(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045336
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼを阻害するための医薬組成物と方法、及びその適応
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4245 20060101AFI20240326BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240326BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240326BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240326BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240326BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240326BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240326BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240326BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240326BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20240326BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240326BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
A61K31/4245
A61K45/00
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K39/395 U
A61K39/395 T
A61K9/20
A61K47/26
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/04
A61K47/12
A61P35/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024010283
(22)【出願日】2024-01-26
(62)【分割の表示】P 2021147427の分割
【原出願日】2016-11-04
(31)【優先権主張番号】62/250,968
(32)【優先日】2015-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505193450
【氏名又は名称】インサイト・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】INCYTE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナスワミー・イェレスワラム
(72)【発明者】
【氏名】ジャック・グオエン・シ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】がんとその他の障害の治療に有用である、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼを阻害するための医薬組成物を提供する。
【解決手段】患者のがんの治療方法であって、免疫チェックポイント分子インヒビターと、1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物と組み合わせて、下記の化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩と、1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物を前記患者に投与することを含む治療方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者のがんの治療方法であって、免疫チェックポイント分子インヒビターと、1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物と組み合わせて、下記の化合物1
【化1】
またはその製薬学的に許容可能な塩と、1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物を前記患者に投与することを含み、前記治療が、定常状態で、約50%以上のI
minまたは約70%以上のI
avgを実現する投与レジメンを含む前記方法。
【請求項2】
患者のがんの治療方法であって、免疫チェックポイント分子インヒビターと、1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物と組み合わせて、下記の化合物1
【化2】
またはその製薬学的に許容可能な塩と、1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物を前記患者に投与することを含み、前記治療が、定常状態で、
(3)約0.10μM~約10μMのC
maxと、約0.01μM~約2.0μMのC
minと、約1時間~約6時間のT
maxと、約1μM×h~約50μM×hのAUC
0-τと、
(4)約50%以上のI
minまたは約70%以上のI
avg
を実現する投与レジメンを含む前記方法。
【請求項3】
前記Iminが、約50%~約80%、約50%~約70%または約50%~約60%である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記Iminが、約50%~約60%である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記Iavgが、約70%~約90%または約70%~約80%である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記Iavgが、約70%~約80%である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記免疫チェックポイント分子インヒビターが、ペムブロリズマブである、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記投与レジメンが、遊離型換算で約25mg~約300mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回、経口投与することと、ペムブロリズマブを21日おきに投与することとを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記投与レジメンが、遊離塩基換算で約100mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を含む投与レジメンを1日に2回行い、それにより、定常状態で、約50%以上のIminまたは約70%以上のIavgを実現する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記投与レジメンが、遊離塩基換算で約100mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回投与することを含み、それにより、定常状態で、
(1)約0.5μM~約2.0μMのCmaxと、約2時間のTmaxと、約4μM×h~約7μM×hのAUC0-τと、
(2)約50%以上のIminまたは約70%以上のIavg
を実現する、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
患者のがんの治療方法であって、下記の化合物1
【化3】
またはその製薬学的に許容可能な塩と、1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物を前記患者に投与することを含み、前記治療が、遊離型換算で約25mg~約700mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回、経口投与することを含む投与レジメンを含み、その投与レジメンによって、定常状態で、約0.10μM~約10μMのC
maxと、約0.01μM~約2.0μMのC
minと、約1時間~約6時間のT
maxと、約1μM×h~約50μM×hのAUC
0-τを実現する前記方法。
【請求項12】
前記Cmaxが、約0.20μM~約8.0μM、約0.30μM~約7.0μM、約1.0μM~約7.0μM、約1.0μM~約6.0μM、約1.0μM~約5.0μM、約1.0μM~約4.0μMまたは約1.0μM~約3.0μMである、請求項2~8及び10~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記Cmaxが、約1.0μM~約3.0μMである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記Tmaxが、約1時間~約5時間である、請求項2~8及び10~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記Tmaxが、約2時間~約3時間である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記Tmaxが、約2時間である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記AUC0-τが、約1μM×h~約40μM×h、約1μM×h~約36μM×h、1μM×h~約34μM×h、約1μM×h~約30μM×h、約1μM×h~約20μM×h、約1μM×h~約10μM×h、約5μM×h~約15μM×hまたは約5μM×h~約10μM×hである、請求項2~8及び10~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記AUC0-τが、約4μM×h~約10μM×hである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記AUC0-τが、約4μM×h~約6μM×hである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記Cminが、約0.01μM~約2μMまたは約0.025μM~約0.5μMである、請求項2~8及び10~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
患者のがんの治療方法であって、下記の化合物1
【化4】
またはその製薬学的に許容可能な塩と、1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物を前記患者に投与することを含み、前記治療が、遊離型換算で約25mg~約700mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回、経口投与することを含む投与レジメンを含む前記方法。
【請求項22】
前記投与レジメンが、遊離型換算で約50mg~約100mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回、経口投与することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記投与レジメンが、遊離型換算で約50mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回、経口投与することを含む、請求項21に記載の方法
【請求項24】
前記投与レジメンが、遊離型換算で約100mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回、経口投与することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記投与レジメンが、遊離型換算で約100mg~約700mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回、経口投与することを含む、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記投与レジメンが、遊離型換算で約100mg~約400mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回、経口投与することを含む、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記投与レジメンが、遊離型換算で約100mg~約300mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回、経口投与することを含む、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
患者のがんの治療方法であって、下記の化合物1
【化5】
またはその製薬学的に許容可能な塩と、1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物を前記患者に投与することを含み、前記治療が、遊離型換算で約100mg~約300mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回、経口投与することを含む投与レジメンを含み、前記投与レジメンによって、絶食個体の定常状態での血液血漿中トラフ濃度が、IDO1のIC
50以上となるか、または絶食個体の定常状態での12時間間隔の平均血液血漿中濃度が、IDO1のIC
90以上となる前記方法。
【請求項29】
前記投与レジメンが、遊離塩基換算で約100mg、約200mgまたは約300mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回投与することを含む、請求項1~21及び28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記投与レジメンが、遊離塩基換算で約100mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回投与することを含む、請求項1~21及び28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記投与レジメンが、遊離塩基換算で約200mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回投与することを含む、請求項1~21及び28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記投与レジメンが、遊離塩基換算で約300mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回投与することを含む、請求項1~21及び28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記各組成物が、錠剤として調合されている、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記投与レジメンが、遊離塩基換算で約50mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回投与することを含み、それにより、定常状態で、約0.1μM~約1.0μMのCmaxと、約2時間のTmaxと、約1μM×h~約3μM×hのAUC0-τを実現する、請求項2または3に記載の方法。
【請求項35】
前記投与レジメンが、遊離塩基換算で約100mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回投与することを含み、それにより、定常状態で、約0.5μM~約2.0μMのCmaxと、約2時間のTmaxと、約4μM×h~約7μM×hのAUC0-τをもたらす、請求項2または3に記載の方法。
【請求項36】
前記投与レジメンが、遊離塩基換算で約300mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回投与することを含み、それにより、定常状態で、約1.0μM~約3.0μMのCmaxと、約2のTmaxと、約8μM×h~約10μM×hのAUC0-τをもたらす、請求項2または3に記載の方法。
【請求項37】
前記患者が、絶食状態である、請求項1~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記賦形剤が、ラクトース一水和物、微結晶性セルロース、ポビドン、クロスカルメロースナトリウム、コロイド状二酸化ケイ素及びマグネシウムステアレートから選択されている、請求項1~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
ラクトース一水和物が、前記組成物の約20重量%~約35重量%または約24重量%~約32重量%の量で存在している、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
微結晶性セルロースが、前記組成物の約20重量%~約35重量%または約22重量%~約33重量%の量で存在している、請求項38または39に記載の方法。
【請求項41】
ポビドンが、前記組成物の約0.5重量%~約1.0重量%の量で存在している、請求項38~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
ポビドンが、前記組成物の約0.8重量%の量で存在している、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
クロスカルメロースナトリウムが、前記組成物の約1.0重量%~約10.0重量%の量で存在している、請求項38~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
クロスカルメロースナトリウムが、前記組成物の約3重量%または約10重量%の量で存在している、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
コロイド状二酸化ケイ素が、前記組成物の約0.1重量%~約1.0重量%の量で存在している、請求項38~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
コロイド状二酸化ケイ素が、前記組成物の約0.6重量%または約0.7重量%の量で存在している、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
マグネシウムステアレートが、前記組成物の約0.1重量%~約1.0重量%の量で存在している、請求項38~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
マグネシウムステアレートが、前記組成物の約0.6重量%の量で存在している、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記がんが、大腸がん、膵臓がん、乳がん、前立腺がん、肺がん、脳腫瘍,卵巣がん、子宮頸がん、睾丸がん、腎臓がん、頭頸部がん、リンパ腫及び白血病である、請求項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記がんが、固形腫瘍である、請求項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記がんが、メラノーマ、非小細胞肺癌、尿生殖器(GU)管の移行上皮癌、腎細胞がん、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)、子宮内膜腺癌、頭頚部扁平上皮癌(SCCHN)、子宮体がん、胃がん、膵管腺癌、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)または卵巣がん(OC)である、請求項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
1つ以上の免疫チェックポイント分子インヒビターを投与することをさらに含む、請求項1~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記免疫チェックポイント分子インヒビターが、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、TIM3、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4及び/またはTGFRβのインヒビターである、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記免疫チェックポイント分子インヒビターが、抗PD1抗体、抗PD-L1抗体または抗CTLA-4抗体である、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記抗PD1抗体が、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピジリズマブ、SHR-1210またはAMP-224である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記抗PD1抗体が、ペムブロリズマブである、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記ペムブロリズマブを3週間おきに投与する、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記ペムブロリズマブを約2mg/kgで投与する、請求項56または57に記載の方法。
【請求項59】
前記免疫チェックポイント分子インヒビターが、抗PD-L1抗体である、請求項54に記載の方法。
【請求項60】
前記抗PD-L1抗体が、BMS-935559、MEDI4736、MPDL3280AまたはMSB0010718Cである、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記免疫チェックポイント分子インヒビターが、抗CTLA-4抗体である、請求項54に記載の方法。
【請求項62】
前記抗CTLA-4抗体が、イピリムマブである、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
患者のメラノーマの治療方法であって、ペムブロリズマブと1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物と組み合わせて、下記の化合物1
【化6】
またはその製薬学的に許容可能な塩と、1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物を前記患者に投与することを含み、前記治療が、遊離型換算で約25mg~約300mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回、経口投与することと、ペムブロリズマブを3週間おきに投与することを含む投与レジメンを含む前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2016年11月4日に提出された米国特許仮出願第62/250,968号(参照により、その全体が本明細書に援用される)に基づく優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼインヒビターの医薬組成物に対するものであり、がんとその他の障害の治療に有用である。
【背景技術】
【0003】
トリプトファン(Trp)は、タンパク質と、ナイアシンと、神経伝達物質5-ヒドロキシトリプタミン(セロトニン)の生合成に必要な必須アミノ酸である。酵素のインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(INDO、IDOまたはIDO1としても知られている)は、L-トリプトファンがN-ホルミル-キヌレニンに分解される際の第一段階かつ律速段階を触媒する。ヒト細胞では、IDO活性に起因する、Trpの枯渇は、インターフェロンγ(IFN-γ)誘導性の顕著な抗菌エフェクター機構である。IFN-γの刺激により、IDOの活性化が誘導されて、Trpの枯渇に至ることにより、Trp依存性の細胞内病原体(Toxoplasma gondii及びChlamydia trachomatisなど)の成長が阻止される。IDO活性には、多くの腫瘍細胞に対する抗増殖作用もあり、インビボにおいて、同種腫瘍の拒絶中に、IDOの誘導が観察されており、腫瘍の拒絶プロセスにおいて、この酵素が役割を果たし得ることが示されている(Daubener,et al.,1999,Adv.Exp.Med.Biol.,467:517-24、Taylor,et al.,1991,FASEB J.,5:2516-22)。
【0004】
IDO活性のアップレギュレーションを通じて、末梢血リンパ球(PBL)と共培養したHeLa細胞が、免疫抑制性の表現型を得ることが観察されている。インターロイキン-2(IL2)で処理すると、PBLの増殖が低下することは、PBLによるIFNGの分泌に応答して、腫瘍細胞によって放出されるIDOに起因すると考えられた。この作用は、特異的なIDOインヒビターの1-メチル-トリプトファン(1MT)による処理によって逆転した。腫瘍細胞におけるIDO活性が、抗腫瘍応答を低下させる役割を果たし得ることが提示された(Logan,et al.,2002,Immunology,105:478-87)。
【0005】
最近では、Trpの枯渇が免疫を調節する役割に、大きな注目が集まっている。いくつかの系統の証拠によって、IDOが、免疫寛容の誘導に関与することが示唆されている。哺乳動物の妊娠、腫瘍耐性、慢性感染症及び自己免疫疾患の研究によって、IDOを発現している細胞が、T細胞の応答を抑制して、寛容を促すことができることが示されている。細胞性免疫の活性化を伴う疾患と障害(感染症、悪性腫瘍、自己免疫疾患及びAIDSなど)と、妊娠中において、Trpの異化の加速が観察されている。例えば、自己免疫疾患では、IFNレベルの向上と、Trp尿代謝産物のレベルの上昇が観察されており、自己免疫疾患で見られる、Trpの全身または局所的な枯渇は、それらの疾患の悪化と、るいそう症状と関連し得ると仮定されている。この仮定の裏付けとして、関節炎の関節滑液から単離した細胞で、高レベルのIDOが観察された。IFNは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)患者でも増大し、IFNレベルの上昇は、予後の悪化と関連付けられている。したがって、IDOは、HIV感染によって慢性的に誘導されるとともに、日和見感染によってさらに増大することと、Trpの慢性的な喪失により、AIDS患者の悪液質、認知症及び下痢、ならびに場合によっては免疫抑制に関与する機構が開始されることが提示された(Brown,et al.,1991,Adv.Exp.Med.Biol.,294:425-35)。この目的においては、HIVのマウスモデルにおいて、IDOの阻害により、ウイルス特異的T細胞のレベルを向上でき、それに付随して、ウイルスに感染したマクロファージの数を減少させることができることが最近示された(Portula et al.,2005,Blood,106:2382-90)。
【0006】
IDOは、子宮において着床時の拒絶反応を防止する免疫抑制プロセスで役割を果たすと考えられている。妊娠中には、遺伝的に異種の哺乳動物の受胎産物が、組織移植免疫によって予測される現象をすり抜けて生き延びることが40年前よりも以前に観察された(Medawar,1953,Symp.Soc.Exp.Biol.7:320-38)。母体と胎児の解剖学的分離と、胎児の抗原的未熟性では、胎児同種移植片が生き延びることを完全には説明できない。最近は、母体の免疫学的寛容に注目が集まっている。正常な妊娠において、IDOが、ヒト合胞体栄養細胞によって発現され、全身のトリプトファン濃度が低下するので、胎児同種移植片の免疫学的拒絶反応を防止するには、母体と胎児の界面でのIDOの発現が必要であるという仮説が立てられた。この仮説を調べるために、妊娠マウス(同系または同種異系の胎児を妊娠しているマウス)を1MTに暴露したところ、すべての同種異系群で、T細胞誘導性の迅速な拒絶反応が観察された。すなわち、トリプトファンの異化によって、哺乳動物の受胎産物は、T細胞活性を抑制し、拒絶反応から自己を防衛すると見られ、マウスの妊娠中に、トリプトファンの異化をブロックすると、母体T細胞が、胎児同種移植拒絶反応を引き起こすことができるようになる(Munn,et al.,1998,Science,281:1191-3)。
【0007】
大半のヒト腫瘍が、IDOを構成的に発現するという観察と、免疫原性のマウス腫瘍細胞によるIDOの発現によって、免疫前のマウスによる拒絶反応が防止されるという観察によって、IDOによるトリプトファンの分解に基づく腫瘍免疫耐性機構のさらなるエビデンスがもたらされている。この作用は、腫瘍部位における特異的T細胞の集積の欠損を伴うとともに、顕著な毒性のない状態で、IDOインヒビターによってマウスを全身処理することによって、部分的に逆転できる。したがって、がん患者での治療用ワクチンの接種の効能は、IDOインヒビターの同時投与によって向上し得ることが示唆された(Uyttenhove et al.,2003,Nature Med.,9:1269-74)。IDOインヒビターの1-MTは、化学療法剤と相乗作用して、マウスにおける腫瘍の成長を低減できることも示されており、これにより、IDOを阻害することで、従来の細胞障害性療法の抗腫瘍活性を増強し得ることが示唆されている(Muller et al.,2005,Nature Med.,11:312-9)。
【0008】
腫瘍に対する免疫学的不応答に寄与する機構の1つは、寛容原性の宿主APCによる腫瘍抗原の提示である可能性がある。CD123(IL3RA)とCCR6を共発現しているとともに、T細胞の増殖を阻害するヒトIDO発現抗原提示細胞(APC)のサブセットについても説明されている。成熟CD123陽性樹状細胞も、未熟CD123陽性樹状細胞も、T細胞活性を抑制したとともに、このIDO抑制活性は、1MTによってブロックされた(Munn,et al.,2002,Science,297:1867-70)。マウス腫瘍流入リンパ節(TDLN)は、免疫抑制レベルのIDOを構成的に発現する形質細胞様樹状細胞(pDC)のサブセットを含むことも示されている。0.5%のリンパ節細胞しか含まないにも関わらず、インビトロにおいて、これらのpDCは、pDC自体の提示した抗原に対するT細胞応答を強力に抑制したとともに、優性な形で、非抑制性APCの提示した第三の抗原に対するT細胞応答も抑制した。pDC集団では、機能的なIDO媒介性サプレッサー活性の大半は、B細胞系列マーカーCD19を発現しているpDCの新規サブセットと分離した。したがって、TDLNにおけるpDCによるIDO媒介性の抑制により、宿主の抗腫瘍T細胞応答を強力に抑制する局所微小環境が作られるという仮説が立てられた(Munn,et al.,2004,J.Clin.Invest.,114(2):280-90)。
【0009】
IDOは、トリプトファン、セロトニン及びメラトニンのインドール部分を分解し、神経活性代謝物と免疫調節代謝物(併せて、キヌレニンとして知られている)の産生を開始させる。樹状細胞(DC)によって発現されたIDOは、トリプトファンを局所的に枯渇させて、アポトーシス促進性のキヌレニンを増大させることによって、T細胞の増殖と生存に大きな作用を及ぼすことができる。DCにおけるIDOの誘導は、制御性T細胞によって駆動される除去免疫寛容の一般的機構である可能性がある。このような寛容原性応答は、様々な生理病理学的条件で機能すると予測できるので、トリプトファンの代謝とキヌレニンの産生は、免疫系と神経系との重要なインターフェースを表し得る(Grohmann,et al.,2003,Trends Immunol.,24:242-8)。持続的な免疫活性化の状態では、遊離血清中Trpのアベイラビリティが低下し、セロトニンの産生が低下する結果として、セロトニン機能にも影響が及び得る(Wirleitner,et al.,2003,Curr.Med.Chem.,10:1581-91)。
【0010】
興味深いことに、インターフェロン-αの投与により、神経精神病学的な副作用(抑うつ症状及び認知機能の変化など)が誘導されることが観察されている。セロトニンの神経伝達に対する直接的な影響は、これらの副作用の一因であり得る。加えて、IDOの活性化により、セロトニン(5-HT)の前駆体であるトリプトファンのレベルが低下するので、IDOは、中枢5-HTの合成を低減することによって、これらの神経精神病学的な副作用において役割を果たすと見られる。さらに、3-ヒドロキシ-キヌレニン(3-OH-KYN)及びキノリン酸(QUIN)のようなキヌレニン代謝物には、脳機能に対する有毒作用がある。3-OH-LYNは、活性酸素種(ROS)の産生を増大させることによって、酸化ストレスを発生させることができ、QUINは、海馬N-メチル-D-アスパルテート(NMDA)レセプターの過剰刺激をもたらし、それにより、アポトーシスと海馬萎縮を引き起こすことがある。ROSの過剰産生と、NMDAの過剰刺激を原因とする海馬萎縮はいずれも、抑うつ症状と関連付けられている(Wichers and Maes,2004,J.Psychiatry Neurosci.,29:11-17)。したがって、IDO活性は、抑うつ症状において役割を果たすと見られる。
【0011】
免疫抑制、腫瘍耐性及び/または拒絶、慢性感染症、HIV感染、AIDS(悪液質、認知症及び下痢などの発現症状を含む)、自己免疫疾患または疾患(関節リウマチなど)、ならびに子宮における免疫学的寛容と、着床時の拒絶反応の防止におけるIDOの役割を示している実験データに鑑み、IDO活性を阻害することによって、トリプトファンの分解を抑制することを目的とする治療剤が望まれている。妊娠、悪性腫瘍またはウイルス(HIVなど)により、T細胞が抑制されているときに、IDOインヒビターを用いて、T細胞を活性化できるので、T細胞の活性化を増強できる。IDOの阻害は、神経学的または神経精神病学的な疾患または障害(抑うつなど)を罹患している患者にとっても、重要な治療戦略であり得る。
【0012】
上記のようなIDO関連疾患を治療または予防する目的で、小分子IDOインヒビターの開発が行われている。例えば、オキサジアゾール及びその他の複素環式IDOインヒビターが、US2006/0258719とUS2007/0185165に報告されている。国際公開第99/29310号には、T細胞媒介性免疫の改変方法であって、1-メチル-DL-トリプトファン、p-(3-ベンゾフラニル)-DL-アラニン、p-[3-ベンゾ(b)チエニル]-DL-アラニン及び6-ニトロ-L-トリプトファン)などのIDOインヒビターを用いて、トリプトファン及びトリプトファン代謝物の局所的な細胞外濃度を改変することを含む方法が報告されている(Munn、1999年)。WO03/087347(欧州特許第1501918号としても公開されている)には、T細胞寛容を向上または低下させる抗原提示細胞の作製方法が報告されている(Munn、2003年)。インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害活性を有する化合物は、WO2004/094409にさらに報告されており、米国特許出願公開第2004/0234623号は、他の治療法と組み合わせて、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼインヒビターを投与することによって、がんまたは感染症の対象を治療する方法に対するものである。IDOインヒビターの例は、4-({2-[(アミノスルホニル)アミノ]エチル}アミノ)-N-(3-ブロモ-4-フルオロフェニル)-N’-ヒドロキシ-1,2,5-オキサジアゾール-3-カルボキシイミドアミドであり、このIDOインヒビターは、米国特許第8,088,803号に説明されている。依然として、IDO関連疾患の治療に有用である好適な特性を有する新たな医薬組成物に対するニーズが存在する。本明細書に記載されている本発明は、この目的に対するものである。
【発明の概要】
【0013】
本発明はとりわけ、患者のがんの治療方法であって、下記の化合物1
【化1】
またはその製薬学的に許容可能な塩と、1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物を前記患者に投与することを含み、その治療が、遊離型換算で約25mg~約700mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回、経口投与することを含む投与レジメンを含む方法を提供する。
【0014】
本発明は、患者のがんの治療方法であって、化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩と、1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物を前記患者に投与することを含み、その治療が、定常状態で、約50%以上のIminまたは約70%以上のIavgを実現する投与レジメンを含む方法も提供する。
【0015】
本発明は、患者のがんの治療方法であって、化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩と、1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物を前記患者に投与することを含み、その治療が、定常状態で、
(1)約0.10μM~約10μMのCmaxと、約0.01μM~約2.0μMのCminと、約1時間~約6時間のTmaxと、約1μM×h~約50μM×hのAUC0-τと、
(2)約50%以上のIminまたは約70%以上のIavg
を実現する投与レジメンを含む方法も提供する。
【0016】
本発明は、患者のがんの治療方法であって、下記の化合物1
【化2】
またはその製薬学的に許容可能な塩と、1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物を含む前記患者に投与することを含み、その治療が、遊離塩基換算で、約25mg~約700mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回、経口投与することを含む投与レジメンを含み、その投与レジメンが、定常状態で、約0.10μM~約10μのC
maxと、約0.01μM~約2.0μMのC
minと、約1時間~約6時間のT
maxと、約1μM×h~約50μM×hのAUC
0-τを実現する方法も提供する。
【0017】
本発明は、患者のがんの治療方法であって、本発明で提供する1つ以上の経口用医薬組成物と、第2の薬剤(1つ以上の免疫チェックポイント分子インヒビターなど)を前記患者に投与することを含む方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】化合物1の結晶形態の特徴を示すXRPDパターンを示している。
【
図2】化合物1の結晶形態の特徴を示すDSCサーモグラムを示している。
【
図3】化合物1の結晶形態の特徴を示すTGAデータを示している。
【
図4】1回目の投与後における化合物1の用量別血漿中濃度のグラフを示している。
【
図5】定常状態での化合物1の用量別血漿中濃度のグラフを示している。
【
図6】C1D8及びC2D1における化合物1の血漿中濃度のグラフを示している。
【
図7】C1D8における化合物1の用量比例性のC
maxのグラフを示している(パート1におけるすべてのコホート)。
【
図8】C1D8における化合物1の用量比例性のAUCのグラフを示している(パート1におけるすべてのコホート)。
【
図9】様々な濃度におけるIDO1阻害率予測値のウォーターフォールプロットを示している(N=58)。
【
図10】100mg BIDの服用を行った被験者において、パート1とパート2で、1回目の投与を行った後の化合物1の血漿中濃度のグラフを示している。
【
図11】100mg BIDの服用を行った被験者における、パート1とパート2での定常状態(C1D8上)における化合物1の血漿中濃度のグラフを示している。
【
図12】100mg BIDの服用を行った被験者における、C1D8及びC2D1での化合物1の血漿中トラフ濃度グラフを示している。
【
図13】様々なタイプの腫瘍における、定常状態での化合物1のC
maxのボックスプロットを示している。
【
図14】様々なタイプの腫瘍における、定常状態での化合物1のAUC
tauのボックスプロットを示している。
【
図15】定常状態でのIDO1阻害率予測値のウォーターフォールプロットを示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
使用方法
本発明はとりわけ、患者のがんの治療方法であって、IDOインヒビターの4-({2-[(アミノスルホニル)アミノ]エチル}アミノ)-N-(3-ブロモ-4-フルオロフェニル)-N’-ヒドロキシ-1,2,5-オキサジアゾール-3-カルボキシイミドアミド(化合物1)またはその製薬学的に許容可能な塩と、1つ以上の賦形剤とをそれぞれが含む1つ以上の経口用医薬組成物を前記患者に投与することを含み、前記1つ以上の医薬組成物が、がんなどの障害の治療に有用である、上記化合物の特定の薬物動態プロファイルをもたらす方法を提供する。化合物1の構造を以下に示す。
【化3】
【0020】
構造図において、
【化4】
という波線によって表されている結合は、その構造が、シスもしくはトランス異性体、またはシス異性体とトランス異性体とのいずれかの比率の混合物を表していることを示すように意図されている。
【0021】
薬物動態(PK)により、当業者は、薬物を投与した時点から、薬物が体内から完全に消失する時点までの薬物の動きをモニタリング可能になる。薬物動態によって、投与後に、体が、吸収と分布の機構を通じて、特定の薬物に影響を及ぼす様子と、体内での物質の化学的変化と、薬物代謝物の排泄の作用と経路が示される。薬物の動態特性は、吸収速度に影響を及ぼし得る投与部位、調合、溶解性プロファイル、飽食/絶食条件及び投与薬物の用量などの要素から影響を受けることがある。臨床でのPKモニタリングは概して、血漿中濃度を割り出すことによる。それらのデータは、信頼できるとともに、容易に得ることができるからである。薬物の血漿中濃度を割り出すことは、治療上の範囲(例えば、毒性濃度と治療濃度との差)を狭めるのを補助して、過剰摂取が原因で薬物が生じさせることのあるいずれかの副作用を軽減または最小限にできる。
【0022】
本明細書に記載されているような化合物1を、対象(ヒトの対象など)に投与できる組成物に調合して、がんの治療に有効な所望のPKプロファイルを実現させる。投与レジメン(例えば、化合物1を1日に2回投与するレジメン)によって、定常状態で、様々ながんの治療に有効であることができる約50%以上のIminまたは約70%以上のIavgを実現できる。概して、本発明の組成物を絶食状態で経口投与した後、化合物1のピーク血漿中濃度には、典型的には、投与から2時間で到達する。化合物1は、2.9時間という幾何平均終末動態半減期で消失する。本明細書に示されている実施例では、化合物1のCmaxとAUC0-τの向上が、用量に比例するレベル未満であることが示されている。高脂肪食によって、化合物1のTmax中央値は4時間延びたが、高脂肪食は、化合物1の血漿中暴露量を臨床上有意には変化させないので、化合物1は、食事にかかわらず投与してよい。
【0023】
インビボでは、化合物1除去の第1経路は、肝臓でのグルクロン酸抱合を介するものと考えられる。薬物の胆管排泄と腸内への再吸収によって、腸肝循環(EHC)が行われ、多くの場合、肝臓での抱合と腸内での脱抱合が行われる(Dobrinska,J Clin Pharmacol,1989;29:577-580)。特定の理論に束縛されるものではないが、グルクロニドが、化合物1の主な代謝物であることに基づき、EHCが、化合物1の動態に関与していると考えられる。化合物1の平均血漿中濃度プロファイルでは、二次ピークの明白なパターンは見られなかったが(例えば、実施例2を参照されたい)、血漿中濃度ピークが不明瞭であったり、濃度-時間プロファイルに二次スパイク波形が見られたり、または別段に、特に反復投与の後に、化合物1の血漿中濃度の低下が異常に遅かったりした被験個体がかなりいた。しかしながら、Tmaxの延長は、食物の刺激によって胆汁が小腸に排泄されて、それにより、化合物1のEHCが誘発される動きと一致していると見られる。観察された平均CL/F、Vz/F及びTmaxの値にあてはめられている、化合物1の1コンパートメントPKモデルを用いると、BID投与のシミュレーションによって、定常状態では、AUC0-τが、約8%上昇する必要があることが示唆され、この値は、実施例2で観察された、AUC0-τの33%の上昇よりもかなり低いことから、化合物が、線形の全身蓄積速度を上回って蓄積されることが示されている。有意なEHCを経た化合物では、観察されたt1/2の値を用いると、全身蓄積は、過少予測される傾向があり、蓄積に基づく「有効な」T1/2の算出の方が有意義である場合がある(Dobrinska,J Clin Pharmacol,1989;29:577-580)。AUCに基づく蓄積係数によって、「有効な」t1/2が約6時間であることが示唆されている。したがって、これらの観察に基づき、EHCは、化合物1の動態に関与していると考えられる。
【0024】
いくつかの実施形態では、本発明で提供するのは、患者のがんの治療方法であって、化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩と、1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物を前記患者に投与することを含み、その治療が、遊離型換算で約25mg~約700mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回、経口投与することを含む投与レジメンを含む方法である。
【0025】
いくつかの実施形態では、本発明で提供するのは、患者のがんの治療方法であって、化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩と、1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物を前記患者に投与することを含み、その治療が、定常状態で、約50%以上のIminまたは約70%以上のIavgを実現する投与レジメンを含む方法である。
【0026】
いくつかの実施形態では、本発明で提供するのは、患者のがんの治療方法であって、化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩と、1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物を前記患者に投与することを含み、その治療が、定常状態で、
(1)約0.10μM~約10μMのCmaxと、約0.01μM~約2.0μMのCminと、約1時間~約6時間のTmaxと、約1μM×h~約50μM×hのAUC0-τと、
(2)約50%以上のIminまたは約70%以上のIavg
を実現する投与レジメンを含む方法である。
【0027】
いくつかの実施形態では、本発明で提供するのは、患者のがんの治療方法であって、免疫チェックポイント分子インヒビターと、1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物と組み合わせて、化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩と、1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物を前記患者に投与することを含み、その治療が、定常状態で、約50%以上のIminまたは約70%以上のIavgを実現する投与レジメンを含む方法である。
【0028】
いくつかの実施形態では、本発明で提供するのは、患者のがんの治療方法であって、免疫チェックポイント分子インヒビターと、1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物と組み合わせて、化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩と、1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物を前記患者に投与することを含み、その治療が、定常状態で、
(1)約0.10μM~約10μMのCmaxと、約0.01μM~約2.0μMのCminと、約1時間~約6時間のTmaxと、約1μM×h~約50μM×hのAUC0-τと、
(2)約50%以上のIminまたは約70%以上のIavg
を実現する投与レジメンを含む方法である。
【0029】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント分子インヒビターは、ペムブロリズマブである。いくつかの実施形態では、投与レジメンは、遊離型換算で約25mg~約300mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回、経口投与することと、ペムブロリズマブを21日おきに投与することを含む。
【0030】
本発明はさらに、患者のがんの治療方法であって、化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩と、1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物を前記患者に投与することを含み、その治療が、遊離型換算で約50mg~約300mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回、経口投与することを含む投与レジメンを含み、その投与レジメンによって、絶食個体の定常状態での血液血漿中トラフ濃度が、IDO1のIC50以上となる方法を提供する。
【0031】
本発明はさらに、患者のがんの治療方法であって、化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩と、1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物を前記患者に投与することを含み、その治療が、遊離型換算で約50mg~約300mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回、経口投与することを含む投与レジメンを含み、その投与レジメンによって、絶食個体の定常状態での12時間間隔の平均血液血漿中濃度が、IDO1のIC90以上となる方法を提供する。
【0032】
本発明はさらに、患者のがんの治療方法であって、化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩と、1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物を前記患者に投与することを含み、その治療が、遊離型換算で約100mg~約300mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回、経口投与することを含む投与レジメンを含み、その投与レジメンによって、絶食個体の定常状態での血液血漿中トラフ濃度が、IDO1のIC50以上となる方法を提供する。
【0033】
本発明はさらに、患者のがんの治療方法であって、化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩と、1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物を前記患者に投与することを含み、その治療が、遊離型換算で約100mg~約300mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回、経口投与することを含む投与レジメンを含み、その投与レジメンによって、絶食個体の定常状態での12時間間隔の平均血液血漿中濃度が、IDO1のIC90以上となる方法を提供する。
【0034】
本発明はさらに、患者のがんの治療方法であって、化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩と、1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物を前記患者に投与することを含み、その治療が、遊離型換算で約100mg~約300mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回、経口投与することを含む投与レジメンを含み、その投与レジメンによって、絶食個体の定常状態での血液血漿中トラフ濃度が、IDO1のIC50以上となり、絶食個体の定常状態での12時間間隔の平均血液血漿中濃度が、IDO1のIC90以上となる方法を提供する。
【0035】
本発明はさらに、患者のがんの治療方法であって、化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩と、1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物を前記患者に投与することを含み、その治療が、遊離型換算で約100mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回、経口投与することを含む投与レジメンを含み、その投与レジメンによって、絶食個体の定常状態での血液血漿中トラフ濃度が、IDO1のIC50以上となり、絶食個体の定常状態での12時間間隔の平均血液血漿中濃度が、IDO1のIC90以上となる方法を提供する。
【0036】
本発明はさらに、患者のがんの治療方法であって、化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩と、1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物を前記患者に投与することを含み、その治療が、遊離型換算で約200mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回、経口投与することを含む投与レジメンを含み、その投与レジメンによって、絶食個体の定常状態での血液血漿中トラフ濃度が、IDO1のIC50以上となり、絶食個体の定常状態での12時間間隔の平均血液血漿中濃度が、IDO1のIC90以上となる方法を提供する。
【0037】
本発明はさらに、患者のがんの治療方法であって、化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩と、1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物を前記患者に投与することを含み、その治療が、遊離型換算で約300mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回、経口投与することを含む投与レジメンを含み、その投与レジメンによって、絶食個体の定常状態での血液血漿中トラフ濃度が、IDO1のIC50以上となり、絶食個体の定常状態での12時間間隔の平均血液血漿中濃度が、IDO1のIC90以上となる方法を提供する。
【0038】
本発明はさらに、患者のがんの治療方法であって、化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩と、1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物を前記患者に投与することを含み、その治療が、遊離型換算で約100mg~約300mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回、経口投与することを含む投与レジメンを含み、その投与レジメンによって、絶食個体の定常状態での血液血漿中トラフ濃度が、IDO1のIC50以上となるか、または絶食個体の定常状態での12時間間隔の平均血液血漿中濃度が、IDO1のIC90以上となる方法を提供する。
【0039】
本発明はさらに、患者のがんの治療方法であって、化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩と、1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物を前記患者に投与することを含み、その治療が、遊離型換算で約100mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回、経口投与することを含む投与レジメンを含み、その投与レジメンによって、絶食個体の定常状態での血液血漿中トラフ濃度が、IDO1のIC50以上となるか、または絶食個体の定常状態での12時間間隔の平均血液血漿中濃度が、IDO1のIC90以上となる方法を提供する。
【0040】
本発明はさらに、患者のがんの治療方法であって、化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩と、1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物を前記患者に投与することを含み、その治療が、遊離型換算で約200mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回、経口投与することを含む投与レジメンを含み、投与レジメンによって、絶食個体の定常状態での血液血漿中トラフ濃度が、IDO1のIC50以上となるか、または絶食個体の定常状態での12時間間隔の平均血液血漿中濃度が、IDO1のIC90以上となる方法を提供する。
【0041】
本発明はさらに、患者のがんの治療方法であって、化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩と、1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物を前記患者に投与することを含み、その治療が、遊離型換算で約300mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回、経口投与することを含む投与レジメンを含み、その投与レジメンによって、絶食個体の定常状態での血液血漿中トラフ濃度が、IDO1のIC50以上となるか、または絶食個体の定常状態での12時間間隔の平均血液血漿中濃度が、IDO1のIC90以上となる方法を提供する。
【0042】
いくつかの実施形態では、本発明で提供するのは、患者のがんの治療方法であって、化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩と、1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物を前記患者に投与することを含み、その治療が、遊離型換算で約25mg~約700mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回、経口投与することを含む投与レジメンを含み、その投与レジメンが、定常状態で、約0.10μM~約10μMのCmaxと、約0.01μM~約2.0μMのCminと、約1時間~約6時間のTmaxと、約1μM×h~約50μM×hのAUC0-τを実現する方法である。
【0043】
「投与レジメン」という用語が記載されている場合、本発明の方法は、1つ以上の医薬組成物を前記患者に投与することを伴ってよい。例えば、いくつかの実施形態では、本発明で提供する方法は、患者に1つ以上の医薬組成物を投与して、25mg~約700mgの用量を供給することを含む。例えば、400mgの用量を実現するには、遊離塩基換算で200mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩をそれぞれが含む2つの組成物を患者に投与してよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、Iminは、約50%~約80%、約50%~約70%または約50%~約60%である。例えば、Iminは、約50%~約60%である。
【0045】
いくつかの実施形態では、Iavgは、約70%~約90%または約70%~約80%である。例えば、Iavgは、約70%~約80%である。
【0046】
いくつかの実施形態では、Cmaxは、約0.20μM~約8.0μM、約0.30μM~約7.0μM、約1.0μM~約7.0μM、約1.0μM~約6.0μM、約1.0μM~約5.0μM、約1.0μM~約4.0μMまたは約1.0μM~約3.0μMである。
【0047】
いくつかの実施形態では、Cmaxは、約0.5μM~約7.0μM、約0.5μM~約6.0μM、約0.5μM~約5.0μM、約0.5μM~約4.0μMまたは約0.5μM~約3.0μMである。
【0048】
いくつかの実施形態では、Cmaxは、約1.0μM~約3.0μMである。いくつかの実施形態では、Cmaxは、約1.0μM、約2.0μM、約3.0μM、約4.0μM、約5.0μM、約6.0μMまたは約7.0μMある。いくつかの実施形態では、Cmaxは、約0.9μM~約1.6μMである。いくつかの実施形態では、Cmaxは、約1.2μMである。
【0049】
いくつかの実施形態では、Cminは、約0.01μM~約2.0μMである。別の実施形態では、Cminは、約0.025μM~約0.5μMである。
【0050】
いくつかの実施形態では、Tmaxは、約1時間~約4時間、約1時間~約3時間または約1時間~約2時間である。いくつかの実施形態では、Tmaxは、約2時間~約3時間である。いくつかの実施形態では、Tmaxは、約1時間~約2時間である。いくつかの実施形態では、Tmaxは、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間または約5時間である。いくつかの実施形態では、Tmaxは、約2時間である。
【0051】
いくつかの実施形態では、本発明で提供する方法は、排泄半減期(t1/2)が約2時間~約4時間である。いくつかの実施形態では、t1/2は、約2.5時間~約4時間である。別の実施形態では、t1/2は、約3.2時間である。
【0052】
いくつかの実施形態では、AUC0-τは、約1μM×h~約40μM×h、約1μM×h~約36μM×h、約1μM×h~約30μM×h、約1μM×h~約20μM×h、約1μM×h~約10μM×h、約5μM×h~約15μM×hまたは約5μM×h~約10μM×hである。
【0053】
いくつかの実施形態では、AUC0-τは、約4μM×h~約10μM×hである。いくつかの実施形態では、AUC0-τは、約4μM×h~約6μM×hである。いくつかの実施形態では、AUC0-τは、約4μM×h~約7μM×hである。いくつかの実施形態では、AUC0-τは、約8μM×h~約10μM×hである。いくつかの実施形態では、AUC0-τは、約4μM×h、約5μM×h、約6μM×h、約7μM×h、約8μM×h、約9μM×hまたは約10μM×hである。いくつかの実施形態では、AUC0-τは、約5μM×hである。いくつかの実施形態では、AUC0-τは、約3.5μM×h~約8μM×hである。いくつかの実施形態では、AUC0-τは、約5.5μM×hである。
【0054】
いくつかの実施形態では、投与レジメンは、遊離型換算で約50mg~約700mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を含む。いくつかの実施形態では、遊離塩基換算で約25mg~約400mgまたは約50mg~約400mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を含む投与レジメンを1日に2回行う。
【0055】
いくつかの実施形態では、遊離塩基換算で約25mg~約800mg、約25mg~約700mg、約25mg~約600mg、約25mg~約500mg、約25mg~約400mg、約25mg~約300mg、約25mg~約200mg、約25mg~約100mg、約100~約500mgまたは約100mg~約400mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を含む投与レジメンを1日に2回行う。
【0056】
いくつかの実施形態では、遊離塩基換算で約25mg~約400mgまたは約50mg~約400mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を含む投与レジメンを1日に2回行う。
【0057】
いくつかの実施形態では、遊離塩基換算で約50mg~約400mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を含む投与レジメンを1日に2回を行う。
【0058】
いくつかの実施形態では、遊離塩基換算で約200mg~約400mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を含む投与レジメンを1日に2回行う。
【0059】
いくつかの実施形態では、遊離塩基換算で約50mg~約200mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を含む投与レジメンを1日に2回行う。
【0060】
いくつかの実施形態では、投与レジメンは、遊離型換算で約50mg~約100mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回、経口投与することを含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、投与レジメンは、遊離型換算で約50mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回、経口投与することを含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、投与レジメンは、遊離型換算で約100mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回、経口投与することを含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、遊離型換算で約100mg~約700mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を含む投与レジメンを1日に2回、経口で行う。
【0064】
いくつかの実施形態では、遊離型換算で約100mg~約400mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を含む投与レジメンを1日に2回、経口で行う。
【0065】
いくつかの実施形態では、遊離型換算で約100mg~約300mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を含む投与レジメンを1日に2回、経口で行う。
【0066】
いくつかの実施形態では、遊離塩基換算で約25mg、約50mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mgまたは約700mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を含む投与レジメンを1日に2回行う。
【0067】
いくつかの実施形態では、遊離塩基換算で約25mg、約100mgまたは約300mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を含む投与レジメンを1日に2回行う。
【0068】
いくつかの実施形態では、遊離塩基換算で約100mg、約200mgまたは約300mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を含む投与レジメンを1日に2回行う。
【0069】
いくつかの実施形態では、遊離塩基換算で約100mgまたは約300mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を含む投与レジメンを1日に2回行う。
【0070】
いくつかの実施形態では、遊離塩基換算で約100mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を含む投与レジメンを1日に2回行う。
【0071】
いくつかの実施形態では、遊離塩基換算で約200mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を含む投与レジメンを1日に2回行う。
【0072】
いくつかの実施形態では、遊離塩基換算で約300mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を含む投与レジメンを1日に2回行う。
【0073】
いくつかの実施形態では、前記1つ以上の医薬組成物を1日に2回(BID)、前記患者に投与する。いくつかの実施形態では、前記1つ以上の医薬組成物を1日に1回(QD)、前記患者に投与する。いくつかの実施形態では、前記1つ以上の医薬組成物を1日に3回、1日に4回または1日に5回、前記患者に投与する。
【0074】
いくつかの実施形態では、各組成物は、経口投与に適している。いくつかの実施形態では、各組成物は、錠剤、カプセル剤、液体剤形または水溶液の剤形として調合されている。いくつかの実施形態では、各組成物は、錠剤として調合されている。いくつかの実施形態では、複数の錠剤を投与して、所望の用量を実現する。例えば、約300mgの錠剤と、約100mgの錠剤を対象に投与して、約400mgの用量を実現できる。いくつかの実施形態では、複数の錠剤を同時または順次に服薬する。
【0075】
いくつかの実施形態では、遊離塩基換算で約50mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を含む投与レジメンを1日に2回行い、定常状態で、約0.1μM~約1.0μMまたは約0.3μM~約1.3μMのCmaxと、約2時間のTmaxと、約1μM×h~約3μM×hのAUC0-τを実現する。
【0076】
いくつかの実施形態では、遊離塩基換算で約100mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を含む投与レジメンを1日に2回行い、定常状態で、約0.5μM~約2.0μMのCmaxと、約2時間のTmaxと、約4μM×h~約7μM×hのAUC0-τをもたらす。
【0077】
いくつかの実施形態では、遊離塩基換算で約300mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を含む投与レジメンを1日に2回行い、定常状態で、約1.0μM~約3.0μMのCmaxと、約2のTmaxと、約8μM×h~約10μM×hのAUC0-τをもたらす。
【0078】
いくつかの実施形態では、遊離塩基換算で約100mg~約300mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を含む投与レジメンを1日に2回行い、定常状態で、約50%以上のIminまたは約70%以上のIavgを実現する。
【0079】
いくつかの実施形態では、遊離塩基換算で約100mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を含む投与レジメンを1日に2回行い、定常状態で、約50%以上のIminまたは約70%以上のIavgを実現する。
【0080】
いくつかの実施形態では、賦形剤は、ラクトース一水和物、微結晶性セルロース、ポビドン、クロスカルメロースナトリウム、コロイド状二酸化ケイ素及びマグネシウムステアレートから選択されている。
【0081】
いくつかの実施形態では、ラクトース一水和物が、本発明で提供する組成物の約20重量%~約35重量%または約24重量%~約32重量%の量で存在している。いくつかの実施形態では、ラクトース一水和物は、約24重量%~約29重量%の量で存在している。いくつかの実施形態では、ラクトース一水和物は、約24重量%、約25重量%、約26重量%、約27重量%、約28重量%、約29重量%、約30重量%、約31重量%または約32重量%の量で存在している。いくつかの実施形態では、ラクトース一水和物は、約25重量%、約29重量%、約31重量%または約32重量%の量で存在している。いくつかの実施形態では、ラクトース一水和物は、約24.5重量%、約28.8重量%、約30.75重量%または約32.1重量%の量で存在している。
【0082】
いくつかの実施形態では、微結晶性セルロースが、本発明で提供する組成物の約20重量%~約35重量%または約22重量%~約33重量%の量で存在している。いくつかの実施形態では、微結晶性セルロースは、約22重量%、約23重量%、約24重量%、約25重量%、約26重量%、約27重量%、約28重量%、約29重量%、約30重量%、約31重量%、約32重量%または約33重量%の量で存在している。いくつかの実施形態では、微結晶性セルロースは、約22重量%、約24重量%または約33重量%の量で存在している。いくつかの実施形態では、微結晶性セルロースは、約22.0重量%、約24.2重量%または約32.8重量%の量で存在している。
【0083】
いくつかの実施形態では、ポビドンが、本発明で提供する組成物の約0.5重量%~約1.0重量%の量で存在している。いくつかの実施形態では、ポビドンは、約0.8重量%の量で存在している。
【0084】
いくつかの実施形態では、クロスカルメロースナトリウムが、本発明で提供する組成物の約1.0重量%~約10.0重量%の量で存在している。いくつかの実施形態では、クロスカルメロースナトリウムは、約3.2重量%または約9.6重量%の量で存在している。いくつかの実施形態では、クロスカルメロースナトリウムは、約3.2重量%の量で存在している。
【0085】
いくつかの実施形態では、コロイド状二酸化ケイ素が、本発明で提供する組成物の約0.1重量%~約1.0重量%の量で存在している。いくつかの実施形態では、コロイド状二酸化ケイ素は、約0.5重量%~1.0重量%の量で存在している。いくつかの実施形態では、コロイド状二酸化ケイ素は、約0.6重量%または約0.7重量%の量で存在している。
【0086】
いくつかの実施形態では、マグネシウムステアレートは、本発明で提供する組成物の約0.1重量%~約1.0重量%の量で存在している。いくつかの実施形態では、マグネシウムステアレートは、約0.6重量%の量で存在している。
【0087】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者のがんの治療方法であって、25mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩と、約31重量%~約32重量%のラクトース一水和物、約24重量%~約33重量%の微結晶性セルロース、約0.5重量%~約1.0重量%のポビドン、約1.0重量%~約10.0重量%のクロスカルメロースナトリウム、約0.1重量%~約1.0重量%のコロイド状二酸化ケイ素及び約0.1重量%~約1.0重量%のマグネシウムステアレートから選択した1つ以上の賦形剤とをそれぞれが含む1つ以上の経口用医薬組成物を前記患者に投与することを含む方法を提供する。
【0088】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者のがんの治療方法であって、100mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩と、約31重量%~約32重量%のラクトース一水和物、約24重量%~約33重量%の微結晶性セルロース、約0.1重量%~約1.0重量%のポビドン、約1.0重量%~約10.0重量%のクロスカルメロースナトリウム、約0.1重量%~約1.0重量%のコロイド状二酸化ケイ素及び約0.1重量%~約1.0重量%のマグネシウムステアレートから選択した1つ以上の賦形剤とをそれぞれが含む1つ以上の経口用医薬組成物を前記患者に投与することを含む方法を提供する。
【0089】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者のがんの治療方法であって、300mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩と、約24重量%~約29重量%のラクトース一水和物、約22重量%~約33重量%の微結晶性セルロース、約0.1重量%~約1.0重量%のポビドン、約1.0重量%~約10.0重量%のクロスカルメロースナトリウム、約0.5重量%~約1.0重量%のコロイド状二酸化ケイ素及び約0.1重量%~約0.6重量%のマグネシウムステアレートから選択した1つ以上の賦形剤とをそれぞれが含む1つ以上の経口用医薬組成物を前記患者に投与することを含む方法を提供する。
【0090】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者のメラノーマの治療方法であって、化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩と、1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物を前記患者に投与することを含み、その治療が、遊離型換算で約50mg~約700mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回、経口投与することと、1つ以上の免疫チェックポイント分子インヒビターとを含む投与レジメンを含む方法を提供する。
【0091】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者のメラノーマの治療方法であって、化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩と、1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物を前記患者に投与することを含み、その治療が、遊離型換算で約50mg~約300mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回、経口投与することと、ペムブロリズマブを3週間おきに投与することとを含む投与レジメンを含む方法を提供する。
【0092】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者のメラノーマの治療方法であって、化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩と、1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物を前記患者に投与することを含み、その治療が、遊離型換算で約100mg~約300mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回、経口投与することと、1つ以上の免疫チェックポイント分子インヒビターとを含む投与レジメンを含む方法を提供する。
【0093】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者のメラノーマの治療方法であって、化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩と、1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物を前記患者に投与することを含み、その治療が、遊離型換算で約100mg~約300mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回、経口投与することと、ペムブロリズマブを3週間おきに投与することとを含む投与レジメンを含む方法を提供する。
【0094】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者のメラノーマの治療方法であって、ペムブロリズマブと、1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物と組み合わせて、化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩と、1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物を前記患者に投与することを含み、その治療が、遊離型換算で約25mg~約300mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回、経口投与することと、ペムブロリズマブを3週間おきに投与することとを含む投与レジメンを含む方法を提供する。
【0095】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載されているような医薬組成物の調製方法であって、化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩と、ラクトース一水和物、微結晶性セルロース、ポビドン、クロスカルメロースナトリウム、コロイド状二酸化ケイ素及びマグネシウムステアレートから選択した1つ以上の賦形剤とを混合することを含む方法に対するものである。
【0096】
いくつかの実施形態では、上記の患者は、絶食状態である。「絶食」という用語は、本発明で提供する組成物を投与する前に、患者が少なくとも2時間絶食し、用量の投与後、1時間絶食状態を保っていることを指す。
【0097】
化合物1は、米国特許第8,088,803号及び米国特許出願公開第2015/0133674号(参照により、これらの全体が本明細書に援用される)の手順に従って調製できる。
【0098】
化合物1は、様々な固体形態で存在することができる。本明細書で使用する場合、「固体形態」とは、例えば、融点、溶解性、安定性、結晶化度、吸湿性、水分量、TGAによる特徴、DSCによる特徴、DVSによる特徴、XRPDによる特徴などのような1つ以上の特性によって特徴付けられる固体を指すように意図されている。固体形態は、例えば、非晶質、結晶質またはそれらの混合物であることができる。
【0099】
典型的には、結晶質固体形態によって、結晶格子(例えば単位格子)は異なり、通常、その結果、物理的特性も異なる。いくつかのケースでは、結晶質固体形態によって、水分量または溶媒量が異なる。異なる結晶格子は、X線粉末回折(XRPD)によるような、固体状態特性の評価方法によって特定できる。示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析(TGA)、動的水分吸着(DVS)などのような他の特性評価方法は、固体形態の特定をさらに助けるとともに、安定性と溶媒/水分量の測定を助ける。
【0100】
いくつかの実施形態では、固体形態は、結晶質固体である。いくつかの実施形態では、化合物1は、米国特許第8,088,803号に記載されているような結晶質固体である。いくつかの実施形態では、上記の固体形態は、実質的に無水である(例えば、約1%未満の水、約0.5%未満の水、約1.5%未満の水、約2%未満の水を含む)。例えば、水分量は、カールフィッシャー滴定によって割り出す。いくつかの実施形態では、固体形態は、約162~約166℃を中心とする融点またはDSC吸熱量によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、固体形態は、約164℃を中心とする融点またはDSC吸熱量によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、固体形態のDSCサーモグラムは実質的に、
図2に示されているようなものである。いくつかの実施形態では、上記の固体形態を10℃/分の加熱速度で20℃~150℃に加熱した場合の重量損失は、0.3%である。TA Instrument Q500を用いた熱重量分析(TGA)(
図3)を参照されたい。
【0101】
さらなる実施形態では、固体形態には、約18.4°、約18.9°、約21.8°、約23.9°、約29.2°及び約38.7°から選択した2θで、少なくとも1つ、2つまたは3つのXRPDピークがある。さらなる実施形態では、固体形態のXRPDパターンは実質的に、
図1に示されているようなものである。
【0102】
いくつかの実施形態では、上記の結晶形態には、下記の表に示されている2θピークリストのピークのうちの1つ以上のピークがある。
【表1】
【0103】
XRPD反射パターン(ピーク)は典型的には、特定の結晶形態のフィンガープリントとみなされている。XRPDピークの相対強度は、とりわけ、試料の調製技法、結晶のサイズ分布、使用する各種フィルター、試料の取り付け手順、及び用いる特定の計器によって大きく異なることがあるのは周知である。いくつかのケースでは、計器の種類または設定によって、新たなピークが観察されたり、または既存のピークが消失したりすることがある。本明細書で使用する場合、「ピーク」という用語は、相対的な高さ/強度が最大ピーク高さ/強度の少なくとも約4%である反射を指す。さらに、計器の変動及びその他の要因が、2θの値に影響を及ぼすことがある。したがって、本明細書に報告されているようなピーク帰属は、±約0.2°(2θ)変動することがあり、「実質的に」という用語は、本明細書においてXRPDの関連で使用する場合には、上記の変動を含むように意図されている。
【0104】
同様に、DSC、TGAまたはその他の熱実験の関連における温度の値は、計器、特定の設定、試料の調製などによって、約±3℃変動することがある。したがって、本明細書に報告されている結晶形態のうち、「実質的に」、いずれかの図面に示されているようなDSCサーモグラムを有する結晶形態は、このような変動に対応するものと理解する。
【0105】
「Cmax」という用語は、化合物1の最高血漿中濃度を指す。「Cmin」という用語は、化合物1の最低血漿中濃度を指す。これらの値は、観察された血漿中濃度データから直接求める。
【0106】
「Tmax」という用語は、Cmaxが観察される時間である。この値は、観察された血漿中濃度データから直接求める。
【0107】
「t1/2」とは、化合物1の血漿中濃度が最初の値の半分に低下するのに要する時間を指す。
【0108】
「AUC」という用語は、化合物1の血漿中濃度の、時間に対するプロットにおける曲線下面積を指す。例えば、AUC0-24hとは、化合物1の血漿中濃度の0~24時間のプロットの曲線下面積を指す。
【0109】
「AUC0-∞」という用語は、化合物1の推定血漿中濃度の無限大時間までのプロットの曲線下面積を指す。
【0110】
「AUC0-t」という用語は、0時点から、血漿中濃度を定量可能な最後の時点(通常、約12~36時間)までの血漿中濃度-時間曲線下面積を指す。
【0111】
本明細書で使用する場合、「AUC0-τ」という用語は、0時点から次の投与時点までの血漿中濃度-時間曲線下面積を指す。
【0112】
「CL/F」という用語は、経口クリアランスを指す。
【0113】
「定常状態」という用語は、薬物の全摂取量が、その消失量と動的に平衡した状態に近い状態を指す。
【0114】
化合物1を用いたときのIDO1の阻害率は、Conc/(Conc+EC50)×100(%)という式を用いて算出した。例えば、Conc=0であるときには、阻害率=0であり、ConcがEC50に近づくと、阻害率は50%に近づく。血漿中濃度は、実証済みのGLP LC/MS/MS法によって、0.020~20.0μMの直線性の範囲で測定した。
【0115】
「Imax」という用語は、全PK時点における最大IDO阻害率算出値を指す。Imaxは、薬物を投与した時点と、そのトラフ(例えば、対象に存在する薬物の最低濃度)との間の最大または最高IDO阻害率である。例えば、1日に2回の投与では、Imaxとは、0時間(投与前)と、投与から12時間後との間の期間中の最高IDO阻害率を指す。
【0116】
「Imin」という用語は、全PK時点における最小IDO阻害率算出値を指す。Iminは、トラフ(例えば、1日に2回の投与では、概して12時間後)におけるIDO阻害率である。例えば、Imin≧50とは、IDO阻害率が、トラフ(例えば12時間時点)において50%以上であることを指す。
【0117】
「Iavg」という用語は、薬物を投与した時点からトラフまでの期間中の平均IDO阻害率を指す。この値は、阻害曲線下面積(AUC)(直線台形法を用いて算出)を投与間隔(例えば、BID投与では12時間)で除したものとして算出する。
【0118】
各対象のImax、Imin及びIavgの算出値は、25mg QD、50mg QDなどのすべての投与群の平均±標準偏差(幾何平均)の標準的な統計的算出値としてまとめた。
【0119】
「IC
50」という用語は、応答が半減する、化合物1の濃度を指す。この値は、用量-応答の曲線フィッティングから求めることができる。
図4及び5は、様々な用量の化合物1の1回目の投与後と定常状態におけるIC
50を示している。IDO1に対するIC
50は、時点マッチングを行った化合物1、トリプトファン及びキヌレニンの血漿中濃度の母集団薬物動態-薬力解析において、70nMとして算出された(さらなる詳細については、実施例3を参照されたい)が、この値は、インビトロでのヒト全血における結果(125±26nM[n=5]、治験薬概要書第7版の表1)と臨床での結果(127nM[n=284、すべての利用可能なデータ]及び90nM[n=216、BID投与から得たデータのみ]の両方と整合していた。
【0120】
「IC90」という用語は、IC50の値の9倍によって推定される、化合物1の濃度を指す。
【0121】
いくつかの実施形態では、「約」という用語は、その値の±10%を指す。当業者であれば、本明細書に示されている値は、データ収集または計器のばらつきなどの実験条件により変化し得ることが分かる。
【0122】
本明細書に記載されている化合物1には、互変異性体も含まれる。互変異性体は、単結合と、隣接する二重結合が入れ替わるとともに、プロトンの移動を伴うことに起因する。
【0123】
本明細書に記載されている化合物1には、中間体または最終化合物で見られる原子のすべての同位体も含まれる。同位体には、原子番号は同じであるが、質量数が異なる原子が含まれる。例えば、水素の同位体としては、三重水素と重水素が挙げられる。
【0124】
いくつかの実施形態では、化合物1とその塩は、実質的に単離されている。「実質的に単離されている」とは、化合物が少なくとも部分的または実質的に、その化合物を形成または検出した環境から分離していることを意味する。部分的な分離物としては、例えば、化合物1が濃縮された組成物を挙げることができる。実質的な分離物としては、化合物1またはその塩を少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、少なくとも約97重量%または少なくとも約99重量%含む組成物を挙げることができる。化合物とその塩の単離方法は、当該技術分野において常法となっている。
【0125】
本発明は、本明細書に記載されている化合物1の塩も含む。本明細書で使用する場合、「塩」とは、開示されている化合物の誘導体のうち、既存の酸または塩基部分をその塩形態に変換することによって、その親化合物が改変されている誘導体を指す。塩の例としては、アミンなどの塩基性残基の鉱酸(HCl、HBr、H2SO4など)塩または有機酸(酢酸、安息香酸、トリフルオロ酢酸など)塩、カルボン酸などの酸性残基のアルカリ(Li、Na、K、Mg、Caなど)塩または有機(トリアルキルアンモニウムなど)塩などが挙げられるが、これらに限らない。本発明の塩は、塩基性または酸性部分を含む親化合物から、従来の化学的な方法によって合成できる。概して、このような塩は、水もしくは有機溶媒、またはこれらの2つの混合物において、化合物1の遊離酸または塩基形態を化学量論的量の適切な塩基または酸と反応させることによって調製でき、概して、エーテル、エチルアセテート、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリル(ACN)のような非水性媒質が好ましい。
【0126】
本発明の「製薬学的に許容可能な塩」には、例えば非毒性の無機または有機酸から形成される親化合物の従来の非毒性の塩である、上記の「塩」のサブセットが含まれる。好適な塩のリストは、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1985,p.1418及びJournal of Pharmaceutical Science,66,2(1977)(それぞれ、参照により、その全体が本明細書に援用される)で見られる。「製薬学的に許容可能な」という語句は、本明細書では、妥当な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答またはその他の問題もしくは合併症なしに、ヒトと動物の組織と接触させて使用するのに適し、合理的な効果/リスク比に釣り合う化合物、材料、組成物及び/または剤形を指す目的で用いる。
【0127】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている医薬組成物は、1つ以上の賦形剤または製薬学的に許容可能な担体を含む。これらの組成物は、製剤分野において周知の方法で調製できるとともに、局所治療が望ましいか、または全身治療が望ましいかに応じて、また、治療する区域に応じて、様々な経路によって投与できる。
【0128】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている医薬組成物は、経口投与に適している。
【0129】
いくつかの実施形態では、本発明で提供する組成物の作製の際に、化合物1を賦形剤と混合するか、賦形剤によって希釈するか、または例えばカプセル、サッシェ、紙またはその他の容器の形態のような担体に格納する。賦形剤は、希釈剤として機能するときには、活性成分のビヒクル、担体または媒体として作用する固体、半固体または液体の物質であることができる。したがって、本発明の組成物は、錠剤、丸剤、散剤、ロゼンジ剤、サッシェ剤、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、液剤、シロップ剤、エアゾール剤(固体媒体として、または液体媒体中)、例えば最大で10重量%の活性化合物を含む軟膏剤、軟カプセル剤、硬カプセル剤、座剤、滅菌注射液及び滅菌包装散剤の形態であることができる。
【0130】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている医薬組成物は、錠剤の形態である。
【0131】
製剤の調製では、他の成分と組み合わせる前に、化合物1を粉砕して、適切な粒径をもたらすことができる。いくつかの実施形態では、化合物1は、200メッシュ未満の粒径まで粉砕できる。いくつかの実施形態では、粒径を粉砕によって調節して、製剤において、実質的に均一に分布させることができる(例えば約40メッシュ)。
【0132】
好適な賦形剤のいくつかの例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、カルシウムホスフェート、アルギネート、トラガカント、ゼラチン、カルシウムシリケート、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ剤及びメチルセルロースが挙げられる。加えて、製剤は、滑沢剤(タルク、マグネシウムステアレート及び鉱油など)、湿潤剤、乳化及び懸濁化剤、保存剤(メチルベンゾエートとプロピルヒドロキシベンゾエートなど)、甘味剤、ならびに矯味矯臭剤を含むことができる。本発明で提供する組成物は、当業者に知られている手順を用いることによって、患者に投与後に活性成分を速放、徐放または遅延放出させるように調合できる。
【0133】
本発明の組成物は、投与単位形態で調合できる。「投与単位形態」という用語は、ヒトの対象及びその他の哺乳動物向けの単位投与量として適する物理的に別個の単位を指し、各単位は、好適な医薬品賦形剤と連動して、所望の治療効果(例えば、所望のPKプロファイル)をもたらすように計算された所定量の化合物1を含む。
【0134】
特定の実施形態では、錠剤などの固体組成物の調製の際には、化合物を医薬品賦形剤と混合して、化合物1の均一混合物を含む固体前駆製剤組成物を形成する。これらの前駆製剤組成物を均一というときには、化合物1は典型的には、組成物全体に均一に分散して、その組成物を同等に有効な投与単位形態(錠剤、丸剤及びカプセル剤など)に容易に細分できるようになっている。続いて、この固体前駆製剤を投与単位形態に細分する。
【0135】
本発明の錠剤または丸剤は、被覆するか、または別段に配合して、持続作用という長所を有する剤形をもたらすことができる。例えば、本発明の錠剤または丸剤は、内側の投与成分と外側の投与成分を含むことができ、外側の成分が、内側の成分を覆う外皮の形態になっている。これらの2つの成分は、腸溶層によって分離でき、この腸溶層は、胃で崩壊しないように機能して、内側の成分を無傷で通過させて十二指腸に到達させたり、遅延放出可能にしたりする。このような腸溶層またはコーティングには、多くのポリマー酸、ならびにポリマー酸と、セラック、セチルアルコール及びセルロースアセテートのような物質との混合物を含む材料など、様々な材料を使用できる。
【0136】
経口投与用に、本明細書に記載されている組成物を組み込むことができる液体形態としては、水性液剤と、適切な香味のシロップ剤と、水性または油性懸濁剤と、綿実油、ゴマ油、ヤシ油またはラッカセイ油などの食用油による香味乳剤と、エリキシル剤と、類似の製剤用ビヒクルが挙げられる。
【0137】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、従来の滅菌技法によって滅菌されているか、またはろ過滅菌されていてよい。水溶液剤は、そのままで使用するように包装することも、凍結乾燥することもでき、この凍結乾燥調製剤は、投与前に、滅菌水性担体と組み合わせる。化合物調製剤のpHは、典型的には3~11、より好ましくは5~9、最も好ましくは7~8となる。特定の上記賦形剤、担体または安定剤の使用により、医薬塩が形成されることは分かるであろう。
【0138】
化合物の治療用量は、例えば、治療を行う特定の用途、化合物の投与方法、患者の健康状態及び、処方する医師の判断に従って変動し得る。いくつかの実施形態では、化合物1の用量は、本明細書に記載されているようなPKプロファイル(例えば、特定のCmax、Cmin、Tmax及び/またはAUC値)を実現させることによって割り出す。医薬組成物中の化合物1の比率または濃度は、投与量、化学的特徴(例えば疎水性)及び投与経路を含む多くの要因によって変化し得る。化合物1は、抗ウイルス剤、ワクチン、抗体、免疫増強剤、免疫抑制剤、抗炎症剤などのようないずれかの医薬剤を含むことができる1つ以上の追加の活性成分と組み合わせて調合することもできる。
【0139】
本明細書に記載されているような化合物1は、酵素のインドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDOまたはIDO1)の活性を阻害できる。例えば、化合物1を用いて、阻害量の化合物1を投与することによって、IDOの調節を必要とする細胞または個体中のIDOの活性を阻害できる。
【0140】
本発明はさらに、IDOを発現している細胞を含む系(組織、生物または細胞培養液など)におけるトリプトファンの分解の阻害方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、本発明で提供する化合物1または組成物を有効量投与することによって、哺乳動物における細胞外トリプトファンレベルの改変(例えば向上)方法を提供する。トリプトファンレベルとトリプトファンの分解の測定方法は、当該技術分野において常法となっている。
【0141】
本発明はさらに、本明細書に示されている化合物または組成物を有効量、患者に投与することによって、患者における免疫抑制(IDO媒介性の免疫抑制など)を阻害する方法を提供する。IDO媒介性の免疫抑制は、例えば、がん、腫瘍の成長、転移、ウイルス感染、ウイルス複製などと関連付けられている。
【0142】
本発明はさらに、IDOの活性または発現(異常活性及び/または過剰発現を含む)と関連する疾患の治療を必要とする個体(例えば患者)に、本発明の化合物またはその医薬組成物を治療有効量または用量投与することによって、その個体の上記疾患を治療する方法を提供する。疾患の例としては、IDO酵素の発現または活性(過剰発現または異常な活性など)に直接または間接的に関連付けられているいずれかの疾患、障害または状態を挙げることができる。IDOと関連する疾患としては、酵素活性を調節することによって予防、改善または治癒できるいずれかの疾患、障害または状態を挙げることもできる。IDOと関連する疾患の例としては、がん、ウイルス感染症(HIV感染症、HCV感染症など)、抑うつ症、神経変性障害(アルツハイマー病及びハンチントン病など)、外傷、加齢性白内障、臓器移植(例えば移植臓器への拒絶反応)、ならびに自己免疫疾患(ぜんそく、関節リウマチ、多発性硬化症、アレルギー性炎症、炎症性腸疾患、乾癬及び全身性ループスエリテマトーデスを含む)が挙げられる。本発明の方法によって治療可能ながんの例としては、大腸がん、膵臓がん、乳がん、前立腺がん、肺がん、脳腫瘍、卵巣がん、子宮頸がん、睾丸がん、腎臓がん、頭頸部がん及びリンパ腫、白血病が挙げられる。いくつかの実施形態では、このがんは、固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、このがんは、メラノーマ、非小細胞肺癌、泌尿生殖器がん(例えば、尿生殖器(GU)管の移行上皮癌)、腎細胞がん、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)、子宮内膜腺癌、頭頚部扁平上皮癌(SCCHN)、子宮体がん、胃がん、膵管腺癌、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)または卵巣がん(OC)である。いくつかの実施形態では、このがんは、メラノーマである。化合物1は、肥満症と虚血の治療にも有用であることがある。
【0143】
いくつかの実施形態では、本発明は、対象のがんの治療方法であって、その対象に、本明細書に記載されている医薬組成物を投与することを含む方法に対するものである。
【0144】
本明細書で使用する場合、「細胞」という用語は、インビトロ、エキソビボまたはインビボの細胞を指すように意図されている。いくつかの実施形態では、エキソビボ細胞は、哺乳動物などの生物から切除した組織試料の一部であることができる。いくつかの実施形態では、インビトロ細胞は、細胞培養液中の細胞であることができる。いくつかの実施形態では、インビボ細胞は、哺乳動物のような生物に生存する細胞である。
【0145】
本明細書で使用する場合、「接触させる」という用語は、インビトロ系またはインビボ系において、示されている部分を一緒にすることを指す。例えば、IDO酵素を化合物1と「接触させる」ことには、IDOを有する個体または患者(ヒトなど)に化合物1を投与することと、例えば、IDO酵素を含む細胞調製物または精製調製物を含む試料に、化合物1を導入することが含まれる。
【0146】
本明細書で使用する場合、「対象」、「個体」または「患者」という用語は、同義的に用いられており、哺乳動物、好ましくはマウス、ラット、その他の齧歯類動物、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマまたは霊長類動物、最も好ましくはヒトを含むいずれかの動物を指す。
【0147】
本明細書で使用する場合、「治療する」または「治療」という用語は、1)疾患を阻害すること、例えば、疾患、状態もしくは障害の病態または症候を感じているかもしくは呈している個体のその疾患、状態もしくは障害を阻害すること(すなわち、その病態及び/もしくは症候のさらなる発現を抑止すること)、または2)疾患を改善すること、例えば、疾患、状態もしくは障害の病態もしくは症候を感じているかもしくは呈している個体のその疾患、状態もしくは障害を改善すること(すなわち、その病態及び/もしくは症候を反転させること)を指す。
【0148】
本明細書で使用する場合、「予防すること」または「予防」という用語は、疾患、状態または障害に対する素因を有し得るが、その疾患の病態または症候をまだ感じたり呈したりしていない個体の疾患、状態または障害を予防することを指す。
【0149】
併用療法
1つ以上の追加の医薬剤または治療方法(例えば、抗ウイルス剤、化学療法剤またはその他の抗がん剤、免疫増強剤、免疫抑制剤、放射線、抗腫瘍及び抗ウイルスワクチン、サイトカイン療法(例えば、IL2、GM-CSFなど)及び/またはチロシンキナーゼインヒビター)を化合物1と組み合わせて、IDOと関連する疾患、障害または状態の治療のために用いることができる。これらの薬剤は、化合物1と単一剤形として組み合わせることも、別個の剤形として同時または順次に投与することもできる。
【0150】
化合物1との併用が想定される好適な抗ウイルス剤は、ヌクレオシド及びヌクレオチド逆転写酵素インヒビター(NRTI)、非ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター(NNRTI)、プロテアーゼインヒビター、ならびにその他の抗ウイルス薬を含むことができる。
【0151】
好適なNRTIの例としては、ジドブジン(AZT)、ディダノシン(ddl)、ザルシタビン(ddC)、スタブジン(d4T)、ラミブジン(3TC)、アバカビル(1592U89)、アデホビルジピボキシル[ビス(POM)-PMEA]、ロブカビル(BMS-180194)、BCH-10652、エムトリシタビン[(-)-FTC]、β-L-FD4(β-L-D4Cともいい、β-L-2’,3’-ジデオキシ-5-フルオロ-シチジンと命名されている)、DAPD、((-)-β-D-2,6,-ジアミノ-プリンジオキソラン)及びロデノシン(FddA)が挙げられる。典型的な好適なNNRTIとしては、ネビラピン(BI-RG-587)、デラビルジン(BHAP、U-90152)、エファビレンツ(DMP-266)、PNU-142721、AG-1549、MKC-442(1-(エトキシ-メチル)-5-(1-メチルエチル)-6-(フェニルメチル)-(2,4(1H,3H)-ピリミジンジオン)、ならびに(+)-カラノリドA(NSC-675451)及びBが挙げられる。典型的な好適なプロテアーゼインヒビターとしては、サキナビル(Ro31-8959)、リトナビル(ABT-538)、インディナビル(MK-639)、ネルフィナビル(AG-1343)、アンプレナビル(141W94)、ラシナビル(BMS-234475)、DMP-450、BMS-2322623、ABT-378及びAG-1549が挙げられる。その他の抗ウイルス剤としては、ヒドロキシウレア、リバビリン、IL-2、IL-12、ペンタフシド及びYissum Project No.11607が挙げられる。
【0152】
好適な化学療法剤またはその他の抗がん剤としては、例えば、アルキル化剤(ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、アルキルスルホネート、ニトロソウレア及びトリアジンが挙げられるが、これらに限らない)、例えば、ウラシルマスタード、クロルメチン、シクロホスファミド(Cytoxan(商標))、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレン-メラミン、トリエチレンチオホスホラミン、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン及びテモゾロミドなどが挙げられる。
【0153】
メラノーマの治療において、本発明の化合物と組み合わせて用いるのに好適な薬剤としては、ダカルバジン(DTIC(任意に応じて、カルムスチン(BCNU)及びシスプラチンのようなその他の化学療法薬と併用する)、DTIC、BCNU、シスプラチン及びタモキシフェンからなる「Dartmouth regimen」、シスプラチン、ビンブラスチン及びDTICを組み合わせたもの、またはテモゾロミドが挙げられる。本発明による化合物は、メラノーマの治療では、インターフェロンα、インターロイキン2及び腫瘍壊死因子(TNF)などのサイトカインを含む免疫療法薬と組み合わせてもよい。
【0154】
化合物1は、メラノーマの治療では、ワクチン療法と組み合わせて用いてもよい。抗メラノーマワクチンは、ある意味では、ポリオ、麻疹及び流行性耳下腺炎のように、ウイルスを原因とする疾患を予防するのに使用する抗ウイルスワクチンと類似のものである。弱毒化メラノーマ細胞またはメラノーマ細胞の一部(抗原という)を患者に注射して、体の免疫系を刺激し、メラノーマ細胞を破壊してよい。
【0155】
腕または脚に限られているメラノーマも、化合物1によって、患肢の局所温熱灌流技法を用いて治療してよい。この治療プロトコールは、患肢の循環を体の残部から一次的に分離して、その患肢を栄養する動脈に高用量の化学療法剤を注入するので、それらの化学療法剤に内蔵を曝露させずに(別段の方法では、深刻な副作用が生じる)、腫瘍区域に対して高用量が供給される。通常、その流体は、102°~104°Fまで昇温する。メルファランは、この化学療法手順で最も多く用いられている薬物である。メルファランは、腫瘍壊死因子(TNF)(サイトカインの節を参照されたい)という別の薬剤とともに投与することができる。
【0156】
好適な化学療法剤またはその他の抗がん剤としては、例えば、代謝拮抗剤(葉酸アンタゴニスト、ピリミジンアナログ、プリンアナログ及びアデノシンデアミナーゼインヒビターが挙げられるが、これらに限らない)、例えば、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、フルダラビンホスフェート、ペントスタチン及びゲムシタビンなどが挙げられる。
【0157】
好適な化学療法剤またはその他の抗がん剤としては、例えば、特定の天然物及びその誘導体(例えば、ビンカアルカロイド、抗腫瘍抗生物質、酵素、リンフォカイン及びエピポドフィロトキシン)、例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ara-C、パクリタキセル(TAXOL(商標))、ミトラマイシン、デオキシコホルマイシン、マイトマイシン-C、L-アスパラギナーゼ、インターフェロン(特にIFN-a)、エトポシド及びテニポシドなどがさらに挙げられる。
【0158】
その他の細胞障害剤としては、ナベルビン、CPT-11、アナストラゾール、レトロゾール、カペシタビン、レロキサフィン、シクロホスファミド、イホスファミド及びドロロキシフェンが挙げられる。
【0159】
エピポドフィロトキシン、抗腫瘍性酵素、トポイソメラーゼインヒビター、プロカルバジン、ミトキサントロン、白金配位複合体(シスプラチン及びカルボプラチンなど)、生物応答修飾剤、成長インヒビター、抗ホルモン治療剤、ロイコボリン、テガフール、ならびに造血成長因子のような細胞障害剤も適している。
【0160】
その他の抗がん剤(複数可)としては、トラスツズマブ(Herceptin)、CTLA-4、4-1BB及びPD-1などの共刺激分子に対する抗体、またはサイトカイン(IL-10、TGF-βなど)に対する抗体のような抗体療法剤が挙げられる。
【0161】
いくつかの実施形態では、本発明で提供する化合物1は、本明細書に記載されているようながんの治療のための1つ以上の免疫チェックポイントインヒビターと組み合わせて用いることができる。一実施形態では、本明細書に記載されているように、1つ以上の免疫チェックポイントインヒビターと組み合わせたものをメラノーマの治療のために用いることができる。例示的な免疫チェックポイントインヒビターとしては、CD27、CD28、CD40、CD122、OX40、GITR、CD137、ICOS、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、LAG3、TIM3、VISTA、PD-1、PD-L1及びPD-L2のような免疫チェックポイント分子に対するインヒビターが挙げられる。いくつかの実施形態では、本発明で提供する化合物1は、KIRインヒビター、TIGITインヒビター、LAIR1インヒビター、CD160インヒビター、2B4インヒビター及びTGFRβインヒビターから選択した1つ以上の薬剤と組み合わせて用いることができる。
【0162】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント分子インヒビターは、抗PD1抗体、抗PD-L1抗体または抗CTLA-4抗体である。
【0163】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント分子インヒビターは、PD-1のインヒビター、例えば、抗PD-1モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗PD-1モノクローナル抗体は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ(MK-3475としても知られている)、ピジリズマブ、SHR-1210またはAMP-224である。いくつかの実施形態では、抗PD-1モノクローナル抗体は、ニボルマブまたはペムブロリズマブである。いくつかの実施形態では、抗PD1抗体は、ペムブロリズマブである。ペムブロリズマブの量は、約2mg/kgであることができる。いくつかの例では、ペムブロリズマブは、約3週間おきの頻度で投与する。
【0164】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント分子インヒビターは、PD-L1のインヒビター、例えば、抗PD-L1モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗PD-L1モノクローナル抗体は、BMS-935559、MEDI4736、MPDL3280A(RG7446としても知られている)またはMSB0010718Cである。いくつかの実施形態では、抗PD-L1モノクローナル抗体は、MPDL3280AまたはMEDI4736である。
【0165】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント分子インヒビターは、CTLA-4のインヒビター、例えば、抗CTLA-4抗体である。いくつかの実施形態では、抗CTLA-4抗体は、イピリムマブである。
【0166】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント分子インヒビターは、LAG3のインヒビター、例えば、抗LAG3抗体である。いくつかの実施形態では、抗LAG3抗体は、BMS-986016である。
【0167】
その他の抗がん剤としては、CCR2及びCCR4を含むケモカインレセプターに対するアンタゴニストのように、免疫細胞の移動をブロックするものも挙げられる。
【0168】
その他の抗がん剤としては、アジュバントまたは養子T細胞移入のように、免疫系を増強するものも挙げられる。
【0169】
抗がんワクチンとしては、樹状細胞、合成ペプチド、DNAワクチン及び組み換えウイルスが挙げられる。
【0170】
これらの化学療法剤の大半の安全かつ有効な投与のための方法は、当業者に知られている。加えて、それらの投与は、標準的な文献に説明されている。例えば、多くの化学療法剤の投与については、「Physicians’ Desk Reference」(PDR、例えば1996年版、Medical Economics Company,Montvale,NJ)(この開示内容は、参照により、その全体が示されているかのように、本明細書に援用される)に説明されている。
【0171】
キット
本発明は、例えば、IDOと関連する疾患または障害、肥満症、糖尿病及び本明細書で言及されているその他の疾患の治療または予防に有用な医薬キットであって、本明細書に記載されている医薬組成物を含む1つ以上の容器を含む医薬キットも含む。このようなキットは、所望に応じて、当業者であれば容易に分かるであろう様々な従来の医薬キット成分(例えば、1つ以上の製薬学的に許容可能な担体の入った容器、追加の容器など)のうちの1つ以上をさらに含むことができる。挿入物またはラベルのいずれかとして、投与する成分の量、投与に関するガイドライン及び/または成分の混合に関するガイドラインを示した説明も、本発明のキットに含めることができる。
【0172】
本発明について、具体的な実施例によって、さらに詳しく説明していく。下記の実施例は、例示目的で示すものであり、本発明を限定するようには決して意図されていない。当業者は、重要ではない様々なパラメーターであって、変更または修正しても、本質的に同じ結果をもたらすことのできるパラメーターを容易に認識するであろう。
【実施例0173】
実施例1.化合物1の調合
化合物1は、25mg、100mg及び300mgの錠剤として調合する。クロスカルメロースナトリウム含有量は、製剤1及び3における9.6重量%から、製剤2及び4における3.2重量%まで低下させる。この変更は、クロスカルメロースナトリウムのレベルを、固体経口用剤形で、より典型的な使用範囲にする目的と、患者への投与中に、錠剤が早期に崩壊する可能性を低下させる目的で行った。下記の表1及び2には、製剤1、2、3及び4の詳細が示されている。
【0174】
錠剤は、当該技術分野において知られている湿式造粒法に従って製造する。製剤2及び4の製造プロセスの違いとしては、微結晶性セルロースの一部を造粒後に加えること(製剤1及び3の錠剤では、この賦形剤のすべてを錠剤顆粒に加えた)と、3つのすべての用量の強度のために、錠剤のデボス加工を行うことが挙げられる。
【0175】
【0176】
【0177】
調合と製造プロセスの違いが、錠剤の特徴に及ぼす作用を評価するために、製剤の溶解プロファイルを比較する。表3に示されている結果には、溶解した錠剤の割合が示されている。表3には、製剤2及び4の錠剤が完全に放出され、説明した錠剤差(崩壊剤含有量の低下と、それに伴う調合の調節、造粒後のマグネシウムステアレートの存在、及び錠剤のデボス加工)によって、溶解には悪影響が及ばなかったことが示されている。
【0178】
【0179】
実施例2.進行性悪性腫瘍のある被験者における化合物1の薬物動態、安全性及び忍容性を割り出すための用量漸増試験
進行性悪性腫瘍のある被験者における化合物1の薬物動態を割り出すための用量漸増試験で、化合物1を評価した。進行性悪性腫瘍のある合計52人の患者を8つのコホートで登録し、化合物1を50mg QD(n=3)、50mg BID(n=4)、100mg BID(n=5)、300mg BID(n=6)、400mg BID(n=11)、500mg BID(n=5)、600mg BID(n=14)及び700mg BID(n=4)の用量で服用させた。被験者には、実施例1に記載されているような製剤1及び/または3の25mg、100mgまたは300mgの錠剤を複数、服用させて、上記の用量を実現させた。服用は、少なくとも2時間の絶食後に、水によって経口で行い、被験者は、用量の服用後、絶食を1時間維持した。
【0180】
化合物1の血漿中濃度を割り出すための血液試料は、サイクル1の1日目とサイクル1の15日目に、投与から0時間後、0.5時間後、1時間後、2時間後、4時間後、6時間後、8時間後及び10時間後(任意)に、ラベンダー色のキャップ(K2EDTA)のVacutainer(登録商標)採血管を用いて採取した。加えて、血液試料は、試験中止とならなかった患者において、治療のサイクル1の8日目と、サイクル1以降の各治療サイクルの1日目に採取した。この試験では、化合物1の薬物動態解析用には、尿試料は収集しなかった。
【0181】
血漿試料は、実証済みのGLP、LC/MS/MS法によって、0.020~20.0μMの直線性の範囲でアッセイした。表4に、この試験から得た血漿試料の解析におけるアッセイクオリティコントロール試料の正確度(バイアス(%))と精度(CV(%))がまとめられている。
【0182】
【0183】
薬物動態解析
標準的なノンコンパートメントな薬物動態方法を用いて、Phoenix WinNonlinバージョン6.0(カリフォルニア州マウンテンビューのPharsight Corporation)によって、化合物1の血漿中濃度データを解析した。すなわち、観察された血漿中濃度データから直接、Cmaxと、Cminと、Tmaxを得るか、またはいくつかのケースでは、インピュテーションを行った。終末相消失速度定数(λz)は、終末消失相における濃度データの対数線形回帰を用いて推定し、t1/2は、ln(2)/λzとして推定した。AUC0-tとAUC0-τは、漸増濃度では線形台形公式、漸減濃度では対数台形公式を用いて推定した。PKの定常状態で、見かけの経口クリアランス(CL/F)を用量/AUC0-τとして推定し、Vz/Fを用量/[AUC0-τ×λz]として推定した。
【0184】
統計解析
用量を要因とした1元ANOVAを用いて、BID投与群間で、対数変換薬物動態パラメーターを比較した。統計比較の前に、用量依存的な暴露パラメーター(CmaxとAUC)を一般的用量に対して正規化した。
【0185】
BID投与に関して、化合物1の定常状態(サイクル1の15日目に観察されたような定常状態)におけるCmaxとAUC0-12hの用量比例性を、累乗関数回帰(例えば、AUC0-12h=α・Doseβ)によって評価し、この際、βに、1との統計的な有意差がない場合に、用量比例性が認められる。
【0186】
定常状態における化合物1の薬物動態に、食事が及ぼす影響を割り出すために、1元クロスオーバーデザインで、治療に関しては固定効果、被験者に関しては変量効果として、ANOVAを用いて、治療間での対数変換薬物動態パラメーターを比較した。ANOVAによる補正平均(最小二乗平均)に基づき、幾何平均相対的バイオアベイラビリティ(基準治療は、サイクル1の15日目における絶食状態での投与とした)と、CmaxとAUC0-τの90%信頼区間(CI)を算出した。90%CIに、1の値が含まれない場合、食事がCmaxとAUCに及ぼす影響に、統計的な有意性があるとみなす。
【0187】
結果
この試験の結果は、下記の表にまとめられている。
【0188】
【0189】
絶食状態で投与すると、化合物1のピーク血漿中濃度(Cmax)は典型的には、投与から2時間後(Tmax中央値)に観察され、それ以降、化合物1の血漿中濃度は、単一指数または双指数的に低下した。消失相t1/2は、用量に依存しないと見られ、サイクル1の15日目にt1/2値が推定可能であったすべての被験者(n=42、被験者間のCV=35.2%)における幾何平均値は2.9時間であった。
【0190】
化合物1のBID投与を繰り返し行った後、投与から8日目または8日目よりも前に、PKの定常状態が観察された(血漿中トラフ濃度の経時変化によって判断した)。50mg QD投与でのトラフ濃度は低く、概して定量不可能であった(>BQL)。化合物1の比較的短いt1/2により、投与から2日以内に、PKの定常状態に達することが示唆されている。
【0191】
7回のBID投与では、平均薬物蓄積指数、すなわち、15日目と1日目における幾何平均比(GMR)は、Cmaxでは1.16、AUC0-τでは1.33であったが、この値は、2.9時間のt1/2値によって示される蓄積度よりも有意に高く、これにより、腸肝再循環または胆汁再循環が示されている。50mg QDの反復投与後には、全身に蓄積したエビデンスは見られなかった。
【0192】
化合物1暴露量は、用量に比例するレベルをわずかに下回った。BID投与では、定常状態において、累乗関数回帰解析により、Cmax=0.330・Dose0.779(β=1において、p=0.0025)と、AUC0-12h=0.103・Dose0.843(β=1において、p=0.043)という用量比例性の式が得られた。累乗関数の指数β(また、同義的には、対数変換式の傾き)の90%CIは、Cmaxでは(0.664,0.895)、AUC0-12hでは(0.717,0.969)であった。βの90%CIの上限は、1未満であるので、化合物1曝露量(Cmax及びAUC0-12h)は、50~700mgの範囲のBIDにおいて、用量に比例するレベルからは統計的に有意な程度かけ離れていた。用量比例性の劣線形度は、AUCにおける0.843のβ点推定によって示されているように、中程度であった(例えば、式から、用量が10倍増大すると、AUCが約7倍の上昇すると推定される)。
【0193】
化合物1の血漿中暴露量は、定常状態において、被験者間のばらつきが中度であり、変動係数(CV(%))はそれぞれ、Cmaxでは20.8%~46.8%、AUC0-12hでは8.8~44.5%であった。
【0194】
拡大コホートにおいて、規格化した高脂肪食による食事が、化合物1の定常状態での薬物動態に及ぼす影響を600mg BIDの投与で評価した。結果は、下記の表8にまとめられている。
【0195】
【0196】
高脂肪食を取ることによって、化合物1の平均Tmaxは4時間延び、幾何平均Cmaxは約10%低下し、幾何平均AUC0-12hは22%増加した。CmaxとAUC0-12hのGMR点推定の90%CIは、1の値に及び、1元クロスオーバーANOVAから得られた対応するp値は、0.05を上回ったことから、化合物1の血漿中暴露量が高脂肪食から受ける影響は、統計的に有意ではなかったことが示された。食事が化合物1の暴露量に及ぼす影響の大きさは、臨床的にも重大ではないようである。中脂肪食の影響は調べなかったが、化合物1のPKの変化は、高脂肪食の場合よりもさらに小さくなると予測される。
【0197】
経口バイオアベイラビリティと全身クリアランス
経口バイオアベイラビリティ(F)と全身クリアランス(CL)を推定した。サイクル1の15日目に経口クリアランス(CLoral=CL/F)を評価可能であった42人の被験者のデータをプールしたところ、幾何平均値は55.3L/hであった(範囲:23.3~180L/h、被験者間CV%=44.3%)。化合物1のFとCLの値は、F=QH/(QH+CL/F)と、CL=(QH×CL/F)/(QH+CL/F)という式を用いて推定してよく(Gibaldi M and Perrier D,Pharmacokinetics,2nd Ed.,Informa Healthcare USA,New York 2007を参照されたい)、式中、Qは、ヒト肝血流速度の典型的な値(約87L/h)である。この推定方法では、ほぼ完全に経口吸収され、肝臓が、薬物クリアランスの主な器官であると想定されている。マウス、サル及びイヌにおいて、未変化の化合物1の腎臓排泄が観察されたのは、IV投与の3%未満であったので、化合物1は、ほぼすべて、肝臓によって除去されるという想定は、合理的な推定であると見られる。しかしながら、用量と曝露量との劣線形な関係から、吸収される経口用量の割合(Fa)は、化合物1の用量の増大とともに低下することが示唆されている。前臨床PK試験のデータ(示されていない)に基づくと、Faは、カニクイザルでは48%、ビーグル犬では81%と推定できる。したがって、ヒトにおける化合物1のFaは、64%と推定される(カニクイザルとビーグル犬における平均値)。上記の式を改変して、Faの項を組み込み、CL=(QH×Fa×CL/F)/(QH+Fa×CL/F)として、不完全な吸収に適応させた。Fa=64%、QH=87L/h及びCL/F=55.3L/hという平均推定値を用いて、平均全身クリアランス(CL)を推定すると、25L/hとなり、平均絶対バイオアベイラビリティ(F)を推定すると、45%となる(CL/CLoral)。推定肝抽出比は29%(CL/QH)であるので、化合物1は、クリアランスの低い化合物とみなすことができる。肝血流の割合で表すと、ヒトにおける推定全身クリアランス(29%)は、カニクイザルで観察されたもの(31%)と、ビーグル犬で観察されたもの(26%)と同程度である。
【0198】
血漿中の化合物1の非結合画分は、3.1%であったことが分かり、700mg BIDの投与に関しては、最高定常状態における1日当たりの平均非結合AUC0-24h(=2×AUC0-12h)を計算したところ、2.2μM×hであった。この値は、28日のGLP毒性試験における500mg/kg/日の用量群の雄のイヌで、NOAELにおける非結合AUC0-24hを観察した値(7.9μM×h)を大きく下回った。
【0199】
まとめ
要約すると、絶食状態で経口用量の投与後、化合物1のピーク血漿中濃度には、典型的には、投与の2時間後に到達した。化合物1は、2.9時間の幾何平均終末動態半減期で消失した。BID投与後の全身への蓄積により、化合物1の平均Cmaxは16%、AUC0-τは33%上昇したことから、4~6時間の「実効」半減期が示唆された。化合物1のCmaxとAUC0-τの向上は、用量に比例するレベルを下回っていた。用量比例性の関係にわずかに至らなかったのは、この化合物では、高めの用量において、腸内吸収の速度及び/または程度が限られることによる可能性が非常に高い。高脂肪食により、化合物1のTmax中央値が4時間延びたが、化合物1の血漿中暴露量には、臨床的に有意な変化は生じなかった。したがって、化合物1は、食事に関係なく投与してよい。絶食状態で投与後、定常状態における化合物1の血漿曝露量に関して、被験者間で中度のばらつきが観察された。最高定常状態での、0~24時間における平均非結合AUCをこの試験(700mg BIDの投与群)で観察した値(2.2μM×h)は、NOAELにおける非結合AUC0-24hを28日のGLP毒性試験で観察した値(7.9μM×h)を大きく下回った。
【0200】
実施例3.MK-3475と組み合わせた化合物1
様々ながんの被験者における化合物Aの薬物動態を明らかにするための試験において、化合物1を評価した。被験者は、特定のがんに限定せず、試験には、様々ながんの被験者を含めた。フェーズ1は、用量漸増フェーズとし、初回用量が25mg BID、50mg BID及び100mg BIDの化合物1と、2mg/kgを3週間に1回(Q3W)のMK-3475(ペムブロリズマブ、ランブロリズマブ及びKeytruda(登録商標)としても知られている)と組み合わせたものと、300mg BIDの化合物1を200mg/kg Q3WのMK-3475と組み合わせたもので治療した被験者コホートが含まれていた。1治療サイクルは、21日で構成されていた。各コホートには、最低でも3人の被験者を登録して治療し、次のコホートが登録を開始するまで、最低でも42日間(6週間)、3人のすべての被験者を観察した。被験者は、42日の用量規定毒性(DLT)観察期間中に、コホート固有の用量の化合物1を、その用量の少なくとも80%服用したはずであるとともに、その42日の期間中に、MK-3475を2用量服用したはずであるか、またはDLTに関するコホートレビューに含めるべきDLTを示したはずである。脱落、または投与の中断もしくは減少となって、DLTに関して評価不能な被験者が現れた場合には、最低でも3人の評価可能な被験者を得られるように、追加の被験者をコホートに登録した。50mg BIDと100mg BIDの予備的安全性が確立されたら、合計9人の被験者となるように、50mg BIDに、メラノーマである追加の被験者を登録した。300mg BIDの試験と平行して、追加の安全性コホートを100mg BIDで開設した。これは、メラノーマ、NSCLCまたはフェーズ1に含まれているもののうちの特定のタイプのがんの被験者に限定してもよい。評価済みの安全性拡大群から、RP2Dを選択した。これらの安全性拡大群におけるすべての被験者を200mg Q3WのMK-3475で治療した。
【0201】
3週間おきのMK-3475の投与スケジュールでは、化合物1を自分で、BIDによって経口服用させ、21日のサイクル中、BIDを継続させた。フェーズ1の際に定義された、化合物1の最大耐用量(MTD)(または母集団補正値用量(PAD))をフェーズ2で使用した。BIDの投与はすべて、食事に関係なく、約12時間置いて、朝と夜に行った。服用が4時間超遅れたら、その服用は飛ばして、スケジュール通りの時間に再開させた。
【0202】
被験者は、受診するときには、化合物1の朝の服用は行わなかった。サイクル1の1日目と、サイクル1の8日目と、サイクル2の1日目の受診時に、薬物動態試料を採取した。投与前期間(MK-3475の投与と、化合物1の投与の24時間前までと定義する)の経過後、PK試料を採取し、被験者は、化合物1を服用してから、MK-3475の注入を開始することとした。試験薬の最後の服用日時と、採血前の最後の食事の詳細ともに、PK血液採取の正確な日時をeCRFに記録した。
【0203】
実証済みのGLP、LC/MS/MS法によって、0.020~20.0μMの直線性の範囲と、0.020μMの定量限界で、血漿試料をアッセイした。
【0204】
予備的なPK解析では、計画したPK時点を用いた。投与後6時間または8時間でのPK試料の採取が限られているので、AUC0-12hを計算するために、PKのためのC1D10の受診におけるC12hの値を、同じ日の投与前濃度からインピュテーションした。標準的なノンコンパートメント解析(NCA)方法を用いて、Phoenix WinNonLinバージョン6.4(Pharsight Corporation,Mountain View,CA)によって、化合物1の血漿中濃度データを解析した。
【0205】
薬物動態モデル
ノンコンパートメント解析(NCA)では、EPAは、ほぼ用量比例的な曝露量を示し、このことから、EPA濃度とは無関係に、クリアランスが一定速度であることが示された。(Kleiber M.,J Theor Biol.1975;53(1):199-204)。ベース構造モデルの開発のために、経口吸収の一次速度式と、1コンパートメント、2コンパートメントまたは3コンパートメント分布と、中央コンパートメントからの線形消失を含む標準的なコンパートメントPKモデルが、EPAの血漿中濃度-時間プロファイルの観察結果を特徴付けることができるか試験した。
【0206】
最終的なベース構造モデルを特定した後、まず、パラメーター(例えばCL/F)のランダム変数(η)と共変量(体重(BW)、年齢及び性別を含む)との相関関係について目視確認することを用いて、共変量がPKパラメーターに及ぼす影響を調べた。続いて、暫定的な相関関係を示した共変量をモデルに導入した。目的関数(α=0.01)における少なくとも6.63の低下に寄与する共変量は、前進選択プロセスにおいて有意とみなしたとともに、後退消去プロセスでモデルから除去するときには、共変量は、目的関数値(α=0.001)の少なくとも10.8の向上に寄与する場合に有意とみなした。ステップワイズ選択手順の完了後、理論的な考察から示される場合には、一次関数(次数が約1.0)に軽減できる累乗関数など、共変量の式の単純化の可能性についても、モデルをチェックした。
【0207】
モデル開発プロセスの完了後、視覚的予測性評価(VPC)と内部バリデーションという2つのバリデーション方法によって、最終モデルの予測性能を評価した。最終モデルを用いて、VPCについて、解析データセットの複製物を合計1000個、シミュレーションした。各シミュレーション時点におけるシミュレーション濃度値から、対象とする統計値(50パーセンタイル[中央値]、10~90パーセンタイル及び5~95パーセンタイル)を算出した。シミュレーションした複製データセットに基づき、原データを予測区間にオーバーレイすることを含め、グラフィカルモデル評価結果を作成した。内部バリデーションとして、データサブセット(このケースでは、1日目の1回目の投与から得られたPKデータ)で、最終モデルを試験した。パラメーター推定値の有意な変化が見られないことによって、モデルが観察データに適合できることが裏付けられる。
【0208】
薬力モデル
メカニスティック集団PDモデルを構築して、IDO1とTPOによる同時触媒によって、TRPがKYNへ生物変換される反応の主要成分を捉えた。このモデルでは、KYNの血漿中濃度は、従属変数(DV)である。TRP(必須アミノ酸の1つ)は、ヒトにおいて豊富に見られる内因性化学物質であり、この試験では、約60μMの平均血漿中濃度が観察された。これに対して、KYN(TRPの異化産物の1つ)は、比較的少ない量で生成される(TRPの2~3%)。TRPに関してはホメオスタシスの維持が予測されることから、KYNの生成を阻害しても、TRPレベルは有意には変化しないと予測される。したがって、このPDモデルには、TRPの形成速度を含めなかったとともに、試料採取時点におけるTRP濃度を観察して、モデル入力として用いた。
【0209】
EPAによるIDO1の阻害は、下記のシグモイドImax/IC
50モデルに従うと想定される。
【数1】
式中、[EPA]は、EPA血漿中濃度であり、IC
50は、最大阻害率の50%をもたらす[EPA]であり、Imaxは、このモデルでは100%と想定されており(高濃度のEPAでは、インビトロにおいて、IDO1のほぼ完全な阻害が観察されたため)、nは、ヒル係数である。IDO1とTPOを介して、平行経路によってTRPからKYNへ生物変換される反応は、下記の式によって説明される。
【数2】
式中、[TRP]は、TRPの血漿中濃度、[KYN]は、KYNの血漿中濃度であり、k1は、IDO1によるKYN形成速度定数、k2は、TPOによるKYN形成速度定数であり、kdegは、KYN分解速度定数である。[KYN]の初期推定値は、下記の式によって得られる。
【数3】
モデルの構築手順と、共変量の試験手順は、PKモデルに関して上記したものと同様であった。このPDモデルの主要評価項目は、IC
50の推定値であった。
【0210】
この試験の結果は、下に示されている。
【0211】
【0212】
【0213】
【0214】
結果は、図にも示されている。
図4と
図5は、1回目の投与後(
図4)と定常状態(
図5)における化合物1の用量別の血漿中濃度(平均±SE)のグラフである。
図6は、C1D8とC2D1における化合物1の血漿中濃度(平均±SE)のグラフである。
図7と
図8は、C1D8における化合物1の用量比例性のPKのグラフである(パート1におけるすべてのコホート)。
図9は、様々な用量におけるIDO1阻害率予測値のウォーターフォールプロットを示している(N=58)。
【0215】
【0216】
【0217】
【0218】
結果は、図にも示されている。
図10と
図11は、100mg BIDで服用した被験者において、1回目の投与後(
図10)と定常状態(C1D8、
図11)における化合物1の血漿中濃度(平均±SE)をパート1とパート2との間で比較したものを示している。
【0219】
図12は、100mg BIDで服用した被験者におけるC1D8とC2D1時点の化合物1の血漿中トラフ濃度(平均±SE)のグラフを示している。
図13と
図14は、様々なタイプの腫瘍における化合物1の定常状態でのPKのボックスプロットを示している。
図15は、定常状態でのIDO1阻害率予測値のウォーターフォールプロットを示している。
【0220】
当業者であれば、上記の説明から、本明細書に記載されている形態に加えて、本発明の様々な修正形態が分かるであろう。このような修正形態も、添付の特許請求の範囲内であるように意図されている。本開示に引用されている各参照文献は、すべての特許、特許出願及び刊行物を含め、参照により、その全体が本明細書に援用される。