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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045278
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】グループBアデノウイルス含有製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/761 20150101AFI20240326BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240326BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240326BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240326BHJP
   C12N 7/00 20060101ALI20240326BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20240326BHJP
   C12N 15/34 20060101ALI20240326BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
A61K35/761
A61K9/08 ZNA
A61K47/24
A61K47/20
A61K47/18
A61K47/10
A61P35/00
C12N7/00
C12N15/11 Z
C12N15/34
C12N15/861 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024007320
(22)【出願日】2024-01-22
(62)【分割の表示】P 2020538999の分割
【原出願日】2019-01-31
(31)【優先権主張番号】1801614.7
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】515023121
【氏名又は名称】アカミス バイオ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルビス,サイモン
(72)【発明者】
【氏名】キールティカ,マグダレナ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】グループBアデノウイルスに適した液体製剤を提供する。
【解決手段】a)複製可能なグループBアデノウイルスなどのグループBアデノウイルス、b)15~25%v/vのグリセロール、例えば、16、17、18、19、20、21%v/vのグリセロール、c)0.1~1.5%v/vのエタノール、例えば、1%v/vのエタノールなどの0.2~1%v/vのエタノール、d)緩衝液、およびe)任意に、アミノ酸を含み、製剤のpHが8.0~9.6の範囲内にある、液体製剤と、治療、特に、癌の治療におけるその使用と、を提供する。
【選択図】図8A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グループBアデノウイルスに適した液体製剤であって、
a)複製可能なグループBアデノウイルスなどのグループBアデノウイルスと、
b)15~25%v/vのグリセロール、例えば、16、17、18、19、20、21%v/vのグリセロールと、
c)0.1~1.5%v/vのエタノール、例えば、1%v/vのエタノールなどの0.2~1%v/vのエタノールと、
d)緩衝液と、を含み、
前記製剤のpHが、8.0~9.6の範囲内にあり、例えば、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4または9.5である、製剤。
【請求項2】
前記製剤が静脈内投与用である、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記製剤がゆっくりとした注射による投与用である、請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
前記製剤が注入による投与用である、請求項2に記載の製剤。
【請求項5】
界面活性剤、例えば、非イオン性界面活性剤をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項6】
ポリソルベート、例えば、0.05~0.15%のポリソルベート20、40、60、または80などのポリソルベート20、40、60、または80をさらに含む、請求項5に記載の製剤。
【請求項7】
前記製剤が、ポリソルベート80、例えば、0.115%のポリソルベート80などの0.05~0.15%のポリソルベート80を含む、請求項6に記載の製剤。
【請求項8】
メチオニン、例えば、0.01~0.3mMのメチオニン、例えば、0.25mMのメチオニンなどの0.01~0.3mMのメチオニンをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項9】
アルギニン、例えば、15mMのアルギニンなどの5~20mMのアルギニンをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項10】
前記緩衝液が、メグルミン、グリシン(Gly-NaClなど)、TRISおよびそれらの2つ以上の組み合わせから選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項11】
前記製剤がメグルミン緩衝液を含む、請求項10に記載の製剤。
【請求項12】
前記製剤がHEPES緩衝液を含まない、請求項1~11のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項13】
前記製剤が、
a)15~20%v/vのグリセロールと、
b)1~1.5%v/vのエタノールと、
c)0.1~0.2%v/vのポリソルベート80と、
d)0.2~0.3mMのメチオニンと、
e)10~20mMのアルギニンと、
f)メグルミンなどの緩衝液と、を含み、
前記製剤のpHが、pH8などの8.0~9.6の範囲内のpHである、請求項1~12のいずれか一項に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エナデノツシレフ(enadenotucirev)(EnAd)などのグループBアデノウイルスの製剤、製剤を製造するプロセス、および治療、特に、癌の治療での製剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、製薬分野では、人間が使用する治療薬としてのウイルスの可能性を認識し始めたばかりである。現在までのところ、ONXY-15由来のウイルス(ONYX Pharmaceuticals、Shanghai Sunway Biotechが買収)は、限られた数の国で頭頸部癌での使用が承認されていて、Imlygic(登録商標)は黒色腫の治療に承認されている。しかし、現在臨床では数多くのウイルスが存在し、それらのウイルスの一部が人間での使用のために登録されるようになることが期待されている。
【0003】
多くのウイルス療法は、グループBアデノウイルスなどのアデノウイルス、例えば、EnAdに基づいている。EnAd(以前はColoAd1として知られていた)は、現在上皮性癌の治療のための臨床試験が行われているキメラ腫瘍溶解性アデノウイルス(WO2005/118825)である。これらのアデノウイルスベースの治療薬は、臨床試験および登録後の需要の両方に対応するために適切な量で、かつ適正製造基準(GMP)に準拠した条件下で製造する必要がある。
【0004】
長期保存用のアデノウイルス製剤は当該技術分野で知られていて、例えば、US7,888,096およびUS7,351,415を参照されたい。そのような製剤は、Ad5などのグループCアデノウイルス、特に、ヒトp53を発現するように操作された複製欠損Ad5ウイルスを懸濁させるために使用されている。
【0005】
グループBアデノウイルスはグループCアデノウイルスとは異なる特性を有し、例えば、グループBウイルスはCD46を介して細胞に感染する一方、グループCウイルスはCAR受容体(コクサッキーウイルスおよびアデノウイルス受容体)を介して細胞に感染する。グループBウイルスは、高速液体クロマトグラフィーで分析すると、グループCウイルスとは異なる保持時間を有する。例えば、Ad5およびAd11タイプのウイルス(EnAdなど)の相対保持時間を示す図7を参照されたい。
【0006】
本発明者らは、先行技術の製剤をEnAdなどのグループBアデノウイルスを懸濁するために使用するときに、アデノウイルスが、ウイルス濃度および効力の両方における著しい劣化が起こる前に、かなり短い期間の間しか4℃で維持できないことを見出した。このタイプの劣化は、製剤で発生する化学的プロセスに起因するため、化学的劣化と呼ばれる。
【0007】
物理的安定性も非常に重要であり、例えば、物理的不安定性は凝集によって顕在化し、免疫原性が高まる可能性がある。
【0008】
したがって、グループBアデノウイルスのより長期間の貯蔵のために特別に調整された改良された製剤、例えば、4℃での貯蔵に適した製剤が必要である。これにより、アデノウイルスの効力および生存率に対する有害な影響を最小限に抑えながら、4℃で長期間保存することが可能になる。一方、これにより、製剤は、保管および、例えば、製造施設から臨床現場への輸送がより簡便かつ安価になる。
【0009】
驚くべきことに、本発明者らは、多くの成分がグループBウイルス製剤の安定化に重要である一方、少量のエタノールが劣化を最小限に抑え、かつ感染力を維持するために重要であると考えられることを確立した。
【0010】
本開示は、特に、4℃で、EnAdなどのグループBウイルスを安定化させるように一緒に作用する成分の組み合わせを提供する。
【発明の概要】
【0011】
本開示は、グループBアデノウイルス、例えば、少なくとも1つの導入遺伝子をコードするグループBウイルスの保存に適した製剤を提供し、これについて、以下の項に要約している。
1.グループBアデノウイルスに適した液体製剤であって、
a)複製可能グループBアデノウイルスなどのグループBアデノウイルスと、
b)15~25%v/vのグリセロール、(例えば、17~20%v/v)、例えば、16、17、18、19、20、21%v/vのグリセロールと、
c)0.1~1.6%v/vのエタノール、例えば、1%v/vのエタノールまたは1.4%もしくは1.5%v/vのエタノールなどの0.1~1.5%v/vのエタノールと、
d)緩衝液と、を含み、
製剤のpHが、8.0~9.6の範囲内にあり、例えば、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4または9.5、例えば、8.5~9.5、特に、8.5~9.0、より具体的には、pH8.5、8.6、8.7、8.8または8.9である、製剤。
【0012】
2.pHが8.0である、項1に記載の製剤。
【0013】
3.pHが8.1である、項1に記載の製剤。
【0014】
4.pHが8.2である、項1に記載の製剤。
【0015】
5.pHが8.3である、項1に記載の製剤。
【0016】
6.pHが8.4である、項1に記載の製剤。
【0017】
7.pHが8.5である、項1に記載の製剤。
【0018】
8.pHが8.6である、項1に記載の製剤。
【0019】
9.pHが8.7である、項1に記載の製剤。
【0020】
10.pHが8.8である、項1に記載の製剤。
【0021】
11.pHが8.9である、項1に記載の製剤。
【0022】
12.pHが9である、項1に記載の製剤。
【0023】
13.項1~12のいずれか1つに記載の製剤であって、例えば、注射用の等張液または水などの注射用の液体で希釈後の、静脈内投与による投与用である、製剤。
【0024】
14.製剤がゆっくりとした注射による投与用である、項13に記載の製剤。
【0025】
15.製剤が注入による投与用である、項13に記載の製剤。
【0026】
16.界面活性剤、例えば、非イオン性界面活性剤をさらに含む、項1~15のいずれか1つに記載の製剤。
【0027】
17.ポリソルベート、例えば、0.05~0.15%v/vのポリソルベート20、40、60、または80などのポリソルベート20、40、60、または80をさらに含む、項16に記載の製剤。
【0028】
18.製剤が、ポリソルベート80、例えば、0.115%v/vのポリソルベート80などの0.05~0.15%v/vのポリソルベート80を含む、項17に記載の製剤。
【0029】
19.メチオニン、例えば、0.01~0.25mMのメチオニン、特に、0.25mMのメチオニンなどの0.01~0.3mMのメチオニンをさらに含む、項1~18のいずれか1つに記載の製剤。
【0030】
20.メチオニン、例えば、0.01~0.3mMのメチオニン、例えば、0.15mMのメチオニンなどの0.01~0.2mMのメチオニンをさらに含む、項1~18のいずれか1つに記載の製剤。
【0031】
21.15mMのアルギニンなどの5~20mMのアルギニンをさらに含む、項1~20のいずれか1つに記載の製剤。
【0032】
22.アルギニン、例えば、10mMのアルギニンなどの5~15mMのアルギニンをさらに含む、項1~20のいずれか1つに記載の製剤。
【0033】
23.緩衝液が、メグルミン、Gly-NaCl、およびTRISから選択される、項1~20のいずれか1つに記載の製剤。
【0034】
24.製剤がメグルミン緩衝液を含む、項23に記載の製剤。
【0035】
25.製剤がHEPES緩衝液を含まない、項1~24のいずれか1つに記載の製剤。
【0036】
26.製剤が、
a)15~20%v/vのグリセロールと、
b)1~1.5%v/vのエタノールと、
c)0.2~0.3mMのメチオニンと、
d)10~20mMのアルギニンと、
e)メグルミンなどの緩衝液と、
f)任意に、0.1~0.2%v/vのポリソルベート80と、を含み、
製剤のpHが、8.0~9.5の範囲内にあり、例えば、pH8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9または9.0などの8.0~9.0、特に8.0のpHである、項1~15のいずれか1つに記載の製剤。
【0037】
27.製剤が、
a)20%v/vのグリセロールと、
b)1.4~1.5%v/vのエタノールと、
c)0.25mMのメチオニンと、
d)15mMのアルギニンと、
e)メグルミンなどの緩衝液と、を含み、
製剤のpHが、8.0~9.5の範囲内にあり、例えば、pH8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9または9.0などの8.0~9.0、特に8.0のpHである、項26に記載の製剤。
【0038】
28.製剤が、
a)20%v/vのグリセロールと、
b)1%v/vのエタノールと、
c)0.115%v/vのポリソルベート80と、
d)0.15mMのメチオニンと、
e)10mMのアルギニンと、
f)メグルミンなどの緩衝液と、を含み、
製剤のpHが、8.0~9.5の範囲内にあり、例えば、pH8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9または9.0などの8.5~9.5、特に9.0のpHである、項1~15のいずれか1つに記載の製剤。
【0039】
29.グループBアデノウイルスが、式(I)の配列を含み、
5’ITR-B-B-B-B-B-B-B-3’ITR
式中、
が結合であるか、またはE1A、E1BもしくはE1A-E1Bを含み、
が、-E2B-L1-L2-L3-E2A-L4を含み、
が結合であるか、またはE3を含み、
が結合、または制限部位、1つ以上の導入遺伝子、もしくはその両方を含むDNA配列であり、
がL5を含み、
が結合、または制限部位、1つ以上の導入遺伝子、もしくはその両方を含むDNA配列であり、
が結合であるか、またはE4を含み、
またはBの少なくとも一方が結合ではない、項1~28のいずれか1つに記載の製剤。
【0040】
30.Bが導入遺伝子または導入遺伝子カセットを含む、項29に記載の製剤。
【0041】
31.Bが導入遺伝子または導入遺伝子カセットを含む、項29または30に記載の製剤。
【0042】
32.Bが導入遺伝子または導入遺伝子カセットを含み、Bが結合である、項29に記載の製剤。
【0043】
33.1つ以上の導入遺伝子または導入遺伝子カセットが、内因性プロモーターなどの内因性または外因性プロモーターの制御下にある、項29~32のいずれか1つに記載の製剤。
【0044】
34.導入遺伝子カセットが、E4および主要後期プロモーター、特に、主要後期プロモーターからなる群から選択される内因性プロモーターの制御下にある、項33に記載の製剤。
【0045】
35.導入遺伝子カセットが、独立して、
a)スプライスアクセプター配列(例えば、短いスプライスアクセプター配列CAGG、配列番号1または配列番号2)と、
b)内部リボソーム進入配列または高い自己切断効率の2Aペプチドと、
c)コザック配列と、
d)それらの組み合わせと、から選択される調節エレメントをさらに含む、項29~34のいずれか1つに記載の製剤。
【0046】
36.導入遺伝子カセットが、タンパク質コード配列の開始点にあるコザック配列を含む、項35に記載の製剤。
【0047】
37.導入遺伝子カセットが、高い自己切断効率の2Aペプチド、例えば、P2Aペプチド、E2Aペプチド、F2AペプチドおよびT2Aペプチドをコードする、項29~36のいずれか1つに記載の製剤。
【0048】
38.導入遺伝子カセットが、2、3または4つのペプチドなどの複数の高い自己切断効率の2Aペプチドをコードする、項37に記載の製剤。
【0049】
39.自己切断ペプチドが同一でないDNA配列によりコードされる、項38に記載の製剤。
【0050】
40.導入遺伝子カセットがポリアデニル化配列をさらに含む、項29~39のいずれか1つに記載の製剤。
【0051】
41.導入遺伝子カセットが、リーダー配列をコードする配列をさらに含む、項29~40のいずれか1つに記載の製剤。
【0052】
42.導入遺伝子カセットがDNA配列の3´末端および/またはDNA配列の5´末端に制限部位をさらに含む、項29~41のいずれか1つに記載の製剤。
【0053】
43.少なくとも1つの導入遺伝子カセットがモノシストロニックmRNAをコードする、項29~42のいずれかに記載の製剤。
【0054】
44.少なくとも1つの導入遺伝子カセットがポリシストロニックmRNAをコードする、項29~43のいずれか1つに記載の製剤。
【0055】
45.導入遺伝子がRNAi配列、ポリペプチド(タンパク質またはペプチドなど)をコードする、項29~44のいずれか1つに記載の製剤。
【0056】
46.ポリペプチドが抗体またはその結合断片である、項45に記載の製剤。
【0057】
47.抗体またはその結合断片が、OX40、OX40リガンド、CD27、CD28、CD30、CD40、CD40リガンド、CD70、CD137、GITR、4-1BB、ICOS、ICOSリガンド、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、VISTA、B7-H3、B7-H4、HVEM、ILT-2、ILT-3、ILT-4、TIM-3、LAG-3、BTLA、LIGHT、CD160、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、例えば、CD40およびCD40リガンドに特異的である、項46に記載の製剤。
【0058】
48.コードされたポリペプチドが、独立してIL-1α、IL-1β、IL-6、IL-9、IL-12、IL-13、IL-17、IL-18、IL-22、IL-23、IL-24、IL-25、IL-26、IL-27、IL-33、IL-35、IL-2、IL-4、IL-5、IL-7、IL-10、IL-15、IL-21、IL-25、IL-1RA、IFNα、IFNβ、IFNγ、TNFα、TGFβ、リンホトキシンα(LTA)およびGM-CSF、例えば、IL-12、IL-18、IL-22、IL-7、IL-15、IL-21、IFNγ、TNFα、TGFβおよびリンホトキシンα(LTA)からなる群から選択されるサイトカインである、項45~47のいずれか1つに記載の製剤。
【0059】
49.コードされたポリペプチドが、独立して、IL-8、CCL5、CCL17、CCL20、CCL22、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、CXCL12、CCL2、CCL19、CCL21、CXCR2、CCR2、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CXCR3、CXCR4、CXCR5およびCRTH2、例えば、CCL5、CXCL9、CXCL12、CCL2、CCL19、CCL21、CXCR2、CCR2、CCR4およびCXCR4またはその受容体(IL-8、CCL5、CCL17、CCL20、CCL22、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、CXCL12、CCL2、CCL19、CCL21、またはその受容体、より具体的には、CCL5、CXCL9、CXCL12、CCL2、CCL19、CCL21またはその受容体から選択されるケモカインなど)からなる群から選択される、項24~44のいずれか1つに記載の製剤。
【0060】
50.コードされたポリペプチドが、レポーター遺伝子、例えば、ヨウ化ナトリウム共輸送体、細胞内金属タンパク質、HSV1-tk、GFP、ルシフェラーゼまたはエストロゲン受容体、例えば、ヨウ化ナトリウム共輸送体である、項29~49のいずれか1つに記載の製剤。
【0061】
51.レポーター遺伝子が蛍光タンパク質である、項50に記載の製剤。
【0062】
52.アデノウイルスのE4orf4領域が非機能的であり、例えば、完全に欠失、部分的に欠失または短縮されている、項1~51のいずれか1つに記載の製剤。
【0063】
53.アデノウイルスのE2B領域がキメラであり、例えば、E2B領域が、第1のアデノウイルス血清型に由来する核酸配列および第2の異なるアデノウイルス血清型に由来する核酸配列を含み、前記第1および第2の血清型は各々、アデノウイルスサブグループB、C、D、E、またはFから選択される、項1~48のいずれか1つに記載の製剤。
【0064】
54.アデノウイルスがキメラEnAdである、項1~53のいずれか1つに記載の製剤。
【0065】
55.アデノウイルスがAd11である、項1~54のいずれか1つに記載の製剤。
【0066】
56.グループBアデノウイルスが複製可能である、項1~55のいずれか1つに記載の製剤。
【0067】
57.ウイルスが、例えば、Hisタグなしで、配列番号14またはその誘導体で示される、項1~56のいずれか1つに記載の製剤。
【0068】
58.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号15またはその誘導体で示される、項1~57のいずれか1つに記載の製剤。
【0069】
59.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号16またはその誘導体で示される、項1~58のいずれか1つに記載の製剤。
【0070】
60.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号17またはその誘導体で示される、項1~59のいずれか1つに記載の製剤。
【0071】
61.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号18またはその誘導体で示される、項1~60のいずれか1つに記載の製剤。
【0072】
62.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号19またはその誘導体で示される、項1~61のいずれか1つに記載の製剤。
【0073】
63.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号20またはその誘導体で示される、項1~62のいずれか1つに記載の製剤。
【0074】
64.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号21またはその誘導体で示される、項1~63のいずれか1つに記載の製剤。
【0075】
65.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号22またはその誘導体で示される、項1~64のいずれか1つに記載の製剤。
【0076】
66.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号23またはその誘導体で示される、項1~65のいずれか1つに記載の製剤。
【0077】
67.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号24またはその誘導体で示される、項1~66のいずれか1つに記載の製剤。
【0078】
68.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号25またはその誘導体で示される、項1~67のいずれか1つに記載の製剤。
【0079】
69.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号26またはその誘導体で示される、項1~68のいずれか1つに記載の製剤。
【0080】
70.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号27またはその誘導体で示される、項1~69のいずれか1つに記載の製剤。
【0081】
71.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号28またはその誘導体で示される、項1~70のいずれか1つに記載の製剤。
【0082】
72.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号29またはその誘導体で示される、項1~71のいずれか1つに記載の製剤。
【0083】
73.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号30またはその誘導体で示される、項1~72のいずれか1つに記載の製剤。
【0084】
74.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号31またはその誘導体で示される、項1~73のいずれか1つに記載の製剤。
【0085】
75.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号32またはその誘導体で示される、項1~74のいずれか1つに記載の製剤。
【0086】
76.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号33またはその誘導体で示される、項1~75のいずれか1つに記載の製剤。
【0087】
77.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号34またはその誘導体で示される、項1~76のいずれか1つに記載の製剤。
【0088】
78.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号35またはその誘導体で示される、項1~77のいずれか1つに記載の製剤。
【0089】
79.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号36またはその誘導体で示される、項1~78のいずれか1つに記載の製剤。
【0090】
80.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号37またはその誘導体で示される、項1~79のいずれか1つに記載の製剤。
【0091】
81.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号38またはその誘導体で示される、項1~80のいずれか1つに記載の製剤。
【0092】
82.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号39またはその誘導体で示される、項1~81のいずれか1つに記載の製剤。
【0093】
83.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号40またはその誘導体で示される、項1~82のいずれか1つに記載の製剤。
【0094】
84.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号41またはその誘導体で示される、項1~83のいずれか1つに記載の製剤。
【0095】
85.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号42またはその誘導体で示される、項1~84のいずれか1つに記載の製剤。
【0096】
86.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号43またはその誘導体で示される、項1~85のいずれか1つに記載の製剤。
【0097】
87.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号44またはその誘導体で示される、項1~86のいずれか1つに記載の製剤。
【0098】
88.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号45またはその誘導体で示される、項1~87のいずれか1つに記載の製剤。
【0099】
89.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号46またはその誘導体で示される、項1~88のいずれか1つに記載の製剤。
【0100】
90.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号47またはその誘導体で示される、項1~89のいずれか1つに記載の製剤。
【0101】
91.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号48またはその誘導体で示される、項1~86のいずれか1つに記載の製剤。
【0102】
92.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号49またはその誘導体で示される、項1~91のいずれか1つに記載の製剤。
【0103】
93.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号50またはその誘導体で示される、項1~92のいずれか1つに記載の製剤。
【0104】
94.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号51またはその誘導体で示される、項1~93のいずれか1つに記載の製剤。
【0105】
95.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号52またはその誘導体で示される、項1~94のいずれか1つに記載の製剤。
【0106】
96.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号53またはその誘導体で示される、項1~95のいずれか1つに記載の製剤。
【0107】
97.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号54またはその誘導体で示される、項1~96のいずれか1つに記載の製剤。
【0108】
98.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号55またはその誘導体で示される、項1~97のいずれか1つに記載の製剤。
【0109】
99.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号56またはその誘導体で示される、項1~98のいずれか1つに記載の製剤。
【0110】
100.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号57またはその誘導体で示される、項1~99のいずれか1つに記載の製剤。
【0111】
101.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号58またはその誘導体で示される、項1~100のいずれか1つに記載の製剤。
【0112】
102.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号59またはその誘導体で示される、項1~101のいずれか1つに記載の製剤。
【0113】
103.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号60またはその誘導体で示される、項1~102のいずれか1つに記載の製剤。
【0114】
104.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号61またはその誘導体で示される、項1~103のいずれか1つに記載の製剤。
【0115】
105.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号62またはその誘導体で示される、項1~104のいずれか1つに記載の製剤。
【0116】
106.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号63またはその誘導体で示される、項1~105のいずれか1つに記載の製剤。
【0117】
107.ウイルスが、例えば、Hisタグなしで、配列番号64またはその誘導体で示される、項1~106のいずれか1つに記載の製剤。
【0118】
108.ウイルスが、例えば、Hisタグの有無に拘わらず、配列番号65またはその誘導体で示される、項1~107のいずれか1つに記載の製剤。
【0119】
109.治療における使用のための、項1~108のいずれか1つに記載の製剤。
【0120】
110.癌、例えば、結腸直腸癌、肝癌、前立腺癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、甲状腺癌、腎臓癌、膀胱癌、頭頸部癌または肺癌の治療における使用のための、項109に記載の製剤。
【0121】
111.例えば、注射用の液体での希釈後の静脈内投与のための、項109または110に記載の製剤。
【0122】
112.腫瘍内注射のための、項109または110に記載の製剤。
【0123】
113.癌、例えば、結腸直腸癌、肝癌、前立腺癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、甲状腺癌、腎臓癌、膀胱癌、頭頸部癌または肺癌の治療のための医薬の製造における、項1~107のいずれか1つに記載の製剤の使用。
【0124】
114.それを必要とする患者に、項1~108のいずれか1つに記載の製剤を投与することを含む治療方法。
【0125】
115.治療される患者が癌、例えば、結腸直腸癌、肝癌、前立腺癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、甲状腺癌、腎臓癌、膀胱癌、頭頸部癌または肺癌を有する、項114に記載の治療方法。
【0126】
116.製剤が静脈内注射または腫瘍内注射によって投与される、項114または115に記載の方法。
【0127】
有利なことに、本発明者らは、本明細書に記載の製剤により、大幅な劣化または効力の低下なしに、EnAdなどのグループBアデノウイルスを、例えば、4℃で、6ヶ月間以上などの長期間、例えば、1年間、1.5年および2年間(特に、18、19、20、21、22、23、24ヶ月間などの18~24ヶ月間)、保存に成功できることを確立した。本開示の製剤では、凝集も最小限に抑えてもよい。本開示の製剤はまた、適度な期間、25℃などの温度で安定であり得る。
【0128】
ウイルスの長期保存は、例えば、-60℃以下、より具体的には、-60~-80℃の範囲、特に、-60、-61、-62、-63、-64、-65、-66、-67、-68、-69、-70、-71、-72、-73、-74、-75、-76、-77、-78、-79および-80などの温度でなされてもよい。
【0129】
一実施形態では、本開示の製剤は、生理学的pH、すなわち、pH7.4より有意に高い8.5~9.5のpH(pH8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4または9.5など)を有する。
【0130】
一実施形態では、製剤はpH9.0を有する。驚くべきことに、本発明者らは、高いpHが製剤においてグループBアデノウイルス(EnAdなど)の安定性に大きな影響を与えることを発見した。
【0131】
グリセロールの濃度は、グループBアデノウイルス(EnAdなど)の安定性にも重要である。
【0132】
欧州医薬品庁によると、エタノールは小さな化学物質の経口および局所医薬製剤とホメオパシー療法で使用されているが、エタノールの使用に関しては特定の安全性が懸念されている。エタノールは中枢神経系抑制薬である。成人の軽度から中程度の中毒には、陶酔、運動失調、鎮静、攻撃的な行動、吐き気および嘔吐が含まれる。より高い用量では、それは、呼吸抑制または不全、および心房性頻脈、心房細動、不整脈、AVブロック、低血圧、うっ血性心不全および重度の心筋抑制などの心臓毒性を引き起こす可能性がある。子供のエタノール中毒は、低血糖症、低体温症、およびカンマを引き起こす可能性がある。急性暴露後の他の毒性には、けいれん、低緊張、反射低下、消化管出血、急性肝炎、急性膵炎、横紋筋融解症、低カリウム血症、および乳酸アシドーシスがある。
【0133】
エタノール代謝は個人間で、また年齢によって異なり、例えば、一部の個人は、アルコールを代謝する能力を低下させる酵素アルコールデヒドロゲナーゼが不足している。静脈内投与用の製剤では、エタノールは血流に直接入り、毒性作用を最大化する。さらに、投与量が多くなる可能性があるため、10%のエタノールを含む500ml~1Lの製剤においては50~100mlがエタノールである。
【0134】
したがって、エタノールはグループBアデノウイルス製剤の安定化にとって重要であるように思われるが、エタノールの毒性が最小限である製剤であることが重要である。驚くべきことに、安定化を提供するには、例えば、1%未満などの1.5%未満のかなり少量のエタノールで十分である。一実施形態では、1.5%以下のエタノールが使用され、例えば、1%以下が使用される。これは、安定化効果を提供しつつ、エタノールの毒性を最小限に抑えるために、有益である。さらに、それは、殆どの患者集団での使用に適した製剤になる。
【0135】
一実施形態では、本開示の製剤は、例えば、セトマクロゴール1000(ブリジ52、56または58としても知られている)、セトステアリルアルコール、パルミチン酸、グリセロールモノラウレート、オレイルアルコール、ポロキサマー、プルロニックF127、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、40、60、80または85)、ステアリン酸、ソルビタントリステアレートからなる群から選択される非イオン性界面活性剤を含む。一実施形態では、14.5~17の範囲の親水性-親油性バランスを有する非イオン性界面活性剤を使用する。
【0136】
一実施形態では、製剤は、ポリソルベート、例えば、0.05~0.15%のポリソルベート20、40、60、80、またはそれらの2つ以上の組み合わせなどのポリソルベート20、40、60、または80をさらに含む。一実施形態では、製剤は、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.10%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、または0.15%のポリソルベート20、40、60、80、またはそれらの2つ以上の組み合わせを含む。ポリソルベートを製剤に加える利点は、ポリソルベートが長期間保存中にグループBアデノウイルスの効力を維持するのに役立ち、凝集を最小限に抑えることができることである。
【0137】
一実施形態では、製剤は、ポリソルベート80、例えば、0.05%~0.15%のポリソルベート80、例えば、0.09~0.11%のポリソルベート80、例えば、0.1%または0.115%のポリソルベートを含む。一実施形態では、製剤は、0.115%のポリソルベートを含む。
【0138】
有利なことに、非イオン性界面活性剤、特に、ポリソルベート(ポリソルベート80など)は、製剤内の界面応力を低減または阻害し、例えば、ウイルスの表面応力を低減し、それが一方でウイルスの破壊を引き起こし得る。
【0139】
理論に拘束されるつもりはないが、製剤への特定のアミノ酸、例えば、メチオニン、アルギニンおよびそれらの組み合わせの添加は、ウイルス/ウイルス相互作用を減少させ、それにより、例えば、立体保護を提供することによって、製剤中のグループBアデノウイルスの分布の安定化に寄与すると考えられる。アミノ酸(複数可)、例えば、メチオニン、アルギニンおよびそれらの組み合わせの添加はまた、グループBアデノウイルスの優先的な水和/排除を最適化してもよい。このパラメーターは、グループBアデノウイルスを安定させる上で非常に重要であると考えられている。優先的相互作用は、共溶媒(水など)の優先的結合またはその優先的排除(優先的水和)の観点から表現できる。
【0140】
一実施形態では、製剤は、少なくとも1つのアミノ酸、例えば、1、2、または3つのアミノ酸をさらに含む。
【0141】
一実施形態では、少なくとも1つのアミノ酸は疎水性側鎖を有し、例えば、アラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、バリンおよびそれらの組み合わせから選択される。
【0142】
一実施形態では、製剤は、メチオニン、例えば、0.01~0.3mM(0.01~0.2mM)、例えば、0.15mMのチオニンなどの、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20mMのメチオニンをさらに含む。または、メチオニンは製剤中に0.25mM存在してもよい。
【0143】
一実施形態では、少なくとも1つのアミノ酸の製剤は、例えば、アルギニン、ヒスチジン、リジンおよびそれらの組み合わせから選択される、帯電した塩基性の側鎖を有する。
【0144】
一実施形態では、製剤は、アルギニン、例えば、1~20mM(または1~15mM)、例えば、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5または10mMのアルギニンなどの2~10mMのアルギニンをさらに含む。一実施形態では、製剤中のアルギニンは、10~20mMの範囲内にあり、例えば、14、15または16mMなどの10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20mMである。有利には、製剤へのアルギニンの添加は、特に、最初の12ヶ月の貯蔵の間に、アデノウイルスの安定性をさらに向上させる。
【0145】
一実施形態では、製剤は、メグルミン緩衝液、グリシン緩衝液、TRIS緩衝液の1つ以上をさらに含む。これらの緩衝液はすべて、開示された製剤に組み込まれたときに良好な安定性をもたらすことが示された。
【0146】
一実施形態では、製剤は、例えば、pH8.0のメグルミン緩衝液を含む。メグルミン緩衝液は、8.5~10.5などのpH範囲8.0~10.5での使用に適している。
【0147】
一実施形態では、緩衝液はTRISである。TRISはpH7~9範囲で緩衝することができる。一実施形態では、緩衝液はTRISを含まない。
【0148】
一実施形態では、緩衝液は、pH8.6~10.6の範囲で緩衝することができるグリシン緩衝液である。
【0149】
緩衝液は、pHに一致するように選択する必要があり、例えば、HEPESはpH8.2までのみ緩衝できる。本明細書に開示している他の緩衝液は、HEPESと比較して、グループBアデノウイルスについて改善した安定性プロファイルを提供する可能性がある。したがって、HEPEは、EnAdなどのグループBアデノウイルスの保存に一般に使用されるが、一実施形態では、製剤はHEPES緩衝液を含まない。
【0150】
一実施形態では、本開示による製剤中のウイルスは、1、2、3または4つの導入遺伝子をコードする。
【0151】
式(I)の定義
一実施形態では、Bは、制限部位、例えば、1または2などの1、2、3または4つの制限部位を含む。一実施形態では、Bは、少なくとも1つの導入遺伝子、例えば、1または2つの導入遺伝子を含む。一実施形態では、Bは少なくとも1つの導入遺伝子、例えば、1または2つの導入遺伝子、および1つ以上の制限部位、例えば2または3つの制限部位を含み、特に、遺伝子、または遺伝子を含むDNA配列がゲノムから特異的に切除および/または置換されることを可能にするように、制限部位が、それ/それらを挟む。あるいは、制限部位が各遺伝子を挟んでもよく、例えば2つの導入遺伝子がある場合、遺伝子が選択的に切除および/または置換されることを確実にするために3つの異なる制限部位が必要とされる。一実施形態では、1つ以上の、例えば全ての導入遺伝子が導入遺伝子カセットの形態である。
【0152】
一実施形態では、Bは制限部位を含まない。一実施形態では、Bは結合である。一実施形態では、Bxは1つ以上の導入遺伝子を含むかまたはそれからなる。
【0153】
一実施形態では、Bは制限部位、例えば、1または2つなどの1、2、3または4つの制限部位を含む。一実施態様では、Bは少なくとも1つの導入遺伝子、例えば、1または2つの導入遺伝子を含む。一実施形態では、Bは少なくとも1つの導入遺伝子、例えば、1または2つの導入遺伝子、および1つ以上の制限部位、例えば2または3つの制限部位を含み、特に、制限部位が、遺伝子、またはそれ(複数可)がゲノムから特異的に切除および/または置換されることを可能にする遺伝子を含むDNA配列を挟む。あるいは、制限部位は各遺伝子を挟むことができ、例えば2つの導入遺伝子がある場合、遺伝子が選択的に切除および/または置換されることを確実にするために3つの異なる制限部位が必要とされる。
【0154】
一実施形態では、Bは制限部位を含まない。一実施形態では、Bは結合である。一実施形態では、Bは1つ以上の導入遺伝子を含むまたはそれからなる。
【0155】
導入遺伝子カセットのサイズを最小化することに加えて、導入遺伝子はウイルスが複製しているときにのみ発現されるために、ウイルスに内因性プロモーターを使用することはまた、治療状況において有利であってもよい。これは、導入遺伝子を継続的に転写し、コードされたポリペプチドなどのコードされたエンティティの不適切な濃度または局在化につながる可能性がある構成的な外因性プロモーターとは対照的である。
【0156】
外因性プロモーターを使用することは、それがコードされたエンティティを強くかつ構成的に発現することができるので、特にいくつかの状況下で、例えば、患者が非常に広範囲にわたる癌を有する場合に、特に有用であり得る。したがって、一実施形態では、導入遺伝子の発現は、CMVプロモーターの制御下にある。
【0157】
一実施形態では、導入遺伝子カセットは、独立してスプライスアクセプター配列、内部リボソーム侵入配列または高い自己切断効率の2Aペプチド、コザック配列、およびそれらの組み合わせから選択される調節エレメントをさらに含む。
【0158】
一実施形態では、導入遺伝子カセットは、タンパク質コード配列の開始点にあるコザック配列を含む。
【0159】
一実施形態では、導入遺伝子カセットは、高い自己切断効率の2Aペプチドをコードする。
【0160】
一実施形態では、導入遺伝子カセットはポリアデニル化配列をさらに含む。
【0161】
一実施形態では、導入遺伝子カセットは、DNA配列の3´末端および/またはDNA配列の5´末端に制限部位をさらに含む。
【0162】
開示の詳細な説明
現在開示されている製剤は、生理的pHを超えるアルカリ性pHを有する。特定のpHへの所与の溶液の緩衝は、例えば、トリス、リジン、強酸(例えば、HCl)または弱酸(例えば、酢酸またはマレイン酸)、強塩基(例えば、NaOH)または弱塩基(例えば、アンモニア)を含む酸/塩基系を含む、当該技術分野で既知の日常的な技術を使用して行うことができる。
【0163】
本明細書で使用する場合、緩衝液とは、例えば、グループBアデノウイルスの構造的完全性またはそれらの複製能力に悪影響を与えることなく、グループBアデノウイルスを懸濁または保存するのに適した緩衝液を指す。今日使用されているほとんどの生物学的緩衝液はNE Goodと彼の研究チーム(Good et al.1966,Good&Izawa 1972,Ferguson et al.1980;”Good Buffers”)によって開発され、N置換タウリンまたはグリシン緩衝液を含む。一般的に使用される生物学的緩衝液のいくつかを以下に挙げる。このリストは網羅的なものではなく、他の緩衝液も当業者に知られている。
【0164】
一実施形態では、開示された製剤は、2-アミノエタンスルホン酸(AES)緩衝液、ギ酸緩衝液(ギ酸アンモニウム緩衝液、酢酸アンモニウム緩衝液など)、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)緩衝液、2-アミノ-2-メチル-1-プロパンジオール(AMPD)緩衝液、N-(1,1,-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-3-アミノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(AMPSO)緩衝液、ビシン緩衝液、ビス-トリス-プロパン、ホウ酸緩衝液、3-(シクロヘキシルアミノ)-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸(CAPSO)緩衝液、N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸(CHES)緩衝液、3-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]プロパンスルホン酸(HEPPS)緩衝液、1-メチルピペリジン緩衝液、4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)(HEPPSO)緩衝液、グリシルグリシン緩衝液、ピペラジン-1,4-ビス(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)二水和物またはピペラジン-N,N´-ビス(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)(POPSO)緩衝液、[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]プロパンスルホン酸(TAPS)緩衝液、3-[N-トリス(ヒドロキシルメチル)-メチルアミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(TAPSO)緩衝液、トリエタノールアミン緩衝液、2-[トリス(ヒドロキシメチル)-メチルアミノ]-エタンスルホン酸(TES)緩衝液、トリシン緩衝液、メグルミン緩衝液、グリシン緩衝液(Gly-NaOHなど)、TRIS緩衝液のうちの1つ以上を含む。
【0165】
一実施形態では、開示された製剤は、メグルミン緩衝液、Gly-NaCl緩衝液、TRIS緩衝液のうちの1つ以上を含む。
【0166】
本明細書で使用する長期とは、少なくとも6ヶ月の期間、例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35または36ヶ月を指す。一実施形態では、開示された製剤は、グループBアデノウイルスを、12ヶ月、18ヶ月および24ヶ月間などの少なくとも12ヶ月間、安定して保存することを可能にする。特に指定がない限り、長期保存は、一般的に、4°Cでの保存を指す。
【0167】
一実施形態では、製剤は、-1~95℃、例えば、-1、-2、-3、-4、または-65、-66、-67、-68、-69、-70、-71、-72、-73、-74、-75、-77、-78、-79、-80、-81、-82、-83、-84、-85、-86、-87、-88、-89、または-90 °C、特に-80℃などの-1~-80℃の範囲の温度で保存される。
【0168】
一実施形態では、例えば、注入または注射のための、本開示による複製可能な腫瘍溶解性の液体非経口製剤(再構成製剤を含む)が提供され、製剤については、用量の体積あたり1x1010~1×1014個のウイルス粒子の範囲の用量が提供される。
【0169】
一実施形態では、液体製剤は濃縮物として提供され、患者への投与前に希釈される必要がある。
【0170】
一実施形態では、製剤は、注射用水、生理食塩水またはグルコースなどの注射可能な液体での再構成のための凍結乾燥製剤として提供される。
【0171】
一実施形態では、製剤は、注射用水、生理食塩水、グルコースなどの注射用液体での希釈のための液体濃縮物として提供される。
【0172】
一実施形態では、製剤は、特に最終形態での、すなわち患者への投与に適した(どんなときでも凍結乾燥されない)液体として製造される。
【0173】
非経口製剤は、消化管を通して送達されないように設計された製剤を意味する。典型的な非経口送達経路は注射、移植または注入を含む。一実施形態では、製剤はボーラス送達用の形態で提供される。
【0174】
一実施形態では、非経口製剤は注射剤の形態である。注射としては、静脈内、皮下、腫瘍内または筋肉内注射が挙げられる。本明細書で使用される注射は、シリンジを介して体内に液体を挿入することを意味する。一実施形態では、本開示の方法は腫瘍内注射を含まない。
【0175】
一実施形態では、非経口製剤は注入剤の形態である。
【0176】
本明細書で使用する注入は、点滴、注入ポンプ、シリンジドライバーまたは同等の装置による流体の投与を意味する。一実施形態では、注入は、約3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、65、80、85、90、95、100、105、110または115分など、1.5分~120分の範囲の期間にわたって投与される。
【0177】
一実施形態では、シリンジドライバーによって投与される場合など、製剤の1用量は100ml未満、例えば30mlである。
【0178】
一実施形態では、注射は、例えば、1.5~30分の期間にわたって、ゆっくりとした注射として投与される。本明細書で使用するゆっくりとした注射は、シリンジを使用した手動注射である。
【0179】
一実施形態では、製剤は静脈内(i.v.)投与用である。この経路は、大多数の臓器および組織への迅速なアクセスを可能にし、例えば確立された転移、特に肝臓および肺のような高度に血管新生化された領域にある転移の治療に特に有用であるため、腫瘍溶解性ウイルスの送達に特に有効である。
【0180】
治療用製剤は典型的に、製造および保存条件下で無菌かつ安定であろう。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、またはヒトへの投与に適した他の非経口製剤として処方され得る。
【0181】
本開示による製剤は、シリンジまたはバイアルなどのプレフィルドデバイスとして、特に単回用量として、製剤化されてもよい。
【0182】
製剤は一般に、薬学的に許容される希釈剤または担体、例えば、ウイルスと適合性であり、ウイルスが必要な期間安定である無毒性の等張性担体を含む。
【0183】
担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどの分散剤もしくは界面活性剤、またはポリソルベート80もしくは40などの非イオン性界面活性剤の使用によって維持することができる。分散液において、必要な粒径の維持は、界面活性剤の存在によって補助され得る。等張化剤の例には、組成物中の糖、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール、または塩化ナトリウムが含まれる。
【0184】
一実施形態では、使用される非経口製剤は、糖、例えば、デキストロース、マンノース、スクロースまたは同様のもの、塩化ナトリウム、塩化マグネシウムまたは塩化カリウムなどの塩、およびそれらの2つ以上の組み合わせを含んでもよい。
【0185】
一実施形態では、本開示による製剤は糖を含まない。緩衝液の成分は、本開示の目的では糖とは見なされない。
【0186】
一実施形態では、本開示の製剤は塩化ナトリウムなどの塩を含まない。緩衝液に使用される試薬は、本開示の目的では塩とは見なされない。
【0187】
一実施形態では、本開示の製剤は、二価陽イオン、例えば、CaCl、および/またはMgClを含まない。
【0188】
製剤はまた、EDTAなどの防腐剤を含んでもよい。一実施形態では、本開示の製剤はEDTAを含まない。
【0189】
一実施形態では、本開示による製剤はクロロブタノールを含まない。
【0190】
一実施形態では、本開示の製剤はゼラチンを含まない。
【0191】
一実施形態では、製剤は、グループBアデノウイルスの免疫原性を増加させるいかなる成分も含まない、すなわち、製剤は、アジュバント(複数可)を含まない。
【0192】
一実施形態では、製剤は、例えば、用量当たり1x1010~1x1012個のウイルス粒子などの、用量当たり1x1010~1x1014個のウイルス粒子などの、本開示によって精製された腫瘍溶解性ウイルスを含むであろう。一実施形態では、製剤中のウイルスの濃度は、2x1012vp/mlなど、2x10~2x1014vp/mlの範囲内にある。
【0193】
薬学的に許容される担体の徹底的な考察は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company,N.J.1991)にある。
【0194】
本開示はまた、例えば、両方とも参照により本明細書に組み込まれる、WO2009/068877およびUS2004/0153033に開示されているデバイスを使用して、鼻腔内に送達される溶液または懸濁液にも及ぶ。
【0195】
使用されるグループBアデノウイルスは、一般に、文脈上他を意味しない限り、グループBウイルスとして指定された複製可能(複製能力のあるを含む)アデノウイルスまたは複製欠損ウイルス、例えば、EnAdなどのそのキメラを含むAd11pなどのAd11を指す。場合によっては、それは、複製能力のあるウイルスのみを指すのに使用される場合があり、これは文脈上明らかであろう。
【0196】
本明細書で使用するサブグループB(グループBまたはタイプB)は、グループBアデノウイルス由来の少なくともファイバーおよびヘキソンを有するウイルス、例えば、実質的にグループBウイルス由来の全ゲノムなどのグループBウイルス由来のキャプシド全体を指す。サブグループBウイルスには、3、7、11、14、16、21、34、35、50、55が含まれる。
【0197】
一実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスなどの本開示のウイルスは、A11pヘキソンなどのAd11ヘキソンを有する。一実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスなどの本開示のウイルスはサブグループBファイバーを有する。1つでは、腫瘍溶解性ウイルスなどの本開示のウイルスは、A11pファイバーなどのAd11ファイバーを有する。一実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスなどの本開示のウイルスは、同じ血清型に由来するファイバーおよびヘキソンタンパク質、例えば、Ad11、特に、Ad11pなどのサブグループBアデノウイルスを有する。
【0198】
一実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスなどの本開示のウイルスは、同じ血清型、例えば、Ad11、特に、Ad11p由来で、例えば、後者のゲノム配列の30811~31788、18254~21100および13682~15367の位置で見られる、ファイバー、ヘキソンおよびペントンタンパク質を有する。
【0199】
エナデノチュシレブ(Enadenotucirev)(EnAd)は、Ad11p由来のファイバー、ペントンおよびヘキソンを有する旧称ColoAd1(WO2005/118825)であるキメラ腫瘍溶解性アデノウイルスであり、したがって、それはサブグループBウイルスである。それは、Ad11pおよびAd3由来のDNAを含むキメラE2B領域を有する。EnAdでは、E3領域のほとんどすべてとE4領域の一部が削除される。
【0200】
本明細書で使用されるE3は、アデノウイルスE3領域の一部または全部をコードするDNA配列(すなわち、タンパク質/ポリペプチド)を指し、E3遺伝子によってコードされるタンパク質が、例えば、野生型と同じ機能を有する(対応する未変異タンパク質)、野生型タンパク質と比較して向上した機能、野生型タンパク質と比較して機能がないなどの低下した機能を有し、あるいは、野生型タンパク質または必要に応じてそれらの組み合わせと比較して新しい機能を有する、などの保存的または非保存的アミノ酸変化を有するように変異されてもよい。E3領域の一部が削除される(E3領域で部分的に削除される)場合には、例えば、遺伝子のコード領域および/または非コード領域において、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94,95、96、97または98%が削除されるなどの、E3領域の1~99%が削除される場所が含まれる。
【0201】
本明細書で使用されるE4は、アデノウイルスE4領域をコードするDNA配列(すなわち、ポリペプチド/タンパク質領域)を指して、E4遺伝子によってコードされるタンパク質が、保存的又は非保存的アミノ酸変化を有し、野生型と同じ機能(対応する未変異タンパク質)、野生型タンパク質と比較して向上した機能、野生型タンパク質と比較して機能がないなどの低下した機能を有し、あるいは、野生型タンパク質または必要に応じてそれらの組み合わせと比較して新しい機能を有するなど、変異されてもよい。
【0202】
E4領域は、ウイルス複製に関連するいくつかの機能を有してもよく、したがって、E4領域の削除などの修飾はウイルスのライフサイクルおよび複製に影響を及ぼしてもよく、したがって、例えば、パッケージング細胞が複製に必要とされてもよい。
【0203】
一実施形態では、E4では、E4ORF4領域が削除されている。
【0204】
本明細書で使用している「由来する」は、例えば、DNA断片がアデノウイルスから得られるか、またはアデノウイルスに元来見出された配列に対応する場合を指す。この言語は、配列がどのようにして得られたのかを限定するように意図しておらず、例えば、本開示によるウイルスにおいて使用される配列が合成されてもよい。
【0205】
一実施形態では、誘導体は、元来のDNA配列に対してその全長にわたる100%の配列同一性を有する。
【0206】
一実施形態では、誘導体は、元来のDNA配列に対して95、96、97、98または99%の同一性または類似性を有する。
【0207】
一実施形態では、誘導体は、ストリンジェントな条件下で元来のDNA配列にハイブリダイズする。
【0208】
本明細書で使用する場合、「ストリンジェンシー」は、通常、約Tm(融解温度)-50℃(プローブのTmを5°下回る)からTmを約20°C~25°C下回るまでの範囲で起こる。ストリンジェントなハイブリダイゼーションを使用して、同一のポリヌクレオチド配列を同定もしくは検出し、または類似もしくは関連するポリヌクレオチド配列を同定もしくは検出することができることを、当業者は理解できるであろう。本明細書で使用する場合、「ストリンジェントな条件」という用語は、配列間に少なくとも95%、例えば、少なくとも97%の同一性がある場合に、ハイブリダイゼーションが一般に起こることを意味する。
【0209】
本明細書で使用する場合、「ハイブリダイゼーション」は、「ポリヌクレオチド鎖が塩基対形成を介して相補鎖と結合する任意のプロセス」を含むものとする(Coombs,J.,Dictionary of Biotechnology,Stockton Press,New York,N.Y.,1994)。
【0210】
腫瘍溶解性ウイルスは、癌細胞に優先的に感染し、例えば、それを溶解することにより細胞死を早めるか、または癌細胞で選択的に複製するウイルスである。癌細胞に優先的に感染するウイルスは、正常な健康な細胞と比較して、癌細胞への高い感染率を示すウイルスである。
【0211】
癌細胞において選択的に複製するウイルスは、p53遺伝子などの、複製するための癌細胞において増加調節される遺伝子またはタンパク質を必要とするウイルスである。
【0212】
E2B領域はグループBアデノウイルスの既知の領域であり、ウイルスゲノムの約18%に相当する。それは、タンパク質IVa2、DNAポリメラーゼおよび末端タンパク質をコードすると考えられる。Ad11のSlobitski株(Ad11pと呼ばれる)では、これらのタンパク質は、それぞれゲノムシーケンスにおける5588-3964、8435-5067、10342-8438の位置にコードされ、E2B領域は10342-3950から実行される。E2B領域の正確な位置は、他の血清型では変わる可能性があるが、機能はすべて同じ一般的な組織を持っているために、これまでに調査されたすべてのヒトアデノウイルスゲノムで保存されている。
【0213】
本明細書で使用することができる複製は、p53などの罹患細胞において増加調節された遺伝子に依存する複製を伴うウイルス、および複製能力のあるウイルスを含む、インビボで複製できるウイルスを指す。
【0214】
一実施形態では、ウイルスは複製能力がある。本明細書で使用する複製能力のあるウイルスとは、E1領域(パッケージング細胞株とも呼ばれる)およびヘルパーウイルスの助けなしに複製できるウイルスによってコードされるものなどの必須ウイルスタンパク質をコードする相補的細胞株の助けなしに複製できるウイルスを指す。
【0215】
本明細書で使用するウイルスベクターは複製欠損である。本開示の複製欠損ウイルスは、複製するためにパッケージング細胞株を必要とする。パッケージング細胞株は、ウイルスが不足しているものを補完する遺伝子を含む。
【0216】
一実施形態では、本開示は、グループBアデノウイルス(複製可能グループBウイルスなど)を15~25%v/vのグリセロール、0.1~1.5%v/vのエタノール、緩衝液(%v/vは最終的な製剤の容積)を含む医薬製剤を調製し、必要に応じて、8.0~9.5、例えば、8.0~8.5(または8.5~9)などの8.0~9.5(または8.5~9.5)の範囲内のpHに調節する、プロセスを提供する。
【0217】
一実施形態では、プロセスは、0.01~0.3mM、例えば、0.25mM(または0.15mM)などの0.01~0.25mM(または0.01~2mM)のメチオニンの添加をさらに含む。
【0218】
一実施形態では、製剤は、本明細書に登録している関連する配列表に開示しているウイルス配列を含む。
【0219】
治療
本開示による製剤の患者レシピエントは、ヒトまたは家畜などの動物であってもよい。一実施形態では、患者は成人などのヒトである。
【0220】
本開示の製剤は、治療および診断用途、例えば、遺伝子治療用途、ワクチン、癌治療などのための、複製可能(複製能力のあるを含む)グループBアデノウイルスおよび複製欠損グループBアデノウイルスベクターの製剤に適している。
【0221】
さらなる態様では、本開示は、治療、特に、癌の治療における使用のための本明細書に記載の製剤に及ぶ。
【0222】
一実施形態では、治療方法は、腫瘍の治療における使用のためのものである。
【0223】
本明細書で用いられる腫瘍は、新生物とも呼ばれる、制御されずかつ進行性である過剰な細胞分裂から生じる異常な組織塊を指すことを意図している。腫瘍は良性(癌性ではない)または悪性のいずれかであり得る。腫瘍はあらゆる形態の癌および転移を包含する。一実施形態では、腫瘍は癌性である。
【0224】
一実施形態では、腫瘍は固形腫瘍である。固形腫瘍は局在性または転移性であり得る。
【0225】
一実施形態では、腫瘍は上皮起源のものである。
【0226】
一実施形態では、癌は、結腸直腸癌、肝癌、前立腺癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、甲状腺癌、腎臓癌、膀胱癌、頭頸部癌または肺癌などの悪性腫瘍である。
【0227】
一実施形態では、腫瘍は結腸直腸悪性腫瘍である。
【0228】
本明細書で使用する悪性腫瘍は、癌性細胞を指す。
【0229】
一実施形態では、腫瘍溶解性アデノウイルスは転移の治療または予防に使用される。
【0230】
一実施形態では、本明細書の製剤は薬剤耐性癌の治療に使用される。
【0231】
一実施形態では、ウイルスは、さらなる癌治療または療法の投与と組み合わせて投与される。
【0232】
一実施形態では、癌、例えば、上記の癌の治療用の医薬の製造における使用のための本開示による製剤を提供する。
【0233】
さらなる態様では、それを必要とする患者、例えばヒト患者に、本開示による製剤の治療有効量を投与することを含む、癌を治療する方法を提供する。
【0234】
一実施形態では、本明細書の製剤は、別の療法と組み合わせて投与される。
【0235】
本明細書で使用する「組み合わせて」は、癌治療または療法の前に、同時におよび/または後に本明細書の製剤が投与される場合を包含するように意図している。しかしながら、一般に、併用療法の治療計画は全般的に重複するであろう。
【0236】
癌療法は、外科手術、放射線療法、標的療法および/または化学療法を含む。
【0237】
本明細書で使用される癌治療は、治療用化合物または生物学的薬剤、例えば、癌を治療するように意図した抗体および/またはその維持療法を用いた治療を指す。
【0238】
一実施形態では、癌治療は、化学療法剤、抗体薬物複合体などの標的抗癌剤、放射線療法、放射性同位体療法、またはそれらの任意の組み合わせを含む任意の他の抗癌療法から選択される。
【0239】
一実施形態では、本開示の製剤を、外科手術(ネオアジュバント療法)などの療法に対する前処置として使用して、腫瘍を縮小、転移を治療、および/または転移もしくはさらなる転移を予防することができる。製剤を、外科手術(アジュバント療法)などの療法後に使用して、転移を治療、および/または転移もしくはさらなる転移を予防してもよい。
【0240】
一実施形態では、本開示の製剤は、維持療法で使用される。
【0241】
一実施形態では、本開示による製剤は、癌療法と組み合わせて、例えば、癌療法と同時に、投与される。
【0242】
本明細書で使用される同時には、追加の癌治療の投薬が、製剤と同時にまたはほぼ同時にということである。治療は、同じ製剤内に含まれてもよく、または別々の製剤として投与されてもよい。
【0243】
一実施形態では、ウイルスは、化学療法剤の投薬と組み合わせて、例えば、同時に、投与される。
【0244】
本明細書で使用される化学療法剤は、悪性細胞および組織に対して選択的に破壊的である特定の抗新生物化学剤または薬物を指すことを意図している。例えば、アルキル化剤、代謝拮抗剤、アントラサイクリン、植物アルカロイド、トポイソメラーゼ阻害剤、および他の抗腫瘍剤。特定の化学療法剤の例には、ドキソルビシン、5-フルオロウラシル(5-FU)、パクリタキセル、カペシタビン、イリノテカン、ならびにシスプラチンおよびオキサリプラチンなどのプラチンが含まれる。治療されている癌の性質に基づいて、担当医によって用量が選択されてもよい。
【0245】
併用療法および化学療法剤
本開示の製剤は、さらなる癌療法、例えば、化学療法と組み合わせて使用されてもよい。
【0246】
化学療法剤および化学療法剤または細胞毒性剤は、文脈がそうではないことを示さない限り、本明細書で互換的に使用される。
【0247】
本明細書で使用する化学療法については、悪性細胞および組織を「選択的に」破壊する特定の抗新生物化学薬剤または薬物、例えば、アルキル化剤、チミジル酸シンターゼ阻害剤を含む代謝拮抗剤、アントラサイクリン、植物アルカロイドを含む抗微小管剤、トポイソメラーゼ阻害剤、parp阻害剤および他の抗腫瘍剤を指すように意図している。もちろん、これらの剤の多くには深刻な副作用があるため、この文脈では選択的に大まかに使用される。
【0248】
好ましい用量は、治療されている癌の性質に基づいて、担当医によって選択され得る。
【0249】
本開示の方法で使用され得るアルキル化剤の例には、アルキル化剤、ナイトロジェンマスタード、ニトロソウレア、テトラジン、アジリジン、プラチンおよび誘導体、ならびに非古典的アルキル化剤が含まれる。
【0250】
例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、ピコプラチン、ネダプラチン、トリプラチンおよびリポプラチン(シスプラチンのリポソーム版)、特にシスプラチン、カルボプラチンおよびオキサリプラチンなどの白金含有化学療法剤(プラチンとも呼ばれる)。
【0251】
シスプラチンの用量は、正確な癌に応じて、約20~約270mg/mの範囲である。多くの場合、用量は約70~約100mg/mの範囲である。
【0252】
ナイトロジェンマスタードには、メクロレタミン、シクロホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、イホスファミド、およびブスルファンが含まれる。ニトロソウレアには、N-ニトロソ-N-メチル尿素(MNU)、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、およびセムスチン(MeCCNU)、フォテムスチン、およびストレプトゾトシンが含まれる。テトラジンには、ダカルバジン、ミトゾロミド、テモゾロミドが含まれる。
【0253】
アジリジンには、チオテパ、マイトマイシン、およびジアジコン(AZQ)が含まれる。
【0254】
本開示の方法で使用され得る代謝拮抗剤の例には、葉酸代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサートおよびペメトレキセド)、プリン類似体(例えば、チオプリン、例えば、アザチオプリン、メルカプトプリン、チオプリン、フルダラビン(リン酸塩形態を含む)、ペントスタチンおよびクラドリビン)、ピリミジン類似体(例えば、フルオロピリミジン、例えば、5-フルオロウラシル、それらのプロドラッグ、例えば、カペシタビン[Xeloda(登録商標)])、フロクスウリジン、ゲムシタビン、シタラビン、デシタビン、ラルチトレキセド(トムデックス)塩酸塩、クラドリビン、および6-アザウラシルが含まれる。
【0255】
本開示の方法で使用してもよいアントラサイクリンの例には、ダウノルビシン(ダウノマイシン)、ダウノルビシン(リポソーム)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ドキソルビシン(リポソーム)、エピルビシン、イダルビシン、現在膀胱癌治療のみに使用されているバルルビシン、およびミトキサントロン、アントラサイクリン類似体、特にドキソルビシンが含まれる。
【0256】
本開示の方法で使用され得る抗微小管剤の例には、ビンカアルカロイドおよびタキサンが含まれる。
【0257】
ビンカアルカロイドには、完全に天然の化学物質、例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン、および半合成ビンカアルカロイド、例えば、ビノレルビン、ビンデシン、ビンフルニンが含まれる。
【0258】
タキサンには、パクリタキセル、ドセタキセル、アブラキサン、カルバジタキセル、およびそれらの誘導体が含まれる。本明細書で使用されるタキサンの誘導体には、例えば、ミセル処方におけるタキソールのようなタキサンの再製剤化が含まれ、誘導体には、タキサンである出発物質を修飾するために合成化学が使用される化学誘導体も含まれる。
【0259】
本開示の方法で使用され得るトポイソメラーゼ阻害剤には、I型トポイソメラーゼ阻害剤、II型トポイソメラーゼ阻害剤、およびII型トポイソメラーゼ毒が含まれる。I型阻害剤には、トポテカン、イリノテカン、インドテカン、およびインジミテカンが含まれる。II型阻害剤には、ゲニステインとICRF 193が含まれ、ICRF193の構造は次のとおりである:
【化1】
【0260】
II型の毒には、アムサクリン、エトポシド、リン酸エトポシド、テニポシド、およびドキソルビシン、およびフルオロキノロンが含まれる。
【0261】
一実施形態では、使用される化学療法剤の組み合わせは、例えば、プラチンと5-FUまたはそのプロドラッグ、例えば、シスプラチンまたはオキサプラチンとカペシタビンまたはゲムシタビン、例えばFOLFOXである。
【0262】
一実施形態では、化学療法は、化学療法剤、特に、細胞毒性化学療法剤の組み合わせを含む。
【0263】
一実施形態では、化学療法の組み合わせは、シスプラチンなどのプラチン、およびフルオロウラシルまたはカペシタビンを含む。
【0264】
一実施形態では、カペシタビンとオキサリプラチン(Xelox)の化学療法の組み合わせ。
【0265】
一実施形態では、化学療法は、場合によりオキサリプラチンと組み合わせた、フォリン酸と5-FUの組み合わせである。
【0266】
一実施形態では、化学療法は、場合によりオキサリプラチン(FOLFIRINOX)と組み合わせた、フォリン酸、5-FUおよびイリノテカン(FOLFIRI)の組み合わせである。レジメンは、以下から構成される:イリノテカン(90分にわたって180mg/m2のIV)、同時に、フォリン酸(120分にわたって400mg/m[または2x 250mg/m]のIV);続いて、フルオロウラシル(400~500mg/mIVボーラス)、次いで、フルオロウラシル(46時間にわたって2400~3000mg/mの静脈内注入)。通常、このサイクルは2週間ごとに繰り返される。上記の投与量は、サイクルごとに変動し得る。
【0267】
一実施形態では、化学療法の組み合わせは、微小管阻害剤、例えば、硫酸ビンクリスチン、エポチロンA、N-[2-[(4-ヒドロキシフェニル)アミノ]-3-ピリジニル]-4-メトキシベンゼンスルホンアミド(ABT-751)、タキソール由来化学療法剤、例えば、パクリタキセル、アブラキサン、またはドセタキセルまたはそれらの組み合わせを利用する。
【0268】
一実施形態では、組み合わせはmTor阻害剤を使用する。mTor阻害剤の例には、エベロリムス(RAD001)、WYE-354、KU-0063794、パパマイシン(シロリムス)、テムシロリムス、デフォロリムス(MK-8669)、AZD8055およびBEZ235(NVP-BEZ235)が含まれる。
【0269】
一実施形態では、組み合わせはMEK阻害剤を利用する。MEK阻害剤の例には、AS703026、CI-1040(PD184352)、AZD6244(セルメチニブ)、PD318088、PD0325901、AZD8330、PD98059、U0126-EtOH、BIX 02189またはBIX 02188が含まれる。
【0270】
一実施形態では、組み合わせはAKT阻害剤を使用する。AKT阻害剤の例には、MK-2206およびAT7867が含まれる。
【0271】
一実施形態では、組み合わせは、オーロラキナーゼ阻害剤を利用する。オーロラキナーゼ阻害剤の例には、オーロラA阻害剤I、VX-680、AZD1152-HQPA(バラセルチブ)、SNS-314メシレート、PHA-680632、ZM-447439、CCT129202およびヘスペラジンが含まれる。
【0272】
一実施形態では、組み合わせは、例えば、WO2010/038086に開示されているp38阻害剤、例えば、N-[4-({4-[3-(3-tert-ブチル-1-p-トリル-1H-ピラゾール-5-イル)ウレイド]ナフタレン-1-イルオキシ}メチル)ピリジン-2-イル]-2-メトキシアセトアミドを使用する。
【0273】
一実施形態では、組み合わせは、例えば、ダクトリシブ、ピクチリシブ、LY294002、イデラルシブ、ブパリリシブ、オートフィニブ、セラベリシブ、IP1-549、SF2534、GDC-0326、SAR405、TGR-1202、VPS34、GSK2269557、740Y-P、PI-103、NU7441、TGX-221、IC-87114、ワーマンニン、XL147アナログ、ZSTK474、アルペリシブ、AS-605240、PIK-75、3-メチルアデニン、A66、ボクスタリシブ、PIK-93、AZD6482、PF-04691502、アピトリシブ、GSK105965、デュベリシブ、TG100-115、AS-252424、BGT226、CUDU-907、PIK-294、AS-604850、GSK2636771、コパンリシブ、YM201636、CH5132799、CAY10505、PIK-293、TG100713、VS-5584、タセリシブ、CZC24832、AMG319、GSK2292767、GDC-0084、HS-173、ケルセチン、ボクスタリシブ、GNE-317、LY3023414、VPS34-IN1、PIK-III、PI-3065、ピララリシブ、AZD8835、PF-4989216およびAZD8186から選択されるpi3K阻害剤を使用する。
【0274】
一実施形態では、この組み合わせは、Bcl-2阻害剤を利用する。Bcl-2阻害剤の例には、オバトクラックスメシル酸塩、ABT-737、ABT-263(ナビトクラックス)、およびTW-37が含まれる。
【0275】
一実施形態では、化学療法の組み合わせは、カペシタビン(ゼローダ)、リン酸フルダラビン、フルダラビン(フルダラ)、デシタビン、ラルチトレキセド(トムデックス)、ゲムシタビン塩酸塩、およびクラドリビンなどの代謝拮抗薬を含む。
【0276】
一実施形態では、組み合わせは、ガンシクロビルを含み、免疫応答および/または腫瘍血管形成の制御を支援してもよい。
【0277】
一実施形態では、組み合わせはPARP阻害剤を含む。
【0278】
一実施形態では、治療薬はガンシクロビルであり、これは免疫応答および/または腫瘍血管新生の制御を補助し得る。
【0279】
一実施形態では、本明細書の方法で使用される1つ以上の療法はメトロノーム療法、すなわち低用量の抗癌薬による連続的または頻繁な治療であり、他の治療法と同時に行われることが多い。
【0280】
サブグループBの腫瘍溶解性アデノウイルス(特に、Ad11およびEnAdなどのそれに由来するもの)は、主に壊死性機構によって癌細胞を死滅させるアポトーシスとはほとんど無関係の作用機構を有すると考えられるため、化学療法薬と特に相乗的であってもよい。さらに、化学療法中に起こる免疫抑制は、腫瘍溶解性ウイルスがより高い効率で機能することを可能にし得る。
【0281】
本明細書で使用する治療用量は、特に、副作用を制限する容量を誘導することなく適切な治療計画で使用されるときに意図された治療効果を達成するのに適した、例えば、疾患の症状または状態を改善する、腫瘍溶解性アデノウイルスなどのウイルスの量を指す。ウイルス粒子の数が以下の結果をもたらすのに十分であり得る場合、用量は癌または転移の治療における治療用量と見なされ得る:腫瘍もしくは転移増殖が減速または停止する、または腫瘍もしくは転移のサイズが縮小することが見出されるおよび/または患者の寿命が延びる。適切な治療用量は、一般に、治療効果と許容される毒性との間のバランスであり、例えば、副作用および毒性が治療によって達成される利益を考えると許容される場合である。
【0282】
一実施形態では、本開示による腫瘍溶解性アデノウイルスの非経口製剤の複数の用量を単一の治療サイクルで全身投与することが提供され、例えば、各投与で与えられる総用量は、用量当たり1x1010~1x1014個のウイルスの粒子の範囲である。
【0283】
一実施形態では、ウイルスまたはそれを含む組成物の1回以上の用量(例えば、各用量)は、ウイルス粒子送達の速度が毎分2×1010個の粒子から毎分2×1012個の粒子の範囲になるように投与される。
【0284】
一実施形態では、本開示によるウイルスまたは治療用構築物(それを含む製剤を含む)は毎週投与され、例えば最初の1週間は、1、3、5日目に用量が投与され、その後毎週1回投与される。
【0285】
一実施形態では、本開示によるウイルスまたは治療用構築物(それを含む製剤を含む)は、週2回または週3回投与され、例えば、1週目は1、3および5日目に1回投与され、2週目または3週目もその1、3および5日目に投与される。この投与計画は、必要に応じて何度でも繰り返すことができる。
【0286】
一実施形態では、本開示による製剤(それを含む製剤を含む)は、例えば、治療サイクルにおいて、または維持療法として、毎月投与される。
【0287】
一実施形態では、本開示のウイルスおよび構築物は、組換え技術によって調製される。当業者は、武装アデノウイルスゲノムが、ゲノムまたは全ゲノムの一部を含むプラスミドを完全に合成することを含む他の技術的手段によって製造され得ることを理解するであろう。当業者は、ゲノムを合成する場合、後者はクローニング法を用いた遺伝子の挿入後の人工物であるので、挿入領域は制限部位ヌクレオチドを含まなくてもよいことを理解するであろう。
【0288】
一実施形態では、武装化アデノウイルスゲノムは完全に合成的に製造される。
【0289】
本明細書の文脈において、「含む(comprising)」は「含む(including)」と解釈されるべきである。
【0290】
特定の特徴/要素を含む本発明の実施形態は、関連する要素/特徴「からなる(consisting)」または「から本質的になる(consisting essentially)」代替の実施形態にも及ぶことも意図する。
【0291】
技術的に適切な場合には、本発明の実施形態を組み合わせることができる。
【0292】
特許および出願などの技術的参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0293】
本明細書に具体的かつ明示的に列挙された任意の実施形態は、単独で、または1つ以上のさらなる実施形態と組み合わせて、「除くクレーム」に基づいて形成し得る。
【0294】
本明細書の見出しは、文書を節に分割するために使用され、本明細書で提供される開示の意味を解釈するために使用されることを意図していない。
【0295】
本出願は、2018年1月31日に提出され、参照により本明細書に組み込まれるGB1801614.7からの優先権を主張する。この優先権出願は、本明細書の修正の根拠として使用することができる。
【0296】
本発明は、例示のためだけにある以下の例においてさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0297】
図1】さまざまなpH値の範囲にわたって、さまざまな緩衝液中のグループBアデノウイルスの安定性を比較した実験結果を示す。(A)2~8で20ヶ月間保存されたアデノウイルスの安定性(B)25°Cで8週間保管されたグループBアデノウイルスの安定性。
図2-1】グループBアデノウイルスの安定性に対するグリセロールの効果を決定するための実験結果を示す。(A)グラフは、8~20%の範囲のさまざまなグリセロール濃度の範囲にわたる0週目、7週目、17週目のグループBアデノウイルスの安定性を示す。(B)グラフは、7週間にわたる多分散性におけるグリセロールの役割を示す。(C)グラフは、HPLCアッセイで測定した、0%、10%、20%のグリセロールを含む製剤中のグループBアデノウイルスの濃度変化%を示す。
図2-2】同上。
図3】エタノール/アルギニン/メチオニン/ポリソルベートがグループBアデノウイルスの安定性に寄与していることを確認するための実験結果を示す。(A)さまざまな緩衝液について、グループBアデノウイルスの効力を経時的に示すグラフ。(B)さまざまな緩衝液について、グループBアデノウイルスの濃度を経時的に示すグラフ。(C)グリセロール、HEPES緩衝液、エタノール、アルギニン、メチオニンおよびポリソルベートを含む対照製剤の濃度を経時的に示すグラフ。
図4-1】4℃での長期間保存中のアデノウイルスの効力に対するエタノール、アルギニン、メチオニンの影響を示す実験結果を示す。(A)は、20%グリセロールを含む5mMのHEPESにおけるグループBアデノウイルスの効力を示す。(B)エタノールが製剤に含まれる場合の相対効力への影響を示すグラフ。(C)エタノールおよびメチオニンが製剤に含まれている場合の相対効力への影響を示すグラフ。(D)エタノール、メチオニン、アルギニンが製剤に含まれている場合の相対効力への影響を示すグラフ。(E)図4B~4Dで試験した製剤についてアデノウイルスの濃度を経時的に示すグラフ。
図5】アデノウイルスの安定性に対するポリソルベートの効果を評価するための実験結果を示す。(A)0.115%のポリソルベートが0.15%のポリソルベートに対して製剤に含まれている場合のアデノウイルスの効力を経時的に示すグラフ。(B)0.115%のポリソルベートが0.15%のポリソルベートに対して製剤に含まれている場合のアデノウイルスの濃度を経時的に示すグラフ。
図4-2】同上。
図4-3】同上。
図6A】25℃で10週間の期間にわたってさまざまな製剤で保存されたアデノウイルスの安定性を評価するための実験結果を示す。(A)25℃で10週間の期間にわたってさまざまな製剤で保存されたアデノウイルスの効力。(B)25℃で10週間の期間にわたってさまざまな製剤で保存されたアデノウイルスの濃度。
図6B】同上。
図7】陰イオン交換クロマトグラフィーで分析したAd5(グループCウイルス)およびAd11(グループBウイルス)の相対保持時間を示す。
図8A】4℃で保存された腫瘍溶解性の相対的効力分析(20%のグリセロール、1.4%のエタノール、15mMのアルギニン、0.25mMのメチオニン)を示す。
図8B】全ウイルスに対する4℃で保存された感染性ウイルス粒子の比(20%のグリセロール、1.4%のエタノール、15mMのアルギニン、0.25mMのメチオニン)を示す。
図8C】腫瘍溶解性の相対的効力分析(20%のグリセロール、1.4%のエタノール、15mMのアルギニン、0.25mMのメチオニン)を示す。
図8D】AEX-HPLCによるウイルス濃度(20%のグリセロール、1.4%のエタノール、15mMのアルギニン、0.25mMのメチオニン)を示す。
図8E】ウイルス全体に対する感染性ウイルス粒子の比(20%のグリセロール、1.4%のエタノール、15mMのアルギニン、0.25mMのメチオニン)を示す。
【0298】
配列
配列番号1:スプライスアクセプター(SA)。配列番号2:分岐スプライスアクセプター(BSA)。配列番号3:内部リボソーム侵入配列(IRES)。配列番号4:ポリアデニル化配列。
配列番号:5 EnAdゲノムのbp28166-28366に対応するBX DNA配列。配列番号6:EnAdゲノムのbp29345-29379に対応し、これを含むBY DNA配列。配列番号7:リーダー配列。配列番号8:リーダー配列。配列番号9:P2Aペプチド。配列番号10:F2Aペプチド。配列番号11:E2A ペプチド。配列番号12:2Aペプチド。配列番号13:EnAdゲノム。配列番号14:NG-73ウイルスゲノム配列。配列番号15:NG-74ウイルスのゲノム配列。配列番号16:NG-76ウイルスゲノム配列。配列番号17:NG-77ウイルスゲノム配列。配列番号18:NG-78ウイルスゲノム配列。
配列番号19:NG-92ウイルスゲノム配列。配列番号20:NG-95ウイルスゲノム配列。配列番号21:NG-96ウイルスのゲノム配列。配列番号22:NG-97ウイルスゲノム配列。配列番号23:NG-134ウイルスゲノム配列。配列番号24:NG-135ウイルスゲノム配列。配列番号25:領域BYに挿入されたサイトカインTNFaをコードする導入遺伝子カセットからなるNG-139ウイルスゲノム配列。配列番号26:領域BYに挿入された抗VEGF全長抗体をコードする導入遺伝子カセットからなるウイルスゲノム配列。導入遺伝子カセットには、SSA、5´リーダーを有するab重鎖配列、SSA、およびab軽鎖配列が含まれる。配列番号27:領域BYに挿入された抗VEGF全長抗体をコードする導入遺伝子カセットからなるウイルスゲノム配列。配列番号28:BY領域に挿入された抗VEGF全長抗体をコードする導入遺伝子カセットからなるNG-165ウイルスゲノム配列。配列番号29:BY領域に挿入された、C末端His6タグを有する抗VEGFScFvをコードする導入遺伝子カセットからなるNG-167ウイルスゲノム配列。配列番号:30:領域BYに挿入された抗PD-L1全長抗体をコードする導入遺伝子カセットからなるNG-177ウイルスゲノム配列。配列番号31:BXおよびBY領域に挿入された固有の制限部位を有するEnAdゲノムからなるNG-185ウイルスゲノム配列。配列番号32:領域BYに挿入された抗PD-L1全長抗体をコードする導入遺伝子カセットからなるNG-190ウイルスゲノム配列。配列番号33:領域BYに挿入された腫瘍関連抗原NY-ESO-1をコードする導入遺伝子カセットからなるNG-217ウイルスゲノム配列。配列番号34:領域BYに挿入された腫瘍関連抗原NY-ESO-1をコードする導入遺伝子カセットからなるNG-220ウイルスゲノム配列。配列番号35:領域BYに挿入された、C末端His6タグを有する抗PD-L1ScFvをコードする導入遺伝子カセットを持つEnAdゲノムからなるNG-221ウイルスゲノム配列。配列番号36:領域BYに挿入された抗CTLA-4全長抗体をコードする導入遺伝子カセットからなるNG-242ウイルスゲノム配列。配列番号37:領域BXに挿入された抗VEGFScFvをコードする導入遺伝子カセットを有するEnAdゲノムを含むNG-257ウイルスゲノム配列。配列番号38:領域BYに挿入された抗VEGF全長抗体をコードする導入遺伝子カセットからなるNG258ウイルスゲノム配列。配列番号39:領域BYに挿入された抗VEGFScFvおよび抗PD-L1ScFvをコードする導入遺伝子カセットを有するEnAdゲノムを含むNG-272ウイルスゲノム配列。配列番号40:領域BYに挿入されたヨウ化ナトリウム共輸送体(NIS)をコードする導入遺伝子カセットからなるNG-280ウイルスゲノム配列。配列番号41:領域BXに挿入された抗VEGFScFvをコードする導入遺伝子カセットおよび領域BYに挿入された抗PD-L1ScFvをコードする第2の導入遺伝子カセットを有するEnAdゲノムを含むNG-281ウイルスゲノム配列。配列番号42:領域BYに挿入されたTリンパ球活性化抗原CD80をコードする導入遺伝子カセットを有するEnAdゲノムを含むNG-330ウイルスゲノム配列。導入遺伝子カセットには、5´SSA、ヒトCD80cDNA配列、および3´ポリ(A)配列が含まれる。配列番号43:領域BYに挿入されたIFNαおよびCD80をコードする導入遺伝子カセットを有するEnAdゲノムを含むNG-343ウイルスゲノム配列。導入遺伝子カセットには、5´SSA、IFNαcDNA配列、P2Aペプチド、CD80cDNA配列、および3´ポリ(A)配列が含まれる。配列番号44:NG-641ゲノム。配列番号45:領域BYに挿入されたFlt3リガンド、MIP1αおよびIFNαをコードする導入遺伝子カセットを有するEnAdゲノムを含むNG-345ウイルスゲノム配列。導入遺伝子カセットには、5´SSA、Flt3リガンドcDNA配列、P2Aペプチド配列、MIP1αcDNA配列、T2Aペプチド配列、IFNαcDNA配列、および3´ポリ(A)配列が含まれる。配列番号46:領域BYに挿入されたFlt3リガンド、MIP1αおよびCD80をコードする導入遺伝子カセットを有するEnAdゲノムを含むNG-346ウイルスゲノム配列。導入遺伝子カセットには、5´SSA、Flt3リガンドcDNA配列、P2Aペプチド配列、MIP1αcDNA配列、T2Aペプチド配列、CD80cDNA配列、3´ポリ(A)配列が含まれる。配列番号47:領域BYに挿入されたIFNα、MIP1αおよびCD80をコードする導入遺伝子カセットを有するEnAdゲノムを含むNG-347ウイルスゲノム配列。導入遺伝子カセットには、5´SSA、IFNαcDNA配列、P2Aペプチド配列、MIP1αcDNA配列、T2Aペプチド配列、CD80cDNA配列、および3´ポリ(A)配列が含まれる。配列番号48:領域BYに挿入された膜アンカー型の単鎖Fv抗ヒトCD3eキメラ形態をコードする導入遺伝子カセットとTリンパ球活性化抗原CD80を有するEnAdゲノムを含むNG-348ウイルスゲノム配列。導入遺伝子カセットには、5´SSA、膜アンカー型抗CD3εcDNA配列、P2Aペプチド、ヒトCD80cDNA配列および3´ポリ(A)配列を含まれる。配列番号49:領域BYに挿入された、C端末V5タグを有する単鎖Fv抗ヒトCD3eの膜アンカー型キメラ形態をコードする導入遺伝子カセットとTリンパ球活性化抗原CD80を有するEnAdゲノムを含むNG-348Aウイルスゲノム配列。導入遺伝子カセットには、5´SSA、膜アンカー型抗CD3εcDNA配列、V5タグ、P2Aペプチド、ヒトCD80cDNA配列および3´ポリ(A)配列が含まれる。配列番号50:NG-350Aゲノム配列、配列番号51:領域BYに挿入された単鎖Fv抗ヒトCD3eの膜アンカー型キメラ形態をコードする導入遺伝子カセットを有するEnAdゲノムを含むNG-420ウイルスゲノム配列。導入遺伝子カセットには、5´SSA、膜アンカー型抗CD3εcDNA配列および3´ポリ(A)配列が含まれる。配列番号52:領域BYに挿入された単鎖Fv抗ヒトCD3eの膜アンカー型キメラ形態をコードする導入遺伝子カセットとC端末V5タグを有するEnAdゲノムを含むNG-420Aウイルスゲノム配列。導入遺伝子カセットには、5´SSA、膜アンカー型抗CD3εcDNA配列、V5タグ配列および3´ポリ(A)配列が含まれる。配列番号53:NG-601(EnAd-CMV-EpCANBiTE)。配列番号54:NG-602(EnAd-SA-EpCANBiTE)。配列番号55:NG-605(EnAd-CMV-FAPBiTE)。配列番号56:NG-606(EnAd-SA-FAPBiTE)。配列番号57:NG-611ゲノム。配列番号58:NG-612ゲノム。配列番号59:NG-613ゲノム。配列番号60:NG-614ゲノム。配列番号61:NG-615ゲノム。配列番号62:NG-616ゲノム。配列番号63:NG-617ゲノム。配列番号64:NG-618ゲノム。配列番号65:NG-640ゲノム。
【実施例0299】
実施例1:アデノウイルス製剤の安定性に対するpHの影響の試験
グループBアデノウイルス製剤の安定性に対するpHの影響を決定する実験を行った。異なる緩衝液、すなわち、炭酸塩/重炭酸塩、ジエタノールアミン、Gly-NaCl、HEPE、メグルミン、ホウ酸ナトリウムおよびTris緩衝液を試験した。各緩衝液を、異なるpH値の範囲、すなわち、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0で製造した。各緩衝液には、グリセロール、エタノール、アルギニン、メチオニンおよびポリソルベートも含まれていた。EnAdを各緩衝液に懸濁し、製剤を4℃で保存した。各製剤から試料を定期的に採取し、各製剤中のアデノウイルスの安定性を、HPLCを使用して試料中のウイルスDNAの濃度を測定することにより測定した。DNAの濃度が低いほど、ウイルス分解のレベルが高く、したがって、安定性が低いことを強く示していた。
【0300】
実験の結果を図1Aおよび1Bに示す。図1Aから分かるように、pHはアデノウイルスの安定性に大きな影響を与える。ピークの安定性がpH9.0で観察され、これは、pHが8.0に低下または10.0に上昇したときに、著しく低下した。同様の影響は、25℃での短期間(最大8週間)保存でも観察された(図1B)。重要なことに、異なる緩衝液間で安定性にはわずかなばらつきがあるが、pHの影響がはるかに重要であり、どの緩衝液が製剤において使用されたかに拘わらず、pH9.0から最も遠い製剤が最低の安定性を示した。したがって、結果は、8.5~9.5のpHが最良の安定性を提供することを示唆している。
【0301】
実施例2:アデノウイルス製剤の安定性に対するグリセロールの影響の試験
一連の実験を行って、グリセロールが製剤に含まれた場合のグループBアデノウイルス製剤の安定性への影響を判定した。3つの濃度、すなわち、9%、14%、20%で決定的スクリーニング計画(Definitive Screening Design(DSD))を使用して組み合わせて、グリセロールをスクリーニングした。結果を、SAS JMP統計ソフトウェアを使用して分析した。DSDデータに基づいて、モデルを作成した。各製剤は10mMのHEPESも含んでいた。アデノウイルスを各製剤に懸濁し、製剤を4℃で17週間の期間保存した。製剤の安定性を、HPLCを使用して、試料のウイルスDNA濃度を測定することにより、0週目、7週目、17週目に評価した。
【0302】
結果を図2Aに示す。認識できるように、グリセロール濃度と安定性との間には明確な相関関係があり、より高いグリセロール濃度を有する製剤はより高い安定性を有する。効果は17~20%のグリセロール濃度のマーク付近で徐々に減少するように考えられ、20%グリセロールを超えても安定性に大きな影響を与える可能性は低いことを示唆している。したがって、これらの結果は、グリセロール濃度が15~20%の場合に安定性が大幅に向上し、濃度が約19~20%の場合に最良の結果が得られる可能性が高いことを示唆している。
【0303】
図2Bおよび2Cは、0%、10%および20%のグリセロール製剤が、37℃での保存(図2B)および25℃での保存後に評価された追加の研究の結果を示す。図2Bは、多分散性(溶液内の分子量の分布の尺度であり、より高い多分散性は、グループBアデノウイルスのより大きい劣化と相関する)は、10%または20%のグリセロールを添加した場合と比較して、グリセロールが製剤から除かれている場合に、かなり高いことを示す。図2Cは、グループBアデノウイルス濃度の経時的な%変化を示し、10%または20%のグリセロールを製剤に添加した場合と比較して、グリセロールを使用しない場合に、濃度レベルの急勾配で急激な低下を明確に示している。したがって、これらの結果は、図2Aの調査結果、すなわち、グリセロールを製剤に含めることが安定性に大きな影響を与えることも裏付けている。
【0304】
実施例3:グループBアデノウイルス製剤の安定性に対するエタノール/アルギニン/メチオニン/ポリソルベートの添加の効果の試験
エタノール/アルギニン/メチオニン/ポリソルベートが製剤から除かれている場合のグループBアデノウイルス製剤の安定性への影響を判定するために、一連の実験を行った。異なる範囲の緩衝液、すなわち、HEPES5mM、メグルミン10mM、TRIS10mMおよびGly-NaCl10mMを試験した。いずれかのエタノール、アルギニン、メチオニンまたはポリソルベートを含む製剤はなかった。グループBアデノウイルスを各製剤に懸濁し、製剤を4℃で9ヶ月間保存した。製剤の安定性および効力は、それぞれHPLCおよびMTS(細胞を溶解するアデノウイルスの能力を評価する細胞生存率アッセイ)により、3ヶ月間隔、すなわち、0ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月でそれぞれ評価された。
【0305】
図3Aは、9か月間の保存期間にわたるグループBアデノウイルスの効力を示す。認識できるように、この時間枠にわたってグループBアデノウイルスの大幅な劣化が存在し、製剤の大部分は9ヶ月のマークまでに0U/vpの効力に近づいている。注目すべき例外は、メグルミン含有製剤であるが、この製剤でさえ、元来の開始レベルである1U/vpから約0.5U/vpへの大幅な低下を免れず、すなわち、製剤中のグループBアデノウイルスの効力は9ヶ月後に半分になった。この結果は、メグルミン緩衝液がグループBアデノウイルスの効力を維持するのに最良であることを示唆していて、製剤にエタノール、アルギニン、メチオニン、ポリソルベートを含めることの重要性も強調している。
【0306】
図3Bは、9ヶ月の期間にわたるグループBアデノウイルスの濃度レベルを示し、試験した製剤すべてについて、9ヶ月の期間にわたって濃度が大幅に低下する傾向を示している。比較のために、図3Cは、エタノール/アルギニン/メチオニン/ポリソルベートを含む製剤中のグループBアデノウイルスの濃度を示す。4℃で20ヶ月間保存した後でさえ、観測されるグループBアデノウイルスの濃度が安定していることに注意されたい。図3Bに基づいて、少なくとも濃度レベルに関しては、TRIS緩衝液が最良のパフォーマンスとなるように考えられる。この実験は、これらの成分が製剤の全体的な安定性にとって重要であることも示している。
【0307】
実施例4:アデノウイルス製剤の安定性に対するエタノール、アルギニンおよびメチオニンの個別の影響の試験
実施例3の結果に続いて、4℃での長期間(24ヶ月間)保存中のグループBアデノウイルス製剤の安定性に対するエタノール、アルギニンおよびメチオニンの各々の相対的影響を判定する試みにおいて、さらなる実験を行った。
【0308】
MTSアッセイの結果を図4に示す。第1は1%のエタノール(図4A)、第2は1%のエタノールおよび0.15mMのメチオニン(図4C)、第3は1%のエタノール、0.15mMのメチオニンおよび10mMのアルギニン(図4B)である3つの異なる製剤を試験した。試験した製剤のすべてが5mMのHEPES、17%のグリセロールを含み、そのpHは8.0であった。
【0309】
結果は、グループBアデノウイルスの効力が、HEPESおよびグリセロールのみを有し、これらの成分をいずれも含まない対照製剤と比較して、3つの成分すべてによって保持されることを示唆している。対照製剤の効力は3ヶ月以内に0.5U/vpに低下したが、図4A~4Cは、3つの成分を添加する場合に安定期間が大幅に延長されることを示唆している。具体的には、結果は、エタノールの添加により製剤の安定性が約6ヶ月間延長され、エタノールおよびメチオニンの添加により安定性が約15か月間改善され、エタノール、メチオニンおよびアルギニンの添加により安定性が約12か月間改善されることを示唆している。したがって、これらの結果は、エタノール、メチオニン、アルギニンのすべてが安定性に寄与することを示している。
【0310】
図4Dは、HPLCによって決定されたアデノウイルスの濃度レベルを示していて、24ヶ月の保存期間を通して、3つの製剤すべてについてウイルス濃度がほぼ一定のままであることを示唆している。これはおそらく、エタノールが3つの製剤すべてに存在することを考えると、エタノールが最良の影響を与えることを示唆している。
【0311】
実施例5:グループBアデノウイルス製剤の安定性に対するポリソルベートの効果の試験
この実施例では、4℃での長期間(20ヶ月間)保存中のアデノウイルス製剤の安定性に関するポリソルベートの重要性を評価する実験の結果について説明する。
【0312】
1つは0.115%のポリソルベート80、他は0.15%のポリソルベート80である2つの製剤について試験した。両方の製剤はまた、20%のグリセロール、5mMのHEPES、1.5%のエタノール、10mMのアルギニン、0.2mMのメチオニンも含み、それらのpHは8.0であった。
【0313】
実験の結果を図5Aおよび5Bに示す。図5Aは、0.15%のポリソルベートを含む製剤の場合に製剤の効力が10ヶ月付近で約0.5U/vpまで徐々に低下するが、20ヶ月の時点まで0.5U/vpで安定したままであることを示している。したがって、ポリソルベートは、製剤中のアデノウイルスの効力を維持するのに大きな寄与をしているように考えられる。効力の低下は、0.115%を含む製剤についても同様である。これは、ポリソルベートを約0.1%に保つと、安定性の良い製剤が得られることを示唆している。
【0314】
図5Bは、HPLCによって決定されたアデノウイルスの濃度レベルを示していて、20ヶ月間の保存期間を通して、ウイルス濃度が両方の製剤についてかなり一定のままであることを示唆している。
【0315】
実施例6:異なる緩衝液およびグループBアデノウイルス製剤の安定性に対するそれらの影響の試験
この実施例では、25℃での短期間(11週間)保存中にグループBアデノウイルス製剤中で使用した場合の異なる緩衝液の安定性を比較する実験の結果について説明している。
【0316】
7つの異なる製剤、すなわち、pH9.0のGly-NaCl、pH8.0のTRIS、pH8.8のTRIS、pH8.0のメグルミン、pH8.5のメグルミン、pH9.0のメグルミン、およびpH8.0のHEPESについて試験した。製剤のすべてが、20%のグリセロール、1.4%のエタノール、15mMのアルギニン、0.15または0.25mMのメチオニン、0.15%のポリソルベートを含んでいた。
【0317】
結果を図6Aおよび6Bに示す。図6Aは、効力比(100ppc/RS)を経時的に示し、図6Bは、経時的に測定された製剤の濃度(vp/ml)を示す。グラフに基づいて、製剤の安定性が高くなるおおよその順序は、HEPE、TRIS、Gly-NaClおよびメグルミン(最良)であると考えられる。
【0318】
実施例7
安定性を示す方法のより幅広いパネルを用いて、加速条件でのスクリーニング方法を使用して特定された条件が4℃の長期間保存に変換されることを確認する実験を行った。一連の異なる緩衝液、すなわち、pH8.0のメグルミン、pH8.5のメグルミン、pH9.0のメグルミン、pH8.5のTRIS、およびGly-NaClをすべて10mMで試験した。製剤のすべてが、20%のグリセロール、1.4%のエタノール、15mMのアルギニン、0.25mMのメチオニンを含んでいた。グループBアデノウイルス製剤は、4℃および-80℃の両方で12ヶ月の期間保存された。4°Cで保存された製剤の安定性および効力は、AEX-HPLC(ウイルス濃度)、MTS(アデノウイルスが細胞を溶解する能力を評価する細胞生存率アッセイ)、および感染力アッセイ(細胞に感染し、かつ複製を開始するアデノウイルスの能力を評価する)によって評価された。12ヶ月後、-80℃および4℃で保存された試料は、同じ方法を使用して一緒に分析された。
【0319】
4℃で保存したアデノウイルスの定期的分析の結果を図8Aおよび8Bに示す。図8AにおけるMTS(相対的な腫瘍溶解力)は、pH8.0で保存されたアデノウイルスが、pH8.5およびpH9.0緩衝液中に保存された場合よりも長期間安定であることを示している。これは、図8Bに示す代替分析によって確認され、4℃での保存時に存在する非感染性粒子の比率は、pHが上昇するにつれてより早く増加する。pH8.0では、賦形剤(グリセロール、メチオニン、アルギニンおよびエタノール)が存在するため、アデノウイルスは保存中最も安定している。
【0320】
図8C、8Dおよび8Eにおいては、4℃で保存したアデノウイルスを-80℃で同じ期間保存したアデノウイルスと比較している。すべての図において、グリセロール対照はpH7.8で緩衝され、20%のグリセロールを含み、他の賦形剤は含まない。図8Dにおいて、いずれかの温度で試験した製剤のいずれかにおいてAEX-HPLCによって検出されたアデノウイルスの濃度に変化がないことが確認される。図8Cにおいては、両方の温度条件で保存されたアデノウイルスの相対的腫瘍溶解力(MTS)を比較している。1つ以上の賦形剤(エタノール、アルギニンまたはメチオニン)の存在により、-80℃と比較して4℃で保存した場合にアデノウイルスの効力が安定していた。すべての賦形剤が存在する場合、効力によって測定された4℃でのアデノウイルスの安定性はpH8.0で最大であり、pHが増加するにつれて安定性は減少した。保存時の非感染性粒子の形成率を比較する図8Eの結果により、腫瘍溶解力(MTS)の結果が確認される。
【0321】
ウイルスを4℃で12ヶ月間保存すると、1つ以上の賦形剤(メチオニン、アルギニン、エタノールおよびグリセロール)の存在がアデノウイルスの安定性を改善することが確認された。結果により、4℃で保存した場合に、アデノウイルスの安定性にとってpHの維持が不可欠であることが確認された。この実験では、安定性についての最適なpHは8.0であり、pHの増加とともに安定性が低下した。実施例1では、データは、pH>8.0がより安定していて、8.5~9.0が最適であることを示している。ただし、pH8.0で試験した唯一の緩衝液条件はHEPESであった。したがって、糖ベースの緩衝剤であるメグルミンは、実施例1で使用したHEPES緩衝液と比較して、pH8.0でアデノウイルスに対してより大きな安定化効果を有すると結論付けることができる。
図1
図2-1】
図2-2】
図3
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
【配列表】
2024045278000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-02-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グループBアデノウイルスに適した液体製剤であって、
a)複製可能なグループBアデノウイルスなどのグループBアデノウイルスと、
b)15~25%v/vのグリセロール、例えば、16、17、18、19、20、21%v/vのグリセロールと、
c)0.1~1.5%v/vのエタノール、例えば、1%v/vのエタノールなどの0.2~1%v/vのエタノールと、
d)緩衝液と、を含み、
前記製剤のpHが、8.0~9.6の範囲内にあり、例えば、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4または9.5である、製剤。
【外国語明細書】