(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045438
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】眼科装置、および眼科装置制御プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 3/16 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
A61B3/16 300
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024016415
(22)【出願日】2024-02-06
(62)【分割の表示】P 2019167680の分割
【原出願日】2019-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】小林 城久
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 邦生
(72)【発明者】
【氏名】中西 弘敬
(72)【発明者】
【氏名】清水 一成
(57)【要約】
【課題】 安全性を確保しつつ、被検者の顔の形状に関わらずに検査を行うことができる眼科装置、および眼科装置制御プログラムを提供する。
【解決手段】 被検眼を検査する眼科装置であって、前記被検眼を検査する検査手段と、前記検査手段において被検者に接近する接近部と、前記接近部に設けられ、前記接近部と被検者との接近を検知する検知手段と、前記検知手段によって前記接近が検知された場合に前記接近を回避するための回避動作を行う第1モードと、前記回避動作を行わない第2モードと、で動作モードを切り替える制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記第1モードにおいて、前記検知手段によって前記接近が検知され、前記回避動作を行った後、前記動作モードを前記第1モードから前記第2モードに切り替えることを特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼を検査する眼科装置であって、
前記被検眼を検査する検査手段と、
前記検査手段において被検者に接近する接近部と、
前記接近部に設けられ、前記接近部と被検者との接近を検知する検知手段と、
前記検知手段によって前記接近が検知された場合に前記接近を回避するための回避動作を行う第1モードと、前記回避動作を行わない第2モードと、で動作モードを切り替える制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記第1モードにおいて、前記検知手段によって前記接近が検知され、前記回避動作を行った後、前記動作モードを前記第1モードから前記第2モードに切り替えることを特徴とする眼科装置。
【請求項2】
前記検知手段は、静電容量センサであることを特徴とする請求項1の眼科装置。
【請求項3】
被検眼を検査する眼科装置において実行される眼科装置制御プログラムであって、前記眼科装置のプロセッサによって実行されることで、
前記被検眼を検査する検査手段において被検者に接近する接近部と、前記被検者と、の接近を、前記接近部に設けられた検知手段で検知する検知ステップと、
前記検知ステップにおいて、前記接近が検知された場合に前記接近を回避するための回避動作を行う第1モードと、前記回避動作を行わない第2モードと、で動作モードを切り替える制御ステップと、
前記第1モードにおいて、前記検知ステップによって前記接近が検知され、前記回避動作を行った後、前記動作モードを前記第1モードから前記第2モードに切り替える切替ステップと、
を前記眼科装置に実行させることを特徴とする眼科装置制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼を検査する眼科装置、および眼科装置制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の眼科装置としては、例えば、眼屈折力測定装置、角膜曲率測定装置、眼圧測定装置、眼底カメラ、OCT(optical coherence tomography)、SLO(scanning laser ophthalmoscope)等が知られている。これらの眼科装置では、被検眼に対して検査部を上下左右前後方向に移動させ、被検眼に対して検査部を所定の位置にアライメントすることが一般的である。また、検査部に備わるノズルなどが被検眼に接触することを防止するために、接触を検知する接触センサなどを備え、被検眼と検査部が接触したときに回避動作を行う装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、被検者の顔の形状によっては、検査部が被検者に接触している状態でしか検査できない場合があった。この場合、従来の眼科装置では、接触センサによって被検者の接触が検知される度に回避動作が繰り返され、検査を行うことができなかった。
【0005】
本開示は、従来技術の問題点に鑑み、安全性を確保しつつ、被検者の顔の形状に関わらずに検査を行うことができる眼科装置、および眼科装置制御プログラムを提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0007】
(1) 被検眼を検査する眼科装置であって、前記被検眼を検査する検査手段と、前記検査手段において被検者に接近する接近部と、前記接近部に設けられ、前記接近部と被検者との接近を検知する検知手段と、前記検知手段によって前記接近が検知された場合に前記接近を回避するための回避動作を行う第1モードと、前記回避動作を行わない第2モードと、で動作モードを切り替える制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記第1モードにおいて、前記検知手段によって前記接近が検知され、前記回避動作を行った後、前記動作モードを前記第1モードから前記第2モードに切り替えることを特徴とする。
(2) 被検眼を検査する眼科装置において実行される眼科装置制御プログラムであって、前記眼科装置のプロセッサによって実行されることで、前記被検眼を検査する検査手段において被検者に接近する接近部と、前記被検者と、の接近を、前記接近部に設けられた検知手段で検知する検知ステップと、前記検知ステップにおいて、前記接近が検知された場合に前記接近を回避するための回避動作を行う第1モードと、前記回避動作を行わない第2モードと、で動作モードを切り替える制御ステップと、前記第1モードにおいて、前記検知ステップによって前記接近が検知され、前記回避動作を行った後、前記動作モードを前記第1モードから前記第2モードに切り替える切替ステップと、を前記眼科装置に実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、安全性を確保しつつ、被検者の顔の形状に関わらずに検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】眼科装置の制御動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施例>
本開示に係る眼科装置を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、眼科装置として眼圧測定装置を例に説明するが、眼屈折力測定装置、角膜曲率測定装置、角膜形状測定装置、眼軸長測定装置、眼底カメラ、OCT、またはSLO等の他の眼科装置にも適用可能である。
【0011】
本実施例の眼科装置は、例えば、被検眼の眼圧を非接触にて測定する。例えば、本実施例の眼科装置は、片眼毎に測定を行ってもよいし、両眼同時に測定を行ってもよい。また、眼科装置は、左右の被検眼のうち、どちらか一方のみの測定を行ってもよい。
【0012】
図1に示すように、本実施例の眼科装置1は、検査部100と、検知部250と、制御部80などを備える。以下、各構成について説明する。
【0013】
<検査部>
検査部100は、被検眼の検査(測定または撮影など)を行う検査手段である。検査部100は、例えば、被検眼の眼圧を測定するための流体噴出部および測定光学系などを備える。もちろん、検査部100は、眼屈折力、角膜形状等を測定する光学系を備えてもよい。また、検査部100は、被検眼の前眼部、眼底等を撮影するための光学系等を備えてもよい。
【0014】
<流体噴出部>
流体噴出部200は、被検眼に対して空気を噴出する。
図2に示すように、流体噴出部200は、例えば、シリンダ201、ピストン202、ソレノイドアクチュエータ(以下、ソレノイドともいう)203、ノズル部205を備える。シリンダ201とピストン202は、被検眼に噴出する空気を圧縮する空気圧縮機構として用いられる。シリンダ201は、例えば、円筒状である。ピストン202は、シリンダ201の軸方向に沿って摺動する。ピストン202は、シリンダ201内の空気圧縮室234の空気を圧縮する。本実施例のソレノイド203は、いわゆる直動ソレノイドであり、直線的に作動する。ノズル部205は、例えば、ノズル206と、ノズルホルダ207などを備える。ノズル206は、圧縮された空気を装置外部に噴出する。ノズルホルダ207は、ノズル206を内部に収容する。ノズル部205は、測定時に被検者の眼前に配置され、被検者に接近する接近部である。
【0015】
ピストン202の移動によりシリンダ201内の空気圧縮室234で圧縮された空気は、シリンダ201の先端に連結されるチューブ(パイプでもよい)220、圧縮された空気を収容する気密室221を介して、ノズル206から被検眼Eの角膜に向けて噴出される。なお、例えば、シリンダ201は水平面(XZ面)に対して平行に配置されており、ソレノイド203の駆動によってピストン202がシリンダ201内で水平に移動されることにより空気の圧縮が行われてもよい。例えば、シリンダ201はその長手方向が水平方向と平行に配置され、シリンダ201の内面はピストン202をガイドする。このため、ピストン202の移動方向(圧縮方向)は、水平方向となる。なお、上記各構成部材は、装置本体の筐体内に設けられたステージ上にそれぞれ配置されている。
【0016】
流体噴出部200は、例えば、ガラス板208と、ガラス板209を備えてもよい。ガラス板208は、透明であり、ノズル206を保持するとともに、観察光やアライメント光を透過させる。ガラス板209は、気密室221の後壁を構成するとともに、観察光やアライメント光を透過させる。ガラス板209の背後には、観察・アライメント光学系がその観察光軸及びアライメント光軸と、ノズル206の軸線が同軸になるように配置されている。
【0017】
なお、流体噴出部200は、例えば、圧力センサ212、エア抜き穴213を備えてもよい。圧力センサ212は、例えば、気密室221の圧力を検出する。エア抜き穴213は、例えば、ピストン202に初速が付くまでの間の抵抗が減少され、時間的に比例的な立ち上がりの圧力変化を得ることができる。
【0018】
<検知部>
検知部250は、例えば、ノズル部205が被検者と接触したことを検知する検知手段である。検知部250は、例えば、接触センサ251を備える。接触センサ251は、例えば、静電容量センサである。接触センサ251は、例えば、電線252などによってノズルホルダ207と電気的に接続されている。なお、接触センサ251は、感圧センサなどであってもよい。この場合、接触センサ251は、ノズル部205の被検者側の面に配置される。
【0019】
<測定光学系>
図3は、眼科装置1の測定光学系10の概略図である。赤外照明光源30により照明された被検眼像は、ビームスプリッタ31、対物レンズ32、ダイクロイックミラー33、撮像レンズ37、及びフィルタ34を介してCCDカメラ35に結像する。すなわち、ビームスプリッタ31~CCDカメラ35までの光学系は、撮像素子を持ち、被検眼前眼部を観察するための観察光学系として用いられる。この場合、光軸L1は観察光軸として用いられる。
【0020】
フィルタ34は、光源30及びアライメント用の赤外光源40の光を透過し、後述する角膜変形検出用の光源50の光及び可視光に対して不透過の特性を持つ。CCDカメラ35に結像した像は表示部85に表示される。
【0021】
光源40から投影レンズ41を介して投影された赤外光はビームスプリッタ31により反射され、被検眼に正面より投影される。光源40により角膜頂点に形成された角膜輝点は、ビームスプリッタ31~フィルタ34を介してCCDカメラ35に結像し、上下左右方向のアライメント検出に利用される。すなわち、ビームスプリッタ31~CCDカメラ35までの光学系は、撮像素子を持ち、被検眼に対する上下左右方向のアライメント状態を検出するための検出光学系として用いられる。この場合、光軸L1はアライメント光軸として用いられる。なお、本実施例では、検出光学系は、前眼部を観察するための観察光学系を兼用する。
【0022】
固視光学系48は、光軸L1を有し、眼Eに対して正面方向から固視標を呈示する。この場合、光軸L1は固視光軸として用いられる。固視光学系48は、例えば、可視光源(固視灯)45、投影レンズ46、ダイクロイックミラー33を有し、眼Eを正面方向に固視させるための光を眼Eに投影する。可視光源45には、LED、レーザなどの光源が用いられる。また、可視光源45には、例えば、点光源、スリット光源、リング光源などのパターン光源の他、液晶ディスプレイなどの二次元表示器が用いられる。
【0023】
光源45から発せられた可視光は、投影レンズ46を通過し、ダイクロイックミラー33で反射され、対物レンズ32を通過した後、眼Eの眼底に投影される。これにより、眼Eは、正面方向の固視点を固視した状態となり、視線方向が固定される。なお、光源45から発せられた可視光は投影レンズ46及び対物レンズ32を通過することで、平行光束に変換される。
【0024】
角膜変形検出光学系は、投光光学系500aと、受光光学系500bと、を含み、角膜Ecの変形状態を検出するために用いられる。各光学系500a、500bは、検査部100に配置され、駆動部4により3次元的に移動される。
【0025】
投光光学系500aは、投光光軸として光軸L3を有し、眼Eの角膜Ecに向けて斜め方向から照明光を照射する。投光光学系500aは、例えば、赤外光源50、コリメータレンズ51、ビームスプリッタ52、を有する。受光光学系500bは光検出器57を有し、眼Eの角膜Ecでの照明光の反射光を受光する。受光光学系500bは、光軸L1に関して投光光学系500aと略対称的に配置されている。受光光学系500bは、例えば、レンズ53、ビームスプリッタ55、ピンホール板56、光検出器57、を有し、受光光軸として光軸L2を形成する。
【0026】
光源50を出射した光はコリメータレンズ51により略平行光束とされ、ビームスプリッタ52で反射された後、後述する受光光学系70bの光軸L3と同軸(一致)となり、被検眼の角膜Ecに投光される。角膜Ecで反射した光は後述する投光光学系70aの光軸L2と同軸(一致)となり、レンズ53を通過した後、ビームスプリッタ55で反射し、ピンホール板56を通過して光検出器57に受光される。レンズ53には、光源30及び光源40の光に対して不透過の特性を持つコーティングが施される。また、角膜変形検出用の光学系は、被検眼が所定の変形状態(偏平状態)のときに光検出器57の受光量が最大になるように配置されている。
【0027】
また、この角膜変形検出光学系は第1作動距離検出光学系の一部を兼ねており、第1作動距離検出光学系の投光光学系は、角膜変形検出光学系の投光光学系500aを兼用する。光源50による角膜Ecでの反射光を受光する受光光学系600bは、例えば、投光光学系500aのレンズ53、ビームスプリッタ58、集光レンズ59、位置検出素子60を有し、受光光軸として光軸L2を形成する。
【0028】
光源50より投光され、角膜Ecで反射した照明光は光源50の虚像である指標像を形成する。その指標像の光は、レンズ53、ビームスプリッタ55を通過してビームスプリッタ58で反射され、集光レンズ59を通過してPSDやラインセンサ等の一次元または二次元の位置検出素子60に入射する。位置検出素子60は、被検眼E(角膜Ec)が作動距離方向(Z方向)に移動すると、光源50による指標像も位置検出素子60上を移動するため、制御回路20は位置検出素子60からの出力信号に基づいて作動距離情報を得る。なお、本実施形態の位置検出素子60からの出力信号は、作動距離方向(Z方向)のアライメント(粗調整)に利用される。第1作動距離検出光学系の受光光学系600bは後述する受光光学系70bほど倍率が大きくない。そのため、位置検出素子60のZ方向の距離検出範囲は受光素子77より広くなる。
【0029】
角膜厚測定光学系は、投光光学系70aと、受光光学系70bと、固視光学系48と、を含み、被検眼Eの角膜厚を測定するために用いられる。また、投光光学系70aは、角膜変形検出光学系及び第1作動距離検出光学系の一部が兼用される。
【0030】
投光光学系70aは、投光光軸として光軸L2を有し、眼Eの角膜Ecに向けて斜め方向から照明光(測定光)を照射する。投光光学系70aは、例えば、照明光源71、集光レンズ72、光制限部材73、凹レンズ74、角膜変形検出光学系と兼用されるレンズ53、を有する。照明光源71には、可視光源若しくは赤外光源(近赤外を含む)が用いられ、例えば、LED、レーザなどの光源が用いられる。集光レンズ72は、光源71から出射された光を集光する。なお、光源50及び光源71は互いに波長帯域を用いる。
【0031】
光制限部材73は、投光光学系70aの光路に配置され、光源71から出射された光を制限する。光制限部材73は、角膜Ecに対して略共役な位置に配置される。光制限部材73としては、例えば、ピンホール板、スリット板などが用いられる。光制限部材73は、光源71から出射された一部の光を通過させ、他の光を遮断するアパーチャーとして用いられる。そして、投光光学系70aは、眼Eの角膜上において所定のパターン光束(例えば、スポット光束、スリット光束)を形成する。
【0032】
受光光学系70bは、受光素子77を有し、眼Eの角膜表面及び裏面での照明光の反射光を受光する。受光光学系70bは、光軸L1に関して投光光学系70aと略対称に配置されている。受光光学系70bは、例えば、受光レンズ75、凹レンズ76、受光素子77、を有し、受光光軸として光軸L3を形成する。なお、
図3の受光光学系70bは、眼Eに対するZ方向のアライメント状態を検出する第2作動距離検出光学系を兼用する。
【0033】
受光素子77は、複数の光電変換素子を有し、角膜表面及び裏面からの反射光をそれぞれ受光する。受光素子77には、例えば、一次元ラインセンサ、二次元エリアセンサなどの光検出デバイスが用いられる。角膜厚測定光学系及び第2作動距離検出光学系の受光光学系70bは倍率を大きくして観察を行う。そのため、受光素子77のZ方向の距離検出範囲は位置検出素子60より狭くなる。
【0034】
被検眼E(角膜Ec)が作動距離方向(Z方向)に移動すると、角膜Ecでの光源71の反射光も受光素子77上を移動するため、制御部80は、第2作動距離検出光学系の受光素子77からの出力信号に基づいて作動距離情報を得る。また、制御部80はこの受光素子77からの出力信号により、角膜変形状態や被検眼Eの瞬きを知り、ソレノイド203の駆動を制御する。
【0035】
照明光源71から出射された光は、集光レンズ72によって集光され、光制限部材73を背後から照明する。そして、光源71からの光は、光制限部材73によって制限された後、レンズ53によって角膜Ec付近で結像(集光)される。角膜Ec付近において、例えば、ピンホール像(ピンホール板を使用の場合)、スリット像(スリット板を使用の場合)が結像される。このとき、光源71からの光は、角膜Ec上における視軸との交差部分の近傍で結像される。
【0036】
投光光学系70aによって角膜Ecに照明光が投光されると、角膜Ecでの照明光の反射光は、光軸L1に関して投光光束とは対称な方向に進行する。そして、反射光は、受光レンズ75によって受光素子77上の受光面上で結像される。
【0037】
なお、受光光学系500b、600b及び投光光学系70aで兼用されるレンズ53は、光源50による角膜Ecでの反射光をピンホール板56の穴の中央部に集光させ、かつ、光源71からの照明光を角膜Ec表面及び裏面で集光させる位置に配置される。
【0038】
<顔撮影部>
顔撮影部90は、例えば、左右の被検眼のうち少なくとも一方を含む顔を撮影するための光学系である。例えば、
図3に示すように、本実施例の顔撮影部90は、例えば、撮像素子91と、撮像レンズ92を主に備える。
【0039】
顔撮影部90は、例えば、検査部100が初期位置にある場合に被検眼の両眼を撮影できる位置に設けられる。本実施例において、検査部100の初期位置は、右眼を検査し易いように検査部100の光軸L1に対して右側にずれた位置に設定される。したがって、顔撮影部90は、検査部100が右側にずれた初期位置にある状態で、被検眼の両眼を撮影できる位置に設けられる。例えば、顔撮影部90は、検査部100が初期位置にある状態で機械中心に配置される。初期位置は、例えば、瞳孔間距離の半分、つまり片眼瞳孔間距離に基づいて設定される場合、顔撮影部90は、装置本体の機械中心に対して片眼瞳孔間距離だけ左右にずれた位置に配置されてもよい。
【0040】
本実施例の顔撮影部90は、駆動部4によって検査部100とともに移動される。もちろん、顔撮影部90は、例えば、基台2に対して固定され、移動しない構成でもよい。
【0041】
なお、撮像レンズ92は、例えば、広角レンズであってもよい。広角レンズは、例えば、魚眼レンズ、円錐レンズ等である。広角レンズを備えることによって、顔撮影部90は、広い画角で被検者の顔を撮影できる。
【0042】
<顔照明光学系>
顔照明光学系95は、被検眼の顔を照明する。顔照明光学系95は、例えば、照明光源96を備える。照明光源96は、赤外光を発する。本実施例では、検眼窓の左右の位置に照明光源96が設けられている。なお、顔照明光学系95は、アライメント用の指標光源よりも指向性の低い光源が用いられる。
【0043】
<制御系>
図2に示すように、本装置1は制御部80を備える。制御部80は、本装置1の各種制御を司る。制御部80は、例えば、一般的なCPU(Central Processing Unit)81、ROM82、RAM83等を備える。例えば、ROM82には、眼科装置1を制御するための眼科装置制御プログラム、初期値等が記憶されている。例えば、RAM83は、各種情報を一時的に記憶する。制御部80は、検査部100、顔撮影部90、駆動部4、表示部85、操作部86、顎台駆動部3d、記憶部(例えば、不揮発性メモリ)84、音声出力部89等と接続されている。記憶部84は、例えば、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、ハードディスクドライブ、着脱可能なUSBフラッシュメモリ等を記憶部84として使用することができる。
【0044】
なお、
図1に示すように、眼科装置1は、基台2、顔支持部3、駆動部4、表示部85、音声出力部89、顔撮影部90等を備えてもよい。基台2は、検査部100を移動可能に支持する。顔支持部3は、被検者の顔を支持する。顔支持部は、額当て3a、顎台3b、顎台センサ3c、顎台駆動部3dなどを備える。顎台センサ3cは、顎台3bに顎が載せられているかを検知する。顎台駆動部3dは、顎台3bを上下に移動させて高さを調整する。駆動部4は、検査部100を基台2に対してXYZ方向(3次元方向)に移動させる。表示部85は、例えば、被検眼の観察画像および測定結果等を表示させる。表示部85は、例えば、装置1と一体的に設けられてもよいし、装置とは別に設けられてもよい。表示部85は、表示画面が、被検者だけでなく被検者側に向くように配置可能であってもよい。なお、表示部85は、操作部86として用いられてもよい。この場合、表示部85は、装置1の各種設定、測定開始時の操作に用いられる。表示部85には、検者または被検者による各種操作指示が入力される。なお操作部8として、ジョイスティック、マウス、キーボード、トラックボール、ボタン等の各種ヒューマンインターフェイスが用いられてもよい。顔撮影部90は、例えば、被検眼の顔を撮影する。音声出力部89は、被検者または検者に対して音声アナウンスを行う。音声出力部89は、例えば、スピーカなどである。顔撮影部90は、例えば、左右の被検眼のうち少なくとも一方を含む顔を撮影する。
【0045】
<制御動作>
以上のような構成を備える眼科装置1の制御動作を
図4に基づいて説明する。本実施例の眼科装置1には、検知部250によってノズル部205と被検者との接触を検知した場合に接触回避動作を行う第1モードと、接触回避動作を行わない第2モードの2つの動作モードが設けられる。接触回避動作は、例えば、検査部100の移動の停止、検査部100が被検眼から離れる動作、またはその両方の動作である。
【0046】
まず、制御部80は、動作モードを第1モードに設定する(ステップS1)。もちろん、初期値として設定されていてもよい。被検者の顔が顔支持部3に載せられると、制御部80は、顎台センサ3cによって顔支持部3に顔が載せられたことを検知し、顔撮影部90によって撮影された顔画像から被検眼の両眼を検出する。画像から被検眼を検出する方法としては、例えば、赤外撮影による瞳孔検出、輝度値のエッジ検出等の種々の画像処理方法が挙げられる。例えば、被検者の顔を赤外撮影した場合、肌は白く写り、瞳孔は黒く写る。したがって、制御部80は、赤外撮影によって得られた赤外画像から丸くて黒い(輝度の低い)部分を瞳孔として検出してもよい。上記のような方法を用いて、制御部80は、顔画像から被検眼を検出し、その2次元位置情報を取得する。
【0047】
制御部80は、被検眼が検出されると、オートモードでの検査部100のアライメントを開始する(ステップS2)。オートモードは、例えば、制御部80が駆動部4を制御して自動的に検査部100を移動させて被検眼に対するアライメントを行うアライメントモードである。例えば、制御部80は顔画像において被検眼が検出された方向に検査部100を移動させる。例えば、制御部80は観察光学系によって撮影される前眼部画像に被検眼が写るまで検査部100を眼が検出された方向に移動させる。前眼部画像に被検眼が写ると、前眼部画像に写る輝点に基づいて検査部100のアライメントを行う。
【0048】
アライメントが完了すると、制御部80は、被検眼の測定を行う(ステップS3)。例えば、制御部80は、角膜厚測定光学系によって被検眼の角膜厚を測定する。制御部80は、受光素子によって検出された角膜前面での反射信号と角膜裏面での反射信号との距離(ピーク間距離)を算出する。
【0049】
角膜厚の測定が完了すると、制御部80は眼圧を測定する。例えば、制御部80はソレノイド203を駆動させてピストン202を移動させると、シリンダ201内の空気が圧縮され、圧縮空気がノズル206から角膜Ecに向けて吹き付けられる。角膜Ecは、圧縮空気の吹き付けにより徐々に変形し、扁平(または圧平)状態に達したときに光検出器57に最大光量が入射される。制御部80は、圧力センサ212からの出力信号と光検出器57からの出力信号とに基づき眼圧値を求める。そして、測定結果を表示部85に表示する。ここで、所定の測定終了条件が満たされると、被検眼の眼圧測定を完了とする。
【0050】
両眼を測定する場合、制御部80は、測定していない方の眼に検査部100を移動させる(ステップS4:左右眼切換)。例えば、制御部80は、右眼の測定を行った後に、検査部100を左眼の前方に配置させる。その後、右眼と同様に左眼を測定する。
【0051】
なお、検査部100のアライメント中または測定中に、検知部250によってノズル部205と被検者との接触を検知した場合(ステップS5)、制御部80は、駆動部4を制御し、電動で接触回避動作を行う(ステップS6)。例えば、制御部80は、
図5(a)に示すように、ノズル部205と被検者とが接触した状態から、
図5(b)に示すように、検査部100をZ方向に関して被検者と離れる方向に後退させ、その後、停止させる。
【0052】
接触回避動作を行うと、制御部80は、
図6に示すように、表示部85の画面300上に第2モードに切り替える(つまり、接触回避動作をOFFにする)ことを確認するための確認画面301を表示させる(ステップS7)。これによって、検者は、回避動作が行われないことを認識し、より慎重に測定すべきことを把握できる。また、制御部80は、確認画面301上に、表示内容を確認したことを示すための確認ボタン302を表示させてもよい。この場合、制御部80は、検者によって確認ボタン302が押されると接触回避動作をOFFにする(ステップS8)。これによって、検者の意に反して(不意に)、第2モードに切り替わることを防止できる。なお、確認画面301を表示させる代わりに、音声出力部89を制御して接触回避動作をOFFにする旨の音声アナウンスを行ってもよいし、確認画面301の表示と音声アナウンスの両方を行ってもよい。
【0053】
接触回避動作をOFFにすると、制御部80は、アライメントモードをオートモードからマニュアルモードに切り替える(ステップS9)。これによって、検者がアライメントモードを変更する手間が省ける。なお、元々マニュアルモードだった場合はそのままマニュアルモードを維持する。マニュアルモードは、検者が手動で検査部100のアライメントを行うモードであるが、完全に手動でなくてもよく、ある程度アライメントできた時点で自動的にアライメント、トラッキングまたは測定を行うモードであってもよい(つまり、セミオートモードを含んでもよい)。
【0054】
その後、検者は、第2モードに設定された状態で測定を行う(ステップS10)。例えば、制御部80は、検者による操作部86への操作に基づいて駆動部4を制御して検査部100を移動させ、被検者とノズル部205とが接触した状態で測定を行う。なお、第2モードに設定された場合、接触回避動作はOFFとなるが、検知部250は機能している。つまり、本実施例の第2モードは、検知部250によって接触を検知しても接触回避動作を行わない動作モードである。例えば、検知部250が被検者とノズル部205との接触を検知すると、制御部80は、
図7に示すように、接触したことまたは接触していることを報知画面303として表示部85に表示してもよいし、音声出力部89によって音を鳴らしてもよい。検者は、報知画面303を確認することで、より慎重に測定を行うべきことを把握できる。もちろん、第2モードでは検知部250の機能をOFFにし、接触を検知しないようにしてもよい。
【0055】
なお、制御部80は、同一被検者の測定について第2モードを維持するようにしてもよい。例えば、両眼の測定を行う場合、一方の被検眼で接触が検知され、第2モードに切り替えられた場合、制御部80は、第2モードのままで他方の被検眼を測定してもよい。人の顔が略対称的であるとすると、一方の被検眼の測定時にノズル部205が顔に接触した場合、他方の被検眼の測定時にもノズル部205が顔に接触する可能性が高いため、わざわざ第1モードに戻すよりも第2モードのままの方がスムーズに測定できる。
【0056】
測定が完了すると、制御部80は、測定結果のデータを出力する(ステップS11)。例えば、制御部80は、測定結果を表示部85に表示させたり、プリントアウトしたり、無線または有線で装置外部に出力したりする。データ出力が完了すると、制御部80は、ステップS1の処理に戻り、次の被検者のために動作モードを第2モードから第1モードに切り替える(つまり、接触回避動作をONにする)。
【0057】
以上のように、本実施例の眼科装置1は、検知部250によって検査部100の一部(例えば、ノズル部205)と被検者との接触を検知したときに回避動作を行うことによって、安全に測定を行うことができる。また、例えば、顔の彫りが深い被検者の場合、正しくアライメントされているにも関わらず、検査部100の一部が顔(例えば、鼻、眉など)に接触してしまうことがあるが、接触回避動作を行わない設定に切り替えることによって、接触回避動作が繰り返されて測定できないことを防止できる。
【0058】
なお、検知部250は、接触センサ251によってノズル部205と被検者との接触を検知するだけに限らない。例えば、検知部250は、超音波センサもしくは光学センサなどの測距センサ、または撮像手段(カメラなど)を用いて、ノズル部205と被検者とが必要以上に接近することを検知してもよい。この場合、制御部80は、検知部250によってノズル部205と被検者との必要以上な接近を検知すると、検査部100の接近回避動作を行い、接近回避動作を行う第1モードから、接近回避動作を行わない第2モードに動作モードを切り替えるようにしてもよい。
【0059】
なお、上記の実施例において、制御部80は、複数回の接触を検知した場合に動作モードを第1モードから第2モードに切り替えるようにしてもよい。例えば、制御部80は、第1モードにおいて被検者とノズル部205との接触を検知し、回避動作を行った後、再び第1モードでの測定を行う。そして、被検者とノズル部205との2回目の接触を検知した場合に、動作モードを第1モードから第2モードに切り替えるようにしてもよい。
【0060】
なお、上記の実施例において、同一被検者の測定について第2モードを維持するようにしたが、片眼毎に第1モードに設定し直すこともできる。
【0061】
なお、被検者に接近する接近部としては、ノズル部だけに限らず、検査部100の検査窓(カバーガラス)、対物レンズ、光学アタッチメント、その他の被検者側に突出した形状の部分などであってもよい。
【0062】
なお、制御部80は、記憶部84に記憶された
図4に示すような上記の処理を眼科装置1に実行させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 眼科装置
2 基台
3 顔支持部
4 駆動部
80 制御部
89 音声出力部
100 検査部
205 ノズル部
250 検知部