(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045312
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】反射防止層付円偏光板および該反射防止層付円偏光板を用いた画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240326BHJP
G02B 1/111 20150101ALI20240326BHJP
H10K 50/86 20230101ALI20240326BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20240326BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B1/111
H10K50/86
H10K59/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024009387
(22)【出願日】2024-01-25
(62)【分割の表示】P 2020080741の分割
【原出願日】2020-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】尾込 大介
(72)【発明者】
【氏名】菅野 亮
(72)【発明者】
【氏名】中原 歩夢
(72)【発明者】
【氏名】池嶋 裕美
(72)【発明者】
【氏名】橋本 尚樹
(57)【要約】
【課題】透過率が高くかつ高温高湿環境下における耐久性に優れ、その結果、明るくかつ高温高湿環境下において表示ムラが抑制された画像表示装置を実現し得る反射防止層付円偏光板を提供すること。
【解決手段】本発明の反射防止層付円偏光板は、偏光子を含む偏光板と、偏光板の一方の側に配置された反射防止層と、偏光板のもう一方の側に配置された位相差層と、を有する。反射防止層付円偏光板の透過率は45.5%以上であり、60℃および90%RHで500時間の加熱加湿試験後の反射率は2.5%以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子を含む偏光板と、該偏光板の一方の側に配置された反射防止層と、該偏光板のもう一方の側に配置された位相差層と、を有し、
透過率が45.5%以上であり、
60℃および90%RHで500時間の加熱加湿試験後の反射率が2.5%以下である、
反射防止層付円偏光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止層付円偏光板および該反射防止層付円偏光板を用いた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置およびエレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置、無機EL表示装置)に代表される画像表示装置が急速に普及している。画像表示装置においては、偏光板と位相差板とを含む円偏光板が用いられる場合がある。円偏光板については、画像表示装置(特に、有機EL表示装置)の低消費電力および明るさ(輝度)の観点から、透過率の高い円偏光板が望まれている。しかし、透過率の高い円偏光板は、高温高湿環境下において画像表示装置に表示ムラ(例えば、スジ)が発生する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5876441号
【特許文献2】特開2014-026266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、透過率が高くかつ高温高湿環境下における耐久性に優れ、その結果、明るくかつ高温高湿環境下において表示ムラが抑制された画像表示装置を実現し得る反射防止層付円偏光板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態による反射防止層付円偏光板は、偏光子を含む偏光板と、該偏光板の一方の側に配置された反射防止層と、該偏光板のもう一方の側に配置された位相差層と、を有する。当該反射防止層付円偏光板の透過率は45.5%以上であり、60℃および90%RHで500時間の加熱加湿試験後の反射率は2.5%以下である。
1つの実施形態においては、上記偏光子と上記反射防止層側の保護層とは第1の接着剤層を介して貼り合わせられ、該偏光子と上記位相差層とは第2の接着剤層を介して貼り合わせられており、該第1の接着剤層および該第2の接着剤層の接着剤の少なくとも一方は、活性エネルギー線硬化型接着剤組成物で構成されている。該活性エネルギー線硬化型接着剤組成物は、組成物全量を100重量%としたとき、SP値が29.0(MJ/m3)1/2以上32.0(MJ/m3)1/2以下である活性エネルギー線硬化型化合物(A)を0.0重量%~4.0重量%、SP値が18.0(MJ/m3)1/2以上21.0(MJ/m3)1/2未満である活性エネルギー線硬化型化合物(B)を5.0重量%~98.0重量%、および、SP値が21.0(MJ/m3)1/2以上26.0(MJ/m3)1/2以下である活性エネルギー線硬化型化合物(C)を5.0重量%~98.0重量%含有する。
1つの実施形態においては、上記反射防止層の反射率は1.5%以下である。
1つの実施形態においては、上記位相差層のRe(550)は100nm~200nmであり、該位相差層の遅相軸と上記偏光子の吸収軸とのなす角度は40°~50°または130°~140°である。
1つの実施形態においては、上記位相差層は、樹脂フィルムの延伸フィルムで構成され、Re(450)/Re(550)が0.80~1.03である。ここで、Re(450)およびRe(550)は、それぞれ、23℃における波長450nmおよび550nmの光で測定した面内位相差である。
本発明の別の局面によれば、画像表示装置が提供される。この画像表示装置は、上記の反射防止層付円偏光板を視認側に備える。反射防止層付円偏光板は、上記反射防止層が視認側となるように配置されている。画像表示装置の反射率は40%以下である。
1つの実施形態においては、上記画像表示装置は、有機エレクトロルミネセンス表示装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、円偏光板において、画像表示装置に適用された場合に視認側となる側に反射防止層を設け、かつ、偏光子と反射防止層の保護層および/または位相差層とを所定の接着剤で貼り合わせることにより、透過率が高くかつ高温高湿環境下における耐久性に優れ、その結果、明るくかつ高温高湿環境下において表示ムラが抑制された画像表示装置を実現し得る反射防止層付円偏光板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の1つの実施形態による反射防止層付円偏光板の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の代表的な実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0009】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定したフィルムの面内位相差である。例えば、「Re(450)」は、23℃における波長450nmの光で測定したフィルムの面内位相差である。Re(λ)は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、式:Re=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定したフィルムの厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(450)」は、23℃における波長450nmの光で測定したフィルムの厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、式:Rth=(nx-nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
(5)角度
本明細書において角度に言及するときは、特に明記しない限り、当該角度は時計回りおよび反時計回りの両方の方向の角度を包含する。
【0010】
A.反射防止層付円偏光板の全体構成
図1は、本発明の1つの実施形態による反射防止層付円偏光板の概略断面図である。図示例の反射防止層付円偏光板100は、偏光板10と、偏光板10の一方の側(例えば、画像表示装置に適用された場合に画像表示セルと反対側、すなわち視認側)に配置された反射防止層30と、偏光板10のもう一方の側(例えば、画像表示装置に適用された場合に画像表示セル側)に配置された位相差層40と、を有する。偏光板10は、偏光子11と、偏光子11の一方の側(反射防止層側)に配置された第1の保護層12と、を含む。目的に応じて、偏光子11の位相差層40側に第2の保護層(図示せず)が設けられてもよい。また、偏光子の両側の保護層が省略されてもよい。例えば、反射防止層は後述するように代表的には基材上に形成されるところ、基材/反射防止層の積層体が保護層として機能する場合がある。この場合、第1の保護層12は省略され得る。基材/反射防止層の積層体はハードコート層をさらに含んでいてもよい。したがって、反射層付偏光板は、両方の保護層が省略されて、偏光子11と、偏光子11の一方の側に配置された反射防止層30と、偏光子11のもう一方の側に配置された位相差層40と、を有する構成であってもよい。実用的には、位相差層40の偏光板10と反対側には最外層として任意の適切な粘着剤層50が設けられ、反射防止層付円偏光板は画像表示セルに貼り付け可能とされている。
【0011】
本発明の実施形態においては、反射防止層付円偏光板の透過率は45.5%以上であり、好ましくは46.0%以上である。透過率の上限は、例えば46.5%であり得る。透過率がこのような範囲であれば、輝度が十分に高い画像表示装置を実現することができる。反射防止層30を設けることにより、円偏光板単独では実現困難な高い透過率を実現することができる。本発明の実施形態においては、さらに、反射防止層付円偏光板は、60℃および90%RHで500時間の加熱加湿試験後の反射率が2.5%以下であり、好ましくは2.2%以下であり、より好ましくは2.0%以下である。反射率の下限は、例えば1.0%であり得る。加熱加湿試験後の反射率を所定値以下に制御することにより、反射防止層付円偏光板を画像表示装置に適用した場合に、高温高湿環境下における表示ムラ(特に、スジムラ)を抑制することができる。
【0012】
位相差層40は、代表的には樹脂フィルムの延伸フィルムで構成されている。位相差層40のRe(550)は、代表的には100nm~200nmである。位相差層のRe(450)/Re(550)は、好ましくは0.85~1.03である。位相差層の遅相軸と偏光子11の吸収軸とのなす角度は、好ましくは40°~50°であり、より好ましくは42°~48°であり、さらに好ましくは44°~46°であり、特に好ましくは約45°であり;あるいは、好ましくは130°~140°であり、より好ましくは132°~138°であり、さらに好ましくは134°~136°であり、特に好ましくは約135°である。
【0013】
偏光子11と反射防止層30側の保護層12(反射防止層を形成する基材であってもよい)とは、代表的には、第1の接着剤層21を介して貼り合わせられている。また、偏光子11と位相差層40とは、代表的には、第2の接着剤層22を介して貼り合わせられている。第1の接着剤層21および第2の接着剤層22の接着剤の少なくとも一方は、代表的には、活性エネルギー線硬化型接着剤組成物で構成されている。活性エネルギー線硬化型接着剤組成物は、組成物全量を100重量%としたとき、SP値が29.0(MJ/m3)1/2以上32.0(MJ/m3)1/2以下である活性エネルギー線硬化型化合物(A)を0.0重量%~4.0重量%、SP値が18.0(MJ/m3)1/2以上21.0(MJ/m3)1/2未満である活性エネルギー線硬化型化合物(B)を5.0重量%~98.0重量%、および、SP値が21.0(MJ/m3)1/2以上26.0(MJ/m3)1/2以下である活性エネルギー線硬化型化合物(C)を5.0重量%~98.0重量%含有する。このような構成であれば、高温高湿環境下における耐久性に優れた(例えば、上記のような加熱加湿試験後の反射率を有する)反射防止層付円偏光板が得られ、その結果、高温高湿環境下において表示ムラが抑制された画像表示装置を実現することができる。好ましくは、少なくとも第1の接着剤層21が上記の活性エネルギー線硬化型接着剤組成物で構成され、より好ましくは、第1の接着剤層21および第2の接着剤層22の両方が上記の活性エネルギー線硬化型接着剤組成物で構成されている。上記のような接着剤を用いれば高温高湿下における偏光板の耐久性は向上する(表示ムラが抑制される)一方で、このような偏光板を画像表示装置に適用した場合に輝度(明るさ)が不十分であるという課題があったところ、本発明の実施形態によれば、明るくかつ高温高湿環境下において表示ムラが抑制された画像表示装置を実現し得る反射防止層付円偏光板を得ることができる。
【0014】
1つの実施形態においては、反射防止層付円偏光板は、位相差層40と粘着剤層50との間に別の位相差層(図示せず)をさらに有していてもよい。別の位相差層は、代表的には、屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す。このような別の位相差層を設けることにより、斜め方向の反射を良好に防止することができ、反射防止機能の広視野角化が可能となる。
【0015】
1つの実施形態においては、反射防止層付円偏光板は、導電層または導電層付等方性基材(図示せず)をさらに有していてもよい。導電層または導電層付等方性基材が設けられる場合、反射防止層付円偏光板は、画像表示セル(例えば、有機ELセル)と偏光板との間にタッチセンサが組み込まれた、いわゆるインナータッチパネル型入力表示装置に適用され得る。導電層または導電層付等方性基材は、代表的には、位相差層40と粘着剤層50との間に設けられる。別の位相差層が設けられる場合、別の位相差層ならびに導電層または導電層付等方性基材は、代表的には、位相差層40側からこの順に設けられる。
【0016】
反射防止層付円偏光板は、さらなる位相差層(図示せず)を有していてもよい。さらなる位相差層は、別の位相差層と組み合わせて設けられてもよく、単独で(すなわち、別の位相差層を設けることなく)設けられてもよい。さらなる位相差層の光学的特性(例えば、屈折率特性、面内位相差、Nz係数、光弾性係数)、厚み、配置位置等は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0017】
反射防止層付円偏光板は、枚葉状であってもよく長尺状であってもよい。本明細書において「長尺状」とは、幅に対して長さが十分に長い細長形状を意味し、例えば、幅に対して長さが10倍以上、好ましくは20倍以上の細長形状を含む。長尺状の反射防止層付円偏光板は、ロール状に巻回可能である。
【0018】
実用的には、粘着剤層50の表面には、反射防止層付円偏光板が使用に供されるまで、剥離フィルムが仮着されていることが好ましい。剥離フィルムを仮着することにより、粘着剤層を保護するとともに、反射防止層付円偏光板のロール形成が可能となる。
【0019】
以下、反射防止層付円偏光板の構成要素について説明する。
【0020】
B.偏光子
偏光子11としては、任意の適切な偏光子が採用され得る。例えば、偏光子を形成する樹脂フィルムは、単層の樹脂フィルムであってもよく、二層以上の積層体であってもよい。
【0021】
単層の樹脂フィルムから構成される偏光子の具体例としては、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理および延伸処理が施されたもの、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。好ましくは、光学特性に優れることから、PVA系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られた偏光子が用いられる。
【0022】
上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。例えば、染色の前にPVA系フィルムを水に浸漬して水洗することで、PVA系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、PVA系フィルムを膨潤させて染色ムラなどを防止することができる。
【0023】
積層体を用いて得られる偏光子の具体例としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光子とすること;により作製され得る。本実施形態においては、延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。得られた樹脂基材/偏光子の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光子の保護層としてもよく)、樹脂基材/偏光子の積層体から樹脂基材を剥離し、当該剥離面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報、特許第6470455号に記載されている。これらの特許文献の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0024】
偏光子は、好ましくは単層の樹脂フィルムから構成され得る。このような構成であれば、第1粘着剤層および第2の粘着剤層の最適化との相乗的な効果により、高温環境下における位相差ムラが抑制された反射防止層付円偏光板が得られ得る。
【0025】
偏光子の厚みは、好ましくは1μm~30μm程度であり、より好ましくは5μm~25μm程度である。特に、厚みが10μm以下の偏光子を得るためには、特開2012-73580号公報、特許第6470455号公報等に開示された、上記ポリビニルアルコール系フィルムとして、熱可塑性樹脂基材上に製膜されたポリビニルアルコール系フィルムを含む積層体を用いる薄型の偏光子の製造方法が適用できる。偏光子の厚みがこのような範囲であれば、加熱時のカールを良好に抑制することができ、および、良好な加熱時の外観耐久性が得られる。
【0026】
偏光子は、好ましくは、波長380nm~780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子の単体透過率は、例えば41.5%~46.0%であり、好ましくは43.0%~46.0%であり、より好ましくは44.5%~46.0%である。偏光子の単体透過率は、例えば44.0%以上であってもよく、また例えば44.2%以上であってもよく、また例えば44.6%以上であってもよい。偏光子の偏光度は、好ましくは97.0%以上であり、より好ましくは99.0%以上であり、さらに好ましくは99.9%以上である。
【0027】
C.保護層
第1の保護層12および第2の保護層13は、それぞれ、偏光子の保護層として使用できる任意の適切なフィルムで形成される。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001-343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN-メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。
【0028】
反射防止層付円偏光板は、後述するように代表的には画像表示装置の視認側に配置され、第1の保護層12は、代表的にはその視認側に配置される。したがって、第1の保護層12には、必要に応じて、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、アンチグレア処理等の表面処理が施されていてもよい。さらに/あるいは、第1の保護層12には、必要に応じて、偏光サングラスを介して視認する場合の視認性を改善する処理(代表的には、(楕)円偏光機能を付与すること、超高位相差を付与すること)が施されていてもよい。このような処理を施すことにより、偏光サングラス等の偏光レンズを介して表示画面を視認した場合でも、優れた視認性を実現することができる。したがって、反射防止層付円偏光板は、屋外で用いられ得る画像表示装置にも好適に適用され得る。
【0029】
第1の保護層の厚みは、代表的には300μm以下であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは5μm~80μm、さらに好ましくは10μm~60μmである。なお、表面処理が施されている場合、外側保護層の厚みは、表面処理層の厚みを含めた厚みである。
【0030】
第2の保護層13は、1つの実施形態においては、光学的に等方性であることが好ましい。本明細書において「光学的に等方性である」とは、面内位相差Re(550)が0nm~10nmであり、厚み方向の位相差Rth(550)が-10nm~+10nmであることをいう。
【0031】
D.位相差層
位相差層の面内位相差Re(550)は、上記のとおり代表的には100nm~200nmであり、好ましくは110nm~180nmであり、より好ましくは120nm~160nmであり、さらに好ましくは130nm~150nmである。すなわち、位相差層は、いわゆるλ/4板として機能し得る。
【0032】
位相差層は、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散の波長依存性を示してもよく、位相差値が測定光の波長にかかわらず実質的に一定であるフラットな波長依存性を示してもよい。位相差値が逆分散の波長依存性を示す場合、Re(450)/Re(550)は好ましくは0.80~0.97であり、より好ましくは0.85~0.95である。位相差値がフラットな波長依存性を示す場合、Re(450)/Re(550)は好ましくは0.97~1.03であり、より好ましくは0.98~1.02である。
【0033】
位相差層は、上記のように面内位相差を有するので、nx>nyの関係を有する。位相差層は、nx>nyの関係を有する限り、任意の適切な屈折率特性を示す。位相差層の屈折率特性は、代表的にはnx>ny≧nzの関係を示す。なお、ここで「ny=nz」はnyとnzが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合を包含する。したがって、本発明の効果を損なわない範囲で、ny<nzとなる場合があり得る。位相差層のNz係数は、好ましくは0.9~2.0であり、より好ましくは0.9~1.5であり、さらに好ましくは0.9~1.2である。このような関係を満たすことにより、反射防止層付円偏光板を画像表示装置に用いた場合に、非常に優れた反射色相を達成し得る。
【0034】
位相差層の厚みは、λ/4板として最も適切に機能し得るように設定され得る。言い換えれば、厚みは、所望の面内位相差が得られるように設定され得る。具体的には、厚みは、好ましくは70μm以下であり、好ましくは45μm~60μmである。位相差層の厚みがこのような範囲であれば、加熱時のカールを良好に抑制しつつ、貼り合わせ時のカールを良好に調整することができる。
【0035】
位相差層は、その光弾性係数の絶対値が好ましくは20×10-12(m2/N)以下であり、より好ましくは1.0×10-12(m2/N)~15×10-12(m2/N)であり、さらに好ましくは2.0×10-12(m2/N)~12×10-12(m2/N)である。光弾性係数の絶対値がこのような範囲であれば、反射防止層付円偏光板を画像表示装置に適用した場合に表示ムラを抑制することができる。
【0036】
位相差層は、上記の特性を満足し得る任意の適切な樹脂フィルムで構成され得る。そのような樹脂の代表例としては、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステルカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよく組み合わせて(例えば、ブレンド、共重合)用いてもよい。位相差層は、代表的には、ポリカーボネート系樹脂またはポリエステルカーボネート系樹脂(以下、単にポリカーボネート系樹脂と称する場合がある)で構成され得る。
【0037】
上記ポリカーボネート系樹脂としては、任意の適切なポリカーボネート系樹脂を用いることができる。ポリカーボネート系樹脂は、1つの実施形態においては、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジオール、脂環式ジメタノール、ジ、トリまたはポリエチレングリコール、ならびに、アルキレングリコールまたはスピログリコールからなる群から選択される少なくとも1つのジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、を含む。好ましくは、ポリカーボネート系樹脂は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジメタノールに由来する構造単位ならびに/あるいはジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含み;さらに好ましくは、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、ジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含む。ポリカーボネート系樹脂は、必要に応じてその他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。このようなポリカーボネート系樹脂の詳細は、例えば、特開2014-10291号公報、特開2014-26266号公報、特開2015-212816号公報、特開2015-212817号公報、特開2015-212818号公報に記載されており、当該記載は本明細書に参考として援用される。
【0038】
ポリカーボネート系樹脂は、別の実施形態においては、下記式(I)で表される結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含む。
【化1】
【0039】
ジヒドロキシ化合物としては、例えば、下記式(II)で表される化合物が挙げられる。このようなジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【化2】
【0040】
上記ジヒドロキシ化合物と別のジヒドロキシ化合物とを組み合わせて用いてもよい。別のジヒドロキシ化合物としては、例えば、下記式(III)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物が挙げられる。
HOCH
2-R
1-CH
2OH ・・・(III)
式(III)中、R
1は、炭素数4~20のシクロアルキレン基を示す。脂環式ジヒドロキシ化合物は、例えば、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノールであり得る。これらは、式(III)においてR
1が下記式(IV)(式中、nは0または1を示す)で表される種々の異性体を包含する。
【化3】
【0041】
1つの実施形態においては、ポリカーボネート系樹脂は、下記式(V)で表される構造単位を含む。すなわち、ポリカーボネート系樹脂は、ジフェニルカーボネートとイソソルビドとトリシクロデカンジメタノールとの共重合体であり得る。
【化4】
【0042】
このようなポリカーボネート系樹脂の詳細は、例えば、特開2012-031370号公報に記載されており、当該公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0043】
ポリカーボネート系樹脂のガラス転移温度は、110℃以上250℃以下であることが好ましく、より好ましくは120℃以上230℃以下である。ガラス転移温度が過度に低いと耐熱性が悪くなる傾向にあり、フィルム成形後に寸法変化を起こす可能性がある。ガラス転移温度が過度に高いと、フィルム成形時の成形安定性が悪くなる場合があり、また、フィルムの透明性を損なう場合がある。なお、ガラス転移温度は、JIS K 7121(1987)に準じて求められる。
【0044】
ポリカーボネート系樹脂の分子量は、還元粘度で表すことができる。還元粘度は、溶媒として塩化メチレンを用い、ポリカーボネート濃度を0.6g/dLに精密に調製し、温度20.0℃±0.1℃でウベローデ粘度管を用いて測定される。還元粘度の下限は、通常0.30dL/gが好ましく、より好ましは0.35dL/g以上である。還元粘度の上限は、通常1.20dL/gが好ましく、より好ましくは1.00dL/g、更に好ましくは0.80dL/gである。還元粘度が前記下限値より小さいと成形品の機械的強度が小さくなるという問題が生じる場合がある。一方、還元粘度が前記上限値より大きいと、成形する際の流動性が低下し、生産性や成形性が低下するという問題が生じる場合がある。
【0045】
ポリカーボネート系樹脂フィルムとして市販のフィルムを用いてもよい。市販品の具体例としては、帝人社製の商品名「ピュアエースWR-S」、「ピュアエースWR-W」、「ピュアエースWR-M」、日東電工社製の商品名「NRF」が挙げられる。
【0046】
位相差層は、例えば、上記ポリカーボネート系樹脂から形成されたフィルムを延伸することにより得られる。ポリカーボネート系樹脂からフィルムを形成する方法としては、任意の適切な成形加工法が採用され得る。具体例としては、圧縮成形法、トランスファー成形法、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、粉末成形法、FRP成形法、キャスト塗工法(例えば、流延法)、カレンダー成形法、熱プレス法等が挙げられる。押出成形法またはキャスト塗工法が好ましい。得られるフィルムの平滑性を高め、良好な光学的均一性を得ることができるからである。成形条件は、使用される樹脂の組成や種類、位相差層に所望される特性等に応じて適宜設定され得る。なお、上記のとおり、ポリカーボネート系樹脂は、多くのフィルム製品が市販されているので、当該市販フィルムをそのまま延伸処理に供してもよい。
【0047】
樹脂フィルム(未延伸フィルム)の厚みは、位相差層の所望の厚み、所望の光学特性、後述の延伸条件などに応じて、任意の適切な値に設定され得る。好ましくは50μm~300μmである。
【0048】
上記延伸は、任意の適切な延伸方法、延伸条件(例えば、延伸温度、延伸倍率、延伸方向)が採用され得る。具体的には、自由端延伸、固定端延伸、自由端収縮、固定端収縮などの様々な延伸方法を、単独で用いることも、同時もしくは逐次で用いることもできる。延伸方向に関しても、長さ方向、幅方向、厚さ方向、斜め方向等、様々な方向や次元に行なうことができる。延伸の温度は、樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)に対し、Tg-30℃~Tg+60℃であることが好ましく、より好ましくはTg-10℃~Tg+50℃である。
【0049】
上記延伸方法、延伸条件を適宜選択することにより、上記所望の光学特性(例えば、屈折率特性、面内位相差、Nz係数)を有する位相差フィルムを得ることができる。
【0050】
1つの実施形態においては、位相差フィルムは、樹脂フィルムを一軸延伸もしくは固定端一軸延伸することにより作製される。固定端一軸延伸の具体例としては、樹脂フィルムを長手方向に走行させながら、幅方向(横方向)に延伸する方法が挙げられる。延伸倍率は、好ましくは1.1倍~3.5倍である。
【0051】
別の実施形態においては、位相差フィルムは、長尺状の樹脂フィルムを長手方向に対して上記の角度θの方向に連続的に斜め延伸することにより作製され得る。斜め延伸を採用することにより、フィルムの長手方向に対して角度θの配向角(角度θの方向に遅相軸)を有する長尺状の延伸フィルムが得られ、例えば、偏光膜との積層に際してロールトゥロールが可能となり、製造工程を簡略化することができる。なお、角度θは、位相差層付偏光板において偏光膜の吸収軸と位相差層の遅相軸とがなす角度であり得る。角度θは、上記のとおり、好ましくは40°~50°であり、より好ましくは42°~48°であり、さらに好ましくは約45°である。
【0052】
斜め延伸に用いる延伸機としては、例えば、横および/または縦方向に、左右異なる速度の送り力もしくは引張り力または引き取り力を付加し得るテンター式延伸機が挙げられる。テンター式延伸機には、横一軸延伸機、同時二軸延伸機等があるが、長尺状の樹脂フィルムを連続的に斜め延伸し得る限り、任意の適切な延伸機が用いられ得る。
【0053】
上記延伸機において左右の速度をそれぞれ適切に制御することにより、上記所望の面内位相差を有し、かつ、上記所望の方向に遅相軸を有する位相差層(実質的には、長尺状の位相差フィルム)が得られ得る。
【0054】
上記フィルムの延伸温度は、位相差層に所望される面内位相差値および厚み、使用される樹脂の種類、使用されるフィルムの厚み、延伸倍率等に応じて変化し得る。具体的には、延伸温度は、好ましくはTg-30℃~Tg+30℃、さらに好ましくはTg-15℃~Tg+20℃、最も好ましくはTg-10℃~Tg+15℃である。このような温度で延伸することにより、本発明において適切な特性を有する位相差層が得られ得る。なお、Tgは、フィルムの構成材料のガラス転移温度である。
【0055】
E.反射防止層
反射防止層30は、代表的には、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化層である。上記のとおり、反射防止層を設けることにより、円偏光板単独では実現困難な高い透過率を実現することができる。反射防止層の反射率は、好ましくは1.5%以下であり、より好ましくは1.3%以下であり、さらに好ましくは1.0%以下である。反射率は小さいほど好ましく、その下限は例えば0.2%であり得る。反射率がこのような範囲であれば、外光の映り込み等を防止することができる。
【0056】
電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性樹脂を含む。電離放射線硬化性樹脂組成物は、目的に応じて、反応性希釈剤、フッ素元素含有添加剤、中空粒子、および/または中実粒子をさらに含んでいてもよい。
【0057】
電離放射線硬化性樹脂としては、代表的には、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、光(可視光)硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂が挙げられる。例えば、電離放射線硬化性樹脂としては、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂が挙げられる。また例えば、電離放射線硬化性樹脂は、熱、光(紫外線等)または電子線等により硬化するアクリレート基および/またはメタクリレート基を有する硬化型化合物であり得る。具体例としては、多価アルコールのような多官能化合物のアクリレートおよび/またはメタクリレート等のオリゴマーまたはプレポリマーが挙げられる。電離放射線硬化性樹脂は、単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
電離放射線硬化性樹脂は、硬化前の重量平均分子量が、例えば、100以上、300以上、500以上、1000以上、または2000以上であってもよく、100000以下、70000以下、50000以下、30000以下、または10000以下であってもよい。硬化前の重量平均分子量が大きければ、硬度は低下する一方で、屈曲させた際に割れが起こり難くなる傾向がある。硬化前の重量平均分子量が小さければ、分子間架橋密度が向上し、硬度が高くなる傾向がある。
【0059】
反応性希釈剤は、代表的には、アクリレート基および/またはメタクリレート基を含む。反応性希釈剤としては、例えば、特開2008-88309号公報に記載の反応性希釈剤を用いることができる。反応性希釈剤の具体例としては、単官能アクリレート、単官能メタクリレート、多官能アクリレート、多官能メタクリレートが挙げられる。好ましくは、3官能以上のアクリレート、3官能以上のメタクリレートである。反応性希釈剤としては、例えば、ブタンジオールグリセリンエーテルジアクリレート、イソシアヌル酸のアクリレート、イソシアヌル酸のメタクリレート等も挙げられる。反応性希釈剤は、単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
フッ素元素含有添加剤としては、任意の適切な化合物が用いられ得る。フッ素元素含有添加剤は、例えば、分子中にフッ素を含む有機化合物または無機化合物であり得る。有機化合物としては、例えば、フッ素含有防汚コーティング剤、フッ素含有アクリル化合物、フッ素/ケイ素含有アクリル化合物等があげられる。有機化合物は、市販品を用いてもよい。具体例としては、信越化学工業株式会社製の商品名「KY-1203」、DIC株式会社製の商品名「メガファック」があげられる。無機化合物としては、任意の適切なフッ素含有無機化合物が用いられ得る。
【0061】
フッ素元素含有添加剤の配合量は、電離放射線硬化性樹脂100重量部に対して、例えば、0.05重量部以上、0.1重量部以上、0.15重量部以上、0.20重量部以上、または0.25重量部以上であってもよく、20重量部以下、15重量部以下、10重量部以下、5重量部以下、または3重量部以下であってもよい。
【0062】
中空粒子としては、任意の適切な中空粒子が用いられ得る。具体例としては、シリカ粒子、アクリル粒子、アクリル-スチレン共重合粒子が挙げられる。中空粒子は、市販品を用いてもよい。シリカ粒子の市販品の具体例としては、日揮触媒化成工業株式会社製の商品名「スルーリア5320」、「スルーリア4320」が挙げられる。中空粒子の重量平均粒子径は、例えば、30nm以上、40nm以上、50nm以上、60nm以上、または70nm以上であってもよく、150nm以下、140nm以下、130nm以下、120nm以下、または110nm以下であってもよい。中空粒子の形状としては、任意の適切な形状が採用され得る。中空粒子の形状は、例えば、ビーズ状の略球形であってもよく、粉末等の不定形のものであってもよい。好ましくは略球形であり、より好ましくはアスペクト比が1.5以下の略球形であり、さらに好ましくは実質的に真球形である。中空粒子を配合することにより、低屈折率かつ良好な反射防止特性を有する反射防止層が得られ得る。中空粒子の配合量は、電離放射線硬化性樹脂100重量部に対して、例えば、30重量部以上、50重量部以上、70重量部以上、90重量部以上、または100重量部以上であってもよく、300重量部以下、270重量部以下、250重量部以下、200重量部以下、または180重量部以下であってもよい。配合量がこのような範囲であれば、機械的特性に優れ、かつ、屈折率が低い反射防止層が得られ得る。
【0063】
中実粒子としては、任意の適切な中実粒子が用いられ得る。具体例としては、シリカ粒子、酸化ジルコニウム粒子、チタン粒子が挙げられる。中実粒子は、市販品を用いてもよい。シリカ粒子の市販品の具体例としては、日産化学工業株式会社製の商品名「MEK-2140Z-AC」、「MIBK-ST」、「IPA-ST」が挙げられる。中実粒子の重量平均粒子径は、例えば、5nm以上、10nm以上、15nm以上、20nm以上、または25nm以上であってもよく、3300nm以下、250nm以下、200nm以下、150nm以下、または100nm以下であってもよい。中実粒子の形状としては、任意の適切な形状が採用され得る。中実粒子の形状は、例えば、ビーズ状の略球形であってもよく、粉末等の不定形のものであってもよい。好ましくは略球形であり、より好ましくはアスペクト比が1.5以下の略球形であり、さらに好ましくは実質的に真球形である。中実粒子を配合することにより、フッ素元素含有添加剤が反射防止層表面に偏在しやすくなり、結果として、低屈折率かつ良好な反射防止特性を有する反射防止層が得られ得る。中実粒子の配合量は、電離放射線硬化性樹脂100重量部に対して、例えば、5重量部以上、10重量部以上、15重量部以上、20重量部以上、または25重量部以上であってもよく、150重量部以下、120重量部以下、重量部以下、100重量部以下、または80重量部以下であってもよい。配合量がこのような範囲であれば、機械的特性、屈折率および透明性のバランスに優れた反射防止層が得られ得る。
【0064】
反射防止層は、代表的には、以下の製造方法により形成され得る:電離放射線硬化性樹脂組成物を希釈溶媒で希釈した反射防止層形成用塗工液を塗工する;塗工膜を乾燥する;および、乾燥した塗工膜を硬化させる。
【0065】
希釈溶媒としては、電離放射線硬化性樹脂に応じて任意の適切な溶媒が用いられ得る。希釈溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、TBA(ターシャリーブチルアルコール)、2-メトキシエタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、MIBK(メチルイソブチルケトン)、シクロペンタノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、PMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)等のエステル類;ジイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられる。希釈溶媒は、単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。複数の溶媒を目的に応じた任意の適切な比率で混合することにより、極性を調整することができる。
【0066】
希釈溶媒は、例えば、MIBKおよびPMAを含む混合溶媒であり得る。この場合の混合比率は目的に応じて適切に設定され得る。混合比率は、MIBK100重量部に対して、PMAが、例えば、20重量部以上、50重量部以上、100重量部以上、150重量部以上、または200重量部以上であってもよく、400重量部以下、350重量部以下、300重量部以下、または250重量部以下であってもよい。
【0067】
希釈溶媒は、例えば、MIBKおよびPMAに加え、さらにTBAを含む混合溶媒であり得る。この場合の混合比率も目的に応じて適切に設定され得る。混合比率は、MIBK100重量部に対して、PMAが、例えば、10重量部以上、30重量部以上、50重量部以上、80重量部以上、または100重量部以上であってもよく、200重量部以下、180重量部以下、150重量部以下、130重量部以下、または110重量部以下であってもよく;TBAが、例えば、10重量部以上、30重量部以上、50重量部以上、80重量部以上、または100重量部以上であってもよく、200重量部以下、180重量部以下、150重量部以下、130重量部以下、または110重量部以下であってもよい。
【0068】
塗工液の固形分濃度は、例えば、0.1重量%以上、0.3重量%以上、0.5重量%以上、1.0重量%以上、または1.5重量%以上となるようにしてもよく、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、または3重量%以下となるようにしてもよい。固形分濃度がこのような範囲であれば、塗工性(例えば、ヌレ、レベリング)と塗工膜の外観不良(例えば、風乾ムラ、白化)防止とを両立することができる。
【0069】
塗工液には、必要に応じて硬化剤が添加されてもよい。硬化剤としては、任意の適切な重合開始剤(例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤等)を用いることができる。硬化剤の添加量は、電離放射線硬化性樹脂100重量部に対して、例えば、0.5重量部以上、1.0重量部以上、1.5重量部以上、2.0重量部以上、または2.5重量部以上であってもよく、15重量部以下、13重量部以下、10重量部以下、7重量部以下、または5重量部以下であってもよい。
【0070】
反射防止層は、代表的には、任意の適切な基材に形成された後、任意の適切な接着剤層または粘着剤層を介して偏光子または偏光板に積層される。まず、基材上に塗工液を塗工する。塗工方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体例としては、ファンテンコート法、ダイコート法、スピンコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、バーコート法が挙げられる。塗工液の塗工量は、形成される反射防止層の厚みに応じて適切に設定され得る。形成される反射防止層の厚みは、例えば、0.1μm以上、0.3μm以上、0.5μm以上、1.0μm以上、または2.0μm以上であってもよく、50μm以下、40μm以下、30μm以下、20μm以下、または10μm以下であってもよい。
【0071】
次に、塗工した塗工液を乾燥させて塗膜を形成する。乾燥温度は、目的に応じて適切に設定され得る。乾燥温度は、例えば、30℃以上、40℃以上、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上、または100℃以上であってもよく、200℃以下、190℃以下、180℃以下、170℃以下、160℃以下、150℃以下、140℃以下、135℃以下、130℃以下、120℃以下、または110℃以下であってもよい。乾燥時間もまた、目的に応じて適切に設定され得る。乾燥時間は、例えば、30秒以上、40秒以上、50秒以上、または60秒以上であってもよく、150秒以下、130秒以下、110秒以下、または90秒以下であってもよい。
【0072】
次に、塗膜を硬化させる。硬化は、例えば、加熱、光照射等により行うことができる。光照射に用いられる光は、例えば、紫外線、可視光であり得る。光照射の光源は、例えば、高圧水銀ランプであり得る。紫外線硬化におけるエネルギー線源の照射量は、紫外線波長365nmでの積算露光量として、50mJ/cm2~500mJ/cm2が好ましい。照射量が50mJ/cm2以上であれば、硬化が十分に進行しやすく、形成される反射防止層の硬度が高くなりやすい。照射量が500mJ/cm2以下であれば、形成される反射防止層の着色を防止することができる。
【0073】
F.第1の接着剤層および第2の接着剤層
上記のとおり、第1の接着剤層21および第2の接着剤層22の接着剤の少なくとも一方は、代表的には、活性エネルギー線硬化型接着剤組成物で構成されている。活性エネルギー線硬化型接着剤組成物は、組成物全量を100重量%としたとき、SP値が29.0(MJ/m3)1/2以上32.0(MJ/m3)1/2以下である活性エネルギー線硬化型化合物(A)を0.0重量%~4.0重量%、SP値が18.0(MJ/m3)1/2以上21.0(MJ/m3)1/2未満である活性エネルギー線硬化型化合物(B)を5.0重量%~98.0重量%、および、SP値が21.0(MJ/m3)1/2以上26.0(MJ/m3)1/2以下である活性エネルギー線硬化型化合物(C)を5.0重量%~98.0重量%含有する。好ましくは、少なくとも第1の接着剤層21が上記の活性エネルギー線硬化型接着剤組成物で構成され、より好ましくは、第1の接着剤層21および第2の接着剤層22の両方が上記の活性エネルギー線硬化型接着剤組成物で構成されている。なお、第1の接着剤層21または第2の接着剤層22の一方のみが上記の活性エネルギー線硬化型接着剤組成物で構成される場合、もう一方の接着剤層は任意の適切な接着剤で構成され得る。
【0074】
以下、上記の活性エネルギー線硬化型接着剤組成物について説明する。
【0075】
活性エネルギー線硬化型化合物(A)の具体例としては、ヒドロキシエチルアクリルアミド(SP値29.5)、N-メチロールアクリルアミド(SP値31.5)が挙げられる。化合物(A)の含有量は、組成物全量を100重量%としたとき、好ましくは4.0重量%以下であり、より好ましくは2.0重量%であり、さらに好ましくは1.5重量%であり、特に好ましくは1.0重量%である。組成物は、好ましくは化合物(A)を含まない。
【0076】
活性エネルギー線硬化型化合物(B)の具体例としては、トリプロピレングリコールジアクリレート(SP値19.0)、1,9-ノナンジオールジアクリレート(SP値19.2)、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(SP値20.3)、環状トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート(SP値19.1) 、ジオキサングリコールジアクリレート(SP値19.4)、EO変性ジグリセリンテトラアクリレート(SP値20.9)が挙げられる。化合物(B)として市販品を用いてもよい。市販品の具体例としては、アロニックスM-220(東亞合成社製、SP値19.0)、ライトアクリレート1,9ND-A(共栄社化学社製、SP値19.2)、ライトアクリレートDGE-4A(共栄社化学社製、SP値20.9)、ライトアクリレートDCP-A(共栄社化学社製、SP値20.3)、SR-531(SARTOMER 社製、SP値19.1)、CD-536(SARTOMER社製、SP値19.4)が挙げられる。化合物(B)の含有量は、組成物全量を100重量%としたとき、好ましくは20重量%~80重量%であり、より好ましくは25重量%~70重量%である。
【0077】
活性エネルギー線硬化型化合物(C)の具体例としては、アクリロイルモルホリン(SP値22.9)、N-メトキシメチルアクリルアミド(SP値22.9)、N-エトキシメチルアクリルアミド(SP値22.3)が挙げられる。化合物(C)として市販品を用いてもよい。市販品の具体例としては、ACMO(興人社製、SP値22.9)、ワスマー2MA(笠野興産社製、SP値22.9)、ワスマーEMA(笠野興産社製、SP値22.3)、ワスマー3MA(笠野興産社製、SP値22.4)が挙げられる。化合物(C)の含有量は、組成物全量を100重量%としたとき、好ましくは20重量%~80重量%であり、より好ましくは25重量%~70重量%である。
【0078】
SP値(溶解度パラメーター)は、Fedorsの算出法[「ポリマー・エンジニアリング・アンド・サイエンス(Polymer Eng.&Sci.)」,第14巻,第2号(1974),第148~154ページ参照]により求めることができる。
【0079】
活性エネルギー線硬化型接着剤組成物は、(メタ)アクリルモノマーを重合してなるアクリル系オリゴマー(D)をさらに含有してもよい。オリゴマーを含有することにより、反射防止層と偏光板(実質的には、第1の保護層)との接着力、および/または、反射防止層と位相差層との接着力を高めることができる。オリゴマー(D)の含有量は、組成物全量を100重量%としたとき、好ましくは3.0重量%以上であり、より好ましくは5.0重量%以上である。一方、含有量は、好ましくは25重量%以下であり、より好ましくは15重量%以下である。このような範囲であれば、硬化収縮(硬化過多)および硬化不良(硬化不十分)を抑制することができる。オリゴマー(D)の重量平均分子量Mwは、好ましくは15000以下であり、より好ましくは10000以下であり、さらに好ましくは5000以下である。一方、重量平均分子量Mwは、好ましくは500以上であり、より好ましくは1000以上であり、さらに好ましくは1500以上である。
【0080】
活性エネルギー線硬化型接着剤組成物は、水素引き抜き作用のあるラジカル重合開始剤(E)をさらに含有してもよい。ラジカル重合開始剤(E)としては、例えば、チオキサントン系ラジカル重合開始剤、ベンゾフェノン系ラジカル重合開始剤が挙げられる。ジエチルチオキサントンが好ましい。
【0081】
上記活性エネルギー線硬化型接着剤組成物で構成される第1の接着剤層および/または第2の接着剤層の厚みは、好ましくは0.01μm~3.0μmであり、より好ましくは0.1μm~2.5μmであり、さらに好ましくは0.5μm~1.5μmである。
【0082】
偏光板と第1の接着剤層および/または第2の接着剤層との間には易接着層が形成されてもよい。
【0083】
上記の活性エネルギー線硬化型接着剤組成物および易接着層を形成する組成物の詳細は、例えば特開2019-147865号公報に記載されている。当該公報の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0084】
G.画像表示装置
上記A項~F項に記載の反射防止層付円偏光板は、画像表示装置に適用され得る。したがって、本発明の実施形態は、そのような反射防止層付円偏光板を用いた画像表示装置も包含する。本発明の実施形態による画像表示装置は、代表的には、その視認側に上記A項~F項に記載の反射防止層付円偏光板を備える。反射防止層付円偏光板は、上記反射防止層が視認側となるように配置されている。画像表示装置の反射率は好ましくは40%以下である。このような反射率を有する画像表示装置において、上記A項~F項に記載の反射防止層付円偏光板の効果が顕著なものとなる。具体的には以下のとおりである。画像表示装置の反射率が低ければ、表示画像の反射等を小さくすることができる一方で、高温高湿環境下において画像法事装置に表示ムラ(例えば、スジ)も視認されにくくなる。画像表示装置の代表例としては、液晶表示装置、有機エレクトロルミネセンス(EL)表示装置が挙げられる。好ましくは、有機EL表示装置である。
【実施例0085】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法は以下の通りである。
【0086】
(1)透過率
実施例および比較例で得られた反射防止層付円偏光板の透過率を、紫外可視分光光度計(日本分光社製V-7100)を用いて測定した。なお、単体透過率は、JIS Z 8701の2度視野(C光源)により測定し、視感度補正を行ったY値である。
(2)反射率
実施例および比較例で得られた反射防止層付円偏光板を所定サイズに切り出し、位相差層表面にコロナ処理を施した。反射防止層付円偏光板の当該コロナ処理面を、アクリル系粘着剤(20μm)を介して無アルカリガラス板に貼り合わせ、積層体を作製した。この積層体を、60℃および90%RHで500時間の加熱加湿試験に供した。加熱加湿試験後の積層体を、ガラス板面が対向するようにして有機EL装置代替品に載置し、試験サンプルとした。この試験サンプルについて、コニカミノルタ社製分光測色計「CM-2600d」を用いて正面反射率を測定した。正面反射率はSCI方式で測定した。
なお、有機EL表示装置代替品は以下のようにして作製した。アクリル板に、アルミ蒸着フィルム(東レフィルム加工社製、商品名「DMS蒸着X-42」、厚み50μm)を粘着剤で貼り合せ、これを有機EL表示装置代替品とした。
(3)表示ムラ
上記(1)と同様にして作製した試験サンプルについて、試験サンプルの表示ムラ(スジ、色ムラ、輝度ムラ等)を、蛍光灯下で目視にて観察し、以下の基準で評価した。
○:正面方向および斜め方向のいずれにおいても表示ムラは認められない
△:正面方向において表示ムラは認められないが、斜め方向において表示ムラが認められる
×:正面方向および斜め方向のいずれにおいても表示ムラが認められる
(4)輝度
有機ELディスプレイ(Samsung社製、製品名「Galaxy S5」)から有機ELパネルを取り出し、この有機ELパネルに貼り付けられている偏光フィルムを剥がし取り、かわりに、実施例および比較例で得られた円偏光板を貼り合わせて有機EL表示装置を得た。得られた有機EL表示装置に白画像を表示させ、TOPCON社製の分光放射計(商品名「SR-UL1R」)を用いて正面輝度(cd)を測定した。
【0087】
[製造例1:偏光板の作製]
(偏光子の作製)
平均重合度2400、ケン化度99.9モル%の厚み45μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の温水中に60秒間浸漬し膨潤させた。次いで、ヨウ素/ヨウ化カリウム(重量比=1/7)の濃度0.3%の水溶液に浸漬し、2.6倍まで延伸させながらフィルムを染色した。その後、65℃の4重量%ホウ酸水溶液中で、トータルの延伸倍率が6倍となるように延伸を行った。延伸後に、55℃のオーブンにて1分間乾燥を行い、PVA系偏光子を得た。この偏光子の厚さは18μm、水分率は15重量%であった。
【0088】
(偏光板の作製)
得られた偏光子の表面(樹脂基材とは反対側の面)に、保護層としてのシクロオレフィン系フィルム(日本ゼオン社製、ZF-12、23μm)を、紫外線硬化型接着剤を介して貼り合せた。具体的には、硬化型接着剤の総厚みが約1.0μmになるように塗工し、ロール機を使用して貼り合わせた。その後、UV光線をシクロオレフィン系フィルム側から照射して接着剤を硬化させた。次いで、樹脂基材を剥離してシクロオレフィン系フィルム(保護層)/偏光子の構成を有する偏光板を得た。
【0089】
[製造例2:位相差層を構成する位相差フィルムの作製]
撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した縦型反応器2器からなるバッチ重合装置を用いて重合を行った。ビス[9-(2-フェノキシカルボニルエチル)フルオレン-9-イル]メタン29.60質量部(0.046mol)、イソソルビド(ISB)29.21質量部(0.200mol)、スピログリコール(SPG)42.28質量部(0.139mol)、ジフェニルカーボネート(DPC)63.77質量部(0.298mol)及び触媒として酢酸カルシウム1水和物1.19×10-2質量部(6.78×10-5mol)を仕込んだ。反応器内を減圧窒素置換した後、熱媒で加温を行い、内温が100℃になった時点で撹拌を開始した。昇温開始40分後に内温を220℃に到達させ、この温度を保持するように制御すると同時に減圧を開始し、220℃に到達してから90分で13.3kPaにした。重合反応とともに副生するフェノール蒸気を100℃の還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は45℃の凝縮器に導いて回収した。第1反応器に窒素を導入して一旦大気圧まで復圧させた後、第1反応器内のオリゴマー化された反応液を第2反応器に移した。次いで、第2反応器内の昇温および減圧を開始して、50分で内温240℃、圧力0.2kPaにした。その後、所定の攪拌動力となるまで重合を進行させた。所定動力に到達した時点で反応器に窒素を導入して復圧し、生成したポリエステルカーボネート系樹脂を水中に押し出し、ストランドをカッティングしてペレットを得た。
【0090】
得られたポリエステルカーボネート系樹脂(ペレット)を80℃で5時間真空乾燥をした後、単軸押出機(東芝機械社製、シリンダー設定温度:250℃)、Tダイ(幅200mm、設定温度:250℃)、チルロール(設定温度:120~130℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、厚み135μmの長尺状の樹脂フィルムを作製した。得られた長尺状の樹脂フィルムを、幅方向に、延伸温度133℃、延伸倍率2.8倍で延伸し、厚み48μmの位相差フィルムIを得た。得られた位相差フィルムのRe(550)は141nmであり、Re(450)/Re(550)は0.82であり、Nz係数は1.12であった。
【0091】
[製造例3:位相差層を構成する位相差フィルムの作製]
イソソルビド(以下「ISB」と略記することがある)81.98質量部に対して、トリシクロデカンジメタノール(以下「TCDDM」と略記することがある)47.19質量部、ジフェニルカーボネート(以下「DPC」と略記することがある)175.1質量部、及び触媒として炭酸セシウム0.2質量% 水溶液0.979質量部を反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、反応の第1段目の工程として、加熱槽温度を150℃ に加熱し、必要に応じて攪拌しながら、原料を溶解させた(約15分)。次いで、圧力を常圧から13.3kPaにし、加熱槽温度を190℃まで1時間で上昇させながら、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。反応容器全体を190℃で15分保持した後、第2段目の工程として、反応容器内の圧力を6.67kPaとし、加熱槽温度を230℃まで、15分で上昇させ、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。攪拌機の攪拌トルクが上昇してくるので、8分で250℃まで昇温し、さらに発生するフェノールを取り除くため、反応容器内の圧力を0.200kPa以下に到達させた。所定の攪拌トルクに到達後、反応を終了し、生成した反応物を水中に押し出して、ポリカーボネート共重合体のペレットを得た。
【0092】
得られたペレットを80℃で5時間真空乾燥をした後、単軸押出機(東芝機械社製、シリンダー設定温度:250℃)、Tダイ(幅200mm、設定温度:250℃)、チルロール(設定温度:120~130℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、樹脂フィルムを作製した。得られた長尺状の樹脂フィルムを、斜め方向に、延伸温度140℃、延伸倍率2.2倍で延伸し、厚み30μmの位相差フィルムIIを得た。得られた位相差フィルムのRe(550)は144nmであり、Re(450)/Re(550)は1.02であり、Nz係数は1.2であった。
【0093】
[製造例4:反射防止層の作製]
[製造例4-1:ハードコート層の作製]
ハードコート層に含まれる樹脂として、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂(DIC(株)製、商品名「ユニディック17-806」、固形分80%)100重量部を準備した。前記樹脂の樹脂固形分100重量部あたり、光重合開始剤(BASF社製、商品名「OMNIRAD907」)を3重量部、レベリング剤(DIC(株)製、商品名「GRANDIC PC4100」、固形分10%)を0.01重量部混合した。この混合物を固形分濃度が40%となるように、酢酸ブチル/シクロペンタノン混合溶媒(重量比80/20)で希釈して、ハードコート層形成材料(塗工液)を調製した。基材(厚み60μmのTACフィルム)表面に、上記塗工液をワイヤーバーで塗工した。塗工した塗工液を80℃で1分間加熱し、乾燥させて塗膜を形成した。乾燥後の塗膜に、高圧水銀ランプで積算光量300mJ/cm2の紫外線を照射して硬化処理し、基材上にハードコートフィルム(ハードコート層)を得た。
【0094】
[製造例4-2:反射防止層の作製]
ペンタエリストールトリアクリレートを主成分とする多官能アクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、商品名「ビスコート#300」、固形分100重量%)100重量部、中空ナノシリカ粒子(日揮触媒化成工業株式会社製、商品名「スルーリア5320」、固形分20重量%、重量平均粒子径75nm)100重量部、中実ナノシリカ粒子(日産化学工業株式会社製、商品名「MEK-2140Z-AC」、固形分30重量%、重量平均粒子径10nm)40重量部、フッ素元素含有添加剤(信越化学工業株式会社製、商品名「KY-1203」、固形分20重量%)12重量部、および光重合開始剤(IGM Resins B.V.社製、商品名「Omnirad907」、固形分100重量%)3重量部を混合した。当該混合物に、希釈溶媒としてTBA(ターシャリーブチルアルコール)、MIBK(メチルイソブチルケトン)およびPMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を60:25:15重量比で混合した混合溶媒を添加して全体の固形分が4重量%となるようにし、攪拌して反射防止層形成用塗工液を調製した。
【0095】
製造例4-1で得られた基材/ハードコート層の積層体のハードコート層表面に、製造例4-2で得られた反射防止層形成用塗工液をワイヤーバーで塗工した。塗工した塗工液を80℃で1分間加熱し、乾燥させて塗膜を形成した。乾燥後の塗膜に、高圧水銀ランプで積算光量300mJ/cm2の紫外線を照射して硬化処理し、反射防止層を形成した。このようにして、基材/ハードコート(HC)層/反射防止層の積層体を作製した。
【0096】
[製造例5:接着剤層を構成する接着剤組成物の調製]
アクリロイルモルホリン(興人社製、商品名「ACMO」、SP値:22.9)45質量部、1,9-ノナンジオールジアクリレート(商品名「ライトアクリレート1.9ND-A」、共栄社化学社製)41質量部、(メタ)アクリルモノマーを重合してなるアクリル系オリゴマー(商品名「ARUFON UG4010」、東亞合成社製)10質量部、光重合開始剤であるジエチルチオキサントン(商品名「KAYACURE DETX-S」、日本化薬社製)1.5質量部、及び光重合開始剤である2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(商品名「IRGACURE907」、BASF社製)2.5質量部を混合して50℃で1時間撹拌することにより、接着剤組成物を調製した。便宜上、この接着剤組成物を高耐久接着剤組成物と称する。
【0097】
[製造例6:接着剤層を構成する接着剤組成物の調製]
接着剤として、ヒドロキシエチルアクリルアミド(興人社製、商品名「HEAA」、SP値:29.5)12重量部、アクリロイルモルホリン(興人社製、商品名「ACMO」、SP値:22.9)35重量部、1,9-ノナンジオールジアクリレート(商品名「ライトアクリレート1.9ND-A」、共栄社化学社製)40重量部、アクリル系オリゴマー(商品名「ARUFON UG4010」、東亞合成社製)10重量部、光重合開始剤として、KAYACURE DETX-S((2,4-ジエチルチオキサントン)、日本化薬社製)2重量部および光増感剤 IRGACURE907(2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、商品名「IRGACURE907」、BASF社製)1重量部の割合で混合して50℃で1時間撹拌することにより、接着剤組成物を調製した。便宜上、この接着剤組成物を通常接着剤組成物と称する。
【0098】
[製造例7:易接着層を構成する組成物(易接着組成物)の調製]
アクリロイルモルホリン(興人社製、商品名「ACMO」、SP値:22.9)50質量部、3-アクリルアミドフェニルボロン酸(純正化学社製)0.9質量部を混合して、得られた混合物を25℃で30分撹拌し、更に混合物に水48.3質量部、及びレベリング剤(日信化学工業社製、商品名「オルフィンEXP.4123」)0.8質量部を混合し、25℃で10分撹拌することにより易接着組成物を調製した。
【0099】
[実施例1~4および比較例1~5]
偏光板、位相差フィルム(位相差層)、反射防止層、ならびに接着剤(第1の接着剤層および第2の接着剤層)を表1に示すように組み合わせて、
図1に示すような(ただし、第1および第2の保護層なし)反射防止層付円偏光板を作製した。具体的な作製方法は以下のとおりであった。偏光子の両面に製造例7の易接着組成物を1100nmの初期設定厚みで塗工した。一方、製造例4で得られた積層体の基材表面に第1の接着剤層を形成し、第1の接着剤層を介して反射防止層を偏光板(実質的には、易接着層)に貼り合わせた。同様に、製造例3で得られた位相差層を構成する位相差フィルムの一方の面に第2の接着剤層を形成し、第2の接着剤層を介して位相差フィルムを偏光板(実質的には、易接着層)に貼り合わせた。次いで、活性エネルギー線照射装置により可視光線を照射して、第1および第2の接着剤層を硬化させ、さらに、70℃で3分間熱風乾燥し、反射防止層付円偏光板を作製した。なお、反射防止層付円偏光板の位相差層表面(偏光子と反対側)には、アクリル系粘着剤層(23μm)を設けた。ここで、偏光板と位相差層(位相差フィルム)とは、偏光子の吸収軸と位相差フィルムの遅相軸とが45°の角度をなすようにして貼り合わせた。得られた反射防止層付円偏光板を上記(1)~(4)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0100】
【0101】
[評価]
表1から明らかなように、本発明の実施例の反射防止層付円偏光板によれば、明るくかつ高温高湿環境下において表示ムラが抑制された画像表示装置を実現できることがわかる。