(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045489
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】包装材料用ポリエチレン積層体及び該積層体からなる包装材料
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20240326BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B65D65/40 D
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024018592
(22)【出願日】2024-02-09
(62)【分割の表示】P 2023020364の分割
【原出願日】2018-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】山田 憲一
(57)【要約】
【課題】高いリサイクル適性、印刷適性及び強度を有する、包装材料用ポリエチレン積層体の提供。
【解決手段】本発明の包装材料用ポリエチレン積層体は、延伸ポリエチレンフィルムと、ヒートシール性ポリエチレン層とを少なくとも備え、延伸ポリエチレンフィルムの少なくとも一方の面に画像が形成されていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の面に印刷が形成された延伸ポリエチレンフィルム層と、ヒートシール性ポリエチレン層とを少なくとも備え、
前記延伸ポリエチレンフィルム層の厚さが、9μm以上、50μm以下であり、
前記延伸ポリエチレンフィルム層の、JIS K-7105に準拠して測定したヘイズ値が、20%以下である、
ことを特徴とする、包装材料用ポリエチレン積層体。
【請求項2】
前記延伸ポリエチレンフィルム層が、高密度ポリエチレン(HDPE)及び中密度ポリエチレン(MDPE)のうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載の包装材料用ポリエチレン積層体。
【請求項3】
前記延伸ポリエチレンフィルム層の長手方向(MD)の延伸倍率が、2倍以上、10倍以下である、請求項1又は2に記載の包装材料用ポリエチレン積層体。
【請求項4】
前記延伸ポリエチレンフィルム層が、高密度ポリエチレン層/中密度ポリエチレン層/高密度ポリエチレン層からなる構成を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の包装材料用ポリエチレン積層体。
【請求項5】
前記延伸ポリエチレンフィルム層が、インフレーション成形法により作製されたものである、請求項1~4のいずれか一項に記載の包装材料用ポリエチレン積層体。
【請求項6】
前記延伸ポリエチレンフィルム層の前記ヒートシール性ポリエチレン層側に印刷が形成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の包装材料用ポリエチレン積層体。
【請求項7】
前記ヒートシール性ポリエチレン層が、低密度ポリエチレン(LDPE)及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)のうち少なくとも1つを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の包装材料用ポリエチレン積層体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の積層体から構成される包装材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装材料用ポリエチレン積層体及び該積層体からなる包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンフィルムは、適度な柔軟性をもち、透明性、防湿性、耐薬品性等に優れるとともに、安価であることから、各種の包装材料に使用されている。特に、ポリエチレンの融点は、種類によっても多少異なるが概ね100~140℃程度であるため、包装材料分野ではヒートシール性フィルムとして使用されるのが一般的である。
【0003】
一方、他の熱可塑性樹脂フィルムと比較して、ポリエチレンフィルムは、剛性が劣るため、印刷適性が低く、その表面に鮮明な画像を形成することができなかった。また、ポリエチレンフィルムは、高い強度を有しておらず、包装材料の外装として要求される耐久性を満たすことができていなかった。そのため、ポリエステルフィルムやナイロンフィルム等の剛性及び強度に優れる樹脂フィルムと、ポリエチレンフィルムとをラミネートすることで積層体とし、この積層体のポリエチレンフィルム側が内側となるように、積層体端部をヒートシールすることにより包装材料を作製することが行われている(例えば、特開2005-104525号公報)。
【0004】
ところで、近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、包装材料をリサイクルして使用することが試みられている。しかしながら、上記のような異種の樹脂フィルムを貼り合わせた場合、樹脂フィルム同士を分離することが難しく、リサイクルに適しておらず、より環境負荷の少ない包装材料を使用したいという要求もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、高いリサイクル適性、印刷適性及び強度を有する、包装材料用ポリエチレン積層体を提供することをその解決しようとする課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の包装材料用ポリエチレン積層体は、延伸ポリエチレンフィルムと、ヒートシール性ポリエチレン層とを少なくとも備え、延伸ポリエチレンフィルムの少なくとも一方の面に画像が形成されていることを特徴とする。
【0008】
一実施形態において、延伸ポリエチレンフィルムは、高密度ポリエチレン(HDPE)及び中密度ポリエチレン(MDPE)のうち少なくとも1つを含む。
【0009】
一実施形態において、延伸ポリエチレンフィルムの長手方向(MD)の延伸倍率は、2倍以上、10倍以下である。
【0010】
一実施形態において、延伸ポリエチレンフィルムの厚さは、9μm以上、50μm以下である。
【0011】
一実施形態において、延伸ポリエチレンフィルムは、高密度ポリエチレン層/中密度ポリエチレン層/高密度ポリエチレン層からなる構成を有する。
【0012】
一実施形態において、延伸ポリエチレンフィルムは、インフレーション成形法により作製されたものである。
【0013】
一実施形態において、画像が、延伸ポリエチレンフィルムのヒートシール性ポリエチレン層側に形成されており、延伸ポリエチレンフィルムのヘイズ値は、20%以下である。
【0014】
一実施形態において、ヒートシール性ポリエチレン層は、低密度ポリエチレン(LDPE)及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)のうち少なくとも1つを含む。
【0015】
本発明の包装材料は、上記積層体から構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高いリサイクル適性、印刷適性及び強度を有する包装材料用ポリエチレン積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明による包装材料用ポリエチレン積層体の一実施形態を示す断面概略図である。
【
図2】本発明による包装材料用ポリエチレン積層体の一実施形態を示す断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<包装材料用ポリエチレン積層体>
本発明による包装材料用ポリエチレン積層体を図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、包装材料用ポリエチレン積層体10は、延伸ポリエチレンフィルム20と、ヒートシール性ポリエチレン層30とを少なくとも備える。
また、一実施形態において、延伸ポリエチレンフィルム20と、ヒートシール性ポリエチレン層30との間に、蒸着膜を備えるポリエチレン層40を備える。
以下、包装材料用ポリエチレン積層体が備える各層について説明する。
【0019】
<延伸ポリエチレンフィルム>
延伸ポリエチレンフィルムは、一軸延伸されたものであっても、二軸延伸されたものであってもよいが、強度という観点からは、二軸延伸されたものが好ましい。
【0020】
延伸ポリエチレンフィルム長手方向(MD)の延伸倍率は、2倍以上、10倍以下であることが好ましく、3倍以上、7倍以下であることが好ましい。これにより、ポリエチレン積層体の印刷適性及び強度をより向上することができる。また、これにより、延伸ポリエチレンフィルムの透明性を向上することができる。
また、横手方向(TD)の延伸倍率は、2倍以上、10倍以下であることが好ましく、3倍以上、7倍以下であることが好ましい。これにより、ポリエチレン積層体の印刷適性及び強度をより向上することができると共に、延伸ポリエチレンフィルムの透明性を向上することができる。
【0021】
延伸ポリエチレンフィルムに含まれるポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が挙げられる。また、延伸ポリエチレンフィルムは、これらを2種以上含むことができる。
これらの中でも、ポリエチレン積層体の印刷適性、強度及び耐熱性という観点から、高密度ポリエチレン(HDPE)及び中密度ポリエチレン(MDPE)が好ましく、延伸適正という観点から、中密度ポリエチレンがより好ましい。
なお、本発明において、高密度ポリエチレンは密度が0.945g/cm3以上のものを、中密度ポリエチレンは密度が0.925~0.944g/cm3のものを、低密度ポリエチレンは密度が0.925g/cm3未満のものをいう。
【0022】
上記したような密度や分岐の違うポリエチレンは、重合方法を適宜選択することによって得ることができる。例えば、重合触媒として、チーグラー・ナッタ触媒等のマルチサイト触媒や、メタロセン系触媒等のシングルサイト触媒を用いて、気相重合、スラリー重合、溶液重合、及び高圧イオン重合のいずれかの方法により、1段又は2段以上の多段で行うことが好ましい。
【0023】
上記のシングルサイト触媒とは、均一な活性種を形成しうる触媒であり、通常、メタロセン系遷移金属化合物や非メタロセン系遷移金属化合物と活性化用助触媒とを接触させることにより、調整される。シングルサイト触媒は、マルチサイト触媒に比べて、活性点構造が均一であるため、高分子量かつ均一度の高い構造の重合体を重合することができるため好ましい。シングルサイト触媒としては、特に、メタロセン系触媒を用いることが好ましい。メタロセン系触媒は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物と、助触媒と、必要により有機金属化合物と、担体の各触媒成分とを含む触媒である。
【0024】
上記のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物において、そのシクロペンタジエニル骨格とは、シクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基等である。置換シクロペンタジエニル基としては、炭素数1~30の炭化水素基、シリル基、シリル置換アルキル基、シリル置換アリール基、シアノ基、シアノアルキル基、シアノアリール基、ハロゲン基、ハロアルキル基、ハロシリル基等から選ばれた少なくとも一種の置換基を有するものである。その置換シクロペンタジエニル基の置換基は2個以上有していてもよく、また置換基同士が互いに結合して環を形成し、インデニル環、フルオレニル環、アズレニル環、その水添体等を形成してもよい。置換基同士が互いに結合し形成された環がさらに互いに置換基を有していてもよい。
【0025】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物において、その遷移金属としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム等が挙げられ、特にジルコニウム、ハフニウムが好ましい。該遷移金属化合物は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子としては通常2個を有し、各々のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子は架橋基により互いに結合しているものが好ましい。なお、架橋基としては炭素数1~4のアルキレン基、シリレン基、ジアルキルシリレン基、ジアリールシリレン基等の置換シリレン基、ジアルキルゲルミレン基、ジアリールゲルミレン基等の置換ゲルミレン基等が挙げられる。好ましくは、置換シリレン基である。上記のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物は、一種又は二種以上の混合物を触媒成分とすることができる。
【0026】
助触媒としては、上記の周期律表第IV族の遷移金属化合物を重合触媒として有効になしうる、又は触媒的に活性化された状態のイオン性電荷を均衝させうるものをいう。助触媒としては、有機アルミニウムオキシ化合物のベンゼン可溶のアルミノキサンやベンゼン不溶の有機アルミニウムオキシ化合物、イオン交換性層状珪酸塩、ホウ素化合物、活性水素基含有あるいは非含有のカチオンと非配位性アニオンからなるイオン性化合物、酸化ランタン等のランタノイド塩、酸化スズ、フルオロ基を含有するフェノキシ化合物等が挙げられる。
【0027】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物は、無機又は有機化合物の担体に担持して使用されてもよい。該担体としては無機又は有機化合物の多孔質酸化物が好ましく、具体的には、モンモリロナイト等のイオン交換性層状珪酸塩、SiO2、Al2O3、MgO、ZrO2、TiO2、B2O3、CaO、ZnO、BaO、ThO2等又はこれらの混合物が挙げられる。また更に必要により使用される有機金属化合物としては、有機アルミニウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物等が例示される。このうち有機アルミニウムが好適に使用される。
【0028】
また、本発明の特性を損なわない範囲において、エチレンと他のモノマーとの共重合体を使用することもできる。エチレン共重合体としては、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとからなる共重合体が挙げられ、炭素数3~20のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、3ーメチルー1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、6-メチル-1-ヘプテンなどが挙げられる。また、本発明の目的を損なわない範囲であれば、酢酸ビニル、アクリル酸エステル等との共重合体であってもよい。
【0029】
また、本発明においては、上記高密度ポリエチレン等を得るための原料として、化石燃料から得られるエチレンに代えて、バイオマス由来のエチレンを用いてもよい。このようなバイオマス由来のポリエチレンはカーボニュートラルな材料であるため、より一層、環境負荷の少ない包装材料とすることができる。このようなバイオマス由来のポリエチレンは、例えば、特開2013-177531号公報に記載されているような方法にて製造することができる。また、市販されているバイオマス由来のポリエチレン(例えば。ブラスケム社から市販されているグリーンPE等)を使用してもよい。
【0030】
延伸ポリエチレンフィルムにおけるポリエチレンの含有量は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
【0031】
延伸ポリエチレンフィルムは、本発明の特性を損なわない範囲において、添加剤を含むことができ、例えば、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、改質用樹脂等が挙げられる。
【0032】
一実施形態において、延伸ポリエチレンフィルムは、多層構造を有する。好ましくは、高密度ポリエチレン(HDPE)を含む層及び中密度ポリエチレン(MDPE)を含む層を備える。
例えば、高密度ポリエチレン層/中密度ポリエチレン層/高密度ポリエチレン層からなる構成を有する。このような構成とすることにより、ポリエチレン積層体の印刷適性及び強度をより向上することができる。このとき、高密度ポリエチレン層と、中密度ポリエチレン層との厚さの比は、1/10以上、1/1以下であることが好ましく、1/5以上、1/2以下であることがより好ましい。
【0033】
延伸ポリエチレンフィルムの厚さは、9μm以上、50μm以下であることが好ましく、12μm以上、30μm以下であることがより好ましい。延伸ポリエチレンフィルムの厚さを上記数値範囲内とすることにより、ポリエチレン積層体の印刷適性、強度及び耐熱性をより向上することができる。
【0034】
延伸ポリエチレンフィルムは、少なくとも一方の面に、文字、柄、記号等の画像が形成されてる。画像の経時的な劣化を防止することができるため、延伸ポリエチレンフィルムのヒートシール性ポリエチレン層を積層する側に画像が形成されていることが好ましい。
画像の形成方法は、特に限定されるものではなく、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法等の従来公知の印刷法を挙げることができる。これらの中でも、環境負荷の観点から、フレキソ印刷法が好ましい。
【0035】
延伸ポリエチレンフィルムのヒートシール性ポリエチレン層を積層する側に画像が形成されている場合、延伸ポリエチレンフィルムのヘイズ値は、20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。これにより形成された画像の視認性を向上することができる。延伸ポリエチレンフィルムのヘイズ値は、延伸倍率の変更等により調整することができる。なお、本発明において、ヘイズ値は、JIS K-7105に準拠して測定することができる。
【0036】
一実施形態において、延伸ポリエチレンフィルムは、その一方の面にアルミニウム等の金属や酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウム等の無機酸化物を含む蒸着膜を備える。これにより、本発明によるポリエチレン積層体のガスバリア性を向上することができる。
蒸着方法としては、従来公知の方法を採用でき、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、あるいは、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等を挙げることができる。
【0037】
また、蒸着膜の膜厚は、0.002μm以上、0.4μm以下であることが好ましく、0.005μm以上、0.1μm以下であることがより好ましい。蒸着膜の厚みを上記数値範囲内とすることにより、ガスバリア性を維持しつつ、蒸着膜におけるクラックなどの発生を防止することができる。
【0038】
また、例えば、物理気相成長法と化学気相成長法の両者を併用して異種の無機酸化物の蒸着膜の2層以上からなる複合膜を形成して使用することもできる。蒸着チャンバーの真空度としては、酸素導入前においては、10-2~10-8mbar程度、特に、10-3~10-7mbar程度が好ましく、酸素導入後においては、10-1~10-6mbar程度、特に10-2~10-5mbar程度が好ましい。なお、酸素導入量等は、蒸着機の大きさ等によって異なる。導入する酸素には、キャリヤーガスとしてアルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガス等の不活性ガスを支障のない範囲で使用してもよい。フィルムの搬送速度としては、10~800m/分程度、特に50~600m/分程度が好ましい。
【0039】
延伸ポリエチレンフィルムは、ポリエチレンを含む樹脂材料を溶融し、これをインフレーション成形法又はT-ダイ成形法等の溶融押出成形法によって製膜した後、延伸することによって得ることができる。延伸処理をより容易に行うことができるため、インフレーション成形法により作製することが好ましい。多層構造を有する延伸ポリエチレンフィルムは、複数の樹脂材料を溶融共押出することにより作製することができる。
【0040】
樹脂材料のメルトフローレート(MFR)は、0.5g/10分以上、20g/10分以下であることが好ましく、0.8g/10分以上、5g/10分以下であることがより好ましい。樹脂材料のMFRを上記数値範囲内とすることにより、延伸処理をより容易に行うことができる。
【0041】
<ヒートシール性ポリエチレン層>
ヒートシール性ポリエチレン層は、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレンとその他のモノマーとの共重合体の少なくとも1つを含む。これらの中でも、ヒートシール性という観点からは、低密度ポリエチレン(LDPE)及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が好ましい。環境負荷の観点からは、これらポリエチレンは、バイオマス由来のものであることが好ましい。
【0042】
ヒートシール性ポリエチレン層におけるポリエチレンの含有量は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
【0043】
ヒートシール性ポリエチレン層は、本発明の特性を損なわない範囲において、添加剤を含むことができ、例えば、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、改質用樹脂等が挙げられる。
【0044】
ヒートシール性ポリエチレン層の厚さは、20μm以上、200μm以下であることが好ましく、30μm以上、150μm以下であることがより好ましい。ヒートシール性ポリエチレン層の厚さを上記数値範囲内とすることにより、そのヒートシール性を向上することができる。
【0045】
ヒートシール性ポリエチレン層は、ポリエチレンを含む樹脂材料を、インフレーション成形又はT-ダイ成形等の溶融押出成形法によって製膜することによりポリエチレンフィルムを作製し、これを接着剤を介して、延伸ポリエチレンフィルム又は蒸着膜を備えるポリエチレン層上に積層することにより、形成することができる。
接着剤は、無溶剤型の接着剤であっても、溶剤型の接着剤であってもよいが、環境負荷の観点からは、無溶剤型の接着剤が好ましい。
接着剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル系接着剤、ポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレン共重合体接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、アミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、ゴム系接着剤及びシリコーン系接着剤等が挙げられる。
【0046】
また、ポリエチレンを含む樹脂材料を延伸ポリエチレンフィルム又は蒸着膜を備えるポリエチレン層上に押出し、これを乾燥させることによっても、ヒートシール性ポリエチレン層を形成することができる。
【0047】
<蒸着膜を備えるポリエチレン層>
一実施形態において、本発明によるポリエチレン積層体は、延伸ポリエチレンフィルムと、ヒートシール性ポリエチレン層との間に、蒸着膜を備えるポリエチレン層を備える。これにより、本発明によるポリエチレン積層体のガスバリア性を向上することができる。
【0048】
蒸着膜を備えるポリエチレン層は、延伸フィルムから構成されるものであっても、未延伸フィルムから構成されるものであってもよいが、ポリエチレン積層体の印刷適性、強度及び耐熱性という観点からは延伸されたものであることが好ましい。また、一軸延伸されたものであっても、二軸延伸されたものであってもよいが、強度という観点からは、二軸延伸されたものが好ましい。
【0049】
蒸着膜を備えるポリエチレン層は、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレンとその他のモノマーとの共重合体の少なくとも1つを含む。これらの中でも、印刷適性、強度及び耐熱性という観点から、高密度ポリエチレン(HDPE)及び中密度ポリエチレン(MDPE)が好ましく、高密度ポリエチレン(HDPE)がより好ましい。環境負荷の観点からは、これらポリエチレンは、バイオマス由来のものであることが好ましい。
【0050】
蒸着膜を備えるポリエチレン層におけるポリエチレンの含有量は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
【0051】
蒸着膜を備えるポリエチレン層は、本発明の特性を損なわない範囲において、添加剤を含むことができ、例えば、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、改質用樹脂等が挙げられる。
【0052】
蒸着膜を備えるポリエチレン層の厚さは、生産性及び経済性の観点からは、9μm以上、50μm以下であることが好ましく、12μm以上、30μm以下であることがより好ましい。
また、蒸着膜の厚さは、0.002μm以上、0.4μm以下であることが好ましく、0.005μm以上、0.1μm以下であることがより好ましい。蒸着膜の厚みを上記数値範囲内とすることにより、ガスバリア性を維持しつつ、蒸着膜におけるクラックなどの発生を防止することができる。
【0053】
蒸着膜を備えるポリエチレン層は、その表面に画像が形成されていてもよい。画像形成方法については上記した通りである。
【0054】
蒸着膜を備えるポリエチレン層は、ポリエチレンを含む樹脂材料を、インフレーション成形又はT-ダイ成形等の溶融押出成形法によって製膜することによりポリエチレンフィルムを作製し、該ポリエチレンフィルムの少なくとも一方の面に上記した方法により、蒸着膜を形成させた後、接着剤を介して、延伸ポリエチレンフィルム上に積層することにより、形成することができる。この場合、蒸着前、積層前に、ポリエチレンフィルムに対し、延伸処理を施してもよい。
また、ポリエチレンを含む樹脂材料を延伸ポリエチレンフィルム上に押出し、これを乾燥させた後、蒸着膜を形成させることによっても、蒸着膜を備えるポリエチレン層を形成することができる。
【0055】
<包装材料>
一実施形態において、本発明による包装材料は、上記ポリエチレン積層体のヒートシール性ポリエチレン層が内側となるように、二つ折にして重ね合わせて、その端部をヒートシールすることにより製造することができる。
また、2枚のポリエチレン積層体を、ヒートシール性ポリエチレン層が向かい合うように重ね合わせ、その端部をヒートシールすることにより製造することができる。
シール方法により、例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、ガゼット型、その他等のヒートシール形態によりヒートシールして、種々の形態の包装材料を製造することができる。
その他、例えば、自立性包装用袋(スタンデイングパウチ)等も可能である。ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。
【0056】
本発明によるポリエチレン積層体は、一種の樹脂(すなわちポリエチレン)のみからなる積層体であっても、延伸ポリエチレンフィルムが包装材料の外側フィルムとして要求される強度や印刷適性を満たし、ヒートシール性ポリエチレン層が包装化を可能とする。そのため、リサイクル性が求められる包装材料を構成する材料として極めて適している。
【実施例0057】
本発明について実施例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明がこれら実施例によって限定されるものではない。
【0058】
<実施例1>
中密度ポリエチレン(密度:0.941g/cm3、融点129℃、MFR:1.3g/10分、Dowchemical社製、商品名:Elite5538G)をインフレーション成形法により製膜し、厚さ100μmのポリエチレンフィルムを得た。
このポリエチレンフィルムを長手方向(MD)に、5倍の延伸倍率で延伸し、厚さ20μmの延伸ポリエチレンフィルムを得た。延伸ポリエチレンフィルムのヘイズ値をJIS K-7105に準拠し、測定したところ、6.5%であった。
【0059】
上記延伸ポリエチレンフィルムと、厚さ40μmの、未延伸直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム(東洋紡(株)製、商品名:L6100)とを、2液硬化型ウレタン系接着剤(ロックペイント(株)製、商品名:RU-77T/H-7)を介して積層し、ポリエチレン積層体を得た。
【0060】
<実施例2>
高密度ポリエチレン(密度:0.961g/cm3、融点135℃、MFR:0.7g/10分、ExxonMobil社製、商品名:HTA108)及び中密度ポリエチレン(密度:0.941g/cm3、融点129℃、MFR:1.3g/10分、Dowchemical社製、商品名:Elite5538G)を、インフレーション成形法により製膜し、高密度ポリエチレン層/中密度ポリエチレン層/高密度ポリエチレン層からなるポリエチレンフィルムを作製した。高密度ポリエチレン層の厚さは、それぞれ20μm、中密度ポリエチレン層の厚さは、60μmであった。
このポリエチレンフィルムを長手方向(MD)に、5倍の延伸倍率で延伸し、厚さ20μmの延伸ポリエチレンフィルムを得た。延伸ポリエチレンフィルムのヘイズ値は8.9%であった。
【0061】
上記延伸ポリエチレンフィルムと、厚さ40μmの、未延伸直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム(東洋紡(株)製、商品名:L6100)とを、2液硬化型ウレタン系接着剤(ロックペイント(株)製、商品名:RU-77T/H-7)を介して積層し、ポリエチレン積層体を得た。
【0062】
<実施例3>
中密度ポリエチレン(密度:0.941g/cm3、融点129℃、MFR:1.3g/10分、Dowchemical社製、商品名:Elite5538G)をインフレーション成形法により製膜し、厚さ100μmのポリエチレンフィルムを得た。
このポリエチレンフィルムを長手方向(MD)及び幅方向(TD)に、2.24倍の延伸倍率で延伸し、厚さ20μmの延伸ポリエチレンフィルムを得た。延伸ポリエチレンフィルムのヘイズ値をJIS K-7105に準拠し、測定したところ、5.1%であった。
上記延伸ポリエチレンフィルムと、厚さ40μmの、未延伸直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム(東洋紡(株)製、商品名:L6100)とを、2液硬化型ウレタン系接着剤(ロックペイント(株)製、商品名:RU-77T/H-7)を介して積層し、ポリエチレン積層体を得た。
【0063】
<比較例1>
中密度ポリエチレン(密度:0.941g/cm3、融点129℃、MFR:1.3g/10分、Dowchemical社製、商品名:Elite5538G)をインフレーション成形法により製膜し、厚さ20μmのポリエチレンフィルムを得た。ポリエチレンフィルムのヘイズ値をJIS K-7105に準拠し、測定したところ、23.5%であった。
【0064】
上記ポリエチレンフィルムと、厚さ40μmの、未延伸直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム(東洋紡(株)製、商品名:L6100)とを、2液硬化型ウレタン系接着剤(ロックペイント(株)製、商品名:RU-77T/H-7)を介して積層し、ポリエチレン積層体を得た。
【0065】
<比較例2>
高密度ポリエチレン(密度:0.961g/cm3、融点135℃、MFR:0.7g/10分、ExxonMobil社製、商品名:HTA108)及び中密度ポリエチレン(密度:0.941g/cm3、融点129℃、MFR:1.3g/10分、Dowchemical社製、商品名:Elite5538G)を、インフレーション成形法により製膜し、高密度ポリエチレン層/中密度ポリエチレン層/高密度ポリエチレン層からなるポリエチレンフィルムを作製した。高密度ポリエチレン層の厚さは、それぞれ4μm、中密度ポリエチレン層の厚さは、12μmであった。ポリエチレンフィルムのヘイズ値をJIS K-7105に準拠し、測定したところ、28.8%であった。
【0066】
上記ポリエチレンフィルムと、厚さ40μmの、未延伸直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム(東洋紡(株)製、商品名:L6100)とを、2液硬化型ウレタン系接着剤(ロックペイント(株)製、商品名:RU-77T/H-7)を介して積層し、ポリエチレン積層体を得た。
【0067】
<印刷適性評価>
上記実施例及び比較例において作製した延伸ポリエチレンフィルム及びポリエチレンフィルムの一方の面に、水性フレキソインキ(東洋インキ(株)製、商品名:アクワリオナ)を用いて、フレキソ印刷法により、画像を形成した。形成した画像を目視により観察し、延伸ポリエチレンフィルム及びポリエチレンフィルムの印刷適性を以下の評価基準に基づいて、評価した。評価結果を表1にまとめた。
(評価基準)
○:印刷時の寸法安定性が良好であり、擦れ、滲み等が生じていない良好な画像を形成することができていた。
×:印刷時にフィルムの伸び縮みが発生し、形成した画像に擦れや滲みが生じていた。
【0068】
<剛性評価>
上記実施例及び比較例において作製した延伸ポリエチレンフィルム及びポリエチレンフィルムを、15mm幅の試験片とし、ループスティフネス測定試験器(東洋精機製作所製、商品名:ループステフネステスタ)によりその剛性を測定した。なお、ループの長さは、60mmとした。測定結果を表1にまとめた。
【0069】
<強度評価>
上記実施例及び比較例において作製した延伸ポリエチレンフィルム及びポリエチレンフィルムを、10mm幅のダンベル型試験片とした。この試験片のMD方向の引っ張り強度を、引っ張り試験機(オリエンテック社製、RTC-1310A)により測定した。なお、チャック間距離は、10mm、引っ張り速度は、300mm/分とした。測定結果を表1にまとめた。
【0070】