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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045364
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】蒸気切除システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/04 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
A61B18/04
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024012883
(22)【出願日】2024-01-31
(62)【分割の表示】P 2022058656の分割
【原出願日】2016-01-29
(31)【優先権主張番号】62/109,540
(32)【優先日】2015-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ヘイスティングス ロジャー ノエル
(72)【発明者】
【氏名】カールソン スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】シュロム マーク
(72)【発明者】
【氏名】ホーイ マイケル
(57)【要約】
【課題】前立腺組織を治療するようになった蒸気送出システムおよび方法を提供する。
【解決手段】蒸気送出システムは、組織に凝縮性蒸気のエネルギを送出するように構成された蒸気送出ニードルを含む。1つの方法では、蒸気送出システムは、前立腺組織に接近するために患者内に経尿道的に前進される。蒸気送出システムは、組織に送出するための高品質な蒸気を発生させるために発生器ユニットおよび誘導加熱システムを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気送出システムであって、該蒸気送出システムは、
クレードルを含む発生器ユニットと、
前記クレードルに配置され、制御された流量で流体を送出するために前記クレードルと相互作用するように構成されたシリンジ組立体と、
前記シリンジ組立体に流体的に結合され、前記シリンジ組立体から流体を受け入れるように構成された誘導加熱システムと、
前記クレードルに配置された力センサであって、前記クレードルおよび/または前記シリンジ組立体によって該力センサに及ぼされる力に比例した電気信号を発生させるために前記クレードルおよび/または前記シリンジ組立体に接触するように構成された力センサと、
蒸気の生成のために前記誘導加熱システムへの流体および高周波エネルギの送出を制御するように構成された電子制御器と、を含み、前記電子制御器は、前記シリンジ組立体内の圧力を代表するものとして前記電気信号を較正するようにさらに構成されており、前記電子制御器は、前記流体圧力が、所望の流体圧力範囲から外れたときに、前記誘導加熱システムへの流体および高周波エネルギの送出を停止するようにさらに構成されている、蒸気送出システム。
【請求項2】
前記クレードルは、前記シリンジ組立体が前記クレードル内に挿入されるときに、前記シリンジ組立体の遠位端が、前記シリンジ組立体の近位端よりも高い高さに保持されるように、配置されている、請求項1に記載の蒸気送出システム。
【請求項3】
前記クレードルは、流体が前記シリンジ組立体から前記蒸気送出システムを通して押し出されるプライミング手順中に前記シリンジ組立体から空気をパージするように構成されている、請求項2に記載の蒸気送出システム。
【請求項4】
前記クレードルは、リニアモータに結合されたピストンをさらに含み、前記ピストンは、前記シリンジ組立体から流体を送出するために、前記シリンジ組立体のプランジャと相互作用する、請求項1に記載の蒸気送出システム。
【請求項5】
前記シリンジ組立体が前記クレードル内に挿入されるときに、接触スイッチが作動される、請求項1に記載の蒸気送出システム。
【請求項6】
前記誘導加熱システムは、外側導電コイルによって取り囲まれた内側流体コイルを含む、請求項1に記載の蒸気送出システム。
【請求項7】
蒸気の流れを制御する方法であって、該方法は、
発生器ユニットのクレードル内にシリンジ組立体を受け入れ、
前記シリンジ組立体から、前記シリンジ組立体に流体的に結合された誘導加熱システムに制御された流量で流体を送出し、
前記クレードルに配置され、流体の送出中に前記クレードルおよび/または前記シリンジ組立体に接触するように構成された力センサに及ぼされる力を測定し、
前記シリンジ組立体内の流体圧力を代表するために電子制御器によって測定された力を較正し、
前記流体圧力が、所望の流体圧力範囲から外れたときに前記誘導加熱システムへの流体の送出を停止する、ことを含む方法。
【請求項8】
前立腺組織を治療する方法であって、該方法は、
患者の前立腺尿道に接近するように患者内に経尿道的に蒸気送出システムを挿入し、
前記蒸気送出システムに対して概して横方向に前立腺尿道を通して前立腺の移行帯域内に蒸気送出ニードルを前進させ、
前記蒸気送出システムから遠位方向に前立腺内に蒸気を差し向けるように前記蒸気送出ニードルの遠位方向に向いた蒸気送出ポートを通して蒸気を送出する、ことを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、出典を明示することによってその開示内容全体が本願の一部とされる「蒸気切除システムおよび方法」という名称の米国仮特許出願第62/109,540号の利益を主張する。
【0002】
出典明示による援用
本願で言及されるすべての刊行物および特許出願は、各刊行物または特許出願が出典明示によりその開示内容が出願の一部とされるように具体的かつ個々的に指示されているかのような同じ程度で、出典明示により開示内容が本願の一部とされる。
【0003】
本発明は、低侵襲アプローチを使用した前立腺肥大症の治療のための装置および関連した方法に関する。さらに詳しくは、本開示は、前立腺に送出された蒸気で前立腺肥大症を治療することに関する。
【背景技術】
【0004】
良性前立腺肥大症(BPH)は、中年男性の一般的な疾病であり、加齢に従って有病率が増加する。70歳では、男性の半分以上にBPHの症状があり、ほぼ90%の男性が顕微鏡下で前立腺肥大の証拠が見つかる。症状の重篤度は、加齢に従って増大し、60歳乃至70歳の患者の27%に中度乃至重度の症状があり、70歳代では37%の患者に中度乃至重度の症状がある。
【0005】
生命の初期の前立腺は、クルミの寸法および形状であり、BPH(前立腺肥大症)によって生じる拡大の前には、重量が約20グラムである。前立腺拡大は、正常な過程として現れる。年齢とともに、前立腺は徐々に寸法がその正常な寸法の2倍またはそれ以上に増大する。前立腺外包の繊維筋性組織は、腺が或る寸法に達した後に拡張を制限する。かかる拡張の制限により、内包組織は、尿道前立腺部を圧迫して、尿道前立腺部を収縮させ、かくして、尿の流れに抵抗を引き起こす。
【0006】
男性の泌尿生殖器の解剖学的構造では、前立腺は、膀胱および膀胱頸部の下方に位置している。膀胱の壁は、膨張および収縮して尿道を通して尿の流れを引き起こすことができ、尿道は、膀胱から前立腺および陰茎を通して延びている。前立腺によって取り囲まれた尿道の部分は、尿道前立腺部と呼ぶことができる。前立腺はまた、尿道前立腺部に開放終端部を有する射精管を取り囲む。性的興奮中、精子は、睾丸から精管によって前立腺に輸送され、前立腺は、精子と混合する流体を提供して、射精中精液を形成する。前立腺の両側で、精管と精嚢が接合して射精管と呼ばれる単一の管を形成する。かくして、各射精管は、精嚢粘液および精子を尿道前立腺部内に運ぶ。
【0007】
前立腺は、3つの帯域、すなわち、周辺帯域、移行帯域、および、中央帯域に分類することができる。周辺帯域PZは、男性の前立腺の体積の約70%を構成する。この前立腺の後面の包下部分は、遠位尿道を取り囲み、癌の70~80%は、周辺帯域組織に原発する。中央帯域CZは、射精管を取り囲み、前立腺の体積の約20~25%を収容する。中央帯域は、しばしば炎症過程の部位である。移行帯域TZは、前立腺肥大症が発達する部位であり、正常な前立腺で腺要素の約5~10%の体積を収容するが、BHP(前立腺肥大症)の場合にはかかる体積の80%まで構成することがある。移行帯域は、2つの側前立腺葉および尿道周囲帯域を含む。移行帯域のまわりには、天然のバリア、すなわち、尿道前立腺部、後部繊維筋性支質、および、移行帯域と周辺帯域の間の繊維質平面がある。後部繊維筋性支質または繊維筋性帯域は、優勢的な繊維筋性組織である。
【0008】
BPHは、代表的には、治療に対して患者が鬱陶しい排尿困難を訴える場合に診断される。BPHの主な症状は、排尿回数が増え、排尿への要求が切迫してくることである。更に、BPHにより、膀胱の尿閉が生じ、これは下部尿路感染症(LUTI)を引き起こす場合がある。多くの場合、LUTIは腎臓に進み、慢性腎盂腎炎を生じ、最終的には腎不全をもたらす。BPHは、更に、重篤な排尿困難による睡眠障害や心理的不安と関連した性機能不全を生じる場合もある。かくして、BPHは、男性人口の生活の質を加齢に伴って大きく変えてしまう。
【0009】
BPHは、前立腺の腺細胞の連続的発生と自然死(アポトーシス)との間のインバランスにより生じる。こうした細胞が過剰に発生すると、特に尿道前立腺部が通る移行域で前立腺が肥大する。
【0010】
BPHの早期には、治療により症状を和らげることができる。例えばα遮断剤は、前立腺及び膀胱頸部の平滑筋を弛緩することによってBPHを治療し、これにより尿が膀胱から流出し易くする。こうした薬剤は、腺エレメントが前立腺内で圧倒的な細胞成長を引き起こすまでは有効であることがわかっている。
【0011】
しかしながら、BPHの更に進んだ段階では、外科的またはより低い侵襲性の熱切除(アブレーション)装置介入処置によって治療するしかない。組織の電気外科的又は機械的摘出、前立腺の嚢内組織の熱切除または凍結切除を使用する多くの方法が開発されてきた。多くの場合、かかる介入処置は一時しのぎであり、これらの治療はしばしば、顕著な周術期不快感および病的状態を引き起こす。
【0012】
1つの熱切除方法では、前立腺葉の複数の位置に嵌入した細長い高周波ニードルを介して前立腺組織に高周波(RF)エネルギを送出する。細長い高周波ニードルは、代表的には、長さが約20mmであり、断熱体とともに葉に嵌入される。この高周波治療により、組織を尿道前立腺部からアブレーションで除去する。これは、尿道前立腺部の近くの尿道前立腺部と平行な組織を目標としていない。高周波エネルギを、代表的には、1秒乃至3秒又はそれ以上に亘って加える。これにより高周波エネルギを熱拡散させて組織を切除して、嚢の周囲に届かせる。このような高周波エネルギ送出方法は、永続的効果を生じない。これは、尿道前立腺部周囲の平滑筋組織およびアルファアドレナリン受容体にアブレーションが均等に加えられないためである。その結果、葉の組織は成長し続け、尿道に当たり、かくして治療の長期に亘る有効性を制限する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前立腺組織を治療するようになった蒸気送出システムおよび方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
蒸気送出システムであって、該蒸気送出システムは、クレードルを含む発生器ユニットと、前記クレードルに配置され、制御された流量で流体を送出するために前記クレードルと相互作用するように構成されたシリンジ組立体と、前記シリンジ組立体に流体的に結合され、前記シリンジ組立体から流体を受け入れるように構成された誘導加熱システムと、前記クレードルに配置された力センサであって、前記クレードルおよび/または前記シリンジ組立体によって該力センサに及ぼされる力に比例した電気信号を発生させるために前記クレードルおよび/または前記シリンジ組立体に接触するように構成された力センサと、蒸気の生成のために前記誘導加熱システムへの流体および高周波エネルギの送出を制御するように構成された電子制御器と、を含み、前記電子制御器は、前記シリンジ組立体内の圧力を代表するものとして前記電気信号を較正するようにさらに構成されており、前記電子制御器は、前記流体圧力が、所望の流体圧力範囲から外れたときに、前記誘導加熱システムへの流体および高周波エネルギの送出を停止するようにさらに構成されている、蒸気送出システムが提供される。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記クレードルは、前記シリンジ組立体が前記クレードル内に挿入されるときに、前記シリンジ組立体の遠位端が、前記シリンジ組立体の近位端よりも高い高さに保持されるように、配置されている。
【0016】
1つの実施形態では、流体が前記シリンジ組立体から前記蒸気送出システムを通して押し出されるプライミング手順中に前記シリンジ組立体から空気をパージするように構成されている。
【0017】
もう1つの実施形態では、前記クレードルは、リニアモータに結合されたピストンをさらに含み、前記ピストンは、前記シリンジ組立体から流体を送出するために、前記シリンジ組立体のプランジャと相互作用する。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記シリンジ組立体が前記クレードル内に挿入されるときに、接触スイッチが作動される。
【0019】
1つの実施形態では、前記誘導加熱システムは、外側導電コイルによって取り囲まれた位置が内側流体コイルを含む。
【0020】
蒸気の流れを制御する方法であって、該方法は、発生器ユニットのクレードル内にシリンジ組立体を受け入れ、前記シリンジ組立体から前記シリンジ組立体に流体的に結合された誘導加熱システムに制御された流量で流体を送出し、前記クレードルに配置され、流体の送出中に前記クレードルおよび/または前記シリンジ組立体に接触するように構成された力センサに及ぼされる力を測定し、前記シリンジ組立体内の流体圧力を代表するために電子制御器によって測定された力を較正し、前記流体圧力が、所望の流体圧力範囲から外れたときに前記誘導加熱システムへの流体の送出を停止する、ことを含む方法が提供される。
【0021】
前立腺組織を治療する方法であって、該方法は、患者の尿道前立腺部に接近するように患者内に経尿道的に蒸気送出システムを挿入し、前記蒸気送出システムに対して概して横方向に尿道前立腺部を通して前立腺の移行帯域内に蒸気送出ニードルを前進させ、前記蒸気送出システムから遠位方向に前立腺内に蒸気を差し向けるように前記蒸気送出ニードルの遠位方向に向いた蒸気送出ポートを通して蒸気を送出する、ことを含む方法が提供される。
【0022】
次に、本発明および本発明の実際の実施方法をさらによく理解するため、いくつかの好ましい実施形態を、添付図面を参照して単なる非限定的な例として説明する。添付図面では、同様の実施形態に亘り、対応する特徴に同じ参照番号が付してある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】蒸気送出システムの1つの実施形態を示す図である。
図2A】蒸気送出ニードルを含む蒸気送出システムの遠位部分のクローズアップ図である。
図2B】蒸気送出ニードルを含む蒸気送出システムの遠位部分のクローズアップ図である。
図2C】正常な前立腺を示す図である。
図2D】蒸気送出システムで治療されている拡大された前立腺を示す図である。
図3A】高品質の凝縮性蒸気を生成するための誘導加熱システムを含む蒸気送出システムを示す図である。
図3B】高品質の凝縮性蒸気を生成するための誘導加熱システムを含む蒸気送出システムを示す図である。
図4】誘導加熱システムにおいて蒸気の発生を制御するように構成された発生器ユニットを示す図である。
図5】発生器ユニットと相互作用するシリンジ組立体の1つの実施形態を示す図である。
図6】発生器ユニットのシリンジクレードルおよびシリンジ組立体の断面図である。
図7】蒸気送出システムのシャフトの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
一般的には、BPHを治療するための1つの方法は、加熱蒸気を前立腺の内部に間質を通して導入することを含む。蒸気が前立腺組織を制御可能な仕方で切除(ablate)する。この方法は、一般開業医が行う手技で前立腺側葉毎に50cal~300calのエネルギを加えるのに蒸気を使用できる。この方法は、前立腺組織に局所的切除を引き起こし、さらに詳しくは蒸気から加えられた熱エネルギを局所化して、尿道と隣接していない前立腺組織を損傷することなく、尿道と隣接した組織を切除する。
【0025】
本発明はBPHの治療に関し、さらに詳しくは、前立腺組織の中央帯域および周辺帯域を切除することなく、前立腺組織の移行帯域を切除する方法に関する。1つの実施形態では、本開示は、尿道前立腺部に隣接した領域において対流加熱を使用して前立腺を治療することに関する。この切除治療方法は、尿道前立腺部と平行な膀胱頸部領域と精丘との間の2cm未満の深さの平滑筋組織、アルファアドレナリン受容体、および、交感神経構造を目標とする。
【0026】
システムは、水蒸気を含む蒸気媒体を送出する蒸気送出機構を含むのがよい。システムは、少なくとも60℃~140℃の温度の蒸気を提供するように構成された蒸気源を使用するのがよい。もう1つの実施形態では、システムは、蒸気を1秒~30秒の間隔で送出するように構成されたコンピュータ制御器をさらに含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、システムは、蒸気とともに送出するための薬物、または、他の化学薬剤、または、化合物の源を含んでいる。これらの薬剤は、麻酔剤、抗生物質、または、ボトックス(ボトックス(Botox)は登録商標である)等の毒素であってもよい。これらの薬剤は、シーラント、接着剤、瞬間接着剤等であってもよい。
【0028】
図1は、蒸気送出システムの1つの実施形態を示す。蒸気送出システム100は、患者の尿道内に挿入されるように構成された細長いシャフト102、および、人間の手で把持するためのハンドル部分104を有するのがよい。蒸気送出システム100は、シャフトに配置され、細長いシャフト102の遠位端から延びるように構成された蒸気送出ニードル106を含むのがよい。蒸気送出ニードルは、シャフトと概して垂直に、または、シャフトと概して横方向に延びるのがよく、ニードルから前立腺組織内に蒸気媒体の流れを送出するように構成された1つまたはそれ以上の蒸気送出ポートを含むのがよい。蒸気送出システム100は、システムの種々の機能を作動させるように構成された1つまたはそれ以上のトリガ、ボタン、レバー、または、作動機構107をさらに含むのがよい。例えば、作動機構は、蒸気送出ニードルを延ばす/引っ込めるように構成されているのがよく、蒸気の流れ、吸引、および、生理食塩水のような冷却および/または灌漑流体を始動する/停止するように構成されているのがよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、トリガまたは作動機構107は、蒸気および/または灌漑の種々の角度または流量を制御するような仕方で操作できる。1つの特定の実施形態では、トリガまたは作動機構107は、蒸気送出ニードルを延ばす/引っ込めるように構成された第1のトリガ、蒸気の流れを始動する/停止する第2のトリガ、および、生理食塩水のような冷却および/または灌漑流体を始動する/停止するように構成された第3のトリガを含むのがよい。もう1つの実施形態では、単一のトリガまたは作動機構が、蒸気送出ニードルを延ばす/引っ込める、および、蒸気の流れを始動する/停止する、の両方を行うのがよい。1つの実施形態では、生理食塩水のような冷却および/または灌漑流体を提供するトリガのような、トリガの1つの単一の押しまたは押し下げが、標準的な灌漑を提供し、他方で、トリガの迅速二重押しまたは押し下げが、灌漑流量が標準灌漑流量を上回る「ターボ」灌漑フラッシュを提供するのがよい。この特徴は、例えば、医師が閉塞に遭遇し、追加の冷却を必要とし、または、血液の蓄積或いは他の体液による尿道および/または前立腺における減少された視野を有する場合に、有用であることができる。
【0030】
流体または灌漑源は、システムの挿入中および組織への蒸気送出中に組織に灌漑およびフラッシングを提供するためにシャフトに設けられた別個の管腔を通して、生理食塩水のような流体を提供するのがよい。いくつかの実施形態では、灌漑はまた、流体が灌漑源からシャフトを通って組織に接触するようになるときに、灌漑流体が尿道と直接接触することによって患者の尿道に冷却を与え、かつ、蒸気送出システムのシャフトにも冷却を与えることができる。尿道フラッシュは、病変形成中に使用されるのがよい。1つの実施形態では、フラッシュ流量は、約80mL/分、或いは、20~400mL/分の範囲であるのがよい。フラッシュ流量の変化は、病変寸法に影響を与えることができる尿道および前立腺内への組織冷却量(深さ)を変える。
【0031】
図2Aは、シャフトを越えて延び、蒸気送出ポート108を露出させる蒸気送出ニードル106を含む蒸気送出システム100のシャフトの遠位部分のクローズアップ図を示す。蒸気送出ポート108は、与えられた適用例で組織への蒸気の送出を最良にするパターンで配置されるのがよい。例えば、BPHの治療のために設計されたシステムでは、送出ポート108は、複数の蒸気送出ポートの複数の列を含む。1つの特定の実施形態では、送出ポート108は、ニードルの周のまわりに120°の間隔で間隔を隔てて配置されているのがよく、送出ポートの1つの列は、尿道前立腺部に隣接した組織の切除を確実にするために、図2Bに示されているように、ニードルの前縁から遠位方向に向いている。一般的に、蒸気送出ポートは各々、唯一の径を有するのがよい。1つの実施形態では、蒸気送出ポートはすべて同じ径を有する。
【0032】
図2Cは、正常な健康な前立腺を示しており、図2Dは、蒸気送出システム100で治療されている拡大化された前立腺を示す。1つの実施形態では、蒸気送出システムは、尿道内に挿入され、経尿道アプローチにより尿道前立腺部に前進されるのがよい。蒸気送出ニードル106は、蒸気送出システムに対して概して横方向に前立腺組織内に前進されるのがよい。蒸気送出システムによって蒸気が発生されて、蒸気送出ニードルを通して前立腺内に送出されるのがよい。上述したように、蒸気送出ニードルは、蒸気送出ニードルが装置のシャフトに対して横方向に延ばされるときに装置から離れる方に遠位方向に向いた蒸気送出ポートの列を有するのがよい。図2Dを参照すると、蒸気は、前立腺における蒸気送出ニードルの位置の遠位側で前立腺組織を切除するためにこの遠位方向に向いた蒸気送出ポートを通して前立腺に送出されるのがよい。蒸気送出ニードルおよび蒸気送出ポートの位置は、蒸気送出ニードルの位置から遠位方向に延びる前立腺の移行帯域組織の切除を可能にすることができる。例えば、図2Dでは、送出装置のニードルによって安全に貫通されることができない膀胱筋肉組織の下で延びる移行帯域組織が、治療される。
【0033】
蒸気送出システム100は、蒸気源、吸引源、流体冷却または灌漑源、光源、および/または、供給源から、シャフトの管腔を通して、蒸気送出ニードルを通して、前立腺組織内への蒸気の発生および送出を制御するように構成された電子制御器を含むのがよい。いくつかの実施形態では、電子制御器は、蒸気送出システム上または内に配置されるのがよく、他の実施形態では、電子制御器は、システムとは別体で配置されるのがよい。
【0034】
組織を切除すべく、蒸気媒体を発生させ、蒸気送出ニードルを通して送出するために、蒸気源が設けられるのがよい。1つの実施形態では、蒸気源は、例えば、カロリー/秒で測定される正確な熱エネルギ送出量を提供するために正確に制御された品質を有する水蒸気のような蒸気媒体を送出することができる蒸気発生器であるのがよい。いくつかの実施形態では、蒸気源は、蒸気送出システム(例えば、ハンドル)に配置され、流れ媒体が誘導的に加熱されてスチームのような凝縮性蒸気を発生させる誘導加熱システムを含むのがよい。
【0035】
図3A-3Bは、外側導電コイル324(図3B)によって取り囲まれた内側流体コイル322(図3Aに示されている)を含む誘導加熱システム320の1つの実施形態を示す。内側流体コイルは、アニールされるのがよい鋼管から作られるのがよい。内側流体コイルは、コイル巻きの間の導電性を確保するためにはんだ付けされるか、或いは、はんだストリップを含むのがよい。外側導電コイルは、18ゲージ~22ゲージの範囲の全体径を有する電気的に絶縁された銅リッツワイヤのような導電性材料であるのがよい。図示されているように、誘導加熱システム320は、ハンドル内のような蒸気送出システム内に配置されているのがよい。内側流体コイル322の入口部分326が、外部流体源から滅菌水のような流体を受け入れることができる。流体は、交流または高周波電流が電気接続部325を介して外側導電コイル324に印加されるときに、内側流体コイルを通過するのがよい。外側導電コイルを流れる電流は、内側流体コイルを流れる電流を誘導することができ、誘導された電流は、高品質の凝縮性蒸気を生成するように内側流体コイル内で流体を抵抗加熱し、次いで、生成された高品質の凝縮性蒸気は、出口部分328を経て蒸気送出ニードルに送出される。
【0036】
図4は、蒸気の生成のために誘導加熱システムに電力と流体を提供するように構成された発生器ユニット40を示す。発生器ユニットはまた、灌漑/冷却流体、吸引等のような操作のために不可欠な電力および他の成分をシステムに提供するために、上述したように蒸気送出システム100に接続している。発生器ユニットは、電子制御器、および、蒸気治療中に作動パラメータおよび制御を使用者に提供するためのグラフィクユーザインターフェース(GUI)を含むのがよい。発生器ユニットは、滅菌水のような流体を誘導加熱システムに提供するためのシリンジ組立体536を保持するようになったシリングクレードル430を含むのがよい。
【0037】
発生器ユニットはまた、電気コネクタ432を含むのがよく、電気コネクタ432は、誘導加熱システムに高周波電流を提供し、蒸気送出システムへのおよびからの電気信号を提供し、例えば、誘導加熱システムの温度の測定値を提供し、蒸気送出システムを同定し、蒸気送出の履歴を追跡し、与えられた蒸気送出システムの過度の使用を防止するために、例えばその電気コネクタにおいて、蒸気送出システムの制御器へのおよびからの電気信号を提供することができる。発生器ユニット40はまた、蒸気送出システムに生理食塩水のような冷却/灌漑流体の流れを提供する蠕動ポンプ435を収容するのがよい。作動において、可撓管437が、滅菌生理食塩水のバッグから、蠕動ポンプを通り、管を通り、蒸気送出システム内に通じている。ポンプが正常に作動されるときに、生理食塩水のバッグから蒸気送出システム内への方向に流れを提供する経路に管が挿入されることを確実にするために、蠕動ポンプ435上にガイドまたはマーカが設けられているのがよい。
【0038】
図5は、蒸気に転換するために蒸気送出システム100に滅菌水のような正確な量の滅菌水を提供するシリンジ組立体536を示す。シリンジ組立体536は、シリンジ537を含み、シリンジ537は、シリンジの中心線からオフセットされている出口ポート541を有し、ルアフィッティング542が、蒸気送出システム上の滅菌生理食塩水管に接続し、プランジャ538が、水を排出するためにシリンジ内で前方に移動し、シリンジに水を充填するためにシリンジ内で後方に移動し、付属ロッド540が、シリンジ537を充填するためにシステムセットアップ中にプランジャ538に取り外し可能に取り付けられる。シリンジ537に流体が充填されたときに、付属ロッド540は、捨てられ、充填されたシリンジ537は、発生器ユニットのクレードル内に挿入される。
【0039】
図6は、図5のシリンジ組立体536がクレードル430内に挿入された、図4のシリンジクレードル430の断面図を示す。電力が蒸気送出システムに送出されるときに、シリンジが所定位置にあることを確実にするように、シリンジがクレードル430内に挿入されるときに、接触スイッチ654が作動される。接触スイッチの状態は、電気リード652を通して検知される。力センサ644が、該力センサ644がクレードルおよび/またはシリンジ組立体537と接触し、相互作用するようにクレードルに配置されている。電子制御器が蒸気送出システムに滅菌水を送出せよとの指令を受けたときに、クレードルのピストン642は、シリンジプランジャ538に係合し、ピストン642に取り付けられたリニアモータが、シリンジ537からルアフィッティング542を通して、誘導加熱システムに連結された流体管に滅菌水を正確に制御された流量で送出する。滅菌水が押し出されるときに、シリンジ537は、発生器40内で横方向に自由に移動するクレードル430に衝突する。クレードル430が力センサ644に衝突するときに、クレードル430の前方移動が妨げられる。力センサ644の微小な横方向移動は、クレードル430によって力センサ644に及ぼされる力に比例した電気信号に変換される。この電気信号は、リード648を通して制御器に伝えられ、誘導加熱システムの内側コイル内を含むシリンジ537内および流体管に亘る水圧として較正される。水圧は、発生器ユニット40の電子制御器によってモニタされ、電子制御器は、流体圧力が所望の圧力範囲から外れた場合に、例えば、流体圧力が、低すぎる(例えば、水ラインの漏れにより)か、或いは、高すぎる(例えば、水ラインの閉塞により)場合に、誘導加熱システムへの高周波電力および流体の送出を停止するように構成されているのがよい。
【0040】
クレードル430は、水が、シリンジから押し出され、システム水および蒸気ラインを充填し、フラッシュし、蒸気送出システムの蒸気送出ポートから出るプライミング手順中に流体管から空気をパージするように構成されている。図6に示されているように、クレードル430は、シリンジ537がクレードル内に挿入されるときに、シリンジ537の遠位端を、その近位端よりも高い高さに維持し、シリンジの頂部に設けられた出口ポート541をオフセットさせて維持するように設計されている。この設計により、シリンジ中の空気は、重力の影響下でシリンジの上側遠位端に移動され、シリンジを出て、プライミング手順中に流体管からパージされる。流体管からの空気の除去により、誘導加熱システムのオーバーヒーティングが防止され、水量の損失、したがって、組織に送出されるカローの損失が防止される。
【0041】
発生器ユニットの電子制御器は、蒸気送出の種々のパラメータを制御するように設定することができ、例えば、制御器は、選択された流量、選択された圧力、或いは、選択された蒸気量で選択された治療間隔で蒸気を送出するように設定することができる。蒸気送出システム、蒸気発生器、および、どのように蒸気および流体を組織に送出するかについての更なる詳細は、米国特許第8,273,079号およびPCT公報第WO2013/040209号に見出すことができ、両方の開示は、出典を明示することによって本願の一部とされる。いくつかの実施形態では、電子制御器はまた、蒸気送出システムの吸引および/または冷却灌漑機能を制御することができる。
【0042】
図7は、図1図2からの蒸気送出システム100の細長いシャフト102の横断面図を提供する。管腔148は、上述した蒸気送出ニードルを収容するように構成されるのがよく、図1図2では、蒸気送出中に蒸気送出ニードルがシャフトから前進されるように構成されるのがよい。管112内に形成された管腔115は、種々の内視鏡118を収容すると同時に、灌漑流体を管腔115内およびシャフトから外方に遠位尿道および膀胱内に流すための環状空間138を提供するために約2~5mmの範囲の径を有するのがよい。管腔115は、医師に追加の視野およびフィードバックを提供するための内視鏡またはカメラを収容するように寸法決めされているのがよい。この内視鏡またはカメラは、配備されたときに蒸気送出ニードルの画像を含むシャフトの遠位端の画像を提供することができる。図7でわかるように、管腔115は、内視鏡118のまわりに流体灌漑流れのための空間138を提供するように寸法形状決めされている。環状空間138は、流体送出システムから組織内への灌漑流体の流れを可能にし、また、蒸気が蒸気送出ニードル(管腔148に配置された)から組織内に送出されるときにシャフトに冷却を提供する。図7における材料144は、蒸気送出ニードルから、環状空間138内を流れる灌漑および/または冷却流体に熱を伝え、或いは、蒸気治療中に患者(特に尿道)のオーバーヒーティングを防止するために灌漑/冷却流体から蒸気送出ニードルに冷却を伝えることができる。
【0043】
以上、本発明の特定の実施例を詳細に説明したが、本発明の以上の説明は単に例示を目的としたものであって、網羅的ではないということは理解されよう。本発明の特定の特徴をいくつかの図面に示し、その他の図面には示していないが、これは単に便宜のためであって、任意の特徴を本発明による別の実施形態と組み合わせてもよい。当業者には、多くの変形及び変更が明らかであろう。このような変形及び変更は、特許請求の範囲に含まれるものと考えられる。従属項に記載の特定の特徴は、本発明の範囲と組み合わせることができ、本発明の範囲に入る。本発明はさらに、従属項が他の独立項に関して多重従属項フォーマットで書かれている実施形態を含む。
【符号の説明】
【0044】
40 発生器ユニット
100 蒸気送出システム
102 細長いシャフト
104 ハンドル部分
106 蒸気送出ニードル
320 誘導加熱システム
430 クレードル
536 シリンジ組立体
537 シリンジ
644 力センサ
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-02-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気送出システムであって、該蒸気送出システムは、
蒸気発生器ユニットと、
前記蒸気発生器ユニットに配置されているクレードルと、
前記蒸気発生器ユニットに配置されており、蒸気を生成するための流体を送出するように構成されているシリンジ組立体と、
力センサと、を含み、前記力センサは、前記蒸気発生器ユニットに配置されており、前記クレードル、および/または、前記シリンジ組立体に接触するように構成されており、前記力センサは、前記クレードル、および/または、前記シリンジ組立体によって該力センサに及ぼされる力に比例する電気信号を発生するように構成されており、
前記電気信号を受け取るように構成されている電子制御器をさらに含み、前記電子制御器は、前記電気信号に基づいて流体の送出を停止するように構成されている、蒸気送出システム。
【請求項2】
前記力センサは、前記クレードル、および/または、前記シリンジ組立体に直接接触するように位置決めされている、請求項1に記載の蒸気送出システム。
【請求項3】
前記電子制御器は、前記流体の流体圧力が、所定の流体圧力範囲から外れた場合に前記流体の送出を停止する、請求項1に記載の蒸気送出システム。
【請求項4】
前記クレードルは、前記シリンジ組立体の遠位端が、前記シリンジ組立体の近位端よりも高い高さに保持されるように、配置されている、請求項1に記載の蒸気送出システム。
【請求項5】
前記シリンジ組立体は、リニアモータに結合されたピストンを含み、前記ピストンは、前記シリンジ組立体から流体を送出するように前記シリンジ組立体のプランジャと相互作用する、請求項1に記載の蒸気送出システム。
【請求項6】
前記ピストンと前記プランジャの相互作用は、前記力が前記力センサに及ぼされるようにする、請求項5に記載の蒸気送出システム。
【請求項7】
接触スイッチが、前記シリンジ組立体が前記クレードル内に挿入されるときに、作動される、請求項1に記載の蒸気送出システム。
【請求項8】
前記クレードルは、前記シリンジ組立体の遠位端が、前記シリンジ組立体の近位端よりも高い高さに位置するように、配置されている、請求項1に記載の蒸気送出システム。
【請求項9】
前記シリンジ組立体のバレルが、前記クレードルに直接接触する、請求項1に記載の蒸気送出システム。
【請求項10】
前記流体は、前記蒸気発生器ユニットに送出される、請求項1に記載の蒸気送出システム。
【請求項11】
前記流体は、前記シリンジ組立体の出口ポートから送出され、前記出口ポートは、前記シリンジ組立体の長手方向軸線からオフセットされている、請求項1に記載の蒸気送出システム。
【外国語明細書】