(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045516
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】トリアゼニド配位子を有する金属錯体及び気相から金属を堆積させるためのその使用
(51)【国際特許分類】
C23C 16/18 20060101AFI20240326BHJP
C23C 16/34 20060101ALI20240326BHJP
C07F 1/02 20060101ALI20240326BHJP
C07F 1/06 20060101ALI20240326BHJP
C07F 5/06 20060101ALI20240326BHJP
C07F 5/00 20060101ALI20240326BHJP
C07F 3/14 20060101ALI20240326BHJP
C07F 1/08 20060101ALI20240326BHJP
C07F 3/04 20060101ALI20240326BHJP
C07F 15/06 20060101ALI20240326BHJP
C07F 15/00 20060101ALI20240326BHJP
C07F 9/90 20060101ALI20240326BHJP
C07F 9/94 20060101ALI20240326BHJP
C07F 7/02 20060101ALI20240326BHJP
C07F 7/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C23C16/18
C23C16/34
C07F1/02
C07F1/06
C07F5/06
C07F5/00 H
C07F5/00 J
C07F5/00 D
C07F3/14
C07F1/08 C
C07F3/04
C07F15/06
C07F15/00 A
C07F9/90
C07F9/94
C07F7/02 Z
C07F7/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024019559
(22)【出願日】2024-02-13
(62)【分割の表示】P 2020532735の分割
【原出願日】2018-12-12
(31)【優先権主張番号】17207806.5
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】501399500
【氏名又は名称】ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D-63457 Hanau,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨルク・ズンダーマイヤー
(72)【発明者】
【氏名】ズザネ・プルズ
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン・シュレーダー
(57)【要約】
【課題】気相で金属及び金属含有層を堆積させるために有用な方法及び化合物を提供する。
【解決手段】本発明は、式R
1-N
3-R
2[式中、R
1及びR
2は炭化水素部分である]の少なくとも1つの配位子を有する金属錯体の使用であって、気相から金属又は金属の化合物を堆積させるための使用に関する。本発明は、金属錯体から金属を堆積させる方法、並びに金属錯体、置換トリアゼン化合物、及びそれらの製造方法に更に関する。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式R1-N3-R2[式中、R1及びR2は炭化水素基である]を有する少なくとも1つの配位子Lを有する金属錯体の使用であって、気相から前記金属又は前記金属の化合物を堆積させるための使用。
【請求項2】
前記金属錯体が、式R1-N3-R2を有する少なくとも1つの配位子Lと、H、ハロゲン、CO、及び炭化水素配位子から選択される少なくとも1つの更なる配位子Xと、を有する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記金属錯体が、式R1-N3-R2[式中、R1及びR2はアルキル基である]を有する少なくとも1つの配位子Lを有する、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記金属錯体が、式(1):
Mx[(L1)a(L2)b(L3)cXd] (1)
[式中、
前記配位子L、すなわちL1、L2及びL3は、式R1-N3-R2(式中、R1及びR2は、炭化水素基である)の基から互いに独立して選択され、
少なくともL1に関して、前記R1基及びR2基はアルキル基であり、
Xは、H、ハロゲン、CO、及び炭化水素配位子から独立して選択され、
Xは1~4の整数であり、
a、b、c及びdは整数であり、
合計a+b+c+dは、少なくともxであり、かつ12以下であり、
aは少なくとも1であり、
b、c、及びdは、0に等しくてもよい]を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記金属錯体が、ホモレプティックであり、式R1-N3-R2の配位子Lのみを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記金属錯体が、ヘテロレプティックである、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記R1基及びR2基が、互いに独立して1~30個のC原子を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記金属錯体の前記R1基及びR2基の全てが、アルキル基である、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記R1基及びR2基が、独立して、1~15個のC原子を有する、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記R1基及び/又はR2基のうちの全て又は一部が、分枝状及び/又は環状アルキル基である、請求項8又は9に記載の使用。
【請求項11】
前記R1基及び/又はR2基のうちの全て又は一部が、tert-ブチルである、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記金属錯体が、tert-ブチル-N3-tert-ブチル又はtert-ブチル-N3-メチルである少なくとも1つの配位子Lを有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記金属錯体の配位子Lの全てが、tert-ブチル-N3-tert-ブチル又はtert-ブチル-N3-メチルである、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
少なくとも1つのXが、1~12個の炭素原子を有するアルキル又はアルケニル、及び5~30個のC原子を有する芳香族炭化水素から選択される炭化水素配位子である、請求項2~13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
前記金属Mが、In、Co、Cu、Ru、Al、Ga、Tl、及びLaから選択される、請求項1~14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
前記金属Mが、In、Co、Cu、La及びRuから選択される、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記金属錯体が、式(2):
M[(L1)aXd] (2)
[式中、
L1は、式R1-N3-R2(式中、R1及びR2は、1~12個のC原子を有するアルキル基である)を有し、
Xは、H、ハロゲン、CO、及び1~12個のC原子を有するアルキルから選択され、
a=2又は3であり、
d=0又は1であり、
Mは、In、Co、Cu、Al、Ga、Tl、及びLaから選択される]を有する、請求項1~16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
前記金属錯体が、式(3)~(5):
M[(L1)2X] (3)
[式中、
L1は、式R1-N3-R2(式中、R1及びR2は、1~12個のC原子を有するアルキル基である)を有し、
Xは、H及び1~12個のC原子を有するアルキルから選択され、
M=Al又はGaである]、
M[(L1)3] (4)
[式中、
L1は、式R1-N3-R2(式中、R1及びR2は、1~12個のC原子を有するアルキル基である)を有し、
M=In、Tl又はLaである]、
Mx(L1)a (5)
[式中、
L1は、式R1-N3-R2(式中、R1及びR2は、1~12個のC原子を有するアルキル基である)を有し、
xは1~4の整数であり、
aは2~8の整数であり、但し、a/x=1又は2であり、
M=Co又はCuである]のうちの1つを有する、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記金属錯体が、式(6):
(Ru[(L1)X1X2] (6)
[式中、
L1は、式R1-N3-R2(式中、R1及びR2は、1~12個のC原子を有するアルキル基である)を有し、
X1は、5~30個のC原子を有する芳香族炭化水素配位子であり、
X2は、いずれかの基、H、ハロゲン、CO、及び1~6個のC原子を有するアルキル以外から選択される]を有する、請求項1~16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
前記金属錯体が、分解を起こすことなく昇華又は気化可能である、請求項1~19のいずれか一項に記載の使用。
【請求項21】
前記金属錯体の分子量が、600g/mol未満である、請求項1~20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項22】
前記金属錯体が、100℃で熱的に安定であり、かつ/又は100℃~400℃の温度範囲で分解され、前記温度が、大気圧又は10-3~900ミリバールの範囲の減圧下で測定される、請求項1~21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項23】
前記気相からの前記金属又は前記金属の前記化合物の前記堆積が、10-3~900ミリバールの範囲、好ましくは10-2~1ミリバールの範囲、特に10-2ミリバールの減圧下で行われる、請求項1~22のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
コーティング基材の製造方法であって、
(a)請求項1~23のいずれか一項に記載の金属錯体を準備する工程と、
(b)前記金属又は前記金属の化合物を、有機金属蒸着によって前記基材の表面上に堆積させる工程と、を含む、方法。
【請求項25】
前記方法が、有機金属化学気相堆積法(MOCVD)である、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項26】
前記方法が、有機金属気相成長法(MOVPE)である、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項27】
前記金属の前記化合物が、半導体化合物、合金、窒化物、リン化物、ヒ化物、及びケイ化物から選択される、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項28】
前記金属錯体が、分解を起こすことなく昇華又は蒸発する、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項29】
前記金属錯体が、昇華温度又は蒸発温度を100℃以下超える温度で気相にて分解する、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項30】
金属錯体の製造方法であって、前記金属錯体が、請求項1~23のいずれか一項に記載のものであり、
(A)式R1-(N3)A-R2[式中、Aは、H、又はアルカリ金属、特にLi、Na若しくはKから選択される]の化合物を準備する工程と、
(B)前記金属の化合物と接触させる工程と、を含む、方法。
【請求項31】
工程(B)における前記金属の化合物が、配位子Lを有さない前記金属の、金属塩、有機金属化合物、又は金属錯体から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
化合物R1-N3及びAR2を含有する反応混合物中の式R1-(N3)A-R2[式中、Aはアルカリ金属である]の化合物の製造方法。
【請求項33】
前記工程において、式R1-(N3)A-R2[式中、Aはアルカリ金属である]の前記化合物が、請求項32に記載の方法により調製される、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項34】
A=Liである、請求項30~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
式(1):
Mx[(L1)a(L2)b(L3)cXd] (1)
[式中、
L1、L2及びL3である配位子Lは、式R1-N3-R2(式中、R1及びR2は、炭化水素基である)の基から互いに独立して選択され、
少なくともL1に関して、R1基及びR2基はアルキル基であり、
配位子Xは、ハロゲン、H、CO、及び炭化水素配位子から選択され、
Xは1~4の整数であり、
a、b、c及びdは整数であり、
合計a+b+c+dは、少なくともxであり、かつ12以下であり、
aは少なくとも1であり、
b、c及びdは、0に等しくてもよく、
以下の条件(i)~(ii):
(i)Mが、周期表のVIII族遷移元素の金属及びランタニドから選択されること、
(ii)少なくとも1つの配位子Lが、tert-ブチルである少なくとも1つのR1基又はR2基を有すること、のうちの少なくとも1つが満たされる]の金属錯体。
【請求項36】
式(7)~(20)又は(102)~(115)
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
のうちの1つを有する、請求項35に記載の金属錯体。
【請求項37】
tert-ブチル-(N3)H-CH3、及び式R1-(N3)A-R2[式中、R1及びR2はアルキル基であり、Aはアルカリ金属、特にLi、Na又はKである]の有機アルカリ金属塩から選択される化合物。
【請求項38】
式(21)~(23)又は(116)~(117)
【化5】
【化6】
のうちの1つを有する、請求項37に記載の有機アルカリ金属塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相から金属又は金属の別の化合物を堆積させるための、式R1-N3-R2[式中、R1及びR2は、炭化水素基、特にアルキル基である]の少なくとも1つの配位子を有する金属錯体の使用に関する。本発明は更に、金属錯体から金属を堆積させる方法、並びに金属錯体、置換トリアゼニド化合物、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術
有機金属気相堆積法、及び特に有機金属気相成長法は、金属又は金属化合物の薄層を基材上に生成するための重要な方法である。これらの方法は、特に半導体産業において使用される。本プロセスにおいては、所望により追加の反応性化合物と組み合わされて有機金属化合物が加工室内へと導入され、減圧下又は常圧下にて、加熱された基材の表面上で反応が生じ、層の堆積をもたらす。このような方法では、半導体結晶、アモルファス層、金属化合物又は金属層などの複数の金属含有層が、基材上に堆積されてもよい。例えば、「Handbook of Thin Film Deposition-Processes and Technologies」2nd Edition 2001,editor:Krishna Sesha,Chapter4,pp.151-203において、総説を見ることができる。
【0003】
多くの用途、特に半導体産業では、このような金属含有層が高純度で生成されることが不可欠である。わずかな微量不純物であっても、意図された使用が損なわれる場合がある。
【0004】
しかしながら、非常に少ない有機金属前駆体化合物のみが、高純度の金属含有層を生成するのに好適である。これは、多くの場合、好適な有機金属前駆体化合物が高温で気相に転移可能である必要があるという事実に起因する。しかしながら、多くの有機金属化合物は熱的に不安定である。これらは、より高い温度で分解(崩壊)するため、加熱又は他の方法によって気相に変換することができない。これに関連して、有機金属化合物は、多くの場合、特に反応性有機配位子のせいで、分解プロセスが起こる比較的高い蒸発温度を有する固体であることが問題である。
【0005】
有機金属化合物を気化させることができる場合、基材、すなわち堆積の標的の上の気相の温度は通常、分解が起こるまで更に上昇する。しかしながら、気相に変換することができる有機金属化合物であっても、多くの場合、金属の堆積には好適ではない。これは、基材表面上への金属の堆積が、炭素、窒素、又は酸素などの錯体配位子の成分によって、不純物が生成されず、更に微小のものでさえ生成されない方法で行われる必要があることが理由である。この必要条件も満たされないことがよくある。理由として、必要な高い分解温度では、反応性の高い中間体、イオン性基、及び遊離基の混合物が形成され、望ましくない副反応が基材表面で発生することが多いためである。
【0006】
金属アルキル化合物は、多くの場合、気相にて金属含有層を堆積させるための前駆体化合物として使用される。好適な化合物の概要は、J.Zilkoによる上記の刊行物に含まれる。しかしながら、多くの金属のアルキル化合物は、気相における堆積反応の適性を損なう特性を有することが多い。一方で、遷移金属の多くの純粋な金属アルキル化合物は、不安定であり、減衰しやすく、保存できないことが不利である。一方、これらは、遷移金属に結合しているアニオン性炭素を、望ましくない方法で層に導入する傾向がある。これらはまた、多くの場合、比較的高い蒸発温度を有し、蒸着における用途にとって不利である。
【0007】
したがって、有機金属蒸着によって金属及び金属含有層を堆積させるための改善された方法及び材料が、引き続き必要とされている。
【0008】
N-アリール及びN,N’-ジアリール-トリアゼニド配位子を有する金属有機錯体は、従来技術において既知である。しかしながら、気相から金属を堆積させるため、このような錯体を使用することは、従来技術において開示されていない。これは、これらの配位子を有する金属錯体が、気相からの金属の堆積に使用するために絶対に必要である、十分な揮発性及び分解性を有さないため、驚くべきことではない。したがって、このような反応では、不揮発性炭素の不純物が結果として生じ得る。
【0009】
芳香族基で置換されたトリアゼニド配位子を有する金属有機錯体は、様々な刊行物に記載されている。しかしながら、これらの刊行物の事実上全ては、このような錯体の合成及び構造のみに関連しており、化合物の実用的な用途は、例外的な場合にのみ記載されている。
【0010】
トリアゼニドアニオンの異なる置換前駆体化合物を提供するための方法が知られている。1981年に、BrandとRobertsは、1,3-ジアルキルトリアゼニル基の電子配置を説明し、tert-ブチルアジド及びtert-ブチルリチウムから開始して、ジ-tert-ブチルトリアジンを表し得ると脚注で述べている。実験的データ及び分光学的データはどちらも公開されていない。[1]エチル及びメチル置換トリアゼンもまた、1983年にSmithとMichejdaによって記載され、合成はメチルリチウム又はグリニャール(Grignard)試薬エチルマグネシウムブロミドのいずれかで行われている。[2]更に、異なるアルキル-及びアリール-置換トリアゼンの合成、並びに互変異性平衡に関する研究について、様々な刊行物で議論されている。[3,4]
【0011】
トリアゼンのアルカリ土類金属及びアルカリ金属化合物は、アリール置換系からのみ知られている。全ての刊行物で結晶学的に特徴付けられた化合物は、溶媒和化合物、及び/又は対応する金属がTMEDA若しくは[15]-Crown-5によって安定化されている化合物である。[6~10]
【0012】
III族の典型元素を有するトリアゼニド化合物は、数十年にわたって文献から知られている。
【0013】
米国特許第3,386,985号には、様々なトリアゼニド配位子、とりわけ1,3-ジメチルトリアジンを有する様々な有機金属化合物の説明が含まれる。重合方法において、連鎖移動試薬又は阻害剤として化合物を使用することが提案されている。金属の堆積方法は記載されていない。
【0014】
Brinckmanら[11]は、1,3-ジメチルトリアゼニドを配位子として有する有機金属錯体を記載しており、その結果は、米国特許第3,386,985号に含まれるものと大部分が一致する。錯体の実際の使用に関して、更なる説明は示されていない。製造方法における収率は76%以下であるので、なお改善を必要としている。
【0015】
加えて、1つ及び/又は2つのアリール-トリアゼニド配位子を有する様々な錯体、ホモレプティックとヘテロレプティックの両方が文献に記載されている。[12~16]
【0016】
遷移金属の領域では、芳香族置換配位子を有する複数のトリアゼニド化合物が既知であり、チタン及びジルコニウムなどの前周期遷移金属、並びに銀や銅などの後周期遷移金属が中心原子として研究されている。[6,17~23]芳香族置換トリアゼニド配位子を有するホモレプティック及びヘテロレプティック両方の分子又はカチオン性コバルト錯体は、ESR測定に関連して記載されている。ルテニウム化合物はまた、理論計算に関連して報告されている。[24~30]
【0017】
Soussiら[5]は、配位子としてアルキルトリアゼニド、及び安定化のためにTMEDA配位子(テトラメチルエチレンジアミン)を有する有機金属鉄錯体の調製について記載している。錯体は、Fe[N(SiMe3)2]2から開始して配位子交換経路を介して、比較的複雑な方法で調製される。金属錯体は、金属間ナノ粒子の製造に使用される。温度が上昇したときの鉄錯体の蒸発及び分解挙動は、熱重量分析によって調査される。4つの金属錯体は、熱安定性が低いため、錯体を気化できないことが見出されている。温度が200℃超まで上昇すると、固体残留物が残存し、試料重量の約20~40重量%を占める。加えて、温度が最高200℃まで上昇したとき、重量曲線は、化学分解反応に典型的な不規則な過程を示す。したがって、金属錯体は、金属含有気相コーティングの製造のための前駆体化合物として好適ではない。
【0018】
様々な希土類金属錯体は文献から知られているが、それらは立体的に非常に難しいアリール-トリアゼニド配位子でのみ知られている。[31~33]
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許第3,386,985号明細書
【特許文献2】米国特許第3,386,985号明細書
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Handbook of Thin Film Deposition-Processes and Technologies」2nd Edition 2001,editor:Krishna Sesha,Chapter4,pp.151-203
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上記の欠点を克服する、気相で金属及び金属含有層を堆積させるために有用な方法及び化合物が、当技術分野において引き続き必要とされている。
【0022】
発明の目的
本発明は、上記の欠点を克服する方法及び化合物を提供する目的に基づく。本発明は、特に、気相から金属及び金属含有層を堆積させるために、新規及び改善された化合物を提供する目的に基づく。
【0023】
化合物は、比較的高い安定性を有する必要がある。化合物は、高い蒸気圧を有し、同時に低分解点を有する必要がある。実質的な分解を起こすことなく、化合物を気相に変換可能である必要がある。気相への変換後、すなわち昇華温度又は蒸発温度を超える温度で、化合物は分解される必要がある。分解は、好ましくは、昇華温度又は蒸発温度をわずかに超える温度で行われる必要がある。
【0024】
化合物は、概して、気相からの堆積方法が通常行われる温度、特に100℃~300℃で高い安定性と揮発性を有する必要がある。特に、化合物は昇華可能である必要がある。
【0025】
本発明は、特に、最高100℃の温度で安定して気相に変換することができ、より高い温度、例えば100℃~400℃の範囲で分解することができる化合物を提供する目的に基づく。
【0026】
化合物は、気相から様々な金属及び金属含有化合物を堆積できるようにすることを意図している。コーティングは、高度に精製する必要がある。特に、従来の堆積方法では、コーティングへの炭素、酸素、又は窒素の望ましくない混入は、起こさせない必要がある。
【0027】
本発明は更に、可能な限り単純かつ効率的であるこのような化合物を製造するための方法を提供する目的に基づく。使用される試薬は、可能な限り入手しやすく、取り扱いが安全である必要がある。高収率で方法を実行することが可能である必要がある。この方法は、可能な限り少数の工程で所望の生成物をもたらす必要があり、可能な限り穏やかな反応条件下で実施可能である必要がある。揮発性前駆体化合物を可能な限り最も簡単な方法で調製することができる化合物を提供することも意図される。
【課題を解決するための手段】
【0028】
発明の開示
驚くべきことに、本発明が基づく目的は、本特許請求の範囲による適用、方法、金属錯体、及び更なる化合物により解決される。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の目的は、式R1-N3-R2[式中、R1及びR2は炭化水素基である]を有する少なくとも1つの配位子Lを有する金属錯体の使用であって、気相から金属又は金属の化合物を堆積させるための使用である。この場合、N3サブユニットは負の電荷を有するため、配位子Lは、形式的にアニオン性配位子である。
【0030】
この場合、金属からなる又は金属を含有する固体層が、気相から基材上に堆積される。金属錯体は、有機金属前駆体化合物(前駆体)として使用される。金属錯体からの金属は、単体の形態で、又は金属の化合物の形態に的を絞った方法で堆積される。したがって、例えば、配位子からの窒素、又は好適な反応体のパートナーからの窒素を層に組み込むことができ、その結果、堆積された金属の窒化物が形成される。好ましくは、金属錯体が最初に気相に変換され、又は少なくとも、金属を含有する揮発性中間生成物が、気相に変換される。気相において、温度は通常、減圧下で更に上昇するため、金属錯体の(更なる)分解が起こる。減衰はまた、例えば放射線によって、異なる方法で励振又は補助されてもよい。金属錯体のきわめて重要な分解は、気相への変換後にのみ行われる必要がある。これにより確実に、金属錯体が気相で可能な限り定量的に存在し、金属又は金属の化合物を堆積するために使用できるようにする。更に、制御された分解が気相でのみに起こる場合、望ましくない副反応の数を規則的に減らすことができる。
【0031】
好ましい実施形態では、金属錯体は、式R1-N3-R2pの少なくとも1つの配位子L、及び少なくとも1つの更なる配位子Xを有する。更なる配位子Xは、好ましくは、ハロゲン、H、CO、及び炭化水素配位子から選択される。炭化水素配位子は、特に、1~12個のC原子を有するアルキル又はアルケニル、及び5~30個のC原子を有する芳香族炭化水素である。炭化水素配位子は中性であってもよく、又はこれに対して負の電荷を有してもよい。ハロゲンは、F、Cl、Br又はIであってもよく、Clが特に好ましい。X=Hの場合、ヒドリド錯体が存在する。この錯体は、1つ以上の配位子X、例えば、1つ、2つ、又は3つの配位子Xを有してもよい。この場合、正確に1つ又は2つの配位子Xが存在することが好ましい。2つ以上の配位子Xが存在する場合、配位子Xは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0032】
好ましい実施形態では、金属錯体は、式R1-N3-R2[式中、R1及びR2はアルキル基である]を有する少なくとも1つの配位子Lを有する。
【0033】
好ましい実施形態では、金属錯体は、式(1):
Mx[(L1)a(L2)b(L3)cXd](1)
[式中、
L1、L2及びL3である配位子Lは、式R1-N3-R2(式中、R1及びR2は、炭化水素基である)の基から互いに独立して選択され、
少なくともL1に関して、R1基及びR2基は、アルキル基であり、
Xは、H、ハロゲン、CO、及び炭化水素配位子、特に1~12個のC原子を有するアルキル基、並びに5~30個のC原子を有する芳香族炭化水素から独立して選択され、
xは1~4、好ましくは1又は2の整数であり、
a、b、c及びdは整数であり、
合計a+b+c+dは、少なくともxであり、かつ12以下、好ましくは6以下、特に4以下であり、
aは、少なくとも1、好ましくは1~6であり、好ましくは1又は2であり、
b、c及びdは0に等しくてもよく、好ましくは各々0、1又は2である]を有する。
この場合、bは特に0又は1であり、cは好ましくは0である。
【0034】
当業者には周知のように、配位子の金属に対する比は、金属の酸化状態からの結果である。この場合、配位子Lは、式R1-N3-R2[式中、R1及びR2は、単一の負の電荷を有する炭化水素基である]である。したがって、例えば、式(1)中のCo(II)などの酸化状態IIの金属は、1つ又は2つの配位子Lで置換されてもよい。
【0035】
概して、錯体は可能な限り均質であることが好ましい。その場合、減衰プロセスは、多くの場合、あまり複雑ではなく、結果として、気相及びコーティング反応で望ましくない副反応が発生する可能性は低くなる。特に、錯体は、1つ又は2つの異なる種類の配位子のみ、例えば、1種類の配位子L及び1種類のXのみ、又は2種類の配位子Lのみを有することが好ましい。配位子Lとしての錯体全体は、特に好ましくはL1及びL2のみを有する。その場合、c=0である。
【0036】
より好ましくは、錯体は、L1である配位子Lのみを有する。その場合、b=0及びc=0である。好ましい実施形態では、錯体は配位子Xを有さないため、d=0である。ここでも、c=d=0、又はb=c=d=0である実施形態が好ましい。このような錯体は、構造的複雑性が低いにもかかわらず、気相堆積プロセスにおいて特に良好な挙動を示すことが多くの場合、見出された。
【0037】
好ましい実施形態では、金属錯体は、ホモレプティックである。この場合、ホモレプティック錯体は、1つ以上の配位子Lのみを有する。用語「ホモレプティック」は、化合物の全ての配位子が同一であることを意味する。ホモレプティック錯体が特に好ましいのは、気相における分解挙動が、多くの場合、異なる配位子を有するヘテロレプティック金属錯体より均一であり、制御がより優れているためである。本発明によると、ホモレプティック錯体は、蒸着に必要とされる安定性及び揮発性に関して、特に良好な特性を有することが見出された。特に、In、Co、Cu及びLaのホモレプティック錯体において有利な特性が見出された。
【0038】
別の好ましい実施形態では、金属錯体は、ヘテロレプティックである。これは、金属錯体が、2つ以上の異なる配位子、特に2つ、3つ、又は4つの異なる配位子を有し得ることを意味する。このため、式R1-N3-R2の2つ以上の異なる配位子Lが存在してもよい。あるいは、式R1-N3-R2の少なくとも1つの配位子L、及び少なくとも1つの他の配位子が存在する必要がある。好ましい実施形態では、ヘテロレプティック金属錯体は、2つ又は3つの異なる配位子を含む。本発明によれば、例えば、ヘテロレプティックルテニウム錯体は容易に入手可能であり、気相からのRuの堆積に好適であることが見出された。
【0039】
好ましい実施形態では、金属錯体は、式R1-N3-R2の配位子Lのみを有する。
【0040】
更なる好ましい実施形態では、金属錯体は、更なる配位子を更に含む。この場合、好ましくは、安定性及び揮発性に関する有利な特性を損なう更なる配位子、又は気相からの純粋な金属の堆積を損なう更なる配位子は存在しない。したがって、好ましくは、特にO、N、S又はPから選択される反応性元素を有する更なる配位子は存在しない。特に好ましくは、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)などのアミン基を有する更なる配位子は存在しない。一実施形態では、好ましくは、ハロゲンを含む配位子は存在しない。更なる好ましい実施形態では、構造要素N-C-N又はNアリールを有する配位子は存在しない。
【0041】
好ましい実施形態では、金属錯体は、金属原子、及び式R1-N3-R2の1~4つの配位子、特に1つ、2つ、3つ、又は4つの配位子を有する。金属錯体はまた、2個、3個、4個、又はそれ以上の金属原子を有してもよく、それに応じて、より多数の配位子が存在する。このような金属錯体の化学量論は周知である。R1-N3-R2基は、単一で負に帯電している。
【0042】
R1基及びR2基は、炭化水素基である。これは、それらが炭素と水素の元素からなることを意味する。R1及びR2は、概して、互いに独立して選択することができる。
【0043】
好ましい実施形態では、R1=R2である。その結果、化合物全体は、特に均質であり得る。これは、分解プロセスがあまり複雑ではないため、及び、副反応が減少することが予想されるため、気相からの金属の堆積において有利であり得る。
【0044】
好ましい実施形態では、R1及びR2は、本出願に関連して、互いに独立して、1~25個のC原子、特に1~20個のC原子を有する。この場合、R1及びR2は、互いに独立して、1~15個のC原子、特に1~12個のC原子を有することが特に好ましい。
【0045】
R1基及びR2基は、アルキル、アルケニル、アリール、及びアルアリールから独立して選択されてもよい。特定の一実施形態では、R1及びR2はアルキル基である。好ましくは、金属錯体は、式R1-N3-R2[式中、R1及びR2はアルキル基である]を有する少なくとも1つの配位子Lを有する。金属錯体の全ての配位子L、R1及びR2には、アルキル基が好ましい。アルキル基は、分枝状、環状又は非分枝状であり得る。
【0046】
本出願に関連して、アルキル基R1及びR2は、例えば、1~20個のC原子、特に1~15個のC原子、又は1~12個のC原子を有してもよい。アルキル基は、比較的短鎖であり、1~6個のC原子、特に1~4個のC原子を有することが特に好ましい。
【0047】
好ましい実施形態では、金属錯体のR1基及び/又はR2基のうちの全て又は一部は、分枝状及び/又は環状アルキル基である。ここで好ましい分枝状基は、tert-ブチル及びイソプロピル、特にtert-ブチルである。好ましい環状基は、アダマンチル又はシクロアルキル、特にシクロヘキシルなどの嵩高な基である。
【0048】
R1及びR2は、特に好ましくは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、及びn-プロピルから選択される。R1及びR2は、特に好ましくは、メチル、エチル、及びtert-ブチルから選択される。好ましい実施形態では、R1及びR2は、tert-ブチルである。
【0049】
好ましい実施形態では、金属錯体は、tert-ブチル-N3-tert-ブチル、又はtert-ブチル-N3-メチルである少なくとも1つの配位子を有する。好ましい実施形態では、金属錯体は、tert-ブチル-N3-tert-ブチル、及び/又はtert-ブチル-N3-メチルである配位子のみを有する。金属錯体は、好ましくは、ホモレプティックである。
【0050】
金属錯体は、更なる配位子Xを有してもよい。更なる配位子Xは、好ましくは、ハロゲン、H、CO、及び炭化水素配位子から選択される。炭化水素配位子は、特に1~12個の炭素原子、特に1~4個の炭素原子、特に好ましくは1個又は2個の炭素原子を有するアルキル基である。メチルが特に好ましい。また、配位子Xとして好ましいのは、5~30個の炭素原子、特に6~12個のC原子を有する芳香族炭化水素、例えば、ペンテン、ベンゼン又は置換ベンゼン、例えば、シメン又は様々なジ-又はトリ-アルキルベンゼンである。芳香族基Xは、中性であっても負に帯電していてもよい。このような芳香族配位子は、金属錯体、例えばRuの錯体を安定化できることが知られている。配位子は、特に1~12個のC原子を有するアルケニル配位子であってもよい。ハロゲンは、好ましくはClである。
【0051】
金属Mは、周期表の典型元素及び遷移元素(minor group)の金属(アルカリ金属を除く)であってもよい。本発明によれば、気相から金属又は金属の化合物を堆積させるために、好適なバンド幅の金属を有し得る金属錯体を概ね使用することができる。
【0052】
周期表の第8族、第9族及び第10族(特にFe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt)、第13族(Al、Ga、In、Tl)、第10族(Cu、Ag、Au)、第12族(特にZn;又はCd若しくはHg)、ランタノイド(La、Ce、Pr、Ndなど)、又はアクチノイド(Ac、Th、Pa、Uなど)の金属の金属錯体を使用するとき、使用が特に効率的であることが見出された。錯体中の金属は、好ましくは、酸化状態1、2又は3を有する。
【0053】
好ましい実施形態では、金属Mは、Co、Ru、Cu、Al、Ga、Tl、及びLaから選択される。これらの金属とトリアゼニド配位子との錯体は、本発明による方法を用い、比較的単純な方法で得ることができる。これらの金属錯体は、気相からの金属の堆積に非常に好適であることが見出された。
【0054】
Al、In、Co、Cu及びLaから選択される金属は、特に好ましく使用される。これらの金属の金属錯体は、特に容易に入手可能であり、蒸着において特に有利な特性を示すことが見出された。
【0055】
好ましい実施形態では、金属Mは、In、Co、Cu及びRuから選択される。特に、従来技術において、気相からのこのような金属の堆積のための前駆体化合物が必要とされている。
【0056】
好ましい実施形態では、金属はM=Coである。Co錯体は、特に昇華性が高いことが見出されており、この場合、低分子錯体は、比較的低温で、実質的に残留物なしで蒸発させることができる。
【0057】
好ましい実施形態では、金属はM=Inである。錯体は、特に容易に昇華又は蒸発可能であり、比較的低温で特定の画分を蒸発できることが見出された。好ましい実施形態では、In-錯体は25℃で液体である。化合物In(dbt)Me2(式9a、実施例8)は、25℃で液体であることが見出された。気相に容易に変換することができるIn-錯体は特に有利であり、その理由は、従来技術において、室温で固体であり、制御されていない部分的に爆発的な自己触媒分解を起こしやすい、トリメチルインジウムなどのIn-アルキル化合物が、概ね使用されているためである。
【0058】
好ましい実施形態では、金属はM=Ruである。このような錯体は有利であり、その理由は、従来技術において、Ruを比較的低温で気相に変換し堆積させるために改善を必要とする前駆体化合物がほんのわずかしか使用可能でないためである。好ましい実施形態では、Ru錯体は25℃で液体である。したがって、式(14)及び(16)の化合物(実施例14及び16)は、25℃で液体であることが見出され、他方、他のRu錯体は70℃未満の非常に低い融点を有する。気相に容易に変換することができる液体及び固体Ru錯体は特に有利であり、その理由は、従来技術において、気相に効率的に変換することができ、このような方法で使用できるRu化合物を使用可能でないためである。
【0059】
好ましい実施形態では、金属はM=Cuである。組成[Cu(R1-N3-R2)]nのCu(I)錯体は、R1基及び/又はR2基のサイズに応じて、結晶性固体中に、二量体(n=2、R1=R2=tert-ブチル)、又は四量体(n=4、R1=tert-ブチル、R2=メチル)として存在することが見出された。このような会合の形成は、多くの金属化合物に典型的である。それにもかかわらず、両方の化合物は非常に容易に昇華可能であり、低分子錯体が比較的低温で、実質的に残留物なしに気相に気化することが可能である。
【0060】
好ましい実施形態では、金属はM=Laである。このような錯体は有利であり、その理由は、従来技術において、非常に高い分子量を有するランタン又は他のランタノイドを比較的低温で気相に変換し、それらを堆積させるために改善を必要とする前駆体化合物がほんのわずかしか使用可能でないためである。
【0061】
好ましい実施形態では、金属錯体は、式(2):
M[(L1)aXd](2)
[式中、
L1は、式R1-N3-R2(式中、R1及びR2は、1~12個のC原子を有するアルキル基である)を有し、
Xは、H、ハロゲン、CO、及び1~6個のC原子を有するアルキルから選択され、
a=2又は3であり、
d=0又は1であり、
Mは、In、Co、Cu、Al、Ga、Tl、及びLaから選択される]を有する。
【0062】
好ましい実施形態では、金属錯体は、式(3)~(5):
M[(L1)2X](3)
[式中、
L1は、式R1-N3-R2(式中、R1及びR2は、1~12個のC原子を有するアルキル基である)を有し、
Xは、H及び1~6個のC原子のアルキルから選択され、
M=Al又はGaである]、
M[(L1)3](4)
[式中、
L1は式R1-N3-R2(式中、R1及びR2は、1~12個のC原子を有するアルキル基である)を有し、
M=In、Tl又はLaである]、
Mx(L1)a(5)
[式中、
L1は、式R1-N3-R2(式中、R1及びR2は、1~12個のC原子を有するアルキル基である)を有し、
Xは1~4の整数であり、
aは2~8の整数であり、但し、a/x=1又は2であり、
M=Co又はCuである]のうちの1つを有する。
ここで、特に、a/x=2の場合、金属はCoであり、a/x=1の場合、金属はCuである。
【0063】
好ましい実施形態では、金属錯体は、式(6):
(Ru[(L1)X1X2](6)
[式中、
L1は、式R1-N3-R2(式中、R1及びR2は、1~12個のC原子を有するアルキル基である)を有し、
X1は、5~30個のC原子を有する芳香族炭化水素配位子であり、
X2は、いずれかの基、H、ハロゲン、CO、及び1~6個のC原子を有するアルキル以外から選択される]を有する。
【0064】
Ru錯体の安定性及び揮発性は、他の金属の安定性及び揮発性よりも低い場合があることが見出された。これとは関係なく、単体Ruは、Ru錯体と共に気相から分離することができる。これは、このような方法で前駆体化合物として好適なRu化合物が当該技術分野において必要とされているため、有利である。Ru錯体は、例えば、ドーピング金属として、ライナー金属として、又は電子用途の材料中の充填金属としてRuを組み込むために使用することができる。
【0065】
好ましい実施形態では、金属錯体は、25℃及び大気圧(1013ミリバール)で液体である。気相への転移は低温で既に起きているため、及び液体は特に取り扱いが容易であるため、液体はこのような方法に特に好適である。好ましい実施形態では、金属錯体は、25℃及び大気圧で固体であり、比較的低い蒸発温度を有する。
【0066】
好ましくは、金属錯体は、120℃未満、特に100℃未満の大気圧での昇華又は蒸発温度を有する。
【0067】
好ましくは、気相への転移は、120℃未満、特に100℃未満の温度での蒸発又は昇華によって行われる。蒸発又は昇華は、好ましくは、減圧下で10-3~900ミリバールの範囲、好ましくは10-2~1ミリバールの範囲、特に10-2ミリバールで行われる。
【0068】
概して、本発明による方法における圧力は、好ましくは、このような方法に通例的な範囲に設定される。したがって、方法及び使用は、好ましくは10-3~900ミリバールの範囲、特に好ましくは10-2~1ミリバールの範囲、特に10-2ミリバールの圧力で行われる。本出願に関連して、蒸発、昇華、若しくは分解温度、又は化合物が安定である温度などの気相反応のパラメータは、好ましくは、このような反応で設定された減圧下、特に10-2ミリバールの圧力で測定される。
【0069】
好ましい実施形態では、金属錯体は、分解(減衰)を起こすことなく、大気圧及び/又は減圧下で気相にて、昇華又は気化可能である。これは、例えば、最大90重量%、最大95重量%、又は最大98重量%が、分解を起こすことなく気相に変換され得ることを意味する。崩壊について、通例的な方法、特にSDTA(同時示差熱分析)によって追跡することができる。
【0070】
金属錯体は、好ましくは大気圧で熱的に安定であるが、特に気相にて減圧下で100℃、より好ましくは120℃又は150℃で熱的に安定である。これは、このような温度では実質的な分解がまだ起こらないこと、又は少なくとも5重量%以下、特に2重量%以下、若しくは1重量%以下が分解されることを意味する。好ましくは、金属錯体は、この温度未満で気相に転移する。減圧は、10-3~900ミリバールの範囲、好ましくは10-2~1ミリバールの範囲、特に10-2ミリバールである。
【0071】
好ましい実施形態では、金属錯体は、比較的低い分子量を有する。比較的軽い錯体は、多くの場合、気相への変換が向上し得る。本出願に関連して記載される金属錯体は、有利には、比較的低い分子量を有する配位子を用いて調製することができる。金属錯体の分子量は、好ましくは600g/mol未満、特に好ましくは450g/mol未満、非常に特に好ましくは350g/mol未満である。
【0072】
本発明はまた、コーティング基材の製造方法であって、
(a)上記のように金属錯体を準備する工程と、
(b)金属又は金属の化合物を、有機金属蒸着によって基材の表面上に堆積させる工程と、を含む、方法にも関する。
【0073】
好ましい実施形態では、本方法は、有機金属化学気相堆積法(MOCVD)である。有機金属気相堆積法(MOCVD、「有機金属化学気相堆積法」)は、化学蒸着(CVD)法の分類からのコーティング法であり、これは、基材上における固体層の堆積が、有機金属前駆体化合物(前駆体)を使用した化学気相から生じる方法である。
【0074】
好ましい実施形態では、有機金属気相堆積法は有機金属気相成長法(MOVPE、「metal-organic vapor phase epitaxy」であり、また「organo-metallic vapor phase epitaxy」、OMVPEとも称される)である。基材上の任意の堆積がMOCVDを用いて可能であるのに対して、MOVPEは成長法であり、また従って、結晶性基材上における結晶成長に関する。本方法、特にMOVPEは、とりわけ半導体材料の堆積のために使用される。
【0075】
本発明による使用及び方法により、気相から金属又は金属の化合物が堆積されることが可能になる。堆積は、基材上で行われる。金属含有堆積は、概して、層又はコーティングと呼ばれる。金属の化合物は、好ましくは、半導体化合物、合金、窒化物、リン化物、ヒ化物、及びケイ化物から選択される。このような化合物は、装置の条件下で金属と反応することができる、気相で更なる化合物を添加することによる既知の方法によって得られる。概要については、同様に、J.Zilkoによる上記の刊行物を参照する。
【0076】
有機金属蒸着法及び有機金属気相成長法は、好ましくは以下に記載されるように実施される。金属含有層は、反応室内で製造される。コーティングされるべき基材はその内部に配置され、高温まで加熱される。前駆体化合物としての金属錯体及び通常キャリアガスを伴うガスフローは反応室内へと導入され、気相での前駆体化合物が最初に分解され、フリーラジカル基が基材へと付着する。熱的に活性化されて、ラジカル基は、金属原子が好適な位置にて層に組み込まれるまで基材上で一定の運動自由度を有する。有機ラジカルが単体水素で飽和する結果、揮発性有機化合物が形成される。この残留ガスは反応室から排出される。反応室内へと導入する前に、金属錯体を気相へと変換させることが好ましい。好ましさが幾分劣る実施形態では、金属錯体を含む液体が、反応室内へと導入されるときにのみ蒸発することもまた考えられる。
【0077】
驚くべきことに、本出願に関連して記載される金属錯体は、気相からの金属の堆積のための前駆体化合物として非常に好適であることが見出された。驚くべきことに、これらは、このような方法に必要とされるいくつかの有利な特性を兼ね備えている。これらは非常に安定で揮発性であり、基材上への金属又は金属の化合物の堆積中に不純物が実質的に生じないような方法で使用することができる。
【0078】
金属錯体は、好ましくは、分解を起こすことなく、プロセスにおいて昇華又は気化する。昇華中に固体が初めに投入され、これに対して蒸発中に液体又は溶液が供給される。したがって、好ましくは、金属錯体の気相への変換中に崩壊又は実質的な崩壊がない。崩壊プロセスについて、通例的な方法、特にSDTA(同時示差熱分析)によって追跡することができる。
【0079】
温度が上昇したときの金属錯体の関連特性は、熱重量分析(TGA)によって測定することができ、これは常圧(1013ミリバール)又は減圧下で実施することができる。この場合、曲線量/温度(同じT増加、例えば5又は10K/分)は、整ったプロファイルを示すことが好ましい。昇華は概して、昇華温度以上で重量の急激な減少が起こるときに生じ、プロセスに残留物が全く又はごくわずかしか残らない。好ましくは、TGA曲線は、凹凸などの大きな欠点を全く示さない。
【0080】
金属錯体の気相への転移は、好ましくは可能な限り完全に行われる。この場合、大気圧及び/又は減圧下でTGAの場合、使用される金属錯体の量に基づいて、例えば20重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、又は特に3重量%未満の、可能な限り最小の残留物が残ることが好ましい。残留物はプラトー値に相当し、この値では、Tが更に上昇して、例えば最高500℃、600℃、又は700℃で、残留物の重量が概算される。残留物の重量が、投入した化合物中の金属の重量よりも(明らかに)軽い場合、これは化合物の昇華又は蒸発を示す。好ましくは、TGA中、少なくとも50重量%、特に少なくとも80重量%、又は少なくとも90重量%の金属が気相に変換される。金属が定量的に気化される場合、効率の理由から、概して有利である。
【0081】
本発明による金属錯体は、比較的安定であることが見出された。これらは、好ましくは室温で安定であるため、所望さの期間にわたって耐久性がある。好ましい実施形態では、金属錯体は、最高100℃の温度で熱的に安定である。
【0082】
大気圧でのTGAの場合、3%の質量減少は、好ましくは80℃超、好ましくは100℃超、特に好ましくは120℃超の温度でのみ起こる。3%の質量減少は、好ましくは80℃~220℃、特に80℃~160℃の温度で起こる。
【0083】
好ましくは、金属錯体は、蒸着の条件下で分解し、通常、100℃~400℃、特に120℃~300℃、又は150℃~250℃の温度で、減圧下で実施される。錯体は、好ましくは、これらの温度で気相にて存在する。減圧は、10-3~900ミリバールの範囲、好ましくは10-2~1ミリバールの範囲、特に10-2ミリバールである。分解は、多くの場合、発熱反応で行われる。この範囲での分解は、好ましくは、完全に行われる。
【0084】
金属錯体は、好ましくは、気相への変換後にのみ分解される。分解は、好ましくは昇華温度又は蒸発温度を超える温度で行われる必要がある。好ましくは、分解温度は、特に上記の減圧下で、昇華温度又は蒸発温度を200℃以下、100℃以下、又は好ましくは50℃以下超える。金属錯体は、好ましくは、この分解温度で完全に、又は50%まで分解される。昇華温度又は蒸発温度をそれほど超えない温度で分解が行われる場合、気相での堆積は、多くの場合、特定の効率で実施することができる。
【0085】
純粋な形態の単体金属又は金属の所望の化合物は、好ましくは、気相からの堆積中に得られる。これは、不純物を測定できないこと、又は無視できるほど少なくしか測定できないこと、例えば500ppb未満、100ppb未満、又は10ppb未満であることを意味する。堆積金属又は金属含有化合物の純度は、通例的な方法、例えば二次イオン質量分析法によって求めることができる。
【0086】
更に好ましい実施形態では、コーティングは、少なくとも1つの更なる原子成分、特に少なくとも1つの更なる金属、又はSi、N、P若しくはAsから選択される元素を含有する。したがって、既知の方法によれば、対応する合金又は化合物を得るために、更なる金属又は元素をコーティングに組み込むことが可能である。
【0087】
本発明はまた、本発明による金属錯体、又は本発明により使用可能な金属錯体の製造方法であって、
(A)式R1-(N3)A-R2[式中、Aは、H又はアルカリ金属、特にLi、Na又はK、特に好ましいLiから選択される]の化合物を準備する工程と、
(B)金属の化合物と接触させる工程と、を含む、方法に関する。
【0088】
次いで、式R1-(N3)A-R2の化合物は、金属の化合物と反応して、金属錯体を形成する。この反応は、好ましくは、単一工程で実施される。ここで、Aは、好ましくは、アルカリ、特にLiである。金属錯体、特にR1基、R2基及びA基は、上記のように選択される。
【0089】
工程(B)で使用される金属の化合物は、好ましくは、金属塩、有機金属化合物、又は金属の別の金属錯体である。他の金属錯体は、好ましくはトリアゼニド配位子を有さず、特に、式R1-N3-R2[式中、R1及びR2は炭化水素基である]の配位子Lを有さない。
【0090】
好ましい実施形態では、金属錯体の製造方法は、工程(A)の前に、化合物R1-N3及びAR2から式R1-(N3)A-R2[式中、Aはアルカリ金属である]の化合物を作製する工程を含む。プロセス全体は、好ましくは、(「ワンポット反応」として)単一の反応混合物で実施される。
【0091】
本発明の目的はまた、化合物R1-N3及びAR2を含有する反応混合物中の式R1-(N3)A-R2[式中、Aはアルカリ金属、好ましくはLiである]の化合物の製造方法である。R1基、R2基及びA基は、上記のように選択される。
【0092】
式R1-(N3)A-R2の化合物の調製は、好ましくは、不活性溶媒、特にペンタン又はヘキサンなどの炭化水素中で実施される。
【0093】
一実施形態では、式R1-(N3)A-R2の化合物は、反応混合物から更なる成分を蒸発させることによって反応後に精製される(方法A)。Aがアルカリ金属であり、ジエチルエーテル中にあるとき、生成物は固体及び純粋なジエチルエーテル付加物(アルカリ塩)として沈殿し、濾過によって分離することができる(方法B)。ジエチルエーテル付加物は、減圧下でエーテルを完全に遊離させることができる、又は所望であれば、水で加水分解することによって、対応する中性化合物(式中、A=H)に変換することができる。
【0094】
本発明によれば、本発明による方法は、錯体合成のための必須中間体である、金属錯体及び式R1-(N3)A-R2の化合物を、比較的単純な方法で、効率的かつ高収率で製造できることが見出された。金属錯体の調製において、式R1-(N3)A-R2の化合物が想定される。Aは水素基Hであってもよい。その場合、化合物は全体として中性である。異なる金属塩を使用すると、比較的単純な条件下で効率的な金属錯体の形成が起こることが見出された。例えば、Al、Ga及びInの金属錯体は、これらの化合物から得ることができる。
【0095】
式R1-(N3)A-R2の化合物がアルカリ金属塩である場合、多くの金属錯体が入手可能であることも見出された。この場合、Aは特にLi、Na又はKであり、特に好ましくはLiである。このような化合物は、例えば、Co、Cu又はRuの塩を単純な方法で、かつ高収率で調製するために、本発明により使用された。
【0096】
式R1-(N3)A-R2[式中、A=H又はアルカリ金属である]の化合物は、前駆体化合物R1-N3及びA-R2[式中、Aは好ましくはアルカリ金属である]を反応させることによって、単純な方法で得ることができる。反応は、好ましくは有機非プロトン性溶媒中、特に炭化水素中、特に好ましくはnペンタン又はヘキサン中で起こる。アルカリ金属アルキル化合物、特に有機リチウム化合物は、好ましくはゆっくりと滴下して加えられる。好ましくは、反応混合物は、最初に低温、例えば<15℃で放置され、次いで室温まで温められる。
【0097】
金属錯体との反応において、このようにして得られた式R1-(N3)A-R2の化合物、又は別の起源からの同じ化合物を、十分な反応性を有する金属の化合物、例えば、金属塩又は金属の有機金属化合物、特に、CoCl2若しくはCuClなどの金属ハロゲン化物、又はAlMe3若しくはInMe3などの有機金属化合物、又はGaH3(OEt2)のような金属水素化物、又はLa(HMDS)3(HMDS=ヘキサメチルジシラザン)若しくは[RuCl2(p-シメン)]2のような前駆体金属錯体と接触させる。例えば、コバルトの場合、単塩との反応は既に十分であるが、III族の典型元素には有機金属前駆体化合物が好ましいことが見出されている。ルテニウム又はランタンを本発明による金属錯体に変換するために、他の金属錯体が好ましくは想定される。全ての場合において、式R1-(N3)A-R2の化合物から開始して、対応する配位子との安定な錯体を高収率で得られることが見出された。
【0098】
理論に束縛されるものではないが、金属錯体中の比較的弱いN-N単結合により、比較的低い温度で比較的複雑でない熱分解がもたらされると考えられる。ここで、N2は安定した分解生成物として形成され、更に窒素含有アルキル基は分子状揮発性化合物として形成されると想定される。全ての反応生成物は、反応性がない又はほとんどなく、取り扱いが安全であるため、本方法は、比較的単純な方法で、かつ高収率で実施することができる。
【0099】
また、R1又はR2が例えばメチル又はtert-ブチルである、配位子が、比較的低い分子量を有することも有利である。このことにより、比較的低い温度で、比較的良好な気化性又は更には昇華性がもたらされる。これら2つの配位子だけを使用することは、驚くべきことに見出されたとおり、ALD及びMOCVD用の高揮発性金属化合物を提供するために特に重要である。容易に入手可能であり、特に技術的に取り扱いが安全である、tert-ブチルアジドを介した合成は、N,N’-ジアルキルアセトアミド又はN,N’-ジアルキル-N”-ジアルキルグアニダト(dialkylguanidato)配位子系などの既定のものとなっている1.3-ジアザアリル系よりもかなりの利点を有する。ALD及びCVD条件下で以下に記載されるトリアゼニド錯体の分解温度は低くなり、望ましくない炭素の取り込みは、アミジナト錯体及びグアニジナト錯体よりも顕著ではない。
【0100】
工程(B)において、有機金属化合物、特に有機リチウム化合物、特に1~6個のC原子を有するアルキルリチウム、例えばメチルリチウムを使用することが好ましい。化合物は、好ましくは、エーテル中に溶解した形態で使用される。好ましくは、ペンタンが溶媒として使用される。好ましくは、工程(B)において、金属の化合物は、工程(A)の化合物に、特に連続的に、例えば滴下によって加えられる。
【0101】
配位子の塩、特にリチウム塩が中間体として使用される場合、本発明によれば特に有利である。このような有機塩の調製では、溶媒の選択が重要である。したがって、ペンタン中のメチル-tert-ブチルトリアジンのリチウム塩は、エーテル中に溶解したメチルリチウムが出発原料として使用されるとき、溶媒として沈殿する。リチウム塩は、所望により、濾過によって単離されてもよい。一方、ジ-tert-ブチルトリアジンのリチウム塩はペンタンに可溶性である。反応終了後、透明な反応溶液を蒸発させることによって単離することができる。両方の合成において、副生成物は得られず、収率は80%超である。所望により、中性配位子ジ-tert-ブチルトリアジンは、反応混合物の水性ワークアップによって容易に得ることができる。
【0102】
リチウム塩は、完全に乾燥され、更に処理され得る。これらは、ペンタン又はトルエンなどの非極性溶媒に可溶性であるが、ジエチルエーテル又はTHFなどの他の通常的な溶媒にも可溶性である。したがって、これらは、金属錯体を調製するための後続の反応において、このような溶媒中で容易に使用することができる。蒸留可能な液体である、式中でA=Hの対応する中性配位子はまた、後続の反応のために全ての通例的な溶媒に使用することができる。したがって、本発明による方法及び中間体により、高収率での金属錯体の単純かつ効率的な製造が可能になる。
【0103】
式R1-(N3)A-R2の化合物から開始して、このように塩、アルカン(特にメタン)、水素、又はアミンの脱離経路を介して、様々な錯体化合物が得られる。2つのトリアゼニド配位子は、III族又はV族の典型元素、例えばガリウム、インジウム又はアンチモンを、ホモレプティック化合物又はヘテロレプティック化合物にて錯化することができる。Co、Cu、Ru、又はLaなどの遷移元素(secondary group)との錯体の製造も容易に可能である。
【0104】
例えば、単一の反応バッチで行うことができる、中間体及び金属錯体の単純な調製により、問題となる副生成物が発生しないため、プロセスは、例えば工業規模で容易にスケールアップされ、実行され得る。従来的な加熱中、金属錯体は、例えば100℃の温度まで加熱されたときに、蒸着用のデバイス、特に「バブラー」貯蔵容器内では分解されない。次いで、これらは、好ましくは気相への転移後にのみ、100℃~400℃の範囲の温度で分解する。
【0105】
本発明はまた、式(1):
Mx[(L1)a(L2)b(L3)cXd](1)
[式中、
L1、L2及びL3である配位子Lは、式R1-N3-R2(式中、R1及びR2は、炭化水素基である)の基から互いに独立して選択され、
少なくともL1に関して、R1基及びR2基はアルキル基であり、
Xは、H、ハロゲン、CO、及び炭化水素配位子、特に1~12個の炭素原子を有するアルキル基、及び5~30個のC原子を有する芳香族炭化水素から独立して選択され、
xは1~4、好ましくは1又は2の整数であり、
a、b、c及びdは整数であり、
合計a+b+c+dは、少なくともxであり、かつ12以下、好ましくは6以下、特に4以下であり、
aは、少なくとも1、好ましくは1~6であり、好ましくは1又は2であり、
b、c、及びdは、0に等しくてもよく、好ましくは各々0、1又は2であり、
以下の条件(i)~(ii):
(i)Mが、周期表のVIII族遷移元素(VIIIth subgroup)の金属及びランタニド、特にRu、Co及びLaから選択されること、
(ii)少なくとも1つの配位子Lが、tert-ブチルである少なくとも1つのR1基又はR2基を有すること、のうちの少なくとも1つが満たされる]の金属錯体に関する。
【0106】
概して、金属錯体は、使用及び方法について本出願に関連して記載されるものである。したがって、これらは特に、金属、配位子、及び基、すなわち、上記で選択及び記載されている、特にM、L1、L2、L3、R1、R2、X、x、a、b、c、dを有する。好ましい金属錯体は、特に、式M(L1)2、M(L1)3、M2(L1)4及びM2(L1)6のものである。概して、xは、好ましくは1~2の数であり、a+b+c+dは、好ましくは2~6の数である。
【0107】
好ましい実施形態では、金属錯体は、式(7)~(20)、並びに(102)~(115)のうちの1つを有する:
【化1】
【化2】
【化3】
tert-ブチル-(N
3)H-CH
3及び式R
1-(N
3)A-R
2[式中、R
1及びR
2はアルキル基であり、Aはアルカリ金属又はアルカリ土類金属、特にLi、Na、Cs、Ca又はK、特に好ましいLiである]の化合物から選択される化合物も本発明の目的である。
【0108】
好ましい実施形態では、金属化合物は、式(21)~(23)又は(116)~(117)のうちの1つを含む:
【化4】
R
1基及びR
2基は、上記のように選択される。アルカリ金属化合物は、金属錯体の調製において重要な中間体である。これらは、上記の単純な方法で調製することができ、単純な方法で反応混合物から分離することができる。化合物は安定しており、水を添加することによって、対応する中性化合物(式中、A=H)に変換することができる。結果として、これらはまた、基本的に他の化学反応、及び気相から金属を堆積すること以外の用途のための錯体の製造にも原理的に好適である。
【0109】
用途、方法、及び化合物により、上述の目的を達成する。気相から金属を分離するための新規及び改良された化合物が提供される。化合物は、比較的高い安定性を有する。特に、蒸気圧が高く、同時に分解点が低い化合物が提供される。結果として、化合物は、実質的な分解を起こすことなく気相に変換することができる。特に、化合物は、気相からの堆積方法が通常行われる温度、特に100℃~300℃で、高い安定性及び揮発性を有する。化合物により、気相から様々な金属を堆積させることが可能になり、金属含有コーティングは高純度である。本発明は更に、このような化合物を製造するための単純かつ効率的な方法に関する。使用される試薬は容易に入手可能であり、取り扱いが安全である。本方法は、高収率で実施することができる。少数の工程において、又は更にワンポットプロセスとして、所望の生成物が得られ、穏やかな反応条件下で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【
図13】
図1~
図13は、実施形態6、7、9~15及び17~20に従って調製された金属錯体の熱重量分析(TGA)を示す。TGA曲線は、使用される金属錯体の量が、温度の上昇(%及びmg/分及び℃)に伴ってどのように減少するかを示す。各々の場合で、最初の積分曲線も示される。更に、開始量(100%)及び残りの量のプラトー域が示されており、これらの各々は、50%重量減少したところで垂直線によってつながれている。
【実施例0111】
例示的な実施形態
製造された化合物の概要:
【化5】
【化6】
【化7】
【0112】
実施例1:tert-ブチルアジド
概して、有機アジドは2つの基準に基づいて爆発性として分類される。基準のどちらの条件も実験的な爆発限界である。
1)[(量(N原子)+量(O原子))/量(C原子)]<3
2)酸性窒素の重量パーセント>25ω%
【0113】
両方の基準によれば、本明細書に記載のtert-ブチルアジドは、爆発性物質として分類する必要がある。しかしながら、表示又は取り扱いにおける事故は知られていない。更に、79℃で蒸留して精製できる液体であり、N2の分離温度は約550℃で、有機アジドでは比較的高い。
【0114】
1960年代の終わり以降に報告されている、いくつかの合成アプローチが存在する。例えば、アプローチの1つでは、CS2中にて触媒としてNaN3及びZnCl2で変換される塩化tert-ブチルから開始される。[34]更に、別の合成アクセスでは、硝酸tert-ブチルはDMF中においてLiN3で変換される。[35,36]どちらのアプローチも、反応が不完全であるため、又は副生成物の分離が不完全であるため、様々な問題を引き起こす可能性がある。更に、毒性が高いため、二硫化炭素の使用は避ける必要がある。したがって、水と硫酸との混合物中でアルコールをNaN3と反応させる、tert-ブタノールにより開始するアプローチが調査された。[37]文献によると、最大で数百gまでのtert-ブチルアジドへの反応のスケールアップは可能であり、問題なく安全である。それでもなお、この合成経路では、反応混合物中にHN3が形成されることを常に念頭に置く必要があり、HN3は、十分に希釈された形態で絶対的に取り扱われる必要がある。
【0115】
1.1 tert-ブチルアジドの合成
【化8】
75mLのH
2O及び50mLの濃H
2SO
4を、-5℃で入れた。NaN
3(9.80g、151mmol、1.10当量)を固体ディスペンサでゆっくりと加えた。無色の懸濁液を15分間撹拌し、0℃まで温めた。tBuOH(10.2g、137mmol、1.00当量)を、滴下漏斗を介してゆっくりと滴下して加えた。反応混合物中に存在する固体を、プロセス中にゆっくりと溶解した。反応溶液をRTで16時間撹拌し、相の分離を達成するために分液漏斗に移した。水相を分離し、NaOH(2m)で直ちに中和した。有機相をそれぞれ20mLのNaOH(2m)で2回洗浄し、次いでNa
2SO
4上で乾燥させた。所望の生成物を再凝縮させ、無色の液体の形態にて収率69%(9.40g、94.8mmol)で得ることができた。
【0116】
実施例2:H(dbt)及びLi(dbt)の合成
2.1 Li(dbt)の合成-方法1
【化9】
tBuN
3(10.17g、102.6mmol、1.00当量)を100mLのペンタン中に入れ、5℃まで冷却した。1時間以内に、ペンタン中のtBuLi(60mL、1.83m、110mmol、1.07当量)の溶液を滴下して加えた。滴下漏斗を10mLのペンタンで2回パージした。反応混合物をゆっくりと加熱し、RTで1時間撹拌した。180mLのH
2Oをわずかに黄色の懸濁液に加え、混合物を脱色した。水相を分離し、有機相を180mLのH
2Oでもう一度洗浄した。有機相をNa
2SO
4上で乾燥させ、濾過し、揮発性物質をFVにて除去した。粗生成物を、60ミリバール及び70℃で蒸留することによって精製した。無色透明液体の形態である所望の生成物の収率は、32%(5.15g、32.7mmol)であった。
【化10】
H(dbt)(700mg、4.45mmol、1.00当量)を10mLのEt
2O中に入れ、0℃まで冷却した。ヘキサン中のnBuLi(1.8mL、2.5m、4.45mmol、1.00当量)の溶液をゆっくりと滴下して加えた。わずかに黄色の溶液をRTで1時間撹拌した後、RTにして、更に24時間撹拌した。透明溶液の溶媒をFVにて除去して、わずかに黄色の固体を得た。所望の生成物をFVにて乾燥させ、収率95%(687mg、4.21mmol)で単離することができた。
【0117】
2.2 Li(dbt)の合成-方法2(最適化合成)
【化11】
tBuN
3(1.27g、12.8mmol、1.00当量)を10mLのペンタン中に入れ、5℃まで冷却した。ヘキサン中のtBuLi(7.4mL、1.83m、13.7mmol、1.07当量)の溶液をゆっくりと滴下して加えると、これから得られた反応混合物がわずかに黄色に着色された。反応混合物を5℃で1時間撹拌した後、ゆっくりとRTまで温め、1時間撹拌した。わずかに濁った溶液をシリンジフィルタに通して濾過し、わずかに黄色の濾液の溶媒をFVにて除去した。所望の生成物を、収率83%(1.64g、10.0mmol)で得ることができた。
【0118】
Li(dbt)の2つのバッチ間の差異は、実施された分析試験で観察することができなかった。Li(dbt)の最適化された合成は、副生成物を含まない単段階合成である。当初は中性配位子が想定されていたが、最適化は、試薬の節約、及び蒸留などの様々な作業工程の節約の両方につながる。
【0119】
実施例3:K(dbt)の合成
【化12】
BnK(700mg、4.45mmol、1.00当量)を10mLのEt
2O中に取り込み、0℃でH(dbt)(582mg、4.47mmol、1.00当量)とブレンド滴下した。無色の懸濁液をRTまで温め、16時間撹拌した。わずかに濁った溶液を濾過し、無色の濾液の溶媒を負圧で完全に除去した。85%(510mg、2.61mmol)の所望の生成物を無色の固体の形態で得ることができた。
【0120】
実施例4:Li(mbt)の合成
【化13】
tBuN
3(1.00g、10.7mmol、1.00当量)を15mLのペンタン中に入れ、4℃まで冷却した。Et
2O中MeLi溶液(6.8mL、1.60m、10.7mmol、1.07当量)を反応溶液にゆっくりと滴下して加え、無色の固体を得た。反応混合物をRTまで温め、得られた無色の沈殿物を濾別し、数時間にわたってFV中で乾燥させた。所望の生成物を無色の固体として収率87%(1.13g、9.31mmol)で得た。反応のスケールアップが可能である。
【0121】
実施例5:H(mbt)の合成
【化14】
Li(mbt)(143mg、1.18mmol、1.00当量)をペンタン中に入れ、0℃まで冷却した。撹拌しながら、F
3CCOOH(135mg、1.18mmol、1.00当量)をゆっくりと滴下して加え、反応溶液のわずかな発泡が観察された。使用したLi(mbt)は、反応混合物をRTまで温めると溶液になり、わずかに濁った懸濁液をRTで16時間撹拌した。懸濁液をシリンジフィルタに通して濾過し、ペンタンをFVにて除去した後、所望の生成物を無色の液体の形態で得ることができた。
【0122】
実施例6:[Al(dbt)
2(Me)]の合成
【化15】
AlMe
3(33mg、0.46mmol、1.00当量)のトルエン溶液を入れ、RTでH(dbt)(300mg、1.91mmol、3.00当量)とブレンド滴下した。ガスの発生を直ちに観察することができた。無色の反応混合物をRTで72時間撹拌し、シリンジフィルタで濾過した。濾液の溶媒をFVにて除去して、無色の油を得た。凍結乾燥を繰り返した後、所望の生成物を無色の固体(融点:46℃)として収率87%(276mg、0.56mmol)で得た。
【0123】
[Al(dbt)
2(Me)]の熱重量分析
粗生成物を、10K/分で最高700℃までの熱重量分析によって分析した(
図1)。熱重量分析は、全体的な質量分解が約91.2%である1段階のプロセスを示す。出発原料の3%の重量減少が127.2℃で観察された。
【0124】
実施例7:[Ga(dbt)
2(H)]の合成
【化16】
-78℃まで冷却した5mLのEt
2O中のGaCl
3(440mg、2.50mmol、1.00当量)の溶液を、5mLのEt
2O中のLiH(260mg、32.8mmol、13.1当量)の懸濁液に滴下して加えた。わずかに灰色の沈殿物が直ちに形成された。反応混合物を-78℃で2時間撹拌した後、RTで16時間撹拌した。わずかに灰色の懸濁液を予冷したフラスコ内に濾過した。透明な濾液に、-78℃まで冷却した5mLのEt
2O中GaCl
3(176mg、1.00mmol、0.40当量)の溶液を-78℃で滴下して加えた。懸濁液を撹拌しながら0℃まで加熱し、次いで-78℃まで予冷したフラスコ内で濾過した。透明な濾液を、0℃で、5mLのEt
2O中のH(dbt)(786mg、5.00mmol、2.00当量)の溶液に滴下して加えた。ガスの発生が直ちに観察された。懸濁液をゆっくりとRTまで温め、16時間撹拌した。混合物をシリンジフィルタに通して濾過し、全ての揮発性物質をFVにて除去した。無色の固体が残っており、これを5mLのヘキサン中に取り込み、シリンジフィルタに通して再度濾過した。濾液の溶媒をFVにて除去して、収率53%(508mg、1.33mmol、融点:46℃)で生成物を得た。構造解析用の単結晶を、60℃でFVにて昇華することによって得ることができた。
【0125】
対応するジヒドリドガリウム錯体[Ga(dbt)H2]は、H(dbt)と[GaH3(OEt2)]との1:1変換によっては得ることができなかった。
【0126】
[Ga(dbt)
2(H)]の熱重量分析
粗生成物を10K/分で900℃までの熱重量分析により試験した(
図2)。出発原料の合計86.6%を気相に変換した。
【0127】
実施例8:[In(dbt)Me
2]の合成
【化17】
H(dbt)(250mg、1.59mmol、1.00当量)を8mLのペンタン中に供給し、0℃まで冷却した。InMe
3(254mg、1.59mmol、1.00当量)のトルエン溶液を滴下して加え、わずかなガスの発生を観察した。反応混合物を、0℃で1時間、RTで16時間撹拌した。透明溶液の溶媒をFVにて除去し、所望の生成物を無色の液体として単離した。精製のために、生成物をわずかな真空下にて40℃で再凝縮することができる。
【0128】
反応はまた、トルエン中にて類似の方法で実施することもできるが、このことにより、生成物の高い揮発性が原因で、インジウム錯体の単離が困難になる。
【0129】
実施例9:[In(dbt)
3]の合成
【化18】
InMe
3(150mg、0.94mmol、1.00当量)を5mLのトルエン中に供給し、0℃まで冷却し、H(dbt)(444mg、2.83mmol、3.00当量)とブレンド滴下した。反応混合物をゆっくりとRTまで温め、16時間撹拌した。透明な溶液の溶媒を、FVにて除去した。所望の生成物を、無色の固体の形態にて収率73%(403mg、0.69mmol)で得と。これについて、80℃でFVにて昇華することができる。
【0130】
[In(dbt)
3]の熱重量分析
粗生成物を10K/分で900℃までの熱重量分析により試験した(
図3)。分析は、全体的な質量分解が約92.8%である1段階のプロセスを示す。出発原料の3%の重量減少は196.7℃で観察された。
【0131】
実施例10:[La(dbt)
3]の合成
【化19】
[La(hmds)
3](225mg、0.36mmol、1.00当量)を10mLのトルエン中に供給し、0℃まで冷却した。H(dbt)(171mg、1.09mmol、3.00当量)を無色の溶液に滴下して加えた。無色透明の反応混合物をRTまで温め、16時間撹拌した。
1H NMR反応制御を用いて、反応混合物中にNO[La(hmds)
3]がもはや存在しないことが確認された。反応溶液の全ての揮発性成分をFVにて除去し、得られた無色の固体を60℃でFVにて乾燥させた。所望の生成物を、収率72%(158mg、0.26mmol)で得た。
【0132】
[La(dbt)
3]の熱重量分析
粗生成物を、10K/分で800℃までの熱重量分析により試験した(
図4)。熱重量分析は、全体的な質量分解が約85%である1段階のプロセスを示す。85℃で出発原料の3%の重量減少が観察された。最高100℃までの範囲では、残留した微量のHhmdsが依然として生成物中に存在することが確認できる。103℃の温度から開始して、ランタン錯体の初期溶融プロセスが起こり、最大の質量減少は250℃の温度で達成される。約400℃の温度から、もはや著しい質量分解は観察できなかった。
【0133】
実施例11:[Co(dbt)
2]の合成
【化20】
Li(dbt)(654mg、4.00mmol、2.00当量)に、CoCl
2(260mg、2.00mmol、1.00当量)を供給し、15mLのトルエンとブレンドした。反応混合物を80℃で8時間加熱し、その間、青色から暗赤色への色の変化が観察された。冷却した反応混合物の溶媒をFVにて除去し、所望の生成物を、100℃でFVにて残留物から直接昇華させた。[Co(dbt)
2]を、暗赤色でほぼ黒色の固体として収率53%(394mg、1.06mmol)で得た。
【0134】
[Co(dbt)
2]の熱重量分析及び残留物測定
10K/分で900℃までのTGA曲線(
図5)では、1段階の質量減少を観察することができ、時間当たりの最大質量分解を、248℃の温度で観察することができる。156℃の温度で、試料は3%まで分解された。91℃の温度で開始して、吸熱性で非常に広いピークを観察することができ、これは、不規則な溶融プロセスに帰属させることができる。総質量減少は97%であり、得られた残留物をXRPDによってより詳細に試験する。残留物は、単体コバルトであることが見出された。
【0135】
実施例12:[Co
2(mbt)
4]の合成
【化21】
Li(mbt)(193mg、1.59mmol、4.00当量)及びCoCl
2(103mg、0.79mmol、2.00当量)を共に供給し、0℃で10mLのトルエンとブレンドした。反応混合物を解凍すると、青色から暗褐色への色の変化を観察することができた。反応混合物を80℃で10時間加熱し、溶媒をRTでFVにて除去した。所望の生成物を、85℃で動力的真空下にて暗褐色の残留物から昇華させた。二核コバルト錯体を、赤褐色固体として収率51%(116mg、0.20mmol)で得た。結晶構造解析用の単結晶を、100℃での軽度真空昇華によって得ることができた。[Co
2(mbt)
4]における2つのコバルトコアのスピンペアリングにより、これは、[Co(dbt)
2]とは対照的に、反磁性挙動を示す。
【0136】
[Co
2(mbt)
4]の熱重量分析及び残留物測定
コバルト錯体の10K/分で900℃までのTGA曲線(
図6)は、1段階の過程を示し、時間当たりの最大質量分解を、189℃の温度で観察することができる。3%の分解を147℃の温度で測定した。184℃の温度で開始して、初めの発熱プロセスを検出することができ、これにより、時間当たりの最大質量分解がもたらされ、分解プロセスに帰属させることができる。総質量分解は82%であり、この測定から得られた残留物をXRPDにより分析した。これは、単体コバルトとして特定することができた。
【0137】
実施例13:[Ru(dbt)(Cl)(p-シメン)]の合成
【化22】
Li(dbt)(248mg、1.52mmol、1.00当量)を5mLのトルエン中に供給した。ルテニウム前駆体(465mg、0.76mmol、0.50当量)を少しずつ加え、4mLのトルエンですすいだ。しばらくすると、暗赤色から黒色への色の変化が観察された。反応混合物をRTで一晩撹拌し、シリンジフィルタで濾過した。黄黒色の濾液の溶媒を、FVにて除去した。所望の生成物を、暗緑色の固体の形態にて収率51%(331mg、0.77mmol、融点:66.5℃)で得た。
【0138】
[Ru(dbt)(Cl)(p-シメン)]の熱重量分析
5K/分での600℃までのTGA曲線(
図7)は、235℃での時間当たりの最大質量減少を伴う1段階の過程を示す。3%の分解は153℃の温度であり、総質量分解は67%である。67℃の温度で、溶融プロセスが始まり、ほとんど連続的に昇華プロセスに進む。200℃の温度から、更なる発熱ピークをSDTA曲線に基づいて観察することができ、これは分解プロセス(図示せず)に帰属させることができる。約400℃の温度から、質量分解は、もはや著しく変化しなくなった。測定で得られた残留物をXRPDで更に詳細に試験したところ、単体ルテニウムが確認できた。
【0139】
実施例14:[Ru(dbt)(H)(p-シメン)]の合成
【化23】
[Ru(dbt)(Cl)(p-シメン)](227mg、0.51mmol、1.00当量)を5mLのトルエン中に供給した。0℃で、THF中のLi[HBEt
3](0.56mL、1m、0.56mmol、1.10当量)の溶液を供給した。反応混合物をRTまでゆっくりと温め、16時間撹拌した。無色の固体の沈殿を観察することができた。沈殿した固体を濾過によって分離し、濾液の溶媒をFVにて除去した。緑黒色の粘稠液体の形態で凍結乾燥を繰り返した後、所望の生成物を得ることができた。精製のために、ルテニウムヒドリド錯体を、95℃でFVにて再凝縮させた。
【0140】
あるいはまた、LiAlH4(0.25当量)で合成を行うこともできる。対照的に、[Ru(dbt)(Cl)(p-シメン)]及びメチルリチウムの変換によって表すことができるメチル置換錯体は、固体として存在する。
【0141】
[Ru(dbt)(H)(p-シメン)]の熱重量分析
粗生成物を、10K/分で600℃までの熱重量分析により試験した(
図8)。分析は、全体の質量分解が約67.8%である1段階のプロセスを示す。出発原料の3%の重量減少が150.5℃で観察された。
【0142】
実施例15:[Ru(mbt)(Cl)(p-シメン)]の合成
【化24】
Li(mbt)(221mg、1.82mmol、1.00当量)を10mLのトルエン中に供給し、0℃で[RuCl
2(p-シメン)]
2(559mg、0.91mmol、0.50当量)と少しずつブレンドした。混合物をRTまでゆっくりと解凍すると、褐色から暗緑色への色の変化を観察することができた。反応混合物をRTで16時間撹拌し、シリンジフィルタを介して濾過した。赤みがかった濾液の溶媒をFVにて除去し、残りの固体を数回凍結乾燥した。所望の生成物を、暗赤色の固体の形態にて収率59%(414mg、1.07mmol、融点:51.9℃)で得た。
【0143】
[Ru(mbt)(Cl)(p-シメン)]の熱重量分析
5K/分で700℃までの測定されたTGA/SDTA曲線(
図9)は、169℃の温度での最大分解を伴う1段階の質量分解を示す。この温度を超えると、時間当たりの質量減少は再び減少する。これは、最小値からの正の傾きに基づいて、それ自体で観察することができる。ルテニウム錯体の3%分解は118℃においてである。52℃の温度で開始して、初めの溶融プロセスが観察され、昇華プロセスに連続的に進行する。総質量減少は64%である。この測定から得られた残留物を、XRPD分析により分析し、単体ルテニウムとして特定することができた。
【0144】
実施例16:[Ru(mbt)(H)(p-シメン)]の合成
【化25】
[Ru(mbt)(Cl)(p-シメン)](196mg、0.49mmol、1.00当量)を5mLのトルエンに溶解し、0℃でTHF中のLi[HBEt
3](0.54mL、1m、0.54mmol、1.10当量)の溶液とブレンドした。反応混合物をRTまでゆっくりと温め、16時間撹拌し、無色の固体が沈殿した。これを分離し、濾液の溶媒をFVにて除去した。凍結乾燥を繰り返した後、所望の生成物を黒色の粘稠液体の形態で得ることができた。
【0145】
1H-NMR(C6D6、300MHz、300K):δ/ppm=-2.93(s、1H、RuH)、1.21(d、3JHH=6.6Hz、6H、CHMe2)、1.31(s、9H、CMe3)、2.00(s、3H、Carom.Me)、2.49(sept、3JHH=6.6Hz、1H、CHMe2)、3.40(s、3H、NMe)、4.72(d、3JHH=4.6Hz、2H、CHarom.)、4.91(d、3JHH=4.6Hz、2H、CHarom.)。
【0146】
【数1】
、2920(m)、2864(m)、1884(w)、1457(w)、1382(w)、1356(m)、1290(w)、1260(st)、1216(w)、1193(w)、1086(st)、1021(st)、913(w)、799(vst)、661(w)、631(w)、552(w)。
【0147】
TGA:(TS=25℃、TE=600℃、10℃/分)、段階:2
3%分解:108.2℃、最大分解(第1段階):181.3℃、最大分解(第2段階):436.1℃、
質量分解(第1段階):58.0%、総質量分解:64.8%。
【0148】
SDTA:TD1(Onset):97.3℃、TD1(max.):127.8℃、TD2(Onset):162.1℃、TD2(max.):169.8℃、
TD3(Onset):183.8℃、TD3(max.):192.1℃。
【0149】
図14は、TGA及びSDTA測定のグラフ表示を示す。
【0150】
実施例17:[Ru(mbt)(Cp
*)(CO)]の合成
【化26】
[RuCp
*Cl]
4(90mg、0.45mmol、1.00当量)及びLi(mbt)(216mg、1.79mmol、4.00当量)を共に供給し、25mLのトルエン中に取り込んだ。暗褐色の溶液を50℃まで1時間加熱した後、RTまで冷却した。1時間、COをRTで反応混合物に通した。暗赤黒色の反応溶液をCelite(登録商標)で濾過した。溶媒をFVにて除去し、所望の生成物であると確認できる暗赤色でほぼ黒色の蜂蜜様の固体が残った。
【0151】
粗生成物[Ru(mbt)(Cp*)(CO)]の熱重量分析
粗生成物を、熱重量分析により10K/分で800℃まで分析した(
図10)。この場合、67%の総質量分解で段階的な分解を観察することができる。分解は、約75℃の温度で開始し、吸熱ピークを伴う。出発原料の3%の重量減少は、116.0℃で観察された。この測定から得られた残留物を、XRPDにより分析し、単体ルテニウムとして特定することができた。
【0152】
実施例18:[Ru(mbt)(Cp*)]の合成
【化27】
[RuCp
*Cl]
4(100mg、0.50mmol、1.00当量)及びLi(mbt)(244mg、1.98mmol、4.00当量)を共に供給し、10mLのトルエン中に取り込んだ。暗褐色の懸濁液を50℃まで2時間加熱し、RTまで冷却した。暗赤黒色の反応混合物をCelite(登録商標)で濾過し、濾液の溶媒をFVにて除去して、暗緑色でほぼ黒色の蜂蜜様の固体を単離した。
【0153】
粗生成物[Ru(mbt)(Cp
*)]の熱重量分析
粗生成物を、10K/分で800℃まで熱重量分析により試験した(
図11)。これについて、段階的な分解を観察することができる。総質量減少は57%である。分解は、約79℃の温度で開始し、吸熱ピークを伴う。出発原料の3%の重量減少が87.6℃で観察された。この測定から得られた残留物をXRPDにより分析し、単体ルテニウムとして特定することができた。
【0154】
実施例19:[Cu
2(dbt)
2]の合成
【化28】
Li(dbt)(280mg、1.72mmol、1.00当量)を、CuCl(170mg、1.72mmol、1.00当量)と共に供給し、10mLの予冷されたトルエンとブレンドした。反応混合物をRTで16時間撹拌したところ、黄色から褐色への色の変化が観察された。懸濁液をCelite(登録商標)で濾過し、濾液の溶媒をFVにて除去した。粗生成物を、70℃の動力的真空にて昇華によって精製し、黄色の固体として収率71%(268mg、0.61mmol)で得ることができた。結晶構造解析用の単結晶を、-21℃でn-ヘキサンの飽和溶液から得た。
【0155】
熱重量分析
粗生成物を、10K/分で1000℃まで熱重量分析により試験した(
図12)。[Cu
2(dbt)
2]は、1段階の質量減少を示し、3%の分解は156℃である。総質量減少は96%であり、銅化合物の良好な昇華性に起因する。約260℃以降の温度では、もはや著しい質量分解は観察されなくなった。るつぼ内にて単体銅を残留物として観察した。
【0156】
実施例20:[Cu
4(mbt)
4]の合成
【化29】
Li(mbt)(208mg、1.72mmol、1.00当量)及びCuCl(170mg、1.72mmol、1.00当量)を供給し、10mLの予冷されたトルエンとブレンドした。無色の反応混合物をRTで48時間撹拌し、それにより、明るい黄色への色の変化を観察することができた。懸濁液をCelite(登録商標)で濾過し、濾液の溶媒をFVにて除去した。明るい黄色の粗生成物を、65℃~75℃で動力的真空下にて昇華することによって精製し、収率82%(248mg、0.35mmol)で得ることができた。結晶構造解析用の単結晶を、RTでn-ヘキサンの飽和溶液から得ることができた。
【0157】
熱重量分析
粗生成物を10K/分で900℃までの熱重量分析により試験した(
図13)。[Cu
4(mbt)
4]は1段階の分解を示し、総質量減少は79%である。3%分解は198℃においてであり、最大質量分解は約250℃であると測定された。約255℃の温度から、もはや著しい質量減少を観察することができなかった。SDTA曲線は、236℃の温度で開始し、分解が始まるまでの様々な溶融又は相変換プロセスを示す(図示せず)。熱重量分析からの残留物をXRPDによって試験し、単体銅として特定することができた。
【0158】
実施例21:[Ca(dbt)
2]の合成
【化30】
Ca(hmds)
2(122mg、0.338mmol、1.00当量)を10mLのトルエン中に供給し、0℃まで冷却した。Hdbt(106mg、0.684mmol、2.00当量)を滴下して加えた。無色の反応混合物をRTで72時間撹拌した後、濾別し、濾液を蒸発乾固させた。生成物を、明黄色の固体として収率63%(116mg、0.22mmol)で得た。
【0159】
1H-NMR(C6D6、300MHz、300K):δ/ppm=1.38(s、CMe3)。
【0160】
13C-NMR(C6D6、75MHz、300K):δ/ppm=31.1(CMe3)、56.2(CMe3)。
【0161】
【数2】
、2860(w)、1601(w)、1473(w)、1459(w)、1384(w)、1356(m)、1295(st)、1243(m)、1194(st)、1026(w)、989(w)、806(w)、748(w)、614(st)、472(st)。
【0162】
TGA:(TS=25℃、TE=800℃、10℃/分)、段階:1
3%分解:115.3℃、最大分解:309.0℃、総質量分解:79.3%。
【0163】
SDTA:TD(Onset):194.4℃、TD(max.):263.7℃。
【0164】
RPD:TGA分析からの残留物:2θLit.
[62](2θobs.)のCa3N2:32.779(32.785)、35.598(35.545)、36.191(36.175)、37.279(37.375)、38.611(38.455)、44.599(44.755)、50.979(50.665)、60.458(60.415)、66.228(66.265)。
【0165】
実施例22:[Si(dbt)
4]の合成
【化31】
【0166】
1H-NMR(C6D6、300MHz、300K):δ/ppm=1.30(s、CMe3)。
【0167】
13C-NMR(C6D6、75MHz、300K):δ/ppm=30.7(CMe3)、56.7(CMe3)。
【0168】
【数3】
、2862(w)、2000(w)、1669(w)、1473(w)、1381(w)、1355(m)、1334(m)、1282(m)、1244(m)、1170(st)、1027(w)、957(m)、826(w)、787(w)、752(w)、620(m)、564(m)、473(m)、424(m)。
【0169】
元素分析:C32H72N12Siに対して
計算値:C:58.85%、H:11.11%、N:25.74%。
実測値:C:58.66%、H:10.95%、N:24.04%。
【0170】
TGA:(TS=25℃、TE=900℃、10℃/分)、段階:1
3%分解:184.3%℃、最大分解:261.3℃、総質量分解:96.0%。
【0171】
SDTA:TD1(Onset):237.2℃、TD1(max.):263.6℃。
【0172】
図15は、TGA及びSDTA測定のグラフ表示を示す。
【0173】
μRFA:97.6重量%Si。
【0174】
実施例23:[Sb(dbt)
3]の合成
【化32】
SbCl
3(92mg、0.403mmol、1.00当量)を5mLのnヘキサン中に供給し、-78℃まで冷却した。5mLのnヘキサン中の[Li(dbt)](197mg、1.21mmol、3.03当量)の予冷した溶液をゆっくりと滴下して加え、懸濁液の色を濃い灰色に変化させた。反応混合物を-78℃で1時間撹拌した後、RTで3時間撹拌した。濃い灰色の懸濁液を濾過し、濾液をFVにて蒸発乾固させた。粗生成物を、90℃でFVにて、昇華により精製した。生成物を、暗黄色の固体として収率43%(100mg、0.17mmol)で単離した。
【0175】
HR-EI-MS:C16H36N6に対する計算値:433.2040m/z、実測値:433.2037m/z。
【0176】
融点:132℃(目視、5℃/分)。
【0177】
1H-NMR(C6D6、300MHz、300K):δ/ppm=1.39(s、CMe3)。
【0178】
13C-NMR(C6D6、75MHz、300K):δ/ppm=30.6(CMe3)、60.9(CMe3)。
【0179】
IR:/cm-1=2965(st)、2927(m)、2866(w)、1471(w)、1456(w)、1413(m)、1385(w)、1357(st)、1257(m)、1221(m)、1201(st)、1144(vst)、1017(m)、930(w)、884(w)、802(w)、757(w)、618(st)、562(w)、499(m)、473(w)、431(w)。
【0180】
元素分析:C24H54SbN9に対して
計算値:C:48.82%、H:9.22%、N:21.35%;実測値:C:47.95%、H:9.11%、N:19.23%。
【0181】
TGA:(TS=25℃、TE=700℃、10℃/分)、段階:1
3%分解:150.6℃、最大分解:211.1℃、総質量分解:92.8%。
【0182】
SDTA:TD(Onset):192.7℃、TD(max.):209.4℃。
【0183】
実施例24:[Sb(mbt)
3]の合成
【化33】
SbCl
3(250mg、1.10mmol、1.00当量)及び[Li(mbt)](400mg、3.30mmol、3.00当量)を共に供給し、0℃まで冷却した。撹拌しながら、0℃まで予冷した10mLのトルエンを加えた。黄色反応混合物をRTで20時間撹拌し、溶媒をFVにて除去した。10mLのnペンタンを加えた後、懸濁液をCelite(登録商標)に通して濾過し、わずかに黄色の濾液の溶媒をFVにて除去した。粗生成物を、収率63%(320mg、0.69mmol)で得て、60℃でFVにて定量的に昇華した。生成物は無色の固体の形態である。
【0184】
1H-NMR(C6D6、300MHz、300K):δ/ppm=1.21(s、27H、CMe3)、3.27(s、9H、NMe)。
【0185】
13C-NMR(C6D6、75MHz、300K):δ/ppm=29.3(CMe3)、37.5(NMe)、59.1(CMe3)。
【0186】
【数4】
、2926(w)、2867(w)、1430(st)、1400(m)、1358(m)、1272(m)、1249(m)、1203(st)、1054(m)、1015(st)、919(w)、785(w)、656(w)、606(st)、569(st)、483(w)、450(st)。
【0187】
元素分析:C15H36SbN9に対して
計算値:C:38.81%、H:7.82%、N:27.15%。
実測値:C:37.25%、H:7.55%、N:26.62%。
【0188】
EI-MS:C10H24SbN6に対する計算値:349.1101m/z、実測値:349.1005m/z。
【0189】
融点:112℃(光学的に5℃/分)。
【0190】
TGA:(TS=25℃、TE=900℃、10℃/分)、段階:1
3%分解:134.4℃、最大分解:199.6℃、総質量分解:96.1%。
【0191】
SDTA:T
M(Onset):110.8℃、T
M(max.):116.3℃、T
D(Onset):187.2℃、T
D(max.):202.6℃。
図16は、TGA及びSDTA測定のグラフ表示を示す。
【0192】
実施例25:[Bi(dbt)
3]の合成
【化34】
BiCl
3(103mg、0.33mmol、1.00当量)を10mLのトルエン中に供給し、-16℃まで冷却した。5mLのトルエン中の[Li(dbt)](162mg、0.99mmol、3.00当量)の溶液を滴下して加えた。褐色の反応混合物を最初にRTまで温め、次いで50℃で3時間撹拌した。固体を濾別し、赤色濾液溶媒をFVにて除去し、赤色の固体を残した。生成物を、60℃でFVにて昇華によって精製し、赤色の固体として収率61%(136mg、0.20mmol)で得た。
【0193】
1H-NMR(C6D6、300MHz、300K):δ/ppm=1.32(s、CMe3)。
【0194】
13C-NMR(C6D6、75MHz、300K):δ/ppm=30.7(CMe3)、56.7(CMe3)。
【0195】
TGA:(TS=25℃、TE=900℃、10℃/分)、段階:1
3%分解:126.6℃、最大分解:223.6℃、総質量分解:57.3%。
【0196】
SDTA:T
D(Onset):102.6℃、T
D(max.):153.4℃。
図17は、TGA及びSDTA測定のグラフ表示を示す。
【0197】
実施例26:[Bi(mbt)
3]の合成
【化35】
BiCl
3(175mg、0.56mmol、0.98当量)を5mLのトルエン中に供給し、-70℃まで冷却し、[Li(mbt)](207mg、1.71mmol、3.00当量)とブレンドし、10mLのトルエン中に溶解した。反応混合物をRTまでゆっくりと温め、16時間撹拌した後、50℃まで4時間加熱した。緑色の懸濁液の溶媒を、FVにて除去し、生成物を65℃で残留物から昇華させ、黄色の固体として収率90%(277mg、50.2mmol)で得た。
【0198】
1H-NMR(C6D6、300MHz、300K):δ/ppm=1.20(s、27H、CMe3)、3.69(s、9H、NMe)。
【0199】
13C-NMR(C6D6、75MHz、300K):δ/ppm=29.7(CMe3)、42.6(NMe)、59.3(CMe3)。
【0200】
【数5】
、2924(w)、2900(w)、2863(w)、1455(w)、1417(st)、1387(st)、1357(st)、1283(st)、1248(m)、1201(st)、1055(w)、1015(m)、921(w)、785(w)、601(st)、566(st)、481(w)、435(st)。
【0201】
EI-MS:C10H24BiN6に対する計算値:437.1866m/z、実測値:437.1902m/z。
【0202】
融点:105℃(目視、5℃/分)。
【0203】
TGA:(TS=25℃、TE=900℃、10℃/分)、段階:1
3%分解:152.4℃、最大分解:231.5℃、総質量分解:81.9%。
【0204】
SDTA:T
M(Onset):106.9℃、T
M(max.):109.5℃、T
D(Onset):233.4℃、T
D(max.):243.4℃。
図18は、TGA及びSDTA測定のグラフ表示を示す。
【0205】
RPD:TGA分析からの残留物:Biの2θLit.
[63](2θobs.):22.468(22.570)、23.794(23.620)、27.164(27.205)、37.955(37.975)、39.619(39.655)、44.554(44.575)、45.863(45.970)、46.020(46.030)、46.470(46.600)、48.700(48.700)、56.027(56.050)、59.325(59.290)、61.126(61.270)、62.181(62.185)、62.895(62.815)、64.513(64.525)、67.439(67.510)、70.786(70.795)、71.528(71.515)、71.885(71.920)、73.711(73.750)、75.333(75.340)、76.408(76.330)、81.143(81.100)、85.000(84.970)、85.341(85.390)、87.089(87.085)、89.582(89.590)。
【0206】
実施例27:[Hg(mbt)
2]の合成
【化36】
[Li(mbt)](200mg、1.65mmol、2.00当量)を2mLのTHF中に供給し、0℃まで冷却した。HgCl
2(224mg、0.83mmol、1.00当量)を8mLのTHF中に溶解し、滴下して加えた。反応混合物をRTで16時間撹拌した。わずかに灰色の懸濁液を濃縮乾固させ、nペンタン中に取り込み、Celite(登録商標)で濾過した。濾液の溶媒を除去した後、生成物を、わずかに黄色の粘稠な液体として収率12%(40mg、0.09mmol)で得た。
【0207】
1H-NMR(C6D6、300MHz、300K):δ/ppm=1.28(m、18H、CMe3)、3.31(m、6H、NMe)。
【0208】
13C-NMR(C6D6、75MHz、300K):δ/ppm=31.0(CMe3)、44.1(NMe)、57.8(CMe3)。
【0209】
【数6】
、2926(m)、2903(m)、2864(w)、1437(st)、1379(m)、1360(st)、1260(st)、1227(st)、1203(st)、1095(st)、1072(st)、1015(st)、922(w)、865(w)、799(st)、665(m)、608(m)、569(m)、475(w)。
【0210】
TGA:(TS=25℃、TE=600℃、10℃/分)、段階:2
3%の分解:127.1℃、最大分解(第1段階):162.4℃、最大分解(第2段階):358.4℃、質量分解(第1段階):68.1%、総質量分解:100%。
【0211】
SDTA:TD(Onset):143.0℃、TD(max.):161.4℃。
【0212】
実施例28:[Ce(dbt)
3]の合成
【化37】
【0213】
HR-EI-MS:C24H54CeN9に対する計算値:608.3557m/z、実測値:608.3566m/z。
【0214】
実施例29及び30:[Zr(dbt)
2(NMe
2)
2]及び[Hf(dbt)
2(NMe
2)
2]の合成
【化38】
M(NMe
2)
4(式中、M=Zr又はHf)を10mL及び/又は22mLのEt
2O中に溶解し、-78℃まで冷却し、Hdbtとブレンド滴下した。反応混合物をRTまで温め、16時間撹拌した。次いで、溶媒をFVにて除去した。黄色残留物を10mLのnヘキサン中に取り込み、わずかに濁った溶液を濾過した。濾液の溶媒を高真空で除去し、生成物を乾燥させた。
【0215】
実施例29:[Zr(dbt)2(NMe2)2]
収率:91%。
【0216】
1H-NMR(C6D6、300MHz、300K):δ/ppm=1.33(s、36H、CMe3)、3.05(s、12H、NMe2)。
【0217】
13C-NMR(C6D6、75MHz、300K):δ/ppm=30.2(CMe3)、43.9(NMe2)、57.5(CMe3)。
【0218】
元素分析:C20H48ZrN8に対して
計算値:C:48.84%、H:9.84%、N:22.78%。
実測値:C:48.41%、H:9.77%、N:23.23%。
【0219】
実施例30:[Hf(dbt)2(NMe2)2]
収率:96%
【0220】
1H-NMR(C6D6、300MHz、300K):δ/ppm=1.32(s、36H、CMe3)、3.15(s、12H、NMe2)。
【0221】
13C-NMR(C6D6、75MHz、300K):δ/ppm=30.2(CMe3)、43.9(NMe2)、58.6(CMe3)。
【0222】
元素分析:C20H48HfN8に対して
計算値:C:41.48%、H:8.35%、N:19.35%。
実測値:C:40.29%、H:8.14%、N:19.24%。
【0223】
実施例31:Cs(dbt)の合成
【化39】
Cshmdsを10mLのEt
2O中に取り込み、0℃でHdbtとブレンド滴下した。わずかに濁った溶液をRTまで温め、16時間撹拌し、Celite(登録商標)で濾過した。濾液の溶媒をFVにて除去した。収率:76%。
【0224】
1H-NMR(C6D6/THF-d8(5/1)、300MHz、300K):δ/ppm=1.35(s、CMe3)。
【0225】
13C-NMR(C6D6/THF-d8(5/1)、75MHz、300K):δ/ppm=31.3(CMe3)、55.8(CMe3)。
【0226】
元素分析:C8H18CsN3に対して
計算値:C:33.23%、H:6.27%、N:14.53%。
実測値:C:32.60%、H:6.07%、N:14.64%。
【0227】
実施例32:[Au
2(dbt)
2]の合成
【化40】
AuCl(253mg、1.09mmol、1.00当量)を5mLのTHF中に懸濁し、-75℃まで冷却し、10mLのTHF中の[Li(dbt)](179mg、1.09mmol、1.00当量)の溶液とブレンドした。反応混合物を-75℃で5時間保持し、RTまで加熱し、更に16時間撹拌した。褐色反応混合物の溶媒を高真空(FV)にて除去し、残留物をnヘキサン中に取り込み、得られた懸濁液を濾過した。濾液の溶媒をFVにて除去し、残留物を80℃でFVにて昇華精製した。生成物を、黄色の固体の形態にて収率13%(50mg、0.14mmol)で得た。
【0228】
1H-NMR(C6D6、300MHz、300K):δ/ppm=1.12(s、9H、CMe3)、1.27(s、18H、CMe3)、1.45(s、9H、CMe3)。
【0229】
13C-NMR(C6D6、75MHz、300K):δ/ppm=30.2(CMe3)、30.4(CMe3)、31.0(CMe3)、56.5(CMe3)、60.2(CMe3)、62.4(CMe3)。
【0230】
【数7】
、2858(w)、1469(w)、1404(st)、1381(st)、1356(st)、1317(w)、1222(m)、1184(st)、1020(w)、803(w)、650(m)、578(m)、510(w)、483(w)。
【0231】
元素分析:C16H36Au2N6に対して
計算値:C:27.20%、H:5.14%、N:11.90%;実測値:C:29.77%、H:5.75%、N:13.46%。
【0232】
HR-EI-MS:C16H36Au2N6に対する計算値:706.2333m/z、実測値:706.2324m/z。
【0233】
TGA:(TS=25℃、TE=900℃、10℃/分)、段階:1
3%分解:121.8℃、最大分解:221.4℃、総質量分解:62.0%。
【0234】
SDTA:T
D(Onset):212.6℃、T
D(max.):217.4℃。
図19は、TGA及びSDTA測定のグラフ表示を示す。
【0235】
実施例33:[Ag
4(dbt)
4]の合成
【化41】
AgCl(250mg、1.70mmol、1.00当量)を5mLのTHF中に供給し、-70℃まで冷却し、[Li(dbt)](277mg、1.70mmol、1.00当量)の溶液を10mLのTHF中に加えた。深褐色の反応混合物をRTまで温め、16時間撹拌した後、FVにて全ての揮発性成分をなくした。残留物を、10mLのnヘキサン中に取り込み、薄く赤みがかった懸濁液を濾過した。濾液の溶媒をFVにて除去し、残留物を90℃でFVにて昇華により精製し、生成物を無色の固体として収率47%(178mg、0.20mmol)で得た。
【0236】
反応混合物及び生成物は、光がない状態で取り扱う必要がある。
【0237】
1H-NMR(C6D6、300MHz、300K):δ/ppm=1.27(s、36H、CMe3)、1.43(s、36H、CMe3)。
【0238】
13C-NMR(C6D6、75MHz、300K):δ/ppm=31.0(CMe3)、31.9(CMe3)。
【0239】
【数8】
、2859(w)、1471(w)、1403(st)、1354(st)、1316(m)、1222(st)、1179(st)、1101(w)、1055(w)、1016(w)、921(w)、888(w)、802(w)、766(w)、642(st)、574(st)、503(w)、478(m)、411(w)。
【0240】
元素分析:C16H48Ag4N12に対して
計算値:C:36.38%、H:6.87%、N:15.91%;実測値:C:36.79%、H:6.93%、N:16.60%。
【0241】
TGA:(TS=25℃、TE=700℃、10℃/分)、段階:1
3%分解:205.4℃、最大分解:256.6℃、総質量分解:78.7%。
【0242】
SDTA:TD(Onset):212.5℃、TD(max.):215.2℃。
【0243】
図20は、TGA及びSDTA測定のグラフ表示を示す。
【0244】
実施例34:[Ga(mbt)Me
2]の合成
【化42】
GaMe
3(146mg、1.27mmol、2.00当量)を5mLのnペンタン中に供給し、0℃で、10mLのnペンタン中のGaCl
3(112mg、0.64mmol、1.00当量)の溶液に加えた。無色の溶液をRTまで温め、16時間撹拌し、0℃まで再冷却し、10mLのnペンタン中の[Li(mbt)](231mg、1.91mmol、3.00当量)の溶液に加えた。反応混合物をRTまで温め、16時間撹拌した。懸濁液の溶媒を、FVにて除去し、所望の生成物を、FVにての凝縮によって残留物から単離した。生成物を、無色の液体の形態にて収率57%(233mg、1.09mmol)で得た。
【0245】
1H-NMR(C6D6、300MHz、300K):δ/ppm=0.05(s、6H、GaMe2)、1.17(s、18H、CMe3)、3.03(s、3H、NMe)。
【0246】
13C-NMR(C6D6、75MHz、300K):δ/ppm=-5.6(GaMe2)、29.7(CMe3)、39.4(NMe)。
【0247】
【数9】
、2902(w)、1524(w)、1459(w)、1435(m)、1361(st)、1309(m)、1271(w)、1199(st)、1068(m)、1026(w)、955(w)、930(w)、866(st)、787(w)、737(st)、688(m)、646(st)、572(st)、534(st)、481(w)、460(m)、438(w)。
【0248】
TGA:(TS=25℃、TE=450℃、10℃/分)、段階:1
3%分解:63.2℃、最大分解:100.9℃、総質量分解:87.4%。
【0249】
SDTA:TD(Onset):81.6℃、TD(max.):100.3℃。
【0250】
図21は、TGA及びSDTA測定のグラフ表示を示す。
【0251】
実施例35:[Ga(dbt)Me
2]の合成
【化43】
GaMe
3(181mg、1.58mmol、2.00当量)を10mLのnペンタン中に供給し、10mLのnペンタン中のGaCl
3(139mg、0.79mmol、1.00当量)の溶液に0℃で加えた。反応混合物をRTまで温め、16時間撹拌した。0℃で、[Li(dbt)](387mg、2.37mmol、3.00当量)の溶液を滴下して加え、無色の固体の沈殿を即座に観察した。懸濁液をRTまでゆっくりと温め、16時間撹拌した。溶媒を高真空(FV)にて除去し、生成物を、FVにて残留物から無色の液体の形態に凝縮した。生成物を収率43%(261mg、1.02mmol)で得た。
【0252】
1H-NMR(C6D6、300MHz、300K):δ/ppm=0.10(s、6H、GaMe2)、1.17(s、18H、CMe3)。
【0253】
13C-NMR(C6D6、75MHz、300K):δ/ppm=-5.2(GaMe2)、29.7(CMe3)、55.8(NMe)。
【0254】
【数10】
、2870(w)、1459(w)、1387(w)、1361(m)、1295(st)、1217(st)、1029(w)、924(w)、767(m)、699(m)、630(m)、583(st)、545(st)、484(m)。
【0255】
TGA:(TS=25℃、TE=450℃、10℃/分)、段階:1
3%分解:64.2℃、最大分解:116.0℃、総質量分解:89.9%。
【0256】
SDTA:TD(Onset):79.5℃、TD(max.):115.7℃
【0257】
図22は、TGA及びSDTA測定のグラフ表示を示す。
【0258】
実施例36:[Al(mbt)
3]の合成
【化44】
10mLのEt
2O中のAlCl
3(131mg、0.98mmol、1.00当量)の溶液を、0℃で、10mLのEt
2O中の[Li(mbt)](357mg、2.95mmol、3.00当量)の溶液に滴下して加えた。無色の反応混合物をゆっくりとRTまで温め、16時間撹拌した後、濾過した。残留物を10mLのEt
2Oで抽出し、濾液をFVにて蒸発乾固させた。淡黄色の固体を、45℃の高真空で昇華させ、生成物を収率21%(76mg、0.21mmol)で得た。
【0259】
1H-NMR(C6D6、300MHz、300K):δ/ppm=1.31(s、27H、CMe3)、3.16(s、9H、NMe)。
【0260】
13C-NMR(C6D6、75MHz、300K):δ/ppm=30.3(CMe3)、37.5(NMe)、55.8(CMe3)。
【0261】
27Al-NMR(C6D6、130MHz、300K):δ/ppm=28.1。
【0262】
【数11】
、2926(m)、2896(m)、2802(w)、1473(w)、1457(w)、1415(w)、1387(w)、1358(m)、1300(st)、1263(st)、1229(st)、1199(st)、1106(w)、1025(w)、954(w)、796(w)、625(m)、572(w)、524(st)、435(w)。
【0263】
元素分析:C15H36AlN9に対して
計算値:C:48.76%、H:9.82%、N:34.12%;実測値:C:47.95%、H:9.63%、N:33.55%。
【0264】
TGA:(TS=25℃、TE=700℃、10℃/分)、段階:1
3%分解:124.6℃、最大分解:216.1℃、総質量分解:96.4%。
【0265】
SDTA:TM(Onset):45.6℃、TM(max.):49.7℃、TD(Onset):205.1℃、TD(max.):218.8℃
【0266】
図23は、TGA及びSDTA測定のグラフ表示を示す。
【0267】
実施例37:[Al(dbt)
3]の合成
【化45】
[Al(NMe
2)
3]
2(154mg、0.97mmol、0.50当量)を10mLのトルエン中に供給し、0℃まで冷却し、H(dbt)(458mg、2.91mmol、3.00当量)とブレンド滴下した。反応溶液を0℃で1時間撹拌し、RTまで温めた。ガスの発生が観察された。黄色の溶液をRTで16時間撹拌した後、FVにて溶媒を除去することにより、淡黄色の固体を得た。粗生成物を、55℃でFVにて昇華精製し、無色の固体として単離し、収率51%(244mg、0.49mmol)で得た。
【0268】
1H-NMR(C6D6、300MHz、300K):δ/ppm=1.38(s、CMe3)。
【0269】
13C-NMR(C6D6、75MHz、300K):δ/ppm=31.2(CMe3)、57.2(CMe3)。
【0270】
27Al-NMR(C6D6、130MHz、300K):δ/ppm=24.6。
【0271】
【数12】
、2929(s)、2870(s)、2812(s)、2767(s)、1474(s)、1387(s)、1360(m)、1302(st)、1257(st)、1201(st)、1160(st)、1069(s)、1034(s)、977(m)、899(s)、845(s)、767(s)、627(m)、570(m)、543(st)、438(s)。
【0272】
元素分析:C24H54AlN9に対する計算値:C:58.15%、H:10.98%、N:25.43%;実測値:C:58.25%、H:10.13%、N:24.32%。
【0273】
TGA:(TS=25℃、TE=700℃、10℃/分)、段階:1
3%分解:126.8℃、最大分解:172.6、302.0℃、総質量分解:95.3%。
【0274】
SDTA:T
D(Onset):270.0℃、T
D(max.):302.7℃。
図24は、TGA及びSDTA測定のグラフ表示を示す。
【0275】
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