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特開2024-45562ヨウ素が注入された超高分子量ポリエチレン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045562
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ヨウ素が注入された超高分子量ポリエチレン
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/16 20060101AFI20240326BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20240326BHJP
   A61L 27/42 20060101ALI20240326BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20240326BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
A61L27/16
A61L27/54
A61L27/42
A61L27/38 111
C08L23/06
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024021363
(22)【出願日】2024-02-15
(62)【分割の表示】P 2022508857の分割
【原出願日】2020-08-11
(31)【優先権主張番号】62/885,530
(32)【優先日】2019-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515246513
【氏名又は名称】バイオメット マニュファクチャリング,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】アフメド エイード
(72)【発明者】
【氏名】モハメド イムラン カーン
(72)【発明者】
【氏名】ヒル マチャド
(57)【要約】
【課題】開示される様々な実施形態は、架橋したヨウ素注入ポリエチレンを含むインプラントに関する。
【解決手段】様々な実施形態において、インプラントは、ポリエチレンにヨウ素が注入されるように、ポリエチレンをヨウ素源に曝露することによって作製することができる。様々な実施形態において、インプラント上またはその近傍における微生物形成を防止する方法は、ポリエチレンを含む架橋されたヨウ素注入インプラントを移植することを含み、ここで、ヨウ素は、移植後にインプラントから徐々に放出される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ素が注入されたポリエチレンを含むインプラントであって、ポリエチレンインプラント中のヨウ素の平均濃度が約5~約3000μg/cm3であるインプラント。
【請求項2】
前記ヨウ素が、ポリエチレンインプラント中約200~約1000μg/cm3の平均濃度を有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
前記ポリエチレンが、超高分子量ポリエチレン、超低分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、高分子量ポリエチレン、高密度架橋ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、分岐ポリエチレン、またはそれらの組み合わせである、請求項1に記載のインプラント。
【請求項4】
前記ポリエチレンが、トコフェロール、トコフェロール亜リン酸エステル、トコトリエノール、ビタミンE、ビタミンE酢酸エステル、ビタミンE亜リン酸エステル、ローズマリーオイル、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、ブタン二酸ジメチルエステル/4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノール共重合体、タンニン酸、ビルベリー抽出物、ビタミンC、カロテン、フラボノイド、イソフラボノイド、ネオフラボノイド、リグニン、キニン、ユビキノン、ビタミンK1、金属、グルタチオン、没食子酸プロピル、没食子酸オクチル、没食子酸ラウリル、レスベラトロール、ロスマリン酸、ルチン、5-アミノサリチル酸、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、フェノール系化合物、および単量体形または重合体形のヒンダードアミン安定剤のうちの少なくとも1つを含む酸化防止剤を含んでなる、請求項1に記載のインプラント。
【請求項5】
前記酸化防止剤が、ポリエチレンの約0.01重量%~約5.0重量%である、請求項4に記載のインプラント。
【請求項6】
前記インプラントが、架橋したヨウ素注入ポリエチレンを含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項7】
前記ポリエチレンが、ピン・オン・プレート分析における摩耗分析の約10,000回数~約1,300,000回数にわたって約0.001g~約0.005gの平均累積質量損失を有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項8】
前記ポリエチレンが約250MPa~約400MPaの弾性率を有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項9】
前記ポリエチレンが、約475%~約515%の破断点伸びを有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項10】
ポリエチレンを含有するインプラントの製造方法であって、前記ポリエチレンにヨウ素が注入されるように前記ポリエチレンをヨウ素源に暴露することを含む方法。
【請求項11】
前記ヨウ素源が、ポビドンヨード、水性ヨウ素溶液、およびルゴール溶液から選択されたヨードフォアを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ヨウ素を含む溶液が、約0.1重量%~約10.0重量%のポビドンヨードである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記インプラントに酸化防止剤を添加することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記注入が、約30日間までの間、前記ポリエチレンをヨウ素溶液中に浸漬することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリエチレンの浸漬が、約20~約100℃で行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ヨウ素を含む溶液対ポリエチレンの重量比が、約1:1~約50:1である、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
注入前に前記ポリエチレンを圧密させることをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリエチレンを照射することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
インプラント上またはその近傍における微生物形成を防止する方法であって、ポリエチレンを含有する架橋したヨウ素注入インプラントを移植することを含み、ここで前記移植後にインプラントから徐々にヨウ素が放出される方法。
【請求項20】
前記ヨウ素の徐々の放出が、約15日間~約10年間の期間に渡りヨウ素を放出することを含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔優先権の主張〕
本出願は、2019年8月12日出願の米国仮特許出願第62/885,530号の利益を主張し、その優先権の利益はここに主張され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)は、変形性関節症による股、膝、足首、肘、および肩の関節の置換術など、関節を接合する整形外科インプラントに最も広く使用されている材料である。特に、高度に架橋されたUHMWPEが汎用されており、これは、ガンマ(γ)線や電子線などの高エネルギー放射線照射を用いて架橋される。架橋によって、UHMWPEの摩耗率が大幅に低下し、骨溶解につながる可能性のあるポリエチレン粒子の負担が軽減される。一部のインプラントでは、フリーラジカルの負担に対抗するために、高度に架橋されたUHMWPEに酸化防止剤が添加されている。
【0003】
UHMWPEインプラントでは、感染症が関節置換術の修正の主な原因の1つである。細菌の抗生物質耐性が増加するにつれて、関節置換術という状況の中で感染症に対処することがより困難になってきた。
【発明の概要】
【0004】
様々な実施形態において、本発明は、ヨウ素が注入されたポリエチレンを含むインプラントを提供する。
【0005】
様々な実施形態において、本発明は、ポリエチレンにヨウ素が注入されるように、ポリエチレンをヨウ素源に曝露することによってインプラントを作製する方法を提供する。
【0006】
様々な実施形態において、本発明は、ポリエチレンを含有する架橋したヨウ素注入インプラントの移植を含む、インプラント上またはその近傍の微生物形成を防止する方法を提供し、ここで、ヨウ素は、移植後にインプラントから徐々に放出される。
【0007】
いくつかの実施形態において、架橋したヨウ素注入ポリエチレンインプラントは、ヨウ素の抗菌効果のために、インプラント上およびその近傍の微生物形成を低減させることができる。
【0008】
いくつかの実施形態では、ポリエチレンインプラントに直接注入されたヨウ素は、表面コーティングなどの他の抗菌剤とは対照的に、嵌合(噛み合わせ)の影響を受けない。
【0009】
いくつかの実施形態では、注入されたヨウ素は、経時的な拡散によってポリエチレンから放出され、インプラント上およびその近傍の微生物を破滅させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図面は一般に、限定ではなく例示として、本文中で論じられる様々な実施形態を示している。
【0011】
図1図1は、様々な実施形態による、実施例3のサンプルの酸化指数(oxidative index)を示すチャートである。
【0012】
図2図2は、様々な実施形態による、実施例4のサンプルの摩耗特性を示すグラフである。
【0013】
図3図3A~3Dは、様々な実施形態による、実施例4のサンプルの機械的特性を示すグラフである。
【0014】
図4図4は、実施例4のサンプルの衝撃強度を示すグラフである。
【0015】
図5図5は、実施例5のサンプル中のヨウ素量を示すグラフである。[発明の開示]
【0016】
以下に開示される発明の主題(subject matter)の特定の実施形態を詳細に参照することにする。その幾つかの例が添付の図面に部分的に示されている。開示される発明の主題は、列挙された特許請求の範囲と併せて説明されるが、例示された主題は、特許請求の範囲を、開示される発明の主題に限定することを意図していないことが理解されるだろう。
【0017】
範囲形式で表わされた値は、範囲の限界として明示的に示された数値だけでなく、その範囲内に含まれる全ての個々の数値または部分範囲を、あたかも各数値および各部分範囲が明示的に示されているかのように含むものとして、柔軟な方法で解釈すべきである。例えば、「約0.1%~約5%」または「約0.1%~5%」の範囲は、ちょうど約0.1%から約5%までだけでなく、個々の値(例えば、1%、2%、3%、および4%)と、指定された範囲内の部分範囲(例えば、0.1%~0.5%、1.1%~2.2%、3.3%~4.4%)も含むように解釈されるべきである。「約X~Y」という表現は、特に明記されていない限り、「約X~約Y」と同じ意味である。同様に、「約X、Y、または約Z」という記述は、特に明記されていない限り、「約X、約Y、または約Z」と同じ意味を有する。
【0018】
本明細書では、「1つの」(「a」、「an」)、または「その」(「the」)という用語は、文脈上明確に別段の指示がない限り、1または複数を含むために使用される。「または」という用語は、特に明記されていない限り、非排他的な意味の「または」を指すために使用される。「AとBの少なくとも1つ」という表現は、「A、B、またはAとB」と同じ意味である。さらに、本明細書で使用される他に定義されていない表現または用法は、説明のみを目的としており、限定を目的としていないことを理解されたい。項目(セクション)見出しの使用は、本明細書の理解を支援することを目的としており、制限として解釈されるべきではない。項目見出しに関連する情報は、その特定の項目の内外で発生しうる。さらに、本明細書で参照される全ての刊行物、特許、および特許文書は、あたかも参照により個別に組み込まれているかのように、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書と参照によってそのように組み込まれた文書との間に矛盾する用法がある場合、組み込まれた参照における用法が、本明細書の用法を補足するものと見なされる。調整不可能な矛盾(不一致)については、本明細書の用法が支配する。
【0019】
本明細書に記載の製造方法では、時間的または操作上の順序が明示的に記載されている場合を除いて、本発明の原理から逸脱することなく、任意の順序で工程(ステップ)を実行することができる。さらに、明示的なクレーム中の文言で個別に実行することが明記されていない限り、指定の手順を同時に実行することができる。例えば、Xを実行するというクレームに記載された工程と、Yを実行するというクレームに記載された工程とは、単一操作の中で同時に実行でき、得られる製法は、クレームに記載された製法の文字通りの範囲の中に含まれる。
【0020】
本明細書で使用される「約」という用語は、ある値または範囲、例えば、記載された値の限界またはある範囲についての記載の限界の10%以内、5%以内、または1%以内という、ある1つの数値または範囲のある程度の変動性を考慮に入れることができ、正確に記載された値または範囲を包含する。
【0021】
本明細書で使用される「実質的に」という用語は、大部分、または大半、例えば少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%、または少なくとも約99.999%以上、または100%を指す。
【0022】
本明細書で使用される「有機基」という用語は、炭素を含有する任意の官能基を指す。例としては、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、オキソ(カルボニル)基などの酸素含有基;カルボン酸、カルボン酸塩、およびカルボン酸エステルを含むカルボキシル基;アルキルおよびアリールスルフィド基などの硫黄含有基;並びに他のヘテロ原子含有基を挙げることができる。有機基の非限定的な例には、OR、OOR、OC(O)N(R)2、CN、CF3、OCF3、R、C(O)、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、N(R)2、SR、SOR、SO2R、SO2N(R)2、SO3R、C(O)R、C(O)C(O)R、C(O)CH2C(O)R、C(S)R、C(O)OR、OC(O)R、C(O)N(R)2、OC(O)N(R)2、C(S)N(R)2、(CH2)0-2N(R)C(O)R、(CH2)0-2N(R)N(R)2、N(R)N(R)C(O)R、N(R)N(R)C(O)OR、N(R)N(R)CON(R)2、N(R)SO2R、N(R)SO2N(R)2、N(R)C(O)OR、N(R)C(O)R、N(R)C(S)R、N(R)C(O)N(R)2、N(R)C(S)N(R)2、N(COR)COR、N(OR)R、C(=NH)N(R)2、C(O)N(OR)R、C(=NOR)R、および置換または非置換(C1~C100)ヒドロカルビルが含まれ、ここで、Rは、水素である(他の炭素原子を含む例では)または炭素ベースの部分であることができ、その場合の炭素ベースの部分は、置換または非置換であってよい。
【0023】
分子または有機基と関連して本明細書で使用される「置換」という用語は、そこに含まれる1つまたは複数の水素原子が、1つまたは複数の非水素原子によって置き換えられた状態を指す。本明細書で使用される「官能基」または「置換基」という用語は、分子または有機基に置換可能であるか、または置換されている基を指す。置換基または官能基の例としては、限定されるものではないが、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、およびI)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、オキソ(カルボニル)基、カルボン酸、カルボン酸塩、およびカルボン酸エステルを含むカルボキシル基の中の酸素原子、チオール基、硫化アルキルおよび硫化アリール基、スルホキシド基、スルホン基、スルホニル基、およびスルホンアミド基などの基の中の硫黄原子;アミン、ヒドロキシアミン、ニトリル、ニトロ基、N-オキシド、ヒドラジド、アジド、およびエナミンなどの基の中の窒素原子;並びに他の様々な基の中の他のヘテロ原子、を含む基が挙げられる。置換炭素(または他の)原子に結合することができる置換基の非限定的な例としては、F、Cl、Br、I、OR、OC(O)N(R)2、CN、NO、NO2、ONO2、アジド、CF3、OCF3、R、O(オキソ)、S(チオノ)、C(O)、S(O)、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、N(R)2、SR、SOR、SO2R、SO2N(R)2、SO3R、C(O)R、C(O)C(O)R、C(O)CH2C(O)R、C(S)R、C(O)OR、OC(O)R、C(O)N(R)2、OC(O)N(R)2、C(S)N(R)2、(CH2)0-2N(R)C(O)R、(CH2)0-2N(R)N(R)2、N(R)N(R)C(O)R、N(R)N(R)C(O)OR、N(R)N(R)CON(R)2、N(R)SO2R、N(R)SO2N(R)2、N(R)C(O)OR、N(R)C(O)R、N(R)C(S)R、N(R)C(O)N(R)2、N(R)C(S)N(R)2、N(COR)COR、N(OR)R、C(=NH)N(R)2、C(O)N(OR)R、およびC(=NOR)Rが挙げられる。ここで、Rは、水素または炭素ベースの部分であり得る。例えば、Rは、水素、(C1~C100)ヒドロカルビル、アルキル、アシル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、またはヘテロアリールアルキルであり得る。または、窒素原子または隣接する窒素原子に結合した2つのR基が、窒素原子または複数の原子と一緒になってヘテロシクリルを形成することができる。
【0024】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、1~40個の炭素原子、1~約20個の炭素原子、1~12個の炭素、またはいくつかの実施形態では1~8個の炭素原子を有する直鎖および分岐アルキル基およびシクロアルキル基を指す。直鎖アルキル基の例には、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、およびn-オクチル基などの1~8個の炭素原子を有するものが含まれる。分枝状アルキル基の例には、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ネオペンチル、イソペンチル、および2,2-ジメチルプロピル基が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、n-アルキル、イソアルキル、およびアンテイソアルキル基、並びに他の分枝鎖形態のアルキルを包含する。代表的な置換アルキル基は、本明細書に記載の基、例えば、アミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、ニトロ、チオ、アルコキシ、およびハロゲン基のいずれかで1回または複数回置換されることが可能である。
【0025】
本明細書で使用する「溶剤」という用語は、固体、液体、または気体を溶解することができる液体を指す。溶剤の非限定的な例は、シリコーン、有機化合物、水、アルコール、イオン液体、および超臨界流体である。
【0026】
本明細書で使用する「空気」という用語は、一般に地上レベルで、大気から排出されるガスの生来の組成とほぼ同一の組成を有する気体の混合物を指す。いくつかの例では、空気は周囲環境から取り入れられる。空気は、約78%の窒素、21%の酸素、1%のアルゴン、0.04%の二酸化炭素、および少量の他のガスを含む組成を有している。
【0027】
本明細書で使用される「室温」という用語は、約15℃~28℃の温度を指す。
【0028】
本明細書で使用される「コーティング(被覆)」という用語は、コーティングされた表面上の材料の連続または不連続層を指し、前記材料層は表面を貫通して、細孔などの領域を埋めることができ、材料層は平面または曲面を含む任意の三次元形状を有することができる。一例では、コーティングは、コーティング材の浴中に浸漬することによって、多孔質または非多孔質のいずれであってもよい1または複数の表面上に形成させることができる。
【0029】
本明細書で使用される「表面」という用語は、物体の境界または側面を指し、その境界または側面は、平面、局面または角度のある任意の三次元形状を有することができ、前記境界または側面は連続または非連続でありうる。「表面」という用語は、一般に深さのない物体の最も外側の境界を指すが、「細孔」という用語が表面に関して使用される場合、表面という用語は、表面の開口部と、細孔が表面の下方に基板にまで伸びる深さの両方を指す。
【0030】
発明の要約
微生物は一般的に関節インプラント上およびその近傍に認められる。関節置換術の修正は、感染症のために頻繁に行われる。しかし、現在のところ、微生物は、例えば抗生物質と比較して、ヨウ素に対する耐性を持たない。ヨウ素は、防腐剤として医学分野で歴史があり、甲状腺機能のために人体にすでに存在している。
【0031】
ヨウ素は高い抗菌効果を持つ。ポリエチレンインプラントなどのポリマーインプラントにヨウ素を注入すると、時間の経過とともにそのヨウ素が人体の内側に拡散し、微生物の蓄積、バイオフィルムの形成および感染に対抗することが可能である。ヨウ素は、例えば、ポリエチレンインプラントが存在する関節腔の中に放出され、感染の原因となる微生物を死滅させる。従って、ヨウ素を注入したポリエチレンインプラントは、予防的にも感染症の治療のためにも使用することができる。
【0032】
様々な実施形態において、本明細書に開示されるのは、ヨウ素が注入されたポリエチレンインプラントおよび製造方法である。インプラントは、例えば、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、または拡散機構を介してヨードフォア(例えば、ポビドンヨード)などのヨウ素溶液が注入された、高度に架橋したポリエチレン(HXPE)、または溶剤含有溶液などの他の水性ヨウ素溶液であり得る。一例では、ルゴール(Lugol)液を使用することができる。
【0033】
注入後、ヨウ素はポリエチレンインプラントの非晶質領域に保持されうる。インプラントが体内に入ると、ヨウ素は生体内でポリエチレンから出てインプラントの周辺の領域に拡散することができる。これにより、関節腔およびインプラント内の微生物を死滅させることにより、抗菌的保護が可能になる。ヨウ素は、例えば、微生物中のタンパク質を攻撃することによって抗菌的に作用することができる。
【0034】
ヨウ素注入ポリエチレンインプラント
様々な実施形態において、インプラントは、未架橋のまたは架橋した、ヨウ素注入ポリエチレンを含むことができる。ヨウ素は、例えば、ポリエチレン中約5~約3000μg/cm3(例えば、約200~約1000μg/cm3)の濃度を有することが可能である。いくつかの実施形態では、ヨウ素はポリエチレン全体に均一に分布している。いくつかの実施形態では、ポリエチレンはヨウ素で飽和されている。いくつかの実施形態では、ポリエチレンの一部分がヨウ素で選択的に処理され、他の部分はヨウ素で処理されない。
【0035】
ポリエチレンインプラント材料は、例えば、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、超低分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、高分子量ポリエチレン、高密度架橋ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、分岐ポリエチレン、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0036】
例えば、UHMWPEは、超高分子量のポリエチレンのユニークな形態であり、商用グレードの材料の分子量は典型的には200万~700万の範囲内である。市販のポリエチレンの分子量は、典型的には、50,000~100,000(5万~10万)の範囲であり、25分の1以下の値である。UHMWPEは、変形性関節症による股、膝、足首、肘、肩の関節の代替品など、関節を接合する整形外科用インプラントに最も広範に使用されている材料である。
【0037】
インプラント材料はUHMWPEを含むことができる。インプラント材料の任意の適切な比率は、インプラント材料の約1重量%~約100重量%、約90重量%~約100重量%、または約1重量%以下、または約2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、もしくは約99.9重量%以上のUHMWPEであることができる。UHMWPEは、インプラント材料の他の成分と共に均一または不均一な混合物を形成しうる。
【0038】
インプラント材料は、その中に任意の適切な量の空隙を有することができ、その空隙は、多孔質領域によって占有される(例えば、固体または液体によって占有されない)インプラント材料の部分である。インプラント材料は、約0.001容積%~約80容積%の空隙、約1容積%~50容積%の空隙、約1容積%~約20容積%の空隙、約5容積%~約15容積%の空隙、または約0.001容積%以下の空隙、または約0.005容積%~約15容積%の空隙、0.01、0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、45、または約50容積%の空隙を有することができる。インプラント材料の空隙は、インプラント材料内に任意の適切な分布を有することができる。いくつかの実施形態では、インプラント材料の空隙は、実質的に均一に分布させることができる。
【0039】
UHMWPEは、エチレンの半結晶性線状ホモポリマーであり、いくつかの実施形態では、低圧(6~8バール)および低温(66~80℃)でチーグラーナッタ(Zieglar-Natta)触媒を用いた立体特異的重合によって製造することができる。UHMWPEの合成によって微細な粒状粉末が得られる。分子量とその分布は、温度、時間、圧力などの処理パラメータによって制御可能である。UHMWPEの分子量は一般に少なくとも約2,000,000 g/モルである。原材料として使用するのに適したUHMWPE材料は、粉末または粉末混合物の形態であり得る。適切なUHMWPE材料の例には、Ticona Engineering Polymers社から入手可能なGUR(登録商標)1020およびGUR(登録商標)1050が含まれる。
【0040】
UHMWPEに加えて、インプラント材料には他の適切なコンポーネントを含めることができる。特定の実施形態において、UHMWPEは、別の架橋可能なポリマーと組み合わせることができる。架橋可能なポリマーは、放射線、化学架橋剤を使用して架橋可能であるか、または適切な条件下で物理的に架橋することができる任意のポリマーであり得る。いくつかの例では、ポリマーは、例えば、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)ポリマー、アクリルポリマー、セルロイドポリマー、酢酸セルロースポリマー、シクロオレフィンコポリマー(COC)、エチレン-酢酸ビニル(EVA)ポリマー、エチレンビニルアルコール(EVOH)ポリマー、フッ素樹脂、イオノマー、アクリル/PVC合金、液晶ポリマー(LCP)、ポリアセタールポリマー(POMまたはアセタール)、ポリアクリレートポリマー、ポリアクリロニトリルポリマー(PANまたはアクリロニトリル)、ポリアミドポリマー(PAまたはナイロン)、ポリアミドイミドポリマー(PAI)、ポリアリールエーテルケトンポリマー(PAEKまたはケトン)、ポリブタジエンポリマー(PBD)、ポリブチレンポリマー(PB)、ポリブチレンテレフタレートポリマー(PBT)、ポリカプロラクトンポリマー(PCL)、ポリクロロトリフルオロエチレンポリマー(PCTFE)、ポリエチレンテレフタレートポリマー(PET)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートポリマー(PCT)、ポリカーボネートポリマー、ポリヒドロキシアルカノエートポリマー(PHA)、ポリケトンポリマー(PK)、ポリエステルポリマー、ポリエチレンポリマー(PE)、ポリエーテルエーテルケトンポリマー(PEEK)、ポリエーテルケトンケトンポリマー(PEKK)、ポリエーテルイミドポリマー(PEI)、ポリエーテルスルホンポリマー(PES)、塩素化ポリエチレンポリマー(PEC)、ポリイミドポリマー(PI)、ポリ乳酸ポリマー(PLA)、ポリメチルペンテンポリマー(PMP)、ポリフェニレンオキシドポリマー(PPO)、ポリフェニレンスルファイドポリマー(PPS)、ポリフタルアミドポリマー(PPA)、ポリプロピレンポリマー、ポリスチレンポリマー(PS)、ポリスルホンポリマー(PSU)、ポリトリメチレンテレフタレートポリマー(PTT)、ポリウレタンポリマー(PU)、ポリ酢酸ビニルポリマー(PVA)、ポリ塩化ビニルポリマー(PVC)、ポリ塩化ビニリデンポリマー(PVDC)、およびスチレン-アクリロニトリルポリマー(SAN)などの熱可塑性ポリマーでありうる。UHMWPEに加えて、例示的な型のポリエチレンとしては、例えば、超低分子量ポリエチレン(ULMWPE)、高分子量ポリエチレン(HMWPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、高密度架橋ポリエチレン(HDXLPE)、架橋ポリエチレン(PEXまたはXLPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、および超低密度ポリエチレン(VLDPE)が挙げられる。
【0041】
いくつかの例では、インプラント材料はポリプロピレンを含むことができる。最終製品がメッシュ、ステント、豊胸手術材料、縫合材料、または他の医療機器である場合、ポリプロピレンが特に望ましいだろう。1つの代替品では、ポリプロピレン(または他のポリマー)を、多層医療機器の1つの層として使用することができる。例示的なポリプロピレンとしては、ホモポリマーポリプロピレン、ブロックコポリマーポリプロピレン、およびランダムコポリマーポリプロピレンを挙げることができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、インプラント材料は、所望の物理的または化学的特性を付与する1または複数の適切な添加剤を含むことができる。例示的な適切な添加剤には、放射線不透過性材料、銀イオンなどの抗菌材料、抗生物質、および様々な機能を果たす微粒子および/またはナノ粒子が含まれる。防腐剤、着色剤および他の従来の添加剤も使用することができる。
【0043】
様々な実施形態において、ヨウ素注入ポリエチレンインプラントは、酸化防止剤を含むことができる。酸化防止剤は、例えば、ポリエチレンインプラントの約0.01重量%~約5.0重量%(例えば、ポリエチレンインプラントの約0.05重量%~約0.50重量%)でありうる。いくつかの実施形態では、酸化防止剤は、ポリエチレン中に均一に分布させることができる。
【0044】
ヨウ素注入ポリエチレンインプラントは、ヨウ素の注入にもかかわらず、機械的強度に関連した特性を保持することができる。例えば、ピン・オン・プレート摩耗分析では、ポリエチレンは、約10,000回数~約1,300,000回数にわたる摩耗分析で約0.001 g~約0.005 gの平均累積質量損失を有しうる(例えば約20,000回数~約1,200,000回数にわたる摩耗分析で約0.001 g~約0.003 gの平均累積質量損失)。
【0045】
同様に、ヨウ素注入ポリエチレンインプラントは、約250 MPa~約400 MPa(例えば、約300 MPaから約350 MPa)の弾性率、および約475%~約515%の破断点伸びを保持することができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、医療用インプラントは整形外科用インプラントであり得る。様々な実施形態において、医療用インプラントは、人工股関節、股関節ライナー、膝関節、膝ライナー、椎間板置換品、肩、肘、足、足首、指、下顎骨、または人工心臓のベアリング(軸受部)を構成するか、またはその一部とすることができる。
【0047】
インプラントの圧密
本明細書に開示されるのは、様々な実施形態において、ポリエチレンインプラントにヨウ素を注入する方法である。この方法は、ポリエチレンにヨウ素が注入されるように、ポリエチレンをヨウ素溶液などのヨウ素源に曝露することを含みうる。溶液は、例えば、ヨードフォア(例えば、ポビドンヨード)などのヨウ素溶液、または溶剤含有溶液などの他のヨウ素水溶液を含むことができる。一例では、ルゴール溶液を使用できる。ポリエチレンは、例えば、樹脂形態、部分的に圧密された形態、または完全に圧密された形態であり得る。
【0048】
注入の前に、ポリエチレンインプラントを調製して圧密(圧縮固化)(consolidate)することができる。圧密する前に、ポリエチレンを様々な材料と混合することができる。例えば、いくつかの実施形態では、インプラント材料(例えばUHMWPEを含む)は、ポリエチレン粉末を、別のポリマーとのブレンドまたは酸化防止剤とのブレンドなどの他の適切な材料とブレンドすることを含む方法によって調製することができる。そのようなプロセスは、物理的混合、溶剤を利用した混合、超臨界温度および圧力条件下で溶剤(例えば、CO2)を利用した混合、並びに超音波混合を含み得る。
【0049】
圧密(consolidation)は、材料をブレンドまたは調製した後に実施することができる。圧密はインプラント用の材料を造形および成形するが、それがインプラント材料の形状、サイズ、密度、機械的特性およびその他の属性を決定づけることになる。圧密は、当技術分野で既知の他の圧密技術に加えて、例えば、低温焼結(コールドシンタリング)、溶融圧密、またはそれらの組み合わせを含むことができる。低温焼結は、溶融を使用しない方法であるが、溶融圧密にはポリエチレン材料を溶融して成形することが含まれる。
【0050】
いくつかの実施形態では、ポリエチレン粉末を低温焼結して、インプラント材料を提供することができる。この場合、インプラント材料は実質的に全く溶融が起こらない。インプラント材料は、例えば、溶融を含む圧密工程の前に形成された固体であり得る。例えば、インプラント材料は、インプラント材料の形成中に実質的に溶融が起こらない、UHMWPE粉末から形成された固体であり得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、インプラント材料は、低温焼結材料であり得る。この方法は、インプラント材料を形成するために、低温焼結ポリエチレン粉末、および任意の追加の成分を含むことができる。低温焼結は、一般に球状の粉末ポリエチレン粒子の境界を一緒に融合させるために、低剪断条件下で十分な圧力を加えることを含む。低温焼結は、圧縮成形、直接圧縮成形、ラム押出し、熱間静水圧プレス、ラム押出、高圧結晶化、射出成形、およびそれらの組み合わせなどの任意の適切な溶融温度以下(sub-melting)の圧密技術を含むことができる。
【0052】
低温焼結(コールドシンタリング)はポリエチレンを溶解しない方法である。低温焼結は、ポリエチレンの溶解が実質的に全く起こらない限り、ポリエチレンに任意の適切な最高温度、例えば、約30℃、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145または約150℃を生じさせることができる。
【0053】
低温焼結を空気中で実施できるならば、ポリエチレン粉末の最初の圧縮により、空気含有量、より重要には酸素含有量を減らすことができ、その結果、圧密の間のおよび方法の後半部分の間のポリエチレンの酸化を減らすことができる。いくつかの実施形態では、低温焼結は、空気が窒素またはアルゴンなどの非反応性ガスによって置換される、ほぼ不活性な条件下で、または真空減圧下で実施することができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、インプラント材料は、溶融圧密することができる。溶融圧密には、任意の適切な溶融圧密手順を含めることができる。溶融圧密は、圧縮成形、直接圧縮成形、ラム押出し、熱間静水圧プレス、ラム押出し、高圧結晶化、射出成形およびそれらの組み合わせなどの、任意の適切な融点より上での圧密技術を含むことができる。溶融圧密には、約20 psi~250,000 psi、約100 psi~約100,000 psi、約2000~約10,000 psi、または約100 psi以下、または約200 psi、300、500、750、1,000、1,500、2,000、2,500、5,000、7,500、10,000、15,000、20,000、25,000、50,000、75,000、100,000、150,000、200,000、もしくは約250,000 psi以上などの任意の適切な圧力を含めることができる。
【0055】
ポリエチレンを溶融するのに十分な熱を発生させる。例えば、溶融圧密により、ポリエチレンの最低温度は、ポリエチレンが融解する限り、約60℃、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、210、220、230、250、275、または約300℃以上であることができる。
【0056】
溶融圧密は、空気中で実施することができ、または空気が窒素またはアルゴンなどの不活性ガスによって置換される、ほぼ不活性の条件下で、または真空減圧下で実施することができる。
【0057】
添加剤
様々な実施形態において、本発明は、ヨウ素を注入する前に、ビタミンEなどの1または複数の酸化防止剤をポリエチレンに添加する方法を提供する。適切な酸化防止剤は上記に詳細に記載されている。
【0058】
次のシーケンスに示すように、ポリエチレンの酸化はフリーラジカル経路を介して起こりうるため、酸化防止剤はインプラントに有用である。
RH + IN → R・ 開始
R・ + O2 → ROO・
ROO・ + RH → ROOH + R・ 伝搬
ROOH → RO・ + HO・
RO・ + RH → ROH + R・ 鎖の枝分かれ
HO・ + RH → HOH + R・
ROO・(RO・など) → 不活性生成物 終結
ROO・ + AH → ROOH + A・
RO・ + AH → ROH + A・ 阻害(安定化)
HO・ + AH → HOH + A・
【0059】
上記のシーケンスでは、RHはポリマー(例えばUHMWPEなどのポリエチレン)、INは開始剤(例えば照射)、AHは阻害剤(例えばフリーラジカルを捕捉する酸化防止剤)である。
【0060】
酸化防止剤は、例えば、トコフェロール、トコフェロール亜リン酸エステル、トコトリエノール、ビタミンE、ビタミンE酢酸エステル、ビタミンE亜リン酸エステル、ローズマリーオイル、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、ブタン二酸ジメチルエステル/4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノール共重合体、タンニン酸、ビルベリー抽出物、ビタミンC、カロテン、フラボノイド、イソフラボノイド、ネオフラボノイド、リグニン、キニン、ユビキノン、ビタミンK1、金属、グルタチオン、没食子酸プロピル、没食子酸オクチル、没食子酸ラウリル、レスベラトロール、ロスマリン酸、ルチン、5-アミノサリチル酸、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、フェノール化合物、および単量体形または重合体形のヒンダードアミン安定剤である。
【0061】
様々な実施形態において、酸化防止剤は、フリーラジカルが酸素と反応して酸化種を形成する前に、酸化防止剤がフリーラジカルを中和できるような、適切なフリーラジカルスカベンジャー(捕捉剤)であり得る。酸化防止剤は、酸素含有環境で溶融安定化されたときに酸化層が少ないかまたは全く存在しないUHMWPEを含む溶融安定化材料など、酸化に抵抗できるUHMWPEを含むインプラントを形成可能にする、任意の適切な酸化防止剤であり得る。酸化防止剤または複数の酸化防止剤は、液体組成物の任意の適切な重量%、例えば、液体組成物の約0.01重量%~約100重量%、約1重量%~約100重量%、約5重量%~約100重量%、約0.01重量%以下、または組成物の約0.1重量%、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5、99.9、99.99、または約99.999重量%以上を含めることができる。1または複数の酸化防止剤は、UHMWPEを含む酸化防止剤が注入された固体材料、UHMWPEを含む溶融圧密材料、UHMWPEを含む予熱材料、UHMWPEを含む照射材料など、UHMWPEを含む材料の任意の適切な重量%または、液体組成物の約0.01重量%~約20重量%、約0.1重量%~約5重量%、約0.01重量%以下、または約0.05重量%、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.2、1.4、1.6、1.8、2、2.2、2.4、2.6、2.8、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、10、15、または約20重量%以上のUHMWPEを含む溶融安定化材料を含めることができる。
【0062】
様々な実施形態において、酸化防止剤は、トコフェロール、トコフェロール亜リン酸エステル(亜リン酸エステル保護基を含むトコフェロール)、トコトリエノール、ビタミンE、ビタミンE酢酸エステル、Irganox(登録商標)1010〔ペンタエリスリトール・テトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)〕、Tinuvin(登録商標)622LD〔ブタン二酸ジメチルエステル/4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノール共重合体〕、タンニン酸、ビルベリー抽出物、ビタミンC(例えばパルミチン酸アスコルビルまたは他の脂溶性形態)、カロテン(例えばビタミンA、リコピン)、フラボノイド(例えばフラボノール)、イソフラボノイド、ネオフラボノイド、リグニン(例えばエンテロジオール)、キニン、ユビキノン(例えば補酵素Q10)、ビタミンK1、金属(例えばセレン)、グルタチオン、没食子酸プロピル、没食子酸オクチル、没食子酸ラウリル、レスベラトロール、ロスマリン酸、ルチン、5-アミノサリチル酸、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、フェノール化合物(例えばt-ブチルヒドロキノン)、および単量体形または重合体形のヒンダードアミン系安定剤〔例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イルの誘導体、例えば2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル〕オキシダニルまたはTEMPO〕であり得る。いくつかの実施形態において、酸化防止剤は、ビタミンE、ビタミンE酢酸エステル、ビタミンE亜リン酸エステル(亜リン酸エステル型保護基を含むビタミンE)、ペンタエリスリトール・テトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、ブタン二酸ジメチルエステル/4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノール共重合体、タンニン酸、ローズマリーオイル、およびビルベリー抽出物のうちの1つでありうる。様々な実施形態において、ビタミンE亜リン酸エステルまたはトコフェロール亜リン酸エステルを使用することができ、これは、加水分解(例えば、任意の酸または塩基を含む水への曝露)などの適切な脱保護手段を使用して脱保護することにより、それぞれビタミンEまたはトコフェロールを提供することができる。
【0063】
例えば、酸化防止剤は、式(I)もしくは(Ib)の化合物
【化1】
またはそれらの塩、またはそれらの組み合わせであり得る。変数R1、R2、R3、R4、およびR5は、各々独立に、水素またはアルキルである。変数R10は-OR11であり、R11は水素もしくはアルキル、または-O・である。変数Eは、トコフェリル基またはトコトリエノール基を表す。変数Yは以下:
【化2】
を表す。ここで変数R6は、水素、アルキル、トコフェリル基、トコトリエノール基、または次の式の基:
【化3】
である。
様々な実施形態において、この方法は、方法の任意の適切な段階で(例えば、照射工程の後)、酸化防止剤を脱保護することを含むことができる。脱保護は、加水分解(例えば、水溶液としての水でまたは空気中での水への曝露)などの任意の適切な手段を介して行うことができる。
【0064】
本明細書で使用される場合、「ビタミンE」(例えば、単独で、またはビタミンE酢酸エステルなどの誘導体として)は、ラセミ形α-トコフェロール、RRR-α-トコフェロール、SRR-α-トコフェロール、SSR-α-トコフェロール、SRS-α-トコフェロール、SSS-α-トコフェロール、RSR-α-トコフェロール、RRS-α-トコフェロール、RSS-α-トコフェロール、ラセミ形β-トコフェロール、RRR-β-トコフェロール、SRR-β-トコフェロール、SSR-β-トコフェロール、SRS-β-トコフェロール、SSS-β-トコフェロール、RSR-β-トコフェロール、RRS-β-トコフェロール、RSS-β-トコフェロール、ラセミ形γ-トコフェロール、RRR-γ-トコフェロール、SRR-γ-トコフェロール、SSR-γ-トコフェロール、SRS-γ-トコフェロール、SSS-γ-トコフェロール、RSR-γ-トコフェロール、RRS-γ-トコフェロール、RSS-γ-トコフェロール、ラセミ形δ-トコフェロール、RRR-δ-トコフェロール、SRR-δ-トコフェロール、SSR-δ-トコフェロール、SRS-δ-トコフェロール、SSS-δ-トコフェロール、RSR-δ-トコフェロール、RRS-δ-トコフェロール、およびRSS-δ-トコフェロールでありうる。
【0065】
トコフェロールは次の構造を有することができる:
【化4】
変数R1、R2、およびR3は各々独立に、水素、置換または非置換(C1~C10)アルキル、および置換または非置換(C1~C10)アルケニルから選択される。トコフェロールの立体化学は、ラセミ体、またはRRR、SRR、SSR、SRS、RSR、RRS、RSSおよびSSS体のうちの少なくとも1つであることができる。いくつかの実施形態において、R1、R2、およびR3は各々メチルなどの(C1~C10)アルキルである(例えばα-トコフェロール)。いくつかの実施形態において、R1およびR3は各々メチルなどの(C1~C10)アルキルであり、そしてR2は水素である(β-トコフェロール)。いくつかの実施形態において、R2およびR3は各々、メチルなどの(C1~C10)アルキルであり、そしてR1は水素である(γ-トコフェロール)。いくつかの実施形態では、R1およびR2は各々水素であり、そしてR3はメチルなどの(C1~C10)アルキルである(δ-トコフェロール)。
【0066】
トコトリエノールは次のような構造を有することができる。
【化5】
変数R1、R2、およびR3は各々独立に、水素、置換または非置換(C1~C10)アルキル、および置換または非置換(C1~C10)アルケニルから選択される。トコトリエノールの立体化学は、ラセミ体またはR体とS体のうちの少なくとも1つであり得る。いくつかの実施形態において、R1、R2およびR3は各々、メチルなどの(C1~C10)アルキルである(例えばα-トコトリエノール)。いくつかの実施形態において、R1およびR3は各々、メチルなどの(C1~C10)アルキルであり、そしてR2は水素である(β-トコトリエノール)。いくつかの実施形態において、R2およびR3は各々、メチルなどの(C1~C10)アルキルであり、そしてR1は水素である(γ-トコトリエノール)。いくつかの実施形態では、R1およびR2は各々水素であり、そしてR3はメチルなどの(C1~C10)アルキルである(δ-トコトリエノール)。トコフェロールまたはトコトリエノールは、天然または合成のものであることができる。
【0067】
酸化防止剤を添加する方法は、ポリエチレンを含むインプラント材料を入手または提供することを含むことができる。この方法は、インプラント材料を液体組成物でコーティングすること、あるいは代わりにを埋め込むことを含むことができる。この方法は、酸化防止剤が注入された固体材料を溶融圧密して、溶融圧密された材料を提供することを含むことができる。
【0068】
ポリエチレンに酸化防止剤を添加する方法は、方法の任意の適切な工程の前、間、または後に、任意の適切な物理的操作(例えば、低温焼結(コールドシンタリング)、コーティング、溶融圧密、予熱、照射、または溶融安定化)、例えば成形、圧縮、圧密、材料の除去、またはその他の方法で処理して、目的の形状、部品サイズ、またはその他の物理的属性を提供し、部品をその意図された用途に適したものにするなどを含むことができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、1または複数の薬剤、例えば、生物活性剤を材料に添加することができる。そのような添加は、調製の任意の段階で達成することができるが、生物活性剤が失活する可能性を低減するために、任意の熱処理の実施後が望ましい場合がある。例示的な薬剤としては、抗生物質、ステロイド、薬物(例えば、鎮痛剤)、骨形成性タンパク質などの成長因子、骨細胞、破骨細胞または他の細胞、ビタミン、コンドロイチン、グルコサミン、グリコサミノグリカン、ホスホエノールピルビン酸、ATP、5′-AMPなどの高エネルギーリン酸化合物および他の小分子生物学的製剤または他の化学的もしくは生物学的薬剤が挙げられる。いくつかの例では、ポリエチレンを含む材料に幹細胞を積載することができ、そのような材料は、ポリマーのフレームワーク内の骨または軟骨の成長と分化を可能にする足場として機能することができる。ポリエチレンを含む材料中の酸化防止剤の存在(例えば、UHMWPE粉末との混合およびインプラント材料のコーティングのうちの少なくとも1つを介して)は、その使用環境でのポリマー足場の崩壊を防ぐように作用し、足場に積載した生物活性剤または幹細胞に酸化的保護を提供することも可能である。
【0070】
インプラントの照射
圧密されたポリエチレンインプラントは、注入の前または後に照射することができる。照射は、圧密後にポリエチレンインプラントに架橋を誘導する照射を含むことができる。代替的または追加的に、注入後にインプラントに照射を行うことができる。照射は、例えば、電子線またはガンマ線照射によって行うことができる。一般に、照射は、例えば、約60℃~約300℃の温度で行うことができ、その結果、架橋が誘導される。場合により、架橋を誘導する照射は、ポリエチレンが溶融しない温度で行うことができる。照射は、例えば、約1 kGy~約100,000 kGyの総照射線量で行うことができる。
【0071】
いくつかの実施形態では、この方法は、架橋用の照射の前に溶融圧密された材料を予熱することを含むことができる。他の実施形態では、架橋用の照射の前に予熱は起こらない(例えば、圧密された材料は、照射が始まるとき、ほぼ周囲温度または室温である)。いくつかの実施形態では、架橋を誘導する照射工程は、例えば、圧密された材料がまだ完全に冷却されていない状態で、圧密の直後に実行でき、その結果、材料は架橋を誘導する照射時に効果的に予熱されうる。
【0072】
いくつかの実施形態では、予熱は、照射開始の時点で材料が予熱温度を有するように、室温より高く、かつポリエチレンの融点またはポリエチレンと他の成分との混合物の融点より下または上の温度、例えば、約50℃~約110℃、または約50℃以下、または約55℃、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、140、145、または約150℃以上に加熱することを含みうる。
【0073】
架橋を誘導する照射(crosslinking irradiation)は、任意の適切な照射であってよい。架橋を誘導する照射は、可視光放射、赤外線放射、紫外線放射、電子線放射、ガンマ線、またはX線放射であることができる。電離放射線を使用して架橋反応を行う場合、放射線は、原子パイル、共鳴変圧器加速器、ファンデグラフ電子加速器、ライナック電子加速器、ベータトロン、シンクロトロン、サイクロトロン等である。これらの供給源からの放射線は、電子、陽子、中性子、重水素、ガンマ線、X線、アルファ粒子、ベータ粒子などの電離放射線を発生する。電離放射線が使用される場合、十分な放射線量率および/または吸収線量を使用して、架橋を誘導し、そして/または架橋の程度を制御することができる。いくつかの実施形態では、照射中に、ポリエチレンの温度またはポリエチレンと他の成分との混合物の温度を、その融点未満に維持することができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、架橋を誘導する照射中に、ポリエチレンまたはポリエチレンと他の成分との混合物の温度を、その融点を超えて上昇させることができる。様々な実施形態において、照射中に温度を上昇させることができ、または温度を約60℃、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、210、220、230、250、275、もしくは約300℃以上に維持することができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、ポリエチレンまたはポリエチレンと他の成分との混合物は、照射前に、例えば、室温より高く、その融点より低いまたは高い温度に予熱することができる。様々な実施形態において、ポリエチレンまたはポリエチレンと他の成分との混合物は、その融点より低い温度に予熱され、次いで、予熱されたポリエチレンまたはポリエチレンと他の成分との混合物の温度を、融点より低く維持しながら照射することができる。
【0076】
様々な実施形態において、電子線照射またはガンマ線照射などの架橋を誘導する照射は、約1 kGy(キログレイ)~約100,000 kGy、10 kGy~約1000 kGy、約50 kGy~約500 kGy、50 kGy~300 kGy、または約1 kGy以下、または約5、10、15、20、25、50、75、100、125、150、175、200、250、300、350、400、500、750、1,000、1,250、1,500、1,750、2,000、2,500、3,000、4,000、5,000、7,500、10,000、15,000、20,000、25,000、50,000、75,000、もしくは約100,000 kGy以上の総線量を使用する。様々な実施形態において、照射は、約0.001 mGy/h~約500 MGy(メガグレイ)/h、約1 mGy/h~約50 MGy/h、または約0.001 mGy/h以下、または約0.005 mGy/h、0.01、0.05、0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、24、26、28、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、400、または約500 MGy/h以上の線量率を使用することを含む。
【0077】
いくつかの実施形態において、架橋を誘導する照射は、例えば、架橋剤ポリマーの存在下で行うことができる。架橋剤ポリマーは、ポリエチレンの内部で架橋を誘導することがある。架橋剤ポリマーは、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、またはそれらの組み合わせであり得る。あるいは、フリーラジカルを掃去することができる他の試薬の存在により、架橋の程度を低下させることができる。
【0078】
方法の任意の適切な段階(例えば、圧密、予熱、照射、および注入のいずれか)の前、間、または後に、追加のポリマーをポリエチレン含有材料とブレンドすることができる。一実施形態では、金属および/またはセラミック関節コンポーネントなどのトライボロジーコンポーネント、および/または事前に組み立てられた双極性コンポーネントを、ポリエチレンを含む材料と接合することができる。他の実施形態では、金属の裏打ち(例えば、プレートまたはシールド)を追加することができる。さらなる実施形態では、小柱状金属、繊維金属、SulmeshTM(商標)コーティング、メッシュ、海綿状チタン、および/または、金属もしくはポリマーコーティングなどの表面コンポーネントを、ポリエチレンを含む材料に添加または接合することができる。タンタル、スチール鋼および/またはチタン製のボール、ワイヤー、ボルトまたはペグ(栓)などの無線位置標識または無線パシファイアー(pacifier)を追加することができる。リング、ボルト、ペグ、スナップ、および/またはセメント/接着剤などのロック機能を追加することができる。これらの追加のコンポーネントを使用して、サンドイッチ型インプラントの設計、放射性標識インプラント、骨との直接接触を防ぐための金属裏打ち型インプラント、機能的成長面および/またはロック機能を備えたインプラントを成形することができる。
【0079】
いくつかの実施形態において、インプラントは、注入後に追加的または代替的に照射することができる。架橋を誘導する照射と比較して、この工程は、インプラントにヨウ素が注入された後に行うことができ、必ずしもインプラント材料に架橋を誘発するとは限らない。この場合、照射は、例えば電子線またはガンマ線照射によって行うことができる。一般に、照射は、例えば約60℃から約300℃の温度で行うことができる。
【0080】
インプラントの注入
ポリエチレンインプラントにヨウ素を注入することが可能である(または代わりに、成形前にヨウ素をポリエチレンに混合することもできる)。いくつかの実施形態において、ポリエチレンは、ヨウ素で飽和させることができる。遊離型ヨウ素は、インビボでのヨウ素の抗菌性放出を促進するのに魅力的である。ポビドンヨードは、ヨウ素を水溶性にすることができるヨウ素含有ポリビニルポリマーである。ポビドンヨードは、ポビドン(PVP)と、ヨウ化水素と、元素型ヨウ素との化学複合体であり、化学構造は次のとおりである:
【化6】
ポビドンヨードは、他の溶媒の中でも特に水、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ポリエチレングリセロール、およびグリセロールに可溶である。ポビドンヨードは、次の式に示すように、溶液中に遊離ヨウ素を徐々に放出する。
【数1】
溶液中では、この平衡状態が起こる。複合体と結合したヨウ素は、遊離ヨウ素を溶液中に長時間送達するためのリザーバー(貯蔵所)として働く。
【0081】
遊離ヨウ素は、脂質のヨウ素化と、細胞質および膜化合物の酸化を通して、真核細胞または原核細胞を死滅させる。具体的には、遊離ヨウ素は、細菌、真菌、原生動物、およびウイルスに対する抗菌剤として機能することができる。微生物は現在、遊離ヨウ素に対する耐性を生じることはない。
【0082】
一般に、ヨウ素を使用する医療機器または器具(または他の補助材料)に抗感染活性を提供することは、医療機器をヨウ素に曝露し、ヨウ素をポリマー型の医療機器に移行させる(送達する)ことによって果たすことができる。例えば、本明細書で論じられるポリエチレンインプラント材料などのポリマーは、樹脂、粉末、または固化された形態のいずれかで処理することができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、ポビドンヨードは、成形前に粉末ポリエチレン材料に直接混合することができる。ただし、ヨウ素を樹脂またはポリエチレンの粉末にブレンドすると、樹脂の固化に影響を与える可能性がある。従って、圧密された形態(例えば、圧密されたシート、バー、押し出し、またはネット)でのインプラント材料へのヨウ素の注入が好ましい。
【0084】
抗菌活性を達成するために必要なヨウ素の最小濃度は、約2 ppmのポビドンヨードである。従って、本明細書でポリエチレンインプラントを注入するために使用されるポビドンヨード溶液の濃度は、例えば、0.002 mg/mL超であることができる。
【0085】
いくつかの実施形態において、ヨウ素の供給源は、ヨウ素を水溶性にする、ポビドンヨード溶液などのヨウ素含有溶液であり得る。ポビドンヨード溶液の場合、濃度は、例えば約0.1重量%~約10.0重量%のポビドンヨード(例えば約1.0重量%~約3.0重量%のポビドンヨード)であり得る。
【0086】
ヨウ素源がヨウ素溶液である場合、ヨウ素は、例えば、水、エタノール、イソプロパノール、または他の適切な溶媒などの非プロトン性溶媒である溶媒中に存在することができる。溶媒として水を使用する場合、ヨウ素は、例えば、0.1%~10% w/wでありうる。極性溶媒を使用して、酸化剤(例えば、水、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ポリエチレングリセロール、グリセロール)の所望の濃度を構成するか、あるいは、ヨウ素(I2)またはヨウ化物(I-)を含む別の複合体を使用することができる。
【0087】
ヨウ素含有薬剤であるポビドンヨード(または他の適切なヨウ素含有酸化剤)のポリエチレンに対する重量比は、例えば、約1:1~50:1を超える、ポリエチレンに対するポビドンヨード溶液であることができる。ゼロを超える比率を使用できる。50:1以上の比率が効果的であり、注入速度が速くなる。比率が大きければ、ヨウ素の貯蔵庫(リザーバー)になりうる。
【0088】
ポリエチレンインプラントの注入は、例えば、インプラントの圧密後にヨウ素溶液にポリエチレンインプラントを浸水または浸漬することによって行うことができる。例えば、ポリエチレンインプラントは、ヨウ素溶液の浴に入れることができる。
【0089】
いくつかの例では、浴を温めて、ヨウ素をポリエチレンに効率的に取り込ませることができる。浴は、例えば、ほぼ室温(例えば約25℃)から約100℃(例えば約80℃~約95℃)まで温めることができる。ポリエチレンの注入中に加熱を行うことができる。ヨウ素がより速い速度で注入されるように浴を温めることが可能であるが、圧密したポリエチレンの完全性に影響を与えるほどに加温してはならない。100℃を超える温度は、ポリエチレンの機械的特性を損なう可能性があり、インプラントの長期使用に影響を与える可能性がある。いくつかの実施形態では、ヨウ素注入ポリエチレンを後加熱して、ポビドンヨードの均質性および深さを高めることもできる。
【0090】
浸漬は、例えば、約1時間~約16日間、あるいは最大約30日間、または圧密したポリエチレンが飽和するまで実施することができる。
【0091】
ポリエチレンインプラント形態の全体にヨウ素を注入することもでき、または寛骨臼カップの縁など、特定の機能のみにヨウ素を注入することもできる。インプラントの特定の部分は、例えば、注入中にマスキングするか、または浸漬しないでおくことが可能である。ヨウ素濃度は、構造体のマスキングまたは選択的露出によって成形物全体にわたり変化させることもできる。
【0092】
UHMWPE、またはビタミンEなどの酸化防止剤を含む他のポリマーにヨウ素を注入することによって、ヨウ素の酸化活性による材料の酸化を低減することができる。
【実施例0093】
本発明の様々な実施形態は、例示として提供される以下の実施例を参照することによって、よりよく理解することができる。本発明は、本明細書に与えられる実施例に限定されない。
【0094】
実施例1.ヨウ素が注入されたポリエチレンサンプルの準備
ヨウ素注入ポリエチレンサンプルは、以下の表1に要約される材料を使って調製した。
【0095】
【表1】
【0096】
使用したヨウ素溶液はAcros Organics社(ベルギー国ヘール)のポビドンヨード#10730575であった。使用した様々なポリエチレンには、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ビタミンE UHMWPE、およびビタミンE高度架橋ポリエチレンが含まれていた。
【0097】
まず、ポリエチレンをインプラント形に成形して圧密した。ポリエチレン粉末を、直径2インチ(5.08 cm)の円筒形の圧縮用金型の中で、21トンの力の下、周囲温度で30分間低温焼結した。
【0098】
サンプルBおよびCでは、イソプロピルアルコールに溶解した17重量%のビタミンE溶液を、低温焼結した円筒形の外面に綿棒で均一に塗布した。塗布した総ビタミンEは約4~5グラムであった。低温焼結形態は、塗布された全ての溶液を容易に吸収した。この形態を窒素パージ下で、周囲温度にて12時間乾燥させた。次に、全てのサンプルにおいて、この形態を圧縮用金型に戻し、ポリエチレンの融点を超える圧力下で圧密させた。
【0099】
続いて、サンプルCを、架橋を誘導する照射処理した。サンプルA、B、Cについては、ガンマ線照射を約25 kGy~約45 kGy(滅菌用)の線量と約60℃~約300℃の温度で使用した。
【0100】
圧密および任意の架橋を誘導する照射の後(サンプルCの場合)、サンプルにポビドンヨードを注入した。ポビドンヨード溶液は、各90 gの脱イオン(DI)水につき約10 gのポビドンヨードを使用して、脱イオン(DI)水中10%(w/w)(重量比)の濃度に調製した。10%ポビドンヨード溶液の3つの150 mL浴を使用した。3つのポリエチレンサンプルA、B、およびCを、各々1つの浴に浸漬した。各々の浴の容器を平均温度約60℃の湯浴に入れた。約60℃の温度により、圧密したポリエチレンを分解させることのない適度な速度で、ヨウ素の取り込みを可能にした。サンプルを14日間浸漬しておいた。得られたサンプルは、ポリエチレンサンプルにヨウ素が注入されるにつれて徐々に色が変化した。
【0101】
UHMWPE+ヨウ素サンプルA~Cを、注入、滅菌、およびエージング後のポリエチレンインプラントの2箇所の位置のヨウ素濃度について試験した。サンプルは、直径10 mmの開口部を使用して蛍光X線(XRF)で試験した。サンプルの分析は、下記の濃度(density)のポビドンヨードを示した。
【0102】
【表2】
【0103】
XRF測定は、サンプル中のポビドンヨードの濃度を分析した。サンプルは、試験した位置に応じて、約70~約90μg/cm3のポビドンヨードを示した。
【0104】
実施例2.ヨウ素注入ポリエチレンサンプルからの溶出
実施例1からのサンプルを50℃に維持し、経時的なヨウ素の放出について試験した。放出実験は、人体の場合と比較して誇張された条件のもとで実施した。サンプルを約50℃の水浴に入れた。サンプル条件を以下の表3に要約する。
【0105】
【表3】
【0106】
サンプルD~Fの全てを、エージング前に約25 kGy~約27 kGyでガンマ線滅菌した。ヨウ素の放出を21日間にわたって観察した。サンプルD(ヨウ素注入UHMWPE)、F(ビタミンE含有のヨウ素注入HXPE)、および対照UHMWPEの着色を、1、14、および21日間にわたって観察した。これらの条件でヨウ素の大部分が約21日後に放出された。生理的状態でヨウ素が放出されるまでには、それよりはるかに長い時間がかかると予想される。
【0107】
実施例3.ヨウ素注入ポリエチレンサンプルの酸化指数。
サンプルは、酸化的分解、摩耗分析、および機械的特性についても試験した。サンプルを、ASTM F2003-02(2015)に従って、高温および高酸素圧を使用してエージングした。エージングしたサンプルを、UHMWPE(入手した時のまま)、エージングしたUHMWPE、および他のエージングしたポリマーサンプルと比較した。試験したサンプルは、以下の表4に要約される。
【0108】
【表4】
【0109】
図1は、上記の表4に更に詳細に説明されている各サンプル(UHMWPE、ヨウ素UHMWPE、VE UHMWPE、VEヨウ素UHMWPE、HXLPE VE、およびHXLPE VEヨウ素)の酸化指数(oxidative index)を示す。ヨウ素処理したサンプルの酸化指数は、ビタミンEを含まない「ヨウ素UHMWPE」サンプルを除いて、一般的に低かった。
【0110】
酸化防止剤であるビタミンEを注入したサンプルの酸化指数は1未満であった。全体として、全てのビタミンE注入ポリマーについては酸化は認められなかった(例えば、グラフ中の酸化指数が1未満)。ヨウ素注入UHMWPEの場合にのみ酸化が見られた(例えば、酸化指数が1より上)。
【0111】
実施例4.ヨウ素注入ポリエチレンサンプルの機械的特性。
ヨウ素注入ポリエチレンサンプルは、図2に示すピン・オン・プレート(pin-on-plate)分析を使用する摩耗分析についても試験した。サンプルの重量を測定して、ピン・オン・プレート摩耗分析の回数あたりの平均累積質量損失を示した。図2に示されるように、ヨウ素注入されたがエージングしていないUHMWPEのサンプルを、未使用UHMWPEと比較した。ここで、未使用(virgin)UHMWPEは、1,000,000回数での試験で最大0.0072 gの平均累積質量損失を示した。これに対して、ヨウ素注入サンプルの場合、1,000,000回数の試験で約0.0028 gの平均累積質量損失を示した。
【0112】
図3Aと3Bにそれぞれ示されるとおり、各サンプルを弾性率および破断点伸びを含む機械的特性についてさらに試験した。機械的特性について試験したサンプルには、ヨウ素注入UHMWPE(「Hヨウ素UHMWPE」および「Vヨウ素UHMWPE」)に加えて、UHMWPE(「HUHMWPE」および「VUHMWPE」)が含まれていた。試験サンプルには、成形方向に対して垂直に機械加工したサンプル(「H」)と、成形方向に対して垂直の薄断片サンプル(「V」)の両方が含まれていた。機械的特性は、50 kN負荷セルで較正されたInstron 5985を用いて試験した。使用した試験法は、5.0 mm/分の速度での標準ASTM D638-10の手順であった。
【0113】
図3A~3Dに示される通り、非注入UHMWPEの場合の約350 MPa~約400 MPaの弾性率と比較して、ヨウ素注入UHMWPEについては約300 MPa~約350 MPaの弾性率を示した。サンプルは、非注入UHMWPEの場合の約415%~約450%の破断点伸びと比較して、ヨウ素注入UHMWPEについては約475%~約515%の破断点伸びを示した。
【0114】
ヨウ素注入サンプルと未使用サンプルの両方の降伏点引張強度は、約20 MPa~約22 MPaであった。しかしながら、破断点引張強度は、未使用サンプルの約24 MPa~約25 MPaと比較して、ヨウ素注入サンプルでは約25 MPa~約27 MPaであった。全体として、サンプルの機械的特性を試験した場合、より延性が高くなった。一般に、UHMWPEへのヨウ素の添加はサンプルの機械的特性に悪影響を与えなかった。
【0115】
図4は、サンプルの衝撃強度(kJ/m2)を示している。ここで、未使用UHMWPEサンプルの平均衝撃強度は約100 kJ/m2であったが、ヨウ素注入UHMWPEサンプルの平均衝撃強度は約120 kJ/m2であった。
【0116】
実施例5
以下の表5に要約されている材料を使用して、ヨウ素注入ポリエチレンサンプルの第二のセットを調製した。
【0117】
【表5】
【0118】
使用したポビドンヨードは、Acros Organics社(ベルギー国ヘール)からのポリビニルピロリドン-ヨウ素複合体であった。使用したルゴール(Lugol)溶液は、APC Pure社(英国チェシャー州)からのルゴールヨウ素15%であった。使用した様々なポリエチレンは、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を含んでいた。
【0119】
まず、ポリエチレンをインプラント形に成形して圧密した。ポリエチレン粉末を、直径2インチ(5.08 cm)の円筒形の圧縮用金型内で、21トンの力の下で、周囲温度で30分間低温焼結した。
【0120】
圧密後、サンプルにポビドンヨード溶液またはルゴール溶液のヨウ素を注入した。ポビドンヨード溶液は、脱イオン(DI)水中0.1~10%w/w(重量比)で調製した。ルゴール溶液は入手した時のままの状態で使用した。ポリエチレンサンプルをそれぞれ、約150 mL~約1 Lの各溶液の浴に浸漬した。各浴の容器は、平均温度約60℃~最大約95℃の温浴に沈めた。使用温度により、圧密したポリエチレンを分解させることなく、妥当な速度でヨウ素を放出させることができた。サンプルを1~14日間浸漬した。ポリエチレンサンプルにヨウ素が注入されると、得られるサンプルの色が変化した。
【0121】
ヨウ素注入UHMWPEサンプルは、注入後にさまざまな位置でヨウ素濃度を試験した。サンプルは、直径3 mmの開口部を使用して蛍光X線(XRF)により試験した。例えば、1%w/w(重量比)でヨウ素を注入したUHMWPEサンプルD~Fの分析では、6日間で次のヨウ素濃度が検出された。
【0122】
【表6】
【0123】
XRF測定では、サンプル中のヨウ素濃度を測定した。サンプルは、注入時間に応じて約250~約930μg/cm3のヨウ素濃度を示した。
【0124】
追加の実施形態。
以下の例示的な実施形態が提供されるが、その番号付けは重要度を指定するものとして解釈してはならない。
【0125】
実施形態1は、架橋したヨウ素注入ポリエチレンを含むインプラントを含む。
【0126】
実施形態2は、ポリエチレンインプラント中のヨウ素の平均濃度が約5~約3000μg/cm3である、実施形態1を含む。
【0127】
実施形態3は、ポリエチレンインプラント中のヨウ素の平均濃度が約200~約1000μg/cm3である、実施形態1~2のいずれかを含む。
【0128】
実施形態4は、ヨウ素がポリエチレン中に均一に分布している、実施形態1~3のいずれかを含む。
【0129】
実施形態5は、ポリエチレンがヨウ素で飽和されている、実施形態1~4のいずれかを含む。
【0130】
実施形態6は、ポリエチレンが、超高分子量ポリエチレン、超低分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、高分子量ポリエチレン、高密度架橋ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、分岐ポリエチレン、またはそれらの組み合わせである、実施形態1~5のいずれかを含む。
【0131】
実施形態7は、ポリエチレンが酸化防止剤を含む、実施形態1~6のいずれかを含む。
【0132】
実施形態8は、酸化防止剤が、トコフェロール、トコフェロール亜リン酸エステル、トコトリエノール、ビタミンE、ビタミンE酢酸エステル、ビタミンE亜リン酸エステル、ローズマリーオイル、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、ブタン二酸ジメチルエステル/4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノール共重合体、タンニン酸、ビルベリー抽出物、ビタミンC、カロテン、フラボノイド、イソフラボノイド、ネオフラボノイド、リグニン、キニン、ユビキノン、ビタミンK1、金属、グルタチオン、没食子酸プロピル、没食子酸オクチル、没食子酸ラウリル、レスベラトロール、ロスマリン酸、ルチン、5-アミノサリチル酸、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、フェノール化合物、および、単量体形または重合体形のヒンダードアミン安定剤のうちの少なくとも1つである、実施形態1~7のいずれかを含む。
【0133】
実施形態9は、酸化防止剤がポリエチレン中に均一に分布している、実施形態1~8のいずれかを含む。
【0134】
実施形態10は、酸化防止剤がポリエチレンの約0.01重量%~約5.0重量%である、実施形態1~9のいずれかを含む。
【0135】
実施形態11は、酸化防止剤がポリエチレンの約0.05重量%~約0.50重量%である、実施形態1~10のいずれかを含む。
【0136】
実施形態12は、インプラントが、股関節、膝、肩、背中、肘、胸部、胸骨柄、足、足首、または歯科用インプラントである、実施形態1~11を含む。
【0137】
実施形態13は、ポリエチレンが、ピン・オン・プレート分析における摩耗分析の約10,000回数~約1,300,000回数に渡り、約0.001 g~約0.005 gの平均累積質量損失を有する、実施形態1~12のいずれかを含む。
【0138】
実施形態14は、ポリエチレンが、ピン・オン・プレート分析における摩耗分析の約20,000回数~約1,200,000回数に渡り、約0.001 g~約0.003 gの平均累積質量損失を有する、実施形態1~13のいずれかを含む。
【0139】
実施形態15は、ポリエチレンが約250 MPa~約400 MPaの弾性率を有する、実施形態1~14のいずれかを含む。
【0140】
実施形態16は、ポリエチレンが約300 MPa~約350 MPaの弾性率を有する、実施形態1~15のいずれかを含む。
【0141】
実施形態17は、ポリエチレンが約475%~約515%の破断点伸びを有する、実施形態1~16のいずれかを含む。
【0142】
実施形態18は、ポリエチレンが約490%~約505%の破断点伸びを有する、実施形態1~17のいずれかを含む。
【0143】
実施形態19は、ポリエチレンが約0~約8の酸化指数(oxidative index)を有する、実施形態1~18のいずれかを含む。
【0144】
実施形態20は、ポリエチレンが約0~約1の酸化指数を有する、実施形態1~19のいずれかを含む。
【0145】
実施形態21は、ポリエチレンを含むインプラントを製造する方法であって、この方法は、ポリエチレンにヨウ素が注入されるように、ポリエチレンをヨウ素源に曝露することを含む。
【0146】
実施形態22は、ヨウ素注入ポリエチレンが、ヨウ素で飽和されている、実施形態21を含む。
【0147】
実施形態23は、ヨウ素源がヨウ素含有溶液を含む、実施形態21~22のいずれかを含む。
【0148】
実施形態24は、ヨウ素源が、ポビドンヨードおよびヨウ素水溶液からなる群より選択されるヨードフォアを含む、実施形態21~23のいずれかを含む。
【0149】
実施形態25は、ヨウ素を含む溶液が非プロトン性溶媒である溶媒を含む、実施形態21~24のいずれかを含む。
【0150】
実施形態26は、非プロトン性溶媒が水、エタノール、またはイソプロパノールである、実施形態21~25のいずれかを含む。
【0151】
実施形態27は、インプラントが酸化防止剤をさらに含む、実施形態21~26のいずれかを含む。
【0152】
実施形態28は、インプラントに酸化防止剤を添加することをさらに含む、実施形態21~27のいずれかを含む。
【0153】
実施形態29は、酸化防止剤の添加が混合または注入を含む、実施形態21~28のいずれかを含む。
【0154】
実施形態30は、ヨウ素含有溶液が約0.1重量%~約10.0重量%のポビドンヨードである、実施形態21~29のいずれかを含む。
【0155】
実施形態31は、ヨウ素含有溶液が約1.0重量%~約3.0重量%のポビドンヨードである、実施形態21~30のいずれかを含む。
【0156】
実施形態32は、注入が、ポリエチレンをヨウ素溶液に浸漬することを含む、実施形態21~31のいずれかを含む。
【0157】
実施形態33は、ポリエチレンの浸漬が最大約30日間行われる、実施形態21~32のいずれかを含む。
【0158】
実施形態34は、ポリエチレンの浸漬が約1時間~約16日間行われる、実施形態21~33のいずれかを含む。
【0159】
実施形態35は、ポリエチレンの浸漬が摂氏約20度~約100度で行われる、実施形態21~34のいずれかを含む。
【0160】
実施形態36は、ポリエチレンの浸漬が摂氏約60度~約95度で行われる、実施形態21~35のいずれかを含む。
【0161】
実施形態37は、ヨウ素含有溶液のポリエチレンに対する重量比が、約1:1~約50:1である、実施形態21~36のいずれかを含む。
【0162】
実施形態38は、注入前にポリエチレンを圧密させることをさらに含む、実施形態21~37のいずれかを含む。
【0163】
実施形態39は、注入後にポリエチレンを照射することをさらに含む、実施形態21~38のいずれかを含む。
【0164】
実施形態40は、照射が、電子線照射およびガンマ線照射のうちの少なくとも1つを含む、実施形態21~39のいずれかを含む。
【0165】
実施形態41は、照射が約60℃~約300℃の温度で行われる、実施形態21~40のいずれかを含む。
【0166】
実施形態42は、照射が約1 kGy~約100,000 kGy(キログレイ)の総照射線量を含む、実施形態21~41のいずれかを含む。
【0167】
実施形態43は、照射前にポリエチレンを予熱することをさらに含む、実施形態21~42のいずれかを含む。
【0168】
実施形態44は、照射がポリエチレンの架橋を誘導する、実施形態21~43のいずれかを含む。
【0169】
実施形態45は、照射が架橋ポリマーの存在下で行われる、実施形態21~44のいずれかを含む。
【0170】
実施形態46は、架橋結合するポリマーが、トリメチロールプロパン、アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、およびそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つである、実施形態21~45のいずれかを含む。
【0171】
実施形態47は、ポリエチレンを含有する架橋したヨウ素注入インプラントを移植することを含む、インプラント上またはその近傍の微生物形成を防止する方法であって、移植後にヨウ素がインプラントから徐々に放出される方法を含む。
【0172】
実施形態48は、ヨウ素の放出が、約15日間~約10年間の期間にわたってヨウ素を徐々に放出することを含む、実施形態47を含む。
【0173】
実施形態49は、ヨウ素の放出が、約15日間~約30日間の期間にわたってヨウ素を徐々に放出することを含む、実施形態47~48のいずれかを含む。
【0174】
実施形態50は、前記方法がインプラントの表面上での細菌の増殖を実質的に防止する、実施形態47~49のいずれかを含む。
【0175】
実施形態51は、前記方法がインプラントの表面上でのバイオフィルム形成を実質的に防止する、実施形態47~50のいずれかを含む。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-03-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者への挿入前にインプラントを製造する方法であって、前記インプラントがポリエチレンを含み、前記方法が、
前記ポリエチレンにヨウ素が注入されるように前記ポリエチレンをルゴール溶液に暴露する工程、ここで、前記ポリエチレンを暴露する工程は、前記ポリエチレンをヨウ素溶液中に浸すことを含む、及び
前記ポリエチレンを照射する工程、
を含む、方法。
【請求項2】
前記溶液が、約0.1重量%~約10.0重量%のポビドンヨードである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記インプラントに酸化防止剤を添加することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記注入が、約30日間までの間、前記ポリエチレンを前記ヨウ素溶液中に浸漬することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリエチレンの浸漬が、約20~約100℃で行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ヨウ素を含む溶液対前記ポリエチレンの重量比が、約1:1~約50:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
注入前に前記ポリエチレンを圧密させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法により製造されたインプラント上またはその近傍における微生物形成を防止する方法であって、前記方法が、照射されたポリエチレンを含む架橋したヨウ素注入インプラントを移植する工程を含み、ここで前記移植後にインプラントから徐々にヨウ素が放出される方法。
【請求項9】
前記ヨウ素の徐々の放出が、約15日間~約10年間の期間に渡りヨウ素を放出することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1の方法により製造されたインプラント。
【請求項11】
前記インプラントが、架橋したヨウ素注入ポリエチレンを含む、請求項10に記載のインプラント。
【請求項12】
前記ヨウ素が、ポリエチレンインプラント中約5~約3000μg/cm3の平均濃度を有する、請求項10に記載のインプラント。
【請求項13】
前記ポリエチレンインプラントは、前記ポリエチレンを介してヨウ素が注入されている、請求項10に記載のインプラント。
【請求項14】
前記ヨウ素が、ポリエチレンインプラント中約200~約1000μg/cm3の平均濃度を有する、請求項10に記載のインプラント。
【請求項15】
前記ポリエチレンが、超高分子量ポリエチレン、超低分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、高分子量ポリエチレン、高密度架橋ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、分岐ポリエチレン、またはそれらの組み合わせである、請求項10に記載のインプラント。
【請求項16】
前記ポリエチレンが、トコフェロール、トコフェロール亜リン酸エステル、トコトリエノール、ビタミンE、ビタミンE酢酸エステル、ビタミンE亜リン酸エステル、ローズマリーオイル、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、ブタン二酸ジメチルエステル/4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノール共重合体、タンニン酸、ビルベリー抽出物、ビタミンC、カロテン、フラボノイド、イソフラボノイド、ネオフラボノイド、リグニン、キニン、ユビキノン、ビタミンK1、金属、グルタチオン、没食子酸プロピル、没食子酸オクチル、没食子酸ラウリル、レスベラトロール、ロスマリン酸、ルチン、5-アミノサリチル酸、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、フェノール系化合物、および単量体形または重合体形のヒンダードアミン安定剤のうちの少なくとも1つを含む酸化防止剤を含んでなる、請求項10に記載のインプラント。
【請求項17】
前記酸化防止剤が、ポリエチレンの約0.01重量%~約5.0重量%である、請求項16に記載のインプラント。
【請求項18】
前記ポリエチレンが、ピン・オン・プレート分析における摩耗分析の約10,000回数~約1,300,000回数にわたって約0.001g~約0.005gの平均累積質量損失を有する、請求項10に記載のインプラント。
【請求項19】
前記ポリエチレンが約250MPa~約400MPaの弾性率を有する、請求項10に記載のインプラント。
【請求項20】
前記ポリエチレンが、約475%~約515%の破断点伸びを有する、請求項10に記載のインプラント。