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特開2024-45306胚性間葉系始原細胞の製造方法及び使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045306
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】胚性間葉系始原細胞の製造方法及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0775 20100101AFI20240326BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C12N5/0775
C12N5/10
【審査請求】有
【請求項の数】47
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024009117
(22)【出願日】2024-01-25
(62)【分割の表示】P 2022006815の分割
【原出願日】2018-05-25
(31)【優先権主張番号】62/514,467
(32)【優先日】2017-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/511,907
(32)【優先日】2017-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514266932
【氏名又は名称】カイト ファーマ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Kite Pharma, Inc
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グシュウェン エリック
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス ルーベン
(72)【発明者】
【氏名】オウヤン ヨン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ヒト胚性間葉系始原(hEMP)細胞、それらの派生物を作製する改善された方法、及びT細胞の効率的な作製のための該方法の使用を提供する
【解決手段】ヒト胚性間葉系始原(hEMP)細胞を作製する方法であって、(a)非クラスター形成幹細胞を、規定の単一細胞密度で基材と接触させる工程と、(b)前記幹細胞を、細胞増殖を促進する培養条件下で所望のコンフルエンスまで培養する工程と、(c)前記培養条件を変更することで、前記幹細胞のhEMP細胞への分化を所望のインキュベート時間にわたり誘導し、それによりhEMP細胞を作製する工程と、を含む、方法とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト胚性間葉系始原(hEMP)細胞を作製する方法であって、
(a)非クラスター形成幹細胞を、規定の単一細胞密度で基材と接触させる工程と、
(b)前記幹細胞を、細胞増殖を促進する培養条件下で所望のコンフルエンスまで培養する工程と、
(c)前記培養条件を変更することで、前記幹細胞のhEMP細胞への分化を所望のインキュベート時間にわたり誘導し、それによりhEMP細胞を作製する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記幹細胞は、ヒト胚性幹(ES)細胞又は人工多能性幹(iPS)細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ES細胞又は前記iPS細胞は、ヒト起源である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ES細胞又は前記iPS細胞は、H1細胞、H9細胞、HES3細胞、HSF1細胞、HSF6細胞、ESI-017細胞、CS02iCTR-NTn1細胞、CS03iCTR-NTn1細胞、CS80iCTR-Tn3細胞、CS179iCTR-NTn1細胞、CS201iCTR-NTn4細胞、CS202iCTR-NTn2細胞又はCS206iCTR-Tn5細胞である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記規定の単一細胞密度は、約1.5×10細胞/cmから約8×10細胞/cmの間である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記規定の単一細胞密度は、約1.89×10細胞/cm、約3.2×10細胞/cm、約3.4×10細胞/cm、約3.6×10細胞/cm、約3.79×10細胞/cm、約7.2×10細胞/cm又は約7.58×10細胞/cmである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記基材は、マウス胚性線維芽細胞(MEF)ではなく、Matrigel(商標)又は組み換えヒトビトロネクチンで被覆されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記基材は、ウェル付きプレート、細胞培養皿、メンブレン、バッグ、培養フラスコ、逆オパール構造体、ポリマー格子、静的な細胞懸濁液、撹拌された細胞懸濁液又はプラズマ処理されたポリマーである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記基材は、メンブレンを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞増殖を促進する培養条件は、mTeSR1培地中で幹細胞を培養することを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記mTeSR1培地は、ROCK阻害剤Y27632を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記所望のコンフルエンスは、約20%から約80%の間である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記コンフルエンスは、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%又は約80%である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記培養条件を変更する工程は、X-VIVO(商標)15を添加することを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記インキュベート時間は、約2日から約4日の間である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記インキュベート時間は、約2.0日、約2.5日、約3.0日、約3.5日又は約4.0日である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記インキュベート時間は、約3.5日である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記hEMP細胞をT細胞へと分化させる工程を更に含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記方法は、幹細胞のクラスターを崩壊させて非クラスター形成幹細胞を作製する工程を更に含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記幹細胞のクラスターは、機械的崩壊又は化学的崩壊によって崩壊される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記化学的崩壊は、トリプシン様酵素と一緒にインキュベートすることを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記トリプシン様酵素は、トリプシン、TrypLE Express、TrypLE
Select、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、又はトリプシン-EDTAである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか一項に記載の方法に従って作製されたヒト胚性間葉系始原(hEMP)細胞。
【請求項24】
請求項1~22のいずれか一項に記載の方法に従って作製されたヒト胚性間葉系始原(hEMP)細胞の集団を含む組成物。
【請求項25】
T細胞を作製する方法であって、
(a)マウス胚性線維芽細胞(MEF)を含まない非クラスター形成幹細胞を、規定の単一細胞密度で基材と接触させる工程と、
(b)前記幹細胞を、細胞増殖を促進する培養条件下で所望のコンフルエンスまで培養する工程と、
(c)前記培養条件を変更することで、前記幹細胞のT細胞への分化を所望のインキュベート時間にわたり誘導し、それにより幹細胞からT細胞を作製する工程と、
を含む、方法。
【請求項26】
前記幹細胞は、ヒト胚性幹(ES)細胞又は人工多能性幹(iPS)細胞である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ES細胞又は前記iPS細胞は、ヒト起源である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ES細胞又は前記iPS細胞は、H1細胞、H9細胞、HES3細胞、HSF1細胞、HSF6細胞、ESI-017細胞、CS02iCTR-NTn1細胞、CS03i
CTR-NTn1細胞、CS80iCTR-Tn3細胞、CS179iCTR-NTn1細胞、CS201iCTR-NTn4細胞、CS202iCTR-NTn2細胞又はCS206iCTR-Tn5細胞である、請求項26又は27に記載の方法。
【請求項29】
前記規定の単一細胞密度は、約1.5×10細胞/cmから約8×10細胞/cmの間である、請求項25~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記規定の単一細胞密度は、約1.89×10細胞/cm、約3.2×10細胞/cm、約3.4×10細胞/cm、約3.6×10細胞/cm、約3.79×10細胞/cm、約7.2×10細胞/cm又は約7.58×10細胞/cmである、請求項25~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記基材は、マウス胚性線維芽細胞(MEF)ではなく、Matrigel(商標)又は組み換えヒトビトロネクチンで被覆されている、請求項25~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記基材は、ウェル付きプレート、細胞培養皿、メンブレン、バッグ、培養フラスコ、逆オパール構造体、ポリマー格子、静的な細胞懸濁液、撹拌された細胞懸濁液又はプラズマ処理されたポリマーである、請求項25~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記基材は、メンブレンを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記細胞増殖を促進する培養条件は、mTeSR1培地中で幹細胞を培養することを含む、請求項25~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記mTeSR1培地は、ROCK阻害剤Y27632を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記所望のコンフルエンスは、約20%から約80%の間である、請求項25~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記コンフルエンスは、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%又は約80%である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記培養条件を変更する工程は、X-VIVO(商標)15を添加することを含む、請求項25~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記インキュベート時間は、約2日から約4日の間である、請求項25~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記インキュベート時間は、約2.0日、約2.5日、約3.0日、約3.5日又は約4.0日である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記インキュベート時間は、約3.5日である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記方法は、幹細胞のクラスターを崩壊させて非クラスター形成幹細胞を作製する工程を更に含む、請求項25~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記幹細胞のクラスターは、機械的崩壊又は化学的崩壊によって崩壊される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記化学的崩壊は、トリプシン様酵素と一緒にインキュベートすることを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記トリプシン様酵素は、トリプシン、TrypLE Express、TrypLE
Select、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、又はトリプシン-EDTAである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
請求項25~45のいずれか一項に記載の方法に従って作製されたT細胞。
【請求項47】
請求項25~45のいずれか一項に記載の方法に従って作製されたT細胞の集団を含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2017年5月26日に出願された米国仮特許出願第62/511,907号及び2017年6月2日に出願された米国仮特許出願第62/514,467号に対する優先権を主張するものであり、これらの内容全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【背景技術】
【0002】
ヒト癌は、本質的に正常細胞で構成され、この正常細胞が遺伝的又はエピジェネティックな変換を受けて異常な癌細胞となる。そうすることで、癌細胞は、正常細胞によって発現されるものとは明確に異なるタンパク質及び他の抗原を発現し始める。これらの異常な腫瘍抗原は、身体の免疫系によって、癌細胞を特異的に標的とし死滅させるのに使用され得る。しかしながら、癌細胞は、Tリンパ球及びBリンパ球等の免疫細胞が癌細胞を標的とすることに成功しないように様々な機構を利用する。
【0003】
現行のT細胞療法は、患者において癌細胞を標的とし、死滅させるために富化又は改変されたヒトT細胞に頼っている。患者又は正常なドナー由来のT細胞は、自己複製を欠くため、本来は有限増殖である。幹細胞起源からのT細胞の誘導は、治療用途のための潜在的に無制限な細胞起源を提供することとなる。多能性幹細胞を胚性中胚葉系始原体及び成熟T細胞に分化させるための効率的なin vitro法が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、とりわけヒト胚性間葉系始原(hEMP)細胞、それらの派生物を作製する改善された方法及び該方法のT細胞の効率的な作製のための使用を提供することにより上記要求に取り組んでいる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの態様においては、本開示は、ヒト胚性間葉系始原(hEMP)細胞を作製する方法であって、非クラスター形成幹細胞を、規定の単一細胞密度で基材と接触させる工程と、前記幹細胞を、細胞増殖を促進する培養条件下で所望のコンフルエンスまで培養する工程と、前記培養条件を変更することで、前記幹細胞のhEMP細胞への分化を所望のインキュベート時間にわたり誘導し、それによりhEMP細胞を作製する工程とを含む、方法を提供する。
【0006】
幾つかの実施の形態では、前記非クラスター形成幹細胞は、ヒト胚性幹(ES)細胞又は人工多能性幹(iPS)細胞である。幾つかの実施の形態では、前記ES細胞又は前記iPS細胞は、ヒト起源である。
【0007】
幾つかの実施の形態では、前記ES細胞又は前記iPS細胞は、H1細胞、H9細胞、HES3細胞、HSF1細胞、HSF6細胞、ESI-017細胞、CS02iCTR-NTn1細胞、CS03iCTR-NTn1細胞、CS80iCTR-Tn3細胞、CS179iCTR-NTn1細胞、CS201iCTR-NTn4細胞、CS202iCTR-NTn2細胞又はCS206iCTR-Tn5細胞である。
【0008】
幾つかの実施の形態では、前記規定の単一細胞密度は、約1.5×10細胞/cmから約8×10細胞/cmの間である。或る特定の実施の形態では、前記規定の単一
細胞密度は、約1.89×10細胞/cm、約3.2×10細胞/cm、約3.4×10細胞/cm、約3.6×10細胞/cm、約3.79×10細胞/cm、約7.2×10細胞/cm又は約7.58×10細胞/cmである。
【0009】
幾つかの実施の形態では、前記基材は、マウス胚性線維芽細胞(MEF)ではなく、Matrigel(商標)又は組み換えヒトビトロネクチンで被覆されている。幾つかの実施の形態では、前記基材は、ウェル付きプレート、細胞培養皿、メンブレン、バッグ、培養フラスコ、逆オパール構造体(inverse opal)、ポリマー格子、静的な細胞懸濁液、撹拌された細胞懸濁液又はプラズマ処理されたポリマーである。幾つかの実施の形態では、前記基材は、メンブレンを含む。
【0010】
幾つかの実施の形態では、前記細胞増殖を促進する培養条件は、mTeSR1培地中で幹細胞を培養することを含む。幾つかの実施の形態では、前記mTeSR1培地は、ROCK阻害剤を更に含む。或る特定の実施の形態では、前記mTeSR1培地は、ROCK阻害剤Y27632を更に含む。
【0011】
幾つかの実施の形態では、細胞は、約20%から約80%の間の所望のコンフルエンスまで増殖する。幾つかの実施の形態では、前記コンフルエンスは、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%又は約80%である。
【0012】
幾つかの実施の形態では、培養条件を変更する工程は、細胞をX-VIVO(商標)15培養培地中で培養することを含む。
【0013】
幾つかの実施の形態では、前記インキュベート時間は、約2日から約4日の間である。幾つかの実施の形態では、前記インキュベート時間は、約2.0日、約2.5日、約3.0日、約3.5日又は約4.0日である。或る特定の実施の形態では、前記インキュベート時間は、約3.5日である。
【0014】
幾つかの実施の形態では、前記方法は、前記hEMP細胞をT細胞へと分化させる工程を更に含む。
【0015】
幾つかの実施の形態では、前記方法は、幹細胞のクラスターを崩壊させて非クラスター形成幹細胞を作製する工程を更に含む。幾つかの実施の形態では、前記幹細胞のクラスターは、機械的崩壊又は化学的崩壊によって崩壊される。幾つかの実施の形態では、前記化学的崩壊は、トリプシン様酵素(TrypLE)と一緒にインキュベートすることを含む。或る特定の実施の形態では、前記トリプシン様酵素は、トリプシン、TrypLE Express、TrypLE Select、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、又はトリプシン-EDTAである。
【0016】
幾つかの実施の形態では、本明細書に記載される方法に従ってヒト胚性間葉系始原(hEMP)細胞が作製される。
【0017】
1つの態様においては、本開示は、本明細書に記載される方法に従って作製されたヒト胚性間葉系始原(hEMP)細胞の集団を含む組成物を提供する。
【0018】
1つの態様においては、本開示は、T細胞を作製する方法であって、マウス胚性線維芽細胞(MEF)を含まない非クラスター形成幹細胞を、規定の単一細胞密度で基材と接触させる工程と、前記幹細胞を、細胞増殖を促進する培養条件下で所望のコンフルエンスまで培養する工程と、前記培養条件を変更することで、前記幹細胞のT細胞への分化を所望のインキュベート時間にわたり誘導し、それにより幹細胞からT細胞を作製する工程とを
含む、方法を提供する。
【0019】
幾つかの実施の形態では、前記幹細胞は、ヒト胚性幹(ES)細胞又は人工多能性幹(iPS)細胞である。幾つかの実施の形態では、前記ES細胞又は前記iPS細胞は、ヒト起源である。
【0020】
幾つかの実施の形態では、前記ES細胞又は前記iPS細胞は、H1細胞、H9細胞、HES3細胞、HSF1細胞、HSF6細胞、ESI-017細胞、CS02iCTR-NTn1細胞、CS03iCTR-NTn1細胞、CS80iCTR-Tn3細胞、CS179iCTR-NTn1細胞、CS201iCTR-NTn4細胞、CS202iCTR-NTn2細胞又はCS206iCTR-Tn5細胞である。
【0021】
幾つかの実施の形態では、前記規定の単一細胞密度は、約1.5×10細胞/cmから約8×10細胞/cmの間である。或る特定の実施の形態では、前記規定の単一細胞密度は、約1.89×10細胞/cm、約3.2×10細胞/cm、約3.4×10細胞/cm、約3.6×10細胞/cm、約3.79×10細胞/cm、約7.2×10細胞/cm又は約7.58×10細胞/cmである。
【0022】
幾つかの実施の形態では、前記基材は、マウス胚性線維芽細胞(MEF)ではなく、Matrigel(商標)又は組み換えヒトビトロネクチンで被覆されている。幾つかの実施の形態では、前記基材は、ウェル付きプレート、細胞培養皿、メンブレン、バッグ、培養フラスコ、逆オパール構造体、ポリマー格子、静的な細胞懸濁液、撹拌された細胞懸濁液又はプラズマ処理されたポリマーである。幾つかの実施の形態では、前記基材は、メンブレンを含む。
【0023】
幾つかの実施の形態では、前記細胞増殖を促進する培養条件は、mTeSR1培地中で幹細胞を培養することを含む。幾つかの実施の形態では、前記mTeSR1培地は、ROCK阻害剤を更に含む。或る特定の実施の形態では、前記mTeSR1培地は、ROCK阻害剤Y27632を更に含む。
【0024】
幾つかの実施の形態では、細胞は、約20%から約80%の間の所望のコンフルエンスまで増殖する。幾つかの実施の形態では、前記コンフルエンスは、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%又は約80%である。
【0025】
幾つかの実施の形態では、培養条件を変更する工程は、細胞をX-VIVO(商標)15培養培地中で培養することを含む。
【0026】
幾つかの実施の形態では、前記インキュベート時間は、約2日から約4日の間である。幾つかの実施の形態では、前記インキュベート時間は、約2.0日、約2.5日、約3.0日、約3.5日又は約4.0日である。或る特定の実施の形態では、前記インキュベート時間は、約3.5日である。
【0027】
1つの態様においては、本開示は、本明細書に記載される方法に従って作製されたT細胞を提供する。
【0028】
1つの態様においては、本開示は、本明細書に記載される方法に従って作製されたT細胞の集団を含む組成物を提供する。
【0029】
本明細書に記載される任意の態様又は実施の形態は、本明細書に開示される任意の他の態様又は実施の形態と組み合わせられ得る。本開示はその詳細な説明と併せて記載されて
いるが、上述の記載は解説を意図するものであって、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲を限定するものではない。他の態様、利点、及び変更形態は、添付の特許請求の範囲に含まれる。
【0030】
本明細書で言及される特許及び科学文献は、当業者に利用可能な知識を確立する。本明細書で引用される米国特許、及び公開又は未公開の米国特許出願はいずれも、引用することにより本発明の一部をなす。本明細書で引用される公開された外国の特許及び特許出願はいずれも引用することにより本明細書の一部をなす。本明細書で引用される他の公開された参照文献、辞書、文書、原稿及び科学文献はいずれも、引用することにより本明細書の一部をなす。
【0031】
本開示の他の特徴及び利点は、図面、及び実施例を含む以下の詳細な説明、並びに特許請求の範囲から明らかとなる。
【0032】
添付の図面と併せて考慮された場合、上記及び更なる特徴は以下の詳細な説明からより明確に理解される。しかしながら、図面は限定ではなく、解説の目的であるにすぎない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】表面発現されたCD326及びCD56における変化を示す例示的なフローサイトメトリーデータを示す図である。
図2】表面発現されたCD326及びCD56における変化を示す例示的なフローサイトメトリーデータのサマリーグラフを示す図である。
図3】ES細胞又はiPS細胞からのhEMP細胞の作製のための例示的なフローチャートを示す図である。
図4】Matrigel(商標)及びビトロネクチン基材上での表面発現されたCD326及びCD56における変化を示す例示的なフローサイトメトリーデータを示す図である。
図5】ES細胞又はiPS細胞からのhEMP細胞の作製のための例示的なフローチャートを示す図である。
図6】誘導されてソーティングされたhEMP細胞の細胞純度を示すフローサイトメトリーデータを示す図である。ソーティング後の純度は、非hEMP細胞及びhEMP細胞の両方について95%超で測定された。
図7】4週目でのT細胞発達の分析を示すフローサイトメトリーデータを示す図である。採取された細胞を、以下の抗原:CD45、CD56、CD3、CD4、CD8、TCRabについての抗体で染色した。
【発明を実施するための形態】
【0034】
定義
本開示がより容易に理解されるように、まず特定の用語を以下に定義する。以下の用語及び他の用語に対する更なる定義は、本明細書を通して記載される。
【0035】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される、数量を特定していないもの(the singular forms "a," "an" and "the")は、文脈より別段の明確な指示がない限り複数の指示対象を含む。
【0036】
具体的に述べられない又は文脈より明らかでない限り、本明細書で使用される「又は」の用語は「又は」と「及び」の両方を含み、それらを包含すると理解される。
【0037】
本明細書において使用される場合、「及び/又は」の用語は、2つの指定される特徴又は成分の各々ともう一方とを含む、又はもう一方を含まない具体的な開示として理解され
る。したがって、本明細書において「A及び/又はB」等の句で使用される「及び/又は」の用語は、A及びB;A又はB;A(単独);及びB(単独)を含むことが意図される。同様に、「A、B、及び/又はC」等の句において使用される「及び/又は」の用語は、A、B及びC;A、B又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);並びにC(単独)の態様の各々を包含することが意図される。
【0038】
本明細書で使用される「例えば」及び「すなわち」の用語は、限定を意図せずに例として使用されるにすぎず、本明細書において明らかに列挙されるそれらの項目のみを指すものと解釈されるべきではない。
【0039】
「以上」、「少なくとも」、「それよりも多く」等の用語、例えば「少なくとも1つ」は、限定されないが、示される値よりも少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149又は150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000以上多い値を含むと理解される。また、任意のより大きな数、又はその間の分数も含まれる。
【0040】
逆に、「以下」の用語は示される値よりも小さい各値を含む。例えば、「100ヌクレオチド以下」は、100個、99個、98個、97個、96個、95個、94個、93個、92個、91個、90個、89個、88個、87個、86個、85個、84個、83個、82個、81個、80個、79個、78個、77個、76個、75個、74個、73個、72個、71個、70個、69個、68個、67個、66個、65個、64個、63個、62個、61個、60個、59個、58個、57個、56個、55個、54個、53個、52個、51個、50個、49個、48個、47個、46個、45個、44個、43個、42個、41個、40個、39個、38個、37個、36個、35個、34個、33個、32個、31個、30個、29個、28個、27個、26個、25個、24個、23個、22個、21個、20個、19個、18個、17個、16個、15個、14個、13個、12個、11個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、1個及び0個のヌクレオチドを含む。また、任意のより小さな数、又はその間の分数も含まれる。
【0041】
「複数」、「少なくとも2つ」、「2以上」、「少なくとも第2の」等の用語は、限定されないが、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、
81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149又は150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000以上を含むと理解される。また、任意のより大きな数、又はその間の分数も含まれる。
【0042】
明細書を通して、「含んでいる、含む(comprising)」の文言、又は「含む(comprises)」若しくは「含んでいる(comprising)」等の変化形は、示される要素、整数若しく
は工程、又は要素、整数若しくは工程の群を含むことを含意するが、任意の他の要素、整数若しくは工程、又は要素、整数若しくは工程の群を排除しないと理解される。本明細書において「含んでいる、含む」の言葉と共に態様が記載される場合はいつでも、「からなる」及び/又は「から本質的になる」の用語で記載される他の類似の態様も提供されると理解される。
【0043】
具体的に述べられておらず又は文脈より明らかでない限り、本明細書で使用される「約」の用語は、当業者によって決定される特定の値又は組成に対する許容可能な誤差範囲に含まれる値又は組成を指し、その値又は組成がどのように測定され又は決定されるのか、すなわち測定システムの制限に部分的に依存する。例えば、「約」又は「を本質的に含む、を本質的に含んでいる(comprising essentially of)」は、当該技術分野における1
回の実施当たりの1以上の標準偏差の範囲内を意味し得る。「約」又は「を本質的に含む、を本質的に含んでいる」は、最大10%(すなわち±10%)の範囲を意味し得る。したがって、「約」は、示される値よりも10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、0.01%、又は0.001%大きい又は小さい範囲に含まれると理解され得る。例えば、約5mgは、4.5mg~5.5mgの間の任意の量を含み得る。さらに、特に生物学的なシステム又はプロセスに関して、上記用語は、或る値の最大10倍又は最大5倍を意味する場合がある。特定の値又は組成が本開示で提供される場合、別段の指示がない限り、「約」又は「を本質的に含む、を本質的に含んでいる」の意味は、その特定の値又は組成に対する許容可能な誤差の範囲に含まれるとされる。
【0044】
本明細書に記載されるように、任意の濃度範囲、パーセンテージの範囲、比率範囲、又は整数の範囲は、別段の指示がない限り、述べられる範囲に含まれる任意の整数、また適切な場合には、その分数(或る整数の10分の1、及び100分の1等)の値を含むものと理解される。
【0045】
本明細書で使用される単位、接頭辞及び記号は、それらの国際単位系(SI:Systeme International de Unites)の容認される形態で提示される。数値範囲は、その範囲を規
定する数字を含む。
【0046】
別段の規定がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、この開示が関係する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。例えば、Juo, "The Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology", 2nd ed., (2001), CRC Press、"The Dictionary of Cell & Molecular Biology", 5th ed., (2013),
Academic Press、及び"The Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology", Cammack et al. eds., 2nd ed, (2006), Oxford University Pressは、この開示で使用される多くの用語の一般的な辞書を当業者に提供する。
【0047】
「投与すること、投与する(Administering)」は、当業者に知られている様々な方法
及び送達システムのいずれかを使用する、被験体に対する薬剤の物理的な導入を指す。本明細書に開示される製剤に対する例示的な投与経路として、例えば注射又は点滴による静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、脊柱又は他の非経口的な(parenteral:腸管外)投与経路が挙げられる。本明細書で使用される「非経口投与」の句は、経腸及び局所の投与以外の、通常は注射による投与様式を意味し、限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、リンパ管内、病巣内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊髄内、硬膜外、及び胸骨内の注射及び点滴、また同様にin vivo電気穿孔を含む。幾つかの実施形態では、上記製剤は、非経口的ではない経路、例えば経口で投与される。他の非経口的ではない経路として、局所、表皮、又は粘膜の投与経路、例えば、鼻腔内、経膣的、直腸、舌下又は局所的なものが挙げられる。また、投与は、例えば1回、複数回、及び/又は1以上の延長された期間に亘って行われ得る。
【0048】
本明細書で使用されるように、抗原と、第1の結合分子、抗体又はその抗原結合分子との相互作用が、参照結合分子、参照抗体又はその抗原結合分子の抗原と相互作用する能力を遮断する、制限する、阻害する、或いは減少させる場合、抗原結合分子、抗体又はその抗原結合分子は、参照抗体又はその抗原結合分子と「交差競合する」。交差競合は、完全なものであってもよく、例えば、抗原に対する結合分子の結合が、参照結合分子の抗原に結合する能力を完全に遮断するか、又は交差競合は、部分的であってもよく、例えば、抗原に対する結合分子の結合が、参照結合分子の抗原に結合する能力を減少させる。或る特定の実施形態では、参照抗原結合分子と交差競合する抗原結合分子は、参照抗原結合分子と同じ、又はそれと重複するエピトープを結合する。他の実施形態では、参照抗原結合分子と交差競合する抗原結合分子は、参照抗原結合分子とは異なるエピトープを結合する。多くの種類の競合結合アッセイ、例えば、固相直接又は間接ラジオイムノアッセイ(RIA);固相直接又は間接酵素免疫定量法(EIA);サンドイッチ競合アッセイ(Stahli
et al., 1983, Methods in Enzymology 9:242-253);固相直接ビオチン-アビジンEIA(Kirkland et al., 1986, J. Immunol. 137:3614-3619);固相直接標識アッセイ、固相直接標識サンドイッチアッセイ(Harlow and Lane, 1988, Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press);I-125標識を使用する固相直接標識RIA(Morel et al., 1988, Molec. Immunol. 25:7-15);固相直接ビオチン-アビジンEIA
(Cheung, et al., 1990, Virology 176:546-552);及び直接標識RIA(Moldenhauer et al., 1990, Scand. J. Immunol. 32:77-82)を使用して、或る一つの抗原結合分子が
他方と競合するかどうかを判断することができる。
【0049】
「抗原」は、免疫応答を誘発する、又は抗体若しくは抗原結合分子によって結合されることが可能な任意の分子を指す。免疫応答は、抗体産生若しくは特定の免疫適格細胞(immunologically-competent cells)の活性化のいずれか、又はそれらの両方を含み得る。
当業者は、実質的に全てのタンパク質又はペプチドを含む任意の高分子が抗原としての役割を果たし得ることを容易に理解する。抗原は内因性に発現され得て、すなわちゲノムDNAによって発現され得るか、又は組み換えによって発現され得る。抗原は、癌細胞等の特定の組織に特異的となり得るか、又は広く発現され得る。さらに、より大きな分子のフラグメントが抗原として作用し得る。一実施形態では、抗原は腫瘍抗原である。
【0050】
「同種異系」の用語は、一個体に由来する任意の材料を指し、該材料はその後、同種の別の個体に導入される(例えば同種異系T細胞移植)。
【0051】
「形質導入」及び「形質導入された」の用語は、外来DNAがウイルスベクターによって細胞へと導入されるプロセスを指す(Jones et al., "Genetics: principles and anal
ysis," Boston: Jones & Bartlett Publ. (1998)を参照されたい)。幾つかの実施形態では、ベクターは、レトロウイルスベクター、DNAベクター、RNAベクター、アデノウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、エプスタイン-バールウイルスベクター、パポバウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、アデノウイルス随伴ベクター、レンチウイルスベクター、又はそれらの任意の組み合わせである。
【0052】
「癌」は、身体における異常な細胞の制御されていない増殖を特徴とする、幅広い各種疾患のグループを指す。制御されていない細胞の分裂及び増殖は、隣接する組織に侵入して、リンパ系又は血流によって身体の離れた部分へと転移し得る、悪性腫瘍の形成をもたらす。「癌」又は「癌組織」は、腫瘍を含む場合がある。本開示の方法によって治療され得る癌の例として、限定されないが、リンパ腫、白血病、骨髄腫、及び他の白血球の悪性腫瘍(leukocyte malignancies)を含む免疫系の癌が挙げられる。幾つかの実施形態では、本開示の方法は、例えば、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頚部癌、皮膚又は眼内の悪性黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頚癌、膣癌、外陰癌、多発性骨髄腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(NHL)、縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫(PMBC:primary mediastinal large B cell lymphoma)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL:diffuse large B cell lymphoma)、濾胞性リンパ腫(FL)、形質転換後濾胞性リンパ腫(transformed follicular lymphoma)、脾辺縁帯リンパ腫(SMZL:splenic marginal zone lymphoma)、食道癌
、小腸癌、内分泌系の癌、甲状腺癌、副甲状腺の癌、副腎の癌、軟組織の肉腫、尿道癌、陰茎癌、慢性又は急性の白血病、急性骨髄白血病、慢性骨髄白血病(chronic myeloid leukemia)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)(非T細胞ALLを含む)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、幼少期の固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓又は尿管の癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍(spinal axis tumor)、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮癌、
扁平上皮癌、T細胞リンパ腫、石綿によって誘導されるものを含む、環境によって誘導される癌、他のB細胞悪性腫瘍、及び上記癌の組み合わせに由来する腫瘍の腫瘍サイズを減少するため使用され得る。特定の一実施形態では、癌は多発性骨髄腫である。特定の癌は、化学療法又は放射線療法に反応性となり得るが、そうでなければその癌は難治性となり得る。難治性癌は、外科的処置に適用できない癌を指し、その癌は最初に化学療法若しくは放射線療法に無反応であるか、又はその癌は経時的に無反応となるいずれかである。
【0053】
本明細書に使用される「抗腫瘍効果」は、腫瘍体積の減少、腫瘍細胞数の減少、腫瘍細胞増殖の減少、転移の数の減少、全体生存期間又は無増悪生存期間の増加、平均余命の増加、又は腫瘍と関係する様々な生理学的症状の改善として提示され得る、生物学的効果を指す。また、抗腫瘍効果は、腫瘍の発生の予防、例えばワクチンを指す場合がある。
【0054】
本明細書で使用される「サイトカイン」は、特異抗原との接触に反応して1つの細胞によって放出される非抗体タンパク質を指し、ここで、サイトカインは第2の細胞と相互作用して、第2の細胞における反応を媒介する。サイトカインは、細胞によって内因性に発現され得るか、又は被験体に投与され得る。サイトカインは、マクロファージ、B細胞、T細胞、及び肥満細胞を含む免疫細胞によって放出されて、免疫応答を伝播し得る。サイトカインは、レシピエント細胞において様々な反応を誘導し得る。サイトカインは、ホメオスタシスサイトカイン(homeostatic cytokines)、ケモカイン、炎症誘発性サイトカ
イン、エフェクター及び急性期タンパク質を含み得る。例えば、インターロイキン(IL)7及びIL-15を含むホメオスタシスサイトカインは、免疫細胞の生存及び増殖を促進し、炎症誘発性サイトカインは炎症反応を促進し得る。ホメオスタシスサイトカインの例として、限定されないが、IL-2、IL-4、IL-5、IL-7、IL-10、IL-12p40、IL-12p70、IL-15及びインターフェロン(IFN)ガンマ
が挙げられる。炎症誘発性サイトカインの例として、限定されないが、IL-1a、IL-1b、IL-6、IL-13、IL-17a、腫瘍壊死因子(TNF)-アルファ、TNF-ベータ、線維芽細胞成長因子(FGF)2、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、可溶性細胞間接着分子1(sICAM-1)、可溶性血管接着分子1(sVCAM-1)、血管内皮増殖因子(VEGF)、VEGF-C、VEGF-D及び胎盤増殖因子(PLGF)が挙げられる。エフェクターの例として、限定されないが、グランザイムA、グランザイムB、可溶性Fasリガンド(sFasL)及びパーフォリンが挙げられる。急性期タンパク質の例として、限定されないが、C反応性タンパク質(CRP)及び血清アミロイドA(SAA)が挙げられる。
【0055】
「ケモカイン」は細胞走化性又は指向性運動を媒介するサイトカインの一種である。ケモカインの例として、限定されないが、IL-8、IL-16、エオタキシン、エオタキシン-3、マクロファージ由来ケモカイン(MDC又はCCL22)、単球走化性タンパク質1(MCP-1又はCCL2)、MCP-4、マクロファージ炎症性タンパク質1α(MIP-1α、MIP-1a)、MIP-1β(MIP-1b)、ガンマ誘導性タンパク質10(IP-10)、並びに胸腺及び活性化制御ケモカイン(TARC又はCCL17)が挙げられる。
【0056】
「治療的有効量」、「有効用量」、「有効量」又は「治療的に有効な投薬量」の治療剤、例えば操作されたCAR T細胞は、単独で又は別の治療剤と組み合わせて使用された場合に、疾患の発症から被験体を保護する、又は疾患症状の重症度の減少、疾患症状のない期間の頻度及び持続期間の増加、若しくは疾患の罹患に起因する機能障害若しくは身体障害の予防によって明示される疾患の退縮を促進する、任意の量である。治療剤の疾患の退縮を促進する能力は、熟練した医師に知られている様々な方法を使用して、例えば、臨床試験中のヒト被験体において、ヒトにおける効能を予測する動物モデル系において、又はin vitroアッセイにおいて薬剤の活性をアッセイすることによって評価され得る。
【0057】
本明細書で使用される「リンパ球」の用語は、ナチュラルキラー(NK:natural killer)細胞、T細胞、又はB細胞を含む。NK細胞は、生得免疫系の主な成分を占める細胞傷害性(細胞毒性)リンパ球の一種である。NK細胞は腫瘍及びウイルスによって感染された細胞を拒絶する。NK細胞は、アポトーシス又はプログラム細胞死のプロセスによって作用する。NK細胞は、細胞を死滅させるために活性化を必要としないことから、「ナチュラルキラー」と名付けられた。T細胞は、細胞媒介免疫(抗体が関与しない)において主な役割を果たす。そのT細胞受容体(TCR)は、他の種類のリンパ球からそれら自体を分化させる。免疫系の特殊化された器官である胸腺は、主としてT細胞の成熟を担う。6種類のT細胞、すなわち、ヘルパーT細胞(例えばCD4陽性細胞)、細胞傷害性T細胞(TC、細胞傷害性Tリンパ球、CTL、T-キラー細胞、細胞溶解性T細胞、CD8陽性T細胞又はキラーT細胞としても知られる)、メモリーT細胞((i)ナイーブ細胞のようなステムメモリーTSCM細胞は、CD45RO陰性、CCR7陽性、CD45RA陽性、CD62L陽性(L-セレクチン)、CD27陽性、CD28陽性及びIL-7Rα陽性であるが、それらは、大量のCD95、IL-2Rβ、CXCR3及びLFA-1を発現し、メモリー細胞に特有の多数の機能的な属性を示す;(ii)セントラルメモリーTCM細胞は、L-セレクチン及びCCR7を発現し、IFNγ又はIL-4ではなくIL-2を分泌する;並びに(iii)エフェクターメモリーTEM細胞はLセレクチンもCCR7も発現しないものの、IFNγ及びIL-4のようなエフェクターサイトカインを産生する)、調節性T細胞(Treg、サプレッサーT細胞又はCD4陽性CD25陽性調節性T細胞)、ナチュラルキラーT細胞(NKT)及びガンマデルタT細胞が存在する。一方、B細胞は、液性免疫(抗体が関与する)で最も重要な役割を果たす。B細胞は抗体及び抗原を作り、抗原提示細胞(APC)の役割を発揮し、抗原相互作用によ
る活性化後にメモリーB細胞となる。哺乳動物において、未成熟B細胞は骨髄中で形成される。
【0058】
用語「遺伝子操作された」、「操作された」又は「改変された」は、限定されるものではないが、コーディング領域若しくは非コーディング領域若しくはそれらの一部を欠失させることによる、又はアンチセンス技術による、又はコーディング領域若しくはそれらの一部を導入しているタンパク質の発現の増加による、遺伝子中の欠損の生成を含む細胞の改変方法を指す。幾つかの実施形態では、改変される細胞は、患者又はドナーのいずれかから取得することができる、幹細胞(例えば、造血幹細胞(HSC)、胚性幹細胞(ES)、人工多能性幹(iPS)細胞)、リンパ球(例えば、T細胞)である。
【0059】
「免疫応答」は、侵入病原体、病原体に感染した細胞若しくは組織、癌性若しくは他の異常な細胞、又は自己免疫若しくは病理学的炎症の場合、正常なヒトの細胞若しくは組織の選択的な標的化、それらへの結合、それらに対する損傷、それらの破壊、及び/又は脊椎動物の身体からのそれらの排除をもたらす、免疫系の細胞(例えばTリンパ球、Bリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、好酸球、肥満細胞、樹状細胞、及び好中球)及びこれらの細胞のいずれか又は肝臓によって産生される可溶性高分子(Ab、サイトカイン、及び補体を含む)の作用を指す。
【0060】
「免疫療法」の用語は、免疫応答を誘導する、増強する、抑制する、或いは変更することを含む方法による、疾患に冒された、又は疾患にかかる若しくは疾患の再発を患うリスクがある被験体の治療を指す。免疫療法の例として、限定されないが、T細胞療法が挙げられる。T細胞療法は、養子T細胞療法(adoptive T cell therapy)、腫瘍浸潤リンパ
球(TIL)免疫療法、自己細胞治療、操作された自己細胞療法(eACT(商標))、及び同種異系T細胞移植を含み得る。しかしながら、当業者は、本明細書に開示されるコンディショニング法(conditioning methods)が任意の移植T細胞療法の有効性を増強し得ることを認識するであろう。T細胞療法の例は、米国特許出願公開第2014/0154228号及び同第2002/0006409号、米国特許第5,728,388号及び国際公開第2008/081035号に記載される。
【0061】
免疫療法のT細胞は、当該技術分野において知られている任意の起源に由来し得る。例えば、T細胞は、in vitroで造血幹細胞集団、人工多能性幹細胞(iPS)、胚性幹細胞(ES)から分化させることもでき、又はT細胞は被験体から得ることもできる。T細胞を、例えば末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位に由来する組織、腹水、胸水、脾臓組織及び腫瘍から得ることができる。さらに、T細胞は、当該技術分野において利用可能な1以上のT細胞系統に由来してもよい。また、T細胞は、FICOLL(商標)分離及び/又はアフェレーシス(apheresis)
等の当業者に知られている任意の多くの技術を使用して被験体から収集された血液単位から得ることもできる。T細胞療法用のT細胞を単離する更なる方法は、米国特許出願公開第2013/0287748号に開示され、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【0062】
「eACT(商標)」と略記することができ、養子細胞移植としても知られる「操作された自己細胞療法」の用語は、患者自身のT細胞を収集し、続いて1以上の特定の腫瘍細胞又は悪性腫瘍の細胞表面上に発現される1つ以上の抗原を認識して標的とするように遺伝的に変更するプロセスである。本明細書で使用される「患者」は、癌(例えばリンパ腫又は白血病)に冒された任意のヒトを含む。「被験体」及び「患者」の用語は、本明細書では区別なく使用される。
【0063】
本明細書で使用される「in vitro細胞」の用語は、ex vivoで培養され
る任意の細胞を指す。特に、in vitro細胞はT細胞を含み得る。
【0064】
「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」の用語は区別なく使用され、ペプチド結合によって共有結合的に連結されたアミノ酸残基で構成される化合物を指す。タンパク質又はペプチドは、少なくとも2個のアミノ酸を含み、タンパク質又はペプチドの配列を含み得るアミノ酸の最大数に制限はない。ポリペプチドは、ペプチド結合によって互いにつながれた2個以上のアミノ酸を含む任意のペプチド又はタンパク質を含む。本明細書で使用されるように、上記用語はまた、当該技術分野において、例えばペプチド、オリゴペプチド及びオリゴマーと一般的に称される短い鎖と、当該技術分野において一般的にはタンパク質と称され、多くの種類が存在する、より長い鎖の両方を指す。「ポリペプチド」として、例えば、特に、生物学的に活性なフラグメント、実質的に相同性のポリペプチド、オリゴペプチド、ホモダイマー、ヘテロダイマー、ポリペプチドの変異体、改変ポリペプチド、誘導体、類縁体、融合タンパク質が挙げられる。ポリペプチドは、天然ペプチド、組み換えペプチド、合成ペプチド、又はそれらの組み合わせを含む。
【0065】
本明細書で使用される「刺激」は、その同族のリガンドと刺激分子を結合することによって誘導される一次応答を指し、ここで、その結合はシグナル伝達事象を媒介する。「刺激分子」は、T細胞上の分子、例えば、抗原提示細胞上に存在する同族の刺激リガンドと特異的に結合するT細胞受容体(TCR)/CD3複合体を指す。「刺激リガンド」は、抗原提示細胞(例えば、APC、樹状細胞、B細胞等)上に存在する場合、T細胞上の刺激分子と特異的に結合することができ、それによって、限定されないがT細胞の活性化、免疫応答の開始、増殖等を含むT細胞による一次応答を媒介するリガンドである。刺激リガンドとして、限定されないが、抗CD3抗体、ペプチドで充填されたMHCクラスI分子、スーパーアゴニスト抗CD2抗体、及びスーパーアゴニスト抗CD28抗体が挙げられる。
【0066】
本明細書で使用される「共刺激シグナル」は、TCR/CD3ライゲーション等の一次シグナルと組み合わせて、限定されないがT細胞の増殖及び/又は主要な分子の上方制御若しくは下方制御等のT細胞の応答をもたらすシグナルを指す。
【0067】
本明細書で使用される「共刺激リガンド」は、T細胞上の同族の共同刺激分子を特異的に結合する抗原提示細胞上の分子を含む。共刺激リガンドの結合は、限定されないが、T細胞の増殖、活性化、分化等を含むT細胞応答を媒介するシグナルを提供する。共刺激リガンドは、一次シグナルに加えて、刺激分子によって、例えば、ペプチドがロードされた主要組織適合複合体(MHC)分子とのT細胞受容体(TCR)/CD3複合体の結合によって提供されるシグナルを誘導する。共刺激リガンドとして、限定されないが、3/TR6、4-1BBリガンド、Tollリガンド受容体に結合するアゴニスト又は抗体、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、CD30リガンド、CD40、CD7、CD70、CD83、ヘルペスウイルスエントリーメディエーター(HVEM:herpes virus entry mediator)、ヒト白血球抗原G(HLA-G)、ILT4、免疫グロブリン様
転写物(ILT:immunoglobulin-like transcript)3、誘導性共刺激リガンド(ICOS-L)、細胞間接着分子(ICAM)、B7-H3と特異的に結合するリガンド、リンフォトキシンベータ受容体、MHCクラスI鎖関連タンパク質A(MICA)、MHCクラスI鎖関連タンパク質B(MICB)、OX40リガンド、PD-L2、又はプログラム細胞死(PD)L1が挙げられ得る。共刺激リガンドとして、限定されず、4-1BB、B7-H3、CD2、CD27、CD28、CD30、CD40、CD7、ICOS、CD83と特異的に結合するリガンド、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、ナチュラルキラー細胞受容体C(NKG2C)、OX40、PD-1、又は腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー14(TNFSF14又はLIGHT)等のT細胞上に存在する共刺激分子と特異的に結合する抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
「共刺激分子」は、共刺激リガンドと特異的に結合することにより、限定されないが増殖等のT細胞による共刺激応答を媒介する、T細胞上の同族の結合パートナーである。共刺激分子としては、限定されないが、を含む、「共刺激分子」は、共刺激リガンドと特異的に結合することにより、限定されないが増殖等のT細胞による共刺激応答を媒介する、T細胞上の同族の結合パートナーである。共刺激分子として、限定されないが、4-1BB/CD137、B7-H3、BAFFR、BLAME(SLAMF8)、BTLA、CD33、CD45、CD100(SEMA4D)、CD103、CD134、CD137、CD154、CD16、CD160(BY55)、CD18、CD19、CD19a、CD2、CD22、CD247、CD27、CD276(B7-H3)、CD28、CD29、CD3(アルファ;ベータ;デルタ;イプシロン;ガンマ;ゼータ)、CD30、CD37、CD4、CD4、CD40、CD49a、CD49D、CD49f、CD5、CD64、CD69、CD7、CD80、CD83リガンド、CD84、CD86、CD8アルファ、CD8ベータ、CD9、CD96(Tactile)、CD11a、CD11b、CD11c、CD11d、CDS、CEACAM1、CRT AM、DAP-10、DNAM1(CD226)、Fcガンマ受容体、GADS、GITR、HVEM(LIGHTR)、IA4、ICAM-1、ICAM-1、ICOS、Igアルファ(CD79a)、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rアルファ、インテグリン、ITGA4、ITGA4、ITGA6、ITGAD、ITGAE、ITGAL、ITGAM、ITGAX、ITGB2、ITGB7、ITGB1、KIRDS2、LAT、LFA-1、LFA-1、LIGHT、LIGHT(腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー14;TNFSF14)、LTBR、Ly9(CD229)、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1(CD11a/CD18))、MHCクラスI分子、NKG2C、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80(KLRF1)、OX40、PAG/Cbp、PD-1、PSGL1、SELPLG(CD162)、シグナル伝達リンパ球活性化分子、SLAM(SLAMF1;CD150;IPO-3)、SLAMF4(CD244;2B4)、SLAMF6(NTB-A;Ly108)、SLAMF7、SLP-76、TNF、TNFr、TNFR2、Tollリガンド受容体、TRANCE/RANKL、VLA1若しくはVLA-6、又はそれらのフラグメント、短縮物(truncations)、若し
くは組み合わせが挙げられる。
【0069】
「減少する、減少させる(reducing)」及び「減じる(decreasing)」の用語は、本明細書において区別なく使用され、本来よりも少ない、あらゆる変化を示す。「減少する、減少させる」及び「減じる」は測定前と測定後の比較を必要とする、相対的な用語である。「減少する、減少させる」及び「減じる」は完全な欠乏を含む。
【0070】
被験体の「治療(Treatment)」又は被験体を「治療する、治療すること(treating)
」は、症状、合併症若しくは病状の発症、進行、発現、重症度若しくは再発、又は疾患と関連する生化学的指標の転換、緩和、改善、阻害、遅延又は予防の目的で、被験体に対して行われる任意の種類の処置若しくはプロセス、又は被験体に対する有効成分の投与を指す。一実施形態では、「治療」又は「治療する、治療すること」は部分寛解を含む。別の実施形態では、「治療」又は「治療する、治療すること」は完全寛解を含む。
【0071】
パーセント同一性を計算するため、典型的には、配列間の最も大きな一致を与える方法で比較される配列をアラインメントさせる。パーセント同一性を特定するために使用され得るコンピュータープログラムの一例は、GAP(Devereux et al., 1984, Nucl. Acid Res. 12:387、ウィスコンシン州マディソンのウィスコンシン大学、Genetics Computer Group)を含むGCGプログラムパッケージである。コンピューターアルゴリズムであるGAPを使用して、パーセント配列同一性が特定される2つのポリペプチド又はポリヌクレオチドをアラインメントさせる。配列を、それらの各アミノ酸又はヌクレオチドの最適な
マッチング(アルゴリズムによって特定される、「一致スパン(matched span)」)についてアラインメントさせる。また或る特定の実施形態では、上記アルゴリズムによって、標準的な比較マトリクス(Dayhoff et al., 1978, Atlas of Protein Sequence and Structure 5:345-352 for the PAM 250 comparison matrix、Henikoff et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89:10915-10919 for the BLOSUM 62 comparison matrixを参照されたい)が使用される。
【0072】
本明細書で使用される場合に、用語「崩壊」又は「崩壊させる」は、クラスター形成細胞の機械的解離、化学的解離及び/又は酵素的解離を指す。本明細書で使用される場合に、崩壊された細胞は、無傷のままであるが、細胞間接着接触だけでなく、膜接着特性も緩める。
【0073】
本明細書で使用される場合に、用語「培養」又は文法的同等物は、増殖、生存又は分化に有利な条件下で細胞を維持する過程を指す。用語「培養」及び「細胞培養」又はあらゆる同義語は、本出願において区別なく使用される。
【0074】
本明細書で使用される場合に、用語「細胞密度」又は「単一細胞密度」は、或る容積又は表面積における細胞の量を指す。幾つかの実施形態では、細胞密度は、細胞/6ウェルプレートの1ウェルで表現される。本開示によれば、標準的な6ウェルプレートは、約9.5cmの表面積を有する。幾つかの実施形態では、細胞密度は、細胞/cmとして表現される。
【0075】
本明細書で使用される場合に、用語「培養容器」は、細胞の培養のために無菌環境を提供することができるあらゆる容器を指す。例示的な培養容器としては、限定されるものではないが、ガラス容器、プラスチック容器又は金属容器が挙げられる。
【0076】
本発明の様々な態様は、以下のサブセクションに更に詳細に記載される。
【0077】
詳細な説明
本開示によれば、HSC又はその他の幹細胞(胚性幹(ES)細胞又は人工多能性幹(iPS)細胞)を、多数の、ことによると無限の数の、所望の系譜を有する操作されたT細胞を作製するために使用することができる。本開示は、とりわけ、ヒト胚性幹(ES)細胞又は人工多能性幹(iPS)細胞を胚性中胚葉系始原体(hEMP)及び/又はT細胞へと分化させる高効率の方法及びそれらを含む組成物を提供する。
【0078】
何らかの特定の理論に縛られることを望むものではないが、「中胚葉推進(mesoderm push)」又はhEMP誘導と呼ばれる誘導工程が先行すると、ES細胞又はiPS細胞か
らのT細胞の作製はより効率的であると考えられる。簡潔には、ES細胞又はiPS細胞は、所望のコンフルエンスまで培養、継代及び増殖される。引き続き、培養条件は、hEMP誘導培地へ交換される。幾つかの実施形態では、ES細胞又はiPS細胞を培養する方法は、Matrigel(商標)上か、又は組み換えヒトビトロネクチン上のいずれかでフィーダーフリー(すなわち、MEFなし)である。驚くべきことに、本発明者らは、「中胚葉推進」又はhEMP誘導のために非クラスター形成細胞培養物を使用すると、hEMPがより効率的に作製され得ることを見出した。例えば、非クラスター形成幹細胞を、規定の単一細胞密度で基材上に播種し、誘導することができる。その結果、効率的で再現的な中胚葉推進が行われる。中胚葉推進からのhEMP細胞の高い収率により、下流の用途において効率的で迅速で頑健なT細胞分化が可能となる。
【0079】
多能性幹細胞
様々な多能性幹細胞を、本開示の実施のために使用することができる。例えば、骨髄(
臍帯血又は末梢血も)中の造血幹細胞(HSC)は、他の全ての成熟血液細胞に加えて、拘束性胸腺始原体を生み出す。これらの胸腺始原体は胸腺に移動し、そこで成熟T細胞への発達を始める。Delta及びJagged、特に胸腺中のNotch1及びDelta様4というリガンドを介したNotch受容体のシグナル伝達は、転写カスケード(すなわち、Tcf7、Gata3、Bcl11b等)を駆動し、それがリコンビナーゼ活性化遺伝子RAG1及びRAG2によるTCR遺伝子座の再構成をもたらす。最初に産生的なTCRbの再構成(すなわち、TCRタンパク質を生ずる)は、pTaと対をなして表面に移動するタンパク質を生成する。この表面トラフィッキングはシグナルを細胞へと返送し、こうして更なる発達の進行が可能となる。表面のpTa-TCRbは、成熟TCRで起こるようにMHCと相互作用する必要はなく、生存シグナルは、ペプチド:MHCとは独立であり得る。次いで、細胞はTCRaの再構成に進み、アルファ/ベータのペアリングの成功と自己ペプチド:MHCの弱い認識(すなわち、正の選択及び負の選択又は中枢性トレランス)とについて精査された後に、成熟ナイーブT細胞となり、末梢に循環する。
【0080】
幾つかの実施形態では、胚性幹(ES)細胞又は人工多能性幹(iPS)細胞が使用され得る。
【0081】
幹細胞は、当該技術分野において既知の任意の起源から取得され得る。例えば、人工多能性幹細胞(iPS)又は胚性幹細胞(ES)は、商業的供給源から得ることができる。適切なHSC、ES細胞、iPS細胞及びその他の幹細胞は、培養された不死化細胞系統であっても又は患者から直接単離されてもよい。幹細胞の単離、発達及び/又は培養のための様々な方法は、当該技術分野において知られており、本開示の実施のために使用することができる。
【0082】
非クラスター形成幹細胞の作製
本明細書に記載されるように、中胚葉誘導の前のクラスター形成していない単一細胞の幹細胞の懸濁液での培養は、幹細胞分化の効率の増大をもたらす。非クラスター形成幹細胞培養物の作製のために、様々な方法を使用することができる。例えば、ES細胞又はiPS細胞を、最初にクラスターとしてマウス胚性線維芽細胞(MEF)、Matrigel(商標)又はビトロネクチン上で培養し、Matrigel(商標)又はビトロネクチンが被覆されたプレート上にクラスターとして継代することができる。幾つかの実施形態では、単一細胞の懸濁液の作製のために、トリプシン、トリプシン様酵素又は当該技術分野において知られるその他の細胞間接着崩壊物質(disruptors)での消化によりクラスターが化学的に崩壊される。幾つかの実施形態では、均質化(例えば、再懸濁、機械的撹拌、培地洗浄、バッファー洗浄、細胞解離装置(例えば、Miltenyi社のGentleMACS)又はボルテックス)によりクラスターを機械的に崩壊させることで、単一細胞の懸濁液が作製される。
【0083】
幾つかの実施形態では、培養条件は、幹細胞がクラスターを形成せずに単一細胞の増殖を促進するように適合される。例えば、幹細胞は懸濁液で増殖され得る。
【0084】
基材
本開示によれば、非クラスター形成幹細胞は、増殖のために規定の単一細胞密度で基材上に播種される。本明細書で使用される場合に、用語「基材」は、あらゆる固体又は半固体の表面又は支持物を指す。例えば、適切な基材は、層、マイクロビーズ、ウェル付きプレート、細胞培養皿、メンブレン、バッグ、培養フラスコ、容器、逆オパール構造体、ポリマー格子、ゲル又はポリマーであり得る。
【0085】
幾つかの実施形態では、適切な基材は、所望のコーティングで処理され得る。例えば、
適切な基材は、Matrigel(商標)又はビトロネクチンで被覆され得る。幾つかの実施形態では、適切な基材は、コラーゲン(例えば、コラーゲンI、II、II又はIV)、ゼラチン、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、フィブリノゲン、BD Matrigel(商標)、基底膜マトリックス、デルマタン硫酸プロテオグリカン、ポリ-D-リジン及び/又はそれらの組み合わせで被覆される。
【0086】
本開示によれば、非クラスター形成細胞は、規定の単一細胞密度で基材上に播種される。本開示に適した単一細胞密度は、標準的な6ウェルプレートにおいて約1.0~50×10細胞/ウェル(例えば、約1.0~40×10細胞/ウェル、約1.0~30×10細胞/ウェル、約1.0~20×10細胞/ウェル、約1.0~10×10細胞/ウェル、1.0~8×10細胞/ウェル、約1.0~5×10細胞/ウェル、約1.0~4.5×10細胞/ウェル、約1.0~4×10細胞/ウェル、約1.0~3.6×10細胞/ウェル、約1.0~3×10細胞/ウェル、約1.0~2.5×10細胞/ウェル、約1.0~2.0×10細胞/ウェル、約1.0~1.5×10細胞/ウェル、約1.5~10×10細胞/ウェル、約1.5~8×10細胞/ウェル、約1.5~4×10細胞/ウェル、約1.5~3.5×10細胞/ウェル、約1.5~3.0×10細胞/ウェル、約1.5~2.5×10細胞/ウェル、約1.5~2.0×10細胞/ウェル)の範囲であり得る。
【0087】
幾つかの実施形態では、細胞は、規定の単一細胞密度(例えば、約1.8×10細胞/ウェル、約3.6×10細胞/ウェル、約7.2×10細胞/ウェル)で継代される。
【0088】
幾つかの実施形態では、細胞は、約1.5×10細胞/cmから約8×10細胞/cmの間の範囲(例えば、1.89×10細胞/cm、約3.2×10細胞/cm、約3.4×10細胞/cm、約3.6×10細胞/cm、約3.79×10細胞/cm、約7.2×10細胞/cm、又は約7.58×10細胞/cm)の細胞密度で継代される。
【0089】
幾つかの実施形態では、播種時の規定の単一細胞密度は、パーセントコンフルエンスとして表現される。本開示によれば、細胞は、表面コンフルエンスが、1%から100%までの範囲(例えば、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約97%、約99%)であるような規定の細胞密度で播種される。幾つかの実施形態では、細胞は、高いパーセントコンフルエンス(例えば、約70%~100%、約80%)で継代される。幾つかの実施形態では、細胞は、中程度のパーセントコンフルエンス(例えば、約30%~70%、約40%)で継代される。幾つかの実施形態では、細胞は、低いパーセントコンフルエンス(例えば、約1%~30%、約20%)で継代される。
【0090】
幾つかの実施形態では、細胞は増殖培地中で播種される。他の実施形態では、細胞は誘導培地中で播種される。幾つかの実施形態では、細胞は誘導培地中で播種されて、本開示に従って所望のコンフルエンスまで増殖させ、誘導培地に再播種される。
【0091】
細胞培養条件
本開示によれば、ES細胞又はiPS細胞は、懸濁液培養物で単一細胞として増殖するように適合され得る。幾つかの実施形態では、ES細胞又はiPS細胞は、懸濁液で維持される。栄養培地中に懸濁されたES細胞又はiPS細胞は、単離された細胞が栄養培地中で懸濁液にとどまることを保証する循環装置によって維持され得る。
【0092】
培養培地
本開示によれば、様々な細胞培養培地及び条件が使用され得る。例えば、細胞は血清含有又は無血清の細胞培養培地において産生され得る。幾つかの実施形態では、培地は無血清培地である。幾つかの実施形態では、培養培地は、アニマルフリー培地、すなわち動物由来成分を有しない培地である。幾つかの実施形態では、培地は化学的に規定される培地である。本明細書で使用される場合に、用語「化学的に規定される栄養培地」は、ほぼ全ての化学成分が既知である培地を指す。幾つかの実施形態では、化学的に規定される栄養培地は、血清、血清由来タンパク質(例えば、アルブミン又はフェチュイン)及びその他の成分等の動物由来の成分を含まない。或る場合には、化学的に規定される培地は、1種以上のタンパク質(例えば、タンパク質の成長因子又はサイトカイン)を含む。或る場合には、化学的に規定される栄養培地は、1種以上のタンパク質加水分解物を含む。その他の場合に、化学的に規定される栄養培地は、タンパク質不含培地、すなわちタンパク質、加水分解物又は未知の組成の成分を含まない無血清培地である。
【0093】
幾つかの実施形態では、化学的に規定される培地には、1種以上の動物由来成分が追加され得る。そのような動物由来成分としては、限定されるものではないが、ウシ胎児血清、ウマ血清、ヤギ血清、ロバ血清、ヒト血清及びアルブミン等の血清由来タンパク質(例えば、ウシ血清アルブミン又はヒト血清アルブミン)が挙げられる。
【0094】
或る特定の実施形態では、細胞の培養のために、特定の条件下での或る特定の好ましい特質又は増殖が選択され得る。当業者であれば、そのような特質を、確立された系統(すなわち、特徴付けられた市販の細胞系統)の既知の特性及び/又は形質に基づいて、又は経験的評価を通じて確認することができることを理解されたい。幾つかの実施形態では、細胞系統は、それがフィーダー細胞層上で増殖する能力について選択され得る。幾つかの実施形態では、細胞系統は、それが細胞の接着性単層として増殖する能力について選択され得る。幾つかの実施形態では、上記方法は、培養培地を含む細胞培養物中で幹細胞及び/又は始原細胞を培養することを含む。
【0095】
本開示によれば、ヒト胚性間葉系始原(hEMP)細胞の作製は、増殖段階と分化段階とを含む。幾つかの実施形態では、増殖段階の間の培養培地は、分化段階の間の培養培地とは本質的に異なる。或る特定の実施形態では、mTESR1培地が増殖段階のために使用され、X-VIVO(商標)15培地が分化段階のために使用される。
【0096】
様々な培養培地を利用することができる。実例であるが非限定的な培養培地としては、限定されるものではないが、MEM(最小必須培地)、DMEM(ダルベッコ変性イーグル培地)、BME(イーグル基礎培地)、RPMI 1640、DMEM/F-12(ダルベッコ変性イーグル培地:栄養混合物F-12)、DMEM/F-10(ダルベッコ変性イーグル培地:栄養混合物F-10)、a-MEM(a-最小必須培地)、G-MEM(グラスゴー最小必須培地)、FMDM(イスコフ変性ダルベッコ培地)、エッセンシャル8(E8)培地、KnockOut DMEM、AIM V、mTeSR(商標)1、X-VIVO(商標)15、StemSpan、CellGro樹状細胞培地が挙げられる。
【0097】
幾つかの実施形態では、ヒト胚性幹細胞(ES細胞)及び人工多能性幹細胞(iPS細胞)のためのフィーダーフリー細胞培養培地が使用される。幾つかの実施形態では、本開示は、非クラスター形成ES細胞又はiPS細胞の作製のために使用される。幾つかの実施形態では、本開示に適した無血清培地は、動物由来成分を有しない。幾つかの実施形態では、本開示に適した無血清培地は、化学的に規定される培地である。例えば、mTeSR(商標)1培地は、細胞増殖のために使用され得る。mTeSR(商標)1は、高度に特化した無血清の完全細胞培養培地である。
【0098】
或る特定の実施形態では、培養培地には、Rho関連タンパク質キナーゼ(ROCK)経路の阻害剤(例えば、Y27632)が追加される。ROCK阻害剤は、リプログラミング、維持、自己複製及び/又は分化における補助のために使用され得る。
【0099】
誘導時に望ましいコンフルエンス
本開示によれば、非クラスター形成細胞は、誘導培地中に再懸濁されるか、又は誘導培地に移され、規定の単一細胞密度で基材上に播種される。本開示に適した単一細胞密度は、標準的な6ウェルプレートにおいて約1.0~50×10細胞/ウェル(例えば、約1.0~40×10細胞/ウェル、約1.0~30×10細胞/ウェル、約1.0~20×10細胞/ウェル、約1.0~10×10細胞/ウェル、1.0~8×10細胞/ウェル、約1.0~5×10細胞/ウェル、約1.0~4.5×10細胞/ウェル、約1.0~4×10細胞/ウェル、約1.0~3.6×10細胞/ウェル、約1.0~3×10細胞/ウェル、約1.0~2.5×10細胞/ウェル、約1.0~2.0×10細胞/ウェル、約1.0~1.5×10細胞/ウェル、約1.5~10×10細胞/ウェル、約1.5~8×10細胞/ウェル、約1.5~4×10細胞/ウェル、約1.5~3.5×10細胞/ウェル、約1.5~3.0×10細胞/ウェル、約1.5~2.5×10細胞/ウェル、約1.5~2.0×10細胞/ウェル)の範囲であり得る。
【0100】
幾つかの実施形態では、非クラスター形成細胞は、誘導培地中に再懸濁されるか、又は誘導培地に移され、規定の単一細胞密度(例えば、1.8×10細胞/ウェル、約3.6×10細胞/ウェル、約7.2×10細胞/ウェル)で基材上に播種される。
【0101】
幾つかの実施形態では、非クラスター形成細胞は、誘導培地中に再懸濁されるか、又は誘導培地に移され、約1.5×10細胞/cmから約8×10細胞/cmの間の範囲(例えば、1.89×10細胞/cm、約3.2×10細胞/cm、約3.4×10細胞/cm、約3.6×10細胞/cm、約3.79×10細胞/cm、約7.2×10細胞/cm、又は約7.58×10細胞/cm)の規定の単一細胞密度で基材上に播種される。
【0102】
幾つかの実施形態では、誘導時の規定の単一細胞密度は、パーセントコンフルエンスとして表現される。本開示によれば、非クラスター形成細胞は、誘導培地中に再懸濁されるか、又は誘導培地に移され、表面コンフルエンスが、1%から100%までの範囲(例えば、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約97%、約99%)であるような規定の細胞密度で基材上に播種される。幾つかの実施形態では、細胞は、高いパーセントコンフルエンス(例えば、約70%~100%、約80%)で誘導される。幾つかの実施形態では、細胞は、中程度のパーセントコンフルエンス(例えば、約30%~70%、約40%)で誘導される。幾つかの実施形態では、細胞は、低いパーセントコンフルエンス(例えば、約1%~30%、約20%)で誘導される。
【0103】
増殖段階及び分化段階
幾つかの実施形態では、細胞は、約30℃~37℃の範囲(例えば、約31℃~37℃、約32℃~37℃、約33℃~37℃、約34℃~37℃、約35℃~37℃、約36℃~37℃)の温度で培養される。幾つかの実施形態では、細胞は、約30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃又は37℃の温度で培養される。本明細書に記載される温度のいずれかを、増殖段階及び/又は分化段階のために使用することができる。幾つかの実施形態では、細胞は、増殖段階及び分化段階の間に異なる温度で培養される
。幾つかの実施形態では、細胞は、増殖段階及び分化段階の間にほぼ同じ温度で培養される。本明細書に記載される培地pHのいずれかを、増殖段階及び/又は分化段階のために使用することができる。幾つかの実施形態では、増殖段階及び分化段階のための培地pHは異なる。幾つかの実施形態では、増殖段階及び分化段階のための培地pHはほぼ同じである。
【0104】
幾つかの実施形態では、ES細胞又はiPS細胞は、増殖段階において増殖及び維持される。幾つかの実施形態では、ES細胞又はiPS細胞は、分化段階の前に播種されて、所望のコンフルエンシー(例えば、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%又は約90%のコンフルエンス)まで増殖される。他の実施形態では、ES細胞又はiPS細胞は、分化段階の前に播種されない。或る特定の実施形態では、ES細胞又はiPS細胞は、分化培地中に再懸濁され、所望のコンフルエンシー(例えば、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%又は約90%のコンフルエンス)で播種される。幾つかの実施形態では、ES細胞又はiPS細胞は、増殖段階の間にMatrigel(商標)又はビトロネクチン上で培養される。幾つかの実施形態では、ES細胞又はiPS細胞は、増殖段階の間にマウス胚性線維芽細胞(MEF)上で培養される。
【0105】
幾つかの実施形態では、増殖段階のためのインキュベート時間は、約1日~6日(例えば、約1日~5日、約1日~4日、約1日~3日、約1日~2日、約1日、約2日、約2.5日、約3日、約3.5日、約4日)である。幾つかの実施形態では、増殖段階のためのインキュベート時間は、培養物が播種される2つの工程で行われる。幾つかの実施形態では、増殖段階の各工程は、約1日~6日(例えば、約1日~5日、約1日~4日、約1日~3日、約1日~2日、約1日、約2日、約2.5日、約3日、約3.5日、約4日)である。幾つかの実施形態では、分化段階は、約2日、3日、4日、5日、6日又は7日にわたり継続する。
【0106】
幾つかの実施形態では、分化段階のためのインキュベート時間は、約1日~6日(例えば、約1日~5日、約1日~4日、約1日~3日、約1日~2日、約1日、約2日、約2.5日、約3日、約3.5日、約4日)である。幾つかの実施形態では、分化段階のためのインキュベート時間は、培養物が再播種される2つの工程で行われる。幾つかの実施形態では、分化段階の各工程は、約1日~6日(例えば、約1日~5日、約1日~4日、約1日~3日、約1日~2日、約1日、約2日、約2.5日、約3日、約3.5日、約4日)である。幾つかの実施形態では、分化段階は、約2日、3日、4日、5日、6日又は7日にわたり継続する。
【0107】
幹細胞分化
本開示による単一細胞、非クラスター形成の方策を使用して作製されたhEMPは、様々な細胞型へと更に分化され得る。
【0108】
中胚葉誘導
アクチビンA、BMP4、VEGF及びFGF2の存在下でhESC又はiPSCから作製された初代のCD326陰性CD56陽性hEMP細胞は、多能性の中胚葉拘束性始原体集団に相当する。CD326陰性CD56陽性始原体は、それらが造血、内皮、間葉系(骨、軟骨、脂肪、線維芽細胞)、平滑筋及び心筋細胞を含む全ての中胚葉系譜を生成する能力の点で独特であるが、hESC又はiPSCの多能性を欠落している。CD326陰性CD56陽性hEMP細胞は、より系譜限定された間葉系始原体の前駆体である。
【0109】
CD326陰性CD56陽性hEMP細胞は、BMP4、VEGF及びbFGFの組み合わせとアクチビンAへの一過性曝露とにより産生され得る。
【0110】
hEMP細胞の選択
hEMPへと移行するESC又はiPSCは、CD326 EPCAMの損失とCD56 NCAMの獲得とを特徴とする(CD326陰性CD56陽性)。上皮マーカーCD326は、ヒト胚性幹細胞系統(例えば、H9、H1及びHES3)又はiPSCからの未分化細胞において一様に高レベルで発現されるが、CD56は未分化のhESC又はiPSCにおいては発現されない。中内胚葉誘導条件での分化後に、CD326発現の損失とCD56の獲得とを特徴とする集団(CD326陰性CD56陽性)が明らかに検出され得る。
【0111】
さらに、hEMP分化後に、E-カドヘリン、CD326/TACSTD1、クローディン3、クローディン6、クローディン7、シンデカン1、シンデカン2、β-カテニン、オクルディン、Nanog、Sox2及び/又はOCT4は、下方調節され得る。hEMPの分化後に、Snail-1、Snail2/Slug、Twist1、LEF1、ZEB1、MMP9、フィブロネクチン、ビメンチン及び/又はZEB2は、上方調節され得る。
【0112】
hEMP細胞マーカーの調節は、タンパク質検出方法(例えば、フローサイトメトリー、FACS、ウエスタンブロット、ELISA、HPLC、LC/MS、タンパク質免疫沈降、免疫電気泳動、タンパク質免疫染色等)及び核酸検出法(例えば、mRNA転写物分析、ノーザンブロット法、cDNA、DNAマイクロアレイ分析、ポリメラーゼ連鎖反応、遺伝子発現プロファイリング等)を含む、当該技術分野において既知の技術により測定され得る。
【0113】
T細胞の分化及び選択
hEMP細胞は、造血内皮細胞(例えば、血液、内皮)、心血管系(例えば、内皮、心筋細胞、平滑筋)及び間葉系(例えば、平滑筋、線維芽細胞、骨、軟骨、脂肪)へと分化する可能性を有する。リンパ系細胞としては、T細胞、B細胞及びナチュラルキラー細胞が挙げられる。T細胞は、骨髄中の造血幹細胞に由来する。造血幹細胞からの造血始原体(例えば、hEMP細胞)は胸腺に存在し、細胞分裂により増殖することで、未成熟な胸腺細胞の大きな集団を生成する。初代の胸腺細胞はCD4もCD8も発現しないが、それらの発達が進むにつれて、二重陽性(DP)胸腺細胞(CD4陽性CD8陽性)となり、最終的に単一陽性(SP)(CD4陽性CD8陰性又はCD4陰性CD8陽性)胸腺細胞へと成熟した後に、それらは胸腺から末梢組織へと放出される。
【0114】
本開示によるhEMP細胞の効率及び収率の増加は、迅速で頑健なT系譜拘束につながる。幾つかの実施形態では、T細胞は、ATOシステムにおいてhEMP細胞から分化され得る。幾つかの実施形態では、T細胞は、レンチウイルス形質導入法を使用してhEMP細胞から分化され得る。幾つかの実施形態では、T細胞は、ストローマ単層を使用してhEMP細胞から分化され得る。
【0115】
hEMP細胞のT細胞への分化は、CD4陽性CD3陰性の未成熟な単一陽性(ISP)細胞及びCD4陽性CD8陽性(DP)細胞の出現によって示される。より成熟したCD3陽性TCRαβ陽性細胞が出現し、時間とともに増加する。より小規模なCD3陽性TCRγδ陽性T細胞のフラクションも生成し、ATOにおける正の選択と一致して、次第にCD8SPのT細胞に成熟し、より低い程度でCD4SPのT細胞に成熟し得る。
【0116】
胸腺及びATO由来のT細胞始原体のフローサイトメトリー分析を使用して、以下の表面表現型を評価することができる:初期胸腺始原体(ETP;CD34陽性CD7陰性CD1a陰性)、CD1a陰性pro-T(CD34陽性CD7陽性CD1a陰性)及びC
D1a陽性pro-T(CD34陽性CD7陽性CD1a陽性)、又はCD5陰性pro-T(pro-T1;CD34陽性CD7陽性CD5陰性)及びCD5陽性pro-T(pro-T2;CD34陽性CD7陽性CD5陽性)。胸腺及びATO由来のT細胞及び始原体は、以下の表現型と組み合わせてCD14陰性CD56陰性として定義される:全T系譜細胞(CD7陽性CD5陽性)、二重陰性(DN;CD4陰性CD8陰性)、CD4未成熟単一陽性(CD4 ISP;CD5陽性CD4陽性CD3陰性)、二重陽性(DP;CD4陽性CD8陽性)、CD8SP(CD3陽性TCRαβ陽性CD8陽性CD4陰性)、CD4SP(CD3陽性TCRαβ陽性CD8陰性CD4陽性)、未成熟ナイーブ(CD8SP又はCD4SPであったCD45RA陰性CD45RO陽性)、成熟ナイーブ(CD8SP又はCD4SPであったCD45RA陽性CD45RO陰性)。未成熟及び成熟ナイーブ表現型は、CD1a、CD27、CD28及びCCR7についての同時染色によって確認される。
【0117】
人工胸腺オルガノイド(ATO)
in vivoで遺伝子改変されたマウスモデル、ヒト化マウス、及びOP9-DLL1又は最近記述された人工胸腺オルガノイド(ATO)等のin vitroシステムにより、癌抗原に対する抗原受容体を含む所望の成熟T細胞を生成するように幹細胞が改変又は培養され得る多くの手段が明らかになった。
【0118】
本開示による多能性幹細胞及び/又はhEMPは、OP9-DLL1又は人工胸腺オルガノイド(ATO)細胞培養システムにおいて更に分化され得る。ATOは、T細胞分化を再現する無血清の3次元細胞培養技術である。ATO技術は、癌及びその他の疾患を治療するための既製の操作されたT細胞を作製する可能性を有する。
【0119】
適切な人工胸腺オルガノイド(ATO)システムは、非常に効率的なin vitro分化と、臍帯血、骨髄及び末梢血HSPCからの天然の及びTCR操作されたヒトT細胞の正の選択とに対応する。ATO由来のT細胞は、ナイーブ表現型、多様なTCRレパートリー並びにTCR依存性の活性化及び増殖を示す。ATO由来の操作されたT細胞はまた、ナイーブ表現型に成熟し、in vitro及びin vivoでの抗原特異的な腫瘍の死滅を更に示す。したがって、ATOは、養子細胞療法のために成熟ナイーブT細胞及び潜在的に非アロ反応性の操作されたT細胞を作製する効率的な方法を提供する。ATO培養システムによる操作されたT細胞を産生する例示的な方法は、例えばSeet CS, He C, Bethune MT, et al. Generation of mature T cells from human hematopoietic stem/progenitor cells in artificial thymic organoids. Nature methods. 2017;14(5):521-530. doi:10.1038/nmeth.4237(その内容は、引用することにより本明細書の一部をなす)に記載されている。
【0120】
機械的解離によってATOから高純度のT細胞の集団が容易に回収され、更に標準的方法により精製することで、0.5%未満の混入ストローマ細胞を除去することができる。幹細胞又は始原細胞ごとのATOの細胞収率は、播種された細胞(例えば、hEMP細胞)数及びインプット細胞対ストローマ細胞の比率と反比例している。
【0121】
ATOシステムは、治療用途のT細胞の作製に適した標準化された成分、再現性及び拡張性等の主要なトランスレーショナル特性を維持しながら、始原細胞(例えば、hEMP細胞)からのヒトT細胞の分化及び正の選択に対応することができる。本開示は、ヒト胸腺と比較して著しい忠実度のATOにおけるT細胞分化のための手段を提供し、こうして胸腺及び血液に見られるものと同様の真正なナイーブT細胞の出現に至る。
【0122】
本開示に従って始原細胞が供給されたATOは、ヒトT細胞の頑健なin vitro分化、正の選択及び成熟に対応する。ATO由来の成熟T細胞は、抗原のナイーブ表現型
、多様なTCRレパートリー及び抗原刺激に対する活性化/増殖を示す。ATOは、腫瘍関連抗原に特異的な始原細胞からのTCR操作された抗原特異的T細胞の高い効率の分化にも対応する。
【0123】
細胞
本開示の細胞は、当該技術分野において知られる任意の起源を通じて得ることができる。例えば、T細胞はin vitroで造血幹細胞集団若しくは多能性幹細胞から分化されてもよく、又はT細胞は被験体から得られてもよい。T細胞は、例えば末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位由来の組織、腹水、胸水、脾臓組織、及び腫瘍から得ることができる。さらに、T細胞は、当該技術分野において利用可能な1種以上のT細胞系列に由来し得る。T細胞はまた、被験体から収集された血液単位からFICOLL(商標)分離及び/又はアフェレーシス等の当業者に知られる幾つもの技術を使用して得ることもできる。或る特定の実施形態では、アフェレーシスによって収集された細胞を洗浄して血漿画分を除去し、後の処理に適切なバッファー又は培地に入れる。幾つかの実施形態では、細胞はPBSで洗浄される。理解されるように、洗浄工程は、例えばCobe(商標)2991細胞処理装置、Baxter CytoMate(商標)等の半自動フロースルー遠心分離機を使用すること等によって使用され得る。幾つかの実施形態では、洗浄された細胞は1種以上の生体適合性のバッファー、又はバッファーを含む若しくは含まない他の生理食塩水溶液に再懸濁される。或る特定の実施形態では、アフェレーシス試料の不所望な成分は除去される。T細胞療法のためにT細胞を単離する追加の方法は、米国特許出願公開第2013/0287748号に開示され、その全体は引用することにより本明細書の一部をなす。
【0124】
或る特定の実施形態では、幹細胞は、赤血球の溶解及び例えばPERCOLL(商標)勾配による遠心分離を使用することによる単球の除去によってPBMCから単離される。幾つかの実施形態では、CD4陽性、CD8陽性、CD28陽性、CD45RA陽性及びCD45RO陽性のT細胞等のT細胞の特定の亜集団は、当該技術分野において知られる正又は負の選択技術によって更に単離される。例えば、負の選択によるT細胞集団の富化は、負に選択される細胞に特有の表面マーカーに対する抗体の組み合わせによって達成され得る。幾つかの実施形態では、負に選択される細胞上に存在する細胞表面マーカーに対するモノクローナル抗体のカクテルを使用する負の磁気免疫付着(negative magnetic immunoadherence)又はフローサイトメトリーによる細胞の選別及び/又は選択を使用する
ことができる。例えば、負の選択によってCD4陽性細胞を富化するために、モノクローナル抗体カクテルは、典型的にはCD8、CD11b、CD14、CD16、CD20及びHLA-DRに対する抗体を含む。或る特定の実施形態においては、フローサイトメトリー及び細胞選別は、本開示における使用のための対象となる細胞集団を単離するために使用される。
【0125】
幾つかの実施形態では、CD8陽性細胞は、これら各種のCD8陽性細胞と関連する細胞表面抗原を同定することによって、ナイーブ細胞、ステムセルメモリー細胞、セントラルメモリー細胞、エフェクターメモリー細胞、及びエフェクター細胞へと更に選別される。幾つかの実施形態では、セントラルメモリーT細胞の表現型マーカーの発現は、CCR7、CD3、CD28、CD45RO、CD62L、及びCD127を含み、グランザイムBに対して陰性である。幾つかの実施形態では、セントラルメモリーT細胞は、CD8陽性、CD45RO陽性及びCD62L陽性のT細胞である。幾つかの実施形態では、エフェクターT細胞は、CCR7、CD28、CD62L及びCD127に対して陰性であり、グランザイムB及びパーフォリンに対して陽性である。或る特定の実施形態では、CD4陽性T細胞は亜集団へと更に選別される。例えば、CD4陽性ヘルパーT細胞は、細胞表面抗原を有する細胞集団を同定することによって、ナイーブ細胞、セントラルメモリー細胞及びエフェクター細胞へと選別され得る。
【0126】
幾つかの実施形態では、免疫細胞、例えばT細胞は、単離に続いて、既知の方法を使用して遺伝子改変されるか、又は免疫細胞は、遺伝子改変に先だってin vitroで活性化され、増殖させる(又は前駆細胞の場合には、分化される)。別の実施形態では、多能性幹細胞は、hEMPへの誘導前に改変される。別の実施形態では、形質導入されたhEMPは、ATOによって処理される。別の実施形態では、免疫細胞、例えばT細胞は、キメラ抗原受容体又はTCRを伴って遺伝子改変され(例えば、CAR又はTCRをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含むウイルスベクターによって形質導入され)、次いでin vitroで活性化及び/又は増殖させる。T細胞を活性化及び増殖させる方法は当該技術分野において知られており、例えば米国特許第6,905,874号、同第6,867,041号、及び同第6,797,514号、並びにPCT公報国際公開第2012/079000号に記載され、それらの内容は、それらの全体が引用することにより本明細書の一部をなす。一般的には、そのような方法は、PBMC又は単離されたT細胞と、一般的にはビーズ又は他の表面に付着された抗CD3抗体及び抗CD28抗体等の刺激性物質及び共刺激性物質とを、IL-2等の適切なサイトカインを含む培養培地中で接触させることを含む。同じビーズに付着された抗CD3抗体及び抗CD28抗体は、「代理」抗原提示細胞(APC)としての役割を果たす。1つの例は、ヒトT細胞の生理学的な活性化に対するCD3/CD28活性化因子/刺激因子システムである、Dynabeads(商標)システムである。他の実施形態では、米国特許第6,040,177号及び同第5,827,642号、並びにPCT公報国際公開第2012/129514号(それらの内容は、それらの全体が引用することにより本明細書の一部をなす)に記載されるような方法を使用して、フィーダー細胞、並びに適切な抗体及びサイトカインによって、T細胞は活性化され、刺激されて増殖する。
【0127】
或る特定の実施形態では、T細胞はドナー被験体から得られる。幾つかの実施形態では、ドナー被験体は、癌又は腫瘍に冒されたヒト患者である。他の実施形態では、ドナー被験体は癌又は腫瘍に冒されていないヒト患者である。
【0128】
本開示のその他の態様は、本明細書に記載されるポリヌクレオチド、本明細書に記載されるベクター、本明細書に記載されるポリペプチド、又は本明細書に記載されるin vitro細胞を含む組成物に関する。幾つかの実施形態では、上記組成物は、薬学的に許容可能な担体、希釈剤、可溶化剤、乳化剤、防腐剤、及び/又はアジュバントを含む。幾つかの実施形態では、上記組成物は添加剤を含む。
【0129】
その他の実施形態では、組成物は、非経口送達用、吸入用又は経口用のように消化管を通じた送達用に選択される。そのような薬学的に許容可能な組成物の製造は、当業者の能力の範囲内である。或る特定の実施形態では、バッファーは、組成物を生理学的pH又は僅かにより低いpH、一般的に約5~約8のpH範囲内に維持するために使用される。或る特定の実施形態では、非経口投与が検討される場合に、組成物は、薬学的に許容される賦形剤中に本明細書に記載される組成物を追加の治療剤と一緒に又は追加の治療剤なしに含むパイロジェンフリーな非経口的に許容可能な水溶液の形である。或る特定の実施形態では、非経口注射用の賦形剤は、本明細書に記載される組成物が少なくとも1種の追加の治療剤と一緒に又は追加の治療剤なしに無菌等張溶液として製剤化されて適切に保存される無菌蒸留水である。或る特定の実施形態では、その製造は、所望の分子と製品の制御放出又は持続放出をもたらすポリマー化合物(例えば、ポリ乳酸又はポリグリコール酸)、ビーズ又はリポソームとの配合を伴い、それらは後にデポ注射を介して送達される。或る特定の実施形態では、植え込み可能な薬物送達装置が、所望の分子又は細胞の導入のために使用される。
【0130】
癌治療
本開示の方法は、被験体において癌を治療し、腫瘍のサイズを縮小させ、腫瘍細胞を死滅させ、腫瘍細胞増殖を予防し、腫瘍の成長を予防し、患者から腫瘍を排除し、腫瘍の再発を予防し、腫瘍転移を予防し、患者において寛解を誘導するために、又はそれらの任意の組み合わせに使用され得る。或る特定の実施形態では、上記方法は完全奏功を誘導する。他の実施形態では、上記方法は部分奏功を誘導する。
【0131】
治療することができる癌としては、血管新生されていない腫瘍、まだ本質的に血管新生されていない腫瘍又は血管新生された腫瘍が挙げられる。癌には、充実性腫瘍又は非充実性腫瘍も含まれ得る。幾つかの実施形態では、癌は血液癌である。幾つかの実施形態では、癌は白血球細胞の癌である。他の実施形態では、癌は形質細胞の癌である。幾つかの実施形態では、癌は白血病、リンパ腫又は骨髄腫である。或る特定の実施形態では、癌は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)(非T細胞ALLを含む)、急性リンパ性白血病(ALL)及び血球貪食性リンパ組織球症(HLH)、B細胞前リンパ球性白血病、B細胞急性リンパ性白血病(「BALL」)、芽球性形質細胞様樹状細胞新生物、バーキットリンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄白血病(CML)、慢性若しくは急性肉芽腫性疾患、慢性若しくは急性白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、濾胞性リンパ腫(FL)、有毛細胞白血病、血球貪食症候群(マクロファージ活性化症候群(MAS))、ホジキン病、大細胞肉芽腫、白血球接着不全症、悪性リンパ増殖性疾患、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)、多発性骨髄腫、骨髄異形成及び骨髄異形成症候群(MDS)、限定されるものではないが急性骨髄白血病(AML)を含む骨髄疾患、非ホジキンリンパ腫(NHL)、形質細胞増殖性障害(例えば、無症候性骨髄腫(くすぶり型多発性骨髄腫又は無痛性骨髄腫)、形質芽球性リンパ腫、形質細胞様樹状細胞新生物、形質細胞腫(例えば、形質細胞異常増殖症;孤立性骨髄腫;孤立性形質細胞腫;髄外性形質細胞腫;及び多発性形質細胞腫)、POEMS症候群(Crow-Fukase症候群、高月病、及びPEP症候群)、縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫(PMBC)、小細胞若しくは大細胞濾胞性リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫(SMZL)、全身性アミロイド軽鎖アミロイドーシス、T細胞急性リンパ性白血病(「TALL」)、T細胞リンパ腫、形質転換後濾胞性リンパ腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症又はそれらの組み合わせである。
【0132】
一実施形態では、癌は骨髄腫である。特定の一実施形態では、癌は多発性骨髄腫である。別の実施形態では、癌は白血病である。一実施形態では、癌は急性骨髄白血病である。
【0133】
幾つかの実施形態では、上記方法は、化学療法剤を投与することを更に含む。或る特定の実施形態では、選択される化学療法剤は、リンパ球除去(プレコンディショニング)化学療法剤である。有益なプレコンディショニング治療計画は、相関する有益なバイオマーカーと共に、米国仮特許出願第62/262,143号及び同第62/167,750号に記載されており、これらは引用することによりその全体が本明細書の一部をなす。これらは、例えば、特定された有益な用量のシクロホスファミド(200mg/m/日から2000mg/m/日の間)と特定された用量のフルダラビン(20mg/m/日から900mg/m/日の間)とを患者に投与することを含む、T細胞療法を必要とする患者をコンディショニングする方法を記載している。そのような投与計画の1つは、治療的有効量の操作されたT細胞を患者に投与する前に3日間にわたり、その患者に約500mg/m/日のシクロホスファミドと約60mg/m/日のフルダラビンとを投与することを含む患者の治療を伴う。
【0134】
他の実施形態では、抗原結合分子、形質導入された(或いは操作された)細胞(例えばCAR又はTCR)及び化学療法剤は、それぞれ被験体における疾患又は状態を治療する
ために有効な量で投与される。
【0135】
或る特定の実施形態では、本明細書に開示されるCAR及び/又はTCRを発現する免疫エフェクター細胞を含む組成物は、任意の数の化学療法剤と併せて投与され得る。化学療法剤の例としては、チオテパ及びシクロホスファミド(CYTOXAN(商標))等のアルキル化剤、ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン等のアルキルスルホン酸エステル、ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa
)及びウレドーパ(uredopa)等のアジリジン類、アルトレタミン、トリエチレンメラミ
ン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド及びトリメチロールメラミンのレジームを含む、エチレンイミン類及びメチルメラミン類、クロラムブシル、クロルナファジン、シクロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノボエンビキン、フェネストリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード等のナイトロジェンマスタード類、カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン等のニトロソウレア類、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリチアマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン
、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウ
ベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン等の抗生物質、メトトレキセート及び5-フルオロウラシル(5-FU)等の代謝拮抗薬、デノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキサート等の葉酸類縁体、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン等のプリン類縁体、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5-FU等のピリミジン類縁体、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン等のアンドロゲン類、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン等の抗副腎剤、フォリン酸等の葉酸補液、アセグラトン、アルドホスファミドグリコシド、アミノレブリン酸、アムサクリン、ベストラブシル、ビスアントレン、エダトラキサート、デフォファミン(defofamine)、デメコルチン、ジアジコン、エルフォルミチン(elformithine)、酢酸エリプチニウム、エトグルシド、硝酸ガリウム、ヒドロキシウレア、レンティナン、ロニダミン、ミトグアゾン、ミトキサントロン、モピダモール、ニトラクリン、ペントスタチン、フェナメット、ピラルビシン、ポドフィリン酸、2-エチルヒドラジド、プロカルバジン、PSK(商標)、ラゾキサン、シゾフィラン、スピロゲルマニウム、テヌアゾン酸、トリアジコン、2、2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン、ウレタン、ビンデシン、ダカルバジン、マンノムスチン、ミトブロニトール、ミトラクトール、ピポブロマン、ガシトシン(gacytosine)、アラビノシド(「Ara-C」)、シクロホスファミド、チオテパ、タキソイド、例えばパクリタキセル(TAXOL(商標)、Bristol-Myers Squibb社)及びドセタキセル(TAXOTERE(商標)、Rhone-Poulenc Rorer社)、クロラムブチル、
ゲムシタビン、6-チオグアニン、メルカプトプリン、メトトレキセート、シスプラチン及びカルボプラチン等の白金類縁体、ビンブラスチン、白金、エトポシド(VP-16)、イホスファミド、マイトマイシンC、ミトキサントロン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ナベルビン、ノバントロン、テニポシド、ダウノマイシン、アミノプテリン、ゼローダ、イバンドロン酸塩、CPT-11、トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000、ジフルオロメチルオルニチン(DMFO)、Targretin(商標)(ベキサロテン)、Panretin(商標)(アリトレチノイン)等のレチノイン酸誘導体、ONTAK(商標)(デニロイキン・ディフティトックス)、エスペラミシン、カペシタビン、並びに上
記のいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸又は誘導体が挙げられる。幾つかの実施形態では、本明細書に開示されるCAR及び/又はTCRを発現する免疫エフェクター細胞を含む組成物は、腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように作用する抗ホルモン剤、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害性4(5)-イミダゾール類、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン(keoxifene
)、LY117018、オナプリストン及びトレミフェン(フェアストン)を含む抗エストロゲン薬、並びにフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、リュープロリド及びゴセレリン等の抗アンドロゲン薬、並びに上記のいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸又は誘導体と併せて投与され得る。適宜、限定されるものではないが、CHOP、すなわち、シクロホスファミド(Cytoxan(商標))、ドキソルビシン(ヒドロキシドキソルビシン)、ビンクリスチン(Oncovin(商標))及びプレドニゾンを含む化学療法剤の組み合わせも投与される。
【0136】
幾つかの実施形態では、化学療法剤は、操作された細胞又は核酸の投与と同時に又はその投与後1週間以内に投与される。他の実施形態では、化学療法剤は、操作された細胞又は核酸の投与後の1週間~4週間、1週間~1ヶ月、1週間~2ヶ月、1週間~3ヶ月、1週間~6ヶ月、1週間~9ヶ月、又は1週間~12ヶ月で投与される。幾つかの実施形態では、化学療法剤は、細胞又は核酸を投与する少なくとも1ヶ月前に投与される。幾つかの実施形態では、上記方法は、2種以上の化学療法剤を投与することを更に含む。
【0137】
様々な追加の治療剤が、本明細書に記載される組成物と併せて使用され得る。例えば、有用な可能性がある追加の治療剤として、ニボルマブ(OPDIVO(商標))、ペンブロリズマブ(KEYTRUDA(商標))、ペンブロリズマブ、ピディリズマブ(CureTech社)、及びアテゾリズマブ(Roche社)等のPD-1阻害剤が挙げられる。
【0138】
本開示と組み合わせて使用するために適した追加の治療剤としては、限定されるものではないが、イブルチニブ(IMBRUVICA(商標))、オファツムマブ(ARZERRA(商標))、リツキシマブ(RITUXAN(商標))、ベバシズマブ(AVASTIN(商標))、トラスツズマブ(HERCEPTIN(商標))、トラスツズマブエムタンシン(KADCYLA(商標))、イマチニブ(GLEEVEC(商標))、セツキシマブ(ERBITUX(商標))、パニツムマブ(VECTIBIX(商標))、カツマキソマブ、イブリツモマブ、オファツムマブ、トシツモマブ、ブレンツキシマブ、アレムツズマブ、ゲムツズマブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、バンデタニブ、アファチニブ、ラパチニブ、ネラチニブ、アキシチニブ、マシチニブ、パゾパニブ、スニチニブ、ソラフェニブ、トセラニブ、レスタウルチニブ、アキシチニブ、セジラニブ、レンバチニブ、ニンテダニブ、パゾパニブ、レゴラフェニブ、セマクサニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、チボザニブ、トセラニブ、バンデタニブ、エントレクチニブ、カボザンチニブ、イマチニブ、ダサチニブ、ニロチニブ、ポナチニブ、ラドチニブ、ボスチニブ、レスタウルチニブ、ルキソリチニブ、パクリチニブ、コビメチニブ、セルメチニブ、トラメチニブ、ビニメチニブ、アレクチニブ、セリチニブ、クリゾチニブ、アフリベルセプト、アジポチド、デニロイキン・ディフティトックス、エベロリムス及びテムシロリムス等のmTOR阻害剤、ソニデギブ及びビスモデギブ等のヘッジホッグ阻害剤、CDK阻害剤(パルボシクリブ)等のCDK阻害剤が挙げられる。
【0139】
追加の実施形態では、CAR及び/又はTCRを含む免疫細胞は、抗炎症剤と共に投与される。抗炎症剤又は抗炎症薬としては、限定されるものではないが、ステロイド類及びグルココルチコイド類(ベタメタゾン、ブデソニド、デキサメタゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、及びトリアムシノロンを含む)、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、メトトレキセート、スルファサラジン、レフルノミド、抗TNF薬、シクロホスフ
ァミド及びミコフェノール酸塩を含む非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)が挙げられ得る。例示的なNSAIDとしては、イブプロフェン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、Cox-2阻害剤及びシアリレートが挙げられる。例示的な鎮痛剤としては、アセトアミノフェン、オキシコドン、及びトラマドール又は塩酸プロポキシフェンが挙げられる。例示的なグルココルチコイド類としては、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン又はプレドニゾンが挙げられる。例示的な生物学的応答調節物質としては、細胞表面マーカー(例えばCD4、CD5等)に対する分子、TNFアンタゴニスト(例えば、エタネルセプト(ENBREL(商標))、アダリムマブ(HUMIRA(商標))及びインフリキシマブ(REMICADE(商標))等のサイトカイン阻害剤、ケモカイン阻害剤、及び接着分子阻害剤が挙げられる。生物学的応答調節物質は、モノクローナル抗体及び分子の組み換え形も含む。例示的なDMARDとしては、アザチオプリン、シクロホスファミド、シクロスポリン、メトトレキサート、ペニシラミン、レフルノミド、スルファサラジン、ヒドロキシクロロキン、金(経口(オーラノフィン)及び筋肉内)及びミノサイクリンが挙げられる。
【0140】
或る特定の実施形態では、本明細書に記載される組成物は、サイトカインと併せて投与される。本明細書で使用される「サイトカイン」は、1つの細胞集団によって放出され、細胞間メディエーターとして別の細胞に対して作用するタンパク質を指すことを意味する。サイトカインの例は、リンホカイン、モノカイン及び従来のポリペプチドホルモンである。サイトカインの中でも、ヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン及びウシ成長ホルモン等の成長ホルモン、副甲状腺ホルモン、チロキシン、インスリン、プロインスリン、リラキシン、プロリラキシン、卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)及び黄体形成ホルモン(LH)等の糖タンパク質ホルモン、肝臓増殖因子(HGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、プロラクチン、胎盤性ラクトゲン、ミューラー管阻害物質、マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド、インヒビン、アクチビン、血管内皮細胞増殖因子、インテグリン、トロンボポエチン(TPO)、NGF-ベータ等の神経成長因子(NGF)、血小板増殖因子、TGF-アルファ及びTGF-ベータ等のトランスフォーミング増殖因子(TGF)、インスリン様増殖因子I及びII、エリスロポエチン(EPO)、骨誘導因子、インターフェロン-アルファ、ベータ及びガンマ等のインターフェロン、マクロファージ-CSF(M-CSF)、顆粒球マクロファージ-CSF(GM-CSF)及び顆粒球-CSF(G-CSF)等のコロニー刺激因子(CSF)、IL-1、IL-1アルファ、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-15等のインターロイキン(IL)、TNF-アルファ又はTNF-ベータ等の腫瘍壊死因子、並びにLIF及びkitリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子が挙げられる。本明細書で使用されるサイトカインという用語は、天然起源由来又は組み換え細胞培養物由来のタンパク質、及び天然の配列のサイトカインの生物学的に活性な等価物を含む。
【0141】
本開示の別の態様は、有効量の本明細書に開示される改変されたT細胞を被験体に投与することを含む、腫瘍に対する免疫を誘導する方法に関する。本開示の別の態様は、被験体において免疫応答を誘導する方法であって、有効量の本出願の操作された免疫細胞を投与することを含む、方法に関する。幾つかの実施形態では、免疫応答はT細胞媒介免疫応答である。幾つかの実施形態では、T細胞媒介免疫応答は、1つ以上の標的細胞に対するものである。幾つかの実施形態では、操作された免疫細胞はCAR又はTCRを含み、ここでCAR又はTCRは、本開示に記載されるTHDを含む。幾つかの実施形態では、標的細胞は腫瘍細胞である。
【0142】
本開示の別の態様は、悪性腫瘍を治療又は予防する方法であって、有効量の少なくとも1つの免疫細胞を、それを必要とする被験体に投与することを含み、該免疫細胞は少なくとも1つのCAR又はTCRを含む、方法に関する。
【0143】
本開示の別の態様は、癌の治療を必要とする被験体において癌を治療する方法であって、上記被験体に、本明細書に開示されるポリヌクレオチド、ベクター、CAR若しくはTCR、細胞、又は組成物を投与することを含む、方法に関する。1つの実施形態では、上記方法は、CAR又はTCRをコードするポリヌクレオチドを投与することを含む。別の実施形態では、上記方法は、CAR又はTCRをコードするポリヌクレオチドを含むベクターを投与することを含む。別の実施形態では、上記方法は、本明細書に開示されるポリヌクレオチドによってコードされるCAR又はTCRを投与することを含む。別の実施形態では、上記方法は、CAR又はTCRをコードするポリヌクレオチドを含む細胞、又は該ポリヌクレオチドを含むベクターを投与することを含む。
【0144】
幾つかの実施形態では、T細胞療法において使用するためのドナーT細胞は、(例えば自己T細胞療法のために)患者から得られる。他の実施形態では、T細胞療法においてT細胞へと分化するドナー幹細胞は、患者ではない被験体から得られる。
【0145】
T細胞は、治療的有効量で投与され得る。例えば、T細胞の治療的有効量は、少なくとも約10個の細胞、少なくとも約10個の細胞、少なくとも約10個の細胞、少なくとも約10個の細胞、少なくとも約10個の細胞、少なくとも約10個の細胞、又は少なくとも約1010個の細胞であり得る。別の実施形態では、T細胞の治療的有効量は、約10個の細胞、約10個の細胞、約10個の細胞、約10個の細胞、又は約10個の細胞である。特定の一実施形態では、CAR T細胞又はTCR T細胞の治療的有効量は、約2×10細胞/kg、約3×10細胞/kg、約4×10細胞/kg、約5×10細胞/kg、約6×10細胞/kg、約7×10細胞/kg、約8×10細胞/kg、約9×10細胞/kg、約1×10細胞/kg、約2×10細胞/kg、約3×10細胞/kg、約4×10細胞/kg、約5×10細胞/kg、約6×10細胞/kg、約7×10細胞/kg、約8×10細胞/kg、又は約9×10細胞/kgである。
【0146】
免疫寛容
本開示の方法は、被験体における免疫寛容疾患を治療するために使用することができる。或る特定の実施形態では、上記方法は完全奏功を誘導する。他の実施形態では、上記方法は部分奏功を誘導する。
【0147】
中枢性寛容又は末梢性寛容の欠陥は、自己免疫疾患を引き起こして、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、1型糖尿病、自己免疫性多内分泌腺症候群1型(APS-1)及び免疫調節異常、多腺内分泌障害、腸疾患、X連鎖症候群(IPEX)等の症候群を引き起こす場合があり、潜在的に喘息、アレルギー及び炎症性腸疾患の一因となる。免疫寛容は、移植拒絶反応、例えば幹細胞移植、腎臓移植、肝臓移植等の移植拒絶において問題となる場合もある。
【0148】
本明細書で言及される全ての出版物、特許、及び特許出願は、個々の出版物、特許又は特許出願が各々、具体的かつ個別に引用することにより本明細書の一部をなすことが指示されるのと同じ程度に、引用することにより本明細書の一部をなす。しかしながら、本明細書における参照文献の引用は、かかる参照文献が本開示に対する先行技術の認識として解釈されるべきではない。引用することにより本明細書の一部をなす参照文献に提供される定義又は用語のいずれかが本明細書に提供される用語及び考察とは異なる場合は、本発明の用語及び定義を優先する。
【0149】
本開示を、以下の実施例によって更に説明するが、実施例は、更なる限定として解釈されるべきではない。本出願全体を通して引用される全ての参考文献の内容は、引用するこ
とにより明確に本明細書の一部をなす。
【実施例0150】
実施例1:クラスターと単一細胞との間のhEMP誘導の比較
この実施例は、クラスターと単一細胞との間のhEMP誘導の比較を例示する。
【0151】
クラスターとしてのES細胞のコンフルエントプレートを、手動でMatrigel(商標)被覆された6ウェルプレートへとウェルの20%、40%及び80%の当量で継代播種した。さらに、ES細胞のコンフルエントプレートを、酵素的消化によって化学的に崩壊させ、細胞数/表面積を求めるために計数した。単一細胞を、1.8×10個(20%のコンフルエント)、3.6×10個(40%のコンフルエント)及び7.2×10個(80%のコンフルエント)で播種した。その細胞を、コントロールとしてのES細胞を未分化状態で維持することが知られるmTeSR1培地中か、又はX-VIVO(商標)-15のhEMP推進培地中のいずれかで培養した。全ての条件において、継代の間のES細胞の生存を助けるために小分子ROCK阻害剤であるY27632を含んでいた。細胞を全ての条件で1日目、2日目、3日目及び4日目に採取した。実験の構成は、表1、表2及び表3に示されている。
【0152】
【表1】
【0153】
【表2】
【0154】
【表3】
【0155】
hEMPへと移行するES細胞は、CD326 EPCAMの損失とCD56 NCAMの獲得とを特徴とする。表面発現されたCD326及びCD56の変化に基づく表現型分析は、1.8~7.2×10細胞/6ウェルプレートの1ウェルすなわち2.53~7.58×10細胞/cmの間の最適密度でhEMPを作製する際に、クラスターに基づく方策よりも単一細胞の方策の方が効率的であることを示している。表面発現されたCD326及びCD56における変化を示す例示的なフローサイトメトリーデータ及びサマリーグラフは、それぞれ図1及び図2に示されている。hEMP細胞の作製のための例示的な方法は、図3に示されている。
【0156】
実施例2:中胚葉推進におけるMatrigel(商標)とビトロネクチンとの比較及び細胞増殖の評価
この実施例は、Matrigel(商標)又はビトロネクチンの存在下でのhEMP誘導の比較を提供する。マウス肉腫細胞により産生される規定されない産物であるMatrigel(商標)をhEMP誘導過程から除外する効果を調査するために、中胚葉推進実験を実施した。
【0157】
単一細胞を、Matrigel(商標)で被覆された6ウェルプレート(組織培養処理されたプレート)又は組み換えヒトビトロネクチンで被覆された6ウェルプレート(組織培養処理されていないプレート)において5%又は40%のコンフルエンスで播種した。細胞を3日間増殖させ、細胞の一部を継代し、5%又は40%の密度で新たな被覆されたプレート上に再播種し、更に3日間増殖させた。細胞を採取し、CD326及びCD56の発現について評価した。実験設計の概要は、表4に示されている。
【0158】
【表4】
【0159】
図4に示されるように、Matrigel(商標)で被覆された表面とビトロネクチンで被覆された表面との間で、試験された全ての実験条件において同等のhEMP表現型が観察された。組み換えヒトビトロネクチンは、ES細胞からhEMPに分化させる基材としてのMatrigel(商標)と少なくとも同等である。興味深いことに、表5及び表6にまとめられているように、3日目に40%の初期播種密度を5%の密度に分割することで、インプットES細胞の数から約10倍(13.31)のhEMPの増殖が可能となった。播種工程を含むhEMP細胞の作製のための例示的な方法は、図5に示されている。
【0160】
【表5】
【0161】
【表6】
【0162】
実施例3:hEMP細胞のT細胞への分化
本開示の非クラスター形成細胞の方策に従って作製されたhEMP細胞を使用することで、in vitroシステム(例えば、ATOシステム)におけるT細胞分化の効率を高めることができる。hEMP細胞を記載のように誘導し、FACSAria Fusion(BD社)においてソーティングした。ソーティング後の純度は、非hEMP及びhEMPの両方について95%超で測定された(図6)。T細胞の分化を、RPMI 1640(Corning社、バージニア州、マナサス)、2%のXenoFree B27(ThermoFisher Scientific社、ニューヨーク州、グランドアイランド)、PBS中で再構成された30μMのL-アスコルビン酸2-リン酸セスキマグネシウム塩水和物(Sigma-Aldrich
社、ミズーリ州、セントルイス)、1%のペニシリン/ストレプトマイシン(Gemini Bio-Products社、カリフォルニア州、ウェストサクラメント)、1%のGlutamax(ThermoFischer Scientific社、ニューヨーク州、グランドアイランド)、5ng/mlの
rhFLT3L、5ng/mlのrhIL-7及び50ng/mlのSCF(Peprotech
社、ニュージャージー州、ロッキーヒル)から構成される無血清のATO培養培地(「RB27」)を使用して誘導した。2%のXenoFree B27をB27に置き換えた。
【0163】
0.5×10個のMS5-hDL4細胞を、50ml容のコニカルバイアル中のATO当たり1×10個の精製されたhEMP細胞と混ぜ合わせ、スイングバケット式遠心分離器において500gで5分間遠心分離した。上清を慎重に取り除き、細胞ペレットを短時間のボルテックス処理により再懸濁した。各ATOについて、0.4μmのMillicell transwellインサート(EMD Millipore社、マサチューセッツ州、
ビレリカ、カタログ番号PICM0RG50)を、1ウェル当たり1mlのRB27が入った6ウェルプレートに設置した。ATOの播種のために、インサートを取り出して、プレートの縁に載せることで、余分な培地を排出した。細胞スラリーをATO当たり5μlに調整し、20μlのピペットチップで吸い上げ、ピペットチップの端に液滴を形成し、それをセルインサート上に静かに沈積させることにより播種した。セルインサートを、1mLのRB27が入ったウェル中に設置し戻した。セルインサート周辺から吸引した後に、新たなRB27/サイトカインを有する1mlと置き換えることによって、3日~4日毎に培地を完全に交換した。このようにしてATOを8週間までの間培養した。FACSバッファー(PBS/0.5%のウシ血清アルブミン/2mMのEDTA)を各ウェルに添加し、ピペッティングによりATOを簡単に分解させ、その後に70μmのナイロンストレーナーに通すことにより、ATO細胞を採取した。
【0164】
採取された細胞を、以下の抗原:CD45、CD56、CD3、CD4、CD8、TCRabについての抗体(Biolegend社)で暗所において4℃で30分間染色した。細胞を
PBSで洗浄し、T細胞発達の分析のためにFortessa X20(BD社)において分析した。4週目の細胞の1つの例が、図7に示されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-02-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト胚性間葉系始原(hEMP)細胞を作製する方法であって、
(a)幹細胞のクラスターを崩壊させて非クラスター形成単一幹細胞を作製する工程と、
(b)前記非クラスター形成単一幹細胞を、誘導培地に移す工程と、
(c)前記非クラスター形成幹細胞を、約1.5×10 細胞/cm から約8×10 細胞/cm の間の規定の単一細胞密度で基材と接触させる工程と、
(d)前記細胞を、細胞増殖を容易にする培養条件下で所望のコンフルエンスまで培養し、それによりhEMP細胞を作製する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記幹細胞は、ヒト胚性幹(ES)細胞又は人工多能性幹(iPS)細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ES細胞又は前記iPS細胞は、ヒト起源である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ES細胞又は前記iPS細胞は、H1細胞、H9細胞、HES3細胞、HSF1細胞、HSF6細胞、ESI-017細胞、CS02iCTR-NTn1細胞、CS03iCTR-NTn1細胞、CS80iCTR-Tn3細胞、CS179iCTR-NTn1細胞、CS201iCTR-NTn4細胞、CS202iCTR-NTn2細胞又はCS206iCTR-Tn5細胞である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記規定の単一細胞密度は、約1.89×10 細胞/cm 、約3.2×10 細胞/cm 、約3.4×10 細胞/cm 、約3.6×10 細胞/cm 、約3.79×10 細胞/cm 、約7.2×10 細胞/cm 又は約7.58×10 細胞/cm である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記基材は、組織培養処理された基材又は組織培養処理されていない基材であるが、マウス胚性線維芽細胞(MEF)ではない、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記基材は、ウェル付きプレート、細胞培養皿、メンブレン、バッグ、培養フラスコ、逆オパール構造体、ポリマー格子、静的な細胞懸濁液、撹拌された細胞懸濁液又はプラズマ処理されたポリマーである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記基材は、メンブレンを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記培養条件は、mTeSR1培地を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記培養条件は、ROCK阻害剤を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ROCK阻害剤は、Y27632である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記所望のコンフルエンスは、約20%から約80%の間である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記コンフルエンスは、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%又は約80%である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記誘導培地は、BMP4、VEGF及びFGFを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
インキュベート時間は、約2日から約6日の間である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記インキュベート時間は、約2.0日、約2.5日、約3.0日、約3.5日、約4.0日、約4.5日、約5.0日又は約5.5日である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記インキュベート時間は、約3.5日である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記hEMP細胞をT細胞へと分化させる工程を更に含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記方法は、幹細胞のクラスターを崩壊させて非クラスター形成幹細胞を作製する工程を更に含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記幹細胞のクラスターは、機械的崩壊又は化学的崩壊によって崩壊される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記化学的崩壊は、トリプシン様酵素と一緒にインキュベートすることを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記トリプシン様酵素は、トリプシン、TrypLE Express、TrypLE Select、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、トリプシン-EDTAである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか一項に記載の方法に従って作製されたヒト胚性間葉系始原(hEMP)細胞。
【請求項24】
請求項1~22のいずれか一項に記載の方法に従って作製されたヒト胚性間葉系始原(hEMP)細胞の集団を含む組成物。
【請求項25】
T細胞を作製する方法であって、
(a)幹細胞のクラスターを崩壊させて非クラスター形成単一幹細胞を作製する工程と、
(b)前記非クラスター形成単一幹細胞を誘導培地に移して、前記幹細胞のhEMP細胞への分化を誘導する工程と、
(c)非クラスター形成幹細胞を、約1.5×10 細胞/cm から約8×10 細胞/cm の間の規定の単一細胞密度で基材と接触させる工程と、
(d)前記細胞を、細胞増殖を促進する培養条件下で所望のコンフルエンスまで培養する工程と、
(e)前記培養条件を変更することで、前記hEMP細胞のT細胞への分化を所望のインキュベート時間にわたり誘導し、それにより幹細胞からT細胞を作製する工程と、
を含む、方法。
【請求項26】
前記幹細胞は、ヒト胚性幹(ES)細胞又は人工多能性幹(iPS)細胞である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ES細胞又は前記iPS細胞は、ヒト起源である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ES細胞又は前記iPS細胞は、H1細胞、H9細胞、HES3細胞、HSF1細胞、HSF6細胞、ESI-017細胞、CS02iCTR-NTn1細胞、CS03iCTR-NTn1細胞、CS80iCTR-Tn3細胞、CS179iCTR-NTn1細胞、CS201iCTR-NTn4細胞、CS202iCTR-NTn2細胞又はCS206iCTR-Tn5細胞である、請求項26又は27に記載の方法。
【請求項29】
前記規定の単一細胞密度は、約1.89×10 細胞/cm 、約3.2×10 細胞/cm 、約3.4×10 細胞/cm 、約3.6×10 細胞/cm 、約3.79×10 細胞/cm 、約7.2×10 細胞/cm 又は約7.58×10 細胞/cm である、請求項25~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記基材は、組織培養処理された基材又は組織培養処理されていない基材で被覆されているが、マウス胚性線維芽細胞(MEF)ではない、請求項25~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記基材は、ウェル付きプレート、細胞培養皿、メンブレン、バッグ、培養フラスコ、逆オパール構造体、ポリマー格子、静的な細胞懸濁液、撹拌された細胞懸濁液又はプラズマ処理されたポリマーである、請求項25~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記基材は、メンブレンを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記培養条件は、mTeSR1培地を含む、請求項25~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記培養条件は、ROCK阻害剤を含む、請求項25~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記ROCK阻害剤は、Y27632である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記所望のコンフルエンスは、約20%から約80%の間である、請求項25~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記コンフルエンスは、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%又は約80%である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記誘導培地は、BMP4、VEGF及びFGFを含む、請求項25~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記インキュベート時間は、約2日から約6日の間である、請求項25~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記インキュベート時間は、約2.0日、約2.5日、約3.0日、約3.5日、約4.0日、約4.5日、約5.0日、約5.5日又は約6.0日である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記インキュベート時間は、約3.5日である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記方法は、幹細胞のクラスターを崩壊させて非クラスター形成幹細胞を作製する工程を更に含む、請求項25~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記幹細胞のクラスターは、機械的崩壊又は化学的崩壊によって崩壊される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記化学的崩壊は、トリプシン様酵素と一緒にインキュベートすることを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記トリプシン様酵素は、トリプシン、TrypLE Express、TrypLE Select、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、トリプシン-EDTAである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
請求項25~45のいずれか一項に記載の方法に従って作製されたT細胞。
【請求項47】
請求項25~45のいずれか一項に記載の方法に従って作製されたT細胞の集団を含む組成物。
【外国語明細書】