートである。
図5】同実施形態に係る電気自動車の車高を下げた状態を示す説明図である。
図6】同実施形態に係る電気自動車の制御装置による運転開始時の処理を示すフローチャートである。
図7】本開示の第2の実施の形態に係る電気自動車の構成例を示す模式図である。
図8】同実施形態に係る電気自動車の制御装置の構成例を示すブロック図である。
図9】同実施形態に係る電気自動車の制御装置による駐車時の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<<1.本開示の実施の形態の特徴>>
(1-1)本開示の実施の形態は、フロアパネルの下部にバッテリユニットを搭載した電気自動車であって、
前記電気自動車の車体の高さを可変とする車高調節装置と、
前記車高調節装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記電気自動車の停止時に前記車高を下げて前記バッテリユニットと路面との間への通風を抑制する、構成を有している。
【0010】
なお、本開示の実施の形態は、電気自動車の停止時に車高を下げてバッテリユニットと路面との間への通風を抑制する制御(以下、「バッテリ保護処理」ともいう)を実行する制御装置、プロセッサにバッテリ保護処理を実行させるコンピュータプログラム、及び、当該コンピュータプログラムを記録した記録媒体としても実現可能である。
【0011】
この構成により、本開示の電気自動車は、駐車中の電気自動車の床下への風の流れを抑制することができる。このため、低温環境下に電気自動車が置かれる場合であっても、フロアパネルの下部に搭載されたバッテリユニットが冷風に晒されることによるバッテリの温度低下を抑制することができる。したがって、電気自動車の運転開始時に高電圧バッテリの入出力性能の低下を防ぎ、電気自動車の走行性能の低下を抑制することができる。また、電気自動車の運転開始時に高電圧バッテリの入出力性能の低下を防ぎ、高電圧バッテリの急速充電性能の向上を図ることができる。
【0012】
(1-2)また、本開示の実施の形態において、
前記制御装置は、
前記電気自動車の停止時に前記バッテリユニットを構成するバッテリの温度が所定の温度閾値以下になるか否かを判定し、前記バッテリの温度が前記所定の温度閾値以下になると判定された場合に前記車高を下げる処理を実行してもよい。
【0013】
この構成により、高電圧バッテリの入出力性能が低下するおそれがある場合に確実に床下への風の流れを抑制することができるとともに、高電圧バッテリの入出力性能が低下するおそれがない場合に、不要な処理が実行されることを抑制することができる。
【0014】
なお、「バッテリの温度」とは、代表的にはバッテリ及びバッテリコントローラを含むバッテリユニットに設けられた温度センサにより検出されるバッテリの温度であるが、バッテリの温度の検出方法あるいは算出方法は特に限定されるものではない。また、本開示の実施の形態では、バッテリユニットに含まれるバッテリが、電気自動車に搭載された例えば定格20Vの補機用バッテリよりも定格電圧が高い高電圧バッテリである例を説明する。
【0015】
(1-3)また、本開示の実施の形態において、
前記制御装置は、
前記電気自動車の停止時に、前記バッテリの温度、及び、外気温又は路面温度を取得し、取得した前記バッテリの温度、及び、前記外気温又は前記路面温度に基づいて前記バッテリの温度が所定の温度閾値以下になるか否かを判定してもよい。
【0016】
この構成により、電気自動車の停止時のバッテリの状態及び周囲環境の温度に基づいて、電気自動車の駐車中にバッテリの温度の低下を推定することができ、高電圧バッテリの入出力性能が低下するおそれがあるか否かを精度よく推定することができる。
【0017】
(1-4)また、本開示の実施の形態において、
前記制御装置は、
前記電気自動車の周囲環境を検出する周囲環境センサにより検出された周囲環境情報に基づいて、前記車高を下げた場合に前記バッテリユニットが損傷を受けるか否かを判定し、前記バッテリユニットが損傷を受けないと判定されたときに前記車高を下げる処理を実行してもよい。
【0018】
この構成により、電気自動車の車高を下げたときに、路面上に存在する障害物等によってバッテリユニットが損傷を受けることを防ぐことができる。
【0019】
(1-5)また、本開示の実施の形態において、
前記路面に対向する前記バッテリユニットの下面の外周部に、前記車高を下げたときに前記路面に接地するシール部材を備えてもよい。
【0020】
この構成により、電気自動車の車高を下げたときにバッテリユニットが路面からの衝撃を受けて損傷することを防ぐことができるとともに、シール部材を路面に押さえつけることによりバッテリユニットの下面の領域への風の流れをさらに抑制することができる。
【0021】
(1-6)また、本開示の実施の形態において、
前記電気自動車は、前記路面に散布液を散布する液体散布装置を備え、
前記制御装置は、前記電気自動車の停止時に前記バッテリユニットが位置する範囲の前記路面に対して前記散布液を散布して前記路面の温度を上昇させた後に前記車高を下げる処理を実行してもよい。
【0022】
この構成により、電気自動車の車高を下げる前にあらかじめ路面温度を上昇させることができ、路面温度が低い場合に冷えた路面によってバッテリの温度が低下することを抑制することができる。
【0023】
<<2.本開示の実施形態の詳細>>
以下、添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0024】
<2-1.第1の実施の形態>
(2-1-1.電気自動車の構成)
図1及び図2を参照して、本開示の実施の形態に係る電気自動車の構成の一例を説明する。図1は、本実施形態に係る電気自動車(以下、単に「車両」ともいう)1の構成要素を模式的に示した説明図である。図2は、電気自動車1に搭載されたバッテリユニット30の配置位置を簡略的に示した説明図である。
【0025】
車両1は、バッテリユニット30、車高調節装置20、前方撮影カメラ41F、後方撮影カメラ41R及び制御装置50を備えている。この他、電気自動車1は、図示しない駆動用モータ、インバータ及びモータ制御装置を備え、駆動用モータから出力される駆動トルクにより走行する。モータ制御装置は、インバータを制御することにより高電圧バッテリ31から駆動用モータへの供給電力を制御し、駆動輪に伝達する駆動トルクを発生させる。また、モータ制御装置は、インバータを制御することにより駆動用モータを回生駆動して、高電圧バッテリ31に充電する回生発電電力を発生させる。
【0026】
なお、車両1は、前輪駆動用のモータ及び後輪駆動用のモータをそれぞれ備えていてもよく、前輪駆動用のモータ及び後輪駆動用のうちのいずれか一方のみを備えていてもよく、四つの車輪を駆動する一つの駆動用モータを備えていてもよく、四つの車輪それぞれに対応する四つの駆動用モータを備えていてもよい。
【0027】
バッテリユニット30は、高電圧バッテリ31と、バッテリ制御装置33と、バッテリ温度センサ35とを含む。高電圧バッテリ31は、複数のバッテリセルを電気的に接続して構成される。バッテリ温度センサ35は、バッテリユニット30内の所定の位置に設けられ、温度に応じたセンサ信号をバッテリ制御装置33へ出力する。本実施形態では、バッテリ温度センサ35により検出される温度を「バッテリ温度」という。
【0028】
バッテリ制御装置33は、高電圧バッテリ31の出力電圧、出力電流、残容量(SOC:State Of Charge)及び温度等を検出し、図示しないモータ制御装置及び制御装置50へ検出した情報を送信する。また、バッテリ制御装置33は、バッテリユニット30に備えられた図示しないバッテリ冷却装置の駆動を制御し、高電圧バッテリ31を冷却する制御を実行可能に構成されてもよい。
【0029】
図2は、車両1の底部、及び、車両1の底部を車幅方向及び車長方向にそれぞれ切断した断面を模式的に示している。図2に示したように、バッテリユニット30は、フロアパネル5の下部に設けられ、車室側に凹むように形成されたスペースに搭載されている。バッテリユニット30の下面の外周部には、シール部材37が設けられている。シール部材37は、例えば所定の弾性を有する樹脂からなる部材であり、車両1の車高を下げたときに路面Gに接地し、バッテリユニット30の損傷を防ぐとともに、バッテリユニット30の下面の領域への風の流れを抑制する機能を有する。
【0030】
図2に示した例では、シール部材37は、バッテリユニット30の下面の外周部だけでなく、外周部の内側にも十字状に設けられている。これにより、バッテリユニット30の下面が複数の領域に区分され、風の流れを遮る位置が多くなるように構成され、風の流れがより侵入しにくくされている。
【0031】
車高調節装置20は、車両1の車高を可変とする装置として構築されている。本実施形態では、車高調節装置20は、前輪3F及び後輪3R(以下、特に区別を要しない場合には「車輪3」と総称する)を懸架するエアサスペンション10F,10Rを利用して構成されている。具体的に、車高調節装置20は、エアサスペンション10F,10R、エアタンク21、コンプレッサ23、エアホース25及びバルブユニット27を備えている。エアサスペンション10F,10Rは、それぞれエアバッグ11を備え、エアバッグ11内に圧縮空気を送ることでエアバッグ11を膨らませ、車輪3が路面Gから受ける衝撃や振動を吸収し和らげる。また、エアバッグ11内に送る圧縮空気の量を調節することにより、車両1の車高を調節することができる。
【0032】
コンプレッサ23は、空気を加圧してエアタンク21へ充填する。エアタンク21及びコンプレッサ23は、エアホース25を介してエアサスペンション10F,10Rのエアバッグに接続されている。バルブユニット27は、複数の電子制御弁を備えて構成されている。バルブユニット27の駆動は制御装置50により制御され、エアバッグ11への圧縮空気の供給及びエアバッグ11からの圧縮空気の排出が行われる。エアサスペンション10F,10Rは、公知の構成のエアサスペンションであってよいが、少なくとも、エアバッグ11から圧縮空気を排出することにより、車両1の床下に搭載されたバッテリユニット30が接地可能な高さまで車高を下げることができるように構成されている。
【0033】
前方撮影カメラ41F及び後方撮影カメラ41Rは、それぞれCCD(Charged Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の撮像素子を備え、車両1の前方あるいは後方を撮影して画像データを生成する。前方撮影カメラ41F及び後方撮影カメラ41Rは、生成した画像データを制御装置50へ送信する。前方撮影カメラ41F及び後方撮影カメラ41Rにより生成された画像データは、車両1の周囲環境情報に相当する。
【0034】
なお、例えば前方撮影カメラ41Fは、単眼カメラであってもよく、左右一対のステレオカメラであってもよい。また、本開示の技術においては、前方撮影カメラ41F及び後方撮影カメラ41Rのいずれか一方のみが設けられていてもよく、撮影方向についても前方又は後方に限られない。また、例えばサイドミラーに設けられて、車両1の斜め後方を撮影するカメラが設けられていてもよい。さらに、車両1の床下を撮影するカメラが設けられていてもよい。
【0035】
制御装置50は、一つ又は複数のCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサがコンピュータプログラムを実行することで車両1の駐車中の高電圧バッテリ31の温度低下を抑制する制御(以下、「バッテリ保護処理」ともいう)を実行する装置として機能する。当該コンピュータプログラムは、制御装置50が実行すべき後述する動作をプロセッサに実行させるためのコンピュータプログラムである。プロセッサにより実行されるコンピュータプログラムは、制御装置50に備えられたメモリとして機能する記録媒体に記録されていてもよく、制御装置50に内蔵された記録媒体又は制御装置50に外付け可能な任意の記録媒体に記録されていてもよい。
【0036】
コンピュータプログラムを記録する記録媒体としては、ハードディスク、フロッピーディスク及び磁気テープ等の磁気媒体、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、SSD(Solid State Drive)及びBlu-ray(登録商標)等の光記録媒体、フロプティカルディスク等の磁気光媒体、RAM及びROM等の記憶素子、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等のフラッシュメモリ、その他のプログラムを格納可能な媒体であってよい。
【0037】
制御装置50には、前方撮影カメラ41F及び後方撮影カメラ41Rから送信される画像データが入力される。制御装置50には、バッテリ制御装置33から送信されるバッテリ温度の情報が入力される。また、制御装置50は、GPS(Global Positioning System)センサ等のGNSS(Global Navigation Satellite System)センサ45から送信される車両1の位置情報を取得可能に構成されている。さらに、制御装置50は、移動体通信手段を介してテレマティクスサービスシステムのサーバ43と通信可能に構成されている。テレマティクスサービスは、種々の情報を車両1に提供するシステムである。本実施形態では、制御装置50は、少なくとも将来の外気温の情報をサーバ43から取得する。
【0038】
(2-1-2.制御装置)
続いて、制御装置50の構成例を具体的に説明する。
図3は、制御装置50の機能構成を示すブロック図である。
【0039】
制御装置50は、処理部51、記憶部61及び通信部63を備える。処理部51は、一つ又は複数のプロセッサを含み、バッテリ保護処理を実行する。処理部51の一部又は全部は、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。記憶部61は、処理部51と通信可能に接続された一つ又は複数のRAM又はROM等のメモリを備え、処理部51により実行されるコンピュータプログラムや演算処理に用いられる各種パラメータ、演算結果の情報を記憶する。ただし、記憶部61の数や種類は特に限定されない。通信部63は、図示しない移動体通信網を介して、テレマティクスサービスシステムのサーバ43と通信するためのインタフェースである。
【0040】
また、本実施形態では、制御装置50には、通知装置47が接続されている。通知装置47は、車両1の乗員及び車両1の周囲に対して所定の通知を行うための装置である。通知装置47は、例えば音声又は音を出力するスピーカーであってもよく、光を出力するランプであってもよく、画像やテキストを表示する表示装置であってもよい。
【0041】
処理部51は、外気温情報取得部53、バッテリ温度取得部55、温度低下判定部57及び高さ調節処理部59を備える。これらの各部の機能は、プロセッサによるコンピュータプログラムの実行により実現される。ただし、これらの各部の一部が、アナログ回路等のハードウェアにより構成されてもよい。
【0042】
(外気温情報取得部)
外気温情報取得部53は、テレマティクスサービスのサーバ43から、車両1の駐車位置を含むエリアの将来の外気温の情報を取得する。例えば外気温情報取得部53は、GNSSセンサ45により検出される位置情報を車両1の識別IDとともにサーバ43へ送信し、車両1の現在位置を含むエリアの外気温の情報を含む気象情報をサーバ43から取得する。なお、将来の外気温の情報を取得する手段は、テレマティクスサービスのサーバ43との通信に限られるものではない。気象情報を発信する任意の外部システムから将来の外気温の情報が取得されるように構成されていればよい。
【0043】
(バッテリ温度取得部)
バッテリ温度取得部55は、バッテリ制御装置33から送信されるバッテリ温度の情報を取得する。
【0044】
(温度低下判定部)
温度低下判定部57は、将来の外気温の情報及びバッテリ温度の情報に基づいて、車両1の駐車中に、バッテリ温度が所定の温度閾値以下になるか否かを判定する。例えば温度低下判定部57は、現在のバッテリ温度と将来の外気温の変化に基づいて、将来のバッテリ温度の推移を演算により求め、直近で予測されるバッテリ温度の最下点を予測する。より具体的に、温度低下判定部57は、外気温が低下する期間において、バッテリ温度と外気温との温度差に基づいて、時々刻々と低下するバッテリ温度の低下速度を求め、バッテリ温度の最下点を予測する。ただし、バッテリ温度の最下点の予測方法は特に限定されるものではなく、種々の演算方法が用いられてよい。
【0045】
そして、温度低下判定部57は、予測したバッテリ温度の最下点が所定の温度閾値以下であるか否かを判定する。所定の温度閾値は、高電圧バッテリ31の入出力性能が許容範囲を超えて低下し得る温度の値としてあらかじめ任意の値に設定されてよいが、例えば-10~0℃の範囲内の値に設定される。
【0046】
(高さ調節処理部)
高さ調節処理部59は、温度低下判定部57により、車両1の駐車中にバッテリ温度が所定の温度閾値以下になると判定された場合に、車高調節装置20を駆動して車高を下げる処理を実行する。本実施形態では、高さ調節処理部59は、エアサスペンション10F,10Rのエアバッグ11から圧縮空気を排出することにより、車両1の車高を下げる。高さ調節処理部59は、車両1が完全に停車し、車両1の駆動システムのスイッチがオフになった後に、車高を下げる処理を実行する。これにより、車両1の床下に搭載されたバッテリユニット30と路面Gとの間への通風が抑制され、バッテリ温度の低下を抑制することができる。
【0047】
本実施形態では、高さ調節処理部59は、前方撮影カメラ41F及び後方撮影カメラ41Rにより取得された周囲環境情報に基づいて、車両1の車高を下げた場合に、バッテリユニット30が損傷を受けるおそれがあるか否かを判定する。具体的に、高さ調節処理部59は、周囲画像に基づいて、車両1の駐車位置に障害物が存在するか否かを判定する。より具体的には、例えば直前の所定時間(例えば30秒)の周囲画像のデータが逐次保存されるように構成され、高さ調節処理部59は、車高を下げる処理を実行する際に、車両1が駐車位置に駐車する際の軌跡に基づいて、保存されている周囲画像のデータにおける車両1の駐車位置を特定し、当該駐車位置に突出している箇所があるか否かを判定する。
【0048】
あるいは、あらかじめ駐車位置の情報が地図データ上に記録されており、高さ調節処理部59は、車両1の軌跡と駐車位置の情報に基づいて、保存されている周囲画像のデータにおける車両1の駐車位置を特定し、当該駐車位置に突出している箇所があるか否かを判定してもよい。車両1が、床下を撮影するカメラを備えている場合には、車両1が駐車した状態で、当該駐車位置に突出している箇所があるか否かを判定することができる。
【0049】
そして、高さ調節処理部59は、車高を下げた場合であってもバッテリユニット30が損傷を受けないと判定されたときに、車高を下げる処理を実行する。これにより、路面上の突出している箇所からバッテリユニット30が衝撃を受けることでバッテリユニット30が損傷することを防ぐことができる。
【0050】
また、高さ調節処理部59は、前方撮影カメラ41F及び後方撮影カメラ41Rにより取得された周囲画像に基づいて、車両1の近くに人や動物が存在するか否かを判定し、人や動物が存在しないと判定したときに車高を下げる処理を実行してもよい。これにより、車両1の車高を下げることによって、人や動物等に危険を感じさせることを防ぐことができる。なお、高さ調節処理部59は、車両1の近くに人や動物が存在する場合、車高を下げることを知らせる警告音や音声等による通知を通知装置47から出力した後に、あるいは出力しながら、車高を下げる処理を実行してもよい。
【0051】
このとき、バッテリユニット30の下面が路面Gに接地するようにあらかじめエアバッグ11の圧縮量(ストローク量)が決まっている場合、高さ調節処理部59は、あらかじめ設定された任意の時間が経過した後で圧縮空気を排出する処理を終了させる。あるいは、例えばバッテリユニット30の下面に備えられたシール部材37の内部、あるいは、バッテリユニット30のケースのうちのシール部材37が取り付けられる箇所に圧力センサが設けられる場合、高さ調節処理部59は、バッテリユニット30が路面Gに対して押し付けられる圧力があらかじめ設定された所定値に到達したときに、エアバッグ11からの圧縮空気の排出を停止してもよい。当該所定値は、例えばエアバッグ11からの圧縮空気の排出を停止してから実際に車高の低下が停止するまでの時間差を考慮して、あらかじめ適切な値に設定される。これにより、車両1の重量によりバッテリユニット30に過度の負荷がかかり、バッテリユニット30が損傷することを防ぐことができる。
【0052】
(2-1-3.動作)
続いて、本実施形態に係る制御装置50の処理動作を具体的に説明する。
【0053】
(駐車時の処理動作)
図4は、車両1の駐車時の処理動作を示すフローチャートである。
まず、処理部51は、バッテリ保護処理を開始するか否かを判定する(ステップS11)。例えば処理部51は、車両1が停止し、駆動システムのスイッチがオフにされたときに、バッテリ保護処理を開始すると判定してもよい。あるいは、処理部51は、車両1が停止し、乗員によりバッテリ保護処理の作動スイッチがオンにされたときにバッテリ保護処理を開始すると判定してもよい。さらに、処理部51は、GNSSセンサ45から送信される車両1の位置情報に基づいて、車両1があらかじめ設定された駐車位置あるいはバッテリ保護処理実行位置に到着し、停止したときに、バッテリ保護処理を開始すると判定してもよい。
【0054】
次いで、バッテリ温度取得部55は、バッテリ制御装置33から送信されるバッテリ温度T_b_actの情報を取得する(ステップS13)。取得されるバッテリ温度T_b_actは、車両1が停止した時刻でのバッテリ温度T_b_actを示す。
【0055】
次いで、外気温情報取得部53は、テレマティクスサービスのサーバ43から、車両1の駐車位置を含むエリアの将来の外気温T_a_estの情報を取得する(ステップS15)。具体的に、外気温情報取得部53は、GNSSセンサ45により検出される車両1の位置情報を車両1の識別IDとともにサーバ43へ送信し、サーバ43から提供される外気温T_a_estの情報を含む気象情報を取得する。
【0056】
次いで、温度低下判定部57は、将来の外気温T_a_estの情報及びバッテリ温度T_b_actの情報に基づいて、車両1の駐車中に、予測されるバッテリ温度T_b_estが所定の温度閾値T_b_low以下になるか否かを判定する(ステップS17)。例えば温度低下判定部57は、バッテリ温度T_b_actと外気温T_a_estとバッテリ温度の低下速度ΔT_bとの関係をあらかじめ定めて記憶部61に記憶されたデータを参照し、時々刻々と低下するバッテリ温度の低下速度ΔT_bを求め、予測されるバッテリ温度T_b_estの最下点T_b_minを予測する。そして、温度低下判定部57は、予測したバッテリ温度T_b_estの最下点T_b_minが、所定の温度閾値T_b_low以下であるか否かを判定する。
【0057】
ドライバ等の車両1の使用者が車両1を駐車する時間をあらかじめ入力可能に構成されている場合、温度低下判定部57は、当該時間内でのバッテリ温度T_b_estの最下点T_b_minを予測してもよい。あるいは、温度低下判定部57は、車両1の使用履歴を参照し、例えば曜日ごとの車両1の使用時間帯の情報を取得し、車両1が駐車されてから次に使用されるまでの時間におけるバッテリ温度T_b_estの最下点T_b_minを予測してもよい。
【0058】
予測されるバッテリ温度T_b_estが所定の温度閾値T_b_low以下になると判定されない場合(S17/No)、車両1の駐車中に、バッテリ温度が低下することによる高電圧バッテリ31の劣化のおそれがないと考えられることから、処理部51は、バッテリ保護処理を終了する。
【0059】
一方、予測されるバッテリ温度T_b_estが所定の温度閾値T_b_low以下になると判定された場合(S17/Yes)、高さ調節処理部59は、車両1の周囲環境情報を取得する。具体的に、高さ調節処理部59は、前方撮影カメラ41F及び後方撮影カメラ41Rから送信される現在の周囲画像を取得するとともに、車両1が停車する直前の所定時間(例えば30秒)の周囲画像を記憶部61から読み出す。
【0060】
次いで、高さ調節処理部59は、周囲環境情報に基づいて、車両1の車高を下げた場合に、バッテリユニット30が損傷を受けるおそれがあるか否かを判定する(ステップS21)。具体的に、高さ調節処理部59は、例えば車両1が駐車位置に駐車する際の軌跡に基づいて、直前の所定時間(例えば30秒)の周囲画像中の車両1の駐車位置を特定するとともに、画像処理により当該駐車位置に突出している箇所があるか否かを判定する。突出している箇所は、路面Gの凹凸であってもよく、障害物であってもよい。
【0061】
あるいは、あらかじめ駐車位置の情報が地図データ上に記録されている場合、高さ調節処理部59は、車両1の軌跡と駐車位置の情報に基づいて、保存されている周囲画像中の車両1の駐車位置を特定し、当該駐車位置に突出している箇所があるか否かを判定してもよい。車両1が、床下を撮影するカメラを備えている場合には、車両1が駐車した状態で当該カメラにより取得される画像データに基づいて、当該駐車位置に突出している箇所があるか否かを判定することができる。
【0062】
車両1の車高を下げた場合に、バッテリユニット30が損傷を受けるおそれがあると判定された場合(S21/Yes)、バッテリユニット30の損傷を防ぐことを優先して、高さ調節処理部59は、車両1の車高を下げる処理を実行することなくバッテリ保護処理を終了させる。
【0063】
一方、車両1の車高を下げた場合に、バッテリユニット30が損傷を受けるおそれがあると判定されない場合(S21/No)、高さ調節処理部59は、周囲環境情報に基づいて、車両1の周囲に人や動物が存在するか否かを判定する(ステップS23)。例えば高さ調節処理部59は、前方撮影カメラ41F及び後方撮影カメラ41Rから送信される現在の周囲画像に基づいて、車両1の近傍(例えば1m以内)及び車両1の床下に人や動物が存在するか否かを判定する。
【0064】
車両1の周囲に人や動物が存在すると判定された場合(S23/Yes)、高さ調節処理部59は、通知装置47の駆動を制御し、車両1の車高を下げることを通知する処理(通知処理)を実行する(ステップS25)。高さ調節処理部59は、通知処理を実行した後、ステップS23に戻って、再び車両1の周囲に人や動物が存在するか否かを判定する(ステップS23)。高さ調節処理部59は、車両1の周囲に人や動物が存在すると判定されなくなるまで、ステップS23及びステップS24の処理を繰り返す。
【0065】
車両1の周囲に人や動物が存在すると判定されない場合(S23/No)、高さ調節処理部59は、車高調節装置20の駆動を制御し、車両1の高さを下げる処理を実行する(ステップS27)。具体的に、高さ調節処理部59は、バルブユニット27に備えられた排気弁を開放し、エアサスペンション10F,10Rのエアバッグ11から圧縮空気を排出することにより、車両1の車高を下げる。これにより、図5に示すように、バッテリユニット30の下面に備えられたシール部材37が路面Gに当接し、バッテリユニット30が搭載された車両1の床下への風の流れを遮ることができる。したがって、車両1の駐車中に外気によってバッテリ温度が低下し、高電圧バッテリ31が劣化することを防ぐことができる。
【0066】
バッテリユニット30の下面が路面Gに接地するようにあらかじめエアバッグ11の圧縮量(ストローク量)が決まっている場合、高さ調節処理部59は、あらかじめ設定された任意の時間が経過した後で圧縮空気を排出する処理を終了させる。あるいは、例えばバッテリユニット30の下面に備えられたシール部材37の内部、あるいは、バッテリユニット30のケースのうちのシール部材37が取り付けられる箇所に圧力センサが設けられる場合、高さ調節処理部59は、バッテリユニット30が路面Gに対して押し付けられる圧力があらかじめ設定された所定値に到達したときに、エアバッグ11からの圧縮空気の排出を停止してもよい。当該所定値は、例えばエアバッグ11からの圧縮空気の排出を停止してから実際に車高の低下が停止するまでの時間差を考慮して、あらかじめ適切な値に設定される。これにより、車両1の重量によりバッテリユニット30に過度の負荷がかかり、バッテリユニット30が損傷することを防ぐことができる。
【0067】
なお、圧力センサの代わりに、車両1の底部から路面Gまでの高さを計測する距離センサを用いて、バッテリユニット30が路面Gに接した状態で車高の低下が停止するように、圧縮空気の排出を停止するタイミングを判定してもよい。
【0068】
高さ調節処理部59は、車両1の車高を下げる処理を実行した後、車高を下げる処理を実行したことを示すフラグ(車高低下実行フラグ)をセットし(車高低下実行フラグを立て)、一連のバッテリ保護処理の動作を終了させる。
【0069】
(運転開始時の処理動作)
図6は、車両1の運転開始時の処理動作を示すフローチャートである。
処理部51は、車両1のシステムのスイッチが起動すると(ステップS31)、車両1の車高が下げられた状態か否かを判定する(ステップS33)。具体的に、処理部51は、車高低下実行フラグがセットされている場合、車両1の車高が下げられた状態であると判定する。車両1の車高が下げられた状態であると判定されない場合(S33/No)、車両1の車高は、走行可能な状態となっているため、処理部51は、車両1の走行を許可するフラグ(走行許可フラグ)をセットする(ステップS37)。
【0070】
車両1の車高が下げられた状態であると判定された場合(S33/Yes)、高さ調節処理部59は、車両1の車高を、車両1が走行可能な高さへと復帰させる処理を実行する(ステップS35)。例えば高さ調節処理部59は、車両1の駐車時に車高を下げる処理を実行する前の状態として記録されているエアサスペンション10F,10Rのストローク量となるように、コンプレッサ23及びバルブユニット27の駆動を制御して、車両1の車高を復帰させる。エアサスペンション10F,10Rのストローク量は、例えばストロークセンサにより検出することができるが、エアバッグ11に供給される圧縮空気の圧力に基づいてストローク量を推定してもよい。
【0071】
車両1の車高を復帰させた後、処理部51は、車両1の走行を許可するフラグ(走行許可フラグ)をセットする(ステップS37)。これにより、図示しない車両1の駆動システムが車両1を走行させることが可能な状態となる。
【0072】
以上説明した本実施形態に係る電気自動車1は、駐車中の電気自動車1の床下への風の流れを抑制することができる。このため、低温環境下に電気自動車1が置かれる場合であっても、床下に搭載されたバッテリユニット30が冷風に晒されることによるバッテリ温度の低下を抑制することができる。したがって、電気自動車1の運転開始時に高電圧バッテリ31の入出力性能の低下を防ぎ、電気自動車1の走行性能の低下を抑制することができる。また、電気自動車1の運転開始時に高電圧バッテリ31の入出力性能の低下を防ぎ、高電圧バッテリ31の急速充電性能の向上を図ることができる。
【0073】
<2-2.第2の実施の形態>
第2の実施の形態に係る電気自動車は、路面に散布液を散布する液体散布装置を備え、制御装置は、電気自動車の停止時にバッテリユニットが位置する範囲の路面に対して散布液を散布して路面の温度を上昇させた後に車高を下げる処理を実行可能に構成される。以下、第1の実施の形態に係る電気自動車の構成と異なる部分について詳しく説明する。
【0074】
図7は、第2の実施の形態に係る電気自動車(以下、単に「車両」ともいう)1Aの構成要素を模式的に示した説明図である。
本実施形態の車両1Aは、第1の実施の形態に係る電気自動車1に対して、さらに液体散布装置80が備えられている。液体散布装置80は、液タンク81及び液噴射ノズル83を備え、制御装置50Aにより駆動されて、バッテリユニット30の下方の路面Gに対して液体を散布可能に構成されている。液体は、例えば水であってよいが、冷えた路面温度を上昇可能な液体であれば特に限定されるものではない。液タンク81は、車両1Aの使用者が適宜のタイミングで液体を補充可能に構成されていてもよく、雨水を貯留可能に構成されていてもよい。本実施形態では、液体が水である場合の例を説明する。
【0075】
図7に示した液噴射ノズル83は、便宜上、後輪3Rの後方に設けられて路面Gに液体を散布する状態で示されているが、液噴射ノズル83による液体の噴射方向は、バッテリユニット30の下方に向けられる。液噴射ノズル83は、バッテリユニット30の下方の路面Gの全体に亘って水を散布可能に設けられる。液噴射ノズル83は、一つであってもよく、複数であってもよい。
【0076】
液体散布装置80は、液タンク81から液噴射ノズル83へ水を圧送する電動ポンプを備え、制御装置50Aにより電動ポンプを駆動して水を圧送するとともに、電磁駆動式の液噴射ノズル83を開閉駆動することで、水を散布可能に構成される。あるいは、制御装置50Aにより電動ポンプを駆動して水を圧送し、圧送される水の圧力が液噴射ノズル83の開弁圧を超えたときに圧力バランスで液噴射ノズル83が開弁し、水が散布されるように構成されていてもよい。
【0077】
図8は、本実施形態に係る電気自動車1Aに適用される制御装置50Aの機能構成を示すブロック図である。
本実施形態の制御装置50Aは、第1の実施の形態の制御装置50に対して、さらに液体散布装置80の駆動を制御する液体散布処理部58の機能が備えられている。液体散布処理部58は、温度低下判定部57により、車両1Aの駐車中に、バッテリ温度が所定の温度閾値以下になると判定され、高さ調節処理部59により車両1Aの車高を下げる処理が実行される前に、液体散布装置80の駆動を制御し、バッテリユニット30の下方の路面Gに対して水を散布する処理を実行する。
【0078】
続いて、本実施形態に係る制御装置50Aによる車両1Aの駐車時の処理動作を説明する。
【0079】
図9は、車両1Aの駐車時の処理動作を示すフローチャートである。
制御装置50Aは、第1の実施の形態の制御装置50による処理動作と同様の手順で、車両1Aの駐車中に、予測されるバッテリ温度T_b_estが所定の温度閾値T_b_low以下になるか否かを判定するとともに、車両1Aの車高を下げた場合に、バッテリユニット30が損傷を受けるおそれがあるか否かを判定する(ステップS11~ステップS21)。
【0080】
ステップS21において、車両1Aの車高を下げた場合に、バッテリユニット30が損傷を受けるおそれがあると判定されない場合(S21/No)、液体散布処理部58は、液体散布装置80の駆動を制御し、バッテリユニット30の下方の路面Gに対して水を散布する処理を実行する(ステップS22)。例えば液体散布処理部58は、あらかじめ設定された時間が経過するまでの間、水を散布する。水の散布量、あるいは、散布時間は、現在の外気温が低いほど、散布量が多くなるように設定されてもよい。
【0081】
水の散布する処理が実行された後、高さ調節処理部59は、周囲環境情報に基づいて、車両1Aの周囲に人や動物が存在するか否かを判定し、人や動物が存在する場合には通知処理を実行しつつ、人や動物が存在しない場合に、車両1Aの高さを下げる処理を実行する(ステップS23~ステップS27)。
【0082】
上記のステップS22の処理が追加される以外、その他のステップS11~ステップS27の処理は、第1の実施の形態に係る制御装置50による処理動作と同様であってよい。また、車両1Aの運転を開始する際の処理動作は、図6に示した処理動作と同様であってよい。
【0083】
以上説明した本実施形態に係る電気自動車1Aは、第1の実施の形態に係る電気自動車1と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態に係る電気自動車1Aは、電気自動車1Aの車高を下げる前にあらかじめ路面温度を上昇させることができ、路面温度が低い場合に冷えた路面Gによってバッテリ温度が低下することを抑制することができる。
【0084】
なお、上記の第2の実施の形態では、車両1Aが駐車位置に停止した状態で、バッテリユニット30の下方の路面Gに水を散布する構成であったが、水を散布するタイミングは上記の例に限定されない。例えば制御装置50Aは、車両1が駐車位置へ移動する間に水を散布してもよい。この場合、液噴射ノズル83による水の噴射方向がバッテリユニット30の下方に向けられていなくても、車両1Aの駐車位置の路面上に水を散布することができる。したがって、液噴射ノズル83の取り付け位置の自由度を高めることができる。例えば車両1Aの前部バンパ又は後部バンパの裏側に液噴射ノズル83を取り付けた場合であっても、車両1Aが駐車位置に駐車した状態でバッテリユニット30の下方に位置する路面上に水を散布することができる。
【0085】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示はかかる例に限定されない。本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0086】
1・1A:電気自動車(車両)、3F:前輪、3R:後輪、5:フロアパネル、10F・10R:エアサスペンション、11:エアバッグ、20:車高調節装置、21:エアタンク、23:コンプレッサ、25:エアホース、27:バルブユニット、30:バッテリユニット、31:高電圧バッテリ、33:バッテリ制御装置、35:バッテリ温度センサ、37:シール部材、41F:前方撮影カメラ、41R:後方撮影カメラ、47:通知装置、50・50A:制御装置、51:処理部、53:外気温情報取得部、55:バッテリ温度取得部、57:温度低下判定部、58:液体散布処理部、59:高さ調節処理部、61:記憶部、63:通信部、80:液体散布装置、81:液タンク、83:液噴射ノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9