(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045399
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】生体用電極、生体センサー、及び生体信号測定システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/268 20210101AFI20240326BHJP
【FI】
A61B5/268
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024014731
(22)【出願日】2024-02-02
(62)【分割の表示】P 2019207201の分割
【原出願日】2019-11-15
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】北添 雄眞
(72)【発明者】
【氏名】原田 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】八木澤 隆
(57)【要約】
【課題】測定安定性に優れた生体用電極を提供する。
【解決手段】本発明の生体用電極は、板状支持部と、板状支持部の一面に設けられた、略円錐形状の弾性柱状部と、弾性柱状部の先端を覆うように形成された導電性樹脂層と、導電性樹脂層と電気的に接続するとともに、先端側から基端側に向かって前記弾性柱状部の内部に配置された導電線と、を備えるものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状支持部と、
前記板状支持部の一面に設けられた、略円錐形状の弾性柱状部と、
前記弾性柱状部の先端を覆うように形成された導電性樹脂層と、
前記導電性樹脂層と電気的に接続するとともに、先端側から基端側に向かって前記弾性柱状部の内部に配置された導電線と、
を備える、生体用電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体用電極、生体センサー、及び生体信号測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
これまで生体用電極において様々な開発がなされてきた。この種の技術として、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1には、弾性体からなる母材(導電性を有する突出部)と母材の表面に形成された構造体(土台)とを備える生体用電極が記載されている(請求項1、
図2)。この母材は、ベース材となる弾性体にナノ炭素材料を配合してなると記載されている(段落0068)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者が検討した結果、上記特許文献1に記載の生体用電極において、測定安定性の点で改善の余地があることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これまでの生体電極において、生体表面に接触し、センサーとして機能する柱状弾性体は、導通確保のため、その表面全体に導電層が形成されているか、あるいは上記の特許文献1に記載の母材のように、その全体が導電性部材で構成されていた。
【0006】
本発明者はさらに検討したところ、全体が導電性部材で覆われた柱状弾性体を用いた生体電位の測定時において、抵抗の変動が大きくなるため、ノイズが生じる恐れがあることが判明した。詳細なメカニズムは定かではないが、柱状弾性体が生体表面に接触し、その外側が収縮方向に、内側が伸長方向に変形すると、弾性柱状部の表面や表面近傍における抵抗値が外側と内側で大きく変動するため、と考えられる。
【0007】
このような知見に基づきさらに鋭意研究したところ、柱状弾性体の導通をその内部を通る導電線によって得ることで、柱状弾性体の変形時による抵抗の変動を抑制できるとともに、柱状弾性体の先端部を略円錐形状とすることで、先端部が円柱形状の場合と比較して生体表面に追従しやすくなり、生体接触時の大きな変形が抑制されるため、ノイズが抑制され、その結果として、測定安定性を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明によれば、
板状支持部と、
前記板状支持部の一面に設けられた、略円錐形状の弾性柱状部と、
前記弾性柱状部の先端を覆うように形成された導電性樹脂層と、
前記導電性樹脂層と電気的に接続するとともに、先端側から基端側に向かって前記弾性柱状部の内部に配置された導電線と、
を備える、生体用電極が提供される。
【0009】
また本発明によれば、上記生体用電極を備える、生体センサーが提供される。
また本発明によれば、上記生体センサーを備える、生体信号測定システムが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、測定安定性に優れた生体用電極、それを用いた生体センサーおよび生体信号測定システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の生体用電極の一例の概要を示す模式図である。(a)は斜視図であり、(b)は、(a)のA-A断面図である。
【
図2】本実施形態の生体センサーの概要を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施の形態では図示するように前後左右上下の方向を規定して説明する。しかし、これは構成要素の相対関係を簡単に説明するために便宜的に規定するものである。従って、本発明を実施する製品の製造時や使用時の方向を限定するものではない。
尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。
本明細書中、「略」という用語は、特に明示的な説明の無い限りは、製造上の公差やばらつき等を考慮した範囲を含むことを表す。
【0013】
本実施形態の生体用電極について概説する。
生体用電極は、板状支持部と、板状支持部の一面に設けられた、略円錐形状の弾性柱状部と、弾性柱状部の先端を覆うように形成された導電性樹脂層と、導電性樹脂層と電気的に接続するとともに、先端側から基端側に向かって弾性柱状部の内部に配置された導電線と、を備える。
【0014】
本発明者は、次のような知見を得た。
これまで、生体用電極の弾性柱状部の導通について、表面全体を導電性樹脂層で形成する方法や、弾性柱状部自体を導電材料で構成する方法が検討されてきた。
しかしながら、生体表面に接触した場合、弾性柱状部の内側と外側との伸び縮み変形によって、導電性樹脂層や導電材料で構成される弾性柱状部の抵抗が変動し、ノイズが生じる恐れがあることが判明した。また、弾性柱状部の変形時に、変形が大きな部分で導電性樹脂層に断線が生じる恐れもある。
【0015】
これに対して、弾性柱状部の内部に配置された導電線に導通を図る構造は、上記の方法で導通を図る構造と比較して、変形時における抵抗の変動を抑制することが可能になる。
詳細なメカニズムは定かではないが、次のようなことが考えられる。
生体表面接触時において、弾性柱状部の外側が縮み方向に、内側が引張り方向に変形する。このとき、弾性柱状部の内部を通過する導電線は、弾性柱状部の表面や表面近傍と比べて、変形や変形歪みが比較的に小さくなる。このため、弾性柱状部が接触時から徐々に大きく変形したときでも、初期抵抗(接触時抵抗)からの抵抗値の変動が抑制されるため、ノイズの発生を安定的に抑制できる。
【0016】
また、略円錐形状の柱状弾性部は、円柱形状の構造と比べて、生体表面に接触した時、その表面に追従しやすいので、押し付け力が同じ場合、大きな変形が抑制される。これによって、接触抵抗の変動の増大を抑えることができる。
【0017】
以上により、本実施形態の生体用電極は、生体接触時において、ノイズの発生を抑制できるため、測定安定性を向上することが可能になる。
【0018】
本実施形態の生体用電極は、脳波、心拍、筋肉活動、神経システム活動などの生体からの電位変動を検出できる。生体用電極はコネクタや電子部品等をさらに備えて、外部装置と接続できる生体センサーを構成できる。この生体センサーはウェアラブル可能である。生体センサーから検出された脳波などの生体電位を解析することにより、様々な用途に応じた生体信号測定システムを構築できる。
【0019】
以下、本実施形態の生体用電極の構成について詳述する。
【0020】
図1は、本実施形態の生体用電極100の概要を示す模式図で、(a)は斜視図であり、(b)は、(a)のA-A断面図である。
【0021】
図1の生体用電極100は、板状支持部10、弾性柱状部(柱状部20)および導電性樹脂層30を備える。
板状支持部10は、絶縁性弾性部材で構成されており、その一面12に少なくとも1つの柱状部20を有してもよい。柱状部20は、絶縁性弾性部材で構成されており、少なくとも先端部26が略円錐形状を有してもよい。導電性樹脂層30は、導電性弾性部材で構成されており、柱状部20の少なくとも先端22(先端部26の一部)の表面を覆うように形成されてもよい。導電線60は、柱状部20の内部に、導電性樹脂層30と導通するように配置される。
【0022】
生体用電極100の先端が測定対象に接触すると、導電性樹脂層30および導電線60を介して、柱状部20で検出した生体電気信号を、板状支持部10に設けられた外部接続部110(コネクタ)に伝送され得る。そして、コネクタを介して、生体用電極100が検出した生体電気信号が外部に伝送される。
【0023】
板状支持部10の上面視形状は、例えば、楕円や正円などの略円形でもよく、正方形、長方形、五角形、六角形などの略多角形でもよい。多角形の角部に丸み(アール)が付与されてもよい。
ここで、上面視とは、柱状部20の先端22から板状支持部10に向かって見たときの上面方向から観察することを意味する。
【0024】
板状支持部10の一面12は、平面で構成されてもよいが、外側に湾曲した湾曲面を有してもよい。ここで、一面12とは、柱状部20の傾斜面28と板状支持部10とが接する接点を少なくとも3点通過する面で構成されてもよい。また、板状支持部10と柱状部20との間は、そこに界面が存在せず、シームレスに構成されていてもよい。
【0025】
板状支持部10の他面14は、コネクタと接続可能な構造を有し得る。例えば、一面12とは反対側の他面14には、コネクタと電気的に接続可能な電極が、一部を露出した状態で埋設されてもよい。
また、他面14の少なくとも一部または全体が導電性弾性部材で覆われていてもよい。導電性弾性部材は、導電性樹脂層30と同じ材料で構成されてもよい。なお、板状支持部10の側面は導電性弾性部材で覆われていなくてもよい。
【0026】
板状支持部10は、柱状部20と一体部材で構成されてもよい。すなわち、板状支持部10は、複数の柱状部20と同じ樹脂材料で一体化して構成され得る。例えば、後述のシリコーンゴム系硬化性組成物等の硬化性エラストマー組成物を金型成形することで、板状支持部10と複数の柱状部20とをシームレスで結合した成形体が得られる。これにより、柔軟性と強度に優れた弾性成形体を実現できる。
【0027】
板状支持部10及び柱状部20のそれぞれは、絶縁性弾性部材の一つとして、導電性フィラーを含有せずに、シリコーンゴムを含む絶縁性シリコーンゴム(ゴム成形体)で構成され得る。
【0028】
柱状部20は、一または二以上の板状支持部10に設けられていてもよい。
柱状部20の上面視形状は、楕円や正円などの略円形でもよく、正方形、長方形、五角形、六角形などの略多角形でもよい。柱状部20の上面視形状と板状支持部10の上面視形状が同一であってもよい。この中でも、略円形、好ましくは正円形とすることで、測定安定性を高められる。
【0029】
また、上面視における柱状部20の基端部24の外縁部は、上面視における板状支持部10の一面12と、面積が同一に構成されてもよい、面積が小さくなるように構成されてもよい。柱状部20と板状支持部10との接地面積を広くすることで、生体用電極100の耐久性を向上できる。
【0030】
柱状部20の先端部26は、例えば、略半球状、楕円体形状、円錐形状、及び円錐台形状のいずれかで構成されてもよい。この中でも、測定安定性の観点から、略半球状、楕円体形状が用いられる。
【0031】
柱状部20の先端22は、丸み(アール)が付与されていてもよい。これにより、接触時に生体への引っかかりを抑制でき、装着安定性を向上できる。また、成形後の脱型が容易になるため、製造安定性を高められる。
先端22を通過する断面視の一つにおいて、先端22のアールは、例えば、0.25mm~5mm、より好ましくは0.5mm~3mmである。このような範囲内とすることで、装着安定性および測定安定性を高められる。
【0032】
柱状部20は、上面視における周囲の少なくとも一部に傾斜面28を有する
傾斜面28の傾斜角θは、
図1(b)に示すように、柱状部20の先端22を通過する断面視において、柱状部20の基端部24の側面(傾斜面28)と一面12とがなす角度を意味する。
傾斜面28の傾斜角θは、例えば、10~89度、好ましくは15度~85度、より好ましくは20度~75度、さらに好ましくは30度~65度である。上記下限値以上とすることにより、測定面に対する追従性を高めることができる。上記上限値以下とすることにより、変形状態のバラツキを抑制できる。
【0033】
先端部26の傾斜面29の傾斜角(傾斜面29と一面12とがなす角)は、基端部24の傾斜面28の傾斜角θと同一でもよいが、傾斜角θよりも僅かに小さくなるように構成されてもよい。これにより、傾斜角θとアールの角度を適当に調整が可能になる。先端部26の傾斜面29と基端部24の傾斜面28との間は角部やアールが形成されてもよいが、シームレスに構成されていてもよい。
【0034】
柱状部20の中心軸は、先端22を通過する断面において、板状支持部10の中心と一致してもよいが、中心が偏心した構造を有していてもよい。偏心構造の柱状部20の中心軸は、板状支持部10の中心部分から側面側に向かって傾く構成としてもよい。
【0035】
板状支持部10の高さをH1、柱状部20の高さをH2としたとき、H2/H1は、例えば、0.5~20、好ましくは1~15、より好ましくは2~10である。このような範囲内とすることで、測定安定性および製造安定性を高めることができる。
【0036】
柱状部20は、内部に導電線60を備える。
導電線60は、先端22を覆う導電性樹脂層30と電気的に接続するとともに、先端部26から基端部24に向かって柱状部20の内部に配置される。
【0037】
導電線60は、公知のものを使用することができるが、例えば、導電繊維で構成され得る。
導電繊維としては、金属繊維、金属被覆繊維、炭素繊維、導電性ポリマー繊維、導電性ポリマー被覆繊維、および導電ペースト被覆繊維からなる群から選択される一種以上を用いることができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
上記金属繊維、金属被覆繊維、の金属材料は、導電性を有するものであれば限定されないが、銅、銀、金、ニッケル、錫、鉛、亜鉛、ビスマス、アンチモン、ステンレス、アルミニウム、銀/塩化銀およびこれらの合金等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、導通性の観点から、銀を用いることができる。また、金属材料は、クロム等の環境に負荷を与える金属を含まないことが好ましい。
【0039】
上記金属被覆繊維、導電性ポリマー被覆繊維、導電ペースト被覆繊維の繊維材料は、特に限定されないが、合成繊維、半合成繊維、天然繊維のいずれでもよい。これらの中でも、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン、絹および綿等を用いることが好ましい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
上記炭素繊維は、例えば、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等が挙げられる。
【0041】
上記導電性ポリマー繊維および導電性ポリマー被覆繊維の導電性ポリマー材料は、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、ポリナフタレン、及びこれらの誘導体等の導電性高分子およびバインダ樹脂の混合物、あるいは、PEDOT-PSS((3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸))等の導電性高分子の水溶液が用いられる。
【0042】
上記導電ペースト被覆繊維の導電ペーストに含まれる樹脂材料は特に限定されないが伸縮性を有することが好ましく、例えばシリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、スチレンゴム、クロロプレンゴム、およびエチレンプロピレンゴムからなる群から選択される一種以上を含むことができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
上記導電ペースト被覆繊維の導電ペーストに含まれる導電性フィラーは特に限定されないが、公知の導電材料を用いてもよいが、金属粒子、金属繊維、金属被覆繊維、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、炭素繊維、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー、導電性ポリマー被覆繊維および金属ナノワイヤーからなる群から選択される一種以上を含むことができる。
【0044】
上記導電性フィラーを構成する金属は、特に限定はされないが、例えば、銅、銀、金、ニッケル、錫、鉛、亜鉛、ビスマス、アンチモン、銀/塩化銀、或いはこれらの合金のうち少なくとも一種類、あるいは、これらのうちの二種以上を含むことができる。この中でも、導電性の高さや入手容易性の高さから、銀または銅が好ましい。
【0045】
上記導電線60が、線状の導電繊維を複数本撚り合わせた撚糸で構成されてもよい。これにより、変形時における導電線60の断線を抑制できる。
【0046】
本明細書において、導電繊維における被覆とは、単に繊維材料の外表面を覆うことのみならず、単繊維を撚り合わせた撚糸などの場合は、その撚糸の中の繊維間隙に金属、導電性ポリマー、または導電ペーストが含浸し、撚糸を構成する単繊維を1本毎に被覆するものを含む。
【0047】
上記導電線60の引張破断伸度は、例えば、1%以上~50%以下、好ましくは1.5%以上~45%である。このような数値範囲内とすることで、変形時の破断を抑制しつつも、柱状部20の過度な変形を抑制できる。
導電線60は、柱状部20の内部を導通する態様であれば各種の配置構造を採用し得る。
例えば、導電線60の先端は、柱状部20の先端22あるいは先端部26の傾斜面29に対して、突出した構造、略同一面上となる構造、埋没した構造のいずれでもよい。導電性樹脂層30との接続安定性の観点から、突出した構造を用いてもよい。導電線60の先端の突出部分は、一部または全体が導電性樹脂層30で覆われている。
【0048】
導電線60の先端の吐出構造は、折り返し無し、折り返し有り、柱状部20の先端部26の表面に巻き付ける構造が採用し得る。また、導電線60は、柱状部20の中心軸を通過せず、中心軸に対して傾斜してもよい。
【0049】
導電線60の先端と反対側の他端は、板状支持部10の他面14に接続されるコネクタと電気的に導通を図ることができればどのような構成とされていてもよい。例えば、導電線60の他端は、柱状部20の基端部24を通過し、さらに板状支持部10の一面12、側面あるは、他面14側まで延在していてもよい。導電線60の他端は、他面14に設けられた導電性樹脂層30を介してコネクタと電気的に接続してもよい。
【0050】
導電性樹脂層30は、柱状部20の少なくとも先端22の表面を覆うように構成されてもよく、柱状部20の先端22から先端部26まで、先端22から基端部24の途中まで覆うように構成されてもよい。すなわち、柱状部20の表面全体を覆わないように構成すればよい。
この導電性樹脂層30は、先端22を覆う部分と離間して、板状支持部10の一面12や他面14を覆うように構成されてもよい。
【0051】
導電性樹脂層30は、導電性弾性部材の一つとして、導電性フィラーとシリコーンゴムとを含む導電性シリコーンゴムで構成される。例えば、後述の導電性フィラーを含まない絶縁性シリコーンゴム系硬化性組成物に、導電性フィラーを加えた導電性溶液(導電性シリコーンゴム系硬化性組成物)を、上記の成形体に塗布することにより、導電性樹脂層30を形成できる。板状支持部10や柱状部20を構成するシリコーンゴムと同種のシリコーンゴム材料を用いることで、導電性樹脂層30の密着性を向上できる。
【0052】
上記導電性フィラーは、公知の導電材料を用いてもよいが、金属粒子、銀/塩化銀粒子、金属繊維、金属被覆繊維、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、炭素繊維、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー、導電性ポリマー被覆繊維および金属ナノワイヤーからなる群から選択される一種以上を含むことができる。
【0053】
上記導電性フィラーを構成する金属は、特に限定はされないが、例えば、銅、銀、金、ニッケル、錫、鉛、亜鉛、ビスマス、アンチモン、銀/塩化銀、或いはこれらの合金のうち少なくとも一種類、あるいは、これらのうちの二種以上を含むことができる。この中でも、導電性の高さや入手容易性の高さから、銀または銅が好ましい。
【0054】
上記導電性フィラーの含有量の下限値は、導電性樹脂層30中のシリコーンゴム100質量%に対して、例えば、30質量%以上、好ましくは35質量%以上、より好ましくは40質量%以上である。これにより、薄膜の場合でも、生体電気信号の伝送性を高めることができる。一方、上記導電性フィラーの含有量の上限値は、導電性樹脂層30中のシリコーンゴム100質量%に対して、例えば、90質量%以下、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。これにより、柱状部20の変形に対する導電性樹脂層30の耐久性を高めることができる。
【0055】
導電性樹脂層30の膜厚の下限値は、例えば、5μm以上、好ましくは8μm以上、より好ましくは10μm以上である。これにより、繰り返し使用時の耐久性を高めることができる。一方、導電性樹脂層30の膜厚の上限値は、例えば、200μm以下、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。これにより、柱状部20の変形容易性を維持することが可能である。また、薄膜とすることで、柱状部20のゴム硬度Aについて、所望値からの変動を抑制できる。柱状部20の断面視において、柱状部20の先端22または側面上の少なくとも一部の導電性樹脂層30の膜厚が上記数値範囲内とすることが好ましい。
【0056】
導電性樹脂層30の膜厚において、柱状部20の先端22表面における膜厚D1が、板状支持部10の他面14表面における膜厚D2と比べて厚くなるように構成されてもよい。例えば、上述の導電性溶液を塗布した後に、さらに、導電性樹脂層30がコーティングされた柱状部20の一部を、ペースト状の導電性溶液にディップ(浸漬塗布)を行ってもよい。これにより、柱状部20の先端22や先端22から所定部分(例えば、柱状部20全体の1/2、1/3または1/4)までを比較的に厚膜とすることができる。この厚膜は柱状部20の先端部の周方向全体に設けられていることが好ましい。これにより、導電性樹脂層30の先端部での剥離を抑制し、柱状部20の断線などの破損を抑制できる。このため、生体用電極100の耐久性を向上できる。
【0057】
本実施形態において、37℃、JIS K 6253(1997)に準拠して測定される、柱状部20(弾性柱状部)の表面におけるタイプAデュロメータ硬さをゴム硬度Aとする。
ゴム硬度Aの測定対象は、柱状部20を用いる方法、柱状部20と板状支持部10が一体部材で構成される場合に板状支持部10を用いる方法、これらを構成するシリコーンゴムを用いる方法が採用できる。また、導電性樹脂層30が薄層によりゴム硬度Aに殆ど影響を与えない場合には、表面に導電性樹脂層30が形成された柱状部20あるいは板状支持部10を測定対象として用いてもよい。これらから試験片を作製し、その試験片を測定対象(サンプル)とし得る。複数の試験片を重ねたものをサンプル厚みとしてもよい。なお、押針から試験片端までの距離が12mm未満でも、ある程度距離があれば許容できる。
【0058】
上記ゴム硬度Aの下限は、例えば、15以上、好ましくは18以上、より好ましくは20以上である。これにより、接触抵抗を低く、脳波取得率を高められる。一方、上記ゴム硬度Aの上限は、65以下、好ましくは53以下、より好ましくは50以下である。これにより、接触抵抗を低くできる。また、測定部分への接触時に柱状部20が容易に変形でき、測定部分の形状に追従した状態に変形できるため、対象者(ユーザー)の装着感を高め、経時的使用時の違和感を抑制できる。
【0059】
ここで、上記シリコーンゴム系硬化性組成物について説明する。
上記シリコーンゴムは、シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物で構成することができる。シリコーンゴム系硬化性樹脂組成物の硬化工程は、例えば、100~250℃で1~30分間加熱(1次硬化)した後、100~200℃で1~4時間ポストベーク(2次硬化)することによって行われる。
【0060】
絶縁性シリコーンゴムは、導電性フィラーを含まないシリコーンゴムであり、導電性シリコーンゴムは導電性フィラーを含むシリコーンゴムである。
【0061】
本実施形態に係るシリコーンゴム系硬化性組成物は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)を含むことができる。ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)は、本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物の主成分となる重合物である。
【0062】
絶縁性シリコーンゴム系硬化性組成物および導電性シリコーンゴム系硬化性組成物は、同種のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンを含んでもよい。同種のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンとは、少なくとも官能基が同じビニル基を含み、直鎖状を有していればよく、分子中のビニル基量や分子量分布、あるいはその添加量が異なっていてもよい。
なお、絶縁性シリコーンゴム系硬化性組成物および導電性シリコーンゴム系硬化性組成物は、互いに異なるビニル基含有オルガノポリシロキサンをさらに含んでもよい。
【0063】
上記ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)は、直鎖構造を有するビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)を含むことができる。
【0064】
上記ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)は、直鎖構造を有し、かつ、ビニル基を含有しており、かかるビニル基が硬化時の架橋点となる。
【0065】
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)のビニル基の含有量は、特に限定されないが、例えば、分子内に2個以上のビニル基を有し、かつ15モル%以下であるのが好ましく、0.01~12モル%であるのがより好ましい。これにより、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)中におけるビニル基の量が最適化され、後述する各成分とのネットワークの形成を確実に行うことができる。本実施形態において、「~」は、その両端の数値を含むことを意味する。
【0066】
なお、本明細書中において、ビニル基含有量とは、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)を構成する全ユニットを100モル%としたときのビニル基含有シロキサンユニットのモル%である。ただし、ビニル基含有シロキサンユニット1つに対して、ビニル基1つであると考える。
【0067】
また、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)の重合度は、特に限定されないが、例えば、好ましくは1000~10000程度、より好ましくは2000~5000程度の範囲内である。なお、重合度は、例えばクロロホルムを展開溶媒としたGPC(ゲル透過クロマトグラフィー)におけるポリスチレン換算の数平均重合度(又は数平均分子量)等として求めることができる。
【0068】
さらに、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)の比重は、特に限定されないが、0.9~1.1程度の範囲であるのが好ましい。
【0069】
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)として、上記のような範囲内の重合度および比重を有するものを用いることにより、得られるシリコーンゴムの耐熱性、難燃性、化学的安定性等の向上を図ることができる。
【0070】
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)としては、特に、下記式(1)で表される構造を有するものであるが好ましい。
【0071】
【0072】
式(1)中、R1は炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられ、中でも、ビニル基が好ましい。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基等が挙げられる。
【0073】
また、R2は炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基が挙げられる。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
【0074】
また、R3は炭素数1~8の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
【0075】
さらに、式(1)中のR1およびR2の置換基としては、例えば、メチル基、ビニル基等が挙げられ、R3の置換基としては、例えば、メチル基等が挙げられる。
【0076】
なお、式(1)中、複数のR1は互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。さらに、R2、およびR3についても同様である。
【0077】
さらに、m、nは、式(1)で表されるビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)を構成する繰り返し単位の数であり、mは0~2000の整数、nは1000~10000の整数である。mは、好ましくは0~1000であり、nは、好ましくは2000~5000である。
【0078】
また、式(1)で表されるビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)の具体的構造としては、例えば下記式(1-1)で表されるものが挙げられる。
【0079】
【0080】
式(1-1)中、R1およびR2は、それぞれ独立して、メチル基またはビニル基であり、少なくとも一方がビニル基である。
【0081】
さらに、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)としては、ビニル基含有量が分子内に2個以上のビニル基を有し、かつ0.4モル%以下である第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)と、ビニル基含有量が0.5~15モル%である第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)とを含有するものであるのが好ましい。シリコーンゴムの原料である生ゴムとして、一般的なビニル基含有量を有する第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)と、ビニル基含有量が高い第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)とを組み合わせることで、ビニル基を偏在化させることができ、シリコーンゴムの架橋ネットワーク中に、より効果的に架橋密度の疎密を形成することができる。その結果、より効果的にシリコーンゴムの引裂強度を高めることができる。
【0082】
具体的には、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)として、例えば、上記式(1-1)において、R1がビニル基である単位および/またはR2がビニル基である単位を、分子内に2個以上有し、かつ0.4モル%以下を含む第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)と、R1がビニル基である単位および/またはR2がビニル基である単位を、0.5~15モル%含む第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)とを用いるのが好ましい。
【0083】
また、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)は、ビニル基含有量が0.01~0.2モル%であるのが好ましい。また、第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)は、ビニル基含有量が、0.8~12モル%であるのが好ましい。
【0084】
さらに、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)と第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)とを組み合わせて配合する場合、(A1-1)と(A1-2)の比率は特に限定されないが、例えば、重量比で(A1-1):(A1-2)が50:50~95:5であるのが好ましく、80:20~90:10であるのがより好ましい。
【0085】
なお、第1および第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)および(A1-2)は、それぞれ1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0086】
また、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)は、分岐構造を有するビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン(A2)を含んでもよい。
【0087】
<<オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)>>
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、架橋剤を含んでもよい。架橋剤は、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)を含むことができる。
オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)は、直鎖構造を有する直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)と分岐構造を有する分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)とに分類され、これらのうちのいずれか一方または双方を含むことができる。
【0088】
絶縁性シリコーンゴム系硬化性組成物および導電性シリコーンゴム系硬化性組成物は、同種の架橋剤を含んでもよい。同種の架橋剤とは、少なくとも直鎖構造や分岐構造などの共通の構造を有していればよく、分子中の分子量分布や異なる官能基が含まれていてもよく、その添加量が異なっていてもよい。
なお、絶縁性シリコーンゴム系硬化性組成物および導電性シリコーンゴム系硬化性組成物は、互いに異なる架橋剤をさらに含んでもよい。
【0089】
直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)は、直鎖構造を有し、かつ、Siに水素が直接結合した構造(≡Si-H)を有し、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)のビニル基の他、シリコーンゴム系硬化性組成物に配合される成分が有するビニル基とヒドロシリル化反応し、これらの成分を架橋する重合体である。
【0090】
直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)の分子量は特に限定されないが、例えば、重量平均分子量が20000以下であるのが好ましく、1000以上、10000以下であることがより好ましい。
【0091】
なお、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)の重量平均分子量は、例えばクロロホルムを展開溶媒としたGPC(ゲル透過クロマトグラフィー)におけるポリスチレン換算により測定することができる。
【0092】
また、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)は、通常、ビニル基を有しないものであるのが好ましい。これにより、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)の分子内において架橋反応が進行するのを的確に防止することができる。
【0093】
以上のような直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)としては、例えば、下記式(2)で表される構造を有するものが好ましく用いられる。
【0094】
【0095】
式(2)中、R4は炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、これらを組み合わせた炭化水素基、またはヒドリド基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられる。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
【0096】
また、R5は炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、これらを組み合わせた炭化水素基、またはヒドリド基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられる。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
【0097】
なお、式(2)中、複数のR4は互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。R5についても同様である。ただし、複数のR4およびR5のうち、少なくとも2つ以上がヒドリド基である。
【0098】
また、R6は炭素数1~8の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。複数のR6は互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。
【0099】
なお、式(2)中のR4,R5,R6の置換基としては、例えば、メチル基、ビニル基等が挙げられ、分子内の架橋反応を防止する観点から、メチル基が好ましい。
【0100】
さらに、m、nは、式(2)で表される直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)を構成する繰り返し単位の数であり、mは2~150整数、nは2~150の整数である。好ましくは、mは2~100の整数、nは2~100の整数である。
【0101】
なお、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0102】
分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、分岐構造を有するため、架橋密度が高い領域を形成し、シリコーンゴムの系中の架橋密度の疎密構造形成に大きく寄与する成分である。また、上記直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)同様、Siに水素が直接結合した構造(≡Si-H)を有し、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)のビニル基の他、シリコーンゴム系硬化性組成物に配合される成分のビニル基とヒドロシリル化反応し、これら成分を架橋する重合体である。
【0103】
また、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)の比重は、0.9~0.95の範囲である。
【0104】
さらに、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、通常、ビニル基を有しないものであるのが好ましい。これにより、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)の分子内において架橋反応が進行するのを的確に防止することができる。
【0105】
また、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)としては、下記平均組成式(c)で示されるものが好ましい。
【0106】
平均組成式(c)
(Ha(R7)3-aSiO1/2)m(SiO4/2)n
(式(c)において、R7は一価の有機基、aは1~3の範囲の整数、mはHa(R7)3-aSiO1/2単位の数、nはSiO4/2単位の数である)
【0107】
式(c)において、R7は一価の有機基であり、好ましくは、炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
【0108】
式(c)において、aは、ヒドリド基(Siに直接結合する水素原子)の数であり、1~3の範囲の整数、好ましくは1である。
【0109】
また、式(c)において、mはHa(R7)3-aSiO1/2単位の数、nはSiO4/2単位の数である。
【0110】
分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は分岐状構造を有する。直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)と分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、その構造が直鎖状か分岐状かという点で異なり、Siの数を1とした時のSiに結合するアルキル基Rの数(R/Si)が、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)では1.8~2.1、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)では0.8~1.7の範囲となる。
【0111】
なお、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、分岐構造を有しているため、例えば、窒素雰囲気下、1000℃まで昇温速度10℃/分で加熱した際の残渣量が5%以上となる。これに対して、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)は、直鎖状であるため、上記条件で加熱した後の残渣量はほぼゼロとなる。
【0112】
また、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)の具体例としては、下記式(3)で表される構造を有するものが挙げられる。
【0113】
【0114】
式(3)中、R7は炭素数1~8の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基、もしくは水素原子である。炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。R7の置換基としては、例えば、メチル基等が挙げられる。
【0115】
なお、式(3)中、複数のR7は互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。
【0116】
また、式(3)中、「-O-Si≡」は、Siが三次元に広がる分岐構造を有することを表している。
【0117】
なお、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0118】
また、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)と分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)において、Siに直接結合する水素原子(ヒドリド基)の量は、それぞれ、特に限定されない。ただし、シリコーンゴム系硬化性組成物において、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)中のビニル基1モルに対し、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)と分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)の合計のヒドリド基量が、0.5~5モルとなる量が好ましく、1~3.5モルとなる量がより好ましい。これにより、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)および分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)と、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)との間で、架橋ネットワークを確実に形成させることができる。
【0119】
<<シリカ粒子(C)>>
本実施形態に係るシリコーンゴム系硬化性組成物は、非導電性フィラーを含む。非導電性フィラーは、必要に応じ、シリカ粒子(C)を含んでもよい。これにより、エラストマーの硬さや機械的強度の向上を図ることができる。
【0120】
絶縁性シリコーンゴム系硬化性組成物および導電性シリコーンゴム系硬化性組成物は、同種の非導電性フィラーを含んでもよい。同種の非導電性フィラーとは、少なくとも共通の構成材料を有していればよく、粒子径、比表面積、表面処理剤、又はその添加量が異なっていてもよい。
なお、絶縁性シリコーンゴム系硬化性組成物および導電性シリコーンゴム系硬化性組成物は、互いに異なるシランカップリング剤をさらに含んでもよい。
【0121】
シリカ粒子(C)としては、特に限定されないが、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ等が用いられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0122】
シリカ粒子(C)は、例えば、BET法による比表面積が例えば50~400m2/gであるのが好ましく、100~400m2/gであるのがより好ましい。また、シリカ粒子(C)の平均一次粒径は、例えば1~100nmであるのが好ましく、5~20nm程度であるのがより好ましい。
【0123】
シリカ粒子(C)として、かかる比表面積および平均粒径の範囲内であるものを用いることにより、形成されるシリコーンゴムの硬さや機械的強度の向上、特に引張強度の向上をさせることができる。
【0124】
<<シランカップリング剤(D)>>
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、シランカップリング剤(D)を含むことができる。
シランカップリング剤(D)は、加水分解性基を有することができる。加水分解基が水により加水分解されて水酸基になり、この水酸基がシリカ粒子(C)表面の水酸基と脱水縮合反応することで、シリカ粒子(C)の表面改質を行うことができる。
【0125】
絶縁性シリコーンゴム系硬化性組成物および導電性シリコーンゴム系硬化性組成物は、同種のシランカップリング剤を含んでもよい。同種のシランカップリング剤とは、少なくとも共通の官能基を有していればよく、分子中の他の官能基や添加量が異なっていてもよい。
なお、絶縁性シリコーンゴム系硬化性組成物および導電性シリコーンゴム系硬化性組成物は、互いに異なるシランカップリング剤をさらに含んでもよい。
【0126】
また、このシランカップリング剤(D)は、疎水性基を有するシランカップリング剤を含むことができる。これにより、シリカ粒子(C)の表面にこの疎水性基が付与されるため、シリコーンゴム系硬化性組成物中ひいてはシリコーンゴム中において、シリカ粒子(C)の凝集力が低下(シラノール基による水素結合による凝集が少なくなる)し、その結果、シリコーンゴム系硬化性組成物中のシリカ粒子(C)の分散性が向上すると推測される。これにより、シリカ粒子(C)とゴムマトリックスとの界面が増加し、シリカ粒子(C)の補強効果が増大する。さらに、ゴムのマトリックス変形の際、マトリックス内でのシリカ粒子(C)の滑り性が向上すると推測される。そして、シリカ粒子(C)の分散性の向上及び滑り性の向上によって、シリカ粒子(C)によるシリコーンゴムの機械的強度(例えば、引張強度や引裂強度など)が向上する。
【0127】
さらに、シランカップリング剤(D)は、ビニル基を有するシランカップリング剤を含むことができる。これにより、シリカ粒子(C)の表面にビニル基が導入される。そのため、シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化の際、すなわち、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)が有するビニル基と、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)が有するヒドリド基とがヒドロシリル化反応して、これらによるネットワーク(架橋構造)が形成される際に、シリカ粒子(C)が有するビニル基も、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)が有するヒドリド基とのヒドロシリル化反応に関与するため、ネットワーク中にシリカ粒子(C)も取り込まれるようになる。これにより、形成されるシリコーンゴムの低硬度化および高モジュラス化を図ることができる。
【0128】
シランカップリング剤(D)としては、疎水性基を有するシランカップリング剤およびビニル基を有するシランカップリング剤を併用することができる。
【0129】
シランカップリング剤(D)としては、例えば、下記式(4)で表わされるものが挙げられる。
【0130】
Yn-Si-(X)4-n・・・(4)
上記式(4)中、nは1~3の整数を表わす。Yは、疎水性基、親水性基またはビニル基を有するもののうちのいずれかの官能基を表わし、nが1の時は疎水性基であり、nが2または3の時はその少なくとも1つが疎水性基である。Xは、加水分解性基を表わす。
【0131】
疎水性基は、炭素数1~6のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基等が挙げられ、中でも、特に、メチル基が好ましい。
【0132】
また、親水性基は、例えば、水酸基、スルホン酸基、カルボキシル基またはカルボニル基等が挙げられ、中でも、特に、水酸基が好ましい。なお、親水性基は、官能基として含まれていてもよいが、シランカップリング剤(D)に疎水性を付与するという観点からは含まれていないのが好ましい。
【0133】
さらに、加水分解性基は、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基、クロロ基またはシラザン基等が挙げられ、中でも、シリカ粒子(C)との反応性が高いことから、シラザン基が好ましい。なお、加水分解性基としてシラザン基を有するものは、その構造上の特性から、上記式(4)中の(Yn-Si-)の構造を2つ有するものとなる。
【0134】
上記式(4)で表されるシランカップリング剤(D)の具体例は、次の通りである。
上記官能基として疎水性基を有するものとして、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシランのようなアルコキシシラン;メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシランのようなクロロシラン;ヘキサメチルジシラザンが挙げられる。この中でも、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシラン、及びトリメチルエトキシシランからなる群から選択される一種以上を含むトリメチルシリル基を有するシランカップリング剤が好ましい。
【0135】
上記官能基としてビニル基を有するものとして、例えば、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシランのようなアルコキシシラン;ビニルトリクロロシラン、ビニルメチルジクロロシランのようなクロロシラン;ジビニルテトラメチルジシラザンが挙げられる。この中でも、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ジビニルテトラメチルジシラザン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、及びビニルメチルジメトキシシランからなる群から選択される一種以上を含むビニル基含有オルガノシリル基を有するシランカップリング剤が好ましい。
【0136】
またシランカップリング剤(D)がトリメチルシリル基を有するシランカップリング剤およびビニル基含有オルガノシリル基を有するシランカップリング剤の2種を含む場合、疎水性基を有するものとしてはヘキサメチルジシラザン、ビニル基を有するものとしてはジビニルテトラメチルジシラザンを含むことが好ましい。
【0137】
トリメチルシリル基を有するシランカップリング剤(D1)およびビニル基含有オルガノシリル基を有するシランカップリング剤(D2)を併用する場合、(D1)と(D2)の比率は、特に限定されないが、例えば、重量比で(D1):(D2)が、1:0.001~1:0.35、好ましくは1:0.01~1:0.20、より好ましくは1:0.03~1:0.15である。このような数値範囲とすることにより、所望のシリコーンゴムの物性を得ることができる。具体的には、ゴム中におけるシリカの分散性およびゴムの架橋性のバランスを図ることができる。
【0138】
本実施形態において、シランカップリング剤(D)の含有量の下限値は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)の合計量100重量部に対して、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。また、シランカップリング剤(D)の含有量上限値は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)の合計量100重量部に対して、100質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましい。
シランカップリング剤(D)の含有量を上記下限値以上とすることにより、エラストマーを含む柱状部と導電性樹脂層との密着性を高めることができる。また、シリコーンゴムの機械的強度の向上に資することができる。また、シランカップリング剤(D)の含有量を上記上限値以下とすることにより、シリコーンゴムが適度な機械特性を持つことができる。
【0139】
<<白金または白金化合物(E)>>
本実施形態に係るシリコーンゴム系硬化性組成物は、触媒を含んでもよい。触媒は、白金または白金化合物(E)を含むことができる。白金または白金化合物(E)は、硬化の際の触媒として作用する触媒成分である。白金または白金化合物(E)の添加量は触媒量である。
【0140】
絶縁性シリコーンゴム系硬化性組成物および導電性シリコーンゴム系硬化性組成物は、同種の触媒を含んでもよい。同種の触媒とは、少なくとも共通の構成材料を有していればよく、触媒中に異なる組成が含まれていてもよく、その添加量が異なっていてもよい。
なお、絶縁性シリコーンゴム系硬化性組成物および導電性シリコーンゴム系硬化性組成物は、互いに異なる触媒をさらに含んでもよい。
【0141】
白金または白金化合物(E)としては、公知のものを使用することができ、例えば、白金黒、白金をシリカやカーボンブラック等に担持させたもの、塩化白金酸または塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とオレフィンの錯塩、塩化白金酸とビニルシロキサンとの錯塩等が挙げられる。
【0142】
なお、白金または白金化合物(E)は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0143】
本実施形態において、シリコーンゴム系硬化性組成物中における白金または白金化合物(E)の含有量は、触媒量を意味し、適宜設定することができるが、具体的にはビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)、シリカ粒子(C)、シランカップリング剤(D)の合計量100重量部に対して、白金族金属が重量単位で0.01~1000ppmとなる量であり、好ましくは、0.1~500ppmとなる量である。
白金または白金化合物(E)の含有量を上記下限値以上とすることにより、シリコーンゴム系硬化性組成物が適切な速度で硬化することが可能となる。また、白金または白金化合物(E)の含有量を上記上限値以下とすることにより、製造コストの削減に資することができる。
【0144】
<<水(F)>>
また、本実施形態に係るシリコーンゴム系硬化性組成物には、上記成分(A)~(E)以外に、水(F)が含まれていてもよい。
【0145】
水(F)は、シリコーンゴム系硬化性組成物に含まれる各成分を分散させる分散媒として機能するとともに、シリカ粒子(C)とシランカップリング剤(D)との反応に寄与する成分である。そのため、シリコーンゴム中において、シリカ粒子(C)とシランカップリング剤(D)とを、より確実に互いに連結したものとすることができ、全体として均一な特性を発揮することができる。
【0146】
(その他の成分)
さらに、本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、上記(A)~(F)成分以外に、他の成分をさらに含むことができる。この他の成分としては、例えば、珪藻土、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化セリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、ガラスウール、マイカ等のシリカ粒子(C)以外の無機充填材、反応阻害剤、分散剤、顔料、染料、帯電防止剤、酸化防止剤、難燃剤、熱伝導性向上剤等の添加剤が挙げられる。
【0147】
本実施形態に係る導電性溶液(導電性シリコーンゴム組成物)は、導電性フィラーを含まない上記シリコーンゴム系硬化性組成物に加えて、上記導電性フィラーおよび溶剤を含むものである。
【0148】
上記溶剤としては、公知の各種溶剤を用いることができるが、例えば、高沸点溶剤を含むことができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0149】
上記溶剤の一例としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカンなどの脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、トリフルオロメチルベンゼン、ベンゾトリフルオリドなどの芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、シクロペンチルエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;ジクロロメタン、クロロホルム、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタンなどのハロアルカン類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなどのカルボン酸アミド類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド類などを例示することができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0150】
上記導電性溶液は、溶液中の固形分量などを調整することで、スプレー塗布やディップ塗布等の各種の塗布方法に適切な粘度を備えることができる。
【0151】
また、上記導電性溶液が上記導電性フィラーおよび上記シリカ粒子(C)を含む場合、導電性樹脂層30が含むシリカ粒子(C)の含有量の下限値は、シリカ粒子(C)および導電性フィラーの合計量100質量%に対して、例えば、1質量%以上であり、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上とすることができる。これにより、導電性樹脂層30の機械的強度を向上させることができる。一方で、上記導電性樹脂層30が含むシリカ粒子(C)の含有量の上限値は、シリカ粒子(C)および導電性フィラーの合計量100質量%に対して、例えば、20質量%以下であり、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下である。これにより、導電性樹脂層30における導電性と機械的強度や柔軟性とのバランスを図ることができる。
【0152】
導電性溶液を必要に応じて加熱乾燥することで、導電性シリコーンゴムが得られる。
導電性シリコーンゴムは、シリコーンオイルを含まない構成であってもよい。これにより、導電性樹脂層30の表面にシリコーンオイルがブリードアウトすることで導通性が低下することを抑制できる。
【0153】
本実施形態の生体用電極100の製造方法の一例は次の工程を含むことができる。
まず、金型を用いて、上記シリコーンゴム系硬化性組成物を加熱加圧成形し、板状支持部10および柱状部20を有する成形体を得る(成形工程)。
【0154】
続いて、導電線60を柱状部20の内部に挿入させる(導電線挿入工程)。例えば、針を使って導電線60を柱状部20の内部に通すことができる。なお、ミシンを使用することで量産可能である。
あるいは、上記成形工程時において、導電線60を配置した成形空間内に、上記シリコーンゴム系硬化性組成物を導入し、加圧加熱成形するインサート成形を用いてもよい。
【0155】
続いて、得られた成形体の柱状部20の先端部26を、上記導電性溶液にディップ塗布し、加熱乾燥する(先端被覆工程)。先端部26に、導電性溶液をスプレー塗布し、加熱乾燥してもよい。これにより、柱状部20の先端22を覆う導電性樹脂層30を形成する。
その後、所定の温度・温度条件でポストキュア(アニール工程)を行う。
以上により、生体用電極100を製造することができる。
【0156】
その他の製造方法の一例として、次のような工程を有してもよい。
成形工程で、例えば、複数の凹部を有する金型を用いて、複数の柱状部20および板状支持部10のセットが形成された成形体シートを得る。
続いて、導電線挿入工程で、成形体シート中の複数の柱状部20に導電線60を差し込む。
続いて、先端被覆工程で、成形体シート中の複数の柱状部20の先端部26において、少なくとも先端22を覆う導電性樹脂層30を形成する。
続いて、成形体シートから、板状支持部10、柱状部20、導電線60、及び導電性樹脂層30を備える個片化成形体を取り出す(個片化工程)。取り出す方法として、例えば、成形体シートを打ち抜く方法を採用してもよい。
その後、アニール工程で、それぞれの個片化成形体をポストキュアする。
以上により、生体用電極100を製造できる。
【0157】
なお、上記成形工程の後、上記導電線挿入工程の前に、柱状部20の先端部26を所望の形状に切断(カット)し、傾斜面を形成してもよい。あるいは、カットに代えて、金型成形により、柱状部20の先端部26に傾斜面を形成してもよい。
【0158】
本実施形態の生体用電極100は、脳、心臓、筋肉、神経等の生体活動から発生する生体電気信号を検知することができる。この生体用電極100は、柔軟性を備えることから、頭皮への装着性に優れるため、脳波測定用電極として好適に用いることができる。
【0159】
生体用電極100を使用した脳波測定用電極は、BMI(Brain Machine Interface)への活用が期待される。
【0160】
また、生体用電極100は、測定部分にジェルの塗布が必要なウエットセンサーではなく、簡便で繰り返し使用が可能なドライセンサーとして使用できる。また、生体用電極100は、バネ付きの金属ピン型のドライセンサーと比較して、対象者(ユーザー)の痛みや違和感を軽減できる柔軟性を有することができる。また、生体用電極100は小型化によりウェアラブルデバイスに搭載可能である。
【0161】
本実施形態の生体センサーについて説明する。
図2は、生体センサー200の一例の概要を示す模式図である。
本実施形態の生体センサー200は、生体用電極100を備えており、生体用電極100に接続した外部接続部110をさらに備えることができる。
【0162】
外部接続部110は、生体用電極100の板状支持部10に取り外し自在に取り付けられていてもよいが、板状支持部10に固定されていてよい。
【0163】
外部接続部110は、耐久性の観点からシリコーンゴムより強固であり、導電性を有する外部電極部を少なくとも備える。外部電極部は、例えば、金属製で構成される。この外部電極部は、生体用電極100で検知した生体電気信号を、外部の電子部品に送ることができる。外部電極部の形状は、特に限定されないが、電子部品と接続可能なコネクタや、配線が取り付け可能に構成される。例えば、外部接続部110は金属製のスナップボタンで構成され、外部の配線や基板の電極とコンタクトピンで電気的に接続される構造を有し得る。
【0164】
生体センサー200は、外部接続部110を介して電気的に接続可能な電子部品をさらに備えてもよい。電子部品としては、各種用途に応じて公知の部品を使用できるが、例えば、増幅器(アンプ)、AD変換器、CPU、メモリ、通信回路、無線通信ユニット、アナログフィルター、コンデンサー、抵抗器、バッテリー等が挙げられる。これらの1個または2個以上が、回路基板上にモジュール化されていてもよい。これにより、生体センサー200をウェアラブルデバイスとして活用できる。
また、電子部品として、加速センサー、温度センサー、圧力センサーなどの他のセンサーを併用してもよい。
【0165】
生体センサー200は、1個または2個以上の複数の生体用電極100を備える。生体センサー200は、ヘッドギアやアームバンドなどの生体への取り付け治具に設置されていてもよい。
【0166】
本実施形態の生体信号測定システムについて説明する。
本実施形態の生体信号測定システムは、生体センサー200を備えるものである。生体信号測定システムは、生体センサー200から受けたデータを、表示、解析または保存するシステム(測定装置)であり得る。
【0167】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例0168】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0169】
表1に示す原料成分は以下の通りである。
【0170】
(ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A))
(A1-1):第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン:ビニル基含有量は0.04モル%、Mn=2,2×105、Mw=4,8×105)、下記の合成スキーム1により合成したビニル基含有ジメチルポリシロキサン(上記式(1-1)で表わされる構造)
(A1-2):第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン:ビニル基含有量は0.93モル%、下記の合成スキーム2により合成したビニル基含有ジメチルポリシロキサン(上記式(1-1)で表わされる構造でR1およびR2がビニル基である構造)
【0171】
(オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B))
(B):オルガノハイドロジェンポリシロキサン:モメンティブ社製、「TC-25D」
【0172】
(シリカ粒子(C))
(C):シリカ微粒子(粒径7nm、比表面積300m2/g)、日本アエロジル社製、「AEROSIL300」
【0173】
(シランカップリング剤(D))
(D-1):ヘキサメチルジシラザン(HMDZ)、Gelest社製、「HEXAMETHYLDISILAZANE(SIH6110.1)」
(D-2):ジビニルテトラメチルジシラザン、Gelest社製、「1,3-DIVINYLTETRAMETHYLDISILAZANE(SID4612.0)」
【0174】
(白金または白金化合物(E))
(E):白金または白金化合物:モメンティブ社製、「TC-25A」
【0175】
(水(F))
(F):純水
【0176】
(金属粉(G))
(G1):銀粉、徳力化学研究所社製、商品名「TC-101」、メジアン径d50:8.0μm、アスペクト比16.4、平均長径4.6μm
【0177】
(ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)の合成)
[合成スキーム1:第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)の合成]
下記式(5)にしたがって、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)を合成した。
すなわち、Arガス置換した、冷却管および攪拌翼を有する300mLセパラブルフラスコに、オクタメチルシクロテトラシロキサン74.7g(252mmol)、カリウムシリコネート0.1gを入れ、昇温し、120℃で30分間攪拌した。なお、この際、粘度の上昇が確認できた。
その後、155℃まで昇温し、3時間攪拌を続けた。そして、3時間後、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン0.1g(0.6mmol)を添加し、さらに、155℃で4時間攪拌した。
さらに、4時間後、トルエン250mLで希釈した後、水で3回洗浄した。洗浄後の有機層をメタノール1.5Lで数回洗浄することで、再沈精製し、オリゴマーとポリマーを分離した。得られたポリマーを60℃で一晩減圧乾燥し、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)を得た(Mn=2,2×105、Mw=4,8×105)。また、H-NMRスペクトル測定により算出したビニル基含有量は0.04モル%であった。
【0178】
【0179】
[合成スキーム2:第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)の合成]
上記(A1-1)の合成工程において、オクタメチルシクロテトラシロキサン74.7g(252mmol)に加えて2,4,6,8-テトラメチル2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサン0.86g(2.5mmol)を用いたこと以外は、(A1-1)の合成工程と同様にすることで、下記式(6)のように、第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)を合成した。また、H-NMRスペクトル測定により算出したビニル基含有量は0.93モル%であった。
【0180】
【0181】
<シリコーンゴム系硬化性組成物の調製>
次のようにしてシリコーンゴム系硬化性組成物を調製した。
まず、下記の表1に示す割合で、90%のビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)、シランカップリング剤(D)および水(F)の混合物を予め混練し、その後、混合物にシリカ粒子(C)を加えてさらに混練し、混練物(シリコーンゴムコンパウンド)を得た。
ここで、シリカ粒子(C)添加後の混練は、カップリング反応のために窒素雰囲気下、60~90℃の条件下で1時間混練する第1ステップと、副生成物(アンモニア)の除去のために減圧雰囲気下、160~180℃の条件下で2時間混練する第2ステップとを経ることで行い、その後、冷却し、残り10%のビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)を2回に分けて添加し、20分間混練した。
続いて、下記の表1に示す割合で、得られた混練物(シリコーンゴムコンパウンド)100重量部に、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)、白金または白金化合物(E)を加えて、ロールで混練し、シリコーンゴム系硬化性組成物A(エラストマー組成物)を得た。
【0182】
【0183】
<ディップコート用の導電性溶液の調製>
得られた13.7重量部のシリコーンゴム系硬化性組成物Aを、31.8重量部のデカン(溶剤)に浸漬し、続いて自転・公転ミキサーで撹拌し、54.5重量部の金属粉(G1)を加えた後に三本ロールで混練することで、導電性ペースト(ディップコート用の導電性溶液)を得た。
【0184】
<スプレー塗装用の導電性溶液の調製>
得られた13.7重量部のシリコーンゴム系硬化性組成物Aを、31.8重量部のデカン(溶剤)に浸漬し、続いて自転・公転ミキサーで撹拌し、54.5重量部の金属粉(G1)を加えた後に三本ロールで混練することで、樹脂ワニスを得た。その後、樹脂ワニスをデカンで2.5倍加えて、自転・公転ミキサーで撹拌し希釈して、スプレー塗装用の導電性溶液を得た。
【0185】
<生体用電極の作製>
(実施例1)
上記で得られたシリコーンゴム系硬化性組成物Aを、板状支持部および略円錐形状の柱状部の成形空間(凹部)を複数有する金型を用いて、180℃、10MPaで10分間加熱して、硬化させ、それぞれの凹部内に、板状支持部と柱状部とが一体化した成形体を得た(成形工程)。
得られた成形体の柱状部の内部に、縫い針を用いて、導電線A(ミツフジ社製、AGposs、太さ:100d/34f、引張破断伸度:29.3%)を通した(導電線挿入工程)。
続いて、成形体の柱状部の先端部(柱状部の全長をLとしたとき、先端から約1/2Lの領域)と板状支持部の他面とを、上記の<ディップコート用の導電性溶液>にディップし、120℃、30分間で加熱乾燥した(先端被覆工程)。
その後、140℃、2時間のポストキュアを行った(アニール工程)。
以上により、
図1に示す、板状支持部10上に略円錐形状の柱状部20を有する生体用電極Aを得た。
生体用電極A中、傾斜角θは53度、先端22のアールは1.5mm、導電線60の先端は柱状部20の先端22よりも突出しており、導電性樹脂層30で覆われていた。
【0186】
(実施例2)
導電線Aに代えて、導電線B(ミツフジ社製、AGposs、太さ:70d/24f、引張破断伸度:27.9%)を使用した以外は、実施例1と同様にして、生体用電極Bを得た。
【0187】
(実施例3)
導電線Aに代えて、導電線C(日本精線社製、金属繊維 ステンレス鋼繊維ナスロン、SUS304、太さ:0.22mm、引張破断伸度:1.6%)を使用した以外は、実施例1と同様にして、生体用電極Cを得た。
【0188】
(比較例1)
実施例1と同様にして、上記<生体用電極の作製>の成形体を得た。
導電線挿入工程を行わずに、得られた成形体の表面全体に、上記の<スプレー塗装用の導電性溶液>をスプレー塗布し、120℃、30分間で加熱乾燥させ、成形体の表面全体に導電性樹脂層を形成した。その後、140℃、2時間のポストキュアを行い、生体用電極Dを得た。
【0189】
得られた生体用電極A~Dについて、下記の評価項目について評価を実施した。評価結果を表2に示す。
【0190】
(装着安定性)
実施例1と同様にして、上記<生体用電極の作製>を行い、導電線と接続するように先端部に2mmφの鋼球(ツバキ・ナカシマ製 高炭素クロム軸受鋼鋼材)を取り付け、比較例2の生体用電極Eを得た。
【0191】
被験者の後頭部に対して、比較例2の生体用電極Eの柱状部の先端部を押し当てつつ、先端部とは反対側の生体用電極Eの他面に対して、プッシュプルゲージ(日本電産シンポ株式会社製、製品名:デジタルフォースゲージ FGJN-2)の測定子、15Nの一定荷重で押し付けたところ、当該被験者において、痛みを感じ、短時間しか耐えられない、との評価が示された。
【0192】
これに対して、実施例1~3の生体用電極A~Cを用いたところ、接触感はあるが、気にならない、あるいは、痛みは感じない、と評価が示された。したがって、実施例1~3の生体用電極A~Cは、比較例2の生体用電極Eと比べて装着安定性に優れていることがわかった。
【0193】
【0194】
(測定安定性)
<脳波測定システムの作製>
図2に示すように、上記の<生体用電極の作製>で得られた生体用電極100の他面14に、導電性樹脂層を介して外部接続部110(ケーブルの端部が装着自在の構造を有する金属製のスナップボタン)を装着した。この外部接続部110に、ディスポ電極コード(株式会社ミユキ技研 製品名:AP-C131-015)、ポータブル脳波計(株式会社ミユキ技研 製品名:PolymateMini AP-108)をこの順で電気的に接続して、脳波測定システムを作製した。ポータブル脳波計は、ノートパソコンとBluetoothで接続され、波形表示プログラム(株式会社ミユキ技研 製品名:Mobile Acquisition Monitor)により、頭部との接触抵抗を取得した。グランドとリファレンスは、左耳たぶを使用した。
【0195】
続いて、被験者の頭部に脳波測定用のヘッドギア(国際10/20法に基づくノード配置を備えるヘッドギアを3Dプリンターで成形してたもの)を装着させた。
その後、被験者の後頭部に、生体用電極100の先端部26を接触させて、被験者の後頭部(0z)に対して、得られた生体用電極100の柱状部20の先端部26を押し当てつつ、生体用電極100の外部接続部110に対して、プッシュプルゲージ(日本電産シンポ株式会社製、製品名:デジタルフォースゲージ FGJN-2)の測定子を、まずは7N荷重で押し付け、徐々に除力して、5N、3N、1N時における接触抵抗(kΩ)を連続的に測定し、荷重に対する接触抵抗の変化を評価した。その結果を表2に示す。
【0196】
表2を踏まえると、実施例1の生体用電極は、比較例1と比べて、荷重変化初期時の接触抵抗の変化量(Δ(7N-5N))が小さく抑えられていることがわかった、。
【0197】
以上より、実施例1~3の生体用電極A~Cは、比較例2の生体用電極Eと比べて装着安定性に優れており、比較例1の生体用電極Dと比べて測定安定性に優れていることがわかった。