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特開2024-45397コンクリート構造物の剥落防止シートおよびコンクリート構造物の剥落防止工法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045397
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】コンクリート構造物の剥落防止シートおよびコンクリート構造物の剥落防止工法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20240326BHJP
   B32B 5/00 20060101ALI20240326BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20240326BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240326BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20240326BHJP
   E02D 17/20 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
E04G23/02 A
B32B5/00 A
B32B5/28
B32B27/00 N
E01D22/00 A
E01D22/00 B
E02D17/20 103B
E04G23/02 D
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024014636
(22)【出願日】2024-02-02
(62)【分割の表示】P 2019121201の分割
【原出願日】2019-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000216025
【氏名又は名称】鉄建建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000120010
【氏名又は名称】宇部エクシモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】加古 昌之
(72)【発明者】
【氏名】清水 靖也
(72)【発明者】
【氏名】小林 茂
(72)【発明者】
【氏名】安保 知紀
(72)【発明者】
【氏名】山口 朋幸
(72)【発明者】
【氏名】松原 真
(57)【要約】
【課題】例えば補修作業の技量が未熟な作業者や、十分な補修工具を備えていない作業者でも、コンクリートの応急的な剥落対策を容易かつ速やかに行なえる、コンクリート構造物の剥落防止シ-トおよびコンクリート構造物の剥落防止工法を提供すること。
【解決手段】複数の繊維糸を交差して網状に配置した補強繊維を合成樹脂で含浸した薄厚シート状の補強樹脂シート3を備える。
前記補強樹脂シート3をコンクリート構造物1の表面に固定したコンクリート構造物の剥落防止シートであること。
前記補強樹脂シート3の表面に耐候性を付与する。
補強樹脂シート3の他側面に軟質の粘着層9を被着した粘着シート4を一体に接着または熱融着する。
粘着シート4を介して補強樹脂シート3をコンクリート構造物1の表面に固定したこと。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の繊維糸を交差して網状に配置した補強繊維を合成樹脂で含浸した薄厚シート状の補強樹脂シートを備え、該補強樹脂シートをコンクリート構造物の表面に固定するコンクリート構造物の剥落防止シ-トにおいて、
前記補強樹脂シートの一側に軟質の粘着層を被着した粘着シートを一体に接着または熱融着し、
該粘着シートは
内側に弾力性を有する合成樹脂シートを備え、該合成樹脂シートの両側面に軟質の粘着層を接着または熱融着し、
該合成樹脂シートの両側面に設けた前記粘着層のうち前記補強樹脂シートと反対側の前記粘着層を前記コンクリート構造物の表面に固定し、前記粘着シートを前記コンクリート構造物の表面の凹凸を許容して凹部に進入し、かつ凹凸部に食い込み前記コンクリート構造物の表面に密着可能にしたことを特徴とする
コンクリート構造物の剥落防止シート。
【請求項2】
前記補強樹脂シートの表面に耐候性を備え、前記補強樹脂シートの他側面に前記粘着シートを配置した
請求項1に記載のコンクリート構造物の剥落防止シート。
【請求項3】
前記補強樹脂シート3の厚さは0.25~0.45mmに形成され、
前記粘着シートの厚さは約0.5~0.7mmに形成された
請求項2に記載のコンクリート構造物の剥落防止シート。
【請求項4】
前記補強樹脂シートは、
ポリオレフィン製繊維糸を縦0.05~0.25mm、横0.23~0.43mm、横/縦の比(扁平度)が1.5超の矩形断面に形成し、
該繊維糸の2軸を目合い1.06~1.08mm、開口率35~70%に配列し、該繊維糸をアクリル樹脂で含浸してラミネートし、その表面に耐候性を付与している
請求項3に記載のコンクリート構造物の剥落防止シート。
【請求項5】
前記補強樹脂シートの表面に剥離紙を被着して保護するとともに、
前記粘着シートにおける他側面側に剥離紙を被着して粘着面を保護する
請求項1乃至請求項4のうちいずれかに記載のコンクリート構造物の剥落防止シート。
【請求項6】
複数の繊維糸を交差して網状に配置した補強繊維を合成樹脂で含浸した薄厚シート状の補強樹脂シートを備え、該補強樹脂シートをコンクリート構造物の表面に固定するコンクリート構造物の剥落防止工法において、
前記補強樹脂シートの一側に軟質の粘着層を被着した粘着シートを一体に接着または熱融着し、
該粘着シートは内側に弾力性を有する合成樹脂シートを備え、該合成樹脂シートの両側面に軟質の粘着層を接着または熱融着し、
該合成樹脂シートの両側面に設けた前記粘着層のうち前記補強樹脂シートと反対側の前記粘着層を前記コンクリート構造物の表面に固定し、前記粘着シートを前記コンクリート構造物の表面の凹凸を許容して凹部に進入させ、かつ凹凸部に食い込ませて前記コンクリート構造物の表面に密着可能にすることを特徴とする
コンクリート構造物の剥落防止工法。
【請求項7】
前記補強樹脂シートの表面に耐候性を備え、前記補強樹脂シートの他側面に前記粘着シートを配置した
請求項6に記載のコンクリート構造物の剥落防止工法。
【請求項8】
前記補強樹脂シート3の厚さは0.25~0.45mmに形成され、
前記粘着シートの厚さは約0.5~0.7mmに形成された
請求項7に記載のコンクリート構造物の剥落防止工法。
【請求項9】
前記補強樹脂シートは、
ポリオレフィン製繊維糸を縦0.05~0.25mm、横0.23~0.43mm、横/縦の比(扁平度)が1.5超の矩形断面に形成し、
該繊維糸の2軸を目合い1.06~1.08mm、開口率35~70%に配列し、該繊維糸をアクリル樹脂で含浸してラミネートし、その表面に耐候性を付与している
請求項8に記載のコンクリート構造物の剥落防止工法。
【請求項10】
前記補強樹脂シートの表面に剥離紙を被着して保護するとともに、
前記粘着シートにおける他側面側に剥離紙を被着して粘着面を保護する
請求項6乃至請求項9のうちいずれかに記載のコンクリート構造物の剥落防止工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば補修作業の技量が未熟な作業者や、十分な補修工具を備えていない作業者でも、コンクリートの応急的な剥落対策を容易かつ速やかに行なえる、コンクリート構造物の剥落防止シ-トおよびコンクリート構造物の剥落防止工法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物は、雨水等の浸入や塩分との接触、炭酸化による中性化等の影響によって経年的に劣化し、内部の鉄筋が腐食してコンクリートが剥落してしまうため、従来よりコンクリートの剥落防止対策が種々提案されている。
例えば、コンクリート構造物の表面に補強用の繊維シートを接着して被覆し、前記繊維シートは、補強繊維とアクリル樹脂を主剤樹脂とした基材樹脂とからなり、補強繊維の周りを基材樹脂で硬化したFRPシートとし、前記繊維シートに接着樹脂を塗り付け、これを可撓性を有した状態のままコンクリート構造物の表面に貼り付けるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、この工法は、繊維シートに接着樹脂を塗り付ける作業と、繊維シートをコンクリート構造物の表面に貼り付ける作業とを要し、繊維シートの貼り付け後に、繊維シートの縁をアンカ-でコンクリート構造物に止め付ける作業を要して、手間が掛かり各作業に一定の技量を要する等して、未熟な作業者では対応が難しいという問題があった。
【0004】
また、他のコンクリートの剥落防止対策として、版状コンクリート構造体の下面にプライマー処理した後、その上に繊維シート接着用の硬化樹脂を塗布し、縦糸と横糸を編んだアラミド繊維からなる繊維シートに前記樹脂を含浸させ、含浸後の繊維シートを版状コンクリート構造体の下面に貼り付け、更に繊維シートの下面から硬化樹脂を含浸させるようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかし、前記工法は、プライマー処理や硬化樹脂の塗布、繊維シートの貼り付けや数回に亘る含浸作業を要して手間が掛かり、これらの作業は未熟な作業者では対応が難しいという問題があった。
【0006】
更に、他のコンクリートの剥落防止対策として、コンクリート躯体の表面に、プライマーを層状に塗布し、この塗布したプライマー層の表面に網状の剥落防止材を層状に配置し、この剥落防止材の表面に2液混合型の樹脂組成物からなる含浸剤を層状に塗布するようにしたものがある(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
しかし、前記工法は、多くの工程を要して手間が掛かるとともに、樹脂組成物の組成が複雑かつ高度で、未熟な作業者では対応が非常に難しいという問題があった。
【0008】
このような問題を解決するものとして、繊維糸ネットと不織布を貼り合わせて一体化し、繊維糸ネットを構成する各繊維糸を扁平状のテープ糸で構成し、繊維糸は縦糸と横糸の2軸配列体で、縦糸と横糸を一定の構造に構成したコンクリート剥落防止シートがある(例えば、特許文献4参照)。
【0009】
しかし、前記剥落防止シ-トによる工法は、コンクリート表面にプライマー兼接着剤を塗布し、その上に剥落防止シートを繊維糸ネットがコンクリート面となるように貼り合わせ、その上から接着剤を塗布するようにしているため、作業が複雑で未熟な作業者では対応が難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第5490364号公報
【特許文献2】特許第3477118号公報
【特許文献3】特許第5733812号公報
【特許文献4】特許第5722714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこのような問題を解決し、例えば補修作業の技量が未熟な作業者や、十分な補修工具を備えていない作業者でも、コンクリートの応急的な剥落対策を容易かつ速やかに行なえる、コンクリート構造物の剥落防止シ-トおよびコンクリート構造物の剥落防止工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明は、複数の繊維糸を交差して網状に配置した補強繊維を合成樹脂で含浸した薄厚シート状の補強樹脂シートを備え、該補強樹脂シートをコンクリート構造物の表面に固定するコンクリート構造物の剥落防止シ-トにおいて、前記補強樹脂シートの一側に軟質の粘着層を被着した粘着シートを一体に接着または熱融着し、該粘着シートは内側に弾力性を有する合成樹脂シートを備え、該合成樹脂シートの両側面に軟質の粘着層を接着または熱融着し、該合成樹脂シートの両側面に設けた前記粘着層のうち前記補強樹脂シートと反対側の前記粘着層を前記コンクリート構造物の表面に固定し、前記粘着シートを前記コンクリート構造物の表面の凹凸を許容して凹部に進入し、かつ凹凸部に食い込み前記コンクリート構造物の表面に密着可能にし、コンクリートの応急的な剥落対策を容易かつ速やかに行えるようにしている。
【0013】
請求項2の発明は、前記補強樹脂シートの表面に耐候性を備え、前記補強樹脂シートの他側面に前記粘着シートを配置している。
請求項3の発明は、前記補強樹脂シート3の厚さは0.25~0.45mmに形成され、前記粘着シートの厚さは約0.5~0.7mmに形成している。
【0014】
請求項4の発明は、前記補強樹脂シートは、ポリオレフィン製繊維糸を縦0.05~0.25mm、横0.23~0.43mm、横/縦の比(扁平度)が1.5超の矩形断面に形成し、該繊維糸の2軸を目合い1.06~1.08mm、開口率35~70%に配列し、該繊維糸をアクリル樹脂で含浸してラミネートし、その表面に耐候性を付与している。
【0015】
請求項5の発明は、前記補強樹脂シートの表面に剥離紙を被着して保護するとともに、前記粘着シートにおける他側面側に剥離紙を被着して粘着面を保護している。
【0016】
請求項6の発明は、複複数の繊維糸を交差して網状に配置した補強繊維を合成樹脂で含浸した薄厚シート状の補強樹脂シートを備え、該補強樹脂シートをコンクリート構造物の表面に固定するコンクリート構造物の剥落防止シ-トにおいて、前記補強樹脂シートの一側に軟質の粘着層を被着した粘着シートを一体に接着または熱融着し、該粘着シートは内側に弾力性を有する合成樹脂シートを備え、該合成樹脂シートの両側面に軟質の粘着層を接着または熱融着し、該合成樹脂シートの両側面に設けた前記粘着層のうち前記補強樹脂シートと反対側の前記粘着層を前記コンクリート構造物の表面に固定し、前記粘着シートを前記コンクリート構造物の表面の凹凸を許容して凹部に進入し、かつ凹凸部に食い込みコンクリート構造物の表面に密着可能にし、補強樹脂シートを粘着シートとその粘着層によって柔軟かつ弾力性を持たせ、コンクリートの応急的な剥落対策を容易かつ速やかに行なえるようにしている。
【0017】
請求項7の発明は、前記補強樹脂シートの表面に耐候性を備え、前記補強樹脂シートの他側面に前記粘着シートを配置している。
【0018】
請求項8の発明は、前記補強樹脂シート3の厚さは0.25~0.45mmに形成され、前記粘着シートの厚さは約0.5~0.7mmに形成している。
【0019】
請求項9の発明は、前記補強樹脂シートは、ポリオレフィン製繊維糸を縦0.05~0.25mm、横0.23~0.43mm、横/縦の比(扁平度)が1.5超の矩形断面に形成し、該繊維糸の2軸を目合い1.06~1.08mm、開口率35~70%に配列し、該繊維糸をアクリル樹脂で含浸してラミネートし、その表面に耐候性を付与している。
【0020】
請求項10の発明は、前記補強樹脂シートの表面に剥離紙を被着して保護するとともに、前記粘着シートにおける他側面側に剥離紙を被着して粘着面を保護している。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の発明は、複数の繊維糸を交差して網状に配置した補強繊維を合成樹脂で含浸した薄厚シート状の補強樹脂シートを備え、該補強樹脂シートをコンクリート構造物の表面に固定するコンクリート構造物の剥落防止シ-トにおいて、前記補強樹脂シートの一側に軟質の粘着層を被着した粘着シートを一体に接着または熱融着し、該粘着シートは内側に弾力性を有する合成樹脂シートを備え、該合成樹脂シートの両側面に軟質の粘着層を接着または熱融着し、該合成樹脂シートの両側面に設けた前記粘着層のうち前記補強樹脂シートと反対側の前記粘着層を前記コンクリート構造物の表面に固定し、前記粘着シートを前記コンクリート構造物の表面の凹凸を許容して凹部に進入し、かつ凹凸部に食い込み前記コンクリート構造物の表面に密着可能させることができ、コンクリートの応急的な剥落対策を容易かつ速やかに行なうことができる。
【0022】
請求項の発明は、複数の繊維糸を交差して網状に配置した補強繊維を合成樹脂で含浸した薄厚シート状の補強樹脂シートを備え、該補強樹脂シートをコンクリート構造物の表面に固定するコンクリート構造物の剥落防止シ-トにおいて、
前記補強樹脂シートの一側に軟質の粘着層を被着した粘着シートを一体に接着または熱融着し、該粘着シートは内側に弾力性を有する合成樹脂シートを備え、該合成樹脂シートの両側面に軟質の粘着層を接着または熱融着し、該合成樹脂シートの両側面に設けた前記粘着層のうち前記補強樹脂シートと反対側の前記粘着層を前記コンクリート構造物の表面に固定し、前記粘着シートを前記コンクリート構造物の表面の凹凸を許容して凹部に進入し、かつ凹凸部に食い込みコンクリート構造物の表面に密着可能にし、補強樹脂シートを粘着シートとその粘着層によって柔軟かつ弾力性を持たせ、コンクリートの応急的な剥落対策を容易かつ速やかに行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明による補強樹脂シートの施工状況を示す断面図である。
図2】本発明に適用した補強繊維の概要を示す拡大図で、アクリル樹脂による含浸部を省略して示している。
図3】本発明に適用した補強繊維の性状を示す表である。
図4】本発明に適用した補強樹脂シートの施工状況を示す断面図で、粘着シートの食い込み状況を、粘着材が軟質の場合(a)と、硬質の場合に(b)に分けて拡大して示している。
図5】本発明の補強樹脂シートに対する押し抜き試験状況を示す断面図である。
図6】上記押し抜き試験結果を示すグラフで、載荷荷重と変位の状況を示している。
図7】本発明の補強樹脂シートの貼り付け工法の要部を拡大して示す説明図で、(a)はコンクリート構造物の表面をアセトンを染み込ませたウェスで拭き取る下地処理を示し、(b)は補強樹脂シートの貼付けローラによる貼り付け作業状況を示し、(c)は補強樹脂シートの貼り付け後の脱泡ローラによる脱泡作業状況を示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を図示の実施形態について説明すると、図1乃至図7において1は建築物、橋梁、トンネル等のコンクリート構造物で、その要補修部の表面に剥落防止シートである薄厚の補強シート2が貼り付けられている。
前記補強シート2は、補強樹脂シート3と、該補強樹脂シート3の一側に接着または熱融着して一体に固定した粘着シート4とからなり、該粘着シート4をコンクリート構造物1の表面に貼り付けて要補修部を補強し、コンクリート剥落片の剥落を防止可能にしている。
【0025】
前記補強樹脂シート3は薄厚のシート状に成型され、その厚さは0.25~0.45mmに形成されていて、その内部にポリオレフィン製繊維の縦糸5と横糸6を直交配置し、これらを目合い1.06~1.08mm、開口率35~70%、の16~19メッシュに配列していて、前記縦糸5と横糸6とを基材樹脂であるアクリル樹脂7で含浸してラミネートし、その表面に耐候性を付与し、その色見を灰色に構成している。
前記縦糸5および横糸6の断面は、縦0.05~0.25mm、横0.23~0.43mm、横/縦の比(扁平度)が1.5超の矩形断面に形成され、この2軸を直交配置して図2のようにメッシュ状に配列している。
【0026】
前記粘着シート4は軟質のアクリル系粘着材を補強樹脂シート3に被着し、該粘着シート4をコンクリート構造物1の表面に貼り付けた際、図4のようにコンクリート構造物1の表面の凹凸を許容して凹部に進入し、気泡の残留を防止して凹凸部に対する良好な食い込みを得られ、コンクリート構造物1の表面に強固に密着し得るようにしている。
【0027】
前記粘着シート4は、補強樹脂シート3の一側に接着または熱融着して一体に固定され、その内側に特殊発泡ポリエステルフォーム等の弾力性を有する合成樹脂シート8を備え、その厚さを約0.5~0.7mmで、その両側に軟質の粘着層9を接着または熱融着して固定している。
【0028】
前記合成樹脂シート8の両側面に、前記粘着層9を接着または熱融着して固定し、該粘着層9を前記粘着シート4と同様の軟質のアクリル系粘着材で構成し、その一方の粘着層9をコンクリート構造物の表面に固定している。
この場合、粘着シート4をアクリル系粘着材で構成する代わりに、エポキシ系接着材を用いてコンクリート構造物1の表面に貼り付けても良く、そのようにすることで補強シート2を強固に密着し得る。
【0029】
実施形態では、合成樹脂シート8が弾力性を有するため、粘着シート4を押圧してコンクリート構造物1の要補修部表面に接着または粘着する際、合成樹脂シート8の弾力によって、補強樹脂シート3側の押圧力を合成樹脂シート8の弾力によって、コンクリート構造物1側の粘着シート4に確実かつ緻密に伝え、粘着シート4をコンクリート構造物1の表面に強固かつ密着して固定可能にしている。
しかも、粘着シート4は一側面に被着した粘着層9がコンクリート構造物1の表面の凹凸を許容して食い込み、良好に密着して貼り付けられる。
【0030】
発明者は、コンクリート剥落防止の施工の安全性を確保するため、補強シート2が実際にコンクリート剥落防止の機能を果たすか否かの適性試験を行なった。
前記試験は、短期荷重負荷試験と長期荷重負荷試験に分かれ、前者は補強シート2がコンクリート剥落片の載荷時に、どの程度の荷重に耐えられるか否かの試験であり、後者は、短時間での試験では相応の剥離荷重を保持可能であっても、長時間の負荷や気温変化で剥離範囲が広がり、想定した剥落塊を保持できなくなる可能性があることに鑑み、短期荷重負荷試験を補完する目的で行なう。
【0031】
すなわち、補強シート2は、短期荷重負荷試験における最大荷重が一定以上、実施形態では1.5kN以上で、長期荷重負荷試験では一定の載荷荷重を一定期間、載荷した際の変位量が一定以内、実施形態では0.3kNの載荷荷重を7日間載荷した際の変位量が15mm以内であれば、適性有りと判定している。
【0032】
前記荷重負荷試験はJSCE-K533の試験方法に準拠して押し抜き試験を行ない、試験体10として、上蓋式U型側溝の呼称300の中央部裏面から100Φのコア11を刳り貫いたものを使用し、該試験体10の表面を有機溶媒であるアセトンの付いたウェスで拭き取り、試験体10の下面に補強樹脂シート3と粘着シート4を一体に構成した補強シ-ト2を貼り付け、1時間養生させる。
【0033】
その後、前記コア11に押し抜き棒12を挿入し、該押し抜き棒12の下端部を補強シート2の上面に押し当て、押し抜き棒12の上端部に所定荷重、実施形態では30kgの錘13を載せて補強シート2に負荷し、該補強シート2のコンクリート構造物1からの剥離の有無と、補強シート2の下方への変位を観察し、剥離時における変位δと最大荷重を測定して、変位が収束した時点、若しくは押し抜き棒12が抜け落ちた時点で終了する。
【0034】
前記長期荷重負荷試験は、短期荷重負荷試験と略同様な要領で行い、0.3kNの錘13を7日間載荷し、補強シート2のコンクリート構造物1からの剥離の有無と、補強シート2の下方への変位を観察し、7日間経過時の変位量を測定した時点、若しくは押し抜き棒12が抜け落ちた時点で終了する。
【0035】
このように構成した本発明のコンクリート構造物の剥落防止シートは、補強樹脂シート3を主体とする補強シート2の製作を要する。
前記補強シート2は、表面側に配置する補強樹脂シート3と、該補強樹脂シート3の一側面に接着または熱融着して一体にした粘着シート4とからなり、これらを重合して薄厚のシート状に構成し、その内部に補強繊維を配置する。
前記補強樹脂シート3は0.25~0.45mmの厚さに成型し、その表面に適宜な剥離紙を被着して保護し、また粘着シート4の粘着面に剥離紙を被着して粘着面を保護する。
【0036】
前記補強樹脂シート3は、内部にポリオレフィン製繊維の縦糸5と横糸6を直交配置し、これらを目合い1.06~1.08mm、開口率35~70%、の16~19メッシュに配列した補強繊維を配置し、その縦糸5と横糸6とを基材樹脂であるアクリル樹脂7で含浸してラミネートし、その表面に耐候性を付与し、その色見を灰色に構成している。
【0037】
前記縦糸5および横糸6の断面は、縦0.05~0.25mm、横0.23~0.43mm、横/縦の比(扁平度)が1.5超の矩形断面に形成され、この2軸を直交配置して図2のようにメッシュ状に配列している。
【0038】
前記粘着シート4は軟質のアクリル系粘着材を補強樹脂シート3に被着し、該粘着シート4は両側面に柔軟な粘着層9を被着していて、一方の粘着層9をコンクリート構造物1の表面に貼り付けた際、粘着層9が図4のようにコンクリート構造物1の表面の凹凸を許容して凹部に進入し、気泡の残留を防止して凹凸部に対する良好な食い込みを形成し、コンクリート構造物1の表面に強固に密着する。
【0039】
こうして製作した補強樹脂シート3を主体とする補強シート2に対し、コンクリート剥落防止の施工の安全性を確保するため、コンクリート剥落防止の機能を果たすか否かの適性試験を行なう。
【0040】
前記適性試験は、短期荷重負荷試験と長期荷重負荷試験に分かれ、前者は補強シート2がコンクリート剥落片の載荷時に、どの程度の荷重に耐えられるか否かの試験であり、後者は、短時間での試験では相応の剥離荷重を保持可能であっても、長時間の負荷や気温変化で剥離範囲が広がり、想定した剥落塊を保持できなくなる可能性があることに鑑み、短期荷重負荷試験を補完する目的で行なう。
【0041】
すなわち、補強シート2は、短期荷重負荷試験における最大荷重が一定以上、実施形態では1.5kN以上で、長期荷重負荷試験では一定の載荷荷重を一定期間、載荷した際の変位量が一定以内、実施形態では0.3kNの載荷荷重を7日間載荷した際の変位量が、発明者の知見と過去の経験を基に15mm以内であれば、適性有りと判定する。
【0042】
前記荷重負荷試験は試験体10として、上蓋式U型側溝の呼称300の中央部裏面から100Φのコア11を抜いたものを使用し、該試験体10の表面をアセトンを染み込ませたウェスで塵埃や油分を拭き取り、その清浄面に粘着シート4を貼り付けて補強シート2を取り付け、1時間養生させる。
【0043】
その後、前記コア11に押し抜き棒12を挿入し、押し抜き棒12の下端部を補強シート2の上面に押し当て、押し抜き棒12の上端部に所定荷重、実施形態では30kgの錘13を載せて補強シート2に負荷し、補強シート2の剥離開始に伴う下方への変位を観察し、荷重と変位δを連続的に記録し、変位が収束した時点、若しくは押し抜き棒12が抜け落ちた時点で終了する。
【0044】
補強シート2の短期荷重負荷試験は図6のようで、変位が10~30mm付近で補強シート2から頻繁に異音が発生し、荷重の変化を確認したが、変位が30mmを超えると前述の変化は余り見られず、最終的に最大荷重2.01kN、その際の変位49.9mmを測定した。
前記最大荷重2.01kNは、規定値が1.5kN以上であるから、短期荷重負荷試験を合格したことが確認された。
【0045】
一方、前記長期荷重負荷試験は、短期荷重負荷試験と略同様な試験設備の下で、0.3kNの錘13を7日間載荷し、その間の補強シート2のコンクリート構造物1からの剥離の有無と、補強シート2の下方への変位を観察し、7日間経過時の変位量を測定した時点、若しくは押し抜き棒12が抜け落ちた時点で終了した。
【0046】
実際の長期荷重負荷試験では、7日間経過時の変位量が11mmで、規定値の15mm以下であるから、長期荷重負荷試験を合格したことが確認された。
すなわち、補強シート2は、短期荷重負荷試験と長期荷重負荷試験を合格し、所定の剥落防止性能を備えていることが確認され、剥落防止の適性有りと判定されたので、当該補強シート2による施工が可能になる。
【0047】
こうして剥落防止性能を確認された補強シート2を使用して、コンクリート構造物1の要補修部であるコンクリート剥落部を実際に補修する場合は、先ずコンクリート構造物1の要補修部を下地処理する。
【0048】
前記下地処理は、容器14に収納したアセトン等の有機溶媒の清浄液15をウェス16に染み込ませ、このウェス16によって要補修部の表面に付着した塵埃や油分を拭き取る。
この状況は図7(a)のようである。
したがって、従来の下地処理における下地ケレンに多用されていた、やすりやサンドペーパ、電気研削工具の使用を廃し、煩雑な研磨作業や技量を要することなく、容易かつ速やかに行なえる。
【0049】
次に、清浄した要補修部の表面に補強シート2を貼り付ける。
その際、補強シート2を所定の形状寸法に裁断し、補強樹脂シート3の表面の剥離紙(図示略)を剥がすとともに、粘着シート4の剥離紙(図示略)を剥がして、清浄後のコンクリート構造物1の要補修部表面に貼り付ける。
粘着シート4の貼り付け後、その表面に貼付けローラ17を転動操作して、補強樹脂シート3の表面を一様かつ安定して押圧し、粘着シート4を均一かつ平滑に貼付ける。この状況は図7(b)のようである。
【0050】
この場合、補強樹脂シート3と粘着シート4とが一体に構成され、粘着シート4をコンクリート構造物1の表面に貼り付けることで、補強樹脂シート3の貼り付けを行なえるから、施工現場で補強樹脂シート3を粘着シート4に貼り付け、該粘着シート4をコンクリート構造物1の表面に貼り付けまたは接着する作業を省け、この作業を簡便かつ速やかに施工し得る。
【0051】
この後、前記貼付けた補強樹脂シート3の表面に脱泡ローラ18を転動操作して、補強樹脂3の表面を一様かつ安定して押圧し、コンクリート構造物1の表面と粘着シート4との間に残留する気泡を除去して、粘着シート4をコンクリート構造物1の表面に密着させる。この状況は図7(c)のようである。
【0052】
このように補強シート2の貼り付け作業は、特別な設備や工具、および特別の知識や技能、経験を要することなく簡単に作業し得るから、補修作業の技量が未熟な作業者や、十分な補修工具を備えていない作業者でも、コンクリートの応急的な剥落対策を容易かつ速やかに行なえる。
【0053】
こうしてコンクリート構造物1の要補修部表面に、粘着シート4を介して補強樹脂シート3を貼り付けると、その粘着層9がコンクリート構造物1の表面に密着し、該コンクリート構造物1の剥落、または剥落片の落下を防止する。
【産業上の利用可能性】
【0054】
このように本発明のコンクリート構造物の剥落防止シ-トおよびコンクリート構造物の剥落防止工法は、例えば補修作業の技量が未熟な作業者や、十分な補修工具を備えていない作業者でも、コンクリートの応急的な剥落対策を容易かつ速やかに行なえる。
【符号の説明】
【0055】
1 コンクリート構造物
3 補強樹脂シート
4 粘着シート
5 縦糸
6 横糸
7 アクリル樹脂
8 合成樹脂シート
9 粘着層
15 有機溶媒(アセトン)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7