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特開2024-45321合成肝臓指向性アデノ随伴ウイルスカプシドおよびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045321
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】合成肝臓指向性アデノ随伴ウイルスカプシドおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/864 20060101AFI20240326BHJP
   C12N 15/35 20060101ALI20240326BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20240326BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240326BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240326BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
C12N15/35 ZNA
C12N7/01
A61P1/16
A61K35/76
A61K48/00
A61P35/00
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024009575
(22)【出願日】2024-01-25
(62)【分割の表示】P 2020569122の分割
【原出願日】2019-06-12
(31)【優先権主張番号】62/683,868
(32)【優先日】2018-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】501345323
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒル
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF NORTH CAROLINA AT CHAPEL HILL
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】シアオ,シアオ
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジュアン
(72)【発明者】
【氏名】シアオ,ビン
(72)【発明者】
【氏名】ユアン,ジェンホア
(57)【要約】      (修正有)
【課題】肝臓指向性が改善したAAVベクターを提供する。
【解決手段】本発明は、肝臓を標的とする合成アデノ随伴ウイルスカプシド、および同カプシドを含むウイルスベクターに関する。さらに本発明は、肝臓を標的化し、肝臓に特異的な発現を提供し、ならびにヒト初代肝細胞および細胞株に形質導入するために上記ベクターを使用する方法に関する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年6月12日に出願の米国特許仮出願番号第62/683,868号の利益を請求するものであり、その全内容は、本明細書中参照により組み込まれている。
【0002】
本発明は、肝臓を標的とする合成アデノ随伴ウイルスカプシド、および同カプシドを含むウイルスベクターに関する。さらに本発明は、肝臓を標的化し、肝臓に特異的な発現を提供し、ならびにヒト初代肝細胞および細胞株に形質導入するために上記ベクターを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、様々な組織での効率的な遺伝子導入および持続する導入遺伝子発現のため、in vivoでの遺伝子療法において有望なベクターである。AAVベクターは、良好な安全プロファイルを示しており、遺伝子療法の臨床試験において治療効果を達成している。一部の新規のAAV血清型は、全身遺伝子送達による心臓、筋肉、CNSへの形質導入の効率を顕著に改善することを特徴としていた。他の一部は、小動物での肝臓への遺伝子導入に有効である。これら知見は、多くの遺伝性疾患および代謝性疾患の遺伝子療法に光を当てている。新規血清型の同定に加え、遺伝子修飾もまた、その臨床的な応用のためAAVベクターをさらに改善し得る。AAVベクターを利用する際の問題の1つは、幅広い組織指向性であり、これは多くの場合、望ましくない組織への遺伝子導入をもたらし、異所性遺伝子発現に関する潜在的な安全性の懸念をもたらす。AAVウイルス性粒子の組織特異性および組織標的化の能力を改善するために、合理的な操作に加えてカプシド遺伝子にランダムな変異誘発を行うことは、カプシドの多様性を高め、意図する組織へカプシドの指向性を変えるための最も強力な方法の1つである。DNAシャフリングなどの指向性のある発展は、AAVカプシド遺伝子の遺伝子操作に関して近年発展した手法の1つである。
【0004】
DNAシャフリングは、ランダムな断片化、次にPCR再構築を行い、パッチ状の相同組み換えにより遺伝子に新規の遺伝子変異を導入または交換する方法である。生来、AAVは、様々な組織指向性または免疫原性を有する異なる血清型へと進化している。これら血清型のAAV cap遺伝子はまた、それらのDNAをシャフリングすることによる新規組み換えの作製ならびに機能的に有効な変異体およびバリアントの選択にとって理想的なテンプレートである。修飾されたAAV cap遺伝子は、著しく多様性のある生物学的な性質を有するキメラウイルスライブラリーの作製およびそれらの組織指向性のさらなる性質決定に適したプラスミドベクターへクローニングされる。
【0005】
培養された細胞株に基づく多くのin vitroの系が、DNAシャフリング後のウイルスベクターのパニングに使用されている。しかしながら、遺伝子療法の適用において、AAVベクターは、ヒトまたは動物の身体のより複雑な生理的環境、たとえば多くの血清タンパク質、潜在的な中和抗体および非中和抗体、内皮障壁、目的の細胞に対する直接的な指向性および感染性などに直面しなければならない。多くの場合、in vitroで試験される場合、肝臓指向性であると思われる修飾されたベクターは、in vivoで使用される際に肝臓を適切に標的としない。
【0006】
in vivoでの使用で利点を提供する肝臓指向性が改善したAAVベクターが、当該分野で必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、異なる天然のAAV血清型のcap遺伝子を、DNAシャフリングを使用したin vitroでの組み換えにより著しく多様化させた戦略の使用に部分的に基づくものである。結果得られる、変異体およびバリアントの幅広い並べ替えを含むAAVカプシド遺伝子ライブラリーが、最初にマウスにおいてin vivoで直接スクリーニングされた。in vivoで有効なベクターを同定するための障壁を考慮して、AAVライブラリーを、前臨床または臨床的な状況においてin vivoでの現実的な環境を模倣するために、C57BL/6Jマウスの肝臓においてin vivoで直接スクリーニングした。その後、事前に多く含まれているカプシド遺伝子を、肝臓指向性カプシドを含む細胞種および組織指向性の新規のAAVカプシドのさらなる選択のため、培養した細胞で選択した。マウスの肝臓に著しく多く含まれており、またヒト肝臓がん細胞株および初代ヒト肝細胞で著しく感染性であるカプシド遺伝子の1つを見出した。
【0008】
よって、本発明の一態様は、AAVカプシドをコードする核酸であって、
(a)配列番号1~3のいずれか1つのヌクレオチド配列;または
(b)配列番号4~6のいずれか1つをコードするヌクレオチド配列
と少なくとも90%同一であるAAVカプシドコード配列を含む、
核酸、ならびに上記核酸を含む細胞およびウイルス性粒子に関する。
【0009】
本発明の別の態様は、配列番号4~6のいずれか1つと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むAAVカプシド、ならびに本発明のAAVベクターゲノムおよびAAVカプシドを含むAAV粒子に関する。
【0010】
本発明のさらなる態様は、AAVカプシドを含む組み換えAAV粒子を作製する方法であって、
本発明の核酸、AAV repコード配列、異種性核酸を含むAAVベクターゲノム、および増殖性AAV感染をもたらすためのヘルパー機能を有するin vitroにある細胞を準備するステップと、
AAVカプシドを含む組み換えAAV粒子のアセンブリを可能にし、上記AAVベクターゲノムをカプシドに包有するステップと
を含む方法に関する。
【0011】
本発明のさらなる態様は、薬学的に許容される担体において、本発明の核酸、ウイルス粒子、AAVカプシド、またはAAV粒子を含む医薬製剤に関する。
【0012】
本発明の別の態様は、目的の核酸を肝細胞に送達する方法であって、上記細胞を本発明のAAV粒子と接触させるステップを含む、方法に関する。
【0013】
本発明のさらなる態様は、哺乳類の対象において目的の核酸を肝細胞に送達する方法であって、本発明のAAV粒子または医薬製剤の有効量を哺乳類の対象に投与するステップを含む、方法に関する。
【0014】
本発明の別の態様は、それを必要とする哺乳類の対象の障害を処置する方法であって、上記障害が、上記対象の肝臓において産物を発現させることにより処置可能であり、上記方法が本発明のAAV粒子または医薬製剤の治療有効量を哺乳類の対象に投与するステップを含む、方法に関する。
【0015】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の本発明の説明により詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A図1A~1Bは、肝臓遺伝子導入の効率に関する、肝臓指向性AAVカプシドXL12およびXL32のAAV9とのin vivoでの比較を示す。LacZおよびGFPのレポーターベクターが、AAV9、AAVXL12、およびAAVXL32にパッケージングされた。これらベクターは、精製され、力価決定され(tittered)、5×1012vg(vector genomes)/kg体重の用量で成年のC57B/6マウスの尾静脈を介して静脈内注射された。3週間後に、マウスを屠殺し、肝臓薄切片を、LacZ発現のためX-galで染色するか(図1A);または直接載置し、GFP発現で蛍光的に撮影を行った(図1B)。
図1B図1A~1Bは、肝臓遺伝子導入の効率に関する、肝臓指向性AAVカプシドXL12およびXL32のAAV9とのin vivoでの比較を示す。LacZおよびGFPのレポーターベクターが、AAV9、AAVXL12、およびAAVXL32にパッケージングされた。これらベクターは、精製され、力価決定され(tittered)、5×1012vg(vector genomes)/kg体重の用量で成年のC57B/6マウスの尾静脈を介して静脈内注射された。3週間後に、マウスを屠殺し、肝臓薄切片を、LacZ発現のためX-galで染色するか(図1A);または直接載置し、GFP発現で蛍光的に撮影を行った(図1B)。
図2図2は、ヒト肝臓がんHuh7細胞株に及ぼす遺伝子導入効率に関する、肝臓指向性AAVカプシドXL12およびXL32のAAV9とのin vitroでの比較を示す。AAV9、XL12、およびXL32にパッケージングされたLacZレポーターベクターを使用して、1×10vg/細胞および1×10vg/細胞の感染多重度(moi)でHuh7細胞に形質導入した。3日後に、LacZ発現のためX-gal染色を行った。
図3A図3A~3Dは、ヒト初代肝細胞培養物に及ぼす遺伝子導入の効率に関する、肝臓指向性AAVカプシドXL12およびXL32の他の血清型のAAVとのin vitroでの比較を示す。GFPレポーターベクターが、AAVXL12、AAVXL32、および他の一般に使用される複数の血清型のカプシドにパッケージングされた。AAV-GFPベクターを使用して、1×10vg/細胞のmoiにてヒト初代肝細胞培養物に感染させた。緑色蛍光撮影を、24時間目および48時間目、または最大7日目まで毎日撮影した。(A)3名のドナーからのヒト初代肝細胞でのAAV-GFPベクターでの感染から24時間後のGFP発現。(B)48時間でのGFP発現。(C)ドナー患者#4021の肝細胞での感染から1~7日後のAAVXL12およびAAVXL32 GFPの遺伝子発現。(D)ドナー患者#4073の肝細胞での感染から1~7日後のAAVXL12およびAAVXL32 GFPの遺伝子発現。GFP遺伝子の著しく効率的かつ増大する発現が観察された。
図3B図3A~3Dは、ヒト初代肝細胞培養物に及ぼす遺伝子導入の効率に関する、肝臓指向性AAVカプシドXL12およびXL32の他の血清型のAAVとのin vitroでの比較を示す。GFPレポーターベクターが、AAVXL12、AAVXL32、および他の一般に使用される複数の血清型のカプシドにパッケージングされた。AAV-GFPベクターを使用して、1×10vg/細胞のmoiにてヒト初代肝細胞培養物に感染させた。緑色蛍光撮影を、24時間目および48時間目、または最大7日目まで毎日撮影した。(A)3名のドナーからのヒト初代肝細胞でのAAV-GFPベクターでの感染から24時間後のGFP発現。(B)48時間でのGFP発現。(C)ドナー患者#4021の肝細胞での感染から1~7日後のAAVXL12およびAAVXL32 GFPの遺伝子発現。(D)ドナー患者#4073の肝細胞での感染から1~7日後のAAVXL12およびAAVXL32 GFPの遺伝子発現。GFP遺伝子の著しく効率的かつ増大する発現が観察された。
図3C図3A~3Dは、ヒト初代肝細胞培養物に及ぼす遺伝子導入の効率に関する、肝臓指向性AAVカプシドXL12およびXL32の他の血清型のAAVとのin vitroでの比較を示す。GFPレポーターベクターが、AAVXL12、AAVXL32、および他の一般に使用される複数の血清型のカプシドにパッケージングされた。AAV-GFPベクターを使用して、1×10vg/細胞のmoiにてヒト初代肝細胞培養物に感染させた。緑色蛍光撮影を、24時間目および48時間目、または最大7日目まで毎日撮影した。(A)3名のドナーからのヒト初代肝細胞でのAAV-GFPベクターでの感染から24時間後のGFP発現。(B)48時間でのGFP発現。(C)ドナー患者#4021の肝細胞での感染から1~7日後のAAVXL12およびAAVXL32 GFPの遺伝子発現。(D)ドナー患者#4073の肝細胞での感染から1~7日後のAAVXL12およびAAVXL32 GFPの遺伝子発現。GFP遺伝子の著しく効率的かつ増大する発現が観察された。
図3D図3A~3Dは、ヒト初代肝細胞培養物に及ぼす遺伝子導入の効率に関する、肝臓指向性AAVカプシドXL12およびXL32の他の血清型のAAVとのin vitroでの比較を示す。GFPレポーターベクターが、AAVXL12、AAVXL32、および他の一般に使用される複数の血清型のカプシドにパッケージングされた。AAV-GFPベクターを使用して、1×10vg/細胞のmoiにてヒト初代肝細胞培養物に感染させた。緑色蛍光撮影を、24時間目および48時間目、または最大7日目まで毎日撮影した。(A)3名のドナーからのヒト初代肝細胞でのAAV-GFPベクターでの感染から24時間後のGFP発現。(B)48時間でのGFP発現。(C)ドナー患者#4021の肝細胞での感染から1~7日後のAAVXL12およびAAVXL32 GFPの遺伝子発現。(D)ドナー患者#4073の肝細胞での感染から1~7日後のAAVXL12およびAAVXL32 GFPの遺伝子発現。GFP遺伝子の著しく効率的かつ増大する発現が観察された。
図4A図4A~4Cは、イヌの初代肝細胞培養物に及ぼす遺伝子導入効率に関する、肝臓指向性AAVカプシドXL12およびXL32の他の血清型のAAVとのin vitroでの比較を示す。GFPレポーターベクターが、AAVXL12、AAVXL32、および他の一般に使用される複数の血清型のカプシドにパッケージングされた。AAV-GFPベクターを使用して、1×10vg/細胞のmoiにてイヌの初代肝細胞培養物に感染させた。緑色蛍光撮影を、24時間目および48時間目に撮影した。(A)凍結保存した初代肝細胞(Dog DBCP01)にて24時間および48時間でのGFP発現。(B)未処理の単離した初代肝細胞(Dog DBF24)での24時間でのGFP発現。(C)未処理の単離した初代肝細胞(Dog DBF24)での48時間でのGFP発現。GFP遺伝子の著しく効率的であり増大する発現が、AAV6、AAVXL12、およびAAVXL32に感染させた細胞で観察された。
図4B図4A~4Cは、イヌの初代肝細胞培養物に及ぼす遺伝子導入効率に関する、肝臓指向性AAVカプシドXL12およびXL32の他の血清型のAAVとのin vitroでの比較を示す。GFPレポーターベクターが、AAVXL12、AAVXL32、および他の一般に使用される複数の血清型のカプシドにパッケージングされた。AAV-GFPベクターを使用して、1×10vg/細胞のmoiにてイヌの初代肝細胞培養物に感染させた。緑色蛍光撮影を、24時間目および48時間目に撮影した。(A)凍結保存した初代肝細胞(Dog DBCP01)にて24時間および48時間でのGFP発現。(B)未処理の単離した初代肝細胞(Dog DBF24)での24時間でのGFP発現。(C)未処理の単離した初代肝細胞(Dog DBF24)での48時間でのGFP発現。GFP遺伝子の著しく効率的であり増大する発現が、AAV6、AAVXL12、およびAAVXL32に感染させた細胞で観察された。
図4C図4A~4Cは、イヌの初代肝細胞培養物に及ぼす遺伝子導入効率に関する、肝臓指向性AAVカプシドXL12およびXL32の他の血清型のAAVとのin vitroでの比較を示す。GFPレポーターベクターが、AAVXL12、AAVXL32、および他の一般に使用される複数の血清型のカプシドにパッケージングされた。AAV-GFPベクターを使用して、1×10vg/細胞のmoiにてイヌの初代肝細胞培養物に感染させた。緑色蛍光撮影を、24時間目および48時間目に撮影した。(A)凍結保存した初代肝細胞(Dog DBCP01)にて24時間および48時間でのGFP発現。(B)未処理の単離した初代肝細胞(Dog DBF24)での24時間でのGFP発現。(C)未処理の単離した初代肝細胞(Dog DBF24)での48時間でのGFP発現。GFP遺伝子の著しく効率的であり増大する発現が、AAV6、AAVXL12、およびAAVXL32に感染させた細胞で観察された。
図5図5は、静脈内ベクター送達により成体のアカゲザル(rhesus macaque monkey)の肝臓におけるAAVXL32およびAAV8の形質導入の効率の比較を示す。1:8未満の血清中和抗体力価を有する3~5歳の成体の雄性のアカゲザルに、AAVベクターを静脈内注射した。2匹のサルに、1×1012vg/kg体重の用量で、AAVXL32-CB-GFPを注射し、2匹にAAV-CB-GFPを注射した。AAVベクターの発現カセットは、より迅速かつ効率的な遺伝子発現のため二本鎖の(自己相補的とも呼ばれる)形態であった。2週間後に、これらサルを安楽死させ、肝臓組織を、凍結薄切片で採取し、緑色蛍光撮影を行った。一部のGFP陽性肝細胞が、矢印により強調されている。
図6図6は、AAVXL32およびAAVXL32.1のカプシドのタンパク質ゲル解析を示す。著しく精製されたAAVXL32およびAAVXL32.1を、レーン当たり1×1011個の粒子の濃度でローディングし、SDS-PAGEゲルで解析し、銀染色により可視化した。矢印は、典型的なAAVカプシドタンパク質のVP1、VP2、およびVP3を強調している。矢頭は、AAVXL32における追加のカプシドタンパク質VPXを強調している。これは、恐らくCTCからCTGへの変異により作製されるより弱い開始コドンからもたらされる。CTGからCTCへの復帰は、AAVXL32.1においてこのタンパク質を無効にした。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、in vivoおよびin vitroで肝細胞に形質導入できる合成AAVカプシド配列の発展に部分的に基づくものである。合成カプシドは、他の臓器に対して過度なベクター体内分布を伴うことのない肝臓に特異的な遺伝子導入が望ましい、研究または治療上の適用に使用するためのAAVベクターを作製するために使用され得る。
【0018】
本発明を、以下でより詳細に説明する。この説明は、本発明が実施され得る全ての異なる方法の詳細なカタログ、または本発明に追加され得る全ての性質であると企図されてはいない。たとえば、一実施形態で例示される性質は、他の実施形態に組み込まれてもよく、特定の実施形態に例示されている性質は、当該実施形態から削除されてもよい。さらに、本明細書中示唆される様々な実施形態に対する多くのバリエーションおよび追加が、本開示の観点から当業者に明らかであり、本発明から逸脱しない。よって、以下の説明は、本発明の一部の特定の実施形態を例示するように企図されており、その全ての並べ替え、組み合わせ、およびバリエーションを徹底的に特定するようには企図されていない。
【0019】
文脈が他の意味を示さない限り、本明細書中記載される本発明の様々な性質は、任意の組み合わせで使用され得ることが特に企図されている。さらにまた本発明は、本発明の一部の実施形態において、本明細書中記載されるいずれかの特性または特性の組み合わせが排除または省略され得ることを企図している。たとえば、本明細書が、ある複合体が構成要素A、B、およびCを含むことを述べている場合、A、B、もしくはC、またはそれらの組み合わせのいずれかが、単一または任意の組み合わせで除外または請求されない場合があり得ることが特に企図されている。
【0020】
特段他が定義されない限り、本明細書中使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者が一般に理解する意味と同じ意味を有する。本明細書中の発明の説明で使用される専門用語は、単に特定の実施形態を説明する目的のためにあり、本発明を限定しているとは企図されていない。
【0021】
ヌクレオチド配列は、特段他が記載されない限り、左から右への、5’→3’方向にて、単なる一本鎖によって本明細書中提示されている。ヌクレオチドおよびアミノ酸は、本明細書中において、IUPAC-IUB生化学命名委員会が推奨する方法で、または(アミノ酸に関しては)連邦規則集37巻1.822節および確立された用法に従い1文字もしくは3文字のいずれかにより、提示される。
【0022】
他の意味が記載される場合を除き、当業者に知られている標準的な方法が、組み換え型および合成のポリペプチド、抗体またはその抗原結合フラグメントの作製、核酸配列の操作、形質転換した細胞の作製、rAAVコンストラクトの構築、カプシドタンパク質の修飾、AAV repおよび/またはcap配列を発現するベクターのパッケージング、および一時的かつ安定したトランスフェクトされたパッケージング細胞に使用され得る。このような技術は、当業者に知られている。たとえば、SAMBROOK et al., MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL 2nd Ed. (Cold Spring Harbor, NY, 1989); F. M. AUSUBEL et al. CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY (Green Publishing Associates, Inc. and John Wiley & Sons, Inc., New York)を参照されたい。
【0023】
本明細書中言及される全ての刊行物、特許出願、特許、ヌクレオチド配列、アミノ酸配列、および他の参照文献は、それら全体が参照により組み込まれている。
【0024】
I.定義
本発明の説明および添付の特許請求の範囲におけるAAVカプシドサブユニット中の全てのアミノ酸の位置の表記は、VP1カプシドサブユニットのナンバリングに対するものである。
【0025】
本発明の説明および添付の特許請求の範囲に使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が他の意味を明確に記載しない限り、複数形をも含むように意図されている。
【0026】
本明細書中使用される場合、「および/または」は、関連する列挙した項目の1つ以上のあらゆる可能性のある組み合わせ、および別の意味(「または」)で解釈される場合は組み合わせの欠損を表し、包有する。
【0027】
さらにまた本発明は、本発明の一部の実施形態において、本明細書中記載されるいずれかの特性または特性の組み合わせが排除または除外され得ることを企図している。
【0028】
さらに、用語「約」は、本発明の化合物または作用物質の量、用量、時間、温度などの測定可能な値を表す際に本明細書中で使用される場合、特定された量の±10%、±5%、±1%、±0.5%、またはさらには±0.1%の変分を包有することを意味する。
【0029】
用語「~から本質的になる」は、核酸、タンパク質、またはカプシドの構造に関連して本明細書中使用される場合、核酸、タンパク質、またはカプシドの構造が、核酸、タンパク質、またはカプシドの構造の目的の機能、たとえばタンパク質もしくはカプシド、または核酸によりコードされるタンパク質もしくはカプシドの指向性プロファイルを有意に(たとえば約1%超、5%超、または10%超)変える、記載される構成要素以外のいずれの構成要素も含まないことを意味する。
【0030】
本発明の文脈における用語「アデノ随伴ウイルス」(AAV)は、限定するものではないが、AAV1型、AAV2型、AAV3型(3A型および3B型を含む)、AAV4型、AAV5型、AAV6型、AAV7型、AAV8型、AAV9型、AAV10型、AAV11型、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、およびヒツジAAV、ならびに現在知られているかまたは後に発見される他のいずれかのAAVを含む。たとえば、BERNARD N. FIELDS et al., VIROLOGY, volume 2, chapter 69 (4th ed., Lippincott-Raven Publishers)を参照されたい。多くのさらなるAAV血清型およびクレードが同定されており(たとえばGao et al., (2004) J. Virol. 78:6381-6388および表1を参照)、これらもまた、用語「AAV」により包有されている。
【0031】
様々なAAVおよび自律性パルボウイルスのゲノム配列、ならびにITR、Repタンパク質、およびカプシドサブユニットの配列は、当該分野で知られている。このような配列は、文献、またはGenBank(登録商標)データベースなどの公共のデータベースで見出され得る。たとえばGenBank(登録商標)寄託番号NC 002077、NC 001401、NC 001729、NC 001863、NC 001829、NC 001862、NC 000883、NC 001701、NC 001510、AF063497、U89790、AF043303、AF028705、AF028704、J02275、J01901、J02275、X01457、AF288061、AH009962、AY028226、AY028223、NC 001358、NC 001540、AF513851、AF513852、AY530579、AY631965、AY631966を参照されたい;これら開示の全体は本明細書に組み込まれている。またたとえば、Srivistava et al., (1983) J. Virol. 45:555; Chiorini et al., (1998) J. Virol. 71:6823; Chiorini et al., (1999) J. Virol. 73:1309; Bantel-Schaal et al., (1999) J. Virol. 73:939; Xiao et al., (1999) J. Virol. 73:3994; Muramatsu et al., (1996) Virology 221:208; Shade et al., (1986) J. Virol. 58:921; Gao et al., (2002) Proc. Nat. Acad. Sci. USA 99:11854;国際特許公開公報第00/28061号、同第99/61601号、同第98/11244号;米国特許第6,156,303号を参照されたい;これら開示の全体は本明細書に組み込まれている。同様に表1を参照されたい。AAV1、AAV2、およびAAV3の末端反復配列の初期の記載は、Xiao, X., (1996), “Characterization of Adeno- associated virus (AAV) DNA replication and integration,” Ph.D. Dissertation, University of Pittsburgh, Pittsburgh, PAにより提供されている(この全体は本明細書に組み込まれている)。
【0032】
「キメラの」AAV核酸カプシドコード配列またはAAVカプシドタンパク質は、2つ以上のカプシド配列の一部を組み合わせたものである。「キメラの」AAVビリオンまたは粒子は、キメラのAAVカプシドタンパク質を含む。
【0033】
用語「指向性」は、本明細書中使用される場合、細胞もしくは組織種へのウイルスの優先的な侵入、および/または、特定の細胞もしくは組織種への侵入を促進する細胞表面との優先的な相互作用、ならびに任意選択で、好ましくは、その後の細胞におけるウイルスゲノムにより担持される配列の発現(たとえば転写、任意選択で翻訳)、たとえば組み換え型ウイルスでの異種性ヌクレオチド配列の発現を表す。当業者は、ウイルスゲノムからの異種性核酸配列の転写が、トランス作用性因子、たとえば誘導性プロモーターまたは他で制御される核酸配列に関するトランス作用性因子の非存在下では開始され得ないことを理解するものである。rAAVゲノムの場合、ウイルスゲノムからの遺伝子発現は、安定して統合されたプロウイルスおよび/または統合されていないエピソーム、ならびにウイルスの核酸が細胞の中で形成し得る他のいずれかの形態由来であり得る。
【表1】
【0034】
用語「指向性プロファイル」は、1つ以上の標的の細胞、組織、および/または臓器の形質導入のパターンを表す。合成AAVカプシドの代表例は、肝臓の細胞で効率的な形質導入ではあるが、他の臓器では低い形質導入のみを伴うことを特徴とする指向性プロファイルを有する。
【0035】
用語「肝細胞に特異的な」は、本明細書中使用される場合、in vivoで投与される際に、優先的に肝細胞へ形質導入し、肝臓の外側にある細胞への形質導入が最小限であるウイルス性ベクターを表す。一部の実施形態では、形質導入した細胞の少なくとも約80%が肝細胞であり、たとえば少なくとも約85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上が肝細胞である。
【0036】
用語「障害は、肝臓において産物を発現することにより処置可能である」は、本明細書中使用される場合、肝臓における産物(たとえばタンパク質またポリヌクレオチド)の発現が当該障害の有効な処置または予防を提供する、疾患、障害、または損傷を表す。
【0037】
本明細書中使用される場合、ウイルスベクター(たとえばAAVベクター)による細胞の「形質導入」は、核酸のウイルスベクターへの組み込みおよびその後のウイルスベクターを介した細胞内への輸送による、ベクターの細胞内への侵入および遺伝物質の細胞内への輸送を意味する。
【0038】
特段他の意味が記載されない限り、「効率的な形質導入」または「効率的な指向性」または同様の用語は、適切な陽性対照または陰性対照を参照することにより決定され得る(たとえば、それぞれ、陽性対照の少なくとも約50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、もしくはそれ以上の形質導入もしくは指向性、または陰性対照の少なくとも約110%、120%、150%、200%、300%、500%、1000%、もしくはそれ以上の形質導入もしくは指向性)。
【0039】
同様に、ウイルスが目的の組織に対して「効率的に形質導入しない」または「効率的な指向性を有さない」また同様の文言であるかどうかが、適切な対照を参照することにより決定され得る。特定の実施形態では、ウイルスベクターは、肝臓の外側の組織、たとえば筋肉、腎臓、生殖腺、および/または生殖細胞に効率的に形質導入しない(すなわちこれに対して効率的な指向性を有さない)。特定の実施形態では、組織(たとえば肝臓)の望ましくない形質導入は、20%以下、10%以下、5%以下、1%以下、0.1%以下のレベルの所望の標的組織(たとえば肝細胞)の形質導入である。
【0040】
本明細書中使用される場合、用語「ポリペプチド」は、他の記載がない限り、ペプチドおよびタンパク質の両方を包有する。
【0041】
「核酸」または「ヌクレオチド配列」は、ヌクレオチド塩基の配列であり、RNA、DNA、またはDNA-RNAハイブリッド配列(天然に存在するヌクレオチドおよび天然に存在しないヌクレオチドの両方を含む)であり得るが、好ましくは、一本鎖または二本鎖のDNA配列のいずれかである。
【0042】
本明細書中使用される場合、「単離された」核酸またはヌクレオチド配列(たとえば「単離されたDNA」または「単離されたRNA」)は、天然に存在する生物またはウイルスの他の構成要素の少なくとも一部、たとえば細胞もしくはウイルスの構造上の構成要素、または核酸もしくはヌクレオチド配列に関連して一般的に見出される他のポリペプチドもしくは核酸から分離されているかまたはこれを実質的に含まない核酸またはヌクレオチド配列を意味する。
【0043】
同様に、「単離された」ポリペプチドは、天然に存在する生物またはウイルスの他の構成要素の少なくとも一部、たとえば細胞もしくはウイルスの構造上の構成要素、またはポリペプチドに関連して一般的に見出される他のポリペプチドもしくは核酸から分離されているかまたはこれを実質的に含まないポリペプチドを意味する。
【0044】
用語「処置する(treat)」、「処置している(treating)」、または「~の処置(treatment of)」(または文法的に同等の用語)は、対象の病態の重症度を、低減、もしくは少なくとも部分的に改善もしくは寛解させること、ならびに/または少なくとも1つの臨床的症状のいくらかの軽減、緩和、もしくは減少が達成されること、ならびに/または病態の進行の遅延および/もしくは疾患もしくは障害の発症の予防もしくは遅延が存在することを意味する。
【0045】
本明細書中使用される場合、用語「~を予防する(prevent、prevents)」、または「予防(prevention)」(およびそれらの文法上の均等物)」は、疾患もしくは障害の発症の遅延、または疾患もしくは障害の発症後の症状の軽減を表す。これら用語は、疾患の完全な消失を暗示することを意味してはおらず、病態の頻度を低減させるかまたは病態の発症および/もしくは進行を遅延させるあらゆる種類の防止的処置を包有する。
【0046】
「有効」または「治療有効」量は、本明細書中使用される場合、対象に何らかの改善または利点を提供するために十分な量である。別の言い方をすると、「有効」または「治療有効」量は、対象に少なくとも1つの臨床上の症状のいくらかの軽減、緩和、または減少を提供する量である。当業者は、いくらかの利点が対象に提供される限りは、治療効果が完全または治癒的である必要はないことを理解するものである。
【0047】
「異種性ヌクレオチド配列」または「異種性核酸」は、ウイルスにおいて天然に存在しない配列である。全般的に、異種性核酸またはヌクレオチド配列は、ポリペプチドおよび/または翻訳されていないRNAをコードするオープンリーディングフレームを含む。
【0048】
「治療用ポリペプチド」は、細胞または対象におけるタンパク質の非存在または欠失からもたらされる症状を軽減または低減し得るポリペプチドであり得る。さらに、「治療用ポリペプチド」は、他の方法で対象に利点、たとえば抗がん作用または移植生存性の改善を提供するポリペプチドであり得る。
【0049】
本明細書中使用される場合、用語「ベクター」、「ウイルスベクター」、「送達ベクター」(および同様の用語)は、全般的に、核酸送達ビヒクルとして機能し、ビリオンの中にパッケージングされたウイルス性核酸(すなわちベクターゲノム)を含むウイルス粒子を表す。本発明に係るウイルスベクターは、本発明に係る合成AAVカプシドを含み、AAVもしくはrAAVゲノム、またはウイルス性核酸を含む他のいずれかの核酸をパッケージングし得る。あるいは、一部の文脈では、用語「ベクター」、「ウイルスベクター」、「送達ベクター」(および同様の用語)は、カプシドに繋留されているかまたはカプシドの中にパッケージングされている分子を送達するための輸送体として作用するビリオンおよび/またはウイルス性カプシドの非存在下での、ベクターゲノム(たとえばvDNA)を表すように使用され得る。
【0050】
「組み換え型AAVベクターゲノム」または「rAAVゲノム」は、少なくとも1つの末端逆位配列(たとえば1、2、または3つの末端逆位配列)および1つ以上の異種性ヌクレオチド配列を含むAAVゲノム(すなわちvDNA)である。rAAVベクターは、全般的に、ウイルスを作製するためにシスにて145塩基の末端反復(TR)を保持しているが;部分的または完全に合成の配列を含む修飾されたAAV TRおよび非AAV TRもまた、この目的に有用であり得る。他の全てのウイルス性配列は不要であり、トランスで供給され得る(Muzyczka, (1992) Curr. Topics Microbiol. Immunol. 158:97)。rAAVベクターは、任意に、2つのTR(たとえばAAV TR)を含み、これらは全般的に、異種性ヌクレオチド配列の5’末端および3’末端にあるが、近接している必要はない。TRは、互いに同じかまたは異なるものであり得る。またベクターゲノムは、その3’末端または5’末端に単一のITRを含み得る。
【0051】
用語「末端反復」または「TR」は、ヘアピン構造を形成し、末端逆位配列として機能する(すなわち複製、ウイルスのパッケージング、統合、および/またはプロウイルスの救出などの望ましい機能を媒介する)いずれかのウイルスの末端反復または合成配列を含む。TRは、AAV TRまたは非AAV TRであり得る。たとえば、非AAV TR配列、たとえば他のパルボウイルスの非AAV TR(たとえばイヌパルボウイルス(CPV)、マウスパルボウイルス(MVM)、ヒトパルボウイルスB-19)、またはSV40複製の起源として機能するSV40ヘアピンを、TRとして使用することができ、これは、トランケーション、置換、欠失、挿入、および/または付加によりさらに修飾され得る。さらにTRは、たとえばSamulskiらに対する米国特許第5,478,745号に記載される「二重D配列」などのように、部分的または完全に合成であり得る。
【0052】
「AAV末端反復」または「AAV TR」は、限定するものではないが、血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、もしくは11、または現在知られているかもしくは後に発見される他のいずれかのAAVを含むあらゆるAAV由来であり得る(たとえば表1を参照)。AAV末端反復は、末端反復が望ましい機能、たとえば複製、ウイルスのパッケージング、統合、および/またはプロウイルスの救出などを媒介する限り、ネイティブな末端反復配列を有する必要はない(たとえばネイティブなAAV TR配列は、挿入、欠失、トランケーション、および/またはミスセンス変異により変更され得る)。
【0053】
用語「rAAV粒子」および「rAAVビリオン」は、本明細書中互換可能に使用される。「rAAV粒子」または「rAAVビリオン」は、AAVカプシドの中にパッケージングされたrAAVベクターゲノムを含む。
【0054】
AAVカプシド構造は、BERNARD N. FIELDS et al., VIROLOGY, volume 2, chapters 69 & 70 (4th ed., Lippincott-Raven Publishers)に、より詳細に記載されている。
【0055】
特性を「実質的に保持する」は、当該特性(たとえば活性または他の測定可能な特徴)の少なくとも約75%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%が保持されていることを意味する。
【0056】
II.肝臓を標的とする合成AAVカプシド
本発明者らは、他の臓器での指向性が最小限である、in vivoおよびin vitroでヒトおよび他の哺乳類の肝細胞の形質導入を提供することができる合成AAVカプシド構造を同定した。よって、本発明の一態様は、対象、たとえば野生型の対象に肝臓への遺伝子導入を提供できる合成AAVカプシド構造に関する。特定の実施形態では、本発明は、AAVカプシドをコードする核酸であって、上記核酸が、(a)配列番号1~3のいずれか1つのヌクレオチド配列;または(b)配列番号4~6のいずれか1つをコードするヌクレオチド配列と少なくとも90%同一であるAAVカプシドコード配列を含むか、またはから本質的になるか、またはからなる、核酸;およびキメラのAAVカプシドを含むウイルスに関する。一部の実施形態では、AAVカプシドコード配列は、(a)または(b)のヌクレオチド配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または99.9%同一である。別の実施形態では、AAVカプシドコード配列は、(a)または(b)のヌクレオチド配列を含むか、またはから本質的になるか、またはからなる。
【0057】
配列番号4~6は、VP1カプシドタンパク質配列を示す。本発明の説明および添付の特許請求の範囲における全てのアミノ酸位の表記は、VP1のナンバリングに対応している。当業者は、AAVカプシドが一般により小さなVP2およびVP3のカプシドタンパク質をも含むことを理解するものである。AAVカプシドタンパク質のコード配列の重複のため、VP2およびVP3のカプシドタンパク質の核酸コード配列およびアミノ酸配列は、開示される配列に示されるVP1配列から明らかである。特に、VP2は、配列番号1のヌクレオチド412(acg)および配列番号4のスレオニン138で開始する。VP3は、配列番号1のヌクレオチド610(atg)および配列番号4のメチオニン204で開始する。特定の実施形態では、配列番号4~6由来の配列を含む単離されたVP2およびVP3のカプシドタンパク質ならびにVP2またはVP3タンパク質をコードする単離された核酸、またはその両方が、企図されている。
【0058】
また本発明は、合成AAVカプシドタンパク質および合成カプシドを提供し、上記カプシドは、配列番号4~6のいずれか1つと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むか、から本質的になるか、またはからなる。一部の実施形態では、AAVカプシド配列は、配列番号4~6のいずれか1つと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または99.9%同一である。一部の実施形態では、カプシドタンパク質は、配列番号4~6に示されるアミノ酸配列を含むか、から本質的になるか、またはからなり、配列番号4~6のカプシドタンパク質コード配列の中の1、2以下、3以下、4以下、5以下、6以下、7以下、8以下、9以下、10以下、12以下、15以下、20以下、25以下、30以下、40以下、または50以下のアミノ酸が、別のアミノ酸(天然に存在するアミノ酸、修飾されているアミノ酸、および/または合成のアミノ酸)により、任意選択で保存的アミノ酸置換により置換されており、かつ/または、欠失されており、かつ/または1、2以下、3以下、4以下、5以下、6以下、7以下、8以下、9以下、10以下、12以下、15以下、20以下、25以下、30以下、40以下、または50以下のアミノ酸の挿入(N末端伸長およびC末端伸長を含む)、または置換、欠失、および/もしくは挿入のいずれかの組み合わせが存在し、置換、欠失、および/または挿入が、バリアントカプシドタンパク質またはカプシドを含むビリオン(たとえばAAVビリオン)の構造および/または機能を過度に損なわない。一部の実施形態では、配列番号4~6のカプシドタンパク質コード配列の中のアミノ酸は、220位および/または643位(配列番号4に対してナンバリング)で別のアミノ酸により置換されている。たとえば、本発明の代表的な実施形態では、合成カプシドタンパク質を含むAAVビリオンは、配列番号4~6に示される合成カプシドタンパク質を含む合成ビリオンの少なくとも1つの特性を実質的に保持する。たとえば、合成カプシドタンパク質を含むビリオンは、配列番号4~6に示される合成AAVカプシドタンパク質を含むビリオンの肝臓指向性プロファイルを実質的に保持し得る。ウイルスの形質導入などの生物学的な特性を評価する方法は、当該分野で十分に知られている(たとえば実施例参照)。
【0059】
保存的アミノ酸置換は、当該分野で知られている。特定の実施形態では、保存的アミノ酸置換は、以下の群:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸;アスパラギン、グルタミン;セリン、スレオニン;リジン、アルギニン;および/またはフェニルアラニン、チロシンのうちの1つ以上の中の置換を含む。
【0060】
配列番号4~6のキメラのAAVカプシドタンパク質のアミノ酸配列が、所望の特性を提供するために当該分野で知られている他の修飾を組み込むようにさらに修飾され得ることは、当業者に明らかである。非限定的な可能性として、カプシドタンパク質は、標的化配列(たとえばRGD)または精製および/もしくは検出を容易にする配列を組み込むように修飾され得る。たとえば、カプシドタンパク質は、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、マルトース結合タンパク質、ヘパリン/ヘパラン硫酸結合ドメイン、ポリ-His、リガンドおよび/またはレポータータンパク質(たとえば緑色蛍光タンパク質、β-グルクロニダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼなど)、イムノグロブリンFcフラグメント、一本鎖抗体、ヘマグルチニン、c-myc、FLAGエピトープなどの全てまたは一部に融合して融合タンパク質を形成することができる。標的化ペプチドをAAVカプシドの中に挿入する方法は、当該分野で知られている(たとえば国際特許公開公報第00/28004号;Nicklin et al., (2001) Mol. Ther. 474-181; White et al., (2004) Circulation 109:513-319; Muller et al., (2003) Nature Biotech. 21:1040-1046参照)。
【0061】
本発明のウイルスは、国際特許公開公報第01/92551号および米国特許第7,465,583号に記載されるように二本鎖のウイルスゲノムをさらに含み得る。
【0062】
また本発明は、本発明の合成AAVカプシドタンパク質を含むAAVカプシド、およびベクターゲノム、任意選択でAAVベクターゲノムをパッケージング(すなわちカプシドに包有)している、同カプシドを含むウイルス粒子(すなわちビリオン)を提供する。特定の実施形態では、本発明は、本発明のAAVカプシドタンパク質を含むAAVカプシドを含むAAV粒子を提供し、ここでAAVカプシドは、AAVベクターゲノムをパッケージングする。また本発明は、本発明の合成核酸カプシドコード配列によりコードされるAAVカプシドまたはAAVカプシドタンパク質を含むAAV粒子を提供する。
【0063】
特定の実施形態では、ビリオンは、たとえば細胞への送達のための、目的の異種性核酸を含む組み換え型ベクターである。よって本発明は、in vitro、ex vivo、およびin vivoの細胞への核酸の送達に有用である。代表的な実施形態では、本発明の組み換え型ベクターは、好適には、動物(たとえば哺乳類)細胞へ核酸を送達または輸送するために使用され得る。
【0064】
いずれの異種性ヌクレオチド配列もが、本発明のウイルスベクターにより送達され得る。目的の核酸は、ポリペプチド、任意選択で治療用(たとえば医療的または獣医学的な使用のため)および/または免疫原性(たとえばワクチンのため)のポリペプチドをコードする核酸を含む。
【0065】
治療用ポリペプチドとして、限定するものではないが、CFTR(cystic fibrosis transmembrane regulator)タンパク質、ジストロフィン(ジストロフィンのミニ遺伝子またはマイクロ遺伝子のタンパク質産物を含む、たとえばVincent et al., (1993) Nature Genetics 5:130;米国特許公開公報第2003017131号;Wang et al., (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:13714-9[ミニジストロフィン];Harper et al., (2002) Nature Med. 8:253-61[マイクロジストロフィン]を参照);ミニアグリン、ラミニン-α2、サルコグリカン(α、β、γ、またはδ)、フクチン関連タンパク質、ミオスタチンプロペプチド、フォリスタチン、ドミナントネガティブ型ミオスタチン、血管新生因子(たとえばVEGF、アンジオポエチン-1または2)、抗アポトーシス因子(たとえばヘム酸素添加酵素-1、TGF-β、アポトーシス促進性シグナルの阻害剤、たとえばカスパーゼ、プロテアーゼ、キナーゼ、細胞死受容体[たとえばCD-095]、チトクロムC放出の修飾因子、ミトコンドリアのポアの開口および膨化の阻害剤);アクチビンII型可溶性受容体、抗炎症性ポリペプチド、たとえばIkappa B優性突然変異体、サルコスパン(sarcospan)、ユートロフィン、ミニ-ユートロフィン、ミオスタチンまたはミオスタチンプロペプチドに対する抗体または抗体フラグメント、細胞周期修飾因子、Rhoキナーゼ修飾因子、たとえばCethrin(修飾された細菌性C3細胞外酵素[BioAxone Therapeutics, Inc.、Saint-Lauren、Quebec、Canadaから入手可能])、BCL-xL、BCL2、XIAP、FLICEc-s、ドミナントネガティブ型カスパーゼ-8、ドミナントネガティブ型カスパーゼ-9、SPI-6(たとえば米国特許公開公報第20070026076号参照)、転写因子PGC-α1、Pinch遺伝子、ILK遺伝子およびサイモシンβ4遺伝子)、凝固因子(たとえば第VIII因子、第IX因子、第X因子など)、エリスロポエチン、アンジオスタチン、エンドスタチン、カタラーゼ、チロシンヒドロキシラーゼ、細胞内および/または細胞外スーパーオキシドジスムターゼ、レプチン、LDL受容体、ネプリライシン、リポタンパク質リパーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ、β-グロビン、α-グロビン、スペクトリン、α-アンチトリプシン、メチルシトシン結合タンパク質2、アデノシンデアミナーゼ、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、β-グルコセレブロシダーゼ、スフィンゴミエリナーゼ、リソソームヘキソサミニダーゼA、分岐鎖ケト酸デヒドロゲナーゼ、RP65タンパク質、サイトカイン(たとえばα-インターフェロン、β-インターフェロン、インターフェロン-γ、インターロイキン-1~14、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、リンホトキシンなど)、ペプチド増殖因子、神経栄養因子およびホルモン(たとえばソマトトロピン、インスリン、IGF-1およびIGF-2を含むインスリン様増殖因子、GLP-1、血小板由来増殖因子、上皮増殖因子、線維芽細胞増殖因子、神経成長因子、神経栄養因子3および4、脳由来神経栄養因子、グリア細胞由来増殖因子、トランスフォーミング増殖因子αおよびβなど)、骨形成タンパク質(RANKLおよびVEGFを含む)、リソソームタンパク質、グルタミン酸受容体、リンホカイン、可溶性CD4、Fc受容体、T細胞受容体、ApoE、ApoC、プロテインホスファターゼ阻害剤1(I-1)の阻害剤1、ホスホランバン、serca2a、リソソーム酸α-グルコシダーゼ、α-ガラクトシダーゼA、Barkct、β2-アドレナリン受容体、β2-アドレナリン受容体キナーゼ(BARK)、ホスホイノシチド-3キナーゼ(PI3キナーゼ)、カルサシン(calsarcin)、受容体(たとえば腫瘍壊死増殖因子-α可溶性受容体)、抗炎症性因子、たとえばIRAP、Pim-1、PGC-1α、SOD-1、SOD-2、ECF-SOD、カリクレイン、サイモシン-β4、低酸素応答性転写因子[HIF]、血管新生因子、S100A1、パルブアルブミン、アデニリルシクラーゼ6型、Gタンパク質共役受容体キナーゼ2型のノックダウンに作用する分子、たとえば切断された常時活性型のbARKct;ホスホランバン阻害性またはドミナントネガティブ型の分子、たとえばホスホランバンS16E、モノクローナル抗体(一本鎖モノクローナル抗体を含む)または自殺遺伝子の産物(たとえばチミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼ、ジフテリア毒素、および腫瘍壊死因子、たとえばTNF-α)、ならびにそれを必要とする対象において治療効果を有する他のポリペプチドが挙げられる。
【0066】
ポリペプチドをコードする異種性ヌクレオチド配列は、レポーターポリペプチド(たとえば酵素)をコードするヌクレオチド配列を含む。レポーターポリペプチドは、当該分野で知られており、限定するものではないが、蛍光タンパク質(たとえばEGFP、GFP、RFP、BFP、YFP、またはdsRED2)、検出可能な産物を産生する酵素、たとえばルシフェラーゼ(たとえばGaussia、Renilla、またはPhotinus由来)、β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ、アルカリホスファターゼ、およびクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼの遺伝子、または直接検出され得るタンパク質を含む。実質的に全てのタンパク質が、たとえば、タンパク質に特異的な抗体を使用することにより直接検出され得る。真核細胞のポジティブセレクションまたはネガティブセレクションのいずれかに適したさらなるマーカー(および関連する抗生物質)が、定期的な更新を含むSambrook and Russell (2001), Molecular Cloning, 3rd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.、およびAusubel et al. (1992), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sonに開示されている。
【0067】
あるいは、異種性核酸は、機能的なRNA、たとえばアンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム(たとえば米国特許第5,877,022号に記載)、スプライソソームが介在するトランススプライシングに作用するRNA(Puttaraju et al., (1999) Nature Biotech. 17:246;米国特許第6,013,487号;米国特許第6,083,702号を参照)、遺伝子サイレンシングを媒介する低分子干渉RNA(siRNA)を含む干渉RNA(RNAi)(Sharp et al., (2000) Science 287:2431参照)、マイクロRNA、または他の翻訳されていない「機能的な」RNA、たとえば「ガイド」RNA(Gorman et al., (1998) Proc. Nat. Acad. Sci. USA 95:4929;Yuanらに対する米国特許第5,869,248号)などをコードし得る。例示的な翻訳されないRNAとして、多剤耐性(MDR)遺伝子産物に対するRNAiもしくはアンチセンスRNA(たとえば腫瘍を処置するためおよび/もしくは化学療法による損傷を予防するために心臓へ投与するため)、ミオスタチンに対するRNAiもしくはアンチセンスRNA(Duchenne型もしくはBecker型の筋ジストロフィー)、VEGFもしくは限定するものではないが本明細書中特に記載される腫瘍免疫原を含む腫瘍免疫原に対するRNAiもしくはアンチセンスRNA(腫瘍を処置するため)、変異型ジストロフィンを標的化するRNAiもしくはアンチセンスオリゴヌクレオチド(Duchenne型もしくはBecker型の筋ジストロフィー)、B型肝炎表面抗原遺伝子に対するRNAiもしくはアンチセンスRNA(B型肝炎感染を予防および/もしくは処置するため)、HIV tatおよび/もしくはrev遺伝子に対するRNAiもしくはアンチセンスRNA(HIVを予防および/もしくは処置するため)、ならびに/または病原由来の他のいずれかの免疫原(対象を病原から保護するため)もしくは欠損遺伝子産物(疾患を処置または予防するため)に対するRNAiまたはアンチセンスRNAが挙げられる。上述の標的または他のいずれかの標的に対するRNAiまたはアンチセンスRNAはまた、研究試薬として使用され得る。
【0068】
当該分野で知られているように、アンチセンス核酸(たとえばDNAまたはRNA)および阻害性RNA(たとえばマイクロRNAおよびRNAi、たとえばsiRNAまたはshRNA)配列は、ジストロフィン遺伝子の欠損から生じる筋ジストロフィーを有する患者に「エキソンスキッピング」を誘導するために使用され得る。よって、異種性核酸は、適切なエキソンスキッピングを誘導するアンチセンス核酸または阻害性RNAをコードし得る。当業者は、エキソンスキッピングに対する特定の手法が、根底にあるジストロフィン遺伝子の欠損の性質に応じて変化することを理解しており、多くのこのような戦略は、当該分野で知られている。例示的なアンチセンス核酸および阻害性RNA配列は、1つ以上のジストロフィンエクソン(たとえばエクソン19または23)の上流の分岐点および/または下流のドナースプライス部位および/または内部のスプライシングエンハーサー配列を標的とする。たとえば、特定の実施形態では、異種性核酸は、ジストロフィン遺伝子のエクソン19または23の上流の分岐点および下流のスプライスドナー部位に対するアンチセンス核酸または阻害性RNAをコードする。このような配列は、修飾されたU7 snRNAおよびアンチセンス核酸または阻害性RNAを送達するAAVベクターに組み込まれ得る(たとえば、Goyenvalle et al., (2004) Science 306:1796-1799を参照)。別の戦略として、修飾されたU1 snRNAは、ジストロフィンのエクソン(たとえばエクソン19または23)の上流および下流のスプライス部位に相補的なsiRNA、マイクロRNA、またはアンチセンスRNAと共に、AAVベクターに組み込まれ得る(たとえば、Denti et al., (2006) Proc. Nat. Acad. Sci. USA 103:3758-3763を参照)。さらに、アンチセンス核酸および阻害性RNAは、エクソン19、43、45、または53の中のスプライシングエンハーサー配列を標的化し得る(たとえば米国特許第6,653,467号;米国特許第6,727,355号;および米国特許第6,653,466号を参照)。
【0069】
リボザイムは、部位特異的な形式で核酸を切断するRNA-タンパク質複合体である。リボザイムは、エンドヌクレアーゼ活性を有する特異的な触媒ドメインを有する(Kim et al., (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:8788; Gerlach et al., (1987) Nature 328:802; Forster and Symons, (1987) Cell 49:211)。たとえば、多数のリボザイムは、高い度合いの特異性でリン酸エステル伝達反応を促進し、多くの場合、オリゴヌクレオチド基質にあるいくつかのリン酸エステルのうちの1つのみを切断する(Michel and Westhof, (1990) J. Mol. Biol. 216:585; Reinhold-Hurek and Shub, (1992) Nature 357:173)。この特異性は、基質が化学反応の前のリボザイムの「IGS(内部ガイド配列:internal guide sequence)」に対する特異的な塩基対の相互作用を介して結合する必要条件に起因している。
【0070】
リボザイムの触媒作用は主に、核酸を含む配列特異的な切断/ライゲーション反応の一部として観察されている(Joyce, (1989) Nature 338:217)。たとえば、米国特許第5,354,855号は、特定のリボザイムが、既知のリボヌクレアーゼより高く、DNA制限酵素の特異性に近い配列特異性のエンドヌクレアーゼとして作用し得ることを報告している。よって、配列特異的なリボザイムが介在する核酸発現の阻害は、治療上の適用に特に適切であり得る(Scanlon et al., (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:10591; Sarver et al., (1990) Science 247:1222; Sioud et al., (1992) J. Mol. Biol. 223:831)。
【0071】
マイクロRNA(mir)は、mRNAの安定性を制御することにより複数の遺伝子の発現を調節し得る天然の細胞のRNA分子である。特定のマイクロRNAの過剰発現または減少は、機能不全を処置するために使用でき、多くの疾患状態および動物モデルの疾患に有効であることが示されている(たとえば、Couzin, (2008) Science 319:1782-4を参照)。キメラ性AAVは、遺伝性疾患および後天性疾患の処置のため細胞、組織、および対象の中にマイクロRNAを送達するため、または特定の組織の機能性を高め、成長を促進させるために、使用され得る。たとえば、mir-1、mir-133、mir-206、および/またはmir-208は、心筋または骨格筋の疾患を処置するために使用され得る(たとえばChen et al., (2006) Genet. 38:228-33; van Rooij et al., (2008) Trends Genet. 24:159-66を参照)。またマイクロRNAは、遺伝子送達後の免疫系を調節するために使用され得る(Brown et al., (2007) Blood 110:4144-52)。
【0072】
用語「アンチセンスオリゴヌクレオチド」(「アンチセンスRNA」を含む)は、本明細書中使用される場合、特定したDNAまたはRNA配列に相補的であり、これに対し特異的にハイブリダイズする核酸を表す。アンチセンスオリゴヌクレオチドおよび同オリゴヌクレオチドをコードする核酸は、従来の技術にしたがい作製され得る。たとえば、Tullisに対する米国特許第5,023,243号;Pedersonらに対する米国特許第5,149,797号を参照されたい。
【0073】
当業者は、配列類似性の度合いが、アンチセンスヌクレオチド配列にとって、(上記に定義されるように)その標的に対して特異的にハイブリダイズし、(たとえば少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれ以上)タンパク質産物の産生を低減するために十分である限り、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的配列と完全に相補的である必要はないことを理解するものである。
【0074】
ハイブリダイゼーションの特異性を決定するために、標的配列に対する当該オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションは、低いストリンジェンシー、中程度のストリンジェンシー、またはさらにはストリンジェントな条件下で行われ得る。低い、中程度、およびストリンジェントなハイブリダイゼーションの条件を達成するために適切な条件は、本明細書中に記載されている。
【0075】
別の言い方では、特定の実施形態では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的配列の補体と少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、またはそれよりも高い配列同一性を有し、(上記に定義されるように)タンパク質産物の産生を低減する。一部の実施形態では、アンチセンス配列は、標的配列と比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10のミスマッチを含む。
【0076】
核酸配列のパーセント同一性を決定する方法は、本明細書中の他の箇所でより詳細に記載されている。
【0077】
アンチセンスオリゴヌクレオチドの長さは、意図した標的に対して特異的にハイブリダイズし、(上記に定義されるように)タンパク質産物の産生を低減し、規定の手法により決定され得る限り、重要ではない。一般的に、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも約8、10、または12、または15ヌクレオチド長、および/または約20、30、40、50、60、70、80、100、または150未満のヌクレオチド長である。
【0078】
RNA干渉(RNAi)は、タンパク質産物の産生を低減するための別の有用な手法である(たとえばshRNAまたはsiRNA)。RNAiは、目的の標的配列に対応する二本鎖RNA(dsRNA)が、細胞または生物に導入され、対応するmRNAの分解をもたらす、転写後遺伝子サイレンシングの機構である。RNAが遺伝子サイレンシングを達成する機構は、Sharp et al., (2001) Genes Dev 15: 485-490;およびHammond et al., (2001) Nature Rev. Gen. 2:110-119)で論評されている。RNAiの作用は、遺伝子発現が回復される前の複数の細胞分裂の間持続する。よってRNAiは、RNAレベルで目的のノックアウトまたは「ノックダウン」を作製するための有力な方法である。RNAiは、ヒト胚腎細胞およびHeLa細胞を含むヒト細胞で成功することが証明されている(たとえばElbashir et al., Nature (2001) 411:494-8を参照)。
【0079】
哺乳類細胞でRNAiを使用するための最初の試みは、dsRNA分子に応答するPKRに関与する抗ウイルス性の防御機構をもたらした(たとえばGil et al., (2000) Apoptosis 5:107を参照)。その後、siRNA(「short interfering RNA」)として知られている約21ヌクレオチドの短い合成dsRNAが、抗ウイルス応答をもたらすことなく哺乳類細胞でサイレンシングを媒介し得ることが示されている(たとえばElbashir et al., Nature (2001) 411:494-8; Caplen et al., (2001) Proc. Nat. Acad. Sci. USA 98:9742を参照)。
【0080】
RNAi分子(siRNA分子を含む)は、RNase III様の酵素ダイサーの作用により細胞で20-25mer siRNA分子へと処理されると考えられる、短いヘアピンRNA(shRNA、Paddison et al., (2002), Proc. Nat. Acad. Sci. USA 99:1443-1448を参照)であり得る。shRNAは、全般的に、2つの逆方向反復配列がループアウトする短いスペーサー配列により分けられるステムループ構造を有する。3~23ヌクレオチド長の範囲のループを有するshRNAの報告がなされている。ループ配列は、一般に重要ではない。例示的なループ配列として、以下のモチーフ:AUG、CCC、UUCG、CCACC、CTCGAG、AAGCUU、CCACACC、およびUUCAAGAGAが挙げられる。
【0081】
RNAiは、センス領域とアンチセンス領域との間にdsRNA形成した後に「ダンベル」状の構造を形成するための両側の2つのループ領域を有するセンス領域およびアンチセンス領域を含む円形の分子をさらに含み得る。この分子は、dsRNAの一部、たとえばsiRNAを放出するようにin vitroまたはin vivoで処理され得る。
【0082】
国際特許公開公報第01/77350号は、真核細胞において異種性配列のセンス転写物およびアンチセンス転写物の両方を作製するための二方向転写用のベクターを記載する。この技術は、本発明に係る使用のためのRNAiを作製するために使用され得る。
【0083】
Shinagawa et al., (2003) Genes Dev. 17:1340は、CMVプロモーター(pol IIプロモーター)から長いdsRNAを発現する方法を報告しており、この方法はまた、組織特異的なpol IIプロモーターにも適用可能である。同様に、Xia et al., (2002) Nature Biotech. 20:1006の手法は、ポリ(A)テーリングを回避し、組織特異的なプロモーターと関連させて使用され得る。
【0084】
RNAiを作製する方法として、化学合成、in vitroでの転写、ダイサーによる長いdsRNAの消化(in vitroまたはin vivo)、送達ベクターからのin vivoでの発現、およびPCR由来のRNAi発現カセットからのin vivoでの発現(たとえばTechNotes 10(3) “Five Ways to Produce siRNAs,” from Ambion, Inc., Austin TXを参照)が挙げられる。
【0085】
siRNA分子を設計するためのガイドラインが、利用可能である(たとえばAmbion, Inc., Austin TXからの文献を参照)。特定の実施形態では、siRNA配列は、約30~50%のG/C含有量を有する。さらに、RNAポリメラーゼIIIがRNAを転写するために使用される場合、一般に4超のTまたはA残基の長い伸長が回避される。オンラインのsiRNA標的ファインダー(target finder)が、たとえばWhitehead Institute of Biomedical Researchを介してAmbion, Incから、またはDharmacon Research, Inc.から利用可能である。
【0086】
RNAi分子のアンチセンス領域は、標的配列と完全に相補的であり得るが、(上記に定義されるように)標的配列に対し特異的にハイブリダイズし、(たとえば少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれ以上)タンパク質産物の産生を低減する限りは、完全に相補的である必要はない。一部の実施形態では、このような標的配列に対するオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションは、上記に定義されるように、低いストリンジェンシー、中程度のストリンジェンシー、またはさらにはストリンジェントな条件下で行われ得る。
【0087】
他の実施形態では、RNAiのアンチセンス領域は、標的配列の補体と少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、またはそれ以上高い配列同一性を有し、(たとえば少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれ以上)、タンパク質産物の産生を低減する。一部の実施形態では、アンチセンス領域は、標的配列と比較して1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10のミスマッチを含む。全般的にミスマッチは、dsRNAの中心部分よりは末端に良好に許容される。
【0088】
特定の実施形態では、RNAiは、2つの別々のセンス分子およびアンチセンス分子の間の分子間で複合体形成することにより形成される。RNAiは、2つの別々の鎖の間で分子間において塩基対形成することにより形成されるds領域を含む。他の実施形態では、RNAiは、通常逆方向反復(たとえばshRNAまたは他のステムループ構造、または環状RNAi分子)として、センス領域およびアンチセンス領域の両方を含む単一の核酸分子の中で分子内において塩基対形成を行うことにより形成されるds領域を含む。RNAiは、センス領域およびアンチセンス領域の間にスペーサー領域をさらに含み得る。
【0089】
全般的に、RNAi分子は、著しく選択的である。必要に応じて、当業者は、たとえばBLAST(www.ncbi.nlm.nih.gov/BLASTで利用可能)を使用して、他の既知の配列と実質的な配列相同性を有さないRNAi配列を同定するため関連するデータベースを検索することにより標的以外の核酸の発現と干渉する可能性がある候補RNAiを容易に排除し得る。
【0090】
RNAiの作製のためのキットは、たとえばNew England Biolabs, Inc.およびAmbion, Incから市販されている。
【0091】
組み換え型ウイルスベクターはまた、宿主の染色体上のある位置と相同性を共有し、再結合する異種性ヌクレオチド配列をも含み得る。この手法は、宿主細胞の遺伝子的欠陥を補正するために利用され得る。
【0092】
また本発明は、たとえばワクチン投与のための、免疫原性ポリペプチドを発現する組み換え型ウイルスベクターを提供する。異種性核酸は、限定するものではないが、ヒト免疫不全ウイルス、インフルエンザウイルス、gagタンパク質、腫瘍抗原、がん抗原、細菌抗原、ウイルス抗原などに由来する免疫原を含む、当該分野で知られている目的のいずれかの免疫原をコードし得る。あるいは、免疫原は、ウイルスのカプシドに提示され得(たとえばその中に組み込まれ得)るか、または(たとえば共有結合的な修飾により)ウイルスカプシドに繋留され得る。
【0093】
ワクチンとしてのパルボウイルスの使用は、当該分野で知られている(たとえば、Miyamura et al., (1994) Proc. Nat. Acad. Sci. USA 91:8507;Youngらに対する米国特許第5,916,563号、Mazzaraらに対する同第5,905,040号、Samulskiらに対する米国特許第5,882,652号、米国特許第5,863,541号を参照;これら開示の全体は、参照により本明細書に組み込まれている)。この抗原は、ウイルスのカプシドに提示され得る。あるいは、抗原は、組み換え型ベクターゲノムの中に導入される異種性核酸から発現され得る。
【0094】
免疫原性ポリペプチドまたは免疫原は、限定するものではないが、微生物、細菌、原生動物、寄生虫、真菌、およびウイルスによる疾患を含む疾患から対象を保護するために適切ないずれかのポリペプチドであり得る。たとえば、免疫原は、オルソミクソウイルス免疫原(たとえばインフルエンザウイルス免疫原、たとえばインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)表面タンパク質、またはインフルエンザウイルスヌクレオプロテインの遺伝子、またはウマインフルエンザウイルス免疫原)、またはレンチウイルス免疫原(たとえば、ウマ感染性貧血ウイルス免疫原、サル免疫不全ウイルス(SIV)免疫原、またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)免疫原、たとえばHIVまたはSIVエンベロープGP160タンパク質、HIVまたはSIVマトリックス/カプシドタンパク質、およびHIVまたはSIV gag、pol、およびenv遺伝子産物)であり得る。また免疫原は、アレナウイルス免疫原(たとえばラッサ熱ウイルス免疫原、たとえばラッサ熱ウイルスヌクレオカプシドタンパク質遺伝子およびラッサ熱ウイルスエンベロープ糖タンパク質遺伝子)、ポックスウイルス免疫原(たとえばワクシニア、たとえばワクシニアL1またはL8遺伝子)、フラビウイルス免疫原(たとえば黄熱病ウイルス免疫原または日本脳炎ウイルス免疫原)、フィロウイルス免疫原(たとえばエボラウイルス免疫原、またはマールブルグウイルス免疫原、たとえばNPおよびGP遺伝子)、ブニヤウイルス免疫原(たとえばRVFVウイルス、CCHFウイルス、およびSFSウイルス)、またはコロナウイルス免疫原(たとえば感染性ヒトコロナウイルス免疫原、たとえばヒトコロナウイルスエンベロープ糖タンパク質遺伝子、またはブタ伝染性胃腸炎ウイルス免疫原、またはトリ感染性気管支炎ウイルス免疫原、または重症急性呼吸器症候群(SARS)免疫原、たとえばS[S1またはS2]、M、E、またはNタンパク質、またはそれらの免疫原性フラグメント)であり得る。さらに免疫原は、ポリオの免疫原、ヘルペスの免疫原(たとえばCMV、EBV、HSV免疫原)流行性耳下腺炎の免疫原、麻疹の免疫原、風疹の免疫原、ジフテリア毒素または他のジフテリアの免疫原、百日咳抗原、肝炎(たとえばA型肝炎、B型肝炎、またはC型肝炎)免疫原、または当該分野で知られている他のいずれかのワクチン免疫原であり得る。
【0095】
あるいは、免疫原は、腫瘍またはがん細胞の抗原であり得る。任意選択で、腫瘍またはがんの抗原は、がん細胞の表面で発現される。例示的ながんおよび腫瘍細胞の抗原は、S.A. Rosenberg, (1999) Immunity 10:281)に記載されている。例示的ながんおよび腫瘍の抗原として、限定するものではないが、BRCA1遺伝子産物、BRCA2遺伝子産物、gp100、チロシナーゼ、GAGE-1/2、BAGE、RAGE、NY-ESO-1、CDK-4、β-カテニン、MUM-1、カスパーゼ-8、KIAA0205、HPVE、SART-1、PRAME、p15、メラノーマ腫瘍抗原(Kawakami et al., (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3515; Kawakami et al., (1994) J. Exp. Med., 180:347; Kawakami et al., (1994) Cancer Res. 54:3124)(MART-1(Coulie et al., (1991) J. Exp. Med. 180:35)、gp100(Wick et al., (1988) J. Cutan. Pathol. 4:201)、およびMAGE抗原(MAGE-1、MAGE-2、およびMAGE-3)(Van der Bruggen et al., (1991) Science, 254:1643)、CEA、TRP-1;TRP-2を含む);P-15およびチロシナーゼ(Brichard et al., (1993) J. Exp. Med. 178:489);HER-2/neu遺伝子産物(米国特許第4,968,603号);CA 125;HE4;LK26;FB5(endosialin);TAG 72;AFP;CA19-9;NSE;DU-PAN-2;CA50;Span-1;CA72-4;HCG;STN(シアリルTn抗原);c-erbB-2タンパク質;PSA;L-CanAg;エストロゲン受容体;乳脂グロブリン;p53腫瘍抑制タンパク質(Levine, (1993) Ann. Rev. Biochem. 62:623);ムチン抗原(国際特許公開公報第90/05142号);テロメラーゼ;核マトリックスタンパク質;前立腺酸性ホスファターゼ;パピローマウイルス抗原;以下のがん:メラノーマ、腺癌、胸腺腫、肉腫、肺がん、肝臓がん、結腸直腸がん、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、白血病、子宮がん、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頸がん、膀胱がん、腎臓がん、膵がん、脳がん、腎臓がん、胃がん、食道がん、頭頸部がんに関連する抗原、ならびにその他の抗原(たとえば、Rosenberg, (1996) Annu. Rev. Med. 47:481-91を参照)が挙げられる。
【0096】
あるいは、異種性ヌクレオチド配列は、望ましくはin vitro、ex vivo、またはin vivoの細胞で産生されるいずれかのポリペプチドをコードし得る。たとえば、ウイルスベクターは、培養した細胞へ導入され、それらからタンパク質産物が発現され、単離され得る。
【0097】
目的の異種性核酸が、適切な制御配列と作動可能に結合し得ることは、当業者により理解されている。たとえば、異種性核酸は、転写/翻訳制御シグナル、複製起点、ポリアデニル化シグナル、配列内リボソーム進入部位(IRES)、プロモーター、エンハーサーなどの発現制御エレメントと作動可能に結合し得る。
【0098】
当業者は、様々なプロモーター/エンハーサーエレメントが、望ましいレベルおよび組織特異的な発現に応じて使用され得ることをさらに理解するものである。プロモーター/エンハーサーは、望ましい発現パターンに応じて構成的(constitutive)または誘導性(inducible)であり得る。プロモーター/エンハーサーは、ネイティブまたは外来性であり得、天然または合成の配列であり得る。外来性は、転写開始領域が、転写開始領域が導入される野生型の宿主で見出されないことを意図している。
【0099】
プロモーター/エンハーサーエレメントは、処置される標的の細胞もしくは対象に対してネイティブであり得、および/または異種性核酸配列に対してネイティブであり得る。プロモーター/エンハーサーエレメントは、全般的に、目的の標的細胞で機能するように選択される。代表的な実施形態では、プロモーター/エンハーサーエレメントは、哺乳類のプロモーター/エンハーサーエレメントである。プロモーター/エンハーサーエレメントは、RNAポリメラーゼIIベースのプロモーターまたはRNAポリメラーゼIIIベースのプロモーターであり得る。プロモーター/エンハーサーエレメントは、構成的または誘導性であり得る。
【0100】
誘導性発現制御エレメントは、一般に、異種性核酸配列の発現にわたり制御を提供することが望ましい適用で使用される。遺伝子送達用の誘導性プロモーター/エンハーサーエレメントは、組織特異的または組織優先的なプロモーター/エンハーサーエレメントであり得、筋肉(心筋、骨格筋、および/または平滑筋を含む)に特異的または優先的、神経組織に特異的または優先的(脳に特異的なものを含む)、眼(網膜に特異的または角膜に特異的なものを含む)、肝臓に特異的または優先的、骨髄に特異的または優先的、膵臓に特異的または優先的、脾臓に特異的または優先的、および肺に特異的または優先的なプロモーター/エンハーサーエレメントを含み得る。一実施形態では、肝細胞に特異的または肝細胞に優先的なプロモーターが使用される。肝細胞に特異的または優先的なプロモーターの例として、限定するものではないが、アポリポタンパク質AII、アルブミン、α1-アンチトリプシン、チロキシン結合グロブリン、チトクロムP450 CYP3A4、またはマイクロRNA122もしくは合成の肝臓に特異的な制御配列が挙げられる。肝細胞に特異的または優先的なプロモーターの使用は、異種性核酸の肝臓への発現をさらに限定することにより合成AAVベクターにより達成される特異性を増大し得る。他の誘導性プロモーター/エンハーサーエレメントは、ホルモン誘導性および金属誘導性のエレメントを含む。例示的な誘導性プロモーター/エンハーサーエレメントとして、限定するものではないが、Tet on/offエレメント、RU486誘導性プロモーター、エクジソン誘導性プロモーター、ラパマイシン誘導性プロモーター、およびメタロチオネインプロモーターが挙げられる。
【0101】
異種性核酸配列が標的細胞において転写され、次に翻訳される実施形態では、全般的に、挿入されるタンパク質コード配列の効率的な翻訳に特異的な開始シグナルが使用される。ATG開始コドンおよび隣接する配列を含み得るこれら外来性の翻訳制御配列は、天然および合成の両方の様々な起源由来であり得る。
【0102】
また本発明は、AAVカプシドおよびAAVゲノムを含む合成AAV粒子であって、AAVゲノムが、AAVカプシドに「対応」(すなわちコード)する、合成AAV粒子を提供する。また、このようなキメラのAAV粒子の集合またはライブラリーであって、2以上、10以上、50以上、100以上、1000以上、10以上、10以上、または10以上の明確に異なる配列を含む、集合またはライブラリーが提供される。
【0103】
さらに本発明は、本発明の合成AAVカプシドタンパク質を含むか、からなるか、またはから本質的になる「空の」カプシド粒子(すなわちベクターゲノムが存在しない)を包有する。本発明の合成AAVカプシドは、米国特許第5,863,541号に記載されているように「カプシドビヒクル」として使用され得る。ウイルスのカプシドと共有結合するか、結合するか、またはこれによりパッケージングされ得、かつ細胞の中へ輸送され得る分子として、DNA、RNA、脂質、炭水化物、ポリペプチド、有機小分子、または同物質の組み合わせが挙げられる。さらに、分子は、宿主の標的細胞への分子の輸送のためウイルスのカプシドの外側と結合(たとえばこれ「に繋留」)し得る。本発明の一実施形態では、分子は、カプシドタンパク質と共有結合(すなわちコンジュゲートまたは化学的に結合)している。分子を共有結合する方法は、当業者に知られている。
【0104】
また本発明のウイルスカプシドは、新規のカプシド構造に対する抗体を増大させる際の使用を見出した。さらなる別の例では、外来性アミノ酸配列は、細胞に対する抗原提示のため、たとえば外来性アミノ酸配列に対する免疫応答をもたらすために対象へ投与するため、ウイルスカプシドの中へ挿入され得る。
【0105】
また本発明は、本発明の合成ウイルスカプシドおよび合成カプシドタンパク質をコードする核酸(たとえば単離された核酸)を提供する。さらに、核酸を含むベクターおよび本発明の核酸および/またはベクターを含む細胞(in vivoまたは培養物中)が提供される。このような核酸、ベクター、および細胞は、たとえば、本明細書中記載のウイルスベクターの作製のための試薬(たとえばヘルパーコンストラクトまたはパッケージング細胞)として、使用され得る。
【0106】
例示的な実施形態では、本発明は、配列番号4~6のAAVカプシドをコードするか、または配列番号1~3のヌクレオチド配列と少なくとも90%同一である核酸配列を提供する。また本発明は、上述されるAAVカプシドバリアント、カプシドタンパク質バリアント、および融合タンパク質をコードする核酸を提供する。特定の実施形態では、核酸は、当業者に知られている標準的な条件下で本明細書中具体的に開示される核酸配列の補体に対してハイブリダイズし、バリアントカプシドおよび/またはカプシドタンパク質をコードする。任意選択で、バリアントカプシドまたはカプシドタンパク質は、カプシドおよび/または配列番号1~3の核酸配列によりコードされるカプシドもしくはカプシドタンパク質の少なくとも1つの特性を実質的に保持する。たとえば、バリアントカプシドまたはバリアントカプシドタンパク質を含むウイルス粒子は、配列番号1~3の核酸コード配列によりコードされるカプシドまたはカプシドタンパク質を含むウイルス粒子の肝臓指向性プロファイルを実質的に保持し得る。
【0107】
たとえば、このような配列のハイブリダイゼーションは、低いストリンジェンシー、中程度のストリンジェンシー、またはさらにはストリンジェントな条件下で行われ得る。低い、中程度、およびストリンジェントなハイブリダイゼーションの例示的な条件は、以下の通りである:(たとえば、それぞれ、37℃にて5×デンハート液、0.5%のSDS、および1×SSPEを含む35~40%のホルムアミドの洗浄ストリンジェンシーにより提示される条件;42℃にて5×デンハート液、0.5%のSDS、および1×SSPEを含む40~45%のホルムアミドの洗浄ストリンジェンシーにより提示される条件;ならびに42℃にて5×デンハート液、0.5%のSDS、および1×SSPEを含む50%のホルムアミドの洗浄ストリンジェンシーにより提示される条件)。たとえば、Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual (2d Ed. 1989) (Cold Spring Harbor Laboratory)を参照されたい。
【0108】
他の実施形態では、本発明のバリアントカプシドまたはカプシドタンパク質をコードする核酸配列は、配列番号1~3の核酸配列と少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または99.9%、またはそれ以上高い配列同一性を有し、任意選択で、配列番号1~3の核酸によりコードされるカプシドまたはカプシドタンパク質の少なくとも1つの特性を実質的に保持するバリアントカプシドまたはカプシドタンパク質をコードする。
【0109】
当該分野で知られているように、多くの異なるプログラムを使用して、核酸またはポリペプチドが既知の配列に対して配列同一性を有するかどうかを同定することができる。本明細書中使用されるパーセント同一性は、核酸またはそのフラグメントが、BLASTNを使用して他の核酸(またはその相補鎖)と最適に(適切なヌクレオチドの挿入または欠失を伴い)アライメントされる際に、別の核酸に対する特定のパーセント同一性を共有することを意味する。2つの異なる核酸の間のパーセント同一性を決定するために、パーセント同一性は、BLASTNプログラムの「BLAST 2 sequences」を使用して決定される。このプログラムは、インターネットを通してアメリカ国立生物工学情報センター(NCBI)から公的に利用可能である(Altschul et al., (1997) Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402)。使用されるパラメータは、以下のどの組み合わせであっても、丸かっこで示されるデフォルトのパラメータで計算された最も高いパーセント同一性(以下で計算)をもたらす:Program--blastn Matrix--0 BLOSUM62 Reward for a match--0または1(1)Penalty for a mismatch--0、-1、-2、または-3(-2)Open gap penalty--0、1、2、3、4、または5(5)Extension gap penalty--0または1(1)Gap x_dropoff--0または50(50)Expect--10。
【0110】
ポリペプチドを表す際のパーセント同一性または類似性は、問題のポリペプチドが、BLASTPを使用して決定される際に、別のタンパク質またはその一部と共通する長さにわたり比較する際に、特定のパーセント同一性または類似性を呈することを表す。このプログラムはまた、インターネットを通してアメリカ国立生物工学情報センター(NCBI)から公的に利用可能である(Altschul et al., (1997) Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402)。ポリペプチドに関するパーセント同一性または類似性は、通常、配列解析ソフトウェアを使用して測定される。たとえば、the Sequence Analysis Software Package of the Genetics Computer Group, University of Wisconsin Biotechnology Center, 910 University Avenue, Madison, Wis. 53705を参照されたい。タンパク質解析ソフトウェアは、様々な置換、欠失、および他の修飾に対して割り当てられた相同性の測定を使用して類似する配列と一致させる。保存的置換は、通常、以下の群:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸;アスパラギン、グルタミン;セリン、スレオニン;リジン、アルギニン;およびフェニルアラニン、チロシンの中の置換を含む。
【0111】
特定の実施形態では、核酸は、限定するものではないが、プラスミド、ファージ、ウイルス性ベクター(たとえばAAVベクター、アデノウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、またはバキュロウイルスベクター)、細菌人工染色体(BAC)、または酵母人工染色体(YAC)を含むベクターを含むか、またはから本質的になるか、またはからなることができる。たとえば、核酸は、5’および/または3’末端反復(たとえば5’および/または3’AAV末端反復)を含むAAVベクターを含むか、またはから本質的になるか、またはからなることができる。
【0112】
一部の実施形態では、合成AAVカプシドタンパク質をコードする核酸は、AAV repコード配列をさらに含む。たとえば核酸は、ウイルスのストックを作製するためのヘルパーコンストラクトであり得る。
【0113】
また本発明は、本発明の核酸を安定した含むパッケージング細胞を提供する。たとえば核酸は、細胞のゲノムの中に安定して組み込まれることができるか、またはエピソーム形態(たとえば「EBVベースの核エピソーム」)において安定して維持され得る。
【0114】
核酸は、送達ベクター、たとえばウイルス送達ベクターの中に組み込まれ得る。例として、本発明の核酸は、AAV粒子、アデノウイルス粒子、ヘルペスウイルス粒子、バキュロウイルス粒子、または他のいずれかの適切なウイルス粒子にパッケージングされ得る。
【0115】
さらに、核酸は、プロモーターエレメントと作動可能に結合し得る。プロモーターエレメントは、本明細書中より詳細に記載されている。
【0116】
さらに本発明は、本発明のウイルスベクターを作製する方法を提供する。代表的な実施形態では、本発明は、組み換え型ウイルスベクターを作製する方法であって、(a)(i)異種性核酸および(ii)ウイルス粒子内へのAAVテンプレートのカプシド包有に十分なパッケージングシグナル配列(たとえば1つ以上(たとえば2つ)の末端反復、たとえばAAV末端反復)を含むテンプレートと、(b)ウイルス性粒子の中へのテンプレートの複製およびカプシドへの包有に十分なAAV配列(たとえば本発明のAAVカプシドをコードするAAV rep配列およびAAV cap配列)とを、in vitroで細胞に提供するステップを含む、方法を提供する。テンプレートおよびAAV複製物およびカプシド配列は、カプシドの中にパッケージングされたテンプレートを含む組み換え型ウイルス粒子が細胞で産生されるような条件下で提供される。さらに本方法は、細胞からウイルス粒子を回収するステップを含み得る。ウイルス粒子は、培地から回収されてもよく、および/または細胞を溶解することにより回収されてもよい。
【0117】
1つの例示的な実施形態では、本発明は、AAVカプシドを含むrAAV粒子を作製する方法であって、前記方法が、本発明の合成AAVカプシドをコードする核酸、AAV repコード配列、異種性核酸を含むAAVベクターゲノム、および増殖性AAV感染をもたらすヘルパー機能を有するin vitroにある細胞を準備するステップと、AAVカプシドを含む前記AAV粒子のアセンブリを可能にし、前記AAVベクターゲノムをカプシドに包有するステップとを含む、方法を提供する。
【0118】
細胞は、通常、AAVウイルスの複製を可能にする細胞である。当該分野で知られているいずれかの適切な細胞、たとえば哺乳類細胞が使用され得る。また、複製欠損ヘルパーウイルスから欠失された機能を提供するトランス補完(trans-complementing)パッケージング細胞株、たとえば293細胞または他のE1aトランス補完細胞も適切である。
【0119】
AAV複製物およびカプシド配列は、当該分野で知られているいずれかの方法により提供され得る。現在のプロトコルは、通常、単一のプラスミド上でAAV rep/cap遺伝子を発現する。AAV複製物およびパッケージング配列は、まとめて提供することが簡便であり得るが、まとめて提供される必要はない。AAV repおよび/またはcap配列は、いずれかのウイルス性または非ウイルス性ベクターにより提供され得る。たとえば、rep/cap配列が、ハイブリッドアデノウイルスまたはヘルペスウイルスベクターにより提供され得る(たとえば欠失したアデノウイルスベクターのE1aまたはE3領域に挿入され得る)。EBVベクターはまた、AAV capおよびrep遺伝子を発現させるために使用され得る。この方法の1つの利点は、EBVベクターがエピソーム性であり、さらに連続的な細胞分裂を介して著しいコピー数を維持すること(すなわち、EBVベースの核エピソームとして表される染色体外エレメントとして細胞の中に安定して統合される)ことである。
【0120】
さらなる別の例として、rep/cap配列は、細胞の中に安定して担持され得る(エピソーム性であり得るかまたは統合され得る)。
【0121】
通常、AAV rep/cap配列は、これら配列の救出および/またはパッケージングを予防するために、AAVパッケージング配列(たとえばAAV ITR)に隣接していない。
【0122】
テンプレート(たとえばrAAVベクターゲノム)は、当該分野で知られているいずれかの方法を使用して細胞に提供され得る。たとえばテンプレートは、非ウイルス性(たとえばプラスミド)またはウイルス性のベクターにより供給され得る。特定の実施形態では、テンプレートは、ヘルペスウイルスまたはアデノウイルスのベクターにより供給される(たとえば欠失したアデノウイルスのE1aまたはE3領域の中に挿入される)。別の例として、Palombo et al., (1998) J. Virol. 72:5025は、AAV ITRに隣接したレポーター遺伝子を担持するバキュロウイルスベクターを記載している。EBVベクターはまた、rep/cap遺伝子に関して上述されるように、テンプレートを送達するために使用され得る。
【0123】
別の代表的な実施形態では、テンプレートは、複製しているrAAVウイルスにより提供される。さらなる他の実施形態では、AAVプロウイルスは、細胞染色体の中に安定して統合される。
【0124】
最大のウイルス力価を得るために、増殖性AAV感染に必須であるヘルパーウイルス機能(たとえばアデノウイルスまたはヘルペスウイルス)が、一般に細胞に提供される。AAV複製に必要なヘルパーウイルス配列は、当該分野で知られている。通常、これら配列は、ヘルパーアデノウイルスまたはヘルペスウイルスのベクターにより提供される。あるいは、アデノウイルスまたはヘルペスウイルスの配列は、別の非ウイルス性またはウイルス性ベクターにより、たとえばFerrari et al., (1997) Nature Med. 3:1295、ならびに米国特許第6,040,183号および同第6,093,570号により記載されるように、効率的なAAV産生に必要とされる全てのヘルパー遺伝子を担持する非感染性アデノウイルスミニプラスミドとして、提供され得る。
【0125】
さらに、ヘルパーウイルス機能は、染色体で統合されているかまたは安定した染色体外エレメントとして維持されているヘルパー遺伝子を有するパッケージング細胞により提供され得る。代表的な実施形態では、ヘルパーウイルス配列は、AAVビリオンの中にパッケージングすることができず、たとえばAAV ITRに隣接していない。
【0126】
当業者は、単一のヘルパーコンストラクト上にAAV複製物およびカプシド配列およびヘルパーウイルス配列(たとえばアデノウイルス配列)を提供することが好ましい場合があることを理解するであろう。このヘルパーコンストラクトは、非ウイルス性またはウイルス性のコンストラクトではあり得るが、任意選択で、AAV rep/cap遺伝子を含むハイブリッドアデノウイルスまたはハイブリッドヘルペスウイルスである。
【0127】
1つの特定の実施形態では、AAV rep/cap配列およびアデノウイルスヘルパー配列は、単一のアデノウイルスヘルパーベクターにより供給される。このベクターは、rAAVテンプレートをさらに含む。AAV rep/cap配列および/またはrAAVテンプレートは、アデノウイルスの欠失した領域(たとえばE1aまたはE3領域)に挿入され得る。
【0128】
さらなる実施形態では、AAV rep/cap配列およびアデノウイルスヘルパー配列は、単一のアデノウイルスヘルパーベクターにより供給される。rAAVテンプレートは、プラスミドテンプレートとして提供される。
【0129】
別の例示的な実施形態では、AAV rep/cap配列およびアデノウイルスヘルパー配列は、単一のアデノウイルスヘルパーベクターにより提供され、rAAVテンプレートは、プロウイルスとして細胞の中に統合される。あるいは、rAAVテンプレートは、染色体外エレメントとして細胞の中に維持されるEBVベクターにより(たとえば「EBVベースの核エピソーム」として、Margolski, (1992) Curr. Top. Microbiol. Immun. 158:67を参照)提供される。
【0130】
さらなる例示的な実施形態では、AAV rep/cap配列およびアデノウイルスヘルパー配列は、単一のアデノウイルスヘルパーにより提供される。rAAVテンプレートは、別々の複製しているウイルス性ベクターとして提供される。たとえば、rAAVテンプレートは、rAAV粒子または第2の組み換え型アデノウイルス粒子により提供され得る。
【0131】
上記の方法では、ハイブリッドアデノウイルスベクターは、通常、アデノウイルスの複製およびパッケージングに十分なアデノウイルスの5’および3’のシス配列(すなわちアデノウイルス末端反復およびPAC配列)を含む。AAV rep/cap配列および存在する場合はrAAVテンプレートは、アデノウイルス骨格に埋め込まれ、5’および3’のシス配列に隣接することにより、これら配列は、アデノウイルスカプシドにパッケージングされ得る。上述されるように、代表的な実施形態では、アデノウイルスヘルパー配列およびAAV rep/cap配列は、これら配列がAAVビリオンにパッケージングされないように、AAVパッケージング配列(たとえばAAV ITR)に隣接していない。
【0132】
ヘルペスウイルスもまた、AAVパッケージング法においてヘルパーウイルスとして使用され得る。AAV repタンパク質をコードするハイブリッドヘルペスウイルスは、好適には、より拡張可能なAAVベクター作製スキームに関して促進し得る。AAV-2 repおよびcap遺伝子を発現するハイブリッド単純ヘルペスウイルスI型(HSV-1)ベクターが記載されている(Conway et al., (1999) Gene Therapy 6:986および国際特許第00/17377号、これら開示の全体は本明細書中に組み込まれている)。
【0133】
さらなる別の例として、本発明のウイルスベクターは、Urabe et al., (2002) Human Gene Therapy 13:1935-43により記載されるように、rep/cap遺伝子およびrAAVテンプレートを送達するためにバキュロウイルスベクターを使用して昆虫細胞で産生され得る。
【0134】
AAVを作製する他の方法は、安定して形質転換されたパッケージング細胞を使用する(たとえば米国特許第5,658,785号を参照)。
【0135】
混入しているヘルパーウイルスを含まないAAVベクターストックは、当該分野で知られているいずれかの方法により入手され得る。たとえば、AAVおよびヘルパーウイルスは、大きさに基づき容易に区別され得る。またAAVは、ヘパリン基質に関する親和性に基づきヘルパーウイルスから分離され得る(Zolotukhin et al., (1999) Gene Therapy 6:973)。代表的な実施形態では、欠失した複製欠損ヘルパーウイルス(deleted replication-defective helper viruses)が、全ての混入しているヘルパーウイルスが複製の構成要素ではないように使用される。さらなる別の例として、後期遺伝子発現を欠いているアデノウイルスヘルパーが、アデノウイルスの早期遺伝子発現のみがAAVウイルスのパッケージングを媒介するために必要とされるため、使用され得る。後期遺伝子発現を欠損しているアデノウイルス変異体は、当該分野で知られている(たとえばts100Kおよびts149アデノウイルス変異体)。
【0136】
本発明のパッケージング法は、高い力価のウイルス粒子のストックを作製するために使用され得る。特定の実施形態では、ウイルスのストックは、少なくとも約10tu(transducing unit)/ml、少なくとも約10tu/ml、少なくとも約10tu/ml、少なくとも約10tu/ml、少なくとも約10tu/ml、または少なくとも約1010tu/mlの力価を有する。
【0137】
新規のカプシドタンパク質およびカプシド構造により、たとえば診断上もしくは治療上の使用のためまたは研究試薬としての抗体を作製する際の使用が見出される。よって本発明はまた、本発明の新規のカプシドタンパク質およびカプシドに対する抗体を提供する。
【0138】
用語「抗体(antibodyまたはantibodies)」は、本明細書中使用される場合、IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEを含む全ての種類のイムノグロブリンを表す。抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであり得、(たとえば)マウス、ラット、ウサギ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、もしくはヒトを含むいずれかの種の起源であり得、またはキメラ性抗体であり得る。たとえばWalker et al., Mol. Immunol. 26, 403-11 (1989)を参照されたい。抗体は、たとえば米国特許第4,474,893号または米国特許第4,816,567号に開示される方法により作製される、組み換え型モノクローナル抗体であり得る。また抗体は、たとえば米国特許第4,676,980号に開示される方法により、化学的に構築され得る。
【0139】
本発明の範囲内に含まれる抗体フラグメントは、たとえばFab、F(ab’)2、およびFcフラグメント、ならびにIgG以外の抗体から得られる対応するフラグメントを含む。このようなフラグメントは、既知の技術により作製され得る。たとえば、F(ab’)2フラグメントは、抗体分子のペプシン消化により作製され得、Fabフラグメントは、F(ab’)2フラグメントのジスルフィド架橋を還元することにより作製され得る。あるいは、Fab発現ライブラリーは、望ましい特異性を有するモノクローナルFabフラグメントの迅速かつ容易な同定を可能にするために構築され得る(Huse et al., (1989) Science 254, 1275-1281)。
【0140】
ポリクローナル抗体は、既知の手法にしたがい、適切な動物(たとえばウサギ、ヤギなど)を、標的に対しモノクローナル抗体が結合する抗原で免疫化し、動物から免疫血清を回収し、免疫血清からポリクローナル抗体を分離することにより、作製され得る。
【0141】
モノクローナル抗体は、Kohler and Milstein, (1975) Nature 265, 495-97の技術によりハイブリドーマ細胞株で作製され得る。たとえば、適切な抗原を含む溶液をマウスに注射し、十分な時間の後、マウスを屠殺し、脾臓細胞を入手し得る。次に、脾臓細胞を、通常ポリエチレングリコールの存在下で、ミエローマ細胞またはリンパ腫細胞と融合させることにより不死化して、ハイブリドーマ細胞を作製する。その後、ハイブリドーマ細胞を、適切な培地で増殖させ、その上清を、望ましい特異性を有するモノクローナル抗体に関してスクリーニングする。モノクローナルFabフラグメントは、当業者に知られている組み換え技術により大腸菌で作製され得る。たとえばW. Huse, (1989) Science 246, 1275-81を参照されたい。
【0142】
また標的ポリペプチドに特異的な抗体は、当該分野で知られているファージディスプレイ技術により得ることができる。
【0143】
様々なイムノアッセイが、望ましい特異性を有する抗体を同定するためのスクリーニングで使用され得る。確立した特異性を有するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれかを使用して競合結合アッセイまたは免疫放射線アッセイに関する多くのプロトコルが、当該分野でよく知られている。このようなイムノアッセイは、通常、抗原とその特異的な抗体との間の複合体形成(たとえば抗原/抗体複合体形成)の測定を含む。2つの非干渉性エピトープに対して反応性のモノクローナル抗体を利用する2つの部位でのモノクローナルベースのイムノアッセイ(two-site, monoclonal-based immunoassay)が、競合結合アッセイと同様に使用され得る。
【0144】
抗体は、既知の技術に従い、固体の担体(たとえばラテックスもしくはポリスチレンなどの物質から形成されるビーズ、プレート、スライド、またはウェル)にコンジュゲートされ得る。同様に、抗体は、既知の技術にしたがい、放射性標識(たとえば35S、125I、131I)、酵素標識(たとえば西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ)、および蛍光標識(たとえばフルオレセイン)などの検出可能な基に直接または間接的にコンジュゲートされ得る。本発明の方法における抗体/抗原複合体の形成の決定は、検出、たとえば当該分野でよく知られているような、沈殿、凝集、凝結、放射活性、色の展開または変化、蛍光、発光などの検出によるものであり得る。
【0145】
III.合成AAVカプシドを使用する方法
また本発明は、他の臓器への送達を最小限にしつつ、異種性ヌクレオチド配列を肝臓に送達するための方法に関する。本発明のウイルスベクターは、たとえばin vitroでポリペプチドもしくは核酸を作製するため、またはex vivoでの遺伝子療法のため、in vitroで目的のヌクレオチド配列を肝細胞に送達するために使用され得る。ベクターは、たとえば治療用または免疫原性のポリペプチドまたは核酸を発現するための、それを必要とする対象にヌクレオチド配列を送達する方法にさらに有用である。よってこの方法では、ポリペプチドまたは核酸は、対象においてin vivoで産生され得る。対象でポリペプチドが不足しているため、または対象におけるポリペプチドもしくは核酸の産生が、処置の方法もしくは他の方法として、および以下にさらに説明されるように何らかの治療効果を提供し得るため、対象は上記ポリペプチドまたは核酸を必要とし得る。
【0146】
特定の実施形態では、ベクターは、一般に対象に有用な効果を提供するポリペプチドまたは核酸を発現するために有用である。他の実施形態では、ベクターは、肝臓における細胞(たとえば肝細胞)に有益な効果を提供するポリペプチドまたは核酸を発現するために有用である。
【0147】
よって、本発明の一態様は、目的の核酸を肝細胞に送達する方法であって、肝細胞を本発明のAAV粒子と接触させるステップを含む、方法に関する。
【0148】
別の態様では、本発明は、目的の核酸を哺乳類の対象の肝細胞に送達する方法であって、本発明のAAV粒子または医薬製剤の有効量を哺乳類の対象に投与することにより、目的の核酸を哺乳類の対象の肝細胞に送達するステップを含む、方法に関する。
【0149】
本発明のさらなる態様は、それを必要とする哺乳類の対象の障害を処置する方法であって、上記障害が、対象の肝臓で産物を発現することにより処置可能であり、上記方法が、本発明のAAV粒子の治療有効量を対象に投与し、上記産物を発現させることにより、上記障害を処置するステップを含む、方法に関する。
【0150】
一般に、本発明のウイルスベクターは、遺伝子発現に関連するいずれかの障害に関連する症状を処置または寛解するための生物学的な作用を有するいずれかの外来性核酸を送達するために使用され得る。さらに本発明は、治療用ポリペプチドを送達することが好適であるいずれかの疾患状態を処置するために使用され得る。例示的な疾患状態として、限定するものではないが、嚢胞性線維症(嚢胞性線維症膜貫通型調節因子タンパク質)および他の肺の疾患、血友病A(第VIII因子)、血友病B(第IX因子)、地中海貧血症(β-グロビン)、貧血(エリスロポエチン)および他の血液障害、アルツハイマー病(GDF;ネプリライシン)、多発性硬化症(β-インターフェロン)、パーキンソン病(グリア細胞株由来神経栄養因子[GDNF])、ハンチントン病(限定するものではないが、反復を除去するためのsiRNAまたはshRNAなどのRNAi、アンチセンスRNAまたはマイクロRNAを含む阻害性RNA)、筋萎縮性側索硬化症、てんかん(ガラニン、神経栄養因子)、および他の神経性障害、がん(エンドスタチン、アンジオスタチン、TRAIL、FASリガンド、インターフェロンを含むサイトカイン;限定するものではないがRNAi(siRNAまたはshRNAなど)、アンチセンスRNAおよびマイクロRNAを含んでおり、VEGF、多剤耐性遺伝子産物またはがんの免疫原に対する阻害性RNAを含む阻害性RNA)、真性糖尿病(インスリン、PGC- α1、GLP-1、ミオスタチンプロペプチド、グルコース輸送体4)、Duchenne型およびBecker型を含む筋ジストロフィー(たとえばジストロフィン、ミニジストロフィン、マイクロジストロフィン、インスリン様増殖因子I、サルコグリカン[たとえばα、β、γ]、ミオスタチンまたはミオスタチンプロペプチドに対する阻害性RNA[たとえばRNAi、アンチセンスRNA、またはマイクロRNA]、ラミニン-α2、フクチン関連タンパク質、ドミナントネガティブ型ミオスタチン、フォリスタチン、アクチビンII型可溶性受容体、抗炎症性ポリペプチド、たとえばIkappa B優性突然変異体、サルコスパン(sarcospan)、ユートロフィン、ミニ-ユートロフィン、エキソンスキッピングを誘導するためのジストロフィン遺伝子におけるスプライスジャンクションに対する阻害性RNA[たとえばRNAi、アンチセンスRNA、またはマイクロRNA][たとえば国際特許公開公報第2003/095647号参照]、エキソンスキッピングを誘導するためのU7 snRNAに対する阻害性RNA(たとえばRNAi、アンチセンスRNA、またはマイクロRNA][たとえば国際特許公開公報第2006/021724号参照]、およびミオスタチンまたはミオスタチンプロペプチドに対する抗体または抗体フラグメント)、ゴーシェ病(グルコセレブロシダーゼ)、ハーラー病(α-L-イズロニダーゼ)、アデノシンデアミナーゼ欠損症(アデノシンデアミナーゼ)、糖原病(たとえばファブリー病[α-ガラクトシダーゼ]およびポンペ病[リソソーム酸α-グルコシダーゼ])および他のリソソーム蓄積症および糖原病を含む他の代謝性欠損、先天性肺気腫(α1-アンチトリプシン)、レッシュ・ナイハン症候群(ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ)、ニーマン・ピック病(スフィンゴミエリナーゼ)、メープルシロップ尿症(分岐鎖ケト酸デヒドロゲナーゼ)、網膜変性疾患(および眼および網膜の他の疾患;たとえば黄斑変性症ではPDGF、エンドスタチンおよび/またはアンジオスタチン)、脳(パーキンソン病[GDNF]、星状細胞腫[エンドスタチン、アンジオスタチン、および/またはVEGFに対するRNAi]、神経膠芽腫[エンドスタチン、アンジオスタチン、および/またはVEGFに対するRNAi]を含む)、肝臓(B型肝炎および/またはC型肝炎遺伝子に関するRNAi、たとえばsiRNA、またはshRNA、マイクロRNAまたはアンチセンスRNA)、腎臓、うっ血性心不全または末梢動脈疾患(PAD)を含む心臓(たとえば、プロテインホスファターゼ阻害剤I[I-1]、ホスホランバン、筋小胞体(sarcoplasmic endoreticulum)Ca2+-ATPase[serca2a]、ホスホランバン遺伝子を制御するZnフィンガータンパク質、Pim-1、PGC-1α、SOD-1、SOD-2、ECF-SOD、カリクレイン、サイモシン-β4、低酸素応答性転写因子[HIF]、βarkct、β2-アドレナリン受容体、β2-アドレナリン受容体キナーゼ[βARK]、ホスホイノシチド-3キナーゼ[PI3キナーゼ]、カルサシン(calsarcin)、血管新生因子、S100A1、パルブアルブミン、アデニリルシクラーゼ6型、Gタンパク質共役受容体キナーゼ2型のノックダウンに作用する分子、たとえば切断された常時活性型のbARKct、ホスホランバンに対する阻害性RNA[たとえばRNAi、アンチセンスRNA、またはマイクロRNA];ホスホランバン阻害性またはドミナントネガティブ型分子、たとえばホスホランバンS16Eなどを送達することによる)などの固形臓器の疾患、関節炎(インスリン様増殖因子)、関節障害(インスリン様増殖因子)、内膜過形成(たとえばenos、inosを送達することによる)、心臓移植の生存の改善(スーパーオキシドジスムターゼ)、AIDS(可溶性CD4)、筋消耗(インスリン様増殖因子I、ミオスタチンプロペプチド、抗アポトーシス因子、フォリスタチン)、下肢虚血(VEGF、FGF、PGC-1α、EC-SOD、HIF)、腎臓欠損症(エリスロポエチン)、貧血(エリスロポエチン)、関節炎(抗炎症性因子、たとえばIRAPおよびTNFα可溶性受容体)、肝炎(α-インターフェロン)、LDL受容体欠損(LDL受容体)、高アンモニア血症(オルニチントランスカルバミラーゼ)、SCA1、SCA2、およびSCA3を含む脳脊髄液運動失調、フェニルケトン尿症(フェニルアラニンヒドロキシラーゼ)、自己免疫性疾患などが挙げられる。さらに本発明は、(たとえばサイトカイン産生を遮断するために免疫抑制剤または阻害性核酸を投与することにより)移植の成功を増大させるためおよび/または臓器移植もしくは補助治療の負の副作用を低減させるため、臓器移植の後に使用され得る。別の例として、骨形成タンパク質(RANKLおよび/またはVEGFを含む)は、たとえばがん患者での切断または外科的な除去の後に、骨の同種移植片と共に投与され得る。
【0151】
本発明の方法により処置され得る例示的なリソソーム保存疾患として、限定するものではないが、ハーラー症候群(MPS IH)、Scheie症候群(MPS IS)、およびHurler-Scheie症候群(MPS IH/S)(α-L-イズロニダーゼ);ハンター症候群(MPS II)(イズロン酸硫酸スルファターゼ);Sanfilippo A症候群(MPS IIIA)(ヘパラン-S-硫酸スルファミニダーゼ(sulfate sulfaminidase))、Sanfilippo B症候群(MPS IIIB)(N-アセチル-D-グルコサミニダーゼ)、Sanfilippo C症候群(MPS IIIC)(アセチル-CoA-グルコサミニドN-アセチルトランスフェラーゼ)、Sanfilippo D症候群(MPS IIID)(N-アセチル-グルコサミニン(glucosaminine)-6-硫酸スルファターゼ);Morquio A疾患(MPS IVA)(ガラクトサミン-6-硫酸スルファターゼ)、Morquio B疾患(MPS IV B)(β-ガラクトシダーゼ);Maroteaux-lmay疾患(MPS VI)(アリールスルファターゼB);Sly症候群(MPS VII)(β-グルクロニダーゼ);ヒアルロニダーゼ欠損症(MPS IX)(ヒアルロニダーゼ);シアリドーシス(ムコリピドーシスI)、ムコリピドーシスII(I細胞病)(N-アクチルグルコサ-ミニル(glucos-aminyl)-1-ホスホトランスフェラーゼ触媒サブユニット)、ムコリピドーシスIII(偽ハーラー多発性ジストロフィー)(N-アセチルグルコサ-ミニル-1-ホスホトランスフェラーゼ;IIIA型[触媒サブユニット]およびIIIC型[基質認識サブユニット]);GM1ガングリオシドーシス(ガングリオシドβ-ガラクトシダーゼ)、GM2ガングリオシドーシスI型(テイ・サックス病)(β-ヘキサミニダーゼ(hexaminidase)A)、GM2ガングリオシドーシスII型(Sandhoff病)(β-ヘキソサミニダーゼB);ニーマン・ピック病(A型およびB型)(スフィンゴミエリナーゼ);ゴーシェ病(グルコセレブロシダーゼ);ファーバー病(セラミニダーゼ(ceraminidase));Fabry病(α-ガラクトシダーゼA);クラッベ病(ガラクトシルセラミドβ-ガラクトシダーゼ);異染色性白質ジストロフィー(アリールスルファターゼA);Wolman疾患を含むリソソーム酸リパーゼ欠損症(リソソーム酸リパーゼ);バッテン病(若年型神経セロイドリポフスチン症)(リソソーム膜貫通型CLN3タンパク質)シアリドーシス(ノイラミニダーゼ1);ガラクトシアリドーシス(Goldberg症候群)(保護タンパク質/カテプシンA);α-マンノシドーシス(α-D-マンノシダーゼ);β-マンノシドーシス(β-D-マンノシドーシス);フコシドーシス(α-D-フコシダーゼ);アスパルチルグルコサミン尿症(N-アスパルチルグルコサミニダーゼ);およびシアル酸尿症(リン酸Na共輸送体)が挙げられる。
【0152】
本発明の方法により処置され得る例示的な糖原病として、限定するものではないが、Ia型GSD(フォン・ギールケ病)(グルコース-6-ホスファターゼ)、Ib型GSD(グルコース-6-ホスフェートトランスロカーゼ)、Ic型GSD(ミクロソームのリン酸塩またはピロリン酸塩輸送体)、Id型GSD(ミクロソームのグルコース輸送体)、ポンペ病または乳児性IIa型GSDリソソーム酸α-グルコシダーゼ)およびIIb型(Danon)(リソソーム膜タンパク質-2)を含むII型GSD、IIIa型およびIIIb型GSD(脱分枝酵素;アミログルコシダーゼ、およびオリゴグルカノトランスフェラーゼ(oligoglucanotransferase))、IV型GSD(Andersen疾患)(分枝酵素)、V型GSD(McArdle疾患)(筋ホスホリラーゼ)、VI型GSD(ハース病)(肝臓ホスホリラーゼ)、VII型GSD(垂井病)(ホスホフルクトキナーゼ)、GSD VIII/IXa型(X連鎖性ホスホリラーゼキナーゼ)、GSD IXb型(肝臓および筋ホスホリラーゼキナーゼ)、GSD IXc型(肝臓ホスホリラーゼキナーゼ)、GSD IXd型(筋ホスホリラーゼキナーゼ)、GSD O(グリコーゲンシンターゼ)、Fanconi-Bickel症候群(グルコース輸送体-2)、ホスホグルコイソメラーゼ欠損症、筋ホスホグリセリン酸キナーゼ欠損症、ホスホグリセリン酸ムターゼ欠損症、フルクトース1,6-ジホスファターゼ欠損症、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ欠損症、ならびに乳酸デヒドロゲナーゼ欠損症が挙げられる。
【0153】
遺伝子導入は、疾患状態の理解および治療の提供において使用できる可能性がかなりある。欠陥のある遺伝子が知られておりクローニングされている多くの遺伝性疾患が存在する。一般的に、上記の疾患状態は、2つのクラス:通常、一般に劣性で遺伝する酵素の、欠陥のある状態、および制御タンパク質または構造タンパク質に関与し得、通常優性で遺伝される不均衡な状態に分けられる。欠陥のある状態の疾患では、遺伝子導入は、補充療法のため罹患した組織の中に正常な遺伝子をもたらすため、およびRNAi(たとえばsiRNAまたはshRNA)、マイクロRNA、またはアンチセンスRNAなどの阻害性RNAを使用して疾患の動物モデルを作製するために、使用され得る。不均衡な疾患状態では、遺伝子導入は、モデル系に疾患状態を作製するために使用することができ、次に疾患状態を相殺する試みで使用され得る。よって、本発明に係るウイルスベクターは、遺伝性疾患の処置を許容する。本明細書中使用される場合、疾患状態は、疾患をもたらすかまたは疾患をより重篤にさせる欠陥または不均衡を部分的または全体的に治療することにより処置される。変異をもたらすかまたは欠陥を訂正するための核酸配列の部位特異的な組み換えの使用もまた可能である。
【0154】
本発明に係るウイルスベクターはまた、in vitroまたはin vivoの細胞へアンチセンス核酸または阻害性RNA(たとえばマイクロRNAまたはRNAi、たとえばsiRNAまたはshRNA)を提供するために使用され得る。標的細胞における阻害性RNAの発現は、細胞による特定のタンパク質の発現を減らす。よって、阻害性RNAは、それを必要とする対象における特定のタンパク質の発現を減少させるために投与され得る。また阻害性RNAは、細胞の生理機能を調節するため、たとえば細胞または組織の培養系を最適化するために、in vitroの細胞に投与され得る。
【0155】
さらなる態様として、本発明のウイルスベクターは、対象に免疫応答をもたらすために使用され得る。この実施形態では、免疫原をコードする核酸を含むウイルスベクターが対象に投与されてもよく、免疫原に対する能動的な免疫応答(任意選択で防御免疫応答)が、対象により開始される。免疫原は、本明細書中上述される通りである。
【0156】
あるいは、ウイルスベクターは、ex vivoの細胞に投与されてもよく、変質した細胞が、対象に投与される。異種性核酸は、細胞に導入され、この細胞は対象に投与される。ここで免疫原をコードする異種性核酸は、任意選択で発現され、免疫原に対する免疫応答を対象に誘導する。特定の実施形態では、細胞は、抗原提示細胞(たとえば樹状細胞)である。
【0157】
「能動的な免疫応答」または「能動的な免疫」は、「免疫原との遭遇の後の宿主の組織および細胞の関与を特徴とする。これは、抗体の合成、または細胞が介在する反応性の発展、またはその両方をもたらす、リンパ細網組織における免疫担当細胞の分化および増殖に関与する。」Herbert B. Herscowitz, Immunophysiology: Cell Function and Cellular Interactions in Antibody Formation, in IMMUNOLOGY: BASIC PROCESSES 117 (Joseph A. Bellanti ed., 1985)。別の言い方では、能動的な免疫応答は、感染症またはワクチン接種により免疫原に曝露した後に宿主により開始される。能動的な免疫は、「能動的に免疫化された宿主から非免疫宿主へと行われる物質(抗体、トランスファー因子、胸腺グラフト、インターロイキン-2)の輸送」を介して獲得される、受動免疫と対比され得る。
【0158】
「防御」免疫応答または「防御」免疫は、本明細書中使用される場合、免疫応答が疾患の頻度を予防または低減する点で対象に何らかの利点を提供することを表す。あるいは防御免疫応答または防御免疫は、疾患、特にがんまたは腫瘍の処置に、(たとえばがんもしくは腫瘍の退縮をもたらすことによりおよび/または転移を予防することによりおよび/または転移性小結節の成長を予防することにより)有用であり得る。この防御作用は、処置の利点がそのいずれの欠点をも上回る限りは、完全または部分的であり得る。
【0159】
本発明のウイルスベクターはまた、がん細胞抗原(または免疫学的に同様の分子)またはがん細胞に対する免疫応答をもたらす他のいずれかの免疫原を発現するウイルス性ベクターの投与によりがんの免疫療法で投与され得る。例として、たとえばがんを有す患者を処置するため、がん細胞抗原に対する免疫応答は、がん細胞抗原をコードする異種性ヌクレオチド配列を含むウイルス性ベクターを投与することにより対象にもたらされ得る。ウイルスベクターは、本明細書中記載されるように、in vivoでまたはex vivoの方法を使用することにより対象へ投与され得る。
【0160】
本明細書中使用される場合、用語「がん」は、腫瘍を形成するがんを包有する。同様に、用語「がん性組織」は、腫瘍を包有する。「がん細胞抗原」は、腫瘍抗原を包有する。
【0161】
用語「がん」は、当該分野で理解されている意味、たとえば、身体の離れた部位へ拡散(すなわち転移)する可能性を有する組織の制御されていない増殖を意味する。例示的ながんとして、限定するものではないが、白血病、リンパ腫(たとえばホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫)、結腸直腸がん、腎がん、肝臓がん、乳がん、肺がん、前立腺がん、精巣がん、卵巣がん、子宮がん、子宮頸がん、脳がん(たとえばグリオーマおよびグリオブラストーマ)、骨がん、肉腫、メラノーマ、頭頸部がん、食道がん、甲状腺がんなどが挙げられる。本発明の実施形態では、本発明は、腫瘍を形成するがんを処置および/または予防するために行われる。
【0162】
用語「腫瘍」もまた、当該分野で理解されており、たとえば、多細胞生物の中の未分化細胞の異常な塊として理解されている。腫瘍は、悪性または良性であり得る。代表的な実施形態では、本明細書中開示される方法は、悪性腫瘍を予防および処置するために使用される。
【0163】
がん細胞抗原は、本明細書中上述されている。用語「がんを処置する」または「がんの処置」は、がんの重症度が低減することまたはがんが予防もしくは少なくとも部分的に排除されることを意図している。たとえば、特定の文脈では、これら用語は、がんの転移が、予防または低減または少なくとも部分的に排除されることを表す。さらなる代表的な実施形態では、これら用語は、(たとえば原発性腫瘍の外科的除去の後の)転移性小結節の増殖が予防または低減または少なくとも部分的に排除されることを表す。用語「がんの予防」または「がんを予防する」は、本方法が、がんの発生頻度または発症を少なくとも部分的に排除または低減することを意図している。別の言い方では、対象のがんの発症または進行は、遅延されてもよく、制御されてもよく、尤度もしくは確率において減少されてもよく、または遅延され得る。
【0164】
特定の実施形態では、細胞は、がんを有する対象から取り出されてもよく、本発明に係るウイルスベクターと接触させてもよい。次に、修飾された細胞が対象に投与されることにより、がん細胞抗原に対する免疫応答が誘発される。この方法は、in vivoで十分な免疫応答を開始できない(すなわち十分な量の亢進している抗体を産生することができない)易感染性の対象で特に好適に使用される。
【0165】
免疫応答は、免疫調節性サイトカイン(たとえばα-インターフェロン、β-インターフェロン、γ-インターフェロン、ω-インターフェロン、τ-インターフェロン、インターロイキン-1α、インターロイキン-1β、インターロイキン-2、インターロイキン-3、インターロイキン-4、インターロイキン5、インターロイキン-6、インターロイキン-7、インターロイキン-8、インターロイキン-9、インターロイキン-10、インターロイキン-11、インターロイキン12、インターロイキン-13、インターロイキン-14、インターロイキン-18、B細胞増殖因子、CD40リガンド、腫瘍壊死因子-α、腫瘍壊死因子-β、単球走化性タンパク質-1、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、およびリンホトキシン)により亢進され得ることが当該分野で知られている。よって免疫調節性サイトカイン(たとえばCTL誘導性サイトカイン)は、ウイルスベクターと併用して対象に投与され得る。
【0166】
サイトカインは、当該分野で知られているいずれかの方法により投与され得る。外来性サイトカインは対象に投与されてもよく、またはあるいは、サイトカインをコードするヌクレオチド配列が、適切なベクターを使用して対象に送達され、サイトカインがin vivoで産生されてもよい。
【0167】
ウイルス性ベクターはさらに、研究目的のため、たとえばin vitroもしくは動物での肝機能の試験のため、または疾患の動物モデルを作製および/もしくは試験する際に使用するための、肝臓細胞の標的化に有用である。たとえば、ベクターは、肝臓の損傷、たとえば線維症または肝硬変の動物モデル、またはウイルス性感染症(たとえば肝炎ウイルス)などの肝疾患の動物モデルにおいて肝細胞へ異種性核酸を送達するために使用され得る。
【0168】
さらに、本発明に係るウイルスベクターは、診断方法およびスクリーニング方法でのさらなる使用を見出すことにより、目的の遺伝子が、細胞培養系またはあるいはトランスジェニック動物モデルにおいて一時的または安定して発現される。また本発明は、タンパク質産生の目的のため、たとえば研究上、産業上、または商業的な目的のため、核酸を送達するために行われ得る。
【0169】
本発明に係る組み換え型ウイルスベクターは、獣医学的および医学的な適用の両方での使用が見出される。適切な対象は、トリおよび哺乳類の両方を含む。用語「トリ」は、本明細書中使用される場合、限定するものではないが、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、シチメンチョウ、キジ、オウム、インコを含む。用語「哺乳類」は、本明細書中使用される場合、限定するものではないが、ヒト、霊長類の非ヒト霊長類(たとえばサルおよびヒヒ)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ウサギ、げっ歯類(たとえばラット、マウス、ハムスターなど)などを含む。ヒトの対象は、新生児、乳幼児、若年、および成年を含む。任意選択で、対象は、たとえば対象が本明細書中記載される障害を含む障害のリスクがあるもしくはあると考えられるかまたは本明細書中記載されるものを含む核酸の送達から利益を有するため、本発明の方法を「必要とする」。さらなる選択肢として、対象は、疾患の研究動物および/または動物モデルであり得る。
【0170】
特定の実施形態では、本発明は、薬学的に許容される担体において本発明のウイルスベクター、および任意選択で他の医療上作用物質、薬学的作用物質、安定化剤、バッファー、担体、アジュバント、希釈剤などを含む医薬組成物を提供する。注射では、担体は、通常液体である。他の投与方法では、担体は、固体または液体のいずれかであり得る。吸入投与では、担体は、呼吸に適しており、好ましくは固体または液体の微粒子上の形態である。
【0171】
「薬学的に許容される」は、毒性ではなくまたは他の望ましくないものではない物質を意味し、すなわちこの物質は、望ましくない生物学的作用を全くもたらすことなく対象に投与され得る。
【0172】
本発明の一態様は、ヌクレオチド配列をin vitroの細胞へ輸送する方法である。ウイルスベクターは、特定の標的細胞に適した標準的な形質導入方法により、適切な感染多重度で細胞に導入され得る。投与するためのウイルスベクターまたはカプシドの力価は、標的細胞の種類および数、および特定のウイルスベクターまたはカプシドに応じて変動し得、過度に実験を行うことなく当業者により決定され得る。特定の実施形態では、少なくとも約10の感染単位、より好ましくは少なくとも約10の感染単位が細胞に導入される。
【0173】
ウイルスベクターが導入され得る細胞は、限定するものではないが、神経細胞(末梢神経系および中枢神経系の細胞、特にニューロン、オリゴデンドロサイト、グリア細胞、アストロサイトなどの脳細胞を含む)、肺細胞、眼の細胞(網膜細胞、網膜色素上皮、および角膜細胞を含む)、上皮細胞(たとえば腸および呼吸器の上皮細胞)、骨格筋細胞(筋芽細胞、筋管、および筋線維を含む)、横隔膜筋細胞、樹状細胞、膵臓細胞(島細胞を含む)、肝細胞、消化管の細胞(平滑筋細胞、上皮細胞を含む)、心臓細胞(心筋細胞を含む)、骨細胞(たとえば骨髄幹細胞)、造血幹細胞、脾臓細胞、ケラチノサイト、線維芽細胞、内皮細胞、前立腺細胞、関節細胞(たとえば軟骨、メニスカス、滑膜、および骨髄を含む)、生殖細胞などを含むいずれかの種類であり得る。あるいは、細胞は、いずれかの前駆体細胞であり得る。さらなる別の例として、細胞は、幹細胞(たとえば神経幹細胞、肝臓幹細胞)であり得る。さらなる別の例では、細胞は、がん細胞または腫瘍細胞(がんおよび腫瘍は上述されている)であり得る。さらに、細胞は、上述されるいずれかの種の起源由来であり得る。
【0174】
ウイルスベクターは、修飾された細胞を対象に投与する目的のため、in vitroの細胞に導入され得る。特定の実施形態では、細胞は、対象から取り出され、ウイルスベクターがその中に導入され、次にこの細胞を対象に再び戻す。ex vivoでの処置のため対象から細胞を取り出し、次に対象に再導入する方法は、当該分野で知られている(たとえば米国特許第5,399,346号を参照)。あるいは、組み換え型ウイルスベクターは、別の対象由来の細胞、培養した細胞、または他のいずれかの適切な供給源由来の細胞に導入され、この細胞を、それを必要とする対象へ投与する。
【0175】
ex vivoでの遺伝子療法に適した細胞は、上述されている。対象へ投与する細胞の用量は、対象の年齢、状態、および種、細胞の種類、細胞により発現される核酸、投与形式などに応じて変動する。通常、用量あたり少なくとも約10~約10、または約10~約10個の細胞が、薬学的に許容される担体において投与される。特定の実施形態では、ウイルスベクターで形質導入された細胞は、薬学的な担体と組み合わせて有効な量で対象に投与される。
【0176】
一部の実施形態では、ウイルスベクターで形質導入された細胞は、送達されたポリペプチド(たとえば導入遺伝子としてまたはカプシドにおいて発現される)に対する免疫原性応答を誘発するために投与され得る。通常、薬学的に許容される担体と組み合わせたポリペプチドの有効量を発現する細胞の量が投与される。任意に、用量は、(上記に定義される)防御免疫応答をもたらすために十分である。提供される防御の度合いは、免疫原性ポリペプチドを投与する利点がその欠点を上回る限りは、完全または永続的である必要はない。
【0177】
本発明のさらなる態様は、本発明のウイルスベクターまたはカプシドを対象に投与する方法である。特定の実施形態では、本方法は、目的の核酸を動物の対象に送達する方法であって、本発明に係るウイルスベクターの有効量を動物の対象に投与するステップを含む、方法を含む。本発明のウイルスベクターのそれを必要とするヒトの対象または動物への投与は、当該分野で知られているいずれかの手段によるものであり得る。任意選択で、ウイルスベクターは、薬学的に許容される担体において有効な用量で送達される。
【0178】
本発明のウイルスベクターは、(たとえばワクチンとして)免疫原性応答を誘発するように対象にさらに投与され得る。通常、本発明のワクチンは、薬学的に許容される担体と組み合わせたウイルスの有効量を含む。任意選択で、用量は、(上記に定義される)防御免疫応答をもたらすために十分である。提供される防御の度合いは、免疫原性ポリペプチドを投与する利点がその欠点を上回る限りは、完全または永続的である必要はない。対象および免疫原は、上述されている。
【0179】
対象に投与されるウイルスベクターの用量は、投与形式、処置される疾患または病態、個々の対象の状態、特定のウイルスベクター、および送達される核酸に応じて変化し、規定の方法で決定され得る。治療効果を達成するための例示的な用量は、少なくとも約10、10、10、10、10、1010、1011、1012、1013、1014、1015、1016、1017、1018tu以上、好ましくは約10または10、10、1010、1011、1012、1013、1014、または1015tu、さらにより好ましくは約1012~1014tuのウイルス力価である。
【0180】
特定の実施形態では、1回超(たとえば2、3、4回、またはそれ以上)の投与が、様々な間隔の期間、たとえば、毎日、毎週、毎月、毎年などで、望ましいレベルの遺伝子発現を達成するために使用され得る。
【0181】
例示的な投与形式として、経口、直腸、経粘膜的、局所、鼻腔内、吸入(たとえばエアロゾルを介する)、バッカル(たとえば舌下)、膣、髄腔内、眼球内、経皮、子宮内(または胚内)、非経口(たとえば静脈内、皮下、真皮内、筋肉内[骨格筋、横隔膜筋、および/または心筋への投与を含む]、真皮内、胸膜内、脳内、および関節内)、局所(たとえば気道表面を含む皮膚および粘膜の表面、および経皮投与の両方に対する)、リンパ管内(intro-lymphatic)など、ならびに直接的な組織または臓器(たとえば肝臓、骨格筋、心筋、横隔膜筋、または脳)への注射が挙げられる。投与はまた、腫瘍への投与(たとえば腫瘍またはリンパ節の中または近くへの投与)であり得る。いずれの所定の事例にて最も適切な経路は、処置される病態の性質および重症度、ならびに使用される特定のベクターの性質に応じて変化する。
【0182】
一部の実施形態では、ウイルス性ベクターは、肝臓に直接投与される。直接的な投与は、高い特異性の肝細胞の形質導入をもたらし得、たとえばここでは、形質導入された細胞の少なくとも80%、85%、90%、95%、またはそれ以上が肝細胞である。肝臓へ直接ベクターを投与するための当該分野で知られているいずれかの方法が使用され得る。ベクターは、肝臓の中への直接的な注射、または肝臓に血液を通す動脈もしくは静脈の中への注射、たとえば門脈内送達により導入され得る。
【0183】
通常、ウイルス性ベクターは、全身送達、または肝臓における所望の領域もしくは区画への直接的な注射により、液体製剤で投与される。一部の実施形態では、ベクターは、リザーバーおよび/またはポンプを介して送達され得る。他の実施形態では、ベクターは、所望の領域への局所的な適用によるかまたはエアロゾル製剤の鼻腔内投与により提供され得る。眼へまたは耳の中への投与は、液滴の局所的な適用によるものであり得る。さらなる別の例では、ベクターは、固体の徐放製剤として投与され得る。パルボウイルスおよびAAVベクターの徐放は、国際特許公開公報第01/91803号により記載されている。
【0184】
これら組織のいずれかへの送達はまた、組織の中へ埋め込むことができるウイルスベクターを含むデポーを送達することにより達成され得、または組織を、ウイルスベクターを含むフィルムもしくは他のマトリックスと接触させることができる。このような埋め込み可能なマトリックスまたは物質の例は、米国特許第7,201,898号に記載されている。
【0185】
注射用物質(Injectables)は、液体の液剤または懸濁剤、注射前に液体への溶解または懸濁に適した固体の形態として、またはエマルジョンとして、従来の形態で調製され得る。あるいは、これは、たとえばデポー製剤または徐放製剤において、全身的な方法よりは局所的にウイルスベクターを投与し得る。さらにウイルスベクターは、(たとえば米国特許第7,201,898号に記載されるように)骨グラフト代替物、縫合糸、ステントなどの外科的に移植可能なマトリックスなどに乾燥して送達させることができる。
【0186】
経口投与に適した医薬組成物は、それぞれが所定の量の本発明の組成物を含むカプセル剤、カシェー、トローチ剤、もしくは錠剤などの別々の単位で;散剤もしくは顆粒剤として;水性もしくは非水性の液体における液剤もしくは懸濁剤として;または水中油型もしくは油中水型のエマルジョンとして、提示され得る。経口送達は、本発明のウイルスベクターを動物の腸の中の消化酵素による分解を耐えることができる担体に対して複合体形成することにより行われ得る。このような担体の例として、当該分野で知られているプラスチックのカプセルまたは錠剤が挙げられる。このような製剤は、いずれかの適切な薬学の方法により調製され、これは、本組成物および適切な担体(上述の1つ以上のアクセサリー成分を含み得る)の結合をもたらすステップを含む。一般に、本発明の実施形態に係る医薬組成物は、本組成物を液体または微細に分割された固体の担体またはその両方と均一かつ深く混合し、次に必要に応じて得られた混合物を成形することにより調製される。たとえば、錠剤は、任意選択で1つ以上のアクセサリー成分を含む、本組成物を含む散剤または顆粒剤を圧縮または成形することにより調製され得る。圧縮錠は、適切な機械で、自由に流動する形態、たとえば任意選択で結合剤、潤滑剤、不活性な希釈剤、および/または表面活性/分散剤と混合された散剤または顆粒剤の組成物を圧縮することにより調製される。成形された錠剤は、適切な機械において、不活性な液体結合剤で湿潤させた粉末状の化合物を成形することにより作製される。
【0187】
バッカル(舌下)投与に適した医薬組成物は、風味をつけられた基剤、通常スクロースおよびアカシアまたはトラガントにおいて本発明の組成物を含むトローチ剤;ならびにゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシアなどの不活性な基剤において本組成物を含むトローチを含む。
【0188】
非経口投与に適した医薬組成物は、任意選択で意図したレシピエントの血液と等張である、本発明の組成物の無菌性の水性および非水性の注射液剤を含み得る。これら調製物は、本組成物を意図したレシピエントの血液と等張にする、抗酸化剤、バッファー、静菌薬、および溶質を含み得る。水性および非水性の無菌性の懸濁剤、液剤、およびエマルジョンは、懸濁化剤および増粘剤を含み得る。非水性溶媒の例として、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルがある。水性担体として、生理食塩水および緩衝した媒体を含む、水、アルコール溶液/水溶液、エマルジョンまたは懸濁剤が挙げられる。非経口ビヒクルとして、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸リンゲル液、または固定油が挙げられる。静脈内ビヒクルとして、流体および栄養補給剤、電解質補給剤(リンガーデキストロースに基づくものなど)などが挙げられる。同様に保存剤および他の添加剤、たとえば抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性な気体なども存在し得る。
【0189】
本組成物は、たとえば密閉したアンプルおよびバイアルにおいて単回投与または複数回投与用の容器に提示され得、使用する直前に、無菌の液体の担体、たとえば生理食塩水または注射用の水を添加することのみを必要とする凍結乾燥した状態で保存され得る。
【0190】
即時注射の液剤および懸濁剤が、上述される種類の無菌性の散剤、顆粒剤、および錠剤から調製され得る。たとえば、密閉された容器において単位剤形の本発明の注射可能で安定な無菌性の組成物が提供され得る。本組成物は、凍結乾燥した形態で提供することができ、これは、対象への注射に適した液体組成物を形成するための適切な薬学的に許容される担体で再構成され得る。単位剤形は、約1μg~約10gの本発明の組成物であり得る。本組成物が実質的に水に不溶性である場合、生理的に許容可能である十分な量の乳化剤が、水性担体に本組成物を乳化するために十分な量で含まれ得る。このような有用な乳化剤の1つとして、ホスファチジルコリンがある。
【0191】
直腸投与に適した医薬組成物は、単位用量の座薬として提示され得る。これらは、たとえばココアバターなどの1つ以上の従来の固体の担体と本組成物を混合し、次に得られた混合物を成形することにより調製され得る。
【0192】
皮膚への局所的な適用に適した本発明の医薬組成物は、軟膏、クリーム、ローション、ペースト、ゲル、スプレー、エアロゾル、またはオイルの形態であり得る。使用され得る担体として、限定するものではないが、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、アルコール、経皮的エンハーサー、およびそれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。一部の実施形態では、たとえば局所送達は、本発明の医薬組成物を、皮膚の中に入ることができる脂溶性試薬(たとえばDMSO)と混合することにより行われ得る。
【0193】
経皮投与に適した医薬組成物は、長期間、対象の表皮との密接な接触を保持するのに適した個別のパッチの形態であり得る。また経皮投与に適した組成物は、イオン泳動(たとえばPharm. Res. 3:318 (1986)を参照)により送達され得、通常、任意選択で緩衝された本発明の組成物の水溶液の形態をとり得る。適切な製剤は、クエン酸塩またはビス/トリスバッファー(pH6)またはエタノール/水を含み得、0.1~0.2Mの有効成分を含み得る。
【0194】
本明細書中開示されるウイルスベクターは、いずれかの適切な手段、たとえば対象が吸入するウイルスベクターから構成される呼吸に適した粒子のエアロゾル懸濁剤を投与することにより、対象の肺へ投与され得る。呼吸に適した粒子は、液体または固体であり得る。ウイルスベクターを含む液体粒子のエアロゾルは、任意の適切な手段、たとえば圧力駆動式のエアロゾルネブライザーまたは超音波ネブライザーを用いることにより作製されてもよく、これは当業者に知られている。たとえば、米国特許第4,501,729号を参照されたい。ウイルスベクターを含む固体粒子のエアロゾルはまた、医薬の分野で知られている技術により、任意の固体の微粒子薬物エアロゾル発生器で作製され得る。
【0195】
本発明を記載してきたが、同じことを、以下の実施例でより詳細に説明する。これは、単なる例示の目的で本明細書に含まれており、本発明を限定する意図はない。
【実施例0196】
実施例1
AAVカプシド遺伝子のシャッフルされたライブラリーの構築
AAVカプシド遺伝子のシャッフルされたライブラリーの構築を、前述(Yang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 106(10):3946 (2009); Yang et al., Meth. Mol. Biol. 709:127 (2011))のように行った。AAV血清型1、2、3B、4、6、7、8、および9のカプシド遺伝子を、AAV2末端逆位配列(ITR)およびAAV2 Rep遺伝子を含む同じベクターpXX-UF1-AAVにクローニングした。ITR、AAV2 Rep、および8つの異なるCap遺伝子のそれぞれを含むこれらプラスミドを、順次pXX-UF1-AAVnと命名した。カプシド遺伝子は、DNAシャフリングのために同じ比率で混合したプライマーCAP-5’ 5’-CCC-AAGCTTCGATCAACTACGCAGACAGGTACCAA-3’(配列番号7)およびCAP-3’ 5’-ATAAGAAT-GCGGCCGC-AGAGACCAAAGTTCAACTGAAACGA-3’(配列番号8)により増幅させた(Stemmer, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:10747 (1994))。簡潔に述べると、4μgのDNAテンプレートを、15℃にて0.04UのDNase Iで短時間処理し、300~500および500~1000bpのフラグメントを、pfu DNAポリメラーゼを使用するカプシド遺伝子の再アセンブリのためアガロースゲルから精製した。再アセンブリしたカプシド遺伝子を、CAP5’/CAP3’プライマーを使用してpfu DNAポリメラーゼにより再増幅させ、HindIII/NotIで消化させ、AAV2 RepおよびCap遺伝子に隣接するAAV2 ITRを含むHindIII/NotIで消化されたpXX-UF1-AAVベクターにライゲートした。HindIII/NotIによる消化は、肝臓に多く含まれるCap遺伝子のPCRにより増幅されるフラグメントの置き換えのためAAV2カプシド遺伝子を効率的に除去した。PCRプログラムは、94℃で5分間;94℃で1分間、ホットスタートでは75℃で5分間、60℃で1分間、72℃で4.5分間;29サイクルの94℃で1分間、60℃で1分間、72℃で4.5分間;72℃で10分間であった。再構築されたプラスミドを、E. coli DH10B細胞に形質転換し、多くのクローンを、制限酵素の解析のためにランダムに採取して、組み換えの頻度およびパッケージングの実行可能性を決定した。得られたITR含有感染性AAVプラスミドライブラリーを使用して、自己パッケージングするAAVウイルス性粒子のライブラリーを作製した。
【0197】
実施例2
マウスの肝臓におけるin vivoでのエンリッチメント
肝臓に対して標的化されたAAVバリアントのin vivoでのスクリーニングのため、1×1011vg(ベクターゲノム)/マウスのキメラ性AAVライブラリーを、成体のC57BL/6Jマウスへ尾静脈を介して投与した。2週間後に、肝臓および他の組織を含むマウスの組織を、フェノール/クロロホルム抽出を使用するゲノムDNAの単離のため回収した。カプシド遺伝子用の一般的なプライマーを使用して総肝臓DNAのPCR増幅を行った後、PCR産物を、AAV2 ITRおよびRep遺伝子を含むAAVプラスミド骨格に再度クローニングした。これにより、カプシド遺伝子のPCR産物およびpXX-UF1-AAVベクターを、HindIII/NotIで消化させ、クローニングのためライゲートした。第2のラウンドの感染性AAV粒子の作製を、第1のラウンドのin vivoでのエンリッチメントからもたらし、マウスに再度注射した。このin vivoでのエンリッチメントプロセスを、マウスで3回反復した。
【0198】
著しく多く含まれるカプシド遺伝子の最終的なPCR産物を、AAV末端逆位配列(ITR)を含まないAAV2 Rep遺伝子を含むAAVパッケージングプラスミドの汎用性のある前駆体にクローニングした。カプシド遺伝子を、Rep遺伝子の下流およびAAVポリアデニル化シグナル配列の上流にライゲートして、RepおよびCap遺伝子の発現カセットを再構成した。このライゲーション産物を、大腸菌株DH10Bの中へと電気穿孔を行い、Amp耐性プレートで増殖させた。個々のコロニーを採取し、ミニプレップDNAを、カプシド遺伝子のDNAシーケンシングのため単離した。多くの新規のカプシド遺伝子が見出され、それらのうちの2つが、著しく多く含まれていた。これら2つのカプシド遺伝子を、AAVXL32およびAAVXL12と命名した。これらのDNA配列は、配列番号1および2で示しており、アミノ酸配列は、配列番号4および5で示している。AAVXL12およびAAVXL32のDNA配列は、23のヌクレオチド(2214ヌクレオチドのうちの23)が異なり、それらのアミノ酸配列は、2残基(737アミノ酸のうちの2つ)のみが異なる。アミノ酸220はXL12ではSでありXL32ではDであり;アミノ酸643は、XL12ではNでありXL32ではHである。
【0199】
実施例3
レポーター遺伝子を含むAAVベクターの作製
カプシドに特異的なパッケージングプラスミドを、従来の大規模な調製方法により作製し、CsCl密度こう配超遠心により2回精製した。これらプラスミドは、ユビキタスなプロモーターCMVまたはCB(CMV-エンハーサー+ニワトリのβアクチン基本プロモーター)の転写制御下での緑色蛍光タンパク質GFPおよびβ-ガラクトシダーゼLac-Zの遺伝子などのレポーター遺伝子を含むAAVベクターのパッケージングに使用した。AAVベクターは、各新規のカプシドにパッケージングし、従来の二重CsCl密度こう配超遠心により精製した。レポーターベクターの力価を、既知のコピー数の対応するレポーターベクターのプラスミドのDNAに対するDNAドットブロット法により決定した。全てのベクターの収率は、正常な範囲にあった。
【0200】
実施例4
マウスにおいて肝臓に多く含まれるAAVカプシドのin vivoでの試験
in vivoで多く含まれる選択された新規カプシドが肝臓に形質導入する際に効力があるかどうかを試験するために、AAVXL12およびAAVXL32を使用して、2つのレポーター遺伝子、GFPおよびLacZを別々にパッケージングした。これらベクターを精製し、力価決定し、5×1012vg/kg体重の用量でC57B/6マウスの尾静脈を介して静脈内注射した。同じGFPおよびLacZの遺伝子をパッケージングするAAV9ベクターを、AAV9の遺伝子導入がマウスの肝臓で強力であるため、陽性対象として使用した。図1A~1Bで示されるように、これら結果は、GFPおよびLacZのレポーター遺伝子の両方で、AAVXL12およびAAVXL32が、対照のAAV9と本質的に同じレベルの肝臓遺伝子発現を達成することを明らかにし、マウスにおいて肝臓指向性カプシド遺伝子を多く含むin vivoでの選択戦略が確認された。
【0201】
実施例5
ヒト肝臓がん細胞株での肝臓に多く含まれるAAVカプシドのin vitroでの試験
肝臓指向性カプシドがヒト起源の肝臓細胞に形質導入できるかどうかを見るために、まずベクターを、Huh7と命名されているヒト肝臓がん細胞株においてin vitroで試験した。Huh7は、肝臓に特異的なプロモーターを用いるAAVベクター遺伝子発現に関するin vitroでのアッセイで広く使用されている。この細胞株は、ヒト肝細胞の性質の一部を保持し、培養された初代ヒト肝細胞と正の相関を示す。よって、この細胞株は、ヒト起源の細胞でのAAVカプシドの肝臓指向性の最初の試験に使用され得る。再度、AAV9を、陽性対照として使用した。図2に示されるように、AAVXL12およびAAVXL32は両方とも、1×10vg/細胞および1×10vg/細胞の感染多重度(moi)で著しく効率的な遺伝子発現を達成した。他方で、AAV9は、Huh7細胞に形質導入する際に効率的ではなかった。数個のlacZ陽性細胞のみが、高いmoiで検出された。これら結果は、AAVXL12およびAAVXL32が、マウス肝臓細胞に加えて、ヒト肝臓細胞に対して高い親和性を有し得ることを示唆している。
【0202】
実施例6
ヒトおよびイヌの初代肝細胞での肝臓に多く含まれるAAVカプシドのin vitroでの試験
特定のAAV血清型は、マウスの肝臓に非常に良好に形質導入するがヒトまたは非ヒト(サル)の肝臓への形質導入は不十分であり(Hurlbut et al., Mol. Ther.18:1983 (2010))、対して他の血清型は、マウスの肝臓への形質導入は不十分であるが、ヒト化した肝臓のマウスモデル(Lisowski et al., Nature 506(7488):382 (2014))およびサル(Li et al., Mol. Ther. 12:1867 (2015))では非常に良好に形質導入が行われるため、この矛盾は、新規の肝臓指向性AAVカプシドも同様にヒトおよびイヌの初代肝細胞培養物に有効に形質導入するかどうかの試験を促した。
【0203】
まず、ベクターを、3名のヒトのドナーから単離したヒト初代肝細胞においてin vitroで試験した。肝細胞は、TRL(Triangle Research Laboratories、現在はInvitrogenの子会社)から購入し、ベンダーにより提供された培地をそのプロトコルにしたがい用いて培養した。ユビキタスなCMVプロモーターの制御下にあるGFPを、レポーター遺伝子として使用し、AAVXL12、AAVXL32、およびAAV2、6、7、8、9などにパッケージングした。これらベクターを使用して、約80%の細胞のコンフルエンスおよび1×10vg/細胞のmoiのベクター用量で、初代肝細胞培養物に感染させた。緑色を呈するGFP発現にて、細胞上で蛍光写真を異なる時点で撮影した。図3A~3Dに示されるように、この結果は、広く報告されている血清型カプシド、たとえばAAV8およびAAV9が、マウスの肝臓に強力に形質導入したが、これらベクターは初代ヒト肝細胞上では非常に不十分な感染性を呈したことを明らかにした。対照的に、マウスの肝臓に多く含まれる新規の肝臓指向性AAVカプシドはまた、この試験で試験した他の全ての天然に存在するベクターの中で最も高い効率で初代ヒト肝細胞に形質導入した。感染から24時間後(図3A)では、他の血清型のAAVは、ごくわずかのGFP発現を有していたが、AAVXL12およびAAVXL32は既に有意なGFP発現を有していた。感染から48時間後(図3B)では、AAVXL12およびAAVXL32は、再び最も高いレベルのGFP発現を示した。上記2つのベクターで感染させた肝細胞は、7日間培養を続け、GFP写真を、毎日撮影した。GFP蛍光の強度は、時間と共に増大し、7日目に最も高いレベルに達した(図3Cおよび3D)。よって、新規カプシドは、マウスの肝臓への形質導入は非常に不十分であるが、ヒト化したマウスの肝臓および非ヒトの霊長類の肝臓ではヒト肝細胞に強力に形質導入する、AAV3およびAAVLK03などの他のAAVカプシド(Lisowski et al., Nature 506(7488):382 (2014))およびサル(Li et al., Mol. Ther. 12:1867 (2015))とは明らかに対照的である。AAV2およびAAV5などの他のAAV血清型は、マウスおよび非ヒトの霊長類の肝臓の両方への形質導入が不十分であることが報告される。上記知見は、AAVXL12およびAAVXL32が両方とも、他の既知のAAVカプシドでは見られない固有の性質を有することを強力に示唆した。
【0204】
その後、イヌの初代肝細胞を、同様に、肝臓指向性AAVの感染性を試験するために使用し、一般に使用されるGFPレポーター遺伝子を含む多くのAAVカプシドと比較した。AAVベクターゲノム粒子は、1×10vg/細胞のmo.で使用した。2匹のイヌ由来の凍結保存および未処理の肝細胞を使用した。感染から24時間後および48時間後に、緑色蛍光写真を、AAV GFPベクターに感染した細胞で撮影した。図4A~4Cに示されるように、AAVXL12およびAAVXL32は、AAVXL12およびAAVXL32と同様であるかこれらよりもわずかに高いAAV6を除き、試験される他の血清型よりも高い遺伝子導入効率を呈した。特に、AAV6は、イヌの肝細胞で高いレベルの遺伝子導入を示したが、これは、ヒト初代肝細胞培養物では観察されなかった。これら結果は、AAVXL12およびAAVXL32が両方とも、イヌ肝細胞で高い感染性を有したことを示している。
【0205】
実施例7
非ヒト霊長類の肝臓でのAAVXL32のin vivoでの試験
次に、肝臓指向性カプシドが非ヒト霊長類の肝臓でも効率的な遺伝子導入を達成できるかどうかを試験した。AAVXL32を、AAV8と比較するために選択した。後者は、サルの肝臓に形質導入できることが以前に報告されており、また、血友病Bの臨床試験においてヒトでの肝臓指向性遺伝子療法に使用されている。3~5歳の成体の雄性のアカゲザル(Rhesus Macaque monkey)を、以前に公開された論文にしたがいAAVXL32およびAAV8に対する血清中和抗体に関してスクリーニングした。1:8未満の中和抗体力価を有する4匹のサルを選択し、AAVベクターを静脈内注射した。2匹のサルに、1×1012vg/kg体重の用量で、AAVXL32-CB-GFPを注射し、2匹にAAV-CB-GFPを注射した。AAVベクター発現カセットは、より迅速かつ効率的な遺伝子発現のため二本鎖の(同様に自己相補的とも呼ばれる)の形態であった。2週間後に、サルを安楽死させ、肝臓組織を、凍結薄切片で採取し、緑色蛍光撮影を行った。図5に示されるように、AAVXL32は、サルの肝臓においてAAV8よりも有意に高いレベルのGFP発現を達成した。GFP陽性細胞は、AAVXL32で処置したサルにおいて高い蛍光強度およびより陽性の細胞(矢印により指摘)で容易に検出される。他方で、AAV8で処置したサルは、上記よりもかなり少ない陽性細胞および弱い蛍光強度を示した。これら結果は、AAVXL32が、非ヒト霊長類においてAAV8よりも有意に肝臓指向性があることを強力に示唆している。
【0206】
実施例8
AAVXL32カプシドタンパク質の性質決定および第3のカプシドタンパク質のための弱い開始コドンの除去
カプシドタンパク質を性質決定するために、二重のCsCl超遠心分離で精製されDNAドットブロットで力価決定されたAAVXL32カプシドを解析した。精製したベクターを、SDS PAGEゲルにローディングし、銀染色後にVPタンパク質の分子量を決定した。図6に示されるように、AAVXL32は、4つのバンドを呈した。全ての天然のAAVの典型的なVP1タンパク質、VP2タンパク質、およびVP3タンパク質に加え、VP1およびVP2の間に追加のバンド(本明細書中VPXと命名)が存在した。この追加のバンドは、大分子タンパク質VP1に固有の領域に位置するXhoI制限部位でのAAV7およびAAV8のカプシド遺伝子の単一のヌクレオチドの部位特異的な変異誘発の結果であった。この変異を作製する本来の目的は、AAV血清型1、2、3、4、6、7、8、および9のカプシド遺伝子を含むAAVカプシド遺伝子のDNAシャフリングライブラリーでのDNAクローニングの簡便性のためであった(Yang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 106(10):3946 (2009))。VP1開始コドンから計測してヌクレオチド219でのXhoI部位での単一のC-G変異(CTCGAGからCTGGAG)は、AAV7およびAAV8の両方のカプシド遺伝子におけるアミノ酸ロイシンでのセンス変異を作製した。これは、VP1タンパク質アミノ酸配列を変更しなかった。しかしながら、このセンス変異は、(伝統的なATG開始コドンと比較して)弱い非コンセンサスな開始コドンCTGを作製したとの疑いがあった。これは、VP1およびVP2の間に追加のカプシドタンパク質VPXの産生をもたらし得た。明らかに、この追加のバンドは、認識できる方法でベクターDNAのパッケージングおよび感染性を損なうものではなかった。センス変異が追加のカプシドタンパク質で弱い開始コドンを作製したことを確認するために、部位特異的な変異誘発を行い、C-G変異を野生型のAAV7およびAAV8の配列の元のCに戻した。AAVXL32.1と称される復帰変異を有する新規のカプシド遺伝子は、実際に弱い開始コドンを不活性化し、VP1およびVP2の間の追加のカプシドバンドを除去した(図6)。XL32またはXL32.1のいずれかにパッケージングされたLacZレポーター遺伝子ベクターは、ベクターの収率および感染性に明らかな差異を示さず、追加のカプシドバンドが、AAVカプシド機能においてわずかなまたは知られていない役割を果たしたことが示唆される。
【0207】
実施例9
ヒト血清サンプルにおける中和抗体の普及
ヒトの集団において既存のAAVカプシドに対する中和抗体(Nab)は、AAVが介在するin vivoでの遺伝子療法にとって重要な問題である。AAV2およびAAV3などの一部のAAVの血清型は、非常に著しくNabが普及している(Ling, J. Integr. Med. 5:341 (2015))。肝臓指向性AAVXL32カプシドに対するNabの普及に関する予備評価を行った。中国人患者のグループの血清サンプルにおけるNabの普及を、それらの身元を完全に知らされることなく試験した。特に、100名の異なる人物由来の血清を、それらの既存のAAVXL32カプシドに対するNAbに関して試験した。Nabアッセイは、原則的に、Lingらおよびその中の参照文献(Ling, J. Integr. Med. 5:341 (2015))により以前に公開された方法により行った。修飾は、レポーター遺伝子としての分泌性ルシフェラーゼ(Gaussiaルシフェラーゼ)およびテスター細胞としてヒト肝臓細胞株Huh7を使用することにより行った。簡潔に述べると、5×10細胞/ウェルのHuh7細胞を、丸底の96ウェルプレートにプレーティングした。翌日、個々の血清サンプルを、2倍増加させながら段階希釈した。Nab陽性対照は、AAVXL32で免疫化したマウスから集めた血清であり、陰性対照は、Sigmaから購入したネイティブなマウスから集めた血清であった。希釈した血清サンプルおよびAAVを、37℃で1時間インキュベートし、1日早くHuh7細胞を播種したプレートに添加した。AAVXL32感染から48時間後に、細胞培養培地の小さなアリコートを、ルシフェラーゼ活性アッセイのため各ウェルから採取した。ホタルのルシフェラーゼとは異なり、Gaussiaルシフェラーゼは、分泌性酵素であり、酵素活性の測定のため細胞を溶解する必要がない。これら結果は、血清サンプルの50%超のNab力価が1:8希釈未満であり、約70%のNab力価が、1:16希釈未満であったことを示した。これらデータは、AAVXL32のNab普及が、中国人の集団においてAAV2、AAV3、AAVKL3、AAV5、およびAAV8に関して以前に公開されたデータよりも著しく低かったことを示している。これら試験では、AAV2、AAV3、およびAAVK03は、1:20希釈の血清希釈カットオフを有する対象の90%超において中和抗体に陽性であることが見出され、対して、AAV8は、同じ1:20の希釈カットオフでNab陽性率が80%超であり、AAV5の陽性率は70%超であった。
【0208】
上記は、本発明の例であり、その限定と解釈すべきではない。本発明は、以下の特許請求の範囲、およびその中に含まれる特許請求の範囲の均等物により定義される。
【0209】
AAVカプシド配列
配列番号1:AAVXL12カプシド遺伝子DNA配列
【化1】
【0210】
配列番号2:AAVXL32カプシド遺伝子DNA配列
【化2】
【0211】
配列番号3:AAVXL32.1カプシド遺伝子DNA配列
【化3】
【0212】
配列番号4:AAVXL12カプシドアミノ酸配列
【化4】
【0213】
配列番号5:AAVXL32カプシドアミノ酸配列
【化5】
【0214】
配列番号6:AAV XL32.1カプシドアミノ酸配列
【化6】
【0215】
配列番号7:DNAプライマーCAP-5’
5’-CCC-AAGCTTCGATCAACTACGCAGACAGGTACCAA-3’
【0216】
配列番号8:DNAプライマーCAP-3’
5’-ATAAGAAT-GCGGCCGC-AGAGACCAAAGTTCAACTGAAACGA-3’
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図5
図6
【配列表】
2024045321000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-02-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的の核酸をヒトの対象の幹細胞に送達する方法における使用のための医薬製剤であって、
(a)異種性核酸を含むAAVベクターゲノム、および
(b)配列番号5と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、または配列番号2~3のいずれか1つのヌクレオチド配列と少なくとも90%同一である核酸によってコードされるAAVカプシドタンパク質を含むAAVカプシドであって、前記AAVカプシドタンパク質が、AAVベクターに肝臓指向性を付与する、AAVカプシド
を含み、かつ
(c)前記AAVカプシドが、前記AAVベクターゲノムをカプシドに包有する、
AAV粒子を含み、
前記使用が、前記AAV粒子または前記医薬製剤の有効量をヒトの対象に投与し、それにより前記目的の核酸を前記対象の幹細胞に送達するステップを含む、
医薬製剤。
【請求項2】
前記AAVカプシドタンパク質が、配列番号5と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、または配列番号2~3のいずれか1つのヌクレオチド配列と少なくとも95%同一である核酸によってコードされる、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
前記ヒトが、新生児、乳幼児、または若年である、請求項1または2に記載の医薬製剤。
【請求項4】
前記AAV粒子が、全身的に投与される、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項5】
前記AAV粒子が、肝臓内への注射、門脈内への注射、またはそれらのいずれかの組み合わせにより肝臓へ直接送達される、、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項6】
前記目的の核酸が、グルコース-6-ホスファターゼ、グルコース-6-ホスフェートトランスロカーゼ、ミクロソームのリン酸塩またはピロリン酸塩輸送体、ミクロソームのグルコース輸送体、リソソーム酸α-グルコシダーゼまたはリソソーム膜タンパク質-2、脱分枝酵素、アミログルコシダーゼまたはオリゴグルカノトランスフェラーゼ、分枝酵素、筋ホスホリラーゼ、肝臓ホスホリラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、X連鎖性ホスホリラーゼキナーゼ、肝臓および筋ホスホリラーゼキナーゼ、肝臓ホスホリラーゼキナーゼ、筋ホスホリラーゼキナーゼ、グリコーゲンシンターゼ、グルコース輸送体-2、ホスホグルコイソメラーゼ、筋ホスホグリセリン酸キナーゼ、ホスホグリセリン酸ムターゼ、フルクトース1,6-ジホスファターゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、α-L-イズロニダーゼ、イズロン酸硫酸スルファターゼ、ヘパラン-S-硫酸スルファミニダーゼ、N-アセチル-D-グルコサミニダーゼ、アセチル-CoA-グルコサミニドN-アセチルトランスフェラーゼ、N-アセチル-グルコサミニン-6-硫酸スルファターゼ、ガラクトサミン-6-硫酸スルファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、アリールスルファターゼB、β-グルクロニダーゼ、ヒアルロニダーゼ、ムコリピドーシスI、N-アクチルグルコサ-ミニル-1-ホスホトランスフェラーゼ触媒サブユニット、N-アセチルグルコサ-ミニル-1-ホスホトランスフェラーゼ、ガングリオシドβ-ガラクトシダーゼ、β-ヘキサミニダーゼA、β-ヘキソサミニダーゼB、スフィンゴミエリナーゼ、グルコセレブロシダーゼ、セラミニダーゼ、α-ガラクトシダーゼA、ガラクトシルセラミドβ-ガラクトシダーゼ、アリールスルファターゼA、リソソーム酸リパーゼ、リソソーム膜貫通型CLN3タンパク質、ノイラミニダーゼ1、保護タンパク質/カテプシンA、α-D-マンノシダーゼ、β-D-マンノシドーシス、α-D-フコシダーゼ、N-アスパルチルグルコサミニダーゼ、ならびにリン酸Na共輸送体からなる群から選択される治療用ポリペプチドをコードする、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項7】
それを必要とするヒトの対象の障害を処置する方法における使用のための医薬製剤であって、
(a)異種性核酸を含むAAVベクターゲノム、および
(b)配列番号5と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、または配列番号2~3のいずれか1つのヌクレオチド配列と少なくとも90%同一である核酸によってコードされるAAVカプシドタンパク質を含むAAVカプシドであって、前記AAVカプシドタンパク質が、AAVベクターに肝臓指向性を付与する、AAVカプシド
を含み、かつ
(c)前記AAVカプシドが、前記AAVベクターゲノムをカプシドに包有する、
AAV粒子を含み、
前記障害が、前記対象の肝臓において産物を発現させることにより処置可能であり、前記使用が、前記AAV粒子または前記医薬製剤の治療有効量をヒトの対象に投与して、前記産物を発現させるステップを含む、
医薬製剤。
【請求項8】
前記AAVカプシドタンパク質が、配列番号5と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、または配列番号2~3のいずれか1つのヌクレオチド配列と少なくとも95%同一である核酸によってコードされる、請求項7に記載の医薬製剤。
【請求項9】
前記ヒトが、新生児、乳幼児、または若年である、請求項7または8に記載の医薬製剤。
【請求項10】
前記障害が、Ia型糖原病(GSD)、Ib型GSD、Ic型GSD、Id型GSD、II型GSD、ポンペ病、乳児性IIa型GSDおよびIIb型、IIIa型およびIIIb型GSD、IV型GSD(Andersen疾患)、V型GSD(McArdle疾患)、VI型GSD(ハース病)、VII型GSD(垂井病)、GSD VIII/IXa型、GSD IXb型、GSD IXc型、GSD IXd型、GSD O、Fanconi-Bickel症候群、ホスホグルコイソメラーゼ欠損症、筋ホスホグリセリン酸キナーゼ欠損症、ホスホグリセリン酸ムターゼ欠損症、フルクトース1,6-ジホスファターゼ欠損症、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ欠損症、乳酸デヒドロゲナーゼ欠損症、ハーラー症候群、Scheie症候群、およびHurler-Scheie症候群、ハンター症候群、Sanfilippo A症候群、Sanfilippo症候群、Morquio疾患、Maroteaux-lmay疾患、Sly症候群、ヒアルロニダーゼ欠損症、シアリドーシス、ムコリピドーシス、GM1ガングリオシドーシス、GM2ガングリオシドーシス、ニーマン・ピック病、ゴーシェ病、ファーバー病、Fabry病、クラッベ病、異染色性白質ジストロフィー、Wolman疾患、バッテン病、シアリドーシス、ガラクトシアリドーシス、α-マンノシドーシス、β-マンノシドーシス、フコシドーシス、ならびにシアル酸尿症からなる群から選択される、請求項7~9のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項11】
それを必要とするヒトの対象の障害を処置する方法における使用のための医薬製剤であって、
(a)異種性核酸を含むAAVベクターゲノム、および
(b)配列番号5と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、または配列番号2~3のいずれか1つのヌクレオチド配列と少なくとも90%同一である核酸によってコードされるAAVカプシドタンパク質を含むAAVカプシドであって、前記AAVカプシドタンパク質が、AAVベクターに肝臓指向性を付与する、AAVカプシド
を含み、かつ
(c)前記AAVカプシドが、前記AAVベクターゲノムをカプシドに包有する、
AAV粒子を含み、
前記障害が、前記対象の肝臓において産物を発現させることにより処置可能であり、前記使用が、前記AAV粒子または前記医薬製剤の治療有効量をヒトの対象に投与して、前記産物を発現させるステップを含み、
前記障害が、嚢胞性線維症、血友病A、血友病B、地中海貧血症、貧血、アルツハイマー病、多発性硬化症、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、てんかん、がん、真性糖尿病、Duchenne型およびBecker型を含む筋ジストロフィー、ゴーシェ病、ハーラー病、アデノシンデアミナーゼ欠損症、Ia型糖原病(GSD)、Ib型GSD、Ic型GSD、Id型GSD、II型GSD、ポンペ病、乳児性IIa型GSDおよびIIb型、IIIa型およびIIIb型GSD、IV型GSD(Andersen疾患)、V型GSD(McArdle疾患)、VI型GSD(ハース病)、VII型GSD(垂井病)、GSD VIII/IXa型、GSD IXb型、GSD IXc型、GSD IXd型、GSD O、Fanconi-Bickel症候群、ホスホグルコイソメラーゼ欠損症、筋ホスホグリセリン酸キナーゼ欠損症、ホスホグリセリン酸ムターゼ欠損症、フルクトース1,6-ジホスファターゼ欠損症、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ欠損症、乳酸デヒドロゲナーゼ欠損症、ハーラー症候群、Scheie症候群、およびHurler-Scheie症候群、ハンター症候群、Sanfilippo A症候群、Sanfilippo症候群、Morquio疾患、Maroteaux-lmay疾患、Sly症候群、ヒアルロニダーゼ欠損症、シアリドーシス、ムコリピドーシス、GM1ガングリオシドーシス、GM2ガングリオシドーシス、ニーマン・ピック病、ゴーシェ病、ファーバー病、Fabry病、クラッベ病、異染色性白質ジストロフィー、Wolman疾患、バッテン病、シアリドーシス、ガラクトシアリドーシス、α-マンノシドーシス、β-マンノシドーシス、フコシドーシス、シアル酸尿症、先天性肺気腫、レッシュ・ナイハン症候群、ニーマン・ピック病、メープルシロップ尿症、網膜変性疾患、星状細胞腫、神経膠芽腫、肝炎、うっ血性心不全、末梢動脈疾患、関節炎、関節障害、内膜過形成、AIDS、筋消耗、下肢虚血、腎臓欠損症、貧血、LDL受容体欠損、高アンモニア血症、脳脊髄液運動失調、ならびにフェニルケトン尿症からなる群から選択される、
医薬製剤。
【請求項12】
前記ヒトが、新生児、乳幼児、または若年である、請求項11に記載の医薬製剤。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
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