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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045329
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】抗NGF抗体およびその方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20240326BHJP
   C07K 16/22 20060101ALI20240326BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240326BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240326BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240326BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240326BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240326BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240326BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240326BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240326BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240326BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240326BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/22 ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/63 Z
C12P21/02 C
C12P21/08
A61K39/395 N
A61P9/00
A61P9/10 101
A61P3/04
A61P29/00
【審査請求】有
【請求項の数】40
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024010060
(22)【出願日】2024-01-26
(62)【分割の表示】P 2020548794の分割
【原出願日】2019-01-18
(31)【優先権主張番号】62/641,538
(32)【優先日】2018-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】515230154
【氏名又は名称】ゾエティス・サービシーズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】スタインジャー,セバスチャン・シー・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ダンクル,ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ラグ,キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】ダナム,スティーブン・エイ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】神経成長因子(NGF)関連障害の治療または予防のために用いられる抗NGF抗体、および抗原結合タンパク質を提供する。
【解決手段】特定のアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1)、相補性決定領域2(CDR2)および相補性決定領域3(CDR3)を含む可変軽鎖(VL)、特定のアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1)、相補性決定領域2(CDR2)および相補性決定領域3(CDR3)を含む可変重鎖(VH)、ならびに前記抗原結合タンパク質の可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにおけるCDR1、CDR2またはCDR3の少なくとも1つにおいて1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有するその任意の変種、からなる群から選択される少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む、組換え抗原結合タンパク質を提供する。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経成長因子(NGF)に特異的に結合する組換え抗原結合タンパク質であって、
a.i.配列番号1または配列番号21に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1);
ii.配列番号2または配列番号22に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR2);
iii.配列番号3または配列番号23に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR3)を含む可変軽鎖(VL);および
b.i.配列番号4または配列番号24に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1);
ii.配列番号5または配列番号25に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR2);および
iii.配列番号6または配列番号26に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR3)を含む可変重鎖(VH);ならびに
前記抗原結合タンパク質の前記可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにおけるCDR1、CDR2またはCDR3の少なくとも1つにおいて1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有するその任意の変種、からなる群から選択される少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)
を含む、組換え抗原結合タンパク質。
【請求項2】
a.前記軽鎖可変領域(VL)が、
i.配列番号1を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1)
ii.配列番号2を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDR2)
iii.配列番号3を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDR3)を含み、かつ、
b.前記重鎖可変領域(VH)が、
i.配列番号4を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1)
ii.配列番号5を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDR2)
iii.配列番号6を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDR3)を含み;かつ
その任意の変種が、前記抗原結合タンパク質の前記可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにおけるCDR1、CDR2またはCDR3のうちの少なくとも1つにおいて1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有する、
請求項1に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項3】
c.前記軽鎖可変領域(VL)が、
i.配列番号21を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1)
ii.配列番号22を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDR2)
iii.配列番号23を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDR3)を含み、かつ、
d.前記重鎖可変領域(VH)が、
i.配列番号24を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1)
ii.配列番号25を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDR2)
iii.配列番号26を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDR3)を含み;かつ
その任意の変種が、前記抗原結合タンパク質の前記可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにおけるCDR1、CDR2またはCDR3のうちの少なくとも1つにおいて1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有する、
請求項1に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項4】
神経成長因子(NGF)に特異的に結合する組換え抗原結合タンパク質であって、
a.配列番号7、配列番号9、配列番号27、配列番号29、配列番号55、配列番号71、配列番号73、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、および配列番号91からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖、および
b.配列番号8、配列番号10、配列番号28、配列番号30、配列番号56、配列番号67、配列番号69、配列番号75、配列番号77、配列番号79および配列番号81からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖;ならびに
前記抗原結合タンパク質の前記可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにおいて1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有するその任意の変種、を含む、
組換え抗原結合タンパク質。
【請求項5】
前記可変軽鎖が、配列番号7に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ前記可変重鎖が、配列番号8に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み;かつその任意の変種が、前記抗原結合タンパク質の前記可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにおいて1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有する、請求項4に記載の組換え抗原結合タンパク質。
【請求項6】
前記可変軽鎖が、配列番号27に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ前記可変重鎖が、配列番号28に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み;かつその任意の変種が、前記抗原結合タンパク質の前記可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにおいて1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有する、請求項4に記載の組換え抗原結合タンパク質。
【請求項7】
前記結合タンパク質がTrkA受容体へのNGFの結合を阻害する、請求項1~6のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項8】
前記結合タンパク質がNGF関連障害を低減または除去する、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項9】
前記NGF関連障害が、心臓血管疾患、アテローム性動脈硬化症、肥満症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、疼痛および炎症からなる群から選択される、請求項8に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項10】
前記NGF関連障害が疼痛である、請求項9に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項11】
前記NGF関連障害が疼痛障害であり、かつ変形性関節症疼痛、関節リウマチ疼痛、手術および術後疼痛、切開疼痛、全身性炎症疼痛、がん疼痛、外傷からの疼痛、神経障害性
疼痛、神経疼痛、糖尿病性ニューロパチー疼痛、リウマチ性疾患と関連付けられる疼痛、筋骨格疾患と関連付けられる疼痛、内臓疼痛、ならびに胃腸疼痛からなる群から選択される、請求項10に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項12】
前記NGF関連障害が変形性関節症疼痛を含む、請求項11に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項13】
前記結合タンパク質が、モノクローナル抗体;キメラ抗体、単鎖抗体、四量体抗体、四価抗体、多重特異性抗体、ドメイン特異性抗体、ドメイン欠失抗体、融合タンパク質、ScFc融合タンパク質、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)断片、Fv断片、ScFv断片、Fd断片、単一ドメイン抗体、dAb断片、小モジュラー免疫医薬(SMIP)、ナノボディ、およびIgNAR分子からなる群から選択される、請求項1~12のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項14】
モノクローナル抗体である、請求項13に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項15】
前記モノクローナル抗体が、イヌモノクローナル抗体、イヌ化モノクローナル抗体、ネコモノクローナル抗体、ネコ化モノクローナル抗体、ヒトモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体、ウマモノクローナル抗体またはウマ化モノクローナル抗体である、請求項14に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項16】
治療有効量の請求項1~15のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質および薬学的に許容される担体を含む、医薬または獣医学的組成物。
【請求項17】
対象における疼痛の治療において使用するための、請求項18に記載の医薬または獣医学的組成物。
【請求項18】
疼痛が、変形性関節症疼痛、関節リウマチ疼痛、手術および術後疼痛、切開疼痛、全身性炎症疼痛、がん疼痛、外傷からの疼痛、神経障害性疼痛、神経疼痛、糖尿病性ニューロパチー疼痛、リウマチ性疾患と関連付けられる疼痛、筋骨格疾患と関連付けられる疼痛、内臓疼痛、ならびに胃腸疼痛からなる群から選択される、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項19】
疼痛が変形性関節症疼痛を含む、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
疼痛が手術および術後疼痛を含む、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項21】
疼痛ががん疼痛を含む、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項22】
イヌ、ネコ、ウマまたはヒトにおいて使用するための、請求項16~21のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
イヌにおいて使用するための、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
ネコにおいて使用するための、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項25】
請求項1~15のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質を産生する宿主細胞。
【請求項26】
請求項1~15のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質をコードする核酸配列を含む単離された核酸。
【請求項27】
請求項26に記載の核酸配列を含むベクター。
【請求項28】
請求項27に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項29】
請求項26に記載の核酸を含む宿主細胞。
【請求項30】
請求項1~15のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質を産生する方法であって、前記抗原結合タンパク質の産生を結果としてもたらす条件下で請求項26、29または30のいずれか1項に記載の宿主細胞を培養することと、前記宿主細胞または前記宿主細胞の培養培地から前記抗原結合タンパク質を単離することと、を含む、方法。
【請求項31】
NGF関連障害について対象を治療する方法であって、前記対象に治療有効量の請求項16に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項32】
前記NGF関連障害が、心臓血管疾患、アテローム性動脈硬化症、肥満症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、疼痛および炎症からなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記NGF関連障害が疼痛を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記NGF関連障害が疼痛障害であり、かつ変形性関節症疼痛、関節リウマチ疼痛、手術および術後疼痛、切開疼痛、全身性炎症疼痛、がん疼痛、外傷からの疼痛、神経障害性疼痛、神経疼痛、糖尿病性ニューロパチー疼痛、リウマチ性疾患と関連付けられる疼痛、筋骨格疾患と関連付けられる疼痛、内臓疼痛、ならびに胃腸疼痛からなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記NGF関連障害が変形性関節症疼痛を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記NGF関連障害が手術および術後疼痛を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記NGF関連障害ががん疼痛を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記対象に請求項17に記載の医薬組成物を投与することにより、対象においてNGF活性を阻害する方法。
【請求項39】
前記対象が、イヌ、ネコ、ヒト、およびウマからなる群から選択される、請求項31~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記対象がイヌを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記対象がネコを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記対象がヒトを含む、請求項39に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は免疫学の分野に関する。より具体的には、本発明は、目的の種において非免疫原性となるように改変されたNGFに特異的に結合する抗NGF抗原結合タンパク質に関する。本発明はさらに、NGF関連障害、特に疼痛の治療および/または予防におけるそのような抗原結合タンパク質の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
神経成長因子(NGF)は、同定された最初のニューロトロフィンであり、末梢ニューロンおよび中枢ニューロンの両方の発生および生存におけるその役割はよく特徴付けられている。NGFは、末梢交感神経および胚性感覚ニューロンならびに前脳基底部コリン作動性ニューロンの発生において不可欠な生存および維持因子であることが示されている。(Smeyne,et al.,Nature 368:246-249(1994)およびCrowley,et al.,Cell 76:1001-101 I(1994))。NGFは感覚ニューロンにおける神経ペプチドの発現を上方調節し(Lindsay,et al,Nature 337:362-364(1989))、その活性は、2つの異なる膜結合受容体、TrkAチロシンキナーゼ受容体およびp75共通ニューロトロフィン受容体(それぞれ「高親和性」および「低親和性」NGF受容体と称されることがある)を通じて媒介され、後者は、腫瘍壊死因子受容体ファミリーの他のメンバーに構造的に関する(Chao,et al.,Science 232:518-521(1986))。
【0003】
神経系におけるその効果に加えて、NGFは、神経系の外側のプロセスにますます関係付けられてきた。例えば、NGFは、血管透過性を増進し(Otten,et al.,Eur J Pharmacol.106:199-201(1984))、TおよびB細胞免疫応答を増進し(Otten,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:10059-10063(1989))、リンパ球分化および肥満細胞増殖を誘導し、かつ肥満細胞からの可溶性の生物学的シグナルの放出を引き起こす(Matsuda,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:6508-6512(1988);Pearce,et al.,J.Physiol.372:379-393(1986);Bischoff,et al.,Blood
79:2662-2669(1992);Horigome,et al.,J.Bioi.Chem.268:14881-14887(1993))ことが示されている。
【0004】
NGFはいくつかの細胞種により産生され、該細胞種としては、肥満細胞(Leon,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:3739-3743(1994))、Bリンパ球(Torcia,et al.,Cell 85:345-356(1996)、ケラチノサイト(Di Marco,et al.,J.Biol.Chem.268:22838-22846))、平滑筋細胞(Ueyama,et al.,J.Hypertens.11:1061-1065(1993))、線維芽細胞(Lindholm,et al.,Eur.J.Neurosci.2:795-801(1990))、気管支上皮細胞(Kassel,et al.,Clin,Exp.Allergy 31:1432-40(2001))、腎臓メサンギウム細胞(Steiner,et al.,Am.J.Physiol.261:F792-798(1991))および骨格筋管状筋細胞(Schwartz,et al.,J Photochem.Photobiol.B66:195-200(2002))が挙げられる。NGF受容体は、神経系の外側の様々な細胞種において見出されている。例えば、TrkAは、ヒト単球、TおよびBリンパ球ならびに肥満細胞上に見出されている。
【0005】
NGFレベルの増加と様々な炎症状態との関連性が、ヒト患者だけでなく、いくつかの動物モデルにおいても観察されてきた。これらとしては、全身性エリテマトーデス(Bracci-Laudiero,et al.,Neuroreport 4:563-565(1993))、多発性硬化症(BracciLaudiero,et al,Neurosci.Lett.147:9-12(1992))、乾癬(Raychaudhuri,et al.,Acta Derm.l’enereol.78:84-86(1998))、関節炎(Falcim,et al.,Ann.Rheum.Dis.55:745-748(1996))、間質性膀胱炎(Okragly,et al.,J.Urology 161:438-441(1999))および喘息(Braun,et al.,Eur.J Immunol.28:3240-3251(1998))が挙げられる。末梢組織におけるNGFのレベルの一貫した上昇は痛覚過敏および炎症と関連付けられ、関節炎のいくつかの形態において観察されている。関節リウマチに罹患した患者の滑膜は高レベルのNGFを発現するが、非炎症性滑膜のNGFは検出不可能であることが報告されている(Aloe,et al.,Arch.Rheum.35:351-355(1992))。類似の結果が実験的に誘導された関節リウマチを有するラットにおいて見られた(Aloe,et al.,Clin.Exp.Rheumatol.10:203-204(1992))。NGFのレベルの上昇が、肥満細胞の数の増加と共にトランスジェニック関節炎マウスにおいて報告されている(Aloe,et al.,Int.J.Tissue Reactions-Exp.Clin.Aspects
15:139-143(1993))。
【0006】
変形性関節症(OA)は、1歳を超えたイヌ集団の20%に影響する、イヌにおいて最も一般的な慢性筋骨格疾患の1つである。OAの発生は主に、外傷、関節不安定性、および股関節形成不全などの疾患に対して二次的である。変形性関節症は関節全体の疾患状態であり、全ての関節構造の炎症性および変性性の両方の変化は、跛行の障害および臨床徴候ならびに疼痛を結果としてもたらす。疼痛はイヌOAの最も重要な臨床症状であり、構造的な関節の変化、生化学的および分子的変化だけでなく、末梢および中枢疼痛処理機構の間の複雑な相互作用の結果である。このネットワーク内において、炎症性および痛覚過敏性メディエーター(例えば、サイトカイン、プロスタグランジンおよびニューロメディエーター)による末梢侵害受容器の活性化および感作は、関節痛に関与する主な末梢機構の1つである。イヌにおいて古典的な疼痛治療よりも長い期間にわたり緩和を提供することになる非薬学的医薬によるイヌ疼痛の治療は明確に満たされていない必要性である。
【0007】
米国単独において、約1450万匹のイヌがOAを患っている(2010年の市場調査)。非ステロイド抗炎症性薬物(NSAID)は獣医により処方される最も一般的な薬物カテゴリーであるが、その有効性および忍容性により限られている。市場調査は、約900万匹のイヌが米国内においてNSAIDを用いて治療されていることを指し示す。コルチコステロイドは、典型的には短期間の最後の手段として、まれに使用される。OAを有するイヌを効果的に治療する簡便で安全な製品に対する満たされていない必要性が依然として明確に存在する。
【0008】
ネコにおいて、OAは、関節軟骨の劣化、骨増殖体形成、骨リモデリング、軟組織変化および低グレード非化膿性炎症により特徴付けられる滑膜可動関節の病理学的変化である。ネコOAの放射線写真的特徴がよく説明されてきたとはいえ、疾患の臨床徴候はほとんど文書化されておらず、診断未確定となる可能性がある。ネコにおける跛行の評価の困難性は、その小さいサイズおよび補填を可能とする生来の敏捷性の結果である。しかしながら、ネコOAの臨床徴候としては、体重低下、無食欲、鬱病、異常な排除習慣、乏しいグルーミング、攻撃的挙動および明白な跛行に至る跳躍能力の段階的な低減が挙げられると考えられる。誤診に基づいて、ネコOAは概しては治療されないままであり、満たされて
いない獣医学用薬剤の必要性がある。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、新規の抗NGF抗原結合タンパク質(本明細書において定義され、かつ交換可能に使用されるような抗体、抗体断片、抗原結合断片、抗原結合部分、アンタゴニスト抗体など)、およびそれをコードするポリヌクレオチドを提供する。本発明は、対象におけるNGF関連障害、特に疼痛の治療および/または予防における、前記抗原結合タンパク質および/またはヌクレオチドの製造方法ならびにその使用方法をさらに提供する。本発明は、対象におけるNGF関連障害、特に疼痛の治療のための医薬組成物および使用をさらに提供する。
【0010】
一態様では、本発明は、神経成長因子(NGF)に特異的に結合する組換え抗原結合タンパク質であって、配列番号1または配列番号21に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(Complementary Determining Region 1;CDR1);配列番号2または配列番号22に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR2);配列番号3または配列番号23に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR3)を含む可変軽鎖;および配列番号4または配列番号24に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1);配列番号5または配列番号25に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR2);および配列番号6または配列番号26に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR3)を含む可変重鎖(VH);ならびに前記抗原結合タンパク質の可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにおけるCDR1、CDR2またはCDR3のうちの少なくとも1つにおいて1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有するその任意の変種を含む、組換え抗原結合タンパク質を提供する。
【0011】
一実施形態では、本発明は、抗原結合タンパク質が、配列番号1を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(Complimentary Determining Region 1;CDR1);配列番号2を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDR2);配列番号3を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDR3)を含む軽鎖可変領域;および配列番号4を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1);配列番号5を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDR2);配列番号6を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDR3)を含む重鎖可変領域;ならびに前記抗原結合タンパク質の可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにおけるCDR1、CDR2またはCDR3のうちの少なくとも1つにおいて1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有するその任意の変種を含むことを提供する。
【0012】
一実施形態では、本発明は、発明の抗原結合タンパク質が、配列番号21を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1);配列番号22を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDR2);配列番号23を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDR3)を含む軽鎖可変領域(VL);および配列番号24を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1);配列番号25を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約90%
の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDR2);配列番号26を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDR3)を含む重鎖可変領域(VH);ならびに前記抗原結合タンパク質の可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにおけるCDR1、CDR2またはCDR3のうちの少なくとも1つにおいて1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有するその任意の変種を含むことを提供する。
【0013】
一態様では、本発明は、神経成長因子(NGF)に特異的に結合する組換え抗原結合タンパク質であって、配列番号7、配列番号9、配列番号27、配列番号29、配列番号55、配列番号71、配列番号73、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、および配列番号91からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖;および配列番号8、配列番号10、配列番号28、配列番号30、配列番号56、配列番号67、配列番号69、配列番号75、配列番号77、配列番号79および配列番号81からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖;ならびに前記抗原結合タンパク質の可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにおいて1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有するその任意の変種を含む、組換え抗原結合タンパク質を提供する。
【0014】
一実施形態では、本発明は、本発明の組換え抗原結合タンパク質が、配列番号7に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖および配列番号8に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖、ならびに前記抗原結合タンパク質の可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにおいて1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有するその任意の変種を含むことを提供する。一実施形態では、本発明は、抗原結合タンパク質であって、可変軽鎖が、配列番号27に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ可変重鎖が、配列番号28に対して少なく とも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつその任意の変種
が前記抗原結合タンパク質の可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにおいて1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有する抗原結合タンパク質を提供する。
【0015】
一実施形態では、本発明は、本発明の組換え抗原結合タンパク質が、配列番号9に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖および配列番号10に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖、ならびに前記抗原結合タンパク質の可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにおいて1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有するその任意の変種を含むことを提供する。一実施形態では、本発明は、本発明の組換え抗原結合タンパク質が、配列番号29に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖および配列番号30に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖、ならびに前記抗原結合タンパク質の可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにおいて1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有するその任意の変種を含むことを提供する。
【0016】
一実施形態では、本発明は、本発明の組換え抗原結合タンパク質が、配列番号55に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖および配列番号56に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖、ならびに前記抗原結合タンパク質の可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにおいて1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有するその任意の変種を含むことを提供する。
【0017】
一実施形態では、本発明は、本発明の組換え抗原結合タンパク質が、配列番号91に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖および配列番号79に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖、なら
びに前記抗原結合タンパク質の可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにおいて1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有するその任意の変種を含むことを提供する。一実施形態では、本発明は、本発明の組換え抗原結合タンパク質が、配列番号87に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖および配列番号79に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖、ならびに前記抗原結合タンパク質の可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにおいて1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有するその任意の変種を含むことを提供する。一実施形態では、本発明は、本発明の組換え抗原結合タンパク質が、配列番号91に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖および配列番号75に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖、ならびに前記抗原結合タンパク質の可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにおいて1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有するその任意の変種を含むことを提供する。一実施形態では、本発明は、本発明の組換え抗原結合タンパク質が、配列番号87に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖および配列番号89に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖、ならびに前記抗原結合タンパク質の可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにおいて1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有するその任意の変種を含むことを提供する。一実施形態では、本発明は、本発明の組換え抗原結合タンパク質が、配列番号91に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖および配列番号75に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖、ならびに前記抗原結合タンパク質の可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにおいて1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有するその任意の変種を含むことを提供する。一実施形態では、本発明は、神経成長因子(NGF)に特異的に結合する組換え抗原結合タンパク質であって、配列番号41または43のいずれかから選択されるアミノ酸を含む定常領域をさらに含む、組換え抗原結合タンパク質を提供する。一実施形態では、本発明は、配列番号42または配列番号44からなる群から選択される定常領域をコードするヌクレオチド配列を提供する。一実施形態では、本発明の抗原結合タンパク質の定常領域はエフェクター機能を欠いている。一実施形態では、本発明の抗原結合タンパク質の定常領域に対する変更は抗原結合タンパク質の分解を予防する。
【0018】
一実施形態では、本発明は、NGFに特異的に結合する組換え抗原結合タンパク質であって、配列番号62を含むアミノ酸配列を含む定常領域をさらに含む、組換え抗原結合タンパク質を提供する。一実施形態では、本発明は、配列番号63を含む定常領域をコードするヌクレオチド配列を提供する。一実施形態では、本発明の抗原結合タンパク質の定常領域はエフェクター機能を欠いている。一実施形態では、本発明の抗原結合タンパク質の定常領域に対する変更は抗原結合タンパク質の分解を予防する。
【0019】
一態様では、本発明は、神経成長因子(NGF)に特異的に結合する本発明の組換え抗原結合タンパク質をコードするヌクレオチド配列であって、配列番号11または配列番号31に対して少なくとも90%の配列同一性を有する相補性決定領域1(CDR1)核酸配列;配列番号12または配列番号32に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む相補性決定領域1(CDR2);配列番号13または配列番号33に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む相補性決定領域1(CDR3)を含む可変軽鎖(VL);および配列番号14または配列番号34に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む相補性決定領域1(CDR1);配列番号15または配列番号35に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む相補性決定領域1(CDR2);および配列番号15または配列番号36に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR3)を含む可変重鎖(VH);ならびに前記抗原結合タンパク質の可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにおけるCDR1、CDR2またはCDR3のうちの少なくとも1つにおいて遺伝コードの縮重に基づく1つまたは複数の核酸置換を有す
るその任意の変種を含む、ヌクレオチド配列を提供する。
【0020】
一実施形態では、本発明は、本発明の抗原結合タンパク質をコードするヌクレオチド配列であって、配列番号11を含むヌクレオチド配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む相補性決定領域1(CDR1);配列番号12を含むヌクレオチド配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む相補性決定領域2(CDR2);配列番号13を含むヌクレオチド配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む相補性決定領域3(CDR3)を含む軽鎖可変領域(VL);および配列番号14を含むヌクレオチド配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む相補性決定領域1(CDR1);配列番号15を含むヌクレオチド配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む相補性決定領域2(CDR2);配列番号16を含む核酸配列(nucleic sequence)に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む相補性決定領域3(CDR3)を含む重鎖可変領域(VH);ならびに前記抗原結合タンパク質の可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにおけるCDR1、CDR2またはCDR3のうちの少なくとも1つにおいて遺伝コードの縮重に基づく1つまたは複数の核酸置換を有するその任意の変種を含む、ヌクレオチド配列を提供する。
【0021】
一実施形態では、本発明は、本発明の抗原結合タンパク質をコードするヌクレオチド配列であって、配列番号31を含むヌクレオチド配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む相補性決定領域1(CDR1);配列番号32を含むヌクレオチド配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む相補性決定領域2(CDR2);配列番号33を含むヌクレオチド配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む相補性決定領域3(CDR3)を含む軽鎖可変領域(VL)をコードするヌクレオチド;および配列番号34を含むヌクレオチド配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む相補性決定領域1(CDR1);配列番号35を含むヌクレオチド配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む相補性決定領域2(CDR2);配列番号36を含むヌクレオチド配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む相補性決定領域3(CDR3)を含む重鎖可変領域(VH)をコードするヌクレオチド配列;ならびに前記抗原結合タンパク質の可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにおけるCDR1、CDR2またはCDR3のうちの少なくとも1つにおいて遺伝コードの縮重に基づく1つまたは複数の核酸置換を有するその任意の変種を含む、ヌクレオチド配列を提供する。
【0022】
一態様では、本発明は、神経成長因子(NGF)に特異的に結合する本発明の組換え抗原結合タンパク質をコードするヌクレオチド配列であって、配列番号17、配列番号19、配列番号37、配列番号39、配列番号57、配列番号88、配列番号90、および配列番号92からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列タンパク質を含む可変軽鎖をコードするヌクレオチド;および配列番号18、配列番号20、配列番号38、配列番号40、配列番号58、配列番号76、および配列番号80からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む可変重鎖をコードするヌクレオチド;ならびに前記抗原結合タンパク質の可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにおける遺伝コードの縮重に基づく1つまたは複数の核酸置換を有するその任意の変種を含む、ヌクレオチド配列を提供する。
【0023】
一実施形態では、本発明は、本発明の組換え抗原結合タンパク質をコードするヌクレオチド配列が、配列番号17に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド
配列を含む可変軽鎖をコードするヌクレオチド配列および配列番号18に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む可変重鎖をコードするヌクレオチド配列、ならびに前記抗原結合タンパク質の可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにおける遺伝コードの縮重に基づく1つまたは複数の核酸置換を有するその任意の変種を含むことを提供する。一実施形態では、本発明は、本発明の抗原結合タンパク質をコードするヌクレオチド配列であって、配列番号37に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む可変軽鎖をコードするヌクレオチド配列、および配列番号38に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む可変重鎖をコードするヌクレオチド配列;ならびに前記抗原結合タンパク質の可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにおける遺伝コードの縮重に基づく1つまたは複数の核酸置換を有するその任意の変種を提供する。
【0024】
一実施形態では、本発明は、本発明の組換え抗原結合タンパク質をコードするヌクレオチド配列が、配列番号19に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む可変軽鎖をコードするヌクレオチド配列および配列番号20に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む可変重鎖をコードするヌクレオチド配列、ならびに前記抗原結合タンパク質の可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにおける遺伝コードの縮重に基づく1つまたは複数の核酸置換を有するその任意の変種を含むことを提供する。一実施形態では、本発明は、本発明の抗原結合タンパク質をコードするヌクレオチド配列であって、ヌクレオチド配列が、配列番号39に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む可変軽鎖をコードし、かつヌクレオチド配列が、配列番号40に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む可変重鎖をコードする、ヌクレオチド配列;ならびに前記抗原結合タンパク質の可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにおける遺伝コードの縮重に基づく1つまたは複数の核酸置換を有するその任意の変種を提供する。
【0025】
一実施形態では、本発明は、本発明の組換え抗原結合タンパク質をコードするヌクレオチド配列が、配列番号57に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む可変軽鎖をコードするヌクレオチド配列および配列番号58に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む可変重鎖をコードするヌクレオチド配列、ならびに前記抗原結合タンパク質の可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにおける遺伝コードの縮重に基づく1つまたは複数の核酸置換を有するその任意の変種を含むことを提供する。
【0026】
一実施形態では、本発明は、本発明の組換え抗原結合タンパク質をコードするヌクレオチド配列が、配列番号92に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む可変軽鎖をコードするヌクレオチド配列および配列番号80に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む可変重鎖をコードするヌクレオチド配列、ならびに前記抗原結合タンパク質の可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにおける遺伝コードの縮重に基づく1つまたは複数の核酸置換を有するその任意の変種を含むことを提供する。一実施形態では、本発明は、本発明の抗原結合タンパク質をコードするヌクレオチド配列であって、ヌクレオチド配列が、配列番号88に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む可変軽鎖をコードし、かつヌクレオチド配列が、配列番号80に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む可変重鎖をコードする、ヌクレオチド配列;ならびに前記抗原結合タンパク質の可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにおける遺伝コードの縮重に基づく1つまたは複数の核酸置換を有するその任意の変種を提供する。一実施形態では、本発明は、本発明の組換え抗原結合タンパク質をコードするヌクレオチド配列が、配列番号92に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む可変軽鎖をコードするヌクレオチド配列および配列番号76に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチ
ド配列を含む可変重鎖をコードするヌクレオチド配列、ならびに前記抗原結合タンパク質の可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにおける遺伝コードの縮重に基づく1つまたは複数の核酸置換を有するその任意の変種を含むことを提供する。一実施形態では、本発明は、本発明の抗原結合タンパク質をコードするヌクレオチド配列であって、ヌクレオチド配列が、配列番号88に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む可変軽鎖をコードし、かつヌクレオチド配列が、配列番号76に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む可変重鎖をコードする、ヌクレオチド配列;ならびに前記抗原結合タンパク質の可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにおける遺伝コードの縮重に基づく1つまたは複数の核酸置換を有するその任意の変種を提供する。一実施形態では、本発明は、本発明の組換え抗原結合タンパク質をコードするヌクレオチド配列が、配列番号90に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む可変軽鎖をコードするヌクレオチド配列および配列番号76に対して少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む可変重鎖をコードするヌクレオチド配列、ならびに前記抗原結合タンパク質の可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにおける遺伝コードの縮重に基づく1つまたは複数の核酸置換を有するその任意の変種を含むことを提供する。
【0027】
1つまたは複数の実施形態では、本発明の抗原結合タンパク質はTrkA受容体へのNGFの結合を阻害する。1つまたは複数の実施形態では、本発明の抗原結合タンパク質は、TrkA受容体へのNGFの結合と関連付けられる生物学的機能を阻害する。1つまたは複数の実施形態では、本発明の抗原結合タンパク質は両方のTrkA受容体へのNGFの結合を阻害する。1つまたは複数の実施形態では、抗原結合タンパク質は、TrkA受容体へのNGFの結合と関連付けられるシグナル伝達および経路の遮断を含む、p75受容体を伴うまたは伴わないTrkAへのNGFの結合と関連付けられる生物学的機能を阻害する。
【0028】
1つまたは複数の実施形態では、本発明の抗原結合タンパク質は、TrkAおよびp75受容体へのNGFの結合と関連付けられるシグナルを妨害することによりNGF関連障害を低減または除去する。1つまたは複数の実施形態では、NGF関連障害は、心臓血管疾患、アテローム性動脈硬化症、肥満症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、疼痛および炎症からなる群から選択される。一実施形態では、NGF関連障害は疼痛である。一実施形態では、前記NGF関連障害は疼痛障害であり、かつ変形性関節症疼痛、関節リウマチ疼痛、手術および術後疼痛、切開疼痛、全身性炎症疼痛、がん疼痛、外傷からの疼痛、神経障害性疼痛、神経疼痛、糖尿病性ニューロパチー疼痛、リウマチ性疾患と関連付けられる疼痛、筋骨格疾患と関連付けられる疼痛、内臓疼痛、ならびに胃腸疼痛からなる群から選択される。一実施形態では、NGF関連障害は変形性関節症疼痛を含む。一実施形態では、NGF関連障害は手術および術後疼痛を含む。一実施形態では、NGF関連障害はがん疼痛を含む。
【0029】
1つまたは複数の態様では、本発明の抗原結合タンパク質は、モノクローナル抗体;キメラ抗体、単鎖抗体、四量体抗体、四価抗体、多重特異性抗体、ドメイン特異性抗体、ドメイン欠失抗体、融合タンパク質、ScFc融合タンパク質、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)断片、Fv断片、ScFv断片、Fd断片、単一ドメイン抗体、dAb断片、小モジュラー免疫医薬(SMIP)、ナノボディ、およびIgNAR分子からなる群から選択される。一実施形態では、抗原結合タンパク質はモノクローナル抗体である。一実施形態では、抗原結合タンパク質はキメラ抗体である。
【0030】
一実施形態では、本発明の抗原結合タンパク質は、イヌもしくはイヌ化モノクローナル抗体、ネコ化モノクローナル抗体、ウマ化モノクローナル抗体またはヒト化モノクローナル抗体から選択される。一実施形態では、抗原結合タンパク質はイヌまたはイヌ化抗体で
ある。一実施形態では、本発明の抗原結合タンパク質はネコ化抗体である。一実施形態では、本発明の抗原結合タンパク質はウマ化抗体である。一実施形態では、本発明の抗原結合タンパク質はヒト化抗体である。
【0031】
1つまたは複数の態様では、本発明は、治療有効量の抗原結合タンパク質および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物を提供する。一実施形態では、本発明は、治療有効量の抗原結合タンパク質および薬学的に許容される担体を含む、獣医学的組成物を提供する。一実施形態では、本発明は、治療有効量の抗原結合タンパク質および薬学的に許容される担体を含む、医薬または獣医学的組成物を提供する。一実施形態では、本発明の医薬組成物はNGF関連障害の治療において使用される。一実施形態では、NGF関連障害は、心臓血管疾患、アテローム性動脈硬化症、肥満症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、疼痛および炎症からなる群から選択される。一実施形態では、NGF関連障害は疼痛を含む。一実施形態では、医薬組成物は疼痛の治療において使用される。一実施形態では、医薬組成物は疼痛の治療のために使用され、また疼痛の種類は、変形性関節症疼痛、関節リウマチ疼痛、手術および術後疼痛、切開疼痛、全身性炎症疼痛、がん疼痛、外傷からの疼痛、神経障害性疼痛、神経疼痛、糖尿病性ニューロパチー疼痛、リウマチ性疾患と関連付けられる疼痛、筋骨格疾患と関連付けられる疼痛、内臓疼痛、ならびに胃腸疼痛から選択される。一実施形態では、疼痛は変形性関節症疼痛を含む。一実施形態では、疼痛は手術および術後疼痛を含む。一実施形態では、疼痛はがん疼痛を含む。1つまたは複数の実施形態では、本発明の医薬組成物はイヌにおいて使用するためのものである。1つまたは複数の実施形態では、本発明の医薬組成物はネコにおいて使用するためのものである。1つまたは複数の実施形態では、本発明の医薬組成物はウマにおいて使用するためのものである。1つまたは複数の実施形態では、本発明の医薬組成物はヒトにおいて使用するためのものである。
【0032】
1つまたは複数の実施形態では、本発明の医薬組成物は、イヌの免疫系に対して顕著な悪影響を有しない。一実施形態では、本発明の組成物は、ネコの免疫系に対して顕著な悪影響を有しない。1つまたは複数の実施形態では、本発明の組成物は、ウマの免疫系に対して顕著な悪影響を有しない。一実施形態では、本発明の組成物は、ヒトの免疫系に対して顕著な悪影響を有しない。一実施形態では、医薬組成物は獣医学的組成物である。
【0033】
1つまたは複数の実施形態では、本発明は、本発明の抗原結合タンパク質のうちのいずれか1つまたは複数を産生する宿主細胞を提供する。
【0034】
1つまたは複数の実施形態では、本発明は、本発明の核酸のうちのいずれか1つまたは複数を含むベクターを提供する。
【0035】
1つまたは複数の実施形態では、本発明は、本発明の核酸のうちのいずれか1つまたは複数を含む宿主細胞を提供する。
【0036】
1つまたは複数の実施形態では、本発明は、本発明の核酸のうちのいずれか1つまたは複数を含むベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0037】
1つまたは複数の実施形態では、本発明は、本発明の核酸のうちのいずれか1つまたは複数を含む宿主細胞を提供する。
【0038】
1つまたは複数の態様では、本発明は、抗原結合タンパク質の産生を結果としてもたらす条件下で本発明の宿主細胞を培養すること、およびその後に宿主細胞または宿主細胞の培養培地から抗原結合タンパク質を単離することによって、本発明の抗原結合タンパク質を産生する方法を提供する。
【0039】
1つまたは複数の態様では、本発明は、NGF関連障害について対象を治療する方法であって、前記対象に治療有効量の本発明の医薬または獣医学的組成物を投与することを含む、方法を提供する。一実施形態では、本発明は、NGF関連障害が、心臓血管疾患、アテローム性動脈硬化症、肥満症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、疼痛および炎症からなる群から選択されることを提供する。一実施形態では、NGF関連障害は疼痛を含む。一実施形態では、NGF関連障害は疼痛障害であり、かつ変形性関節症疼痛、関節リウマチ疼痛、手術および術後疼痛、切開疼痛、全身性炎症疼痛、がん疼痛、外傷からの疼痛、神経障害性疼痛、神経疼痛、糖尿病性ニューロパチー疼痛、リウマチ性疾患と関連付けられる疼痛、筋骨格疾患と関連付けられる疼痛、内臓疼痛、ならびに胃腸疼痛からなる群から選択される。一実施形態では、NGF関連障害は変形性関節症疼痛を含む。一実施形態では、NGF関連障害は手術および術後疼痛を含む。一実施形態では、NGF障害はがん疼痛である。一実施形態では、対象は、イヌ、ネコ、ヒトおよびウマからなる群から選択される。一実施形態では、対象はイヌを含む。一実施形態では、対象はネコを含む。一実施形態では、対象はウマを含む。一実施形態では、対象はヒトを含む。
【0040】
1つまたは複数の実施形態では、本発明は、生物学的試料中のNGFレベルを検出または定量化する方法であって、
(a)本発明の抗原結合タンパク質のいずれか1つの存在下でNGFを含有する臨床または生物学的試料をインキュベートすること;および
(b)試料中のNGFに結合した抗原結合タンパク質を検出すること
を含む、方法を提供する。
【0041】
一部の実施形態では、本発明の抗原結合タンパク質は検出可能に標識される。一部の実施形態では、抗原結合タンパク質は非標識であり、検出可能に標識される第2の抗原結合タンパク質または断片と組み合わせて使用される。一実施形態では、本発明は、本発明の抗原結合タンパク質を含むキットを含む。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1は、マウス免疫グロブリンG(IgG)分子の全体構造の概略図であり、抗原結合部位を強調している。
図2図2は、マウス/イヌキメラIgGの全体構造の概略図である。
図3図3は、マウスIgGの種分化(speciation)または「イヌ化」を示す例示であり、マウスCDRがイヌフレームワークの上へとグラフトされている。この図はまた、ネコ化、ウマ化、ヒト化および本明細書において定義されるような他の種分化を表す。
図4図4は、キメラ軽鎖を完全イヌ化重鎖とペア形成させる「ヘテロキメラ」モノクローナル抗体の例示である。
図5図5は、定常領域に対するプライマーおよびマウス可変領域を標的とする縮重プライマーを示す抗体可変鎖の例示である。
図6図6は、caTrkA-CHO細胞におけるイヌNGF誘導性pERK-1/2シグナル伝達に対する抗NGF mAb ZTS-841およびZTS-842の効果の表示である。
図7図7は、caTrkA-CHO細胞におけるイヌNGF誘導性pERK-1/2シグナル伝達に対するイヌ化型のaD11 mAb、陰性対照および13L11 mAbの表示である。
図8図8は、ZTS-841およびZTS-842 mAbのイヌNGF誘導性TF-1細胞増殖に対する抗NGF mAbの表示である。
図9図9は、48L2キメラ、fel48L2VH1.1およびfel48L2VH1.2 mAbを使用したイヌNGF誘導性TF-1増殖に対する抗NGF mAbの表示である。
図10図10は、薬物動態研究のために2.0mg/kgにおいてSC/SC/IVで投与した抗NGF mAb ZTS 841の表示である。
図11図11は、薬物動態研究のために2.0mg/kgにおいてSC/SC/IVで投与した抗NGF mAb ZTS 842の表示である。
図12図12は、ラットMIAアッセイの概略図である。
図13図13は、ラットMIAアッセイにおける0.1~2mg/kgの範囲内の用量のmAb 841のグラフ表示である。
図14図14は、ラットMIAアッセイにおける0.01~2.0mg/kgの範囲内の用量のmAb 841のグラフ表示である。
図15図15は、ラットMIAアッセイにおける0.5および2mg/kgの用量のmAb 842のグラフ表示である。
図16図16は、LPS滑膜炎モデルにおける滑膜炎誘導の3および5時間後における処置群についてのmAb 841跛行VASのグラフ表示である。
【0043】
配列の簡単な説明
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【発明を実施するための形態】
【0044】
本明細書において開示される発明は、高親和性でNGFに結合する抗NGF抗原結合タンパク質を提供する。本発明は、前記抗原結合タンパク質の変種であるこれもNGFに結合する抗原結合タンパク質およびポリペプチドだけでなく、これらの抗原結合タンパク質の製造および使用方法をさらに提供する。一部の実施形態では、本発明はまた、前記抗原結合タンパク質および/またはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも提供する。本明細書において開示される発明はまた、治療有効量の本発明の抗NGF抗原結合タンパク質の投与により疼痛を予防および/または治療する方法を提供する。
【0045】
一般技術
当然のことながら、本発明は本明細書に記載される特定の方法論、プロトコール、および試薬などに限定されず、またそのため変更されてもよい。本明細書において使用される用語は、特定の実施形態を記載する目的のものに過ぎず、本発明の範囲を限定することは意図されず、該範囲は特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0046】
他に定義されない限り、本明細書に記載の抗原結合タンパク質との関連において使用される科学用語および技術用語は、当業者により一般的に理解される意味を有するべきである。さらに、文脈により他に必要とされない限り、単数の用語は複数を含み、複数の用語は単数を含む。一般に、本明細書に記載の細胞および組織培養、分子生物学、ならびにタンパク質およびオリゴまたはポリヌクレオチド化学ならびにハイブリダイゼーションとの関連において利用される学術用語、およびその技術は、当該技術分野において周知かつ一般的に使用されるものであり、単一の記載に限定されない。異なる技術が、記載されたものに対して代用されてもよいことが当該技術分野において周知である。
【0047】
特定される全ての特許および他の刊行物は、例えば、本発明との関連において使用される場合があるそのような刊行物において記載される方法論を記載および開示する目的のために、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。これらの刊行物は、本出願の出願日より前の開示についてのみ提供される。
【0048】
標準技術が組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、および組織培養およびトランスフェクション(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)のために使用される
。酵素反応および精製技術は、製造者の仕様書にしたがって、または当該技術分野において一般的に達成されるように、または本明細書に記載されるように行われる。以上の技術および手順は、概しては当該技術分野において周知の従来法にしたがっておよび記載されるように行われるが、本明細書の全体を通じて参照および議論される様々な一般のおよびより特定の参照に限定されない。例えば、Sambrook et al.MOLECULAR CLONING:LAB.MANUAL(3rd ed.,Cold Spring Harbor Lab.Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,2001)およびAusubel et al.Current Protocols in Molecular Biology(New York:Greene
Publishing Association J Wiley Interscience),Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,ed.,1984);Methods in Molecular Biology,Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis,ed.,1998)Academic Press;Animal Cell Culture(R.1.Freshney,ed.1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(1.P.Mather and P.E.Roberts,1998)Plenum Press;Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths,and D.G.Newell,eds.,1993-1998)J.Wiley and Sons;Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);Handbook of Experimental Immunology(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller and M.P.Calos,eds.,1987);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel et al.,eds.,1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullis et al.,eds.,1994);Current Protocols in Immunology(E.Coligan et al.,eds.,1991);Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons,1999);Immunobiology(C.A.Janeway and P.Travers,1997);Antibodies(P.Finch,1997);Antibodies:a practical approach(D.Catty.,ed.,IRL Press,1988-1989);Monoclonal antibodies:a practical approach(P.Shepherd and C.Dean,eds.,Oxford University Press,2000);Using antibodies:a laboratory manual(E.Harlow and D.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999);The Antibodies(M.Zanetti and J.D.Capra,eds.,Harwood Academic Publishers,1995);およびCancer:Principles and
Practice of Oncology(Y.T.DeVita et al.,eds.,J.B.Lippincott Company,1993)を参照のこと。
【0049】
操作の実施例、またはそれ以外に指し示される場合を除いて、本明細書において使用される成分の量または反応条件を表現する全ての数は、全ての事例において「約」という用語により修飾されるものとして理解されるべきである。
【0050】
定義
本発明を詳細に記載する前に、本発明の文脈において使用されるいくつかの用語を定義する。これらの用語に加えて、他の用語は必要に応じて本明細書中の別の箇所において定義される。本明細書において他に明示的に定義されない限り、本明細書において使用される技術用語は、当該技術分野において認識される意味を有する。
【0051】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを規定しない限り、複数への言及を含む。例えば、「抗体」(an antibody)への言及は複数のそのような抗体を含む。
【0052】
本明細書において使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、組成物および方法が記載される要素を含むが他を除外しないことを意味することが意図される。
【0053】
本明細書において使用される場合、「神経成長因子」および「NGF」という用語は、神経成長因子およびNGFの生物学的活性の少なくとも部分を保持するその変種を指す。
【0054】
「NGF受容体」は、NGFにより結合または活性化されるポリペプチドを指す。NGF受容体としては、TrkA受容体およびより低い程度でイヌのp75受容体が挙げられる。
【0055】
NGFの「生物学的活性」は、概して、NGF受容体に結合しかつ/またはNGF受容体シグナル伝達経路を活性化させる能力を指す。非限定的に、生物学的活性としては、以下のいずれか1つまたは複数が挙げられる:NGF受容体(例えば、TrkAおよび/またはp75)に結合する能力;TrkA受容体の二量体化および/または自己リン酸化を促進する能力;NGF受容体シグナル伝達経路を活性化させる能力;(末梢および中枢ニューロンを含むニューロンの場合には)ニューロン形態の変化、シナプス形成、シナプス機能、神経伝達物質および/または神経ペプチドの放出および損傷後の再生を含む、細胞の分化、増殖、生存、成長および細胞生理機能における他の変化を促進する能力;マウスE13.5三叉神経ニューロンの生存を促進する能力;ならびに術後疼痛を含む疼痛を媒介する能力。
【0056】
本明細書において使用される場合、「抗NGF抗原結合タンパク質」(交換可能に「抗NGF抗体」および「抗NGFアンタゴニスト抗体」、「抗原結合断片」、および「抗原結合部分」などと称される)は、NGFに結合することならびにNGFの生物学的活性および/またはNGFシグナル伝達により媒介される下流の経路を阻害することができる抗原結合タンパク質を指す。抗NGF抗原結合タンパク質は、NGFシグナル伝達により媒介される下流の経路を含むNGFの生物学的活性を遮断し、アンタゴナイズし、抑制しもしくは低減し(有意に低減を含む)、かつ/または、受容体結合および/もしくはNGFへの細胞応答の惹起などの、NGFがその受容体trkAに結合することを阻害する、結合タンパク質および抗体を包含する。本発明の目的のために、「抗NGF抗原結合タンパク質」または「抗NGFアンタゴニスト抗体」という用語は、全ての以前に同定された用語、表題、ならびに機能的な状態および特徴であって、それにより、NGF自体、NGFの生物学的活性(変形性関節症疼痛、炎症疼痛、術後疼痛、およびがん疼痛などの任意の態様を媒介する能力を含むがそれに限定されない)、または生物学的活性の帰結が、実質的に無化され、減少し、または任意の意味のある程度において中和されるものを包含することが明示的に理解される。一部の実施形態では、抗NGFアンタゴニスト抗体はNGFに結合し、かつNGFの二量体化ならびに/またはNGF受容体(例えば、TrkAおよび/もしくはp75)への結合を予防する。他の実施形態では、抗NGF抗原結合タンパク質はNGFに結合し、かつTrkA受容体の二量体化および/またはTrkAの自己リ
ン酸化を予防する。抗NGFアンタゴニスト抗体の例は本明細書において提供される。
【0057】
本明細書において使用される場合、交換可能に使用され得る「抗原結合タンパク質」、「抗体」、および「抗原結合タンパク質」などの用語は、ポリペプチド、または抗原結合部位を含むその断片を指す。本発明の一実施形態では、本発明の抗原結合タンパク質は、免疫グロブリン分子の1つまたは複数の可変領域中に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を通じて炭水和物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどの標的に特異的に結合することができる免疫グロブリンをさらに提供する。一部の実施形態では、抗体は2つの軽鎖および2つの重鎖を有する。したがって、単離されたインタクトな抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、合成抗体、組換え抗体、キメラ抗体、ヘテロキメラ抗体または本明細書において定義されるような種分化したと考えられる抗体のプールから単離されてもよい。一部の実施形態では、「抗原結合タンパク質」、「抗体」、および「アンタゴニスト抗体」などの用語は、好ましくは、モノクローナル抗体およびその断片、ならびにNGFタンパク質およびその断片に結合できるその免疫学的結合均等物を指す。本明細書において使用される場合、該用語は、全長(標準的な定義により2つの重鎖および2つの軽鎖を意味する)ポリクローナルまたはモノクローナル抗体だけでなく、その断片を包含する。本発明の目的のために、「抗体」および「抗原結合タンパク質」はまた、他に記載されない限り、抗体断片を含む。例示的な抗体断片としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFv、Fd、dAb、ダイアボディ、その抗原認識断片、小モジュラー免疫医薬(SMIP)、ナノボディ、IgNAR分子および抗原結合タンパク質または抗体断片であると当業者により認識される均等物および上記の断片のいずれかおよびその化学的または遺伝学的にマニピュレートされた対応物だけでなく、他の抗体断片およびその突然変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、および抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の改変された構成も挙げられる。抗体および抗原結合タンパク質は、例えば、伝統的なハイブリドーマ技術(Kohler et al.,Nature 256:495-499(1975))、組換えDNA法(米国特許第4,816,567号明細書)、または抗体ライブラリーを使用するファージディスプレイ技術(Clackson et al.,Nature 352:624-628(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1991))を介して、製造することができる。様々な他の抗体産生技術については、Antibodies:A Laboratory Manual,eds.Harlow et al.,Cold Spring Harbor Laboratory,1988だけでなく、当業者に周知の他の技術も参照のこと。
【0058】
本明細書において定義される「モノクローナル抗体」は、細胞の単一のクローン(具体的には、ハイブリドーマ細胞の単一のクローン)により産生される抗体であり、したがって単一の純粋な均質な種類の抗体である。同じクローンから産生される全てのモノクローナル抗体は同一であり、同じ抗原特異性を有する。モノクローナル抗体は、均質な抗体集団であり、モノクローナル抗体は、抗原の選択的な結合に関与するアミノ酸(天然に存在する、および天然に存在しない)からなる。モノクローナル抗体の集団は高度に特異的であり、単一の抗原部位を標的とする。「モノクローナル抗体」という用語は、インタクトなモノクローナル抗体および全長モノクローナル抗体だけでなく、その断片(Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFv、Fd、dAb、ダイアボディ、その抗原認識断片、小モジュラー免疫医薬(SMIP)、ナノボディ、およびIgNAR分子など)、その突然変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、ならびに必要とされる特異性の抗原認識部位および抗原に結合する能力を含む免疫グロブリン分子の任意の他の改変された構成を包含する。抗体の供給源またはそれが製造される方式(例えば、ハイブリドーマ、ファージ選択、組換え発現、トランスジェニック動物などによる)に限定されることは意図されない。
【0059】
本明細書におけるモノクローナル抗体としては特に、重鎖および/または軽鎖の部分が、特定の種に由来する抗体中の対応する配列と同一または相同的であり、鎖の残りの部分が、別の種に由来する抗体中の対応する配列と同一または相同的である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)だけでなく、所望の生物学的活性を呈する限り、そのような抗体の断片も挙げられる。典型的には、キメラ抗体は、その軽鎖および重鎖遺伝子が、典型的には遺伝子操作により、異なる種に属する抗体可変および定常領域遺伝子から構築された抗体である。例えば、マウスモノクローナル抗体からの遺伝子の可変セグメントは、イヌ定常セグメントに連結されてもよい。図2は、マウス:イヌIgGの一実施形態の全体構造の概略図である。この実施形態では、抗原結合部位はマウスに由来し、一方でFc部分はイヌに由来する。
【0060】
本明細書において定義される「ヘテロキメラ」という用語は、抗体鎖(重鎖または軽鎖)の1つがイヌ化されており、他方がキメラである抗体を指す。図4は、ヘテロキメラ分子の一実施形態を描写する。この実施形態では、イヌ化可変重鎖(全てのCDRがマウスかつ全てのFRがイヌ)はキメラ可変軽鎖(全てのCDRがマウスかつ全てのFRがマウス)とペア形成している。この実施形態では、可変重鎖および可変軽鎖の両方はイヌ定常領域に融合している。
【0061】
単純化のために、以下では「イヌ化」抗体を記載するが、同じことを、ネコ化、ウマ化、ヒト化または任意の他の「種分化」抗原結合タンパク質に適用することができる。例として、「イヌ化」は、ドナー抗体からの非イヌ抗原結合情報をより低い免疫原性のイヌ抗体アクセプターに移してイヌにおける治療法として有用な治療を生成する方法として定義される。イヌ化抗体は、レシピエントの超可変領域残基が、所望の特性、特異性、親和性、および能力を有するマウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、ヤギ、ニワトリ、ウシ、ウマ、ラマ、ラクダ、ヒトコブラクダ、サメ、非ヒト霊長動物、ヒト、ヒト化、組換え配列、または操作された配列などの非イヌ種(ドナー抗体)からの超可変領域残基により置換されたイヌ抗体配列である。さらには、イヌ化抗体は、レシピエント抗体中およびドナー抗体中のいずれにも見出されない残基を含んでもよい。これらの改変は、抗体性能をさらに精密化するために為される。本明細書に記載されるような超可変領域および/またはフレームワーク領域への改変は、当業者に公知の実験に基づいてそれぞれ別々に操作された種分化(イヌ化)抗体について決定されるが、それでも前記実験の前には予測することはできない。イヌ化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはイヌ免疫グロブリンの定常領域(Fc)の、全体、または少なくとも一部分を任意選択的に含んでもよい。図3は、マウスIgGの種分化またはイヌ化を示す一実施形態の例示である。抗原結合タンパク質のイヌ化およびイヌ化抗原結合タンパク質の全ての記載は、それがイヌ化、ネコ化、ウマ化、ヒト化などであっても、任意の種分化抗体に概念的に適用可能とすることができる。
【0062】
「組換えイヌ抗体」、「組換えネコ抗体」、「組換えウマ抗体」、および「組換えヒト抗体」などの語句はいずれも、組換え手段により調製、発現、作製または単離された種分化抗体、例えば、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現された抗体、組換えコンビナトリアルイヌ(またはネコ、ヒトなど)抗体ライブラリーから単離された抗体、イヌ免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離された抗体(例えば、Taylor,L.D.,et al.(1992)Nucl.Acids Res.20:6287-6295を参照のこと)または他のDNA配列へのイヌ(もしくはネコ、ヒトなど)免疫グロブリン遺伝子配列のスプライシングを伴う任意の他の手段により調製、発現、作製もしくは単離された抗体を含む。
【0063】
「イヌ抗体」、「ネコ抗体」、「ウマ抗体」、および「ヒト抗体」などの用語は、本明
細書において使用される場合、標的に対して生成された抗体(抗原結合タンパク質)および標的種内のリンパ球から単離された抗体を指す。本明細書に記載されるようなこれらの抗体は、標的種の特定の定常領域を含むようにin vitroで組換えにより改変されている。追加的に、本明細書に記載されるような抗体は、同定され、単離され、抗体定常領域を変化させるように改変された後に、当業者に公知かつルーチンに使用されるin vitroの細胞培養系から発現および単離された。
【0064】
「天然抗体」および「天然免疫グロブリン」は、通常、2つの同一の軽(l)鎖および2つの同一の重(H)鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は1つの共有結合性ジスルフィド結合により重鎖に連結されており、一方でジスルフィド連結の数は異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖の間で変動する。各重鎖および軽鎖はまた、定期的間隔の鎖内ジスルフィド架橋を有する。各重鎖は、1つの末端における可変ドメイン(VH)、およびそれに続く多数の定常ドメインを有する。各軽鎖は、1つの末端における可変ドメイン(VL)および他の末端における定常ドメインを有し、軽鎖の定常ドメインは重鎖の第1の定常ドメインとアライメントされ、かつ軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインとアライメントされる。特定のアミノ酸残基は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとのインターフェースを形成すると考えられている。図1は、天然マウス免疫グロブリンG(lgG)の全体構造の例であり、抗原結合部位を強調している。
【0065】
本明細書における「親」抗体は、変種の調製のために使用されるアミノ酸配列によりコードされる抗体である。好ましくは、親抗体は、イヌフレームワーク領域を有し、かつ、存在する場合はイヌ抗体定常領域を有する。例えば、親抗体はイヌ化またはイヌ抗体であってもよい。
【0066】
抗体の重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に依存して、免疫グロブリンを異なるクラスに割り当てることができる。現在、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMという免疫グロブリンの5つの主要なクラスがあり、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IgA、およびIgA(マウスおよびヒトの呼称により定義される)にさらに分割される場合がある。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、およびミューとそれぞれ呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造および三次元配置は、複数の種において周知である。個々のアイソタイプの頻度およびこれらの定常ドメインと関連付けられる機能的活性は種特異的であり、実験的に定義されなければならない。
【0067】
任意の脊椎動物種からの抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(K)およびラムダ(λ)と呼ばれる、2つの明確に別個の種類の1つに割り当ることができる。
【0068】
抗体の「可変領域」は、単独または組合せのいずれかにおいて、抗体軽鎖の可変領域または抗体重鎖の可変領域を指す。重鎖および軽鎖の可変領域はそれぞれ、超可変領域としても公知の3つの相補性決定領域(CDR)により接続された4つのフレームワーク領域(FR)からなる。各鎖中のCDRは、FRにより近接されて、および他の鎖からのCDRと共に一緒に保持されて、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。CDRを決定するための少なくとも2つの技術がある:(I)種間配列変動性に基づくアプローチ(すなわち、Kabat et al.Sequences of Proteins of Immunological Interest,(5th ed.,1991,National Institutes of Health,Bethesda Md.));および(2)抗原-抗体複合体の結晶学的研究に基づくアプローチ(Chothia e
t al.(1989)Nature 342:877;AI-Iazikani et
al(1997)J.Molec.Bioi.273:927-948))。本明細書において使用される場合、CDRは、いずれかのアプローチによりまたは両方のアプローチの組合せにより定義されるCDRを指すことができる。
【0069】
本明細書において使用される場合、「超可変領域」という用語は、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、「相補性決定領域」すなわち「CDR」からのアミノ酸残基(Kabat,et al.(1991)、上記)および/または「超可変ループ」からの残基(Chothia and Lesk J.Mol.BioI.196:901-917(1987)を含む。「フレームワーク」すなわち「FR」残基は、本明細書において定義されるような超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0070】
本明細書において使用される場合、「抗原結合領域」という用語は、抗原と相互作用して抗原に対する特異性および親和性を抗体に付与するアミノ酸残基を含有する抗体分子の部分を指す。抗体結合領域は、抗原結合残基の適切なコンホメーションを維持するために必要な「フレームワーク」アミノ酸残基を含む。
【0071】
「機能的Fc領域」は、天然配列Fc領域の少なくとも1つのエフェクター機能を有する。例示的な「エフェクター機能」としては、C1q結合、補体依存性細胞傷害性(CDC)、Fc受容体結合;新生児受容体(neonatal receptor)結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体;BCR)の下方調節などが挙げられる。そのようなエフェクター機能は、概しては、Fc領域が結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と組み合わせられることを必要とし、そのような抗体エフェクター機能を評価するための当該技術分野において公知の様々なアッセイを使用して評価することができる。
【0072】
「天然配列Fc領域」は、天然において見出されるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。「変種Fc領域」または「突然変異型」もしくは「突然変異体」Fc領域は、少なくとも1つのアミノ酸改変により天然配列Fc領域のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を含み、天然配列Fc領域の少なくとも1つのエフェクター機能を保持していてもよくまたは保持していなくてもよい。好ましくは、変種Fc領域は、天然配列Fc領域または親ポリペプチドのFc領域と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換、例えば、天然配列Fc領域中または親ポリペプチドのFc領域中の約1~約10アミノ酸の置換、好ましくは約1~約5アミノ酸の置換を有する。本明細書における変種Fc領域は、好ましくは、天然配列Fc領域および/または親ポリペプチドのFc領域と少なくとも約80%の配列同一性を有し、最も好ましくはそれと少なくとも約90%の配列同一性、より好ましくはそれと少なくとも約95%の配列同一性を有する。変種または突然変異型Fc領域はまた、抗体のFc領域の機能を本質的に除去してもよい。例えば、Fc領域の突然変異は、抗体のエフェクター機能を除去してもよい。本発明の一実施形態では、本発明の抗体は突然変異型Fc領域を含む。
【0073】
本明細書において使用される場合、「Fc受容体」および「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を記載する。好ましいFcRは天然配列FcRである。さらに、好ましいFcRはIgG抗体に結合するもの(ガンマ受容体)であり、これらの受容体のアレル変種および代替的なスプライシング形態を含む、FcyRI、FcyRII、およびFcyRIIIサブクラスの受容体が挙げられる。FcyRII受容体としてはFcyRIIA(「活性化受容体」)およびFcyRIIB(「阻害受容体」)が挙げられ、これらは主にその細胞質ドメインにおいて異なる類似のアミノ酸配列を有する。FcRは、Ravetch and Kinet,1991,Ann.Rev.Immunol.,9:457-92、Capel et al.,1994,Immunomethods,4
:25-34、およびde Haas et al.,1995,J.Lab.Clin.Med.,126:330-41において総説されている。「FcR」としてはまた新生児受容体FcRnが挙げられ、これは胎児への母系IgGの移動に関与する(Guyer et al.,1976,J.Immunol.,117:587、および Kim
et al.,1994,J.Immunol.,24:249)。
【0074】
本明細書において使用される場合、「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性」および「ADCC」は、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、およびマクロファージ)が標的細胞上の結合した抗体を認識した後、標的細胞の溶解を引き起こす細胞媒介性の反応を指す。目的の分子のADCC活性は、米国特許第5,500,362号明細書または同第5,821,337号明細書において記載されるものなどの、in vitro ADCCアッセイを使用して評価することができる。そのようなアッセイのための有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)およびNK細胞が挙げられる。代替的に、または追加的に、目的の分子のADCC活性は、例えば、Clynes et al.,1998,PNAS(USA),95:652-656において開示されるものなどの動物モデルにおいて、in vivoで評価されてもよい。
【0075】
「補体依存性細胞傷害性」および「CDC」は、補体の存在下での標的の溶解を指す。補体活性化経路は、コグネイト抗原と複合体化した分子(例えば、抗体)への補体システム(C1q)の第1の成分の結合により開始される。補体活性化を評価するために、例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol.Methods,202:163(1996)において記載されるようなCDCアッセイが行われてもよい。
【0076】
抗体のパパイン消化は、それぞれが単一の抗原結合部位を有する、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片、および容易に結晶化するその能力を反映する名称の、残留「Fc」断片を産生する。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原を架橋することができるF(ab’)断片をもたらす。
【0077】
Fab断片はまた、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含有する。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの1つまたは複数のシステインを含む、重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端における数残基の付加によりFab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有するFab’のための本明細書における呼称である。F(ab’)2抗体断片は元々、それらの間にヒンジシステインを有するFab’断片のペアとして産生された。抗体断片の他の化学的連結もまた公知である。
【0078】
「Fv」は、完全な抗原認識および結合部位を含有する最小の抗体断片である。この領域は、非共有結合的に緊密に会合した1つの重鎖および1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。各可変ドメインの3つの超可変領域が相互作用してV-V二量体の表面上に抗原結合部位を定義するのはこの配置においてである。全体として、6つの超可変領域は抗原結合特異性を抗体に付与する。しかしながら、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つの超可変領域のみを含むFvの半分)でさえ、結合部位全体より低い親和性であるが、抗原を認識してそれに結合する能力を有する。
【0079】
「抗原」は、本明細書において使用される場合、本明細書に記載されるような抗原結合タンパク質または抗体のCDRにより認識される抗原決定基を指す。換言すれば、エピトープは、抗体により認識されて結合されることができる任意の分子の部分を指す。他に指し示さない限り、本明細書において使用される場合、「エピトープ」という用語は、抗N
GF抗原結合タンパク質/抗体/剤が結合するNGFの領域を指す。
【0080】
「抗原結合ドメイン」または「抗体の活性断片」などの用語は、抗原の部分または全体に特異的に結合するまたは相補的な領域を含む抗体または抗原結合タンパク質の部分を指す。抗原が大きい場合、抗体は抗原の特定の部分にのみ結合することがある。「エピトープ」、「エピトープの活性断片」、または「抗原決定基」などは、抗体の抗原結合ドメインとの特異的相互作用に関与する抗原分子の部分である。抗原結合ドメインは、1つまたは複数の抗体可変ドメイン(例えば、VHドメインからなるいわゆるFd抗体断片)により提供されてもよい。抗原結合ドメインは、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)および抗体重鎖可変ドメイン(VH)を含んでもよい(米国特許第5,565,332号明細書)。
【0081】
抗体(もしくは「抗体部分」)または抗原結合ポリペプチドなどの「結合部分」という用語は、抗原、例えばNGFに特異的に結合する能力を保持する1つまたは複数の完全なドメイン、例えば、完全なドメインのペアだけでなく、抗体の断片も含む。抗体の結合機能は全長抗体の断片により行うことができることが示されている。結合断片は、組換えDNA技術により、またはインタクトな免疫グロブリンの酵素もしくは化学的切断により産生される。結合断片としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、F(abc)、Fd、dAb、Fv、単鎖、単鎖抗体、例えば、scFv、および単一ドメイン抗体(Muyldermans et al.,2001,26:230-5)、および単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。Fab断片は、VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価断片である。F(ab’)断片は、ヒンジ領域においてジスルフィド架橋により連結された2つのFab断片を含む二価断片である。Fd断片はVHおよびCH1ドメインからなり、Fv断片は抗体の単一のアームのVLおよびVHドメインからなる。dAb断片はVHドメインからなる(Ward et al.,(1989)Nature 341:544-546)。Fv断片の2つのドメイン、VLおよびVHは別々の遺伝子によりコードされるが、それらは、組換え法を使用して、VLおよびVH領域がペア形成して一価分子(単鎖Fv(scFv)として公知)を形成する単一のタンパク質鎖としてそれらが製造されることを可能とする合成リンカーにより連結することができる(Bird et al.,1988,Science 242:423-426)。そのような単鎖抗体もまた、抗体の「結合部分」という用語に包含されることが意図される。ダイアボディなどの単鎖抗体の他の形態もまた包含される。ダイアボディは、二価の二重特異性抗体であり、VHおよびVLドメインは単一のポリペプチド鎖上に発現されるが、同じ鎖上の2つのドメインの間のペア形成を可能とするには短すぎるリンカーを使用することにより、ドメインを別の鎖の相補的なドメインと強制的にペア形成させて2つの抗原結合部位を作り出す(例えば、Holliger,et al.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448を参照のこと)。抗体またはその結合部分はまた、1つまたは複数の他のタンパク質またはペプチドとの抗体または抗体部分の共有結合性または非共有結合性会合により形成されるより大きい免疫接着分子の部分であってもよい。そのような免疫接着分子の例としては、四量体scFv分子を作製するためのストレプトアビジンコア領域の使用(Kipriyanov,S.M.,et al.(1995)Human Antibodies and Hybridomas 6:93-101)ならびに二価およびビオチン化scFv分子を作製するためのシステイン残基、マーカーペプチドおよびC末端ポリヒスチジンタグの使用(Kipriyanov,S.M.,et al.(1994)Mol.Immunol.31:1047-1058)が挙げられる。FabおよびF(ab’)2断片などの結合断片は、全体抗体のそれぞれパパインまたはペプシン消化などの従来技術を使用して全体抗体から調製することができる。さらに、抗体、抗体部分および免疫接着分子は、本明細書に記載されるようなおよび当該技術分野において公知のような標準的な組換えDNA技術を使用して得ることができる。「二重特異性」または「二機能性」抗体以外に、抗体は、その結合部位のそれぞれを同一に有することが理解される。「二重特異性」または「二機
能性抗体」は、2つの異なる重鎖/軽鎖ペアおよび2つの異なる結合部位を有する人工ハイブリッド抗体である。二重特異性抗体はまた、介在する定常領域と共に2つの抗原結合領域も含むことができる。二重特異性抗体は、ハイブリドーマの融合またはFab’断片の連結を含む様々な方法により産生することができる。例えば、Songsivilai
et al.,Clin.Exp.Immunol.79:315-321,1990.;Kostelny et al.,1992,J.Immunol.148,1547-1553を参照のこと。
【0082】
「復帰突然変異」という用語は、イヌ抗体の体細胞性に突然変異したアミノ酸の一部または全てが相同的な生殖細胞系列抗体配列からの対応する生殖細胞系列残基により置換されるプロセスを指す。本発明のイヌ抗体の重鎖および軽鎖配列は、最も高い相同性を有する配列を同定するために生殖細胞系列配列と別々にアライメントされる。本発明のイヌ抗体における差異は、そのような異なるアミノ酸をコードする定義されたヌクレオチド位置を突然変異させることにより生殖細胞系列配列に戻される。復帰突然変異の候補としてそのように同定された各アミノ酸の役割が抗原結合における直接的または間接的な役割について調べられるべきであり、イヌ抗体の任意の望ましい特徴に影響する突然変異の後に見出されるいかなるアミノ酸も最終のイヌ抗体において含まれるべきではなく、例として、選択的な突然変異誘発アプローチにより同定された活性増進性アミノ酸は復帰突然変異に供されない。復帰突然変異に供されるアミノ酸の数を最小化するために、最も近い生殖細胞系列配列とは異なるが第2の生殖細胞系列配列中の対応するアミノ酸と同一であることが見出されたアミノ酸位置は、第2の生殖細胞系列配列が本発明のイヌ抗体の配列と同一かつ相関的(co-linear)である限り、残すことができる。対応するドナー残基への選択された標的フレームワーク残基の復帰突然変異は、親和性を回復およびまたは向上させるために必要とされる可能性がある。
【0083】
本明細書において使用される場合、抗体の「免疫特異的」結合は、抗体の抗原結合部位とその抗体により認識される特定の抗原との間で起こる抗原特異的な結合相互作用を指す(すなわち、抗体はELISAまたは他のイムノアッセイにおいてタンパク質と反応し、無関係のタンパク質とは検出可能に反応しない)。抗体またはポリペプチドに「特異的に結合する」、または「優先的に結合する」(本明細書において交換可能に使用される)エピトープは、当該技術分野においてよく理解された用語であり、そのような特異的または優先的な結合を決定する方法もまた当該技術分野において周知である。分子は、代替的な細胞または物質よりも特定の細胞または物質とより頻繁に、より迅速に、より長い継続期間でかつ/またはより高い親和性で反応または会合する場合に、「特異的結合」または「優先的結合」を呈するといわれる。抗体は、それが他の物質に結合するよりも高い親和性で、アビディティで、より容易に、かつ/またはより長い継続期間で結合する場合に標的に「特異的に結合する」または「優先的に結合する」。例えば、NGFエピトープに特異的または優先的に結合する抗体は、それが他のNGFエピトープまたは非NGFエピトープに結合するよりも高い親和性で、アビディティで、より容易に、かつ/またはより長い継続期間でこのエピトープに結合する抗体である。例えば、第1の標的に特異的または優先的に結合する抗体(または部分もしくはエピトープ)が、第2の標的に特異的または優先的に結合する場合があり、または結合しない場合もあることもまたこの定義を読むことにより理解される。そのため、「特異的結合」または「優先的結合」は、排他的な結合を必ずしも必要としない(但し、それを含むことができる)。必ずしもそうではないが、概して、結合への言及は優先的な結合を意味する。
【0084】
抗体結合の文脈における「特異的に」という用語は、特定の抗原、すなわち、ポリペプチド、またはエピトープへの抗体の高アビディティおよび/または高親和性の結合を指す。抗原に特異的に結合する抗体は、他の抗原への同じ抗体の結合より強い。ポリペプチドに特異的に結合する抗体は、弱いが検出可能なレベル(例えば、目的のポリペプチドに対
して示される結合の10%またはそれ未満)において他のポリペプチドに結合する能力を有する場合がある。そのような弱い結合、またはバックグラウンド結合は、例えば、適切な対照の使用により、特異的抗体の対象ポリペプチドへの結合から容易に認識可能である。一般に、特異的抗体は、10-7Mもしくはそれ未満、10-8Mもしくはそれ未満、10-9Mもしくはそれ未満、10-10Mもしくはそれ未満、10-11Mもしくはそれ未満、10-12Mもしくはそれ未満、または10-13Mもしくはそれ未満などのKを有する結合親和性で抗原に結合する。
【0085】
本明細書において使用される場合、「親和性」という用語は、抗原決定基との単一の抗原結合部位の結合の強度を指す。親和性は、抗体または抗原結合タンパク質の結合部位と抗原決定因子との間の立体化学的フィットの緊密性、それらの間の接触面積の大きさ、荷電性および疎水性基の分布などに依存する。抗体親和性は、平衡分析または表面プラズモン共鳴「SPR」法(例えば、BIACORE(商標))により測定することができる。SPR法は、表面プラズモン波が金属/液体境界面において励起された場合に起こる表面プラズモン共鳴(SPR)の現象に依拠する。光は、試料と接触していない表面の側に方向付けられ、そこから反射されて、SPRは、角度および波長の特定の組合せにおいて反射光強度の低減を引き起こす。二分子結合事象は、表面層において屈折率の変化を引き起こし、それがSPRシグナルの変化として検出される。
【0086】
「K」という用語は、本明細書において使用される場合、抗体-抗原相互作用の解離定数を指すことが意図される。解離定数K、および会合定数Kは、親和性の定量的尺度である。平衡において、遊離抗原(Ag)および遊離抗体(Ab)は抗原-抗体複合体(Ag-Ab)と平衡にあり、また速度定数、kおよびkは、個々の反応の速度を定量化する。平衡において、ka[Ab][Ag]=kd[Ag-Ab]。解離定数Kは、Kd=kd/ka=[Ag][Ab]/[Ag-Ab]により与えられる。Kは濃度の単位、最も典型的には、M、mM、μM、nM、pMなどを有する。Kとして表現される抗体親和性を比較する場合、NGFについてより高い親和性を有することは、より低い値により指し示される。会合定数Kは、Ka=ka/kd=[Ag-Ab]/[Ag][Ab]により与えられる。Kは濃度の逆数の単位、最も典型的には、M-1、mM-1、μM-1、nM-1、pM-1などを有する。本明細書において使用される場合、「アビディティ」という用語は、可逆的な複合体の形成後の抗原-抗体結合の強度を指す。抗NGF抗体は、約(下限K値)~約(上限K値)の範囲内の解離定数(K)を有する結合として、NGFタンパク質への結合についてのKに関して特徴付けられてもよい。
【0087】
「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために本明細書において交換可能に使用される。ポリマーは、直鎖状または分岐鎖状であってもよく、修飾アミノ酸を含んでもよく、かつ非アミノ酸により割り込まれていてもよい。該用語はまた、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または任意の他のマニピュレーションもしくは修飾、例えば、標識化成分との結合といった、天然にまたは介入により修飾されたアミノ酸ポリマーを包含する。例えば、アミノ酸の1つまたは複数のアナログ(例えば、非天然アミノ酸などを含む)だけでなく、当該技術分野において公知の他の修飾を含有するポリペプチドもまた定義内に含まれる。本発明のポリペプチドは抗体に基づくので、ポリペプチドは単鎖または会合した鎖として存在できることが理解される。
【0088】
「保存的アミノ酸置換」という用語は、所与のアミノ酸残基についての任意のアミノ酸置換であって、ポリペプチド機能(例えば、酵素活性)の実質的な減少を結果としてもたらさない程度に置換残基が該所与の残基と化学的に類似しているものを指し示す。保存的アミノ酸置換は当該技術分野において一般的に公知であり、その例は、例えば、米国特許
第6,790,639号明細書、同第6,774,107号明細書、同第6,194,167号明細書、または同第5,350,576号明細書において記載されている。好ましい実施形態では、保存的アミノ酸置換は、以下の6つの群のうちの1つの中で起こるものである:
・小さい脂肪族の、実質的に非極性の残基:Ala、Gly、Pro、Ser、およびThr;
・大きい脂肪族の、非極性の残基:lie、Leu、およびVal;Met;
・極性の、負に荷電した残基およびそのアミド:AspおよびGlu;
・極性の、負に荷電した残基のアミド:AsnおよびGin;His;
・極性の、正に荷電した残基:ArgおよびLys;His;ならびに
・大きい芳香族残基:TrpおよびTyr;Phe。
【0089】
好ましい実施形態では、保存的アミノ酸置換は、天然残基(保存的置換)ペアとして列記される以下のいずれか1つである:Ala(Ser);Arg(Lys);Asn(Gin;His);Asp(Glu);Gin(Asn);Glu(Asp);Gly(Pro);His(Asn;Gln);Ile(Leu;Val);Leu(Ile;Val);Lys(Arg;Gin;Glu);Met(Leu;Ile);Phe(Met;Leu;Tyr);Ser(Thr);Thr(Ser);Trp(Tyr);Tyr(Trp;Phe);およびVal(Ile;Leu)。
【0090】
「核酸」、「ポリヌクレオチド」、および「核酸分子」などの用語は、本明細書において交換可能に使用されることがあり、DNAおよびRNA中の一連のヌクレオチド塩基(「ヌクレオチド」とも呼ばれる)を指す。核酸は、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、および/またはそのアナログを含有してもよい。「核酸」という用語は、例えば、一本鎖および二本鎖分子を含む。核酸は、例えば、遺伝子または遺伝子断片、エクソン、イントロン、DNA分子(例えば、cDNA)、RNA分子(例えば、mRNA)、組換え核酸、プラスミド、および他のベクター、プライマーおよびプローブとすることができる。5’→3’(センス)および3’→5’(アンチセンス)ポリヌクレオチドの両方が含まれる。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドもしくは塩基、および/またはそのアナログ、またはDNAもしくはRNAポリメラーゼによりポリマーに組み込むことができる任意の基質とすることができる。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびそのアナログなどの修飾ヌクレオチドを含んでもよい。存在する場合、ヌクレオチド構造への修飾は、ポリマーのアセンブリーの前または後に与えられてもよい。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分により割り込まれていてもよい。ポリヌクレオチドは、標識化成分との結合などにより、重合後にさらに修飾されてもよい。他の種類の修飾としては、例えば、「キャップ付加」、アナログによる天然に存在するヌクレオチドの1つまたは複数の置換、ヌクレオチド間の修飾(例えば、非荷電性連結(例えば、メチルホスホネート、リン酸トリエステル、ホスホアミデート(phosphoamidates)、カルバメート(cabamates)など)を有するものおよび荷電性連結(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を有するものなど)、ペンダント部分(例えば、タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ-L-リジンなど)など)を含有するもの、インターカレーター(例えば、アクリジン、ソラレンなど)を有するもの、キレーター(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化性金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾された連結(例えば、アルファアノマー核酸など)を有するものだけでなく、ポリヌクレオチドの非修飾形態が挙げられる。さらに、通常は糖中に存在するヒドロキシル基のいずれかは、例えば、ホスホネート基、リン酸基により置換され、標準的な保護基により保護され、または追加のヌクレオチドへの追加の連結を調製するために活性化されてもよく、または固体支持体に結合されてもよい。5’および3’末端のOHは、リン酸化することができ、またはアミンもしくは1~20個の炭素原子の有機キャップ付加基
部分により置換することができる。他のヒドロキシルもまた、標準的な保護基に誘導体化されてもよい。ポリヌクレオチドはまた、当該技術分野において一般に公知のリボースまたはデオキシリボース糖の類似の形態を含有することができ、該形態としては、例えば、2’-0-メチル-、2’-0-アリル、2’-フルオロ-または2’-アジド-リボース、炭素環糖アナログ、アノマー糖、エピマー糖(アラビノース、キシロースまたはリキソースなど)、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式アナログおよび脱塩基ヌクレオシドアナログ(例えば、メチルリボシドなど)が挙げられる。1つまたは複数のホスホジエステル連結は、代替的な連結基により置換されてもよい。これらの代替的な連結基としては、ホスフェートが、P(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、(O)NR2(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR’、COまたはCH2(「ホルムアセタール」)(各RまたはR’は、独立して、H、または、任意選択的にエーテル(-0-)連結、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニルもしくはアラルジルを含有する置換もしくは非置換のアルキル(1~20個のC)である)により置換された実施形態が挙げられるがそれに限定されない。ポリヌクレオチド中の全ての連結が同一である必要はない。以上の記載は、RNAおよびDNAを含む、本明細書において言及される全てのポリヌクレオチドに適用される。
【0091】
本明細書において使用される場合、「ベクター」は、宿主細胞中に1つまたは複数の目的の遺伝子または配列を送達すること、および好ましくはそれを発現させることができる構築物を意味する。ベクターの例としては、ウイルスベクター、ネイキッドDNAまたはRNA発現ベクター、プラスミド、コスミドまたはファージベクター、陽イオン性縮合剤と会合したDNAまたはRNA発現ベクター、リポソーム中に封入されたDNAまたはRNA発現ベクター、およびプロデューサー細胞などのある特定の真核細胞が挙げられるがそれに限定されない。本明細書に記載されるようなベクターは発現制御配列、すなわち、核酸の転写を指令する核酸配列を有する。発現制御配列は、構成的もしくは誘導性プロモーターなどのプロモーター、またはエンハンサーとすることができる。発現制御配列は、転写されるために核酸配列に「作動可能に連結されている」。核酸は、別の核酸配列と機能的な関係性となるように置かれている場合に「作動可能に連結されている」。例えば、プレ配列もしくは分泌リーダー用のDNAは、ポリペプチドの分泌に参加するプレタンパク質として発現される場合にポリペプチド用のDNAに作動可能に連結されており;プロモーターもしくはエンハンサーは、配列の転写に影響する場合にコーディング配列に作動可能に連結されており;またはリボソーム結合部位は、翻訳を促進するように配置されている場合にコーディング配列に作動可能に連結されている。概しては、「作動可能に連結された」は、連結されているDNA配列が連続しており、かつ、分泌リーダーの場合には、連続しかつリーディングフェーズ(reading phase)にあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは連続している必要はない。連結は、簡便な制限部位におけるライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーが従来の実施にしたがって使用される。
【0092】
ポリペプチドが保存的アミノ酸置換を含有してもよいのと同様に、そのポリヌクレオチドは保存的コドン置換を含有してもよい。コドン置換は、発現された時に上記のような保存的アミノ酸置換を生じさせる場合に保存的であると考えられる。アミノ酸置換を結果としてもたらさない縮重コドン置換もまた、本発明によるポリヌクレオチドにおいて有用である。したがって、例えば、本発明の実施形態において有用な選択されたポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、それを用いて形質転換される発現宿主細胞が呈するコドン使用頻度を近似するために、またはその発現を他の方法で向上させるために縮重コドン置換により突然変異されてもよい。
【0093】
「変種」抗NGF抗原結合タンパク質は、親抗体配列中の1つまたは複数のアミノ酸残基の付加、欠失、および/または置換により「親」抗NGF抗体アミノ酸配列とはアミノ
酸配列において異なり、かつ親抗NGF抗体の少なくとも1つの所望の活性を保持する分子を本明細書において指す。変種抗NGFは、本明細書に記載されるように、抗体の超可変領域において保存的アミノ酸置換を含んでもよい。所望の活性は、抗原に特異的に結合する能力、動物においてNGF活性を低減、阻害または中和する能力を含むことができる。一実施形態では、変種は、親抗体の1つまたは複数の超可変および/またはフレームワーク領域において1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。例えば、変種は、親抗体の1つまたは複数の超可変および/またはフレームワーク領域において少なくとも1つの、例えば、約1~約10、好ましくは約2~約5の置換を含んでもよい。通常、変種は、親抗体の重鎖または軽鎖可変ドメイン配列と少なくとも50%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。この配列に関する同一性または相同性は、配列をアライメントし、必要な場合にはギャップを導入して最大配列同一性パーセントを達成した後の、親抗体残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして本明細書において定義される。N末端、C末端、または内部伸長、欠失、または抗体配列への挿入のいずれも、配列同一性または相同性に影響するものとは解されない。変種はNGFに結合する能力を保持し、好ましくは、親抗体に等しいまたはそれより優れた所望の活性を有する。例えば、変種は、より強い結合親和性、動物においてNGF活性を低減、阻害もしくは中和する増進した能力、ならびに/またはNGFがTrkAおよびp75に結合することを阻害する増進した能力を有してもよい。
【0094】
高親和性のNGF受容体であると考えられるTrkAは、神経栄養チロシンキナーゼ受容体(NTKR)ファミリーのメンバーである。このキナーゼは、ニューロトロフィンが結合すると、自身(自己リン酸化)およびMAPK経路のメンバーをリン酸化する膜結合受容体である。このキナーゼの存在は細胞分化に繋がり、感覚ニューロンサブタイプの指定において役割を果たし得る。p75受容体は低親和性のNGF受容体であると考えられる。
【0095】
「変種」核酸は、「親」核酸とは配列において異なる分子を本明細書において指す。ポリヌクレオチド配列の差異は、1つまたは複数のヌクレオチドの欠失、置換、または付加などの突然変異性変化の結果としてもたらされ得る。これらの変化のそれぞれは、所与の配列において単独または組合せで、1回または複数回起こってもよい。
【0096】
「単離された」という用語は、材料(例えば、本明細書に記載されるような抗原結合タンパク質または核酸)がその天然の環境の成分から分離および/または回収されたことを意味する。その天然の環境の夾雑成分は、材料の診断または治療的使用に干渉することになる材料であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性溶質が挙げられる場合がある。核酸に関して、単離された核酸は、それが染色体中で通常一緒にある5’→3’配列から分離されたものを含んでもよい。好ましい実施形態では、材料は、材料の95重量%より高く、最も好ましくは99重量%より高く精製される。材料の天然の環境の少なくとも1つの成分が存在しないので、単離された材料は材料を組換え細胞内にin situで含む。通常は、しかしながら、単離された材料は少なくとも1つの精製ステップにより調製される。
【0097】
本明細書において使用される場合、「細胞」、「細胞株」、および「細胞培養物」という用語は交換可能に使用されてもよい。これらの用語はまた、全てのその後の世代である、その子孫を含む。全ての子孫は、意図的なまたは意図しない突然変異に起因して同一でないことがあることが理解される。異種核酸配列の発現の文脈において、「宿主細胞」は、in vitroまたはin vivoのいずれに位置していようと、原核または真核細胞(例えば、細菌細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞、および昆虫細胞)を指す。例えば、宿主細胞は、トランスジェニック動物中に位置してもよい。宿主細胞は、ベクター用のレ
シピエントとして使用することができ、ベクターを複製することおよび/またはベクターによりコードされる異種核酸を発現することができる任意の形質転換可能な生命体を含んでもよい。
【0098】
本明細書において使用される場合、「標識」という語は、抗体または核酸に直接的または間接的に結合される検出可能な化合物または組成物を指す。標識はそれ自体が検出可能であってもよく(例えば、放射性同位体標識もしくは蛍光標識)、または酵素標識の場合、検出可能な基質化合物もしくは組成物の化学的変化を触媒してもよい。
【0099】
「対象」または「患者」は、本発明の分子により影響される可能性がある治療を必要とする動物を指す。本発明にしたがって治療することができる動物としては脊椎動物が挙げられ、イヌなどの哺乳動物が特に好ましい例である。
【0100】
「組成物」は、化学組成物、生物学的組成物または生物学的製剤(特に、本明細書に記載されるような抗原結合タンパク質)のいずれであろうと、活性剤と、不活性(例えば、標識)または活性(例えば、アジュバント)であり得る別の化合物または組成物との組合せを意味することが意図される。
【0101】
本明細書において定義される場合、本発明において使用するために好適な「薬学的に許容される担体」は当業者に周知である。そのような担体としては、水、生理食塩水、緩衝生理食塩水、リン酸緩衝液、アルコール/水性溶液、エマルションまたは懸濁液が挙げられるがそれに限定されない。他の従来用いられている希釈剤、アジュバントおよび賦形剤が従来技術にしたがって加えられてもよい。そのような担体としては、エタノール、ポリオール、および好適なその混合物、植物油、および注射可能な有機エステルを挙げることができる。緩衝剤およびpH調整剤もまた用いられてもよい。緩衝剤としては、有機酸または塩基から調製された塩が挙げられるがそれに限定されない。代表的な緩衝剤としては、有機酸塩(例えば、クエン酸(citric acid)、クエン酸塩(citrates)、アスコルビン酸、グルコン酸、ヒスチジン-Hel、炭酸、酒石酸、コハク酸、酢酸、またはフタル酸の塩)、トリス、トリメタンミン塩酸塩(trimethanmine hydrochloride)、またはリン酸塩緩衝剤が挙げられるがそれに限定されない。非経口担体としては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース、トレハロース、スクロース、および塩化ナトリウム、乳酸リンゲルまたは固定油を挙げることができる。静脈内担体としては、流体および栄養補充液、電解質補充液、例えば、リンゲルデキストロースに基づくものなどを挙げることができる。防腐剤および他の添加物、例えば、抗菌物質、酸化防止剤、キレート剤(例えば、EDTA)、および不活性気体などもまた医薬担体中に提供されてもよい。本発明は担体の選択により限定されない。適切なpH、等張性、安定性および他の従来の特徴を有する上記の成分からのこれらの薬学的に許容される組成物の調製は、当該技術分野の技術的範囲内である。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th ed,Lippincott Williams & Wilkins,publ.,2000;およびThe Handbook of Pharmaceutical Excipients,4.sup.th edit.,eds.R.C.Rowe et al,APhA Publications,2003などのテキストを参照のこと。
【0102】
「治療有効量」(または「有効量」)は、対象または患者に投与された場合に有益なまたは所望の影響をもたらすために充分な活性成分、例えば、本発明による剤の量を指す。有効量は、1つまたは複数の投与、塗布または投薬において投与することができる。本発明による組成物の治療有効量は、当業者により容易に決定され得る。本発明の文脈において、「治療有効量」は、疼痛感覚の緩和または低減などの臨床結果を含む有益なまたは所
望の結果をもたらすために充分なNGF関連状態に関連付けられる1つまたは複数のパラメーターにおける客観的に測定される変化を生じさせるものである。有効量は、1つまたは複数の投与において投与され得る。本発明の目的のためには、薬物、化合物、または医薬組成物の有効量は、術後疼痛、関節リウマチ疼痛、および/または変形性関節症疼痛を含む疼痛を治療し、軽快させ、その強度を低減しかつ/または予防するために充分な量である。一部の実施形態では、「有効量」は、静止時の疼痛(静止時疼痛)または機械的に誘導された疼痛(運動後の疼痛を含む)、または両方を低減するものであってもよく、疼痛性刺激の前、間または後に投与されてもよい。臨床的文脈において理解されるように、薬物、化合物、または医薬組成物の有効量は、別の薬物、化合物、または医薬組成物と組み合わせて達成されてもよく、またはそうでなくてもよい。したがって、「有効量」は、1つまたは複数の治療剤の投与の文脈において考えられてもよく、単一の剤は、1つまたは複数の他の剤と組み合わせて望ましい結果が達成され得るまたは達成される場合に、有効量において与えられると考えられてもよい。当然、治療有効量は、治療されている特定の対象および状態、対象の体重および年齢、状態の重篤度、選択される特定の化合物、従うべき投与レジメン、投与の時期、ならびに投与の方式などに依存して変動し、これらの全ては当業者が容易に決定することができる。
【0103】
本明細書において使用される場合、「治療的」という用語は、疾患、状態または障害の治療の全スペクトルを包含する。本発明の「治療」剤は、予防薬的(prophylactic)もしくは予防的(preventive)な方式で作用してもよく、該方式としては、リスク(薬理遺伝学)があると同定することができる標的動物に対して設計された手順を組み込んだものが挙げられ;または軽快的もしくは治癒的な性質の方式で作用してもよく;または治療されている疾患もしくは障害の少なくとも1つの症状の進行の速度もしくは程度を緩慢化させるように作用してもよい。
【0104】
さらなる態様では、本発明は、本発明の抗体が治療的または予防薬的使用のために提供される獣医学的組成物を特徴とする。本発明は、特定の抗原、例えば、疾患または状態と関連付けられる特定の抗原を有するイヌ対象を治療する方法を特徴とする。方法は、特定の抗原に特異的な治療有効量の組換え抗体を投与することを含み、該組換え抗体は本明細書に記載されている。
【0105】
治療効果を生じさせるために有用な抗体の量は、当業者に周知の標準技術により決定することができる。抗体は、概して、薬学的に許容される緩衝液内に標準技術により提供され、任意の所望の経路により投与されてもよい。本発明の抗体または抗原結合部分の投与の経路は、経口、非経口、吸入または局所的なものであってもよい。好ましい実施形態では、投与の経路は非経口である。本明細書において使用される非経口という用語は、静脈内、筋肉内、皮下、直腸、膣または腹腔内投与を含む。
【0106】
本明細書において使用される「疼痛」は、急性および慢性疼痛、ならびに炎症性成分を伴う任意の疼痛を含む、任意の病因の疼痛を指す。疼痛の例としては、炎症疼痛、術後切開疼痛、神経障害性疼痛、骨折疼痛、骨粗鬆症骨折疼痛、疱疹後神経疼痛、がん疼痛、熱傷(bums)の結果としてもたらされる疼痛、熱傷または創傷と関連付けられる疼痛、外傷(外傷性頭部傷害を含む)と関連付けられる疼痛、神経障害性疼痛、筋骨格障害(例えば、関節リウマチ、変形性関節症、強直性脊椎炎、血清反応陰性(非リウマチ性)関節症、非関節性リウマチおよび関節周囲障害)と関連付けられる疼痛、ならびにがん(「突出痛」および末期がんと関連付けられる疼痛を含む)、末梢性ニューロパチーと関連付けられる疼痛ならびに疱疹後神経疼痛が挙げられる。
【0107】
本明細書において使用される場合、「治療」は、有益なまたは所望の臨床結果を得るためのアプローチである。本発明の目的のために、有益なまたは所望の臨床結果としては、
以下の1つまたは複数が挙げられるがそれに限定されない:急性、慢性、炎症性、神経障害性、術後疼痛、関節リウマチ疼痛、または変形性関節症疼痛を含む、任意の態様の疼痛の改善または緩和。本発明の目的のために、有益なまたは所望の臨床結果としては、以下の1つまたは複数が挙げられるがそれに限定されない:任意の態様の疼痛を含む疼痛と関連付けられる1つまたは複数の症状の重篤度の減少、緩和(例えば、疼痛の継続期間の短縮、疼痛の感度または感覚の低減)が挙げられる。
【0108】
NGF関連障害は、本明細書に記載される場合、心臓血管疾患、アテローム性動脈硬化症、肥満症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、疼痛および炎症を含む障害を指す。本発明の一部の実施形態では、NGF関連障害は、疼痛、特に、慢性疼痛、炎症疼痛、術後切開疼痛、神経障害性疼痛、骨折疼痛、骨粗鬆症骨折疼痛、疱疹後神経疼痛、がん疼痛、熱傷(bums)の結果としてもたらされる疼痛、熱傷または創傷と関連付けられる疼痛、外傷(外傷性頭部傷害を含む)と関連付けられる疼痛、神経障害性疼痛、筋骨格障害(例えば、関節リウマチ、変形性関節症、強直性脊椎炎、血清反応陰性(非リウマチ性)関節症、非関節性リウマチおよび関節周囲障害)と関連付けられる疼痛、ならびにがん(「突出痛」および末期がんと関連付けられる疼痛を含む)、末梢性ニューロパチーと関連付けられる疼痛ならびに疱疹後神経疼痛を指す。
【0109】
疼痛の「発生率の低減」は、重篤度の低減(例えば鎮静剤を含む、この状態のために一般に使用される他の薬物および/もしくは療法の必要性および/もしくは量(例:それへの曝露)の低減を含むことができる)、継続期間の低減、ならびに/または頻度の低減(例えば、個体において術後疼痛までの時間を遅延もしくは増加させることを含む)いずれかを意味する。当業者により理解されるように、個体は、治療に対する応答に関して異なることがあり、そのため、例えば、「個体において関節リウマチ疼痛または変形性関節症疼痛の発生率を低減する方法」は、そのような投与がその特定の個体において発生率のそのような低減を引き起こすであろうことの合理的な期待に基づいて抗NGFアンタゴニスト抗体を投与することを反映する。
【0110】
疼痛または疼痛の1つもしくは複数の症状(例えば、関節リウマチ疼痛もしくは変形性関節症疼痛)の「軽快」は、抗NGFアンタゴニスト抗体を投与しない場合と比較した疼痛の1つまたは複数の症状の減少または改善を意味する。「軽快」はまた、症状の継続期間の短縮または低減を含む。
【0111】
疼痛または疼痛の1つもしくは複数の症状(例えば、関節リウマチ疼痛もしくは変形性関節症疼痛)の「軽減」は、本発明による抗NGFアンタゴニスト抗体を用いて治療された個体または個体の集団における術後疼痛の1つまたは複数の望ましくない臨床症状の程度の減少を意味する。
【0112】
それにおいて使用される場合、疼痛の発生の「遅延」は、術後疼痛、関節リウマチ疼痛、または変形性関節症疼痛などの疼痛の進行を先延ばしし、妨害し、緩慢化させ、遅延させ、安定化させ、かつ/または延期させることを意味する。この遅延は、治療されている疾患および/または個体の履歴に依存する、時間の長さの変更とすることができる。当業者に明らかなように、充分なまたは顕著な遅延は、個体が疼痛を発生しないという点において、予防を実質的に包含することができる。症状の発生を「遅延」させる方法は、方法を使用しないことと比較した場合に、所与の時間枠中に症状を発生する確率を低減しかつ/または所与の時間枠中の症状の程度を低減する方法である。そのような比較は、典型的には、統計的に有意な対象数を使用する臨床研究に基づく。
【0113】
「術後疼痛」(交換可能に「切開後疼痛」または「外傷後疼痛」と称される)は、切断、穿刺、切開、裂傷、または個体の組織への創傷などの外傷(侵襲的なものであれ非侵襲
的なものであれ、全ての外科的処置から生じるものを含む)から生じるまたはその結果としてもたらされる疼痛を指す。本明細書において使用される場合、術後疼痛は、外的な身体的外傷なしに起こる(生じるまたは起源とする)疼痛を含まない。一部の実施形態では、術後疼痛は、内的または外的(末梢性を含む)な疼痛であり、創傷、切断、外傷、裂傷または切開は、偶発的(外傷性創傷におけるように)または故意(外科的切開におけるように)に起こる場合がある。本明細書において使用される場合、「疼痛」は疼痛の侵害受容および感覚を含み、疼痛は、疼痛スコアおよび当該技術分野において周知の他の方法を使用して、客観的および主観的に評価することができる。術後疼痛は、本明細書において使用される場合、異痛症(すなわち、通常は非有害性の刺激への応答の増加)および痛覚過敏(すなわち、通常有害または不快な刺激への応答の増加)を含み、そしてそれらは、熱的または機械的(触覚的)な性質のものである可能性がある。一部の実施形態では、疼痛は、熱感受性、機械的感受性および/または静止時疼痛により特徴付けられる。一部の実施形態では、術後疼痛は、機械的に誘導された疼痛または静止時疼痛を含む。他の実施形態では、術後疼痛は静止時疼痛を含む。疼痛は、当該技術分野において周知のように、一次性または二次性疼痛である可能性がある。
【0114】
本発明の方法を記載する前に、本発明は、記載される特定の方法、および実験条件に限定されず、それはそのような方法および条件は変わる場合があるためであることが理解されるべきである。本明細書において使用される学術用語は、特定の実施形態を記載する目的のものに過ぎず、限定することは意図されず、そのため本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることもまた理解されるべきである。
【0115】
他に定義されない限り、本明細書において使用される全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の任意の方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、好ましい方法および材料がここに記載される。本明細書において言及される全ての刊行物は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0116】
本明細書において開示される発明は、神経成長因子(NGF)に特異的に結合する抗原結合タンパク質(本明細書に記載されるような、「抗体」、「アンタゴニスト抗体」、および「抗体断片」などの用語と交換可能に使用される)、特に、イヌ、ネコ、ウマ、マウス、ウシ、ヒトまたは任意の他の種のいずれであれ、NGFに特異的に結合し、それにより、NGFがイヌTrkAおよびより低い程度でイヌp75受容体に結合することを予防し、それにより、シグナル伝達経路がNGFにより活性化されることを予防するという点でアンタゴニストとして働く、組換え法、ハイブリドーマ技術もしくはファージディスプレイ技術により産生される抗体、イヌ化、ネコ化、ウシ化、ウマ化、ヒト化もしくは任意の他の種分化抗体、または完全「イヌ化」(種分化)モノクローナル抗体に関する。
【0117】
NGFは、同定された最初のニューロトロフィンであり、末梢ニューロンおよび中枢ニューロンの両方の発生および生存におけるその役割はよく特徴付けられている。NGFは、末梢交感神経および胚性感覚ニューロンならびに前脳基底部コリン作動性ニューロンの発生において不可欠な生存および維持因子であることが示されている(Smeyne et al.(1994)Nature 368:246-249、Crowley et
al.(1994)Cell 76:1001-1011)。NGFは感覚ニューロンにおける神経ペプチドの発現を上方調節し(Lindsay et al.(1989)Nature 337:362-364)、その活性は、2つの異なる膜結合受容体、TrkA受容体および低親和性p75共通ニューロトロフィン受容体と考えられるものを通じて媒介される。
【0118】
NGFは、NGF関連障害において上昇することが示されており、該障害においては、
上昇した量のNGFが傷害または疾患組織中に存在する。NGF関連障害は、傷害、疾患または損傷組織におけるNGFの上昇に起因する疼痛の増加として定義することができる。疼痛は、本明細書において使用される場合、本明細書に記載されるように定義され、慢性疼痛、炎症疼痛、術後切開疼痛、神経障害性疼痛、骨折疼痛、骨粗鬆症骨折疼痛、疱疹後神経疼痛、がん疼痛、熱傷(bums)の結果としてもたらされる疼痛、熱傷または創傷と関連付けられる疼痛、外傷(外傷性頭部傷害を含む)と関連付けられる疼痛、神経障害性疼痛、筋骨格障害(例えば、慢性疼痛、関節リウマチ、変形性関節症、強直性脊椎炎、血清反応陰性(非リウマチ性)関節症、非関節性リウマチおよび関節周囲障害)と関連付けられる疼痛、ならびにがん(「突出痛」および末期がんと関連付けられる疼痛を含む)、末梢性ニューロパチーと関連付けられる疼痛ならびに疱疹後神経疼痛を含む障害を指す。
【0119】
本発明の一実施形態では、NGF障害は、対象(イヌ、ネコ、ウマ、ヒトなど)における変形性関節症として定義される。変形性関節症(OA)は、イヌにおいて関節軟骨の喪失および軟骨下骨のその後の露出により特徴付けられる緩徐に進行する関節変性疾患である。これは最終的に、関節痛により特徴付けられる自己永続性の潜行性障害を結果としてもたらす。新たな骨形成が、慢性炎症、ならびに運動および疼痛の両方を制限するために局所的な組織損傷に応答して起こる。巨視的には、関節軟骨の喪失、関節空間の狭窄、軟骨下骨の硬化、および関節の骨増殖体の産生がある(Veterinary Focus:Vol 17 No 3;2007)。
【0120】
イヌ、ネコ、およびウマなどの異なる種において、一次性OAの発症は血統に依存する。例えばイヌについて、発症の平均年齢は、例えば、ロットワイラーにおいて3.5歳、プードルにおいて9.5歳であり、他の血統だけでなく混合血統に対する発症の広い範囲がある。発育期整形外科疾患および関連付けられる変形性関節症はイヌにおいて最も一般的な関節疾患であり、関節疾患および付属肢の骨内の関連する問題について70%程度の外来を占める。症例の22パーセントは、1歳またはそれ未満の年齢のイヌであった。OAの発生率は、外傷だけでなく、肥満症、加齢および遺伝学的異常によっても増加する。特に、年齢はOA発生率の因子である可能性があり、>50%の関節炎症例は8~13歳のイヌにおいて観察される。筋骨格疾患は老年患者において非常に一般的であり、20%近くの高齢のイヌは整形外科的障害を示す。>8歳のラブラドールレトリバーにおいて、いくつかの関節(肘、肩、股関節、膝)におけるOAが典型的である。追加的に、イヌのサイズもまたOA発症において役割を果たす。関節炎を有するイヌの45%は大型犬である。これらのうち、>50%は超大型犬であり、一方で28%のみが中型犬、27%が小型犬である。イヌにおけるOA疼痛の緩和のための薬学的介入の必要性は非常に高い。
【0121】
本明細書において述べるように、NGFのレベルの上昇は、NGF関連障害、特にOAの指標となる。NGFのレベルの上昇は、肥満細胞数の増加と共にトランスジェニック関節炎マウスにおいて報告されている(Aloe,et al.,Int.J.Tissue Reactions-Exp.Clin.Aspects 15:139-143(1993))。PCT国際公開第02/096458号パンフレットは、炎症状態(例えば、関節リウマチ)などの様々なNGF関連障害の治療におけるある特定の特性の抗NGF抗体の使用を開示する。ヒト腫瘍壊死因子遺伝子を有する関節炎トランスジェニックマウスに注射された精製された抗NGF抗体は、肥満細胞の数の低減だけでなく、関節炎マウスの滑膜内のヒスタミンおよびサブスタンスPレベルの減少を引き起こしたことが報告されている(Aloe et al.,Rheumatol.Int.14:249-252(1995))。NGF抗体の外因性投与は、関節炎マウスにおいて起こるTNFαの増進したレベルを低減したことが示されている(Marmi et al.,Rheumatol.Int.18:97-102(1998))。齧歯動物抗NGFアンタゴニスト抗体が報告されている。例えば、Hongo et al.,Hybridoma(
2000)19(3):215-227;Ruberti et al.(1993)Cell.Molec.Neurobiol.13(5):559-568を参照のこと。しかしながら、齧歯動物抗体が非マウス哺乳動物において治療的に使用される場合、抗マウス抗体応答が、治療された個体の顕著な数において発生する。したがって、イヌ用途のため、特にOAの治療において使用するための、本発明の抗NGFアンタゴニスト抗体を含む抗NGFアンタゴニスト抗原結合タンパク質の深刻な必要性が存在する。
【0122】
抗体の特性はそれを非常に魅力的な治療剤とするが、多数の制限がある。モノクローナル抗体(mAb)の大部分は、上記のように、齧歯動物起源である。そのような抗体が異なる種において投与される場合、患者はそのような異種抗体に対して患者自身の抗体応答を増大させる可能性がある。そのような応答は、抗体の最終的な中和および除去を結果としてもたらすことがある。上記のように、モノクローナル抗体の産生においてマウスが大規模に使用される。特定の種、一般的には最初にマウスにおいて産生される抗体の使用における1つの問題は、前記抗体を用いて治療されている非マウス対象は、マウス抗体に対してそれらが外来物質であるかのように反応し、それにより、マウス抗体に対する抗体の新たなセットを作製することである。マウス抗体が、非マウス免疫系、例えばイヌ免疫系により異物として「見られ」、対象は次に該分子に対する免疫応答を増大させる。当業者は、抗原特異的抗体を用いて対象を治療できるが、その抗体を種特異的とすることができる必要性を認識する。種間抗体投与、例えば、イヌへのマウスモノクローナル抗体の投与から生成される反応の部分は、発疹のような軽度の形態から、腎不全などのより極度かつ生命を脅かす応答にまで及ぶ可能性がある。この免疫応答はまた、治療の有効性を減少させ、またはマウス抗体を含有するその後の治療を対象が与えられる場合に将来的な反応を生じさせる可能性がある。したがって、我々は、抗体の「イヌ化」によりこの欠点を克服することを説明する。特に、このプロセスは、免疫グロブリン可変ドメインのフレームワーク領域に焦点を当てるが、可変ドメインの相補性決定因子領域(compliment
determinant regions;CDR)も含む可能性がある。このプロセスを実施するための可能化ステップおよび低減は本開示において記載される。
【0123】
動物からのモノクローナル抗体(本明細書に記載されるような抗原結合タンパク質、アンタゴニスト抗体などであり、かつ交換可能に使用される用語)を改変して種への治療的投与のためにそれをより低い免疫原性とするプロセスは、積極的に追及され、多数の刊行物において記載されてきた(例えば、Antibody Engineering:A practical Guide.Carl A.K.Borrebaeck ed.W.H.Freeman and Company,1992)。しかしながら、このプロセスは、最近まで、非ヒト、特にイヌの治療または診断の開発のために応用されてこなかった。実際、イヌ可変ドメインに関してはほとんど刊行がない。Wasserman and Capra,Biochem.6,3160(1977)は、イヌIgMおよびイヌIgA重鎖の両方の可変領域のアミノ酸配列を決定した。Wasserman and
Capra,Immunochem.15,303(1978)は、イヌIgAからのK軽鎖のアミノ酸配列を決定した。McCumber and Capra,Mol.Immunol.16,565(1979)は、イヌミュー鎖の完全なアミノ酸配列を開示する。Tang et al.,Vet.Immunology Immunopathology 80,259(2001)は、単一のイヌIgG-A y鎖cDNAおよび4つのイヌIgG-A y鎖タンパク質配列を開示する。それは、ヒト、マウス、ブタ、およびウシIgGの保存された領域から設計された縮重オリゴヌクレオチドプライマーを用いるイヌ脾臓cDNAライブラリーのPCR増幅を記載する。イヌ抗体に関して利用可能な少数の情報は、イヌ疾患の治療用の治療法としての開発を妨げた。
【0124】
これらの記載した制限は、「種分化」として公知の操作技術の開発を促し、治療的抗体の「ヒト化」に関して当業者に周知である。種分化された分子の例としてイヌ化抗体は、
非イヌ免疫グロブリンに由来する最小の配列を含有するキメラ抗体またはその断片として生成することができる。ほとんどの部分について、イヌ化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基が、所望の特性(例えば、特異性、親和性、および力価)を有するマウスなどの非イヌ種(すなわち、「ドナー抗体」または「起源種抗体」)のCDRからの残基により置換されたイヌ抗体(すなわち、「レシピエント抗体」または「標的種抗体」)である。一部の事例では、イヌ免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非イヌ残基により置換される。このイヌ化戦略は「CDRグラフティング」と称される。親和性を回復およびまたは向上させるために、対応するドナー残基への選択された標的フレームワーク残基の復帰突然変異が必要とされる可能性がある。米国特許第7,261,890号明細書に記載されるように、構造ベースの方法もまたイヌ化および親和性成熟のために用いられてもよい。
【0125】
上記のアプローチは、ドナー種からのCDRsを受け入れるように操作される標的種の
1つまたは複数の抗体可変重鎖または可変軽鎖からのフレームワーク領域の本質的に全体を利用する。このアプローチはまた、イヌ化と同じ様式で、抗体をネコ化してネコに投与される場合にそれをより低い抗原性とするために利用される。一部の場合には、可変領域中の選択された残基の復帰突然変異は、CDRsの提示を増進するために使用される。抗
体中の非天然配列に対する対象における免疫原性反応を最小化する抗体を設計すると同時に、有効性を維持するために抗体の抗原結合領域を充分に保存することは、困難であることが示されてきた。
【0126】
タンパク質を標的化する治療的抗体を開発する別の課題は、異なる種における相同タンパク質上のエピトープが頻繁に異なり、他のタンパク質との交差反応性の可能性もまた異なることである。帰結として、抗体は、治療される特定の種における特定の標的のために作製、試験および開発される必要がある。
【0127】
抗体は、抗体分子の可変領域との相互作用による抗原上の特定のエピトープの結合を通じて抗原を標的化する。さらには、抗体は、様々な生物学的活性を媒介し、(本発明のアンタゴニスト抗NGF抗原結合タンパク質の場合と同様に)阻害し、かつ/または開始させる能力を有する。治療的抗体の機能は広範囲であり、例えば、抗体は、アゴニストまたはアンタゴニストとして受容体-リガンド相互作用をモジュレ―トすることができる。抗体結合は、細胞内シグナル伝達を開始させて、細胞増殖、サイトカイン産生、またはアポトーシスを刺激することができる。抗体は、Fe領域に結合した剤を特定の部位に送達することができる。抗体はまた、抗体媒介細胞傷害性(ADCC)、補体媒介細胞傷害性(CDC)、および食作用を誘発する。ADCC、CDC、C1q結合および食作用機能が除去されるように変更された抗体もある。本発明の一実施形態では、本発明の抗体は、前記抗体のエフェクター機能を変化させる抗体のFc領域における変化を含む。
【0128】
イヌ化およびネコ化
本明細書において使用される場合、「イヌ化抗体」は、イヌにより産生される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有し、かつ/または当該技術分野において公知のもしくは本明細書に開示される技術のいずれかを使用して製造された抗体を意味する。同じプロセスがネコ化プロセスのために採られ、本明細書の記載に対して適用されるべきである。単純化のために、主にイヌ化が例として使用されるが、これらの例はイヌにのみ限定されない。同じ概念および設計は、他の抗原結合タンパク質の種分化、例えば、ネコ、ウマ、およびヒトなどに適用される。イヌ化抗体のこの定義は、少なくとも1つのイヌ重鎖ポリペプチドまたは少なくとも1つのイヌ軽鎖ポリペプチドを含む抗体を含む。抗体の「種分化」自体、特に、抗体のヒト化は、当業者に周知の研究分野である。ヒト化以外の抗体の種分化が任意の他の種において有効であり得る治療的抗体をもたらすかどうかは最近まで未知であった。本発明は、それぞれイヌおよびネコにおける治療的使用のための抗N
GF抗原結合タンパク質のイヌ化およびネコ化を例示する。
【0129】
キメラ抗体は、少なくとも2つの異なる種からの配列を含む。一例として、非レシピエント抗体(すなわち、抗原を用いて免疫化されたドナー種において調製された抗体)からの抗原結合部位を含有する可変領域、およびレシピエント免疫グロブリンに由来する定常領域を含めるために組換えクローニング技術が使用されてもよい。
【0130】
種分化(イヌ化、およびネコ化など)抗体は、抗原結合に関与する可変領域残基(すなわち、相補性決定領域、短縮化相補性決定領域の残基、または抗原結合に参加する任意の他の残基)が非イヌ(または非ネコ)種に由来し、一方で残りの可変領域残基(すなわち、フレームワーク領域の残基)および定常領域がイヌ(またはネコ)抗体配列に少なくとも部分的に由来する、キメラ抗体の種類である。種分化抗体のフレームワーク領域残基および定常領域残基のサブセットは、非イヌ(またはネコ)供給源に由来してもよい。種分化抗体の可変領域はまた、種分化(すなわち、種分化軽鎖または重鎖可変領域)として記載される。非種分化種は、典型的には、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長動物、または他の非イヌもしくは非ネコ哺乳動物種などの、抗原を用いる免疫化のために使用される種である。
【0131】
相補性決定領域(CDR)は、抗原結合に参加する抗体可変領域の残基である。CDRを同定するためのいくつかのナンバリングシステムが一般的に使用されている。Kabatの定義は配列可変性に基づき、Clothiaの定義は構造ループ領域の位置に基づく。AbMの定義は、KabatのアプローチとClothiaのアプローチとの折衷である。本発明の種分化抗体は、1つまたは複数のCDRを含むように構築されてもよい。なおさらに、CDRは、別々にまたはSMIPおよび小さい抗体模倣物などの合成分子における組合せにおいて使用されてもよい。
【0132】
フレームワーク残基は、超可変またはCDR残基以外の抗体可変領域の残基である。フレームワーク残基は、天然に存在するイヌ(これは例であり、ネコ、ウマ、ヒトなどの他の種に概念的に応用可能である。単純化のために、イヌを代表的な種として使用するが、例はイヌに限定されない)抗体、例えば、本発明の抗体のフレームワーク領域に実質的に類似したイヌフレームワークに由来してもよい。個々の配列の間でコンセンサスを示す人工的なフレームワーク配列もまた使用されてもよい。イヌ化のためにフレームワーク領域を選択する場合、イヌにおいて広く現れる配列がより少ない配列よりも好ましいことがある。抗原接触に関与すると考えられるマウス残基および/もしくは抗原結合部位の構造的完全性に関与する残基を復元するため、または抗体発現を向上させるために、イヌフレームワークアクセプター配列の追加の突然変異が行われてもよい。
【0133】
CDRをグラフトすることは、アクセプター抗体(例えば、所望のフレームワーク残基を含むイヌ化抗体または他の抗体)の1つまたは複数のCDRをドナー抗体(例えば、非イヌ抗体)のCDRにより置換することにより行われる。アクセプター抗体は、候補アクセプター抗体とドナー抗体との間のフレームワーク残基の類似性に基づいて選択されてもよい。例えば、イヌフレームワーク領域は、関連する非イヌ抗体の各フレームワーク領域に対して実質的な配列相同性を有するとして同定され、非イヌ抗体のCDRは、異なるイヌフレームワーク領域の複合物にグラフトされる。
【0134】
利用可能なアミノ酸配列データの解析と組み合わせた、抗体-抗原複合体の三次元構造の解析は、CDR内の各位置において起こるアミノ酸残基の構造的相違に基づいて配列可変性をモデル化するために使用されてもよい。本発明のCDRはまた、2つのCDR領域およびフレームワーク領域を含む小さい抗体模倣物において利用され得る(Qui et
al.Nature Biotechnology Vol 25;921-929;
August 2007)。
【0135】
CDRまたは短縮化CDRをグラフトするためのアクセプターフレームワークは、所望の残基を導入するためにさらに改変されてもよい。例えば、アクセプターフレームワークは、任意選択的に位置の1つまたは複数における非イヌドナー残基と共に、イヌコンセンサス配列の重鎖可変領域を含んでもよい。グラフティング後、抗体の結合および機能性を最適化するためにドナーおよび/またはアクセプター配列において追加の変更が為されてもよい。例えば、国際公開第91/09967号パンフレットを参照のこと。
【0136】
本発明はさらに、本発明の抗体を発現する細胞および細胞株を提供する。代表的な宿主細胞としては、細菌、酵母、哺乳動物およびヒト細胞、例えば、CHO細胞、HEK-293細胞、HeLa細胞、CV-1細胞、およびCOS細胞が挙げられる。宿主細胞への異種構築物の形質転換後に安定な細胞株を生成する方法は当該技術分野において公知である。代表的な非哺乳動物宿主細胞としては、昆虫細胞が挙げられる(Potter et
al.(1993)Int.Rev.Immunol.10(2-3):103-112)。抗体はまた、トランスジェニック動物(Houdebine(2002)Curr.Opin.Biotechnol.13(6):625-629)およびトランスジェニック植物(Schillberg et al.(2003)Cell Mol.Life Sci.60(3):433-45)において産生されてもよい。
【0137】
上記で議論したように、例えば、抗体の他の部分、例えば定常領域の、欠失、付加、または置換により改変された、モノクローナル、キメラ、種特異的および種分化抗体もまた本発明の範囲内である。例えば、抗体は、以下のように改変することができる:(i)定常領域を欠失させること;(ii)別の定常領域、例えば、抗体の半減期、安定性もしくは親和性を増加させることが意図された定常領域、もしくは別の種もしくは抗体クラスからの定常領域により定常領域を置換すること;または(iii)定常領域中の1つもしくは複数のアミノ酸を改変して、例えば、数ある中でも、グリコシル化部位の数、エフェクター細胞機能、Fc受容体(FcR)結合、補体結合を変化させること。本発明の一実施形態では、本発明の抗体は、抗体のエフェクター機能を変化させる変化したFc領域を含む。本発明の一部の実施形態では、本発明の抗原結合タンパク質のFc領域は、置換、改変または除去されている。
【0138】
抗体定常領域を変化させる方法は当該技術分野において公知である。変化した機能、例えば、細胞上のFcR、または補体のC1成分などのエフェクターリガンドに対する変化した親和性を有する抗体は、抗体の定常部分における少なくとも1つのアミノ酸残基を異なる残基により置換することにより産生することができる(例えば、欧州特許第388,151A1号明細書、米国特許第5,624,821号明細書および米国特許第5,648,260号明細書を参照のこと;これらの全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0139】
例えば、指定された残基をその側鎖上に適切な機能性を有する残基により置換することにより、または荷電性官能基(例えば、グルタミン酸塩またはアスパラギン酸塩)、もしくはおそらくは芳香族非極性残基(例えば、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンまたはアラニン)を導入することにより、FcR(例えば、Fc.ガンマR1)、またはC1q結合についての抗体のFc領域の親和性を変化させることが可能である(例えば、米国特許第5,624,821号明細書を参照のこと)。抗体またはその結合断片は、細胞毒、治療剤、または放射性金属イオンと結合されてもよい。一実施形態では、結合されるタンパク質は抗体またはその断片である。細胞毒または細胞傷害剤としては、細胞にとって有害な任意の剤が挙げられる。非限定的な例としては、カリケアマイシン、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、ミトマイシン、
エトポシド、テニポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン(colchicin)、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラセンジオン(dihydroxy anthracin dione)、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシン、およびそのアナログ、またはホモログが挙げられる。治療剤としては、代謝拮抗物質(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、および5-フルオロウラシルダカルバジン(5-fluorouracil decarbazine)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオテパクロラムブシル(thioepa chlorambucil)、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、ミトマイシンC、およびシス-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)、シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシンおよびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン)、ならびに抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)が挙げられるがそれに限定されない。そのような部分をタンパク質に結合させる技術は当該技術分野において周知である。
【0140】
組成物、派生組成物、および組成物の製造方法
本発明は、抗原結合タンパク質(本明細書において交換可能に使用されるような、「抗体」、「抗体断片」、および「アンタゴニスト抗体」など)、ポリペプチドならびに本発明の抗原結合タンパク質またはポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチドを含む、医薬組成物を含む組成物を包含する。
【0141】
本明細書において使用される場合、組成物は、NGFに結合する1つもしくは複数の抗体、抗原結合タンパク質もしくはポリペプチド(抗体であってもよく、もしくはそうでなくてもよい)、および/または、NGFに結合する1つもしくは複数の抗体もしくはポリペプチドをコードする配列を含む1つもしくは複数のポリヌクレオチドを含む。これらの組成物は、緩衝剤を含む薬学的/獣医学的に許容される賦形剤などの好適な賦形剤をさらに含んでもよく、該賦形剤は当該技術分野において周知である。本発明はまた、単離された抗体、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの実施形態を包含する。本発明はまた、実質的に純粋な抗体、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの実施形態を包含する。
【0142】
1つまたは複数の実施形態では、本発明は、NGFに特異的に結合する新規の抗原結合タンパク質を提供する。1つまたは複数の実施形態では、抗原結合タンパク質は、抗体または抗体断片として定義される。1つまたは複数の実施形態では、抗原結合タンパク質は、完全イヌ、完全ネコ、ネコ ウシ、完全ウマ、完全ヒト、イヌ化、ネコ化、ウマ化またはヒト化されている。1つまたは複数の実施形態では、本発明の抗原結合タンパク質は、イヌ、ネコ、ウマまたはヒトNGFに結合する。一実施形態では、抗原結合タンパク質はモノクローナル抗体である。一実施形態では、本発明のモノクローナル抗体は、NGFに結合し、かつ受容体Trk Aおよびより低い程度でp75へのその結合、および活性化を予防し、それにより、本明細書に記載されるようなシグナル伝達カスケードを予防する。本発明の抗原結合タンパク質は、本明細書においてZTS-841として同定される。
【0143】
1つまたは複数の実施形態では、本発明は、単離された組換え抗原結合タンパク質「ZTS-841であって、可変重鎖が、配列番号4(「0ZTS-841」 VH CDR1)を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約85%,86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、配列番号5(「ZTS-841」 VH CD
R2)を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約85%,86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、配列番号6(「ZTS-841」 VH CDR3)を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約85%,86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み;かつ可変軽鎖が、配列番号1(「ZTS-841」 VL CDR1)を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約85%,86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、配列番号2(「ZTS-841」 VL CDR2)を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約85%,86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、および配列番号3(「ZTS-841」 VL CDR3)を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約85%,86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列;ならびに前記抗原結合タンパク質の可変軽鎖または可変重鎖のいずれかにおけるCDR1、CDR2またはCDR3のうちの少なくとも1つにおいて1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有するその任意の変種を含む、ZTS-841を提供する。
【0144】
1つまたは複数の実施形態では、本発明は、単離された組換え抗原結合タンパク質「ZTS-842であって、可変重鎖が、配列番号24(「0ZTS-842」 VH CDR1)を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約85%,86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、配列番号25(「ZTS-842」 VH CDR2)を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約85%,86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、配列番号26(「ZTS-842」 VH CDR3)を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約85%,86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み;かつ可変軽鎖が、配列番号21 1(「ZTS-842」 VL CDR1)を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約85%,86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、配列番号22(「ZTS-842」 VL CDR2)を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約85%,86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、および配列番号23(「ZTS-842」 VL CDR3)を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約85%,86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列;ならびに前記抗原結合タンパク質の可変軽鎖または可変重鎖のいずれかにおけるCDR1、CDR2またはCDR3のうちの少なくとも1つにおいて1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有するその任意の変種を含む、ZTS-842を提供する。
【0145】
本発明は、組換え抗原結合タンパク質、本明細書に記載の一部の実施形態では、モノクローナル抗体、および抗体断片、ならびに臨床的投与および診断手順を含む科学的手順におけるその使用を提供する。分子生物学の方法および組換え技術を使用することにより、組換え手段により抗体および抗体様分子を産生すること、ならびにそれにより、抗体のポリペプチド構造中に見出される特定のアミノ酸配列をコードする遺伝子配列を生成することができる。そのような抗体は、前記抗体のポリペプチド鎖をコードする遺伝子配列をクローニングすることにより、または前記ポリペプチド鎖を直接的に合成し、合成された鎖
を集合させて、特定のエピトープおよび抗原決定基に対して親和性を有する活性の四量体(H2L2)構造を形成することにより産生することができる。これは、異なる種および供給源からの中和抗体に特徴的な配列を有する抗体の即座の産生を可能とした。
【0146】
抗体の供給源、どのように組換えにより構築したのか、もしくはどのように合成したのか、in vitroもしくはin vivoのいずれであるのか、トランスジェニック動物を使用したのか、実験室の大きな細胞培養もしくは商用のサイズのいずれであるのか、トランスジェニック植物を使用したのか、またはプロセスのいずれのステージにおいても生きた生物を用いない直接的な化学合成によるのかにかかわらず、全ての抗体は類似の全体的な三次元構造を有する。この構造は多くの場合にH2L2として与えられ、これは、抗体は一般的に2つの軽(L)鎖アミノ酸鎖および2つの重(H)鎖アミノ酸鎖を含むという事実を指す。両方の鎖は、構造的に相補的な抗原標的と相互作用することができる領域を有する。標的と相互作用する領域は「可変」または「V」領域と称され、異なる抗原特異性の抗体からのアミノ酸配列における差異により特徴付けられる。H鎖またはL鎖の可変領域は、抗原標的に特異的に結合することができるアミノ酸配列を含有する。
【0147】
本明細書において使用される場合、「抗原結合領域」という用語は、抗原と相互作用して抗原に対するその特異性および親和性を抗体に付与するアミノ酸残基を含有する抗体分子の部分を指す。抗体結合領域は、抗原結合残基の適切なコンホメーションを維持するために必要な「フレームワーク」アミノ酸残基を含む。抗原結合領域を提供するH鎖またはL鎖の可変領域内に、異なる特異性の抗体の間の極度の可変性のために「超可変」と称されるより小さい配列がある。そのような超可変領域はまた、「相補性決定領域」または「CDR」領域と称される。これらのCDR領域は、特定の抗原決定基構造についての抗体の基本的な特異性を説明する。
【0148】
CDRは、可変領域内のアミノ酸の連続しないストレッチを示すが、種にかかわらず、可変重鎖および軽鎖領域内のこれらの不可欠なアミノ酸配列の配置的位置は、可変鎖のアミノ酸配列内に類似の位置を有することが見出されている。全ての抗体の可変重鎖および軽鎖はそれぞれ3つのCDR領域を有し、それぞれは他のものと連続しない。全ての哺乳動物種において、抗体ペプチドは定常(すなわち、高度に保存された)領域および可変領域を含有し、後者内において、CDR、および、重鎖または軽鎖の可変領域内であるがCDRの外側のアミノ酸配列から作られたいわゆる「フレームワーク領域」がある。
【0149】
本発明はさらに、上記の核酸のうちの少なくとも1つを含むベクターを提供する。遺伝コードは縮重があるため、特定のアミノ酸をコードするために1つより多くのコドンを使用することができる。遺伝コードを使用して、それぞれがアミノ酸をコードすることができることになる1つまたは複数の異なるヌクレオチド配列を同定することができる。特定のオリゴヌクレオチドが実際のコーディング配列を構成する事実上の確率は、異常な塩基対形成の関係性および抗NGF抗体または部分を発現する真核または原核細胞において(特定のアミノ酸をコードするために)特定のコドンが実際に使用される頻度を考慮することにより推定することができる。そのような「コドン用法規則」は、Lathe,et al.,183 J.Molec.Biol.1-12(1985)により開示されている。Latheの「コドン用法規則」を使用して、抗NGF配列をコードすることができる理論的に「最も確率が高い」ヌクレオチド配列を含有する単一のヌクレオチド配列、またはヌクレオチド配列のセットを同定することができる。本発明において使用するための抗体コーディング領域は、本明細書に記載の抗体およびペプチドの変種(アゴニスト)を結果としてもたらす標準的な分子生物学技術を使用して既存の抗体遺伝子を変化させることによっても提供され得ることもまた意図される。そのような変種としては、抗NGF抗体またはペプチドのアミノ酸配列における欠失、付加および置換が挙げられるがそれに限定されない。
【0150】
例えば、置換の1つのクラスは保存的アミノ酸置換である。そのような置換は、抗NGF抗体ペプチド中の所与のアミノ酸を同様の特徴の別のアミノ酸により置換するものである。保存的置換として典型的に見られるのは、脂肪族アミノ酸Ala、Val、Leu、およびlieの間の置換え;ヒドロキシル残基SerおよびThrの交換、酸性残基AspおよびGluの交換、アミド残基AsnとGinとの間の置換、塩基性残基LysおよびArgの交換、ならびに芳香族残基Phe、Tyrなどの間の置換えである。いずれのアミノ酸変化が表現型的にサイレントな可能性が高いかに関するガイダンスは、Bowie et al.,247 Science 1306-10(1990)において見出される。
【0151】
変種抗NGF抗原結合タンパク質または抗体断片は、完全に機能的であってもよく、または1つもしくは複数の活性において機能を欠いていてもよい。完全に機能的な変種は、典型的には、保存的な変動または不可欠でない残基もしくは不可欠でない領域における変動のみを含有する。機能的変種はまた、機能の変化を結果としてもたらさないまたは機能の重要でない変化を結果としてもたらす類似のアミノ酸の置換を含有する可能性がある。代替的に、そのような置換は、何らかの程度まで機能に良い影響または悪い影響を及ぼす場合がある。非機能的変種は、典型的には、1つまたは複数の非保存的なアミノ酸の置換、欠失、挿入、逆位、または切断または不可欠な残基もしくは不可欠な領域における置換、挿入、逆位、もしくは欠失を含有する。
【0152】
機能のために必須のアミノ酸は、部位特異的突然変異誘発またはアラニンスキャニング突然変異誘発などの当該技術分野において公知の方法により同定され得る。Cunningham et al.,244 Science 1081-85(1989)。後者の手順は、分子中のあらゆる残基において単一のアラニン突然変異を導入する。結果として生じる突然変異体分子は次に、エピトープ結合またはin vitro ADCC活性などの生物学的活性について試験される。リガンド-受容体結合のために不可欠な部位はまた、結晶学、核磁気共鳴、または光親和性標識化などの構造解析により決定され得る。Smith et al.,224 J.Mol.BioI.899-904(1992)、de Vos et al.,255 Science 306-12(1992)。
【0153】
さらに、ポリペプチドは、多くの場合に、20個の「天然に存在する」アミノ酸以外のアミノ酸を含有する。さらに、末端アミノ酸を含む多くのアミノ酸は、プロセシングおよび他の翻訳後修飾などの天然のプロセスにより、または当該技術分野において周知の化学修飾技術により修飾されてもよい。公知の修飾としては、アセチル化、アシル化、ADP-リボース化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトール(phosphotidylinositol)の共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合性架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、ガンマカルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解処理、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アルギニル化などのタンパク質へのアミノ酸の転移RNA媒介性の付加、およびユビキチン化が挙げられるがそれに限定されない。そのような修飾は当業者に周知であり、科学文献において非常に詳細に記載されている。いくつかの特に一般的な修飾、例えば、グリコシル化、脂質の取付け、硫酸化、グルタミン酸残基のガンマ-カルボキシル化、ヒドロキシル化およびADPリボース化は、Proteins-Structure and Molecular Properties(2nd ed.,T.E.Creighton,W.H.Freeman
& Co.,NY,1993)などのほとんどの基本書において記載されている。Wo
ld,Posttranslational Covalent Modification of proteins,1-12(Johnson,ed.,Academic
Press,NY,1983)、Seifter et al.182 Meth.Enzymol.626-46(1990)、およびRattan et al.663 Ann.NY Acad.Sci.48-62(1992)などの多くの詳細な総説がこの主題に関して利用可能である。
【0154】
したがって、本発明の抗体およびペプチドはまた、置換されたアミノ酸残基が遺伝コードによりコードされるものではない誘導体またはアナログも包含する。同様に、すぐ上に記載したアミノ酸配列における付加および置換だけでなく、変動、および修飾は、NGF抗原および/またはそのエピトープもしくはペプチドのアミノ酸配列に等しく適用可能である場合があり、したがって本発明により包含される。上述したように、本発明によるモノクローナル抗体をコードする遺伝子は、NGFの認識において特に効果的である。
【0155】
抗体誘導体
抗体誘導体は本発明の範囲内に含まれる。抗体の「誘導体」は、通常はタンパク質の部分ではない追加の化学的部分を含有する。タンパク質の共有結合修飾は本発明の範囲内に含まれる。そのような修飾は、選択された側鎖または末端残基と反応することができる有機誘導体化剤と抗体の標的化されたアミノ酸残基を反応させることにより分子に導入されてもよい。例えば、当該技術分野において周知の、二官能性剤を用いる誘導体化は、抗体または断片を水不溶性支持マトリックスまたは他の高分子担体に架橋するために有用である。
【0156】
誘導体としてはまた、例えば、放射性ヨウ素(251、1311)、炭素(4C)、硫黄(35S)、インジウム、またはトリチウム(H)などを用いて標識された放射性標識されたモノクローナル抗体;ビオチンまたはアビジンを用いた、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ-D-ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコアミラーゼ、カルボン酸脱水酵素(carboxylic acid anhydrase)、アセチルコリンエステラーゼ、リゾチーム、リンゴ酸デヒドロゲナーゼまたはグルコース6-リン酸デヒドロゲナーゼ)を用いたモノクローナル抗体のコンジュゲート;および生物発光剤(例えば、ルシフェラーゼ)、化学発光剤(chemoluminescent agents)(例えば、アクリジンエステル)または蛍光剤(例えば、フィコビリタンパク質)とのモノクローナル抗体のコンジュゲートも挙げられる。
【0157】
本発明の別の誘導体二機能性抗体は、2つの異なる抗原基を認識する2つの別々の抗体の部分を組み合わせることにより生成される二重特異性抗体である。これは、架橋または組換え技術により達成されてもよい。追加的に、部分は、in vivoでの半減期を増加させる(例えば、血流からのクリアランスまでの時間を長期化させることによる)ために抗体またはその部分に付加されてもよい。そのような技術としては、例えば、PEG部分を付加すること(ペグ化(pegilation)とも称される)が挙げられ、当該技術分野において周知である。米国特許出願公開第20030031671号明細書を参照のこと。
【0158】
抗体の組換え発現
一部の実施形態では、対象モノクローナル抗体をコードする核酸は宿主細胞に直接的に導入され、かつ、細胞は、コードされる抗体の発現を誘導するために充分な条件下でインキュベートされる。対象核酸が細胞に導入された後に、細胞は、典型的には、通常は37℃において、場合により選択下で、抗体の発現を可能とするために約1~24時間の期間にわたりインキュベートされる。一実施形態では、抗体は、細胞が生育している培地の上
清に分泌される。伝統的に、モノクローナル抗体は、マウスハイブリドーマ株中で天然分子として産生されてきた。その技術に加えて、本発明は、モノクローナル抗体の組換えDNA発現を提供する。これは、イヌ化抗体だけでなく、選択された宿主種における広範な抗体誘導体および融合タンパク質の産生も可能とする。
【0159】
本発明の少なくとも1つの抗NGF抗体、部分またはポリペプチドをコードする核酸配列は、従来技術にしたがってベクターDNAと組み換えられてもよく、該技術は、ライゲーションのための平滑末端化または突出末端化された末端、適切な末端を提供するための制限酵素消化、適宜の付着末端の埋め合わせ、望ましくない連結を回避するためのアルカリホスファターゼ処理、および適切なリガーゼを用いるライゲーションを含む。そのようなマニピュレーションのための技術は、例えば、Maniatis et al.,MOLECULAR CLONING,LAB.MANUAL,(Cold Spring Harbor Lab.Press,NY,1982 and 1989)により開示されており、上掲のAusubel et al.1993は、モノクローナル抗体分子またはその抗原結合領域をコードする核酸配列を構築するために使用されてもよい。
【0160】
DNAなどの核酸分子は、転写および翻訳調節情報を含有するヌクレオチド配列を含有し、かつそのような配列が、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に「作動可能に連結されている」場合にポリペプチドを「発現することができる」といわれる。作動可能な連結は、調節DNA配列および発現させようとするDNA配列が、回収可能な量での抗NGFペプチドまたは抗体部分としての遺伝子発現を可能とするように接続されている連結である。遺伝子発現のために必要とされる調節領域の正確な性質は、類似の技術において周知のように、生命体毎に異なることがある。例えば、上掲のSambrook et
al.;上掲のAusubel et al.,1993を参照のこと。
【0161】
本発明は、したがって、原核細胞または真核細胞のいずれかにおける抗NGF抗体またはペプチドの発現を包含する。好適な宿主としては、in vivo、もしくはin situの細菌、酵母、昆虫、真菌、鳥および哺乳動物細胞、または哺乳動物、昆虫、鳥もしくは酵母起源の宿主細胞のいずれかを含む細菌または真核宿主が挙げられる。哺乳動物細胞または組織は、ヒト、霊長動物、ハムスター、ウサギ、齧歯動物、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、ヤギ、イヌまたはネコ起源のものであってもよいが、任意の他の哺乳動物細胞が使用されてもよい。
【0162】
一実施形態では、本発明のヌクレオチド配列は、レシピエント宿主中で自律複製することができるプラスミドまたはウイルスベクターに組み込まれる。任意の多様なベクターがこの目的のために用いられてもよい。例えば、上掲のAusubel et al.,1993を参照のこと。特定のプラスミドまたはウイルスベクターの選択における重要な因子としては、ベクターを含有するレシピエント細胞が認識されかつベクターを含有しないレシピエント細胞から選択され得る容易さ;特定の宿主中で所望されるベクターのコピー数;および異なる種の宿主細胞の間でベクターを「シャトル」することができることが望まれるかどうかが挙げられる。
【0163】
当該技術分野において公知の例示的な原核ベクターとしては、E.coli中で複製することができるものなどのプラスミドが挙げられる(例えば、pBR322、ColE1、pSC101、およびpACYC 184などであるがそれに限定されない)。そのようなプラスミドは、例えば、上掲のManiatis et al.,1989、上掲のAusubel et al,1993により開示されている。バチルス(Bacillus)プラスミドとしては、pC194、pC221、pT127などが挙げられる。そのようなプラスミドは、Gryczanにより、THE MOLEC.BIO.OF THE BACILLI 307-329(Academic Press,NY,198
2)において開示されている。好適なストレプトミセス(Streptomyces)プラスミドとしては、plJ101(Kendall et aI.,169 J.Bacteriol.4177-83(1987)、およびphLC31(Chater et
al.,SIXTH INT’L SYMPOSIUM ON ACTINOMYCETALES BIO.45-54(Akademiai Kaido,Budapest,Hungary 1986)などのストレプトミセスバクテリオファージが挙げられる。シュードモナス(Pseudomonas)プラスミドは、John et al.,8 Rev.Infect.Dis.693-704(1986)、lzaki,33 Jpn.J.Bacteriol.729-42(1978)、および上掲のAusubel et al.,1993において総説されている。
【0164】
代替的に、抗NGF抗体またはペプチドをコードするcDNAの発現のために有用な遺伝子発現エレメントとしては、(a)ウイルス転写プロモーターおよびそのエンハンサーエレメント、例えば、SV40初期プロモーター(Okayama et al.,3 Mol.Cell.BioI.280(1983)、ラウス肉腫ウイルスLTR(Gorman et al.,79 Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 6777(1982)、およびモロニーマウス白血病ウイルスLTR(Grosschedl
et al.,41 Cell 885(1985);(b)スプライス領域およびポリアデニル化部位、例えば、SV40後期領域に由来するもの(Okayarea et
al.,1983)、ならびに(c)ポリアデニル化部位、例えば、SV40におけるもの(Okayama et al.,1983)が挙げられるがそれに限定されない。
【0165】
免疫グロブリンcDNA遺伝子は、Weidle et al.,51 Gene 21(1987)により記載されるように、発現エレメントとして、SV40初期プロモーターおよびそのエンハンサー、マウス免疫グロブリンH鎖プロモーターエンハンサー、SV40後期領域mRNAスプライシング、ウサギS-グロビン介在配列、免疫グロブリンおよびウサギS-グロビンポリアデニル化部位、ならびにSV40ポリアデニル化エレメントを使用して発現される可能性がある。部分cDNA、部分ゲノムDNAを含む免疫グロブリン遺伝子(Whittle et al.,1 Protein Engin.499(1987≫のために、転写プロモーターはヒトサイトメガロウイルスとすることができ、プロモーターエンハンサーはサイトメガロウイルスおよびマウス/ヒト免疫グロブリンとすることができ、かつ、mRNAスプライシングおよびポリアデニル化領域は天然の染色体免疫グロブリン配列でとすることができる。
【0166】
一実施形態では、齧歯動物細胞中でのcDNA遺伝子の発現のために、転写プロモーターはウイルスLTR配列であり、転写プロモーターエンハンサーはマウス免疫グロブリン重鎖エンハンサーおよびウイルスLTRエンハンサーのいずれかまたは両方であり、スプライス領域は31bpより大きいイントロンを含有し、かつ、ポリアデニル化および転写終結領域は、合成されている免疫グロブリン鎖に対応する天然の染色体配列に由来する。他の実施形態では、他のタンパク質をコードするcDNA配列は、哺乳動物細胞中でのタンパク質の発現を達成するために上記の発現エレメントと組み合わせられる。
【0167】
各融合遺伝子は、発現ベクター中に集合することができ、または発現ベクター中に挿入することができる。キメラ免疫グロブリン鎖遺伝子産物を発現することができるレシピエント細胞は次に、単独で抗NGFペプチドもしくはキメラHもしくはキメラL鎖コーディング遺伝子をトランスフェクトされ、またはキメラHおよびキメラL鎖遺伝子を共トランスフェクトされる。トランスフェクトされたレシピエント細胞は、組み込まれた遺伝子の発現を可能とする条件下で培養され、発現された免疫グロブリン鎖またはインタクトな抗体もしくは断片は培養物から回収される。
【0168】
一実施形態では、抗NGFペプチドまたはキメラHおよびL鎖、またはその部分をコードする融合遺伝子は別々の発現ベクター中に集合され、それが次にレシピエント細胞に共トランスフェクトするために使用される。代替的に、キメラHおよびL鎖をコードする融合遺伝子は同じ発現ベクターに集合することができる。発現ベクターのトランスフェクションおよびキメラ抗体の産生のために、レシピエント細胞株は骨髄腫細胞であってもよい。骨髄腫細胞は、トランスフェクトされた免疫グロブリン遺伝子によりコードされる免疫グロブリンを合成し、集合させかつ分泌することができ、かつ免疫グロブリンのグリコシル化のための機構を有することができる。骨髄腫細胞を、培養中またはマウスの腹膜腔中で生育することができ、後者の場合、分泌された免疫グロブリンは腹水液から得られ得る。他の好適なレシピエント細胞としては、ヒトもしくは非ヒト起源のBリンパ球などのリンパ細胞、ヒトもしくは非ヒト起源のハイブリドーマ細胞、または種間ヘテロハイブリドーマ細胞が挙げられる。
【0169】
本発明のキメラの、イヌ化抗体構築物または抗NGFポリペプチドを有する発現ベクターは、様々な好適な手段のいずれかにより適切な宿主細胞に導入することができ、該手段としては、形質転換、トランスフェクション、結合、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム沈殿、およびジエチルアミノエチル(DEAE)デキストランなどのポリカチオンの適用などの生化学的手段、ならびにエレクトロポレーション、直接的なマイクロインジェクション、および微粒子銃などの機械的手段が挙げられる。Johnston et at,240 Science 1538(1988)。
【0170】
酵母は、免疫グロブリンHおよびL鎖の産生のために細菌に対して実質的な利点を提供することができる。酵母は、グリコシル化を含む翻訳後ペプチド修飾を実行する。酵母中での所望のタンパク質の産生のために使用することができる強いプロモーター配列および高コピー数プラスミドを利用するいくつかの組換えDNA戦略が現在存在する。酵母は、クローニングされた哺乳動物遺伝子産物のリーダー配列を認識し、リーダー配列を有するペプチド(すなわち、プレペプチド)を分泌する。Hitzman et al.,11th Int’l Conference on Yeast,Genetics & Molec.BioI.(Montpelier,France,1982)。
【0171】
酵母遺伝子発現系は、抗NGFペプチド、抗体ならびに集合したマウスおよびキメラ、ヘテロキメラ、イヌ化された抗体、その断片および領域の産生、分泌および安定性のレベルについてルーチンに評価することができる。グルコースに富んだ培地中で酵母が生育された場合に大量に産生される解糖酵素をコードする活発に発現される遺伝子からのプロモーターおよび終止エレメントを組み込む一連の酵母遺伝子発現系のいずれかが利用され得る。公知の解糖遺伝子はまた、非常に効率的な転写制御シグナルも提供することができる。例えば、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)遺伝子のプロモーターおよびターミネーターシグナルを利用することができる。酵母中でのクローニングされた免疫グロブリンcDNAの発現のために最適な発現プラスミドを評価するためにいくつかのアプローチを採ることができる。Vol.II DNA Cloning,45-66,(Glover,ed.,)IRL Press,Oxford,UK 1985)を参照のこと。
【0172】
細菌株もまた、本発明により記載される抗体分子またはペプチドを産生するための宿主としても利用することができる。宿主細胞と適合性の種に由来するレプリコンおよび制御配列を含有するプラスミドベクターは、これらの細菌宿主との関連において使用される。ベクターは、複製部位だけでなく、形質転換細胞において表現型選択を提供することができる特定の遺伝子も有する。細菌中でのマウス、キメラ、ヘテロキメラ、イヌ化抗体、断片および領域またはクローニングされた免疫グロブリンcDNAによりコードされる抗体鎖の産生について発現プラスミドを評価するために多数のアプローチを採ることができる(上掲のGlover,1985、上掲のAusubel,1993、上掲のSambr
ook,2001、Colligan et al.,eds.Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,NY,NY(1994-2001)、Colligan et al.,eds.Current Protocols in Protein Science,John Wiley & Sons,NY,NY(1997-2001)を参照のこと。
【0173】
宿主哺乳動物細胞はin vitroまたはin vivoで生育されてもよい。哺乳動物細胞は、リーダーペプチドの除去、HおよびL鎖のフォールディングおよび集合、抗体分子のグリコシル化、ならびに機能的抗体タンパク質の分泌を含む免疫グロブリンタンパク質分子に対する翻訳後修飾を提供する。上記のリンパ起源の細胞に加えて、抗体タンパク質の産生のための宿主として有用であり得る哺乳動物細胞としては、線維芽細胞起源の細胞、例えば、Vero(ATCC CRL 81)またはCHO-K1(ATCC CRL 61)細胞が挙げられる。多くのベクターシステムが哺乳動物細胞中でのクローニングされた抗NGFペプチドHおよびL鎖遺伝子の発現のために利用可能である(上掲のGlover,1985を参照のこと)。異なるアプローチにしたがって完全なH2L2抗体を得ることができる。同じ細胞中でHおよびL鎖を共発現させて、完全な四量体H2L2抗体および/または抗NGFペプチドへのHおよびL鎖の細胞内の会合および連結を達成することが可能である。共発現は、同じ宿主中で同じまたは異なるプラスミドを使用することにより行うことができる。HおよびL鎖の両方ならびに/または抗NGFペプチドの遺伝子を同じプラスミドに置くことができ、それを次に細胞にトランスフェクトし、それにより、両方の鎖を発現する細胞を直接的に選択する。代替的に、細胞に最初に1つの鎖、例えばL鎖をコードするプラスミドをトランスフェクトした後、結果として生じた細胞株に第2の選択可能なマーカーを含有するH鎖プラスミドをトランスフェクトすることができる。いずれかの経路を介して抗NGFペプチドおよび/またはH2L2分子を産生する細胞株は、集合したH2L2抗体分子のより多くの産生またはトランスフェクトされた細胞株の安定性の増進などの増進した特性を有する細胞株を生成するために追加の選択可能なマーカーと組み合わせてペプチド、H、L、またはH+L鎖の追加のコピーをコードするプラスミドをトランスフェクトされる可能性がある。
【0174】
組換え抗体の長期にわたる高収率産生のために、安定発現が使用されてもよい。例えば、抗体分子を安定的に発現する細胞株は操作されてもよい。ウイルス複製起点を含有する発現ベクターを使用するのではなく、宿主細胞は、免疫グロブリン発現カセットおよび選択可能なマーカーを用いて形質転換することができる。外来DNAの導入後、操作された細胞は濃縮培地中で1~2日間生育されてもよく、次に選択培地に切り替えられる。組換えプラスミド中の選択可能なマーカーは、選択に対する抵抗性を付与し、細胞が安定的にプラスミドを染色体に組み込んで増殖することによりフォーカスを形成することを可能とし、該フォーカスは次いでクローニングおよび細胞株へと拡大増殖することができる。そのような操作された細胞株は、抗体分子と直接的または間接的に相互作用する化合物/成分のスクリーニングおよび評価において特に有用である場合がある。
【0175】
本発明の抗体が産生されたら、それは、免疫グロブリン分子の精製のための当該技術分野において公知の任意の方法により、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、特にプロテインAにちなんだ特定の抗原に対する親和性、およびサイジングカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、差次的な溶解性により、またはタンパク質の精製のための任意の他の標準技術により精製されてもよい。多くの実施形態では、抗体は、細胞から培養培地に分泌され、培養培地から回収される。
【0176】
薬学的および獣医学的応用
本発明の本明細書に記載されるような抗NGF抗原結合タンパク質または抗体断片は、例えば、イヌおよびネコにおけるNGF関連障害の治療のために使用することができる。
より具体的には、本発明は、薬学的に許容される担体または希釈剤、および、活性成分として、本発明による抗体または抗体断片を含む医薬組成物をさらに提供する。抗体は、異なる種に適合するようにキメラ、ヘテロキメラ、イヌ化、ネコ化、ウマ化、ヒト化または種分化されたものとすることができる。インタクトな免疫グロブリンまたはFabなどのその結合断片もまた想定される。本発明の抗体およびその医薬組成物は、非経口投与、例えば、皮下、筋肉内または静脈内投与のために有用である。
【0177】
本発明の抗NGF抗体および/またはペプチドは、個々の治療剤としてまたは他の治療剤と組み合わせて投与することができる。これらは単独で投与することができるが、一般には、選択された投与経路および標準的な薬学的実施に基づいて選択される医薬担体とともに投与される。本明細書に開示される抗体の投与は、任意の好適な手段により実行されてもよく、該手段としては、非経口注射(例えば、腹腔内、皮下、もしくは筋肉内注射)、経口的、または気道表面への抗体(典型的には医薬配合物中に含まれる)の局所投与によるものが挙げられる。気道表面への局所投与は、鼻腔内投与(例えば、ドロッパー、スワブ、または吸入器の使用による)により実行することができる。気道表面への抗体の局所投与はまた、吸入投与により、例えば、エアロゾル懸濁物として抗体を含有する医薬配合物の吸入可能な粒子(固体粒子および液体粒子の両方を含む)を作製した後、対象に吸入可能な粒子を吸入させることによっても、実行することができる。医薬配合物の吸入可能な粒子を投与するための方法および装置は周知であり、任意の従来技術を用いることができる。
【0178】
一部の望ましい実施形態では、抗体は非経口注射により投与される。非経口投与のために、抗NGF抗体またはペプチドは、溶液、懸濁物、エマルションまたは凍結乾燥粉末として薬学的に許容される非経口ビヒクルを伴って配合することができる。例えば、ビヒクルは、水性担体などの許容される担体に溶解した抗体またはそのカクテルの溶液であってもよく、そのようなビヒクルは、水、生理食塩水、リンガー溶液、デキストロース溶液、トレハロースまたはスクロース溶液、または5%の血清アルブミン、0.4%の生理食塩水、および0.3%のグリシンなどである。リポソームおよび固定油などの非水性ビヒクルもまた使用することができる。これらの溶液は無菌であり、概しては粒子状物質を含まない。これらの組成物は従来の周知の滅菌技術により滅菌されてもよい。組成物は、生理的条件に近似させるために必要に応じて、pH調整剤、緩衝化剤、および毒性調整剤など、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどの薬学的に許容される助剤物質を含有してもよい。これらの配合物中の抗体の濃度は広く異なっていてもよく、例えば、重量で約0.5%未満、通常は約1%または少なくとも約1%から、15%または20%程度までであり、選択される投与の特定の様式にしたがって、主に液体体積、粘性などに基づいて選択される。ビヒクルまたは凍結乾燥粉末は、等張性(例えば、塩化ナトリウム、マンニトール)ならびに化学的安定性(例えば、緩衝剤および防腐剤)を維持する添加物を含有することができる。配合物は、一般的に使用される技術により滅菌される。非経口投与可能な組成物を調製する実際の方法は当業者に公知または明らかであり、例えば、REMINGTON’S PHARMA.SCI.(15th ed.,Mack Pub.Co.,Easton,Pa.,1980)においてより詳細に記載されている。
【0179】
本発明の抗体は、貯蔵および使用前の好適な担体への再構成のために凍結乾燥することができる。この技術は、従来の免疫グロブリンで効果的であることが示されている。任意の好適な凍結乾燥および再構成技術を用いることができる。凍結乾燥および再構成は、様々な程度の抗体活性損失に繋がる可能性があること、ならびに補填するために使用レベルの調整が必要とされる場合があることが当業者には理解されるであろう。本発明の抗体またはそのカクテルを含有する組成物は、再発の予防および/または既存の疾患の治療的処置のために投与することができる。好適な医薬担体は、この技術分野における標準的な参
照文献であるREMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCESの最新版において記載されている。治療応用において、組成物は、疾患およびその合併症を治癒しまたは少なくとも部分的に阻みもしくは緩和するために充分な量で、疾患を既に患っている対象に投与される。これを達成するために充分な量は、「治療有効用量」または「治療有効量」として定義される。この使用に効果的な量は、疾患の重篤度および対象自身の免疫系の一般的状態に依存するが、概しては、約0.1mgの抗体/体重kg~約10mgの抗体/体重kg、好ましくは約0.3mgの抗体/体重kg~約5mgの抗体/体重kgの範囲内である。本発明のイヌ様の抗体により達成される外生物質の最小化および「外来物質」拒絶のより低い確率を考慮して、実質的な過剰量のこれらの抗体を投与することが可能であり得る。
【0180】
投与される投与量は、当然ながら、既知の要因に依存して変動し、該要因は、例えば、特定の剤の薬力学的特徴、およびその投与の様式および経路;レシピエントの年齢、健康状態、および体重;症状の性質および程度、同時的な治療の種類、治療の頻度、ならびに所望の効果である。
【0181】
非限定的な例として、イヌおよびネコにおけるNGF関連病理の治療は、必要に応じた投与量範囲内における本発明の抗NGF抗体の2週毎または月毎の投与として提供することができる。イヌの治療的使用のための例示的な抗体は、本発明による、強力なin vivo抗NGF活性を有する高親和性(これらはまた高アビディティであり得る)抗体、ならびにその断片、領域および誘導体である。組成物の単回または複数回投与は、治療する獣医により選択される用量レベルおよびパターンを用いて実行することができる。いずれの場合にも、医薬配合物は、対象を効果的に治療するために充分な量の本発明の抗体を提供するべきである。
【0182】
診断応用
本発明はまた、NGF関連障害であることが既知のまたはそれを有することが疑われる種、特にイヌおよびネコにおいてNGFを検出するための診断方法において使用するための上記の抗NGF抗体およびペプチドを提供する。本発明の実施形態では、NGF関連障害は疼痛である。別の実施形態では、NGF関連障害は変形性関節症である。本発明の抗NGF抗体および/またはペプチドは、試料中のNGF、または抗NGF抗体を検出または定量化するイムノアッセイのために有用である。NGFのイムノアッセイは、典型的には、NGFに選択的に結合することができる本発明の検出可能に標識された高親和性(または高アビディティ)抗NGF抗体またはポリペプチドの存在下で臨床または生物学的試料をインキュベートすること、および試料中の結合した標識されたペプチドまたは抗体を検出することを含む。様々な臨床アッセイ手順が当該技術分野において周知である。例えば、IMMUNOASSAYS FOR THE 80’S(Voller et al.,eds.,Univ.Park,1981)を参照のこと。そのような試料としては、組織生検、血液、血清、および糞便試料、または動物対象から収集され、以下に記載されるようにELISA分析に供される液体が挙げられる。したがって、抗NGF抗体またはポリペプチドは、ニトロセルロース、または細胞、細胞粒子もしくは可溶性タンパク質を固定化することができる別の固体支持体に固定することができる。支持体は次に、好適な緩衝液を用いて洗浄された後に、検出可能に標識されたNGF特異的ペプチド、抗体または抗原結合タンパク質を用いて処理することができる。固相支持体は次に、未結合のペプチドまたは抗体を除去するために、2回目に緩衝液を用いて洗浄することができる。固体支持体上に結合した標識の量は次に、公知の方法ステップにより検出することができる。
【0183】
「固相支持体」または「担体」は、ペプチド、抗原、または抗体に結合することができる任意の支持体を指す。周知の支持体または担体としては、ガラス、ポリスチレン、ポリ
プロピレン、ポリエチレン、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および変性セルロース、ポリアクリルアミド、アガロース、ならびにマグネタイトが挙げられる。担体の性質は、本発明の目的のためには、ある程度まで可溶性または不溶性とすることができる。支持体材料は、連結した分子がNGFまたは抗NGF抗体に結合することができる限り実質的に任意の可能な構造的構成を有することができる。それ故に、支持体の構成は、ビーズにおけるように球状、または試験管の内側表面におけるように円筒形、または棒状の外的表面とすることができる。代替的に、表面は、シート、培養皿、試験ストリップなどのように平坦とすることができる。例えば、支持体はポリスチレンビーズを含んでもよい。抗体、ペプチドもしくは抗原に結合するための多くの他の好適な担体が当業者に公知であり、または当業者はルーチンの実験によりそれを確認することができる。周知の方法ステップにより、抗NGFペプチドおよび/または抗体もしくは抗原結合タンパク質の所与のロットの結合活性を決定することができる。当業者は、ルーチンの実験により機能的かつ最適なアッセイ条件を決定することができる。
【0184】
NGF特異的ペプチドおよび/または抗体を検出可能に標識することは、酵素イムノアッセイ(EIA)、または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)において使用するための酵素に連結することにより達成され得る。連結された酵素は、曝露された基質と反応して、例えば、分光光度、蛍光定量または視覚的手段により検出することができる化学的部分を生成する。本発明のNGF特異的抗体を検出可能に標識するために使用することができる酵素としては、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、スタフィロコッカスヌクレアーゼ、デルタ5-ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、アルファ-グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼおよびアセチルコリンエステラーゼが挙げられるがそれに限定されない。NGF特異的抗体を放射活性標識することにより、ラジオイムノアッセイ(RIA)の使用を通じてNGFを検出することが可能である。Work et al.,LAB.TECHNIQUES & BIOCHEM.IN MOLEC.BIO(No.Holland Pub.Co.,NY,1978)を参照のこと。放射活性同位体は、ガンマカウンターもしくはシンチレーションカウンターの使用などの手段またはオートラジオグラフィーにより検出することができる。本発明の目的のために特に有用な同位体としては、H、125I、131I、35Sおよび14Cが挙げられる。
【0185】
蛍光化合物を用いてNGF特異的抗体を標識することも可能である。蛍光標識された抗体が適切な波長の光に曝露された場合、その存在は蛍光に起因して検出することができる。中でも最も一般的に使用される蛍光標識化合物は、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルデヒド(o-phthaldehyde)およびフルオレスカミンである。NGF特異的抗体または抗原結合タンパク質はまた、125Eu、またはランタニド系列の他のものなどの蛍光放出金属を使用して検出可能に(delectably)標識することができる。これらの金属は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)またはエチレンジアミン-テトラ酢酸(EDTA)などの金属キレーティング基などを使用してNGF特異的抗体に取り付けることができる。
【0186】
NGF特異的抗体はまた、化学発光化合物に連結することにより検出可能に標識することができる。化学発光標識された抗体の存在は次に、化学反応の過程の間に生じる発光の存在を検出することにより決定される。有用な化学発光標識化合物の例は、ルミノール、イソルミノール、セロマティック(theromatic)アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルである。
【0187】
同様に、本発明のNGF特異的抗体、部分、断片、ポリペプチド、または誘導体を標識するために生物発光化合物を使用することができる。生物発光は、触媒タンパク質が化学発光反応の効率を増加させる生物学的な系において見出される化学発光の一種である。生物発光タンパク質の存在は、発光の存在を検出することにより決定される。標識化の目的のための重要な生物発光化合物は、ルシフェリン、ルシフェラーゼおよびエクオリンである。
【0188】
NGF特異的抗体、部分、断片、ポリペプチド、または誘導体の検出は、例えば、検出可能な標識が放射性ガンマ放出体である場合にはシンチレーションカウンターにより、または例えば、標識が蛍光材料である場合には蛍光光度計により達成することができる。酵素標識の場合、検出は、酵素に対する基質を用いる比色法(colorometric methods)により達成することができる。検出はまた、同様に調製された標準物質との比較における基質の酵素反応の程度の視覚的比較によっても達成することができる。
【0189】
本発明の目的のために、上記のアッセイにより検出されるNGFは、生物学的試料中に存在することができる。NGFを含有する任意の試料が使用されてもよい。例えば、試料は、生体液、例えば、血液、血清、リンパ液、尿、糞便、炎症性滲出液、脳脊髄液、羊水、組織抽出物またはホモジネートなどである。本発明は、これらの試料を使用するアッセイのみに限定されず、当業者は、本明細書に照らして、他の試料の使用を可能とする好適な条件を決定することができる。
【0190】
in situ検出は、動物対象から組織学的検体を取り出し、そのような検体との本発明の標識された抗体の組合せを提供することにより達成することができる。抗体(またはその部分)は、生物学的試料に標識された抗体(または部分)を適用または重層することにより提供されてもよい。そのような手順の使用を通じて、NGFの存在だけでなく、検査される組織中のNGFの分布を決定することができる。本発明を使用して、当業者は、多様な組織学的方法のいずれか(例えば、染色手順)をそのようなin situ検出を達成するために改変できることを容易に認識する。
【0191】
本発明の抗体、断片または誘導体は、「2サイト」(two-site)または「サンドイッチ」アッセイとしても公知の免疫測定アッセイにおける利用のために適合することができる。典型的な免疫測定アッセイでは、ある量の非標識抗体(または抗体の断片)を、試験されている液体中に不溶性の固体支持体に結合させ、ある量の検出可能に標識された可溶性の抗体を加えて、固相抗体、抗原、および標識された抗体との間で形成された三因子複合体の検出および/または定量化を可能とする。
【0192】
抗体は、試料中のNGFを定量的もしくは定性的に検出するためまたはNGFを発現する細胞の存在を検出するために使用されてもよい。これは、蛍光顕微鏡、フローサイトメトリー、または蛍光測定検出と連結させて蛍光標識された抗体を用いる免疫蛍光技術(以下を参照のこと)により達成することができる。診断目的のために、抗体は標識または非標識のいずれであってもよい。非標識抗体は、イヌ免疫グロブリン定常領域に特異的な抗体などの、該抗体と反応性の他の標識された抗体(第2の抗体)と組み合わせて使用することができる。代替的に、抗体は直接的に標識することができる。放射性核種、フルオール(fluor)、酵素、酵素基質、酵素補因子、酵素阻害剤、リガンド(特にハプテン)などの多様な標識を用いてもよい。以前に議論されたものなどの多数の種類のイムノアッセイが利用可能であり、それらは当業者に周知である。重要なことに、本発明の抗体は、イヌにおけるNGF関連障害の診断において役立ち得る。より具体的には、本発明の抗体は、コンパニオンアニマルにおけるNGFの過剰発現を同定する場合がある。したがって、本発明の抗体は、重要な免疫組織化学ツールを提供する場合がある。本発明の抗体は
、抗体アレイにおいて使用されてもよく、遺伝子発現プロファイルを測定するために非常に好適である。
【0193】
キット
対象とする方法を実施するためのキットもまた本発明の範囲内に含まれる。キットは少なくとも、本発明の抗体、それをコードする核酸、またはそれを含有する細胞のうちの1つまたは複数を含む。本発明の抗体は、容器中で、通常は凍結乾燥形態で、提供されてもよい。標識もしくは毒素に結合していてもよく、または結合していなくてもよい抗体は、典型的には、トリス、リン酸塩、炭酸塩などの緩衝剤、安定化剤、殺傷剤、または不活性タンパク質、例えば、血清アルブミンなどと共にキット中に含まれる。概しては、これらの材料は、活性抗体の量に基づいて5重量%未満で存在し、通常は、ここでも抗体濃度に基づいて少なくとも約0.001重量%の総量で存在することになる。頻繁に、活性成分を希釈するために不活性の増量剤または賦形剤を含むことが望ましいことになり、賦形剤は、組成物全体の約1重量%~99重量%で存在してもよい。一次抗体に結合する能力を有する第2の抗体がアッセイにおいて用いられる場合、これは、通常、別々のバイアル中に存在する。第2の抗体は、典型的には、標識に結合しており、上記の抗体配合物と類似の方式で配合される。キットはまた、一般的に、一組の取扱説明書も含む。
【0194】
ここで本発明を以下の非限定的な実施例によりさらに記載する。
【実施例0195】
本発明は以下の実施例によりさらに例示され、かつ裏付けられる。しかしながら、これらの実施例は、本発明の範囲をさらに限定するものと決して考えられるべきではない。反対に、当業者は、本発明の趣旨および/または添付の請求項の範囲から逸脱することなく本発明の他の実施形態、修正、および均等物があることを容易に理解するであろう。
【0196】
実施例1
イヌNGF(cNGF)の合成および精製
イヌpre-pro-β-NGF(配列番号:59)を増幅するために適切な制限部位を用いてPCRプライマーを設計した。β-NGF遺伝子をEcoRV/KpnI部位を介してプラスミドpCTV927(Chromos標的化プラスミド)にクローニングした。pCTV927/β-NGFプラスミドを、ChromosシステムインテグラーゼをコードするプラスミドpSIO343と共に、Lipofectamine 2000トランスフェクション試薬を使用してCHOK1SV細胞に共トランスフェクトした。個々の安定なクローンを発現について解析し、高発現クローンを拡大増殖およびその後の精製用の発現のために選択した。これらのトランスフェクションから産生したイヌβ-NGF(cNGF)をイオン交換クロマトグラフィーを使用して精製した。初期クリーンアップをQ Sepharose FF(GE Healthcare #17-0510-01)に対してフロースルーバッチモードにおいて行った。清澄化された上清を水を用いて1:1に希釈し、1Mのトリスを用いてpHを8.5に調整した。希釈した試料を>1.5時間にわたり150:1の比においてQ Sepharose FFと混合した。樹脂を沈降させ、未結合の部分を収集した。cNGFを陽イオン交換クロマトグラフィーによりさらに精製し、それを再び水を用いて1:1に希釈し、20mMのトリスを用いてpH8.5で予備平衡化したSP-Sepharose FF(GE Healthcare #17-0729-01)に流した。流した後、カラムを洗浄し、次に20カラム体積にわたり0~210mMのNaCl(各20mMのトリス中、pH8.5)の線形勾配を介して溶出した。画分をSDS-PAGEにより分析し、プールし、4℃でPBSに対して透析した(3.5K mwco)。透析物を収集し、無菌濾過し、280nmの吸光度を介して濃度を測定した(1mg/mL=1.48 A280)。
【0197】
実施例2
イヌの免疫化
イヌの免疫化は、当該技術分野において公知の方法により行うことができ、いずれか1つの方法に限定されない。一例では、イヌNGF(実施例1に記載されるようなもの)は、免疫応答を刺激するためにアジュバントと共にイヌに直接的に投与される。最適な抗抗原応答を得るために、イヌに追加免疫注射を投与し、血清試料を定期的に収集した。免疫化されたイヌからの抗体免疫応答をモニターし、かつ当業者に周知かつ以下に記載するように、標準的な抗原直接結合酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)法を使用して決定した。
【0198】
実施例3
一次抗原結合およびB細胞活性化
イヌ抗NGF抗体の力価を評価するために、100uLの組換えイヌNGF(10ug/mL)を4℃で一晩Immunolon 2Hbプレートにコーティングした。ウェルをPBS-T(PBS+0.1%のTween)で3回洗浄し、室温で1時間インキュベートした200uLのPBS+5%の無脂肪スキムミルクを使用して非特異的な結合を遮断した。300uLのPBD-Tを用いた3回のプレート洗浄後に、イヌ血清の段階希釈液を1時間インキュベートした。0.2ug/mLのBethyl抗イヌIgG1(A40-120P)および抗イヌIgG2(A40-121P)のカクテル100uLを使用してイヌ抗NGF IgGの結合を検出した。発色基質(SureBlue Reserve TMB 1-Component Microwell Peroxidase Substrate、KPL 53-00-01)の添加およびRTでの10分間のインキュベーション後に、100μLの0.1N HClの添加により反応を停止させた。各ウェルの吸光度を450nmの光学密度(OD)において決定した。
【0199】
イヌメモリーB細胞の活性化プロトコール
遠心分離によるFicoll(商標)勾配分離を使用して末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。試料からのPBMCの単離後に、当業者に周知かつ米国特許公開第2014/0287402号明細書およびCallard and Kotowicz“Cytokine Cell Biology:A practical approach”Oxford University Press,2000,pg 17-31(参照により本明細書に組み込まれる)において記載されるような特異的抗体細胞表面マーカーの発現に基づいて抗体分泌細胞の特異的な選択を行った。B細胞を選別チップに置く前に、細胞をin vitroで活性化させた。単離および凍結後に、細胞(PBMC、約10細胞/バイアル)を液体窒素から除去し、水浴中で急速に解凍させた。細胞を15mlの遠心分離チューブに移し、12mlの完全培地を滴下で加えた。1000rpmで10分間細胞を遠心分離した後、ペレットを10mlの完全培地に再懸濁し、再び1000rpmで10分間遠心分離した。最後に、細胞を4mlの培地に再懸濁した。
【0200】
実施例4
9L12(ZTS-841)、48L2(ZTS-842)および13L11抗体をコードするDNA配列
目的の単一細胞を顕微操作によりマイクロアレイから回収し、溶解緩衝液およびmRNA捕捉用の磁気ビーズを含有するマイクロチューブに入れた。ガンマHC、カッパLCおよびラムダLCの早期定常ドメイン中にハイブリダイズする遺伝子特異的プライマーのミックスを用いてcDNAをトータルRNAから調製した。末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)酵素を第1の鎖のcDNA産物の3’末端テイル付加のために使用した。その後の最初のPCRのために、遺伝子特異的リバースプライマーおよびユニバーサルプライマーフォワードプライマーのミックスを使用する。その後に、ネステッドPCRを各VHおよびVL鎖について別々に実行して抗体可変領域を増幅した。このた
めに使用されるリバースプライマーは、ユニバーサルフォワードプライマーと共にHCまたはLC定常ドメインに位置する。PCRから増幅された断片をアガロースゲル上のゲル電気泳動により分離した。単一細胞から単離された全長VHおよびVLアンプリコンを、対応するHCまたはLCの定常部分を含有する発現ベクターにクローニングした。イヌ可変ドメイン配列は以下の通りであった:9L12(841)可変軽鎖(配列番号:7)、対応するヌクレオチド配列(配列番号:17);9L12(841)可変重鎖(配列番号:8)、対応するヌクレオチド配列(配列番号:18);48L2(842)可変軽鎖(配列番号:27)、対応するヌクレオチド配列(配列番号:36);48L2(842)可変重鎖(配列番号:28)、対応するヌクレオチド配列(配列番号:38);13L11可変軽鎖(配列番号:51)、対応するヌクレオチド配列(配列番号:53);13L11可変重鎖(配列番号:52)、対応するヌクレオチド配列(配列番号:54)。
【0201】
上記のように単離した、単離された抗体の定常領域は、本発明の抗体のその後の構築において使用しなかった。本発明の組換え抗体のFc領域は改変型のイヌIgGBを含み(Bergeron et al.,Vet Immunol Immunopathol
2014 Jan 15:157(1-2):31-41)、かつその半減期、生物物理学的性質およびエフェクター機能の欠如について選択された。Bergeron et
al.において報告されたように、イヌIgGBはイヌFcRnに対する良好な親和性および下流の処理のために好適な生物物理学的性質を有する。イヌFc領域単独に対して行った示差走査熱量測定(DSC)は、定常領域の熱安定性は約70℃および83℃であることを指し示した。これらの融解温度は、市販のヒト化mAbについて報告されたものと同様またはそれより高い。
【0202】
3つの点突然変異をイヌIgGBのCH2ドメインに対して作製してADCCおよびCDC活性を除去した。突然変異型Fcを本明細書においてIgGB(e-)(配列番号43)と称する。NGFは可溶性の標的であるが、任意の潜在的な非特異的標的またはエフェクター機能関連の悪影響から保護するためにエフェクター機能を抗NGF抗体から除去した。これらの突然変異は、このmAbの免疫原性に影響を及ぼさないようであった。追加的に、エフェクター機能を除去するためのFc領域への突然変異は、FcRnまたはプロテインAの結合に影響しなかった。イヌFcγRIおよびFcγRIIIへの結合の減少が観察されただけでなく、ADCC活性の低減も観察された。C1qタンパク質は補体カスケードにおける第1のタンパク質であり、細胞が補体依存性細胞傷害性(CDC)を受けるために必要とされる。IgGB(e-)は、C1qタンパク質への結合を欠如することが示されている。記載されるようなイヌ定常HC-65のアミノ酸配列を配列番号:41として表し、その対応するヌクレオチド配列を配列番号:42として表す。イヌ定常ラムダのアミノ酸配列を番号:60として表し、その対応するヌクレオチド配列を配列番号:61として表す。
【0203】
実施例5
抗原結合親和性の決定
イヌNGFに対する抗体の抗体結合親和性をBiacoreシステム(Biocore
Life Sciences(GE Healthcare)、Uppsala,Sweden)での表面プラズモン共鳴(SPR)により決定した。イヌおよびラットNGFの固定化は、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)/1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)化学を使用して5μg/mLのNGFをアミンカップリングすることにより得られた。エタノールアミンを用いてチップをクエンチし、全ての候補mAbが、固定化されたNGFに結合する親和性を評価した。様々な濃度のイヌおよびネコ化抗NGF抗体をNGF表面上に注入し、抗原への抗体の会合および形成された複合体の解離をリアルタイムでモニターした。動態解析を行って平衡解離定数(KD)を得た。結果を以下の表1に示す。
【0204】
【表2】
【0205】
実施例6
9L12(841)および48L2(842)キメラ抗体の構築
抗体可変ドメインは抗原結合に関与する。抗体は、2つのヘテロ二量体タンパク質のホモ二量体ペア形成からなる。ヘテロ二量体の各タンパク質鎖(1つの重鎖および1つの軽鎖)は可変ドメインおよび定常ドメインからなる。各可変ドメインは、抗原結合に寄与する3つの相補性決定領域(CDR)を含有する。CDRは、抗体上の結合部位の適切な空間的提示のためのスキャフォールドを提供するフレームワーク領域により可変ドメイン中で分離されている。CDRおよびフレームワーク領域は一緒になって、そのコグネイト抗原に結合する抗体能力に寄与する。各々の定常領域に全可変ドメインをグラフトすることは、NGFに結合する抗体の能力にほとんどまたは何ら影響力を有しないことが予期される。重鎖および軽鎖可変領域の正しい配列が同定されたことを同時に確認するためならびに均質な材料を産生するために、哺乳動物発現系において組換えキメラまたはイヌ抗体を産生するための発現ベクターを設計した。本明細書に記載のキメラ抗体は、イヌIgG分子の各々の重鎖および軽鎖定常領域にグラフトされた宿主種抗体からの可変配列(CDRおよびフレームワークの両方)からなる。本明細書に記載のキメラ抗体は、ネコIgG分子の各々の重鎖および軽鎖定常領域にグラフトされたイヌ分子からの可変セグメント(CDRおよびフレームワークの両方)からなる。可変ドメインは抗原結合に関与するので、ネコ定常ドメインに完全イヌ可変ドメインをグラフトすることは、NGFに結合する抗体の能力にほとんどまたは何ら影響力を有しないことが予期される。キメラ可変ドメイン配列は以下の通りであった:canfel_キメラ9L12(841)可変軽鎖(配列番号:9)、対応するヌクレオチド配列(配列番号:19);canfel_キメラ9L12(841)可変重鎖(配列番号:10)、対応するヌクレオチド配列(配列番号:21);canfel_キメラ48L2(842)可変軽鎖(配列番号:29)、対応するヌクレオチド配列(配列番号:39);canfel_キメラ48L2(842)重鎖(配列番号:30)、対応するヌクレオチド配列(配列番号:40)。各可変セグメントをネコIgG重鎖または軽鎖のいずれかを含有する哺乳動物発現プラスミドにクローニングした。ネコ重鎖定常領域のアミノ酸配列を配列番号:62として表し、その対応するヌクレオチド配列を配列番号:63として表す。ネコ軽鎖定常のアミノ酸配列を配列番号:64と
して表し、その対応するヌクレオチド配列を配列番号:65として表す。
【0206】
実施例7:
48L2および9L12抗体のネコ化
抗薬物抗体(ADA)の生成は、モノクローナル抗体を含む任意の生物学的製剤タンパク質の有効性の損失と関連付けることができる。文献の包括的な評価は、モノクローナル抗体の種分化はmAbが免疫原性となる傾向を低減し得ることを示した。本明細書において提供されるイヌ抗NGFモノクローナル抗体についてのADA形成と関連付けられるリスクの軽減を助けるために、ネコにおける抗体の最終的使用のためにネコ化戦略を用いた。このネコ化戦略は、CDRグラフティングのために使用される最も適切なネコ生殖細胞系列抗体配列の同定に基づく。重鎖および軽鎖の両方についての全ての利用可能なネコ生殖細胞系列配列の大規模な解析後に、イヌmAbに対する相同性に基づいて生殖細胞系列候補を選択し、イヌ前駆セグメントからのCDRを使用して天然のネコCDRを置換した。ネコ化mAbを発現させ、NGFに結合する能力について特徴付けた。目的は、in vivoでの免疫原性の可能性を最小化するためにネコ抗体フレームワークを使用して高親和性および細胞ベースの活性を保持することであった。配列番号21~26を使用するmAb 48L2(ZTS-842)および配列番号1~6を使用する9L12(ZTS-841)のネコ化可変重鎖および軽鎖を示す合成構築物を作製した。ネコ定常重鎖(配列番号:62)およびネコ定常軽鎖(配列番号:64)領域を含有するプラスミドへの各可変鎖のサブクローニング後に、プラスミドを抗体発現のためにHEK293細胞に共トランスフェクトした。キメラ、ヘテロキメラおよびネコ化型のmAb 48L2および9L12を発現させ、SPRを介してNGFに結合する能力について特徴付けた。
【0207】
実施例8
グルタミンシンセターゼ(GS)プラスミドからの抗体の産生
本明細書に記載されるようなイヌおよびネコ化9L12および48L2(それぞれZTS-841およびZTS-842)、ならびにネコ化9L12重鎖および軽鎖をコードする遺伝子を当業者に周知の標準的な分子生物学技術にしたがってGSプラスミドpEE 6.4およびpEE 12.4(Lonza、Basel,Switzerland)にクローニングした。結果として得られた個々のプラスミドを製造者のプロトコールにしたがって消化し、一緒にライゲートして単一の哺乳動物発現プラスミドを形成させた。各抗体の一過性の産生を実証するために、各プラスミドを使用してHEK 293細胞にトランスフェクトし、様々なサイズの培養において発現を実行した。標準的なタンパク質精製方法にしたがってプロテインAアフィニティークロマトグラフィーを使用してタンパク質を調整したHEK培地から単離した。培地をクロマトグラフィー樹脂に流し、pHシフトにより溶出させた。溶出したタンパク質のpHを調整し、透析し、使用前に無菌濾過した。抗体を親和性および力価について試験した。
【0208】
候補抗体を産生する安定な細胞株の生成のために、GSプラスミドを直鎖化した後に、プラスミド骨格中の単一の部位において切断を行う制限酵素PvuIと共にトランスフェクトした。GS-CHOK1SV(クローン144E12)細胞にエレクトロポレーションを介して直鎖化プラスミドDNAをトランスフェクトした。トランスフェクション後に、安定なプールを生成するために細胞を48ウェルプレート(48WP)にプレーティングした。プールが48WP中で少なくとも50%コンフルエントな場合、ForteBio OctetおよびプロテインAバイオセンサー(Pall ForteBio、Fremont,CA)を使用してIgG発現について100μlの上清を分析した。最良発現クローンを6ウェルプレート(6WP)および次に125mLのシェークフラスコ(SF)へとスケールアップした。細胞が125mLのフラスコ中での懸濁培養に適合したら、2バイアルの各細胞株プールをLN貯蔵のためにバンク化した。細胞株の製造はクローン性でなければならないので、上位3つの発現プールを96ウェル培養プレート中で限界
希釈によりサブクローニングした。クローン性を証明しかつ限界希釈の第2のラウンドを回避するために、単一細胞およびそのその後の増殖の画像を捕捉するMolecular
Devices Clone-Select Imager(CSI)(Molecular Devices LLC、San Jose,CA)を使用して96ウェルプレートをイメージングした。96WP中でのCSI画像、増殖および産生の成功に基づいてクローンを選択した。
【0209】
細胞培養の増殖および生産性を評価するために、上位発現プールを125mLのSF中で14日間のフェドバッチにおいてさらに評価した。細胞をプラットフォーム培地に播種し、フィードは、Life TechnologiesのCD CHO+4つのアミノ酸、専売フィードCDF v6.2、および10%のグルコースからなるものであった。14日間のフェドバッチ後に、プールを遠心分離し、CD CHO産生 mAbを0.20μmのポリエーテルスルホン(PES)膜を介して上清を濾過することにより単離した後、精製を行った。
【0210】
典型的な精製は、2リットルの調整した培地(0.2μmで濾過したCHO細胞培養物から)をMabSelect(GE Healthcare、カタログ番号17-5199-02)の235mLのカラムに流すことからなる。カラムをPBSを用いて予備平衡化した。試料を>2.5分間の滞留時間において流した。流した後に、カラムを再びPBSおよび次に25mMの酢酸ナトリウムを用いて約中性のpHで洗浄した。pH3.6の25mMの酢酸を用いてカラムの溶出を行った後、pHが約2.2の250mMの酢酸、250mMの塩化ナトリウムを用いてストリップを行った。画分(50mL)を溶出およびストリップステップの間に収集した。A280のUV吸光度を全体を通じてモニターした。ピーク画分をプールし、20mMの酢酸ナトリウムの添加を用いてpHを約5.5に調整した後、緩衝液の3回の交換により透析を行った。透析物を収集し、無菌濾過し、4℃で貯蔵した。
【0211】
実施例9:
in vitroでのイヌNGFの生物学的活性の中和
イヌNGFに対する各イヌおよびネコ化抗NGF抗体の親和性を、実施例5に記載したようなBiacoreシステム(Biocore Life Sciences(GE Healthcare)、Uppsala,Sweden)でのSPR(表面プラズモン共鳴)を使用して測定した。加えて、TrkAへのNGFの結合を阻害するmAbの能力についての阻害定数を測定するために機能的なin vitroアッセイを開発した。本発明の抗NGF mAbがTrkAへのNGFの結合の阻害の結果として下流の細胞シグナル伝達を遮断したかどうかを決定するために、精製した抗体を、細胞外シグナル調節キナーゼ1および2(pERK 1/2)のイヌNGF誘導性のリン酸化を測定するアッセイにおいて評価した。アッセイにおいて使用した細胞は、湿潤化した5%のCO2、95%の空気のインキュベーター中37℃で10%の透析したFBS、20mMのHEPES、500μg/mlのジェネティシン、および1xの抗生物質-抗真菌剤μg/ml(Life Technologies)を添加したDMEM/F12+GlutaMAX(商標)-1培地(Life Technologies)中で生育したイヌTrkAを発現するCHO-K1(Life Technologies)であった。pERK 1/2アッセイのために、細胞を96ウェル組織培養プレート(Costar)中に5.0×104細胞/ウェルで播種し、37℃で一晩インキュベートして付着させた。細胞を次に、塩化カルシウムおよび塩化マグネシウムを含有するHBSS(Life Technologies)中で2時間血清飢餓とした。抗NGF抗体をHBSSに段階希釈し、HBSS/0.1%のBSA中に希釈した組換えイヌNGFと室温で1時間プレインキュベートした後に細胞に加えた。アッセイにおけるイヌNGFおよびBSAの最終濃度はそれぞれ15ng/ml(EC90)および0.025%であった。細胞を37℃で10分間刺
激した後に、アッセイ混合物を除去し、pERK 1/2 AlphaLISA(登録商標)SureFire(登録商標)Ultra assay kit(PerkinElmer)と共に提供された100μlの細胞溶解緩衝液を加えた。細胞溶解液を次に(than)製造者の指示にしたがって処理し、EnSpire(登録商標)プレートリーダー(PerkinElmer)でプレートを読み取った。アッセイにおける最大の応答は、イヌNGFのみの存在下(mAbなし)での測定されたERK 1/2リン酸化として定義される。最小の応答は、ERK 1/2リン酸化の基底レベル(刺激なし)として定義される。抗NGF抗体について算出された阻害値を最小および最大の応答のパーセンテージとして表す。結果として得られた阻害パーセントのデータをIC50決定(4パラメーター曲線適合)のためにGraphPad Prism 5を用いてプロットした。図6~7を参照のこと。
【0212】
TF-1細胞増殖アッセイ
10%のFBSおよび2ng/mlの組換えヒトGM-CSF(R & D Systems Inc.)を添加したATCC改変RPMI 1640培地(Life Technologies)中でTF-1細胞(ATCC)をルーチンに生育した。TF-1増殖アッセイ培地は、10%のBIT 9500(Stemcell Technologies)および10μg/mlのゲンタマイシンを添加したRPMI 1640であった。指し示した濃度のイヌおよびネコ化抗NGF抗体ならびに2ng/mlの組換えイヌNGFと15,000細胞/ウェルをインキュベートすることにより96ウェルマイクロプレート(Costar)中でTF-1増殖を行った。65時間の培養期間後に、CellTiter-GLO luminescent assay kit(Promega)を用いてイヌNGF誘導性の細胞増殖に対する抗NGF抗体の効果を評価した。アッセイにおける最大の応答は、イヌNGFのみの存在下(抗体なし)での増殖として定義される。最小の応答は、イヌNGFなしで測定された増殖として定義される。抗NGF抗体について算出された阻害(NGF中和)値を最小および最大の応答のパーセンテージとして表す。結果として得られた阻害パーセントのデータをIC50決定(4パラメーター曲線適合)のためにGraphPad Prism 5を用いてプロットした。図8~9を参照のこと。
【0213】
実施例10:
薬物動態
イヌ抗NGF mAb 48L2(ZTS-842)および9L12(ZTS-841)の両方の薬物動態(PK)。28日間隔で投与した2回の皮下(SC)および1回の静脈内(IV)の2.0mg/kgの用量後のイヌにおいて研究を行った。IVデータは、半減期が13.3±3.4日(平均±標準偏差)であり、クリアランスが3.9±0.2mL/日/kgと遅いことを実証した。SC投与後に、ピーク血清濃度を投与の1~7日後に観察した。SC絶対的バイオアベイラビリティの平均は88%±41%であった。in vivoでのNGFへの結合を高感度総NGF(遊離+NGF-mAb複合体)アッセイを使用して確認した。48L2(ZTS-842)の投与の前に、NGF濃度は10pg/mLの定量下限未満であった。48L2(ZTS-842)の投与後に、総NGF濃度は全ての動物において増加し、研究の84日目において平均で1300±500pg/mLであった。48L2(ZTS-842)濃度は研究の全体を通じて大過剰であり、最後の用量の28日後、84日目において平均で7.8±1.3μg/mLであり、よりいっそう少ない用量でも投与後少なくとも1か月間内因性のNGFを捕捉するために充分であることを示唆する。免疫原性を直接的に評価しなかったが、3回の用量の84日の研究の間に任意の抗薬物抗体が4匹のイヌにおいて誘導された徴候は48L2(ZTS-842)濃度-時間データからはなかった。図11を参照。追加的に、20mg/kgにおいて28日の間隔でのSC/SC/IVの投与で上記と同じパラメーターを使用してZTS-841もまた研究したところ、11.8+4.1日の半減期を示した。94%+12
%のSCバイオアベイラビリティ。図10~11を参照のこと。
【0214】
ネコ化抗NGF mAb fel48L21.1(ZTS-205)のPKを、28日間隔で投与した2回の皮下(SC)および1回の静脈内(IV)の1.5mg/kgの用量後の3匹の雄および3匹の雌ネコにおいて研究した。IVデータは、半減期は10.8±2.5日(平均±標準偏差)であり、クリアランスは3.0±1.0mL/日/kgと遅いことを実証した。SC投与後に、ピーク血清濃度が投与の2~7日後に観察された。SC絶対的バイオアベイラビリティの平均は88%±17%であった。fel48L21.1(ZTS-205)濃度は研究の全体を通じて高く、最後の用量の28日後、84日目において平均で7.2±4.0μg/mLであり、よりいっそう少ない用量でも投与後少なくとも1か月間内因性のNGFを捕捉するために充分であることを示唆する。免疫原性を直接的に評価しなかったが、3回の用量の84日の研究の間に任意の抗薬物抗体が6匹のネコにおいて誘導された徴候はZTS-842濃度-時間データからはなかった。
【0215】
生物分析アッセイの方法論
ストレプトアビジンGyrolab(商標)ディスク上のビオチン化イヌNGFによる遊離mAbの捕捉およびAlexaFluor(商標)標識マウス抗イヌIgGモノクローナル抗体の添加後の蛍光検出に基づいて遊離48L2(ZTS-842)リガンド結合アッセイを開発した。ストレプトアビジンGyrolab(商標)ディスク上のビオチン化イヌNGFによる遊離mAbの捕捉およびAlexaFluor(商標)標識ヤギ抗ネコIgGポリクローナル抗体の添加後の蛍光検出に基づいて遊離fel48L21.1(ZTS-205)リガンド結合アッセイを開発した。
【0216】
実施例11:
ラットMIAモデルにおけるイヌおよびネコ化抗NGF抗体の評価
変形性関節症(OA)は、関節痛および関節軟骨の進行性の喪失により特徴付けられる関節変性疾患である。MIAの関節内注射は、OAのものを模倣する軟骨下骨病変の進行を伴う関節軟骨の喪失を誘導する。このモデルは、齧歯動物種においてOA様病変を再現する迅速かつ最小侵襲性の方法を与える。
【0217】
変形性関節症のラットMIAモデルにおけるMIAの1用量における種分化(例えば、イヌ化、およびネコ化など)抗NGF抗体の鎮痛効果を、研究中の研究7日目および研究14日目にモノクローナル抗体ZTS-841、ZTS-842を別々に投与することにより実証した。持続的な疼痛について体重負荷試験および無痛覚計(Ugo Basile)を使用する機械的痛覚過敏試験のための関節圧迫(Randall Selitto)試験を使用して疼痛を評価した。試験は、後足に圧力を適用することにより行った。モーターを起動させるペダルを押すことにより、力が線形スケールにおいて一定速度で増加した。疼痛が示され、足の引っ込めまたは発声が観察された場合、ペダルを直ちに開放し、侵害受容閾値を目盛りで読み取った。400gのカットオフを使用して傷害の可能性を回避した。Randall-Selitto試験を研究の-1日目(ベースライン)、20日目および28日目に行った。ラットMIA手順の略図については図12を参照のこと。
【0218】
軟骨の喪失は、代謝阻害剤モノヨード酢酸(MIA)の投与を介して誘導される。イソフルラン(100%のO2中3~5%)を用いてラットを麻酔した。動物が充分に麻酔されたら、40mgのMIA/ミリリットルの生理食塩水の注射液50ulを、27G針を適合した1ccのシリンジを使用して左後膝関節の関節内空間に注射した。動物からイソフルランを除去し、充分に回復させた後、ホームケージに戻した。
【0219】
これらの動物において本発明の抗NGF mAbの効果を評価するために、Incap
acitance Testerを使用して体重負荷について動物を評価した。動物をアクリル試験チャンバーに入れ、正しい位置にある時に力の評価を取得する。3つの評価を各時点において取得する。以下の式:
【数1】
を使用して各評価に対する体重負荷スコア(WBS)のパーセントを算出する。3つのWBSの平均をその時点についてのWBSとして採用する。-21日目に、MIA誘導の前にWBSを算出し、MIAを2mg/0.05mLの用量において左後膝関節に点滴注入した。無作為化のために-1日目にWBSを測定した。0日目に、抗NGF mAbまたはプラセボを投与した後、7、14、21および28日目に体重負荷を評価した。体重負荷評価の日に週毎に体重を記録した。
【0220】
末端心臓穿刺を介する用量投与後28日目に血清試料を収集した。CO2窒息を介する安楽死後に、全血を心臓穿刺から収集し、血清分離チューブに入れ、室温で凝固させた後、遠心分離(3500rpm、15分)を行い、以下の表に列記されるようにそれぞれ300ulの2つのアリコートにおいて96ウェルプレートに移した。分析まで試料を≦-10℃において凍結した。ラットMIAアッセイにおいて試験したようなZTS-841およびZTS-842のグラフ表示について図13~15を参照のこと。
【0221】
実施例12
跛行に対する効果:イヌ滑膜炎モデルにおけるイヌ化抗体の評価
軟組織における炎症性プロセスは、変形性関節症の1つの顕著な成分としてよく認識されている。滑膜炎疼痛モデルにおいて、単一の後膝関節における滑膜の一時的な炎症を細菌リポ多糖(LPS)の関節内注射を介して誘導する。定量化可能な跛行が滑膜炎誘導の2h以内に起こり、3~4hにてピークとなり、6hまで漸減し、24h後に完全に消散する。このモデルは、疼痛制御用の標的を調べるためにルーチンに使用されてきた。
【0222】
健全な雄ビーグルへの1回の静脈注射の投与によるZTS-841の5mg/kgの用量は、イヌLPS滑膜炎モデルにおいて生理食塩水プラセボと比較して跛行を低減した。以下の表2において見ることができるように、ZTS-841は、LPS滑膜炎誘導の3時間(3 and hours)後に有効性を実証した。
【0223】
表2および図16は、滑膜炎誘導の3、および5時間後の処置群についての跛行VASの最小二乗平均(および標準誤差)を表す。5mg/kg ZTS-841とプラセボとの差異は統計的に有意であった。
【0224】
【表3】
【0225】
実施例13
抗体48L2(ZTS-842)および9L12(ZTS-841)のヒト化
記載された当業者に周知のネコ化戦略と同様に、mAb 48L2および9L12からのCDRグラフティングのために全ての利用可能なヒト配列から適切な生殖細胞系列抗体配列を同定した。各々のイヌフレームワークに対する最も高い相同性に基づいて可変軽鎖および可変重鎖を選択した。天然ヒトセグメントのCDRを除去し、親イヌCDRにより置換した。各々のイヌ定常IgG重鎖配列に連結した選択された可変領域を使用して組換えヒト化48L2および9L12を産生した。抗体をHEK細胞から産生し、以前に記載されたように精製した後、以下の表3に示すように、ヒトNGFに結合する能力について評価した。mAb 48L2(ZTS-842)および9L12(ZTS-841)のヒト化可変重鎖および軽鎖を提示する合成構築物を構築した。両方のセット内の可変重鎖および軽鎖の異なる組合せを合成し、結合についてアッセイした(以下を参照のこと)。CDR配列は構築の間に変更せず、フレームワーク配列のみを変更した。
【0226】
ヒトNGF(配列番号66)に対する抗体の抗体結合親和性を表面プラズモン共鳴(SPR)により決定した。ヒトNGFを直接的なアミンカップリングによりBIACOREチップの表面に固定化した。様々な濃度の記載したヒト化抗NGF抗体をヒトNGF表面上に注入し、抗原への抗体の会合および形成された複合体の解離をリアルタイムでモニターした。動態解析を行って平衡解離定数(KD)を得た。結果を以下の表3に示す。
【0227】
【表4】
【0228】
実施例14
抗体48L2 9L12(ZTS-841)および48L2(ZTS-842)のパラトープスキャニング突然変異誘発
抗原認識に関与する抗体の領域はパラトープを表す。パラトープは、重鎖および軽鎖可変領域の両方の相補性決定領域(CDR)におけるアミノ酸の組合せにより作製される。抗体と抗原との結合は、多くの場合に、抗原の側鎖または炭水化物部分とのCDR残基の側鎖により媒介される。抗体認識に関与する不可欠な側鎖を定義することを助けるために、Cunningham and Wells(1989)Science,Vol.244,Issue 4908,pp.1081-1085に記載されるような技術で、重鎖および軽鎖の両方における各CDR残基においてアラニンスキャニング突然変異誘発を行った。これらの突然変異体を次に、Biacoreを使用してNGFへの能力について個々に試験した。ヒトNGF(以下においてhN)、イヌNGF(以下においてcN)およびラットNGF(以下においてrN)への結合親和性を測定し、上記の実施例5および9において記載したものと同じプロトコールによりKD値を生成した。値を次に野生型抗体と比較し、野生型結合のパーセントとして表に表す。以下の表4および表5において提示されるデータは、野生型に対して比較された「類似性スコアのパーセント」として示される。
【0229】
親mAbに対するアラニンスキャニング突然変異体mAbの相対的な親和性を決定するために、NGFコーティングチップへの結合プロファイルをBiacore T200を使用して100nMにおいて決定した。親mAbの4つの複製物の平均応答単位+/-3標準偏差を使用して、抗体結合の結合速度および解離速度の両方を含む応答単位の閾値を定義するためのパラメーターを生成した。この閾値内に入る各突然変異体についてのデータ点のパーセンテージを次に使用して「類似性スコアの%」を定義した。重鎖および軽鎖についてZTS-841およびZTS-842の各重鎖および軽鎖CDR位置におけるアラニンの置換の結果としてもたらされる類似性スコアをそれぞれ表4および表5において「親に対する阻害のパーセント」として示す。各CDR位置におけるアラニンの置換からの結果。
【0230】
表4における配列は、ZTS-841(9L12)の可変重鎖および可変軽鎖CDRアミノ酸配列のアラニン突然変異誘発を対象とする。表5は、ZTS-842(48L2)の可変重鎖および軽鎖CDRアミノ酸配列のアラニン置換を対象とする。以前に記載されおよび以下に含まれるような可変重鎖および可変軽鎖配列の両方の野生型ナンバリングにしたがって、突然変異されたアミノ酸を表に記載する。アミノ酸位置1、25、50、75および100を以下においてマークしている。「試料名」の欄において、重鎖または軽鎖のいずれかの可変配列を、ナンバリングされたアミノ酸位置のアラニン置換と共に列記する。
ZTS-841 VH:配列番号8:
VQLVESGGDLVKPGGSLRLSCVAS25GFTFSSHGMHWVRQSPGKGLQWVAV50INSGGSSTYYTDAVKGRFTISRDNA75KNTVYLQMNSLRAEDTAMYYCAKES100VGGWEQLVGPHFDYWGQGTLVIVSS124
ZTS-841 VL:配列番号7:
SVLTQPTSVSGSLGQRVTISCSGS25TNNIGILGASWYQLFPGKAPKLLVY50GNGNRPSGVPDRFSGADSGDSVTLT75ITGLQAEDEADYYCQSFDTTLGAHV100FGGGTHLTVL110
【0231】
【表5-1】
【表5-2】
【0232】
表5について:
ZTS-842 VH:配列番号28
VQLVESGGDLVKPGGSLRLSCVAS25GFTFSTYGINWVRQAPGKGLQWVAY50ISSGGSSTYYADPVKGRFTI75SRDDAKNMLYLQMNSLRAEDTAIYYCAGSRY100TYAYGGGYEFHFWGQGTLVTVSS124
ZTS-842 VL:配列番号27
AVLNQPASVSGALGQKVTISCSGS25TMDIDIFGVSWYQQLPGKAPKLLVD50SDGDRPSGIPDRFSGSRSGNSGTLT75ITGLQAEDEADYHCQSGDSTLGALAI100FGGGTHVTVL110
【0233】
【表6-1】
【表6-2】
【0234】
50%未満の類似性パーセントを有する表4および表5において生成された値は、NGFへの抗体パラトープの結合にとって必須のアミノ酸位置を示唆する。NGFへの結合の低減、または全体的な欠如に繋がるアラニンによる示した位置における野生型アミノ酸の突然変異は、いずれのアミノ酸が結合のために必要とされるか、およびいずれのアミノ酸が、最低でも保存的アミノ酸置換により置換されてもよいかを示唆する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【配列表】
2024045329000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-02-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経成長因子(NGF)に特異的に結合する組換え抗原結合タンパク質であって、
a.軽鎖可変領域(VL)が、
i.配列番号1のアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1)
ii.配列番号2のアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDR2)
iii.配列番号3のアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDR3)を含み、かつ、
b.重鎖可変領域(VH)が、
i.配列番号4のアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1)
ii.配列番号5のアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDR2)
iii.配列番号6のアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDR3)を含む;抗原結合タンパク質
【請求項2】
神経成長因子(NGF)に特異的に結合する組換え抗原結合タンパク質であって、
軽鎖可変領域(VL)が、
i.配列番号21のアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1)
ii.配列番号22のアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDR2)
iii.配列番号23のアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDR3)を含み、かつ、
重鎖可変領域(VH)が、
i.配列番号24のアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1)
ii.配列番号25のアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDR2)
iii.配列番号26のアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDR3)を含む;
抗原結合タンパク質
【請求項3】
神経成長因子(NGF)に特異的に結合する組換え抗原結合タンパク質であって、
a.配列番号7、配列番号9、配列番号27、配列番号29、配列番号55、配列番号71、配列番号73、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、および配列番号91からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および
配列番号8、配列番号10、配列番号28、配列番号30、配列番号56、配列番号67、配列番号69、配列番号75、配列番号77、配列番号79および配列番号81からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域
あるいは、
b.配列番号7、配列番号9、配列番号27、配列番号29、配列番号55、配列番号71、配列番号73、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、および配列番号91からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および
配列番号8、配列番号10、配列番号28、配列番号30、配列番号56、配列番号67、配列番号69、配列番号75、配列番号77、配列番号79および配列番号81からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域
を含む、
請求項1または2に記載の組換え抗原結合タンパク質。
【請求項4】
前記軽鎖可変領域が、配列番号7に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ前記重鎖可変領域が、配列番号8に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む;
あるいは、
前記軽鎖可変領域が、配列番号7のアミノ酸配列に対して1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、かつ、前記重鎖可変領域が、配列番号8のアミノ酸配列に対して1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む、
請求項に記載の組換え抗原結合タンパク質。
【請求項5】
前記軽鎖可変領域が、配列番号27に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ前記重鎖可変領域が、配列番号28に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む;
あるいは、
前記軽鎖可変領域が、配列番号27のアミノ酸配列に対して1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、かつ、前記重鎖可変領域が、配列番号28のアミノ酸配列に対して1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む、
請求項に記載の組換え抗原結合タンパク質。
【請求項6】
前記結合タンパク質がTrkA受容体へのNGFの結合を阻害する、請求項1~のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項7】
前記結合タンパク質がNGF関連障害を低減または除去する、請求項1~のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項8】
前記NGF関連障害が、心臓血管疾患、アテローム性動脈硬化症、肥満症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、疼痛および炎症からなる群から選択される、請求項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項9】
前記NGF関連障害が疼痛である、請求項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項10】
前記NGF関連障害が疼痛障害であり、かつ変形性関節症疼痛、関節リウマチ疼痛、手術および術後疼痛、切開疼痛、全身性炎症疼痛、がん疼痛、外傷からの疼痛、神経障害性
疼痛、神経疼痛、糖尿病性ニューロパチー疼痛、リウマチ性疾患と関連付けられる疼痛、筋骨格疾患と関連付けられる疼痛、内臓疼痛、ならびに胃腸疼痛からなる群から選択される、請求項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項11】
前記NGF関連障害が変形性関節症疼痛を含む、請求項10に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項12】
前記結合タンパク質が、モノクローナル抗体;キメラ抗体、単鎖抗体、四量体抗体、四価抗体、多重特異性抗体、ドメイン特異性抗体、ドメイン欠失抗体、融合タンパク質、ScFc融合タンパク質、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)断片、Fv断片、ScFv断片、Fd断片、dAb断片、および小モジュラー免疫医薬(SMIP)からなる群から選択される、請求項1~11のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項13】
モノクローナル抗体である、請求項12に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項14】
前記モノクローナル抗体が、イヌモノクローナル抗体、イヌ化モノクローナル抗体、ネコモノクローナル抗体、ネコ化モノクローナル抗体、ヒトモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体、ウマモノクローナル抗体またはウマ化モノクローナル抗体である、請求項13に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項15】
治療有効量の請求項1~14のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物または獣医学的組成物。
【請求項16】
対象における疼痛の治療において使用するための、請求項15に記載の医薬組成物または獣医学的組成物。
【請求項17】
疼痛が、変形性関節症疼痛、関節リウマチ疼痛、手術および術後疼痛、切開疼痛、全身性炎症疼痛、がん疼痛、外傷からの疼痛、神経障害性疼痛、神経疼痛、糖尿病性ニューロパチー疼痛、リウマチ性疾患と関連付けられる疼痛、筋骨格疾患と関連付けられる疼痛、内臓疼痛、ならびに胃腸疼痛からなる群から選択される、請求項16に記載の医薬組成物または獣医学的組成物。
【請求項18】
疼痛が変形性関節症疼痛を含む、請求項17に記載の医薬組成物または獣医学的組成物。
【請求項19】
疼痛が手術および術後疼痛を含む、請求項17に記載の医薬組成物または獣医学的組成物。
【請求項20】
疼痛ががん疼痛を含む、請求項17に記載の医薬組成物または獣医学的組成物。
【請求項21】
イヌ、ネコ、ウマまたはヒトにおいて使用するための、請求項1520のいずれか1項に記載の医薬組成物または獣医学的組成物。
【請求項22】
イヌにおいて使用するための、請求項21に記載の医薬組成物または獣医学的組成物。
【請求項23】
ネコにおいて使用するための、請求項21に記載の医薬組成物または獣医学的組成物。
【請求項24】
請求項1~14のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質を産生する宿主細胞。
【請求項25】
請求項1~14のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質をコードする核酸配列を含む単離された核酸。
【請求項26】
請求項25に記載の核酸を含むベクター。
【請求項27】
請求項26に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項28】
請求項25に記載の核酸を含む宿主細胞。
【請求項29】
請求項1~14のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質を産生する方法であって、前記抗原結合タンパク質の産生を結果としてもたらす条件下で請求項2427または28のいずれか1項に記載の宿主細胞を培養することと、前記宿主細胞または前記宿主細胞の培養培地から前記抗原結合タンパク質を単離することと、を含む、方法。
【請求項30】
NGF関連障害についてヒトを除く対象を治療する方法であって、前記対象に治療有効量の請求項15に記載の医薬組成物または獣医学的組成物を投与することを含む、方法。
【請求項31】
前記NGF関連障害が、心臓血管疾患、アテローム性動脈硬化症、肥満症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、疼痛および炎症からなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記NGF関連障害が疼痛を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記NGF関連障害が疼痛障害であり、かつ変形性関節症疼痛、関節リウマチ疼痛、手術および術後疼痛、切開疼痛、全身性炎症疼痛、がん疼痛、外傷からの疼痛、神経障害性疼痛、神経疼痛、糖尿病性ニューロパチー疼痛、リウマチ性疾患と関連付けられる疼痛、筋骨格疾患と関連付けられる疼痛、内臓疼痛、ならびに胃腸疼痛からなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記NGF関連障害が変形性関節症疼痛を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記NGF関連障害が手術および術後疼痛を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記NGF関連障害ががん疼痛を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
ヒトを除く対象に請求項15に記載の医薬組成物または獣医学的組成物を投与することにより、前記対象においてNGF活性を阻害する方法。
【請求項38】
前記対象が、イヌ、ネコ、およびウマからなる群から選択される、請求項3037のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記対象がイヌを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記対象がネコを含む、請求項38に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0193
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0193】
キット
対象とする方法を実施するためのキットもまた本発明の範囲内に含まれる。キットは少なくとも、本発明の抗体、それをコードする核酸、またはそれを含有する細胞のうちの1つまたは複数を含む。本発明の抗体は、容器中で、通常は凍結乾燥形態で、提供されてもよい。標識もしくは毒素に結合していてもよく、または結合していなくてもよい抗体は、典型的には、トリス、リン酸塩、炭酸塩などの緩衝剤、安定化剤、殺傷剤、または不活性タンパク質、例えば、血清アルブミンなどと共にキット中に含まれる。概しては、これらの材料は、活性抗体の量に基づいて5重量%未満で存在し、通常は、ここでも抗体濃度に基づいて少なくとも約0.001重量%の総量で存在することになる。頻繁に、活性成分を希釈するために不活性の増量剤または賦形剤を含むことが望ましいことになり、賦形剤は、組成物全体の約1重量%~99重量%で存在してもよい。一次抗体に結合する能力を有する第2の抗体がアッセイにおいて用いられる場合、これは、通常、別々のバイアル中に存在する。第2の抗体は、典型的には、標識に結合しており、上記の抗体配合物と類似の方式で配合される。キットはまた、一般的に、一組の取扱説明書も含む。
非限定的に、本発明は以下の態様を含む。
[態様1]
神経成長因子(NGF)に特異的に結合する組換え抗原結合タンパク質であって、
a.i.配列番号1または配列番号21に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1);
ii.配列番号2または配列番号22に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR2);
iii.配列番号3または配列番号23に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR3)を含む可変軽鎖(VL);および
b.i.配列番号4または配列番号24に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1);
ii.配列番号5または配列番号25に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR2);および
iii.配列番号6または配列番号26に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR3)を含む可変重鎖(VH);ならびに
前記抗原結合タンパク質の前記可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにおけるCDR1、CDR2またはCDR3の少なくとも1つにおいて1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有するその任意の変種、からなる群から選択される少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)
を含む、組換え抗原結合タンパク質。
[態様2]
a.前記軽鎖可変領域(VL)が、
i.配列番号1を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1)
ii.配列番号2を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDR2)
iii.配列番号3を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDR3)を含み、かつ、
b.前記重鎖可変領域(VH)が、
i.配列番号4を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1)
ii.配列番号5を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDR2)
iii.配列番号6を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDR3)を含み;かつ
その任意の変種が、前記抗原結合タンパク質の前記可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにおけるCDR1、CDR2またはCDR3のうちの少なくとも1つにおいて1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有する、
態様1に記載の抗原結合タンパク質。
[態様3]
c.前記軽鎖可変領域(VL)が、
i.配列番号21を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1)
ii.配列番号22を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDR2)
iii.配列番号23を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDR3)を含み、かつ、
d.前記重鎖可変領域(VH)が、
i.配列番号24を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1)
ii.配列番号25を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDR2)
iii.配列番号26を含むアミノ酸配列に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDR3)を含み;かつ
その任意の変種が、前記抗原結合タンパク質の前記可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにおけるCDR1、CDR2またはCDR3のうちの少なくとも1つにおいて1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有する、
態様1に記載の抗原結合タンパク質。
[態様4]
神経成長因子(NGF)に特異的に結合する組換え抗原結合タンパク質であって、
a.配列番号7、配列番号9、配列番号27、配列番号29、配列番号55、配列番号71、配列番号73、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、および配列番号91からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖、および
b.配列番号8、配列番号10、配列番号28、配列番号30、配列番号56、配列番号67、配列番号69、配列番号75、配列番号77、配列番号79および配列番号81からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖;ならびに
前記抗原結合タンパク質の前記可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにおいて1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有するその任意の変種、を含む、
組換え抗原結合タンパク質。
[態様5]
前記可変軽鎖が、配列番号7に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ前記可変重鎖が、配列番号8に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み;かつその任意の変種が、前記抗原結合タンパク質の前記可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにおいて1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有する、態様4に記載の組換え抗原結合タンパク質。
[態様6]
前記可変軽鎖が、配列番号27に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ前記可変重鎖が、配列番号28に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み;かつその任意の変種が、前記抗原結合タンパク質の前記可変軽鎖または可変重鎖領域のいずれかにおいて1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有する、態様4に記載の組換え抗原結合タンパク質。
[態様7]
前記結合タンパク質がTrkA受容体へのNGFの結合を阻害する、態様1~6のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質。
[態様8]
前記結合タンパク質がNGF関連障害を低減または除去する、態様1~7のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質。
[態様9]
前記NGF関連障害が、心臓血管疾患、アテローム性動脈硬化症、肥満症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、疼痛および炎症からなる群から選択される、態様8に記載の抗原結合タンパク質。
[態様10]
前記NGF関連障害が疼痛である、態様9に記載の抗原結合タンパク質。
[態様11]
前記NGF関連障害が疼痛障害であり、かつ変形性関節症疼痛、関節リウマチ疼痛、手術および術後疼痛、切開疼痛、全身性炎症疼痛、がん疼痛、外傷からの疼痛、神経障害性
疼痛、神経疼痛、糖尿病性ニューロパチー疼痛、リウマチ性疾患と関連付けられる疼痛、筋骨格疾患と関連付けられる疼痛、内臓疼痛、ならびに胃腸疼痛からなる群から選択される、態様10に記載の抗原結合タンパク質。
[態様12]
前記NGF関連障害が変形性関節症疼痛を含む、態様11に記載の抗原結合タンパク質。
[態様13]
前記結合タンパク質が、モノクローナル抗体;キメラ抗体、単鎖抗体、四量体抗体、四価抗体、多重特異性抗体、ドメイン特異性抗体、ドメイン欠失抗体、融合タンパク質、ScFc融合タンパク質、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)断片、Fv断片、ScFv断片、Fd断片、単一ドメイン抗体、dAb断片、小モジュラー免疫医薬(SMIP)、ナノボディ、およびIgNAR分子からなる群から選択される、態様1~12のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質。
[態様14]
モノクローナル抗体である、態様13に記載の抗原結合タンパク質。
[態様15]
前記モノクローナル抗体が、イヌモノクローナル抗体、イヌ化モノクローナル抗体、ネコモノクローナル抗体、ネコ化モノクローナル抗体、ヒトモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体、ウマモノクローナル抗体またはウマ化モノクローナル抗体である、態様14に記載の抗原結合タンパク質。
[態様16]
治療有効量の態様1~15のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質および薬学的に許容される担体を含む、医薬または獣医学的組成物。
[態様17]
対象における疼痛の治療において使用するための、態様18に記載の医薬または獣医学的組成物。
[態様18]
疼痛が、変形性関節症疼痛、関節リウマチ疼痛、手術および術後疼痛、切開疼痛、全身性炎症疼痛、がん疼痛、外傷からの疼痛、神経障害性疼痛、神経疼痛、糖尿病性ニューロパチー疼痛、リウマチ性疾患と関連付けられる疼痛、筋骨格疾患と関連付けられる疼痛、内臓疼痛、ならびに胃腸疼痛からなる群から選択される、態様19に記載の医薬組成物。
[態様19]
疼痛が変形性関節症疼痛を含む、態様18に記載の医薬組成物。
[態様20]
疼痛が手術および術後疼痛を含む、態様18に記載の医薬組成物。
[態様21]
疼痛ががん疼痛を含む、態様18に記載の医薬組成物。
[態様22]
イヌ、ネコ、ウマまたはヒトにおいて使用するための、態様16~21のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[態様23]
イヌにおいて使用するための、態様22に記載の医薬組成物。
[態様24]
ネコにおいて使用するための、態様22に記載の医薬組成物。
[態様25]
態様1~15のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質を産生する宿主細胞。
[態様26]
態様1~15のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質をコードする核酸配列を含む単離された核酸。
[態様27]
態様26に記載の核酸配列を含むベクター。
[態様28]
態様27に記載のベクターを含む宿主細胞。
[態様29]
態様26に記載の核酸を含む宿主細胞。
[態様30]
態様1~15のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質を産生する方法であって、前記抗原結合タンパク質の産生を結果としてもたらす条件下で態様26、29または30のいずれか1項に記載の宿主細胞を培養することと、前記宿主細胞または前記宿主細胞の培養培地から前記抗原結合タンパク質を単離することと、を含む、方法。
[態様31]
NGF関連障害について対象を治療する方法であって、前記対象に治療有効量の態様16に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
[態様32]
前記NGF関連障害が、心臓血管疾患、アテローム性動脈硬化症、肥満症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、疼痛および炎症からなる群から選択される、態様31に記載の方法。
[態様33]
前記NGF関連障害が疼痛を含む、態様32に記載の方法。
[態様34]
前記NGF関連障害が疼痛障害であり、かつ変形性関節症疼痛、関節リウマチ疼痛、手術および術後疼痛、切開疼痛、全身性炎症疼痛、がん疼痛、外傷からの疼痛、神経障害性疼痛、神経疼痛、糖尿病性ニューロパチー疼痛、リウマチ性疾患と関連付けられる疼痛、筋骨格疾患と関連付けられる疼痛、内臓疼痛、ならびに胃腸疼痛からなる群から選択される、態様33に記載の方法。
[態様35]
前記NGF関連障害が変形性関節症疼痛を含む、態様34に記載の方法。
[態様36]
前記NGF関連障害が手術および術後疼痛を含む、態様34に記載の方法。
[態様37]
前記NGF関連障害ががん疼痛を含む、態様34に記載の方法。
[態様38]
前記対象に態様17に記載の医薬組成物を投与することにより、対象においてNGF活性を阻害する方法。
[態様39]
前記対象が、イヌ、ネコ、ヒト、およびウマからなる群から選択される、態様31~38のいずれか1項に記載の方法。
[態様40]
前記対象がイヌを含む、態様39に記載の方法。
[態様41]
前記対象がネコを含む、態様39に記載の方法。
[態様42]
前記対象がヒトを含む、態様39に記載の方法。