(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045552
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】車輪駆動装置、車両及び車輪駆動装置の給脂方法
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20240326BHJP
B60K 17/14 20060101ALI20240326BHJP
B60B 19/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
F16H57/04 E
B60K17/14
B60B19/00 H
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024020934
(22)【出願日】2024-02-15
(62)【分割の表示】P 2020056747の分割
【原出願日】2020-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】阿部 瞬
(72)【発明者】
【氏名】為永 淳
(57)【要約】
【課題】給脂時に良好な作業性を得られる技術を提供することにある。
【解決手段】駆動源と、駆動源から入力される動力を減速して出力する減速機18と、を備え、減速機18の出力によりホイール20を駆動する車輪駆動装置であって、減速機18は、給脂孔62及び排脂孔64を備え、車輪駆動装置14は、減速機18を車体12に取り付けた状態のまま、給脂孔62及び排脂孔64を通して潤滑剤54の給排脂を行うことができるように構成される。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と、
前記駆動源から入力される動力を減速して出力する減速機と、を備え、
前記減速機の出力によりホイールを駆動する車輪駆動装置であって、
前記減速機は、給脂孔及び排脂孔を備え、
本車輪駆動装置は、前記減速機を車体に取り付けた状態のまま、前記給脂孔及び前記排脂孔を通して潤滑剤の給排脂を行うことができるように構成される車輪駆動装置。
【請求項2】
前記減速機は、
前記駆動源から入力される動力を減速する減速部と、
前記減速部に対して軸方向側部に配置され、通脂孔が設けられる内部部材と、
前記内部部材を覆い、前記給脂孔が設けられるカバーと、を備え、
前記給脂孔と前記通脂孔の少なくとも一部は、前記カバーと前記内部部材を相対回転させることで軸方向に重なるように設けられる請求項1に記載の車輪駆動装置。
【請求項3】
前記カバー及び前記内部部材のうちの一方を一方部材とし、他方を他方部材というとき、
前記一方部材は、前記他方部材に向けて突出する突出部を備え、
前記突出部には、前記給脂孔及び前記通脂孔のうち前記一方部材に設けられる孔の一部が設けられる請求項2に記載の車輪駆動装置。
【請求項4】
前記減速機は、
前記減速部を支持するキャリアと、
前記キャリアに対して相対回転可能なケースと、を備え、
前記カバーは、前記ケースと一体化され、
前記キャリアは、前記内部部材を構成する請求項2または3に記載の車輪駆動装置。
【請求項5】
前記カバーは、前記キャリアを軸方向外側から覆い、
前記給脂孔は、前記カバーを軸方向に貫通し、
前記通脂孔は、前記キャリアを軸方向に貫通する請求項4に記載の車輪駆動装置。
【請求項6】
前記ホイールは、前記ケースと一体回転可能に前記ケースに連結され、
前記ホイールと前記カバーと前記ケースは、前記ホイールと前記ケースとの間に前記カバーを挟んだ状態で軸方向に連結される請求項4または5に記載の車輪駆動装置。
【請求項7】
前記減速機は、
前記駆動源から入力される動力を減速する減速部と、
前記減速部に対して軸方向側部に配置され、通脂孔が設けられる内部部材と、
前記内部部材を覆い、前記排脂孔が設けられるカバーと、を備え、
前記排脂孔と前記通脂孔の少なくとも一部は、前記カバーと前記内部部材を相対回転させることで軸方向に重なるように設けられる請求項1から6のいずれか1項に記載の車輪駆動装置。
【請求項8】
前記ホイールは、メカナムホイールである請求項1から7のいずれか1項に記載の車輪駆動装置。
【請求項9】
車輪駆動装置の給脂方法であって、
前記車輪駆動装置は、
駆動源と、
前記駆動源から入力される動力を減速して出力する減速機と、を備え、
前記減速機の出力によりホイールを駆動し、
前記減速機は、
前記駆動源から入力される動力を減速する減速部と、
前記減速部に対して軸方向側部に配置され、通脂孔が設けられる内部部材と、
前記内部部材を覆い、給脂孔が設けられたカバーと、を備え、
本給脂方法は、前記カバーと前記内部部材を相対回転させることで、前記給脂孔と前記通脂孔の位相を合わせた状態で、前記給脂孔及び前記通脂孔を通して給脂する給脂方法。
【請求項10】
前記給脂孔及び前記通脂孔の内側に筒状ガイドを配置した状態で、前記給脂孔及び前記通脂孔を通して給脂する請求項9に記載の給脂方法。
【請求項11】
前記内部部材には複数の前記通脂孔が設けられ、
前記カバーには排脂孔が設けられ、
本給脂方法は、前記カバーと前記内部部材を相対回転させることで、前記給脂孔と前記通脂孔の位相を合わせ、かつ、前記排脂孔と他の前記通脂孔の位相を合わせた状態で、前記給脂孔及び前記通脂孔を通して給脂するとともに、他の前記通脂孔及び前記排脂孔を通して排脂する請求項9または10に記載の給脂方法。
【請求項12】
車体と、
前記車体に搭載される複数の車輪駆動装置と、を備える車両であって、
前記車輪駆動装置は、
駆動源と、
前記駆動源から入力される動力を減速して出力する減速機と、
前記減速機の出力により回転するホイールと、を備え、
前記減速機は、
給脂孔と、
前記ホイールとともに回転する回転体と、を備え、
前記車輪駆動装置は、前記回転体の位相を変更することによって、前記給脂孔を用いた給脂に適当な給脂適当状態と、前記給脂孔を用いた給脂に不適な給脂不適状態との間で状態を変更可能であり、
本車両は、いずれかの前記車輪駆動装置が前記給脂適当状態にあるとき、他の前記車輪駆動装置も前記給脂適当状態となるように構成される車両。
【請求項13】
前記減速機は、
前記駆動源から入力される動力を減速する減速部と、
前記減速部に対して軸方向側部に配置され、通脂孔が設けられる内部部材と、
前記内部部材を覆い、前記給脂孔が設けられたカバーと、を備え、
前記給脂適当状態は、前記給脂孔と前記通脂孔の少なくとも一部が軸方向に重なる位置に配置される状態であり、
前記給脂不適状態は、前記給脂孔と前記通脂孔が軸方向に重なる位置に配置されない状態である請求項12に記載の車両。
【請求項14】
前記減速機は、
前記駆動源から入力される動力を減速する減速部と、
前記減速部に対して軸方向側部に配置され、通脂孔が設けられる内部部材と、
前記内部部材を覆い、前記給脂孔が設けられるカバーと、
前記回転体を回転可能に支持する固定体と、を備え、
前記カバー及び前記内部部材の一方は、前記固定体を構成する固定部材であり、
複数の前記車輪駆動装置は、前記通脂孔及び前記給脂孔のうち前記固定部材に設けられる孔の位相が揃えられている請求項12または13に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ホイールを駆動する車輪駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送台車等のホイールを駆動する車輪駆動装置が知られる。特許文献1は、駆動源と、駆動源から入力される動力を減速して出力する減速機と、減速機の出力により回転するホイールとを備える車輪駆動装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
減速機内に潤滑剤を給脂する場合がある。特許文献1の開示技術は、給脂時の作業性との関係で、特段の工夫を講じていない。本願発明者は、このような観点から、特許文献1の開示技術に関して改良の余地があるとの認識を得た。
【0005】
本開示の目的の1つは、給脂時に良好な作業性を得られる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の課題を解決するための本開示のある態様は車輪駆動装置である。これは、駆動源と、前記駆動源から入力される動力を減速して出力する減速機と、を備え、前記減速機の出力によりホイールを駆動する車輪駆動装置であって、前記減速機は、給脂孔及び排脂孔を備え、本車輪駆動装置は、前記減速機を車体に取り付けた状態のまま、前記給脂孔及び前記排脂孔を通して潤滑剤の給排脂を行うことができるように構成される。
【0007】
本開示の他の態様は、車輪駆動装置の給脂方法である。これは、前記車輪駆動装置は、駆動源と、前記駆動源から入力される動力を減速して出力する減速機と、を備え、前記減速機の出力によりホイールを駆動し、前記減速機は、前記駆動源から入力される動力を減速する減速部と、前記減速部に対して軸方向側部に配置され、通脂孔が設けられる内部部材と、前記内部部材を覆い、給脂孔が設けられたカバーと、を備え、本給脂方法は、前記カバーと前記内部部材を相対回転させることで、前記給脂孔と前記通脂孔の位相を合わせた状態で、前記給脂孔及び前記通脂孔を通して給脂する方法である。
【0008】
本開示の他の態様は車両である。これは、車体と、前記車体に搭載される複数の車輪駆動装置とを備える車両であって、前記車輪駆動装置は、駆動源と、前記駆動源から入力される動力を減速して出力する減速機と、を備え、前記減速機の出力によりホイールを駆動し、前記減速機は、給脂孔と、前記ホイールとともに回転する回転体と、を備え、前記車輪駆動装置は、前記回転体の位相を変更することによって、前記給脂孔を用いた給脂に適当な給脂適当状態と、前記給脂孔を用いた給脂に不適な給脂不適状態との間で状態を変更可能であり、本車両は、いずれかの前記車輪駆動装置が前記給脂適当状態にあるとき、他の前記車輪駆動装置も前記給脂適当状態となるように構成される。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、給脂時に良好な作業性を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】
図3の矢視Aから見た車輪駆動装置の一部を見た図である。
【
図5】
図4と同じ視点から車輪駆動装置の一部を見た他の図である。
【
図6】減速機内に給脂する前の状態を示す図である。
【
図7】減速機内に給脂している途中の状態を示す図である。
【
図8】各車輪駆動装置の位相を示す模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態を説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面では、説明の便宜のため、適宜、構成要素を省略、拡大、縮小する。図面は符号の向きに合わせて見るものとする。本明細書での「固定」、「取り付け」とは、特に明示がない限り、言及する条件を二者が直接的に満たす場合の他に、他の部材を介して満たす場合も含む。
【0012】
図1を参照する。車両10は、車体12と、車体12に搭載される複数の車輪駆動装置14とを備える。車輪駆動装置14は、駆動源16により駆動されるホイール20を備える。本実施形態の車両10は、複数の車輪駆動装置14それぞれのホイール20が個別の駆動源16により駆動される全輪駆動車である。本実施形態の車両10は搬送台車である。搬送台車は、AGV等の無人搬送台車でもよいし、作業者の操作により走行する有人搬送台車でもよい。
【0013】
図2を参照する。以下、ホイール20の回転中心線CL1に沿った方向を車輪駆動装置14の軸方向Xという。この回転中心線CL1を中心とする円の円周方向、半径方向に関して、車輪駆動装置14の「周方向」、「径方向」という。
【0014】
車輪駆動装置14は、駆動源16と、駆動源16から入力される動力、すなわち回転を減速して出力する減速機18と、減速機18の出力により回転するホイール20とを備える。本実施形態の駆動源16はモータである。駆動源16の具体例は特に限定されない。駆動源16は、この他にも、例えば、ギヤモータ、エンジン等でもよい。
【0015】
減速機18は、駆動源16を支持する基部22を備える。基部22は、軸方向Xに延びる筒状部材である。基部22は、車体12に着脱可能に固定される。基部22には、駆動源16の本体部16aが取り付けられる。
【0016】
減速機18は、入力軸24と、入力軸24を介して駆動源16から動力が入力される減速部26とを備える。減速機18は、減速部26を支持するキャリア28A、28Bと、キャリア28A、28Bに対して相対回転可能なケース30と、キャリア28A、28Bとケース30との間に配置される主軸受32A、32Bと、を備える。
【0017】
入力軸24は、駆動源16の出力軸14bから動力を伝達可能に出力軸14bに接続される。入力軸24は、ケース30及び基部22の内側に配置される。
【0018】
減速部26は、駆動源16から入力される動力を減速し、その動力をキャリア28A、28Bまたはケース30に伝達する。この動力の伝達先は、後述する回転体38を構成し、本実施形態ではケース30である。本実施形態の減速機18は遊星歯車型減速機であり、減速部26は、ケース30の内周部に設けられる内歯歯車34と噛み合う遊星歯車である。
【0019】
ケース30は軸方向Xに延びる円筒状部材である。ケース30の内側には減速部26及びキャリア28A、28Bが配置される。
【0020】
キャリア28A、28Bは、減速部26に対して軸方向側部に配置される。キャリア28A、28Bは、ボルト等の締結部材B1によって、基部22の反車体側端部に固定される。本実施形態のキャリア28A、28Bは、減速部26に対して車体側に配置される第1キャリア28Aと、減速部26に対して反車体側に配置される第2キャリア28Bとを含む。第1キャリア28Aと第2キャリア28Bはキャリアピン等の連結体36によって連結される。連結体36は、第1キャリア28A及び第2キャリア28Bの一方の一部として一体成形されてもよいし、これらとは別体でもよい。
【0021】
主軸受32A、32Bは、アンギュラ玉軸受、円錐コロ軸受等の転がり軸受である。主軸受32A、32Bは、ケース30と第1キャリア28Aとの間に配置される第1主軸受32Aと、ケース30と第2キャリア28Bとの間に配置される第2主軸受32Bとを含む。
【0022】
以上の減速機18は、ホイール20とともに回転する回転体38と、主軸受32A、32Bを介して、回転体38を回転可能に支持する固定体40と、を備える。本実施形態の回転体38は、ケース30とカバー50(後述する)によって構成される。本実施形態の固定体40は、キャリア28A、28Bと基部22によって構成され、車体12に固定される。
【0023】
ホイール20は、回転体38とともに回転することで走行面を走行可能である。走行面は、例えば、床面、レール等である。本実施形態のホイール20の内側には、ケース30の他に、減速部26が配置される。
【0024】
ホイール20は、ホイール本体42と、ホイール本体42に取り付けられる接地部材44とを備える。本実施形態のホイール20はメカナムホイールである。ホイール本体42は筒状部材である。接地部材44は走行面に接地する。本実施形態の接地部材44は、メカナムホイールを構成する複数の樽状のローラである。ローラは、ホイール20の回転中心線CL1に対して傾斜した回転軸線を中心として回転可能にホイール本体42に取り付けられる。この他に、ホイール20は、ホイール本体42の反車体側側面に開口するホイール孔46を備える。
【0025】
ホイール20は、ケース30及びキャリア28A、28Bの一方に固定される。この「一方」は、回転体38を構成する要素であり、本実施形態ではケース30である。これを実現するうえで、ホイール20のホイール本体42は、ボルト等の締結部材B2によって、ケース30と一体回転可能にケース30に連結される。
【0026】
以上の車輪駆動装置14の動作を説明する。駆動源16から減速部26に回転が入力される。減速部26に入力された回転は、減速部26で減速されて回転体38に伝達される。回転体38がホイール20とともに回転することで、走行面上をホイール20が走行する。
【0027】
ここで、減速機18は、減速部26に対して軸方向側部に配置される内部部材48を備える。本実施形態の内部部材48は、第2キャリア28Bによって構成される。内部部材48は、第2キャリア28Bと同様、減速部26に対して軸方向Xの反車体側に配置される。内部部材48は、軸方向中央部に設けられる中央孔48aを備える。
【0028】
減速機18は、内部部材48を軸方向外側から覆うカバー50を備える。カバー50は、内部部材48を軸方向Xの反車体側から覆う。カバー50は、円板状をなす。カバー50は、ボルト等の締結部材B3によって、ケース30に一体化される。ホイール20とカバー50とケース30は、ホイール20とケース30との間にカバー50を挟んだ状態で、締結部材B2によって、軸方向Xに連結される。これにより、ホイール20とケース30によって、カバー50をしっかりとケース30に固定できる。
【0029】
図2、
図3を参照する。
図3は、
図2とはホイール20及び回転体38の位相が異なる状態を示す。
図3では、静止状態にある潤滑剤54の上面のレベルL1を示す。減速機18は、減速部26を収納する収納空間52を封止することで、潤滑剤54が封入される封入空間56を形成する複数のシール要素58A、58Bを備える。本実施形態の潤滑剤54は半固体状のグリースであるが、潤滑油等でもよい。潤滑剤54は、減速部26と内歯歯車34の噛み合い箇所の潤滑の他、主軸受32A、32Bの潤滑に用いられる。シール要素58A、58Bは、減速機18の基部22と入力軸24との間をシールする第1シール要素58Aと、第1キャリア28Aとケース30との間をシールする第2シール要素58Bと、内部部材48に対して軸方向外側に配置される第3シール要素としてのカバー50とを備える。
【0030】
封入空間56は、減速部26を収納する収納空間52と、内部部材48とカバー50との間に設けられる軸方向隙間60とを含む。収納空間52は、ケース30の径方向内側であって、一対のキャリア28A、28Bに挟まれた箇所に形成される。
【0031】
図3、
図4を参照する。
図4では、後述する栓部材66A、66Bを省略する。減速機18は、潤滑剤54の給脂に用いられる給脂孔62と、潤滑剤54の排脂に用いられる排脂孔64とを備える。給脂孔62及び排脂孔64は、カバー50に設けられ、カバー50を軸方向Xに貫通する。給脂孔62及び排脂孔64は、内部部材48と軸方向Xに重なる位置に設けられる。排脂孔64と給脂孔62の少なくとも一部は、軸方向Xから見て、回転中心線CL1を挟んで対称の位置に設けられる。本実施形態の給脂孔62及び排脂孔64は、軸方向Xから見たとき、ホイール孔46を通して外部から視認可能な位置に設けられる。
【0032】
減速機18は、給脂孔62を塞ぐ第1栓部材66Aと、排脂孔64を塞ぐ第2栓部材66Bとを備える。第1栓部材66A及び第2栓部材66Bは、ねじ構造等を介して、給脂孔62及び排脂孔64のそれぞれに着脱可能に取り付けられる。
【0033】
減速機18は、内部部材48に設けられる複数(本実施形態では二つ)の通脂孔68を備える。本実施形態において、複数の通脂孔68は、内部部材48の中央孔48aとは別に設けられる。複数の通脂孔68は、内部部材48を構成する第2キャリア28Bを軸方向に貫通している。本実施形態の複数の通脂孔68は、軸方向Xから見て、回転中心線CL1に対して上下両側に設けられる。本実施形態の複数の通脂孔68それぞれの少なくとも一部は、軸方向Xから見て、回転中心線CL1を挟んで対称の位置に設けられる。
【0034】
図4、
図5を参照する。
図5は、
図4の状態から、カバー50(回転体38)の位相を時計回りに90°変化させた状態を示す図である。給脂孔62と通脂孔68の少なくとも一部は、カバー50と内部部材48を相対回転させることで軸方向Xに重なるように設けられる。これは、カバー50と内部部材48のうち回転体38を構成する要素(本実施形態ではカバー50)を回転させることで実現できる。本実施形態では、給脂孔62の中心軸線CL2と通脂孔68が軸方向Xに重なるように設けられる。また、排脂孔64と他の通脂孔68の少なくとも一部も、カバー50と内部部材48を相対回転させることで軸方向に重なるように設けられる。本実施形態では、排脂孔64の中心軸線CL3と他の通脂孔68が軸方向Xに重なるように設けられる。本実施形態においては、給脂孔62と通脂孔68が軸方向に重なる状態にあるとき、排脂孔64と他の通脂孔68も軸方向に重なるように各孔が配置されている。
【0035】
図6、
図7を参照する。通脂孔68は、給脂孔62と協働して、外部から収納空間52に直接に潤滑剤54を給脂するために用いられる。また、通脂孔68は、排脂孔64と協働して、収納空間52から外部に直接に潤滑剤54を排脂するために用いられる。
【0036】
車輪駆動装置14は、減速機18を車体12に取り付けた状態のまま、給脂孔62及び排脂孔64を通して潤滑剤54の給排脂を行うことができるように構成される。これは、車体12から減速機18を分離することなく、潤滑剤54の給排脂を行うことができることを意味している。言い換えると、車体12によって減速機18を支持した状態のまま、潤滑剤54の給排脂を行うことができるともいえる。ここでの「潤滑剤54の給排脂を行う」とは、給脂孔62を通して新しい潤滑剤54を減速機18内に給脂しつつ、排脂孔64を通して古い潤滑剤54を減速機18から排脂することをいう。
【0037】
以上の車輪駆動装置14を用いた潤滑剤54の給脂方法を説明する。ここでは、この給脂方法を用いて、減速機18内の古い潤滑剤54を新しい潤滑剤54に入れ替える場合を説明する。
【0038】
図6を参照する。まず、車輪駆動装置14の動作を停止させる。この状態で、カバー50と内部部材48を相対回転させることで、カバー50の給脂孔62と内部部材48の通脂孔68との位相(周方向位置)を合わせる位相合わせ工程を行う。つまり、回転体38(カバー50)の位相を変更することによって、給脂孔62と通脂孔68の位相を合わせる。このとき、給脂孔62と通脂孔68の少なくとも一部が軸方向Xに重なるように、回転体38の位相を変更する。本実施形態では、この位相合わせ工程を行うことで、カバー50の排脂孔64と内部部材48の他の通脂孔68との位相も合わせられる。このとき、排脂孔64と他の通脂孔68の少なくとも一部が軸方向Xに重なるように、回転体38の位相を変更することになる。本実施形態では、軸方向Xから見て、回転中心線CL1に対して上下両側に給脂孔62と排脂孔64を配置するように、回転体38の位相を変更する。このとき、給脂孔62を下側に配置し、排脂孔64を上側に配置する。
【0039】
位相合わせ工程は、例えば、走行面上にホイール20を配置した状態のまま、モータを駆動して、回転体38とともにホイール20を回転させることで行われる。つまり、位相合わせ工程は、この例でいえば、走行面上でホイール20を走行させることで行われる。なお、ホイール20を走行面から離した状態で、例えば、手作業によりホイール20を回転させてもよい。
【0040】
次に、給脂孔62と通脂孔68の位相を合わせた状態で、給脂孔62及び通脂孔68を通して減速機18に給脂する給脂工程を行う。本実施形態では、給脂孔62と通脂孔68の位相を合わせ、かつ、排脂孔64と他の通脂孔68との位相を合わせた状態で、減速機18に給脂する。
【0041】
給脂工程に先だって、給脂孔62及び排脂孔64から栓部材66A、66Bを取り外しておく。また、給脂工程に先立って、減速機18の外部に配置した給脂配管70を給脂孔62に接続し、減速機18の外部に配置した排脂配管72を排脂孔64に接続しておく。この状態で、ポンプを用いて加圧した状態の新しい潤滑剤54を給脂配管70及び給脂孔62を通して給脂する。
【0042】
これにより、
図7に示すように、給脂孔62及び通脂孔68を通して、減速機18内に新しい潤滑剤54が供給される(矢印D1参照)。減速機18内の古い潤滑剤54は、新しい潤滑剤54によって押し流される。収納空間52内の古い潤滑剤54の少なくとも一部は、他の通脂孔68に近づくように新しい潤滑剤54によって押し流される(矢印D2参照)。この結果、古い潤滑剤54の少なくとも一部は、他の通脂孔68及び排脂孔64を通して外部に押し出される(矢印D3参照)。本実施形態では、収納空間52内の古い潤滑剤54が、新しい潤滑剤54によって押し上げられつつ、外部に押し出される。給脂孔62を通して加圧した状態の新しい潤滑剤54を給脂することによって、排脂孔64を通して古い潤滑剤54が排脂されることになる。排脂孔64まで押し出された潤滑剤54は排脂配管72を通して外部タンクに溜められる。
【0043】
給脂工程が完了したら、所要のレベルとなるまで減速機18内の潤滑剤54を排脂孔64を通して排脂する。この後、給脂孔62及び排脂孔64に栓部材66A、66Bを取り付けて、全工程が完了する。
【0044】
以上の位相合わせ工程、給脂工程は、減速機18(本実施形態においては車輪駆動装置14全体)を車体12に取り付けた状態のまま行う。本実施形態では、以上の各工程は、ホイール20を減速機18に固定した状態のまま行う。このとき、ホイール20のホイール孔46の内側が作業空間となる。
【0045】
以上の車輪駆動装置14の効果を説明する。車輪駆動装置14は、減速機18を車体12に取り付けた状態のまま、給脂孔62及び排脂孔64を通して潤滑剤54の給排脂を行えるように構成される。よって、潤滑剤54の給脂時において、減速機18を車体12から取り外す必要がなく、良好な作業性を得られる。また、潤滑剤54の排脂時においても、減速機18を車体12から取り外す必要がなく、良好な作業性を得られる。
【0046】
(A)給脂孔62と通脂孔68の少なくとも一部は、カバー50と内部部材48を相対回転させることで軸方向Xに重なるように設けられる。よって、これらの位相を合わせることで、軸方向隙間60への潤滑剤54の抜けを抑えつつ、収納空間52まで潤滑剤54を給脂できる。ひいては、潤滑剤54を給脂するうえで、作業効率の向上を企図できる。
【0047】
(B)排脂孔64と通脂孔68の少なくとも一部は、カバー50と内部部材48を相対回転させることで軸方向Xに重なるように設けられる。よって、これらの位相を合わせることで、軸方向隙間60への潤滑剤54の抜けを抑えつつ、収納空間52から潤滑剤54を排脂できる。ひいては、潤滑剤54を排脂するうえで、作業効率の向上を企図できる。さらに、本実施形態においては、給脂孔62と通脂孔68の位相を合わせることで、排脂孔64と他の通脂孔68との位相も合うように構成されている。よって、位相合わせ作業が簡素化されるとともに、給排脂を同時に行えるので、作業性が向上する。
【0048】
次に、車両10に関する特徴を説明する。
図4、
図5を参照する。車輪駆動装置14は、回転体38の位相を変更することによって、給脂適当状態S1(
図4参照)と給脂不適状態S2(
図5参照)との間で状態を変更可能である。
【0049】
給脂適当状態S1とは、給脂孔62を用いた給脂に適当な予め定められた状態である。本実施形態の給脂適当状態S1は、
図4のように、給脂孔62と通脂孔68の少なくとも一部が軸方向Xに重なる位置に配置される状態(以下、重なり状態という)をいう。重なり状態にあるとき、前述の通り、給脂孔62を用いて、収納空間52まで直接に給脂し易くなる。
【0050】
給脂不適状態S2とは、給脂孔62を用いた給脂に不適な予め定められた状態である。本実施形態の給脂不適状態S2は、
図5のように、給脂孔62と通脂孔68が軸方向に重ならない位置に配置される状態(以下、非重なり状態という)をいう。この状態にあるとき、給脂孔62を用いて潤滑剤54を供給しても、収納空間52まで直接に給脂し難くなる。
【0051】
図8を参照する。本図では、複数の車輪駆動装置14における内部部材48とカバー50を
図4と同じ視点から見た図を併せて示す。車両10は、いずれかの車輪駆動装置14が給脂適当状態S1にあるとき、他の車輪駆動装置14も給脂適当状態S1となるようように構成される。本実施形態においては、いずれかの車輪駆動装置14の給脂孔62と通脂孔68が重なり状態にあるとき、他の車輪駆動装置14も同様の条件を満たす。
【0052】
このように構成するうえでは、車両10の走行前に、個々の車輪駆動装置14の回転体38の位相に関して、給脂適当状態S1となる位相に予め設定しておく。これは、たとえば、個々の車輪駆動装置14のカバー50に関して、給脂適当状態S1になる位相でケース30に固定することで実現できる。個々の車輪駆動装置14の回転体38の位相に関して、給脂孔62と通脂孔68が重なり状態にあるときの位相に予め設定することになる。
【0053】
本実施形態の車両10は、複数の車輪駆動装置14の間で回転体38の位相差を維持した状態のまま走行するように用いられる。たとえば、車両10の走行前に、複数の車輪駆動装置14の間で回転体38の位相差がゼロの場合、車両10の走行後にも位相差をゼロに維持した状態のままとなる。この場合、車両10の走行前後で、複数の車輪駆動装置14の間で回転体38の位相差が変化しない。よって、前述の位相合わせ工程において、いずれかの車輪駆動装置14の回転体38の位相を給脂適当状態S1にしたとき、他の車輪駆動装置14の回転体38の位相も給脂適当状態S1のままとなる。つまり、複数の車輪駆動装置14に関して、前述の位相合わせ工程をまとめて実行できる。よって、車輪駆動装置14に潤滑剤54を給脂するうえで、個々の車輪駆動装置14毎に位相合わせ工程をせずに済む。ひいては、複数の車輪駆動装置14に対する給脂時に良好な作業性を得られる。
【0054】
カバー50及び内部部材48の一方は、前述の固定体40を構成する固定部材74である。この「一方」とは、本実施形態では内部部材48である。複数の車輪駆動装置14は、通脂孔68及び給脂孔62のうち、固定部材74に設けられる孔の位相が揃えられている。これは、本実施形態でいえば、固定部材74(内部部材48)に設けられる通脂孔68の位相(周方向位置)に関して、複数の車輪駆動装置14の間で揃えられていることを意味する。本実施形態では、固定部材74(内部部材48)に設けられる複数の通脂孔68の位相に関して、複数の車輪駆動装置14の間で揃えられている。ここでの「揃う」は、固定部材74に設けられる孔の位相に関して、複数の車輪駆動装置14の間で完全に一致している場合のみではなく、数度はずれている場合も含まれる。
【0055】
これにより、いずれかの車輪駆動装置14を給脂適当状態S1にしたとき、各車輪駆動装置14の間で通脂孔68及び給脂孔62の位相を揃えた状態にできる。つまり、各車輪駆動装置14の間で通脂孔68及び給脂孔62の周方向位置を揃えることができ、各車輪駆動装置14の間で同様の要領で給脂作業をできる。ひいては、複数の車輪駆動装置14に対する給脂時に良好な作業性を得られる。
【0056】
次に、車輪駆動装置14の他の工夫点を説明する。
図3を参照する。カバー50及び内部部材48のうちの一方を第1一方部材78とし、他方を第1他方部材80という。本実施形態での第1一方部材78はカバー50であり、第1他方部材80は内部部材48である。第1一方部材78は、第1他方部材80に向けて突出する第1突出部82を備える。第1突出部82には、給脂孔62及び通脂孔68のうち第1一方部材78に設けられる孔の一部が設けられる。本実施形態では、第1突出部82には、カバー50(第1一方部材78)に設けられる給脂孔62の一部が第1突出部82に設けられる。
【0057】
以上の構成により、カバー50と内部部材48の間において、第1突出部82がない場合と比べ、給脂孔62及び通脂孔68の近傍での軸方向隙間60の軸方向寸法を小さくできる。これにより、給脂孔62及び通脂孔68を通して給脂するときに、軸方向隙間60に潤滑剤54が抜け難くなる。ひいては、収納空間52までスムーズに潤滑剤54を給脂できるようになる。
【0058】
同様の効果を得るうえでは、内部部材48を第1一方部材78とし、カバー50を第1他方部材80としてもよい。この場合、第1突出部82は内部部材48(第1一方部材78)に設けられ、第1突出部82には、内部部材48に設けられる孔(通脂孔68)の一部が設けられることになる。また、同様の効果を得るうえでは、第1一方部材78の他にも、第1他方部材80が第1一方部材78に向けて突出する他の第1突出部を備えてもよい。この場合、他の第1突出部に、給脂孔62及び通脂孔68のうちの第1他方部材80に設けられる孔の一部を設けていればよい。
【0059】
カバー50及び内部部材48のうちの一方を第2一方部材84とし、他方を第2他方部材86という。本実施形態での第2一方部材84はカバー50であり、第2他方部材86は内部部材48である。第2一方部材84は、第2他方部材86に向けて突出する第2突出部88を備える。第2突出部88には、排脂孔64及び通脂孔68のうち第2一方部材84に設けられる孔の一部が設けられる。本実施形態では、第2突出部88には、カバー50(第2一方部材84)に設けられる排脂孔64の一部が第2突出部88に設けられる。
【0060】
以上の構成により、カバー50と内部部材48の間において、第2突出部88がない場合と比べ、排脂孔64及び通脂孔68の近傍での軸方向隙間60の軸方向寸法を小さくできる。これにより、排脂孔64及び通脂孔68を通して排脂するときに、軸方向隙間60に潤滑剤54が抜け難くなる。ひいては、収納空間52からスムーズに潤滑剤54を排脂できるようになる。
【0061】
同様の効果を得るうえでは、内部部材48を第2一方部材84とし、カバー50を第2他方部材86としてもよい。この場合、第2突出部88は内部部材48(第2一方部材84)に設けられ、第2突出部88には、内部部材48に設けられる孔(通脂孔68)の一部が設けられることになる。また、同様の効果を得るうえでは、第2一方部材84の他にも第2他方部材86が第2一方部材84に向けて突出する他の第2突出部を備えてもよい。この場合、他の第2突出部88に、排脂孔64及び通脂孔68のうちの第2他方部材86に設けられる孔の一部を設けていればよい。
【0062】
ここでは、第1一方部材78と第2一方部材84がカバー50である例を説明した。この他にも、第1一方部材78及び第2一方部材84の何れかを内部部材48としてもよい。たとえば、第1一方部材78をカバー50とし、そのカバー50に第1突出部82を設けつつ、第2一方部材84を内部部材48とし、その内部部材48に第2突出部88を設けてもよい。
【0063】
次に、前述の給脂方法の変形例を説明する。
図9を参照する。前述の給脂工程を行ううえで、給脂孔62及び通脂孔68の内側に第1筒状ガイド90を配置した状態で、給脂孔62及び通脂孔68を通して給脂してもよい。第1筒状ガイド90は、給脂孔62及び通脂孔68のそれぞれの内側を通るように配置される。これにより、第1筒状ガイド90の内側を通して給脂孔62から通脂孔68まで潤滑剤54をガイドできる。よって、給脂孔62及び通脂孔68を通して給脂するときに、軸方向隙間60への潤滑剤54の抜けを防止できる。
【0064】
また、同様の給脂工程を行ううえで、排脂孔64及び通脂孔68の内側に第2筒状ガイド92を配置した状態で、排脂孔64及び通脂孔68を通して排脂してもよい。第2筒状ガイド92は、給脂孔62及び通脂孔68のそれぞれの内側を通るように配置される。これにより、第2筒状ガイド92の内側を通して通脂孔68から排脂孔64まで潤滑剤54をガイドできる。よって、排脂孔64及び通脂孔68を通して排脂するときに、軸方向隙間60への潤滑剤54の抜けを防止できる。
【0065】
ここでは、給脂工程を行ううえで、第1筒状ガイド90と第2筒状ガイド92の両方を用いる場合を説明した。この他にも、給脂工程を行ううえで、第1筒状ガイド90と第2筒状ガイド92のいずれか一方のみを用いてもよい。
【0066】
各構成要素の他の変形例を説明する。
【0067】
減速機18は、遊星歯車型減速機に限定されず、他の方式を採用してもよい。減速機18は、例えば、偏心揺動型減速機でもよいし、偏心揺動型と遊星歯車型の組み合わせでもよいし、撓み噛合い式減速機でもよい。偏心揺動型減速機の場合、減速部26は、例えば、揺動外歯歯車である。偏心揺動型減速機として、入力軸24(クランク軸)が回転中心線CL1上に配置されるセンタークランク式を説明した。偏心揺動型減速機の具体例は特に限定されない。このほかにも、回転中心線CL1からオフセットした位置に複数の入力軸24(クランク軸)が配置される振り分け式でもよい。
【0068】
ケース30が回転体38の少なくとも一部を構成し、キャリア28A、28Bが固定体40の少なくとも一部を構成する例を説明した。この他にも、ケース30が固定体40の少なくとも一部を構成し、キャリア28A、28Bが回転体38の少なくとも一部を構成してもよい。この場合、ホイール20は、回転体38を構成するキャリア28A、28Bに固定されていればよい。
【0069】
ホイール20の具体例は特に限定されない。ホイール20は、例えば、オムニホイールでもよい。この場合、接地部材44は、ホイール本体42の外周面を通る接線に沿った方向を回転中心とするローラによって構成される。接地部材44の具体例は特に限定されない。接地部材44は、例えば、タイヤでもよい。
【0070】
ホイール20は、減速機18の減速部26に対して径方向に重なる位置に設けられる例を説明した。これに限定されず、ホイール20は、減速部26に対して径方向に重ならない位置に設けられてもよい。これは、例えば、減速部26に対して反車体側にホイール20が配置される場合を想定している。
【0071】
カバー50は、回転体38を構成する例を説明したが、固定体40を構成してもよい。カバー50は、ホイール20とケース30との間に挟まれることなく、ケース30等に連結されていてもよい。
【0072】
内部部材48の具体例はキャリア28Bに限定されない。内部部材48は、たとえば、キャリア28Bとは別体に設けられる部材でもよい。
【0073】
給脂孔62及び排脂孔64は、カバー50に設けられる例を説明した。給脂孔62及び排脂孔64は、減速機18を車体12に取り付けた状態のまま、給脂孔62及び排脂孔64を通して潤滑剤54の給排脂を行えるのであれば、その設けられる部材は特に限定されない。例えば、ケース30に給脂孔62及び排脂孔64を設けてもよい。これは、実施形態の例でいえば、ホイール20を減速機18から分離した状態のもとで、潤滑剤54の給排脂を行う場合を想定している。また、ホイール20がケース30に対して径方向に重ならない位置に設けられる場合、ホイール20を減速機18から分離せずとも、ケース30の給脂孔62及び排脂孔64を用いて潤滑剤54の給排脂を行えるようになる。いずれの場合においても、キャリア28Bに通脂孔68を設けずともよい。
【0074】
給脂孔62と排脂孔64の周方向での相対位置は特に限定されない。たとえば、排脂孔64は、給脂孔62に対して周方向に45°角度をずらした位置に配置されてもよい。
【0075】
複数の通脂孔68は内部部材48に別々に設けられる例を説明したが、内部部材48に設けられる一つの孔によって構成されてもよい。また、通脂孔68の数は特に限定されず、単数又は三つ以上でもよい。
【0076】
(A)の効果を得るうえで、給脂孔62と通脂孔68の少なくとも一部が軸方向Xに重なる位置に配置されていればよく、排脂孔64と他の通脂孔68まで軸方向Xに重なる位置に配置されていなくともよい。ここでの「他の通脂孔68」とは、給脂孔62と軸方向Xに重なる位置に配置される通脂孔68とは別の通脂孔68をいう。
【0077】
(B)の効果を得るうえで、排脂孔64と通脂孔68の少なくとも一部が軸方向Xに重なる位置に配置されていればよく、給脂孔62と他の通脂孔68まで軸方向Xに重なる位置に配置されていなくともよい。ここでの「他の通脂孔68」とは、排脂孔64と軸方向Xに重なる位置に配置される通脂孔68とは別の通脂孔68をいう。
【0078】
前述の給脂方法は、実施形態とは異なり、減速機18内に潤滑剤54が存在しない状況のもと、減速機18内に新しい潤滑剤54を給脂する場合に用いてもよい。実施形態では、カバー50が回転体38を構成する場合に、給脂孔62を下側に配置し、排脂孔64を上側に配置するように、回転体38の位相を変更する例を説明した。この他にも、給脂孔62を上側に配置し、排脂孔64を下側に配置してもよい。この場合、上側の通脂孔68と給脂孔62を用いて給脂しつつ、下側の通脂孔68と排脂孔64を用いて排脂してもよい。
【0079】
給脂適当状態S1と給脂不適状態S2は、重なり状態と非重なり状態の組み合わせである例を説明した。給脂適当状態S1と給脂不適状態S2の具体例はこれに限られない。たとえば、給脂適当状態S1は、給脂孔62を用いて給脂可能となる給脂可能状態であり、給脂不能状態は、給脂孔62を用いて給脂不能となる給脂不能状態でもよい。給脂可能状態は、例えば、軸方向Xから見て、給脂孔62が他部材によって覆われておらず、給脂孔62に外部からアクセス可能な状態である。また、給脂不能状態は、例えば、軸方向Xから見て、給脂孔62が他部材によって覆われており、給脂孔62に外部からアクセス不能な状態である。
【0080】
固定部材74は内部部材48である例を説明したが、カバー50でもよい。この場合、複数の車輪駆動装置14は、通脂孔68及び給脂孔62のうち固定部材74(カバー50)に設けられる給脂孔62の位相が揃えられていてもよい。
【0081】
以上の実施形態及び変形例は例示に過ぎない。これらを抽象化した技術的思想は、実施形態及び変形例の内容に限定的に解釈されるべきではない。実施形態及び変形例の内容は、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態」との表記を付して強調している。しかしながら、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【符号の説明】
【0082】
10…車両、12…車体、14…車輪駆動装置、16…駆動源、18…減速機、20…ホイール、26…減速部、26A、26B…キャリア、30…ケース、38…回転体、40…固定体、48…内部部材、50…カバー、54…潤滑剤、62…給脂孔、64…排脂孔、68…通脂孔、74…固定部材。