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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004554
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】不燃性断熱パネル
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20240110BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20240110BHJP
   E04F 13/12 20060101ALI20240110BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20240110BHJP
   E04C 2/26 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B32B15/08 E
B32B5/18
E04F13/12 A
E04B1/94 R
E04C2/26 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104182
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000109196
【氏名又は名称】デュポン・スタイロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110870
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 芳広
(74)【代理人】
【識別番号】100096828
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敬介
(72)【発明者】
【氏名】若林 正行
【テーマコード(参考)】
2E001
2E110
2E162
4F100
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001FA03
2E001FA16
2E001GA12
2E001GA42
2E001GA82
2E001GA85
2E001GA86
2E001HB01
2E001HB02
2E001HD01
2E001HD03
2E001HD04
2E001HD09
2E001JA18
2E001JA20
2E110AA02
2E110AB02
2E110AB04
2E110AB22
2E110AB23
2E110BA05
2E110BA12
2E110BD06
2E110CB02
2E110EA09
2E110GA03Z
2E110GA04Z
2E110GA33W
2E110GA33X
2E110GA33Z
2E110GB02W
2E110GB02X
2E110GB42Z
2E110GB43Z
2E110GB54Z
2E162CB01
2E162CB03
2E162CD01
2E162CD02
2E162CD03
4F100AB01D
4F100AB01E
4F100AB03D
4F100AB03E
4F100AD11B
4F100AD11C
4F100AK01A
4F100AK51A
4F100BA05
4F100BA06
4F100BA10D
4F100BA10E
4F100CB00B
4F100CB00C
4F100DD01A
4F100DJ01A
4F100EH17
4F100EH46
4F100EJ02
4F100EJ20
4F100GB07
4F100JA02B
4F100JA02C
4F100JB13A
4F100JB16A
4F100JJ02
4F100JJ02A
4F100JJ07
4F100JK06
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】芯材として熱可塑性樹脂発泡板と熱硬化性樹脂発泡板とからなる積層体を芯材として用いた断熱パネルにおいて、不燃性評価が高い不燃性断熱パネルを提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂発泡板10と熱硬化性樹脂発泡板20とを接着層31を介して接着した積層体を断熱層とし、両面に金属表面材40,40を接着したパネルにおいて、熱可塑性樹脂発泡板10の、熱硬化性樹脂発泡板20との接着面側の表面に凹凸11を形成し、該凹凸11の凹部12内の充填剤部51と、接着層31とを、膨張黒鉛含有接着剤で形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂発泡体製の断熱層と、前記断熱層の両表面に接着層を介して配置された金属表面材と、を備えた不燃性断熱パネルにおいて、
前記断熱層は、熱可塑性樹脂発泡板と、前記熱可塑性樹脂発泡板の少なくとも一方の表面に積層された熱硬化性樹脂発泡板と、から構成され、
前記熱可塑性樹脂発泡板と前記熱硬化性樹脂発泡板との少なくとも一つの積層面において、前記熱可塑性樹脂発泡板と前記熱硬化性樹脂発泡板の少なくとも一方の表面が凹凸を有し、
前記凹凸の凹部の最小幅が1mmを超え、
前記凹凸の凹部に少なくとも膨張黒鉛が充填されていることを特徴とする不燃性断熱パネル。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂発泡板の体積に対する、前記膨張黒鉛の理論膨張容積が2.0倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の不燃性断熱パネル。
【請求項3】
少なくとも前記凹部が接する前記熱可塑性樹脂発泡板と前記熱硬化性樹脂発泡板との積層面に、接着層が介在し、前記凹部に隣接する前記凸部の最小幅が1mmを超えることを特徴とする請求項2に記載の不燃性断熱パネル。
【請求項4】
前記凹部に、前記膨張黒鉛を含有する膨張黒鉛含有接着剤が充填されていることを特徴とする請求項3に記載の不燃性断熱パネル。
【請求項5】
前記凹部が接する前記接着層が、前記膨張黒鉛含有接着剤で形成されていることを特徴とする請求項4に記載の不燃性断熱パネル。
【請求項6】
前記凹部に前記膨張黒鉛のみが充填されていることを特徴とする請求項3に記載の不燃性断熱パネル。
【請求項7】
前記熱硬化性樹脂発泡板がポリイソシアヌレートフォームからなり、前記熱可塑性樹脂発泡板が押出法ポリスチレン系発泡体であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の不燃性断熱パネル。
【請求項8】
ISO5660に準拠したコーンカロリーメーターによる発熱性試験において、以下の(a)乃至(c)を満たすことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の不燃性断熱パネル。
(a)加熱開始後、20分間の総発熱量が8MJ/m2以下である。
(b)加熱開始後、20分間、防火上有害な裏面まで貫通する亀裂及び穴がない。
(c)加熱開始後、20分間、最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えない。
【請求項9】
ISO5660に準拠したコーンカロリーメーターによる発熱性試験において、以下の(a)乃至(c)を満たすことを特徴とする請求項7に記載の不燃性断熱パネル。
(a)加熱開始後、20分間の総発熱量が8MJ/m2以下である。
(b)加熱開始後、20分間、防火上有害な裏面まで貫通する亀裂及び穴がない。
(c)加熱開始後、20分間、最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の壁材や屋根材として用いられる不燃性断熱パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の壁や屋根などに断熱性と不燃性を付与する材料として、ロックウール等の無機系断熱材をバインダー樹脂で固めたものや、ポリウレタンフォームやポリスチレンフォーム等の発泡樹脂からなる芯材の両面に2枚の金属板を接着剤によって貼付したパネルが知られている。中でも、ポリウレタンフォームのような熱硬化性樹脂発泡板を芯材としたパネルは高い不燃性が得られる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6117972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建築基準法に基づく防火材料の評価試験の代表的なものとして発熱性試験が有る。係る発熱性試験は、ISO5660に準拠し、コーンカロリーメーターを用いて実施され、一定時間内において、発生する総発熱量、継続して示される最高発熱速度、裏面まで貫通する亀裂や穴の有無で評価される。熱硬化性樹脂発泡板を芯材として用いたパネルは、係る発熱性試験で高い不燃性評価が得られるものの、ポリスチレンフォームのような熱可塑性樹脂発泡板に比べて価格が高いという問題があった。そのため、熱硬化性樹脂発泡板からなる芯材の一部を熱可塑性樹脂発泡板に替えて低価格を図ったパネルが提案されている。
【0005】
しかしながら、熱硬化性樹脂発泡板と熱可塑性樹脂発泡板との積層体を芯材として、該芯材の両面に金属板を積層したパネルについて上記発熱性試験を行うと、熱硬化性樹脂発泡板側をコーンヒーターに向けていても熱可塑性樹脂発泡板が熱溶融して体積が大幅に低減し、パネルの形状保持ができない場合が有った。
【0006】
本発明の目的は、芯材として熱可塑性樹脂発泡板と熱硬化性樹脂発泡板とからなる積層体を用いた断熱パネルにおいて、不燃性評価が高い不燃性断熱パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、合成樹脂発泡体製の断熱層と、前記断熱層の両表面に接着層を介して配置された金属表面材と、を備えた不燃性断熱パネルにおいて、
前記断熱層は、熱可塑性樹脂発泡板と、前記熱可塑性樹脂発泡板の少なくとも一方の表面に積層された熱硬化性樹脂発泡板と、から構成され、
前記熱可塑性樹脂発泡板と前記熱硬化性樹脂発泡板との少なくとも一つの積層面において、前記熱可塑性樹脂発泡板と前記熱硬化性樹脂発泡板の少なくとも一方の表面が凹凸を有し、
前記凹凸の凹部の最小幅が1mmを超え、
前記凹凸の凹部に少なくとも膨張黒鉛が充填されていることを特徴とする。
【0008】
本発明においては、下記の構成を好ましい態様として含む。
〔1〕前記熱可塑性樹脂発泡板の体積に対する、前記膨張黒鉛の理論膨張容積が2.0倍以上である。
〔2〕上記〔1〕において、少なくとも前記凹部が接する前記熱可塑性樹脂発泡板と前記熱硬化性樹脂発泡板との積層面に、接着層が介在し、前記凹部に隣接する前記凸部の最小幅が1mmを超える。
〔3〕上記〔2〕において、前記凹部に、前記膨張黒鉛を含有する膨張黒鉛含有接着剤が充填されている。
〔4〕上記〔3〕において、前記凹部が接する前記接着層が、前記膨張黒鉛含有接着剤で形成されている。
〔5〕上記〔2〕において、前記凹部に前記膨張黒鉛のみが充填されている。
〔6〕前記熱可塑性樹脂発泡板が押出法ポリスチレン系発泡体からなり、前記熱硬化性樹脂発泡板がポリイソシアヌレートフォームからなる。
〔7〕ISO5660に準拠したコーンカロリーメーターによる発熱性試験において、以下の(a)乃至(c)を満たす。
(a)加熱開始後、20分間の総発熱量が8MJ/m2以下である。
(b)加熱開始後、20分間、防火上有害な裏面まで貫通する亀裂及び穴がない。
(c)加熱開始後、20分間、最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えない。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、熱可塑性樹脂発泡板と熱硬化性樹脂発泡板との積層面において、少なくとも一方の発泡板の表面に凹凸を形成し、該凹凸の凹部に膨張黒鉛を充填することにより、熱可塑性樹脂発泡板と熱硬化性樹脂発泡板との間に多量の膨張黒鉛を配置することができる。よって、発熱性試験において、熱可塑性樹脂発泡板の熱溶融による大幅な体積変動を膨張黒鉛の膨張によって補填することができ、不燃性評価の高い不燃性断熱パネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の不燃性断熱パネルの一実施形態の構成を模式的に示す平面図と厚さ方向の断面図である。
図2図1の断面図の部分拡大図である。
図3】本発明の不燃性断熱パネルの他の実施形態の構成を模式的に示す厚さ方向の断面図と部分拡大図である。
図4】本発明の不燃性断熱パネルの他の実施形態の凹凸の構成を模式的に示す平面図である。
図5】本発明の不燃性断熱パネルの他の実施形態の構成を模式的に示す厚さ方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の不燃性断熱パネルは、芯材として合成樹脂発泡体製の断熱層を有し、該断熱層の両表面に、接着層を介して金属表面材を有している。そして、本発明においては、断熱層が熱硬化性樹脂発泡板と熱可塑性樹脂発泡板とを積層してなる積層体であり、少なくとも一つの積層面において、熱硬化性樹脂発泡板及び熱可塑性樹脂発泡板の少なくとも一方の表面に凹凸を設け、該凹凸の凹部に膨張黒鉛を充填することで、発熱性試験において熱可塑性樹脂発泡板の熱溶融によって生じる空隙を埋め得る十分な量の膨張黒鉛を、熱硬化性樹脂発泡板と熱可塑性樹脂発泡板との間に存在せしめたことに特徴を有する。
【0012】
熱可塑性樹脂発泡板を芯材の一部として用いた不燃性断熱パネルについて、発熱性試験を行うと、熱可塑性樹脂発泡板が熱溶融して大幅に体積が減少する。このような熱可塑性樹脂発泡板の大幅な体積変動を埋めるために、本発明では加熱により体積が膨張する膨張黒鉛を用いる。熱可塑性樹脂発泡板と熱硬化性樹脂発泡板との積層形態としては、接着層を介在させて接着する形態が一般的であるが、積層した熱可塑性樹脂発泡板と熱硬化性樹脂発泡板とを直接積層し、積層端部において、金属表面材の端部を折り返して固定したり、別途用意した金物で固定したりする場合もある。
【0013】
ここで、熱可塑性樹脂発泡板と熱硬化性樹脂発泡板の積層面において、熱可塑性樹脂発泡板及び熱硬化性樹脂発泡板のいずれの表面にも凹凸がない場合について説明する。接着層を有していない場合、凹凸を設けていない積層面は平坦な発泡板の表面同士の界面であるから、係る積層面に粉末状の膨張黒鉛を所定の厚さで介在させることは容易ではない。また、膨張黒鉛を接着剤などのバインダー材と混合してペースト状にして積層面に介在させたとしても、熱可塑性樹脂発泡板と熱硬化性樹脂発泡板とを積層する過程で多量の膨張黒鉛とバインダー材との混合物が積層端部から流れ出るおそれがあり、積層面に凹凸を設けずに多量の膨張黒鉛を介在させることは容易ではない。
【0014】
熱可塑性樹脂発泡板と熱硬化性樹脂発泡板との積層面に接着層が介在している場合も、熱可塑性樹脂発泡板及び熱硬化性樹脂発泡板のいずれの表面にも凹凸を設けずに接着層に膨張黒鉛を含有させようとすると、多量の膨張黒鉛を接着剤中に含有させる必要があり、また、接着性の観点から接着剤濃度を一定以上に維持しようとすると、接着剤自体も増量する必要があり、結果として接着層が厚くなってしまう。熱可塑性樹脂発泡板と熱硬化性樹脂発泡板とを接着剤で接着する際には、一方の発泡板の表面に所望量の接着剤を塗布し、他方の発泡板をのせてプレス圧をかけるが、多量の膨張黒鉛を含有し、且つ、接着剤自体も増量した厚い接着層にプレス圧をかけると、2枚の発泡板の積層端部から膨張黒鉛を含有する接着剤が流れ出てしまう。よって、強いプレス圧をかけることができず、熱可塑性樹脂発泡板と熱硬化性樹脂発泡板との接着性が劣ってしまう。また、接着剤は有機物であるため、接着剤量が増えると総発熱量が増加するため、上記発熱性試験における評価が低くなってしまう。
【0015】
本発明においては、熱可塑性樹脂発泡板と熱硬化性樹脂発泡板の積層面において、少なくとも一方の表面に凹凸を形成して、その凹部に膨張黒鉛を充填することで、熱可塑性樹脂発泡板の体積変動を補填するに十分な量の膨張黒鉛を、熱可塑性樹脂発泡板と熱硬化性樹脂発泡板との間に配置することができる。
【0016】
以下、実施形態を挙げて本発明について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対して適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に含まれる。
【0017】
図1は、本発明の不燃性断熱パネルの一実施形態の構成を模式的に示す図であり、図1中、(a)は平面図、(b)は(a)中のA-A’部位の断面図である。また、図2は、図1(b)中の破線で囲んだ領域Bの拡大図である。
【0018】
本発明の不燃性断熱パネル(以下、「パネル」と称する)は、芯材として熱可塑性樹脂発泡板10と熱硬化性樹脂発泡板20とを接着した積層体を用いる。本発明においては、係る積層体を断熱層として、その両表面に、接着層32,33を介して金属表面材40,40が貼付されている。本実施形態は、熱可塑性樹脂発泡板10の一方の表面に、接着層31を介して熱硬化性樹脂発泡板20を接着して積層した形態である。本実施形態において、接着層31を介して熱硬化性樹脂発泡板20に相対する熱可塑性樹脂発泡板10の表面には凹凸11が形成されており、係る凹凸11の凹部12には、充填剤部51として、少なくとも膨張黒鉛からなる充填剤が充填されている。
【0019】
凹部12に充填される充填剤は、膨張黒鉛のみでも、膨張黒鉛同士を結着させるバインダー材と膨張黒鉛との混合物のいずれでも良い。膨張黒鉛は粉末で扱いづらいが、バインダー材と混合してペースト状にした混合物であれば、図2(a)に示すように直接凹部12に充填することも容易である。また、熱可塑性樹脂に膨張黒鉛を混合して押出成形した柱状の成形品を凹部12に充填しても良い。膨張黒鉛のみを凹部12に充填する場合には、図2(b)に示すように樹脂フィルム52で包含された膨張黒鉛を充填すれば容易に充填することができる。
【0020】
また、接着層31に膨張黒鉛を含有させてもよく、この場合、凹部12に膨張黒鉛とバインダー材からなる充填剤を充填し、別途、膨張黒鉛含有接着剤を凹凸11上に塗布して接着層31を形成し、熱硬化性樹脂発泡板20を貼付しても良いが、上記バインダー材として接着層31の形成に用いる接着剤を用いることで、膨張黒鉛含有接着剤を凹部12に充填すると同時に接着層31を形成することができる。
【0021】
本実施形態においては、少なくとも凹部12に膨張黒鉛が充填されるため、熱硬化性樹脂発泡板20と熱可塑性樹脂発泡板10との間に存在させる膨張黒鉛が多量の場合でも、接着層31を薄くすることができる。即ち、接着層31と凹部12とが、膨張黒鉛と接着剤の配置領域となるため、凹部12の容積を十分大きくすることで、接着層31の厚さを薄くすることができる。よって、熱硬化性樹脂発泡板20と熱可塑性樹脂発泡板10とを積層する際に十分なプレス圧をかけても、積層端部から接着剤或いは膨張黒鉛含有接着剤がはみ出ることがなく、良好な接着性が得られる。
【0022】
本実施形態において、熱硬化性樹脂発泡板20と熱可塑性樹脂発泡板10との接着性の観点からは、接着層31は膨張黒鉛を含有しないか、含有しても濃度が薄い方が好ましい。一方、接着層31に含有させる膨張黒鉛を少なくする観点からは、凹部12にできるだけ多くの膨張黒鉛を充填することが好ましい。また、接着剤を増量すると総発熱量が増加するため、接着剤は少ない方が好ましい。従って、凹部12には膨張黒鉛のみを充填し、接着層31は接着剤のみとすることが接着性と総発熱量の観点からは好ましいと言えるが、一方で、接着層31と充填剤部51とを共通の膨張黒鉛含有接着剤で形成した場合でも、十分なプレス圧をかけることができる上、凹部12内の壁面が接着領域となるため、膨張黒鉛含有接着剤中の膨張黒鉛の濃度が高くなっても、良好な接着性が得られる。また、膨張黒鉛含有接着剤で凹部12の充填と接着層31の形成を1工程で行うことができ、パネルの作製作業がより容易になるという効果も得られる。
【0023】
従って、接着層31に膨張黒鉛を含有させるか否か、充填剤部51に接着剤を含有させるか否か、即ち、接着層31と充填剤部51それぞれの膨張黒鉛、接着剤の含有量については、必要とされる膨張黒鉛の量と、総発熱量の観点から許容される接着剤の量とに基づいて調整すればよい。
【0024】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂発泡板10としては、発熱性試験において、1/5以下に体積が減少する熱可塑性樹脂発泡板でも好ましく用いられ、例えば、押出法ポリスチレン系発泡体が好ましく用いられ、より好ましくは、密度が20kg/m3~50kg/m3。圧縮強度が10N/cm2~50N/cm2、厚さが20mm~500mmの押出法ポリスチレン系発泡体である。
また、本発明に用いられる熱硬化性樹脂発泡板20としては、ポリウレタンフォームが好ましく用いられ、より好ましくはポリイソシアヌレートフォームである。
【0025】
本発明に用いられる接着剤としては、従来の断熱パネルにおいて金属表面材と断熱板、及び断熱板同士の接着に用いられている、2液型ウレタン樹脂系接着剤が好ましく用いられる。2液型ウレタン樹脂系接着剤は、そのままで用いた場合に30N/cm2以上の接着強さが得られ、接着層31と充填剤部51とに均一に膨張黒鉛を含有せしめる場合においては、膨張黒鉛含有接着剤中に40質量%まで膨張黒鉛を含有させても接着性が得られる。尚、2液型ウレタン樹脂系接着剤の増量は、発熱性試験において総発熱量を増加させるため、膨張黒鉛含有接着剤中に含有される膨張黒鉛は20質量%以上として、接着剤の増量を抑えることが好ましい。即ち、膨張黒鉛含有接着剤で充填剤部51と接着層31とを形成する場合の好ましい膨張黒鉛の含有量は、20質量%以上、40質量%以下である。
【0026】
また、膨張黒鉛を接着層31に含有させない場合や、接着層31よりも充填剤部51の膨張黒鉛を高濃度とする場合には、充填剤におけるバインダー材は接着層31の接着剤と異なっていても良く、接着剤以外の粘着剤や各種エマルジョン、ラテックスなど、粉末状の膨張黒鉛に混合してペースト状の充填剤を調整し得るものであれば、バインダー材として用いることができ、本発明の効果を損なわない範囲でバインダー材以外の各種添加剤を添加しても構わない。また、接着層31で十分な接着性が得られるのであれば、充填剤部51の膨張黒鉛の含有量は40質量%超とすることができる。
【0027】
本発明において、膨張黒鉛は、加熱によって熱可塑性樹脂発泡板10が軟化、溶融して体積が減少し、熱硬化性樹脂発泡板20との間に空隙が生じた際に、加熱発泡して体積が増加し、該空隙を埋めることでパネル全体での形状を維持する。よって、膨張黒鉛は、加熱発泡時の膨張容積が、用いる熱可塑性樹脂発泡板10の体積変動量以上となるように用いることが望ましい。熱可塑性樹脂発泡板10がポリスチレン系発泡体の場合には、熱可塑性樹脂発泡板10の体積に対して、膨張黒鉛の理論膨張容積が2.0倍以上となるよう、膨張黒鉛を用いることが望ましく、熱可塑性樹脂発泡板10の体積に対する膨張黒鉛の理論膨張容積が2.0倍以上であれば、ポリスチレン系発泡体以外の材料からなる熱可塑性樹脂発泡板10に対しても、膨張黒鉛を用いた効果がほぼ得られる。ここで、理論膨張容積とは、950℃のマッフル炉に膨張黒鉛を1分間投入し、取り出し後、膨張容積を読み取ることにより算出される単位質量当たりの膨張容積に、使用した膨張黒鉛の全使用量(質量)を乗じた値である。
【0028】
また、図1の実施形態においては、熱可塑性樹脂発泡板10の一方の表面に凹凸11が形成されているが、後述するように、熱硬化性樹脂発泡板20の表面にも凹凸を形成してよく、また、熱可塑性樹脂発泡板10の両面に熱硬化性樹脂発泡板を接着した場合に、凹凸を形成し得る発泡板の表面が最大で4面となり、そのうちの少なくとも1面に凹凸を形成すればよい。本発明において、理論膨張容積は、パネル内に配置された全ての膨張黒鉛の量に基づいて算出される。
【0029】
膨張黒鉛としては、膨張開始温度及び単位質量当たりの膨張容積(膨張倍率)が異なる複数種が有り、単位質量当たりの膨張容積の高い膨張黒鉛を用いた方が、膨張黒鉛の必要量が少なく経済的に好ましいが、一般的には単位質量当たりの膨張容積の高い膨張黒鉛は膨張開始温度が高い。膨張黒鉛の最も低い膨張開始温度が120℃程度であるのに対し、ポリスチレン系発泡体等の熱可塑性樹脂は100℃程度から軟化が始まるため、熱膨張開始温度の低い膨張黒鉛を用いることが好ましいが、コスト的には不利である。よって、本発明においては、膨張開始温度の低い膨張黒鉛と高い膨張黒鉛とを組み合わせて用いても良い。
【0030】
本発明において、熱可塑性樹脂発泡板10の表面に形成される凹凸11の凹部12の断面形状としては、図1に示した矩形の他に、図3に示す半円形であってもよい。尚、図3中、(a)は本発明の他の実施形態の構成を模式的に示す厚さ方向の断面図であり、(b)は(a)中の破線で囲まれた領域Cの部分拡大図である。凹部12は熱可塑性樹脂発泡板10の平坦な表面に、スロットカッターによる切削や、面木、金属棒などを押し付けることで形成することができる。
【0031】
本実施形態に係る凹凸11の寸法としては、凹部12内に充填剤、或いは樹脂フィルム52で包含された膨張黒鉛を充填する上で、凹部12の最小幅W1は1mmを超え、熱硬化性樹脂発泡板20との良好な接着性が得られる点で凸部13の最小幅W2は1mmを超える。尚、凸部13の最小幅、凹部12の最小幅とは、凸部13の熱硬化性樹脂発泡板20側の表面、凹部12の開口部、のそれぞれの最短距離である。また、凹部12の深さD(図3の場合には最深部の深さ)は、十分な量の充填剤部51を充填する上で、1mm以上が好ましい。凹凸11は、図1に示すように同じ幅の凹部12が一定間隔で平行に配列するストライプ状が好ましく、この場合の凹部12の最小幅は凹部12の開口部の幅であり、凸部13の最小幅は、凸部13の表面の幅である。尚、凸部13の表面は平坦である。また、凹凸11は、一方が格子状で他方がドット状である形態であってもよく、この場合、格子状部位の平行な2本に挟まれたドット状部位の幅が凸部13の最小幅である。図4は、凹部12を格子状とした場合の、熱可塑性樹脂発泡板10の平面模式図である。また、接着性の観点から、凹部12の内部表面が例えばねじ状の凹凸形状を呈していた方が、エンボス効果が得られるためより好ましい。
【0032】
本発明に用いられる金属表面材40としては、従来の断熱パネルに表面材として用いられている金属板が好ましく用いられ、表面に樹脂塗装されたものも好ましく用いられる。例えば、ポリエステル樹脂系塗装ガルバリウム鋼板(登録商標)などが好ましく用いられ、厚さは0.1mm~3.0mmである。
【0033】
本発明において、図2(b)に示す、膨張黒鉛を包含する樹脂フィルム52としては、熱可塑性樹脂発泡板10と同様又はそれ以下の軟化温度を有する樹脂が好ましく、ポリスチレン又はポリエチレン等の熱可塑性樹脂からなるフィルムが好ましく用いられる。
【0034】
図1の実施形態においては、熱可塑性樹脂発泡板10の表面に凹凸11を設けた構成を示したが、本発明においては、係る構成に限定されず、熱硬化性樹脂発泡板20の表面に凹凸を設けても良く、また、図5(a)に示すように、接着層31を挟んで両側に凹凸11,21を設けても良い。図5(a)中、22は凹部、23は凸部である。尚、熱可塑性樹脂発泡板であれば、切削で容易に所望の寸法の凹凸を形成することができるため、熱可塑性樹脂発泡板10に凹凸を設ける構成が好ましい。
【0035】
また、図1の実施形態においては、熱可塑性樹脂発泡板10の一方の表面にのみ熱硬化性樹脂発泡板20を接着した2層構成の断熱層を示したが、本発明においては、図5(b)に示すように、熱可塑性樹脂発泡板10の両面に熱硬化性樹脂発泡板20,25を接着しても良い。熱可塑性樹脂発泡板10の両面に熱硬化性樹脂発泡板20,25を接着した場合、図5(c)に示すように、熱可塑性樹脂発泡板10の両面に凹凸11を設けても良く、また、熱硬化性樹脂発泡板20,25側に凹凸を設けても、発泡板20,25の両方に凹凸を設けても、いずれでも良い。
【0036】
また、上記実施形態においては、熱可塑性樹脂発泡板10と熱硬化性樹脂発泡板20とを接着層31を介して積層した形態について説明したが、本発明においては、接着層を介さずに、直接熱可塑性樹脂発泡板と熱硬化性樹脂発泡板とを積層し、積層端部において金属表面材の端部の折返しや、別途用意した金物で積層体を固定する形態であってもよい。係る形態の場合、凹部に少なくとも膨張黒鉛からなる充填剤を充填できればよく、凹部の最小幅を1mm超とすれば、凸部の最小幅については限定されない。また、膨張黒鉛をバインダー材や熱可塑性樹脂と混合する場合には、凹部への充填が効率よく行える範囲で、膨張黒鉛の含有量をできるだけ高くすることが好ましい。
尚、本発明において、図5(b)、(c)に例示したように、熱可塑性樹脂発泡板10の両面に熱硬化性樹脂発泡板20,25を積層する場合、二つある積層面の一方は接着層を介在させ、他方は介在させない形態であっても良い。
【0037】
本発明のパネルは、断熱性の高い熱硬化性樹脂発泡板と、より安価な熱可塑性樹脂発泡板とを組み合わせることで、適度な不燃性と価格とを実現するものである。よって、所望の断熱層の厚さの50%以上を熱可塑性樹脂発泡板で構成することが好ましい。
【0038】
本発明のパネルは、ISO5660に準拠したコーンカロリーメーターによる発熱性試験において、以下の(a)乃至(c)を満たす不燃性が得られる。
(a)加熱開始後、20分間の総発熱量が8MJ/m2以下である。
(b)加熱開始後、20分間、防火上有害な裏面まで貫通する亀裂及び穴がない。
(c)加熱開始後、20分間、最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えない。
【0039】
尚、本発明のパネルは、上記(b)の評価が、熱可塑性樹脂発泡板部分についても満たされている。熱可塑性樹脂発泡板の両面に熱硬化性樹脂発泡板を接着した場合、上記発熱性試験で熱硬化性樹脂発泡板の裏面まで貫通する亀裂や穴が生じていなくても、熱可塑性樹脂発泡板が熱溶融して体積変動を生じると、パネル自体の形状保持ができなくなる。本発明においては、熱可塑性樹脂発泡板の体積変動を膨張黒鉛が膨張して補填するため、実質的に熱可塑性樹脂発泡板部分の体積が維持され、パネルの形状が保持される。
【0040】
上記発熱性試験において、本発明のパネルは、熱硬化性樹脂発泡板20側をコーンヒーターに向けて配置する。図5(b)のように、熱可塑性樹脂発泡板10の両面に熱硬化性樹脂発泡板20,25が積層されている場合には、凹凸11が形成されて膨張黒鉛が配置された側をコーンヒーターに向けて配置する。また、図5(c)のように、積層面の両方に凹凸11,11が設けられて膨張黒鉛が配置されている場合には、いずれをコーンヒーターに向けて配置してもよい。図5(c)の場合には、熱可塑性樹脂発泡板10の両面に配置された膨張黒鉛によって、熱可塑性樹脂発泡板10の熱溶融による体積変動が補填され、形状が維持される。
【実施例0041】
本実施例、比較例で使用した部材は以下の通りである。
〔断熱板〕
XPS:厚さが20mm、30mm、40mm、55mm、65mm、80mm、90mmの7種類の、JIS A 9521に規定される押出法ポリスチレンフォーム断熱材(密度:35kg/m3、圧縮強度:25N/cm2
PIR:厚さが10mm、20mm、30mmの3種類の、ポリイソシアヌレートフォーム(密度:31kg/m3
【0042】
〔金属表面材〕
厚さが0.5mmのポリエステル樹脂系塗装ガルバリウム鋼板(登録商標)(JIS G 3322)
【0043】
〔接着剤〕
2液型ウレタン樹脂系接着剤(コニシ株式会社製「KU554/KU硬化剤No.2」)
【0044】
〔膨張黒鉛(EG)〕
膨張黒鉛A:伊藤黒鉛工業株式会社製「953240L」、単位質量当たりの膨張容積360cc/g、膨張開始温度160℃
膨張黒鉛B:富士黒鉛工業株式会社製「EXP50S120N」、単位質量当たりの膨張容積240cc/g、膨張開始温度120℃
下記表1~3中のEG理論膨張容積V1は、各例で使用した膨張黒鉛の単位質量当たりの膨張容積に、使用した膨張黒鉛の全使用量(質量)を乗じることにより、算出される。
【0045】
(実施例1)
厚さ40mmのXPSの一方の表面にスロットカッターを用いて断面形状が方形の凹凸を形成し、膨張黒鉛に接着剤を混合した膨張黒鉛含有接着剤を、上記凹凸を設けた側のXPSの表面全体に塗布し、PIRをのせてプレス圧をかけて貼付した。PIR表面及び凹凸を設けていない側のXPS表面にも同じ接着剤を200g/m2塗布し、金属表面材をのせてプレス圧をかけて貼付し、パネルを作製した。凹凸は同じ幅の凹部が一定間隔で平行に並ぶストライプ状とした。
【0046】
(実施例2、3)
表1に示すように、XPSの厚さ、PIRの厚さ、凹部の深さ、膨張黒鉛含有接着剤の使用量を変えて、実施例1と同様にして、パネルを作製した。
【0047】
(実施例4)
表1に示すように、2枚のPIRでXPSを挟んだ構成とし、XPSの一方の表面に凹凸を形成して、実施例2と同様に膨張黒鉛含有接着剤を塗布してパネルを作製した。XPSの凹凸を形成していない他方の面とPIRとは接着剤を300g/m2塗布して接着した。
【0048】
(実施例5)
表1に示すように、凹部及び凸部の幅と凹部の深さを変えた凹凸をXPSの両面に形成した以外は、実施例4と同様にしてパネルを作製した。膨張黒鉛含有接着剤の全使用量は実施例4と同じである。
【0049】
(実施例6~10)
表1、表2に示すように、XPSの厚さ、PIRの厚さ、凹部の深さ、膨張黒鉛含有接着剤の使用量を変えた以外は、実施例1と同様にして、パネルを作製した。
【0050】
(実施例11)
表2に示すように、凹部には膨張黒鉛含有接着剤を充填し、接着層は接着剤のみで形成した以外は、実施例1と同様にして、パネルを作製した。
【0051】
(実施例12)
表2に示すように、凹部には膨張黒鉛のみを充填し、接着層は接着剤のみで形成した以外は、実施例1と同様にして、パネルを作製した。
【0052】
(比較例1~6)
表3に示すように、凹凸を形成せず、XPSとPIRとを接着する接着層として接着剤を300g/m2塗布した以外は、実施例1、2,4,6,8,9と同様にして、パネルを作製した。尚、PIRを2枚用いる比較例3においては、XPSの両面の接着層それぞれにおいて、接着剤を300g/m2塗布した。
【0053】
(比較例7)
表3に示すように、凹凸を形成せず、膨張黒鉛含有接着剤で接着層を形成した以外は、実施例1と同様にして、パネルを作製した。
【0054】
(比較例8)
表3に示すように、凹部及び凸部の幅を変えた凹凸を形成した以外は、実施例1と同様にして、パネルを作製した。
【0055】
(参考例1)
表3に示すように、XPSの厚さ、PIRの厚さ、凹部の深さ、膨張黒鉛含有接着剤の使用量を変えた以外は、実施例1と同様にして、パネルを作製した。
【0056】
(試験方法)
〔発熱性試験〕
上記実施例1~12、比較例1~8、参考例1の各パネルについて、ISO5660に準拠したコーンカロリーメーターによる発熱性試験を行った。尚、試験の際には、PIR側がコーンヒーター側になるように、PIRが2枚の場合にはXPSに凹凸を設けた側がコーンヒーター側になるようにパネルを配置した。実施例5、比較例3については、いずれの面も同じである。尚、金属表面材を貼付する際に、通常のプレス圧をかけて接着剤又は膨張黒鉛含有接着剤のはみ出しが生じたパネルについては、はみ出しがないようにして再度作製したパネルを用いて試験を行った。評価基準は以下の通りである。結果を表1~表3に示す。
【0057】
総発熱量(THR):加熱開始後、20分間の総発熱量が8MJ/m2以下を合格、8MJ/m2を超えた場合を不合格とする。
形状保持:加熱開始後、20分間の金属表面材の落下距離が10mm以下で、「加熱開始後、20分間、防火上有害な裏面まで貫通する亀裂や穴がない。」の要件を満たしている場合を合格とする。20分間の金属表面材の落下距離が10mm、或いは、加熱開始後、20分間、防火上有害な裏面まで貫通する亀裂や穴がある、の少なくとも一方が認められる場合は不合格とする。
最高発熱速度:加熱開始後、20分間、最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2以下のものを合格、200kW/m2を超えたものを不合格とする。
【0058】
〔端部からのはみ出し〕
上記実施例1~12、比較例1~8、参考例1の各パネルの製造時、金属表面材を貼付する際に、通常のプレス圧をかけて、接着剤又は膨張黒鉛含有接着剤のはみ出しの有無を確認した。評価基準は以下の通りである。結果を表1、表2に示す。
〇:はみ出しが無かった。
×:はみ出しが有った。
【0059】
〔接着強さ〕
上記実施例1~12、比較例1~8、参考例1の各パネルについて、ASTM D 1623に従って、XPSとPIRとの接着強さを測定した。尚、XPSとPIRとを接着する際に、通常のプレス圧をかけて接着剤又は膨張黒鉛含有接着剤のはみ出しが生じたパネルについては、はみ出しがないようにして再度作製したパネルを用いて接着強さを測定した。評価基準は以下の通りである。結果を表1~表3に示す。
〇:接着強さが30N/cm2以上
×:接着強さが30N/cm2未満
【0060】
表1~表3中、PIR,XPSに続く数値は厚さ(mm)である。例えば、「PIR10/XPS40」は、厚さ10mmのPIRと厚さ40mmのXPSとの積層体を意味する。凹部の充填剤部と接着層とが、同じ膨張黒鉛含有接着剤で形成されている場合には、接着剤、EG、接着剤+EGの欄は、凹部と接着層とを区別せず、凹部と接着層とを合わせた数値を示し、EG濃度の欄には、膨張黒鉛含有接着剤における膨張黒鉛の濃度を示した。
【0061】
実施例5については、XPSの両面に凹凸が形成されており、XPSの両面において同じ構成が取られている。表1中の接着剤、EG、接着剤+EGの欄の数値は、両面を合わせた数値であり、EG濃度は両面について共通する数値である。
【0062】
また、XPSの体積に対して凹部の容積は非常に小さく、実質的に無視できるため、XPSの体積は凹凸の有無に関わらず、厚さで決定されるものとした。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
表1~表3から明らかなように、実施例のパネルはいずれもXPSが熱溶融して生じた空隙が膨張黒鉛によって補填されることで良好な不燃性が示され、接着性も良好であったが、膨張黒鉛を配置していない比較例1~6のパネルはいずれもXPSが熱溶融して生じた空隙によって形状保持ができなかった。また、凹凸を形成しなかった比較例7のパネル、及び、凹凸を形成していても、凸部幅及び凹部幅が狭い比較例8のパネルにおいては、接着の際に十分な圧力をかけると膨張黒鉛含有接着剤のはみ出しが生じ、はみ出さないように接着した場合には、発熱性試験では良好な結果が得られるものの、接着力に劣るものとなった。
【符号の説明】
【0067】
10:熱可塑性樹脂発泡板、11,21:凹凸、12,22:凹部、13,23:凸部、20,25:熱硬化性樹脂発泡板、31~34:接着層、40:金属表面材、51、61:充填剤部、52:樹脂フィルム
図1
図2
図3
図4
図5