(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004556
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】保持具
(51)【国際特許分類】
A61M 25/02 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
A61M25/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104186
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 牧人
(74)【代理人】
【識別番号】100123663
【弁理士】
【氏名又は名称】広川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】栗田 朋香
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA04
4C267AA33
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB19
4C267BB20
4C267GG05
4C267GG07
4C267GG09
4C267HH04
4C267HH09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡易な構造で、ガイドワイヤをコイル状に巻いた状態で保持可能な保持具を提供する。
【解決手段】可撓性を有する医療用の長尺デバイスをコイル状に巻いた状態で保持する保持具10であって、基端から先端の全長にわたる内腔22を有する筒状部材20と、筒状部材20の基端から内腔22に挿入される挿入部材30と、を有し、挿入部材30は、内腔22内で長尺デバイスの一部を収容する凹部と、筒状部材20の外方に露出する凸部34と、を有し、筒状部材20は、内腔22と外部とを連通させ挿入部材30の凸部34と摺動可能に係合するスリット部を有する壁部を含み、スリット部は筒状部材20の基端から先端の全長にわたって形成された保持具10である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する医療用の長尺デバイスをコイル状に巻いた状態で保持する保持具であって、
基端から先端の全長にわたる内腔を有する筒状部材と、
前記筒状部材の基端から前記内腔に挿入される挿入部材と、を有し、
前記挿入部材は、前記内腔内で前記長尺デバイスの長軸方向一部を収容する凹部と、前記筒状部材の外方に露出する凸部と、を有し、
前記筒状部材は、前記内腔と外部とを連通させ前記挿入部材の前記凸部と摺動可能に係合するスリット部を有する壁部を含み、前記スリット部は前記筒状部材の基端から先端の全長にわたって形成されている保持具。
【請求項2】
前記挿入部材は、前記凹部の底面に長軸方向に沿って延びる1つ以上の突起部を有する請求項1に記載の保持具。
【請求項3】
前記筒状部材は、前記内腔の前記スリット部と対向する領域の少なくとも一部に、前記長尺デバイスの外表面との間に生じる摩擦力が、他の領域で生じる摩擦力より大きい接触面部を有する請求項1または2に記載の保持具。
【請求項4】
前記筒状部材は、前記内腔に挿入された前記挿入部材に係合する留め部材を有する請求項1または2に記載の保持具。
【請求項5】
前記筒状部材は、前記挿入部材と連結する連結部を有する請求項1または2に記載の保持具。
【請求項6】
前記筒状部材は、外部に固定される固定機構を有する請求項1または2に記載の保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用の長尺デバイスをコイル状に巻いた状態で保持する保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
血管内治療では、ガイドワイヤやカテーテルなどの様々な医療用の長尺デバイスが使用される。血管内治療の手技中、術者は、ガイドワイヤを体外に抜去し、再び血管内に挿入することがある。体外に抜去されたガイドワイヤは、再挿入されるまでの間、コイル状に巻かれ、液体で満たされた容器内に一時的に保管される。
【0003】
ガイドワイヤは、基端部が剛性および弾性が高い材料で形成されている。これにより、ガイドワイヤは、コイル状に巻かれた状態から直線状の状態に戻ろうとし、液体で満たされた容器内から意図せずに飛び出して汚染されてしまうことがある。そのため、ガイドワイヤをコイル状に巻かれた状態で保持する手段が提案されている。
【0004】
特許文献1には、ハンドルで操作可能なヒンジで接続され、閉鎖位置から開放位置へと互いに可動である2つの顎部に設けられた接触表面間に、可撓性の長尺デバイスを保持する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許公開第2020/0289744号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の保持装置は、ヒンジ部やハンドルなど、コイル状に巻かれた長尺デバイスのループが引っかかりやすい複雑な構造を有している。そのため、液体で満たされた容器内に複数の長尺デバイスが保管されている場合、取り出そうとする目的の長尺デバイスのループが、容器内に保管されている他の長尺デバイスの保持装置に引っかかりやすい。この状態で目的の長尺デバイスを取り出そうとすると、長尺デバイスに表面の損傷や折れ曲がりが生じる可能性がある。また、容器から目的の長尺デバイスのみを取り出すことが困難となり、目的の長尺デバイスとともに取り出された他の長尺デバイスが手術台から落下して汚染される可能性もある。したがって、術者は、容器から目的の長尺デバイスを取り出す作業に注意を要する。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、簡易な構造で、長尺デバイスをコイル状に巻いた状態で保持可能な保持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明に係る保持具は、可撓性を有する医療用の長尺デバイスをコイル状に巻いた状態で保持する保持具であって、基端から先端の全長にわたる内腔を有する筒状部材と、前記筒状部材の基端から前記内腔に挿入される挿入部材と、を有し、前記挿入部材は、前記内腔内で前記長尺デバイスの一部を収容する凹部と、前記筒状部材の外方に露出する凸部と、を有し、前記筒状部材は、前記内腔と外部とを連通させ前記挿入部材の前記凸部と摺動可能に係合するスリット部を有する壁部を含み、前記スリット部は前記筒状部材の基端から先端の全長にわたって形成されている。
【発明の効果】
【0009】
上記のように構成した保持具は、コイル状に巻いた長尺デバイスのループが配置された筒状部材の内腔に挿入部材を挿入することで、長尺デバイスをコイル状に巻いた状態で保持できる。保持具は、簡易な構造であるため、液体で満たされた容器内に複数の長尺デバイスが保管されている場合であっても、取り出そうとする目的の長尺部材のループが他の長尺デバイスを保持している保持具に引っ掛かりにくく、長尺デバイスに表面の損傷や折れ曲がりが生じることを抑制できる。
【0010】
前記挿入部材は、前記凹部の底面に長軸方向に沿って延びる1つ以上の突起部を有してもよい。これにより、保持具は、凹部において、長尺デバイスを配置する位置を適宜選択することにより、長尺デバイスと凹部の外表面との間に生じる隙間をできるだけ小さくして、長尺デバイスの長軸方向や径方向への移動を抑制することができる。また、保持具は、突起部を有することにより、外径や長さの異なる各種の長尺デバイスの保持が可能となる。
【0011】
前記筒状部材は、前記内腔の前記スリット部と対向する領域の少なくとも一部に、前記長尺デバイスの外表面との間に生じる摩擦力が、他の領域で生じる摩擦力より大きい接触面部を有してもよい。これにより、保持具は、長尺デバイスが長軸方向に移動して長尺デバイスのループがほどけることを抑制できる。
【0012】
前記筒状部材は、前記内腔に挿入された前記挿入部材に係合する留め部材を有してもよい。これにより、保持具は、長尺デバイスがコイル状に巻かれた状態から直線状の状態に戻ろうとする復元力のために挿入部材が筒状部材から抜ける方向に移動することを防止できる。
【0013】
前記筒状部材は、前記挿入部材と連結する連結部を有してもよい。これにより、保持具は、挿入部材または筒状部材の紛失を防止できる。
【0014】
前記筒状部材は、外部に固定される固定機構を有してもよい。これにより、保持具が長尺デバイスを保管している容器や手術台から落下して、長尺デバイスが汚染されることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態の保持具を組み合わせてコイル状に巻いたガイドワイヤを保持した状態の正面図である。
【
図3】スリット部を有する側を上側とした筒状部材の斜視図である。
【
図4】凹部を有する側を上側とした挿入部材の斜視図である。
【
図5】コイル状に巻いたガイドワイヤに筒状部材を取付けた状態の正面図である。
【
図6】筒状部材に挿入部材を挿入した保持具によりコイル状に巻いたガイドワイヤを保持した状態の正面図である。
【
図7】留め部材を有する保持具の基端部付近拡大図であって、(a)は留め部材が挿入部材を係止していない状態を、(b)は留め部材が挿入部材を係止した状態を、それぞれ表した図である。
【
図8】(a)は連結部を有する保持具の正面図であり、(b)は固定機構を有する保持具の正面図である。
【
図9】変形例に係る挿入部材を筒状部材に挿入した保持具の断面図である。
【
図10】変形例に係る挿入部材の凹部を有する側を上側とした斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。
【0017】
本発明の実施形態に係る保持具10は、ガイドワイヤ50などの医療用の長尺デバイスをコイル状に巻いた状態で保持するものである。なお、本明細書では、挿入部材30の挿入方向における先側を「先端」若しくは「先端側」、挿入部材30の挿入方向における手元側を「基端」若しくは「基端側」と称することとする。
【0018】
図1、
図2に示すように、保持具10は、中空筒状に形成された筒状部材20と、筒状部材20に挿入される挿入部材30とを有している。保持具10は、コイル状に巻いた状態のガイドワイヤ50のループが配置された筒状部材20に対して、挿入部材30を押し込むことで、ガイドワイヤ50をコイル状に巻いた状態で固定できる。
【0019】
図1、
図2、
図3に示すように、筒状部材20は、基端20aから先端20bの全長にわたる内腔22を有している。内腔22は、筒状部材20の基端20aから先端20bまで貫通しているので、筒状部材20は、基端20aと先端20bがそれぞれ開口している。
【0020】
内腔22は、挿入部材30の挿入方向と直交する断面形状が矩形状である。このため、筒状部材20は、内腔22の四方にそれぞれ壁部を有している。各壁部の肉厚は同じである。ただし、各壁部の肉厚は異なっていてもよい。
【0021】
筒状部材20は、基端20aから先端20bまでの全長にわたるスリット部25が形成された壁部24を有している。スリット部25は、筒状部材20の内腔22と外部とを連通させる。スリット部25の幅は、コイル状に巻いたガイドワイヤ50のループを内腔22に挿入できる幅を有している。また、スリット部25の幅は、後述する挿入部材30が有する凸部34の幅より大きく、筒状部材20の幅の1/2以下であることが好ましい。具体的には、スリット部25の幅は、0.5mm~15mmの範囲とされる。
【0022】
筒状部材20の内表面のうち、スリット部25と対向する領域は、ガイドワイヤ50と接触する接触面部26である。接触面部26は、挿入部材30が内腔22に押し込まれた際に生じる押圧力によって、ガイドワイヤ50の外表面との間に摩擦力を生じ、ガイドワイヤ50を保持する。接触面部26の少なくとも一部は、ガイドワイヤ50の外表面との間に生じる摩擦力を大きくする表面形状を有していてもよい。このような表面形状は、例えば、ドットや縞などの模様、粗面化処理による微細な凹凸などとすることができる。接触面部26の表面形状により、保持されたガイドワイヤ50が長軸方向に移動してループがほどけることを抑制できる。
【0023】
内腔22は、挿入部材30が挿入される側である基端20a側から先端20b側に向かって、先細状となっている。スリット部25を有する壁部24の内表面は、接触面部26を有する壁部の内表面に対して傾斜している。これにより、内腔22の挿入部材30の挿入方向と直交する断面積が、筒状部材20の基端20aから先端20bに向かって減少する。
【0024】
挿入部材30が内腔22に挿入されると、挿入部材30によって内腔22に配置されたガイドワイヤ50のループが接触面部26に押し付けられて保持される。内腔22は、挿入部材30によりガイドワイヤ50を保持した状態において、挿入部材30の長軸方向全長が筒状部材20に完全には収容されず、挿入部材30の基端側の一部が筒状部材20から露出するような形状および大きさで形成される。術者は、筒状部材20から露出した挿入部材30の基端部の一部を把持することで、挿入部材30を筒状部材20から抜去し、ガイドワイヤ50を保持具10から容易に取り出すことができる。挿入部材30が筒状部材20の内腔22に押し込まれた際における挿入長は、最大で筒状部材20の内腔22の長さの3分の2を占めるまでの範囲に設定される。
【0025】
筒状部材20の外形状における高さは、基端20aから先端20bに向かって徐々に減少するように形成されている。これにより、術者が筒状部材20の外形状によって挿入部材30を押し込む基端20a側の開口を認識しやすくすることができる。なお、筒状部材20の外形状における高さは、先端20bから基端20aまで一定であってもよい。
【0026】
筒状部材20の材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミドなどの樹脂を用いることができる。筒状部材の材料は、挿入部材を挿入しやすくするために、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素系樹脂など、低摩擦性樹脂を用いてもよい。
【0027】
筒状部材20は、基端20aから先端20bまでの長さが15mm~50mmである。筒状部材20は、外表面の幅が2.5mm~30mm、高さが1.8mm~20mmである。また、筒状部材20の壁部の厚みは、0.5mm~3mmである。
【0028】
筒状部材20の内腔22は、挿入部材30の挿入方向と直交する断面形状が矩形状であるが、円形状であってもよい。この場合、内腔22は円錐台形状であり、断面円形の壁部24にスリット部25が形成される。また、この場合、筒状部材20の外形状も断面円形状とすることができる。
【0029】
内腔22が断面円形状である場合に、筒状部材20の外形状を矩形状としてもよい。これにより、挿入部材30を筒状部材20に挿入する際に、術者が筒状部材20を把持しやすい。この場合、スリット部25を有する壁部24が、接触面部26を有する壁部に対して傾斜していることが好ましい。これにより、術者は、筒状部材20の外形状によって挿入部材30を押し込む基端20a側の開口を認識しやすくなる。
【0030】
図1、
図2、
図4に示すように、挿入部材30は、筒状部材20の内腔22に挿入された際にガイドワイヤ50の一部を収容する凹部32を有している。凹部32は、挿入部材30の一面が凹状に窪んだ形状を有している。凹部32の外表面は、挿入部材30を筒状部材20の内腔22に押し込んだ際の押圧力によって、ガイドワイヤ50の外表面との間に摩擦力を生じ、ガイドワイヤ50を保持する。
【0031】
凹部32の外表面の少なくとも一部は、ガイドワイヤ50の外表面との間に生じる摩擦力を大きくする表面形状を有していてもよい。このような表面形状は、例えば、ドットや縞などの模様、粗面化処理による微細な凹凸などとすることができる。凹部32の表面形状により、保持されたガイドワイヤ50が長軸方向に移動してループがほどけることを抑制できる。
【0032】
凹部32の外表面には、圧縮部材(図示しない)が設けられてもよい。圧縮部材は、可撓性を有する樹脂で形成できる。具体的には、圧縮部材は、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などで形成できる。また、圧縮部材は発泡体やスポンジなどの多孔質体とすることができる。
【0033】
挿入部材30は、凹部32が筒状部材20の内腔22に挿入された際に、スリット部25を介して筒状部材20の外方に露出する凸部34を有している。凸部34は、筒状部材20のスリット部25に摺動可能に係合する。これにより、術者は、筒状部材20のスリット25を挿入部材30の凸部34のガイドとすることで、筒状部材20への挿入部材30の押し込み操作を容易に行うことができる。また、術者は、凸部34に指をかけることで、筒状部材20からの挿入部材30の引き抜き操作を容易に行うことができる。
【0034】
挿入部材30は、挿入される側と反対側に把持部38を有している。把持部38は、挿入部材30より幅が狭く形成されている。把持部38には、凹部32が連続して形成されている。把持部38は、挿入部材30を筒状部材20に押し込む際に、術者が手で把持する部分である。
【0035】
挿入部材30は、シリコーンゴムや熱可塑性エラストマーなどの弾性を有する樹脂で形成できる。また、挿入部材30は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミドなどの樹脂で形成してもよい。
【0036】
挿入部材30は、先端から把持部38の基端までの長さが、15mm~50mmである。また、挿入部材30は、先端から把持部38の先端までの長さが10mm~45mmである。挿入部材30の幅は、1.5mm~20mm、挿入部材30の高さは、0.6mm~5mmである。挿入部材30の凹部32の深さは、ガイドワイヤ50の半径より大きいことが好ましい。このため、凹部32の深さは、0.2mm~9.5mmの範囲とされる。凹部32の幅は、0.5mm~15mmである。
【0037】
保持具10の使用方法について説明する。保持具10を使用する前に、術者は、予めガイドワイヤ50をコイル状に巻き、複数のループを形成する。次に、術者は、ガイドワイヤ50のループを筒状部材20のスリット部25から内腔22に挿入する。これにより、
図5に示すように、ガイドワイヤ50のループの一部が、筒状部材20の内腔22に収容される。この状態で、筒状部材20の基端20a側の開口から挿入部材30を内腔22に挿入する。
【0038】
挿入部材30は、筒状部材20の基端20a側の開口から露出しているガイドワイヤ50のループを挿入部材30の凹部32に配置した状態で、内腔22に挿入される。挿入部材30が筒状部材20の基端20a側から先端20b側に向かって押し込まれることにより、保持具10は、
図6に示すように、ガイドワイヤ50のループを保持する。
【0039】
筒状部材20は、内腔22に挿入された挿入部材30の脱落を防止する留め部材60を設けてもよい。
図7(a)に示すように、留め部材60は、筒状部材20の基端下部に設けられる回転中心部61と、回転中心部61を中心として回動可能な係止部62とを有している。回転中心部61は、図中正面側と背面側の両方に設けられる。係止部62は、両側の回転中心部61から挿入部材30の凸部34を跨ぐ形状を有している。
【0040】
図7(b)に示すように、挿入部材30を内腔22に挿入した状態で、留め部材60の係止部62を回動させることで、係止部62が挿入部材30の基端面に係止される。係止部62は、ガイドワイヤ50がコイル状に巻かれた状態から直線状の状態に戻ろうとする復元力によって、挿入部材30が基端方向に移動して脱落することを防止できる。
【0041】
保持具10には、筒状部材20と挿入部材30の連結部70を設けてもよい。
図8(a)に示すように、筒状部材20の外表面には筒状部材側固定部71が設けられる。また、挿入部材30の外表面には挿入部材側固定部72が設けられる。連結部70は、ワイヤ状であって、両端がそれぞれ筒状部材側固定部71と挿入部材側固定部72に固定される。連結部70により、保持具10は、挿入部材30あるいは筒状部材20の紛失を防止できる。なお、連結部は、筒状部材20と挿入部材30のそれぞれと着脱可能であってもよい。
【0042】
保持具10には、外部に固定される固定機構80を設けてもよい。固定機構80は、筒状部材20に設けられる保持具固定部82と、外部の対象物に接着固定される接着面83aを有する外部固定部83と、保持具固定部82と外部固定部83との間を連結するワイヤ状の連結部81とを有している。外部固定部83が固定される外部の対象物は、ガイドワイヤ50を保管するための液体を満たした容器や、手術用のドレープ、手術台などである。外部固定部83は、接着面83aを有するものに限られず、外部の対象物を挟むことができるクリップなどであってもよい。固定機構80を有する保持具10は、容器や手術台などからの落下を防止できる。
【0043】
図9、
図10に示すように、挿入部材30は、凹部32の底面に一定の間隔を有して離隔する1つ以上の突起部36を有してもよい。突起部36は、凹部32に配置されるガイドワイヤ50の長軸方向に沿って形成される。これにより、保持具10は、ガイドワイヤ50の各ループを、突起部36と凹部32の一方の側面との間や、突起部36同士の間に配置することができる。保持具10は、凹部32において、ガイドワイヤ50を配置する位置を適宜選択することにより、ガイドワイヤと凹部32の外表面との間に生じる隙間をできるだけ小さくして、ガイドワイヤ50の長軸方向や径方向への移動を抑制することができる。また、保持具10は、突起部36を有することにより、外径や長さ、あるいは巻き数の異なる各種のガイドワイヤ50の保持が可能となる。
【0044】
以上のように、本実施形態に係る態様(1)の保持具10は、可撓性を有する医療用の長尺デバイスをコイル状に巻いた状態で保持する保持具10であって、基端20aから先端20bの全長にわたる内腔22を有する筒状部材20と、筒状部材20の基端20aから内腔22に挿入される挿入部材30と、を有し、挿入部材30は、内腔22内で長尺デバイスの一部を収容する凹部32と、筒状部材20の外方に露出する凸部34と、を有し、筒状部材20は、内腔22と外部とを連通させ挿入部材30の凸部34と摺動可能に係合するスリット部25を有する壁部24を含み、スリット部25は筒状部材20の基端20aから先端20bの全長にわたって形成されている。このように構成した保持具10は、コイル状に巻いた長尺デバイスのループが配置された筒状部材20の内腔22に挿入部材30を挿入することで、長尺デバイスをコイル状に巻いた状態で保持できる。保持具10は、簡易な構造であるため、液体で満たされた容器内に複数の長尺デバイスが保管されている場合であっても、取り出そうとする目的の長尺部材のループが他の長尺デバイスを保持している保持具に引っ掛かりにくく、長尺デバイスに表面の損傷や折れ曲がりが生じることを抑制できる。
【0045】
態様(2)の保持具10は、態様(1)の保持具10において、挿入部材30が、凹部32の底面に長軸方向に沿って延びる1つ以上の突起部36を有する。これにより、保持具10は、凹部32において、長尺デバイスを配置する位置を適宜選択することにより、長尺デバイスと凹部32の外表面との間に生じる隙間をできるだけ小さくして、長尺デバイスの長軸方向や径方向への移動を抑制することができる。また、保持具10は、突起部36を有することにより、外径や長さの異なる各種の長尺デバイスの保持が可能となる。
【0046】
態様(3)の保持具10は、態様(1)または態様(2)の保持具10において、筒状部材20が、内腔22のスリット部25と対向する領域の少なくとも一部に、長尺デバイスの外表面との間に生じる摩擦力が、他の領域で生じる摩擦力より大きい接触面部26を有する。これにより、保持具10は、長尺デバイスが長軸方向に移動して長尺デバイスのループがほどけることを抑制できる。
【0047】
態様(4)の保持具10は、態様(1)~(3)のいずれか1つの保持具10において、筒状部材20が、内腔22に挿入された挿入部材30に係合する留め部材60を有する。これにより、保持具10は、長尺デバイスがコイル状に巻かれた状態から直線状の状態に戻ろうとする復元力のために挿入部材30が筒状部材20から抜ける方向に移動することを防止できる。
【0048】
態様(5)の保持具10は、態様(1)~(4)のいずれか1つの保持具10において、筒状部材20が、挿入部材30と連結する連結部70を有する。これにより、保持具10は、挿入部材30または筒状部材20の紛失を防止できる。
【0049】
態様(6)の保持具10は、態様(1)~(5)のいずれか1つの保持具10において、筒状部材20が、外部に固定される固定機構80を有する。これにより、保持具10が長尺デバイスを保管している容器や手術台から落下して、長尺デバイスが汚染されることを防止できる。
【0050】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。上述の実施形態において医療用の長尺デバイスはガイドワイヤ50であるが、カテーテルなど他の長尺デバイスであってもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 保持具
20 筒状部材
20a 基端
20b 先端
22 内腔
24 壁部
25 スリット部
26 接触面部
30 挿入部材
32 凹部
34 凸部
36 突起部
38 把持部
50 ガイドワイヤ
60 留め部材
61 回転中心部
62 係止部
70 連結部
71 筒状部材側固定部
72 挿入部材側固定部
80 固定機構
81 連結部
82 保持具固定部
83 外部固定部
83a 接着面