IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日工株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-脱臭装置及び脱臭方法 図1
  • 特開-脱臭装置及び脱臭方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004531
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】脱臭装置及び脱臭方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 19/10 20060101AFI20240110BHJP
   F23G 7/06 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
E01C19/10 A
F23G7/06 N
F23G7/06 105
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104135
(22)【出願日】2022-06-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年4月1日に日工株式会社発行の日工テクニカルレポート,第三号に掲載 〔刊行物等〕令和4年4月1日に日工株式会社のウェブサイト(https://www.nikko-net.co.jp/product/technical-report.html)に掲載
(71)【出願人】
【識別番号】000226482
【氏名又は名称】日工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】蓬莱 秀人
【テーマコード(参考)】
2D052
3K078
【Fターム(参考)】
2D052AA03
2D052AA07
2D052AA15
2D052BA08
2D052BA23
2D052CA13
2D052DA22
3K078BA17
3K078BA23
(57)【要約】
【課題】 蓄熱材に、ヒートショックによる劣化・損傷が生じても支障の無い素材を採用し、かつシンプルな装置構成としながらも、熱交換効率に優れる脱臭装置及び脱臭方法を提供する。
【解決手段】 骨材容器13a~13eを上下に五段連設し、第一の骨材容器13aの投入口11上位には骨材供給手段20を、第五の骨材容器13eの排出口12下位には骨材切り出し手段22を備える。また、第四の骨材容器13dにはリサイクルドライヤ3に繋がる第一の排気ダクト4aを、第一の骨材容器13aには煙突24に繋がる第二の排気ダクト4bを、第二の骨材容器13bには脱臭用バーナ25を有した燃焼室26を、第三の骨材容器13cにはリサイクルドライヤ3からの排ガスを燃焼室26に供給する排ガス供給ダクト27を、第五の骨材容器13eには排出口12から吸引される外気を脱臭用バーナ25に供給する燃焼用空気供給ダクト28を連結する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルトプラントのリサイクルドライヤからの排ガス中の臭気成分を燃焼分解する脱臭装置であって、上端に投入口を、下端に排出口をそれぞれ有した中空状の骨材容器を上下に五段連設し、上下に隣接する各骨材容器の投入口と排出口とをそれぞれ接続して連通させ、上段側から数えて第一の骨材容器の投入口の上位には骨材供給手段を、第五の骨材容器の排出口の下位には骨材切り出し手段をそれぞれ備えると共に、第四の骨材容器の上端側部には前記リサイクルドライヤに繋がる第一の排気ダクトを、前記第一の骨材容器の上端側部には排風機を介して煙突に繋がる第二の排気ダクトを、第二の骨材容器の上端側部には脱臭用バーナを有した燃焼室を、第三の骨材容器の上端側部には前記リサイクルドライヤからの排ガスを前記燃焼室に供給する排ガス供給ダクトを、前記第五の骨材容器の上端側部には下端の排出口から吸引される外気を前記脱臭用バーナに供給する燃焼用空気供給ダクトをそれぞれ連結したことを特徴とする脱臭装置。
【請求項2】
前記骨材切り出し手段から切り出される骨材を前記骨材供給手段へと循環供給可能とする循環供給手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の脱臭装置。
【請求項3】
前記各骨材容器内に供給する骨材の粒度を変更可能としたことを特徴とする請求項1記載の脱臭装置。
【請求項4】
前記各骨材容器内を下方へ流動する骨材の流動速度を変更可能としたことを特徴とする請求項1記載の脱臭装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載の脱臭装置の運転方法であって、前記各骨材容器内に骨材を充填後、前記骨材供給手段からの骨材供給と骨材切り出し手段からの骨材切り出しとを同時に行って各骨材容器内に充填した骨材を下方へ連続的に流動させつつ、前記排風機を稼働させて各骨材容器内を負圧に維持しながら前記脱臭用バーナを着火燃焼させ、その状態で前記リサイクルドライヤを運転してその排ガスを前記第四の骨材容器上端部を介して第三の骨材容器内に導入・通過させ、その際に前記第三の骨材容器内を流動中の高蓄熱状態の骨材と熱交換させる第一の熱交換を行って前記排ガスを予熱し、予熱した排ガスを前記燃焼室に供給して臭気成分を燃焼分解し、その際に生じた燃焼ガスを前記第二の骨材容器上端部を介して第一の骨材容器内に導入・通過させ、その際に前記第一の骨材容器内を流動中の蓄熱前の骨材と熱交換させる第二の熱交換を行って前記燃焼ガスから熱回収し、熱回収された燃焼ガスを煙突より放出する一方、前記第二の熱交換に伴って高蓄熱状態となった骨材は下位の各骨材容器へと流動させると共に、前記第五の骨材容器の下端の排出口より負圧の骨材容器内に外気を吸引・通過させ、その際に前記第五の骨材容器内を流動中でかつ前記第一の熱交換を経て前記高蓄熱状態よりも低温の低蓄熱状態の骨材と更に熱交換させる第三の熱交換を行って前記外気を予熱し、予熱した外気を前記脱臭用バーナへ供給して燃焼用空気として使用することを特徴とする脱臭方法。
【請求項6】
請求項5記載の脱臭方法であって、前記骨材に代えて、コンクリートガラを前記各骨材容器内に充填・流動させることを特徴とする脱臭方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルトプラントのリサイクルドライヤからの排ガス中に含まれる臭気成分を燃焼分解する脱臭装置及び脱臭方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路舗装材であるアスファルト混合物を製造するアスファルト混合物製造工場のアスファルトプラントには、バージン材、即ち新規の骨材を加熱するバージンドライヤと、アスファルト舗装廃材(以下、「廃材」という)を加熱するリサイクルドライヤとが設置されている。前記リサイクルドライヤにて廃材を加熱するときには、加熱条件により臭気成分を含んだ排ガスが発生することがあるため、リサイクルドライヤの排気ダクトの途中に脱臭炉を設置し、排ガス中に含まれる臭気成分を炉内に導入し、約800℃前後にて燃焼分解して脱臭処理することが行われている。
【0003】
このとき、脱臭炉から排出される脱臭処理ガスは高温であって大気中にそのまま放出すると経済的損失となるため、前記脱臭炉に熱交換器を搭載して高温の脱臭処理ガスから熱回収を行い、脱臭炉に導入する前の被処理ガス(リサイクルドライヤからの排ガス)やバーナの燃焼用空気等の予熱に有効利用している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ただし、アスファルトプラントは一般に稼働率が低く間欠運転されることが多いため、前記脱臭炉の熱交換器では加熱と冷却とが短い間隔で何度も繰り返し行われる結果、比較的短期間で金属疲労(ヒートショック)が進行しやすく、機器の定期的な入れ替えを余儀なくされている。したがって、アスファルトプラントの脱臭炉に搭載する熱交換器としては、装置コストの方を優先し、熱交換面積が比較的小さく低廉な機器が採用されることが多く、その分、脱臭処理ガスは約300~400℃程度もの比較的高温のまま排出され、熱回収の方は必ずしも十分とは言えないものとなっている。
【0005】
一方、熱交換効率に優れる脱臭装置としては、例えば、蓄熱式脱臭装置(以下、「RTO」(Regenerative Thermal Oxidizer)という)と呼ばれるものがある。前記RTOは、バーナを有した燃焼室と、該燃焼室に連通する二以上の蓄熱室とを備え、リサイクルドライヤからの排ガスは、一の蓄熱室に供給して予熱し、予熱した排ガスを燃焼室で加熱して臭気成分を燃焼分解する一方、脱臭処理ガスは、他の蓄熱室で熱回収した後に排出する構成としている。前記各蓄熱室には、例えば、ハニカム構造のセラミック製の蓄熱材を熱交換器として有しており、従来の金属製エレメントを有した熱交換器と比較すると高価ではあるものの、熱交換面積を大きく取れて熱回収に有利なものとなっている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-1996号公報
【特許文献2】特開2021-107615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記のように、間欠運転を余儀なくされるアスファルトプラントにあっては、例え前記RTOであっても蓄熱材が短い間隔で繰り返し加熱と冷却を受ける点では変わりはなく、またセラミック製の蓄熱材は耐ヒートショック性に優れているわけでもないため、前記蓄熱材がヒートショックによって劣化・損傷するのを防止すべく、昇温速度を抑えて緩慢に予熱する必要がある。その結果、予熱に長時間を要し、余分に燃料を消費することとなって、RTO本来の高い熱交換能力を十分に生かし切れない可能性がある。また、RTOは、複数の蓄熱室において、放熱ガスと受熱ガスとの入れ替え操作を実行するための複雑な切り替え機構が必須となり、コスト面やメンテナンス面等で幾分か不利なものとなっている。
【0008】
本発明は上記の点に鑑み、蓄熱材に、ヒートショックによる劣化・損傷が生じても支障の無い素材を採用し、かつシンプルな装置構成としながらも、熱交換効率に優れる脱臭装置及び脱臭方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明に係る請求項1記載の脱臭装置では、アスファルトプラントのリサイクルドライヤからの排ガス中の臭気成分を燃焼分解する脱臭装置であって、上端に投入口を、下端に排出口をそれぞれ有した中空状の骨材容器を上下に五段連設し、上下に隣接する各骨材容器の投入口と排出口とをそれぞれ接続して連通させ、上段側から数えて第一の骨材容器の投入口の上位には骨材供給手段を、第五の骨材容器の排出口の下位には骨材切り出し手段をそれぞれ備えると共に、第四の骨材容器の上端側部には前記リサイクルドライヤに繋がる第一の排気ダクトを、前記第一の骨材容器の上端側部には排風機を介して煙突に繋がる第二の排気ダクトを、第二の骨材容器の上端側部には脱臭用バーナを有した燃焼室を、第三の骨材容器の上端側部には前記リサイクルドライヤからの排ガスを前記燃焼室に供給する排ガス供給ダクトを、前記第五の骨材容器の上端側部には下端の排出口から吸引される外気を前記脱臭用バーナに供給する燃焼用空気供給ダクトをそれぞれ連結したことを特徴としている。
【0010】
また、請求項2記載の脱臭装置では、前記骨材切り出し手段から切り出される骨材を前記骨材供給手段へと循環供給可能とする循環供給手段を備えたことを特徴としている。
【0011】
また、請求項3記載の脱臭装置では、前記各骨材容器内に供給する骨材の粒度を変更可能としたことを特徴としている。
【0012】
また、請求項4記載の脱臭装置では、前記各骨材容器内を下方へ流動する骨材の流動速度を変更可能としたことを特徴としている。
【0013】
また、請求項5記載の脱臭方法では、前記各骨材容器内に骨材を充填後、前記骨材供給手段からの骨材供給と骨材切り出し手段からの骨材切り出しとを同時に行って各骨材容器内に充填した骨材を下方へ連続的に流動させつつ、前記排風機を稼働させて各骨材容器内を負圧に維持しながら前記脱臭用バーナを着火燃焼させ、その状態で前記リサイクルドライヤを運転してその排ガスを前記第四の骨材容器上端部を介して第三の骨材容器内に導入・通過させ、その際に前記第三の骨材容器内を流動中の高蓄熱状態の骨材と熱交換させる第一の熱交換を行って前記排ガスを予熱し、予熱した排ガスを前記燃焼室に供給して臭気成分を燃焼分解し、その際に生じた燃焼ガスを前記第二の骨材容器上端部を介して第一の骨材容器内に導入・通過させ、その際に前記第一の骨材容器内を流動中の蓄熱前の骨材と熱交換させる第二の熱交換を行って前記燃焼ガスから熱回収し、熱回収された燃焼ガスを煙突より放出する一方、前記第二の熱交換に伴って高蓄熱状態となった骨材は下位の各骨材容器へと流動させると共に、前記第五の骨材容器の下端の排出口より負圧の骨材容器内に外気を吸引・通過させ、その際に前記第五の骨材容器内を流動中でかつ前記第一の熱交換を経て前記高蓄熱状態よりも低温の低蓄熱状態の骨材と更に熱交換させる第三の熱交換を行って前記外気を予熱し、予熱した外気を前記脱臭用バーナへ供給して燃焼用空気として使用することを特徴としている。
【0014】
また、請求項6記載の脱臭方法では、前記骨材に代えて、コンクリートガラを前記各骨材容器内に充填・流動させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、蓄熱材として、アスファルト混合物の素材として通常使用されている骨材をそのまま利用するようにしたので、例え熱交換時にヒートショックによる劣化・損傷が生じても支障は無い上、調達・交換も容易であり、熱交換効率を優先した運転が可能となる。また、装置構成も比較的シンプルで、コスト面やメンテナンス面で有利なものとなる。
【0016】
また、一度蓄熱材として利用することで絶乾状態とした骨材を循環供給して再度蓄熱材として利用可能としたので、骨材の含有水分を蒸発させるために費やされる無駄な熱エネルギーを削減でき、一層効率の良い熱交換が可能となる。
【0017】
また、蓄熱材である骨材の粒度を変更可能としたので、蓄熱材の熱交換面積や蓄熱材間の通過ガスの圧力損失を自在に増減調整でき、例えリサイクルドライヤからの排ガス量に変動が生じてもそれに応じた効率の良い熱交換が可能となる。
【0018】
また、蓄熱材である骨材の流動速度を変更可能としたので、蓄熱材の熱容量を自在に増減調整でき、例えリサイクルドライヤからの排ガス量に変動が生じてもそれに応じた効率の良い熱交換が可能となる。
【0019】
更に、前記骨材に代えて、コンクリートガラを蓄熱材として利用するようにしたので、骨材の場合と同様に、熱交換時にヒートショックによる劣化・損傷が生じても支障は無く、熱交換効率を優先した運転が可能となると共に、その際の急激な加熱・冷却に伴ってコンクリートガラ表面のモルタル成分を効果的に剥離除去できる結果、良質な再生骨材を回収することも可能となって好適である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る脱臭装置及び脱臭方法の一実施例を示す概略説明図である。
図2図1の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の脱臭装置及び脱臭方法にあっては、アスファルト混合物製造工場のアスファルトプラントに設置されるリサイクルドライヤの排気ダクト下流側に本脱臭装置を設置する。前記脱臭装置は、上端に投入口を、下端に排出口をそれぞれ有した中空状の骨材容器を上下に五段連設し、上下に隣接する各骨材容器の投入口と排出口とをそれぞれ接続し、骨材や排ガス等が通過可能なように連通させる。
【0022】
上下に五段連設した前記各骨材容器のうち、上段側から数えて第一(最上段)の骨材容器の投入口の上位には、例えば、骨材投入ホッパと、該骨材投入ホッパに搬送端を臨ませた供給コンベヤ等からなる骨材供給手段を備える一方、第五(最下段)の骨材容器の排出口の下位には、例えば、切り出しフィーダ等の骨材切り出し手段を備える。前記供給コンベヤ及び切り出しフィーダの駆動モータにはそれぞれインバータを備え、骨材の供給速度及び切り出し速度を増減調整可能とする。
【0023】
また、第四の骨材容器の上端側部には、前記リサイクルドライヤに繋がる第一の排気ダクトを、前記第一の骨材容器の上端側部には排風機を介して煙突に繋がる第二の排気ダクトをそれぞれ連結する。また、第二の骨材容器の上端側部には脱臭用バーナを有した燃焼室を、第三の骨材容器の上端側部には前記リサイクルドライヤからの排ガス(被処理ガス)を前記燃焼室に供給する排ガス供給ダクトを、前記第五の骨材容器の上端側部には骨材容器下端の排出口から吸引される外気を前記脱臭用バーナに供給する燃焼用空気供給ダクトをそれぞれ連結する。
【0024】
また、好ましくは、前記骨材切り出し手段から切り出される骨材を前記骨材供給手段へと循環供給可能とする、例えば、バケットエレベータ等の循環供給手段を備えるとよい。これにより、一度蓄熱材として利用することで絶乾状態とした骨材を循環供給して再度(繰り返し)蓄熱材として利用できる結果、骨材の含有水分を蒸発させるために費やされる無駄な熱エネルギーを削減でき、一層効率の良い熱交換が可能なものとなる。
【0025】
更に、好ましくは、前記各骨材容器内に蓄熱材として供給する骨材の粒度を変更可能とするとよい。例えば、アスファルト混合物の素材(新規骨材)として通常使用される、5~7号砕石、及び砂のうちから、連続的に(脱臭装置の運転途中でも、また何度でも)変更可能とするとよい。これにより、蓄熱材の熱交換面積を5号砕石~砂の粒度範囲内で自在に増減調整できると共に、蓄熱材間の隙間間隔に応じて変動する通過ガスの圧力損失も自在に増減調整でき、例えリサイクルドライヤからの排ガス量に変動が生じてもそれに応じた効率の良い熱交換が可能なものとなる。
【0026】
また更に、好ましくは、前記各骨材容器内を下方へ流動する骨材の流動速度を変更可能とするとよい。例えば、前記骨材供給手段(例えば供給コンベヤ)からの骨材供給速度と、前記骨材切り出し手段(例えば切り出しフィーダ)からの骨材切り出し速度とを同調させながら変更することでもって、各骨材容器内の骨材の流動速度を変更可能とするとよい。これにより、蓄熱前後の蓄熱材を任意の速度で入れ替えられる結果、蓄熱材の熱容量を自在に増減調整でき、前記同様に、例えリサイクルドライヤからの排ガス量に変動が生じてもそれに応じた効率の良い熱交換が可能なものとなる。
【0027】
そして、上記構成の脱臭装置を使用して、アスファルトプラントのリサイクルドライヤからの排ガス中の臭気成分を燃焼分解するときには、先ず、前記各骨材容器内に骨材を供給・充填後、前記骨材供給手段からの骨材供給と骨材切り出し手段からの骨材切り出しとを同時に行い、各骨材容器内に骨材を充填した状態を維持したままこの骨材を下方へ連続的に流動させつつ、前記排風機を稼働させて各骨材容器内を負圧に維持しながら前記脱臭用バーナを着火燃焼させる。
【0028】
次いで、その状態で前記リサイクルドライヤを運転し、その排ガスを前記第四の骨材容器上端部を介してその上位の第三の骨材容器内に導入・通過させ、その際に前記第三の骨材容器内を流動中の高蓄熱状態の骨材と直接接触させることでもって熱交換させる第一の熱交換を行って前記排ガスを予熱する。
【0029】
次いで、予熱した前記排ガスを、第三の骨材容器上端部、及び排ガス供給ダクトを介して前記燃焼室内に供給して排ガス中の臭気成分を燃焼分解し、その際に生じた高温の燃焼ガスを前記第二の骨材容器上端部を介してその上位の第一の骨材容器内に導入・通過させ、その際に前記第一の骨材容器内を流動中の蓄熱前(骨材供給手段にて供給直後)の骨材と直接接触させることでもって熱交換させる第二の熱交換を行って前記燃焼ガスから熱回収する。
【0030】
そして、熱回収された前記燃焼ガスを、第一の骨材容器上端部、及び第二の排気ダクトを介して末端の煙突より大気中へ放出する一方、前記第二の熱交換に伴って高蓄熱状態となった骨材は下位の各骨材容器へと流動させ、前記した第一の熱交換等に利用する。また、前記第五の骨材容器下端の排出口より負圧の骨材容器内に外気を吸引・通過させ、その際に前記第五の骨材容器内を流動中でかつ前記第一の熱交換を経て前記高蓄熱状態よりも低温の低蓄熱状態の骨材と直接接触させることでもって更に熱交換させる第三の熱交換を行って前記外気を予熱し、予熱した前記外気を、第五の骨材容器上端部、及び燃焼用空気供給ダクトを介して前記脱臭用バーナへ供給して燃焼用空気として使用する。
【0031】
このように、上記脱臭装置及び脱臭方法によれば、蓄熱材として、アスファルトプラントにてアスファルト混合物の素材として通常使用されている骨材、例えば5~7号砕石、及び砂等をそのまま利用するようにしたので、例え熱交換時にヒートショックによる劣化・損傷が生じても何ら支障は無い上、調達・交換も容易に行える結果、熱交換効率を優先した運転、例えば、短い間隔での急激な加熱・冷却を伴う運転を繰り返し行うことが可能となり、燃費の向上と共にCOの削減効果も期待でき、特に間欠運転を余儀なくされるアスファルトプラントの脱臭装置及び脱臭方法として好適なものとなる。
【0032】
また、脱臭用バーナの燃焼用空気として供給される外気も、蓄熱した骨材でもって予熱することができ、より一層の燃費向上と、COの削減効果が期待できるものとなる。更に、蓄熱材として使用した骨材は絶乾状態で回収することができるため、そのままアスファルトプラントにてアスファルト混合物の素材として使用すれば、プラント側においても省エネ及びCOの削減効果が期待できるものとなる。また更に、上記脱臭装置の装置構成も、複数の骨材容器を上下に連設した比較的シンプルなもので、コスト面やメンテナンス面で有利なものとなり、比較的採用のし易いものとなる。
【0033】
なお、前記骨材に代えて、例えば、所定粒度に破砕処理した産業廃棄物のコンクリートガラを蓄熱材として利用するようにすれば、骨材の場合と同様に、熱交換時にヒートショックによる劣化・損傷が生じても何ら支障は無く、調達・交換も容易である結果、熱交換効率を優先した運転が可能となると共に、その際の急激な加熱・冷却、並びに流動するコンクリートガラ同士の擦れ合いに伴って表面のモルタル成分を効果的に剥離除去できる結果、良質な(付着モルタル量の少ない)再生骨材として回収することが可能となるなど、特に好適に適用することができる。
【実施例0034】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0035】
図中の1は本発明に係る脱臭装置であって、アスファルト混合物製造工場のアスファルトプラント2に設置されるリサイクルドライヤ3の第一の排気ダクト4aの下流側に設置している。前記リサイクルドライヤ3は、略円筒状のドラム本体5を回転自在に傾斜支持し、その一端部(上流端部)の隔壁部6にバーナ7と廃材投入シュート8を、他端部(下流端部)に加熱処理した廃材(再生材)を一時的に貯留するサージビン9を備えてなり、該サージビン9と前記脱臭装置1とを、途中に排風機10を具備した第一の排気ダクト4aにて連結している。
【0036】
前記脱臭装置1は、上端に骨材投入用の投入口11を、下端に骨材排出用の排出口12をそれぞれ有した中空状の骨材容器13a~13eを上下に五段連設し、上下に隣接する各骨材容器13a~13eの投入口11と排出口12とをそれぞれ接続し、骨材や排ガス等が通過可能なように連通させている。
【0037】
前記骨材容器13a~13eとしては、例えば、略円筒形状の本体部14と、該本体部14の上部を覆う略円板形状の天板部15と、前記本体部14の下端に連結した略漏斗形状の排出部16とから構成され、前記天板部15の略中心部には前記投入口11を、前記排出部16の下端部には前記排出口12をそれぞれ備えたものが好適に採用できる。前記構成とすることで、後述するように、各骨材容器13a~13e内に骨材Aを供給・充填させた際に、各骨材容器13a~13eの本体部14の中心部上端付近まで骨材Aが安息角を保持しながら安定して積み上げられる一方、積み上げられた前記骨材Aの外周部(骨材容器本体部14の上端隅部)に排ガス、燃焼ガス等の流路となる隙間空間17a~17eを形成させることが可能となる。このとき、通常の熱交換器では必要となる、蓄熱材を保持するための耐熱性、耐摩耗性、かつ高強度のグリッドやルーバ等が不要となり(本実施例では蓄熱材である骨材Aは安息角を保持しながら骨材容器13a~13e内に安定して積み上げられる)、装置コストの低廉化にも寄与するものとなる。
【0038】
上下に五段連設した前記各骨材容器13a~13eのうち、上段側から数えて第一(最上段)の骨材容器13aの投入口11の上位には、骨材投入ホッパ18と、該骨材投入ホッパ18に搬送端を臨ませた供給コンベヤ19等からなる骨材供給手段20を備える一方、第五(最下段)の骨材容器13eの排出口12の下位には、切り出しフィーダ21等の骨材切り出し手段22を備えている。前記供給コンベヤ19及び切り出しフィーダ21の駆動モータ(図示せず)にはそれぞれインバータ(図示せず)を備え、骨材Aの供給速度及び切り出し速度を増減調整可能としている。
【0039】
また、第四の骨材容器13dの上端側部には、前記したように、前記リサイクルドライヤ3に繋がる第一の排気ダクト4aを、前記第一の骨材容器13aの上端側部には排風機23を介して煙突24に繋がる第二の排気ダクト4bをそれぞれ連結している。また、第二の骨材容器13bの上端側部には脱臭用バーナ25を有した燃焼室26を、第三の骨材容器13cの上端側部には前記リサイクルドライヤ3からの排ガス(被処理ガス)を前記燃焼室26に供給する排ガス供給ダクト27を、前記第五の骨材容器13eの上端側部には骨材容器13e下端の排出口12から吸引される外気を前記脱臭用バーナ25に供給する燃焼用空気供給ダクト28をそれぞれ連結している。
【0040】
図中の29は、前記脱臭装置1にて蓄熱材として利用された、前記骨材切り出し手段22の切り出しフィーダ21より切り出される骨材Aの一部、または全部を、前記骨材供給手段20の供給コンベヤ19へと循環供給可能とする、例えばバケットエレベータ等の循環供給手段である。前記脱臭装置1にて蓄熱材として一度利用し(熱履歴を経て)、絶乾状態とした骨材Aを循環供給して再度(繰り返し)蓄熱材として利用可能とすることにより、骨材Aの含有水分を蒸発させるために費やされる無駄な熱エネルギーを削減し、熱交換効率の向上を図っている。
【0041】
図中の30は前記リサイクルドライヤ3のキルン本体5内の静圧を検出するキルン内静圧センサ、31は静圧制御器であって、該静圧制御器31では前記キルン内静圧センサ30の検出値に基づいて前記第二の排気ダクト4b途中に介在させた排風機23の排風量を調整制御し、前記キルン本体5内を大気圧より僅かに低い所定の負圧値、例えば-5mmAq~-20mmAq程度の範囲に維持するようにしている。これにより、バーナ7燃焼量の増減時にも、キルン本体5両端部の隙間等からの燃焼ガスの吹き出しを抑えると共に、加熱効率の悪化を招くキルン本体5内への外気の侵入の抑制も図っている。
【0042】
また、前記リサイクルドライヤ3と排風機23との間(経路上)に位置する、前記第一の骨材容器13a上端部と第四の骨材容器13d上端部とには、それぞれ容器内静圧センサ32a、32bを備え、それらの差圧値を検出可能としている。前記リサイクルドライヤ3からの排ガス量(バーナ7の燃焼量)の増減時には、各骨材容器13a~13c内の骨材A(蓄熱材)間の通過ガスの圧力損失も追随して変動するが、それを前記各容器内静圧センサ32a、32b間の差圧値でもって検出可能としている。また、前記第二の排気ダクト4bには、前記脱臭装置1より導出される燃焼ガスの温度を検出するガス温度センサ33を備えている。
【0043】
そして、上記構成の脱臭装置1を使用して、アスファルトプラント2のリサイクルドライヤ3からの排ガス中の臭気成分を燃焼分解するときには(なお、本実施例に記載の骨材温度値や排ガス温度値等はシミュレーション上での参考値であって、必ずしもこれらの温度値に制御されるということを意味するものではない。)、先ず、前記各骨材容器13a~13e内に骨材Aを供給・充填する。このとき、前記第一の骨材容器13a上位の骨材投入ホッパ18内にもある程度の骨材Aを貯留させる。これにより、前記骨材投入ホッパ18内の骨材Aがマテリアルシールとなり、後述するが、前記第二の排気ダクト4bの排風機23を稼働させた際に、リサイクルドライヤ3のキルン本体5内と共に、各骨材容器13a~13e内を負圧に維持することが可能となる。
【0044】
次いで、前記骨材供給手段20からの骨材供給と骨材切り出し手段22からの骨材切り出し、及び前記循環供給手段29を介した循環供給とを同時に行い、各骨材容器13a~13e内に骨材Aを充填した状態を維持したままこの骨材Aを下方へ連続的に流動させつつ、前記第二の排気ダクト4b途中の排風機23を稼働させて各骨材容器13a~13e内を負圧に維持しながら前記脱臭用バーナ25を着火燃焼させる。
【0045】
そして、その状態で前記リサイクルドライヤ3を運転して廃材を加熱処理すると共に、その間、キルン内静圧センサ30にて検出されるキルン本体5内の静圧値を前記静圧制御器31に連続的に取り込み、該静圧制御器31では、取り込んだキルン本体5内の静圧値に基づいて第二の排気ダクト4bの排風機23の排風量を調整制御し、前記したように、キルン本体5内を大気圧よりも若干低い所定負圧値に維持する。このとき、前記リサイクルドライヤ3と排風機23との間に位置する、前記脱臭装置1の各骨材容器13a~13d内も負圧値に維持されることになる。
【0046】
一方、前記リサイクルドライヤ3での廃材の加熱処理に伴って生じる排ガス(約180℃程度)は、前記第一の排気ダクト4a、及び前記第四の骨材容器13d上端部の隙間空間17d(骨材容器13dの本体部14の中心部上端付近まで安息角を保持しながら積み上げられた骨材Aの外周部に形成される隙間空間17d)を介してその上位の第三の骨材容器13c内に導入・通過させ、その際に前記第三の骨材容器13c内を下方へ流動中の高蓄熱状態(約700℃程度)の骨材Aと直接接触させることでもって熱交換させる、第一の熱交換(HE1)を行って前記排ガスを予熱する。
【0047】
次いで、予熱した前記排ガス(約600℃程度)を、第三の骨材容器13c上端部の隙間空間17c、及び排ガス供給ダクト27を介して前記燃焼室26内に供給し、前記脱臭用バーナ25からの熱風に晒して排ガス中の臭気成分を燃焼分解し、その際に生じた高温(約750℃程度)の燃焼ガスを前記第二の骨材容器13b上端部の隙間空間17bを介してその上位の第一の骨材容器13a内に導入・通過させ、その際に前記第一の骨材容器13a内を下方へ流動中の蓄熱前(骨材供給手段20より供給直後で常温)の骨材Aと直接接触させることでもって熱交換させる、第二の熱交換(HE2)を行って前記燃焼ガスから熱回収する。
【0048】
そして、熱回収された前記燃焼ガス(約80℃程度)を、第一の骨材容器13a上端部の隙間空間17a、及び第二の排気ダクト4bを介して末端の煙突24より大気中へ放出する一方、前記第二の熱交換(HE2)に伴って高蓄熱状態(約700℃程度)となった骨材Aは下位の各骨材容器へと流動させていき、前記した第一の熱交換(HE1)等に利用する。
【0049】
また、前記第五の骨材容器13e下端の排出口12より負圧の骨材容器13e内に外気(常温)を吸引・通過させ、その際に前記第五の骨材容器13e内を下方へ流動中でかつ前記第一の熱交換(HE1)を経て前記高蓄熱状態よりも低温の低蓄熱状態(約300℃程度)の骨材Aと直接接触させることでもって更に熱交換させる、第三の熱交換(HE3)を行って前記外気を予熱し、予熱した前記外気(約250℃程度)を、第五の骨材容器13e上端部の隙間空間17e、及び燃焼用空気供給ダクト28を介して前記脱臭用バーナ25へ供給して燃焼用空気として使用する。なお、前記骨材容器13e内は、前記排風機23による排風だけでなく、前記脱臭用バーナ25の燃焼に伴う燃焼用空気の吸引によって負圧に維持される結果、前記のように、骨材容器13e下端の排出口12より外気が吸引される。
【0050】
このとき、前記第一の熱交換(HE1)に伴って、リサイクルドライヤ3からの排ガス(被処理ガス)中に含まれる臭気成分(アスファルトミスト分)の一部は骨材Aの表面に一時的に付着する(骨材Aは汚染される)ものの、前記第三の熱交換(HE3)に伴って、前記臭気成分は骨材A表面から再び脱離し(骨材Aは清浄化され)、この臭気成分は予熱された前記外気中に随伴して脱臭用バーナ25へと供給されて燃焼分解される。
【0051】
また、前記第五の骨材容器13e下端の排出口12より、前記第三の熱交換(HE3)を経て清浄化された上で排出される骨材A(約50℃程度)は、下位の骨材切り出し手段22の切り出しフィーダ21上に落下し、該切り出しフィーダ21にて順次切り出していく。そして、切り出した骨材Aの一部、または全部は、前記循環供給手段29を介して前記骨材供給手段20の供給コンベヤ19へと循環供給し、再度前記各骨材容器13a~13e内に供給・流動させ、蓄熱材として再利用する。
【0052】
ここで、前記循環供給手段29を介して循環供給される骨材Aは、蓄熱材として一度利用した(約700℃程度もの熱履歴を経た)ことで絶乾状態にあり、再度(繰り返し)蓄熱材として利用することにより、骨材Aの含有水分を蒸発させるために費やされる無駄な熱エネルギーを削減でき、熱交換効率の向上が期待できるものとなっている。
【0053】
一方、前記循環供給手段29にて循環供給しない骨材Aは、そのままアスファルトプラント2のバージンドライヤ(図示せず)に直接供給して所定温度(約160℃程度)まで加熱乾燥処理し、アスファルト混合物の素材として有効に使用する。このとき、前記骨材Aは、前記同様に、脱臭装置1にて蓄熱材として利用したことで絶乾状態にあると共に、昇温された状態(約50℃程度)にもあるため、プラント側での省エネ及びCOの削減効果も期待できるものとなっている。
【0054】
このように、本発明の脱臭装置及び脱臭方法によれば、蓄熱材として、アスファルト混合物の素材として通常使用されている骨材をそのまま利用するようにしたので、熱交換時にヒートショックによる劣化・損傷が生じても何ら支障は無く、熱交換効率を最優先とした運転が可能となり、燃費の向上と共にCOの削減効果も期待できるものとなる。
【0055】
また、従来の脱臭装置では、リサイクルドライヤから排出される約180℃程度の排ガスを、脱臭処理後、比較的高温の約300~400℃程度で大気中へ放出していたものの、本発明の脱臭装置及び脱臭方法によれば、約80℃程度といった、リサイクルドライヤから排出したときの温度よりも相当に低い温度まで低下(熱回収)させることができ、経済性と環境性の両立を実現可能としている。
【0056】
更に、装置構成も、RTOのような、放熱ガスと受熱ガスとの入れ替え操作をするための複雑な切り替え機構等を要しないため、コスト面やメンテナンス面で有利なものとなり、比較的採用のし易いものとなる。
【0057】
なお、前記各骨材容器13a~13e内に蓄熱材として供給する骨材Aの粒度を変更可能にするとより好ましいものとなる。例えば、アスファルト混合物の素材(新規骨材)として通常使用される、5~7号砕石、及び砂のうちから、連続的に(脱臭装置1の運転途中でも、また何度でも)変更可能とするとよい。これにより、蓄熱材の熱交換面積を5号砕石~砂の粒度範囲内で自在に増減調整できると共に、蓄熱材間の隙間間隔に応じて変動する通過ガスの圧力損失も自在に増減調整でき、例えば、リサイクルドライヤ3での廃材処理量が変動したり、リサイクルドライヤ3の立ち上げ時や立ち下げ時等、リサイクルドライヤ3からの排ガス量(バーナ7の燃焼量)に変動が生じてもそれに応じた効率の良い熱交換が可能なものとなる。
【0058】
より具体的に説明すると、骨材Aの粒度が小さいほど蓄熱材としての実質的な熱交換面積は増加し、かつ各骨材A間の隙間間隔が狭まって通過ガスの圧力損失も増加する。一方、骨材Aの粒度が大きいほど熱交換面積は減少し、かつ各骨材A間の隙間間隔が広がって通過ガスの圧力損失も減少する。
【0059】
したがって、例えば、リサイクルドライヤ3からの排ガス量が減少して排ガス熱量が減少した場合には、骨材Aの粒度をより小さいもの(例えば、5号砕石を使用していた場合には、6、7号砕石、あるいは砂)に変更するようにすれば、熱交換面積を増加させることができて熱交換効率を高められる結果、脱臭装置1の蓄熱量が減少するのを抑制できる。このとき、通過ガスの圧力損失も増加するものの、排ガス量の減少によって相殺されるため、排風機23が過負荷を来すなどの悪影響は生じない。
【0060】
一方、リサイクルドライヤ3からの排ガス量が増加して通過ガスの圧力損失が増加した場合には、骨材Aの粒度をより大きいもの(例えば、7号砕石を使用していた場合には、5、6号砕石)に変更するようにすれば圧力損失を減少させることができる結果、排風機23の過負荷を防いで脱臭装置1の安定した運転が可能となる。このとき、熱交換面積も減少するものの、排ガス量(排ガス熱量)の増加によって相殺されるため、蓄熱量が減少するなどの悪影響は生じない。
【0061】
なお、リサイクルドライヤ3からの排ガス量の増減に伴う、通過ガスの圧力損失の増減を検出するにあたり、本実施例では、第一の骨材容器13aと第四の骨材容器13dに備えた各容器内静圧センサ32a、32bの静圧値の差(差圧値)でもって検出し、前記差圧値に基づいて骨材Aの粒度を変更するフィードバック制御を採用している。前記差圧値が、予め設定した所定範囲(設定差圧範囲:例えば100~200mmAq程度)から外れると供給する骨材Aの粒度を変更するとよく、例えば、前記設定差圧範囲を下回ると圧力損失が減少したと判断して骨材粒度を小さいものに、前記設定差圧範囲を上回ると圧力損失が増加したと判断して骨材粒度を大きいものに変更するとよい。
【0062】
また、前記差圧値を検出する、前記容器内静圧センサ32a、32bを設置する対象の骨材容器としては、例えば、第一の骨材容器13a~第四の骨材容器13dの何れかから任意に二つを選択するとよいが、第五の骨材容器13eについては、下端開口部12より外気を吸引し、かつ吸引した外気を燃焼用空気供給ダクト28を介して脱臭用バーナ25へ導出する構成としていることから、前記差圧値に影響を及ぼす可能性があるため、容器内静圧センサの設置対象からは除外することが好ましい。
【0063】
また、骨材Aの粒度変更時には、必ずしも全ての骨材粒度を変更する必要は無く、その一部だけを変更するようにしてもよく、その場合には、擬似的に中間の骨材粒度に調整でき(例えば、5号砕石と6号砕石とを半分ずつ使用すれば、擬似的に5.5号砕石のような骨材粒度に調整でき)、排ガス量に見合ったよりきめの細かい粒度調整が可能となる。
【0064】
なお、蓄熱材として利用した骨材Aをアスファルトプラント2にてアスファルト混合物の素材として使用する際には、バージンドライヤにて加熱乾燥処理後、プラント本体(図示せず)に搭載した振動篩(図示せず)にて粒度毎に篩い分けした上で使用するため、例え、前記のように、5号砕石と6号砕石とを混在させたものであっても特に支障はない。
【0065】
また、前記各骨材容器13a~13e内を下方へ流動する骨材Aの流動速度を変更可能にするとより好ましいものとなる。例えば、前記骨材供給手段20(例えば供給コンベヤ19)からの骨材供給速度と、前記骨材切り出し手段22(例えば切り出しフィーダ21)からの骨材切り出し速度とを同調させながら変更することでもって、各骨材容器13a~13e内の骨材Aの流動速度を変更可能とするとよい。これにより、蓄熱前後の蓄熱材(骨材A)を任意の速度で入れ替えられる結果、蓄熱材の熱容量を自在に増減調整でき、例えば、前記同様に、リサイクルドライヤ3での廃材処理量が変動したり、リサイクルドライヤ3の立ち上げ時や立ち下げ時等、リサイクルドライヤ3からの排ガス量(バーナ7の燃焼量)に変動が生じてもそれに応じた効率の良い熱交換が可能なものとなる。
【0066】
より具体的に説明すると、骨材Aの流動速度が速いほど蓄熱材としての実質的な熱容量(比熱×質量)が増加し、逆に流動速度が遅いほど熱容量が減少するため、例えば、リサイクルドライヤ3からの排ガス量が減少した場合には、骨材Aの流動速度を低下させるように変更する一方、リサイクルドライヤ3からの排ガス量が増加した場合には、骨材Aの流動速度を高めるように変更すれば、放熱側である被処理ガスの熱容量と受熱側である蓄熱材の熱容量とをバランス良く調整でき、より効率の良い熱交換が期待できるものとなる。なお、被処理ガスの熱容量と受熱側である蓄熱材の熱容量との比が約1:1のときに最大の熱交換効率が得られることになる。
【0067】
特に、リサイクルドライヤ3からの排ガス量(排ガス熱量)が一定量以上になると、脱臭装置1内の蓄熱材である骨材Aの温度が高温状態で留まり、場合によってはサチュレーション(排ガスとの熱交換が進まない飽和状態)を来たす可能性があるが、その場合でも、前記のように、骨材Aの流動速度を高めて低温の骨材Aに素早く入れ替えるようにすれば、実質的に蓄熱材の熱容量を高められて高効率の熱交換を維持することが可能となる。
【0068】
なお、リサイクルドライヤ3からの排ガス量の増減に伴う、蓄熱材の蓄熱量(蓄熱温度)の増減を検出するにあたり、本実施例では、第二の排気ダクト4bに備えたガス温度センサ33での燃焼ガスの温度値でもって検出し、該ガス温度値に基づいて骨材Aの流動速度を変更するフィードバック制御を採用している。前記ガス温度値が、予め設定した所定範囲(設定ガス温度範囲:例えば70~90℃程度)から外れると供給する骨材Aの流動速度を変更するとよく、例えば、前記設定ガス温度範囲を下回ると、排ガス量が減少するなどして蓄熱材の蓄熱量(蓄熱温度)が減少(低下)したと判断して骨材Aの流動速度を遅くするように、逆に前記設定ガス温度範囲を上回ると、排ガス量が増加するなどして蓄熱材の蓄熱量(蓄熱温度)が増加(上昇)したと判断して骨材Aの流動速度を速くするように変更するとよい。なお、前記ガス温度センサ33に代えて、例えば、骨材容器13b等に骨材温度センサを設置し、蓄熱材の温度を直接検出するようにしてもよい。
【0069】
更に、供給する骨材Aの粒度と流動速度とを同時に(複合的に)調整するようにすれば、より好適な調整が可能となる。例えば、リサイクルドライヤ3からの排ガス量が増加した際には、骨材Aの粒度を大きくし、かつ流動速度を高めるようにすると、圧力損失の増加を抑えつつも、排ガス量に見合った熱容量に調整することができる一方、排ガス量が減少した際には、骨材Aの粒度を小さくし、かつ流動速度を低下するようにすると、熱交換面積を増やせて熱交換効率を高めつつも、排ガス量に見合った熱容量に調整することができるなど、よりきめの細かい調整が可能となる。
【0070】
また、本実施例においては、第三の熱交換(HE3)を経て予熱した外気を、前記脱臭用バーナ25に供給する構成としたが、例えば、プラント本体側のリサイクルドライヤ3のバーナ7や、バージンドライヤ(図示せず)のバーナ(図示せず)に供給し、これら各バーナにて燃焼用空気として使用するようにしてもよく、その場合にはより一層の燃費の向上と共にCOの削減効果が期待できるものとなる。
【0071】
また、前記脱臭装置1に使用する蓄熱材として、前記アスファルトプラント2にて使用する骨材Aに代えて、例えば、所定粒度に破砕処理したコンクリートガラを好適に利用することができる。産業廃棄物であるコンクリートガラは、骨材Aの場合と同様に、熱交換時にヒートショックによる劣化・損傷が生じても何ら支障は無く、調達・交換も容易である結果、熱交換効率を優先した運転が可能であると共に、その際の急激な加熱・冷却、並びに各骨材容器13a~13e流下時のコンクリートガラ同士の擦れ合い等に伴って表面のモルタル成分を効果的に剥離除去できる結果、良質な(付着モルタル量の少ない)再生骨材として回収することが可能となるなど、特に好適に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、アスファルトプラントにて発生する臭気成分を含んだガスの脱臭設備として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1…脱臭装置 2…アスファルトプラント
3…リサイクルドライヤ 4a…第一の排気ダクト
4b…第二の排気ダクト 11…投入口(骨材容器)
12…排出口(骨材容器) 13a~13e…骨材容器
20…骨材供給手段 22…骨材切り出し手段
23…排風機 24…煙突
25…脱臭用バーナ 26…燃焼室
27…排ガス供給ダクト 28…燃焼用空気供給ダクト
29…循環供給手段 31…静圧制御器
32a、32b…容器内静圧センサ 33…ガス温度センサ
A…骨材(蓄熱材)
図1
図2