(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045565
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】空調システムの制御装置、制御プログラム及び空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/46 20180101AFI20240326BHJP
F24F 11/70 20180101ALI20240326BHJP
F24F 11/64 20180101ALI20240326BHJP
【FI】
F24F11/46
F24F11/70
F24F11/64
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024021477
(22)【出願日】2024-02-15
(62)【分割の表示】P 2019078079の分割
【原出願日】2019-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】000169499
【氏名又は名称】高砂熱学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 英之
(72)【発明者】
【氏名】米澤 仁
(72)【発明者】
【氏名】池田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】片山 健一郎
(57)【要約】
【課題】複数種類の熱源機を有する空調システムにおいて、複数ある性能指標の中から制御で優先するものを変更する際の計算処理を高速化可能にする空調用の制御技術を開示する。
【解決手段】各熱源機を特定の負荷配分で運転させた場合に各熱源機の性能指標が最適となる場合の各熱源機の性能指標の算出を、複数種類の性能指標それぞれについて特性データを基に負荷配分を漸次変更しながら負荷配分毎に行う第1の処理と、複数種類の性能指標の中から選択される何れか一つの性能指標において、空調システム全体の性能指標のうち当該選択された性能指標が最適となる各熱源機の負荷配分を、第1の処理によって算出した各熱源機の性能指標の合計値に基づいて抽出すると共に、当該抽出した負荷配分において当該選択された性能指標が最適となる各熱源機の運転条件を第1の処理の算出結果から特定する第2の処理と、を実行する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の熱源機を有する空調システムの制御装置であって、
各熱源機の特性データが格納される記憶部と、
前記記憶部のデータに基づいて前記各熱源機の負荷配分を決定する処理部と、を備え、
前記処理部は、
前記空調システム全体に要求される熱的な負荷を処理するに際し、前記各熱源機を特定の負荷配分で運転させた場合に前記各熱源機の性能指標が最適となる場合の前記各熱源機の性能指標の算出を、複数種類の性能指標それぞれについて前記特性データを基に前記負荷配分を漸次変更しながら負荷配分毎に行う第1の処理と、
前記複数種類の性能指標の中から選択される何れか一つの性能指標において、前記空調システム全体の性能指標のうち当該選択された性能指標が最適となる前記各熱源機の負荷配分を、前記第1の処理によって算出した前記各熱源機の性能指標の合計値に基づいて抽出すると共に、当該抽出した負荷配分において当該選択された性能指標が最適となる前記各熱源機の運転条件を前記第1の処理の算出結果から特定する第2の処理と、を実行し、
前記第2の処理を実行する前に前記第1の処理を完了する、
空調システムの制御装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記第1の処理において、前記各熱源機の性能指標の算出を、複数種類の性能指標それぞれについて前記特性データを基に前記負荷配分を漸次変更しながら負荷配分毎に全ての負荷配分の組み合わせについて行う、
請求項1に記載の空調システムの制御装置。
【請求項3】
前記複数種類の性能指標とは、一次エネルギー消費量、消費エネルギーコスト、二酸化炭素排出量、性能係数のうち2以上を含む、
請求項1又は2に記載の空調システムの制御装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記第1の処理を、前記空調システムの消費電力が上限値を上回らない負荷配分の範囲内で行う、
請求項1から3の何れか一項に記載の空調システムの制御装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記第1の処理を、前記空調システムに要求されるガス最低消費量を下回らない負荷配分の範囲内で行う、
請求項1から4の何れか一項に記載の空調システムの制御装置。
【請求項6】
前記処理部は、前記選択される性能指標が変更されると、前記空調システム全体の性能指標のうち当該変更によって選択された性能指標が最適となる前記各熱源機の負荷配分を、前記第1の処理によって算出した前記各熱源機の性能指標の合計値に基づいて抽出すると共に、当該抽出した負荷配分において当該選択された性能指標が最適となる前記各熱源機の運転条件を前記第1の処理の算出結果から抽出する第3の処理を更に実行する、
請求項1から5の何れか一項に記載の空調システムの制御装置。
【請求項7】
複数種類の熱源機を有する空調システムの制御装置が、
前記空調システム全体に要求される熱的な負荷を処理するに際し、各熱源機を特定の負荷配分で運転させた場合に前記各熱源機の性能指標が最適となる場合の前記各熱源機の性能指標の算出を、複数種類の性能指標それぞれについて前記各熱源機の特性データを基に前記負荷配分を漸次変更しながら負荷配分毎に行う第1の処理と、
前記複数種類の性能指標の中から選択される何れか一つの性能指標において、前記空調システム全体の性能指標のうち当該選択された性能指標が最適となる前記各熱源機の負
荷配分を、前記第1の処理によって算出した前記各熱源機の性能指標の合計値に基づいて抽出すると共に、当該抽出した負荷配分において当該選択された性能指標が最適となる前記各熱源機の運転条件を前記第1の処理の算出結果から特定する第2の処理と、を実行し、
前記第2の処理を実行する前に前記第1の処理を完了する、
空調システムの制御方法。
【請求項8】
複数種類の熱源機を有する空調システムのコンピュータに、
前記空調システム全体に要求される熱的な負荷を処理するに際し、各熱源機を特定の負荷配分で運転させた場合に前記各熱源機の性能指標が最適となる場合の前記各熱源機の性能指標の算出を、複数種類の性能指標それぞれについて前記各熱源機の特性データを基に前記負荷配分を漸次変更しながら負荷配分毎に行う第1の処理と、
前記複数種類の性能指標の中から選択される何れか一つの性能指標において、前記空調システム全体の性能指標のうち当該選択された性能指標が最適となる前記各熱源機の負荷配分を、前記第1の処理によって算出した前記各熱源機の性能指標の合計値に基づいて抽出すると共に、当該抽出した負荷配分において当該選択された性能指標が最適となる前記各熱源機の運転条件を前記第1の処理の算出結果から特定する第2の処理と、を実行させ、
前記第2の処理を実行する前に前記第1の処理を完了させる、
空調システムの制御プログラム。
【請求項9】
複数種類の熱源機と、
各熱源機の特性データが格納される記憶部と、前記記憶部のデータに基づいて前記各熱源機の負荷配分を決定する処理部とを有する制御装置と、を備え、
前記処理部は、
空調システム全体に要求される熱的な負荷を処理するに際し、前記各熱源機を特定の負荷配分で運転させた場合に前記各熱源機の性能指標が最適となる場合の前記各熱源機の性能指標の算出を、複数種類の性能指標それぞれについて前記特性データを基に前記負荷配分を漸次変更しながら負荷配分毎に行う第1の処理と、
前記複数種類の性能指標の中から選択される何れか一つの性能指標において、前記空調システム全体の性能指標のうち当該選択された性能指標が最適となる前記各熱源機の負荷配分を、前記第1の処理によって算出した前記各熱源機の性能指標の合計値に基づいて抽出すると共に、当該抽出した負荷配分において当該選択された性能指標が最適となる前記各熱源機の運転条件を前記第1の処理の算出結果から特定する第2の処理と、を実行し、
前記第2の処理を実行する前に前記第1の処理を完了する、
空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システムの制御装置、制御方法、制御プログラム及び空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空調システムの制御にコンピュータが利用されている(例えば、特許文献1-5を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-031536号公報
【特許文献2】特開2018-031538号公報
【特許文献3】特開2018-031537号公報
【特許文献4】特開2018-031534号公報
【特許文献5】特開2018-031535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空調システムの性能指標としては、例えば、一次エネルギー消費量、消費エネルギーコスト、二酸化炭素排出量、システムCOP(Coefficient Of Performance)などが挙げられる。そして、空調システムの管理者は、複数ある性能指標の中から制御で優先するものを選定し、選定した性能指標が最適な値となるように空調システムの運用を行う。
【0005】
ところで、空調システムに用いられる熱源機には、ターボ冷凍機、吸収式冷温水機、空冷ヒートポンプ、蓄熱槽、その他各種のものが存在する。そして、各熱源機の特性はそれぞれ異なる。よって、複数種類の熱源機を有する空調システムにおいて、特定の性能指標が最適な値となるように空調システムの運用を行うには、各熱源機の特性や運転条件を考慮しながら各熱源機の負荷配分を決定する必要がある。したがって、特定の性能指標が最適な値となるように空調システムの運用を行うには、各熱源機の特性や運転条件を考慮した複雑な計算を必要とし、複数ある性能指標の中から制御で優先するものを変更することは容易でない。
【0006】
そこで、本願は、複数種類の熱源機を有する空調システムにおいて、複数ある性能指標の中から制御で優先するものを変更する際の計算処理を高速化可能にする空調用の制御技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明では、各熱源機を特定の負荷配分で運転させた場合に各熱源機の性能指標が最適となる場合の各熱源機の性能指標の算出を、複数種類の性能指標それぞれについて特性データを基に負荷配分を漸次変更しながら負荷配分毎に行っておき、一つの性能指標において空調システム全体が最適となる場合の各熱源機の負荷配分を、算出した各熱源機の性能指標の合計値に基づいて抽出することにした。
【0008】
詳細には、本発明は、複数種類の熱源機を有する空調システムの制御装置であって、各熱源機の特性データが格納される記憶部と、記憶部のデータに基づいて各熱源機の負荷配分を決定する処理部と、を備え、処理部は、各熱源機を特定の負荷配分で運転させた場合に各熱源機の性能指標が最適となる場合の各熱源機の性能指標の算出を、複数種類の性能
指標それぞれについて特性データを基に負荷配分を漸次変更しながら負荷配分毎に行う第1の処理と、複数種類の性能指標の中から選択される何れか一つの性能指標において、空調システム全体の性能指標のうち当該選択された性能指標が最適となる各熱源機の負荷配分を、第1の処理によって算出した各熱源機の性能指標の合計値に基づいて抽出すると共に、当該抽出した負荷配分において当該選択された性能指標が最適となる各熱源機の運転条件を第1の処理の算出結果から特定する第2の処理と、を実行する。
【0009】
ここで、性能指標とは、性能を定量的に表すものであり、例えば、一次エネルギー消費量、消費エネルギーコスト、二酸化炭素排出量、性能係数(COP)などが挙げられる。
【0010】
上記の制御装置では、第1の処理と第2の処理が実行されることにより、性能指標が最適となる各熱源機の負荷配分の抽出及び各熱源機の運転条件の特定がなされる。そして、性能指標が最適となる各熱源機の負荷配分は、第1の処理によって全種類の性能指標について既に得られた演算結果の中から抽出するだけなので、例えば、空調システムの制御で優先する性能指標が変更されても、第1の処理を再び実行することなく、新たに選択された性能指標が最適となる各熱源機の負荷配分の抽出及び各熱源機の運転条件の特定を行うことができる。したがって、上記の制御装置であれば、複数ある性能指標の中から制御で優先する性能指標を変更しても、各熱源機の特性や運転条件を考慮した複雑な計算を再度行うことなく、当該変更によって選定された性能指標が最適な値となる各熱源機の負荷配分の抽出及び各熱源機の運転条件の特定を行うことができる。
【0011】
なお、処理部は、第1の処理を、空調システムの消費電力が上限値を上回らない負荷配分の範囲内で行うものであってもよいし、空調システムに要求されるガス最低消費量を下回らない負荷配分の範囲内で行うものであってもよい。このような処理部を備える制御装置であれば、第1の処理の負荷を更に低減することが可能となる。
【0012】
また、処理部は、選択される性能指標が変更されると、空調システム全体の性能指標のうち当該変更によって選択された性能指標が最適となる各熱源機の負荷配分を、第1の処理によって算出した各熱源機の性能指標の合計値に基づいて抽出すると共に、当該抽出した負荷配分において当該選択された性能指標が最適となる各熱源機の運転条件を第1の処理の算出結果から抽出する第3の処理を更に実行するものであってもよい。このような処理部を備える制御装置であれば、変更によって選定された性能指標が最適な値となる各熱源機の負荷配分及び各熱源機の運転条件を抽出することができる。
【0013】
なお、本発明は、方法、プログラム及びシステムの側面から捉えることもできる。例えば、本発明は、複数種類の熱源機を有する空調システムの制御装置が、各熱源機を特定の負荷配分で運転させた場合に各熱源機の性能指標が最適となる場合の各熱源機の運転条件と性能指標の算出を、複数種類の性能指標それぞれについて各熱源機の特性データを基に負荷配分を漸次変更しながら負荷配分毎に行う第1の処理と、複数種類の性能指標の中から選択される何れか一つの性能指標において、空調システム全体の性能指標のうち当該選択された性能指標が最適となる各熱源機の負荷配分を、第1の処理によって算出した各熱源機の性能指標の合計値に基づいて抽出すると共に、当該抽出した負荷配分において当該選択された性能指標が最適となる各熱源機の運転条件を第1の処理の算出結果から抽出する第2の処理と、を実行する、空調システムの制御方法であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
上記の空調システムの制御装置、制御方法、制御プログラム及び空調システムであれば、複数ある性能指標の中から制御で優先するものを変更する際の計算処理を高速化可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、空調システムの一例を示した図である。
【
図2】
図2は、制御装置が実行する処理の概要を示したフローチャートである。
【
図3】
図3は、上記一連の処理内容をイメージで表した図である。
【
図4】
図4は、制御装置が実行する処理の具体例を示した第1のフローチャートである。
【
図5】
図5は、制御装置2が実行する処理の具体例を示した第2のフローチャートである。
【
図6】
図6は、ステップS104の処理内容を示したフローチャートである。
【
図7】
図7は、ステップS106の処理内容を示したフローチャートである。
【
図8】
図8は、熱源機器の消費エネルギーコストを比較した表である。
【
図9】
図9は、熱源機器の二酸化炭素排出量を比較した表である。
【
図10】
図10は、熱源機器の一次エネルギー消費量を比較した表である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であり、本発明の技術的範囲を以下の態様に限定するものではない。
【0017】
図1は、空調システムの一例を示した図である。空調システム1は、
図1に示すように、制御装置2と複数種類の熱源機を備える。空調システム1が備える熱源機としては、例えば、
図1に示されるように、ターボ冷凍機3A、吸収式冷温水機3B、空冷(水冷でも良い)ヒートポンプ3C、蓄熱槽3Dが挙げられるが、空調システム1は、これら全てを備えるものに限定されない。また、空調システム1は、ターボ冷凍機3Aと吸収式冷温水機3Bと空冷ヒートポンプ3Cと蓄熱槽3D以外の熱源機を備えるものであってもよい。空調システム1の各熱源機の熱は、空調装置まで液体または空気によって輸送され、空調装置から空調対象の室内4へ空気または液体によって輸送される。
【0018】
制御装置2は、各熱源機やその他の空調機器の運転制御を司る装置である。制御装置2は、室内4が設けられている建物内と、当該建物が設置されている箇所から遠隔の地の何れにあってもよい。制御装置2には、各熱源機やその他の空調機器のコントローラの情報、空調システム1に設けられている各種センサの情報、室内4の操作パネルを通じて入力される設定温度、ネットワーク経由で送られる情報、その他各種の情報が入力される。制御装置2は、これらの情報に基づいて、各熱源機の負荷配分や運転条件を決定する。
【0019】
以下、制御装置2が実行する処理の概要について説明する。
図2は、制御装置2が実行する処理の概要を示したフローチャートである。制御装置2は、各熱源機の特性データが格納される記憶装置、記憶装置のデータに基づいて各熱源機の負荷配分を決定するCPU(Central Processing Unit)、入出力インターフェース等を備えるコンピュータであり
、メモリに展開されたコンピュータプログラムをCPUが実行することにより、下記の処理を実現する。
【0020】
すなわち、制御装置2は、空調システム1全体に要求される熱的な負荷を処理するに際し、各熱源機を特定の負荷配分で運転させた場合に各熱源機の性能指標が最適となる場合の各熱源機の運転条件と性能指標の算出を、複数種類の性能指標それぞれについて特性データを基に負荷配分を漸次変更しながら負荷配分毎に行う第1の処理(S1~S5)と、複数種類の性能指標の中から選択される何れか一つの性能指標において、空調システム1全体の性能指標のうち当該選択された性能指標が最適となる各熱源機の負荷配分を、第1の処理によって算出した各熱源機の性能指標の合計値に基づいて抽出すると共に、当該抽出した負荷配分において当該選択された性能指標が最適となる各熱源機の運転条件を第1の処理の算出結果から抽出する第2の処理(S6)とを実行する。
【0021】
ここで、性能指標とは、性能を定量的に表すものであり、例えば、一次エネルギー消費量、消費エネルギーコスト、二酸化炭素排出量、システムCOPなどが挙げられる。
【0022】
ステップS1の処理では、制御装置2は、各熱源機の負荷配分の割合を百分率で表した場合に、全熱源機の負荷配分の合計が100%となるように各熱源機の負荷配分を0%から100%までの範囲内で漸次仮定する。制御装置2は、例えば、ターボ冷凍機3Aの負荷配分を40%、吸収式冷温水機3Bの負荷配分を20%、空冷ヒートポンプ3Cの負荷配分を20%と仮定した場合、蓄熱槽3Dの負荷配分を20%と仮定する。制御装置2は、ステップS1の処理を実行する度に、各熱源機の負荷配分を所定の変化率(例えば、1%)で変化させる。
【0023】
ステップS2の処理では、制御装置2は、熱源毎の最適運転条件を算出する。最適運転条件とは、ステップS1における負荷配分から定まる熱量を製造する際に当該熱源の性能指標が最適となる場合の運転条件であり、制御装置2の記憶装置に予め格納されている各熱源機の特性データを用いて算出される。例えば、ターボ冷凍機3Aの最適運転条件であれば、当該ターボ冷凍機3Aの消費電力量を、冷却水温度等の運転条件の値を漸次変更しながら繰り返し演算によって算出することにより、ポンプなどの補機を含めた当該ターボ冷凍機3Aの消費電力量が最小となる場合の運転条件の値が特定される。
【0024】
ステップS3の処理では、制御装置2は、熱源毎に全ての性能指標の値を算出する。制御装置2では、空調システム1の運用上優先できる性能指標の選択肢として、一次エネルギー消費量、消費エネルギーコスト、二酸化炭素排出量、システムCOPの4つが用意されている。そして、空調システム1の管理者は、これらの性能指標の中から任意のものを選択できる。そこで、ステップS3の処理では、制御装置2は、一次エネルギー消費量、消費エネルギーコスト、二酸化炭素排出量、システムCOPの4つの性能指標全てについて、熱源毎に性能指標の値を算出する。
【0025】
ステップS4の処理では、制御装置2は、ステップS3で算出した性能指標の値を合算し、4つの性能指標それぞれについて、全熱源機の性能指標の合計値を算出する。
【0026】
ステップS5の処理では、制御装置2は、ステップS1からステップS4までの一連の算出処理が、あらゆる負荷配分の組み合わせ全てについて完了したか否かの判定を行う。例えば、ステップS1において、4種類の熱源機の負荷配分を1%ずつ変化させる場合であれば、ステップS1からステップS4までの一連の算出処理が100万通りの組み合わせパターン全てについて行われた場合に、ステップS5の処理で肯定判定が行われる。
【0027】
ステップS6の処理では、制御装置2は、ステップS4の処理で算出された各負荷配分の組み合わせにおける性能指標の合計値同士を比較し、空調システム1全体の性能指標のうち空調システム1の管理者によって選択された何れかの性能指標が最適となる各熱源機の負荷配分を抽出する。また、制御装置2は、抽出した負荷配分の場合における最適運転条件を、ステップS2の算出結果より抽出する。そして、制御装置2は、空調システム1の各熱源機やその他の機器が、ステップS6の処理で抽出した負荷配分及び最適運転条件に従って作動するように、空調システム1の各熱源機やその他の機器のコントローラに制御信号を送る。
【0028】
制御装置2が実行する処理の概要については以上の通りである。
図3は、上記一連の処理内容をイメージで表した図である。制御装置2では、空調システム1全体に要求される熱的な負荷(熱源要求負荷)を処理するに際し、上記一連の処理フローによって実現される最適運転条件の決定手法(ルールエンジン)を用いているため、性能指標が最適となる
各熱源機の負荷配分及び各熱源機の運転条件を決定できる。また、ステップS6で抽出される性能指標が最適となる各熱源機の負荷配分及び各熱源機の運転条件は、ステップS1からステップS5までの一連の処理によって全種類の性能指標について既に得られた演算結果の中から抽出するだけなので、例えば、空調システム1の制御で優先する性能指標を空調システム1の管理者が変更する場合には、ステップS1からステップS5までの一連の処理を再度実行することなく、ステップS6の処理を実行するだけで、新たに選択された性能指標が最適となる各熱源機の負荷配分及び各熱源機の運転条件を抽出することができる。
【0029】
以下、制御装置2が実行する処理の具体例について詳述する。
図4は、制御装置2が実行する処理の具体例を示した第1のフローチャートである。また、
図5は、制御装置2が実行する処理の具体例を示した第2のフローチャートである。制御装置2が実行する処理の具体例について、
図4及び
図5のフローチャートに沿って説明する。
【0030】
制御装置2は、空調システム1全体で処理が要求される熱的な負荷の総量(空調システム1全体の要求負荷熱量)の入力と評価項目の選択が行われると、上述したステップS1に相当するステップS101からステップS106までの一連の処理を実行する。
【0031】
すなわち、制御装置2は、各熱源機の負荷配分の割合を百分率で表した場合に、全熱源機の負荷配分の合計が100%となるように各熱源機の負荷配分を0%から100%までの範囲内で漸次仮定する(S101)。この負荷配分は、各熱源機の負荷配分の比率を百分率で表したものなので、以降、負荷配分率という。制御装置2は、熱源の優先順位が空調システム1の管理者によって設定されている場合には、その順序に応じて負荷配分率の仮定範囲を補正する。また、制御装置2は、空調システム1に対する制約条件が空調システム1の管理者によって設定されている場合には、その条件を満たすように負荷配分率の仮定範囲を補正する。
【0032】
例えば、空調システム1の管理者と電力会社との間の契約の都合で、空調システム1全体の消費電力に上限が定められており、空調システム1の管理者が消費電力の上限値(電力デマンド値)を設定している場合、制御装置2は、当該上限値の有無を判定する処理(S103)において肯定判定を行う。そして、制御装置2は、各熱源機の消費電力に関する特性データを参照し、空調システム1全体の消費電力が当該上限値を上回らないように負荷配分率の仮定範囲を補正する(S104)。
【0033】
図6は、ステップS104の処理内容を示したフローチャートである。
図6のグラフでは、横軸の熱量(負荷配分量)を当該熱源機の製造能力の百分率で表している。制御装置2は、ステップS104の処理において、各熱源機の特性データを基に、各熱源機について要求負荷熱量と消費電力との関係を特定し(S104A)、空調システム1全体の消費電力が電力デマンド値を超えないように熱源機の種類毎に負荷配分率の仮定範囲の上限値を修正する(S104B)。熱源機システムのシステム消費電力は、製造熱量を当該システムのシステムCOPで除算した値であるから、例えば、熱源機システムのシステムCOPと製造熱量との関係が熱源機の特性データとして既に用意されている場合であれば、当該特性データを表す式を変形して、左項(縦軸)を消費電力、右項(横軸)を製造熱量からシステムCOPを除した値とすることにより、熱源機の要求負荷熱量と消費電力との関係を表した特性データ(グラフ)を得ることができる。よって、制御装置2は、この特性データを使うことにより、電力デマンド値を超えない要求負荷熱量を特定することができる。
【0034】
再び
図4のフローチャートを参照しつつ、ステップS104より後の処理について説明する。例えば、空調システム1の管理者とガス会社との間の契約の都合で空調システム1
で、空調システム1全体で処理すべきガスの消費量に下限が定められており、空調システム1の管理者がガス最低消費量を設定している場合、制御装置2は、当該ガス最低消費量の有無を判定する処理(S105)において肯定判定を行う。そして、制御装置2は、各熱源機のガス消費量に関する特性データを参照し、空調システム1全体のガス消費量が当該ガス最低消費量を下回らないように負荷配分率の仮定範囲を補正する(S106)。
【0035】
図7は、ステップS106の処理内容を示したフローチャートである。
図7のグラフでは、横軸の熱量(負荷配分量)を当該熱源機の製造能力の百分率で表している。制御装置2は、ステップS106の処理において、各熱源機について要求負荷熱量とガス消費量との関係を示した特性データを参照し(S106A)、ガス最低消費量を下回らないように熱源機の種類毎に負荷配分率の仮定範囲の下限値を修正する(S106B)。
【0036】
再び
図4のフローチャートを参照しつつ、ステップS105より後の処理について説明する。制御装置2は、ステップS101からステップS106までの一連の処理によって負荷配分率の仮定範囲を確定させた後、上述したステップS2からステップS5までの一連の処理に相当するステップS107からステップS118までの一連の処理を実行する。
【0037】
すなわち、制御装置2は、まず、各熱源機が製造すべき製造熱量(負荷配分量)を上記の負荷配分率から算出する(S107)。制御装置2は、例えば、空調システム1全体の要求負荷熱量が100kWであり、ターボ冷凍機3Aの負荷配分率が30%、吸収式冷温水機3Bの負荷配分率が30%、空冷ヒートポンプ3Cの負荷配分率が20%、蓄熱槽3Dの負荷配分率が20%の場合であれば、ターボ冷凍機3Aの製造熱量を30kW、吸収式冷温水機3Bの製造熱量を30kW、空冷ヒートポンプ3Cの製造熱量を20kW、蓄熱槽3Dの製造熱量を20kWとして算出する。
【0038】
次に、制御装置2は、気温や相対湿度等の外気条件と製造熱量を基に、各熱源機の最適運転条件を特定する(S108)。各熱源機の最適運転条件は、次のようにして特定される。例えば、ターボ冷凍機3Aには、冷水を循環させるポンプや冷却水を循環させるポンプ等が併設されている。よって、特定の要求負荷熱量を処理するに際し、これらの補機類を含む熱源機システム全体の消費電力の合計値が最小となる運転条件の一例が最適運転条件と言える。このような最適運転条件を特定するため、制御装置2は、各機器の運転状態と機器固有のCOPとの相関を示した特性データを読み出し、当該熱源機システムのCOPが最大となる場合の各機器の制御目標値を特定する。この特定においては、制御装置2は、計算のために予め用意された仮想室内設計条件及び仮想空調機設計に基づいて、冷水温度等の各種パラメータの推論を行い、この推論に基づいて制御目標値の特定を行う。熱源機や補機が並列に複数台用意されている場合、これらの運転台数は、例えば、運転台数を冷水温度毎、冷却水温度毎に予め定義した運用設計シートに基づいて決定される。なお、各熱源機の最適運転条件は、各熱源での最適化演算のために選択される性能指標と、複数で算出するために選択される性能指標と互いに同じ場合とそれぞれ別の場合とがあってもよい。例えば、各熱源での最適化演算では一次エネルギー消費量を選択し、複数で算出するために選択される性能指標ではエネルギーコストを選択する場合もある。最適化演算のために選択される性能指標は、何れか一つが選択されれば各熱源での最適化演算と複数で算出するために選択される性能指標が両方とも当該選択された性能指標に設定されてもよいし、個別に設定可能であってもよい。また、最適化演算のために選択される性能指標は、一次エネルギー消費量と消費エネルギーコストと二酸化炭素排出量とCOPの4つのうち何れであってもよいし、その他の指標であってもよい。
【0039】
次に、制御装置2は、ステップS108で特定した運転条件を基に、各熱源機の単体COPを各熱源機の特性データから導出する(S109)。そして、制御装置2は、各熱源
機が単体で消費するエネルギー(熱源入力エネルギー)を、製造熱量を単体COPで除算することによって算出する(S110)。すなわち、制御装置2は、以下の数式(1)を用いて各熱源機が単体で消費するエネルギーを算出する。
熱源入力エネルギー(kW)=製造熱量(kW)/単体COP ・・・(1)
【0040】
次に、制御装置2は、各熱源機の性能指標を算出する。すなわち、制御装置2は、各熱源機が消費するエネルギーの種類(電気またはガス)を判別する(S111)。そして、制御装置2は、電気を消費する熱源機であれば当該熱源機及び補機の消費電力量を算出する処理(S112)を実行した後、算出した消費電力量を基に、補機を含めた当該熱源機システムの性能指標を算出する処理(S113)を実行する。また、制御装置2は、ガスを消費する熱源機であれば当該熱源機のガス消費量を算出する処理(S114)を実行した後、算出したガス消費量を基に、当該熱源機システムの性能指標を算出する処理(S115)を実行する。
【0041】
制御装置2は、ステップS112における消費電力量の算出を、例えば、以下の数式(2)を用いて行う。
消費電力量(kWh)=Σ(熱源入力エネルギー(kW)+補機動力(kW))×所定時間(h) ・・・(2)
【0042】
また、制御装置2は、ステップS113における性能指標のうち、一次エネルギー消費量の算出を、例えば、以下の数式(3)を用いて行う。
一次エネルギー消費量(MJ)=消費電力量(kWh)×一次エネルギー消費量換算係数(MJ/kWh) ・・・(3)
(一次エネルギー消費量換算係数は地域や電力の購入先に応じて異なる)
【0043】
また、制御装置2は、ステップS113における性能指標のうち、エネルギーコストの算出を、例えば、以下の数式(4)を用いて行う。
エネルギーコスト(円)=消費電力量(kWh)×電力単価(円/kW) ・・・(4)
(電力単価は契約や時間帯に応じて異なる)
【0044】
また、制御装置2は、ステップS113における性能指標のうち、二酸化炭素排出量の算出を、例えば、以下の数式(5)を用いて行う。
CO2排出量(t-CO2)=消費電力量(kWh)×CO2排出量係数(t-CO2/kWh) ・・・(5)
(CO2排出量係数は地域や電力の購入先に応じて異なる)
【0045】
また、制御装置2は、ステップS113における性能指標のうち、熱源機システムのシステムCOPの算出を、例えば、以下の数式(6)を用いて行う。
システムCOP=(製造熱量(kW)×所定時間(h))/消費電力量(kWh) ・・・(6)
【0046】
また、制御装置2は、ステップS114におけるガス消費量の算出を、例えば、以下の数式(7)を用いて行う。
ガス消費量(Nm3)=熱源入力エネルギー(kW)×所定時間(h)×3.6(MJ/kWh)/発熱量(MJ/Nm3) ・・・(7)
【0047】
また、制御装置2は、ステップS115における性能指標のうち、一次エネルギー消費量の算出を、例えば、以下の数式(8)を用いて行う。
一次エネルギー消費量(MJ)=ガス消費量(Nm3)×発熱量(MJ/Nm3) ・・・(8)
(一次エネルギー消費量換算係数は地域や電力の購入先に応じて異なる)
【0048】
また、制御装置2は、ステップS115における性能指標のうち、エネルギーコストの算出を、例えば、以下の数式(9)を用いて行う。
エネルギーコスト(円)=ガス消費量(Nm3)×ガス電気(円/Nm3) ・・・(9)
(ガス単価は契約に応じて異なる)
【0049】
また、制御装置2は、ステップS115における性能指標のうち、二酸化炭素排出量の算出を、例えば、以下の数式(10)を用いて行う。
CO2排出量(t-CO2)=一次エネルギー消費量(MJ)×CO2排出量係数(t-CO2/MJ) ・・・(10)
【0050】
また、制御装置2は、ステップS115における性能指標のうち、熱源機システムのシステムCOPの算出を、例えば、以下の数式(11)を用いて行う。
システムCOP=(製造熱量(kW)×所定時間(h))/(入力エネルギー(kWh)+補機動力(kWh)) ・・・(11)
【0051】
制御装置2は、ステップS107からステップS115までの一連の処理を、全種類の熱源機について演算が終了するまで繰り返し実行する(S116)。すなわち、空調システム1にはターボ冷凍機3Aと吸収式冷温水機3Bと空冷ヒートポンプ3Cと蓄熱槽3Dという4種類の熱源機が備わっているため、制御装置2は、ステップS107からステップS115までの一連の処理を4回繰り返し実行する。
【0052】
制御装置2は、ステップS107からステップS115までの一連の処理を、全種類の熱源機について演算が終了するまで行うと、次に、全種類の熱源機の各性能指標を合算し、空調システム1全体の性能指標を負荷配分率の組み合わせ毎に算出する(S117)。
すなわち、制御装置2は、空調システム1全体の一次エネルギー消費量、消費エネルギーコスト、二酸化炭素排出量及びシステムCOPを、負荷配分率の組み合わせ毎に算出する。制御装置2は、空調システム1全体の各性能指標の算出を、仮定範囲内にある全ての負荷配分率の組み合わせパターンについて完了するまで行う(S118)。
【0053】
制御装置2は、空調システム1全体の各性能指標の算出を、仮定範囲内にある全ての負荷配分率の組み合わせパターンについて完了した後、上述したステップS6に相当するステップS119からステップS121までの一連の処理を実行する。
【0054】
すなわち、制御装置2は、ステップS101からステップS118までの処理を繰り返すことによって得た仮定範囲内の全ての負荷配分率の組み合わせパターンにおける空調システム1全体の各性能指標の算出結果を基に、空調システム1の管理者が選定した性能指標が最適な値となる場合の負荷配分(負荷配分量)の組み合わせを抽出する(S119)。空調システム1の管理者が選定した性能指標が、例えば、一次エネルギー消費量であれば、制御装置2は、一次エネルギー消費量が最も小さい値となる場合の負荷配分量を抽出する。また、空調システム1の管理者が選定した性能指標が、例えば、消費エネルギーコストであれば、制御装置2は、消費エネルギーコストが最も小さい値となる場合の負荷配分量の組み合わせを抽出する。また、空調システム1の管理者が選定した性能指標が、例えば、二酸化炭素排出量であれば、制御装置2は、二酸化炭素排出量が最も小さい値となる場合の負荷配分量の組み合わせを抽出する。また、空調システム1の管理者が選定した性能指標が、例えば、システムCOPであれば、制御装置2は、システムCOPが最も高い値となる場合の負荷配分量の組み合わせを抽出する。
【0055】
また、制御装置2は、空調システム1の制御で優先する性能指標を空調システム1の管理者が変更する場合(S120)、既に算出済みの空調システム1全体の各性能指標の算出結果の中から、空調システム1の管理者が新たに選定した性能指標が最適な値となる場合の負荷配分量の組み合わせを抽出する。
【0056】
図8は、熱源機器の消費エネルギーコストを比較した表である。また、
図9は、熱源機器の二酸化炭素排出量を比較した表である。また、
図10は、熱源機器の一次エネルギー消費量を比較した表である。
図8から
図10の各表に示す値は一例であり、本実施形態の空調システム1に備わる機器がこのような能力を有するものに限定されるものではない。例えば、冷凍能力が同等なターボ冷凍機3Aと吸収式冷温水機3Bとを比較した場合、COPが図に示すような値であった場合、COPについてはターボ冷凍機3Aの方が高くても、エネルギーコストは吸収式冷温水機3Bの方が低いことが判る。また、二酸化炭素排出量と一次エネルギー消費量はターボ冷凍機3Aの方が低いことが判る。このように、各熱源機器には様々な特徴があるため、空調システム1のように複数種類の熱源機器を備えるシステムの場合、空調システム1の性能指標が最適となる負荷配分量は、空調システム1の管理者が選択する性能指標の種類に応じて変化する。
【0057】
この点、空調システム1では、制御装置2がステップS101からステップS121までの上記一連の処理を実行することにより、性能指標が最適となる各熱源機の負荷配分量及び各熱源機の運転条件が決定される。そして、性能指標が最適となる各熱源機の負荷配分量及び各熱源機の運転条件は、ステップS101からステップS118までの一連の処理によって全種類の性能指標について既に得られた演算結果の中から抽出するだけなので、例えば、空調システム1の制御で優先する性能指標を空調システム1の管理者が変更しても、ステップS121の処理を実行するだけで、新たに選択された性能指標が最適となる各熱源機の負荷配分量及び各熱源機の運転条件を抽出することができる。したがって、複数ある性能指標の中から制御で優先するものを変更しても、各熱源機の特性や運転条件を考慮した複雑な計算を再度行うことなく、当該変更によって選定された性能指標が最適
な値となる各熱源機の負荷配分量及び各熱源機の運転条件を抽出することができる。
【0058】
なお、上記実施形態の空調システム1は、制御装置2がステップS101からステップS121までの上記一連の処理をすべて実行するものに限定されない。上記実施形態の空調システム1は、例えば、制御装置2がステップS102からステップS106までの処理を省略するものであってもよいし、その他の変更が加えられていてもよい。また、上記実施形態の空調システム1では、制御装置2が上記一連の処理において各熱源機の製造熱量の比率である相対値を使って計算を行っているが、制御装置2は、各熱源機の製造熱量または定格能力に対する製造熱量の割合である絶対値を使って計算を行ってもよい。また、上記実施形態の空調システム1は、制御装置2が一次エネルギー消費量、消費エネルギーコスト、二酸化炭素排出量、システムCOPの4つの性能指標全てについて、熱源毎に性能指標の値を算出していたが、制御装置2は、これら4つのうち何れか一つの性能指標の値を熱源毎に算出するものであってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1・・空調システム
2・・制御装置
3A・・ターボ冷凍機
3B・・吸収式冷温水機
3C・・空冷ヒートポンプ
3D・・蓄熱槽
4・・室内
【手続補正書】
【提出日】2024-03-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の熱源機を有する空調システム用のコンピュータに、
記憶部に格納された各熱源機の特性データ、前記空調システムが空調対象とする室内の仮想室内設計条件、前記空調システムに備わる空調機の仮想空調機設計、外気条件及び各熱源機が製造すべき製造熱量を取得させ、
前記各熱源機の運転条件に係る各種パラメータの推論を行わせ、
前記各熱源機の複数種類の性能指標それぞれについて最適となる場合の前記各種パラメータの制御目標値を出力させる、
空調システムの制御プログラム。
【請求項2】
複数種類の熱源機を有する空調システムの制御装置であって、
各熱源機の特性データ、前記空調システムが空調対象とする室内の仮想室内設計条件及び前記空調システムに備わる空調機の仮想空調機設計が格納される記憶部と、
前記記憶部の情報を用いて前記各熱源機が製造すべき製造熱量を決定する処理部と、
入出力インターフェースと、を備え、
前記処理部は、前記空調システム全体に要求される熱的な負荷を処理するに際し、
前記各熱源機の運転条件に係る各種パラメータの推論を用いて、
前記各熱源機の複数種類の性能指標それぞれについて最適となる場合の前記各種パラメータの制御目標値を出力する、
空調システムの制御装置。
【請求項3】
前記処理部は、
前記入出力インターフェースを介して室内の操作パネルから入力される設定温度、外気条件、前記特性データ、前記仮想室内設計条件及び前記仮想空調機設計に基づいて、
前記空調システム全体の要求負荷熱量及び各熱源機の負荷配分の割合を算出し、
負荷配分の割合に応じて前記各熱源機が製造すべき製造熱量を算出する、
請求項2に記載の空調システムの制御装置。
【請求項4】
空調システムであって、
複数種類の熱源機と、
各熱源機の特性データ、前記空調システムが空調対象とする室内の仮想室内設計条件及び前記空調システムに備わる空調機の仮想空調機設計が格納される記憶部と、
前記記憶部のデータに基づいて前記各熱源機が製造すべき製造熱量を決定する処理部と、
入出力インターフェースと、を備え、
前記処理部は、前記空調システム全体に要求される熱的な負荷を処理するに際し、
前記各熱源機の運転条件に係る各種パラメータの推論を用いて、
前記各熱源機の複数種類の性能指標それぞれについて最適となる場合の前記各種パラメータの制御目標値を出力する、
空調システム。
【請求項5】
前記処理部は、
前記各熱源機を特定の負荷配分で運転させた場合における前記各熱源機の性能指標の算出を、複数種類の性能指標それぞれについて全種類の熱源機を対象に行い、前記空調システム全体の性能指標を負荷配分の組み合わせ毎に算出する処理を行った後、
システムCOPが最適となる負荷配分を、前記空調システム全体の消費電力が上限値を上回らない負荷配分の範囲内で決定する、
請求項2又は3に記載の空調システムの制御装置。
【請求項6】
前記処理部は、
前記各熱源機を特定の負荷配分で運転させた場合における前記各熱源機の性能指標の算出を、複数種類の性能指標それぞれについて全種類の熱源機を対象に行い、前記空調システム全体の性能指標を負荷配分の組み合わせ毎に算出する処理を行った後、
システムCOPが最適となる負荷配分を、前記空調システムに要求されるガス最低消費量を下回らない負荷配分の範囲内で決定する、
請求項2又は3に記載の空調システムの制御装置。
【請求項7】
前記処理部は、
前記の各処理を実行した後に、前記各熱源機の複数種類の性能指標それぞれについて最適となる場合の前記各種パラメータの制御目標値を出力する処理を再実行する、
請求項2、3、5、6の何れか一項に記載の空調システムの制御装置。
【請求項8】
前記各熱源機の性能指標の合計値は、少なくとも前記各熱源機の種類、前記各熱源機の負荷配分、各性能指標、各性能指標の値を組み合わせたデータ構造を有している、
請求項2、3、5、6、7の何れか一項に記載の空調システムの制御装置。